特許拒絶査定不服審判
2023-020265
ロボットおよびその制御方法、ならびにプログラム
- 審判番号
- 2023-020265
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2020-525643
- 請求日
- 2023年11月29日
- 審決日
- 2025年06月06日
- 公報発行日
- 2025年08月29日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】GROOVE X株式会社
- 審判長/審判官
- 審判長 刈間 宏信
- 審判官 田々井 正吾
- 審判官 鈴木 貴雄
- 分類
- P18 .121-WZ (G05D)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2020-525643「ロボットおよびその制御方法、ならびにプログラム」拒絶査定不服審判事件〔2019年(令和元年)12月19日国際公開、WO2019/240208〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、2019年(令和元年)6月13日(優先権主張 平成30年6月13日)を国際出願日とする国際特許出願であって、その手続の経緯は、概略、次のとおりである。
令和2年12月11日 :国内書面の提出
令和4年 6月10日 :手続補正書の提出
令和5年 4月25日付け:拒絶理由の通知
同年 7月10日 :意見書、手続補正書の提出
同年 8月21日付け:拒絶査定
同年11月29日 :本件審判(拒絶査定不服審判)の請求
本件審判の請求と同時:手続補正書の提出
令和6年12月10日付け:当審による拒絶理由の通知
令和7年 2月17日 :意見書の提出
第2 本件発明の認定
本件出願の請求項1~2に係る発明は、令和5年11月29日に本件審判の請求と同時に提出された手続補正書により補正がされた特許請求の範囲の請求項1~2に記載された事項により特定されるものと認められるところ、その請求項1に係る発明(以下「本件発明」という。)は、次のとおりのものである。
「移動機構と、
周囲の空間を撮影する撮影部と、
前記撮影部において撮影された撮影画像に含まれる所定のマーカを認識するマーカ認識部と、
認識された前記マーカに基づき前記移動機構による移動を制御する移動制御部と、
前記マーカの位置を記憶するマーカ情報記憶部と、
第1イベントを検出する第1イベント検出部と、
第2イベントを検出する第2イベント検出部と、
アクションを実行するアクション実行部と
を備え、
前記第1イベントが検出されると、前記マーカの前記位置の付近へ移動し、前記第2イベントが検出されると、前記マーカ、前記第1イベント及び前記第2イベントのうちの少なくとも1つに対応する前記アクションを実行する、ロボット。」
第3 当審より通知した拒絶理由
本件発明に対し、令和6年12月10日付けにて当審が通知した拒絶理由は、概略、次のとおりである。
(進歩性)本件発明は、本件出願の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった以下の引用文献1に記載された発明及び引用文献2に記載された事項に基づいて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
引用文献1:国際公開第2017/169826号
引用文献2:特表2017-501473号公報
第4 引用文献に記載された発明又は技術的事項の認定
1 引用文献1に記載された発明の認定
(1)引用文献1に記載された事項
引用文献1には、以下の事項が記載されている(下線は、当審で付した。以下同じ。)。
ア 技術分野
「[0001]
本発明は、内部状態または外部環境に応じて自律的に行動選択するロボット、に関する。」
イ 発明が解決しようとする課題
「[0007]
近年、ロボット技術は急速に進歩しつつあるものの、ペットのような伴侶としての存在感を実現するには至っていない。ロボットに自由意志があるとは思えないからである。人間は、ペットの自由意志があるとしか思えないような行動を観察することにより、ペットに自由意志の存在を感じ、ペットに共感し、ペットに癒される。
したがって、人間的・生物的な行動をエミュレートできるロボットであれば、いいかえれば、人間的・生物的な行動を自律的に選択可能なロボットであれば、ロボットへの共感を大きく高めることができると考えられる。
[0008]
本発明は上記課題認識に基づいて完成された発明であり、その主たる目的は、ロボットに対する共感を高めるための行動制御技術、を提供することにある。」
ウ 発明を実施するための形態
(ア)図1に関して
「[0015]
図1(a)は、ロボット100の正面外観図である。図1(b)は、ロボット100の側面外観図である。
本実施形態におけるロボット100は、外部環境および内部状態に基づいて行動や仕草(ジェスチャー)を決定する自律行動型のロボットである。外部環境は、カメラやサーモセンサなど各種のセンサにより認識される。内部状態はロボット100の感情を表現するさまざまなパラメータとして定量化される。これらについは後述する(当審注:「これらについては後述する」の誤記と認める。)。
本実施形態のロボット100は、屋内行動が前提とされており、たとえば、オーナー家庭の家屋内を行動範囲とする。以下、ロボット100に関わる人間を「ユーザ」とよび、ロボット100が所属する家庭の構成員となるユーザのことを「オーナー」とよぶ。」
「[0019]
ロボット100は、車輪102により移動する。2つの車輪102の回転速度や回転方向は個別に制御可能である。また、車輪102をロボット100のボディ104の内部において上方向にスライドさせ、ボディ104に完全格納することもできる。走行時においても車輪102の大部分はボディ104に隠れているが、車輪102がボディ104に完全格納されるとロボット100は移動不可能な状態(以下、「着座状態」とよぶ)となる。着座状態においては、平坦状の着座面108が床面に当接する。
[0020]
ロボット100は、2つの手106を有する。手106には、モノを把持する機能はない。手106は上げる、振る、振動するなど簡単な動作が可能である。2つの手106も個別制御可能である。
目110にはカメラが内蔵される。目110は、液晶素子または有機EL素子による画像表示も可能である。ロボット100は、目110に内蔵されるカメラのほか、集音マイクや超音波センサなどさまざまなセンサを搭載する。また、スピーカーを内蔵し、簡単な音声を発することもできる。
ロボット100の頭部にはツノ112が取り付けられる。上述のようにロボット100は軽量であるため、ユーザはツノ112をつかむことでロボット100を持ち上げることも可能である。」
「[図1]
[図:0001425197000001.jpg]
」
(イ)図2に関して
「[0021]
図2は、ロボットシステム300の構成図である。
ロボットシステム300は、ロボット100、サーバ200および複数の外部センサ114を含む。家屋内にはあらかじめ複数の外部センサ114(外部センサ114a,114b,・・・,114n)が設置される。外部センサ114は、家屋の壁面に固定されてもよいし、床に載置されてもよい。サーバ200には、外部センサ114の位置座標が登録される。位置座標は、ロボット100の行動範囲として想定される家屋内においてx,y座標として定義される。
[0022]
サーバ200は、家庭内に設置される。本実施形態におけるサーバ200とロボット100は1対1で対応する。ロボット100の内蔵するセンサおよび複数の外部センサ114から得られる情報に基づいて、サーバ200がロボット100の基本行動を決定する。
外部センサ114はロボット100の感覚器を補強するためのものであり、サーバ200はロボット100の頭脳を補強するためのものである。
[0023]
外部センサ114は、定期的に外部センサ114のID(以下、「ビーコンID」とよぶ)を含む無線信号(以下、「ロボット探索信号」とよぶ)を送信する。ロボット100はロボット探索信号を受信するとビーコンIDを含む無線信号(以下、「ロボット返答信号」とよぶ)を返信する。サーバ200は、外部センサ114がロボット探索信号を送信してからロボット返答信号を受信するまでの時間を計測し、外部センサ114からロボット100までの距離を測定する。複数の外部センサ114とロボット100とのそれぞれの距離を計測することで、ロボット100の位置座標を特定する。
もちろん、ロボット100が自らの位置座標を定期的にサーバ200に送信する方式でもよい。」
「[図2]
[図:0001425197000002.jpg]
」
(ウ)図3に関して
「[0029]
座標Qは、ロボット100の現在位置を示す。複数の外部センサ114が定期的に送信するロボット探索信号とそれに対するロボット返答信号により、サーバ200はロボット100の位置座標を特定する。たとえば、ビーコンID=1の外部センサ114とビーコンID=2の外部センサ114がそれぞれロボット100を検出したとき、2つの外部センサ114からロボット100の距離を求め、そこからロボット100の位置座標を求める。
