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特許拒絶査定不服審判

2024-000130

脂肪族ポリアミド組成物及び対応するモバイル電子デバイス構成部品

審判番号
2024-000130
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2019-554999外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2024年01月05日
審決日
2026年01月08日
公報発行日
2026年06月26日
結論
請求不成立
審判長/審判官
分類
P18 .121-WZ (C08L)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法29条2項
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特願2019-554999「脂肪族ポリアミド組成物及び対応するモバイル電子デバイス構成部品」拒絶査定不服審判事件〔平成30年10月18日国際公開、WO2018/189114、令和 2年 6月11日国内公表、特表2020-516715〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論 本件審判の請求は、成り立たない。

理由

理 由 1 手続の経緯 本願は、2018年(平成30年)4月9日(パリ条約による優先権主張 2017年4月10日 (US)アメリカ合衆国、同年6月13日 (EP)欧州特許庁)を国際出願日とする国際出願(特願2019-554999)であって、その後の主な手続の経緯は以下のとおりである。 令和3年 3月 9日提出:手続補正書 令和4年 1月17日付け:拒絶理由通知書 同年 7月20日提出:意見書及び手続補正書 同年 8月24日提出:刊行物等提出書 同年11月 2日付け:拒絶理由通知書 令和5年 5月 8日提出:意見書及び手続補正書 同年 8月28日付け:拒絶査定 令和6年 1月 5日提出:審判請求書 同年 2月20日提出:手続補正書(方式) 令和7年 5月23日付け:拒絶理由通知書 同年 9月 2日提出:意見書及び手続補正書 2 本願発明 本願の請求項1~13に係る発明は、令和7年9月2日提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1~13に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、次のとおりである。 「【請求項1】 脂肪族ポリアミド組成物であって、 ポリアミド組成物の総重量に対して、 40重量%~70重量%の脂肪族ポリアミドポリマーと、 30重量%~60重量%のガラスファイバーと を含み、ガラスファイバーは、 1MHzにおいて5.1~5.5の誘電定数と、 75GPa~100GPaの引張弾性率と を有し、 脂肪族ポリアミドは、脂肪族ポリアミド中の繰り返し単位の総モル数に対して、少なくとも60モル%の繰り返し単位(RPA)を有し、前記繰り返し単位(RPA)は、以下の式-[-Ma-Mb-]- [図:0001435523000001.jpg] (1) (式中、nは、4~12の整数であり、mは、6~18の整数である) により表され、 脂肪族ポリアミド組成物は、芳香族ポリマーを含まず、且つ脂環式ポリマーを含まない、 脂肪族ポリアミド組成物。」 3 拒絶の理由 令和7年5月23日付けで当審において通知した拒絶理由のうち、本願発明に対応する請求項1に係る発明についての理由の要旨は、次のとおりである。 請求項1に係る発明は、本願優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった、引用文献1に記載された発明、引用文献4に記載された事項及び本願優先日における技術常識(引用文献2及び3)に基づいて、本願優先日前に、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 <引用文献等一覧> 1.特表2010-510375号公報 2.