特許無効審判
2023-800039
三次元造形製品の製造装置
- 審判番号
- 2023-800039
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 無効審判(無効の審決)
- 出願番号
- 特願2010-092912
- 登録番号
- 4566286
- 請求日
- 2023年06月22日
- 審決日
- 2024年11月18日
- 公報発行日
- 2025年05月30日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】株式会社 ソディック
- 【請求人代理人】SK弁理士法人
- 【請求人代理人】伊藤 寛之
- 【請求人代理人】奥野 彰彦
- 【被請求人】株式会社 松浦機械製作所
- 【被請求人代理人】赤尾 直人
- 審判長/審判官
- 審判長 里村 利光
- 審判官 廣田 健介
- 審判官 井口 猶二
- 分類
- P1123.121-YAA(B29C) / P1123.851-YAA(B29C) / P1123.853-YAA(B29C) / P1123.854-YAA(B29C) / P1123.855-YAA(B29C) / P1123.856-YAA(B29C)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第134条の2第1項、特許法第134条の2第9項、特許法第29条、特許法第169条
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
上記当事者間の特許第4566286号発明「三次元造形製品の製造装置」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。
結論
結 論
特許第4566286号の明細書及び特許請求の範囲を、令和6年6月10日付け手続補正書により補正された訂正請求書(同年3月27日提出)に添付された訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~10〕について訂正することを認める。
本件審判の請求は、成り立たない。
審判費用は、請求人の負担とする。
理由
理 由
第1 請求の趣旨及び答弁の趣旨
1 請求の趣旨
特許第4566286号の特許請求の範囲の請求項1~8に記載された発明についての特許を無効とする。審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求める。
2 答弁の趣旨
(1)特許第4566286号の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書及び訂正特許請求の範囲の記載のとおり訂正することを認める。
(2)本件審判の請求は成り立たない。
(3)審判費用は、請求人の負担とする。
との審決を求める。
第2 手続の経緯
1 本件特許の手続の経緯の概略
(1)本件特許の出願から設定登録までの経緯
本件特許の請求項1~10に係る発明についての、出願から本件無効審判請求の前までの手続の経緯の概略は、次のとおりである。
平成22年 4月14日 :出願(特願2010-92912号)
同年 6月 1日付け:拒絶理由通知
同年 7月 6日 :意見書、手続補正書の提出
同年 7月26日付け:特許査定
同年 8月13日 :設定登録
(2)本件無効審判の手続の経緯
本件無効審判における手続の経緯の概略は、以下のとおりである。
令和 5年 6月22日 :審判請求書の提出
同年 9月20日 :答弁書、訂正請求書の提出
同年10月20日 :手続補正書の提出(被請求人)
(令和5年9月20日に提出された訂正請求書を手続補正の対象としたものである。)
同年12月11日付け:審理事項通知
令和 6年 1月12日 :口頭審理陳述要領書の提出(請求人)
同年 1月22日 :口頭審理陳述要領書の提出(被請求人)
同年 2月 5日 :手続補正書の提出(被請求人)
(令和5年9月20日に提出された答弁書を手続補正の対象としたものである。)
同年 2月 7日 :口頭審理
同年 2月15日 :手続補正書(2通)の提出(被請求人)
(それぞれ、令和6年1月22日に提出された口頭審理陳述要領書、令和6年2月5日に提出された手続補正書を手続補正の対象としたものである。)
同年 2月26日付け:無効理由通知
同年 2月26日付け:職権審理結果通知
同年 3月27日 :訂正請求書、意見書の提出
同年 4月18日 :上申書の提出(被請求人)
同年 6月10日 :手続補正書の提出(被請求人)
(令和6年3月27日に提出された訂正請求書を手続補正の対象としたものである。)
同年 7月11日 :弁駁書の提出
第3 訂正請求について
1 訂正請求の趣旨
令和6年6月10日付け手続補正書により補正された訂正請求書(同年3月27日提出)に係る訂正の請求(以下「本件訂正請求」という。)の趣旨は、特許第4566286号の明細書及び特許請求の範囲を、本訂正請求書に添付した訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり訂正することを求める、というものである。
2 訂正の内容
本件訂正請求による訂正の内容は、以下のとおりである。なお、下線は訂正箇所を示す。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に、
-「ヒーティング装置を構成するヒーティングパイプ又はクーリング装置を構成するクーリングパイプを下方から支えている基台」と記載されているのを、「ヒーティング装置を構成するヒーティングパイプ又はクーリング装置を構成するクーリングパイプの何れか一方のみを下方から支えており、他のヒーティング装置及びクーリング装置を備えていない基台」と訂正(以下「訂正1-1」という。)し、
-「前記テーブルに対し」と記載されているのを、「ヒーティングパイプ又はクーリングパイプと連通していない状態にて当該ヒーティング又は当該クーリングが行われていない前記テーブルに対し」と訂正(以下「訂正1-2」という。)し、
-「前記焼結層を支える基板を載置している」と記載されているのを、「前記焼結層を支える基板を載置しており、脚部につき、矩形状のテーブル及び基台の両側の辺に跨る場合には2個設け、他の場合には3個以上設けており、枠体又は支持杆につき、テーブル及び基台の周囲を囲む状態である場合には1個設け、矩形状のテーブル及び基台の両側の辺に跨る場合には2個設け、他の場合には、3個以上設けている」と訂正(以下「訂正1-3」という。)する。
(請求項1の記載を直接的又は間接的に引用する請求項2~4、9~10についても同様に訂正する。)
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項5に、
-「ヒーティング装置を構成するヒーティングパイプ又はクーリング装置を構成するクーリングパイプを把持している」と記載されているのを、「ヒーティング装置を構成するヒーティングパイプ又はクーリング装置を構成するクーリングパイプの何れか一方のみを把持している」と訂正(以下「訂正2-1」という。)し、
-「前記テーブルに対し」と記載されているのを、「ヒーティングパイプ又はクーリングパイプと連通していない状態にて当該ヒーティング又は当該クーリングが行われていない前記テーブルに対し」と訂正(以下「訂正2-2」という。)する。
(請求項5の記載を直接的又は間接的に引用する請求項6~10についても同様に訂正する。)
(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項4に、「基板」と記載されているのを、「単一層を形成している基板」と訂正する。
(請求項4の記載を直接的又は間接的に引用する請求項9~10についても同様に訂正する。)
(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項8に、「基板」と記載されているのを、「単一層を形成している基板」と訂正する。
(請求項8の記載を直接的又は間接的に引用する請求項9~10についても同様に訂正する。)
(5)訂正事項5
ア 明細書の段落【0013】において、基本構成(1)として、
-「ヒーティング装置を構成するヒーティングパイプ又はクーリング装置を構成するクーリングパイプを下方から支えている基台」と記載されているのを、「ヒーティング装置を構成するヒーティングパイプ又はクーリング装置を構成するクーリングパイプの何れか一方のみを下方から支えており、他のヒーティング装置及びクーリング装置を備えていない基台」と訂正(以下「訂正5-1」という。)し、
-「前記テーブルに対し」と記載されているのを、「ヒーティングパイプ又はクーリングパイプと連通していない状態にて当該ヒーティング又は当該クーリングが行われていない前記テーブルに対し」と訂正(以下「訂正5-2」という。)し、
-「前記焼結層を支える基板を載置している」と記載されているのを、「前記焼結層を支える基板を載置しており、脚部につき、矩形状のテーブル及び基台の両側の辺に跨る場合には2個設け、他の場合には3個以上設けており、枠体又は支持杆につき、テーブル及び基台の周囲を囲む状態である場合には1個設け、矩形状のテーブル及び基台の両側の辺に跨る場合には2個設け、他の場合には、3個以上設けている」と訂正(以下「訂正5-3」という。)し、
イ 明細書の段落【0013】において、基本構成(2)として、
-「ヒーティング装置を構成するヒーティングパイプ又はクーリング装置を構成するクーリングパイプを把持している」と記載されているのを、「ヒーティング装置を構成するヒーティングパイプ又はクーリング装置を構成するクーリングパイプの何れか一方のみを把持している」と訂正(以下「訂正5-4」という。)し、
-「前記テーブルに対し」と記載されているのを、「ヒーティングパイプ又はクーリングパイプと連通していない状態にて当該ヒーティング又は当該クーリングが行われていない前記テーブルに対し」と訂正(以下「訂正5-5」という。)する。
(6)訂正事項6
明細書の段落【0018】に、
-「ヒーティングパイプ又はクーリングパイプ80(以下Heating、又はCoolingの頭文字によって「HCパイプ80」と略称する。)を一体となって支持している基台91」と記載されているのを、「ヒーティングパイプ又はクーリングパイプ80(以下Heating、又はCoolingの頭文字によって「HCパイプ80」と略称する。)の何れか一方のみを一体となって支持している基台91」と訂正し、
-「HCパイプ80を基台91によって支持せずに」と記載されているのを、「HCパイプ80の何れか一方のみを基台91によって支持せずに」と訂正する。
(7)訂正事項7
明細書の段落【0019】に、
「図5(a)、(b)のような固着に関与する脚部5及び図6(a)、(b)の固着に関与する枠体又は支持杆7」と記載されているのを、「図5(a)、(b)のような固着に関与する脚部5については、矩形状のテーブル2及び基板91の両側の辺に跨る場合には2個設けることになるが、他の場合には、3個以上設けることを必要としており、図6(a)、(b)の固着に関与する枠体又は支持杆7」と訂正する。
(8)訂正事項8
明細書の段落【0031】に、
「基板3」と記載されているのを、「単一層を形成している基板3」と訂正する。
(9)訂正事項9
明細書の段落【0034】に、
「基板3」と記載されているのを、「単一層を形成している基板3」と訂正する。
(10)一群の請求項
請求項2~4及び9~10は、請求項1を直接又は間接的に引用するものであって、上記訂正事項1によって連動して訂正される関係にあることから、請求項1~4及び9~10は、一群の請求項を構成する。
また、請求項6~10は、請求項5を直接又は間接的に引用するものであって、上記訂正事項2によって連動して訂正される関係にあることから、請求項5~10は、一群の請求項を構成する。
そして、前者の一群の請求項と後者の一群の請求項は、ともに請求項9~10を介して一体として特許請求の範囲の全部を形成するように連関している関係にあるから、結局、請求項1~10は、全体として特許法施行規則45条の4に規定される一群の請求項を形成するといえる。
3 訂正の適否
(1)訂正事項1
訂正事項1に係る訂正は、特許請求の範囲の請求項1についての訂正であって、上記訂正1-1~1-3からなるものである。
ア 訂正の目的
(ア)訂正1-1
訂正1-1は、「基台」について、「ヒーティング装置を構成するヒーティングパイプ又はクーリング装置を構成するクーリングパイプを下方から支えている基台」を「ヒーティング装置を構成するヒーティングパイプ又はクーリング装置を構成するクーリングパイプの何れか一方のみを下方から支えている基台」と限定するとともに、「他のヒーティング装置及びクーリング装置を備えていない」ことを限定するものであるから、「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
(ィ)訂正1-2
訂正1-2は、「前記テーブル」を、「ヒーティングパイプ又はクーリングパイプと連通していない状態にて当該ヒーティング又は当該クーリングが行われていない前記テーブル」に限定するものであるから、「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
(ウ)訂正1-3
訂正1-3は、「脚部」について、「矩形状のテーブル及び基台の両側の辺に跨る場合には2個設け、他の場合には3個以上設けて」いることを具体的に特定し、「枠体又は支持杆」について「テーブル及び基台の周囲を囲む状態である場合には1個設け、矩形状のテーブル及び基台の両側の辺に跨る場合には2個設け、他の場合には、3個以上設けている」ことを具体的に特定することで、「脚部」、「枠体又は支持杆」をそれぞれ限定するものであるから、「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
(エ)小括
上記(ア)~(ウ)からみて、訂正事項1に係る訂正は、特許法134条の2第1項ただし書1号に掲げる事項(「特許請求の範囲の減縮」)を目的とするものに該当する。
イ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「本件特許明細書等」という。)に記載した事項の範囲内であること
(ア)訂正1-1
a 本件特許明細書等の【0013】、【0016】、【0018】~【0019】、【0022】~【0023】、【0031】~【0033】等の記載より、本件特許明細書等における「基本構成(1)」が本件特許の請求項1に係る発明に対応する実施形態を示すものであって、本件特許の図面の【図1】、【図5】~【図6】は、上記「基本構成(1)」を示すものと解される。
b そして、【図1】、【図5】~【図6】の各図において「基台91」が「下方から支えている」対象は、「ヒーティングパイプ又はクーリングパイプ80」の一方のみであることが見て取れる。(この点は、各図において、単一の「ヒーティング源又はクーリング源81」から、単一の「ヒーティングパイプ又はクーリングパイプ80」が延びていることからも明らかである。)
c ここで、訂正1-1における「他のヒーティング装置及びクーリング装置」は、請求項の記載より、「基台」が「下方から支えている」「ヒーティング装置を構成するヒーティングパイプ又はクーリング装置を構成するクーリングパイプ」における「ヒーティング装置及びクーリング装置」以外の「ヒーティング装置及びクーリング装置」を意味していると解するのが自然である。
そして、上記理解を前提とすれば、各図における「基台91」(及び、「基台」の一部とも解し得る「上側板92」)には、「基台91」によって下方から支えられる「ヒーティングパイプ又はクーリングパイプ80」及び「ヒーティング源又はクーリング源81」からなる装置以外のヒーティング装置及びクーリング装置が備えられていないことが見て取れる。
(イ)訂正1-2
本件特許明細書等には、「テーブル2」の加熱や冷却を行うことに関して何ら記載がなく、また、【図5】~【図6】より、「テーブル2」が「ヒーティングパイプ又はクーリングパイプと連通していない状態」であることが見て取れる。
そして、「テーブル2」は、「ヒーティングパイプ又はクーリングパイプ80」によるヒーティング又はクーリング(「当該ヒーティング又は当該クーリング」)が行われていないことは明らかである。(訂正1-2に係る「当該ヒーティング又は当該クーリング」の解釈については、後記「第8」2(1)ア(オ)を参照。)
(ウ)訂正1-3
本件訂正前の本件特許明細書の【0019】には、「前記基本構成(1)において、テーブル2に対し安定した状態にてHC装置8を固着するためには、図5(a)、(b)のような固着に関与する脚部5及び図6(a)、(b)の固着に関与する枠体又は支持杆7については、テーブル2及び基台91の周囲を囲む状態である場合には当然1個設けることになり、矩形状のテーブル2及び基台91の両側の辺に跨る場合には2個設けることになるが、これらのような特別の場合以外には少なくとも3個以上設けることを必要とする。」と記載されている。
一方、訂正1-3に係る訂正は、脚部の個数が1個である態様(テーブル2及び基台91の周囲を囲む状態である態様)を請求項1の範囲から除外するものと理解することができる。
上記訂正内容からみて、訂正1-3が、本件特許明細書等(特に【0019】の上記記載)のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものであることは明らかである。
(エ)小括
上記(ア)~(ウ)によれば、訂正事項1に係る訂正は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内でしたものであり、特許法134条の2第9項で準用する同法126条5項に適合するものである。
ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更する訂正ではないこと
上記ア~イより、訂正事項1に係る訂正前の特許請求の範囲には含まれないこととされた発明が訂正後の特許請求の範囲に含まれることとならないことは明らかであるから、訂正事項1に係る訂正は、特許法134条の2第9項で準用する同法126条6項に適合するものである。
(2)訂正事項2
訂正事項2に係る訂正は、特許請求の範囲の請求項5についての訂正であって、上記訂正2-1~2-2からなるものである。
ア 訂正の目的
(ア)訂正2-1
訂正2-1は、「ヒーティング装置を構成するヒーティングパイプ又はクーリング装置を構成するクーリングパイプを把持している複数本の支柱」を「ヒーティング装置を構成するヒーティングパイプ又はクーリング装置を構成するクーリングパイプの何れか一方のみを把持している複数本の支柱」と限定するものであるから、「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
(イ)訂正2-2
訂正2-2は、「テーブル」を、「ヒーティングパイプ又はクーリングパイプと連通していない状態にて当該ヒーティング又は当該クーリングが行われていない」ものに限定するものである。
(ウ)小括
上記(ア)~(イ)からみて、訂正事項2に係る訂正は、特許法134条の2第1項ただし書1号に掲げる事項(「特許請求の範囲の減縮」)を目的とするものに該当する。
イ 本件特許明細書等に記載した事項の範囲内であること
(ア)訂正2-1
a 本件特許明細書等の【0013】、【0016】、【0024】~【0027】、【0034】~【0035】等の記載より、本件特許明細書等における「基本構成(2)」が本件特許の請求項5に係る発明に対応する実施形態を示すものであって、本件特許の図面の【図2】、【図7】~【図8】は、上記「基本構成(2)」を示すものと解される。
b そして、【図2】、【図7】~【図8】の各図において「複数本の支柱」が「把持している」対象は、「ヒーティングパイプ又はクーリングパイプ80」の一方のみであることが見て取れる。
(イ)訂正2-2
本件特許明細書には、「テーブル2」の加熱や冷却を行うことに関して何ら記載がなく、また、【図7】~【図8】より「テーブル2」が、「ヒーティングパイプ又はクーリングパイプと連通していない状態」であることが理解される。
そして、「テーブル2」が「ヒーティングパイプ又はクーリングパイプ80」によるヒーティング又はクーリング(「当該ヒーティング又は当該クーリング」)が行われていないことは明らかである。
(ウ)小括
上記(ア)~(イ)からみて、訂正事項2に係る訂正は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内でしたものであり、特許法134条の2第9項で準用する同法126条5項に適合するものである。
ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更する訂正ではないこと
上記ア~イより、訂正事項2に係る訂正前の特許請求の範囲には含まれないこととされた発明が訂正後の特許請求の範囲に含まれることとならないことは明らかであるから、訂正事項2に係る訂正は、特許法134条の2第9項で準用する同法126条6項に適合するものである。
(3)訂正事項3
ア 訂正の目的
訂正事項3に係る訂正は、「基板」の形態について、「単一層を形成している」ものであることを具体的に限定するものであるから、特許法134条の2第1項ただし書1号に掲げる事項(特許請求の範囲の減縮)を目的とするものに該当する。
イ 本件特許明細書等に記載した事項の範囲内であること
請求項1の記載を引用する請求項4に係る発明は、本件特許明細書等の【0031】の記載より、本件特許の図面の【図1】に対応するものであると解される。そして、【図1】には「基板3」が単一層を形成していることが示されている。
したがって、訂正事項3に係る訂正は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内でしたものであり、特許法134条の2第9項で準用する同法126条5項に適合するものである。
ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更する訂正ではないこと
上記ア~イより、訂正事項3に係る訂正前の特許請求の範囲には含まれないこととされた発明が訂正後の特許請求の範囲に含まれることとならないことは明らかであるから、訂正事項3に係る訂正は、特許法134条の2第9項で準用する同法126条6項に適合するものである。
(4)訂正事項4
ア 訂正の目的
訂正事項4に係る訂正は、「基板」の形態について、「単一層を形成している」ものであることを具体的に限定するものであるから、特許法134条の2第1項ただし書1号に掲げる事項(特許請求の範囲の減縮)を目的とするものに該当する。
イ 本件特許明細書等に記載した事項の範囲内であること
請求項5の記載を引用する請求項8に係る発明は、本件特許明細書等の【0034】の記載より、本件特許の図面の【図2】に対応するものであると解される。そして、【図2】には「基板3」が単一層を形成していることが示されている。
したがって、訂正事項4に係る訂正は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内でしたものであり、特許法134条の2第9項で準用する同法126条5項に適合するものである。
ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更する訂正ではないこと
上記ア~イより、訂正事項4に係る訂正前の特許請求の範囲には含まれないこととされた発明が訂正後の特許請求の範囲に含まれることとならないことは明らかであるから、訂正事項4に係る訂正は、特許法134条の2第9項で準用する同法126条6項に適合するものである。
(5)訂正事項5
訂正事項5は、上記訂正事項1、2に係る特許請求の範囲の訂正に伴い、特許請求の範囲と整合させるために行う明細書の訂正であって、それ自体の記載内容が他の記載との関係において不合理を生じている記載を正すものであるから、特許法134条の2第1項ただし書3号に掲げる事項(明瞭でない記載の釈明)を目的とするものに該当する。
そして、訂正事項5が本件特許明細書等に記載した事項の範囲内であることは、訂正事項1、2について上記(1)イ、(2)イで説示したとおりである。また、訂正事項5に係る訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
(6)訂正事項6
訂正事項6は、上記訂正1-1、訂正2-1に係る特許請求の範囲の訂正に伴い、特許請求の範囲と整合させるために行う明細書の訂正であって、それ自体の記載内容が他の記載との関係において不合理を生じている記載を正すものであるから、特許法134条の2第1項ただし書3号に掲げる事項(明瞭でない記載の釈明)を目的とするものに該当する。
そして、訂正事項6が本件特許明細書等に記載した事項の範囲内であることは、訂正1-1、2-1について上記(1)イ(ア)、(2)イ(ア)で説示したとおりである。また、訂正事項6に係る訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
(7)訂正事項7
訂正事項7は、上記訂正1-3に係る特許請求の範囲の訂正に伴い、特許請求の範囲と整合させるために行う明細書の訂正であって、それ自体の記載内容が他の記載との関係において不合理を生じている記載を正すものであるから、特許法134条の2第1項ただし書3号に掲げる事項(明瞭でない記載の釈明)を目的とするものに該当する。
そして、訂正事項7が本件特許明細書等に記載した事項の範囲内であることは、訂正1-3について上記(1)イ(ウ)で説示したとおりである。また、訂正事項7に係る訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
(8)訂正事項8
訂正事項8は、上記訂正事項3に係る特許請求の範囲の訂正に伴い、特許請求の範囲と整合させるために行う明細書の訂正であって、それ自体の記載内容が他の記載との関係において不合理を生じている記載を正すものであるから、特許法134条の2第1項ただし書3号に掲げる事項(明瞭でない記載の釈明)を目的とするものに該当する。
そして、訂正事項8が本件特許明細書等に記載した事項の範囲内であることは、訂正事項3について上記(3)イで説示したとおりである。また、訂正事項8に係る訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
(9)訂正事項9
訂正事項9は、上記訂正事項4に係る特許請求の範囲の訂正に伴い、特許請求の範囲と整合させるために行う明細書の訂正であって、それ自体の記載内容が他の記載との関係において不合理を生じている記載を正すものであるから、特許法134条の2第1項ただし書3号に掲げる事項(明瞭でない記載の釈明)を目的とするものに該当する。
そして、訂正事項9が本件特許明細書等に記載した事項の範囲内であることは、訂正事項4について上記(4)イで説示したとおりである。また、訂正事項9に係る訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
(10)独立特許要件
訂正前の請求項1~8には、無効審判の請求がされているから、特許法134条の2第9項で読み替えて準用する同法126条7項の規定は適用されない(いわゆる、独立特許要件は適用されない)。
他方、無効審判の請求がなされていない請求項9~10については、訂正後の請求項1~8を直接又は間接的に引用するものであり、訂正事項1~4に係る訂正に伴って、特許請求の範囲が減縮されるものであるから、独立特許要件が適用される。
しかしながら、後記「第8」のとおり、訂正後の請求項1~8に係る特許を無効とすべき理由は見いだせないから、訂正後の請求項1~8に係る発明にさらに限定が付された発明に該当する訂正後の請求項9~10に係る発明が独立特許要件を満たすことは明らかといえる。
したがって、訂正後の請求項9~10に係る発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであり、請求項9~10についての訂正は、特許法134条の2第9項で読み替えて準用する同法126条7項に規定する要件に適合する。
(11)訂正の適否に関する請求人の主張
請求人は弁駁書(第3~4頁)において、訂正事項1、5、7に関連し、概略、以下の旨を主張している。
(主張)
訂正事項7に係る訂正は、「脚部5がテーブル2及び基台91の周囲を囲む状態である場合には当然1個設ける」趣旨の記載を削除するものである。
訂正事項7は、脚部5の定義を変更するものであり、請求項に記載された事項の解釈に影響を与えるものである。ゆえに、訂正事項7は実質上特許請求の範囲を変更するものとなるから、認められるべきではない。また、訂正事項7によって訂正された段落0019に基づく訂正である、訂正事項1、5も認められるべきではない。
上記主張について検討する。
訂正事項7に係る訂正の目的は、上記(7)で説示したとおり、上記訂正1-3に係る特許請求の範囲の訂正に伴い、特許請求の範囲と整合させるために行う明細書の訂正であって、それ自体の記載内容が他の記載との関係において不合理を生じている記載を正すものといえる。
そして、上記(1)ア(ウ)、(1)イ(ウ)、(1)ウで説示したとおりであり、上記訂正1-3に係る訂正は、脚部の態様の一部を除外するものにすぎず、「脚部」の定義に影響を与えるものとは認められない。
したがって、上記主張はその前提に誤りがあるから、採用できない。
4 訂正請求についての小括
以上のとおり、本件訂正請求に係る訂正は、特許法134条の2第1項ただし書、同条9項において準用する同法126条5項~7項の規定に適合する。
よって、特許第4566286号の明細書及び特許請求の範囲を、本訂正請求書に添付した訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~10〕について訂正することを認める。
第4 本件訂正発明
前記第3のとおり本件訂正請求による請求項1~10の訂正は認められるから、本件特許の請求項1~10に係る発明(以下、請求項の番号に従って「本件訂正発明1」~「本件訂正発明10」という。また、これらを総称して「本件訂正発明」という。)は、令和6年6月10日提出の手続補正書により補正された訂正請求書(同年3月27日提出)に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1~10に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
また、本件特許明細書は、令和6年6月10日付け手続補正書により補正された訂正請求書(同年3月27日提出)に添付された訂正明細書に記載されたとおりのものである。
「【請求項1】
造形タンク内にて上下方向に移動可能なテーブルの上側に位置し、かつ上側に隣接している粉末が焼結によって固化した際、当該粉末と接着し得る素材を少なくとも表面部分にて有している基板及び前記テーブルの上側にて金属又は非金属の粉末を撒布し、かつ当該撒布された粉末の上側表面を平坦化したうえで、最上位に位置している造形対象となる領域に、電磁波又は電子線を所定の厚さの層に沿って照射することによって焼結層を形成した後、当該焼結が行われた端部及び上面に対する切削によって成形を行う工程を順次反復している三次元造形製品の製造装置において、ヒーティング装置を構成するヒーティングパイプ又はクーリング装置を構成するクーリングパイプの何れか一方のみを下方から支えており、他のヒーティング装置及びクーリング装置を備えていない基台に対し、下方において脚部を介してテーブルの上部に固着するか、又は側方においてテーブルの上側に立設した枠体又は支持杆に固着することによって、ヒーティングパイプ又はクーリングパイプと連通していない状態にて当該ヒーティング又は当該クーリングが行われていない前記テーブルに対し上下方向の空隙を形成するか、又は当該空隙を形成したうえで当該形成領域に断熱材を充填した状態にて、前記焼結層を支える基板を載置しており、脚部につき、矩形状のテーブル及び基台の両側の辺に跨る場合には2個設け、他の場合には3個以上設けており、枠体又は支持杆につき、テーブル及び基台の周囲を囲む状態である場合には1個設け、矩形状のテーブル及び基台の両側の辺に跨る場合には2個設け、他の場合には、3個以上設けている三次元造形製品の製造装置。
【請求項2】
基台とテーブルとの上下方向の空隙又は断熱材の充填による間隔が、15mm以上であることを特徴とする請求項1に記載の三次元造形製品の製造装置。
【請求項3】
基台がヒーティングパイプ又はクーリングパイプの上側をも被覆した状態としたうえで、基板を基台の上側に固着していることを特徴とする請求項1、2の何れか一項に記載の三次元造形製品の製造装置。
【請求項4】
基台がヒーティングパイプ又はクーリングパイプにおける高さ方向を基準とした場合の1/2以上の上側部分を被覆していない状態としたうえで、単一層を形成している基板の下側に設けた凹状と前記ヒーティングパイプ又はクーリングパイプの上側部分とが嵌合していることを特徴とする請求項1、2の何れか一項に記載の三次元造形製品の製造装置。
【請求項5】
造形タンク内にて上下方向に移動可能なテーブルの上側に位置し、かつ上側に隣接している粉末が焼結によって固化した際、当該粉末と接着し得る素材を少なくとも表面部分にて有している基板及び前記テーブルの上側にて金属又は非金属の粉末を撒布し、かつ当該撒布された粉末の上側表面を平坦化したうえで、最上位に位置している造形対象となる領域に、電磁波又は電子線を所定の厚さの層に沿って照射することによって焼結層を形成した後、当該焼結が行われた端部及び上面に対する切削によって成形を行う工程を順次反復している三次元造形製品の製造装置において、ヒーティング装置を構成するヒーティングパイプ又はクーリング装置を構成するクーリングパイプの何れか一方のみを把持している複数本の支柱を下方に延設してテーブルの上部に固着するか、又は当該支柱を側方に延設してテーブルから上側方向に立設した枠体又は支持杆に固着することによって、ヒーティングパイプ又はクーリングパイプと連通していない状態にて当該ヒーティング又は当該クーリングが行われていない前記テーブルに対し上下方向の空隙を形成するか、又は当該空隙を形成したうえで当該形成領域に断熱材を充填した状態にて、前記焼結層を支える基板を載置している三次元造形製品の製造装置。
【請求項6】
ヒーティングパイプ又はクーリングパイプの下端部とテーブルとの上下方向の空隙又は断熱材の充填による間隔が15mm以上であることを特徴とする請求項5記載の三次元造形製品の製造装置。
【請求項7】
ヒーティングパイプ又はクーリングパイプの上側部分及び支柱の前記各パイプに対する把持部分の上側部分を被覆する上側板を設けたうえで、基板を当該上側板の上側に固着していることを特徴とする請求項5、6の何れか一項に記載の三次元造形製品の製造装置。
【請求項8】
ヒーティングパイプ又はクーリングパイプの上側部分を被覆しない状態としたうえで、単一層を形成している基板の下側に設けた凹状と、前記ヒーティングパイプ又はクーリングパイプの上側部分とが嵌合していることを特徴とする請求項5、6の何れか一項に記載の三次元造形製品の製造装置。
【請求項9】
テーブルにおいて、順次下降するような傾斜状態を形成し、かつ当該傾斜状態の下端部の位置において、焼結されなかった粉末を排出するための排出穴を設けていることを特徴とする請求項1、2、3、4、5、6、7、8の何れか一項に記載の三次元造形製品の製造装置。
【請求項10】
テーブルにおいて、相向かい合う一方側から、他方側にかけて順次下降するような傾斜状態を形成し、かつ他方側においては、2本の鉛直方向支柱を介して枠体又は支持杆を支持しており、かつ前記2本の鉛直方向支柱の間には、当該2本の鉛直方向支柱の上端又は当該2本の鉛直方向支柱の何れか一方側において回動自在である開閉板を備えていることを特徴とする請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9の何れか一項記載の三次元造形製品の製造装置。」
第5 請求人の主張及び証拠方法
1 請求人の主張の概要(甲第1号証に記載された発明のうち、後記「甲1発明1」を主引用発明とした進歩性の欠如)
(1)無効理由(本件特許発明1~4に対する進歩性欠如)
本件特許発明1~4は、本願出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が、本願出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物である甲1に記載された発明並びに甲2~甲5に記載された技術事項に基づいて容易に発明をすることができたものであるから、請求項1~4に係る特許は、特許法29条2項の規定に違反してされたものであり、同法123条1項2号に該当し、無効とすべきものである。
(2)無効理由(本件特許発明5~8に対する進歩性欠如)
本件特許発明5~8は、本願出願前に当業者が、本願出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物である甲1に記載された発明並びに甲2~甲3に記載された技術事項及び甲6に記載された技術事項に基づいて容易に発明をすることができたものであるから、請求項5~8に係る特許は、特許法29条2項の規定に違反してされたものであり、同法123条1項2号に該当し、無効とすべきものである。
2 証拠方法
請求人は、次の証拠方法を提出している。
以下、甲第1号証~甲第16号証を、それぞれ「甲1」~「甲16」という。
(1)審判請求書とともに提出された証拠方法
甲1:米国特許出願公開第2007/0023977号明細書
甲2:特許第3446618号公報
甲3:特許第3687672号公報
甲4:特開2006-300123号公報
甲5:特開2009-138822号公報
甲6:特開2000-283332号公報
(当合議体注:請求人は、上記に加えて甲1の抄訳文も提出している。)
(2)請求人の口頭審理陳述要領書とともに提出された証拠方法
甲7:阿部 論、外4名、“金属光造形複合加工法の開発”、2007年8月5日発行、精密工学会誌、第73巻8号、第912~916頁
甲8:特開平8-281807号公報
甲9:特開2000-234103号公報
甲10:特開2002-129203号公報
甲11:特開2008-101256号公報
甲12:特開2010-47817号公報
甲13:特開2010-65259号公報
甲14:特開平9-122141号公報
甲15:特開2004-106397号公報
甲16:特開2008-2845号公報
第6 被請求人の主張及び証拠方法
1 被請求人の主張の概要
被請求人は、本件訂正請求を認める、本件無効審判の請求は成り立たない、審判請求の費用は請求人の負担とする、との審決を求めており、請求人の主張する無効理由は何れも理由がない旨の主張をしている。
2 証拠方法
被請求人は、次の証拠方法を提出している。
以下、乙第1号証~乙第10号証を、それぞれ「乙1」~「乙10」という。
(1)答弁書とともに提出された証拠方法
乙1:大きな活字の三省堂漢和辞典第三版、株式会社三省堂、1988年9月5日第十七刷発行、"把持"欄
乙2:広辞苑第七版、株式会社岩波書店、2018年1月12日第七版第一刷発行、"把持"欄、及び、"被覆"欄
(2)被請求人の口頭審理陳述要領書とともに提出された証拠方法
乙3:広辞苑第七版、株式会社岩波書店、2018年1月12日第七版第一刷発行、"介する"欄、"基"欄、「基台」が掲載されていないことを示す頁、"空隙"欄、"固定"欄、"当該"欄、"挟む"欄、"焼鈍し"欄、及び、"焼準し"欄
乙4:日中英特許技術用語辞典、一般財団法人経済産業調査会、2015年7月21日初版第1刷発行、"介在"欄、「基台」が掲載されていないことを示す頁、"挟持"欄、及び、"把持"欄
乙5:特許第4054075号公報
乙6:特許第6564108号公報
乙7:「熱処理知識の泉」、[online]、三洋金属熱錬工業株式会社、インターネット<URL: https://www.sanyoheat.jp/knowledge/prevention/>
乙8:化学辞典第2版、森北出版株式会社、2009年12月16日第2版第1刷発行、"焼なまし"欄、及び、"焼ならし"欄
(3)令和6年3月27日提出の意見書とともに提出された証拠方法
乙9:広辞苑第七版、株式会社岩波書店、2018年1月12日第七版第一刷発行、"充填"欄、及び、"詰める"欄
乙10:日中英特許技術用語辞典、一般財団法人経済産業調査会、2015年7月21日初版第1刷発行、"充填"欄
第7 職権無効理由(甲第1号証に記載された発明のうち、後記「甲1発明2」を主引用発明とした進歩性の欠如)
合議体が職権により通知した無効理由の概要は、以下のとおりである。
無効理由:
本件特許発明1~4は、本願出願前に当業者が、本願出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物である甲1に記載された発明及び慣用技術に基づいて容易に発明をすることができたものであるから、請求項1~4に係る特許は、特許法29条2項の規定に違反してされたものであり、同法123条1項2号に該当し、無効とすべきものである。
第8 当審の判断
1 提出された証拠方法に記載された事項の認定
(1)甲1の記載
甲1には、以下の記載がある。なお、日本語の仮訳は、請求人が提出した抄訳文(一部、請求人が提出した口頭審理陳述要領書によって訂正されている。)に基づき、当合議体で作成したものである。なお、下線は当合議体が発明の認定及び判断等に用いた箇所を示す。以下、その他の証拠方法についても同様である。
ア 「[0001] The invention relates to a substrate sheet for the application of at least one first layer of a build-up material for the production of a three-dimensional molded body in accordance with the preamble of claim 1.
[0002] The present invention deals with generative manufacturing processes in which complex, three-dimensional components are built up in layers from material powders. The application areas for the invention include, in addition to rapid prototyping and the related disciplines of rapid tooling and rapid manufacturing, in particular the production of series tools and functional parts. These include, for example, injection molds with cooling passages close to the surface and also individual parts and small series of functional components for medical technology, mechanical engineering, aircraft and automotive construction.
[0003] The generative manufacturing processes which are of relevance to the present invention include laser fusion, which is known, for example, from DE 196 49 865 C1, in the name of Fraunhofer-Gesellschaft, and laser sintering, which is known, for example, from U.S. Pat. No. 4,863,538, in the name of the University of Texas.
[0004] In the laser-melting process which is known from DE 196 49 865 C1, the components are produced from commercially available, single-component metallic material powders without binders or other additional components. For this purpose, the material powder is in each case applied as a thin layer to a building platform. This powder layer is locally fused using a laser beam in accordance with the desired component geometry. The energy of the laser beam is selected in such a way that the metallic material powder is completely fused over its entire layer thickness at the location of incidence of the laser beam. At the same time, a shielding gas atmosphere is maintained above the zone where the laser beam interacts with the metallic material powder, in order to avoid defects in the component which may be caused, for example, by oxidation. It is known to use a device shown in FIG. 1 of DE 196 49 865 C1 to carry out the process.
