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特許拒絶査定不服審判

2024-005966

コンベヤの温度測定システム、コンベヤの温度測定のための光ファイバの敷設方法、およびこれらに使用されるジグ

審判番号
2024-005966
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2020-107559
請求日
2024年04月09日
審決日
2025年11月12日
公報発行日
2026年01月30日
結論
請求不成立
当事者
  • 【請求人】王子ホールディングス株式会社
  • 【請求人代理人】弁理士法人谷・阿部特許事務所
審判長/審判官
  • 審判長 濱野 隆
  • 審判官 井海田 隆
  • 審判官 喜々津 徳胤
分類
P18 .121-Z (G01K) / P18 .575-Z (G01K)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第17条の2第5項、特許法第29条、特許法第17条の2第6項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特願2020-107559「コンベヤの温度測定システム、コンベヤの温度測定のための光ファイバの敷設方法、およびこれらに使用されるジグ」拒絶査定不服審判事件〔令和 3年 2月22日出願公開、特開2021- 25997〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論 本件審判の請求は、成り立たない。

理由

理 由 第1 手続の経緯 本願は、令和2年6月23日(優先権主張 令和元年8月6日)の特許出願であって、その手続の経緯の概略は、次のとおりである。 令和5年 3月 2日付け:拒絶理由通知書 同年 5月 1日 :意見書、手続補正書の提出 同年 7月20日付け:拒絶理由通知書(最後) 同年11月15日 :意見書、手続補正書の提出 同年12月21日付け:補正の却下の決定 同日付け:拒絶査定(以下「原査定」という。) (令和6年 1月 9日 :原査定の謄本の送達) 同年 4月 9日 :審判請求書、手続補正書の提出 同年 5月23日 :手続補正書(方式)(請求の理由の補正) 以下、2019年(令和元年)8月6日を「優先日」という。 第2 令和6年4月9日にされた手続補正についての補正の却下の決定 [補正の却下の決定の結論] 令和6年4月9日にされた手続補正を却下する。 [補正の却下の決定の理由] 1 補正の内容 令和6年4月9日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)は、特許請求の範囲の補正をするものであり、本件補正により、次の(1)に示す本件補正前(令和5年5月1日にされた手続補正後のものをいう。以下同じ。)の特許請求の範囲の請求項1の記載は、後記(2)に示す本件補正後の特許請求の範囲の請求項1の記載に補正された。下線は補正箇所を示す。 (1) 本件補正前 「コンベヤに沿って敷設され、温度測定装置から入射する光パルスを伝搬させるとともに、内部に生じたラマン散乱光を温度測定装置へ伝搬させる光ファイバと、 前記コンベヤの複数の温度測定点にそれぞれ配置されて前記光ファイバが巻回される複数のジグと、 を備え、 前記光ファイバは前記複数のジグを順次につないでいる連続体であり、 前記ジグへの前記光ファイバの巻回長さは、前記温度測定装置のサンプリング分解能以上であり、 前記コンベアは、被搬送物品を搬送する搬送体の搬送路およびリターン路を備えており、 前記ジグは、前記コンベアの前記搬送路および前記リターン路のそれぞれの近傍毎に配置されている、 ことを特徴とするコンベヤの温度測定システム。」 (2) 本件補正後 「コンベヤに沿って敷設され、温度測定装置から入射する光パルスを伝搬させるとともに、内部に生じたラマン散乱光を温度測定装置へ伝搬させる光ファイバと、 前記コンベヤの複数の温度測定点にそれぞれ配置されて前記光ファイバが巻回される複数のジグと、 を備え、 前記光ファイバは前記複数のジグを順次につないでいる連続体であり、 前記ジグへの前記光ファイバの巻回長さは、前記温度測定装置のサンプリング分解能以上であり、 前記コンベヤは、被搬送物品を搬送する搬送体の搬送路およびリターン路を備えて、前記ジグは、前記コンベヤの前記搬送路および前記リターン路のそれぞれの近傍毎に配置されており、 前記光ファイバは、ループ状にされて両端が温度測定装置に接続され、当該両端側から光パルスを入射される、 ことを特徴とするコンベヤの温度測定システム。」 2 補正の目的 (1) 補正事項 本件補正のうち請求項1についてする補正は、次のア、イに示す補正事項1、2からなる。 ア 補正事項1 本件補正前の請求項1に記載された「コンベア」について、「コンベヤ」に変更する補正。 イ 補正事項2 本件補正前の請求項1に記載された「光ファイバ」について、「ループ状にされて両端が温度測定装置に接続され、当該両端側から光パルスを入射される」ものに限定する補正。 (2) 補正の目的について ア 補正事項1の補正の目的 補正事項1に係る「コンベヤ」と「コンベア」は、いずれも同様の技術の内容を示すから、「コンベア」が「コンベヤ」の誤記であるとまではいえないものの、本件補正前は、「コンベヤ」と「コンベア」について、同一の請求項内において両者が混在して含まれることにより、両者が異なるものであるのか否か、関係が明りょうでなくなっているところ、補正事項1は、表記を統一することによって両者が同じものであることを明確にすることを目的とするものと認められるから、特許法17条の2第5項4号に掲げる「明りょうでない記載の釈明」を目的とする補正に該当する。 イ 補正事項2の補正の目的 補正事項2は、本件補正前の請求項1に記載された「光ファイバ」について、「ループ状にされて両端が温度測定装置に接続され、当該両端側から光パルスを入射される」ものに限定するものであるところ、本件補正前の請求項1に記載された発明と、本件補正後の請求項1に記載される発明は、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、補正事項2は、特許法17条の2第5項2号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とする補正に該当する。 3 独立特許要件の判断 本件補正は、前記2のとおり、特許法17条の2第5項2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とする補正事項を含むから、本件補正後の請求項1に記載されている事項により特定される発明(以下「本件補正発明」という。)が、同法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に適合するか、すなわち、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるかについて、以下検討する。 (1) 本件補正発明 ア 本件補正発明の認定と分説 本件補正発明は、前記1(2)に摘記した本件補正後の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものと認める。 ここで、検討の便宜上、本件補正発明の構成を次のとおり構成Xと構成Aから構成Cまでに分説する。また、参考図として、本願の【図1】、【図2】に部材名を記入したものを掲載する。 <本件補正発明の分説> A コンベヤに沿って敷設され、温度測定装置から入射する光パルスを伝搬させるとともに、内部に生じたラマン散乱光を温度測定装置へ伝搬させる光ファイバと、 B 前記コンベヤの複数の温度測定点にそれぞれ配置されて前記光ファイバが巻回される複数のジグと、 を備え、 A1 前記光ファイバは前記複数のジグを順次につないでいる連続体であり、 A2 前記ジグへの前記光ファイバの巻回長さは、前記温度測定装置のサンプリング分解能以上であり、 C 前記コンベヤは、被搬送物品を搬送する搬送体の搬送路およびリターン路を備えて、 B1 前記ジグは、前記コンベヤの前記搬送路および前記リターン路のそれぞれの近傍毎に配置されており、 A3 前記光ファイバは、ループ状にされて両端が温度測定装置に接続され、当該両端側から光パルスを入射される、 ことを特徴とする X コンベヤの温度測定システム。 <参考図> 【図1】 [図:0001430597000001.jpg] 【図2】 [図:0001430597000002.jpg] イ 課題・作用効果等に関連する明細書の発明の詳細な説明の記載 本願明細書の発明の詳細な説明の記載のうち、発明が解決しようとする課題及び作用効果等に関連する記載を抜粋すると、次の記載がある。 「【技術分野】 【0001】 本発明は、コンベヤの温度測定システム、コンベヤの温度測定のための光ファイバの敷設方法、およびこれらに使用されるジグに関するものである。 【背景技術】 【0002】 産業機械であるコンベヤは、原材料、製品および廃棄物などを連続的に搬送するために広く用いられている。しかし可燃性の被搬送物同士の摩擦等による自然発熱などにより温度が上昇して火災を起こす可能性がある場合には、温度上昇を監視する手段を配設することが必須となる。 【0003】 しかしコンベヤには、様々な形態および規模のものが存在する。例えば、製紙工場では、原料となる木材チップを搬送するためにベルトコンベヤが用いられているが、搬送路およびリターン路の総計が数百m~数kmにも及ぶものがある。このような規模のコンベヤに対する温度検出を行うのに好適な構成としては、光パルスを出射する温度測定装置と、コンベヤラインに沿って敷設され、光パルスが入射されることで内部に生じたラマン散乱光を温度測定装置へ伝搬させる光ファイバと、を備えることで、光ファイバ全長に亘る長距離の連続的な温度分布を測定するシステムが挙げられる。 …(中略)… 【発明が解決しようとする課題】 【0006】 しかしながら、かかるシステムでは、光コネクタ接続部位での接続損失(光の減衰)が生じることは避けられない。そして、コンベヤの規模が大きく、光ファイバセンサ装置の数が増すほど減衰が大きくなるので、精度の高い温度測定を行い得なくなることが考えられる。また、特許文献1は、精度の高い温度測定を可能とするための、巻回体を形成している光ファイバの長さ(巻回長さ)について明確な指針も与えていない。 【0007】 また、小規模なコンベヤでも光ファイバを用いて温度分布を測定可能であるのが便利であり、そのような温度分布測定システムを提案されるのが望まれている。 【0008】 よって本発明は、規模の大小に関わらずにコンベヤの高精度な温度測定の実現することを目的とする。」 (2) 各引用文献の記載事項及び引用発明等の認定 ア 引用文献1の記載事項及び引用発明の認定 (ア) 引用文献1に記載された事項 原査定の拒絶の理由において引用された、本願の優先日前に発行された文献である特開平4-20823号公報(以下「引用文献1」という。)には、次の記載がある(なお、当合議体により、後記(イ)の引用発明の認定に直接用いる記載に下線を付した。)。 a 特許請求の範囲 「2.特許請求の範囲 (1) 複数の軸部毎に配設された温度に感応する光ファイバセンサが直列状に接続されてなる光ファイバを敷設し、上記光ファイバへその一端から温度測定用のパルス光を入射するようにし、上記温度測定用パルス光により各発熱を伴う軸部で発生した散乱光を上記一端にて受光するようにし、上記散乱光の遅延時間から発熱点の位置を検出し、該散乱光中に含まれるラマン散乱光から温度を検出するように構成したことを特徴とする軸部発熱温度計測装置。 (2) 光ファイバセンサは、光ファイバが熱伝導率の大なる材質の円筒体に複数回巻回され、該円筒体が上記複数の各軸部に着脱自在に取り付けられるように構成されていることを特徴とする請求項(1)記載の軸部発熱温度計測装置。」 b 第2頁右上欄第10行~同頁左下欄第20行 「 〔発明が解決しようとする課題〕 ところで、実公昭61-22895号公報により紹介された …(中略)… 本発明は、このような問題点を解決すべく為されたもので、設備費が低額で、運動部分が全くなく、しかもきわめて短時間に数百、数千という多くの軸部の発熱温度を検出することのできる新規な軸部発熱温度計測装置を提供することを目的とする。 〔課題を解決するための手段〕 請求項(1)に記載の軸部発熱温度計測装置は、複数の軸部毎に配設された温度に感応する光ファイバセンサが直列状に接続されてなる光ファイバを敷設し、上記光ファイバへその一端から温度測定用のパルス光を入射するようにし、上記温度測定用パルス光により各発熱を伴う軸部で発生した散乱光を上記一端にて受光するようにし、上記散乱光の遅延時間から発熱点の位置を検出し、該散乱光中に含まれるラマン散乱光から温度を検出するように構成したことを特徴とするも(合議体注:「するもの」の誤記である)である。」 c 第3頁右上欄第20行~同頁右下欄第18行、第1図 「 先ず、第1図に従って回路構成を説明する。 図面において、1A、1B、1Cは光ファイバ(光ファイバセンサ)であり、1Aはベルトコンベアのキャリアローラのうち第4図における左側の部分に配置されたもの(同図ではAという符号が与えられている)の発熱を検知し、1Bは同じく中央部の部分に配置されたもの(同図ではBという符号が与えられている)の発熱を検知し、1Cは同じく右側の部分に配置されたもの(同図ではCという符号が与えられている)の発熱を検知するものである。 2A、2B、2Cは光ファイバ1A、1B、1Cへ入射する発熱温度測定用のパルス光(波長910nm)を発生するレーザダイオード、3はパルス駆動回路4が発生したパルス電圧をレーザダイオード2A、2B、2Cに切換えて与えるデマルチプレクサである。 5A、5B、5Cはフィルタで、光ファイバ1A、1B、1Cの光入射端へ戻ってきた後方散乱光の2成分の一つであるアンチストーク光(合議体注:アンチストークス光に同じ、以下同様)(波長約870nm)を通過させる特性のものが用いられる。 6A、6B、6Cは同じく後方散乱光の2成分の残りの一つであるストークス光(波長約950nm)を通過させる特性のものが用いられる。尚、 該ストークス光及び上記アンチストークス光については後で説明する。 7A、7B、7Cはフィルタ5A、5B、5C及び6A、6B、6Cによって後方散乱光から分離されたアンチストーク光及びストーク光(合議体注:ストークス光に同じ、以下同様)を光電変換するフォトダイオード、8は各フォトダイオード7A、7B、7C(以下これらを総称して「フォトダイオード7」ということがある。)の出力信号を受けて時分割多重伝送するマルチプレクサ、9は該マルチプレクサ8を通ったフォトダイオード7の出力信号を増幅する増幅回路、10は該増幅回路9の出力信号を処理して各軸部発熱点(測定点)における発熱温度とその位置を測定する。」 「 [図:0001430597000003.jpg] 」 d 第4頁左下欄第7行~第18行 「そこで、フィルタ5A、5B、5Cを利用してアンチストークス光を分光し、フィルタ6A、6B、6Cを利用してストークス光を分光し、その光をフォトダイオード7A、7B、7Cで光電変換し、増幅回路9で増幅して光の強度を測定する。そして、信号処理装置10においては、その光強度を示す信号を所定のサンプリング間隔ごとにディジタル信号に変換し、それを各軸部の発熱点と対応したメモリエリアに記憶する。そして、各発熱点毎にアンチストークス光とストークス光との強度比を求めて温度を算出し、温度分布情報を得る信号処理を行う。」 e 第4頁左下欄第19行~第5頁左上欄第11行、第3図、第4図 「 次に、第3図及び第4図に従ってベルトコンベアの構造について説明する。 同図において、13はベルトで、キャリアローラ14A、14B、14C、14A、14B、14C、…によって搬送され、リターンローラ14D,14Eによって戻される。キャリアローラは、ベルト13の幅方向に並べられた3つのキャリアローラ14A、14B、14Cで一組とされ、組のキャリアローラ14A、14B、14Cが一定間隔で並んでいる。リターンローラは、2つのキャリアローラ14D,14Eで一組とされる。 尚、リターンローラについては、発熱温度計測をしない。 因に、この実施例においては、ベルトコンベアのベルト長は、例えば約1kmであり、キャリアローラ14A、14B、14Cの組み合せが555組あり、1.8m間隔で配置されてある。そして、各ローラ14の軸温は、軸[不回転軸(軸受部)]の両端に着脱自在に嵌め込んだ光ファイバセンサとしてのポイントプローブ15によって検出する。 