2024-000703
渦式流量測定装置
- 審判番号
- 2024-000703
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2021-503073外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2024年01月16日
- 審決日
- 2025年03月28日
- 公報発行日
- 2025年06月27日
- 結論
- 請求不成立
- 分類
- P18 .121-Z (G01F) / P18 .575-Z (G01F)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条、特許法第17条の2第5項、特許法第17条の2第6項
- データ出所
- 審決公報(XML)
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結論
理由
目次 ▾ 12項目
第1 手続の経緯
本願は、2020年(令和2年)9月29日を国際出願日とする日本語特許出願であって、その手続の経緯の概略は、次のとおりである。
同年 7月 3日 :意見書、手続補正書の提出
(同月17日 :原査定の謄本の送達)
第2 令和6年1月16日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和6年1月16日にされた手続補正を却下する。
[補正の却下の決定の理由]
1 補正の内容
令和6年1月16日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)は、特許請求の範囲の補正を含むものであり、本件補正により、次の(1)に示す本件補正前(令和5年7月3日にされた手続補正後のものをいう。以下同じ。)の特許請求の範囲の請求項1の記載は、後記(2)に示す本件補正後の特許請求の範囲の請求項1の記載に補正された。下線は補正箇所を示す。
(1) 本件補正前
「【請求項1】流体の流れの中に挿入した渦発生体と、当該渦発生体の下流側に発生したカルマン渦の変化を電気信号の変化として検出する検出素子と、上記電気信号を渦周波数に変換する電気回路と、上記渦周波数に基づいて流体の流量を演算する演算回路とを備えた流量測定装置において、検出素子の後段に温度センサを配置し、あらかじめ当該流体について求めた温度t0、t1、t2、・・・、tn(t0<t1<t2<・・・<tn)と渦周波数と流量との関係を示す補正テーブルを上記演算回路に備え、上記温度センサで測定した当該流体の温度をtとし、上記検出素子で検出した電気信号から変換した渦周波数をfとした場合、上記温度tと渦周波数fが、上記補正テーブルが有する温度と渦周波数に合致する場合、当該合致した渦周波数における流量を補正後の流量として出力し、上記温度tは上記補正テーブルが有する温度t0、t1、t2、・・・、又はtnのいずれかに該当するが、上記渦周波数fを上記補正テーブルが有しない場合、渦周波数の変化量と流量の変化量は線形の関係にあると推定して上記演算回路により演算した渦周波数fにおける流量を補正後の流量として出力し、上記温度tは上記補正テーブルが有する温度のいずれかに該当せず、温度tは温度t0、t1、t2、・・・、又はtnのいずれか隣接する2つの温度tαとtβのあいだに含まれる場合、温度の変化量と渦周波数の変化量は線形の関係にあると推定して上記演算回路により当該温度tにおける渦周波数を演算し、且つ渦周波数の変化量と流量Qの変化量は線形の関係にあると推定して上記演算回路により演算した渦周波数fにおける流量を補正後の流量として出力することを特徴とする流量測定装置。」
(2) 本件補正後
「【請求項1】測定管内の流体の流れの中に挿入した渦発生体と、当該渦発生体の下流側に発生したカルマン渦の変化を電気信号の変化として検出する検出素子と、上記電気信号を渦周波数に変換する電気回路と、上記渦周波数に基づいて流体の流量を演算する演算回路とを備え、上記検出素子の上流側と下流側に直管部を有する渦式流量測定装置において、検出素子の後段に温度センサを配置し、あらかじめ当該流体について求めた温度t0、t1、t2、 ・・・、tn(t0<t1<t2<・・・<tn)と渦周波数と流量との関係を示す補正テーブルを上記演算回路に備え、上記温度センサで測定した当該流体の温度をtとし、上記検出素子で検出した電気信号から変換した渦周波数をfとした場合、上記温度tと渦周波数fが、上記補正テーブルが有する温度と渦周波数に合致する場合、当該合致した渦周波数における流量を補正後の流量として出力し、上記温度tは上記補正テーブルが有する温度t0、t1、t2、・・・、又はtnのいずれかに該当するが、上記渦周波数fを上記補正テーブルが有しない場合、渦周波数の変化量と流量の変化量は線形の関係にあると推定して上記演算回路により演算した渦周波数fにおける流量を補正後の流量として出力し、上記温度tは上記補正テーブルが有する温度のいずれかに該当せず、温度tは温度t0、t1、t2、・・・、又はtnのいずれか隣接する2つの温度tαとtβのあいだに含まれる場合、温度の変化量と渦周波数の変化量は線形の関係にあると推定して上記演算回路により当該温度tにおける渦周波数を演算し、且つ渦周波数の変化量と流量Qの変化量は線形の関係にあると推定して上記演算回路により演算した渦周波数fにおける流量を補正後の流量として出力することを特徴とする渦式流量測定装置。」
2 補正の目的
(1) 本件補正のうち請求項1についてする補正は、本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項について、次のアからウの限定をするものである。
ア 「流量測定装置」について、「渦式流量測定装置」に限定すること。
イ 「流量測定装置」について、「検出素子の上流側と下流側に直管部を有する」ものに限定すること。
ウ 「渦発生体」が「挿入」される位置について、本件補正前の「流体の流れの中」から「測定管内の流体の流れの中」に限定すること。
(2) そして、本件補正前の請求項1に記載された発明と本件補正後の請求項1に記載される発明は、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一である。
(3) したがって、本件補正は、特許法17条の2第5項2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とする補正に該当する。
3 独立特許要件の判断
本件補正は、前記2のとおり、特許法17条の2第5項2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とする補正に該当するから、本件補正後の請求項1に記載されている事項により特定される発明(以下「本件補正発明」という。)が、同法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に適合するか、すなわち、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるかについて、以下検討する。
(1) 本件補正発明
ア 本件補正発明の認定と分説
本件補正発明は、前記1(2)に摘記した本件補正後の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものと認める。
ここで、検討の便宜上、本件補正発明の構成を次のとおり構成Xと構成Aから構成H3までに分説する。分説するにあたり、適宜改行を加えて表記した。また、参考図として、本願の【図3】に部材名を記入したものを掲載する。
<本件補正発明の分説>
(構成A) 測定管内の流体の流れの中に挿入した渦発生体と、
(構成B) 当該渦発生体の下流側に発生したカルマン渦の変化を電気信号の変化として検出する検出素子と、
(構成C) 上記電気信号を渦周波数に変換する電気回路と、
(構成D) 上記渦周波数に基づいて流体の流量を演算する演算回路と
を備え、
(構成E) 上記検出素子の上流側と下流側に直管部を有する
(構成X) 渦式流量測定装置において、
(構成F) 検出素子の後段に温度センサを配置し、
(構成G) あらかじめ当該流体について求めた温度t0、t1、t2、・・・、tn(t0<t1<t2<・・・<tn)と渦周波数と流量との関係を示す補正テーブルを上記演算回路に備え、
(構成H0) 上記温度センサで測定した当該流体の温度をtとし、上記検出素子で検出した電気信号から変換した渦周波数をfとした場合、
(構成H1) 上記温度tと渦周波数fが、上記補正テーブルが有する温度と渦周波数に合致する場合、当該合致した渦周波数における流量を補正後の流量として出力し、
(構成H2) 上記温度tは上記補正テーブルが有する温度t0、t1、t2、・・・、又はtnのいずれかに該当するが、上記渦周波数fを上記補正テーブルが有しない場合、渦周波数の変化量と流量の変化量は線形の関係にあると推定して上記演算回路により演算した渦周波数fにおける流量を補正後の流量として出力し、
