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特許拒絶査定不服審判

2024-008237

水性貼付剤

審判番号
2024-008237
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2018-199959外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2024年05月17日
審決日
2025年03月31日
公報発行日
2026年06月26日
結論
請求不成立
当事者
審判長/審判官
分類
P18 .121-WZ (A61K)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法29条2項
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項
データ出所
審決公報(XML)

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特願2018-199959「水性貼付剤」拒絶査定不服審判事件〔令和 2年 4月30日出願公開、特開2020- 66592〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論 本件審判の請求は、成り立たない。

理由

理 由 第1 手続の経緯 本願は、平成30年10月24日を出願日とする特許出願であり、その主な手続の経緯は、以下のとおりである。 令和4年 7月11日付け 拒絶理由通知書 同年 9月 2日 意見書の提出 同年11月28日付け 拒絶理由通知書 令和5年 3月 8日 手続補正書・意見書の提出 同年 3月10日 手続補足書の提出 同年 6月 5日付け 拒絶理由通知書 同年10月 6日 手続補正書・意見書の提出 同年10月10日 手続補足書の提出 同年11月27日付け 拒絶理由通知書 同年12月30日 意見書の提出 令和6年 3月 4日付け 拒絶査定 同年 5月17日 審判請求書の提出 同年 6月19日付け 拒絶理由通知書(当審) 同年 9月12日 面接 同年 9月19日 手続補正書・意見書の提出 同年 9月24日 手続補足書の提出 なお、刊行物等提出書が6回提出されている。(令和4年9月15日、令和5年4月25日、令和5年10月30日、令和6年1月22日、令和6年6月10日、令和6年10月30日) 第2 本願発明 本願の特許請求の範囲の請求項1~5に係る発明は、令和6年9月19日提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1~5に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、以下のとおりである。 「【請求項1】 膏体成分として、アクリル系ポリマーを含む水溶性ポリマーを10~20重量%および多価アルコールを20~50重量%含有し、且つ、多価アルコールの一種として少なくともグリセリンを10~40重量%および架橋剤を含有する、含水率が25~45重量%である低含水量の膏体を、厚み0.4~0.7mm及び目付80~110g/m2の支持体に、塗工量として300~600g/m2の範囲で塗布してなり、日本薬局方「一般試験 6.12 粘着力試験法」の「3.2 傾斜式ボールタック試験法」による粘着力としてボールナンバー(No.)10以上の粘着力を有することを特徴とする水性貼付剤であって、前記アクリル系ポリマーは、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリアクリル酸部分中和物およびポリアクリル酸から選択される1種又は2種以上である水性貼付剤。」 第3 拒絶の理由 本願発明に対して、当審において令和6年6月19日付けで通知した拒絶理由の要旨は、次のとおりのものである。 本願発明は、引用文献3に記載された発明及び引用文献3~6の記載事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 <引用文献一覧> 3.国際公開第2016/104227号 4.一般社団法人レギュラトリーサイエンス学会監修,医薬品製造販売指針2015,株式会社じほう,2015年,第113頁(周知技術を示す文献) 5.第十七改正 日本薬局方,2016年,第145~147頁(周知技術を示す文献) 6.