[0005] In the laser-sintering process which is known from U.S. Pat. No. 4,863,538, the components are produced from material powders which have been specially developed for laser sintering and which, in addition to the base material, contain one or more additional components. The different powder components differ in particular in terms of the melting point.
[0006] In the case of laser sintering, the material powder is applied to a building platform as a thin layer. This powder layer is locally irradiated with a laser beam in accordance with the geometry data of the component. The low-melting components of the material powder are fused by the laser energy which is introduced, while others remain in the solid state. The layer is secured to the previous layer by means of the fused powder components, which produce a bond on solidification. After a layer has been built up, the building platform is lowered by the thickness of one layer, and a new powder layer is applied from a storage vessel.
[0007] During the production of the molded body, for the stepwise application of the build-up material, a carrier is lowered stepwise in a process chamber. In order to minimize thermal stresses in the molded body to be produced, a substrate sheet arranged on the carrier is heated to a temperature of, for example, up to 500℃.
・・・中略・・・
[0010] Therefore, the invention is based on the object of providing a substrate sheet in which a small difference in temperature between the lower side and the upper side of the substrate sheet is provided and small pull-down forces are required, in particular in the case of substrate sheets having a large surface area, in order to keep the substrate sheet in contact with the carrier.」
(仮訳)
「[0001]
本発明は請求項1の導入部に従い、三次元成形体を生産するための積層材料の少なくとも1つの第1の層を塗布するための基板シートに関する。
[0002]
本発明は複雑な三次元成分が材料粉末から層状に積層される生成製造処理を扱う。本発明の応用分野にはラピッドプロトタイピング、ラピッドツーリング及びラピッドマニュファクチャリングの関連分野に加えて、特に一連のツールや機能部品の生産が含まれる。これらには、例えば表面に近い冷却通路を持つ射出成形金型や、医療技術、機械工学、航空機及び自動車構築用の個別成分や小さな一連の機能的成分が含まれる。
[0003]
本発明に関連する生成製造処理には、例えばフラウンホーファー研究機構(Fraunhofer-Gesellschaft)名義によるドイツ特許第19649865号C1から公知のレーザー融合、及び例えばテキサス大学(University Texas)名による米国特許第4863538号から公知のレーザー焼結が含まれる。
[0004]
ドイツ特許第19649865号C1から公知のレーザー溶融処理では、成分は結合剤やその他の追加成分を含まない市販の単一成分による金属材料粉末から生産される。この目的のために、材料粉末はそれぞれの場合、薄い層として構築プラットフォームに塗布される。この粉末層は所望の成分形状に合わせてレーザービームを利用して局所的に融合される。レーザービームのエネルギーはレーザービームの入射位置で金属材料粉末がその層全体の厚さにわたって完全に融合するように選択される。同時に、レーザービームが金属材料粉末と相互作用する領域の上方には、例えば酸化によって生じる可能性のある成分の欠陥を避けるためにシールドガス大気が維持される。この処理を実行するには、ドイツ特許第19649865号C1の図1に示す装置を使用することが知られている。
[0005]
米国特許第4863538号から公知のレーザー焼結処理では成分はレーザー焼結用に特別に開発された材料粉末から生産されるが、この成分はそのベース材料に加えて1つ以上の追加成分を含む。異なる粉末成分は特に融点が異なる。
[0006]
レーザー焼結の場合、材料粉末は薄い層として構築プラットフォームに塗布される。この粉末層は成分の形状データに従って局所的にレーザービームが照射される。材料粉末の低融点成分は導入されたレーザーエネルギーによって融合し、その他の成分は固体状態のまま残る。その層は融合した粉末成分によって以前の層に固定され、結合凝固を生じる。1つの層が構築された後、構築プラットフォームを1層分の厚さだけ下降させ、そして新しい粉末層を貯蔵容器から塗布する。
[0007]
成形体を生産する間、積層材料を段階的に塗布するため、キャリアを処理室内で段階的に下降する。生産する成形体での熱応力を最小にするために、キャリア上に配置された基板シートは例えば500℃までの温度に加熱される。
・・・(中略)・・・
[0010]
従って、本発明は基板シートの下側と上側の間に小さな温度差を設け、特に大きな表面積を有する基板シートの場合には、基板シートをキャリアに接触させておくために小さな押し下げ力で済む基板シートを提供するという目的に基づく。」
イ 「[0031] FIG. 1 shows a diagrammatic side view of a device according to the invention,
[0032] FIG. 2 shows a diagrammatic sectional illustration of a process chamber in a machining position during the layered build-up of a molded body,
・・・中略・・・
[0037] FIG. 7a shows a diagrammatic plan view of a first embodiment of a carrier with a substrate sheet in a build-up chamber,
[0038] FIG. 7b shows a diagrammatic sectional illustration along the line I-I in FIG. 7a,
[0039] FIG. 7c shows a diagrammatic sectional illustration along the line II-II in FIG. 7a,
[0040] FIG. 7d shows a diagrammatic sectional illustration along the line III-III in FIG. 7a,
[0041] FIG. 7e shows a diagrammatic plan view of a second embodiment of a carrier with a substrate sheet in a build-up chamber,
[0042] FIG. 7f shows a diagrammatic sectional illustration along the line I-I in FIG. 7e.」
(仮訳)
「[0031]
図1は、本発明による装置の概略側面図を示す。
[0032]
図2は、成形体の層状積層中の機械加工位置にあるプロセスチャンバの概略断面図を示す。
・・・(中略)・・・
[0037]
図7aは、積層チャンバ内に基板シートを備えたキャリアの第1の実施形態の概略平面図を示す。
[0038]
図7bは、図7aの線I-Iに沿った概略断面図を示す。
[0039]
図7cは、図7aの線II-IIに沿った概略断面図を示す。
[0040]
図7dは図7aの線III-IIIに沿った概略断面図を示す。
[0041]
図7eは積層室内の基板シートを有するキャリアの第2の実施形態の概略平面図を示す。
[0042]
図7fは図7eの線I-Iに沿った概略断面図を示す。」
ウ 「[0043] FIG. 1 diagrammatically depicts a device 11 according to the invention for the production of a three-dimensional molded body by successive consolidation of layers of a pulverulent build-up material. The production of a molded body by laser fusion is described, for example, in DE 196 49 865 C1. The device 11 comprises a beam source 16, which is arranged in a machine frame 14, in the form of a laser, for example a solid-state laser, which emits a directed beam. This beam is focused via a beam-diverter device 18, for example in the form of one or more actuable mirrors, as a diverted beam onto a working plane in a process chamber 21. The beam-diverter device 18 is arranged such that it can be displaced by motor means along a linear guide 22 between a first process chamber 21 and a further process chamber 24. The beam-diverter device 18 can be moved into a precise position with respect to the process chambers 21, 24 by means of actuating drives. Furthermore, the machine frame 14 provides a control and arithmetic unit 26 for operation of the device 11 and for setting individual parameters for the working processes used to produce the molded bodies.
[0044] The first process chamber 21 and at least one further process chamber 24 are arranged separately from one another and are hermetically isolated from one another.
[0045] FIG. 2 illustrates the process chamber 21, by way of example, fully in cross section. The process chamber 21 comprises a housing 31 and is accessible through an opening 32 which can be closed off by at least one closure element 33. The closure element 33 is preferably designed as a pivotable cover which can be fixed in a closed position by locking elements 34, such as for example toggle lever elements. A seal 36, which is preferably formed as an elastomer seal, is provided at the housing 31, close to the opening 32, to seal off the process chamber 21. The closure element 33 has a region 37 which transmits the electromagnetic radiation of the laser beam. It is preferable to use a window 38 made from glass or quartz glass which has anti-reflection coatings on the top side and the underside. The closure element 33 may preferably be of water-cooled design.
[0046] The process chamber 21 comprises a base surface 41. A build-up chamber 42, in which a carrier 43 is provided and guided such that it can move up and down, opens out into this base surface 41 from below. The carrier 43 comprises at least one base plate 44, which is driven such that it can be moved up and down by means of a lifting rod or lifting spindle 46. For this purpose, a drive 47, for example a toothed belt drive, is provided to move the fixed lifting spindle 46 up and down. The base plate 44 of the carrier 43 is preferably cooled by a fluid medium, which preferably flows through cooling passages in the base plate 44, at least during the layered build-up. An insulation layer 48 made from a mechanically stable, thermally insulating material is arranged between the base plate 44 and the building platform 49 of the carrier 43. This prevents the lifting spindle 46 from being heated by the heating of the building platform 49, with an associated effect on the positioning of the carrier 43.
[0047] An application and leveling device 56, which applies a build-up material 57 into the build-up chamber 42, moves along the base surface 41 of the process chamber 21. A layer is built up on the molded body 52 by selective fusion of the build-up material 57.
[0048] The build-up material 57 preferably comprises metal or ceramic powder. Other materials which are suitable and used for laser fusion and laser sintering are also employed. The individual material powders are selected as a function of the molded body 52 to be produced.」
(仮訳)
「[0043]
図1は、粉末積層材料の層を連続的に固化することによって三次元成形体を製造するための本発明による装置11を概略的に示す。レーザー融着による成形体の製造は、例えばDE19649865C1に記載されている。装置11は、レーザー、例えば固体レーザーの形態で機械フレーム14内に配置され、指向性ビームを放射するビーム源16を備える。このビームは、例えば1つまたは複数の駆動可能なミラーの形態のビームダイバータ装置18を介して、プロセスチャンバ21内の作業面上に方向転換ビームとして集束される。ビームダイバータ装置18は、モータ手段によって、第1のプロセスチャンバ21とさらなるプロセスチャンバ24との間でリニアガイド22に沿って移動することができるように配置される。ビームダイバータ装懺18は、駆動装置を作動させることによって、プロセスチャンバ21,24に対して正確な位置に移動させることができる。さらに、機械フレーム14は、装置11の動作のため、および成形体の製造に使用される作業プロセスの個々のパラメータを設定するための制御および演算ユニット26を提供する。
[0044]
第1のプロセスチャンバ21および少なくとも1つのさらなるプロセスチャンバ24は、互いに分離して配置され、互いに気密に隔離されている。
[0045]
図2は、一例として、プロセスチャンバ21の完全な断面図を示す。プロセスチャンバ21はハウジング31を備え、少なくとも1つの閉鎖要素33によって閉鎖することができる開口部32を通してアクセス可能である。閉鎖要素33は、ロック要素34、例えばトグルレバー要素によって閉鎖位置に固定できる枢動可能なカバーとして設計されることが好ましい。好ましくはエラストマーシールとして形成されるシール36が、プロセスチャンバ21を密閉するために、開口部32に近いハウジング31に設けられる。閉鎖要素33は、レーザービームの電磁放射を透過する領域37を有する。上面および下面に反射防止コーティングを施したガラスまたは石英ガラスで作られた窓38を使用することが好ましい。閉鎖要素33は、水冷設計であることが好ましい。
[0046]
プロセスチャンバ21はベース面41を備える。積層チャンバ42が、このベース面41に下方から開口しており、積層チャンバ42内では、キャリア43が上下に移動可能に設置及び案内されている。キャリア43は、少なくとも1つのベース板44を備え、このベース板44は、リフティングロッドまたは昇降スピンドル46によって上下に移動できるように駆動される。この目的のために、例えば歯付きベルトドライプなどの駆動装置47が固定昇降スピンドル46を上下に移動させるために設けられる。キャリア43のベース板44は、少なくとも層状の積層中に、好ましくはベース板44内の冷却通路を通って流れる流体媒体によって冷却されることが好ましい。機械的に安定した断熱材料から作られた断熱層48が、キャリア43のベース板44と構築プラットフォーム49との間に配置される。これにより、昇降スピンドル46が構築プラットフォーム49の加熱によって加熱されて、キャリア43の位置決めに関連する影態を防止する。
[0047]
積層材料57を積層チャンバ42内に塗布する塗布およびレベリング装置56は、プロセスチャンバ21のベース面41に沿って移動する。積層材料57の選択的融着により、成形体52上に層が積層される。
[0048]
積層材料57は、金属またはセラミック粉を含むことが好ましい。レーザ融合およびレーザ焼結に適していて使用される他の材料も使用される。個々の材料粉末は、製造される成形体52に応じて選択される。」
エ 「[0052] The building platform 49 is composed of a heating plate 136 and a cooling plate 132. Heating elements 87 are illustrated by dashed lines in the heating plate 136. Furthermore, the heating plate 136 comprises a temperature sensor (not shown in more detail). The heating elements 87 and the temperature sensor are connected to supply lines 91, 92, which in turn are routed through the lifting spindle 46 to the building platform 49. A peripheral groove 81, in which one or more sealing rings 82 are fitted, is provided at the external periphery 93 of the building platform 49; the diameter of the sealing ring(s) 82 can be altered slightly and matched to the installation situation and temperature fluctuations. The sealing ring(s) 82 bear(s) against a peripheral wall 83 of the build-up chamber 42. This sealing ring 82 has a surface hardness which is lower than that of the peripheral wall 83. The peripheral wall 83 advantageously has a surface hardness which is greater than the hardness of the build-up material 57 provided for the molded body 52. This makes it possible to ensure that there is no damage to the peripheral wall 83 during prolonged use, and only the sealing ring 82, as a wearing part, has to be replaced at maintenance intervals. It is advantageous for the peripheral wall 83 of the build-up chamber 42 to be surface-coated, for example chromium-plated.
[0053] The base plate 44 comprises a water cooling system which is in operation at least while the molded body 52 is being built up. Cooling liquid is fed to the cooling passages provided in the base plate 44 via a cooling line 86 which is fed to the base plate 44 through the lifting spindle 46. The cooling medium provided is preferably water. The cooling allows the base plate 44 to be set, for example, to a substantially constant temperature of 20℃. to 40℃.
[0054] To receive a molded body 52, the carrier 43 has a substrate plate 51 which is positioned fixedly or releasably on the carrier 43 by means of a retaining means and/or an orientation aid. Before production of a molded body 52 commences, the heating plate 136 is heated to an operating temperature of between 300℃. and 500℃., in order to allow the molded body 52 to be built up with low stresses and without cracks. The temperature sensor (not shown in more detail) records the heating temperature or operating temperature while the molded body 52 is being built up.
[0055] The building platform 49 has cooling passages 101, which preferably extend transversely throughout the entire building platform 49. It is possible to provide one or more cooling passages 101. The position of the cooling passages 101 is, for example, illustrated adjacent to the insulating layer 48 in accordance with the exemplary embodiment. Alternatively, it is possible for the cooling passages 101 to extend not just beneath heating elements 87 but also above and/or between the heating elements 87.
[0056] After completion of the molded body 52, the carrier 43 is lowered from the position illustrated in FIG. 2 into a first position or cooling position 121. This position is illustrated in FIG. 3. Even while the carrier 43 is being lowered, a volumetric flow from the environment can be fed via the filter 126 and the supply line 111 to the build-up chamber 42 and discharged from the build-up chamber 42 via the outlet opening 113 and discharge line 114. The build-up chamber 42 can be cooled as early as at this stage and also while the molded body 52 is being built up.
[0057] The cooling position 121 of the carrier 43 is provided in such a manner that cooling passages 101 of the building platform 49 are aligned with the at least one inlet opening 112 and at least one outlet opening 113 in the peripheral wall 83 of the build-up chamber 42. The volumetric flow flows through the cooling passages 101, thereby cooling at least the building platform 49. The cooling may be effected by a pulsed suction stream. The cooling rate in the molded body 52 can be determined by the pulse/pause ratio. It is preferable to provide for uniform cooling for a predetermined period of time, to minimize the build-up of internal stresses in the molded body 52. The cooling may also be provided by a volumetric flow which continuously increases or decreases in quantitative terms. It is also possible to alternate between an increase and a decrease in order to obtain the desired cooling rate. The cooling rate can be recorded by the temperature sensor provided in the heating plate 136. At the same time, the residual temperature of the molded body 52 can be derived via this temperature sensor. This cooling position 121 is maintained until the molded body 52 has been cooled to a temperature of, for example, less than 50℃. At the same time, the base plate 44 can be cooled further in this cooling position 121. In addition, it is also possible to provide for cooling passages or cooling hoses to be provided adjacent to the peripheral wall 83 of the build-up chamber 42 or in the peripheral wall 83 of the build-up chamber 42, these cooling passages or cooling hoses also contributing to cooling of the build-up chamber 42, the molded body 52 and the carrier 43.」
(仮訳)
「[0052]
構築プラットフォーム49は加熱板136と冷却板132から構成されている。加熱板136には加熱要素87が破線で示されている。更に加熱板136は温度センサー(詳細は図示せず)を備える。加熱要素87及び温度センサーは供給ライン91、供給ライン92に接続され、供給ライン91、供給ライン92は昇降スピンドル46を通って構築プラットフォーム49に繋がる。1つ以上のシールリング82が嵌め込まれる周溝81が、構築プラットフォーム49の外周部93に設けられており、シールリング82の直径は、設置状況や温度変動に対してわずかに変更し適合させることができる。シールリング82は積層チャンバ42の周壁83に接触して位置する。このシールリング82は周壁83の表面硬度よりも低い表面硬度を有する。周壁83は有利には成形体52に対して設けられる積層材料57の硬度よりも大きい表面硬度を有する。これにより長時間の使用中に周壁83に損傷を与えることがなく、摩耗部品としてのシールリング82のみをメンテナンス間隔で交換すればよい。積層チャンバ42の周壁83には表面コーティング、例えばクロムメッキを施すのが有利である。
[0053]
ベース板44は少なくとも成形体52が積層されている間に作動する水冷システムを備える。冷却液は昇降スピンドル46を介してベース板44に供給される冷却ライン86を介してベース板44に設けられた冷却通路に供給される。供給される冷却媒体は好ましくは水である。この冷却によりベース板44は例えば20℃~40℃の実質的に一定の温度に設定できる。
[0054]
成形体52を受け入れるために、キャリア43は、保持手段および/または配向補助手段によってキャリア43上に固定または解放可能に配置される基板シート51を有する。成形体52の製造を開始する前に、成形体52が低い応力で亀裂なく構築されることを可能にするために、加熱板136は300℃~500℃の動作温度に加熱される。温度センサー(詳細は図示せず)は、成形体52が組み立てられている間の加熱温度または動作温度を記録する。
[0055]
構築プラットフォーム49は好ましくは構築プラットフォーム49全体にわたって横方向に延在する冷却通路101を有する。1つ以上の冷却通路101を設けることが可能である。冷却通路101の位置は、例えば例示的な実施形態によれば、断熱層48に隣接して示されている。代わりに冷却通路101は加熱要素87の下方だけでなく、加熱要素87の上方及び/又は複数の加熱要素87の間にも延在することが可能である。
[0056]
成形体52の完成後、キャリア43は図2に図示した位置から最初の位置又は冷却位置121に下降する。この位置は図3に図示されている。キャリア43が下降している間でも、周囲からの体積流をフィルター126及び供給ライン111を介して積層チャンバ42に供給し、出口開口部113及び排出ライン114を介して積層チャンバ42から排出することができる。積層チャンバ42は早ければこの段階で、また成形体52が積層されている間でも、冷却することができる。
[0057]
キャリア43の冷却位置121は、構築プラットフォーム49の冷却通路101が積層チャンバ42の周壁83に設けられた少なくとも1つの入口開口部112及び少なくとも1つの出口開口部113と一列に並ぶように設けられる。体積流は冷却通路101を通って流れ、それによって少なくとも構築プラットフォーム49を冷却する。冷却はパルス状の吸引流によって達成できる。成形体52内の冷却速度はパルス/休止比によって決定することができる。成形体52での内部応力の蓄積を最小にするには、所定の時間、均一な冷却を供給することが好ましい。冷却は量的に連続して増減する体積流量によって供給することもできる。所望の冷却速度を得るために、増加と減少を交互に繰り返すことも可能である。冷却速度は加熱板136に設けられた温度センサーによって記録することができる。同時に成形体52の残留温度は、この温度センサーを介して導き出すことができる。この冷却位置121は成形体52が例えば50℃未満の温度に冷却されるまで維持される。同時にベース板44はこの冷却位置121で更に冷却することができる。更に積層チャンバ42の周壁83に隣接して又は積層チャンバ42の周壁83に冷却通路又は冷却ホースを設けることも可能であり、これらの冷却通路又は冷却ホースも積層チャンバ42、成形体52及びキャリア43の冷却に寄与する。」
オ 「[0070] FIG. 7a illustrates a diagrammatic plan view of a carrier 43 in a build-up chamber 42. The build-up chamber 42 is positioned in the housing 31 of the process chambers 21, 24. By means of the sections illustrated in FIG. 7a, the build-up of the carrier 43 and the reception and arrangement of the substrate sheet 51 on the carrier 43 are described in more detail below with reference to FIGS. 7a to 7d.