(構成H3) 上記温度tは上記補正テーブルが有する温度のいずれかに該当せず、温度tは温度t0、t1、t2、・・・、又はtnのいずれか隣接する2つの温度tαとtβのあいだに含まれる場合、温度の変化量と渦周波数の変化量は線形の関係にあると推定して上記演算回路により当該温度tにおける渦周波数を演算し、且つ渦周波数の変化量と流量Qの変化量は線形の関係にあると推定して上記演算回路により演算した渦周波数fにおける流量を補正後の流量として出力することを特徴とする
(構成X) 渦式流量測定装置。
<参考図>
【図3】
[図:0001423120000001.jpg]
イ 課題・作用効果等に関連する明細書の発明の詳細な説明の記載
本願明細書の発明の詳細な説明の記載のうち、発明が解決しようとする課題及び効果に関する記載を抜粋すると、次の記載がある。
「【発明が解決しようとする課題】【0010】特許文献1には、温度センサ一体型渦流量計が開示されているが、単に温度補正手段を備えているだけであり、温度補正手段の具体的な構成も不明であって、被測定流体の温度による流量誤差を補正することは困難である。【0011】本発明は、このような従来技術の有する問題点に鑑みてなされたものであって、その目的は、被測定流体の温度による流量誤差を確実に補正することができる渦式流量測定装置を提供することにある。」
「【発明の効果】【0019】本発明の渦式流量測定装置は、流体の流れの中に障害物を挿入してその下流側にカルマン渦を発生させ、渦の変化を電気信号の変化として検出する検出素子の後段に温度センサを配置し、上記温度センサで測定した流体の温度による渦周波数の変化量に基づいて流体の流量を確実に補正することができる。」
(2) 引用文献1の記載事項及び引用発明の認定
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ア 引用文献1に記載された事項
原査定の拒絶の理由において引用された、本願の出願前に発行された文献である特開平7-209043号公報(以下「引用文献1」という。)には、次の記載がある(なお、下線は当合議体が付したものであり、後記イ及びウにおいて参照する箇所を示す。)。
(ア) 特許請求の範囲
「【請求項1】流体振動を利用して流量を測定する振動型流量計において、測定流路に設けられた振動型流量計本体と、測定流路に設けられ測定流体の動粘性係数を測定する動粘性係数測定センサと、該動粘性係数測定センサの測定信号と前記振動型流量計本体の測定信号とからストローハル数の補正処理をする演算処理回路とを具備したことを特徴とする振動型流量計。」
(イ) 【0001】~【0007】、【図2】、【図3】
「【0001】【産業上の利用分野】本発明は、低流速でのストローハル数の変化の影響をなくし、低流量まで流量測定可能レンジ幅が拡大し得る振動型流量計に関するものである。【0002】【従来の技術】図2は、従来より一般に使用されている従来例の構成説明図で、流体振動を利用した振動型流量計としては、渦流量計やエッジトーン流量計があるが、ここでは渦流量計を例にとって説明を行う。従来の渦流量計としては、例えば、第3回流体計測シンポジウム講演会論文集 題目「各種流体における渦流量の流量特性」昭和61年1月27日発行 計測自動制御学会発行P53~P56に示されている。渦流量計は、図2のように流路中に渦発生体を置き、渦発生体から発生するカルマン渦の周波数を測定することにより流速を求め、この流速に流路断面積をかけることにより、求めることのできる流量を測定するものである。」
「【図2】[図:0001423120000002.jpg]」
「【0003】11は測定流体が流れる管路、12は管路11に垂直に設けられた渦発生体である。13,14は、渦発生体12の側面に、流れに向かって左右に設けられた一組の圧力測定孔である。【0004】15,16は、圧力測定孔13,14から取り込まれた圧力変動を導圧する導圧管である。17は、導圧管15,16からの圧力変動が入力される、圧力センサである。18は、圧力センサ17の検出値を信号処理する信号処理回路である。19は、カルマン渦である。【0005】以上の構成において、渦発生体12により発生した渦により、測定流体は圧力変動をおこし、この圧力変動は、圧力センサ17で検出され、信号処理回路18で信号処理される。【0006】ここで、発生するカルマン渦の周波数fとある代表長さdをかけたものを流速uで割るとストローハル数Stという無次元量になるが、これが図3のようにある流速範囲で一定になるので、周波数を測定することにより以下の第1式を用いて、比較的簡単に流速を測定することができる。u=(f・d)/St (1)【0007】流体振動を利用した流量計は可動部がないため信頼性があり、測定流体の種類も液体、気体を問わず、更に非導電性流体も測定することが出来るため広く流量測定に用いられている。」
「【図3】[図:0001423120000003.jpg]」
(ウ) 【0008】~【0011】
「【0008】【発明が解決しようとする課題】しかしながら、この様な装置においては、図3から判るように流速が小さくなるとストローハル数が一定値ではなくなるため、(1)式を用いた場合、低流速域では誤差が大きくなり、低流速測定には不向きであり、流量測定レンジが小さくなっていた。【0009】本発明は、この問題点を解決するものである。本発明の目的は、低流速でのストローハル数の変化の影響をなくし、低流量まで流量測定可能レンジ幅が拡大し得る振動型流量計を提供するにある。【0010】【課題を解決するための手段】この目的を達成するために、本発明は、流体振動を利用して流量を測定する振動型流量計において、測定流路に設けられた振動型流量計本体と、測定流路に設けられ測定流体の動粘性係数を測定する動粘性係数測定センサと、該動粘性係数測定センサの測定信号と前記振動型流量計本体の測定信号とからストローハル数の補正処理をする演算処理回路とを具備したことを特徴とする振動型流量計を構成したものである。【0011】【作用】以上の構成において、振動型流量計本体で測定流体の流量を測定する。動粘性係数測定センサで測定流体の動粘性係数を測定する。演算処理回路で、動粘性係数測定センサの測定信号と振動型流量計本体の測定信号とから、ストローハル数の補正処理をする。以下、実施例に基づき詳細に説明する。」
(エ) 【0012】~【0021】、【図1】
「【0012】【実施例】図1は本発明の一実施例の要部構成説明図である。図において、図2と同一記号の構成は同一機能を表わす。以下、図2と相違部分のみ説明する。21は振動型流量計本体である。【0013】22は、測定流路23に設けられ、測定流体の動粘性係数を測定する動粘性係数測定センサである。24は、動粘性係数測定センサ22の測定信号と、振動型流量計本体21の測定信号とからストローハル数の補正処理をする演算処理回路である。この場合は、マイクロプロセツサが使用されている。」
「【図1】[図:0001423120000004.jpg]」
「【0014】以上の構成において、振動型流量計本体21で測定流体の流量を測定する。動粘性係数測定センサ22で測定流体の動粘性係数を測定する。演算処理回路24で、動粘性係数測定センサ22の測定信号と振動型流量計本体21の測定信号とから、ストローハル数Stの補正処理をする。【0015】基本原理を次に述べる。ストローハル数Stは、St = f・d/u (2)で、レイノルズ数Reは、続きを表示(全18行)Re = u・d/ν (3)で定義される。ここでνは流体の動粘性係数である。【0016】また、振動型流量計では、その形状によってただ1つ決定されるストローハル数Stとレイノルズ数Reのある関数関係が存在する。St = F(Re) (4)この関係を図示すると図3の横軸を無次元数であるレイノルズ数Reに置き換えた形になる。その曲線をレイノルズ数Reーストローハル数St曲線と呼ぶ。【0017】(4)式に(2)式、(3)式を代入することにより、f・d/u = F(u・d/ν) (5)となり、関数Fが既知でdは振動型流量計の代表長さであるから、振動周波数fと流体の動粘性係数νを測定することにより、未知数がuだけとなり、uについて解くことにより、uを求めることができる。【0018】図1によって具体的動作を説明する。まず、基準の流量計を用いてレイノルズ数Reーストローハル数St曲線の形を求め、関数Fを決定する。(5)式をuについて整理し、(6)式のような形にする。u = G(f、ν、d) (6)流量計の代表長さは、渦発生体12の幅とする。【0019】カルマン渦の発生周波数fは、圧力センサ17の出力電圧の変動周波数として信号処理回路18で検出される。また、動粘性係数νも動粘性係数測定センサ22で検出されるので、それらをマイクロプロセッサ24に入力し、マイクロプロセッサ24の中で(6)式を解く処理を行うと、流速uが求められ、測定流路断面積をかけることにより流量が求められる。(6)式のようではなくuの多項式になる場合もあるが、その場合はニュートン法などを用いてuについて解けばよい。【0020】この結果、本発明によれば、動粘性係数を測定する補正機構22,24を設けることにより、ストローハル数補正が可能となり、振動型流量計では今まで測定誤差が大きく測定不可能であった低流量まで精度良く測定することが出来、流量測定レンジが大幅に広がる振動型流量計が得られる。【0021】なお、測定対象とする流体の動粘性係数が温度の関数になっており、温度と動粘性係数の関係式がわかっている場合には、動粘性係数測定センサ22の代わりに温度センサを設け、それから動粘性係数を求めても良い。」
