特許拒絶査定不服審判
2024-003154
作業車両用の自動走行システム、及び作業車両用の自動走行方法
- 審判番号
- 2024-003154
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2022-187146外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2024年02月22日
- 審決日
- 2025年08月06日
- 公報発行日
- 2025年10月31日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】ヤンマーパワーテクノロジー株式会社
- 【請求人代理人】種村 一幸
- 分類
- P18 .121-WZ (G05D)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2022-187146「作業車両用の自動走行システム、及び作業車両用の自動走行方法」拒絶査定不服審判事件〔令和 5年 2月 2日出願公開、特開2023- 16880〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、平成30年1月10日に出願された特願2018-1857の一部を、令和3年7月15日に新たな特許出願とした特願2021-117163の一部を、さらに令和4年11月24日に新たな特許出願としたものであって、その手続の経緯は、概略、次のとおりである。
令和5年 8月31日付け :拒絶の理由の通知
同年10月17~24日:電話及び電子メールでの応対
同年11月 6日 :意見書及び手続補正書の提出
同月20日付け :拒絶をすべき旨の査定(拒絶査定)
令和6年 2月22日 :本件審判(拒絶査定不服審判)の請求
令和7年 3月18日付け :当審による拒絶の理由の通知
(以下「当審拒絶理由通知」という。)
同年 5月22日 :意見書及び手続補正書の提出
第2 本件発明の認定
本件出願の請求項1~5に係る発明は、令和7年5月22日提出の手続補正書により補正がされた特許請求の範囲の請求項1~5に記載された事項により特定されるものと認められるところ、その請求項1に係る発明(以下「本件発明」という。)は、次のとおりのものである。
「 【請求項1】
作業地において作業車両を蛇行状に往復案内するための往復案内経路と、前記作業車両を前記作業地の外周側において周回案内するための周回案内経路と、を生成する目標経路生成部を備え、
前記周回案内経路は、前記作業車両が前記作業地からはみ出すこと、又は、前記作業車両が前記作業地の外周の障害物に接触することを回避するために前記作業地の外周の内側に設定されるマージン領域と、前記作業地の中央側の作業領域と、を区分する境界線の内側に生成される経路であって、
前記目標経路生成部は、前記往復案内経路及び前記周回案内経路を、前記作業車両の自動走行開始前に生成する、
作業車両用の自動走行システム。」
第3 当審拒絶理由通知
令和7年5月22日提出の手続補正書により補正がされる前の(すなわち、令和5年11月6日提出の手続補正書により補正がされた)特許請求の範囲の請求項1に係る発明に対し、当審拒絶理由通知にて通知した拒絶の理由は、概略、次のとおりである。
(進歩性)請求項1に係る発明は、本件出願前(原出願前)に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった、次の引用文献1に記載された発明及び引用文献1に記載された技術的事項に基づいて、その出願前(原出願前)にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
引用文献1:特開2017-174229号公報
第4 引用文献1に記載された発明又は技術的事項の認定
1 引用文献1に記載された事項
引用文献1には、以下の事項が記載されている(下線は、当審で付した。以下同じ。)。
(1)発明の詳細な説明
「【発明を実施するための形態】
【0011】
