特許拒絶査定不服審判
2024-000623
放射のパルスのバーストを制御するための放射システム
- 審判番号
- 2024-000623
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2022-523484
- 請求日
- 2024年01月15日
- 審決日
- 2025年04月21日
- 公報発行日
- 2025年10月31日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】サイマー リミテッド ライアビリティ カンパニー
- 【請求人代理人】稲葉 良幸
- 【請求人代理人】大貫 敏史
- 【請求人代理人】江口 昭彦
- 【請求人代理人】内藤 和彦
- 審判長/審判官
- 審判長 波多江 進
- 審判官 芝沼 隆太
- 審判官 藤田 年彦
- 分類
- P18 .121-Z (H01S) / P18 .575-Z (H01S)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条、特許法第17条の2第5項、特許法第17条の2第6項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2022-523484「放射のパルスのバーストを制御するための放射システム」拒絶査定不服審判事件〔令和3年5月14日国際公開、WO2021/091730、令和5年1月10日国内公表、特表2023-500603〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、2020年(令和2年)10月27日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2019年(令和元年)11月8日(以下「優先日」という。) アメリカ合衆国)を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
令和4年 6月17日 :手続補正書の提出
令和5年 5月23日付け:拒絶理由通知書
同年 8月24日 :意見書、手続補正書の提出
同年 9月 6日付け:拒絶査定(以下「原査定」という。)
令和6年 1月15日 :審判請求書、手続補正書の提出
第2 令和6年1月15日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和6年1月15日にされた手続補正を却下する。
[補正の却下の決定の理由]
1 本件補正の内容
令和6年1月15日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)は、特許請求の範囲についてする補正であって、本件補正前(令和5年8月24日にされた手続補正後)の特許請求の範囲の請求項1及び本件補正後の特許請求の範囲の請求項1の記載は、それぞれ次の(1)及び(2)に示すとおりである。下線は補正箇所を示す。
(1)本件補正前
「放射のパルスのバーストを制御するための放射システムであって、
放射の前記パルスと相互作用して放射の前記パルスの波長を制御するように構成された光学素子であって、放射の前記パルスの前記波長は、前記光学素子の構成に依存する、光学素子と、
パルス信号である制御信号を生成するように動作可能であるコントローラと、
前記コントローラから前記制御信号を受け取り、前記制御信号に依存して前記光学素子の構成を制御するように構成されたアクチュエータと、
前記光学素子と相互作用したパルスの前記波長を決定するように動作可能であるセンサと、を含み、
所与のバースト中の所与のパルスに対する前記制御信号は、少なくとも1つの以前のバーストからの対応するパルスの前記決定された波長に依存し、
前記コントローラは、前記制御信号が振動して、前記パルスのバースト内で2つの異なる設定値波長間で交互になる波長を有するパルスを提供するように構成される、放射システム。」
(2)本件補正後
「放射のパルスのバーストを制御するための放射システムであって、
放射の前記パルスと相互作用して放射の前記パルスの波長を制御するように構成された光学素子であって、放射の前記パルスの前記波長は、前記光学素子の構成に依存する、光学素子と、
パルス信号である制御信号を生成するように動作可能であるコントローラと、
前記コントローラから前記制御信号を受け取り、前記制御信号に依存して前記光学素子の構成を制御するように構成されたアクチュエータと、
前記光学素子と相互作用したパルスの前記波長を決定するように動作可能であるセンサと、を含み、
所与のバースト中の所与のパルスに対する前記制御信号は、少なくとも1つの以前のバーストからの対応するパルスの前記決定された波長に依存し、
所与のバースト中の所与のパルスに対する前記制御信号は、少なくとも1つの以前のバースト中の対応するパルスに対する前記制御信号に補正項を加えたものによって与えられ、前記補正項は、少なくとも1つの以前のバーストからの前記対応するパルスの前記決定された波長と目標波長との差と、利得との積であり、
前記コントローラは、前記制御信号が振動して、前記パルスのバースト内で2つの異なる設定値波長間で交互になる波長を有するパルスを提供するように構成される、放射システム。」
2 本件補正の適否について
(1)本件補正の目的について
本件補正後の請求項1に係る補正は、本件補正前の請求項1の発明特定事項である「所与のバースト中の所与のパルスに対する前記制御信号」について、「少なくとも1つの以前のバースト中の対応するパルスに対する前記制御信号に補正項を加えたものによって与えられ、前記補正項は、少なくとも1つの以前のバーストからの前記対応するパルスの前記決定された波長と目標波長との差と、利得との積であ」ることを限定するものである。
そして、本件補正前の請求項1に記載された発明と本件補正後の請求項1に記載される発明は、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一である。
したがって、本件補正は、特許法17条の2第5項2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とする補正に該当する。
(2)独立特許要件について
前記(1)のとおり、本件補正は、特許法17条の2第5項2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とする補正である。そこで、本件補正後の請求項1に係る発明(以下「本件補正発明」という。)が、同法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に適合するか、すなわち、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるかについて、以下で検討する。
ア 本件補正発明
本件補正発明は、前記1(2)の本件補正後の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものと認める。
イ 引用文献
(ア)引用文献1
