特許拒絶査定不服審判
2024-009991
包装体
- 審判番号
- 2024-009991
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2020-060186
- 請求日
- 2024年06月14日
- 審決日
- 2026年05月12日
- 公報発行日
- 2026年07月31日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】大王製紙株式会社
- 【請求人代理人】伊東 忠重
- 審判長/審判官
- 審判長 岩谷 一臣
- 審判官 稲葉 大紀
- 審判官 笹木 俊男
- 分類
- P18 .121-WZ (B65D)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2020-60186「包装体」拒絶査定不服審判事件〔令和3年10月7日出願公開、特開2021-155111〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、令和2年3月30日の出願であって、その手続の経緯の概略は、次のとおりである。
令和5年11月 9日付け:拒絶理由通知書
令和6年 1月 4日 :意見書、手続補正書の提出
令和6年 3月28日付け:拒絶査定(以下「原査定」という。)
(令和6年 4月 2日 :原査定の謄本の送達)
令和6年 6月14日 :審判請求書、手続補正書の提出
令和7年11月14日 :上申書の提出
令和7年12月25日付け:拒絶理由通知書
令和8年 3月 6日 :意見書、手続補正書の提出
第2 本願発明
本願の請求項1~4に係る発明は、令和8年3月6日提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1~4に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明1」という。)は、次のとおりである。
「被包装体が収容される紙製の包装体であって、
天面と、
前記天面と上下方向に対向する底面と、
前記天面と底面の間に形成された複数の側面とを有し、
前記複数の側面の少なくとも一つの側面に開口が設けられており、
前記開口を画定する前記側面の端縁が、丸みを帯びた凸と凹が交互に連続する波形の凹凸形状に形成されている、包装体。」
第3 当審拒絶理由の概要
令和7年12月25日付けで当審が通知した拒絶理由の概要は、次のとおりである。
理由(進歩性)
本願の請求項1~4に係る発明は、以下の引用文献に記載された発明に基いて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
引 用 文 献 等 一 覧
2.実願昭51-165883号(実開昭53-83374号)のマイクロフィルム
6.特開2012-116531号公報(周知例)
7.登録実用新案第3180616号公報(周知例)
第4 当審の判断
当審合議体は、合議の結果、本願発明1は上記第3で示した理由(進歩性)により特許を受けることができないものであり、本願は拒絶すべきものと判断する。
1 引用文献
(1)引用文献2について
ア 引用文献2の記載
引用文献2には、以下の記載がある。下線は当審が付したものである。以下同様。
(ア)「3. 考案の詳細な説明
本考案は小箱を数多梱包荷造りする目的で使用される外装用保護枠体に関する。
従来、いちご、びわ、トマト等のような軟弱物を収容した小箱を販売のため荷造りする場合は単に周囲をかこんで紐等で縛つた状態で輸送を行つているため、輸送中の動揺により品物が損傷する欠点があつた。
本考案者は上記の梱包荷造りを簡単な構造で容易にかつ堅牢に実施する方法について研究を行つて来た結果、本考案の外装用保護枠体を完成したものである。」(明細書第1ページ第12行~第2ページ第4行)
(イ)「即ち本考案の外装用保護枠体は第1図に示したように所定の寸法の長方形の厚紙、段ボール等を基素材とする板紙1を、その長手方向と直角な罫線2により四区画に分割する。その場合被梱包物である小箱を所定数積み重ねた際の高さをHとし、又積み重ねた小箱を1列もしくは2列或は3列に並べた場合の幅をWとし、かつ小箱の奥行き寸法をlとするとき、前記の罫線2による分割はHの長さを規準とする側壁部3、Wの長さを規準とする底板部4、側壁部3と同じ長さの側壁部3’及び、Wの長さを基準とする天蓋部5の順序(逆順でも同様である)に行われる。尚、板紙1の幅はlを基準に定めて置けばよい。
上記の四分画された各部分の開放された辺には2~5cm(本考案の目的が達成出来る寸法の範囲であれば特に限定されない。)のフラツプ6を罫線7を介して連接せしめて構成される。」(明細書第2ページ第5行~第3ページ第2行)
(ウ)「本考案の外装用保護枠を用いて小箱を梱包する場合の態様について説明する。
先ず底部4に被梱包物となるいちご等を収容した第2図に示した小箱8を1列又は2列乃至3列に並べ所定の数量積み重ねる。しかる後罫線2により側壁部3、3’を折り曲げ、更に天蓋部を折り曲げて小箱積層体の四面を包み最後にそれぞれのフラツプ6を罫線7により折り曲げれば梱包が完成する。梱包を完了した外装用保護枠体は第2図に例示したように紐9により適宜緊縛する。」(明細書第3ページ第3~13行)
(エ)「本考案の外装用保護枠は以下のような利点を有する。