無人で自律走行可能な自律走行作業車両(以下、無人車両と称することがある)1、及び、この自律走行作業車両1に協調して作業者(ユーザ)が操向操作する有人の走行作業車両(以下、有人車両と称することがある)100をトラクタとし、自律走行作業車両1及び走行作業車両100には作業機としてロータリ耕耘装置がそれぞれ装着されている実施例について説明する。但し、作業車両はトラクタに限定するものではなく、コンバイン等でもよく、また、作業機はロータリ耕耘装置に限定するものではなく、畝立て機や草刈機やレーキや播種機や施肥機等であってもよい。
【0012】
本明細書において「自律走行」とは、トラクタが備える制御部(ECU)によりトラクタが備える走行に関する構成が制御されて予め定められた経路に沿ってトラクタが走行することを意味する。
単一の圃場における農作業を、無人車両及び有人車両で実行することを、農作業の協調作業、追従作業、随伴作業などと称することがある。・・・。」
「【0014】
制御部30は、ステアリングコントローラ301、エンジンコントローラ302、変速制御コントローラ303、水平制御コントローラ304、作業制御コントローラ305、測位制御ユニット306、自律走行制御コントローラ307等を備え、それぞれCPU(中央演算処理装置)やRAMやROM等の記憶装置やインターフェース等を備え、記憶装置には動作させるためのプログラムやデータ等が記憶され、CAN通信によりそれぞれ情報やデータ等を送受信できるように通信可能としている。」
「【0030】
こうして、自律走行コントローラ307は自律走行作業車両1を自律走行させる自律走行手段として備えられる。つまり、自律走行コントローラ307と接続された各種情報取得ユニットによって、自律走行作業車両1の走行状態を各種情報として取得し、自律走行コントローラ307と接続された各種制御ユニットによって、自律走行作業車両1の自律走行を制御する。具体的には、GPS衛星37・37・・・から送信される電波を受信して測位制御ユニット306において設定時間間隔で車体部の位置情報を求め、ジャイロセンサ31及び方位角検出部32から車体部の変位情報および方位情報を求め、これら位置情報と変位情報と方位情報に基づいて車体部が予め設定した経路(走行経路と作業経路)Rに沿って走行するように、操舵アクチュエータ40、変速手段44、昇降アクチュエータ25、PTO入切手段45、エンジンコントローラ302等を制御して自律走行し自動で作業できるようにしている。」
「【0033】
遠隔操作装置112は前記自律走行作業車両1の後述する経路Rを設定したり、自律走行作業車両1を遠隔操作したり、自律走行作業車両1の走行状態や作業機の作動状態を監視したり、作業データを記憶したりするものであり、制御部(CPUやメモリ)130や通信装置111や表示装置113や記憶装置114等を備える。」
「【0035】
遠隔操作装置112は、走行作業車両100及び自律走行作業車両1のダッシュボードやキャビン11のピラー等に設けられる取付部(不図示の例えば遠隔操作装置112を取り付け固定可能なアーム部材)に着脱可能としている。遠隔操作装置112は走行作業車両100の取付部に取り付けたまま操作することも、走行作業車両100の外に持ち出して携帯して操作することも、自律走行作業車両1の取付部に取り付けたまま操作することも可能である。遠隔操作装置112は例えばノート型やタブレット型のパーソナルコンピュータ等の無線通信端末で構成することができる。本実施形態ではタブレット型のコンピュータで構成している。」
「【0037】
次に、経路生成装置となる遠隔操作装置112により経路Rを設定する手順について説明する。図3は、遠隔操作装置の表示装置に表示される初期画面を示す。但し、自律走行作業車両1が備える制御部30によって経路Rを設定できるようにすることも可能である。
遠隔操作装置112の表示装置113はタッチパネル式としており、電源をオンして遠隔操作装置112を起動させると初期画面が現れるようにしている。初期画面では、図3に示すように、トラクタ設定ボタン201、圃場設定ボタン202、経路生成設定ボタン203、データ転送ボタン204、作業開始ボタン205、終了ボタン206が表示される。」