特開2000-143921号公報 3.特表2016-532354号公報 4.南条尚志,FRP構成素材入門 第2章 構成素材と種類 -ガラス繊維-,日本複合材料学会誌,2007年,33巻4号,p.141-149, https://www.jstage.jst.go.jp/article/jscm1975/33/4/33_4_141/_pdf/-char/ja 4 引用文献1~4の記載 (1)引用文献1の記載 引用文献1には、以下の事項が記載されている(下線は当審合議体による。以下同様。) 「【請求項1】 (A)(a)(i)脂肪族ジカルボン酸および脂肪族ジアミンの少なくとも約50モルパーセントが10個以上の炭素原子を有する脂肪族ジカルボン酸および/または脂肪族ジアミンである、1つ以上の前記脂肪族ジカルボン酸と1つ以上の前記脂肪族ジアミンとに由来する約60~100モルパーセントの繰り返し単位、 (iv)1つ以上の芳香族ジカルボン酸に由来する0~約40モルパーセントの繰り返し単位、 (v)ラクタムおよび/またはアミノカルボン酸の少なくとも約50モルパーセントが10個以上の炭素原子を有する、1つ以上の前記ラクタムおよび/またはアミノカルボン酸に由来する0~約40モルパーセントの繰り返し単位 を含む約60~約100重量パーセントの少なくとも1つの脂肪族ポリアミドと、 (b)1つ以上の芳香族ジカルボン酸に由来する約60~100個の繰り返し単位を含む0~約40重量パーセントの少なくとも1つの半芳香族ポリアミドと を含む約20~約70重量パーセントの少なくとも1つのポリアミド成分と、 (B)約30~約65重量パーセントの1つ以上の強化剤と、 (C)0~約20重量パーセントの1つ以上の耐衝撃性改良剤と を含むポリアミド組成物を含む、携帯電話ハウジングであって、 (a)および(b)の重量百分率が(a)+(b)の総重量を基準とし、そして(A)、(B)、および(C)の重量百分率が(A)+(B)+(C)の総重量を基準とし、そして前記組成物がISO 527-1/2によって測定されるとき、約12GPaより大きいかまたはそれに等しい引張弾性率およびISO 62によって測定されるとき、約0.4重量パーセント未満かまたはそれに等しい吸湿性を有するハウジング。 ・・・ 【請求項4】 前記脂肪族ポリアミド(a)がポリアミド10,10、ポリアミド10,12、ポリアミド10,13、ポリアミド10,14、ポリアミド12,10、ポリアミド12,12、ポリアミド12,13、ポリアミド12,14、ポリアミド6,13、ポリアミド6,14、ポリアミド6,15、ポリアミド6,16、ポリアミド6,36、ポリアミド9,10、ポリアミド9,12、ポリアミド9,13、ポリアミド9,14、ポリアミド9,15、ポリアミド9,16、ポリアミド9,36、それらの2つ以上のコポリマー、およびそれらのブレンドからなる群から選択される1つ以上のものである、請求項1に記載のハウジング。 ・・・ 【請求項7】 前記強化剤がガラス繊維を含む、請求項1に記載のハウジング。 ・・・ 【請求項9】 前記組成物が約13GPaより大きいかまたはそれに等しい引張弾性率を有する、請求項1に記載のハウジング。 【請求項10】 前記組成物が約14GPaより大きいかまたはそれに等しい引張弾性率を有する、請求項9に記載のハウジング。」 「【発明の詳細な説明】 【技術分野】 【0001】 本発明は、優れた剛性および低吸湿性を有するポリアミド組成物を含む携帯電話ハウジングに関する。 【背景技術】 【0002】 携帯(「セルラー」とも言われる)電話は、世界的に益々広く使用されるようになりつつある。それらが、電話の操作と電磁信号の送受信の能力とを妨げずに、頻繁な使用の厳しさに耐えることができる材料からそれらが製造されることが多くの場合に重要である。携帯電話ハウジングは特に要求の厳しい材料用途である。携帯電話ハウジングは、電話のデザインに依存して、バックおよびフロントカバー、バックボーン、ならびにアンテナハウジングを含み得る1つ以上の構成要素を含む。 ・・・ 【0005】 熱可塑性ポリアミド組成物は、それらの良好な物理的特性、ならびにそれらが様々な程度の複雑度および複雑さの様々な物品へ好都合におよび柔軟に成形されうるかもしれないために携帯電話ハウジングの製造に使用することに対して望ましい。