厚生労働省医薬・生活衛生局医薬品審査管理課,第十七改正日本薬局方の制定に伴う医薬品等の承認申請等に関する質疑応答集(Q&A)について[オンライン],2017年,<URL:https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=00tc2613&dataType=1&pageNo=1> 検索日2023.11.27(周知技術を示す文献) 参考文献A:特開2007-326844号公報(ニカゾールTS-600の含水量についての文献) 第4 引用文献に記載された事項及び引用発明 1 引用文献3の記載事項及び引用発明 (1)引用文献3に記載された事項 引用文献3には、以下の事項が記載されている。下線は当審合議体が付した。 (摘記3a) 「[請求項1]基布、膏体層及び剥離ライナーをこの順に備えるパップ剤であって、 前記膏体層は、生理活性物質、水溶性(メタ)アクリルポリマー、水、界面活性剤及びポリ(アクリル酸メチル/アクリル酸2-エチルヘキシル)を含有し、 前記界面活性剤は、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル又はポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルを含む、パップ剤。」 (摘記3b) 「[0015] 基布としては、不織布又は織布が好ましく、所定の伸長回復率を有する不織布又は織布が特に好ましい。ここで、伸長回復率とは、「JIS L 1096 織物及び編物の生地試験方法」にしたがって測定される値である。伸長回復率を有する不織布又は織布を用いることで、関節等の可動部に貼付した際に、貼付部位の動きに応じて、基布が伸縮するため、好ましい。」 (摘記3c) 「[0016] 基布が不織布である場合、50%伸長時荷重は、例えば、縦方向(長軸方向)1~5N/2.5cmであり、横方向(短軸方向)0.1~3N/2.5cmであることが好ましい。また、50%伸長回復率は、例えば、60~99%であり、65~95%であることが好ましく、70~90%であることがより好ましい。好適な基布の目付は、例えば、80~120g/m2であり、90~110g/m2であることが好ましい。好適な基布の厚みは、例えば、0.5~2mmである。また、基布の剛軟度(剛軟度の測定方法はJIS L 1096 45°カンチレバー法による。)は、例えば、縦方向(長軸方向)20~40mm、横方向(短軸方向)10~35mmとすることができ、好ましくは縦方向(長軸方向)25~35mm、横方向(短軸方向)15~30mmである。 [0019] 水を含有する膏体を織布に展延すると織布の網目を通して、水が染み出してくる虞があるが、ポリエチレンテレフタレート織布の目付けを80~150g/m2とすることにより膏体に含有される水が確実に織布の網目を通して染み出すことなく展延できる傾向があり、かつ織布と膏体の間の投錨性を維持することができる。」 (摘記3d) 「[0021] 膏体層は、生理活性物質、水溶性(メタ)アクリルポリマー、水、界面活性剤及びポリ(アクリル酸メチル/アクリル酸2-エチルヘキシル)を含有し、上記界面活性剤は、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル又はポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルを含む。」 (摘記3e) 「[0026] 水溶性(メタ)アクリルポリマーは、ポリアクリル酸を含むことが好ましい。膏体層におけるポリアクリル酸の含有量は、膏体層の全質量を基準として1~5質量%であることが好ましく、2~6質量%であることがより好ましい。ポリアクリル酸の含有量を1質量%以上にすることにより、膏体層の成型性及び保型性がより向上する傾向があり、ポリアクリル酸の含有量を5質量%以下にすることにより、膏体層の硬度が高くなりにくく、皮膚への密着性がより高くなる傾向がある。 [0027] 水溶性(メタ)アクリルポリマーは、ポリアクリル酸中和物を含むことが好ましい。ポリアクリル酸中和物は、ポリアクリル酸完全中和物であっても、ポリアクリル酸部分中和物であっても、これらの混合物であってもよい。ポリアクリル酸中和物とは、ポリアクリル酸塩を意味し、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、アンモニウム塩等を用いることができる。 [0028] ポリアクリル酸中和物としては、初期的な付着力も経時的な付着力も高くなることから、ポリアクリル酸部分中和物が好ましい。