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特許拒絶査定不服審判

2023-008875

反りを制限するための、円形断面ガラス繊維を含む脂肪族ポリアミドの混合物中の半芳香族ポリアミドの使用

審判番号
2023-008875
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2019-520729外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2023年05月31日
審決日
2025年11月18日
公報発行日
2026年05月29日
結論
請求不成立
当事者
審判長/審判官
分類
P18 .121-WZ (C08L)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法29条2項
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項
データ出所
審決公報(XML)

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特願2019-520729「反りを制限するための、円形断面ガラス繊維を含む脂肪族ポリアミドの混合物中の半芳香族ポリアミドの使用」拒絶査定不服審判事件〔平成30年 4月26日国際公開、WO2018/073536、令和1年10月31日国内公表、特表2019-531394〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論 本件審判の請求は、成り立たない。

理由

理 由 第1 手続の経緯 この出願(以下「本願」という。)は、2017年(平成29年)10月18日(パリ条約による優先権主張 外国庁受理 2016年(平成28年)10月19日 フランス(FR)、2017年(平成29年)3月23日 フランス(FR))を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。 令和3年10月18日付け:拒絶理由通知 令和4年 1月26日提出:意見書、手続補正書 同年 6月17日付け:拒絶理由通知 同年 9月14日提出:意見書、誤訳訂正書 令和5年 1月18日付け:拒絶査定(以下「原査定」という。) 同年 5月31日提出:拒絶査定不服審判の請求書 令和6年 1月24日提出:刊行物等提出書 令和7年 1月17日付け:拒絶理由通知 同年 7月23日提出:意見書、手続補正書 第2 本願の特許請求の範囲に記載された発明 令和7年7月23日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下「本願発明1」という。)は、以下のとおりである。 「【請求項1】 射出又は圧縮成形による加工中に、組成物の反りを制限するための、 - C6からC12ラクタム、 - C6からC12アミノ酸、及び - C4からC18脂肪族ジアミン(X)、及びC6からC18脂肪族ジカルボン酸(Y)の重縮合から得られるXY単位 から選択される単位の重縮合から得られる少なくとも一つの脂肪族ポリアミドA、 円形断面ガラス繊維、並びに 任意選択的に少なくとも一つの耐衝撃性改良剤及び/又は少なくとも一つの添加剤 を含む混合物中、C6からC18脂肪族(Z)ジカルボン酸との、メタ-キシリレンジアミン(MXD)の重縮合から得られる少なくとも一つのMXDZポリアミドの使用であって、 前記少なくとも一つのMXDZポリアミド及び前記混合物が前記組成物を構成し、前記組成物にはPA6及びPA66が存在せず、MXDZ/A重量比が0.11から0.83であり、100*100*1mm3のプレート上で測定される場合、前記組成物の反りが2mm未満である、 使用。」 第3 当審において通知した拒絶の理由 令和7年1月17日付けの拒絶理由通知において通知した拒絶の理由のうち、理由3の概要は、次のとおりである。 理由3(進歩性欠如) この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 1:特開2010-189467号公報(拒絶査定の「引用文献1」) 3:国際公開第2013/088932号(拒絶査定の「引用文献3」、周知技術を示す文献) 4:三菱エンジニアリングプラスチックス株式会社;レニー(登録商標)カタログ(2008.08、令和6年1月24日付け刊行物提出により提示、周知技術を示す文献) 5:特開2015-147428号公報(新たに引用する文献、周知技術を示す文献) 第4 引用文献の記載、引用発明及び本願優先日時の技術常識・周知技術 1 引用文献1に記載された事項及び引用発明 (1)引用文献1に記載された事項 引用文献1には、以下の事項が記載されている(当審注:下線は、当審で付した。以下同様。)。 