特許拒絶査定不服審判
2023-002357
作業機械の制御方法および制御システム
- 審判番号
- 2023-002357
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2019-055090外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2023年02月10日
- 審決日
- 2024年01月24日
- 公報発行日
- 2024年04月26日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】株式会社小松製作所
- 【請求人代理人】弁理士法人新樹グローバル・アイピー
- 分類
- P18 .121-Z (G05D)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第17条の2第5項第2号、特許法第17条の2第3項、特許法第17条の2第6項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2019- 55090「作業機械の制御方法および制御システム」拒絶査定不服審判事件〔令和 2年 9月24日出願公開、特開2020-155014〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本件審判に係る出願は、平成31年3月22日の出願であって、その主な手続の経緯は、以下のとおりである。
令和4年 8月 8日付け:拒絶理由の通知
令和4年 9月28日 :意見書・手続補正書の提出
令和4年12月19日付け:拒絶査定
令和5年 2月10日 :拒絶査定不服審判の請求と同時に手続補正書の提出
第2 令和5年2月10日にされた手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
令和5年2月10日に提出された手続補正書による補正(以下「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1 本件補正
(1)本件補正後の特許請求の範囲の記載
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおり補正された。(下線は、補正箇所である。)
「 【請求項1】
1又は複数の作業機械を制御するために、1又は複数のプロセッサによって実行される方法であって、
先導機械の位置を含む移動データを取得すること、
前記移動データに基づいて、前記先導機械に追従して走行するように前記1又は複数の作業機械を制御することと、
前記先導機械の状態を判定することと、
前記先導機械の状態に応じて、前記1又は複数の作業機械の追従を停止させること、
を備え、
前記先導機械の状態は、スリップ、急減速、或いは急加速である、
方法。」
(2)本件補正前の特許請求の範囲の記載
本件補正前の、令和4年9月28日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおりである。
「 【請求項1】
1又は複数の作業機械を制御するために、1又は複数のプロセッサによって実行される方法であって、
先導機械の位置を含む移動データを取得すること、
前記移動データに基づいて、前記先導機械に追従して走行するように前記1又は複数の作業機械を制御することと、
前記先導機械の状態を判定することと、
前記先導機械の状態に応じて、前記1又は複数の作業機械の追従を停止させること、
を備える方法。」
2 補正の適否
(1)補正の目的
請求項1に係る本件補正は、本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「先導機械の状態に応じて、前記1又は複数の作業機械の追従を停止させること」について、「先導機械の状態」を限定し、「前記先導機械の状態は、スリップ、急減速、或いは急加速である」ことを付加するものである。
上記補正は、本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項を限定するものであって、本件補正前の請求項1に記載された発明と本件補正による請求項1に記載された発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題は同一であるから、請求項1に係る本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
(2)新規事項の追加の有無
請求項1に係る本件補正は、本願の願書に最初に添付した明細書の段落【0057】における「リモートコントローラ2は、先導機械L1の状態を判定してもよい。先導機械L1の状態は、例えば、スリップ、急減速、或いは急加速であってもよい。リモートコントローラ2は、先導機械L1の状態に応じて、追従機械F1,F2の追従を停止、或いは一時中断させてもよい。或いは、追従機械F1,F2を減速、或いは後退させてもよい。」との記載に基づくものであり、新たな技術事項を導入するものではないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たす。
よって、請求項1に係る本件補正は、新たな技術事項を導入するものではないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たす。
(3)独立特許要件について
請求項1に係る本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下「本件補正発明」という。)が同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下検討する。
ア 本件補正発明
本件補正発明は、上記1(1)に記載したとおりのものである。
イ 引用文献及び引用発明等
(ア)引用文献1の記載事項及び引用発明
a 引用文献1の記載事項
原査定の拒絶の理由で引用された本願の出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献である、米国特許出願公開第2009/0118889号明細書(以下「引用文献1」という。)には、「Method of Driving Plurality of Mine Vehicles in Mine, and Transport System 」(鉱山内の鉱山車両の複数運転の方法と運搬システム)と題して、図面とともに次の記載がある。なお、括弧内は当審による日本語翻訳であり、下線は当審において付した。
(a)ABSTRACT(要約)
「A method of driving mine vehicles in a mine, and a transport system. A plurality of mine vehicles is arranged in succession and driven in convoy between working areas. A master vehicle in the convoy is driven manually, and slave vehicles follow the master, provided with no mechanical connection. In the working areas, the convoy is disassembled, since single vehicles are each driven separately. When assigned tasks in the working areas have been completed, the vehicles are reassembled into a convoy so as to be driven to a next working area.」