ポリアクリル酸部分中和物は、1つのポリマー鎖において、アクリル酸に由来する構造単位とアクリル酸塩に由来する構造単位が任意の割合で存在しているものである。ポリアクリル酸部分中和物としては、1つのポリマー鎖中のカルボキシ基のうち、20~80モル%が中和されたものを用いることが好ましい。」 (摘記3f) 「[0031] 膏体層は、ポリ(アクリル酸メチル/アクリル酸2-エチルヘキシル)を含有する。従来のパップ剤は膏体層の重量が小さいと、水含有量が低下しやすく、付着力が低下しやすい。しかしながら、膏体層がポリ(アクリル酸メチル/アクリル酸2-エチルヘキシル)を含むことにより、膏体層の質量が比較的小さい場合であっても、長時間経過した後でも十分な付着力が維持されやすい傾向にある。 [0032] ポリ(アクリル酸メチル/アクリル酸2-エチルヘキシル)としては、媒体として水を用いた水性エマルジョンが好ましい。ポリ(アクリル酸メチル/アクリル酸2-エチルヘキシル)エマルジョンとしてはまた、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルを界面活性剤又は保護コロイドとして用いたエマルジョンであることが好ましい。また、媒体の沸点以上の加熱(例えば、105℃で3時間)による蒸発残留物(不揮発分)が57~61%であることが好ましい。このようなエマルジョンとしては、ニカゾールTS-620(商品名、日本カーバイド工業株式会社製)が挙げられる。医薬品添加物規格(2013年)によれば、ニカゾールTS-620を水浴上で蒸発乾固した後、105℃で3時間乾燥するとき、蒸発残留物の量が57~61%である。 [0033] 本実施形態のパップ剤は、膏体層に水を含有する。膏体層が水を含有することにより、薬物の皮膚透過性が向上し、薬理作用がより効果的に発揮される。 [0034] 水の含有量は、膏体層の質量を基準として、10~90質量%であることが好ましく、15~88質量%であることがより好ましく、18~85質量%であることがさらに好ましい。」 (摘記3g) 「[0038] 膏体層の質量は、例えば、214~1000g/m2であってもよく、400~1000g/m2であってもよく、400~650g/m2であってもよい。好ましくは、400~650g/m2とすることにより、フィット感良く、より長期間の付着性を向上することができる。膏体層の質量が上記範囲であれば、パップ剤全体の厚みを小さくすることができ、皮膚に追従しやすく、さらに、貼付した際に周縁部との段差が小さくなるため、剥離しにくい傾向にある。 [0039] 膏体層には、その他の成分として、溶解補助剤、架橋剤、保湿剤、清涼化剤、安定化剤、無機粉体、着色料、着香料、pH調整剤等をさらに添加してもよい。 [0041] 架橋剤は、水溶性(メタ)アクリルポリマーの架橋反応を調整するために添加するものであり、架橋剤の含有量を調整することにより、パップ剤の皮膚への追従性を調整することができる。架橋剤としては、パップ剤として一般に用いられているものを用いることができる。 [0042] 保湿剤としては、時間の経過に伴う膏体層からの水分の蒸発を抑制できるものであれば、特に制限はない。保湿剤としては、例えば、ゼラチン、ソルビトール、グリセリン、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、流動パラフィン等の多価アルコールが挙げられる。これらの保湿剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組も合わせて用いてもよい。保湿剤の含有量は、膏体層の質量を基準として、3~70質量%であることが好ましい。 [0050] 本実施形態のパップ剤は、例えば、以下のように製造することができる。まず、生理活性物質、水溶性(メタ)アクリルポリマー、水、界面活性剤及びポリ(アクリル酸メチル/ポリアクリル酸2-エチルヘキシル)を十分に混合し、膏体液を調製する。得られた膏体液を剥離ライナー上に均一に展延し、その上に基布を積層して、パップ剤を得る。なお、パップ剤を製造するにあたり、膏体液を基布に展延した後、剥離ライナーを積層して製造してもよい。」 (摘記3h) 「[0055] (パップ剤の調製) 表1の記載の組成にしたがい、各成分を十分に混合し、膏体液を調製した。得られた膏体液を剥離ライナー上に均一に展延し、その上に基布を積層して、剥離ライナーを剥離することにより、実施例1、2及び比較例1~3のパップ剤をそれぞれ得た。