「【請求項1】 (A)脂肪族ポリアミド樹脂 90~10重量%、及び、半芳香族ポリアミド樹脂 10~90重量%から成る混合ポリアミド樹脂100重量部に対し、 (B)無機充填材 0~300重量部、及び (C)蓚酸アニリド系安定剤 0.05~5重量部 を配合したことを特徴とするポリアミド樹脂組成物。」 「【0008】 脂肪族ポリアミド樹脂として、より具体的には、ポリアミド4樹脂、ポリアミド6樹脂、ポリアミド7樹脂、ポリアミド8樹脂、ポリアミド11樹脂、ポリアミド12樹脂、ポリアミド66樹脂、ポリアミド69樹脂、ポリアミド610樹脂、ポリアミド611樹脂、ポリアミド612樹脂、ポリアミド66/6共重合体、ポリアミド6/12共重合体等が挙げられる。これらのなかでも、入手のしやすさ及び半芳香族ポリアミドと樹脂の相溶性の点から、ポリアミド6樹脂、ポリアミド66樹脂及びポリアミド6/66共重合体が好ましく、これらを併用してもよい。最も好ましいのは、耐熱性、流動性及び靭性の点からポリアミド6樹脂である。ポリアミド6樹脂は通常は単独重合体を用いるが、所望ならば共重合成分を含有するものも用いることができる。共重合成分の含有量は耐熱性の点から少量であるのが好ましい。ε-カプロラクタム又はε-アミノカプロン酸由来のカプロラクタム単位は、通常は90モル%以上、更には95モル%以上であるのが好ましい。共重合成分としては、例えば、ω-ラウロラクタム等が挙げられる。」 「【0010】 半芳香族ポリアミド樹脂; 半芳香族ポリアミド樹脂は、上記の脂肪族ポリアミド樹脂において、原料の脂肪族ジアミン又は脂肪族ジカルボン酸を、芳香族ジアミン又は芳香族ジカルボン酸で置換したものである。置換は原料の脂肪族ジアミン又は脂肪族ジカルボン酸の全てであっても、一部であってもよい。」 「【0016】 (A)混合ポリアミド樹脂は、脂肪族ポリアミド樹脂90~10重量%と半芳香族ポリアミド樹脂90~10重量%(合計100重量%)とから成るが、脂肪族ポリアミド樹脂が少ないと、屋外暴露下での変色が大きくなりがちなので、脂肪族ポリアミド樹脂の割合は20重量%以上、特に25重量%以上であるのが好ましい。また脂肪族ポリアミド樹脂が多いと、一般的に樹脂組成物の弾性率及び強度が小さくなったり、反りが大きくなる傾向にあるので、脂肪族ポリアミド樹脂の割合は90重量%以下であるのが好ましい。」 「【実施例】 【0031】 以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はその要旨を越えない限り、これらの実施例に限定されるものではない。なお、実施例で用いた原料は次のとおりである。 【0032】 脂肪族ポリアミド樹脂;ポリアミド6樹脂、三菱エンジニアリングプラスチックス社製品「商品名:ノバミッド(登録商標)1007J」、相対粘度2.2 半芳香族ポリアミド樹脂(1);下記の製造法で得られた半芳香族ポリアミド樹脂 <半芳香族ポリアミド樹脂(1)の製造方法> 反応器にアジピン酸を仕込み、窒素雰囲気下で加熱溶融させた。この溶融アジピン酸に、パラキシリレンジアミン30モル%とメタキシリレンジアミン70モル%から成る混合キシリレンジアミンを滴下し、生成物の融点を常に上回るように反応温度を保ちつつ撹拌した。滴下終了後、更に撹拌、反応を続け、所望の相対粘度に達した時点で、反応器から水中にストランド状に排出してペレット化した。得られた半芳香族ポリアミド樹脂の融点は258℃、結晶化温度は206℃、相対粘度は2.08であった。 半芳香族ポリアミド樹脂(2);メタキシリレンジアミンとアジピン酸との重縮合物、三菱エンジニアリングプラスチックス社製品「商品名:レニー(登録商標)6003」、相対粘度2.2 半芳香族ポリアミド樹脂(3);ヘキサメチレンジアミンとイソフタル酸との塩/ヘキサメチレンジアミンとテレフタル酸との塩の共重合体、三菱エンジニアリングプラスチックス社製品「商品名:ノバミッド(登録商標)X21-F07」 【0033】 無機充填材;ガラス繊維、長さ3mmのチョップドストランド、日本電気硝子社製品「商品名:T-289」 蓚酸アニリド系安定剤;2-エトキシ-2’-エチルオキサニリド、クラリアントジャパン社製品、「商品名:VSU」 ヒンダードアミン系化合物;N,N’-ビス-2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジニル-1,3-ベンゼンカルボキシアミド、クラリアンドジャパン社製品「商品名:S-EED」 ハロゲン化銅;ヨウ化銅、和光純薬工業社製品 ハロゲン化カリウム;ヨウ化カリウム、和光純薬工業社製品 カーボンブラック;三菱化学社製品「商品名:#960」 【0034】 <ポリアミド樹脂組成物の製造方法> ガラス繊維以外の各原料を表1に示す量となるように配合し、タンブラーミキサーで混合した。得られた混合物を、二軸押出機(日本製鋼所社製、「型式:TEX30HCT」、スクリュー径30mmφ)のホッパーに供給し、ガラス繊維はサイドフィーダーを経由して供給し、樹脂温度275℃、スクリュー回転数200rpm、吐出量15kg/hの条件で溶融混練し、ポリアミド樹脂組成物を製造した。」 