特許異議申立
2023-701376
塗装体の補修塗装方法
- 審判番号
- 2023-701376
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2019-098253
- 登録番号
- 7307521
- 請求日
- 2023年12月26日
- 審決日
- 2024年03月27日
- 公報発行日
- 2024年04月26日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】関西ペイント株式会社
- 【権利者代理人】弁理士法人三枝国際特許事務所
- 【異議申立人】秋山 朋毅
- 審判長/審判官
- 審判長 門前 浩一
- 審判官 長谷川 真一
- 審判官 亀ヶ谷 明久
- 分類
- P1651.113-Y (B05D) / P1651.121-Y (B05D)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7307521号発明「塗装体の補修塗装方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7307521号の請求項1ないし5に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本件特許に係る出願は、令和1年5月27日(優先権主張 平成30年7月27日(以下「本件優先日」という。))に出願したものであって、令和5年7月4日に特許権の設定登録がされ(請求項の数5)、同年同月12日に特許掲載公報が発行されたところ、令和5年12月26日に特許異議申立人 秋山 朋毅(以下「申立人」という。)によって、請求項1~5に係る特許についての特許異議申立てがされたものである。
第2 本件発明
本件発明は、次のとおりの発明(以下、請求項番号にしたがって「本件発明1」などといい、まとめて「本件発明」ということもある。)である。
「【請求項1】
塗装体の損傷部に、水性プライマーサーフェイサーを塗装して下地処理塗膜(I)を形成する工程(1)、
前記下地処理塗膜上に、水性着色ベース塗料組成物を塗装して着色ベース塗膜(II)を形成する工程(2)、
該工程(2)で得られた着色ベース塗膜上に水性2液型クリヤ塗料組成物を塗装し、乾燥させクリヤ塗膜(III)を形成する工程(3)、
を含む塗装体の補修塗装方法であって、
前記水性2液型クリヤ塗料組成物が、水酸基含有アクリル樹脂を含む主剤及び親水性ポリイソシアネート化合物(b1)を含む硬化剤を混合して得られる水性2液型クリヤ塗料組成物であって、
前記塗膜(I)及び塗膜(III)の吸水率が10%未満であることを特徴とする塗装体の補修塗装方法。
【請求項2】
前記水酸基含有アクリル樹脂がガラス転移温度40℃以上の水酸基含有アクリル樹脂(a2)を含み、かつ、
前記硬化剤 が親水性ポリイソシアネート化合物(b1)及び疎水性ポリイソシアネート化合物(b2)を固形分質量比で25/75~75/25の範囲内で含む請求項1の塗装体の補修塗装方法。
【請求項3】
前記水酸基含有アクリル樹脂(a2)が、主鎖部及び側鎖部からなるグラフト構造を有する水酸基含有アクリル樹脂の水分散体であって、主鎖部を構成する重合性不飽和モノマー成分(X)が、エポキシ基含有重合性不飽和モノマー(x1)及びその他の重合性不飽和モノマー(x2)を含み、側鎖部を構成する重合性不飽和モノマー成分(Y)が、カルボキシル基含有重合性不飽和モノマー(y1)、水酸基含有重合性不飽和モノマー(y2)及びその他の重合性不飽和モノマー(y3)を含んでなる請求項2に記載の塗装体の補修塗装方法。
【請求項4】
前記水性2液型クリヤ塗料組成物の主剤に更に、ポリエーテルポリオール化合物(c)を含有する請求項1~3のいずれか1項に記載の塗装体の補修塗装方法。
【請求項5】
前記水性2液型クリヤ塗料組成物の主剤及び/又は硬化剤が表面調整剤(d)を含有する請求項1~4のいずれか1項に記載の塗装体の補修塗装方法。」
第3 異議申立ての概要及び証拠方法
1 異議申立ての概要
(1)申立理由1(新規性欠如)
本件発明1~5は、甲1に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号の発明に該当するから、本件発明1~5に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