[0071] The first preferred embodiment relates to a carrier 43 which is provided for receiving a substrate sheet 51 which is designed to be smaller in diameter in relation to the embodiment below according to FIGS. 7e to 7f. The section according to FIG. 7b shows a carrier 43 with a base plate 44 which is positioned on a lifting spindle 46. For the connection between the base plate 44 and the lifting spindle 46, a clamping element 50 is provided and is positioned between the two elements 44, 46. The base plate 44 has a water cooling system which is in operation at least while the molded body 52 is being built up. This water cooling system is formed, for example, by a cooling water groove 66. This cooling water groove 66 is cut in from the outside and is closed by a closure element 67, for example a sleeve, with a respective sealing element 68 being provided adjacent to the cooling water groove 66 in order to provide a leakproof arrangement of the closure element 67 with respect to the water cooling groove 66. The cooling water groove 66 is, for example, not provided with a solid periphery, but rather is interrupted in the periphery, so that a controlled feeding in of cooling liquid is made possible at one end and a specific discharge of the heated cooling liquid is made possible at the other end of the water cooling groove 66. The cooling allows the base plate 44 to be set during production of the molded body, for example, to a substantially constant temperature of 20℃. to 40℃. Water is preferably provided as the cooling medium, with it being possible for any further cooling liquid, cooling emulsion, cooling oils or the like to be provided.
[0072] An insulating layer 48 is provided between the base plate 44 and a building platform 49. This insulating layer 48 advantageously has low thermal conductivity and a high compressive strength and serves as a thermal separation between the building platform 49 and the base plate 44.
[0073] The building platform 49 comprises a cooling plate 132 and a heating plate 136 which are connected to each other by a holding device 138. A mating element 139 is inserted into a central hole of the cooling plate 132, said mating element having a peripheral collar 141 at the other end in order to position the heating plate 136 with respect to the cooling plate 132. At the lower end of the mating element 139, a releasable securing means 142 is provided, by means of which the mating element 139 or the heating plate 136 is fixed releasably with respect to the cooling plate 132. In the mating element 139, a latching or spring element 143 is inserted into a hole and is fixed in the mating element 139 by means of a fastening screw 144.
[0074] This refinement of the mating element 139 provides a rapidly exchangeable receptacle for a substrate sheet 51, which has, on its lower side, a locking bolt 146 which is inserted into the hole of the mating element 139. In a fitted position according to FIG. 7b, the latching spring element 143, which is designed as an annular spring, latches in place at a peripheral depression of the locking bolt 146 and fixes the substrate sheet 51 in a manner such that it fits snugly with respect to the heating plate 136. A positioning pin 147 can be provided for the correct positioning of and as a means of securing against rotation for the substrate sheet 51 in relation to the heating plate 136.
[0075] The building platform 49 is oriented and correctly positioned for insulation by means of cylindrical pins 70. In addition, passages 151 are provided via which supply lines 91, 92 can be fed through the lifting spindle 46 to the heating plate 136 and can be removed again from the latter. The heating plate 136 comprises heating elements 87, for example tubular heating bodies, which are arranged in the recesses 152. As an alternative, heating wires or further heating media can also be provided and make it possible for the heating plate 136 to be able to heat up to a temperature of, for example, 300℃. to 500℃. while the molded body 52 is being built up, in order to allow the molded body 52 to be built up with low stresses and without cracks.
[0076] At the external periphery 93, adjacent to the cooling plate 132, the heating plate 136 has a seal 82 which is provided in a groove 81. For example, two seals 82 which are backed by annular springs are provided in the upper region. Furthermore, as an alternative other sealing elements 82 can be provided which guide the carrier 43 in the build-up chamber 42. A stripping element 97 which is preferably formed from a felt ring is provided adjacent to or immediately below an upper end surface 96 of the heating plate 136. This refinement makes it possible for a leakproof arrangement to be provided in spite of the different expansions of the heating plate 136 and of the peripheral wall 83 of the build-up chamber 42. In addition, a penetration of the build-up material 57 between the carrier 43 and the peripheral wall 83 of the build-up chamber 42 can be prevented by the stripping element or elements 97.
[0077] Cooling passages 101 which pass completely through the cooling plate 132 are provided in the cooling plate 132. For example, two cooling passages 101 with a square or rectangular cross section are provided which run parallel to each other and are also provided crosswise with respect to each other. The configuration and arrangement of the cooling passages 101 is as desired. It is possible for a plurality of cooling passages 101 to be provided which can be arranged crosswise with respect to one another. It is likewise possible for one or more cooling passages 101 to be provided which are distributed over the periphery in uniform or nonuniform angular sections and form a type of spoke-like configuration. The number, geometry, size of the cross section and the flow path of the cooling passages 101 is matched to the cooling system used and its connections which are provided on the build-up chamber 42.
[0078] FIG. 7c illustrates a diagrammatic sectional illustration along the line II-II in FIG. 7a. This sectional illustration reveals, by way of example, a means of securing by means of a screw connection 156 of the cooling plate 132 with the interconnection of the insulating layer 48. A securing element 160 receives a length compensation element 166, so that changes in length caused by changes in temperature and therefore stresses which occur can be compensated for. The layered build-up of the carrier 43, which, according to this embodiment, comprises a base plate 44, an insulating layer 48, a cooling plate 132 and a heating plate 136, is thus constructed and positioned with respect to one another by means of releasable screw connections. A positionally correct orientation takes place by, for example, the cylindrical pins 70 (FIG. 7b). The cylindrical pins 70 pass completely through the insulating layer 48, so that the cooling plate 132 has a certain orientation with respect to the base plate 44.
[0079] FIG. 7d illustrates a further diagrammatic sectional illustration along the line III-III according to FIG. 7a. This sectional illustration reveals the arrangement of temperature sensors 88 which are positioned within the cooling plate 132 next to the heating plate 136 or in the transition region. These temperature sensors 88 detect the heating temperature or operating temperature while the molded body 52 is being built up. These temperature sensors 88 can also detect a cooling of the heating plate 136 by the cooling of the cooling plate 132 via the cooling passages 101. The cooling speed or the cooling rate for the completed molded body 52 can be determined and controlled therefrom. The arrangement of the temperature sensors 88 is only by way of example. Their supply lines 92 are fed in and removed via the lifting spindle 46 analogously to the supply lines 91 of the heating elements 87. A connection 157 for the temperature sensors is illustrated in FIG. 7c.」
(仮訳)
「[0070]
図7aは、積層チャンバ42内のキャリア43の概略平面図を示す。積層チャンバ42は、プロセスチャンバ21,24のハウジング31内に配置される。図7aで示す部位によって、キャリア43の構築、およびキャリア43上での基板シート51の受容および配置については、図7a~図7dを参照して以下でより詳細に説明する。
[0071]
第1の好ましい実施形態は、図7e~図7fによる以下の実施形態に比べて直径が小さくなるように設計された基板シート51を受け入れるために設けられたキャリア43に関する。図7bによる断面は、昇降スピンドル46上に配置されたベース板44を備えたキャリア43を示す。ベース板44と昇降スピンドル46との間の接続のために、クランプ要素50が設けられ、2つの要素44,46の間に配置される。ベース板44は、少なくとも成形体52が組み立てられている間に作動する水冷システムを有する。この水冷システムは、例えば、水冷溝66によって形成される。この水冷溝66は、外側から切り込まれ、それぞれのシール要素68が設けられた閉鎖要素67、例えばスリーブによって閉じられる。シール要素68は、水冷溝66に対して閉鎖要素67の漏れ防止配置を提供するために、水冷溝66に隣接している。例えば、水冷溝66には、中実の周縁が設けられておらず、むしろ、周縁が遮断されている。その結果、冷却液の制御された供給が水冷溝66の一端で可能になり、加熱された冷却液の特定の排出が水冷溝66の他端で可能になる。この冷却により、成形体の製造中に、ベース板44が例えば20℃~40℃の実質的に一定の温度に設定される。冷却媒体として水が提供されることが好ましく、さらなる冷却液、冷却エマルジョン、冷却油を使用することも可能である。
[0072]
断熱層48は、ベース板44と構築プラットフォーム49との間に設けられる。この断熱層48は、有利なことに、低い熱伝導率および高い圧縮強度を有し、構築プラットフォーム49とベース板44との間の熱的分離として機能する。
[0073]
構築プラットフォーム49は、保持装置138によって互いに接続された冷却板132および加熱板136を備える。嵌合要素139は、冷却板132の中心穴に挿入され、前記嵌合要素は周囲カラー141を有する。嵌合要素139の下端には、嵌合要素139または加熱板136を冷却板132に対して解放可能に固定するための解放可能な固定手段142が設けられている。嵌合要素139では、ラッチまたはばね要素143が穴に挿入され、締結ねじ144によって嵌合要素139に固定される。
[0074]
嵌合要素139のこの改良により、基板シート51用の迅速に交換可能なレセプタクルが提供され、基板シート51の下側に嵌合要素139の穴に挿入されるロックボルト146が設けられる。図7bに示すように、環状ばねとして設計されたラッチばね要素143は、ロックボルト146の周縁凹部で所定の位置にラッチし、加熱板136に対してぴったりと適合するような方法で基板シート51を固定する。位置決めピン147は、加熱板136に対して基板シート51を正確に位置決めし、回転しないように固定する手段として設けることができる。
[0075]
構築プラットフォーム49は、円筒形のピン70によって断熱のために向きが決められ、正確に位置決めされる。さらに、通路151が設けられており、通路151を通じて、供給ライン91、92が昇降スピンドル46を通って加熱板136に供給され、加熱板136から再び取り外されることができるようになっている。加熱板136は、凹部152内に配置された加熱要素87、例えば管状加熱体を備える。代替として、電熱線またはさらなる加熱媒体を設けることもでき、これにより、加熱板136を、成形体52を組み立てる間、例えば300℃から500℃の温度まで加熱できるようにすることができる。これによって、成形体52を低い応力でクラックなく組み立てることが可能になる。
[0076]
加熱板136は、冷却板132に隣接する外周93に、溝81内に設けられたシール82を有する。例えば、環状バネによって支持された2つのシール82が上部領域に設けられる。さらに、代替として、積層チャンバ42内でキャリア43を案内する他のシール要素82を設けることができる。好ましくはフェルトリングから形成されるストリッピング要素97が、加熱板136の上端面96に隣接して、またはその直下に設けられる。この改良により、加熱板136と積層チャンバ42の周壁83の膨張が異なるにもかかわらず、漏れのない構成を提供することが可能になる。さらに、キャリア43と積層チャンバ42の周壁83との間への積層材料57の侵入は、ストリッピング要素97によって防止することができる。
[0077]
冷却板132には、冷却板132を完全に貫通する冷却通路101が設けられている。例えば、正方形または長方形の断面を有する冷却通路101が2本、互いに平行に設けられ、さらに互いに交差するようにも設けられている。冷却通路101の形状や配置は任意である。互いに交差して配置できる複数の冷却通路101を設けることが可能である。同様に、均一または不均一な角度部分で周囲に分布し、一種のスポーク状構成を形成する1つまたは複数の冷却通路101を設けることも可能である。冷却通路101の数、形状、断面のサイズおよび流路は、使用される冷却システムおよび積層チャンバ42上に設けられるその接続に適合する。
[0078]
図7cは、図7aの線II-IIに沿った概略断面図を示す。この断面図は、一例として、冷却板132をねじ接続部156によって断熱層48の相互接続部に固定する手段を示している。固定要素160は長さ補償要素166を受け入れるので、温度変化によって生じる長さの変化と、これによって生じる応力が補償可能となる。この実施形態によれば、ベース板44、断熱層48、冷却板132、および加熱板136を備えるキャリア43の層状積層物は、取り外し可能なネジ接続によって構築され、相互に位置決めされる。位置的に正しい配向は、例えば円筒形のピン70(図7b)によって行われる。円筒形のピン70は断熱層48を完全に貫通しており、その結果、冷却板132はベース板44に対して一定の配向を有する。
[0079]
図7dは図7aによる線III-IIIに沿った更なる概略断面図を示す。この断面図は加熱板136に隣接する冷却板132の内部、又は遷移領域に配置された温度センサー88の配置を明らかにしている。温度センサー群88は成形体52が積層されている間の加熱温度又は動作温度を検出する。温度センサー群88は冷却通路101を介した冷却板132の冷却による加熱板136の冷却も検出することができる。これにより完成する成形体52の冷却速度や冷却率を決定し、制御することができる。温度センサー群88の配置は例示しているに過ぎない。その供給ライン92は加熱要素87の供給ライン91と同様に昇降スピンドル46を介して供給され、また除去される。温度センサーの接続部157が図7cに示される。」
カ 「[0080] FIG. 7e illustrates a schematic plan view of a carrier 43 analogously to FIG. 7a. The sectional illustration illustrated in FIG. 7f shows an alternative embodiment according to the invention to a carrier 43 according to FIGS. 7a to 7e, with the embodiment of a carrier 43 that is illustrated in FIGS. 7e to 7f being particularly suitable for receiving substrate sheets 51 having a relatively large diameter. In the description below of FIG. 7f, the differing configurations or alternative configurations are explained in more detail. With regard to the structurally identical or in principle structurally identical elements and parts according to the first embodiment, reference is made to the preceding figures.
[0081] FIG. 7f illustrates a diagrammatic sectional illustration along the line I-I according to FIG. 7e. The base plate 44 has a downwardly open cooling water groove 66 which is closed by a closure element 67, for example a disk, by means of a screw connection. The cooling medium is fed in and removed via cooling lines 86 (illustrated diagrammatically). An insulating layer 48 which has a clearance 131 is provided above the base plate 44. An aperture 151 is provided in the insulating layer 48 in order to feed in and remove the supply lines 91 for the heating elements 87.
[0082] In contrast to the first embodiment, the substrate sheet 51 is held down or fixed, preferably screwed, in the outer edge region by means of securing elements 161. This ensures that curvatures of the substrate sheet 51 are prevented. Reproducibility requirements are very exacting and lie, for example, in a region of less than 0.05 mm.
[0083] The substrate sheet 51 is positioned with respect to the heating plate 136 via a positioning pin 147 and a central mating element 139 and is positioned in said heating plate via the latching or spring element 143. Securing elements 161 are provided in the outer edge region and hold down the substrate sheet 51, with the result that the latter bears on the heating plate 136 in a flush or extensive manner. At an end facing the substrate sheet 51, the securing elements 161 have an external thread 162 and a hexagon socket receptacle 163. The securing elements 161 are held in a spring-mounted manner. After the substrate sheet 51 is placed on, the hexagon socket receptacle 163 is accessible via the hole 164, so that following this a screw connection can take place, as a result of which the substrate sheet 51 is held down with respect to the heating plate 136. This securing possibility is only by way of example. Further refinement possibilities for allowing a rapid installation and removal of the substrate sheet 51 permitting the substrate sheet 51 to bear in a planar manner with respect to the heating plate 136 during operation are likewise conceivable.