「【0040】 <80℃曲げ試験> 上記のポリアミド樹脂組成物を80℃で6時間乾燥後、射出成形機(ファナック社製、 「100αII」)を用いて、上記の樹脂組成物からなるISO試験片を、樹脂温度275℃、金型温度90℃、射出圧力500kgf/cm、射出速度30mm/sec、保圧300kgf/cm2、射出保圧時間12秒、冷却時間20秒で成形し、これを用いてISO178規格に準拠して、80℃雰囲気下の曲げ弾性率、曲げ強度を測定した。結果を表1に示す。 【0041】 【表1】 [図:0001434438000001.jpg] 」 (2)引用文献1に記載された発明 引用文献1の請求項1には「(A)脂肪族ポリアミド樹脂 90~10重量%、及び、半芳香族ポリアミド樹脂 10~90重量%から成る混合ポリアミド樹脂100重量部に対し、 (B)無機充填材 0~300重量部、及び (C)蓚酸アニリド系安定剤 0.05~5重量部 を配合したことを特徴とするポリアミド樹脂組成物。」と記載されており、該ポリアミド樹脂組成物を具体化した表1(【0041】)の実施例6に着目すると、段落【0032】及び【0033】に記載された原料の混合物を溶融混練してポリアミド樹脂組成物を製造すること(【0034】)から、引用文献1には、下記発明が記載されている。 「脂肪族ポリアミド樹脂;ポリアミド6樹脂、三菱エンジニアリングプラスチックス社製品「商品名:ノバミッド(登録商標)1007J」70重量部、 無機充填材;ガラス繊維、長さ3mmのチョップドストランド、日本電気硝子社製品「商品名:T-289」100重量部、 蓚酸アニリド系安定剤;2-エトキシ-2’-エチルオキサニリド、クラリアントジャパン社製品、「商品名:VSU」0.6重量部、 ヒンダードアミン系化合物;N,N’-ビス-2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジニル-1,3-ベンゼンカルボキシアミド0.6重量部、 ハロゲン化銅;ヨウ化銅0.52重量部、 ハロゲン化カリウム;ヨウ化カリウム0.34重量部、 カーボンブラック4重量部、 芳香族ポリアミド樹脂(2);メタキシリレンジアミンとアジピン酸との重縮合物、三菱エンジニアリングプラスチックス社製品「商品名:レニー(登録商標)6003」30重量部を含む混合物を溶融混練して製造したポリアミド組成物。」(以下「引用発明1」という。) そして、引用文献1の段落【0016】には、「(A)混合ポリアミド樹脂は、脂肪族ポリアミド樹脂90~10重量%と半芳香族ポリアミド樹脂90~10重量%(合計100重量%)とから成るが、脂肪族ポリアミド樹脂が少ないと、屋外暴露下での変色が大きくなりがちなので、脂肪族ポリアミド樹脂の割合は20重量%以上、特に25重量%以上であるのが好ましい。また脂肪族ポリアミド樹脂が多いと、一般的に樹脂組成物の弾性率及び強度が小さくなったり、反りが大きくなる傾向にあるので、脂肪族ポリアミド樹脂の割合は90重量%以下であるのが好ましい。」と記載されていることから、半芳香族ポリアミド樹脂の配合割合を最適化することで、樹脂組成物の弾性率及び強度や反りを調整することが理解できる。 そうすると、上記引用発明1であるポリアミド樹脂組成物は、芳香族ポリアミド樹脂の使用によって、反りが大きくなることを防ぐものであることに着目して整理すると、引用文献1には、次の発明が記載されている。 「引用発明1の組成物において、反りが大きくなることを防ぐための「半芳香族ポリアミド樹脂(2)」の使用。」(以下「引用方法発明1」という。) 2 引用文献3~5に記載された事項と、本願優先日時の技術常識・周知技術 (1)引用文献3~5に記載された事項 ア 引用文献3に記載された事項 引用文献3には、以下の事項が記載されている。 「[0003] しかし、一方では、脂肪族ポリアミド樹脂を成形してなる成形品は、吸水(吸湿)性が高く、耐薬品性が劣るという問題点を有している。具体的には、脂肪族ポリアミド樹脂を成形してなる成形品は、全体の質量の5質量%程度の水を吸水するものがあることが知られている。また、ポリアミド66では、吸水によって、3GPa程度の弾性率を有する成形品が1GPaを下回るまで低下するようなことも生じうる。そして、特にこの点が最も問題であるが、脂肪族ポリアミド樹脂の成形品は、耐薬品性、特に酸又はアルカリ等の存在下では、重量減が大きく、強度や弾性率の低下が著しいという欠点を有している。 さらに、脂肪族ポリアミド樹脂を成形すると、得られる成形品の寸法安定性が悪いという問題もある。特に、脂肪族ポリアミド樹脂は結晶性樹脂であるため、成形品の寸法変化や反りが大きく、特に筐体部品のように、薄型化、小型化が進む成形品では、他部品との組立性・勘合性に支障を来たすこともある。