(オ) 【0022】~【0024】
「【0022】【発明の効果】以上説明したように、本発明は、流体振動を利用して流量を測定する振動型流量計において、測定流路に設けられた振動型流量計本体と、測定流路に設けられ測定流体の動粘性係数を測定する動粘性係数測定センサと、該動粘性係数測定センサの測定信号と前記振動型流量計本体の測定信号とからストローハル数の補正処理をする演算処理回路とを具備したことを特徴とする振動型流量計を構成した。【0023】この結果、本発明によれば、動粘性係数を測定する補正機構を設けることにより、ストローハル数補正が可能となり、振動型流量計では今まで測定誤差が大きく測定不可能であった低流量まで精度良く測定することが出来、流量測定レンジが大幅に広がる振動型流量計が得られる。【0024】従って、本発明によれば、低流速でのストローハル数の変化の影響をなくし、低流量まで流量測定可能レンジ幅が拡大し得る振動型流量計を実現することが出来る。」
イ 引用文献1の記載からの認定事項
(ア) 認定事項1
引用文献1の【0002】~【0007】に記載された「渦流量計」に関する技術事項は、引用文献1の「振動型流量計」の実施例の前提となる技術であるから、この実施例も「渦流量計」に関する上記技術事項を備えているものであると認められる。
したがって、引用文献1の「振動型流量計」の実施例は、次の技術事項(以下「認定事項1」という。)を備えると認められる。
<認定事項1>
「流路中に渦発生体を置き、渦発生体から発生するカルマン渦の周波数を測定することにより流速を求め、この流速に流路断面積をかけることにより、流量を測定する渦流量計であって、(【0002】)測定流体が流れる管路と、管路に垂直に設けられた渦発生体と、渦発生体12の側面に、流れに向かって左右に設けられた一組の圧力測定孔を備え、(【0003】)圧力測定孔から取り込まれた圧力変動を導圧する導圧管と、導圧管からの圧力変動が入力される圧力センサと、圧力センサ17の検出値を信号処理する信号処理回路を備え、(【0004】)渦発生体により発生した渦により、測定流体は圧力変動をおこし、この圧力変動は、圧力センサで検出され、信号処理回路で信号処理されるものであり、(【0005】)発生するカルマン渦の周波数fを測定することにより以下の第1式を用いて、流速uを測定する、(【0006】)u=(f・d)/St (1)(ここで、dは代表長さ、Stはストローハル数)渦流量計」
(イ) 認定事項2
a 引用文献1の【0021】には、次の技術事項が記載されている。
「なお、測定対象とする流体の動粘性係数が温度の関数になっており、温度と動粘性係数の関係式がわかっている場合には、動粘性係数測定センサ22の代わりに温度センサを設け、それから動粘性係数を求めても良い。」
b この点も踏まえると、引用文献1には、実施例において動粘性係数測定センサ22の代わりに温度センサを設けたものとして、次の技術事項が記載されていると認められる(以下「認定事項2」という。)。
<認定事項2>
「渦流量計が、測定流路に設けられた温度センサを有し、流体の動粘性係数が温度の関数になっており、温度と動粘性係数の関係式から動粘性係数を求めるものであり、(【0013】、【0021】)温度センサの測定信号から求めた動粘性係数の値と、渦流量計本体の測定信号とから、ストローハル数Stの補正処理をする演算処理回路を有すること。(【0014】、【0021】)」
ウ 引用発明の認定
前記イの認定事項1及び認定事項2を踏まえると、引用文献1には、実施例において動粘性係数測定センサ22の代わりに温度センサを設けたものに係る発明として、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。なお、認定の根拠となる記載箇所を括弧内に示した。
<引用発明>
「流路中に渦発生体を置き、渦発生体から発生するカルマン渦の周波数を測定することにより流速を求め、この流速に流路断面積をかけることにより、流量を測定する渦流量計であって、(【0002】)測定流体が流れる管路と、管路に垂直に設けられた渦発生体と、渦発生体の側面に、流れに向かって左右に設けられた一組の圧力測定孔を備え、(【0003】)圧力測定孔から取り込まれた圧力変動を導圧する導圧管と、導圧管からの圧力変動が入力される圧力センサと、圧力センサの検出値を信号処理する信号処理回路を備え、(【0004】)渦発生体により発生した渦により、測定流体は圧力変動をおこし、この圧力変動は、圧力センサで検出され、信号処理回路で信号処理されるものであり、(【0005】)続きを表示(全11行)カルマン渦の発生周波数fは、圧力センサの出力電圧の変動周波数として信号処理回路で検出されるものであり、(【0019】)発生するカルマン渦の周波数fを測定することにより以下の第1式を用いて、流速uを測定するものであり、(【0006】)u=(f・d)/St (1)(ここで、dは代表長さ、Stはストローハル数)測定流路に設けられた温度センサを有し、流体の動粘性係数が温度の関数になっており、温度と動粘性係数の関係式から動粘性係数を求めるものであり、(【0013】、【0021】)温度センサの測定信号から求めた動粘性係数の値と、渦流量計本体の測定信号とから、ストローハル数Stの補正処理をする演算処理回路を有する、(【0014】、【0021】)渦流量計」
(3) 技術常識の認定
ア 引用文献8、9に記載された事項及び技術常識1-1から1-3の認定
(ア) 引用文献8に記載された事項
当審において新たに引用する、占部修司、本橋浩明、丸山登、石田克己「小型フローセンサとそのシリーズ展開」横河技報、45巻、2号、2001年、107-110頁(以下「引用文献8」という。)には、次の記載がある。なお、下線は当合議体が付したものであり、以下同様である。
「2. 構 成2.1 渦流量計の原理流れの中に,障害物となる柱状物体である渦発生体を置くと,その後方に著名なカルマン渦列が形成される。このカルマン渦列の発生周波数fは,流速Vに比例する。続きを表示(全18行)即ち,渦発生体の流れに対抗する幅をdとすると,f,v,dの間には,次の関係式が成り立つ。f=St・v/dStはストローハル数と呼ばれる無次元数である。ストローハル数を予め把握しておけば,渦の発生周波数を計測することにより,流量を求めることができる。2.2 仕様流量レンジ及び対象流体に応じて、口径と材質を対応させた以下のシリーズを開発した。・FM01シリーズボディ材質 :PPS樹脂(Polyphenylene Sulfide)対象流体 :一般工業用水,純水特長 :小型軽量,堅牢,安価・FM21シリーズボディ材質 :New PFA(Perfluoroalkoxy)対象流体 :超純水,純水,水特長 :イオンフリー,耐薬液性図1と表2に,小型プラスチック渦流量計FM01シリーズ及びFM21シリーズの外観とその主な仕様を示す。各シリーズは,横河電機にて設計,製造し,OEM(Original Equipment Manufacturing)として,東京計装株式会社殿及びコフロック株式会社殿にて販売されている。」
「[図:0001423120000005.jpg]」
「2.3 構 成図2に,小型プラスチック渦流量計の構成を示す。本体は,流路を形成するボディ,渦検出器,信号処理回路及びカバー・出力ケーブルの必要最小限のシンプルな構成から成る。以下に各部の特長を示す。(中略)(2)渦検出体渦検出体は,バイモルフ圧電素子をボディと同材質の鞘に埋め込む構造とした。渦検出体を,渦発生体の後方流路内に挿入し,渦信号を高感度に検出する。(以下省略)」
(イ) 引用文献9に記載された事項
当審において新たに引用する、日本計量機器工業連合会「計装エンジニアのための流量計測A to Z」、工業技術社、平成7年11月1日112-117頁(以下「引用文献9」という。)には、次の記載がある。
a 112-113頁
「 7.5.2 流速分布原理的に管内の流速分布が不均一になるとカルマン渦の発生に影響を与え、誤差が発生する場合がある。(1)直管部安定した流速分布を得るためには、渦流量計の上下流管側に流量計と同一口径の直管部が必要である。最小必要直管長さは、現在メーカにより幅のある値となっているが、図7.5.2に計量研究所で数社の渦流量計の配管影響テストを実施し、推奨値として掲げたものを示す。」