「【0039】
トラクタの機種が設定されると、トラクタに装着される作業機のサイズ、形状、作業機の位置の設定画面が現れる。作業機の位置は例えば前部か、前輪と後輪の間か、後部か、オフセットか、を選択する。
作業機の設定が終了すると、作業中の車速、作業中のエンジン回転数、旋回時の車速、旋回時のエンジン回転数の設定画面が現れる。作業中の車速は往路と復路で異なる車速とすることも可能である。・・・。」
「【0043】
前記圃場設定においてOKボタンをタッチすると、経路生成設定となる。経路生成設定は初期画面で経路生成設定ボタン203をタッチすることによっても経路生成設定が可能となる。
経路生成設定では、自律走行作業車両1に対して走行作業車両100がどの位置で走行するかの選択画面が表示される。つまり、自律走行作業車両1と走行作業車両100の位置関係を設定する。具体的には、(1)走行作業車両100が自律走行作業車両1の左後方に位置する。(2)走行作業車両100が自律走行作業車両1の右後方に位置する。(3)走行作業車両100が自律走行作業車両1の真後ろに位置する。(4)走行作業車両100は随伴しない(自律走行作業車両1のみで作業を行う)。の4種類が表示され、タッチすることにより選択できる。」
「【0044】
次に、走行作業車両100の作業機の幅を設定する。つまり、作業機の幅を数字で入力する。・・・。」
「【0045】
次に、外周設定が行われる。つまり、図5に示すような、自律走行作業車両1と走行作業車両100とにより、または、自律走行作業車両1により作業を行う第1領域となる作業領域HAの外側に第2領域が設定される。言い換えれば、圃場端で非作業状態として旋回走行する枕地HBと、枕地HBと枕地HBとの間の左右両側の圃場外周に接する非作業領域とする側部余裕地HCが設定される。よって、圃場H=第1領域+第2領域=作業領域HA+枕地HB+枕地HB+側部余裕地HC+側部余裕地HCとなる。通常、枕地HBの幅Wbと側部余裕地HCの幅Wcは、走行作業車両100が装着した作業機の幅の二倍以下の長さとして、自律走行作業車両1と走行作業車両100とによる随伴作業が終了した後に、作業者が走行作業車両100に乗り込み、手動操作で外周を二周することで、仕上げることができるようにしている。但し、圃場外周の形状が複雑でない場合には、自律走行作業車両1で外周を作業することも可能である。なお、外周設定において、枕地HBの幅Wb及び側部余裕地HCの幅Wcは、作業機の幅に応じて自動的に所定の幅に算出されるが、算出された枕地HBの幅Wb及び側部余裕地HCの幅Wcは、任意の幅に変更可能であり、ユーザは所望の幅に変更した上で、変更後の幅Wb、幅Wcを夫々、枕地HBの幅、側部余裕地HCの幅として設定可能である。但し、任意の幅に変更可能である場合、圃場内における走行、作業並びに安全性を考慮して算出される最小設定幅以下に設定することはできない。例えば、枕地HBや側部余裕地HCにおいて自律走行作業車両1が走行や旋回した場合に、作業機が圃場外に飛び出ないことを保証する幅が最小設定幅として算出される。
【0046】
上記の各種設定の入力が終了すると、確認画面が現れ、確認をタッチすると、自動で経路Rが生成される。経路Rは作業経路Raと走行経路Rbからなり走行領域となる圃場Hに生成される。作業経路Raは作業領域HA内で生成される経路で、作業を行いながら走行する経路であり、直線の経路となる。但し、作業領域HAが矩形でない場合には作業領域HA外の領域(枕地HBと側部余裕地(サイドマージン)HC)にはみ出すこともある。走行経路Rbは作業領域HA外の領域で生成される経路で、作業を行わずに走行する経路であり、直線と曲線を組み合わせた経路となる。主に、枕地HBでの旋回走行となる。」
「【0047】
前記経路Rは経路生成装置によって自律走行作業車両1と走行作業車両100の経路Rが生成される。・・・。」
「【0055】