あるいは、ビーコンID=1の外部センサ114は、ロボット探索信号を複数方向に送信し、ロボット100はロボット探索信号を受信したときロボット返答信号を返す。これにより、サーバ200は、ロボット100がどの外部センサ114からどの方向のどのくらいの距離にいるかを把握してもよい。また、別の実施の形態では、車輪102の回転数からロボット100の移動距離を算出して、現在位置を特定してもよいし、カメラから得られる画像に基づいて現在位置を特定してもよい。
図3に示す感情マップ116が与えられた場合、ロボット100は好意地点(座標P1)に引き寄せられる方向、悪意地点(座標P2)から離れる方向に移動する。」
「[図3]
[図:0001425197000003.jpg]
」
(エ)図4に関して
「[0034]
図4は、ロボット100のハードウェア構成図である。
ロボット100は、内部センサ128,通信機126,記憶装置124,プロセッサ122,駆動機構120およびバッテリー118を含む。各ユニットは電源線130および信号線132により互いに接続される。バッテリー118は、電源線130を介して各ユニットに電力を供給する。各ユニットは信号線132により制御信号を送受する。バッテリー118は、リチウムイオン二次電池などの二次電池であり、ロボット100の動力源である。
[0035]
内部センサ128は、ロボット100が内蔵する各種センサの集合体である。具体的には、カメラ、集音マイク、赤外線センサ、サーモセンサ、タッチセンサ、加速度センサ、匂いセンサなどである。通信機126は、サーバ200や外部センサ114、ユーザの有する携帯機器など各種の外部機器を対象として無線通信を行う通信モジュールである。記憶装置124は、不揮発性メモリおよび揮発性メモリにより構成され、コンピュータプログラムや各種設定情報を記憶する。プロセッサ122は、コンピュータプログラムの実行手段である。駆動機構120は、車輪102や手106等の各機構を制御するアクチュエータである。
このほかには、表示器やスピーカーなども搭載される。
[0036]
プロセッサ122は、通信機126を介してサーバ200や外部センサ114と通信しながら、ロボット100の行動選択を行う。内部センサ128により得られるさまざまな外部情報も行動選択に影響する。駆動機構120は、主として、車輪102および手106を制御する。駆動機構120は、2つの車輪102それぞれの回転速度や回転方向を変化させることにより、ロボット100の移動方向や移動速度を変化させる。また、駆動機構120は、車輪102を昇降させることもできる。車輪102が上昇すると、車輪102はボディ104に完全に格納され、ロボット100は着座面108にて床面に当接し、着座状態となる。」
[0037]
駆動機構120がワイヤ134を介して手106を引っ張ることにより、手106を持ち上げることができる。手106を振動させることで手を振るような仕草も可能である。多数のワイヤ134を利用すればさらに複雑な仕草も表現可能である。」
「[図4]
[図:0001425197000004.jpg]
」
(オ)図5に関して
「[0038]
図5は、ロボットシステム300の機能ブロック図である。
上述のように、ロボットシステム300は、ロボット100,サーバ200および複数の外部センサ114を含む。ロボット100およびサーバ200の各構成要素は、CPU(Central Processing Unit)および各種コプロセッサなどの演算器、メモリやストレージといった記憶装置、それらを連結する有線または無線の通信線を含むハードウェアと、記憶装置に格納され、演算器に処理命令を供給するソフトウェアによって実現される。コンピュータプログラムは、デバイスドライバ、オペレーティングシステム、それらの上位層に位置する各種アプリケーションプログラム、また、これらのプログラムに共通機能を提供するライブラリによって構成されてもよい。以下に説明する各ブロックは、ハードウェア単位の構成ではなく、機能単位のブロックを示している。
ロボット100の機能の一部はサーバ200により実現されてもよいし、サーバ200の機能の一部または全部はロボット100により実現されてもよい。」
「[0041]
ロボット100はユーザの身体的特徴や行動的特徴からユーザを識別してもよい。ロボット100は、内蔵のカメラで常時周辺を撮像する。そして、画像に写る人物の身体的特徴と行動的特徴を抽出する。身体的特徴とは、具体的には、背の高さ、平常体温、好んで着る服、メガネの有無、肌のつや、髪の色など身体に付随する視覚的特徴であってもよいし、平均体温や匂い、声の質などその他の特徴も含めてもよい。行動的特徴とは、具体的には、ユーザが好む場所、動きの活発さ、喫煙の有無など行動に付随する視覚的特徴である。たとえば、父親(として識別されるユーザ)は在宅しないことが多く、在宅時にはソファで動かないことが多いが、母親は台所にいることが多く、行動範囲が広い、といった特徴を抽出する。
ロボット100は、大量の画像情報から得られる身体的特徴および行動的特徴に基づいて、高い頻度で出現するユーザを「オーナー」としてクラスタリングする。個人データ格納部218には、クラスタリングされたオーナーの個人データが登録される。」
「[0044]
データ処理部202は、位置管理部208,マップ管理部210および認識部212を含む。位置管理部208は、ロボット100の位置座標を図2に関連した方法にて特定する。また、位置管理部208はユーザの位置座標もリアルタイムで追跡する。
マップ管理部210は、複数の行動マップのいずれかを選択し、選択した行動マップのz値に基づいてロボット100の移動方向を決める。マップ管理部210は、複数の行動マップのz値を加重平均することでロボット100の移動方向を決めてもよい。
たとえば、行動マップAでは座標R1,座標R2におけるz値が4と3であり、行動マップBでは座標R1,座標R2におけるz値が-1と3であるとする。単純平均の場合、座標R1の合計z値は4-1=3,座標R2の合計z値は3+3=6であるから、ロボット100は座標R1ではなく座標R2の方向に向かう。
行動マップAを行動マップBの5倍重視するときには、座標R1の合計z値は4×5-1=19,座標R2の合計z値は3×5+3=18であるから、ロボット100は座標R1の方向に向かう。」
「[0046]
(ロボット100)
ロボット100は、通信部142、データ処理部136、データ格納部148、駆動機構120および内部センサ128を含む。通信部142は、通信機126(図4参照)に該当し、外部センサ114およびサーバ200との通信処理を担当する。データ格納部148は各種データを格納する。データ格納部148は、記憶装置124(図4参照)に該当する。データ処理部136は、通信部142により取得されたデータおよびデータ格納部148に格納されているデータに基づいて各種処理を実行する。データ処理部136は、プロセッサ122およびプロセッサ122により実行されるコンピュータプログラムに該当する。データ処理部136は、通信部142,内部センサ128,駆動機構120およびデータ格納部148のインタフェースとしても機能する。
[0047]
データ処理部136は、認識部156、移動判断部138および行動判断部140を含む。
駆動機構120は、移動駆動部144と行動駆動部146を含む。移動判断部138は、ロボット100の移動方向を決める。移動駆動部144は、移動判断部138の指示にしたがって車輪102を駆動することで、ロボット100を目標地点に向かわせる。サーバ200のマップ管理部210は、行動マップに基づいて、ロボット100の移動先(目標地点)をリアルタイムで計算する。サーバ200は、目標地点の座標をロボット100に送信し、移動判断部138は目標地点に向けてロボット100を移動させる。
ロボット100の移動方向の大枠を決めるのは行動マップであるが、本実施形態のロボット100はユーザの「お出迎え」や「お見送り」といった特定行動も可能である。これについては後述する。
[0048]
行動判断部140は、ロボット100の仕草(ジェスチャー)を決める。データ格納部148においては、あらかじめ複数の仕草が定義されている。具体的には、車輪102を収容して着座する仕草、手106を持ち上げる仕草、2つの車輪102を逆回転させることで、あるいは、片方の車輪102だけを回転させることでロボット100を回転行動させる仕草、車輪102を収納した状態で車輪102を回転させることで震える仕草、などが定義される。
[0049]
行動判断部140は、親密度の高いユーザが近くにいるときには「抱っこ」をせがむ仕草として両方の手106をもちあげる仕草を実行することもできるし、「抱っこ」に飽きたときには車輪102を収容したまま逆回転させることで抱っこをいやがる仕草を表現することもできる。行動駆動部146は、行動判断部140からの指示にしたがって車輪102や手106を駆動することで、ロボット100にさまざまな仕草を表現させる。