「[図:0001423120000006.jpg]」
b 116-117頁
「(2)温度・圧力補正渦流量計は、原理上体積流量計であるが、温度、圧力、密度などの値により標準状態流量(例えば気体のノルマル流量)や質量流量に換算して使用される場合が多い。この場合に用いる換算式および温度、圧力、密度などの誤差が流量計の誤差となるので注意が必要である。特に注意する事項としては、圧力係数の取扱い、圧力タップの位置などが考えられる。温度及び圧力補正上の誤差原因は、温度計および圧力計の誤差、温度計および圧力計の取り付け位置、または圧縮係数の取り扱いなどがある。なお、補正に使用する温度計および圧力計は、図7.5.10に示すように流量計の下流側に設置する。」
「[図:0001423120000007.jpg]」
(ウ) 技術常識1-1の認定
前記(ア)に示した引用文献8の摘記事項に例示されるように、渦流量計に関する次の技術事項は、当業者にとって技術常識であったと認められる。(以下「技術常識1-1」という。)
<技術常識1-1>
「渦流量計において、検出素子が渦発生体の下流側に配置されており、渦発生体の下流側に発生したカルマン渦が検出されること。」
(エ) 技術常識1-2の認定
前記(イ)aに示した引用文献9の摘記事項に例示されるように、渦流量計に関する次の技術事項は、当業者にとって技術常識であったと認められる。(以下「技術常識1-2」という。)
<技術常識1-2>
「渦流量計において、管内の流速分布が不均一になるとカルマン渦の発生に影響を与え、誤差が発生する場合があることから、安定した流速分布を得るために、渦流量計の上下流管側に流量計と同一口径の直管部が必要であること。」
(オ) 技術常識1-3の認定
前記(イ)bに示した引用文献9の摘記事項に例示されるように、渦流量計に関する次の技術事項は、当業者にとって技術常識であったと認められる。(以下「技術常識1-3」という。)
<技術常識1-3>
「渦流量計において、流量の補正に使用する温度計は、流量計の下流側に設置すること。」
イ 引用文献2に記載された事項及び技術常識2の認定
(ア) 引用文献2に記載された事項
原査定の拒絶の理由において引用された、本願の出願前に発行された文献である特開2009-288153号公報(以下「引用文献2」という。)には、次の記載がある。
「【0016】以下、本発明の複数の実施形態を図面に基づいて説明する。<第1実施形態>図1は、第1実施形態の空気流量測定装置1の概略構成を示すブロック図である。この空気流量測定装置1は、車両に搭載されて吸気流量を測定するために用いられる。空気流量測定装置1は、補正ブロック10と、流量センサ(空気流量計)20と、温度センサ30と、ECU40とを備えている。流量センサ20は、例えば熱線式のセンサであり、シリコン半導体で構成される(不図示)。シリコン基板に薄膜部を形成し、その薄膜部の中央にヒータ抵抗体を設置し、さらにヒータ抵抗体を中心にして空気吸入方向に沿った上下流側に、流量検出用の温度センサ1,2を配置する。動作としては、ヒータ抵抗体を、吸入空気温度に対してある一定温度ΔTだけ高くなるように設定し、薄膜部分にヒータを中心に上下流対称の温度分布を生成する。空気が流入すると上流、下流側の温度分布に温度差が生じる。測定流量はこの温度差の関数となることから、薄膜部分の上下流の温度を流量検出用の温度センサで検出し、温度差を算出して流量を測定するものである。なお、逆流の場合は、上流、下流側の温度分布が逆になり、算出される温度差の符号も逆転するため、流量の方向性を判別できる。ここでの流量Gは、質量流量(g/s)である。温度センサ30は、前述した流量検出用の温度センサ1,2とは別に設置された吸気温度を測定するセンサであり、温度に対応する電圧Vtを出力する。図示していないが、電源電圧からプルアップ抵抗を経由して接続されている。」
「【図1】[図:0001423120000008.jpg]」
「【0017】補正ブロック10は、増幅演算器(オペアンプ)11、バッファ12、AD変換器(ADC)13、補正部14、「周波数変換手段」としての出力変換部15、および、クロック発生部16を有している。また、補正部14は、「補正演算手段」としてのデジタルシグナルプロセッサ(DSP)17と、「対応関係記憶手段」としての調整ROM(EEPROM)18とから構成されている。オペアンプ11は増幅回路を形成しており、オペアンプ11の一方の入力端子には、流量センサ20の出力端子が抵抗器19bを介在させて接続されている。また、この入力端子は、帰還抵抗である抵抗器19aを介在させてオペアンプ11の出力端子と接続されている。また、他方の入力端子は、抵抗器11aを経由して一定電位となっている。かかる構成により、オペアンプ11は、流量センサ20の出力する電圧Vを増幅して出力する。オペアンプ11の出力となる増幅された電圧Vは、ADC13へ入力される。【0018】続きを表示(全14行)バッファ12は、温度センサ30の出力端子に接続されて、回路側のインピーダンスを切り離す。バッファ12の出力となる電圧Vtは、ADC13へ入力される。ADC13は、入力されたアナログ値をデジタル値へ変換して出力する。ここでは、流量に対応する電圧Vをデジタルの電圧VDに変換して補正部14へ出力する。また、温度に対応する電圧Vtをデジタルの電圧VDtに変換して補正部14へ出力する。補正部14は、電圧VDを補正して補正電圧VDrを出力する。ここでは、DSP17が、調整ROM18に記憶されたマップに基づいて補正を行う。詳しい、補正方法については後述する。出力変換部15は、補正部14からの補正電圧VDrを、周波数変換して出力する。具体的には、補正電圧VDrに対応する1kHz~10kHzの範囲で周波数fのパルス波VDfを出力する。この出力は、ECU40に入力される。クロック発生部16は、DSP17をはじめ、補正ブロック10全体を動作させるための動作クロックを発生する。なお、この動作クロックは、補正ブロック10全体が同期して動作するように各部へ入力されるのであるが、煩雑になることを避けるため、動作クロックの入力経路については図示していない。【0019】次に、本実施形態の空気流量測定装置における補正処理について説明する。流量センサ20から出力される電圧Vは、同じ流量であっても、吸気温度によって変化する。したがって、本実施形態では、ADC13によってAD変換した後の電圧VDを、温度センサ30からのVDtを用い、基準温度(例えば20℃)での流量を示す補正電圧VDrに補正する。例えば、図5に示すように、吸気温度130℃の場合の電圧VD1を、基準温度20℃の補正電圧VD2に補正するという具合である。このような補正は、流量センサ20に固有の温度特性に基づいて行われる。【0020】ところが、流量に応じた出力電圧値と温度との関係が、測定流量毎に異なる場合がある。したがって、上述の例で言うと、吸気温度130℃の電圧VDを基準温度20℃の補正電圧VDrに補正する場合であっても、流量Gが異なると、補正係数が異なってくる。具体的には、図5に示すように、流量G2のときの電圧VD1を補正電圧VD2に補正する場合の補正係数と、流量G1のときの電圧VD3を補正電圧VD4に補正する場合の補正係数とが異なるものとなり、一律の比率で補正できない。」
「【図5】[図:0001423120000009.jpg]」
「【0021】そこで、本実施形態では、図2(a)に示すように、まず、電圧VDと吸気温度(例えば80℃)とから流量Giを求める。そして、図2(b)に示すように、次に、この流量Giと吸気温度とから補正係数Kiを求め、補正電圧VDrを求める。このときの吸気温度が、温度センサ30からの電圧Vtとして入力される(図1参照)。」
「【図2】[図:0001423120000010.jpg]」
「【0022】具体的には、図3(a)および(b)に示すような2つのマップを参照することによって補正係数Kiを求める。この補正係数Kiはある流量点での基準温度の電圧をVaとし、ある任意温度Tbでの電圧をVbとすると、補正係数は以下の式で表される。Ki=Vb/Vaこれらのマップは、流量センサ20の温度特性に基づいて作成されるものであり、補正部14の調整ROM18(図1参照)に、予め記憶されている。ここで流量センサ20の温度特性とは、流量センサ20の1台ごとの温度特性である。同種製品の間でも温度特性にばらつきがあるために、流量センサ20の一台ごとの温度特性をマップ化して調整ROM18に記憶しておく。【0023】図3(a)に示すマップ(以下、「第1マップ」という)は、入力電圧(V)および吸気温度(℃)に対応する流量Gを示している。このような第1マップを参照することにより、入力電圧VDで吸気温度Taのときの流量Giを求める。ここで、入力電圧および吸気温度はいずれも複数の離散的な値(離散的部分集合)となっているが、マップ容量を小さくするという観点(製品小型化の観点)および精度向上という観点から、5~10点程度とすることが例示される。この場合、流量Giは、通常、第1マップに基づく補間計算によって取得される。なお、本実施形態では、近傍の2点を用いた線型補間を行う。つまり、近傍の2点を用いて一次関数を導き、当該一次関数を用いて間の値を演算するのである。ただし、2点以上を用いた2次以上の補間計算(2次以上の関数を用いての演算)を行うようにしてもよい。」