(鉱山における鉱山車両の運転方法、および運搬システム。複数の鉱山車両は、連続して配置され、作業領域間において運転される。隊列内のマスタ車両が手動で運転され、スレーブ車両はマスタ車両に追従することができ、機械的な接続が設けられていない。作業領域において、隊列が分解され、1つの車両は、それぞれ別々に運転される。作業領域に割り当てられたタスクが完了すると、次の作業領域へ運転されるようになって車両は隊列に再組み立てされる。)
(b)BRIEF DESCRIPTION OF THE INVENTION(発明の簡単な説明)
「[0014]An idea of an embodiment of the invention is that each mine vehicle in a convoy is equipped with one or more reading devices for observing the environment of the vehicle. The reading device may be e.g. a laser scanner. The reading device may be used for establishing surface shapes surrounding a route, such as the wall profile of a tunnel. Each mine vehicle may deliver profile information obtained by the reading device to the control system of the transport system, which, on the basis of the profile information, may determine the location of each mine vehicle in the convoy. The control system may further carry out collision examination and, on the basis thereof, adjust the speed of the slave vehicles such that the slave vehicles do not collide with one another or with the master vehicle. The reading device used for observing the environment, such as a laser scanner, may also be utilized in collision examination.」
([0014]本発明の一実施形態の概念は、隊列内の各鉱山車両が、車両の環境を観察するための1つ又は複数の読み取りデバイスを装備していることである。読み取りデバイス読取装置は、例えばレーザスキャナであってもよい。読み取りデバイスは、トンネルの壁プロファイルなど、経路を取り囲む表面形状を確立するために使用され得る。各鉱山車両は、読み取りデバイスによって取得されたプロファイル情報を輸送システムの制御システムに配信することができ、制御システムは、プロファイル情報に基づいて、隊列内の各鉱山車両の位置を決定することができる。制御システムは、衝突検査をさらに実行し、それに基づいて、スレーブ車両が互いにまたはマスタ車両と衝突しないようにスレーブ車両の速度を調整することができる。レーザスキャナのような環境を観察するために使用される読み取りデバイス装置は、衝突検査においても利用され得る。)
(c)DETAILD OF DESCRIPTION OF SOME EMBODIMENT OF THE INVENTION(発明の実施例の詳細な説明)
「[0021]FIG. 1 shows a mine vehicle 1 which, in this case, is a transport vehicle equipped with a dump box 2, which may be constructed so as to enable rock material 3, such as blocks of rock, to be loaded thereto. The dump box 2 may be articulated with respect to a chassis 4 of the transport vehicle 1 such that it may be dumped behind the mine vehicle 1. Such a mine vehicle 1 has one main direction of travel A but, of course, it may be reversed short distances in the opposite direction B. The mine vehicle 1 may be provided with a navigation system by means of which it may determine its location in a mine. The navigation system may comprise one or more reading devices 5, such as a laser scanner. The navigation system may further comprise a gyroscope and other measuring devices for measuring location and direction. Further, the mine vehicle 1 may comprise a control unit 6 and, further, a data communication unit 7 to enable the control unit 6 to communicate with a control unit 8 of the transport system. The mine vehicle 1 is also provided with a control station 9, such as a control cabin or a control deck, to enable the vehicle to be driven manually. The control station 9 is provided with all necessary control elements for controlling the mine vehicle 1. Consequently, the mine vehicle 1 may alternatively be controlled either manned, by an operator 10, or in a remote-controlled manner, by means of control commands delivered to the control unit 6. A third possibility is that the mine vehicle 1 is driven completely automatically, controlled by its own control unit 6 or by its own control unit 6 and the control unit 8 of the transport system in cooperation.