[0050]
認識部156は、内部センサ128から得られた外部情報を解釈する。たとえば、ロボット100に対する強い衝撃が与えられたとき、近隣にいるユーザに「乱暴行為」がなされたと認識する。ロボット100に正対した状態にあるユーザが特定音量領域および特定周波数帯域にて発声したとき、認識部156は自らに対する「声掛け行為」がなされたと認識する。また、体温程度の温度を検知したときにはユーザによる「接触行為」がなされたと認識し、接触認識した状態で上方への加速度を検知したときには「抱っこ」がなされたと認識する。このように、認識部156は、ロボット100に対するユーザの各種応対を認識する。これらの各種行為は、快または不快が対応づけられる。
認識部156により認識された応対に応じて、認識部156またはサーバ200の人物認識部214はユーザに対する親密度を変化させる。快行為を行ったユーザに対する親密度は高まり、不快行為を行ったユーザに対する親密度は低下する。
サーバ200のマップ管理部210は、応対の内容に応じて快・不快を判定し、「場所に対する愛着」を表現する行動マップにおいて、快・不快行為がなされた地点のz値を変化させてもよい。」
「[図5]
[図:0001425197000005.jpg]
」
(カ)お出迎え機能に関して
「[0051]
[お出迎え・お見送り機能]
図6は、お出迎えのイメージ図である。
本実施形態においては、玄関のドアが開いてユーザが帰宅するとき、ロボット100は玄関でお出迎えをする。ロボット100は玄関に座り込み、両方の手106を持ち上げて抱っこをせがむ仕草を実行する。また、玄関で回転行動をすることで、ユーザの帰宅を喜ぶ気持ちを表現してもよい。あるいは、ピーピーといった特有の「鳴き声」を内蔵スピーカーから発生させてもよい。
[0052]
ユーザが出かけるときには、ロボット100は玄関にお見送りに向かう。このとき、ロボット100は片方の手106を持ち上げて振動させることで「バイバイ」を表現する。特有の鳴き声を発生させることで、ユーザの外出を寂しがる気持ちを行動表現してもよい。
このように、お出迎え、お見送りに際して、ロボット100は玄関に向かい、あらかじめ定められて人に好意を示す仕草(以下、「愛情仕草」とよぶ)を実行する。」
「[0053]
図7は、ロボット100のお出迎え・お見送り行動を説明するための模式図である。
本実施形態においては、玄関152にあらかじめ外部センサ114aが設置されている。外部センサ114aは、その周辺領域である監視エリア150に対して定期的に、たとえば、1秒に1回の頻度でユーザ探索信号を送信する。ユーザが玄関152のドアを開けて監視エリア150に入ると、ユーザの保有するスマートフォンはユーザ探索信号を検知し、ユーザ返答信号を返信する。ユーザ返答信号にはユーザIDが含まれる。外部センサ114aは、ユーザ返答信号を受信すると、これをサーバ200に送信する。本実施形態においては、外部センサ114aとサーバ200は有線接続される。
外部センサ114は、玄関152の扉の解錠音あるいは扉が開く音を検知したあと、監視エリア150へのユーザの進入を検知することで「帰宅」を認識してもよい。
[0054]
サーバ200は、ロボット100に出迎えを指示するための制御信号を送信する。制御信号により目標地点の位置座標が指定される。ロボット100の通信部142がサーバ200からこの制御信号を受信すると、移動判断部138は移動駆動部144に玄関152へ向かうように指示する。目標地点は、監視エリア150の内部に目標地点が設定される。ロボット100は内蔵のカメラで障害物を確認しそれらを回避しながら目標地点に向かう。
サーバ200は目標地点だけでなく、ロボット100が現在地点から目標地点に向かうためのルートをロボット100に指定してもよい。
ロボット100の移動判断部138は、サーバ200に指示された位置座標をそのまま目標地点として設定してもよいし、サーバがお出迎えを指示したときには移動判断部138が自ら目標地点を決定してもよい。
[0055]
ロボット100が目標地点に到達すると、行動判断部140は愛情仕草を実行する。愛情仕草の一例は、目標地点に着座し、両方の手106を持ち上げて「抱っこ」をせがむかのような仕草である。このような制御により、帰宅したユーザは、ロボット100が自分の帰宅を歓迎していること、自分が外出することはロボット100にとっては淋しいこと、を認識する。このように、ロボット100の人間的・生物的な行動表現を通して、ユーザのロボット100に対する感情移入を強めることができる。」
「[図6]
[図:0001425197000006.jpg]
」
「[図7]
[図:0001425197000007.jpg]
」
(キ)変形例に関して
「[0071]
なお、本発明は上記実施形態や変形例に限定されるものではなく、要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化することができる。上記実施形態や変形例に開示されている複数の構成要素を適宜組み合わせることにより種々の発明を形成してもよい。また、上記実施形態や変形例に示される全構成要素からいくつかの構成要素を削除してもよい。
[0072]
1つのロボット100と1つのサーバ200、複数の外部センサ114によりロボットシステム300が構成されるとして説明したが、ロボット100の機能の一部はサーバ200により実現されてもよいし、サーバ200の機能の一部または全部がロボット100に割り当てられてもよい。1つのサーバ200が複数のロボット100をコントロールしてもよいし、複数のサーバ200が協働して1以上のロボット100をコントロールしてもよい。
ロボット100やサーバ200以外の第3の装置が、機能の一部を担ってもよい。図5において説明したロボット100の各機能とサーバ200の各機能の集合体は大局的には1つの「情報処理装置」として把握することも可能である。1つまたは複数のハードウェアに対して、本発明を実現するために必要な複数の機能をどのように配分するかは、各ハードウェアの処理能力やロボットシステム300に求められる仕様等に鑑みて決定されればよい。
[0073]
本実施形態においては、外部センサ114を介して、サーバ200の認識部212が監視エリア150におけるユーザの存在を検出する。変形例として、ロボット100の認識部156が外部センサ114や内部センサ128を介して、監視エリア150におけるユーザの存在を検出してもよい。」
「[0078]
ロボット100が探索信号を送信し、各外部センサ114から返答信号を受信することで、ロボット100が自らの位置座標を特定してもよい。あるいは、外部センサ114が指向性のある探索信号を送信し、それによって、外部センサ114からロボット100までの距離と方向を特定してもよい。
[0079]
ロボット100は、人間に限らず、猫や犬などの動物の通過を検出してもよい。
ロボット100の内部センサ128が高精度であれば、外部センサ114は必須ではない。また、サーバ200が外部センサ114の機能を備えてもよい。ロボット100の内部センサ128が解錠音を高精度で検出できれば、外部センサ114やサーバ200がなくてもロボット100はお出迎え行動を実行できる。」
「[0081]
一般に家族のひとりひとりの生活パターンはほとんど固定化する。たとえば、父親は朝6時半頃に家を出て、夜9時頃に帰宅する。子どもは朝7時50分頃に家を出て、夕方3時頃に帰宅する。このように日々の生活パターンは決まってくる。ロボット100は、ユーザごとの生活パターンを蓄積する生活パターン蓄積部を更に備え、図5の移動判断部138は生活パターン蓄積部に登録されているユーザ毎の帰宅や外出の時間に基づいて行動をおこなってもよい。生活パターン蓄積部は、サーバ200のデータ格納部206の一部として形成されてもよいし、ロボット100のデータ格納部148の一部として形成されてもよい。
ロボット100は、いずれかのユーザの帰宅時間が近づいてきたら玄関近くへ移動し、ユーザの帰宅を待つ仕草、たとえば、着座や回転移動などを実行してもよい。また、いずれかのユーザの外出時間が近づくと、そのユーザのトラッキングを優先的に実行し、ユーザが玄関に向かうことを迅速に検出し、後を追う行動をしてもよい。」
(ク)図8に関して(ロボット100の存在判定部402について)
「[0085]
図8は、ロボットシステム300の機能ブロック図の変形例である。
変形例において、ロボット100のデータ処理部136は、瞳制御部406を備える。認識部156は、出入口特定部400、存在判定部402および進路予測部404を含む。変形例におけるロボット100の目110は、瞳画像を表示させるディスプレイである。瞳制御部406は、目110の瞳画像の位置や大きさを変化させる。」
「[0087]
出入口特定部400は、室内空間における出入口を特定する。ここでいう「出入口」は、玄関扉、室内扉および窓など人が通り抜け可能な開口部であればよい。出入口の室内空間における位置座標はあらかじめロボットシステム300に初期設定されてもよい。この場合には、出入口特定部400は位置座標情報に基づいて出入口を特定する。また、出入口特定部400は、開閉により状態が変化する、あるいは、通常時は壁でありながらユーザなどの移動物体が通過することもある可変壁を「出入口」と画像認識してもよい。