[0084] The cooling plate 132 is fixed with respect to the insulating layer 48 and with respect to the base plate 44 by a securing element 160 via a length compensation element 166. A cup spring assembly or the like can be provided as length compensation element 166 in order to allow a compensation due to the thermal change in length.」
(仮訳)
「[0080]
図7eは図7aに類似するキャリア43の概略平面図を示す。図7fに図示された断面図は、図7a~図7eによるキャリア43に対する本発明による代替の実施形態を示し、図7e~図7fに図示されるキャリア43の実施形態は、比較的大きな直径を有する基板シート51を受けるのに特に適している。図7fの以下の説明では、異なる構成又は代替構成についてより詳細に説明する。第1の実施形態による構造的に同一又は原理的に構造的に同一の要素及び部品に関しては、先の図を参照されたい。
[0081]
図7fは図7eによる線I-Iに沿った概略断面図である。ベース板44は下方に開き、閉鎖要素67、例えばディスクによってネジ接続により閉鎖されている水冷溝66を有する。冷却媒体は冷却ライン86(概略図示)を介して供給及び除去される。隙間131を有する断熱層48がベース板44上に設けられている。開孔151が加熱要素87向けに供給ライン91を供給また除去するために、断熱層48に設けられている。
[0082]
第1の実施形態とは対照的に、基板シート51は固定要素161によって外縁領域で押さえ付けられ、又は固定され、好ましくはネジ止めされる。これにより基板シート51の湾曲が確実に防止される。再現性の要件は非常に厳しく、例えば0.05mm以下の領域にある。
[0083]
基板シート51は位置決めピン147及び中央の嵌合要素139を介して加熱板136に対して位置決めされ、ラッチ要素又はバネ要素143を介して前記加熱板内に位置決めされる。固定要素161は外縁領域に設けられ、基板シート51を押さえ付け、その結果基板シート51は加熱板136に一斉に又は広範囲に担持する。基板シート51に面する端部において、固定要素161は外ネジ162及び六角ソケット受け163を有する。固定要素161はバネで取り付けられた状態で保持される。基板シート51が載置された後、六角ソケット受け163は孔164を介してアクセス可能であり、これに続いてネジ接続が行われ、その結果基板シート51は加熱板136に対して押さえ付けられる。この固定の可能性は例示に過ぎない。動作中に基板シート51
が加熱板136に対して平面的に支えられるよう基板シート51を迅速に取り付けまた取り外しできるような更なる改良の可能性も、同様に考えられる。
[0084]
冷却板132は長さ補償要素166を介して固定要素160によって断熱層48に対して、またベース板44に対して固定される。長さの熱変化による補正を可能にするため、長さ補正要素166としてカップバネアセンブリなどを設けることができる。」
キ 「図1
[図:0001422071000001.jpg]
図2
[図:0001422071000002.jpg]
」
ク 「図7a
[図:0001422071000003.jpg]
図7b
[図:0001422071000004.jpg]
図7c
[図:0001422071000005.jpg]
図7d
[図:0001422071000006.jpg]
図7e
[図:0001422071000007.jpg]
図7f
[図:0001422071000008.jpg]
」
(当合議体注:上記記載では、「キャリア43」及び「担体43」、「基板シート51」及び「基板プレート51」、「加熱要素87」及び「発熱要素87」、「構築プラットフォーム49」及び「構築用基盤49」、「冷却通路101」及び「冷却流路101」は、いずれも用語を前者に統一した。)
(2)甲1に記載された発明
ア 甲1発明1の認定
上記(1)における「第1の実施形態」に関する記載(特に[0070]~[0079]及び[図7a]~[図7d])によれば、甲1には、上記「第1の実施形態」について、以下の技術事項が開示されていると認められる。
(ア)甲1の[0043]、[0046]、[0070]、[0071]、[0077]、[0078]、[図1]、[図2]及び[図7a]~[図7c]の記載によれば、「装置11」は、「水冷溝66」が「形成される」「ベース板44」の上側に、「断熱材料で作られた」「断熱層48」、「完全に貫通する冷却通路101が設けられている」「冷却板132」、「管状加熱体である加熱要素87」、「加熱板136」及び「基板シート51」が順次配置される構成を備えたものである、と理解することができる。
(イ)[0043]、[0047]、[0048]及び[図2]の記載によれば、「塗布およびレベリング装置56」は、「金属またはセラミック粉を含む」「積層材料57を積層チャンバ42内に塗布」し、かつ「ベース面41に沿って移動する」という機能を有することが記載されており、また、積層材料57が積層チャンバ42内の基板シート51上に塗布されることは技術的にみて明らかである。
(ウ)[0003]、[0005]、[0006]、[0043]、[図2]及び上記(イ)の認定事項によれば、「装置11」は、「ビーム源16」から放射されたレーザーにより、塗布された積層材料57を融合して結合凝固させて1つの層を構築する機能を有している、と理解することができる。
(エ)[0003]、[0005]、[0006]、[0043]、[図2]及び上記(イ)及び(ウ)の認定事項によれば、「装置11」は、(イ)及び(ウ)を行い1つの層が構築された後、構築プラットフォームを1層分の厚さだけ下降させ、そして新しい粉末層を塗布することで、三次元成形体を製造する機能を有している、と理解することができる。
(オ)[0052]、[0075]、[0079]には、「装置11」は、「昇降スピンドル46を通って構築プラットフォーム49に繋がる」「供給ライン91」と「接続され」た「管状加熱体」である「加熱要素87」を備え、「加熱板136は、凹部152内に配置された加熱要素87」「を備える」ことが記載され、[図7b]~[図7d]の記載によれば、「管状加熱体」である「加熱要素87」が、下方において冷却板132から支持された構成を備えたものである、と理解することができる。
(カ)[0078]、[図7b]及び[図7c]の記載によれば、「固定要素160」は、「ベース板44、断熱層48、冷却板132、および加熱板136を備えるキャリア43の層状積層物」を、相互に位置決めするものである。また、[図7c]の記載から、「固定要素160」が、冷却板132に設けられた孔の底部を貫通するものであって、冷却板132に対し、上方側から長さ補償要素166を受け入れることにより、固定手段を構成することが理解される。
そうすると、「装置11」は、「冷却板132」が「固定要素160」を介して「ベース板44」に固定される構成を有するものである、と理解することができる。
(キ)[0075]、[0078]及び[図7b]の記載によれば、「ピン70」は、「断熱層48を完全に貫通」しており、その結果、「冷却板132」を「ベース板44に対して一定の配向を有する」ように「位置決め」するものである。また、[図7b]から、「ピン70」は「冷却板132」の下部および「ベース板44」の上部に位置していることが見て取れる。
そうすると、「装置11」は、「冷却板132」が下方において「ピン70」を介して「ベース板44」の上部に位置決めされる構成を有するものである、と理解することができる。
(ク)[0053]、[0071]には、「ベース板44」は、「加熱要素87」を加熱させるための「供給ライン91」とは異なる「冷却ライン86を介してベース板44に設けられた」「水冷溝66」に「冷却液」を「供給」することで、「成形体の製造中に、ベース板44は例えば20℃~40℃の実質的に一定の温度に設定できる」ことが記載されていることから、ベース板44は、冷却機能を有していると認められる。そして、[図2]、[図7b]~[図7c]の記載より、「ベース板44」は上記(オ)で記載した「加熱要素87」が配設されていないことから、「ベース板44」は「加熱要素87」による直接的な加熱は行われていない、と理解することができる。
(ケ)[0072]、[0084]、[図7b]~[図7c]及び上記(カ)によれば、「装置11」は、「固定要素160」によって、「ベース板44」と、構築プラットフォーム49の下側に位置する「冷却板132」との間に、「断熱層48」及び「断熱層48」の下にある「通路151」が形成される構成を備えていると認められる。
(コ)[0073]、[0074]には、「装置11」は、「基板シート51」が「加熱板136に対して」「固定」されることが記載されており、[図7b]~[図7d]によれば、「加熱板136」は「管状加熱体である加熱要素87」の上側を被覆する構成を備えていると認められる。
上記(ア)~(コ)並びに甲1の[0043]及び[0046]等の記載を総合すれば、甲1には、第1の実施形態として、以下の「三次元成形体を製造するための装置11」の発明(以下「甲1発明1」という。)が記載されていると認められる。なお、甲1発明1の各構成に付された丸括弧内の記載は、甲1発明1を認定した根拠箇所を示す。以下、同様である。
「粉末積層材料の層を連続的に固化することによって三次元成形体を製造するための装置11であって([0043])、
積層チャンバ42内では、キャリア43が上下に移動可能に設置及び案内され、キャリア43は水冷溝66が形成されるベース板44を備え、水冷溝66は積層工程の間、ベース板44の冷却を目的とした流体媒体が流れるものであり、ベース板44は上下に移動できるように駆動される構成と([0046])、
ベース板44の上側に断熱材料で作られた断熱層48、完全に貫通する冷却通路101が設けられている冷却板132、管状加熱体である加熱要素87、加熱板136及び基板シート51が順次配置される構成と(上記(ア))、
塗布およびレベリング装置56が金属またはセラミック粉を含む積層材料57を基板シート51に塗布し、かつ、ベース面41に沿って移動し、ビーム源16から放射されたレーザーにより、塗布された積層材料57を融合して結合凝固させて1つの層を構築し(上記(イ)及び(ウ))、1層分の厚さだけ下降させ、そして新しい粉末層を塗布することで三次元成形体を製造する機能を有する装置11において(上記(エ))、
上記装置11は、
昇降スピンドル46を通って構築プラットフォーム49に繋がる供給ライン91と接続された管状加熱体である加熱要素87を備え、管状加熱体である加熱要素87が加熱板136の凹部152内に配置され、かつ、下方において冷却板132から支持された構成と(上記(オ))、
冷却板132が、固定要素160を介してベース板44に固定される構成であって、上記固定要素160は、ベース板44、断熱層48、冷却板132、および加熱板136を備えるキャリア43の層状積層物を相互に位置決めする構成であり、上記固定要素160は、冷却板132に設けられた孔の底部を貫通するものであって、冷却板132に対し、上方側から長さ補償要素166を受け入れることにより、固定手段を構成するものである構成と(上記(カ))、
冷却板132が、下方においてピン70を介してベース板44の上部に位置決めされる構成であって、上記ピン70は、断熱層48を完全に貫通しており、その結果、冷却板132をベース板44に対して一定の配向を有するように位置決めするものである構成と(上記(キ))、
固定要素160によって、管状加熱体である加熱要素87による直接的な加熱は行われていない、冷却機能を有しているベース板44と構築プラットフォーム49の下側に位置する冷却板132との間に、断熱層48及び断熱層48の下にある通路151が形成される構成と(上記(ク)及び(ケ))、
基板シート51が加熱板136に対して固定され、加熱板136は管状加熱体である加熱要素87の上側を被覆する構成と(上記(コ))、
を有する三次元成形体を製造するための装置11。」
イ 甲1発明2の認定
上記(1)における「第2の実施形態」に関する記載(特に[0080]~[0084]、及び[図7e]~[図7f])によれば、甲1には、上記「第2の実施形態」について、以下の技術事項が開示されていると認められる。
(ア)上記ア(ア)~(オ)、(ク)、(コ)で説示した技術事項については、甲1発明1(第1の実施形態)の場合と同様である。
(イ)甲1の[0052]、[0072]、[0080]~[0081]、[0084]、[図7e]及び[図7f]の記載によれば、「隙間131を有する断熱層48」は「ベース板44と構築プラットフォーム49との間に設けられ」ており、「構築プラットフォーム49」は「加熱板136と冷却板132から構成されている」ことから、「隙間131を有する断熱層48」は、「ベース板44」と「冷却板132」「との間に設けられ」ている、と理解することができる。また、[図7f]から、「断熱層48」が冷却板132の下方において冷却板132を支持していることは明らかである。
(ウ)[0080]には、「図7fの以下の説明では、異なる構成又は代替構成についてより詳細に説明する。第1の実施形態による構造的に同一又は原理的に構造的に同一の要素及び部品に関しては、先の図を参照されたい。」と記載され、「以下の説明」に該当する[0084]には、「冷却板132は長さ補償要素166を介して固定要素160によって断熱層48に対して、またベース板44に対して固定される。」と記載されていることから、冷却板132及び断熱層48は固定要素160によりベース板44に固定されている、と理解することができる。(なお、甲1の[図7f]には、[図7c]に記載された固定要素160が記載されていないが、[図7f]は[図7e]の中央の線I-Iに沿った断面図であり、[図7c]は[図7a]の斜めの線II-IIに沿った断面図であって断面が異なるために固定要素160が図示されていないものと理解される。)
そして、「装置11」は、「ベース板44」と、(構築プラットフォーム49の下側に位置する)「冷却板132」との間に、「断熱層48」を配置して固定することにより、「断熱層48」の下にある「隙間131」が形成される構成(機能)を備えていると認められる。
(エ)甲1の[0046]、[0072]等の記載より、「断熱層48」は、「断熱材料から作られた」ものであって、構築プラットフォーム49とベース板44の間の熱的分離として機能するものである。ここで、「断熱層48」の上記断熱能や[図7f]で示される断熱層48の形態に鑑みれば、「断熱層48」は、「冷却板132」の下面の周縁領域を囲む形態で設置されているものと推認される。
上記(ア)~(エ)並びに甲1の[0043]及び[0046]等の記載を総合すれば、甲1には、第2の実施形態として、以下の「三次元成形体を製造するための装置11」の発明(以下「甲1発明2」という。)が記載されていると認められる。
「粉末積層材料の層を連続的に固化することによって三次元成形体を製造するための装置11であって([0043])、
積層チャンバ42内では、キャリア43が上下に移動可能に設置及び案内され、キャリア43は水冷溝66が形成されるベース板44を備え、水冷溝66は積層工程の間、ベース板44の冷却を目的とした流体媒体が流れるものであり、ベース板44は上下に移動できるように駆動される構成と([0046])、
ベース板44の上側に断熱材料で作られた断熱層48、完全に貫通する冷却通路101が設けられている冷却板132、管状加熱体である加熱要素87、加熱板136及び基板シート51が順次配置される構成と、
塗布およびレベリング装置56が金属またはセラミック粉を含む積層材料57を基板シート51に塗布し、かつ、ベース面41に沿って移動し、ビーム源16から放射されたレーザーにより、塗布された積層材料57を融合して結合凝固させて1つの層を構築し、1層分の厚さだけ下降させ、そして新しい粉末層を塗布することで三次元成形体を製造する機能を有する装置11において、
上記装置11は、
昇降スピンドル46を通って構築プラットフォーム49に繋がる供給ライン91と接続された管状加熱体である加熱要素87を備え、管状加熱体である加熱要素87が加熱板136の凹部152内に配置され、かつ、下方において冷却板132から支持された構成と、
断熱層48が冷却板132の下方において冷却板132を支持する構成であって、断熱層48は、管状加熱体である加熱要素87による直接的な加熱は行われていない、冷却機能を有しているベース板44と構築プラットフォーム49の下側に位置する冷却板132との間に設けられる構成であって、断熱層48は、冷却板132の下面の周縁領域を囲む形態で設置されている構成と(上記(イ)~(エ))、
冷却板132及び断熱層48は固定要素160によりベース板44に固定されている構成と(上記(ウ))、
ベース板44と冷却板132との間に、断熱層48を配置して固定することにより、断熱層48の下にある隙間131が形成される構成と(上記(ウ))、
基板シート51が加熱板136に対して固定され、加熱板136は管状加熱体である加熱要素87の上側を被覆する構成と、
を有する三次元成形体を製造するための装置11。」
(3)その他の証拠に記載された技術事項(周知技術)
ア 甲2及び甲3に記載された事項
(ア)甲2に記載された事項
甲2には、以下の記載がある。
a 「【請求項1】
金属粉末の層の所定箇所にレーザビームを照射して焼結させることによって焼結層を形成し、この焼結層の上に金属粉末の層を被覆すると共にこの金属粉末の所定箇所にレーザビームを照射して焼結させることによって下の焼結層と一体になった焼結層を形成し、これを繰り返すことによって複数の焼結層が積層一体化された金属粉末焼結部品を作製するにあたって、金属粉末焼結部品の作製中に所定数の焼結層を形成した毎に金属粉末焼結部品の表面をなす各焼結層の端縁の突出する段差部分を除去することを特徴とする金属粉末焼結部品の表面仕上げ方法。」
b 「【0014】
各焼結層6a,6b,6c…の端縁の段差部分20を除去する表面仕上げ加工手段としては、図5のようにエンドミルなどの加工手段15を用いて切削したり、研磨したり、ブラスト処理したりする機械的手段や、レーザビームなどを照射する加熱による熱的手段や、化学研磨などの化学的方法等、任意の手段を採用することができる。
・・・中略・・・
【0053】
上記のように焼結層6a,6b,6c・・・を一層形成する毎に、あるいは複数層形成する毎に・・・中略・・・加工手段15で仕上げ加をするようにすることができる。」
(イ)甲3に記載された事項
甲3には、以下の記載がある。
a 「【請求項1】
金属粉末材料の層の所定箇所に光ビームを照射することで該当個所の粉末を焼結させて焼結層を形成し、この焼結層の上に粉末材料の新たな層を被覆して所定箇所に光ビームを照射することで該当個所の粉末を焼結させて下層の焼結層と一体になった新たな焼結層を形成することを繰り返すとともに、いずれかの焼結層の形成後にそれまでに作成した焼結層の積層物の外面を切削加工する切削加工工程を挿入するにあたり、積層物の側面に対する1回の切削加工工程において、切削加工対象位置を変えた少なくとも2度の切削加工を積層物に対して行うとともに、1回の切削加工工程中の複数回の切削加工のうち、最初の切削加工よりも後の切削加工の切削対象位置をそれまでに作成した焼結層の上面から見て深い位置にずらすことを特徴とする粉末焼結部品の表面仕上げ方法。」
b 「【0017】
そして、上記粉末層10を形成しては光ビームを照射して焼結層11を形成するということをを繰り返していくのであるが、焼結層11の積層厚みがたとえば切削除去手段4におけるミーリングヘッド41の切削工具長などから求めた所要の値になれば(m層の積層が終われば)、いったん切削除去手段4を作動させてそれまでに造形した粉末焼結部品の表面部(側面を含む)を切削する。」
(ウ)甲2及び甲3に記載された事項から把握される周知技術