また成形品が吸湿すると膨潤したり変形するなど、寸法安定性に劣り、精密な部品としては使用しにくいという問題を有していた。 [0004] 従来、このような結晶性の脂肪族ポリアミド樹脂を用いた成形品の欠点を補うべく、半結晶性のポリアミド樹脂を組み合わせて使用することが提案されている。 例えば、特許文献1では、(A)ポリカプラミド樹脂又はポリヘキサメチレンアジパミド樹脂、(B)脂肪族ジアミンとイソフタル酸及びテレフタル酸からなる半芳香族ポリアミド樹脂、(C)無機充填材及び(D)飽和脂肪族カルボン酸からなるポリアミド樹脂組成物を用いることが提案されている。また、特許文献2には、(A)脂肪族ポリアミド樹脂、(B)半芳香族ポリアミド樹脂、(C)無機充填材及び(D)蓚酸アニリド系安定剤からなるポリアミド樹脂組成物を用いることが提案され、半芳香族ポリアミド樹脂の具体例としては、メタ又はパラキシリレンジアミンとアジピン酸からのポリアミド樹脂、ヘキサメチレンジアミンとイソ及びテレフタル酸からのポリアミド樹脂が記載されている。 [0005] しかしながら、これらに提案されたポリアミド樹脂組成物は吸水性の改良効果はあるものの、耐薬品性及び成形時の寸法安定性については、必ずしも十分なものではなく、更なる改善が求められていた。」 イ 引用文献4に記載された事項 「 [図:0001434438000002.jpg] [図:0001434438000003.jpg] 」(第2、3頁) 「 [図:0001434438000004.jpg] [図:0001434438000005.jpg] [図:0001434438000006.jpg] 」(第8頁) 「 [図:0001434438000007.jpg] 」(第11頁) ウ 引用文献5に記載された事項 「【請求項1】 ポリアミド樹脂70~35重量%、断面が下記式による扁平率2.3以上の長円形であるガラス繊維30~65重量%、および、耐衝撃改良剤を含む熱可塑性樹脂組成物からなり、成形品中のガラス繊維の重量平均繊維長が1mm以上である成形品の製造方法において、前記ポリアミド樹脂および耐衝撃改良剤の溶融物をロービング状のガラス繊維に含浸させた後、3mm以上の長さにカットされたペレットを緩圧縮なタイプのスクリューを用いて射出成形する工程を含み、 前記熱可塑性樹脂組成物に含まれる熱可塑性樹脂成分が、ポリアミド樹脂および耐衝撃改良剤のみからなり、 前記ポリアミド樹脂の20重量%以上が、0~50モル%のパラキシリレンジアミンと、50~100モル%のメタキシリレンジアミンとからなる混合ジアミンと、炭素数6~12のα,ω-直鎖脂肪族ジカルボン酸との重縮合反応により得られるポリアミド樹脂であり、 前記耐衝撃改良剤が、α-オレフィン系、スチレン系、アクリル系およびシリコーン系の熱可塑性エラストマー、ならびに、メチルメタクリレート-ブタジエン-スチレン樹脂から選択される繊維強化熱可塑性樹脂成形品の製造方法。 扁平率=ガラス繊維長径(a)/ガラス繊維短径(b) 【請求項2】 ガラス繊維の扁平率が2.3~5である、請求項1に記載の繊維強化熱可塑性樹脂成形品の製造方法。 【請求項3】 ガラス繊維の重量平均繊維長が1~10mmである、請求項1または2に記載の繊維強化熱可塑性樹脂成形品の製造方法。 【請求項4】 ポリアミド樹脂の70重量%以上が、0~50モル%のパラキシリレンジアミンと、50~100モル%のメタキシリレンジアミンとからなる混合ジアミンと、炭素数6~12のα、ω一直鎖脂肪族ジカルボン酸との重縮合反応により得られるポリアミド樹脂である、請求項1~3のいずれか1項に記載の繊維強化熱可塑性樹脂成形品の製造方法。」 「【0008】 本発明は、上記の状況に鑑みなされたものであり、その目的は、機械的強度、耐熱性、反り性等の寸法精度、表面外観に優れた繊維強化熱可塑性樹脂成形品を提供することである。」 「【実施例】 【0065】 以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り、適宜、変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例に限定されるものではない。 【0066】 実施例1 [繊維強化ポリアミド樹脂ペレットの製造法] 実施例1-1~1-8、比較例1-1~1-3、1-6~1-9、1-11、1-12で用いたペレットの製造法 ガラス繊維ロービングを開繊して引きながら、ポリアミド樹脂の溶融物(樹脂温度280℃)に含浸させた後、賦形ダイを通してストランドとして引取り、切断し、実施例1-2においては長さ3mm、その他の実施例、比較例においては長さ12mmの長繊維強化ポリアミド樹脂組成物ペレットを得た。ガラス繊維ロービング量とポリアミド樹脂量との比率を調整することにより、ペレット中の強化繊維の含有量を調節した。なお、各実施例および比較例において、ガラス繊維の断面形状およびポリアミド樹脂の種類は表1~3に示した通りである。 