[0088]
存在判定部402は、出入口特定部400により特定された出入口の付近にユーザがいるか否かを判定する。ここでいう「特定された出入口」は、実際の出入口である必要はなく、ロボット100が出入口と認識した場所であればよい。存在判定部402は、集音マイクやカメラなど各種センサにより、出入口から所定範囲内、たとえば、1メートル以内の範囲にユーザが画像認識されたとき、出入口付近に人がいる、と判定する。実質的には、出入口の周辺に監視エリア150が設定されるのと同等の作用が生じる。出入口付近に外部センサ114が設置されるときには、外部センサ114からの検出信号により、出入口付近に人がいると判断してもよい。」
「[0093]
ロボット100の存在判定部402は、マイクロフォンアレイなどの指向性のある音声検出器により、出入口410の方向から音声が検出されたときに出入口410の周辺にユーザが存在すると判定してもよい。マイクロフォンアレイは複数のマイクロフォンを備えるため、音声を検出するだけでなく、発声源の方向を特定することもできる。たとえば、出入口410の開錠音を検出したとき、ロボット100は出入口410の方向に移動してもよい。
[0094]
存在判定部402は、特定のキーワードを音声検出したとき、出入口410の周辺にユーザがいると判定してもよい。特定のキーワードとは、「ただいま」「おかえり」「いってらっしゃい」「バイバイ」「いってきます」「おいで」などの帰宅や出発にともなって発せられる典型的な用語であればよい。ユーザが出かけるとき、または、帰宅したときに本人または周りの人間が発する典型的な言葉を「特定音声」としてサーバ200等のデータベースにあらかじめ登録しておく。特定音声が検出されたとき、ロボット100は特定音声の発声地点に向かうとしてもよい。」
(ケ)ユーザの生活パターンに基づくロボット100のお出迎え機能について
「[0099]
ロボット100またはサーバ200は、ユーザの生活パターンを蓄積する生活パターン蓄積部を備えてもよい。あるいは、ロボット100の通信部142は、外部データベースとして形成される生活パターン蓄積部にアクセスすることにより、ユーザごとの生活パターン情報を適宜取得してもよい。生活パターン蓄積部は、ユーザごとに、起床時刻、出勤等による外出時刻、帰宅時刻および就寝時刻を生活パターン情報として登録する。これらの時刻は通常はばらつきがあるため、それらの平均値や最頻値を代表値として登録してもよい。ユーザごとだけではなく、曜日や季節ごとに、複数種類の生活パターンデータを登録してもよい。
[0100]
存在判定部402は、ユーザの生活パターン情報を参照して、ユーザの帰宅時刻を予測してもよい。移動判断部138は、ユーザの予測された帰宅時刻が近づくと、出入口410の方向に移動し、ユーザを前もって「お出迎え」してもよい。このような制御方法によれば、高い精度にてお出迎えを実現しやすくなる。あるいは、帰宅時刻が近づかなければお出迎えをしないとしてもよい。」
「[0114]
同様にして、ユーザAの帰宅時刻の最頻値が午後8時20分であるとする。ロボット100は、午後8時20分の20分前の午後8時になると監視エリア150に移動し、ユーザAの帰宅を待ち構えてもよい。あるいは、監視エリア150の扉の解錠音を検出可能な範囲に位置し、ユーザAのお出迎えのために待機してもよい。このように、ロボット100は、生活パターン情報を参照し、ユーザの帰宅予定時刻(最頻値、平均値等)を予測し、帰宅予定時刻よりも所定時間前に監視エリア150付近の所定エリアに移動してもよい。そして、ユーザが玄関152の監視エリア150に進入したときや、特定のキーワードが検出されたとき、ユーザが玄関152の扉を開けたとき、愛情仕草を実行することで「お出迎え」をしてもよい。」
「[0116]
ロボット100の認識部156が、ユーザが扉を通過するのを内蔵のカメラにて確認したとき、お出迎えまたはお見送り行動をサーバ200からの指示を待つことなく主体的に実行してもよい。扉の近くに設置される外部センサ114が、ユーザが扉を通過するのを検出する場合、外部センサ114は検出信号をサーバ200に送信し、サーバ200がロボット100にお出迎え等を指示してもよい。あるいは、外部センサ114からロボット100に直接検出信号を送信し、ロボット100の移動判断部138は外部センサ114のIDに対応する扉の存在する方向に移動目標地点を設定してもよい。ロボット100が移動目標地点に到達したあと、認識部156がカメラによってユーザを画像認識したとき、ロボット100は愛情仕草を実行する。」
「[図8]
[図:0001425197000008.jpg]
」
(2)引用文献1に記載されているといえる事項
上記(1)から、引用文献1には、次の事項が記載されているといえる。
ア 引用文献1には、ロボット100、サーバ200および複数の外部センサ114を含むロボットシステム300(段落[0021]、[0038]、図2、図5)について記載され、当該ロボット100は、例えば、オーナー家庭の家屋内を行動範囲とし、外部環境および内部状態に基づいて行動や仕草(ジェスチャー)を決定する自律行動型のロボットである(段落[0015]、図1)ことがわかる。また、段落[0038]における「サーバ200の機能の一部または全部はロボット100により実現されてもよい。」及び段落[0072]における「サーバ200の機能の一部または全部がロボット100に割り当てられてもよい。」との記載から、引用文献1にサーバ200の機能として記載されるものも、ロボット100に割り当てられて実現されると理解される。
イ 引用文献1には、ロボット100に対する共感を高めるための行動制御技術(段落[0008])の1つとして、ユーザが玄関のドアを開けて帰宅する際に、ロボット100が玄関に向かい、ユーザに好意を示す愛情仕草をする(段落[0051]~[0052]、[0114]、[0116]、図6、図7)お出迎え機能に係る実施形態が示されている。
ウ 引用文献1に記載のロボット100は、
車輪102及び車輪102を駆動する移動駆動部144(段落[0019]、[0047]、図1)と、
外部環境を認識する内部センサ128の1つとしての、常時周辺を撮像するカメラ(段落[0015]、[0035]、[0041]、図4)と、
内部センサ128から得られた外部情報を解釈する認識部156(段落[0050]、図5)と、
移動駆動部144への指示により車輪102を駆動させることで、ロボット100を目標地点に向けて移動させる移動判断部138(段落[0047]、[0054]、図4、図5)と、
各種データを格納する記憶装置124であるデータ格納部148(段落[0046])と、
を備えることがわかる。
エ 上記ウの認識部156に関し、引用文献1の段落[0029]の「カメラから得られる画像に基づいて現在位置を特定してもよい。」との記載から、上記認識部156は、内部センサ128の1つとしてのカメラから得られる画像に基づいて、現在位置を特定する機能を備えることもできるといえる。
また、段落[0116]の「ロボット100の認識部156が、ユーザが扉を通過するのを内蔵のカメラにて確認したとき、お出迎えまたはお見送り行動をサーバ200からの指示を待つことなく主体的に実行してもよい。・・・ロボット100が移動目標地点に到達したあと、認識部156がカメラによってユーザを画像認識したとき、ロボット100は愛情仕草を実行する。」との記載から、上記認識部156は、ユーザが扉を通過する様子を、内蔵のカメラによって撮像し、ユーザを画像認識する機能を有しているといえる。
さらに、段落[0054]の「ロボット100は内蔵のカメラで障害物を確認しそれらを回避しながら目標地点に向かう。」との記載から、上記認識部156は、内蔵のカメラで得られた画像から障害物を確認する機能を有しているといえる。
オ 上記ウの移動判断部138による目標地点への移動に関し、引用文献1の段落[0021]の「サーバ200には、外部センサ114の位置座標が登録される。位置座標は、ロボット100の行動範囲として想定される家屋内においてx,y座標として定義される。」との記載、段落[0023]の「外部センサ114は、定期的に外部センサ114のID(以下、「ビーコンID」とよぶ)を含む無線信号(以下、「ロボット探索信号」とよぶ)を送信する。・・・複数の外部センサ114とロボット100とのそれぞれの距離を計測することで、ロボット100の位置座標を特定する。」との記載から、引用文献1に記載のロボット100は、複数の外部センサ114の登録されたそれぞれの位置座標と、各外部センサ114とロボット100との無線信号に基づくそれぞれの距離とから、ロボット100の位置座標を特定するものといえる。