原査定に引用され、本願の優先日前に発行された特表2018-517278号公報(以下「引用文献1」という。)には、次の事項が記載されている(下線は当合議体が付した。)。
「【0038】
図4Aを参照すると、例示的な光学系400のブロック図が示されている。光学系400は、光ビーム424を放射する光源405と、制御系450とを含む。制御系450は、システム100(図1)及び200(図2)の制御系150として使用することができる。光源405は、光源105(図1)又は205(図2)に類似していてもよい。
【0039】
光ビーム424は、バースト及び各バースト内の光パルスを含む。光パルスは光源405の繰り返し率で発生され、バーストは光源から光パルスが放射されない一時的期間により分離される。
【0040】
制御系450は、パルスのバースト内のパルスの波長に関する情報を、信号458を介して線中心分析モジュール420から受け、毎パルス補正信号又はフィードフォワード補正信号とも呼ばれる補正信号457を光源405に供給することにより、光ビーム424の波長誤差を許容範囲内にまで低減する。制御系450は、補正信号457を決定するフィードフォワード安定化モジュール460を含む。
【0041】
フィードフォワード補正信号457は、前のバースト内のパルスの波長データから決定され、その結果、フィードフォワード補正信号457の決定は、光源405内を現在伝搬しているバーストのパルスに関する波長情報を受け取ることに依存せず、線中心分析モジュール420からのデータ受け取りの遅延の影響を受けない。従って、フィードフォワード補正信号457は、高い繰り返し率、例えば6,000ヘルツ(Hz)以上の繰り返し率でパルスを発生する光源に印加することができる。光源405の構成要素は、フィードフォワード安定化モジュール460をより詳細に考察する前に考察される。
【0042】
光源405は、2つの細長の電極417と、混合ガスである利得媒体419と、電極417間でガスを循環させるためのファン421とを有する放電チャンバ414を含む。共振器が放電チャンバ414の一方の側のライン狭隘化モジュール416と放電チャンバ414の第2の側の出力結合器418との間に形成される。電極417に電圧が印加されると、利得媒体419は、共振器内を伝搬する光を放射し、パルス光ビーム424を形成する。ライン狭隘化モジュール416は、例えば光を反射する及び/又は屈折させることにより、共振器内を伝搬する光と相互作用する光学素子442を含む。光学素子442は、光ビーム424のスペクトル出力を精密に調整するグレーティングなどの回折光学素子であってもよい。いくつかの実装形態において、光学素子442は、プリズムなど光の波長に基づいて光を分散させる屈折素子である。いくつかの実装形態において、光学素子442は、2つ以上の光学素子を含む光学装置であってもよく、例えば屈折要素及び反射要素の両方を有していてもよい。
【0043】
光学素子442は、光学素子442を移動させる又は光学素子442の形状を変更するように制御可能なアクチュエータ444に結合されている。アクチュエータ444は、光学素子442を移動させる又は形状を変化させることができる任意のタイプのアクチュエータであってもよい。例えば、アクチュエータ444は、電圧の印加に応答して形状及び/又は大きさを変化させる圧電材料であってもよい。この例では、電圧を印加してアクチュエータ444の形状を変化させることによって光学素子442を移動させる。光学素子442は、直接的又は間接的な物理的接触によってアクチュエータ444に結合することができる。例えば、アクチュエータ444は、光学素子442、又は光学素子442に接触する要素(例えばマウント)に接触することができる。いくつかの実装形態において、アクチュエータ444は、物理的に接触することなく光学素子442を移動させる。
【0044】
光源405は、出力結合器418からの出力光ビームを受けてパルス光ビーム424を形成する線中心分析モジュール420も含む。線中心分析モジュール420は、パルス光ビーム424のパルスの波長を監視及び/又は測定する測定系である。いくつかの実装形態において、線中心分析モジュール420は、パルス光ビーム424の各パルスの波長を測定する。
【0045】
線中心分析モジュール420が測定した波長情報は、信号458を介して制御系450に提供される。波長情報は、例えば、ビーム424の光パルスの波長、測定された中心波長、波長帯域、及び/又は波長誤差を示すデータを含むことができる。制御系450は、1つのバースト(上付きでiが添え字される)の各パルス(下付きでkが添え字される)について線中心分析モジュール420から波長情報を受け取ることができる。制御系450は、光ビーム424の一時的繰り返し率における線中心分析モジュール420からのバーストi内のパルスkの波長情報を表す信号458
【数1】
(Yik)
のインスタンスを受信する。従って、制御系450は、1つのバースト内の各パルスについての信号458
【数2】
(Yik)
のインスタンスを受信することができる。これらの受信した信号458のインスタンスは、電子記憶装置461に記憶され、後続の(後で発生する)バーストのパルスに印加されるフィードフォワード補正信号を決定するのに使用される。
【0046】
図4Bも参照すると、フィードフォワード安定化モジュール460は、前のバーストのパルスからの波長情報を用いてフィードフォワード補正信号457を決定する。以上で考察したように、受信した信号
【数3】
(Yik)
458のインスタンスは、電子記憶装置461(図4A)に記憶される。フィードフォワード補正信号457を決定し、バーストiのパルスに印加するために、波長情報の以前のインスタンス459が電子記憶装置461からアクセス又は検索される。以前のインスタンス459は、バーストi-1のパルスk-m~k+nのサブセット中の各パルスについての波長情報を含み、
【数4】
(Yi-1k-m,...,k-1,k,k+1,...,k+n)
と表される(ここでn、m、k、及びiは、整数値である)。この例では、以前のインスタンス459は、時間的に連続する一連のパルス(パルスk及びk+1など)についての波長データを含む。しかし他の例では、以前のインスタンス459は、サブセット中のいかなる他のパルスとも連続しないパルスのサブセットについての波長データ、又は、サブセット中のいかなる他のパルスとも連続しないパルス及びサブセット中の少なくとも1つの他のパルスに連続するパルスを含むパルスのサブセットについての波長データを含む。換言すれば、フィードフォワード信号457を決定するのに用いられるバーストi-1内のパルスのサブセットは、バーストi-1内のパルスの一部又は全部を含むことができる。
・・・
【0048】
フィードフォワード安定化モジュール460は、以前のインスタンス459
【数5】
(Yi-1k-m,...,k-1,k,k+1,...,k+n)
を用いて、バーストiのパルスk-m~k+nのサブセット中の各パルスについての信号、情報、又は/又は値を含むフィードフォワード補正信号457
【数6】
(Vik-m,...,k-1,k,k+1,...,k+n)
を決定する。フィードフォワード補正信号457
【数7】
(Vik)