キャリアローラ14A、14A、…について軸温を検出する光ファイバが1A、キャリアローラ14B、14B、…について軸温を検出する光ファイバが1B、キャリアローラ14C、14C、…について軸温を検出する光ファイバが1Cである。 各光ファイバ1A、1B、1Cの途中が巻回されて各キャリアローラ14A、14B、14Cの軸に着脱自在に嵌め込み得るようにされたものが、光ファイバセンサとしてのポイントプローブ15、15、…である。このポイントプローブ15は、2mの光ファイバを直径40mmのコイル状に巻いたものからなるが、構造は後で第6図に従って説明する。」 「 [図:0001430597000004.jpg] [図:0001430597000005.jpg] 」 f 第5頁左上欄第12行~同頁右上欄第5行、第5図 「 第5図は、光ファイバ1の温度測定点毎に設けられたポイントプローブ15、15、…と光ファイバ1の接続点を説明するための説明図である。 同図において、各光ファイバ1A、1B、1Cはそれぞれ当初は複数本の光ファイバに分岐されているが、ポイントプローブ15、15、…をキャリアローラ14、14、…の軸に取り付けた後、分れている光ファイバを融着接合してリードファイバを形成し、第1図に示す軸部発熱温度計測回路に組み込まれる。第5図における16は光ファイバの融着接合点を示す。そして、Nはポイントプローブ数、Mは1つの融着接合点16とその隣りの融着接合点16との間のポイントプローブ数である。」 「 [図:0001430597000006.jpg] 」 g 第5頁左下欄第2行~第11行、第6図 「 光ファイバセンサとしてのポイントプローブ15は、第6図に示すように、キャリアローラ14の回転しない支持軸17に嵌入し得る孔が中心部に穿設されたアルミニウムからなる装着部材18の円筒部19に光ファイバ1をコイル状に複数回巻回してなり、その巻回部を囲繞するようにアルミニウムからなるキャップ20を被せたものである。21、21は光ファイバ1を挿通するためキャップ20に形成した切欠である(図面には一方の切欠21のみ現われている)。」 「 [図:0001430597000007.jpg] 」 (イ) 引用発明の認定 前記(ア)に摘記した引用文献1の記載事項を総合すると、引用文献1には、実施例に係る次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。なお、認定の根拠となる記載箇所を括弧内に示した。 <引用発明> 「複数の軸部毎に配設された温度に感応する光ファイバセンサが直列状に接続されてなる光ファイバを敷設し、上記光ファイバへその一端から温度測定用のパルス光を入射するようにし、上記温度測定用パルス光により各発熱を伴う軸部で発生した散乱光を上記一端にて受光するようにし、上記散乱光の遅延時間から発熱点の位置を検出し、該散乱光中に含まれるラマン散乱光から温度を検出するように構成した軸部発熱温度計測装置であって、(摘記事項a) ベルトコンベアのキャリアローラのうち左側の部分に配置されたものの発熱を検知する光ファイバ1Aと、(摘記事項c) 同じく中央部の部分に配置されたものの発熱を検知する光ファイバ1Bと、(摘記事項c) 同じく右側の部分に配置されたものの発熱を検知する光ファイバ1Cと、(摘記事項c) 光ファイバ1A、1B、1Cへ入射する発熱温度測定用のパルス光(波長910nm)を発生するレーザダイオード2A、2B、2Cと、(摘記事項c) パルス駆動回路4が発生したパルス電圧をレーザダイオード2A、2B、2Cに切換えて与えるデマルチプレクサ3と、(摘記事項c) 光ファイバ1A、1B、1Cの光入射端へ戻ってきた後方散乱光の2成分の一つであるアンチストークス光(波長約870nm)を通過させる特性のフィルタ5A、5B、5Cと、(摘記事項c) 同じく後方散乱光の2成分の残りの一つであるストークス光(波長約950nm)を通過させる特性のフィルタ6A、6B、6Cと、(摘記事項c) フィルタ5A、5B、5C及び6A、6B、6Cによって後方散乱光から分離されたアンチストークス光及びストークス光を光電変換するフォトダイオード7A、7B、7Cと、(摘記事項c) 各フォトダイオード7A、7B、7Cの出力信号を受けて時分割多重伝送するマルチプレクサ8と、(摘記事項c) 該マルチプレクサ8を通ったフォトダイオード7の出力信号を増幅する増幅回路9と、(摘記事項c) 該増幅回路9の出力信号を処理して各軸部発熱点(測定点)における発熱温度とその位置を測定する信号処理装置10と、を備え、(摘記事項c) フィルタ5A、5B、5Cを利用してアンチストークス光を分光し、フィルタ6A、6B、6Cを利用してストークス光を分光し、その光をフォトダイオード7A、7B、7Cで光電変換し、増幅回路9で増幅して光の強度を測定し、信号処理装置10において、その光強度を示す信号を所定のサンプリング間隔ごとにディジタル信号に変換し、それを各軸部の発熱点と対応したメモリエリアに記憶し、各発熱点毎にアンチストークス光とストークス光との強度比を求めて温度を算出し、温度分布情報を得る信号処理を行うものであり、(摘記事項d) キャリアローラは、ベルト13の幅方向に並べられた3つのキャリアローラ14A、14B、14Cで一組とされ、組のキャリアローラ14A、14B、14Cが一定間隔で並んでおり、(摘記事項e) リターンローラは、2つのキャリアローラ14D,14Eで一組とされ、リターンローラは、発熱温度計測をしないものであり、(摘記事項e) キャリアローラ14A、14B、14C、14A、14B、14C、…によってベルト13が搬送され、リターンローラ14D,14Eによって戻され、(摘記事項e) ベルトコンベアのベルト長は、例えば約1kmであり、キャリアローラ14A、14B、14Cの組み合せが555組あり、1.8m間隔で配置され ており、各ローラ14の軸温は、軸[不回転軸(軸受部)]の両端に着脱自在に嵌め込んだ光ファイバセンサとしてのポイントプローブ15によって検出され、(摘記事項e) キャリアローラ14A、14A、…について軸温を検出する光ファイバが1A、キャリアローラ14B、14B、…について軸温を検出する光ファイバが1B、キャリアローラ14C、14C、…について軸温を検出する光ファイバが1Cであり、(摘記事項e) 各光ファイバ1A、1B、1Cの途中が巻回されて各キャリアローラ14A、14B、14Cの軸に着脱自在に嵌め込み得るようにされたものが、光ファイバセンサとしてのポイントプローブ15、15、…であり、このポイントプローブ15は、2mの光ファイバを直径40mmのコイル状に巻いたものからなり、(摘記事項e) 各光ファイバ1A、1B、1Cはそれぞれ当初は複数本の光ファイバに分岐されているが、ポイントプローブ15、15、…をキャリアローラ14、14、…の軸に取り付けた後、分れている光ファイバを融着接合してリードファイバを形成し、軸部発熱温度計測回路に組み込まれ、(摘記事項f) 光ファイバセンサとしてのポイントプローブ15は、キャリアローラ14の回転しない支持軸17に嵌入し得る孔が中心部に穿設されたアルミニウムからなる装着部材18の円筒部19に光ファイバ1をコイル状に複数回巻回してなり、その巻回部を囲繞するようにアルミニウムからなるキャップ20を被せたものである、(摘記事項g) 軸部発熱温度計測装置。」 イ 引用文献2の記載事項及び引用文献2技術事項の認定 (ア) 引用文献2に記載された事項 原査定の拒絶の理由において引用された、本願の優先日前に発行された文献である特開平4-174331号公報(以下「引用文献2」という。)には、次の記載がある。なお、下線は当合議体が付したものであり、以下同様である。 a 第1頁左下欄第16行~第19行 「(産業上の利用分野) 本発明は、光ファイバを用いる温度分布計測システムに好適な光ファイバセンサに関するものである。」 b 第3頁左下欄第1行~第20行 「演算処理装置8では、光パルスを投射してから後方散乱光が光検出器6に入射するまでの所要時間及びラマン散乱光強度に基いて各光ファイバセンサ4-a~4-dの温度を順次演算し出力する。そして、各光ファイバセンサの温度はモニタ9に表示され、監視者はモニタに表示された温度情報に基いて各被測定領域の温度分布を監視することができる。 第2図a及びbは本発明による光ファイバセンサの一例の構成を示す線図的平面図及び断面図である。