また、お出迎え機能に関し、段落[0054]の記載及び図7の図示内容から、ロボット100の移動判断部138は、出迎えを指示するための制御信号により、監視エリア150の内部に設定された目標地点の位置座標を指定して移動駆動部144に玄関152へ向かうように指示するものであることが理解される。
してみると、引用文献1に記載されたロボット100は、移動判断部138により、監視エリア150の内部に設定された目標地点へ到達するために、外部センサ114に基づく自らの位置座標と、制御信号に含まれる目標地点の位置座標とが一致するように、内蔵のカメラで障害物を確認しそれらを回避しながら(段落[0054]、上記エ)、車輪102及び移動駆動部144による移動を制御するものといえる。また、図7に関する段落[0053]の記載から、玄関152に外部センサ114aが設置されるところ、当該外部センサ114aは、ユーザの探索(段落[0053])に限らず、位置座標が登録され(段落[0021])、ロボット100の位置座標を特定する(段落[0023])ためにも使用されるといえる。
カ 上記ウのデータ格納部148に関し、引用文献1の段落[0021]には、「サーバ200には、外部センサ114の位置座標が登録される。位置座標は、ロボット100の行動範囲として想定される家屋内においてx,y座標として定義される。」と記載されるとともに、上記アで示した段落[0038]及び段落[0072]の記載から、ロボット100の行動範囲として想定される家屋内における外部センサ114の位置座標を登録する機能を、ロボット100のデータ格納部148に備えることが可能なものと理解される。
キ 引用文献1の記載(特に、段落[0114]、[0116]を参照。)から、引用文献1に記載されたロボット100は、ユーザのお出迎え機能(上記イ)の具体的態様として、次の検出・判断・認識・動作をすることが理解される。すなわち、認識部156の存在判定部402により、生活パターン情報を参照し、ユーザの帰宅予定時刻(最頻値:午後8時20分、平均値等)を予測し、帰宅予定時刻よりも所定時間前(20分前)になると(段落[0099]~[0100]、[0114])、移動判断部138により指定された監視エリア150付近の玄関152に移動し(段落[0081]、[0100]、[0114]、上記オ)、その後、認識部156の存在判定部402(段落[0073]、[0085]、[0088]、[0093]~[0094])により、ユーザが玄関152の扉を通過して監視エリア150に進入したことを内蔵のカメラによってユーザを画像認識したとき(段落[0088]、[0114]、[0116]、上記エ)、特定のキーワードが内蔵の音声検出器によって検出されたとき(段落[0094]、[0114])、又は、ユーザが玄関152の扉を開けたとき(段落[0053]、[0093]、[0114])に、玄関152の周辺にユーザが存在すると判定し(段落[0088]、[0093]~[0094])、ロボット100の行動判断部140から行動駆動部146への指示により、両方の手106を持ち上げて「抱っこ」をせがむかのような(段落[0055])、ユーザの帰宅に対応する愛情仕草を実行する(段落[0048]~[0049]、[0055]、[0116]、上記イ)ことがわかる。そして、存在判定部402により上記機能を実現させるため、ロボット100が、ユーザの帰宅予定時刻よりも所定時間前の時刻になったことを検出する手段を備えていることは、自明な事項であり、また、ユーザを画像認識するための検出手段としてのカメラ(段落[0088]、[0116]、上記エ)、キーワードや出入口の開錠音を検出するための集音マイクやマイクロフォンアレイなどの指向性のある音声検出器(段落[0088]、[0093]~[0094])などの各種センサ(段落[0088])を備えているといえる。
ク 引用文献1には、上記ア~キのほか、変形例として、段落[0079]には「ロボット100の内部センサ128が高精度であれば、外部センサ114は必須ではない。・・・ロボット100の内部センサ128が解錠音を高精度で検出できれば、外部センサ114やサーバ200がなくてもロボット100はお出迎え行動を実行できる。」ことが記載される。また、上記アのとおり、段落[0038]には「サーバ200の機能の一部または全部はロボット100により実現されてもよい。」と記載され、段落[0072]には「サーバ200の機能の一部または全部がロボット100に割り当てられてもよい。」と記載される。さらに、上記エのとおり、段落[0029]には、「カメラから得られる画像に基づいて現在位置を特定してもよい。」と記載される。
(3)引用発明1
上記(1)~(2)から、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。
「車輪102及び車輪102を駆動する移動駆動部144と、
外部環境を認識する内部センサ128の1つとして、常時周辺を撮像するカメラと、
前記カメラにより撮像された画像に基づいて、現在位置、ユーザ又は障害物を認識する認識部156と、
外部センサ114に基づく自らの位置座標と、制御信号に含まれる目標地点の位置座標とに基づいて、前記車輪102及び移動駆動部144による目標地点への移動を制御する移動判断部138と、
前記外部センサ114の位置を記憶するデータ格納部148と、
ユーザの帰宅予定時刻よりも所定時間前になったことを検出する手段と、
ユーザが玄関152の周辺に存在することを検出するための各種センサと、
愛情仕草を実行する行動判断部140と
を備え、
ユーザの帰宅予定時刻よりも所定時間前になったことを検出すると、玄関152に設置された外部センサ114aの位置の付近の監視エリア150の内部に設定された前記目標地点へ移動し、ユーザが玄関152の周辺に存在することを検出すると、ユーザの帰宅に対応する前記愛情仕草を実行する、ロボット100。」
2 引用文献2に記載された技術的事項の認定
(1)引用文献2に記載された事項
引用文献2には、以下の事項が記載されている。
ア 背景技術
「【0003】
多くの技術分野において、自律行動をなすロボットを使って、これらが存在し得る障害物と衝突せずに空間内を自由に移動できるようにすることが望ましい。
【0004】
特に掃除対象の複雑な環境および表面の中でのロボットバキュームクリーナのナビゲーションおよび位置決めを支援することが望ましい。ナビゲーションおよび位置決めはしたがって、人工のマーカまたは人工のランドマークを使うことによって改良できる。」
「【0006】
多数の先行技術のロボットバキュームクリーナが、Simultaneous Localization and Mapping(SLAM)と呼ばれる技術を採用している。SLAMは、移動ロボットバキュームクリーナによる未知の環境のマップ構築と同時に、そのマップを使用した環境のナビゲーションの問題に関係している。これは一般的に、レンジ計測のための水平走査レーザと組み合わされる。さらに、ロボットの車輪の移動により計測されるロボットの概略位置を提供するために走行距離計測法が用いられる。」
「【0009】
これに加えて、ロボットバキュームクリーナが自然のランドマークまたは掃除対象表面内のマーカにしか頼ることができない場合、または何もなさすぎる、または反復的すぎる環境の場合、したがって環境のシグネチャが十分に豊富でない場合、ロボット掃除機は、ナビゲーション中およびその現在位置を特定しようとする際に問題に遭遇する可能性がある。」
イ 発明が解決しようとする課題
「【0011】
本発明の目的は、上述の問題を解決し、ナビゲーションと自己位置決めを正確に行うことができ、その用途において効率的で、使用者にとって高い柔軟性を提供するロボット掃除機を提供することである。」
ウ 課題を解決するための手段
「【0015】
本明細書においては、ロボット掃除機が開示され、これは、本体と、ロボット掃除機の付近からデータを取得するように構成された障害物検出装置と、を含む。ロボット掃除機は、掃除部材と、推進システムと、をさらに含み、前記推進システムは、ロボット掃除機を掃除対象表面上で駆動させるように構成され、処理ユニットは、障害物検出装置により取得された前記データから少なくとも1つの特徴を抽出し、取得して、取得された特徴を保存された特徴と比較し、取得された特徴が保存された特徴のうちの1つと一致した場合に、ロボット掃除機の位置を推定するように構成される。」
「【0018】
障害物検出装置は、3Dセンサシステムを含んでいてもよく、この3Dセンサシステムはレーザスキャナ、カメラ、レーダ、その他であってもよい。
【0019】
ロボット掃除機は、したがって、掃除対象表面上で動き回っている間にその付近を継続的に観察し、記録することによって掃除動作を実行してもよい。その多くの取得された特徴のうちの1つが保存された特徴と一致したとき、ロボット掃除機は保存された特徴に関連する命令に基づいて動作を実行してもよい。したがって、保存された特徴、例えば「台所」を、「掃除しない」という命令に関連付けることが可能であり、これは、取得された特徴のうちの1つが特定の保存された特徴、「台所」と一致しなければ直ちに、ロボット掃除機に台所を掃除させない。保存された特徴である台所は、特定の人工の3Dマーカから導き出されるか、または冷蔵庫、コンロその他から特定の特徴を認識することから導き出されてもよい。