のインスタンスは、バーストiのパルスkが光学素子422と相互作用している間にライン狭隘化モジュール416に印加されるとき、反復的撹乱から生じるパルスkの波長誤差を低減する又は取り除く値、波形、又は量である。」
「【0052】
電子記憶装置461と共に、制御系450は、電子プロセッサ452及び入出力(I/O)インタフェース456も含む。電子記憶装置461は、RAMなどの揮発性メモリ、又は不揮発性メモリであってもよい。いくつかの実装形態において、電子記憶装置461は、不揮発性部分又は要素と揮発性部分又は要素の両方を含んでいてもよい。電子記憶装置461は、実行時に、プロセッサ452に制御系450及び/又は光源405の他の構成要素との通信を行わせる、恐らくはコンピュータプログラムなどの命令を記憶する。命令は、例えば電子記憶装置454にパルス光ビーム424のパルスの波長に関連するデータを記憶させる命令であってもよい。命令は、電子プロセッサ452に、例えば毎パルス補正信号457の検索を行わせる、及び/又は記憶された波長情報を分析させて毎パルス補正信号457の決定を行わせる、及び毎パルス補正信号457に基づいて電圧信号を発生させる命令であってもよい。」
「【0073】
波長誤差は、パルスの第1のサブセット中の各パルスについて決定される(610)。特定の光パルスの波長誤差は、そのパルスの目標波長と決定された波長の差である。決定された波長は、線中心分析モジュール420により測定され、制御系450に提供されてもよく、制御系450は、線中心分析モジュール420が求めた波長測定値から波長誤差を決定することができる。決定された波長誤差は、毎パルス補正信号を決定し、パルスの後続のバースト内のパルスの波長誤差を補正するのに使用するために電子記憶装置461に記憶される。」
「【0076】
毎パルス補正信号は、例えば制御系450の電子プロセッサ452により用いられ、補正信号の値を表す電圧信号が発生する。この例において、補正はアクチュエータ444への電圧信号の印加である。電圧信号をアクチュエータ444に印加することによって、光学素子442は、パルスの第2のサブセット中のパルスを、パルスの第1のサブセット中の対応するパルスの測定波長誤差を補償する量だけ偏向させる量だけ移動する。以上で考察したように、波長誤差は、利得媒体419に衝撃波面をもたらす物理的撹乱から生じ得る。光学素子442を移動させることによって、チャンバ内を伝搬する光を衝撃波面による光の偏向に対抗する量だけ偏向させることができる。いくつかの実装形態において、毎パルス補正信号は、アクチュエータ444に作用するフィードバック又は制御信号に付加され、又はさもなければ結合され、光学素子442を移動させ、すなわち調整し、波長誤差の低減以外の補償又は変更のためにチャンバ214内のビームを変更することができる。これらの実装形態において、波長誤差の低減は、既存の補償又は変更技術に追加され、これらの他の技術を高めて助長する。」
[図:0001427388000001.jpg]
[図:0001427388000002.jpg]
これらの記載によれば、引用文献1には、光ビーム424を放射する光源405と、制御系450とを含む光学系400(図4A及び図4B)について、次の発明(以下「引用発明」という。a等は分説のために付した。)が記載されているものと認められる。なお、参考までに、引用発明の認定に用いた引用文献1の記載に係る段落番号を括弧内に付してある。
<引用発明>
「a 光ビーム424を放射する光源405と、制御系450とを含む光学系400において(【0038】)、
b 光ビーム424は、バースト及び各バースト内の光パルスを含み、バーストは光源から光パルスが放射されない一時的期間により分離され(【0039】)、
c 制御系450は、パルスのバースト内のパルスの波長に関する情報を、信号458を介して線中心分析モジュール420から受け、毎パルス補正信号又はフィードフォワード補正信号とも呼ばれる補正信号457を光源405に供給することにより、光ビーム424の波長誤差を許容範囲内にまで低減し、制御系450は、補正信号457を決定するフィードフォワード安定化モジュール460を含み(【0040】)、
d フィードフォワード補正信号457は、前のバースト内のパルスの波長データから決定され(【0041】)、
e 光源405は、放電チャンバ414を含み、共振器が放電チャンバ414の一方の側のライン狭隘化モジュール416と放電チャンバ414の第2の側の出力結合器418との間に形成され、ライン狭隘化モジュール416は、光を反射する及び/又は屈折させることにより、共振器内を伝搬する光と相互作用する光学素子442を含み、光学素子442は、光ビーム424のスペクトル出力を精密に調整するグレーティングなどの回折光学素子であってもよく(【0042】)、
f 光学素子442は、光学素子442を移動させるように制御可能なアクチュエータ444に結合され(【0043】)、
g 光源405は、線中心分析モジュール420も含み、線中心分析モジュール420は、パルス光ビーム424の各パルスの波長を測定し(【0044】)、
h 制御系450は、1つのバースト(上付きでiが添え字される)の各パルス(下付きでkが添え字される)について線中心分析モジュール420から波長情報を受け取ることができ、制御系450は、1つのバースト内の各パルスについての信号458(Yik)のインスタンスを受信することができ、これらの受信した信号458のインスタンスは、電子記憶装置461に記憶され、後続の(後で発生する)バーストのパルスに印加されるフィードフォワード補正信号を決定するのに使用され(【0045】)、
i フィードフォワード安定化モジュール460は、前のバーストのパルスからの波長情報を用いてフィードフォワード補正信号457を決定し、以前のインスタンス459は、バーストi-1のパルスk-m~k+nのサブセット中の各パルスについての波長情報を含み、(Yi-1k-m,...,k-1,k,k+1,...,k+n)と表され(ここでn、m、k、及びiは、整数値である)、以前のインスタンス459は、時間的に連続する一連のパルス(パルスk及びk+1など)についての波長データを含み、フィードフォワード信号457を決定するのに用いられるバーストi-1内のパルスのサブセットは、バーストi-1内のパルスの一部又は全部を含むことができ(【0046】)、
j フィードフォワード安定化モジュール460は、以前のインスタンス459(Yi-1k-m,...,k-1,k,k+1,...,k+n)を用いて、バーストiのパルスk-m~k+nのサブセット中の各パルスについての信号、情報、又は値を含むフィードフォワード補正信号457(Vik-m,...,k-1,k,k+1,...,k+n)を決定し、フィードフォワード補正信号457(Vik)のインスタンスは、バーストiのパルスkが光学素子422と相互作用している間にライン狭隘化モジュール416に印加されるとき、反復的撹乱から生じるパルスkの波長誤差を低減する又は取り除く値、波形、又は量であり(【0048】)、
k 電子記憶装置461と共に、制御系450は、電子プロセッサ452及び入出力(I/O)インタフェース456も含み(【0052】)、