([0021]図1は、この場合、ダンプボックス2を装備した運搬車両である鉱山車両1を示しており、ダンプボックス2は、岩石のブロックなどの岩石材料3を積載することができるように構築することができる。ダンプボックス2は、鉱山車両1の後方にダンプされ得るように、運搬車両1のシャーシ4に対して関節連結され得る。このような鉱山車両1は、1つの主走行方向Aを有するが、もちろん、反対方向Bに短い距離だけ逆にされてもよい。鉱山車両1には、鉱山におけるその位置を決定することができるナビゲーションシステムを設けることができる。ナビゲーションシステムは、レーザスキャナなどの1つまたは複数の読み取りデバイス5を備えることができる。ナビゲーションシステムは、位置および方向を測定するためのジャイロスコープおよび他の測定デバイスをさらに備えることができる。さらに、鉱山車両1は、制御ユニット6と、さらに、制御ユニット6が運搬システムの制御ユニット8と通信することを可能にするデータ通信ユニット7とを備えてもよい。鉱山車両1はまた、車両を手動で駆動することを可能にするために、制御キャビンまたは制御デッキなどの制御ステーション9を備える。制御ステーション9は、鉱山車両1を制御するために必要な全ての制御要素を備えている。したがって、鉱山車両1は、代替的に、オペレータ10によって有人で、または制御ユニット6に送出される制御コマンドによって遠隔制御方式で制御されてもよい。第3の可能性は、鉱山車両1が完全に自動的に駆動され、それ自体の制御ユニット6によって、又はそれ自体の制御ユニット6と運搬システムの制御ユニット8とが協働して制御されることである。)
・・・・
[0023]FIG. 2 shows a convoy 13 comprising a plurality of mine vehicles 1, in this case four vehicles 1a to 1d, arranged in succession. No mechanical connection is provided between the vehicles in the convoy 13 but they are driven such that a predetermined distance 14 is always kept between two successive vehicles. In order to alleviate speed adjustment, the distance 14 may comprise a range within which the distance is to be kept substantially continuously. The first vehicle 1a in the convoy 13 may be a master vehicle which is driven either manned or in a teleoperated manner, controlled by the operator 10. The rest of the vehicles 1b to 1d in the convoy 13 are slave vehicles which follow the master vehicle 1a. The slave vehicles 1b to 1d are controlled automatically by means of the control unit 6 provided therein. Via a communications link 15, the control units 6 of each mine vehicle may be connected with the control unit 8 of the transport system. When the master vehicle 1a conducts a control action, i.e. makes a steering movement, stops or changes its speed, information about this is delivered via the data communications link 15 to the control unit 8, which may forward the control command to the control units of the slave vehicles 1b to 1d. The control command may include location information on where in the mine the master vehicle made the control action and what the control action was