上記(ア)及び(イ)によれば、甲2及び甲3に記載された「粉末焼結部品の表面仕上げ方法」における「表面」は、粉末焼結部品の端部及び上面を含む表面全域を切削の対象としてよいと理解される。
そうすると、甲2及び甲3の上記各記載から、以下の技術事項が、本件特許の出願当時における周知技術であったと認められる。
「粉末焼結部品の表面仕上げ方法において、所定数の焼結層を形成する度に、当該焼結が行われた端部及び上面に対して切削工程を行うこと」
イ 甲4に記載された事項
甲4には、以下の記載がある。
「【0038】
上記表面材2及び裏面材3を、上記枠材9及び10を介して釘及びビスにより固定し、縦460mm×横460mmの開口部8を有する断熱パネル1を得た。なお、あらかじめ連続気泡の硬質ウレタンフォームから成るガス抜き材15を、すべての空気抜き孔13の内部側に空気抜き孔13を覆いかつ孔13の回りの裏面材にそれぞれ両面テープで接着させた。図1では、ガス抜き材15の代表として、開口部8に近い短辺側5の枠材10の中央位置に取り付けた例を一例として図示する。
【0039】
2.注入段階
注入発泡断熱材として、「クララフォーム-R HR375HP」を使用した。注入後に得られた硬質ウレタンフォームは、密度36kg/m3、圧縮強度20N/cm2、独立気泡率97%であった。注入は、通常のウレタン注入発泡機を用い、外径20mm弱の円筒状吐出ノズルを注入孔14から挿入し注入を行った。なお、注入後はウレタンの漏れを防止するため、注入孔を木栓等により塞いだ。」
上記記載によれば、甲4には、以下の技術事項が開示されていると認められる。
「表面材1と裏面材3の側面を、枠材9、10を介して釘及びビスで固定して内部空間を形成し、内部空間に発泡断熱部材を充填すること」(以下「甲4記載事項」という。)
ウ 甲5に記載された事項
甲5の【図2】には、以下の記載がある。
「
[図:0001422071000009.jpg]
」
上記記載によれば、甲5には、以下の技術事項が開示されていると認められる。
「外枠材12Aと外板材12Bの側面を、端縁部材13を介して接着部材16で固着して空間25を形成し、空間25に発泡ポリウレタン14を充填する構成」(以下「甲5記載事項」という。)
エ 甲6に記載された事項
甲6には、以下の記載がある。
(ア)「【要約】【課題】測量作業及び配管支持部の高さを調節する作業を容易かつ確実に行うことができるとともに、これらの作業に要する時間、手間及び費用を低減させることができる配管支持具を提供する。
【解決手段】 配管支持具20を構成する支持台21上には、一対の第1突起22が突設されるとともに、それら第1突起22に一対の連結筒23の下端部が嵌合されることにより、各連結筒23が支持台21上に着脱可能に立設されている。配管支持部25は、その外周面から垂下された一対の第2突起26が両連結筒23の上端部に嵌合されることによって、支持台21上方に支承されている。主配管31は配管支持部25に上方から挿入され、嵌合されている。この主配管31は、連結筒23を所定長さに切断し、長さを変更することによって建築物の基礎に沿って一定の勾配をなすように傾斜されている。」
(イ)「【図1】
[図:0001422071000010.jpg]
」
上記記載によれば、甲6には、以下の技術事項が開示されていると認められる。
「配管を下方から支持する配管支持具」(以下「甲6記載事項」という。)
2 甲1発明1を主引用発明とした場合の対比・判断
(1)本件訂正発明1
ア 対比
本件訂正発明1と甲1発明1とを対比すると、以下のとおりである。
(ア)甲1発明1の「三次元成形体を製造するための装置11」は、本件訂正発明1の「三次元造形製品の製造装置」に相当する。また、本件訂正発明1と甲1発明1の各構成要素を対比すると、甲1発明1の
「積層チャンバ42」は「造形タンク」に、
「基板シート51」は、「造形タンク内にて上下方向に移動可能なテーブルの上側に位置し」とされる「基板」に、
「積層材料57」に含まれる「金属又はセラミック粉」は「粉末」に、
「管状加熱体である加熱要素87」は「ヒーティング装置を構成するヒーティングパイプ」に、
「断熱層48」は「断熱材」に、
「三次元成形体」は「三次元造形製品」に、
それぞれ相当することは明らかである。
(イ)テーブル
甲1発明1の「ベース板44」は、本件訂正発明1の「テーブル」に相当する。
そして、甲1発明1の「ベース板44」は、「積層チャンバ42内では」「ベース板44は上下に移動できるように駆動される構成」であるから、本件訂正発明1の「造形タンク内にて上下方向に移動可能な」という要件を満たしている。
(ウ)三次元造形製品の製造工程
a 甲1発明1の「装置11」の「塗布およびレベリング装置56」は、「金属またはセラミック粉を含む積層材料57を基板シート51に塗布し、かつ、ベース面41に沿って移動」するものであり、「ベ―ス面41に沿って移動」することで「積層材料57」を平坦化(レベリング)していることは技術的にみて明らかであるから、上記「塗布およびレベリング装置56」は、本件訂正発明1の「基板及び前記テーブルの上側にて金属又は非金属の粉末を撒布し、かつ当該撒布された粉末の上側表面を平坦化し」という要件を満たしている。
b そして、甲1発明1の「装置11」は、「ビーム源16から放射されたレーザーにより、塗布された積層材料57を融合して結合凝固させて1つの層を構築」するものであるから、甲1発明1の「装置11」が、本件訂正発明1の「最上位に位置している造形対象となる領域に、電磁波又は電子線を所定の厚さの層に沿って照射することによって焼結層を形成し」という要件を満たすことは技術的にみて明らかである。
c また、甲1発明1の「装置11」は、「ビーム源16から放射されたレーザーにより、塗布された積層材料57を融合して結合凝固させて1つの層を構築し、1層分の厚さだけ下降させ、そして新しい粉末層を塗布することで三次元成形体を製造する機能を有する」ことから、上記a及びbの工程を順次反復しているといえる。
d したがって、上記a~cを踏まえると、甲1発明1の「装置11」と本件訂正発明1の「製造装置」は、「基板及び前記テーブルの上側にて金属又は非金属の粉末を撒布し、かつ当該撒布された粉末の上側表面を平坦化したうえで、最上位に位置している造形対象となる領域に、電磁波又は電子線を所定の厚さの層に沿って照射することによって焼結層を形成」すること「によって成形を行う工程を順次反復している三次元造形製品の製造装置」という点で共通する。
(エ)基台
「基台」に関して、本件特許明細書等には、「ヒーティングパイプ又はクーリングパイプ80を一体となって支持している基台91」(【0018】及び図1,5~6等)と記載される程度にとどまるものであるから、本件訂正発明1における「基台」は、「ヒーティング装置を構成するヒーティングパイプ又はクーリング装置を構成するクーリングパイプの何れか一方のみを」少なくとも「下方から支え」る機能を備えた台(物をのせる平たいもの。広辞苑第四版 岩波書店)という程度の意味と理解される。
上記理解を前提とすれば、甲1発明1の「冷却板132」は「昇降スピンドル46を通って構築プラットフォーム49に繋がる供給ライン91と接続された管状加熱体である加熱要素87」のみを「下方において」「支持」していることから、甲1発明の「冷却板132」は、本件訂正発明1の「基台」に相当し、本件訂正発明1の「ヒーティング装置を構成するヒーティングパイプ又はクーリング装置を構成するクーリングパイプの何れか一方のみを下方から支えており」という要件を満たしている。
なお、「冷却板132」の「冷却通路101」は断熱層48に隣接して設けられたものであることから(甲1の[0055]~[0057]、[図7b]~[図7d]を参照)、「冷却板132」は、「冷却通路101」を「下方から支えるものではない。
(オ)当該ヒーティング又は当該クーリングが行われていない前記テーブル
本件訂正発明1の「当該ヒーティング又は当該クーリング」とは、本件訂正発明1の「基台」が支えている「ヒーティング装置を構成するヒーティングパイプ又はクーリング装置を構成するクーリングパイプ」による「ヒーティング」又は「クーリング」を意味すると理解するのが自然である。
上記理解を前提とすれば、甲1発明1の「ベース板44」に対しては、「冷却板132」が「支持」している「加熱要素87による直接的な加熱は行われていない」のであるから、甲1発明1の「ベース板44」は、本件訂正発明1の「テーブル」における、「当該ヒーティング又は当該クーリングが行われていない」という要件を満たす。
(カ)上下方向の空隙
a 上下方向の空隙の解釈
対比に先立ち、本件訂正発明1の「上下方向の空隙」の意味について検討する。
本件訂正後の請求項1には、「基台に対し、下方において脚部を介してテーブルの上部に固着するか、又は側方においてテーブルの上側に立設した枠体又は支持杆に固着することによって、ヒーティングパイプ又はクーリングパイプと連通していない状態にて当該ヒーティング又は当該クーリングが行われていない前記テーブルに対し上下方向の空隙を形成する」と記載されている。また、「空隙」とは、一般に「すきま、すき、間隙」を意味する用語である。(乙3参照。)
したがって、上記「上下方向の空隙」とは、「基台とテーブルの間に形成された上下方向のすきま」と解される。
なお、本件特許の図5及び図6に記載された実施形態は、いずれも本件訂正発明1の具体例に相当するところ、「上下方向の空隙」に係る上記解釈は、図5(b)(脚部を有する態様であって、基台とテーブルの間の空間の一部に脚部5が存在する形態)及び図6(b)(枠体又は支持杆を有する態様であって、基台とテーブルの空間が全てすきま(間隙)である形態)の構成とも整合する。(以下、必要に応じて、図5(b)の形態における「上下方向の空隙」を「空隙B」、図6(b)の形態のものを「空隙A」という。)
図5(b):「空隙B」
[図:0001422071000011.jpg]
図6(b):「空隙A」
[図:0001422071000012.jpg]
b 甲1発明1との相当関係
上記aの解釈を前提に、以下検討する。
甲1発明の「装置11」は、「冷却板132が、固定要素160を介してベース板44に固定される構成であって、上記固定要素160は、ベース板44、断熱層48、冷却板132、および加熱板136を備えるキャリア43の層状積層物を相互に位置決めする構成」を有するところ、上記断熱層48は下に「通路151が形成される構成」のものである。
上記構成によれば、上記「装置11」は、「ベース板44」と「冷却板132」との間の空間に通路151(「すきま」を有する。)が形成された断熱層48が配置された構成を有するから、「冷却板132」(基台)と「ベース板44」(テーブル)との間には上下方向の「すきま」が形成されているといえる(「空隙B」に該当)。また、甲1発明1は、「断熱層48、完全に貫通する冷却通路101が設けられている冷却板132、管状加熱体である加熱要素87、加熱板136及び基板シート51が順次配置される構成と」「基板シート51が加熱板136に対して固定され、加熱板136は管状加熱体である加熱要素87の上側を被覆する構成」とを備えるものである。
そうすると、甲1発明1は、本件訂正発明1の「前記テーブルに対し上下方向の空隙を形成」した「状態にて、前記焼結層を支える基板を載置しており」との要件を満たす。
加えて、「装置11」における上記「層状積層物」は、「ベース板44」と「冷却板132」との間に上下方向の空隙を形成してから、当該空隙に断熱層48を充填することによって得られる構成と、物として比較した場合には何ら構成上相違しないから、甲1発明1は、本件訂正発明1の「当該空隙を形成したうえで当該形成領域に断熱材を充填した状態にて、前記焼結層を支える基板を載置しており」との要件も満たす。
以上総合すると、甲1発明1は、本件訂正発明1の「前記テーブルに対し上下方向の空隙を形成するか、又は当該空隙を形成したうえで当該形成領域に断熱材を充填した状態にて、前記焼結層を支える基板を載置しており」との要件を満たす。
(キ)製造装置の全体構成
上記(オ)~(カ)を踏まえると、本件訂正発明1の「製造装置」と甲1発明1の「装置11」とは、「当該ヒーティング又は当該クーリングが行われていない前記テーブルに対し上下方向の空隙を形成するか、又は当該空隙を形成したうえで当該形成領域に断熱材を充填した状態にて、前記焼結層を支える基板を載置している三次元造形製品の製造装置」である点で共通する。
イ 一致点
本件訂正発明1と甲1発明1は、以下の点で一致する。
「造形タンク内にて上下方向に移動可能なテーブルの上側に位置している基板及び前記テーブルの上側にて金属又は非金属の粉末を撒布し、かつ当該撒布された粉末の上側表面を平坦化したうえで、最上位に位置している造形対象となる領域に、電磁波又は電子線を所定の厚さの層に沿って照射することによって焼結層を形成によって成形を行う工程を順次反復している三次元造形製品の製造装置において、ヒーティング装置を構成するヒーティングパイプ又はクーリング装置を構成するクーリングパイプの何れか一方のみを下方から支えている基台に対し、当該ヒーティング又は当該クーリングが行われていない前記テーブルに対し上下方向の空隙を形成するか、又は当該空隙を形成したうえで当該形成領域に断熱材を充填した状態にて、前記焼結層を支える基板を載置している三次元造形製品の製造装置。」
ウ 相違点
本件訂正発明1と甲1発明1は、以下の点で相違する。
(相違点1-1)
本件訂正発明1は、「基板」が「上側に隣接している粉末が焼結によって固化した際、当該粉末と接着し得る素材を少なくとも表面部分にて有」するのに対し、甲1発明1は、「基板シート51」が「粉末と接着し得る素材を少なくとも表面部分にて有」するか明らかでない点。
(相違点1-2)
本件訂正発明1は、「三次元造形製品の製造装置」が「当該焼結が行われた端部及び上面に対する切削によって成形を行う工程」を行う構成を有するのに対し、甲1発明1は、「装置11」がそのような構成を有するか明らかでない点。
(相違点1-3)
本件訂正発明1は、「基台」が「他のヒーティング装置及びクーリング装置を備えていない」ものであるのに対し、甲1発明1は、「冷却板132」がそのように特定されたものでない点。
(相違点1-4)
本件訂正発明1は、「基台」に対し、「下方において脚部を介してテーブルの上部に固着するか、又は側方においてテーブルの上側に立設した枠体又は支持杆に固着することによって」「テーブルに対し上下方向の空隙を形成」するものであって、「脚部につき、矩形状のテーブル及び基台の両側の辺に跨る場合には2個設け、他の場合には3個以上設けており、枠体又は支持杆(以下「枠体等」という。)につき、テーブル及び基台の周囲を囲む状態である場合には1個設け、矩形状のテーブル及び基台の両側の辺に跨る場合には2個設け、他の場合には、3個以上設けている」構成を有するのに対し、甲1発明1は、上記脚部又は上記枠体等に相当する部材がどの部材であるかが明らかでないことから、当該脚部又は当該枠体等の配置や個数が明らかでなく、また、上下方向の空隙がどの部材によって形成されているのかが明らかでない点
(相違点1-5)
本件訂正発明1は、「テーブル」が「ヒーティングパイプ又はクーリングパイプと連通していない状態」であるのに対し、甲1発明1は、「ベース板44」がそのように特定されたものでない点。
エ 判断
事案に鑑み、相違点1-3~相違点1-5について検討する。
(ア)相違点1-3
甲1発明1の「冷却板132」(「基台」)は、「完全に貫通する冷却通路101が設けられている」ものである。そして、甲1の[0055]~[0057]、[図3]、[図7b]、[図7c]の記載より、「冷却板132」の冷却機能は、成形体52の完成後、キャリア43を冷却位置121に下降させ、この位置では体積流は冷却通路101を通って流れ、それによって構築プラットフォーム49を冷却するためのものと理解される。さらに、甲1の[0055]の記載によれば、甲1発明においては「冷却通路101」の配置について具体的に特定されていないが、「冷却通路101」は加熱要素87の下方だけでなく、加熱要素87の上方及び/又は複数の加熱要素87の間にも延在することが可能であることが理解される。
ここで、上記相違点1-3に係る「他のヒーティング装置及びクーリング装置」とは、請求項の記載からみて、「基台」が下方から支える「ヒーティング装置を構成するヒーティングパイプ又はクーリング装置を構成するクーリングパイプ」における「ヒーティング装置」、「クーリング装置」以外のヒーティング装置及びクーリング装置を意味すると理解することが自然である。(上記「第3」3(1)イ(ア)cを参照。)
上記理解を前提に、以下検討する。
甲1発明1の「冷却板132」(「基台」)は、上述のとおり、構築プラットフォーム49を冷却することを目的としたものであって、冷却板132を完全に貫通する冷却通路101(「他のヒーティング装置及びクーリング装置」)が設けられたものである。
そうしてみると、甲1発明1において、「装置11」による三次元成形体の製造工程において必要とされる機能の一つである、上記「冷却板132」(「基台」)が担う構築プラットフォーム49の冷却機能を増強するように設計変更することはあり得ても、あえて機能を失わせるように設計変更することには阻害要因がある。
したがって、甲1発明1において、当業者が、相違点1-3に係る本件訂正発明1の構成に容易に想到し得たとはいえない。
(イ)相違点1-4
甲1発明の「装置11」の全体構成からみて、本件訂正発明1の「脚部」又は「枠体又は支持杆」に対応すると考えられる甲1発明の構成として、「ピン70」及び「固定要素160」を挙げることできる。
ここで、相違点1-4に係る構成は、「脚部」に関する構成と「枠体又は支持杆」に関する構成とが選択的に特定されたものであることから、それぞれについて検討する。
a 脚部について
(a)脚部の解釈
「脚部」に関して、本件特許明細書等における、「基台91に対し、図5(a)、(b)に示すように、下方において脚部5を介してテーブル2の上部に固着するか、又は図6(a)、(b)に示すように、側方においてテーブル2の上側から立設された枠体又は支持杆7に固着」することで、「HC装置8の基台91の下方面とテーブル2の上方面との間には、上下方向に所定の距離による空隙が形成されているか、又は当該空隙を形成したうえで当該形成領域に断熱材が充填され」る(【0019】等)との記載に対応して、本件特許の請求項1には、「基台に対し、下方において脚部を介してテーブルの上部に固着するか、又は側方においてテーブルの上側に立設された枠体又は支持杆に固着することによって、・・・前記テーブルに対し上下方向の空隙を形成するか、又は当該空隙を形成したうえで当該形成領域に断熱材が充填した状態」(合議体注:下線は当合議体によるもの)と記載されている。
そうすると、上記下線部の記載は、本件訂正発明1の「脚部」が、「基台に対して脚部を介してテーブルに固着する(される)ことによって、空隙を形成する機能(以下「本件機能」という。)を有することを特定するものと解される。
また、「固着」とは、「かたくしっかりとくっつくこと。一定の場所に留まって移らないこと。」(広辞苑第四版 岩波書店)を意味する文言であり、本件特許明細書等を参照しても、その意味どおりに解釈することを妨げる記載はない。
(b)甲1発明1の「ピン70」と本件訂正発明1の「脚部」の関係
上記(a)の解釈に基づき、甲1発明1の「ピン70」と本件訂正発明1の「脚部」の関係について検討する。
甲1発明の「冷却板132」は、「下方においてピン70を介してベース板44の上部に位置決めされる構成であって、上記ピン70は、断熱層48を完全に貫通しており、その結果、冷却板132をベース板44に対して一定の配向を有するように位置決めするものである」。
上記構成によれば、甲1発明1の「ピン70」は、「一定の配向を有するように位置決めする」ためのものであるから、「位置決め」は「冷却板132」(「基台」)と「ベース板44」(「テーブル」)に「ピン70」を受け入れる孔があれば足りるのであり、そうであれば、「ピン70」が「冷却板132」(「基台」)に対し「ベース板44」(「テーブル」)に「固着」(かたくしっかりくっつくこと)されることまでは求められていないと解される。(この点は、甲1の[図7b]において、「ピン70」が冷却板132の下面に設けられた孔に単に挿入されるように図示されていることからも推認できることである。)