(2)申立理由2(進歩性欠如)
本件発明1~5は、甲1に記載された発明及び甲2~3に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、本件発明1~5に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
2 証拠方法の一覧
申立人は、次の甲第1号証~甲第3号証を提出した。甲第1号証~甲第3号証を、以下「甲1」~「甲3」ともいう。
甲第1号証:特開2018-2900号公報
甲第2号証:国際公開第2015/141537号
甲第3号証:特開2013-1897号公報
第4 甲号証の記載
1 甲1の記載
甲1には、次の記載がある。
「【請求項1】
アクリル樹脂を含む主剤(I)並びに硬化剤(II)を含む水性2液型クリヤ塗料組成物において、主剤(I)に
酸価が40mgKOH/g未満のアクリル樹脂(A1)と、
酸価が100~300mgKOH/gの範囲内のアクリル樹脂(A2)と、を含み、かつ、
硬化剤(II)に酸基を有するポリイソシアネート化合物(B)と、
水酸基を有さないグリコールエーテル系有機溶剤(C)と、を含むことを特徴とする水性2液型クリヤ塗料組成物。
・・・
【請求項4】
前記アクリル樹脂(A1)が、コア・シェル型構造を有する水分散性の水酸基含有アクリル樹脂であって、該コア部を構成する重合性不飽和モノマー成分(X)が、エポキシ基含有重合性不飽和モノマー(a1)、水酸基含有重合性不飽和モノマー(a2)及びその他の重合性不飽和モノマー(a3)を含み、シェル部を構成する重合性不飽和モノマー成分(Y)がカルボキシル基含有重合性不飽和モノマー(b1)、水酸基含有重合性不飽和モノマー(b2)及びその他の重合性不飽和モノマー(b3)を含んでなる請求項1~3のいずれか1項に記載の水性2液型クリヤ塗料組成物。
・・・
【請求項7】
さらに、主剤(I)及び/又は硬化剤(II)に表面調整剤としてポリエーテル変性シロキサン(E)を含有する請求項1~6のいずれか1項に記載の水性2液型クリヤ塗料組成物。
【請求項8】
塗装体の損傷部に、下地処理剤を充填もしくは塗装して下地処理層を形成する工程(1)、形成された下地処理層を乾燥させ、研磨する工程(2)、研磨された下地処理層上に、補修用着色ベースコート塗料組成物を塗装して着色ベース塗膜を形成する工程(3)、該工程(3)で得られた着色ベース塗膜上に請求項1~7のいずれか1項に記載の水性2液型クリヤ塗料組成物を塗装し、乾燥させる工程(4)を含むことを特徴とする塗装体の補修塗装方法。
【請求項9】
前記補修用着色ベースコート塗料組成物が、水溶性樹脂及び/又は水分散性樹脂、着色顔料及び/又は光輝顔料を主成分として含有する水性ベースコート塗料組成物である請求項8に記載の塗装体の補修塗装方法。」
「【技術分野】
【0001】
自動車外板、鉄道車両、産業機器などの金属製品の補修塗装に有用な水性2液型クリヤ塗料組成物及びこれを用いた塗装体の補修塗装方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境や人体に悪影響を及ぼすVOC(揮発性有機化合物)の大気中への放出を減らすため、有機溶剤型塗料に代わって水性塗料が普及しつつある。
【0003】
例えば、自動車車体等の外板部等は、防食及び美感の付与を目的として一般に、下塗り塗膜、中塗り塗膜、上塗り塗膜及びクリヤ塗膜からなる複層塗膜により被覆されている。これらの塗膜のうち、下塗り塗膜、中塗り塗膜及び上塗り塗膜を形成する下塗り塗料組成物、中塗り塗料組成物及び上塗り塗料組成物に関しては水性化が進められているが、トップコートであるクリヤ塗料組成物に関しては溶剤系クリヤ塗料組成物と同等の性能、仕上がり外観を達成することが困難であるのが現状であり、その開発が必要とされている。
【0004】
現在、補修用塗料においても溶剤型塗料から水性塗料へ代替されつつあるが、自動車補修塗装用のクリヤ塗料は、常温乾燥或いは強制乾燥の条件で硬化可能な2成分系塗料が広く用いられている。
【0005】