l 波長誤差は、パルスの第1のサブセット中の各パルスについて決定され、特定の光パルスの波長誤差は、そのパルスの目標波長と決定された波長の差であり、決定された波長は、線中心分析モジュール420により測定され、制御系450に提供され、制御系450は、線中心分析モジュール420が求めた波長測定値から波長誤差を決定し、決定された波長誤差は、毎パルス補正信号を決定し、パルスの後続のバースト内のパルスの波長誤差を補正するのに使用するために電子記憶装置461に記憶され(【0073】)、
m 毎パルス補正信号は、制御系450の電子プロセッサ452により用いられ、補正信号の値を表す電圧信号が発生し、補正はアクチュエータ444への電圧信号の印加であり、電圧信号をアクチュエータ444に印加することによって、光学素子442は、パルスの第2のサブセット中のパルスを、パルスの第1のサブセット中の対応するパルスの測定波長誤差を補償する量だけ偏向させる量だけ移動する(【0076】)、
光学系400。」
(イ)引用文献2
原査定に引用され、本願の優先日前に発行された国際公開第2019/190700号(以下「引用文献2」という。)には、次の事項が記載されている(下線は当合議体が付した。括弧書き内の日本語訳はファミリー文献である特表2021-517353号公報に依った。)。
「[0006] In some general aspects, a method includes: producing a burst of pulses of an amplified light beam at a pulse repetition rate and directing the pulses to a lithography exposure apparatus. The method includes, while producing the pulse burst, driving a spectral feature adjuster among a set of discrete states at a frequency correlated with the pulse repetition rate. Each discrete state corresponds to a discrete value of the spectral feature of the amplified light beam out of a plurality of pre-set discrete values of the spectral feature, such that, each time a pulse in the burst is being produced, the spectral feature adjuster is in one of the discrete states and the amplified light beam pulse has a spectral feature that corresponds to that discrete state. The method includes, in between the production of the bursts of pulses and while no pulses are being produced, driving the spectral feature adjuster in a manner that is related to information received from the lithography exposure apparatus. Moreover, the method includes ensuring that the spectral feature adjuster is in one of the discrete states that corresponds to a discrete value of the spectral feature of the amplified light beam when a pulse in the next burst is produced.」
([0006] いくつかの全体的な態様において、方法は、パルス繰り返し率で増幅光ビームのパルスのバーストを生成することと、パルスをリソグラフィ露光装置に送出することと、を含む。方法は、パルスバーストの生成中に、パルス繰り返し率と相関する周波数でスペクトル特性アジャスタを離散状態セット間で駆動することを含む。各離散状態は、増幅光ビームのスペクトル特性の予め設定された複数の離散値の中のスペクトル特性の離散値に対応し、バースト内のパルスが生成されるたびに、スペクトル特性アジャスタは離散状態のうち1つになり、増幅光ビームパルスはその離散状態に対応するスペクトル特性を有する。方法は、パルスバーストの生成と生成との間の、パルスが生成されていないときに、リソグラフィ露光装置から受信される情報に関連したやり方でスペクトル特性アジャスタを駆動することを含む。更に、方法は、次のバースト内のパルスの生成時に、スペクトル特性アジャスタが増幅光ビームのスペクトル特性の離散値に対応する離散状態のうち1つであることを保証することを含む。)
「 [0009] The spectral feature of the amplified light beam can be a wavelength of the amplified light beam. The wavelength of the amplified light beam can be in the deep ultraviolet range. The spectral feature adjuster can be driven among the set of discrete states at the frequency correlated with the pulse repetition rate by driving the spectral feature adjuster so that the wavelength of the amplified light beam changes for each pulse of the amplified light beam between two distinct wavelengths.」
([0009] 増幅光ビームのスペクトル特性は増幅光ビームの波長とすることができる。増幅光ビームのパルスの波長は深紫外線範囲内とすることができる。増幅光ビームの各パルスごとに増幅光ビームの波長が2つの別個の波長間で変化するようにスペクトル特性アジャスタを駆動することによって、パルス繰り返し率と相関する周波数でスペクトル特性アジャスタを離散状態セット間で駆動できる。)