「【図3】(a)[図:0001423120000011.jpg]」
「【0024】図3(b)に示すマップ(以下、「第2マップ」という)は、流量(g/s)および吸気温度(℃)に対応する補正係数Kを示している。このような第2マップを参照することにより、流量Giで吸気温度Taのときの補正係数Kiを求める。ここで、流量および吸気温度はいずれも複数の離散的な値(離散的部分集合)となっているが、上述と同様、5~10点程度とすることが例示される。この場合、補正係数Kiは、通常、第2マップに基づく補間計算によって取得される。なお、本実施形態では、近傍の2点を用いた線型補間を行う。ただし、2点以上を用いた2次以上の補間計算を行うようにしてもよい。【0025】そして、DSP17は、補正係数Kiを用いて電圧VDを以下の式によりVDr(基準温度電圧)= VD(補正前の電圧)/Ki補正し、補正電圧VDrを出力する。この補正電圧VDrは、上述したように、出力変換部15で周波数変換されて、ECU40へ出力される。」
「【図3】(b)[図:0001423120000012.jpg]」
(イ) 技術常識2の認定
a 前記(ア)に示した引用文献2の摘記事項から、流量測定装置において演算される流量Gは、流量センサから出力される電圧Vと、温度センサからの出力Vtを変数とする二変数関数になっており、G=G(V,Vt)と表現できることが読み取れる。
b また、流量センサから出力される入力電圧値と、温度センサからの吸気温度値の離散的な値の組み合わせを複数組用意して、その組み合わせに対応する流量Gを参照できる離散的な対応表を用意することにより、当該対応表を用いて入力電圧がVDで吸気温度がTaのときの流量Giを求めることが読み取れる。
c そして、入力電圧と吸気温度はいずれも複数の離散的な値となっているため、流量Giは、通常、離散的な対応表に基づく線形補間計算によって取得されることが読み取れる。
d 以上を踏まえると、引用文献2に例示されているように、次の技術事項は、当業者にとって技術常識であったと認められる。(以下「技術常識2」という。)
<技術常識2>
「ある量uが、二つの変数x,yを用いて、二変数関数u(x,y)として表現できるとき、離散的な代表点の(x,y,u)の値を用いて、(x,y)=(x1,y1)に対応するuの値u1を線形補間法により演算して求めることができること。」
ウ 引用文献10に記載された事項及び技術常識3の認定
(ア) 引用文献10に記載された事項
当審において新たに引用する、本願の出願前に発行された文献である特開2008-14834号公報(以下「引用文献10」という。)には、次の記載がある。
「【技術分野】【0001】本発明は、超音波を用いて流量を計測する超音波流量計に関し、特に流路を流れる流体の流量の計測値の補正を行うことにより、高精度な流量計測を図る技術に関する。…(中略)…続きを表示(全12行)【発明が解決しようとする課題】…(中略)…【0006】そこで、本発明は、流量の計測値の補正を行うことにより、高精度な流量計測を図ることができる超音波流量計を提供することにある。…(中略)…【発明の効果】【0008】本発明によれば、標準流量計で計測した被計測流体の流量の真値と当該超音波流量計で計測した被計測流体の流量の計測値との差分を離散的な代表点毎に求めて補正値として記憶し、記憶された離散的な代表点毎の補正値を補間することにより連続的な補正値を求め、計測値の誤差を示した器差曲線を近似し、近似された器差曲線を用いて被計測流体の流量の計測値を補正することにより被計測流体の流量の真値を求めるので、高精度な流量計測を図ることができる。」
「【実施例1】【0010】図1は、本発明の実施例1に係る超音波流量計を含む超音波流量計システムの構成を示すブロック図である。この超音波流量計システムは、計量器1、流体発生器2、マスターメータ3、パーソナルコンピュータ4から構成されている。【0011】流体発生器2は、被計測流体(例えばガス)を発生し、発生した被計測流体を計量器1とマスターメータ3とに同一流量ずつ出力する。マスターメータ3は、本発明の標準流量計に対応し、流体発生器2から入力された被計測流体の流量を計測し、計測した流量を真値としてパーソナルコンピュータ4に出力する。この場合、小流量から大流量までの範囲内において離散的な複数の代表点を選択し、選択された離散的な複数の代表点における流量の真値を求める。【0012】計量器1は、超音波流量計に対応し、流体発生器2から入力された被計測流体の流量を計測し、計測した流量を計測値としてパーソナルコンピュータ4に出力する。この場合、前記選択された離散的な複数の代表点における流量の計測値を求める。【0013】パーソナルコンピュータ4は、マスターメータ3で計測した被計測流体の同一流量の真値と計量器1で計測した被計測流体の同一流量の計測値との差分を離散的な代表点毎に補正値として求めて、この代表点毎の補正値を計量器1の通信部17に送る。」
「【図1】本発明の実施例1に係る超音波流量計を含む超音波流量計システムの構成を示すブロック図である。」
「【図1】[図:0001423120000013.jpg]」
「【0031】(代表点のとり方及び補間方法の具体例)次に、代表点のとり方及び補間方法の具体例について説明する。【0032】(例1)図7は直線における代表点のとり方の一例を示す図である。図7では、代表点103a,103b等を一定間隔で設けて離散的な複数の補正値104a,104b等をテーブル化し、代表点106a,106b等(代表点103a,103b等に対応)を直線で結ぶことにより、制御部23は、器差曲線102bを近似して連続的な補正値を求める。」
「【図7】直線における代表点のとり方の一例を示す図である。」
「【図7】[図:0001423120000014.jpg]」
「【0033】(例2)例2では、制御部23が、代表点を一定間隔ではなく、例えば、小流量から大流量までの範囲に亙って代表点を指数の間隔で設けて補正値をテーブル化して器差曲線を近似する。これによれば、記憶部13のメモリ容量が少なくて済むとともに、小流量時に補正値データが多いため、より高精度の補正が行える。」
「【0048】(圧力及び温度データを考慮した補正値)実施例1では、補正値を流量データの代表点のみに対応させて記憶部13に記憶させていたが、補正値は圧力や温度の影響を受けて変動する。このため、補正値を流量データだけでなく圧力データと温度データとに対応付けて記憶部13に記憶させるようにする。図11は流量データと圧力データと温度データとに対応付けた補正値を記憶する補正値テーブルを示す図である。【0049】図11に示すように、補正値C(x1,y1,z1)は、記憶領域において、温度データがx1、圧力データがy1、流量データがz1におけるある代表点における補正値である。【0050】このような代表点毎の補正値Cを補間し、連続的な補正値を求め、器差曲線を近似する。【0051】そして、制御部23は、図11に示す補正テーブルを用いて、温度センサ19で検出された温度データと圧力センサ21で検出された圧力データとに対応する補正値を読み出すことにより、流量の計測値を補正することができる。このため、高精度の計測を実現できる。」
「【図11】流量データと圧力データと温度データとに対応付けた補正値を記憶する補正値テーブルを示す図である。」
「【図11】[図:0001423120000015.jpg]」
(イ) 技術常識3の認定
前記(ア)に示した引用文献10の摘記事項に例示されているように、次の技術事項は、当業者にとって技術常識であったと認められる。(以下「技術常識3」という。)
<技術常識3>
「ある物理量fが、流量Q、温度Tを含む多変数の関数として記述できるとき、データ補間に用いる離散的な代表点を表すデータの組み合わせを、流量Qを縦軸、温度Tを横軸としたT-Q平面に対応するテーブルとして表現できること。」
(4) 本件補正発明と引用発明の対比
ア 対比分析
本件補正発明と引用発明を対比する。
(ア) 構成Xの観点(流量測定装置)
「渦式流量測定装置」の発明である本件補正発明と「渦流量計」の発明である引用発明は、「渦式流量測定装置」の発明である点において一致する。
(イ) 構成Aの観点(渦発生体)
a 構成Aは、「測定管内の流体の流れの中に挿入した渦発生体」を備えることである。
b 引用発明における「渦発生体」は、本件補正発明における「渦発生体」に相当する。
c また、引用発明における「測定流体が流れる管路」は、本件補正発明における「測定管」に相当し、引用発明における「管路」を「流れる」「測定流体」は、本件補正発明の「測定管内」を流れる「流体」に相当する。