【0020】
3Dセンサシステムは、ロボット掃除機の付近の画像を記録するように構成されたカメラ装置と、ロボット掃除機の前記付近を照明するように構成された第一および第二の垂直ラインレーザと、を含んでいてもよい。処理ユニットはさらに、記録された画像から位置情報を導き出すように構成されてもよい。
【0021】
3Dまたは垂直マーカは、自然の、または人工のマーカであってよい。
【0022】
取得された特徴と保存された特徴は、3Dマーカから導き出されてもよい。3Dマーカ、したがって、ロボット掃除機の位置もまた、記録された画像から導き出されてよい。
【0023】
ロボット掃除機は、掃除対象表面のマップを構築したら、保存された特徴および関連する部屋がどこにあるかを覚え、または取得することを開始し、使用者はロボット掃除機に「浴室」を掃除するように命令してもよく、その結果、ロボット掃除機はまっすぐに浴室に行き、そこを掃除する。」
「【0041】
ある実施形態において、ロボット掃除機の障害物検出装置は、3D物体マーカの画像を記録し、マーカのうちの少なくとも1つから少なくとも1つの特徴を導き出し、取得するように構成される。」
「【0051】
3Dマーカまたは物体は、ドア、ゲート、または廊下等の入口の近くに貼り付けて、ロボット掃除機に、それがどの領域または部屋に入ろうとしているかを「示す」ように構成されてもよい。」
「【0057】
ロボット掃除機を動作させる上述の方法は、異なる種類のマーカを異なる部屋の入口付近に取り付けるステップをさらに含んでいてもよく、ロボット掃除機は、取り付けられたマーカのうちの少なくとも1つから特徴と位置を認識して取得し、少なくとも1種類のマーカの既知の特徴に割り当てられた命令に従ってその動作または移動を制御するように構成される。」
エ 発明を実施するための形態
「【0068】
ここで、図面を参照すると、これらは本発明の例示的な実施形態を示しており、ロボット掃除キットまたはシステム1は、ロボット掃除機2と、図4に示されているようなモジュール式の人工垂直マーカセット4と、を含む。ロボット掃除キット1は、ロボット掃除機2のバッテリ(図示せず)を再充電するように構成された充電台6をさらに含む。
【0069】
ロボット掃除機2は、3Dセンサシステム12の形態の障害物検出装置を含み、これは、水平または垂直ラインレーザであってもよい第一および第二のラインレーザ8、10と、カメラ装置13と、を含む。ロボット掃除機は、図2および3に最もよく示されているように、処理ユニット14と、駆動輪16を含む推進システム20と、本体18と、掃除部材22と、をさらに含んでいてもよい。第一および第二のラインレーザ8、10は、好ましくは垂直ラインレーザ8、10であってもよく、これらはカメラ装置13の付近に、ただしそれとずらして配置され、ロボット掃除機2の高さと幅より大きい高さと幅を照明するように構成される。さらに、カメラ装置13の角度は、第一および第二のラインレーザ8、10により照明される空間より小さく、それによってカメラ装置13は確実に最適に使用されることになる。カメラ装置13は1秒間に複数の画像を撮影し、記録するように構成される。画像からのデータ、すなわち障害物検出装置によってロボット掃除機の付近から得られたデータが処理ユニット14によって抽出されてもよく、このデータは、処理ユニット14に接続されているか、それと一体に形成されている電子記憶媒体50に保存されてもよい。」
「【0072】
ロボット掃除機1の推進システム20は、図2において最もよく示されているように、2つの駆動輪16を含む。駆動輪16は、推進システム20のドライブ11、11'を介して相互に独立して移動するように構成されていてもよい。駆動輪16の各々は、ドライブ11、11'を含んでいてもよい。推進システム20したがって2つのドライブ11、11'は、処理ユニット14または制御手段に接続されていてもよい。各ドライブ11、11'は、それぞれの駆動輪16のためのサスペンションおよびギアボックスをさらに含んでいてもよい。
【0073】
第一および第二の垂直ラインレーザ8、10は、ロボット掃除機2の付近を、通常はロボット掃除機2の移動方向に走査するように、好ましくは垂直走査するように構成される。第一および第二のラインレーザ8、10は、レーザビームを送るように構成され、これは家または部屋の家具、壁、およびその他の物体を照明する。3Dセンサシステム12およびカメラ装置13はそれぞれ画像を撮影して記録し、処理ユニット14は、ロボット掃除機2が動作している間に、ピースを合体させて、ロボット掃除機2によりカバーされる距離を測定することによってロボット掃除機2が動作している周囲状況の画像またはレイアウトを作成してもよい。ロボット掃除機2はしたがって、動作/掃除によってその環境または周囲状況について学習するように構成される。」
「【0076】
モジュール式垂直マーカセット4は、複数の種類の人工マーカ24b~24gを含む。モジュール式垂直マーカセット4は、複数のペアの同じ種類のマーカ24b~24gを含んでいてもよく、これらの同じ種類の垂直マーカの24b~24gのペアは、図1aに示されているように、部屋へと続くドア枠の両側に設置されてもよい。ロボット掃除機2の向きのためには、2つのマーカ24b~24gをドア枠の両側に設置することが有利である場合もあるが、1つの垂直マーカ24b~24gだけをドア枠の横またはドア枠に設置することも可能である。
【0077】
ロボット掃除機2およびその処理ユニット14はそれぞれ、各種の垂直マーカ24b~24gが第一および第二のレーザ8、10によって照明されたときに作られた、少なくとも1つの特徴または特性を認識し、保存してもよい。しかしながら、第一および第二のレーザ8、10は前記特徴を生成するために必要ではなく、第一および第二のレーザ8、10を使用せずに、マーカ24b~24gまたは掃除対象表面52内のその他の物体から特徴を導き出すことが可能である。特徴は、ロボット掃除機2が動き回っている間に3Dセンサシステム13が写真を撮影するときに生成された画像から抽出されるデータを含む。これは図1aにおいて最もよく示されている。ロボット掃除機2はしたがって、その環境の様々な特徴を学習し、認識し、保存するように構成される。設置されたマーカ24b~24gは、これらが壁に対して取り付けられた時。
【0078】
好ましくは、垂直マーカ24b~24gの各々から複数の特徴が抽出され、保存されてもよい。垂直マーカ24b~24gから導き出される特徴または特性が多いほど、ロボット掃除機はよりよく人工マーカ24b~24gを認識し、識別できる。
【0079】
ロボット掃除機2に、各種のマーカ24b~24gとそれらの特徴を記録し、認識するように教示するために、ロボット掃除機2は垂直基準面の正面に位置付けられてもよく、すると、使用者はマーカ24b~24gを次々に一時的に設置してもよい。すると、障害物検出装置によって各々の種類のマーカ24b~24gの画像が撮影され、この画像が分析されて、少なくとも1つの特徴が取得され、例えば記憶媒体50の上のデータベースの中に保存される。データベースに保存された取得特徴が保存された特徴を形成する。したがって、各種のマーカ24b~24gはデータベースの中に少なくとも1つの関連する保存された特徴を有する。各々の種類のマーカ24b~24gについて、データベースの中に複数の保存された特徴があってもよい。
【0080】
処理ユニット14は、図2に示されているように、ユーザインタフェース44を含んでいてもよい。ユーザインタフェース44は、基準面を走査した直後に使用者が各種のマーカ24b~24gの各々の特定の名前およびそれに割り当てられた部屋または領域を入力することができるように構成されていてもよく、それによって使用者は、マーカ24b~24gを設置する前に、設置されたマーカ24b~24gに割り当てられた、対応する名前の部屋または領域への入口で基準走査が行われるようにしてもよい。
【0081】
例えば、使用者は、台所に名前を付け、ロボット掃除機2にフラッグで知らせたいと望むこともあり、したがって、特定の1対の、または1つの特定のマーカ24b~24gが垂直基準面に一時的に設置され、その後、走査され、特徴がロボット掃除機2によって記録され、すると、特定のマーカに関連付けられた部屋または領域の名前と、その特徴または垂直マーカ24のペアのほか、特定の保存された特徴が認識された時に何をすべきかに関する命令がユーザインタフェース44に書き込まれ、処理ユニット14によって保存されてもよい。その後、最後のステップとして、特定のマーカ24b~24gの特定のペアまたはその中の1つが台所の入口に設置されてもよい。ここでロボット掃除機2が面52を掃除するように掃除モードに設定されると、これは画像を記録し、その画像から特徴を導き出して取得し、これらの取得された特徴を、データベースからの保存された特徴と比較する。取得された特徴が「台所」に関する保存された特徴と一致すれば、ロボット掃除機2は「台所」に関する特定の保存された特徴に割り当てられた命令に従って動作する。使用者は、台所を掃除しないように決めていることもあり(命令)、ロボット掃除機2はしたがって、取得された特徴が「台所」に関して保存された特徴と一致すると、方向転換して戻る。したがって、本発明によれば、ロボット掃除機2に対して台所に入らないように、または1日のうちの特定の時間だけ掃除するように、またはその他の指示または教示を行うことができる。この方法とこのロボット掃除機により、使用者はまた、階段または他の敷居等の進入禁止領域を設定し、マークすることも可能となる。