しかしながら、多くのポリアミドは、大気条件に曝されるときにかなりの量の水分を吸収し、それは40MHz~6GHzの電磁放射線への組成物の透過性を低下させるかもしれない。典型的には、組成物によって吸収される水分のレベルが高ければ高いほど、組成物は40MHz~6GHz電磁放射線をより少なく通す。例えば、ポリアミド12は、吸湿に対して良好な抵抗を有するが、多くの携帯電話ハウジングの用途にとって剛性が不十分である。 【0006】 従って、良好な機械的特性と低吸湿性との組み合わせを有するポリアミド組成物を入手してそれから携帯電話ハウジングを製造することが望ましいであろう。 【発明の概要】 【課題を解決するための手段】 【0007】 ・・・ 【0008】 本発明は、優れた剛性および低吸湿性を有するポリアミド組成物を含む携帯電話ハウジングを提供する。」 「【発明を実施するための形態】 【0009】 「携帯電話ハウジング」(本明細書では「ハウジング」とも言われる)とは、携帯電話のバックカバー、フロントカバー、アンテナハウジング、および/またはバックボーンの1つ以上を意味する。ハウジングは、前述の1つ以上を組み込んだ個別物品であってもよい。「バックボーン」とは、エレクトロニクス、画面、バッテリーソケットなどのような、携帯電話の他の構成要素が取り付けられている構造上の構成要素を意味する。バックボーンは、電話の外部から目に見えないかまたは部分的に目に見えるにすぎない内部構成要素であってもよい。 【0010】 本ハウジングは、少なくとも1つの熱可塑性ポリアミド成分(A)と、少なくとも1つの強化剤(B)と、場合により、少なくとも1つの耐衝撃性改良剤(C)との溶融混合ブレンドを含む組成物を含む。 【0011】 熱可塑性ポリアミド成分(A)は、重量百分率がポリアミド成分(A)の総重量を基準とする、約60~100重量パーセントの少なくとも1つの脂肪族ポリアミド(a)および、場合により、0~約40重量パーセントの少なくとも1つの半芳香族ポリアミド(b)を含む。 【0012】 ポリアミド(a)は、脂肪族ジカルボン酸と脂肪族ジアミンとの総計量の少なくとも約50モルパーセントが10個以上の炭素原子を有する、1つ以上の脂肪族ジカルボン酸と1つ以上の脂肪族ジアミンとに由来する約60~100モルパーセントの繰り返し単位を含む。ポリアミド(a)はさらに場合により、1つ以上の芳香族ジカルボン酸に由来する0~約40モルパーセントの繰り返し単位および/またはラクタムおよび/またはアミノカルボン酸の少なくとも1つの約50モルパーセントが10個以上の炭素原子を有する、1つ以上のラクタムおよび/またはアミノカルボン酸に由来する0~約40モルパーセントの繰り返し単位を含んでもよい。 【0013】 10個以上の炭素原子を有する好適な脂肪族ジカルボン酸には、セバシン酸、ドデカン二酸、テトラデカン二酸、ペンタデカン二酸などが含まれる。10個より少ない炭素原子を有する好適な脂肪族ジカルボン酸および他のジカルボン酸には、アジピン酸、テレフタル酸(ポリアミド呼称では「T」と略される)、およびイソフタル酸(ポリアミド呼称では「I」と略される)が含まれる。 【0014】 10個以上の炭素原子を有する好適な脂肪族ジアミンには、デカメチレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、トリデカメチレンジアミン、テトラデカメチレンジアミン、ペンタデカメチレンジアミン、ヘキサデカメチレンジアミンなどが含まれる。10個より少ない炭素原子を有する好適な脂肪族ジアミンには、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、2-メチルペンタメチレンジアミン、2-メチルオクタメチレンジアミン、トリメチルヘキサメチレンジアミンが含まれる。好適な脂環式ジアミンには、ビス(p-アミノシクロヘキシル)メタンが含まれる。 【0015】 10個以上の炭素原子を有する好適なラクタムおよび/またはアミノカルボン酸には、11-アミノウンデカン酸およびラウロラクタムが含まれる。