【0067】 比較例1-4、1-5、1-10で用いたペレットの製造法 表1、2に示す配合割合で、ガラス繊維チョップドストランド以外をドライブレンド後、二軸押出機(日本製鋼所社製、「TEX30XCT」、バレル9ブロック構成)を用いて、樹脂温度280℃、スクリュー回転数250rpmの条件下、ガラス繊維以外の上記ドライブレンド物はホッパーより、ガラス繊維はホッパー側から数えて5番目のブロックからサイドフィーダーより供給し溶融混練を行い、長さ3mmにカットして射出成形用のペレットを製造した。 【0068】 上記の方法で得られた各実施例および比較例のポリアミド樹脂組成物ペレットを80℃で12時間乾燥した後、下記の成形条件で下記評価試験用の成形品を作製した。得られた成形品を用い、下記条件に従って評価を行った。 【0069】 [成形条件] 射出成形機(日本製鋼所社製、「J150E-P-2M」)にて、表1、2に記載の実施例1-1~1-5および比較例1-1~1-10においては、標準タイプスクリューを用い、シリンダー温度280℃、金型温度120℃、スクリュー回転数65rpm、背圧は比較例1-3が6.0MPa、それ以外の例は0.4MPaの条件で、また、表3に記載の実施例1-6~1-8および比較例1-11、1-12においては、緩圧縮タイプスクリューを用い、金型温度120℃で、シリンダー温度、背圧、スクリュー回転数を表3の条件に設定し、以下の機械的強度測定用ISO試験片、成形収縮率測定用試験片、反り量測定用試験片、表面外観評価用試験片を作製した。 【0070】 [繊維長1mm以上の繊維含有率及び平均繊維長評価法] 上記記載の方法で作製された曲げ試験用、成形収縮率測定用、反り量測定用の各々の試験片の中央部から約5gのサンプルを切り出し、600℃の電気炉(東洋製作所社製「電気マッフル炉KM-28」)内で2時間灰化し、熱可塑性樹脂成分のみを燃焼させた後、ガラス繊維を折損しないようにやさしくピンセットで中性表面活性剤水溶液中に広げ、分散させた。分散水溶液を、ピペットを用いてスライドグラス上に移し、顕微鏡で20倍と40倍の倍率で写真撮影を行った。得られた写真を、画像解析ソフト(プラネトロン社製「Image-Pro Plus」)を用い、1000~2000本のガラス繊維について測定を行い、繊維長1mm以上の比率を測定した。また、繊維長の重量平均値を重量平均繊維長、数平均値を数平均繊維長とした。 【0071】 [機械的強度測定法] 上記成形条件で得られたISO試験片を用い、ISO527規格に従って引張試験を、ISO178規格に従って曲げ試験を、ISO179規格に従ってシャルピー衝撃試験(ノッチつき)を行った。また、耐熱性を評価するため、試験片を120℃以下に加熱しながらの曲げ試験も行った。 【0072】 [成形収縮率測定法] 上記成形条件で、縦100mm、横100mm、厚み2mmの四角形の平板をフィルムゲート金型にて成形し、樹脂流れ方向(MD)と流れの直角方向(TD)の成形収縮率を測定した。MDとTDのいずれも平均収縮率が低く、MDとTDの成形収縮率の比(異方性MD/TD)が1に近く異方性が小さい方が、金型設計が容易で、寸法精度が出しやすく、一般的に好ましい。 【0073】 [反り量測定法] 上記成形条件で、直径100mm、厚み1.6mmの円板(ゲートは円周上の1点ゲート)を作製した。円板の片端を平板に固定し、反対側が平板から浮き上がった際の、最も浮き上がった箇所の高さを測定し反り量とした。この数値が小さいほど成形品にひずみがなく好ましい。 【0074】 [表面外観評価法] 上記成形条件で、縦100mm、横100mm、厚み2mmの平板試験片を作製した。得られた試験片の表面を目視観察し、ガラス繊維の浮きあがり状態で外観を評価した。ガラス繊維の浮き上がりがなく表面状態が非常に優れているものを◎、一般的な成形品の許容外観範囲内であるものを○、ガラス繊維の浮き上がりが一部に認められるものを△、かなり広い範囲にわたってガラス繊維の浮きが認められ、全く許容範囲外であるものを×として表記した。 【0075】 [原材料] (A)ポリアミド樹脂: (A-1)MXナイロン;三菱ガス化学株式会社製、「商品名:MXナイロン6000」、相対粘度(96%硫酸中、濃度1g/100ml、23℃で測定)2.14 (A-2)ポリアミド6;三菱エンジニアリングプラスチックス(株)製、「商品名:ノバミッド(登録商標)1007J」、相対粘度(96%硫酸中、濃度1g/100ml、23℃で測定)2.14 (B)強化繊維: (B-1)異形断面ガラス繊維ロービング;日東紡社製、長円形(FF)、長径(a)=28μm、短径(b)=7μm、扁平率4 (B-2)異形断面ガラス繊維ロービング;日東紡社製、まゆ形(HIS)、長径(a)=20μm、短径(b)=10μm、扁平率2 (B-3)円形断面ガラス繊維ロービング;日東紡社製、円形、繊維径13μm (B-4)異形断面ガラス繊維チョップドストランド;日東紡社製、長円形(FF)、長径(a)=28μ、短径(b)=7μm、扁平率4、繊維長3mm (B-5)円形断面ガラス繊維チョップドストランド;日東紡社製、円形、繊維径13μm、繊維長3mm 」 「【0077】 【表2】 [図:0001434438000008.jpg] 」 (2)本願優先日時の技術常識・周知技術 ア 引用文献3の[0003]~[0005]には、脂肪族ポリアミド樹脂は結晶性樹脂であるため、成形すると、成形品の寸法変化や反りが大きいという問題を有していたところ、このような結晶性の脂肪族ポリアミド樹脂を用いた成形品の欠点を補うべく、「半結晶性のポリアミド樹脂(半芳香族ポリアミド)」を組み合わせて使用することが記載されていると認められる。 