本例では、1本の被覆のない光ファイバを同心状且つ平面状に巻回して巻回部11を形成し、この巻回部を熱良導性の薄膜状ベース部材12上に固定する。そして、この上を被覆部材13により被覆する。このリング状巻回部11の内径は用いる光ファイバの曲げ限界角度により規定され、その外径は巻回すべき光ファイバ長により定まる。巻回する光ファイバ長は、計測システムの単位分解能距離以上の長さとする。すなわち、計測システムの距離分解能が7.5mの場合7.5m以上巻回する。」 (イ) 引用文献2技術事項の認定 前記(ア)の引用文献2の記載事項を総合すると、引用文献2には、次の技術事項(以下「引用文献2技術事項」という。)が記載されていると認められる。 [引用文献2技術事項] 「光ファイバを巻回して用いる温度分布計測システムに好適な光ファイバセンサにおいて、光パルスを投射してから後方散乱光が光検出器に入射するまでの所要時間及びラマン散乱光強度に基いて光ファイバセンサの温度を順次演算し出力する際に、巻回する光ファイバ長は、計測システムの単位分解能距離以上の長さとすることが好適であること。」 ウ 引用文献4の記載事項及び引用文献4技術事項の認定 (ア) 引用文献4に記載された事項 原査定の拒絶の理由において引用された、本願の優先日前に発行された文献である特開平7-296274号公報(以下「引用文献4」という。)には、次の記載がある。 a 【0001】~【0014】、【図6】 「【0001】 【産業上の利用分野】本発明は、火災検知方式に係り、さらに詳しくは、石炭などの可燃性物質を搬送する搬送路に、光ファイバからなる温度センサを設置して火災の発生又はその前兆を検知するようにした火災検知方式に関するものである。 …(中略)… 【0012】すなわち、入射光の波長λ0 と同じ波長のレイリー散乱光のほかに、入射光とガラスの熱振動との相互作用によって、入射光とは波長の異なる2つのラマン散乱光19が発生する。このラマン散乱光19は、入射光がガラスの振動にエネルギを奪われると波長の長いストークス光(λ0 +λ)となり、逆にエネルギを貰うと波長の短いアンチストークス光(λ0 -λ)になる。そして、ラマン散乱光19の強度は、ガラスの振動、つまりガラスの温度に依存するので、温度が高くなるとラマン散乱光19の強度も大きくなる。 【0013】このようにして発生したラマン散乱光の一部は、図6に示すように、後方散乱光17として再び入射端に戻ってくる。戻るまでの伝搬時間tから距離x、すなわち、入射端からA点までの距離が計測できる。つまり、光ファイバ5内において、温度が突然上昇した位置が同定され、位置検出が可能になる。したがって、1本又は複数本の光ファイバを設置して各光ファイバごとに監視できる監視単位を形成し、これらを機能的に総合した火災検知方式を構成することにより、火災の発生あるいは温度の異常上昇及びその位置を正確に検知することができる。この場合、光を用いているが、その原理は電波を用いたレーダと同じである。 【0014】そこで、入力端に戻ってきたラマン散乱光19だけを光学フィルタで分離・検出し、その強度を測定すれば、A点の温度を測定することができる。なお、本発明では、波長の異なる2つのラマン散乱光を共に用い、例えばその強度比を温度の関数として使用しているので、測定精度を向上することができる。」 「【図6】 [図:0001430597000008.jpg] 」 b 【0019】~【0020】、【図1】、【図2】 「【0019】図1は本発明実施例を模式的に示した断面図、図2は火災検知方式の概要説明図である。図において、1は搬送路、2は搬送路1の上部に設けられ、石炭が搭載されて紙面の垂直方向に移動する上部ベルトコンベア、3は上部ベルトコンベア2の下方に設けられ、上部ベルトコンベア2の逆方向に移動して上部ベルトコンベア2から落下した石炭を捕集することも可能な下部ベルトコンベア、4は搬送路1の底面である。 【0020】5a~5fは搬送路1の長さ方向に設置された温度センサとしての光ファイバで、光ファイバ5aは上部ベルトコンベア2の一方の側(左側)の近傍の固定部に設置され(LINE1)、光ファイバ5bは同じく他方の側(右側)の近傍の固定部に設置されている(LINE2)。また、光ファイバ5cは下部ベルトコンベア3の一方の側(左側)の近傍の固定部に設置され(LINE3)、光ファイバ5dは同じ他方の側(右側)の近傍の固定部に設置されている(LINE4)。さらに、光ファイバ5eは床面の一方の側(左側)の近傍に設置され(LINE5)、光ファイバ5fは同じく他方の側(右側)の近傍に設置されている(LINE6)。」 「【図1】 [図:0001430597000009.jpg] 」 「【図2】 [図:0001430597000010.jpg] 」 (イ) 引用文献4技術事項の認定 前記(ア)の引用文献4の記載事項を総合すると、引用文献4には、次の技術事項(以下「引用文献4技術事項」という。)が記載されていると認められる。 [引用文献4技術事項] 「光ファイバからなる温度センサが設置されて、温度が測定されるベルトコンベアにおいて、ベルトコンベアに石炭を搭載して搬送する搬送路たる上部ベルトコンベアと、逆方向に移動する下部ベルトコンベアが存在し、その双方に光ファイバからなる温度センサが近傍に設置されること。」 エ 引用文献10~14の記載事項及び周知技術1の認定 (ア) 引用文献10に記載された事項 当審において新たに引用する、本願の優先日前に発行された文献である再公表特許第2016/181540号(発行日:平成30年(2018年)3月1日、以下「引用文献10」という。)には、次の記載がある。 「【0010】 (実施形態) 図1(a)は、実施形態に係る温度測定装置100の全体構成を表す概略図である。図1(a)で例示するように、温度測定装置100は、測定機10、制御部20などを備える。温度測定装置100は、光ファイバ30に接続されている。測定機10は、レーザ11、ビームスプリッタ12、光スイッチ13、フィルタ14、複数の検出器15a,15bなどを備える。制御部20は、指示部21、温度測定部22、補正部23などを備える。 …(中略)… 【0012】 レーザ11は、半導体レーザなどの光源であり、指示部21の指示に従って所定の波長範囲のレーザ光を出射する。本実施形態においては、レーザ11は、所定の時間間隔で光パルス(レーザパルス)を出射する。ビームスプリッタ12は、レーザ11が出射した光パルスを光スイッチ13に入射する。光スイッチ13は、入射された光パルスの出射先を切り替えるスイッチであり、指示部21の指示に従って光ファイバ30の第1端および第2端に一定周期で交互に光パルスを入射する。 【0013】 光ファイバ30に入射した光パルスは、光ファイバ30を伝搬する。光パルスは、伝搬方向に進行する前方散乱光および帰還方向に進行する後方散乱光(戻り光)を生成しながら徐々に減衰して光ファイバ30内を伝搬する。後方散乱光は、光スイッチ13を通過してビームスプリッタ12に再度入射する。ビームスプリッタ12に入射した後方散乱光は、フィルタ14に対して出射される。フィルタ14は、WDMカプラなどであり、後方散乱光を長波長成分(後述するストークス成分)と短波長成分(後述するアンチストークス成分)とを抽出する。検出器15a,15bは、受光素子である。検出器15aは、後方散乱光の短波長成分の受光強度を電気信号に変換して温度測定部22および補正部23に送信する。検出器15bは、後方散乱光の長波長成分の受光強度を電気信号に変換して温度測定部22および補正部23に送信する。補正部23は、ストークス成分およびアンチストークス成分を補正する。温度測定部22は、ストークス成分およびアンチストークス成分を用いて温度測定を行う。」 「【図1】 [図:0001430597000011.jpg] 」 「【0019】 光スイッチ13からの光ファイバ30への入射位置が第1端または第2端で固定されていれば、上記式(1)での温度測定が可能である。本実施形態のように入射位置を一定周期で第1端と第2端とで切り替える場合には、アンチストークス光量とストークス光量とを各光ファイバ30の位置で平均化(平均値の算出)すればよい。この切替による方式は、「ループ式測定」や、「ダブルエンド測定」や、「デュアルエンド測定」などと呼ばれる。」 「【0028】 図10は、図9の両端から入射した2つの信号のストークス成分およびアンチストークス成分をそれぞれ平均化(平均値を算出)して温度を算出したものである。