【0082】
特定時間動作した後、ロボット掃除機2はまた、保存された特徴したがって、設置されたマーカ24b~24gが掃除面52内のどこに位置付けられるか、およびロボット掃除機2自体が構築したマップを覚える。
【0083】
ロボット掃除機2は、とりわけ、教示または学習モードで、および掃除モードで動作するように構成されてもよい。したがって、教示モードで行われる上記の教示プロセスの後に、ロボット掃除機2は掃除モードに切り換えられてもよく、このモードでは自律的に動作および表面52の掃除を開始し、異なるマーカ24b~24gと教示されたそれらの対応する特徴を認識するが、その時点で前記マーカは、図1aにおいて最もよく示されているように、対応する名前の部屋または領域への入口に設置されている。
【0084】
図1aは、トイレ54、階段56、第一の寝室58、第二の寝室60、第三の寝室62、家事室64、および台所66等の様々な部屋または領域を含む家の例示的な面52を示している。上述の部屋の各々に、図1b、1c、1d、1e、1f、1gに示されているような1種類の特別なマーカ24b、24c、24d、24e、24f、24gのペアによりマークされている。異なる種類のマーカ24b、24c、24d、24e、24f、24gのペアの各々とその典型的な特徴がロボット掃除機2に対して示され、教示されているため、ロボット掃除機2は垂直マーカ24b、24c、24d、24e、24f、24gのペアを認識し、例えば、図1gの領域「階段」をマークするために使用されている特定の垂直マーカ24gの特別な半円形の3次元形状に気付くと、それ以上進まない。図1b~1gからわかるように、固有の異なるマーカ24b、24c、24d、24e、24f、24gの各々は3次元(3D)形状を有し、垂直マーカの中心軸Aを含み、マーカ24b、24c、24d、24e、24f、24gが設置されている壁68によって画定される表面に垂直な向きの垂直平面について少なくとも部分的に対称である。」
「【0093】
これでロボット掃除機2は各部屋または領域を基本的に名前で知っているため、使用者は、掃除プロセス全体を調整、制御し、プログラムすることができる。ロボット掃除機に対し、インタフェース44を介して、どの部屋または領域をいつ掃除すべきかを指示することさえ可能であり得る。例えば、使用者はロボット掃除機2に対し、台所66は食事の準備が終わった後に掃除するように指示することも可能であり得る。ロボット掃除機2は掃除面52のレイアウトを学習し、保存してあり、したがって、図1dに示されるように、台所がどこにあるかがわかっているため、ロボット掃除器2はプロセスされた時点以降に掃除動作を実行する。各種のマーカ24b~24gはしたがって、ロボット掃除機2がナビゲートするのを助け、これらはまた、掃除対象表面52上でのロボット掃除機2のナビゲーションを改善する。」
「【図1a-1g】
[図:0001425197000009.jpg]
【図2】
[図:0001425197000010.jpg]
【図3】
[図:0001425197000011.jpg]
【図4】
[図:0001425197000012.jpg]
」
(2)引用文献2に記載されているといえる事項
上記(1)から、引用文献2には、次の事項が記載されているといえる。
ア 引用文献2には、トイレ54、階段56、第一の寝室58、第二の寝室60、第三の寝室62、家事室64、および台所66等の様々な部屋または領域を含む家のなかで、自律行動をなすロボットを使って掃除面52を掃除するロボット掃除機2(段落【0003】、【0084】、図1a~図1g)についての技術が記載されているといえる。
イ 引用文献2に記載されたロボット掃除機2は、2つの駆動輪16及びドライブ11、11'を含む(段落【0072】、図2)ものであり、処理ユニット14または制御手段に接続されて移動を制御するものであるといえる。
また、引用文献2に記載されたロボット掃除機2は、カメラ装置13を含む、3Dセンサシステム12の形態の障害物検出装置を含むものであって、カメラ装置13は1秒間に複数の画像を撮影し、記録するように構成される(段落【0018】、【0069】)ものである。
ウ 引用文献2に記載されたロボット掃除機2は、ナビゲーションと自己位置決めを正確に行うことで、効率的で柔軟性のある装置を提供することを目的(段落【0011】)としたものであって、部屋へと続くドア枠に複数の種類の垂直マーカ24b~24gが設置され(段落【0076】、図1a~図1g)、ロボット掃除機2が動き回っている間に3Dセンサシステム12のカメラ装置13が当該垂直マーカ24b~24gの写真を撮影し、生成された画像から処理ユニット14が特徴を抽出し、記憶媒体50に保存する(段落【0022】、【0041】、【0069】、【0073】、【0077】、【0079】)ものであって、設置された垂直マーカ24b~24gが掃除面52内のどこに位置付けられるか、ロボット掃除機2自体が構築したマップを覚える(段落【0006】、【0040】、【0082】)ものであるといえる。そして、設置された垂直マーカ24b~24gが掃除面52内のどこに位置付けられるか、ロボット掃除機2自体が構築したマップを覚えるのであるから、当該構築したマップを記憶するための手段が設けられることは、明らかである。
エ 引用文献2に記載されたロボット掃除機2は、教示モードで行われる上記ウの教示プロセスの後に、ロボット掃除機2は掃除モードに切り換えられ(段落【0083】)、インタフェース44を介して、どの部屋または領域をいつ掃除すべきかを指示することが可能となるものであり、例えば、ロボット掃除機2に対し、台所66は食事の準備が終わった後に掃除するように指示すると、ロボット掃除機2は、掃除面52のレイアウトを学習し、保存してあるため、台所がどこにあるかがわかっており、所定の時点以降に台所の掃除動作を実行する(段落【0081】、【0093】)ことができる。また、掃除対象表面のマップを構築したら、保存された特徴および関連する部屋がどこにあるかを覚えているため、ロボット掃除機に「浴室」を掃除するように命令すれば、ロボット掃除機はまっすぐに浴室に行き、そこを掃除する(段落【0023】)ことが記載されているといえる。そして、ロボット掃除機2が位置を推定する際には、障害物検出装置に含まれるカメラ装置13により取得されたデータから垂直マーカ24b~24gに係る少なくとも1つの特徴を抽出し、取得して、取得された特徴を保存された特徴と比較し、取得された特徴が保存された特徴のうちの1つと一致すると認識した場合に、ロボット掃除機の位置が推定される(段落【0015】、【0022】、【0057】)ものであり、移動の際には、上記イに示した処理ユニット14にて移動を制御する(段落【0072】)ものと理解される。
(3)引用文献2記載の技術的事項
上記(1)~(2)から、引用文献2には、家のなかで自律行動をなす、次のロボット掃除機2が記載されているといえる。
「2つの駆動輪16及びドライブ11、11'と、
カメラ装置13を含む3Dセンサシステム12と、
カメラ装置13において撮影された画像に含まれる垂直マーカ24b~24gを認識する処理ユニット14の認識に係る機能と、
認識された垂直マーカ24b~24gに基づき2つの駆動輪16及びドライブ11、11'による移動を制御する処理ユニット14の移動に係る機能と、
垂直マーカ24b~24gの位置を記憶するための手段と、
台所又は浴室を掃除するように指示するためのインタフェース44と、
台所又は浴室を掃除する処理ユニット14の掃除に係る機能と
を備え、
台所又は浴室を掃除するように指示されると、台所又は浴室に対応する垂直マーカの位置の付近の台所又は浴室へ移動し、指示に対応する掃除を実行するロボット掃除機2。」
そして、引用文献2には、当該ロボット掃除機2に関して、次の技術的事項(以下、「引用文献2記載の技術的事項」という。)が記載されていると認められる。
「カメラ装置13において撮影された画像に含まれる垂直マーカ24b~24gを認識し、
認識された垂直マーカ24b~24gに基づき移動を制御し、
垂直マーカ24b~24gの位置を記憶し、
台所又は浴室を掃除するように指示されると、垂直マーカ24b~24gのうち指示に対応する垂直マーカの位置の付近の台所又は浴室へ移動し、指示に対応する掃除を実行すること。」
第5 本件発明と引用発明1との対比
1 相当関係
本件発明と引用発明1とを対比すると、両者には次の関係があるといえる。