d そして、引用発明において、「渦発生体」は「測定流体が流れる管路」に「垂直に設けられた」ものであり、「渦発生体により発生した渦により、測定流体は圧力変動をおこ[す]」ことを踏まえると、引用発明における「渦発生体」は、「管路」内の「測定流体」の流れの中に挿入されたものであるといえるから、本件補正発明における「測定管内の流体の流れの中に挿入した渦発生体」に相当する。
e したがって、本件補正発明と引用発明は、次の点において一致する。
「測定管内の流体の流れの中に挿入した渦発生体」を備える点。
(ウ) 構成Bの観点(検出素子)
a 構成Bは、「当該渦発生体の下流側に発生したカルマン渦の変化を電気信号の変化として検出する検出素子」を備えることである。
b 引用発明の「渦発生体により発生した渦」は「カルマン渦」であるところ、「渦発生体により発生した渦により」おきる「測定流体」の「圧力変動」は、本件補正発明の「カルマン渦の変化」に相当し、引用発明の「圧力変動」を「圧力センサで検出」することは、本件補正発明の「カルマン渦の変化を電気信号の変化として検出」することに相当する。
c そうすると、引用発明における「渦発生体の側面に、流れに向かって左右に設けられた一組の圧力測定孔」、「圧力測定孔から取り込まれた圧力変動を導圧する導圧管」及び「導圧管からの圧力変動が入力される圧力センサ」は、全体として、本件補正発明における「渦発生体」により「発生したカルマン渦の変化を電気信号の変化として検出する検出素子」に相当するといえる。
d したがって、構成Bの観点における本件補正発明と引用発明の一致点及び相違点は、次の(a)及び(b)に示すとおりである。
(a) 構成Bの観点における一致点
「当該渦発生体により発生したカルマン渦の変化を電気信号の変化として検出する検出素子」を備える点。
(b) 構成Bの観点における相違点
本件補正発明においては、「検出素子」が「検出」する「カルマン渦の変化」に係る「カルマン渦」が「当該渦発生体の下流側に発生した」ものであるのに対して、
引用発明においては、「渦発生体の側面」に「一組の圧力測定孔」が「流れに向かって左右に設けられ[て]」おり、「渦発生体」の下流に「検出素子」に相当する構成が配置されたものではない点。
(エ) 構成Cの観点(電気回路)
a 構成Cは、「上記電気信号を渦周波数に変換する電気回路」を備えることである。
b(a) 引用発明における「発生するカルマン渦の周波数f」は、本件補正発明における「渦周波数」に相当する。
(b) 引用発明においては、「渦発生体により発生した渦により、測定流体は圧力変動をおこし、この圧力変動は、圧力センサで検出され、信号処理回路で信号処理されるものであ[る]」ところ、「カルマン渦の発生周波数fは、圧力センサの出力電圧の変動周波数として信号処理回路で検出されるもの」であるから、引用発明における「信号処理回路」は、圧力センサから出力される検出信号を信号処理して、カルマン渦の周波数fに変換する回路であるといえる。
(c) 前記(a)及び前記(b)の検討結果を踏まえると、引用発明における「信号処理回路」は、本件補正発明における「電気信号を渦周波数に変換する電気回路」に相当する。
c したがって、本件補正発明と引用発明は、次の点において一致する。
「上記電気信号を渦周波数に変換する電気回路」を備える点。
(オ) 構成Dの観点(演算回路)
a 構成Dは、「上記渦周波数に基づいて流体の流量を演算する演算回路」を備えることである。
b 引用発明における「発生するカルマン渦の周波数fを測定することにより」「第1式を用いて、流速uを測定[し]」、「この流速に流路断面積をかけることにより、流量を測定する」ことは、本件補正発明の「渦周波数に基づいて流体の流量を演算する」ことに相当する。
c ここで、引用発明における前記bの測定に係る動作については、「温度センサの測定信号から求めた動粘性係数の値と、渦流量計本体の測定信号とから、ストローハル数Stの補正処理をする演算処理回路」がこの動作を担っていることは明らかであるから、引用発明における「演算処理回路」は、本件補正発明における「渦周波数に基づいて流体の流量を演算する演算回路」に相当するといえる。
d したがって、本件補正発明と引用発明は、次の点において一致する。
「上記渦周波数に基づいて流体の流量を演算する演算回路」を備える点。
(カ) 構成Eの観点(直管部)
構成Eの観点における本件補正発明と引用発明の一致点はなく、相違点は次に示すとおりである。
本件補正発明においては、
「検出素子の上流側と下流側に直管部を有する」ものであるのに対して、
引用発明においては、
検出素子の上流側と下流側に直管部を有することは明示されていない点。
(キ) 構成Fの観点(温度センサ)
a 構成Fは、「検出素子の後段に温度センサを配置[する]」点である。
b 引用発明における「温度センサ」は、本件補正発明における「温度センサ」に相当する。
c そして、引用発明における「測定流路に設けられた温度センサ」と、本件補正発明における「検出素子の後段に」配置された「温度センサ」は、測定管内の流体の流れの中に配置され、流体の温度を測定する点において共通する。
d そうすると、構成Fの観点における本件補正発明と引用発明の一致点及び相違点は、次の(a)及び(b)に示すとおりである。
(a) 構成Fの観点における一致点
「測定管内の流体の流れの中に配置され、流体の温度を測定する温度センサ」を備える点。
(b) 構成Fの観点における相違点
「測定管内の流体の流れの中に配置され、流体の温度を測定する温度センサ」が
本件補正発明においては、
「検出素子の後段に配置[される]」のに対して、
引用発明においては、
検出素子との配置の関係が特定されていない点。
(ク) 構成Gの観点(補正テーブル)
a 構成Gは、「あらかじめ当該流体について求めた温度t0、t1、t2、・・・、tn(t0<t1<t2<・・・<tn)と渦周波数と流量との関係を示す補正テーブルを上記演算回路に備え[る]」ことである。
b 一方、引用発明は、「測定流路に設けられた温度センサを有し、流体の動粘性係数が温度の関数になっており、温度と動粘性係数の関係式から動粘性係数を求めるものであ[る]」ところ、このような「温度と動粘性係数の関係式」でもある、「温度の関数としての動粘性係数」(以下、温度センサが測定した流体の温度をTとし、動粘性係数νが温度Tの関数であることを示すために動粘性係数を「ν(T)」により表記する。)が、「演算処理回路」に備えられていることは自明のことである。
c ここで、「ν(T)」は「ストローハル数Stの補正処理をする」ために参照されるものであり、「ストローハル数Stの補正処理」がされると、「u=(f・d)/St」の関係式(1)により、流速uが補正され、最終的に流量が補正されることを踏まえると、上記「補正処理」は、結局のところ、流体の温度に起因する流量の誤差を補正するものであるといえる。
d そうすると、引用発明の「ν(T)」と、本件補正発明の「あらかじめ当該流体について求めた温度t0、t1、t2、・・・、tn(t0<t1<t2<・・・<tn)と渦周波数と流量との関係を示す補正テーブル」(以下「補正テーブル」と称することもある。)は、流体の温度に起因する流量の誤差を補正するためのデータである点において共通する。
e したがって、構成Gの観点における本件補正発明と引用発明の一致点及び相違点は、次の(a)及び(b)に示すとおりである。
(a) 構成Gの観点での一致点
「流体の温度に起因する流量の誤差を補正するためのデータ」を演算回路に備える点。
(b) 構成Gの観点での相違点
演算回路に備える「流体の温度に起因する流量の誤差を補正するためのデータ」が、
本件補正発明においては、
「補正テーブル」であるのに対して、
引用発明においては、
「ν(T)」である点。
(ケ) 構成H0~H3の観点(補正テーブルを用いた補正方法)
a 構成H0~H3は、要するに、補正テーブルを用いて、温度センサで測定した当該流体の温度と検出素子で検出した電気信号から変換した渦周波数から、補正後の流量を出力する構成を規定したものである。
b 引用発明の「演算処理回路」は、前記(ク)cにおいて説示したとおり、最終的には流量を補正するものであるから、「流体の温度に起因する流量の誤差を補正するためのデータ」を用いて、温度センサで測定した流体の温度Tと圧力センサで検出されて信号処理回路で信号処理されたカルマン渦の周波数fから、補正後の流量を演算処理回路が演算し、出力する構成(以下「引用発明の演算出力構成h」という。)を備えているといえる。
c そうすると、前記(オ)及び(ク)の検討結果も踏まえると、本件補正発明の構成H0~H3と引用発明の演算出力構成hとは、「流体の温度に起因する流量の誤差を補正するためのデータ」を用いて、「温度センサで測定した当該流体の温度と検出素子で検出した電気信号から変換した渦周波数から、補正後の流量を演算処理回路が演算し、出力する」点において共通する。