例えば、特許文献1において、本出願人は、2級水酸基含有モノマーを特定量ラジカル重合することによって得られる特定の水酸基価、酸価、重量平均分子量及びガラス転移温度を有するアクリル樹脂の水性分散体と、特定のポリイソシアネート硬化剤を含有する水性2液型クリヤ塗料組成物を提案した。この組成物によると、ポリイソシアネート硬化剤の分散性に優れ、かつオーバーベークであっても耐黄変性に優れる塗膜を得ることができる。しかしながら、有機溶剤型塗料と比べて水性塗料は乾燥に時間がかかることからタレ等が発生し、塗着後の乾燥性と仕上がり性が不十分となる場合があり、未だ改善が必要とされている。特に、素地が粗い被塗物;例えば研磨したあるいは研磨をしていない被塗物や着色ベース塗膜上等にスプレー塗装する場合、素地の粗さがそのまま上塗り塗面に反映されて平滑性が損なわれ、光沢度やツヤ感等の仕上がり性が悪化する場合があった。
・・・
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、粗度の高い被塗物上であっても得られる塗膜が平滑性等の仕上り性に極めて優れる水性2液型クリヤ塗料組成物及び複層塗膜形成方法を提供することである。
・・・
【発明の効果】
【0018】
本発明の水性2液型クリヤ塗料組成物を用いると、乾燥性に優れかつ下地の粗度が高い場合であっても得られる塗膜は平滑性等の仕上り性が優れる。また、タレ等も発生しにくいことから塗装作業性に優れる。」
「【0117】
<ポリイソシアネート化合物(B)>
上記酸基を有するポリイソシアネート化合物(B)を調整するためのポリイソシアネートとしては、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート類;水素添加キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等の環状脂肪族ジイソシアネート類;トリレンジイソシアネート、4,4´-ジフェニルメタンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート類;トリフェニルメタン-4,4´,4´´-トリイソシアネート、1,3,5-トリイソシアナトベンゼン、2,4,6-トリイソシアナトトルエン、4,4´-ジメチルジフェニルメタン-2,2´,5,5´-テトライソシアネートなどの3個以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物等の有機ポリイソシアネートそれ自体、またはこれらの各有機ポリイソシアネートと多価アルコール、低分子量ポリエステル樹脂もしくは水等との付加物、あるいは上記した各有機ポリイソシアネート同士の環化重合体、更にはイソシアネート・ビウレット体等を挙げることができる。中でも脂肪族ジイソシアネート類がポリイソシアネート化合物(B)の調整の点から好適である。
・・・
【0120】
また、本発明においては硬化剤(II)が、酸基を有するポリイソシアネート化合物(B)に加えて、上記(B)以外のポリイソシアネート化合物含んでもよい。
【0121】
上記(B)以外のポリイソシアネート化合物としては、従来有機溶剤型塗料に使用されるものを制限なく使用することができ、例えば酸基やノニオン性基を有さないポリイソシアネートを挙げることができ、具体的にはヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート類;水素添加キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等の環状脂肪族ジイソシアネート類;トリレンジイソシアネート、4,4´-ジフェニルメタンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート類;トリフェニルメタン-4,4´,4´´-トリイソシアネート、1,3,5-トリイソシアナトベンゼン、2,4,6-トリイソシアナトトルエン、4,4´-ジメチルジフェニルメタン-2,2´,5,5´-テトライソシアネートなどの3個以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物等の有機ポリイソシアネートそれ自体、またはこれらの各有機ポリイソシアネートと多価アルコール、低分子量ポリエステル樹脂もしくは水等との付加物、あるいは上記した各有機ポリイソシアネート同志の環化重合体、更にはイソシアネート・ビウレット体等を挙げることができ、単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。中でも環化重合体、特に脂肪族ジイソシアネート類の環化重合体が適している。