「 [0075] In one example, the lithography exposure apparatus 135 requires that each pulse of the amplified light beam 110 have a spectral feature that is selected from among a plurality of discrete spectral features when used to pattern the substrate 140. It may be desirable for the wavelength of the amplified light beam 110 to change among a set of discrete and distinct values on a pulse-to-pulse basis. This can mean that the wavelength changes for each adjacent and consecutive pulse. Alternatively, the wavelength changes for every other pulse (thus, the wavelength remains at one discrete value for two consecutive pulses and another discrete value for two consecutive pulses, and so forth).」
([0075] 一例において、リソグラフィ露光装置135は、増幅光ビーム110の各パルスが基板140のパターニングに使用される場合に複数の離散スペクトル特性から選択されたスペクトル特性を有することを必要とする。増幅光ビーム110の波長は、パルスごとに、離散的な異なる値のセットの中で変化することが望ましい場合がある。これは、連続する隣接パルスの各々で波長が変化することを意味し得る。あるいは、波長は、1つおきのパルスで変化する(従って波長は、連続する2つのパルスではある離散値を維持し、連続する2つのパルスでは別の離散値を維持する等である)。)
「 [0076] Changing the wavelength can yield a valuable result, for example, from the standpoint of the lithography exposure apparatus 135. In particular, chromatic aberration on the amplified light beam 110 as it traverses the lithography exposure apparatus 135 can cause a correlation between the wavelength of the amplified light beam 110 and the location of the focal plane (along the axial direction, which is orthogonal to the image plane XL-YL of the substrate 140) of the pulse of the amplified light beam 110 at the substrate 140. And, it may be desirable to change the focal plane of the amplified light beam 110 when it interacts with or impinges upon the substrate 140. Accordingly, by changing the wavelength of the amplified light beam 110, the focal plane of the amplified light beam 110 can be adjusted. In this example, the lithography exposure apparatus 135 instructs the optical apparatus 130 to adjust the wavelength in the manner required for such patterning of the substrate 140.」
([0076] 波長の変化は、例えばリソグラフィ露光装置135の観点から有益な結果を生じ得る。具体的に述べると、増幅光ビーム110がリソグラフィ露光装置135を横断する際の色収差によって、増幅光ビーム110の波長と、(基板140の像面XL-YLに直交する軸方向に沿った)基板140における増幅光ビーム110のパルスの焦点面の位置との間に、相関性が発生し得る。また、増幅光ビーム110が基板140と相互作用するか又は基板140に入射する時の増幅光ビーム110の焦点面を変化させることが望ましい場合がある。従って、増幅光ビーム110の波長を変化させることにより、増幅光ビーム110の焦点面を調整できる。この例において、リソグラフィ露光装置135は、基板140のそのようなパターニングに必要なやり方で波長を調整するよう光学装置130に命令する。)
これらの記載によれば、引用文献2には、次の技術事項が記載されているものと認められる。なお、参考までに、技術事項の認定に用いた引用文献2の記載に係る段落番号を括弧内に付してある。
<引用文献2に記載された技術事項>
「パルス繰り返し率で増幅光ビームのパルスのバーストを生成することと、パルスをリソグラフィ装置に送出することと、パルスバーストの生成中に、パルス繰り返し率と相関する周波数でスペクトル特性アジャスタを離散状態セット間で駆動することを含む方法において([0006])、
増幅光ビームのスペクトル特性は増幅光ビームの波長とし、増幅光ビームの各パルスごとに増幅光ビームの波長が2つの別個の波長間で変化するようにスペクトル特性アジャスタを駆動することによって、パルス繰り返し率と相関する周波数でスペクトル特性アジャスタを離散状態間で駆動でき([0009])、
増幅光ビームの波長は、パルスごとに、離散的な異なる値のセットの中で変化することが望ましい場合があり([0075])、
波長の変化は、リソグラフィ露光装置の観点から有益な結果を生じ得、増幅光ビームの波長を変化させることにより、増幅光ビームの焦点面を調整できること([0076])。」
ウ 本件補正発明と引用発明との対比
本件補正発明と引用発明を対比する。
(ア)本件補正発明の「放射のパルスのバーストを制御するための放射システムであって、」「放射システム。」との特定事項について
引用発明の「a 光ビーム424を放射する光源405と、制御系450とを含む光学系400」は、「b 光ビーム424」が「バースト及び各バースト内の光パルスを含み」、「c 制御系450」が「パルスのバースト内のパルスの波長に関する情報を、信号458を介して線中心分析モジュール420から受け、毎パルス補正信号又はフィードフォワード補正信号とも呼ばれる補正信号457を光源405に供給することにより、光ビーム424の波長誤差を許容範囲内にまで低減」するものであるから、光源405から放射される光ビーム424に含まれる光パルスのバーストを制御するものといえ、本件補正発明の「放射のパルスのバーストを制御するための放射システム」に相当する。