加えて、甲1発明1は、「冷却板132が、固定要素160を介してベース板44に固定される構成」を有する。
そうすると、甲1発明1において、「ピン70」とは異なる、「固定要素160」によって、「冷却板132」(「基台」)と「ベース板44」(「テーブル」)が固定されている以上、一定の配向を有するように位置決めすることを目的とする「ピン70」に対して、あえて「固着」の機能を付加するように設計変更すること、または、「ピン70」に加えて「固着」の機能を有する本件訂正発明1の「脚部」に相当するような構成要素を更に設けるように設計変更する動機づけはない。
したがって、甲1発明1において、本件特許の出願時において、当業者が、相違点1-4に係る本件訂正発明1の「基台に対し、下方において脚部を介してテーブルの上部に固着することによって、テーブルに対し上下方向の空隙を形成する」との構成に容易に想到し得たとはいえない。
そして、甲1の他の記載及び請求人が提出する他の証拠をみても、上記判断を左右するものはない。
(c)甲1発明1の「固定要素160」と本件訂正発明1の「脚部」の関係
上記(a)の解釈に基づき、甲1発明1の「固定要素160」と本件訂正発明1の「脚部」の関係について検討する。
甲1発明1の「固定要素160は、冷却板132に設けられた孔の底部を貫通するものであって、冷却板132(「基台」)に対し、上方側から長さ補償要素166を受け入れることにより、固定手段を構成」するものであるところ、当該固定手段の構成においては、「固定要素160」が「冷却板132」の下方から支持するような構造ではない。
したがって、甲1発明1は、上記相違点1-4に係る「基台に対し、下方において脚部を介してテーブルの上部に固着する」との要件を満たさない。また、甲1には、甲1発明1において、「固定要素160」及び「長さ補償要素166」で構成される固定手段に換えて、又は、当該固定手段に加えて上記相違点1-4に係る要件を満たす「脚部」をさらに設けることの動機づけとなり得る記載はない。
そして、請求人が提出する他の証拠をみても、上記判断を左右するものはない。
b 枠体又は支持杆について
甲1発明1には、「冷却板132」(「基台」)の側方においてベース板44(「テーブル」)の上側に立設した構成要素は存在しない。(空隙Aに該当する「上下方向の空隙」を形成するような部材はない。)
したがって、甲1発明1の「ピン70」及び「固定要素160」は、いずれも本件訂正発明1の「枠体又は支持杆」に相当しないし、「枠体又は支持杆」に相当する構成及び当該構成を追加することを示唆する記載は甲1にはない。さらにいえば、上記aで説示したとおり、甲1発明1では、「固定要素160」によって、「冷却板132」(「基台」)と「ベース板44」(「テーブル」)が固定されている以上、これに加えて「固着」の機能を有する「枠体又は支持杆」を更に設けるような動機づけはない。
そして、請求人が提出した他の証拠の記載事項(特に、甲4記載事項及び甲5記載事項)を検討しても、上記上記判断を左右するものはない。
上記a~bで検討したとおり、上記相違点1-4に係る「脚部」に関する構成、「枠体又は支持杆」に関する構成のいずれの場合についても、甲1発明1において、当業者が、上記相違点1-4に係る本件訂正発明1の構成に容易に想到し得たとはいえない。
(ウ)相違点1-5
甲1発明1の「キャリア43」は、「水冷溝66が形成されるベース板44を備え」、「水冷溝66は積層工程の間、ベース板44の冷却を目的とした流体媒体が流れるものであ」る。
そうすると、甲1発明1の「ベース板44」(「テーブル」)における「水冷溝66」は、冷却(クーリング)を目的とした流体媒体が通って流れる溝(パイプ)であり、これは「クーリングパイプ」に他ならず、甲1発明1の「ベース板44」(「テーブル」)は、「クーリングパイプと連通した状態」といえるから、甲1発明1の「ベース板44」(「テーブル」)は、上記相違点1-5に係る「ヒーティングパイプ又はクーリングパイプと連通していない状態」との要件を満たさない。
そして、甲1の他の箇所を検討しても、甲1発明1において、「ベース板44」(「テーブル」)の上記冷却のための構成を設計変更するような動機づけとなる記載はない。。
したがって、甲1発明1において、当業者が、上記相違点1-5に係る本件訂正発明1の構成に容易に想到し得たとはいえない。
上記(ア)~(ウ)で検討したとおり、相違点1-1及び1-2について検討するまでもなく、本件訂正発明1は、本件特許の出願前に当業者が、甲1発明1に基づいて容易に発明することができたものではない。
(2)本件訂正発明2
本件訂正発明2と甲1発明1は、上記(1)ウの相違点1-1~1-5に加え、以下の点で相違する。
(相違点1-6)
本件訂正発明2は、「基台とテーブルとの上下方向の空隙又は断熱材の充填による間隔が、15mm以上である」のに対し、甲1発明1は、「装置11」がそのような構成を有するか明らかでない点。
上記相違点1-3~1-5についての判断は上記(1)エで説示したとおりであるから、上記相違点1-1、1-2及び1-6について検討するまでもなく、本件訂正発明2は、本件特許の出願前に当業者が甲1発明1に基づいて、容易に発明をすることができたものではない。
(3)本件訂正発明3
本件訂正発明3の「基台がヒーティングパイプ又はクーリングパイプの上側をも被覆」する構成に関して、本件特許明細書等には、「通常、図5(a)、(b)及び図6(a)、(b)に示すように、基台91がHCパイプ80の上側をも被覆した状態」であることが記載され、図5(a)、(b)及び図6(a)、(b)には、基台91とは別構成であるHCパイプ80の上側を被覆した上側板92を含めて「基台」であることが記載されている。ここで、甲1発明1の「加熱板136」は、「管状加熱体である加熱要素87」の上側を被覆する構成であり、かつ、「基板シート51が加熱板136に対して固定」されるものであることから、「加熱板136」は「基台」の一部と理解される。そうすると、甲1発明1の「装置11」は、本件訂正発明3の「基台がヒーティングパイプ又はクーリングパイプの上側をも被覆した状態としたうえで、基板を基台の上側に固着している」という要件を満たしている。
したがって、本件訂正発明3と甲1発明1は、上記(1)ウの相違点1-1~1-5において相違する。
そして、上記相違点1-3~1-5についての判断は上記(1)エで説示したとおりであるから、上記相違点1-1及び1-2について検討するまでもなく、本件訂正発明3は、本件特許の出願前に当業者が、甲1発明1に基づいて容易に発明をすることができたものではない。
(4)本件訂正発明4
本件訂正発明4と甲1発明1は、上記(1)ウの相違点1-1~1-5に加え、以下の点で相違する。
(相違点1-7)
本件訂正発明4は、「基台がヒーティングパイプ又はクーリングパイプにおける高さ方向を基準とした場合の1/2以上の上側部分を被覆していない状態としたうえで、単一層を形成している基板の下側に設けた凹状と前記ヒーティングパイプ又はクーリングパイプの上側部分とが嵌合している」構成を有するのに対し、甲1発明1は、「装置11」がそのような構成を有していない点。
上記相違点1-7について検討する。
ア 甲1発明1について、上記(3)で検討したのと同様、甲1発明1の「加熱板136」を「基台」の一部と解する(すなわち、甲1発明1の「冷却板132」及び「加熱板136」を合わせたものを本件訂正発明4の「基台」に相当すると解する)ことができる一方、甲1発明1の「冷却板132」のみを本件訂正発明1の「基台」に相当すると解することもできるので、両方の場合について、以下検討する。
イ まず、上記アにおける前者の場合(甲1発明1の「冷却板132」及び「加熱板136」を合わせたものを本件訂正発明4の「基台」に相当すると解する場合)については、甲1発明1が、上記相違点1-7に係る「基台がヒーティングパイプ又はクーリングパイプにおける高さ方向を基準とした場合の1/2以上の上側部分を被覆していない状態」との要件を満たさない。
この場合、甲1発明1において、「加熱板136」が除去される設計変更がなされれば、上記相違点1-7に係る要件を満たし得るところ、「加熱板136」は「管状加熱体である加熱要素87が」「配置され」たものであり、甲1の[0054]、[0075]等の記載から、「加熱板136」による加熱は、装置11が成形体を低い応力でクラックなく組み立てることに寄与するものであるから、甲1発明1において、あえて「加熱板136」を除去するような設計変更を行うことには阻害要因があることは明らかである。
ウ 次に、上記アにおける後者の場合(甲1発明1の「冷却板132」のみを本件訂正発明1の「基台」に相当すると解した場合)について検討する。
甲1発明1の「冷却板132」は、「管状加熱体である加熱要素87」が「下方において冷却板132から支持された構成」であり、[図7c]~[図7e]より、「冷却板132」は「加熱要素87」における高さ方向を基準とした場合の1/2以上の上側部分を被覆していないことは明らかであるから、甲1発明1は、本件訂正発明4の「基台がヒーティングパイプ又はクーリングパイプにおける高さ方向を基準とした場合の1/2以上の上側部分を被覆していない状態」との要件は満たす。
ここで、本件訂正発明4における「基板」に関して、本件特許の請求項1には「造形タンク内にて上下方向に移動可能なテーブルの上側に位置し、かつ上側に隣接している粉末が焼結によって固化した際、当該粉末と接着し得る素材を少なくとも表面部分にて有している」との特定がなされており、甲1発明1の「基板シート51」及び「加熱板136」を、それぞれ「基板」の一部とみなすことができるものの、そのようにみなした場合には、上記相違点1-7に係る「単一層を形成している基板」との要件を満たさないことになる。
そして、甲1発明1の「基板シート51」及び「加熱板136」はそれぞれ異なる機能を有する部材であって、さらに、甲1に記載された発明は、基板シートの構成に特徴を有するものと解されることから(甲1の[0010]等)、甲1発明1において、「基板シート51」及び「加熱板136」を合わせたものを「単一層」で形成するように設計変更することには阻害要因があることは明らかである。
エ ア~ウで検討したとおり、甲1発明1において、上記相違点1-7に係る構成を備えた本件訂正発明4の構成とすることには阻害要因がある。
また、上記相違点1-3~1-5についての判断は上記(1)エで説示したとおりである。
したがって、本件訂正発明4は、上記相違点1-1及び1-2について検討するまでもなく、本件特許の出願前に当業者が、甲1発明1に基づいて容易に発明をすることができたものではない。
(5)本件訂正発明5
ア 対比
本件訂正発明5は、本件訂正発明1では「ヒーティング装置を構成するヒーティングパイプ又はクーリング装置を構成するクーングパイプの何れか一方のみを把持している」のが「基台」であるものが「複数本の支柱」である点で相違するとともに、この点に関連して「脚部」や「枠体等」に関する特定事項において相違するが、それ以外の点においては同様の発明特定事項を有するものである。
したがって、本件訂正発明5と甲1発明1とを対比すると、上記(1)ア(ア)~(ウ)、(オ)、(カ)に示したのと同様の対比結果となる。
イ 一致点
本件訂正発明5と甲1発明1は、以下の点で一致する。
「造形タンク内にて上下方向に移動可能なテーブルの上側に位置している基板及び前記テーブルの上側にて金属又は非金属の粉末を撒布し、かつ当該撒布された粉末の上側表面を平坦化したうえで、最上位に位置している造形対象となる領域に、電磁波又は電子線を所定の厚さの層に沿って照射することによって焼結層を形成によって成形を行う工程を順次反復している三次元造形製品の製造装置において、前記テーブルに対し上下方向の空隙を形成するか、又は当該空隙を形成したうえで当該形成領域に断熱材を充填した状態にて、前記焼結層を支える基板を載置している三次元造形製品の製造装置。」
ウ 相違点
本件訂正発明5と甲1発明1は、以下の点で相違する。
(相違点1-8)
本件訂正発明5は、「基板」が「上側に隣接している粉末が焼結によって固化した際、当該粉末と接着し得る素材を少なくとも表面部分にて有」するのに対し、甲1発明1は、「基板シート51」が「粉末と接着し得る素材を少なくとも表面部分にて有」するか明らかでない点。
(相違点1-9)
本件訂正発明5は、「三次元造形製品の製造装置」が「当該焼結が行われた端部及び上面に対する切削によって成形を行う工程」を行う構成を有するのに対し、甲1発明1は、「装置11」がそのような構成を有するか明らかでない点。
(相違点1-10)
本件訂正発明5は、「ヒーティング装置を構成するヒーティングパイプ又はクーリング装置を構成するクーングパイプの何れか一方のみを把持している複数本の支柱を下方に延設してテーブルの上部に固着するか、又は当該支柱を側方に延設してテーブルから上側方向に立設した枠体又は支持杆に固着する」構成を有し、「前記テーブル」が「当該ヒーティング又は当該クーリングが行われていない」構成であるのに対して、甲1発明1は、「装置11」が上記支柱に相当する部材がどの部材であるか明らかでなく、また、上下方向の空隙がどの部材によって形成されているのかが明らかでない点。
(相違点1-11)
本件訂正発明5は、「テーブル」が「ヒーティングパイプ又はクーリングパイプと連通していない状態」であるのに対し、甲1発明1は、「ベース板44」がそのように特定されたものでない点。
エ 判断
事案に鑑み、相違点1-10~相違点1-11について検討する。
(ア)相違点1-10
甲1発明1は、「管状加熱体である加熱要素87」(「ヒーティングパイプ」)が下方において「冷却板132」から支持された構成を有するものであるが、上記(1)エ(ア)で説示したとおり、甲1発明1において、「冷却板132」(「基台」)を除去するように設計変更することには阻害要因がある。また、甲1発明1において、「冷却板132」(「基台」)に換えて、具体的な支持構造が大きく異なる、相違点1-10に係る「把持している複数本の支柱」を採用することは、単なる設計上の変更にとどまらないから、上記と同様、阻害要因があることは明らかである。
また、甲1発明1において、「冷却板132」を除去せず、当該「冷却板132」を貫通するような形態にて、相違点1-10に係る「複数本の支柱」を設けることも一応想定し得る(請求人が提出した口頭審理陳述要領書の第16~17頁を参照。)。しかしながら、甲1発明1は、「管状加熱体である加熱要素87が加熱板136の凹部152内に配置され、かつ、下方において冷却板132から支持された構成」を有し、「管状加熱体である加熱要素87」(「ヒーティングパイプ」)は、甲1発明1においては、、「加熱板136」及び「冷却板132」によって既に安定的に支持されており、また、「冷却板132」は上記(1)エ(ア)で説示したように冷却機能を高めるためにさらに冷却通路101を設けることが好ましいことが示唆されていることを踏まえると、「冷却板132」に貫通孔を設けてまで、「管状加熱体である加熱要素87」(「ヒーティングパイプ」)を支持するために「把持している複数本の支柱」を追加で設ける動機づけは見いだせない。
なお、請求人は、随所で、甲1に記載された発明(甲1発明1を含む。)は「基板シート」の発明であるから、「基板シート」以外の構造は適宜設計変更が可能である旨主張するが、設計変更を行うにしても構造上の大きな変更を伴う場合等においては、当業者がそれでも当該設計変更を試みるといえる合理的な根拠は必要であって、この点について請求人からの具体的な主張立証はない。
そして、甲1の他の記載、、請求人が提出する他の証拠に記載された事項(特に甲6記載事項)等を検討しても、上記判断を左右するものはない。
(イ)相違点1-11
相違点1-11は、上記(1)ウの相違点1-5と同様であって、これに対する判断は、上記(1)エ(ウ)で説示したとおりである。
上記(ア)~(イ)で検討したとおり、相違点1-8及び相違点1-9について検討するまでもなく、本件訂正発明5は、本件特許の出願前に当業者が、甲1発明1に基づいて容易に発明をすることができたものではない。
(6)本件訂正発明6
本件訂正発明6と甲1発明1は、上記(5)ウの相違点1-8~1-11に加え、以下の点で相違する。
(相違点1-12)
本件訂正発明6は、「基台とテーブルとの上下方向の空隙又は断熱材の充填による間隔が、15mm以上である」のに対し、甲1発明1は、「装置11」がそのような構成を有するか明らかでない点。
上記相違点1-10~1-11についての判断は上記(5)エで説示したとおりであるから、上記相違点1-8、1-9及び1-12について検討するまでもなく、本件訂正発明6は、本件特許の出願前に当業者が、甲1発明1に基づいて容易に発明をすることができたものではない。
(7)本件訂正発明7
本件訂正発明7と甲1発明1は、上記(5)ウの相違点1-8~1-11に加え、以下の点で相違する。
(相違点1-13)
本件訂正発明7は、「ヒーティングパイプ又はクーリングパイプの上側部分及び支柱の前記各パイプに対する把持部分の上側部分を被覆する上側板を設けたうえで、基板を当該上側板の上側に固着している」構成を有するのに対し、甲1発明1は、「装置11」がそのような構成を有していない点。
上記相違点1-10~1-11についての判断は上記(5)エで説示したとおりであって、上記相違点1-13は上記相違点1-10における「支柱」の存在を前提とした相違点であるから、上記相違点1-8、1-9及び1-13について検討するまでもなく、本件訂正発明7は、本件特許の出願前に当業者が、甲1発明1に基づいて容易に発明をすることができたものではない。
(8)本件訂正発明8
本件訂正発明8と甲1発明1は、上記(5)ウの相違点1-8~1-11に加え、以下の点で相違する。
(相違点1-14)
本件訂正発明8は、「ヒーティングパイプ又はクーリングパイプの上側部分を被覆しない状態としたうえで、単一層を形成している基板の下側に設けた凹状と、前記ヒーティングパイプ又はクーリングパイプの上側部分とが嵌合している」構成を有するのに対し、甲1発明1は、「装置11」がそのような構成を有していない点。
上記相違点1-14について検討する。
ア 本件訂正発明5の記載を引用する本件訂正発明8の「基板」は、「造形タンク内にて上下方向に移動可能なテーブルの上側に位置し、かつ上側に隣接している粉末が焼結によって固化した際、当該粉末と接着し得る素材を少なくとも表面部分にて有している」との要件(以下「基板要件1」という。)、及び、「単一層を形成している」との要件(以下「基板要件2」という。)、を少なくとも満たすものである。
イ ここで、甲1発明1の「加熱板136」のみを本件訂正発明8の「基板」に相当するものと解した場合、甲1発明1の「加熱板136」は、本件訂正発明8の上記基板要件2は満たすといえる。
一方、甲1発明1は、「基板シート51」に「塗布およびレベリング装置56が金属またはセラミック粉を含む積層材料57」が「塗布」されるものであることから、甲1発明1の「加熱板136」が、上記基板要件1を満たさないことは明らかである。
さらに、甲1の[0010]の記載から、甲1に記載された発明は「基板シート51」の構造に特徴がある発明であると解されるから、甲1発明1において、既存の「基板シート51」を用いることなく、わざわざ「加熱板136」自体を上記基板要件1を満たすものに変更する動機づけはないというべきである。
そうすると、甲1発明1に基づき、本件特許の出願前に当業者が、上記相違点1-14に係る構成を備えたものに到ることが容易であるとはいえない。
ウ 次に、甲1発明1の「基板シート51」を「基板」の一部と解し、「加熱板136」及び「基板シート51」からなる構成を本件訂正発明8の「基板」に相当するものと解することもできる。
しかし、このように解した場合、甲1発明1が、上記基板要件2を満たさないことは明らかであって、また、上記(4)ウで説示したのと同様、甲1発明1において、「加熱板136」及び「基板シート51」の両者を「単一の層」として形成する動機づけはないというべきである。