d 前記cの共通点を踏まえると、構成H0~H3の観点における本件補正発明と引用発明の一致点及び相違点は、次の(a)及び(b)に示すとおりである。
(a) 構成H0~H3の観点での一致点
「流体の温度に起因する流量の誤差を補正するためのデータ」を用いて、「温度センサで測定した当該流体の温度と検出素子で検出した電気信号から変換した渦周波数から、補正後の流量を演算処理回路が演算し、出力する」点。
(b) 構成H0~H3の観点での相違点
「流体の温度に起因する流量の誤差を補正するためのデータ」を用いて、「温度センサで測定した当該流体の温度と検出素子で検出した電気信号から変換した渦周波数から、補正後の流量を演算処理回路が演算し、出力する」方法が、
本件補正発明においては、
「(構成H0) 上記温度センサで測定した当該流体の温度をtとし、上記検出素子で検出した電気信号から変換した渦周波数をfとした場合、(構成H1) 上記温度tと渦周波数fが、上記補正テーブルが有する温度と渦周波数に合致する場合、当該合致した渦周波数における流量を補正後の流量として出力し、(構成H2) 上記温度tは上記補正テーブルが有する温度t0、t1、t2、・・・、又はtnのいずれかに該当するが、上記渦周波数fを上記補正テーブルが有しない場合、渦周波数の変化量と流量の変化量は線形の関係にあると推定して演算した渦周波数fにおける流量を補正後の流量として出力し、(構成H3) 上記温度tは上記補正テーブルが有する温度のいずれかに該当せず、温度tは温度t0、t1、t2、・・・、又はtnのいずれか隣接する2つの温度tαとtβのあいだに含まれる場合、温度の変化量と渦周波数の変化量は線形の関係にあると推定して上記演算回路により当該温度tにおける渦周波数を演算し、且つ渦周波数の変化量と流量Qの変化量は線形の関係にあると推定して演算した渦周波数fにおける流量を補正後の流量として出力すること」
であるのに対して、
引用発明においては、
温度センサが測定した流体の温度がTであるとき、関数ν(T)から動粘性係数νの値を求め、νの値と渦流量計本体の測定信号とから、ストローハル数Stの補正処理をして、流速uが補正され、最終的に補正された流量が出力される点。
イ 一致点及び相違点
前記アの対比分析の結果をまとめると、本件補正発明と引用発明の一致点及び相違点は、それぞれ次の(ア)及び(イ)に示すとおりである。
(ア) 一致点
「 測定管内の流体の流れの中に挿入した渦発生体と、当該渦発生体により発生したカルマン渦の変化を電気信号の変化として検出する検出素子と、上記電気信号を渦周波数に変換する電気回路と、上記渦周波数に基づいて流体の流量を演算する演算回路とを備える、渦式流量測定装置において、測定管内の流体の流れの中に配置され、流体の温度を測定する温度センサを備え、流体の温度に起因する流量の誤差を補正するためのデータを演算回路に備え、流体の温度に起因する流量の誤差を補正するためのデータを用いて、温度センサで測定した当該流体の温度と検出素子で検出した電気信号から変換した渦周波数から、補正後の流量を演算回路が演算し、出力する、渦式流量測定装置」である点。
(イ) 相違点
a 相違点1
本件補正発明においては、
「検出素子」が「検出」する「カルマン渦の変化」に係る「カルマン渦」が「当該渦発生体の下流側に発生した」ものであり、
「検出素子の上流側と下流側に直管部を有する」ものであり、
「測定管内の流体の流れの中に配置され、流体の温度を測定する温度センサ」が「検出素子の後段に配置[される]」のに対して、
引用発明においては、
「渦発生体の側面」に「一組の圧力測定孔」が「流れに向かって左右に設けられ[て]」おり、「渦発生体」の下流に「検出素子」に相当する構成が配置されたものではなく、
検出素子の上流側と下流側に直管部を有することは明示されておらず、
温度センサと検出素子との配置の関係が特定されていない点。
b 相違点2
本件補正発明においては、
演算回路に備える「流体の温度に起因する流量の誤差を補正するためのデータ」が、
「あらかじめ当該流体について求めた温度t0、t1、t2、・・・、tn(t0<t1<t2<・・・<tn)と渦周波数と流量との関係を示す補正テーブル」(構成G)であり、
当該データを用いて、「温度センサで測定した当該流体の温度と検出素子で検出した電気信号から変換した渦周波数から、補正後の流量を演算回路が演算し、出力する」方法が、
「(構成H0) 上記温度センサで測定した当該流体の温度をtとし、上記検出素子で検出した電気信号から変換した渦周波数をfとした場合、(構成H1) 上記温度tと渦周波数fが、上記補正テーブルが有する温度と渦周波数に合致する場合、当該合致した渦周波数における流量を補正後の流量として出力し、(構成H2) 上記温度tは上記補正テーブルが有する温度t0、t1、t2、・・・、又はtnのいずれかに該当するが、上記渦周波数fを上記補正テーブルが有しない場合、渦周波数の変化量と流量の変化量は線形の関係にあると推定して演算した渦周波数fにおける流量を補正後の流量として出力し、(構成H3) 上記温度tは上記補正テーブルが有する温度のいずれかに該当せず、温度tは温度t0、t1、t2、・・・、又はtnのいずれか隣接する2つの温度tαとtβのあいだに含まれる場合、温度の変化量と渦周波数の変化量は線形の関係にあると推定して上記演算回路により当該温度tにおける渦周波数を演算し、且つ渦周波数の変化量と流量Qの変化量は線形の関係にあると推定して演算した渦周波数fにおける流量を補正後の流量として出力すること」
であるのに対して、
引用発明においては、
演算回路に備える「流体の温度に起因する流量の誤差を補正するためのデータ」が、
「ν(T)」であり、
当該データを用いて、「温度センサで測定した当該流体の温度と検出素子で検出した電気信号から変換した渦周波数をfから、補正後の流量を演算回路が演算し、出力する」方法が、
温度センサが測定した流体の温度がTであるとき、関数ν(T)から動粘性係数νの値を求め、νの値と渦流量計本体の測定信号とから、ストローハル数Stの補正処理をして、流速uが補正され、最終的に補正された流量が出力される点。
(5) 判断
ア 相違点1について
(ア) 検出素子の配置について
本件補正発明の構成Bは、「当該渦発生体の下流側に発生したカルマン渦の変化を電気信号の変化として検出する検出素子」というものであるから、「検出素子」が「検出」する「カルマン渦の変化」に係る「カルマン渦」の発生位置が「当該渦発生体の下流側」であることを特定するに留まり、「検出素子」自体の位置が「当該渦発生体の下流側」であることまでを特定するものではない。
そうすると、引用発明において、「渦発生体の側面」に「一組の圧力測定孔」が「流れに向かって左右に設けられ[て]」おり、「渦発生体」の下流に「検出素子」に相当する構成が配置されたものではないとしても、その点は実質的な相違点ではない。
仮に、実質的な相違点であるとして検討しても、「渦流量計において、検出素子が渦発生体の下流側に配置されており、渦発生体の下流側に発生したカルマン渦が検出されること」は技術常識であるから(前記「技術常識1-1」参照)、上記検出素子の配置に係る相違点は格別のものではない。
(イ) 直管部について
「渦流量計において、管内の流速分布が不均一になるとカルマン渦の発生に影響を与え、誤差が発生する場合があることから、安定した流速分布を得るために、渦流量計の上下流管側に流量計と同一口径の直管部が必要であること」は技術常識であるから(前記「技術常識1-2」参照)、引用発明の「渦流量計本体」の上流側と下流側に直管部を設けることは、当業者にとって自明のことにすぎない。
(ウ) 温度センサの配置について
「渦流量計において、流量の補正に使用する温度計は、流量計の下流側に設置すること」は技術常識であるから(前記「技術常識1-3」参照)、引用発明において、温度センサーを「圧力測定孔、導圧管、圧力センサが設けられる渦発生体」の後段に配置することは、当業者にとって自明のことにすぎない。
イ 相違点2について
(ア) 流量Qの関数表現
次のaからdに示す流量Q=(流速u)×(測定流路断面積S)に係る式変形は、当業者には、自ずと推論・認識できる自明のことにすぎない。
a 引用発明においては、動粘性係数νは「ストローハル数Stの補正処理をする」ために参照されるものであり、「ストローハル数St」が補正されると、「u=(f・d)/St」の関係式(1)により流速uが補正されるから、流速uはカルマン渦の発生周波数fと動粘性係数νを変数とする関数であることになり、同様に、流量Q=uSも、カルマン渦の発生周波数fと動粘性係数νを変数とする関数であって、次の式(A)のように表すことができる。
Q=Q(f,ν) ・・・式(A)
b ここで、動粘性係数νは流体の温度Tを変数とする関数、すなわち、ν(T)であるから、これを用いて式(A)を表現すると、次の式(B)のようになる。
Q=Q(f,ν(T)) ・・・式(B)