したがって、引用発明は、本件補正発明の上記特定事項を備えている。
(イ)本件補正発明の「放射の前記パルスと相互作用して放射の前記パルスの波長を制御するように構成された光学素子であって、放射の前記パルスの前記波長は、前記光学素子の構成に依存する、光学素子」との特定事項について
引用発明の「光学素子442」は、「光を反射する及び/又は屈折させることにより、共振器内を伝搬する光と相互作用」(e参照)し、「光ビーム424のスペクトル出力を精密に調整するグレーティングなどの回折光学素子であってもよ[い]」(e参照)ものであり、このスペクトル出力の調整は、アクチュエータによって「光学素子442を移動させる」(f参照)ことによるものと理解できるから、放射のパルス(前記(ア)参照)と相互作用して、そのスペクトル出力を調整し、その波長は、光学素子442の移動に依存するものといえる。したがって、引用発明の「光学素子442」は、本件補正発明の「放射の前記パルスと相互作用して放射の前記パルスの波長を制御するように構成された光学素子であって、放射の前記パルスの前記波長は、前記光学素子の構成に依存する、光学素子」に相当する。
したがって、引用発明は、本件補正発明の上記特定事項を備えている。
(ウ)本件補正発明の「パルス信号である制御信号を生成するように動作可能であるコントローラ」との特定事項について
引用発明において、「c 制御系450」は、「毎パルス補正信号又はフィードフォワード補正信号とも呼ばれる補正信号457を光源405に供給する」ものであり、「補正信号457を決定するフィードフォワード安定化モジュール460を含[む]」ものであるところ、「フィードフォワード補正信号457(Vik)のインスタンスは、バーストiのパルスkが光学素子422と相互作用している間にライン狭隘化モジュール416に印加される」(j参照)のであるから、引用発明の「補正信号457」は、バーストiのパルスkに同期するパルス信号であり、本件補正発明の「パルス信号である制御信号」に相当する。また、引用発明の「制御系450」は、このパルス信号である補正信号457を生成するように動作可能であることは明らかであるから、本件補正発明の「パルス信号である制御信号を生成するように動作可能であるコントローラ」に相当する。
したがって、引用発明は、本件補正発明の上記特定事項を備えている。
(エ)本件補正発明の「前記コントローラから前記制御信号を受け取り、前記制御信号に依存して前記光学素子の構成を制御するように構成されたアクチュエータ」との特定事項について
引用発明の「アクチュエータ444」は、「光学素子442を移動させるように制御可能」(f参照)であって、「制御系450」から「供給」される「補正信号457」(c参照)である「電圧信号」を「印加することによって、光学素子442は、パルスの第2のサブセット中のパルスを、パルスの第1のサブセット中の対応するパルスの測定波長誤差を補償する量だけ偏向させる量だけ移動する」(m参照)のであるから、引用発明の「アクチュエータ444」は、制御系450から補正信号457である電圧信号を受け取り、補正信号457である電圧信号に依存して光学素子442の移動量を制御するように構成されているものといえ、本件補正発明の「前記コントローラから前記制御信号を受け取り、前記制御信号に依存して前記光学素子の構成を制御するように構成されたアクチュエータ」に相当する。
したがって、引用発明は、本件補正発明の上記特定事項を備えている。
(オ)本件補正発明の「前記光学素子と相互作用したパルスの前記波長を決定するように動作可能であるセンサ」との特定事項について
引用発明の「線中心分析モジュール420」は、「パルス光ビーム424の各パルスの波長を測定」(g参照)するものであるから、前記(イ)の相互作用に関する検討を踏まえれば、本件補正発明の「前記光学素子と相互作用したパルスの前記波長を決定するように動作可能であるセンサ」に相当する。
したがって、引用発明は、本件補正発明の上記特定事項を備えている。
(カ)本件補正発明の「所与のバースト中の所与のパルスに対する前記制御信号は、少なくとも1つの以前のバーストからの対応するパルスの前記決定された波長に依存し」との特定事項について
引用発明において、「d フィードフォワード補正信号457は、前のバースト内のパルスの波長データから決定され」るものであって、「バーストiのパルスk-m~k+nのサブセット中の各パルスについての」「フィードフォワード補正信号457(Vik-m,...,k-1,k,k+1,...,k+n)」の「決定」(j参照)には、「バーストi-1のパルスk-m~k+nのサブセット中の各パルスについての波長情報を含」(i参照)む「以前のインスタンス459(Yi-1k-m,...,k-1,k,k+1,...,k+n)を用い」(j参照)るのであるから、所与のバーストi中の所与のパルスkに対する補正信号457(Vik)は、1つの以前のバーストi-1からの対応するパルスのインスタンス459(Yi-1k-m,...,k-1,k,k+1,...,k+n)の波長に依存するといえるから、引用発明のこれらの構成は、本件補正発明の「所与のバースト中の所与のパルスに対する前記制御信号は、少なくとも1つの以前のバーストからの対応するパルスの前記決定された波長に依存」することに相当する(なお、本願の明細書の【0107】には、「1つ又は複数の以前のバースト中の対応する複数のパルスが使用されることがある。」と記載されており、「対応するパルス」が1つのパルスであることは要しない。)。
したがって、引用発明は、本件補正発明の上記特定事項を備えている。
(キ)本件補正発明の「所与のバースト中の所与のパルスに対する前記制御信号は、少なくとも1つの以前のバースト中の対応するパルスに対する前記制御信号に補正項を加えたものによって与えられ、前記補正項は、少なくとも1つの以前のバーストからの前記対応するパルスの前記決定された波長と目標波長との差と、利得との積であり」との特定事項について
本件補正発明では、「所与のバースト中の所与のパルスに対する前記制御信号は、少なくとも1つの以前のバースト中の対応するパルスに対する前記制御信号に補正項を加えたものによって与えられ、前記補正項は、少なくとも1つの以前のバーストからの前記対応するパルスの前記決定された波長と目標波長との差と、利得との積であ」るのに対して、引用発明では、前記(カ)で検討したように、所与のバーストi中の所与のパルスkに対する補正信号457(Vik)は、以前のバーストi-1からの対応するパルスのインスタンス459(Yi-1k-m,...,k-1,k、k+1,...,k+n)の波長に依存するといえるものの、所与のバーストi中の所与のパルスkに対する補正信号457(Vik)が、以前のバーストi-1中の対応するパルスkに対する補正信号(Vi-1k)に補正項を加えたものによって与えられ、補正項が、以前のバーストからの対応するパルスの決定された波長と目標波長との差と、利得との積であるかどうか不明である。
したがって、引用発明は、本件補正発明の上記特定事項を備えていない。