いわゆるダブルエンドやデュアルエンドなどと呼ばれている方式の例である。平均化により、端点の測定精度の低下は図9よりも緩和されたが、良好な側の端点には及ばない。図11は、測定精度を定量的に例示する。それぞれ温度変化のない平坦部3か所各100mの値を用いて算出した標準偏差3σの値である。平均(ループ式)は0(m)から入射した場合の値とL(m)から入射した場合の値の平均値となっていることが確認できる。」 (イ) 引用文献11に記載された事項 当審において新たに引用する、本願の優先日前に発行された文献である特開平7-272156号公報(以下「引用文献11」という。)には、次の記載がある。 「【0031】図5は本発明の火災報知システムの第2実施例を示した説明図である。この第2実施例は、図1の第1実施例でトンネル3の天井面に沿って平行に設けていた2本の第1の光ファイバーセンサ1と第2の光ファイバーセンサ2の終端をループ部45で接続して1本の光ファイバーセンサとしたことを特徴とする。それ以外の構成は図1の第1実施例と同じである。」 「【図5】 [図:0001430597000012.jpg] 」 「【0032】このように第1および第2の光ファイバーセンサ1,2を終端でループ部45で接続した場合には、例えば第2の光ファイバーセンサ2側の断線26に対し、フェイルセーフ的に動作させることができる。即ち、第2の光ファイバーセンサ2の断線26が起きた場合には、第1の光ファイバーセンサ1からループ45を通って第2の光ファイバーセンサ2の断線部26までの温度分布を検出し、続いて光スイッチ12をb側に切り替えて、第2の光ファイバーセンサ2の断線部26までの温度分布を検出する。 【0033】後方散乱光の強度は、光ファイバーセンサの伝播距離に応じて減衰するが、演算部18側では伝播距離に応じた損失補償を行っていることから、断線部26まで温度分布を検出するようにしても、ファイバー損失の影響を受けない正確な温度分布を検出できる。また、パルス駆動回路9によるパルス光の発光周期は、ループ部45までの伝播距離に依存していることから、断線検出で例えば2倍の発光周期に切り替えることで検出距離を拡大できる。 【0034】 これによって、ループ部45で接続された第1および第2の光ファイバーセンサ1,2のいずれかの位置で断線があっても、それぞれの温度分布を継続して検出することができる。図6は本発明の火災報知システムの第3実施例を示す。この第3実施例は、図1の第1実施例で光スイッチにより第1および第2の光ファイバーセンサ1,2に対するパルス光の入射を切り替えていたものを、光分岐器を用いて固定的に行うようにしたことを特徴とする。」 (ウ) 引用文献12に記載された事項 当審において新たに引用する、本願の優先日前に発行された文献である特開2017-150987号公報(以下「引用文献12」という。)には、次の記載がある。 「【0020】 本実施形態では、測定対象物であるローラ列に沿って光ファイバ210を敷設するが、図1に示すように、ローラ列に近い第1光ファイバ部211と、第1光ファイバ部211よりもローラ列から遠い第2光ファイバ部212とが形成されるようにループ状に敷設する。第1光ファイバ部211は、ローラ320の温度を測定し、第2光ファイバ部212は、ローラ320付近の環境温度を測定する機能を担う。第1光ファイバ部211と第2光ファイバ部212とは、各ローラ320からの距離が不均一にならないように、ローラ列と平行に真っ直ぐ敷設する。 【0022】 データ処理部120の温度差分算出部122は、第1光ファイバ部211からの戻り光で得られる第1温度分布と、第2光ファイバ部212からの戻り光で得られる第2温度分布とに基づいて、対応する空間分解能区間同士の温度差分を算出する。」 「【図1】 [図:0001430597000013.jpg] 」 (エ) 引用文献13に記載された事項 当審において新たに引用する、本願の優先日前に発行された文献である特開2012-127779号公報(以下「引用文献13」という。)には、次の記載がある。 「【0005】 図3は、従来の光ファイバ分布型測定装置の一例を示す説明図である。図3(A)において、光源1から波長λ0の光パルスが送出され、方向性結合器2を介して被測定光ファイバ3に入力される。光ファイバ3の中で光パルスにより発生するラマン後方散乱光は、被測定光ファイバ3の入射端に向かって戻ってくる。 …(中略)… 【0015】 図5は、ダブルエンド方法を用いた光ファイバ分布型測定装置の構成説明図であり、図3(A)と共通する部分には同一の符号を付けている。図5において、光ファイバ3はループ状になるようにその両端が折り返され、光スイッチ8を介して方向性結合器2に接続されている。そして、光スイッチ8を切り換えて近端側および遠端側からそれぞれ測定を行うことにより、光ファイバ3の損失の変化を打ち消すことができる。」 「【図5】 [図:0001430597000014.jpg] 」 (オ) 引用文献14に記載された事項 当審において新たに引用する、本願の優先日前に発行された文献である特開2015-222225号公報(以下「引用文献14」という。)には、次の記載がある。 「【0011】 本発明の分布型温度測定装置は、光ファイバをセンサとして用い、後方ラマン散乱光のアンチストークス光の強度とストースク光(合議体注:「ストークス光」の誤記である)の強度の強度比から前記光ファイバに沿った温度分布を算出する分布型温度測定装置において、 …(中略)… 【0022】 光ファイバFBは先端と後端とが光スイッチ3を介して温度分布測定部1に接続されることで、双方向ファイバとして機能する。光スイッチ3をチャネルA(先端)とチャネルB(後端)との何れかに切り替えることで、ファイバFBの先端または後端のいずれかと、温度分布測定部1とを選択的に接続する。これにより、光ファイバFBの温度分布を双方向測定することが可能となる。 【0023】 光ファイバFBは、光ファイバFBの中央を折り返し地点Pとして実質的に同一の温度測定点を通って往復するように配置される。 【0024】 なお、光ファイバFBの先端および後端は光スイッチ3に接続されるが、光スイッチ3から温度分布測定部1の内部にまで光ファイバは延在されている。ここでは、光スイッチ3を基端としてループ状に配置された光ファイバFBを双方向ファイバとして機能させている。」 「【図1】 [図:0001430597000015.jpg] 」 (カ) 周知技術1の認定 前記(ア)~(オ)において摘記した事項に例示されるように、次の技術事項は当業者にとって周知技術であったと認められる(以下「周知技術1」という。)。 [周知技術1] 「光ファイバに光パルスを入射してラマン散乱光を検出することで温度測定を行うシステムにおいて、光ファイバをループ状にし、両端を温度測定装置に接続し、当該両端側から光パルスを入射すること。」 (3) 本件補正発明と引用発明の対比 ア 対比分析 本件補正発明と引用発明を対比する。 (ア) 構成Xの観点(コンベヤの温度測定システム) a 構成Xは、「コンベヤの温度測定システム」の発明であることを特定するものである。 b 引用発明の「軸部発熱温度計測装置」は、「ベルトコンベアのキャリアローラ」について「軸温を検出する」「光ファイバ1A、1B、1C」を備えるから、「ベルトコンベア」の温度を測定するシステムを構成しているといえる。 c そうすると、引用発明の「軸部発熱温度計測装置」は、本件補正発明の「コンベヤの温度測定システム」に相当する。 d したがって、本件補正発明と引用発明は、構成Xの観点に関し、次の点において一致する。 「コンベヤの温度測定システム」の発明である点。 (イ) 構成Aの観点(光ファイバ) a 構成Aは、「コンベヤの温度測定システム」が「コンベヤに沿って敷設され、温度測定装置から入射する光パルスを伝搬させるとともに、内部に生じたラマン散乱光を温度測定装置へ伝搬させる光ファイバ」を備えることを特定するものである。 b 「光ファイバ」が「コンベヤに沿って敷設され」る点 (a) 引用発明においては、「キャリアローラは、ベルト13の幅方向に並べられた3つのキャリアローラ14A、14B、14Cで一組とされ、組のキャリアローラ14A、14B、14Cが一定間隔で並んでおり」、「キャリアローラ14A、14B、14C、14A、14B、14C、…によってベルト3が搬送され」ているから、「キャリアローラ14A、14B、14C」の組のそれぞれは、「ベルト13」の搬送方向に沿って設けられているといえる。 (b) 引用発明における「光ファイバ1A、1B、1C」は、本件補正発明における「光ファイバ」に相当するところ、「キャリアローラ14A、14B、14C」の発熱を検知するために「光ファイバセンサが直列状に接続されて」「敷設」されているから、前記(a)を踏まえると、引用発明における「光ファイバ1A、1B、1C」は「ベルト13」の搬送方向に沿って「敷設」されていることになり、このことは、本件補正発明にいうところの「光ファイバ」が「コンベヤに沿って敷設され」ることに相当する。 c 「光ファイバ」が「温度測定装置から入射する光パルスを伝搬させる」点 (a) 引用発明における「光ファイバ1A、1B、1Cへ入射する発熱温度測定用のパルス光(波長910nm)を発生するレーザダイオード2A、2B、2C」、「パルス駆動回路4が発生したパルス電圧をレーザダイオード2A、2B、2Cに切換えて与えるデマルチプレクサ3」、「光ファイバ1A、1B、1Cの光入射端へ戻ってきた後方散乱光の2成分の一つであるアンチストークス光(波長約870nm)を通過させる特性のフィルタ5A、5B、5C」、「同じく後方散乱光の2成分の残りの一つであるストークス光(波長約950nm)を通過させる特性のフィルタ6A、6B、6C」、「フィルタ5A、5B、5C及び6A、6B、6Cによって後方散乱光から分離されたアンチストークス光及びストークス光を光電変換するフォトダイオード7A、7B、7C」、「各フォトダイオード7A、7B、7Cの出力信号を受けて時分割多重伝送するマルチプレクサ8」、「該マルチプレクサ8を通ったフォトダイオード7の出力信号を増幅する増幅回路9」、「該増幅回路9の出力信号を処理して各軸部発熱点(測定点)における発熱温度とその位置を測定する信号処理装置10」は、これらを一体のものとしてみると、「各軸部発熱点(測定点)における発熱温度とその位置を測定する」ための装置であるといえるから、引用発明は、本件補正発明の「温度測定装置」に相当する構成を備えているといえる。 (b) 引用発明における「光ファイバ1A、1B、1C」には、「レーザダイオード2A、2B、2C」から「発生」した「発熱温度測定用のパルス光(波長910nm)」が「入射」されるところ、前記(a)を踏まえると、「レーザダイオード2A、2B、2C」は温度測定装置の一部であるから、引用発明の「光ファイバ1A、1B、1C」においては、温度測定装置から入射する「発熱温度測定用のパルス光」を伝播させており、このことは、本件補正発明における「光ファイバ」が「温度測定装置から入射する光パルスを伝搬させる」ことに相当する。 d 「光ファイバ」が「内部に生じたラマン散乱光を温度測定装置へ伝搬させる」点 (a) 引用発明における「光ファイバ1A、1B、1Cの光入射端へ戻ってきた」「後方散乱光の2成分の一つであるアンチストーク光(波長約870nm)」と「同じく後方散乱光の2成分の残りの一つであるストークス光(波長約950nm)」は、本件補正発明における「光ファイバ」の「内部に生じたラマン散乱光」に相当する。 (b) 引用発明における「信号処理装置10」は、「各発熱点毎にアンチストークス光とストークス光との強度比を求めて温度を算出し、温度分布情報を得るという処理を行うもの」であるところ、前記c(a)を踏まえると、「信号処理装置10」は温度測定装置の一部であるから、引用発明の「光ファイバ1A、1B、1C」は、その内部に生じた「後方散乱光の2成分の一つであるアンチストーク光(波長約870nm)」と「同じく後方散乱光の2成分の残りの一つであるストークス光(波長約950nm)」を温度測定装置に伝播させていることは明らかであり、このことは、本件補正発明の「光ファイバ」が「内部に生じたラマン散乱光を温度測定装置へ伝搬させる」ことに相当する。 e 構成Aの検討のまとめ 前記b~dを踏まえると、本件補正発明と引用発明は、構成Aの観点に関し、次の点において一致する。 「コンベヤの温度測定システム」が「コンベヤに沿って敷設され、温度測定装置から入射する光パルスを伝搬させるとともに、内部に生じたラマン散乱光を温度測定装置へ伝搬させる光ファイバ」を備える点。 (ウ) 構成Bの観点(ジグ) a 構成Bは、「コンベヤの温度測定システム」が、「前記コンベヤの複数の温度測定点にそれぞれ配置されて前記光ファイバが巻回される複数のジグ」を備えることを特定するものである。 b 「ジグ」について (a) 以下に摘記する本願明細書の段落【0016】の記載を踏まえると、本件補正発明の「ジグ」とは、「温度測定が必要なコンベヤの各所(温度測定点)に配設され、光ファイバが巻回される部材」のことであると解するのが相当である。 「【0016】 本発明は、次の点で特許文献1の構成(図7(a)を参照)と異なる。すなわち、温度測定が必要なコンベヤの各所(温度測定点)に光ファイバ巻回用のジグ10を配設し、各ジグ10に連続体である光ファイバ(例えば光ファイバ心線を保護被膜、高抗張力繊維、外挿およびシースなどで順次被覆したもの)20を必要長さ以上巻回させながら、温度測定装置30とコンベヤに対してループ状に敷設している点である。(以下省略)」 (b) 引用発明における「ポイントプローブ15」は、「各光ファイバ1A、1B、1Cの途中が巻回されて各キャリアローラ14A、14B、14Cの軸に着脱自在に嵌め込み得るようにされたもの」であって、「各ローラ14の軸温」を「検出」する「光ファイバセンサ」であり、「2mの光ファイバを直径40mmのコイル状に巻いたものからな[る]」ことを踏まえると、引用発明の「ポイントプローブ15」は、温度測定が必要な「ベルトコンベア」の各所(温度測定点)に配設され、「光ファイバ1A、1B、1C」がそれぞれ巻回される部材を含むものであるといえるから、前記(a)に示した「ジグ」の解釈を踏まえると、本件補正発明の「ジグ」に相当する。 c 構成Bについて (a) 引用発明においては、「ポイントプローブ15、15、…をキャリアローラ14、14、…の軸に取り付け」ているから、複数の「ポイントプローブ15」が、ベルトコンベアの複数の温度測定点にそれぞれ配置されているといえる。 (b) また、引用発明においては、「ポイントプローブ15」が「2mの光ファイバを直径40mmのコイル状に巻いたもの」であるところ、上記複数の「ポイントプローブ15」が「光ファイバ」を「コイル状に巻[く]」ための部材をそれぞれ備えており、当該部材に対して光ファイバが巻回されていることは明らかである。 (c) したがって、引用発明における、複数の温度測定点にそれぞれ配置されており、光ファイバが巻回されている複数の「ポイントプローブ15」は、前記bを踏まえると、本件補正発明における「前記コンベヤの複数の温度測定点にそれぞれ配置されて前記光ファイバが巻回される複数のジグ」に相当する。 d 構成Bの検討のまとめ 前記b~cを踏まえると、本件補正発明と引用発明は、構成Bの観点に関し、次の点において一致する。 「コンベヤの温度測定システム」が、「前記コンベヤの複数の温度測定点にそれぞれ配置されて前記光ファイバが巻回される複数のジグ」を備える点。 (エ) 構成A1~A3の観点(光ファイバの条件) a 構成A1は、前記光ファイバが「前記複数のジグを順次につないでいる連続体であり」であること、構成A2は、「前記ジグへの前記光ファイバの巻回長さは、前記温度測定装置のサンプリング分解能以上であ」ること、構成A3は「前記光ファイバは、ループ状にされて両端が温度測定装置に接続され、当該両端側から光パルスを入射される」ことをそれぞれ特定するものである。 b 構成A1について 引用発明における「各光ファイバ1A、1B、1C」は、「それぞれ当初は複数本の光ファイバに分岐されているが、ポイントプローブ15、15、…をキャリアローラ14、14、…の軸に取り付けた後、分れている光ファイバを融着接合してリードファイバを形成し」たものであるから、複数の「ポイントプローブ15」を順次つなぐ連続体であるといえるところ、前記(ウ)を踏まえると、このことは、本件補正発明における「前記光ファイバ」が「前記複数のジグを順次につないでいる連続体であ[る]」ことに相当する。 