なお、ポリ(アクリル酸メチル/ポリアクリル酸2-エチルヘキシル)として、ニカゾールTS-620(商品名、日本カーバイド工業株式会社製)を用いた。 [0056] [図:0001435601000001.jpg] 」 (2)引用文献3に記載された発明 摘記3hの実施例1には、表1の記載の組成にしたがい、各成分を十分に混合し、膏体液を調製したこと、得られた膏体液を剥離ライナー上に均一に展延し、その上に基布を積層して、剥離ライナーを剥離することにより、実施例1のパップ剤を得たことが記載されている。 そうすると、引用文献3には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 「下記表の実施例1の組成を有する膏体液を、剥離ライナーに均一に展延し、その上に基布を積層して、剥離ライナーを剥離した、パップ剤。 [図:0001435601000002.jpg] 」 2 引用文献4の記載事項 引用文献4には、以下の事項が記載されている。 「 [図:0001435601000003.jpg] 」 3 引用文献5の記載事項 引用文献5には、以下の事項が記載されている。 「 [図:0001435601000004.jpg] [図:0001435601000005.jpg] 」 4 引用文献6の記載事項 引用文献6には、以下の事項が記載されている。 「 [図:0001435601000006.jpg] 」 5 参考文献Aの記載事項 本願出願日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった本願出願日当時の技術常識を示す参考文献Aには、以下の記載がある。下線は当審合議体が付した。 「【0058】 (実施例1~13、比較例2,4~6) 粘着剤溶液として、アクリル酸2-エチルヘキシル・メタクリル酸2-エチルヘキシル・メタクリル酸n-ドデシル共重合体を酢酸エチル中に溶解してなる粘着剤溶液A(積水化学工業社製 医薬品添加物 1998年収載、アクリル酸2-エチルヘキシル・メタクリル酸2-エチルヘキシル・メタクリル酸n-ドデシル共重合体(アクリル酸2-エチルヘキシル成分:9重量%、メタクリル酸2-エチルヘキシル成分:78重量%、メタクリル酸n-ドデシル成分:13重量%)40重量%酢酸エチル溶液)と、アクリル酸メチル・アクリル酸2-エチルヘキシル共重合体エマルジョンからなる粘着剤溶液B(日本カーバイド工業社製 商品名「ニカゾールTS-620」、アクリル酸メチル・アクリル酸2-エチルヘキシル共重合体:60重量%水溶液)と、アクリル酸2-エチルヘキシル・ビニルピロリドン共重合体を酢酸エチル中に溶解してなる粘着剤溶液C(積水化学工業社製 医薬品添加物規格収載、35重量%酢酸エチル溶液)とを用意した。」 6 参考文献Bの記載事項 本願出願日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった本願出願日当時の周知技術を示す参考文献B(国際公開第2016/136556号)には、以下の記載がある。下線は当審合議体が付した。 「[0022] 基布が、編布又は不織布である場合、水を含有する膏体を織布に展延すると織布の網目を通して、膏体が基布の裏側に染み出してくる虞があるため、目付を80~150g/m2とすることが好ましく、95~125g/m2とすることがより好ましい。目付をこのような範囲することにより、膏体が基布の隙間を通して基布の裏側に染み出すことなく展延できる傾向があり、かつ基布と膏体の間の投錨性を維持することができる。」 第5 本願発明と引用発明の対比 引用発明の「ポリアクリル酸部分中和物」及び「ポリアクリル酸」は、本願発明の「アクリル系ポリマーは、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリアクリル酸部分中和物およびポリアクリル酸から選択される1種又は2種以上」に相当する。 本願明細書【0008】には、水溶性ポリマーとして、ゼラチン、ポリアクリル酸部分中和物、ポリアクリル酸、ポリビニルアルコールが記載されているから、引用発明における「ゼラチン」、「ポリアクリル酸部分中和物」、「ポリアクリル酸」及び「ポリビニルアルコール」は、本願発明における「アクリル系ポリマーを含む水溶性ポリマー」に相当し、引用発明のパップ剤の膏体に合計で11.5重量%(2.5+3+3.5+2.5)含まれる。 本願明細書【0008】には、多価アルコールとして、「D-ソルビトール液」、「グリセリン」が記載されているから、引用発明における「D-ソルビトール」、「グリセリン」は、本願発明における「多価アルコール」に相当し、引用発明のパップ剤の膏体に合計で30重量%(7+23)含まれる。 