like. If, for example, a block of rock lies in a route and the master goes around it, the slaves may conduct a similar steering movement when they, one by one, arrive at the obstacle. It is further possible that the reading devices 5 provided in the slave vehicles 1b to 1d are used for monitoring the control actions of a preceding vehicle. Since the convoy 13 may be driven among other traffic and since it comprises unmanned slave vehicles, the transport system must be provided with a security system for emergency stopping the convoy. Emergency messages and the like may be transmitted via a data communications link 16 provided between the vehicles or they may be delivered through the control unit 8 of the transport system by using the data communications link 15.」
([0023] 図2は、連続して配置された複数の鉱山車両1、この場合は4台の車両1a~1dを含む隊列13を示す。隊列13内の車両間には機械的接続は設けられていないが、それらは、2つの連続する車両間に所定の距離14が常に維持されるように駆動される。速度調整を軽減するために、距離14は、距離が実質的に連続的に維持される範囲を含むことができる。隊列13内の第1の車両1aは、オペレータ10によって制御される有人または遠隔操作方式のいずれかで運転されるマスタ車両とすることができる。隊列13内の残りの車両1b~1dは、マスタ車両1aに後続するスレーブ車両である。スレーブ車両1b~1dは、その内部に設けられた制御部6によって自動制御される。各鉱山車両の制御ユニット6は、通信リンク15を介して運搬システムの制御ユニット8に接続することができる。マスタ車両1aが制御動作を行う、すなわち操舵運動を行う、停止する、またはその速度を変更すると、これに関する情報がデータ通信リンク15を介して制御ユニット8に配信され、制御ユニット8は制御コマンドをスレーブ車両1b~1dの制御ユニットに転送することができる。制御コマンドは、鉱山のどこでマスタ車両が制御動作を行ったか、及びどのような制御動作を行ったかに関する位置情報を含むことができる。例えば、岩のブロックが経路内にあり、マスタがその周囲を移動する場合、スレーブは、障害物に1つずつ到達するときに同様のステアリング動作を行うことができる。さらに、スレーブ車両1b~1dに設けられた読み取りデバイス装置5を、先行車両の制御動作を監視するために使用することも可能である。隊列13は、他の交通の中で駆動される可能性があり、無人スレーブ車両を含むので、運搬システムは、隊列を緊急停止するためのセキュリティシステムを備えなければならない。緊急メッセージなどは、車両間に設けられたデータ通信リンク16を介して送信されてもよく、またはデータ通信リンク15を使用することによって輸送システムの制御ユニット8を介して配信されてもよい。)
(d)FIGURE(図面)
「
[図:0001408701000001.jpg]
[図:0001408701000002.jpg]
」
(e)また、特に、上記(b)の「各鉱山車両は、読み取りデバイスによって取得されたプロファイル情報を輸送システムの制御システムに配信することができ、制御システムは、プロファイル情報に基づいて、隊列内の各鉱山車両の位置を決定することができる。制御システムは、衝突検査をさらに実行し、それに基づいて、スレーブ車両が互いにまたはマスタ車両と衝突しないようにスレーブ車両の速度を調整することができる。」という記載、上記(c)の「マスタ車両1aが制御動作を行う、すなわち操舵運動を行う、停止する、またはその速度を変更すると、これに関する情報がデータ通信リンク15を介して制御ユニット8に配信され、制御ユニット8は制御コマンドをスレーブ車両1b~1dの制御ユニットに転送することができる。」という記載、及び「例えば、岩のブロックが経路内にあり、マスタがその周囲を移動する場合、スレーブは、障害物に1つずつ到達するときに同様のステアリング動作を行うことができる。さらに、スレーブ車両1b~1dに設けられた読み取り装置デバイス5を、先行車両の制御動作を監視するために使用することも可能である。隊列13は、他の交通の中で駆動される可能性があり、無人スレーブ車両を含むので、輸送システムは、隊列を緊急停止するためのセキュリティシステムを備えなければならない。」という記載、及び図2の図示内容を踏まえると、スレーブ車両1b~1dがマスタ車両1aに衝突しないように、マスタ車両1aの制御状態を判定すること、そして、マスタ車両の制御状態に応じて、スレーブ車両1b~1dがマスタ車両1aと衝突しないようにスレーブ車両1b~1dの速度を調整することが理解できる。