ア 引用発明1における「車輪102」及び「移動駆動部144」は、ロボット100の目標地点への移動のためのものであるから、その機能からみて、本件発明における「移動機構」に相当する。また、引用発明1における「常時周辺を撮像するカメラ」は、ロボット100の周囲の空間を撮像することで外部環境を認識するためのものであるから、その機能からみて、本件発明における「周囲の空間を撮影する撮影部」に相当する。
イ 引用発明1における「移動判断部138」は、ロボット100が目標地点に到達するように、車輪102及び移動駆動部144による移動を制御するものであって、外部センサ114の位置座標等に基づくもの(上記第4の1(2)オ)であり、また、本件発明の「移動制御部」における「認識された前記マーカ」は、本件発明において別途特定される「前記マーカの前記位置の付近へ移動」するとの事項を踏まえれば、「位置を特定するための物体」と理解されるから、
引用発明1における「外部センサ114に基づく自らの位置座標と、制御信号に含まれる目標地点の位置座標とに基づいて、前記車輪102及び移動駆動部144による移動を制御する移動判断部138」は、
「位置を特定するための物体に基づき前記移動機構による移動を制御する移動制御部」の限りにおいて、
本件発明における「認識された前記マーカに基づき前記移動機構による移動を制御する移動制御部」に一致する。
ウ 上記イと同様に、引用発明1における「前記外部センサ114」は、ロボット100の位置座標を特定するためのもの(上記第4の1(2)オ~カ)であり、また、本件発明における「前記マーカ」は、「位置を特定するための物体」と理解されるから、
引用発明1における「前記外部センサ114の位置を記憶するデータ格納部148」は、
「位置を特定するための前記物体の位置を記憶する情報記憶部」の限りにおいて、
本件発明における「前記マーカの位置を記憶するマーカ情報記憶部」に一致する。
エ 引用発明1における「ユーザの帰宅予定時刻よりも所定時間前になったことを検出する手段」、「ユーザが玄関152の周辺に存在することを検出するための各種センサ」及び「愛情仕草を実行する行動判断部140」は、その機能・作用からみて、本件発明における「第1イベントを検出する第1イベント検出部」、「第2イベントを検出する第2イベント検出部」及び「アクションを実行するアクション実行部」のそれぞれに相当する。
オ 引用発明1における「玄関152に設置された外部センサ114aの位置の付近の監視エリア150の内部に設定された前記目標地点」は、上記イ~ウと同様に、
「位置を特定するための前記物体の前記位置の付近」の限りにおいて、
本件発明における「前記マーカの前記位置の付近」に一致する。
カ 本件発明の「前記マーカ、前記第1イベント及び前記第2イベントのうちの少なくとも1つに対応する前記アクション」という記載において、「前記マーカ」、「前記第1イベント」、「前記第2イベント」は、選択的な事項として特定されているところ、引用発明1における「ユーザの帰宅に対応する前記愛情仕草」というアクションは、「ユーザが玄関152の周辺に存在すること」、すなわち「ユーザの帰宅」という本件発明の「第2イベント」に相当するイベントに対応して実行されるアクションといえるから、本件発明における「前記第2イベント」「に対応する前記アクション」に一致する。
2 一致点
上記1を踏まえると、本件発明と引用発明1とは、次の点で一致する。
「移動機構と、
周囲の空間を撮影する撮影部と、
位置を特定するための物体に基づき前記移動機構による移動を制御する移動制御部と、
位置を特定するための前記物体の位置を記憶する情報記憶部と、
第1イベントを検出する第1イベント検出部と、
第2イベントを検出する第2イベント検出部と、
アクションを実行するアクション実行部と
を備え、
前記第1イベントが検出されると、位置を特定するための前記物体の前記位置の付近へ移動し、前記第2イベントが検出されると、前記第2イベントに対応する前記アクションを実行する、ロボット。」
3 相違点
他方、本件発明と引用発明1とは、次の点(以下「相違点」という。)で相違する。
「位置を特定するための物体」に関し、
本件発明においては、「マーカ」であって、マーカ認識部により所定のマーカが撮影部において撮影された撮影画像に含まれるものとして認識されるのに対し、
引用発明1においては、「外部センサ114」であって、カメラにより撮像された画像から認識部156で認識されるものではない点。
第6 相違点に対する当審の判断
上記相違点について検討する。
1 引用文献2には、家のなかで自律行動をなすロボット掃除機2に関して、上記第4の2(3)に示した、次の引用文献2記載の技術的事項が記載されている。
「カメラ装置13において撮影された画像に含まれる垂直マーカ24b~24gを認識し、
認識された垂直マーカ24b~24gに基づき移動を制御し、
垂直マーカ24b~24gの位置を記憶し、
台所又は浴室を掃除するように指示されると、垂直マーカ24b~24gのうち指示に対応する垂直マーカの位置の付近の台所又は浴室へ移動し、指示に対応する掃除を実行すること。」
2 引用発明1と引用文献2記載の技術的事項とは、いずれも、家屋内を行動範囲とする自律行動型のロボットである点で、技術分野が関連し、いずれも、家屋内の目標とする位置へ自律して移動する機能を有する点で、機能・作用が共通する。
また、引用文献1の外部センサ114は、無線信号を送信してロボットの位置座標を特定するために機能する(上記第4の1(2)オ)ところ、引用文献1には、上記第4の1(2)クに示したように、段落[0079]には、「ロボット100の内部センサ128が高精度であれば、外部センサ114は必須ではない。・・・外部センサ114やサーバ200がなくてもロボット100はお出迎え行動を実行できる。」ことが記載され、さらには、段落[0029]には、「カメラから得られる画像に基づいて現在位置を特定してもよい。」と記載される。
3 してみると、引用発明1における、外部センサ114に基づく自らの位置座標に基づいてロボット100の移動を制御することに代えて、「カメラから得られる画像に基づいて現在位置を特定」する手段である、引用文献2記載の技術的事項を参考とし、
家屋内でロボット100が移動するために必要な各所、例えば、玄関152の監視エリア150の付近を含む複数の箇所に、引用文献2記載の技術的事項における垂直マーカ24b~24gのようなマーカを設置し、
認識部156にて、カメラにより撮像された画像に含まれる当該マーカを認識し、
移動判断部138にて、認識された当該マーカに基づき移動を制御し、
データ格納部148に、当該マーカの位置を記憶し、
ユーザの帰宅予定時刻よりも所定時間前になったことを検出すると、玄関152の監視エリア150を示す当該マーカの付近へ移動する
ようにすることで、上記相違点に係る本件発明のように構成することは、当業者であれば、容易に想到し得たことである。
4 なお、本件請求人は、令和7年2月17日提出の意見書において、平成21年1月28日知的財産高等裁判所判決(事件番号:平成20年(行ケ)10096号)を挙げつつ、次のとおり引用文献1の記載に当てはめている。
(1)引用文献1では、内部センサを高精度にすることで外部センサが必須ではないことを示すのみであり、「他の代替手段に置換することが可能である」ことまでは触れておらず、「他の代替手段に置換することが可能である」との示唆をしているとの解釈は、「解決手段」の要素を意識した解釈、すなわち、審判合議体による事後分析的かつ非論理的思考による解釈に過ぎず、失当である。
(2)「他の代替手段に置換することが可能である」との示唆があると解釈できるとしても、それは、他の代替手段を特定しない示唆に過ぎず、マーカを用いることまでを示唆したものではない。
(3)その他、引用文献1の技術と引用文献2の技術とを組み合わせることができたという事情は存在しない。
5 しかしながら、引用文献1には、上記2に示したように、「ロボット100の内部センサ128が高精度であれば、外部センサ114は必須ではない。・・・外部センサ114やサーバ200がなくてもロボット100はお出迎え行動を実行できる。」ことに加え、段落[0029]には、「カメラから得られる画像に基づいて現在位置を特定してもよい。」と記載される。
そして、引用文献1に具体的に示唆される、カメラから得られる画像に基づいて現在位置を特定するとの手段を採用するにあたり、引用発明1において、ナビゲーションと自己位置決めを正確に行いたいとの課題が内在することは、自明な事項であるといえ、上記2のとおり引用発明1と技術分野が関連し、機能・作用が共通し、さらに当該課題を解決し得る引用文献2記載の技術的事項を参考として、上記相違点に係る本件発明のように構成しようとする動機は、十分に存在していたといえる。
したがって、請求人の主張は採用することができない。
第7 むすび
以上のとおり、本件発明は、引用発明1及び引用文献2記載の技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2023-020265