前記第3の旋回経路Rb3を更に詳述する。作業経路の終端で枕地HBの幅が最も短く、設定旋回半径Trで旋回して第3の旋回経路Rb3を生成する場合、図9に示すように、作業経路Raの終端位置から設定旋回半径Trで90度旋回する。この旋回時にはロータリ耕耘装置24の後端は圃場の境界線hよりも内側に設定された枕地の安全境界線hbよりも内側を通過するようにして、旋回時にロータリ耕耘装置24が畦等の障害物に当たらないようにしている。そして、車体部の姿勢が安定するまで所定距離(約1メートル程度)直進して停止する。つまり、90度旋回した直後に停止して次の工程となる後進を行うと、前輪9が直進位置に戻る前に後進して蛇行するおそれがあるから90度旋回した後に所定距離直進するようにしている。次に、前記旋回前の作業経路Raの延長上付近(再度90度旋回を行うことで次の作業経路Raに入ることが可能な位置)まで直進で後進して停止する。次に、作業経路Raに入るように90度旋回する。こうして、幅の狭い条の場合であっても少ない切り返し操作(1回の切り返し操作)で180度の旋回ができるようになる。」
(2)図面
「【図3】
[図:0001427451000001.jpg]
」
「【図5】
[図:0001427451000002.jpg]
」
「【図9】
[図:0001427451000003.jpg]
」
2 引用文献1の記載からわかること
引用文献1の記載から、次の事項が記載されているといえる。
(1)上記1(1)の記載から、引用文献1には、無人で自律走行可能な自律走行作業車両1が予め定められた経路に沿って走行するため(段落【0011】~【0012】)の、自律走行コントローラ307等を備える制御部30(段落【0012】、【0014】、【0030】)を含む自律走行作業車両1、及び、例えばタブレット型のコンピュータで構成される経路生成装置としての遠隔操作装置112(段落【0033】、【0035】、【0037】、【0047】)を備える、自律走行作業車両1用の自律走行システムについての発明が記載されている、といえる。
(2)上記1(1)の記載及び同(2)の図5から、引用文献1に記載された自律走行作業車両1用の自律走行システムの、経路生成装置としての遠隔操作装置112は、走行領域となる圃場Hに経路Rを生成する(段落【0046】、【0047】)ものである。経路Rは、作業経路Raと走行経路Rbとからなり(段落【0046】)、作業経路Raは、作業領域HA内で生成される作業を行いながら走行する直線の経路であり(段落【0046】、図5)、走行経路Rbは、主に、枕地HBでの旋回走行の経路(段落【0046】、図5)であることがわかり、図5を併せてみれば、圃場Hにおいて自律走行作業車両1を蛇行状に往復案内するための経路であるといえる。
(3)また、上記1(1)の段落【0043】の記載から、引用文献1に記載された自律走行作業車両1用の自律走行システムは、自律走行作業車両1のみで作業を行う設定が可能であり、段落【0045】の記載から、圃場H外周の形状が複雑でない場合には、自律走行作業車両1で外周を作業することも可能であることがわかる。ここで、外周とは、自律走行作業車両1により作業を行う第1領域となる作業領域HAの外側に設定される第2領域であって、圃場端で非作業状態として旋回走行する1対の枕地HBと、枕地HBと枕地HBとの間の左右両側の圃場外周に接する1対の非作業領域とする側部余裕地HCである(段落【0045】、図5)ことがわかる。また、外周の作業とは、自律走行作業車両1等による作業が終了した後に、作業者が走行作業車両100に乗り込み、手動操作で外周を二周することで、仕上げる作業である(段落【0045】)ことがわかる。
以上の事項から、引用文献1に記載された自律走行作業車両1用の自律走行システムの、経路生成装置としての遠隔操作装置112は、上記(2)の作業経路Ra及び走行経路Rbを生成するほか、自律走行作業車両1で外周を作業する場合には、当然に、自律走行作業車両1を圃場Hの外周側に枕地HB+側部余裕地HC+枕地HB+側部余裕地HCとして設定される外周としての第2領域を二周することで仕上げの作業をする経路も生成するものと理解できる。