イ 引用文献4の第2、3頁には「レニーの主成分、ポリアミドMXD6の基本的性質。」、「ポリアミドMXD6は、メタキシリレンジアミン(MXDA)とアジピン酸とから得られる」、また、第8頁の項目「「そりにつよい」レニー」における表「そり量比較」に用いた試験片の図に「ゲート」の記載があることから、射出成形により得られたと解されるところ、「レニー1002F」、「レニー1022F」、「レニー2620」、「レニー2502A」のそり量はそれぞれ、3.98、3.74、0.31、0.26mmであるのに対し、「PA66 G30%」のそり量は8.31mmであり、脂肪族ポリアミドよりも半芳香族ポリアミドの方が、そり発生量が少ないことが示されている。 また、同項目には「レニーは他のガラス繊維強化成形材料に比べ、そりの発生率が極めて少なくなっています。」と記載されている。 ウ 引用文献5の【0077】【表2】には、「ポリアミド6」50重量%、「長円形ガラス繊維ロービング」50重量%を含む組成物を射出成形して得られた試験片(実施例1-3)、「MXナイロン6000」20重量%、「ポリアミド6」30重量%、「長円形ガラス繊維ロービング」50重量%を含む組成物を射出成形して得られた試験片(実施例1-5)の反り量(mm)がそれぞれ2.8、1.3であることが記載されている。 「MXナイロン6000」は、「ポリメタキシリレンアジパミド(MXD6)」である(必要であれば特開2013-199570号公報の「ポリメタキシリレンアジパミド(MXD6):三菱瓦斯化学製、商品名「MXナイロン6000」(【0050】)を参照)。 上記実施例1-5と、実施例1-3を比較すると、50質量%含まれていた「ポリアミド6」のうち20質量%を「MXナイロン6000」(ポリメタキシリレンアジパミド(MXD6))に置換することで、射出成形により得られた試験片の反り量(mm)が2.8から1.3に低下することが示されており、置換する以外は同条件の比較であるから、ガラス繊維を含んでいても、脂肪族ポリアミドに、半芳香族ポリアミドを併用することで、「反り」が抑制されることが理解できる。 エ 上記ア~ウのとおり、半結晶性のポリアミド(半芳香族ポリアミド)は、結晶性である脂肪族ポリアミドに比べ成形品の「反り」が低減されることは、本願優先日時の技術常識であり、また、イ、ウより、ガラス繊維を含んだ場合においても、「メタキシリレンジアミンとジカルボン酸から得られるポリアミド」を添加して、成形品の「反り」を低減させることは、本願優先日時において、当業者の周知技術であったと認められる。 第5 当審の判断 1 本願発明1について (1)対比 本願発明1と引用方法発明1とを対比する。 引用方法発明1は、反りが大きくなることを防ぐための「半芳香族ポリアミド樹脂(2)」の使用に関するものであるから、「反りを制限するための」「使用」であるものといえ、「組成物の反りを制限するための」「使用」であるといえる。 脂肪族ポリアミドは、ラクタムの開環重合によって得られる。 ここで、本願明細書の【0031】には、「脂肪族ポリアミドAはラクタムの重縮合から得られ」と記載されており、本願発明1の「重縮合」には「開環重合」が含まれるものといえる。 そうすると、引用方法発明1の「ポリアミド6樹脂」は、カプロラクタム(C6ラクタム)の開環重合によって得られるものであるから、本願発明1の「C6からC12ラクタム」「から選択される単位の重縮合から得られる少なくとも一つの脂肪族ポリアミドA」に相当する。 「アジピン酸」はC6脂肪族ジカルボン酸である。 そうすると、引用方法発明1の「半芳香族ポリアミド樹脂(2);メタキシリレンジアミンとアジピン酸との重縮合物」は、本願発明1の「C6からC18脂肪族(Z)ジカルボン酸との、メタ-キシリレンジアミン(MXD)の重縮合から得られる少なくとも一つのMXDZポリアミド」に相当する。 引用方法発明1の「無機充填材;ガラス繊維、長さ3mmのチョップドストランド、日本電気硝子社製品「商品名:T-289」」は、円形断面を有するガラス繊維であるから(必要であれば、特開2010-168559号公報の「断面が円形のガラス繊維[日本電気硝子(株)製:商品名T-289」(【0043】)を参照。)、本願発明の「円形断面ガラス繊維」に相当する。 