(イ) 数多の小箱を梱包荷造りするのに簡単で容易かつ堅牢に行なわれ省力化ができる。
(ロ) 箱の両端が開口しているので内容の小箱を外部から見ることができる。
(ハ) 開口部の両側及び上下にあるフラップにより上下左右の圧力を支えることにより内容小箱を確実に保護し、完全輸送することができる。」(明細書第3ページ第14行~第4ページ第3行)
(オ)「
[図:0001436616000001.jpg]
」(第1図)
(カ)「
[図:0001436616000002.jpg]
」(第2図)
イ 引用文献2に記載されていると認められる事項
上記ア(エ)の「両端が開口している」「箱」は、上記ア(ウ)の「梱包を完了した外装用保護枠体は第2図に例示したように・・・」との記載及び第2図からみて、「梱包を完了した外装用保護枠体」をいうものと理解される。
ウ 引用文献2に記載の発明
上記ア、イから、引用文献2には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認める。
「長方形の厚紙、段ボール等を基素材とする板紙1を、その長手方向と直角な罫線2により四区画に分割し、上記の四分画された各部分の開放された辺には2~5cmのフラツプ6を罫線7を介して連接せしめ、(上記ア(イ))
先ず底部4に被梱包物となるいちご等を収容した小箱8を1列又は2列乃至3列に並べ所定の数量積み重ね、しかる後罫線2により側壁部3、3’を折り曲げ、更に天蓋部を折り曲げて小箱積層体の四面を包み最後にそれぞれのフラツプ6を罫線7により折り曲げ、梱包を完了した外装用保護枠体である箱であって、(上記ア(ウ)、上記イ)
箱の両端に開口部が設けられており、開口部の両側及び上下にフラツプ6がある、(上記ア(エ)及び(カ))
箱。」
(2)周知技術について
ア 引用文献6の記載
引用文献6には、以下の記載がある。「・・・」は記載の省略を示す。
・「【0013】
本発明は、段ボールシートにより形成された段ボール製容器において、外部に露出している段ボールシートの端縁部に柔軟性を付与することを特徴とするものであり、具体的には、外部に露出している段ボールシートの一辺を連続した波形形状となし、波形形状の各底部には切込みを設けた段ボール製容器に関するものである。波形形状とその各底部に設けた切込みからなる複合形状の採用により、段ボール製容器を取り扱う際に、指などに切傷を負うことがなく、また、運搬などを容易となすことを可能とした。本発明は波形形状と切込みを組み合わせることによりダンボールシートの端縁部に柔軟性を付与することにより、従来技術では達成することができなかった優れた指などの切傷防止と安全な人手による運搬を達成することが可能となった。」
・「【0019】
波形の形状については特に限定されないが、三角波、四角波などであってもよい。好ましくは、例えば、なだらかな波である正弦波形や半円弧状の凸部と半円弧状の凹部の組み合わせた波形形状の繰り返しが挙げられる。図3には、正弦波形を採用した本発明の複合形状の一例を拡大して示す。波形形状の最適値は、周期(W)が13mm、頂部から底部の距離(H)が10mmすなわち振幅が5mmの波であり、切込み(D)の最適値は6mmであることが実験結果から判明している。また、波形形状および/または切込みの部分を押潰すことにより端縁部に柔軟性を更に付与することができ、切傷の形成防止効果を増進させることができる。」
・「【0023】
・・・。図4から組み立てられた段ボール箱では、側板1,1‘、2、2’が連続しその一端には止め代部4が設けられ、止め代部4の端縁部には本発明の複合形状5が形成されている。・・・。このシート素材を折り曲げて容器を形成した場合には、止め代部4は側板2の開放端8から側板2の表面に接着剤などで接合されて容器の胴部を形成する。止め代部4に設けられた複合形状5は容器の表面に露出することになり、手作業で運搬する際には手掛かりとして利用されるが、この複合形状5を設けたことにより指などが傷つくことはない。」
・「【産業上の利用可能性】
【0033】
従来、物品の箱詰めは自動化され手作業によりことはほとんどなくなってきているが、箱詰めした後の容器の移動や輸送の段階において手作業に頼ることが生ずることは避けられない。こうした、容器ごとの移動、輸送などの取扱いが必要とされる現場では手作業により指などが容器の角や段ボールシートの露出した端縁部に接触し、切傷することが多い。本発明は、こうした段ボール容器の移送取扱い時の人体への傷の発生をなくすることに有用な段ボール容器を提供するものである。」
・「【図1】
[図:0001436616000003.jpg]
」
・「【図3】
[図:0001436616000004.jpg]
」
イ 引用文献7の記載
引用文献7には、以下の記載がある。
・「【技術分野】
【0001】
本考案は、段ボールの切断端部との摩擦による手や指の怪我を防止する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
機械で切断された段ボールは、その切断端部のライナーが鋭利な形状となっている。例えば、糊代を備えた蓋で封止される段ボール箱では、持ち運び時や開封時に手や指が糊代の切断端部に沿って滑ると、摩擦で皮膚が切れて怪我をすることがあった。」
・「【実施例】
【0010】
(実施例1)