(4)上記1(1)の段落【0045】の記載から、枕地HBの幅Wb及び側部余裕地HCの幅Wcは、作業者が走行作業車両100に乗り込み、手動操作で外周を二周することで仕上げる場合には、走行作業車両100が装着した作業機の幅の二倍以下の長さとするところ、それに限らず、ユーザにより所望の任意の幅に変更して設定することも可能であることがわかる。そして、任意に幅を設定する場合、圃場内における走行、作業並びに安全性を考慮し、例えば、枕地HBや側部余裕地HCにおいて自律走行作業車両1が走行や旋回した場合に、作業機が圃場外に飛び出さないことを保証する最小設定幅よりも大きくする必要があることが理解できる。
以上の事項と上記(3)とを併せてみると、上記(3)の仕上げの作業をする経路は、自律走行作業車両1の作業機が圃場Hから外に飛び出さないことを保証するために、設定された枕地HBの幅Wb及び側部余裕地HCの幅Wc内で生成される経路である、といえる。
(5)上記(3)のとおり、上記1(1)の段落【0045】の記載から、圃場H外周の形状が複雑でない場合には、自律走行作業車両1で外周を作業することが可能であることが理解される。また、上記1(1)の段落【0046】~【0047】の記載から、段落【0045】に記載の、自律走行作業車両1で外周を作業するための設定を含む、段落【0043】~【0045】に記載の各種設定の入力が終了すると、上記(2)のとおり、経路生成装置によって自動で経路Rが生成されることが理解される。そして、段落【0030】の「予め設定した経路(走行経路と作業経路)Rに沿って走行するように、操舵アクチュエータ40、変速手段44、昇降アクチュエータ25、PTO入切手段45、エンジンコントローラ302等を制御して自律走行し自動で作業できる」との記載からみて、当該経路生成装置による経路Rの生成は、自律走行作業車両1の自律走行の開始前に行われる、といえる。
3 引用発明の認定
上記1及び2から、引用文献1に記載された事項を本件発明に合わせて整理すると、引用文献1には次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているといえる。
<引用発明>
「圃場Hにおいて自律走行作業車両1を蛇行状に往復案内するための、作業領域HA内での直線の経路である作業経路Ra及び枕地HBでの旋回走行の経路である走行経路Rbと、前記自律走行作業車両1を前記圃場Hの外周側の枕地HB+枕地HB+側部余裕地HC+側部余裕地HCにおいて外周を二周することで仕上げの作業をする経路と、を生成する経路生成装置としての遠隔操作装置112を備え、
前記仕上げの作業をする経路は、前記自律走行作業車両1の作業機が前記圃場Hから外に飛び出さないことを保証するように設定された枕地HBの幅Wb及び側部余裕地HCの幅Wc内で生成される経路であって、
前記経路生成装置としての遠隔操作装置112は、作業領域HA内での直線の経路である作業経路Ra及び枕地HBでの旋回走行の経路である走行経路Rb、並びに、前記自律走行作業車両1を前記圃場Hの外周側の枕地HB+枕地HB+側部余裕地HC+側部余裕地HCにおいて外周を二周することで仕上げの作業をする経路を、自律走行作業車両1の自律走行の開始前に生成する、
自律走行作業車両1用の自律走行システム。」
4 引用文献1記載の技術的事項
また、上記1(1)の段落【0055】の記載及び同(2)の図9の図示内容は、引用発明1の作業領域HAについて、その外側付近で選択される旋回形態の一つ(段落【0049】~【0050】)に関するものであって、引用文献1に記載された経路生成装置としての遠隔操作装置112は、旋回走行経路を生成する際に、自律走行作業車両1のロータリ耕耘装置24の後端が畦等の障害物に当たらないように、圃場の境界線hよりも内側に設定された安全境界線hbよりも内側を通過するように、経路を生成するものであることがわかる。
してみると、引用文献1には、次の技術的事項(以下「引用文献1記載の技術的事項」という。)についても開示されているといえる。
<引用文献1記載の技術的事項>