c 上記式(B)の右辺を見ると、流量Qが、カルマン渦の発生周波数fと流体の温度Tを変数とする関数として記述できることがわかるから、その関数をHとおくと、流量Qは次の式(C)のように書ける。
Q=H(f,T) ・・・式(C)
d さらに、上記式(C)をカルマン渦の発生周波数fについての方程式とみて、fについて解くと、カルマン渦の発生周波数fが、流体の温度Tと流量Qを変数とする関数として記述できることがわかるから、その関数をFとおくと、カルマン渦の発生周波数fは次の式(D)のように書ける。
f=F(T,Q) ・・・式(D)
(イ) 構成Gについて
a 「ある量uが、二つの変数x,yを用いて、二変数関数u(x,y)として表現できるとき、離散的な代表点の(x,y,u)の値を用いて、(x,y)=(x1,y1)に対応するuの値u1を線形補間法により演算して求めることができること」は、当業者の常套手段というべき技術常識である(「前記「技術常識2」参照」)から、引用発明において、離散的な代表点のデータと線形補間法を用いて流量を演算するようにすることは、自明のことにすぎない。
b その際、「ある物理量fが、流量Q、温度Tを含む多変数の関数として記述できるとき、データ補間に用いる離散的な代表点を表すデータの組み合わせを、流量Qを縦軸、温度Tを横軸としたT-Q平面に対応するテーブルとして表現できること」(各温度において、各流量に対応する計測値(又は計測値の誤差)のデータを収集することに対応する。)は、技術常識である(前記「技術常識3」参照)から、前記式(D)(f=F(T,Q))を認識できる当業者は、線形補間法に用いる離散的なデータとして、「Qを縦の欄、Tを横の欄として、対応するfの値を並べた代表点からなる対応表(流量Qを縦軸、温度Tを横軸としたT-Q平面上に表現されたfの離散値テーブル)」(以下「(T,Q,f)テーブル」という。)を用意できることは、自明のことである。
c そして、この表は、「あらかじめ当該流体について求めた温度t0、t1、t2、・・・、tn(t0<t1<t2<・・・<tn)と渦周波数と流量との関係を示す補正テーブル」に相当する。
d したがって、引用発明において、前記相違点2に係る構成Gを備えるようにすることは、当業者には、自明の設計変更にすぎない。
(ウ) 構成H0及びH1について
a (T,Q,f)テーブルに有る測定値の組み合わせ(f,T)について、対応表に有る流量Qの値を特定して求めることは、当然のことであるところ、これは、「(構成H0) 上記温度センサで測定した当該流体の温度をtとし、上記検出素子で検出した電気信号から変換した渦周波数をfとした場合」、「(構成H1) 上記温度tと渦周波数fが、上記補正テーブルが有する温度と渦周波数に合致する場合、当該合致した渦周波数における流量を補正後の流量として出力[する]」ことに相当する。
b したがって、(T,Q,f)テーブルを採用した場合、引用発明において、前記相違点2に係る構成H0及びH1のように構成することは、当業者には自明である。
(エ) 構成H2について
a (T,Q,f)テーブルに、温度tの値が存在するが、渦周波数fの値が存在しない場合、ほかの温度のデータは演算に必要ないことは自明であるから、当該温度におけるfの隣接する2点から線形補間法によりQを求めることは自明のことにすぎない。
b そして、このことは、「(構成H2) 上記温度tは上記補正テーブルが有する温度t0、t1、t2、・・・、又はtnのいずれかに該当するが、上記渦周波数fを上記補正テーブルが有しない場合、渦周波数の変化量と流量の変化量は線形の関係にあると推定して演算した渦周波数fにおける流量を補正後の流量として出力[する]」ことに相当する。
c したがって、(T,Q,f)テーブルを採用した場合、引用発明において、前記相違点2に係る構成H2を備えるようにすることは、当業者には自明である。
(オ) 構成H3について
a (T,Q,f)テーブルに、温度Tの値も渦周波数fの値も存在しない場合、この表は、Tを横の欄として、整理されているのであるから、線形補間法によって、まず、温度Tにおける縦に並んだfの欄をそれに隣接する温度におけるfのデータ(Qの値は等しい。)を使って内挿し、次に、その挿入された欄のfの値を用いて、構成H2と同様に線形補間法により、Qを求めることは自明のことである。
b そして、このことは、「(構成H3) 上記温度tは上記補正テーブルが有する温度のいずれかに該当せず、温度tは温度t0、t1、t2、・・・、又はtnのいずれか隣接する2つの温度tαとtβのあいだに含まれる場合、温度の変化量と渦周波数の変化量は線形の関係にあると推定して上記演算回路により当該温度tにおける渦周波数を演算し、且つ渦周波数の変化量と流量Qの変化量は線形の関係にあると推定して演算した渦周波数fにおける流量を補正後の流量として出力すること」に相当する。
c したがって、(T,Q,f)テーブルを採用した場合、引用発明において、前記相違点2に係る構成H3を備えるようにすることは、自明である。
(カ) 相違点2の検討のまとめ
以上のとおりであるから、技術常識2、3の知識を有する当業者にとっては、引用発明において前記相違点2に係る本件補正発明の構成を備えるようにすることは、当業者が容易に想到し得る設計変更にすぎない。
ウ 総合評価
前記ア及びイにおいて検討したとおり、引用発明において、前記相違点1及び相違点2に係る本件補正発明の構成を備えるようにすることは、引用発明に基づいて当業者が容易に想到し得たことである。
そして、相違点1及び相違点2を総合的に勘案しても、本件補正発明が奏する効果としては、当該構成のものとして当業者が予測・発見困難であり、かつ、格別顕著な効果を認めることはできない。
したがって、本件補正発明は、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
エ 請求人の主張について
請求人は、審判請求書において、本件補正発明には引用文献2に記載の補正係数(Ki)に相当する構成はなく、本件補正発明と引用文献2に記載の発明は技術的思想において異なり、引用文献1と引用文献3には本件補正発明の特徴は全く記載されていないから、本件補正発明は進歩性を有する旨主張している。
しかしながら、前記相違点1及び相違点2に係る構成が当業者にとって自明であることは、前記ア及びイにおいて検討したとおりであるから、請求人の主張は採用できない。
オ 独立特許要件の判断のまとめ
以上検討のとおり、本件補正発明は、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
したがって、本件補正により請求項1についてする補正は、特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に適合しない。
4 本件補正の却下の決定の理由のむすび
前記3(5)オのとおり、本件補正は、同法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に違反するから、同法159条1項において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。
よって、前記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。
第3 本願発明について
1 本願発明について
本件補正は、前記第2のとおり却下したので、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、本件補正前の特許請求の範囲の請求項1(前記第2の1(1)参照)に記載された事項により特定されるとおりのものである。
2 原査定における拒絶の理由の概要
原査定の本願発明に対する拒絶の理由(進歩性の欠如)の概要は、次のとおりである。
理由1(進歩性の欠如)
本願発明は、その出願前に発行された引用文献1に記載された発明及び周知技術に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
3 引用発明の認定等
引用文献1に記載された事項、認定事項1、2及び引用発明は、前記第2の3(2)ア~ウにおいて示したとおりである。
また、技術常識1-1~1-3、技術常識2及び技術常識3は、それぞれ前記第2の3(3)ア(ウ)~(オ)、イ(イ)及びウ(イ)において示したとおりである。
4 対比・判断
本願発明は、本件補正発明から、前記第2の2(1)のアからウに示した限定を省いたものである。
そうすると、本願発明の構成を全て含み、その構成の一部を限定したものに相当する本件補正発明が、前記第2の3(5)において説示したとおり、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
第4 むすび
以上検討のとおり、本願発明は、特許法29条2項の規定により、特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2024-000703