10個より少ない炭素原子を有する好適なラクタムおよび/またはアミノカルボン酸には、カプロラクタムが含まれる。 【0016】 ポリアミド(a)としての使用に好適なポリアミドの例には、ポリアミド9,10、ポリアミド9,12、ポリアミド9,13、ポリアミド9,14、ポリアミド9,15、ポリアミド9,16、ポリアミド9,36、ポリアミド10,10、ポリアミド10,12、ポリアミド10,13、ポリアミド10,14、ポリアミド12,10、ポリアミド12,12、ポリアミド12,13、ポリアミド12,14、ポリアミド6,14、ポリアミド6,13、ポリアミド6,15、ポリアミド6,16、ポリアミド6,13、それらの2つ以上のコポリマー、およびそれらのブレンドが挙げられるが、それらに限定されない。好ましいブレンドには、ポリアミド6,10とポリアミド6,12とのブレンドおよびポリアミド6,14とポリアミド6,12とのブレンドが含まれる。 【0017】 脂肪族ポリアミドは好ましくは、約250℃以下の温度で溶融加工することができる。それらは好ましくは、約230℃以下の、より好ましくは約220℃以下の融点を有する。 【0018】 半芳香族ポリアミド(b)は、1つ以上の芳香族ジカルボン酸に由来する約60~100個の繰り返し単位を含む。好ましい芳香族ジカルボン酸には、テレフタル酸およびイソフタル酸が含まれる。脂肪族ジアミン(脂肪族ポリアミド(a)の製造での使用に好適として述べられたものを含む)が半芳香族ポリアミド(b)を製造するために使用されてもよい。半芳香族ポリアミド(b)は場合により、脂肪族ジカルボン酸に由来する繰り返し単位を含んでもよい。好ましい半芳香族ポリアミドには、ヘキサメチレンイソフタルアミド/ヘキサメチレンテレフタルアミドコポリマー(ポリアミド6,I/6,T)が含まれる。半芳香族ポリアミドは非晶質であってもよい。 【0019】 強化剤(B)は、成分(A)+(B)+(C)の総重量を基準として、約30~約60重量パーセント、または好ましくは約45~約55重量パーセントで組成物中に存在する。好適な強化剤には、ガラス繊維、長いガラス繊維、ガラスフレーク、炭素繊維(カーボンナノチューブを含む)、ウォラストナイト、タルク、カオリン、炭酸カルシウムなどの1つ以上が含まれる。 ・・・ 【0025】 本発明に使用される組成物は、少なくとも約12GPa、または好ましくは少なくとも13GPa、またはより好ましくは少なくとも14GPaである引張弾性率を有する。引張弾性率はISO 527-1/2方法に従って測定される。試験検体は1mm/分の一定速度で伸ばされる。引張弾性率Eは、試験検体を0.05パーセント(e1)および0.25パーセント(e2)伸ばすために必要とされる力F1およびF2を測定することによってヤングの法則を用いて測定される: E=(F2-F1)/(S*(e2-e1)) ここで、Sは試験検体の断面積(横断面積)である。 【0026】 使用される試験検体は、ISO手順に記載され、そして射出成形によって得られる、60mmの半径rの引張タイプ1Bである。試験検体は、水分吸収(pick-up)を防ぐために成形直後、試験を実施するまで密封バッグの中へ入れられる。引張弾性率は、各ポリマーにつき8検体について測定され、その結果はそれらの平均値である。断面積Sは、その厚さおよびその幅を測定することによって各サンプルについて測定される。 【0027】 本発明に使用される組成物は、約0.4重量パーセント以下、または好ましくは約0.3重量パーセント以下、またはより好ましくは約0.25重量パーセント以下の吸湿性を有する。吸湿性はISO 62方法を用いて測定される。」 「【実施例】 【0031】 実施例1~7の組成物は、二軸スクリュー押出機で表1に示す原料を溶融配合することによって調製した。得られた組成物を試験検体へ射出成形した。表1において、「耐衝撃性改良剤」は、無水マレイン酸で部分ブラフトされたエチレン/プロピレン/ジエンコポリマーを意味し、「カラー・マスターバッチ」は、ポリアミド6中の40重量パーセントのブルー顔料を意味する。滑剤は脂肪酸塩である。 