「自律走行作業車両1(前記作業車両)の作業機が圃場H(前記作業地)から外に飛び出し畦等の障害物に当たらないようにする(作業地からはみ出すこと、又は、作業地の外周の障害物に接触することを回避する)ために、前記圃場(前記作業地)の境界線hと安全境界線hbとの間の領域(作業地の外周の内側に設定されるマージン領域)と、前記圃場(前記作業地)の安全境界線hbよりも内側の領域(中央側の作業領域)と、を区分する安全境界線hb(境界線)の内側に経路を生成すること。」
第5 本件発明と引用発明との対比
1 相当関係
本件発明と引用発明とを対比すると、両者の発明特定事項には以下の相当関係がある。
(1)引用発明における「圃場H」、「自律走行作業車両1」、「作業領域HA内での直線の経路である作業経路Ra及び枕地HBでの旋回走行の経路である走行経路Rb」、「経路生成装置としての遠隔操作装置112」、「自律走行」、「自律走行の開始前」及び「自律走行システム」は、その名称・技術的概念・機能・作用等からみて、本件発明の「作業地」、「作業車両」、「往復案内経路」、「目標経路生成部」、「自動走行」、「自動走行開始前」及び「自動走行システム」に、それぞれ相当する。
(2)引用発明における「仕上げの作業をする経路」は、「前記自律走行作業車両1(前記作業車両)を前記圃場H(前記作業地)の外周側の枕地HB+枕地HB+側部余裕地HC+側部余裕地HCにおいて外周を二周することで仕上げの作業をする経路」であって、「前記自律走行作業車両1の作業機が前記圃場Hから外に飛び出さないことを保証するように設定された枕地HBの幅Wb及び側部余裕地HCの幅Wc内で生成される経路」であるから、
「前記作業車両を前記作業地の外周側において周回案内するための周回案内経路」であって、「前記作業車両が前記作業地からはみ出すこと、又は、前記作業車両が前記作業地の外周の障害物に接触することを回避するように生成される経路」である限りにおいて、
本件発明における「周回案内するための周回案内経路」に相当する。
2 一致点
上記1から、本件発明と引用発明とは、次の一致点で一致する。
<一致点>
「作業地において作業車両を蛇行状に往復案内するための往復案内経路と、前記作業車両を前記作業地の外周側において周回案内するための周回案内経路と、を生成する目標経路生成部を備え、
前記周回案内経路は、前記作業車両が前記作業地からはみ出すこと、又は、前記作業車両が前記作業地の外周の障害物に接触することを回避するように生成される経路であって、
前記目標経路生成部は、前記往復案内経路及び前記周回案内経路を、前記作業車両の自動走行開始前に生成する、
作業車両用の自動走行システム。」
3 相違点
他方、本件発明と引用発明とは、次の相違点で相違する。
<相違点>
前記作業車両が前記作業地からはみ出すこと、又は、前記作業車両が前記作業地の外周の障害物に接触することを回避するように生成される周回案内経路に関し、
本件発明においては、「前記作業地の外周の内側に設定されるマージン領域と、前記作業地の中央側の作業領域と、を区分する境界線の内側に生成される経路」であるのに対して、
引用発明においては、仕上げの作業をする経路(周回案内経路)が「自律走行作業車両1の作業機が前記圃場Hから外に飛び出さないことを保証するように設定された枕地HBの幅Wb及び側部余裕地HCの幅Wc内で生成される経路」である点。
第6 相違点についての判断
上記相違点について検討する。
引用文献1には、上記第4の4に示した、引用文献1記載の技術的事項についても開示されている。
引用発明と引用文献1記載の技術的事項とは、当然に技術分野が関連するとともに、いずれも、自律走行作業車両1の作業機が圃場Hから外に飛び出すことを防止するとの課題又は作用の点で共通する。
してみると、引用発明において、仕上げの作業をする経路(周回案内経路)を生成するにあたっては、上記第4の2(3)~(4)のとおり、自律走行作業車両1が走行や旋回した場合に、作業機が圃場外に飛び出さないことを保証する最小設定幅よりも大きくする必要があることが理解できるから、自律走行作業車両1の作業機が圃場Hから外に飛び出すことを確実に防ぐために、引用文献1記載の技術的事項を参考として、圃場Hの境界線hの内側に安全境界線hbを設定し、その安全境界線hbの内側に仕上げ作業をする経路を生成するようにすることで、上記相違点に係る本件発明のようにすることは、当業者であれば容易に想到し得たことである。そして、引用文献1記載の技術的事項は、引用発明1の作業領域HAについて、その外側付近で選択される旋回形態の一つに関するものであって、このようにすることを妨げる特段の事情も存在しない。