(ク)本件補正発明の「前記コントローラは、前記制御信号が振動して、前記パルスのバースト内で2つの異なる設定値波長間で交互になる波長を有するパルスを提供するように構成される」との特定事項について
本件補正発明では、「前記コントローラは、前記制御信号が振動して、前記パルスのバースト内で2つの異なる設定値波長間で交互になる波長を有するパルスを提供するように構成される」のに対し、引用発明では、「パルスの目標波長」(l参照)が、パルスのバースト内で2つの異なる設定値波長間で交互になる波長を有するパルスであることは特定されていない。
したがって、引用発明は、本件補正発明の上記特定事項を備えていない。
そうすると、本件補正発明と引用発明とは、以下の一致点において一致し、以下の相違点において相違する。
<一致点>
「放射のパルスのバーストを制御するための放射システムであって、
放射の前記パルスと相互作用して放射の前記パルスの波長を制御するように構成された光学素子であって、放射の前記パルスの前記波長は、前記光学素子の構成に依存する、光学素子と、
パルス信号である制御信号を生成するように動作可能であるコントローラと、
前記コントローラから前記制御信号を受け取り、前記制御信号に依存して前記光学素子の構成を制御するように構成されたアクチュエータと、
前記光学素子と相互作用したパルスの前記波長を決定するように動作可能であるセンサと、を含み、
所与のバースト中の所与のパルスに対する前記制御信号は、少なくとも1つの以前のバーストからの対応するパルスの前記決定された波長に依存する、
放射システム。」である点。
<相違点1>
所与のバースト中の所与のパルスに対する制御信号について、本件補正発明では、「少なくとも1つの以前のバースト中の対応するパルスに対する前記制御信号に補正項を加えたものによって与えられ、前記補正項は、少なくとも1つの以前のバーストからの前記対応するパルスの前記決定された波長と目標波長との差と、利得との積であ」るのに対して、引用発明では、「j フィードフォワード安定化モジュール460は、以前のインスタンス459(Yi-1k-m,...,k-1,k,k+1,...,k+n)を用いて、バーストiのパルスk-m~k+nのサブセット中の各パルスについての信号、情報、又は値を含むフィードフォワード補正信号457(Vik-m,...,k-1,k,k+1,...,k+n)を決定し、フィードフォワード補正信号457(Vik)のインスタンスは、バーストiのパルスkが光学素子422と相互作用している間にライン狭隘化モジュール416に印加されるとき、反復的撹乱から生じるパルスkの波長誤差を低減する又は取り除く値、波形、又は量であり」、「決定された波長誤差は、毎パルス補正信号を決定」するものであり、「補正はアクチュエータ444への電圧信号の印加であり、電圧信号をアクチュエータ444に印加することによって、光学素子442は、パルスの第2のサブセット中のパルスを、パルスの第1のサブセット中の対応するパルスの測定波長誤差を補償する量だけ偏向させる量だけ移動する」ものであるものの、所与のバーストi中の所与のパルスkに対する補正信号457(Vik)が、以前のバーストi-1中の対応するパルスkに対する補正信号(Vi-1k)に補正項を加えたものによって与えられ、補正項が、以前のバーストからの対応するパルスの決定された波長と目標波長との差と、利得との積であるかどうか不明である点。
<相違点2>
コントローラについて、本件補正発明では、「前記制御信号が振動して、前記パルスのバースト内で2つの異なる設定値波長間で交互になる波長を有するパルスを提供するように構成される」のに対し、引用発明では、「パルスの目標波長」が、パルスのバースト内で2つの異なる設定値波長間で交互になる波長を有するパルスであることは特定されていない点。
エ 判断
(ア)相違点1について
a 所与のバースト中の所与のパルスに対する前記制御信号が、少なくとも1つの以前のバースト中の対応するパルスに対する前記制御信号に補正項を加えたものであることについて
前記ウ(ウ)で説示したとおり、引用発明の「補正信号457」は、本件補正発明の「制御信号」に相当するところ、引用発明は、「補正信号の値を表す電圧信号が発生し、補正はアクチュエータ444への電圧信号の印加であり、電圧信号をアクチュエータ444に印加することによって、光学素子442は、パルスの第2のサブセット中のパルスを、パルスの第1のサブセット中の対応するパルスの測定波長誤差を補償する量だけ偏向させる量だけ移動する」(m参照)ものであるから、「補正信号457」を、パルスの測定波長誤差を生じた時の信号パルスに対して測定波長誤差を補償するための信号とすることはごく自然なことである。そして、引用発明は、「バーストi-1のパルスk-m~k+nのサブセット中の各パルスについての波長情報を含[む]」(i参照)「以前のインスタンス459(Yi-1k-m,...,k-1,k,k+1,...,k+n)を用いて、バーストiのパルスk-m~k+nのサブセット中の各パルスについての信号、情報、又は値を含むフィードフォワード補正信号457(Vik-m,...,k-1,k,k+1,...,k+n)を決定」(j参照)するものであり、「線中心分析モジュール420が求めた波長測定値から波長誤差を決定し、決定された波長誤差は、毎パルス補正信号を決定」(l参照)するものであるから、バーストiのパルスkに対する補正信号457は、バーストi-1のパルスkに対応するインスタンス459から決定された波長誤差を補償するための信号を、この波長誤差を生じたときの信号であるバーストi-1のパルスkに対応する補正信号457に加えたものとすることになり、このとき、バーストi-1のパルスkに対応する補正信号457は本件補正発明の「少なくとも1つの以前のバースト中の対応するパルスに対する前記制御信号」に相当し、波長誤差を補償するための信号は本件補正発明の「補正項」に相当することとなる。このようにすることにより、当業者は、相違点1に係る本件補正発明の「所与のバースト中の所与のパルスに対する前記制御信号は、少なくとも1つの以前のバースト中の対応するパルスに対する前記制御信号に補正項を加えたものによって与えられ[る]」との構成に至ることとなる。
b 補正項について
前記aで説示したとおり、引用発明においては、バーストiのパルスkに対する補正信号457は、バーストi-1のパルスkに対応するインスタンス459から決定された波長誤差を補償するものであるところ、「特定の光パルスの波長誤差は、そのパルスの目標波長と決定された波長の差であ[る]」から(l参照)、引用発明の「波長誤差」は、相違点1に係る本件補正発明の「少なくとも1つの以前のバーストからの前記対応するパルスの前記決定された波長と目標波長との差」である。
そして、引用発明は「決定された波長誤差は、毎パルス補正信号を決定」するものであるところ、波長誤差と毎パルス補正信号、すなわち、補正信号457の具体的な関係は示されてはいないものの、補正信号457が「パルスの第1のサブセット中の対応するパルスの測定波長誤差を補償する量だけ偏向させる量だけ移動する」(l参照)ものであることに鑑みれば、波長誤差と波長誤差を補償するための信号を所定の比例係数により関係づけられる比例関係とすることはごく自然なことである。このとき、当該所定の比例係数は、相違点1に係る本件補正発明の「利得」に相当することとなり、波長誤差と波長誤差を補償するための信号の関係を所定の比例係数により関係づけられる比例関係とすることにより、当業者は、相違点1に係る本件補正発明の「前記補正項は、少なくとも1つの以前のバーストからの前記対応するパルスの前記決定された波長と目標波長との差と、利得との積であ[る]」との構成に至ることとなる。