引用発明の「23重量%」のグリセリンは、本願発明における「10~40重量%」のグリセリンに相当する。 引用文献3の摘記3fの[0032]には、「ポリ(アクリル酸メチル/アクリル酸2-エチルヘキシル)エマルジョンとしては・・・媒体の沸点以上の加熱(例えば、105℃で3時間)による蒸発残留物(不揮発分)が57~61%であることが好ましい。このようなエマルジョンとしては、ニカゾールTS-620(商品名、日本カーバイド工業株式会社製)が挙げられる。」ことが記載されている。また、参考文献Aには、「「ニカゾールTS-620」、アクリル酸メチル・アクリル酸2-エチルヘキシル共重合体:60重量%水溶液」と記載されている。引用発明のニカゾールTS-620は、固形分約60重量%の水性エマルジョンであるとして計算すると、ニカゾールTS-620の8.35重量%は、3.34重量%の水を含むので、精製水44.08重量%と合わせて、引用発明のパップ剤の含水率は、約47.42重量%(44.08+3.34)となる。 引用発明の「パップ剤」は、膏体に精製水を含むから、本願発明の膏体に水を含む「水性貼付剤」に相当する。 したがって、本願発明と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。 <一致点> 「膏体成分として、アクリル系ポリマーを含む水溶性ポリマーを10~20重量%および多価アルコールを20~50重量%含有し、且つ、多価アルコールの一種として少なくともグリセリンを10~40重量%および架橋剤を含有する膏体を塗布してなる、水性貼付剤であって、前記アクリル系ポリマーは、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリアクリル酸部分中和物およびポリアクリル酸から選択される1種又は2種以上である水性貼付剤。」 <相違点1> 本願発明においては、膏体の「含水率が25~45重量%である低含水量」であることが特定されているのに対し、引用発明では、約47.42重量%である点。 <相違点2> 本願発明においては、「支持体」が「厚み0.4~0.7mm及び目付80~110g/m2」であることが特定されているのに対し、引用発明では、そのような特定がない点。 <相違点3> 本願発明においては、膏体を「塗工量として300~600g/m2の範囲」で支持体に塗布することが特定されているのに対し,引用発明では、塗工量は特定されておらず、また、膏体液を剥離ライナー上に展延し、その上に基布を積層している点。 <相違点4> 本願発明においては、水性貼付剤が、「日本薬局方「一般試験 6.12 粘着力試験法」の「3.2 傾斜式ボールタック試験法」による粘着力としてボールナンバー(No.)10以上の粘着力を有する」ことが特定されているのに対し、引用発明では、そのような特定がない点。 第6 判断 1 相違点について 上記相違点について検討する。 (1)相違点1について 引用文献3の摘記3fには、「水の含有量は、膏体層の質量を基準として、10~90質量%であることが好ましく、15~88質量%であることがより好ましく、18~85質量%であることがさらに好ましい。」ことが記載されているから、引用発明における含水量を、上記記載の範囲内である25~45%程度に調整することは、当業者が容易になし得たことである (2)相違点2について 引用文献3の摘記3cの[0016]には、「基布が不織布である場合、・・・好適な基布の目付は、例えば、80~120g/m2であり、90~110g/m2であることが好ましい。好適な基布の厚みは、例えば、0.5~2mmである。」ことが記載されている。また、摘記3cの[0019]には、「水を含有する膏体を織布に展延すると織布の網目を通して、水が染み出してくる虞があるが、ポリエチレンテレフタレート織布の目付けを80~150g/m2とすることにより膏体に含有される水が確実に織布の網目を通して染み出すことなく展延できる傾向があり、かつ織布と膏体の間の投錨性を維持することができる。」ことが記載されている。 一方、膏体に使用される不織布においても、染み出しを防止することは周知の課題であるから(要すれば、参考文献Bの摘記B1参照)、引用発明における基布の目付及び厚みを、上記の基布の目付と厚みの範囲内の数値である、「80~110g/m2」、「0.5~0.7mm」程度とし、染み出しを防止することは、当業者が容易に想到し得たことである。 (3)相違点3について 引用文献3の摘記3gの[0038]には、「膏体層の質量は・・・好ましくは、400~650g/m2とすることにより、フィット感良く、より長期間の付着性を向上することができる。膏体層の質量が上記範囲であれば、パップ剤全体の厚みを小さくすることができ、皮膚に追従しやすく、さらに、貼付した際に周縁部との段差が小さくなるため、剥離しにくい傾向にある。」と記載されている。そうすると、引用発明において、フィット感や付着性を向上させるために、膏体の塗工量を、引用文献3に記載の数値の範囲内である400~600g/m2とすることは当業者が容易に想到し得たことである。 また、引用発明においては、膏体液を剥離ライナー上に展延し、その上に基布を積層しているものの、引用文献3には、「水を含有する膏体を織布に展延する」([0019])こと、「膏体液を基布に展延した後、剥離ライナーを積層して製造してもよい」([0050])ことも記載されているから、まず、引用発明の「基布」は本願発明の「支持体」に相当し、そして、引用発明において、膏体液を基布に直接塗布することも、当業者が適宜なし得たことといえる。 (4)相違点4について 引用文献4の医薬品製造販売指針には、貼付剤の粘着力試験において、「通常No.4以上の重いボールが停止した場合に粘着力が良好であるといわれている」こと、ボールNo.1は、直径3.2mmのボール、ボールNo.4は、直径7.9mmのボール、ボールNo.9は、15.9mmのボールであることが記載されている。 一方、引用文献5の日本薬局方には、傾斜式ボールタック試験法としてボールNo.4は、直径3.2mmのボール、ボールNo.10は、直径7.9mmのボール、ボールNo.20は、直径15.9mmのボールであることが記載されている。 そして、引用文献6は日本薬局方に関する質疑応答集であって、「Q10 粘着力試験法の傾斜式ボールタック試験法について、従来、医薬品製造販売指針において示されていたボールNo.1~9(直径3.2mm~15.9mm)は、本試験法の直径(mm)を参考にボールNo.を読み替えることで良いか。」に対し「(答)よい。」と記載されていることを考慮すると、医薬品製造販売指針(引用文献4)のボールNo.1、4、9(引用文献5)は、それぞれ日本薬局方のボールNo.4、10、20に相当する。 そうすると、日本薬局方における傾斜式ボールタック試験法のボールNo.10の粘着力は、医薬品製造販売指針(引用文献4)に記載された貼付剤における良好な粘着力とされる、No.4以上の重いボールが停止する粘着力に相当し、貼付剤において一般に要求される粘着力であるといえる。 したがって、引用発明において、一般に要求される粘着力である日本薬局方の傾斜式ボールタック試験法においてボールNo.10以上の粘着力とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。 2 本願発明の効果について (1)本願明細書には、本願発明の水性貼付剤に含まれる実施例1~6の水性貼付剤は、支持体側への膏体の裏抜けが無く、膏体の粘着力が良好であった一方、(a)膏体の水分量が59.59重量%、多価アルコールが17重量%であり、本願発明の範囲外であるが、その他の条件は一致する比較例1の水性貼付剤、(b)水溶性ポリマーが8.5重量%であり、本願発明の範囲外であるが、その他の条件は一致する比較例2の水性貼付剤、(c)濃グリセリンが5重量%であり、本願発明の範囲外であるが、その他の条件は一致する比較例3の水性貼付剤は、すべて支持体側への膏体の裏抜けが有り、膏体の粘着力が低いものであったことが記載されている。 (2)しかしながら、引用発明の水性貼付剤における、水溶性ポリマー、多価アルコール、グリセリンの含有量は、本願発明と同じであるから、これらの含有量が異なる水性貼付剤(比較例1~3)と比較し、本願発明が優れることが示されたからといって、本願発明の効果が引用発明に比し、優れているということはできない。 (3)また、引用発明の水性貼付剤における含水率は約47.42重量%であって、本願発明の含水率の上限である45重量%とは、わずかに異なるのみであり、含水率以外の組成は、本願発明の範囲内である。そして、本願明細書には、上述のとおり、膏体の水分量が59.59重量%であり、多価アルコールが17重量%の比較例1の水性貼付剤は、支持体側への膏体の裏抜けが有り、膏体の粘着力が低いものであったことから、比較例1の水性貼付剤よりも本願発明の水性貼付剤の方が優れることが記載されているが、引用発明のように含水率が約47.42重量%であり、多価アルコールが本願発明の範囲内である30重量%であった場合の裏抜けや粘着力が記載されているわけではないから、本願発明の効果が引用発明に比し、当業者の予測を超えて優れているとはいえない。 (4)さらに、本願明細書には、本願発明の水性貼付剤に含まれる実施例1の水性貼付剤は、膏体の水分量が59.59重量%であり、多価アルコールが17重量%である比較例1の水性貼付剤に比べ、in vitro皮膚透過性に優れることが記載されているが、引用発明と比較したin vitro皮膚透過性は記載されていないので、この点についても、本願発明の効果が引用発明に比し、当業者の予測を超えて優れているとはいえない。 (5)以上のとおり、本願発明の効果が当業者の予測を超えて優れているとはいえない。 3 審判請求人の主張について 審判請求人は、令和6年9月19日提出の意見書において、以下の(1)~(5)の趣旨の主張をしているので、順次検討する。 (1) 「発明の解決すべき課題」は、本願発明を想到するうえで重要な事項であり、引用発明との間の「発明が解決すべき課題」の相違は、本願発明の容易想到性(進歩性)の判断において考慮しなければならない事項であるにもかかわらず、合議体の「・・・課題が違うという点は、引用発明及び引用文献3~6の記載に基づき本願発明が容易になし得たものであるという上述の判断に関係するものではない。」とする判断は誤りである。 以下、上記主張(1)について検討する。 「発明の解決すべき課題」の共通性は、進歩性の論理付けにおいて、進歩性が否定される方向に働く要素の一つではあるが、課題が異なるからといって、必ずしも進歩性が肯定されるものではない。進歩性の判断においては、技術分野の関連性、作用、機能の共通性、引用発明の内容中の示唆など、他の要素も考慮される。これらの様々な要素を検討した結果、上記2に説示したとおりの判断となったものである。 なお、本願発明の上記課題に関係する「膏体の支持体からの裏抜けがない」及び「使用時の粘着力が良好に維持される」という観点については、引用文献3の[0019]、[0031]、[0037]、[0038]等の記載を考慮すれば、引用発明の開発に当たっても当然に考慮されている観点であるといえる。 (2) 引用文献3には、そこに記載される実施例で調製されたパップ剤における基布の厚み及び目付、並びに膏体層の塗工量は、具体的なものが一切記載されていない。 したがって、引用文献3の摘記事項は、実施例に何ら明示されていないパップ剤の具体的調製における基布の厚み及び目付の許容範囲を例示するものでしかなく、その点からみても、本願発明を導き出す記載、すなわち動機付けとなるものではないこと明白である。 以下、上記主張(2)について検討する。 上記1(2)、(3)に説示したように、引用文献3の実施例の一つである引用発明を具体化するに当たって、摘記3c、3gに記載された基布の目付や厚み、膏体層の塗工量の好ましい範囲の範囲内の数値を採用することは、当業者が容易になし得たことである。 (3) 本願発明の水性貼付剤における膏体中の水分含量は、本願明細書にも記載するように、「膏体成分として水溶性ポリマーを10~20重量%および多価アルコールを20~50重量%を含有し、且つ、多価アルコールの一種として少なくともグリセリンを10~40重量%」含む点に一つの特徴を有し、そのうえ、膏体の含水率を25~45重量%である低含水量の膏体とする点に更なる特徴点を有するものであって、これらが相まって、目的とする水性貼付剤の粘着性、保型性、耐熱性等が維持されるとするものである。 したがって、本願発明における水性ポリマー、多価アルコール、さらには多価アルコールとしてのグリセリンを組み合わせ、それぞれの配合量を特定した膏体の含水率を規定するものであり、その点は、引用文献3の摘記3fの記載があるからといって、容易に想到し得るものではないことは明白である。 以下、上記主張(3)について検討する。 貼付剤の分野において、目的とする水性貼付剤の粘着性、保型性、耐熱性を維持しながら、貼付剤の膏体成分を適宜調整することは、当業者が通常に行うことである。そうすると、引用発明において、引用文献3の摘記3fの記載に基づき、含水率を調節しながら、目的とする粘着性、保型性、耐熱性を有する貼付剤を製造することは、容易になし得るものである。 そして、その結果、粘着性、保型性、耐熱性が維持されたからといって、本願発明の効果が本願発明の全ての範囲にわたり優れているとはいえない。 (4) 本願明細書の段落[0042]の[表5]及び[0043]の[表6]の記載を見れば、本願発明の膏体の含水率が低い貼付剤(実施例1~6の貼付剤)は、膏体の裏抜けがなく、保型性が良好なものであり、含水率が高い貼付剤(比較例1の貼付剤)は、膏体の裏抜けが認められ保型性において「ダレ」が認められていることが判明する。 したがって、合議体が要求する「引用発明よりも含水率を低くしたことにより、裏抜けの発生が抑制されるなどの効果が示されているわけでもないから、本願発明の効果が、引用発明に比し、当業者の予測を超えて優れているとはいえない。」との指摘は、たとえ、水分含量について、合議体が相違点4として挙げた引用発明の水分含量が「47.42重量%」との対比ではないとしても、その効果が示されていないと認定することはできないはずである。 以下、上記主張(4)について検討する。 上記に示した当審の判断は、比較例1の貼付剤よりも実施例1~6の貼付剤が、膏体の裏抜けがなく、保型性が良好であるという効果が本願明細書に示されていないと判断しているわけでない。 本願発明において進歩性が認められるためには、引用発明において、相違点1及び2に係る本願発明の構成を備えることを、当業者が容易に想到することができたといえる以上、本願発明の効果が、引用発明に比べ当業者の予測を超えた顕著な効果を有することが必要である。 しかし、本願発明と引用発明とは、含水率が「25~45重量%」であるか、「約47.42重量%」であるかという、その差が一番小さい場合には約2.42重量%という、非常に類似した組成を有することから、本願発明の効果は、引用発明と比べて顕著な効果を奏するものではない、と判断したものである。 (5) 令和6年9月24日提出の手続補足書で提出した「比較実験報告書」に記載するとおり、引用文献3に記載された発明と本願発明との間での比較実験を行ったところ、引用文献3に記載の実施例1に記載のパップ剤(引用発明)では支持体への膏体の裏抜けが観察され、粘着力も低いものであった。また、有効成分としてケトプロフェンを配合したパップ剤ではケトプロフェンの難溶性のため、膏体中に結晶の析出が認められ、それに伴い薬物の皮膚透過性も著しく低いものであった。これに対して本願発明の水性貼付剤では、支持体からの膏体の裏抜けは観察されておらず、粘着性も優れており、膏体中にケトプロフェンの結晶化は観察されず、したがって、薬物の皮膚透過性も良好なものであり、引用文献3に記載の発明に比較し、その優れた効果を発揮するものであった。 以下、主張(5)について検討する。 上記比較実験報告書の表2に記載されているとおり、引用文献1の実施例1のパップ剤において、支持体(織布)の目付を100g/m2、塗工量を500g/m2とした場合、停止したスチールボールNo.が13以上であり、支持体への膏体の裏抜けのない貼付剤が得られている。そうすると、引用文献3に記載の実施例1に記載のパップ剤(引用発明)では支持体への膏体の裏抜けが観察され、粘着力も低いものであったとはいえない。 また、上記比較実験報告書において比較されたものは、引用発明の有効成分をケトプロフェンに代えたもの(実験用製剤(1)~(5))と、本願明細書の実施例1(ケトプロフェン含有)においてポリアクリル酸中和物とゼラチンの含有量を変更したもの(比較用製剤KP2%)とであって、これらは、本願発明において特定されていない複数の成分の有無や含有量が異なるものである。 (上記実験用製剤の「(1)」、「(5)」は、丸囲いの1、5を意味する。) そうすると、上記比較された効果の差(ケトプロフェンの結晶析出と皮膚透過性)を、有効成分の種類も含め実施例1以外の多様な組成が包含される本願発明が、その全体にわたって奏する効果を裏付けるものであると理解することはできない。 以上によれば、請求人の主張はいずれも採用できない。 4 小括 以上のとおりであるから、本願発明は、引用発明(引用文献3に記載された発明)及び引用文献3~6に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 第7 むすび 以上のとおり、本願請求項1に係る発明は、引用文献3に記載された発明及び引用文献3~6に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく,本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。

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2024-008237

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