第7 請求人の意見書における主張についての検討
1 請求人の主張
請求人は、令和7年5月22日提出の意見書において、概略、次の3点を主張する。
(1)引用文献1には、周回案内経路を生成することすら明記されていない。引用文献1には、段落【0045】に自律走行作業車両1で外周を作業してもよい旨は記載されるものの、図5を見ても、実際にどのような経路で外周を作業走行させるかは記載されていない。
(2)引用文献1にはそもそも周回案内経路を生成することすら明記されていないため、往復案内経路及び周回案内経路を自動走行開始前に生成することは、引用文献1には当然ながら記載も示唆もされていない。
(3)引用文献1に記載の発明から出発して本件発明を想到するには、周回案内経路を生成する構成を採用した上で、さらに、往復案内経路及び周回案内経路を自動走行開始前に生成する、という少なくとも2段階の工夫が必要であり、引用発明に基づいて2つの段階を経て初めて本件発明の構成に至ることは、当業者にとって容易に想到できるものといえない。
2 当審の判断
上記1の主張について検討する。
(1)上記1(1)についてみると、引用文献1の段落【0045】には、「通常、枕地HBの幅Wbと側部余裕地HCの幅Wcは、走行作業車両100が装着した作業機の幅の二倍以下の長さとして、自律走行作業車両1と走行作業車両100とによる随伴作業が終了した後に、作業者が走行作業車両100に乗り込み、手動操作で外周を二周することで、仕上げることができるようにしている。但し、圃場外周の形状が複雑でない場合には、自律走行作業車両1で外周を作業することも可能である。」と記載されている。
当該記載をみた当業者であれば、自律走行作業車両で外周作業する際には、当然に、手動操作で外周を走行するように、枕地HB、側部余裕地HC、枕地HB及び側部余裕地HCの順に、圃場Hの外周縁と平行に走行すると理解し得るといえ、引用文献1には、上記1(1)の主張に係る周回案内経路を生成することに関し、当業者が理解できる程度に記載されていたといえるし、たとえ直接的あるいは具体的な記載がなくとも、十分に示唆されていたといえる。
(2)上記1(2)についてみると、上記第4の2(5)で検討したように、引用文献1の段落【0030】、【0043】~【0045】、【0046】~【0047】の記載からみて、引用発明においては、まず自律走行作業車両1が自律走行する経路Rを生成するための各種設定を入力し(段落【0043】~【0045】)、当該設定に基づいて、経路Rが生成され(段落【0046】~【0047】)、当該経路Rに基づいて自律走行作業車両1が自律走行する(段落【0030】)ものであると理解され、引用文献1には、上記1(2)の主張に係る往復案内経路及び周回案内経路を自動走行開始前に生成することに関し、十分な記載または示唆があったといえる。
(3)上記1(3)についてみると、上記(1)及び(2)のとおり、引用文献1には、周回案内経路を生成することと、往復案内経路及び周回案内経路を自動走行開始前に生成することにつき、十分な記載または示唆があったといえ、仮に多段階の改変を要するとしたとしても、1つの文献の中に記載される事項に基づいて想到し得た程度のものであるから、格別の努力を要することなく発明をすることができたものである。
(4)したがって、請求人の主張に首肯することができない。
第8 むすび
以上のとおり、本件発明は、引用発明及び引用文献1記載の技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本件出願は、拒絶をすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2024-003154