【0032】 比較例1に使用した材料は、本件特許出願人、Wilmington、DEによって供給されるZytel(登録商標)HTN 53G50 LRH NC、ポリアミド6,I/6,T-ポリアミド6,6ブレンドであり、それを試験検体へ射出成形した。 【0033】 引張弾性率は、上記のようにISO 527-1/2を用いて測定した。衝撃強度は、ISO 179eAを用いて測定した。吸湿性は、上記のようにISO 62を用いて測定した。結果を表2に示す。 【0034】 【表1】 [図:0001435523000002.jpg] 【0035】 【表2】 [図:0001435523000003.jpg] 【0036】 実施例1~7の組成物は、良好な耐衝撃性および剛性ならびに40MHz~6GHzの範囲の周波数を有する電磁放射線の良好な透過を示す携帯電話ハウジングへ成形される。」 (2)引用文献2の記載事項 引用文献2には、次の事項が記載されている。 「【請求項1】 フィブリル化しないポリテトラフルオロエチレンを含むフッ素樹脂(a)とフッ素樹脂以外の熱可塑性樹脂(b)とからなるフッ素樹脂混合物(I)70~95重量%および、金属元素と酸素との結合解離エネルギーから算出した単結合の強さが190KJ/mol以上である金属化合物のウィスカー(II)5~30重量%からなる電子電気機器の部品用フッ素樹脂組成物。 ・・・ 【請求項3】 フッ素樹脂(a)が、フィブリル化しないポリテトラフルオロエチレンの単独、またはフィブリル化しないポリテトラフルオロエチレンと他の熱溶融性フッ素樹脂との混合物である請求項1または2記載の樹脂組成物。 【請求項4】 他の熱溶融性フッ素樹脂が、比誘電率(1MHz)2.5以下のフッ素樹脂である請求項3記載の樹脂組成物。 ・・・ 【請求項13】 フィブリル化しないポリテトラフルオロエチレンを含むフッ素樹脂(a)とフッ素樹脂以外の熱可塑性樹脂(b) とからなるフッ素樹脂混合物(I)70~95重量%および金属元素と酸素との結合解離エネルギーから算出した単結合の強さが190KJ/mol以上である金属化合物のウィスカー(II)5~30重量%からなり、該熱可塑性樹脂(b)がマトリックスを形成しており、かつ該マトリックス中にフッ素樹脂(a)およびウィスカー(II)が均一に分散してなる成形品であって、かつ該成形品全体の比誘電率が3.5以下である電子電気機器用部品。」 「【0002】 【従来の技術】電子電気機器には多くの樹脂製の部品が使用されている。これらの樹脂製部品の成形材料には、単に成形加工性の面から選択されているものもあるが、近時の電子電気機器の高性能化、微細化、高集積化、高密度化などに伴って厳しい精密加工性、電気電子特性、耐熱性などが要求されてきている。特に情報・通信機器 は使用周波数帯域が高周波数帯域に移行しており、たとえばプリント基板、コネクター、絶縁材料(たとえば携帯末端用ハウジング一体型アンテナなど)、高周波フィルター、高周波アンテナ、電子レンジなどの部品には精密加工性や機械的特性、熱的特性に加えて、優れた電気絶縁性、誘電特性などが必要とされている 。このうち誘電特性は高周波を使用する電子電気機器では誘電損失と関係しており、できるだけ低比誘電率で低誘電正接であることが要求される。」 「【0024】本発明の目的の一つである誘電特性の向上という面から、ウィスカー(II)の比誘電率(1MHz)は7.0未満(すなわちEガラスの比誘電率よりも小さい)、好ましくは6.0以下である。これらの条件を最もよく満たすウィスカーはホウ酸アルミニウムウィスカー(比誘電率5.6)である。」 「【0040】本発明の成形品は各種の電子電気機器の部品として好適である。たとえば、プリント基板などの基板部品;携帯電話や衛星端末機器のハウジングなどのケーシング部材;コネクタ、ソケット、コイルボビン、トリマなどの精密加工部品;高周波フィルター、高周波アンテナ(ハウジング一体型アンテナなども含む)などがあげられるが、これらに限定されるものではない。 【0041】電子電気機器としては、通常の強電機器、弱電機器、精密電子機器などあらゆる電子電気機器があげられるが、なかでも通信機器、特に高周波数帯域が使用される携帯電話、PHS、ポケットベル、衛星端末機器、ナビゲーションシステム、衛星放送用機器、無線LAN(ローカルエリアネットワーク)システム、自動車衝突防止システム、ICカードなどの部品として有用であるほか、一般電気機器である電子レンジなどの部品としても有用である。」 (3)引用文献3の記載事項 引用文献3には、次の事項が記載されている。 「【特許請求の範囲】 【請求項1】 互いに結合された複数の層を含むレドームであって、前記複数の層のうちの少なくとも1つが、基材と、2.7未満の誘電率、少なくとも150℃のガラス転移温度および1.5%未満の吸湿率をレドームにもたらす、有効量のシアネートモノマーおよび有効量のシアネートエステルオリゴマーから調製された硬化樹脂ブレンドとを含む、レドーム。」 「【0002】 レドームは、アンテナを覆い、保護する構造体である。」 「【0029】 ある特定の構成において、本明細書に記載のレドームは、通常、樹脂を含浸、添加または別の方法で基材中または基材上に存在させた基材を備える。当該基材は、所望の物理的特性を有する物品、たとえば、(1)10GHz(もしくは他の選択された周波数、たとえば、1MHz、10MHzなど)で2.7以下の誘電率(2013年付けASTM 2520に従って測定した場合)、より詳細には2.6、2.5もしくはさらに2.4以下の誘電率、(2)1.5%以下、より詳細には1.4%、1.3%、1.25%、1.1%、1%以下、もしくはさらに0.75%以下の吸水率(ASTM D570-98に従って測定した場合)、および/または(3)ASTM D3418-03に従って測定した場合に、少なくとも150℃、より詳細には少なくとも150℃、特に少なくとも175℃のガラス転移温度の属性のうちの1つまたは複数を備え得るレドームとして当該物品を使用できるように、複数の個々の層または膜を互いに配置し、その層をいっしょに結合すること、および/またはその層を所望の形状に成形もしくは形成することにより、作製することができる。」 「【0075】 ある特定の実施形態において、本明細書に記載のレドームは、電子機器と一体化され、電子機器による信号の受信および/または送信を可能にするのと同時に、電子機器を保護するようにしてよい。たとえば、埋め込み型微小アンテナを有する一体化レドームを携帯電話が備えるようにしてよい。所望により、微小アンテナは、当該電話の信号受信性能全体を向上させるために、回転または移動するように構成することができる。携帯電話には、タッチスクリーンが電気または無線により連結され、ユーザによる電話機能へのアクセスを可能にすることができる。いくつかの実施形態において、当該レドームは、車両の構造要素、たとえばバンパー、非常灯、ノーズコーンまたは他の車両要素に一体化させ、レドームが当該車両の構造部の一般的形状を取るようにしてよい。」 (4)引用文献4の記載事項 引用文献4には、次の事項が記載されている。 「 [図:0001435523000004.jpg] 」(141頁右欄12~24行) 「 [図:0001435523000005.jpg] 」(142頁左欄7行~右欄1行) 「 [図:0001435523000006.jpg] 」(143頁表2) 5 引用発明 上記4(1)の記載事項によれば、引用文献1の請求項1に記載された携帯電話ハウジングの実施態様である実施例1のポリアミド組成物(表1の実施例1の欄を参照)に着目すると、引用文献1には次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。 「ポリアミド10,10を45.9重量%、ガラス繊維を50重量%、酸化防止剤を0.9重量%、滑剤(脂肪酸塩)を0.2重量%、カラー・マスターバッチ(ポリアミド6中の40重量%のブルー顔料)を3重量%からなる、携帯電話ハウジング用ポリアミド組成物」 6 本願発明の進歩性についての検討 (1)対比 本願発明と引用発明を対比する。 引用発明の「ポリアミド10,10」は、炭素数10の直鎖脂肪族ジアミンであるデカメチレンジアミンと、炭素数10の直鎖脂肪族ジカルボン酸であるセバシン酸とが重縮合したポリアミドであるから、本願発明の「式ー[-Ma-Mb-]-(当審注:構造式省略)(1)」においてn=10、m=8である繰り返し単位(RPA)が、脂肪族ポリアミド中の繰り返し単位の総モル数に対して100モル%である「脂肪族ポリアミド(ポリマー)」に相当する。 