b 引用発明
上記aの記載事項及び図示内容を総合すると、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。
「3台の鉱山車両1b~1dを制御するために輸送システムの制御ユニット8及び鉱山車両1a~1dの制御ユニット6によって実行される鉱山車両の運転方法であって、
マスタ車両1aの位置情報を含む制御動作に関する情報を取得すること、
前記制御動作に関する情報に基づいて、前記マスタ車両1aに追従して走行するようにスレーブ車両1b~1dを制御することと、
前記マスタ車両1aの制御状態を判定することと、
前記マスタ車両1aの制御状態に応じて、スレーブ車両1b~1dがマスタ車両1aと衝突しないようにスレーブ車両1b~1dの速度を調整すること、
を備える、
鉱山車両の運転方法。」
(イ)引用文献3の記載事項及び技術事項
a 引用文献3の記載事項
原査定の拒絶の理由で引用された本願の出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献である、特開2017-41188号公報(以下「引用文献3」という。)には、「荷物運搬装置およびコンピュータプログラム」と題して、図面とともに次の記載がある。
(a)特許請求の範囲
「【特許請求の範囲】
【請求項1】
操作者が操作する親機とその親機に自動追従する単数または複数の子機とを備えた荷物運搬装置であって、
前記の親機は、子機側および/ または操作者にビーコンを備え、
前記の子機は、移動のための駆動ユニットと、親機または他の子機のビーコンを視認するためのビーコン視認カメラを親機側に備えるとともに、そのビーコン視認カメラによる画像データから追従状態を判断する制御装置と、前記の操作者への伝達事項を音声にて伝えるためのスピーカとを備え、
前記の制御装置は、前記の子機におけるビーコン視認カメラからの画像データから運搬状態に異常が発生したと判断した場合には、異常事態を操作者へ伝えるための音声を前記のスピーカから発声させるように形成した荷物運搬装置。
・・・・
【請求項3 】
前記の制御装置は、前記の子機におけるビーコン視認カメラからの画像データから運搬状態に異常が発生したと判断した場合には、子機による追従を一時停止することとした請求項1または請求項2のいずれかに記載の荷物運搬装置。」
(b)発明の詳細な説明
「【0014】
(用語説明)
「ビーコン」とは、電波あるいはIR(赤外線)のような高周波の電磁波を移動体(航空機・船舶・自動車など)に搭載して受信することによって、位置をはじめとした各種情報を取得するための機器である。
親機(α)へ備えられたビーコン(A)を、親機(α)の操作のための操作者が存在することで子機(β)が認識しづらい場合には、操作者における子機(β)側にビーコン(B)を装着する。ビーコン(A、B)の二つを備える場合には、その発光パターンは同じものとする。
「運搬状態の異常」とは、たとえば、ビーコン視認カメラからの画像データに基づいて検知される異常、親機(α)に対して子機(β)が近づきすぎた場合や離れすぎた場合、などである。正常な範囲については、たとえば初期設定によって制御装置の記憶装置へ予め入力し、登録しておく。
また、荷物運搬装置を構成する各種デバイスなどが異常を来した場合も「運転状態の異常」である。たとえば、運搬の動力となるバッテリの消耗、各種センサの接触不良などによるデータ送受信の異常なども含まれることとする。
・・・・
【0031】
(第二の発明のバリエーション2)
第二の発明は、以下のように形成してもよい。
すなわち、前記の子機におけるビーコン視認カメラからの画像データから運搬状態に異常が発生したと判断した場合には、子機による追従を一時停止するように前記の駆動ユニットに対して駆動状態を停止するための制御信号を発信する駆動状態停止手順を、更に実行させることとするのである。
・・・・
【0052 】
(図4)
図4は、最も上位概念のフローチャートを示している。
運搬を開始すると(S1)、子機(β,γ)は、追従を開始するとともに、定常運転を実施継続する(S2)。
【0053】