引用方法発明1の「蓚酸アニリド系安定剤;2-エトキシ-2’-エチルオキサニリド、クラリアントジャパン社製品、「商品名:VSU」0.6重量部、 ヒンダードアミン系化合物;N,N’-ビス-2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジニル-1,3-ベンゼンカルボキシアミド0.6重量部、 ハロゲン化銅;ヨウ化銅0.52重量部、 ハロゲン化カリウム;ヨウ化カリウム0.34重量部、 カーボンブラック4重量部」は、本願発明1の 「任意選択的に少なくとも一つの耐衝撃性改良剤及び/又は少なくとも一つの添加剤」に相当する。 また、引用方法発明1の「組成物」は、PA66を含まないものである。 引用方法発明1の組成物は「ポリアミド6樹脂」70重量部と「半芳香族ポリアミド樹脂(2)」30重量部を含むものであるから、「半芳香族ポリアミド樹脂(2)」/「ポリアミド6樹脂」=30/70=0.43となり、本願発明の「MXDZ/A重量比が0.11から0.83である」の範囲を満たす。 以上から、本願発明1と引用方法発明1とは、 「 組成物の反りを制限するための、 - C6からC12ラクタム、 から選択される単位の重縮合から得られる少なくとも一つの脂肪族ポリアミドA、 円形断面ガラス繊維、 任意選択的に少なくとも一つの耐衝撃性改良剤及び/又は少なくとも一つの添加剤、 C6からC18脂肪族(Z)ジカルボン酸との、メタ-キシリレンジアミン(MXD)の重縮合から得られる少なくとも一つのMXDZポリアミドを含む組成物における、 前記少なくとも一つのMXDZポリアミドの使用であって、 前記組成物にはPA66が存在せず、MXDZ/A重量比が0.11から0.83である、 使用。」 である点で一致し、下記の点で一応相違する。 <相違点1> 本願発明1は、脂肪族ポリアミドAと円形断面ガラス繊維の「混合物」に、「MXDZ」を使用するのに対し、引用方法発明1は当該事項について不明である点 <相違点2> 本願発明1は「100*100*1mm3のプレート上で測定される場合、前記組成物の反りが2mm未満である」のに対し、引用方法発明1は当該事項について特定されていない点 <相違点3> 本願発明1は組成物に「PA6」が存在しないのに対し、引用方法発明1は「PA6」を含むものである点 <相違点4> 「組成物の反りを制限するための」「MXDZポリアミドの使用」に関し、本願発明1は、「組成物の反りを制限する」のが「射出又は圧縮成形による加工中に」であるのに対し、引用方法発明1は当該事項について特定されていない点 (2)判断 ア 相違点1について 引用文献1の【0034】を参照すると、引用方法発明1は、二軸押出機のホッパーから脂肪族ポリアミド、MXDZを含む混合物を供給し、無機充填剤(円形断面ガラス繊維)をサイドフィーダー経由で供給しているものである。 そして、本願明細書の【0115】、【0116】には、二軸押出機中でポリマー混練物に、横からガラス繊維をフィードすることが記載されていることから、当該相違点に係る本願発明1の特定事項は、具体的な操作手順として「MXDZ以外の成分からなる混合物を製造し、その後、該混合物中にMXDZを配合すること」を述べているのではなく、反りを制限するために組成物において、「MXDZ」を使用することを意味すると解するのが相当である。 そうすると、引用方法発明1は、ポリアミド6とガラス繊維の混合物に半芳香族ポリアミドを使用するものであるから、加工工程中に「MXDZ」を使用しているといえ、相違点1は実質的な相違点でない。 イ 相違点2について 本願明細書の実施例(表1)において、「100*100*1mm3のプレート上で測定される場合」の「組成物の反り」について、MXDZ、PAXY、円形断面ガラス繊維を含む例(I1、I2)はいずれも、1mm未満であることが記載されており、引用方法発明1も同様の組成を有するものであるから、上記条件で測定される場合、同様に1mm未満であり、「100*100*1mm3のプレート上で測定される場合、2mm未満である」を満たす蓋然性が高い。 そうすると、相違点2は、実質的な相違点ではない。 仮に、当該相違点が実質的な相違点であったとしても、引用方法発明1において、「半芳香族ポリアミド樹脂(2);メタキシリレンジアミンとアジピン酸との重縮合物」を、「加工中に、組成物の反りを制限するため」に使用することは、上記(2)に示したとおり、出願時の技術常識・周知技術であるから、当業者が容易になし得たことである。 また、引用文献4の第8頁の表には、直径4インチ、厚み1/16インチの成形材料に130℃での実験の結果、「レニー」の「そり量」が0.26~3.98mmであること、「レニー」ではない「PA66 G30%」の「そり量」が8.31mmであることが記載されており、本願明細書に記載される計測と完全に同じ計測手段ではないものの、「レニー」は「PA66 G30%」よりも「そり量」を大きく制限することが記載されているといえる。 