引用発明の「ガラス繊維」は、本願発明の「ガラスファイバー」に相当する。 引用発明の「ポリアミド10,10」及び「ガラス繊維」の含有量は、「45.9重量%」及び「50重量%」であり、本願発明の「脂肪族ポリアミドポリマー」及び「ガラスファイバー」の含有量である、「40重量%~70重量%」及び「30重量%~60重量%」の範囲に、それぞれ含まれている。 引用発明に含まれるポリマーは、ポリアミド10,10と、マスターバッチ中のポリアミド6(炭素数6であるε-カプロラクタムの開環重合物)であるところ、いずれも、直鎖脂肪族ポリアミドであって、芳香族ポリマーでも脂環式ポリマーでもないから、引用発明の「ポリアミド組成物」は、本願発明の「芳香族ポリマーを含まず、且つ脂環式ポリマーを含まない」「脂肪族ポリアミド組成物」に相当する。 そうすると、両発明の一致点及び相違点は、次のとおりである。 <一致点> 「脂肪族ポリアミド組成物であって、 ポリアミド組成物の総重量に対して、 40重量%~70重量%の脂肪族ポリアミドポリマーと、 30重量%~60重量%のガラスファイバーと を含み、 脂肪族ポリアミドは、脂肪族ポリアミド中の繰り返し単位の総モル数に対して、少なくとも60モル%の繰り返し単位(RPA)を有し、前記繰り返し単位(RPA)は、以下の式-[-Ma-Mb-]- [図:0001435523000007.jpg] (1) (式中、nは、4~12の整数であり、mは、6~18の整数である) により表され、 脂肪族ポリアミド組成物は、芳香族ポリマーを含まず、且つ脂環式ポリマーを含まない、 脂肪族ポリアミド組成物。」 <相違点> 「ガラスファイバー」が、本願発明1では「1MHzにおいて5.1~5.5の誘電定数と、75GPa~100GPaの引張弾性率とを有」するものであるのに対し、引用発明ではそのような特定がない点 (2)相違点について ア 引用文献2には、情報・通信機器は使用周波数帯域が高周波数帯域に移行しているところ、絶縁材料(たとえば携帯末端用ハウジング一体型アンテナなど)や高周波アンテナなどの部品には、優れた電気絶縁性、誘電特性などが必要とされており、できるだけ低比誘電率であることが要求されること(【0002】)、及び、材料やその構成成分の1MHzにおける比誘電率をできるだけ下げることが記載され(請求項4、請求項13、【0024】)、また、引用文献3にも、信号の受信や送信を行う電子機器を保護するために用いる材料(レドーム)において、1MHz、10MHz、10GHz等の周波数における誘電率を2.7以下とすることが記載されている(請求項1、【0029】、【0075】)。 ここで、引用文献2の「比誘電率」(relative permittivity)は、「誘電定数」(dielectric constant)とも呼ばれ、物質の誘電率(単位「F/m」)と真空の誘電率との比(無次元)を意味するが、「誘電率」を無次元の数値で表して比誘電率の意味で用いることもあることから、上記文献における「比誘電率」と「誘電率」は同じものを意味すると解される(以下、両者とも「誘電率」と表記する)。 このように、高周波数帯域で通信を行う電子機器において、保護材などの部材の誘電率(本願発明の「誘電定数」に相当)をできるだけ低くすること、及び、その誘電率を1MHzで測定することは、本願優先日における技術常識であった。 イ 引用発明は、高周波数帯域で通信を行う電子機器である「携帯電話のハウジング用」の組成物であるから、上記技術常識に照らすと、誘電率をできるだけ低くすることが求められることは、当業者において明らかである。 また、引用文献1に、「ISO 527-1/2によって測定されるとき、約12GPaより大きいかまたはそれに等しい引張弾性率・・・を有する」(請求項1)と記載されるように、引用発明は、高い引張弾性率を有することが求められるものでもある。 ウ 他方、ガラス繊維に関する文献である引用文献4には、Sガラスは、引張弾性率が大きく、誘電率が小さいといった特徴を有することが記載され(142頁左欄7行~右欄1行)、各種ガラス繊維の特性が示された表2には、Sガラスは、1MHzの誘電率が5.3、引張弾性率が84.3GPaであることが記載されている(143頁表2)。 