子機(β,γ)に備えられたIRカメラ、駆動装置などのセンサ機能を果たす機器からの入力データに基づいて、定常運転または正常な運搬状態の範囲を逸脱したか否かを判断する(S3)。定常運転または正常な運搬状態の範囲に収まっている場合には、運転をそのまま継続する(S2)。
【0054】
続いて、定常運転または正常な運搬状態の範囲を逸脱したか否かを判断する(S3)。逸脱した場合には、追従状態を変更する(S4)。たとえば、IRカメラが捉えている画像データにおいてビーコンの発光パターンが画像内の上へ位置してしまった場合には、親機(α)へ第一子機(β)が近づきすぎた場合と判断できるので、第一子機(β)は運転の速度を落とす。
・・・・
【0064】
(図6)
図6に示す実施形態では、運搬状態に異常が発生したか否かの判断をするまでは、図4および図5と同じである(S21,S22,S23)。異なるのは、まず、運搬状態に異常が発生したと判断した場合に運転状態を変更するのではなく、追従を一時停止する(S24)。たとえば、左右のIRカメラのいずれか一方または双方においてビーコンの発光パターンを認識できなくなった場合には、追従を一時停止するのである。
・・・・
【0076】
(図9)
図9は、たとえば加速度センサや角加速度センサからのデータに基づいて、異常を検知した場合を示すフローチャートである。このフローチャートに示すフローについても、親機(α)、第一子機(β)、第二子機(γ)のいずれでも同様である。
たとえば、水平方向に0.1Gを超える加速度を検知した場合、床面の段差や小さな障害物による衝撃を受けたことを検知したこととなる(S53)。このような衝撃は瞬間的な異常である場合が多いので、運転状態を変更したり、一時中断したりする必要がない場合が多い。
【0077】
瞬間的な異常であると判断できた場合には(S54)、たとえば「もう少し丁寧な扱いをお願いします」といった趣旨の音声を発声する(S55)。
瞬間的な異常ではなく、異常事態が継続するか、別の異常事態が連続して発生したと判断できた場合には、運搬を終了する(S56)。たとえば、衝撃の検知の直後に一方のIRカメラからのビーコン位置データが送信されなくなった、ということが検知された場合、その衝撃によって一方のIRカメラが故障または破損した可能性があり、運搬継続が困難だからである。」
(c)図面
「・・・・
【図3】
[図:0001408701000003.jpg]
・・・・
【図6】
[図:0001408701000004.jpg]
・・・・
【図9】
[図:0001408701000005.jpg]
」
b 引用文献3に記載された技術事項
上記aの記載事項及び図示内容を総合すると、引用文献3には、次の技術事項(以下「引用文献3に記載された技術事項」という。)が記載されている。
「操作者が操作する親機とその親機に自動追従する単数または複数の子機とを備えた荷物運搬装置において、子機は、親機が子機に対して近づきすぎた場合あるいは離れすぎた場合等、運搬状態の異常が発生したと判断した場合、追従を一時停止すること」
ウ 本件補正発明と引用発明との対比
(ア)対比
a 本件補正発明と引用発明とを対比すると、後者の「3台の鉱山車両1b~1d」、あるいは、「スレーブ車両1b~1d」は、その機能等を踏まえると、前者の「1又は複数の作業機械」相当し、以下同様に、「輸送システムの制御ユニット8及び鉱山車両1a~1dの制御ユニット6」は「1又は複数のプロセッサ」に、「鉱山車両1a」、あるいは、「マスタ車両1a」は「先導機械」に、「位置情報」は「位置」に、「制御動作に関する情報」は「移動データ」に、「制御状態」は「状態」に、それぞれ相当する。
b 引用発明の「前記マスタ車両1aの制御状態に応じて、スレーブ車両1b~1dがマスタ車両1aと衝突しないようにスレーブ車両1b~1dの速度を調整すること」と、本件補正発明の「前記先導機械の状態に応じて、前記1又は複数の作業機械の追従を停止させること」とは、上記アの相当関係を踏まえると、「前記先導機械の状態に応じて、前記1又は複数の作業機械の追従を制御すること」の限りで一致する。
(イ)一致点、相違点
すると、本件補正発明と引用発明とは、下記aの点で一致し、下記bの点で相違する。
a 一致点
「1又は複数の作業機械を制御するために、1又は複数のプロセッサによって実行される方法であって、
先導機械の位置を含む移動データを取得すること、
前記移動データに基づいて、前記先導機械に追従して走行するように前記1又は複数の作業機械を制御することと、
前記先導機械の状態を判定することと、
前記先導機械の状態に応じて、前記1又は複数の作業機械の追従を制御すること、
を備える方法。」
b 相違点
先導機械の状態に応じて、1又は複数の作業機械の追従を制御することに関し、本件補正発明は「先導機械の状態は、スリップ、急減速、或いは急加速であ」り、「先導機械の状態に応じて、1又は複数の作業機械の追従を停止させること」であるのに対し、引用発明は、「マスタ車両1aの制御状態に応じて、スレーブ車両1b~1dが前記マスタ車両1aと衝突しないようにスレーブ車両1b~1dの速度を調整すること」である点。