そうすると、引用方法発明1において、求める「そり量」の制限の程度に応じて、適切な「レニー」、すなわち、「MXDZ」を選択し「100*100*1mm3のプレート上で測定される場合、前記組成物の反りが2mm未満である」とすることは、当業者が容易になし得たことである。 ウ 相違点3について 引用文献1には、「脂肪族ポリアミド樹脂として、より具体的には、ポリアミド4樹脂、ポリアミド6樹脂、ポリアミド7樹脂、ポリアミド8樹脂、ポリアミド11樹脂、ポリアミド12樹脂、ポリアミド66樹脂、ポリアミド69樹脂、ポリアミド610樹脂、ポリアミド611樹脂、ポリアミド612樹脂、ポリアミド66/6共重合体、ポリアミド6/12共重合体等が挙げられる。」と記載されており(【0008】)、これらは適宜選択可能なものであるから、引用方法発明1において、ポリアミド6に代えて、ポリアミド6及びポリアミド66以外の脂肪族ポリアミド樹脂を用いることは、当業者が容易になし得たことである。 エ 相違点4について 引用文献1の【0040】には、成形品の評価のために射出成形を行うことが記載されており、引用方法発明1は、「射出又は圧縮成形による加工中に」、組成物の「反り」を制限するためのMXDZの使用であるといえる。 そうすると、相違点4は、実質的な相違点ではない。 仮に実質的な相違点であったとしても、上記(2)に示したように、技術常識・周知技術に基づいて、射出成形により得られた成形体の「反り」を抑制することは、当業者が容易になし得たことである。 オ 本願発明の効果について 本願明細書には、本願発明の効果として、組成物の射出又は圧縮成形により組成物の実装中の反りを制限することを可能にしたことが記載されているが、当該効果も、上記第4の3に示したとおり、脂肪族ポリアミドに半芳香族ポリアミドを適用することで「反り」を制限することは、本願優先日時の技術常識及び周知技術であったことを踏まえると本願発明の構成から予測し得るものであって、格別顕著なものではない。 カ 小括 してみると、本願発明1は、引用方法発明1、すなわち引用文献1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 (3)審判請求人の主張について 審判請求人は、令和7年7月23日提出の意見書において、引用文献1に基づく進歩性欠如の理由について下記の主張をしている。 (主張点1)引用文献1は、請求項6において、脂肪族ポリアミド樹脂が、ポリアミド6樹脂、ポリアミド66樹脂及びポリアミド/66共重合体からなる群より選ばれたものである、請求項1~5のいずれか1項に記載のポリアミド樹脂組成物を、請求項7において、脂肪族ポリアミド樹脂が、ポリアミド6樹脂である、請求項1~5のいずれか1項に記載のポリアミド樹脂組成物を開示しており、更に、引用文献1は、脂肪族ポリアミド樹脂としてポリアミド6樹脂を含む組成物を実施例において実験的に開示している。 更に、引用文献1は、引用文献1の構成からPA6及びPA66を除外するための動機を提供していない。 (主張点2) たとえ「反り」の低減のために「メタキシリレンジアミンとジカルボン酸から得られるポリアミド」を添加することは、本願優先日時において、当業者の周知技術(引用文献3、三菱エンジニアリングプラスチックス株式会社;レニー(登録商標)カタログ、特開2015-147428号公報)であったと認められたとしても、当業者が引用文献1に基づいて本願請求項に係る発明を想到することは容易ではなかった。 主張点1について 引用文献1に記載される技術を実施例のみとする特段の理由はなく、当業者は他の記載を参照するものである。 そして、上記(2)ウにおいて説示したとおり、引用文献1にはPA6及びPA66以外の脂肪族ポリアミドを用いることについて記載されており、PA6に代えて、PA66以外の脂肪族ポリアミドを用いることは、当業者が容易になし得たことである。 してみると、当該主張は妥当でない。 主張点2について そもそも、引用方法発明1には、脂肪族ポリアミド樹脂に加え、MXD6が配合されている。 上記第4の2に示したとおり、脂肪族ポリアミド樹脂を用いた場合、「反り」に関する問題があり、その対処手段として、半芳香族ポリアミドを併用することが、本願優先日時には技術常識であったことを踏まえれば、上記相違点2に係る事項とすることは、十分な動機付けがあったといえる。 してみると、当該主張は妥当でない。 したがって、審判請求人の当該主張は採用できない。 第6 むすび 以上のとおり、本願発明1は、引用発明1、すなわち引用文献1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。

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2023-008875

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