このSガラスは、相違点に係る本願発明の「1MHzにおいて5.1~5.5の誘電定数と、75GPa~100GPaの引張弾性率とを有」するものに相当する。 エ そうすると、誘電率をできるだけ低くすること、及び、高い引張弾性率を有することが求められる引用発明においては、その材料の構成成分も、同様の物性が求められることは当業者が容易に理解することであるから、引用発明において、組成物の主要構成成分であるガラス繊維として、引用文献4に記載された、1MHzの誘電率が低く(5.3)、引張弾性率が高い(84.3GPa)Sガラスを用いて、相違点に係る本願発明の構成を有するものとすることは、当業者が容易に想到することができたことである。 (3)本願発明の効果について 本願明細書には、「驚くべきことに、本出願人は、1MHzにおいて5.2~5.4の誘電定数及び75GPa~100GPaの引張弾性率を有するガラスファイバー(「選択されたガラスファイバー」)を含む脂肪族ポリアミド組成物が、低絶縁性ガラスファイバーを含む対応する脂肪族ポリアミド組成物の絶縁性能に実質的に同様の絶縁性能及び同時に低絶縁性ガラスファイバー又は標準的な弾性率のガラスファイバーを含む対応する脂肪族ポリアミド組成物よりも大きい機械的性能を有することを発見した。」(【0007】)と記載され、実施例の欄において、本願発明の誘電定数及び引張弾性率を満たすガラス繊維I~III(誘電定数5.3、引張弾性率86又は87GPa、【0027】表1)を用いたサンプル1~5、7~10、12が、誘電定数又は引張弾性率が本願発明の範囲から外れるガラス繊維IV又はVを用いたサンプル6、11、13と比較して、誘電定数が低くかつ引張弾性率が高いことが示されている(【0030】表2、【0031】表3)。 しかしながら、表2及び表3に示された効果は、用いたガラス繊維の物性(誘電定数及び引張弾性率)が、組成物の物性に反映されたことを示すものにすぎず、当業者が予測可能な程度のものである。 そして、ガラス繊維I~IIIとほぼ同じ物性を有する引用文献4に記載されたSガラスを、引用発明におけるガラス繊維として用いた場合に想定される効果と比べて、表2及び表3に示された本願発明の効果が格別顕著なものであるともいえない。 したがって、本願発明の効果は、当業者の予測可能な程度のものであり、格別顕著なものではない。 (4)小括 以上によれば、本願発明は、引用文献1に記載された発明、引用文献4に記載された事項及び技術常識(引用文献2及び3)に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 7 請求人の主張について 請求人は、引用文献1では芳香族成分を含む実施形態が許容されているところ、ポリアミド中に芳香族繰り返し単位が存在すると、UV安定性に良くない影響を与えるので、本願発明の課題解決及び効果にとっては不利であるため、引用文献1は、本願発明から遠ざかる示唆をするものであるから、本願発明は進歩性を有する旨を主張する(令和7年9月2日提出の意見書1~3頁)。 しかしながら、引用文献1において、芳香族成分は必須の成分ではなく、実施例1の組成物に基づいて認定した引用発明には、芳香族成分は含まれておらず、本願発明と引用発明は、芳香族成分を含まない点で一致している。 したがって、引用文献1において芳香族成分を含む実施形態が許容されていることは、上記6に説示した検討内容に影響せず、請求人の上記主張は採用できない。 8 むすび 以上のとおり、本願発明は、引用文献1に記載された発明、引用文献4に記載された事項及び技術常識(引用文献2及び3)に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、本願は、他の請求項について検討するまでもなく、拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。

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2024-000130

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