c 「対応するパルス」について
なお、前記ウ(カ)で説示したとおり、本件補正発明の「対応するパルス」は、1つのパルスであることは要しないが、仮に、本件補正発明の「対応するパルス」が、対応する1つのパルスのみを意味するものとしても、引用発明では、「フィードフォワード信号457を決定するのに用いられるバーストi-1内のパルスのサブセットは、バーストi-1内のパルスの一部」(i参照)でもよいことから、バーストiのパルスkに対する補正信号457(Vik)を決定する際に、補正をしなければ同様の誤差が生じるであろうバーストi-1内のパルスkについての補正信号457(Vi-1k)を用いると共に、前記ウ(カ)における「1つの以前のバーストi-1からの対応するパルスのインスタンス459(Yi-1k-m,...,k-1,k,k+1,...,k+n)」としてインスタンス459(Yi-1k)を用いることは、当業者が適宜採用し得た設計的事項である。
d 相違点1についてのまとめ
前記a~cで検討のとおり、引用発明において、相違点1に係る本件補正発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
(イ)相違点2について
前記イ(イ)で示した引用文献2に記載された技術事項に見られるように、光ビームの焦点面を調整するためなど、リソグラフィ露光装置の観点から有益な結果を生じるために、増幅光ビームの波長が、パルスごとに、離散的な異なる値のセットの中で変化することが望ましい場合に、増幅光ビームの各パルスごとに増幅光ビームの波長が2つの別個の波長間で変化するようにすることは公知であるところ、引用発明においても、光ビームの焦点面を調整するためなど、リソグラフィ露光装置の観点から有益な結果を生じることが望ましいことは当業者には明らかなことである。したがって、引用発明に、引用文献2に記載された技術事項を適用して、バースト内のパルスごとに波長が2つの別個の波長間で変化するようにして、相違点2に係る本件補正発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
(ウ)総合検討
相違点1~2を総合的に勘案しても、本件補正発明の奏する効果は、本件補正発明の構成が奏するものとして、引用発明及び引用文献2に記載された技術事項からは予測困難な効果であり、かつ、格別顕著な効果であるとはいえない。
(エ)請求人の主張について
請求人は、審判請求書において、引用文献1には、光学系において、制御系450は、パルスのバースト内のパルスの波長に関する情報を、信号458を介して線中心分析モジュール420から受け、毎パルス補正信号又はフィードフォワード補正信号とも呼ばれる補正信号457(「制御信号」)を光源405に供給し、フィードフォワード補正信号457は、前のバースト内のパルスの波長データから決定されることが記載されているが、引用文献1には、本件補正発明の「所与のバースト中の所与のパルスに対する前記制御信号は、少なくとも1つの以前のバースト中の対応するパルスに対する前記制御信号に補正項を加えたものによって与えられ、前記補正項は、少なくとも1つの以前のバーストからの前記対応するパルスの前記決定された波長と目標波長との差と、利得との積であり、」との技術的構成は記載も示唆もされていない旨主張する。
しかしながら、前記(ア)で検討したように、本件補正発明の上記技術的構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
したがって、請求人の主張は採用できない。
(オ)小括
したがって、本件補正発明は引用発明及び引用文献2に記載された技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
オ 独立特許要件についての当審の判断のまとめ
以上のとおり、本件補正発明は、引用発明及び引用文献2に記載された技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。
(3)本件補正についてのむすび
したがって、本件補正は、特許法17条の2第6項で準用する同法126条7項の規定に違反するものであるから、同法159条1項で読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下されるべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。
第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は、前記第2のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、本件補正前の特許請求の範囲の請求項1(前記第2の1(1)参照)に記載された事項により特定されるとおりのものである。
2 原査定における拒絶の理由の概要
原査定の拒絶の理由のうち、本願発明についての拒絶の理由の内容は、概略次のとおりである。
(進歩性)本願発明は、その優先日前に日本国内又は外国において、頒布された以下の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
引用文献1:特表2018-517278号公報
引用文献2:国際公開第2019/190700号
3 引用文献の記載及び引用発明
引用文献1の記載及びこれに記載された発明並びに引用文献2の記載及びこれに記載された技術事項は、前記第2の2(2)イにおいて示したとおりである。
4 対比・判断
本願発明は、本件補正発明の「所与のバースト中の所与のパルスに対する前記制御信号」について、それが「所与のバースト中の所与のパルスに対する前記制御信号は、少なくとも1つの以前のバースト中の対応するパルスに対する前記制御信号に補正項を加えたものによって与えられ、前記補正項は、少なくとも1つの以前のバーストからの前記対応するパルスの前記決定された波長と目標波長との差と、利得との積であ」るとの限定を省いたものである。
そして、本願発明に限定事項を付加したものに相当する本件補正発明が、前記第2の2(2)において説示したとおり、引用発明及び引用文献2に記載された技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件補正発明から限定事項を省いた本願発明も、同様の理由により、引用発明及び引用文献2に記載された技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法29条2項の規定により、特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2024-000623