エ 当審の判断
相違点について、検討する。
引用文献3に記載された技術を参照すると、「親機」及び「子機」が、本件補正発明の「先導機械」及び「1又は複数の作業機械」に相当することは明らかである。
また、引用文献3に記載された技術事項において、運搬状態の異常の一つである子機が親機に近づきすぎた場合の主な要因の一つとして、親機の急減速が含まれることは、当業者であれば普通に認識できるものであり、子機が親機に近づきすぎた場合と判断することは、実質的に、親機(先導機械)の急減速についても判断しているということができる。
そして、引用発明と引用文献3に記載された技術事項は共に、先頭車両に後続車両が追従する運搬車両の運転制御に関するものであり、また、引用文献1には、「無人スレーブ車両を含むので、輸送システムは、隊列を緊急停止するためのセキュリティシステムを備えなければならない。」(引用文献1の[0023]を参照)と記載されるように、作業機械の追従を停止させることの示唆があるほかに、「スレーブ車両1b~1dに設けられた読み取りデバイス装置5を、先行車両の制御動作を監視するために使用することも可能である」(引用文献1の[0023]を参照)と記載されるように、引用文献3に記載された技術事項と同様に、先導機械の状態を作業機械が判断することの示唆もある。
そうすると、引用発明において、スレーブ車両1b~1dの制御ユニット6に、セキュリティシステムとして引用文献3に記載された技術事項を適用し、先導機械(マスタ車両)の急減速の状態に応じて、作業機械(スレーブ車両)の追従を停止させるようにして、上記相違点に係る本件補正発明の発明特定事項を想到することは、当業者にとって容易になし得たものである。
そして、本件補正発明全体が奏する効果を検討しても、引用発明及び引用文献3に記載された技術事項から、当業者であれば容易に予測し得た範囲のものである。
(4) まとめ
したがって、本件補正発明は、引用発明及び引用文献3に記載された技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。
3 本件補正についてのむすび
したがって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記[補正却下の決定の結論]のとおり、決定する。
第3 本願発明について
1 本願発明
令和5年2月10日に提出された手続補正書による手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、令和4年9月28日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1~18に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、その請求項1に記載された事項により特定される、前記第2[理由]1(2)に記載のとおりのものである。
2 原査定における拒絶の理由
本願発明に対する原査定の拒絶の理由の概要は、次のとおりである。
(進歩性)本願発明は、引用文献1及び引用文献3に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(当業者)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
引用文献1.米国特許出願公開第2009/0118889号明細書
引用文献3.特開2017-41188号公報
3 引用文献
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1及び3の記載事項等は、前記第2の[理由]2(3)に記載したとおりである。
4 対比・判断
本願発明は、前記第2の[理由]2で検討した本件補正発明から、「前記先導機械の状態は、スリップ、急減速、或いは急加速である」との限定事項を削除したものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに他の事項を付加したものに相当する本件補正発明が、前記第2の[理由]2(3)、(4)に記載したとおり、引用発明及び引用文献3に記載された技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明は、引用発明及び引用文献3に記載された技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献1及び引用文献3に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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2023-002357