エ 上記ア~ウで検討したとおり、甲1発明1において、当業者が、上記相違点1-14に係る構成を備えた本件訂正発明8の構成に到ることが容易であるとはいえない。
また、上記相違点1-10~1-11についての判断は上記(5)エで説示したとおりである。
したがって、上記相違点1-8~1-9について検討するまでもなく、本件訂正発明8は、本件特許の出願前に当業者が、甲1発明1に基づいて容易に発明をすることができたものではない。
3 甲1発明2を主引用発明とした場合の対比・判断
(1)本件訂正発明1
ア 対比
本件訂正発明1と甲1発明2とを対比すると、以下のとおりである。
(ア)造形タンク、基板、粉末、ヒーティングパイプ、三次元造形製品、製造装置
上記2(1)ア(ア)と同様である。
(イ)テーブル
上記2(1)ア(イ)と同様である。
(ウ)三次元造形製品の製造工程
上記2(1)ア(ウ)と同様である。
(エ)基台
上記2(1)ア(エ)と同様である。
(オ)当該ヒーティング又は当該クーリングが行われていない前記テーブル
上記2(1)ア(オ)と同様である。
(カ)上下方向の空隙
a 上下方向の空隙の解釈
上記2(1)ア(カ)aで説示したとおりである。
b 甲1発明2との相当関係
上記aの理解を前提に、以下検討する。
甲1発明2の「装置11」における「断熱層48の下にある隙間131」は、「冷却板132」(「基台」)と「ベース板44」(「テーブル」)との間の空間の一部の領域に形成された「すきま」であるから、上記空隙Bに該当する。したがって、甲1発明2の「隙間131」は、本件訂正発明1の「上下方向の空隙」に相当するといえる。
そして、本件訂正発明1においては、「当該ヒーティング又は当該クーリングが行われていない前記テーブルに対し上下方向の空隙を形成するか、又は当該空隙を形成したうえで当該形成領域に断熱材を充填した状態」と特定されているように、「状態」に係る要件は択一的に課された要件である。そうすると、甲1発明2の「装置11」は、前者の要件を満たすことから、結果として、甲1発明2の「装置11」は、本件訂正発明1の「当該ヒーティング又は当該クーリングが行われていない前記テーブルに対し上下方向の空隙を形成するか、又は当該空隙を形成したうえで当該形成領域に断熱材を充填した状態」との要件を満たす。
(キ)脚部
a 脚部の解釈
上記2(1)エ(イ)a(a)で説示したとおりである。
b 甲1発明2との相当関係
甲1発明2において、「断熱層48は、」「ベース板44と構築プラットフォーム49の下側に位置する冷却板132との間に設けられ」、下に隙間131を有するものである。また、甲1発明2は、「冷却板132及び断熱層48は固定要素160によりベース板44に固定されている構成」を有する。
上記各構成からみて、甲1発明2の「隙間131」(「上下方向の空隙」)は、ベース板44と冷却板132との間に、「断熱層48」が固定配置されて形成される(本件機能を有する)ものであるから、上記aの解釈及び本件訂正発明1において「脚部」が「断熱材」を兼ねることは特段排除されていないことに照らすと、甲1発明2の「断熱層48」は、本件訂正発明1の「脚部」に相当するといえる。
そして、本件特許の請求項1には、「基台に対し、下方において脚部を介してテーブルの上部に固着するか、又は側方においてテーブルの上側に立設した枠体又は支持杆に固着する」と、「固着」に係る態様が択一的に記載されているところ、甲1発明2の「装置11」は、前者の要件(脚部の要件)を満たすことから、結果として、甲1発明2は、本件訂正発明1の「基台に対し、下方において脚部を介してテーブルの上部に固着するか、又は側方においてテーブルの上側に立設した枠体又は支持杆に固着することによって、前記テーブルに対し上下方向の空隙を形成するか、又は当該空隙を形成したうえで当該形成領域に断熱材を充填した状態」との要件を満たす。
(ク)製造装置の全体構成
上記2(1)ア(キ)と同様である。
イ 一致点
本件訂正発明1と甲1発明2は、以下の点で一致する。
「造形タンク内にて上下方向に移動可能なテーブルの上側に位置している基板及び前記テーブルの上側にて金属又は非金属の粉末を撒布し、かつ当該撒布された粉末の上側表面を平坦化したうえで、最上位に位置している造形対象となる領域に、電磁波又は電子線を所定の厚さの層に沿って照射することによって焼結層を形成によって成形を行う工程を順次反復している三次元造形製品の製造装置において、ヒーティング装置を構成するヒーティングパイプ又はクーリング装置を構成するクーリングパイプの何れか一方のみを下方から支えている基台に対し、下方において脚部を介してテーブルの上部に固着するか、又は側方においてテーブルの上側に立設した枠体又は支持杆に固着することによって、当該ヒーティング又は当該クーリングが行われていない前記テーブルに対し上下方向の空隙を形成するか、又は当該空隙を形成したうえで当該形成領域に断熱材を充填した状態にて、前記焼結層を支える基板を載置している三次元造形製品の製造装置。」
ウ 相違点
本件訂正発明1と甲1発明2は、以下の点で相違する。
(相違点2-1)
本件訂正発明1は、「基板」が「上側に隣接している粉末が焼結によって固化した際、当該粉末と接着し得る素材を少なくとも表面部分にて有」するのに対し、甲1発明2は、「基板シート51」が「粉末と接着し得る素材を少なくとも表面部分にて有」するか明らかでない点。
(相違点2-2)
本件訂正発明1は、「三次元造形製品の製造装置」が「当該焼結が行われた端部及び上面に対する切削によって成形を行う工程」を行う構成を有するのに対し、甲1発明2は、「装置11」がそのような構成を有するか明らかでない点。
(相違点2-3)
本件訂正発明1は、「基台」が「他のヒーティング装置及びクーリング装置を備えていない」ものであるのに対し、甲1発明2は、「冷却板132」がそのように特定されたものでない点。
(相違点2-4)
本件訂正発明1は、「脚部」と「枠体又は支持杆」が択一的に特定され、「脚部につき、矩形状のテーブル及び基台の両側の辺に跨る場合には2個設け、他の場合には3個以上設けており、枠体又は支持杆につき、テーブル及び基台の周囲を囲む状態である場合には1個設け、矩形状のテーブル及び基台の両側の辺に跨る場合には2個設け、他の場合には、3個以上設けている」ものであるのに対し、甲1発明2は、「断熱層48」(「脚部」)はそのように特定されたものでない点。
(相違点2-5)
本件訂正発明1は、「テーブル」が「ヒーティングパイプ又はクーリングパイプと連通していない状態」であるのに対し、甲1発明1は、「ベース板44」がそのように特定されたものでない点。
エ 判断
事案に鑑み、相違点2-3~相違点2-5について検討する。
(ア)相違点2-3
a 相違点2-3は、上記2(1)ウの相違点1-3と同様であり、その判断は、上記2(1)エ(ア)と同様である。
b 請求人の主張
上記相違点2-3に関して、請求人は弁駁書(第7頁)において、「甲1はあくまで基板シートの発明であって、当該基板シートを使用する上での装置の最良の実施形態、いわゆるベストモードを開示されているに過ぎない。甲1発明2において、冷却通路101を設けることは、採用可能な実施形態の1つに過ぎず、甲1発明2の本質的要素とはいえないものであるから、当業者であれば、冷却の必要性に応じて、冷却通路101を省略することも容易に想到できたはずである」と主張している。
しかしながら、上記a、及び、上記2(1)エ(ア)で説示したとおりであり、上記主張は採用できない。
(イ)相違点2-4
上記相違点2-4は、「脚部」に関する構成と「枠体又は支持杆」に関する構成とが択一的に特定されているから、それぞれについて検討する。
a 脚部
そして、甲1発明2の「断熱層48は、「冷却板132の下面の周縁領域を囲む形態」(すなわち、1個の円環状の形態)で設置されているものであるところ、上記「断熱層48」を1個の円環状の形態ではなく、2個以上の分離した形態とすることは、その分離している部分(すなわち、断熱層48が存在しない部分)において、上記熱的分離の効果が低減されることは技術的にみて明らかであるから、甲1発明2の「断熱層48」を、上記相違点2-4に係る本件訂正発明1の構成を満たすように変更することには阻害要因があるというべきである。
b 枠体又は支持杆
甲1発明2には、「冷却板132」(「基台」)の側方において「ベース板44」(「テーブル」)の上側に立設した構成要素は存在しない。(空隙Aに該当する「上下方向の空隙」を形成するような部材はない。)
したがって、甲1発明2の「固定要素160」は、本件訂正発明1の「枠体又は支持杆」に相当しないし、「枠体又は支持杆」に相当する構成及び当該構成を追加することを示唆する記載は甲1にはない。さらにいえば、甲1発明2では、「固定要素160」によって、「冷却板132」(「基台」)と「ベース板44」(「テーブル」)が固定されている以上、これに加えて「固着」の機能を有するような「枠体又は支持杆」を更に設けるような動機づけはない。
そして、請求人が提出した他の証拠の記載事項(特に、甲4記載事項及び甲5記載事項)を検討しても、上記判断を左右するものはない。
c 請求人の主張
上記相違点2-4に関して、請求人は弁駁書(第6~7頁)において、「脚部や枠体又は支持杆といった支持部材について、基台91を安定的にテーブル2上で支持して空隙を形成する上で、その形状等に応じて任意の位置・個数を採用することは単なる設計変更というべきであって、それ自体は本願発明の本質的部分ではなく、格別の技術的意義も存在しない」と主張している。
しかしながら、上記a~bで説示したとおりであるから、上記主張は採用できない。
(ウ)相違点2-5
a 相違点2-5は、上記2(1)ウの相違点1-5と同様であり、その判断は、上記2(1)エ(ウ)と同様である。
b 請求人の主張
上記相違点2-5に関して、請求人は弁駁書(第8頁)において、「甲1発明2において、ベース板44を冷却することは、採用可能な実施形態の1つに過ぎず、甲1発明2の本質的要素とはいえないものであるから、当業者であれば、キャリア43への断熱の必要性に応じて、ベース板44を冷却しない構成にすることを容易に想到できたはずである」と主張している。
しかしながら、上記a、及び、上記2(1)エ(ウ)で説示したとおりであるから、上記主張は採用できない。
上記(ア)~(ウ)で検討したとおり、相違点2-1及び2-2について検討するまでもなく、本件訂正発明1は、本件特許の出願前に当業者が、甲1発明2に基づいて容易に発明をすることができたものではない。
オ 請求人の主張(甲1発明2と請求項1との関係における異なる対比について)
請求人は弁駁書(第10~11頁)において、本件訂正発明1と甲1発明2との対比に関して、「冷却板132と断熱板48の上板部を合わせた部分(下記参考図におけるA)が基台91に相当し、断熱層48の周縁部(下記参考図におけるB)が枠体又は支持杆7に相当する」という対比も可能である」と主張する。(当合議体注:下記参考図は請求人によって提出された弁駁書に記載されたものである。)
[図:0001422071000013.jpg]
上記主張について検討する。
甲1発明2において、「断熱層48」と「冷却板132」は、それぞれ、「断熱」と「冷却」の機能を有する部材(すなわち、機能が異なる部材)であって、各機能に求められる熱伝導性が異なることに鑑みれば、その構成材料も異なることは明らかである。さらに、甲1の他の記載を参照しても、断熱層48を部分的に分け、その一部分と「冷却板132」とを組み合わせたものを一つの構成要素(本件訂正発明1の「基台」に相当するもの)と解すべき特段の事情は見いだせないから、上記主張のとおりの相当関係は成り立たない。
したがって、上記主張を採用できない。
(2)本件訂正発明2
本件訂正発明2と甲1発明2は、上記(1)ウの相違点2-1~2-5に加え、以下の点で相違する。
(相違点2-6)
本件訂正発明2は、「基台とテーブルとの上下方向の空隙又は断熱材の充填による間隔が、15mm以上である」のに対し、甲1発明2は、「装置11」がそのような構成を有するか明らかでない点。
上記相違点2-3~2-5についての判断は上記(1)エで説示したとおりであるから、上記相違点2-1、2-2及び2-6について検討するまでもなく、本件訂正発明2は、本件特許の出願前に当業者が、甲1発明2に基づいて容易に発明をすることができたものではない。
(3)本件訂正発明3
本件訂正発明3で新たに特定される要件については、上記2(3)で説示したのと同様であり、甲1発明2の「装置11」は、上記要件を満たしている。
したがって、本件訂正発明3と甲1発明2は、上記(1)ウの相違点2-1~2-5において相違する。
そして、上記相違点2-3~2-5についての判断は上記(1)エで説示したとおりであるから、本件訂正発明3は、本件特許の出願前に当業者が、甲1発明2に基づいて容易に発明をすることができたものではない。
(4)本件訂正発明4
本件訂正発明4と甲1発明2は、上記(1)ウの相違点2-1~2-5に加え、以下の点で相違する。
(相違点2-7)
本件訂正発明4は、「基台がヒーティングパイプ又はクーリングパイプにおける高さ方向を基準とした場合の1/2以上の上側部分を被覆していない状態としたうえで、単一層を形成している基板の下側に設けた凹状と前記ヒーティングパイプ又はクーリングパイプの上側部分とが嵌合している」構成を有するのに対し、甲1発明2は、「装置11」がそのような構成を有していない点。
ア 上記相違点2-7は、上記2(4)の上記相違点1-7と同様であり、その判断も同様である。
したがって、甲1発明2において、上記相違点2-7に係る構成を備えた本件訂正発明4の構成とすることには阻害要因がある。
イ 請求人の主張
上記相違点2-7に関して、請求人は弁駁書(第9頁)において、「「基板」(上側板92)を単一の部材で構成するか複数の部材で構成するかは、当業者が自由に選択できる設計事項というべきであって、「単一層を形成している基板」という限定事項は、進歩性を奏する技術的特徴ではない」と主張しているが、上記ア、及び、上記2(4)で説示したとおりであるから、上記主張は採用できない。
また、上記相違点2-3~2-5についての判断は上記(1)エで説示したとおりである。
したがって、本件訂正発明4は、本件特許の出願前に当業者が、甲1発明2に基づいて容易に発明をすることができたものではない。
(5)本件訂正発明5
ア 対比
本件訂正発明5と甲1発明2とを対比すると、上記(1)アと同様である。
イ 一致点
本件訂正発明5と甲1発明2は、以下の点で一致する。
「造形タンク内にて上下方向に移動可能なテーブルの上側に位置している基板及び前記テーブルの上側にて金属又は非金属の粉末を撒布し、かつ当該撒布された粉末の上側表面を平坦化したうえで、最上位に位置している造形対象となる領域に、電磁波又は電子線を所定の厚さの層に沿って照射することによって焼結層を形成によって成形を行う工程を順次反復している三次元造形製品の製造装置において、当該ヒーティング又は当該クーリングが行われていない前記テーブルに対し上下方向の空隙を形成するか、又は当該空隙を形成したうえで当該形成領域に断熱材を充填した状態にて、前記焼結層を支える基板を載置している三次元造形製品の製造装置。」
ウ 相違点
本件訂正発明5と甲1発明2は、以下の点で相違する。
(相違点2-8)
本件訂正発明5は、「基板」が「上側に隣接している粉末が焼結によって固化した際、当該粉末と接着し得る素材を少なくとも表面部分にて有」するのに対し、甲1発明2は、「基板シート51」が「粉末と接着し得る素材を少なくとも表面部分にて有」するか明らかでない点。
(相違点2-9)
本件訂正発明5は、「三次元造形製品の製造装置」が「当該焼結が行われた端部及び上面に対する切削によって成形を行う工程」を行う構成を有するのに対し、甲1発明2は、「装置11」がそのような構成を有するか明らかでない点。
(相違点2-10)
本件訂正発明5は、「ヒーティング装置を構成するヒーティングパイプ又はクーリング装置を構成するクーングパイプの何れか一方のみを把持している複数本の支柱を下方に延設してテーブルの上部に固着するか、又は当該支柱を側方に延設してテーブルから上側方向に立設した枠体又は支持杆に固着する」構成に対して、甲1発明2は、「装置11」がそのような構成を有していない点。
(相違点2-11)
本件訂正発明5は、「テーブル」が「ヒーティングパイプ又はクーリングパイプと連通していない状態」であるのに対し、甲1発明2、「ベース板44」がそのように特定されたものでない点。
エ 判断
事案に鑑み、相違点2-10~相違点2-11について検討する。
相違点2-10及び2-11は、上記2(5)ウの相違点1-10及び1-11と同様であって、これに対する判断は、上記2(5)エで説示したとおりである。
したがって、相違点2-8及び2-9について検討するまでもなく、本件訂正発明5は、本件特許の出願前に当業者が、甲1発明2に基づいて容易に発明をすることができたものではない。
オ 請求人の主張
上記相違点2-10について、請求人は弁駁書(第9~10頁)において、「甲1発明2に対して、・・・甲6に開示されている配管の支持構造を組み合わせることは、当業者にとって容易」であると主張する。
しかしながら、上記主張については、上記2(5)エ(ア)で説示したとおりであるから、採用できない。
(6)本件訂正発明6
本件訂正発明6と甲1発明2は、上記(5)ウの相違点2-8~2-11に加え、以下の点で相違する。
(相違点2-12)
本件訂正発明6は、「基台とテーブルとの上下方向の空隙又は断熱材の充填による間隔が、15mm以上である」のに対し、甲1発明2は、「装置11」がそのような構成を有するか明らかでない点。
上記相違点2-10~2-11についての判断は上記(5)エで説示したとおりであるから、上記相違点2-8、2-9及び2-12について検討するまでもなく、本件訂正発明6は、本件特許の出願前に当業者が、甲1発明2に基づいて容易に発明をすることができたものではない。
(7)本件訂正発明7
本件訂正発明7と甲1発明2は、上記(5)ウの相違点2-8~2-11に加え、以下の点で相違する。
(相違点2-13)
本件訂正発明7は、「ヒーティングパイプ又はクーリングパイプの上側部分及び支柱の前記各パイプに対する把持部分の上側部分を被覆する上側板を設けたうえで、基板を当該上側板の上側に固着している」構成を有するのに対し、甲1発明2は、「装置11」がそのような構成を有していない点。
上記相違点2-10~2-11についての判断は上記(5)エで説示したとおりであるから、上記相違点2-13について検討するまでもなく、本件訂正発明7は、本件特許の出願前に当業者が、甲1発明2に基づいて容易に発明をすることができたものではない。
(8)本件訂正発明8
本件訂正発明8と甲1発明2は、上記(5)ウの相違点2-8~2-11に加え、以下の点で相違する。
(相違点2-14)
本件訂正発明8は、「ヒーティングパイプ又はクーリングパイプの上側部分を被覆しない状態としたうえで、単一層を形成している基板の下側に設けた凹状と、前記ヒーティングパイプ又はクーリングパイプの上側部分とが嵌合している」構成を有するのに対し、甲1発明2は、「装置11」がそのような構成を有していない点。
上記相違点2-14について検討する。
上記相違点2-14は、上記2(8)の相違点1-14と同様であって、これに対する判断は、上記2(8)で説示したとおりである。
したがって、甲1発明2において、上記相違点2-14に係る構成を備えた本件訂正発明8の構成に到ることが容易であるとはいえない。
また、上記相違点2-10~2-11についての判断は上記(5)エで説示したとおりである。
したがって、本件訂正発明8は、本件特許の出願前に当業者が、甲1発明2に基づいて容易に発明をすることができたものではない。
第9 むすび
以上のとおりであるから、請求人の主張及び証拠方法によっては、本件訂正発明1~8についての特許を無効とすることはできない。
審判に関する費用については、特許法169条2項の規定で準用する民事訴訟法61条の規定により、請求人の負担とする。
よって、結論のとおり審決する。
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2023-800039