c 構成A2、A3について 引用発明においては、「ポイントプローブ15は、2mの光ファイバを直径40mmのコイル状に巻いたものからなり」、「光ファイバ1A、1B、1C」の巻回長さは2mとされてはいるが、当該巻回長さと温度測定装置のサンプリング分解能との関係は明らかになっていない。 また、引用発明において、「光ファイバ1A、1B、1C」は、いずれもループ状になっておらず、両端側から光パルスが入射されるものではない。 d 構成A1~A3の検討のまとめ 前記b~cを踏まえると、本件補正発明と引用発明は、構成A1~A3の観点に関し、次の(a)の点において一致し、後記(b)の点において相違する。 (a) 構成A1~A3の観点での一致点 「前記光ファイバは前記複数のジグを順次につないでいる連続体であ」る点(構成A1)。 (b) 構成A1~A3の観点での相違点 本件補正発明においては、「前記ジグへの前記光ファイバの巻回長さは、前記温度測定装置のサンプリング分解能以上」であるのに対して、 引用発明においては、「光ファイバ1A、1B、1C」の巻回長さと温度測定装置のサンプリング分解能との関係は不明である点(構成A2)、 及び、 本件補正発明においては、 「前記光ファイバは、ループ状にされて両端が温度測定装置に接続され、当該両端側から光パルスを入射される」ものであるのに対して、 引用発明においては、「光ファイバ1A、1B、1C」は、そのような構成になっていない点(構成A3)。 (オ) 構成Cの観点(搬送路及びリターン路) a 構成Cは、「コンベヤ」が「被搬送物品を搬送する搬送体の搬送路およびリターン路を備え」ることを特定するものである。 b 引用発明では、「ベルトコンベア」の「ベルト13」について、「キャリアローラ14A、14B、14C、14A、14B、14C、…によってベルト13が搬送され、リターンローラ14D,14Eによって戻され[る]」ものであるところ、「ベルトコンベア」が被搬送物品を搬送するためのものであることは自明であるから、引用発明の「ベルト13」は、本件補正発明の「被搬送物品を搬送する搬送体」に相当する。 そして、引用発明における「キャリアローラ14A、14B、14C、14A、14B、14C、…によって」「搬送され」る「ベルト13」の流れる経路は、本件補正発明における「被搬送物品を搬送する搬送体の搬送路」に相当し、引用発明における「リターンローラ14D,14Eによって戻され[る]」「ベルト13」の流れる経路は、本件補正発明における「被搬送物品を搬送する搬送体」の「リターン路」に相当する。 c したがって、本件補正発明と引用発明は、構成Cの観点に関し、次の点において一致する。 「コンベヤ」が「被搬送物品を搬送する搬送体の搬送路およびリターン路を備え」る点。 (カ) 構成B1の観点(搬送路及びリターン路へのジグの配置について) a 構成B1は、「前記ジグは、前記コンベヤの前記搬送路および前記リターン路のそれぞれの近傍毎に配置されて」いることを特定するものである。 b 引用発明においては、「ポイントプローブ15、15、…」は、「各光ファイバ1A、1B、1Cの途中が巻回されて各キャリアローラ14A、14B、14Cの軸に着脱自在に嵌め込み得るようにされたもの」であるから、前記(オ)を踏まえると、「ベルトコンベア」の搬送路の近傍毎に配置されているといえる。 c 引用発明における「リターンローラ」は、「発熱温度計測をしないもの」であるから、「ポイントプローブ15」は、ベルト13が戻される経路においては、配置されていない。 d 以上の検討結果を踏まえると、本件補正発明と引用発明は、構成B1の観点に関し、次の(a)の点において一致し、後記(b)の点において相違する (a) 構成B1の観点での一致点 「前記ジグは、前記コンベヤの前記搬送路の近傍毎に配置されて」いる点。 (b) 構成B1の観点での相違点 本件補正発明では、「前記ジグ」は、「前記コンベヤ」の「前記リターン路」の「近傍毎」にも「配置されて」いるのに対し、 引用発明ではそのような構成になっていない点。 イ 一致点及び相違点 前記アの対比分析の結果をまとめると、本件補正発明と引用発明の一致点及び相違点は、それぞれ次の(ア)及び(イ)に示すとおりである。 (ア) 一致点 「コンベヤに沿って敷設され、温度測定装置から入射する光パルスを伝搬させるとともに、内部に生じたラマン散乱光を温度測定装置へ伝搬させる光ファイバと、 前記コンベヤの複数の温度測定点にそれぞれ配置されて前記光ファイバが巻回される複数のジグと、 を備え、 前記光ファイバは前記複数のジグを順次につないでいる連続体であり、 前記コンベヤは、被搬送物品を搬送する搬送体の搬送路およびリターン路を備えて、前記ジグは、前記コンベヤの前記搬送路の近傍毎に配置されている、 コンベヤの温度測定システム。」である点。 (イ) 相違点 a 相違点1 本件補正発明においては、「前記ジグへの前記光ファイバの巻回長さは、前記温度測定装置のサンプリング分解能以上」であるのに対して、 引用発明においては、「光ファイバ1A、1B、1C」の巻回長さと温度測定装置のサンプリング分解能との関係は不明である点。 b 相違点2 本件補正発明では、「前記ジグ」は、「前記コンベヤ」の「前記リターン路」の「近傍毎」にも「配置されて」いるのに対し、 引用発明ではそのような構成になっていない点。 c 相違点3 本件補正発明においては、「前記光ファイバは、ループ状にされて両端が温度測定装置に接続され、当該両端側から光パルスを入射される」ものであるのに対して、 引用発明においては、「光ファイバ1A、1B、1C」は、そのような構成になっていない点。 (4) 判断 ア 相違点1について (ア) 前記(2)イ(イ)において引用文献2技術事項として認定したとおり、「光ファイバを巻回して用いる温度分布計測システムに好適な光ファイバセンサにおいて、光パルスを投射してから後方散乱光が光検出器に入射するまでの所要時間及びラマン散乱光強度に基いて光ファイバセンサの温度を順次演算し出力する際に、巻回する光ファイバ長は、計測システムの単位分解能距離以上の長さとすることが好適であること」は、公知の技術である。 (イ) ここで、引用文献2技術事項は、光ファイバを巻回した光ファイバセンサを用いて、パルス光を入力した際のラマン散乱の強度によって温度を測定する温度分布計測システムであるという点において、測定の原理も含めて引用発明と一致しているので、引用発明において、引用文献2技術事項を適用する契機はあるというべきである。 (ウ) そうすると、引用発明において、「光ファイバ1A、1B、1C」の巻回長さの設定に際し、温度測定装置の計測システムの単位分解能距離を考慮して、「光ファイバ1A、1B、1C」のそれぞれの必要な巻回長さとして、計測システムの単位分解能距離以上の長さとすること、すなわち、巻回長さを温度測定装置のサンプリング分解能以上とすることは、精度良く測定を行うという、測定装置において当然の課題を認識する当業者にとってみれば当然なし得た設計事項にすぎない。 (エ) してみれば、引用発明における「ポイントプローブ15」(ジグ)への前記「光ファイバ1A、1B、1C」のそれぞれの巻回長さについて、引用文献2技術事項を適用し、もって前記相違点1に係る本件補正発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。 イ 相違点2について (ア) 前記(2)ウ(イ)において引用文献4技術事項として認定したとおり、「光ファイバからなる温度センサが設置されて、温度が測定されるベルトコンベアにおいて、ベルトコンベアに石炭を搭載して搬送する搬送路たる上部ベルトコンベアと、逆方向に移動する下部ベルトコンベアが存在し、その双方に光ファイバからなる温度センサが近傍に設置されること」は、公知の技術である。 (イ) 他方、引用発明では、「リターンローラ14D,14Eによって戻され[る]」「ベルト13」の流れる経路(リターン路)において温度測定を行っていないところ、その理由としては、引用文献1では「設備費、メンテナンス費を徒に高くすることなく軸部発熱温度計測の省力化を図ること」(引用文献1の第6頁右上欄第4~6行)を目的としていることを踏まえると、軸の発熱の可能性が低い、ベルトを戻すだけの構造となっているリターン路における温度測定を省略したものであると考えられる。 また、引用文献1のその他の記載を参酌しても、他にリターン路における温度測定を行ってはならないとする理由は特段見当たらない。 (ウ) ここで、上記引用文献4技術事項において開示されるように、一般的にコンベヤのリターン路は、空のベルトを戻すだけのものに限定される訳ではなく、往路と逆方向に移動しつつ、落下した移動対象物を捕集するものなども考えられるところ、引用発明において、そのようなリターン路の使用形態を想定することは可能であり、その際に、リターン路においても温度の異常を監視する必要があることは明らかであるから、引用文献4技術事項に倣って、引用発明の「ポイントプローブ15」を、ベルト13が戻される経路においても配置されるように構成することは、当業者が適宜なし得た設計事項にすぎないというべきである。 (エ) そうすると、引用発明において、必要な部分の温度の測定を行うという一般的な目的の下、引用文献4技術事項に倣って、「ポイントプローブ15」(ジグ)をコンベヤのリターン路の近傍毎にも配置されるようにして、もって相違点2に係る本件補正発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。 ウ 相違点3について 前記(2)エ(カ)において周知技術1として認定したように、「光ファイバに光パルスを入射してラマン散乱光を検出することで温度測定を行うシステムにおいて、光ファイバをループ状にし、両端を温度測定装置に接続し、当該両端側から光パルスを入射すること」は、周知の技術である。 そうすると、引用発明において、上記周知技術1を採用し、もって相違点3に係る本件補正発明の構成とすることは、当業者の通常の創作能力の発揮の範囲内であり、格別のものではない。 エ 総合評価 前記ア~ウにおいて検討したとおり、引用発明において、前記相違点1~3に係る本件補正発明の構成を備えるようにすることは、引用文献2技術事項、引用文献4技術事項及び周知技術1に基づいて当業者が容易に想到し得たことである。 そして、相違点1~3を総合的に勘案しても、本件補正発明が奏する効果としては、当該構成のものとして当業者が予測・発見困難であり、かつ、格別顕著な効果を認めることはできない。 したがって、本件補正発明は、引用発明、引用文献2技術事項、引用文献4技術事項及び周知技術1に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 オ 請求人の主張について (ア) 請求人の主張の内容 請求人は、審判請求書において、以下のように主張している。 「(a)本願発明の説明 本願発明の特徴は、令和6年4月9日に提出の手続補正書における特許請求の範囲の請求項1に記載されているように「前記光ファイバは、ループ状にされて両端が温度測定装置に接続され、当該両端側から光パルスを入射される」という構成要素を備えている、という点である。」 「(c)本願発明と引用発明との対比 本願発明では、「光ファイバの両端が温度測定装置にループ状に接続されて、その両端側から光パルスを入射する」ようになっており、当該構成要素により特有の作用効果を奏することができ、具体的には「接続部位での光の減衰を抑制することができ、これによって、コンベヤの規模が大きく、ループ状に敷設される光ファイバの長さがkm単位の長いものであっても、精度の高い温度測定が可能となる(段落0018)」のである。 これに対して、各引用文献には、本願発明の基本的な構成要素がそれぞれに記載されているが、これら引用文献では、「光ファイバの一端側から光パルスを入射する」ようになって(いる[※誤記と認められるため合議体で追記した])ことから、本願発明特有の作用効果を得ることはできない。」 「したがって、本願発明は、構成および作用効果において上記引用文献1~4に記載された発明とは顕著な差異があり、これら引用文献1~4に記載のものを組み合せる程度のものではなく、これら引用文献の記載が本願発明をする起因または契機になり得るものではない。このため、本願発明は、これら引用文献の記載に基づいて当業者が容易に想到し得る程度のものではない。」 (イ) 請求人の主張についての検討 請求人が(a)として述べている「光ファイバの両端が温度測定装置にループ状に接続されて、その両端側から光パルスを入射する」という技術については、上記(2)エ(カ)において認定した周知技術1そのものであり、これを引用発明に適用することについても、上記ウにおいて判断したとおり、当業者の通常の創作能力の発揮の範囲内である。 したがって、前記請求人の主張は、採用できない。 (5) 独立特許要件の判断のまとめ 以上検討のとおり、本件補正発明は、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 したがって、本件補正により請求項1についてする補正は、特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に適合しない。 4 本件補正の却下の決定の理由のむすび 前記3(5)のとおり、本件補正は、特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に違反するから、同法159条1項において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。 よって、前記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。 第3 本願発明について 1 本願発明について 本件補正は、前記第2のとおり却下したので、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、本件補正前の特許請求の範囲の請求項1(前記第2の1(1)参照)に記載された事項により特定されるとおりのものである。 2 原査定における拒絶の理由の概要 原査定の本願発明に対する拒絶の理由(進歩性の欠如)の概要は、次のとおりである。 理由1(進歩性の欠如) 本願発明は、優先日前に発行された下記の引用文献に記載された発明に基づいて、優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。 記 引用文献1.特開平4-20823号公報 引用文献2.特開平4-174331号公報 引用文献4.特開平7-296274号公報 3 各引用文献に記載された事項及び引用発明の認定等 引用発明は、前記第2の3(2)ア(イ)において認定したとおりである。 引用文献2技術事項及び引用文献4技術事項は、それぞれ前記第2の3(2)イ(イ)及びウ(イ)において認定したとおりである。 周知技術1は、前記第2の3(2)エ(カ)において示したとおりである。 4 対比・判断 本願発明は、前記第2の2において検討したとおり、本件補正発明から「光ファイバは、ループ状にされて両端が温度測定装置に接続され、当該両端側から光パルスを入射される」(補正事項2)との限定を省き、「前記コンベヤは、・・・前記コンベヤの前記搬送路および前記リターン路のそれぞれの近傍毎に配置され」という記載の「コンベヤ」を、「コンベア」としたものである。 前記第2の2(2)アにおいて述べたとおり、「コンベヤ」を「コンベア」としたとしても、実質的にその内容が変化するわけではないのであるから、本願発明についての検討は、実質的には、本件補正発明から前記補正事項2に係る限定を省いたものについてする検討と、結果は同様である。 そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、その発明特定事項の一部を限定したものに相当する本件補正発明が、前記第2の3(4)及び(5)において説示したとおり、引用発明、引用文献2技術事項、引用文献4技術事項及び周知技術1に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により当業者が容易に発明をすることができたものである。 第4 むすび 以上検討のとおり、本願発明は、特許法29条2項の規定により、特許を受けることができない。 したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。

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2024-005966

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