図1~3に示す実施例1は、1枚の段ボール1を折り曲げて組み立てられる段ボール箱Aにおいて、その蓋6の糊代7に複数のアーチ7aが連続する凹凸を設けた例である。段ボール1の全切断端部は、1.5mmピッチの微細な波状に形成し、糊代7のアーチ7aの手や指が触れやすい左右端部それぞれに幅0.5mm程の毛羽立ち7bを設けている。図中、2は側板、3は底板、4は外フラップ、5は内フラップである。」
・「【0012】
段ボール1の切断端部は、微細な波状によって手や指が触れる部分が減少し、組み立て時や折り畳み時の摩擦による怪我を軽減できるようになっている。しかも、持ち運び時や開封時に手や指が触れやすい糊代7のアーチ7aの左右箇所が毛羽立ち7bで柔らかく感じるものとなっており、不注意で手や指を滑らせてしまっても、摩擦が緩和されて皮膚を傷めにくくなり、怪我をさらに軽減できるようになっている。」
・「【図2】
[図:0001436616000005.jpg]
」
「【図5】
[図:0001436616000006.jpg]
」
ウ 周知技術
上記ア、イからみて、次の事項は周知の技術であると認める。
「人の手や指が触れる段ボール箱の端縁を波形形状に形成することで、人の手や指の怪我を防止すること。」
2 対比
本願発明1と引用発明を対比する。
(1)引用発明の「被梱包物」は、本願発明1の「被包装体」に相当する。また、引用発明の「箱」は、「厚紙、段ボール等を基素材とする板紙1」から作製したものであり、かつ、「被梱包物」を包んで形作られているから、本願発明1の「被包装体が収容される紙製の包装体」に相当する。
(2)引用発明の「天蓋部」、「底部4」は、その構造からみて、本願発明1の「天面」、「前記天面と上下方向に対向する底面」に相当する。また、引用発明の「側壁部3、3’」及び「フラツプ6」は、まとめて本願発明1の「前記天面と底面の間に形成された複数の側面」に相当する。
(3)上記(2)を踏まえると、引用発明の「箱の両端に開口部が設けられており」という事項は、本願発明1の「前記複数の側面の少なくとも一つの側面に、開口が設けられており」という事項に相当する。
そうすると、本願発明1と引用発明とは、次の点で一致する。
<一致点>
「被包装体が収容される紙製の包装体であって、
天面と、
前記天面と上下方向に対向する底面と、
前記天面と底面の間に形成された複数の側面とを有し、
前記複数の側面の少なくとも一つの側面に、開口が設けられている、
包装体。」
一方、両発明は、以下の点で相違する。
<相違点>
本願発明1では「前記開口を画定する前記側面の端縁が、丸みを帯びた凸と凹が交互に連続する波形の凹凸形状に形成されている」のに対し、引用発明では、「開口部」の端縁の形状が不明である点。
3 判断
(1)相違点について
上記1(2)ウに示したとおり、人の手や指が触れる段ボール箱の端縁を波形形状に形成することで、人の手や指の怪我を防止することは、周知の技術である。
そして、段ボール箱の運搬や開封において、該段ボール箱の端縁に手や指が触れることによる怪我の防止は一般に注意を要するものであるところ、かかる事項は「厚紙、段ボール等を基素材」とする引用発明においても妥当するから、引用発明に当該周知技術を適用する動機付けは十分に存在する。
ここで、引用発明の「開口部」の端縁は、「箱」において露出している端縁であり、引用発明において「開口部」の「フラツプ6」を開いて「被梱包物」を取り出すことや、その際に人の手や指が「開口部」の端縁に触れることは当然想定されることであるから、ここに周知技術を適用し、相違点に係る本願発明1の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
(2)効果について
本願発明1の奏する作用効果は、引用発明及び周知技術の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。
4 小括
以上のとおり、本願発明1は、引用発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
5 請求人の主張について
請求人は、令和8年3月6日提出の意見書において、引用発明2と引用発明6、7は、技術的課題及び適用部位が異なるから、単純に適用して本願発明に想到する動機付けは見出せない旨、及び、引用文献2の梱包の堅牢性の確保という技術思想と引用文献6の端縁処理の適用により生じ得る強度低下とは整合しないから、適用に阻害要因がある旨を主張する。
しかし、当審での進歩性判断は、引用発明に周知技術を適用するものであるところ、上記3(1)で示したとおり、引用発明を含む段ボール箱において怪我防止という課題は当然内在するものであるから、その動機付けは十分にあると認められるものである。
また、引用発明の露出している端縁は、特段荷重や圧力を支持する箇所ではなく、その端縁形状が「箱」の強度を左右するものとはいえないし、そもそも引用文献2に記載されている堅牢とは、従前のひもで縛っただけのもと比較した場合のものであるから、周知技術の適用に阻害要因もない。
したがって、請求人の主張を採用することはできない。
第5 むすび
以上からすると、本願発明1は、引用発明及び周知事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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