・・・
【0123】
上記(B)以外のポリイソシアネート化合物を併用した際の、酸基を有するポリイソシアネート化合物(B)の使用割合としては、全ポリイソシアネート化合物の合計質量中、上記(B)が10質量%以上、好ましくは40~100質量%の範囲内にあることがクリヤ塗膜の耐水性、及び上記アクリル樹脂(A)との混和性の観点から適当である。」
「【0144】
(1)下地処理層を形成する工程。
【0145】
下地処理材としては、特に制限なく使用することができ、従来から公知の例えば、パテ組成物やプライマーサーフェイサーなどが挙げられる。下地処理材を塗装することにより、塗装体の損傷部の露出あるいは凹凸素地面を保護し、また後述する着色ベース塗膜との密着性を向上させることができる。」
「【実施例】
【0163】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明する。尚、「部」及び「%」は、特記しない限り「質量部」及び「質量%」を示す。
【0164】
≪アクリル樹脂エマルションの製造方法≫
(製造例1)アクリル樹脂No.A1-1エマルションの製造
温度計、撹拌機、還流冷却管、窒素導入口を備えたガラス製4つ口フラスコにプロピレングリコールモノプロピルエーテルを50部入れ、撹拌しながら窒素気流下120℃まで昇温した。120℃に達したところで、表1の第1段階欄に記載のモノマー配合と重合開始剤にt-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート 1.5部を予め混合した混合溶液1を4時間かけて滴下し、さらに滴下終了後120℃の温度に1時間保持した。
引き続き120℃の温度を保持したまま、上記フラスコ中に、同表1の第2段階に欄に記載のモノマー配合とt-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート 0.3部を予め混合した混合溶液2を1時間かけて滴下し、さらに滴下終了後120℃に1.5時間保持してアクリルポリオール溶液を得た。
得られたアクリルポリオール溶液の樹脂固形分は77.5%であり、重量平均分子量は14,000であった。続いて、得られたアクリルポリオール溶液から固形分が85%になるまでプロピレングリコールモノプロピルエーテルを減圧下で留去した。これを95℃まで冷却し、ジメチルエタノールアミンでpHを8.0に調整して30分間撹拌した。さらに、撹拌しながら樹脂固形分が45%となるように脱イオン水を2時間かけて滴下してアクリル樹脂No.A1-1のエマルションを得た。得られたアクリル樹脂A1-1の重量平均分子量、樹脂固形分あたりの酸価、水酸基価、ガラス転移温度及びエマルションの平均粒子径を表1に示す。
【0165】
(製造例2~4)
製造例1において各共重合成分のモノマー組成及び配合量を下記表1に示す内容とする以外は製造例1と同様にしてアクリル樹脂No.A1-2、A1-3及びA1’-1エマルションを得た。アクリル樹脂No.A1-2、A1-3及びA1’-1の重量平均分子量、樹脂固形分あたりの酸価並びに水酸基価ガラス転移温度及びエマルションの平均粒子径をあわせて表1に示す。
【0166】
【表1】
[図:0001409187000001.jpg]
【0167】
(製造例5)アクリル樹脂No.A2-1エマルションの製造
還流冷却器、撹拌器、温度計、滴下ロートを装備した反応容器に脱イオン水28.5部、「Newcol 707SF」(日本乳化剤社製、商品名、アニオン性乳化剤、固形分30%)0.12部を加え、窒素置換後、80℃に保った。この中に過硫酸アンモニウム0.1部を添加し、添加20分後から下記組成をエマルション化してなるプレエマルションを4時間にわたって滴下した。
脱イオン水 36.1部
エチルアクリレート 57.5部
メタクリル酸 42.0部
1,6-ヘキサンジオールジアクリレート 0.5部
30%Newcol 707SF 6.6部
過硫酸アンモニウム 0.2部を滴下終了後、さらに2.5時間80℃に保持した。その後脱イオン水を加えながら40℃以下に温度を下げ、アンモニア水でpH7~8に調整し、固形分濃度50%のアクリル樹脂エマルションNo.A2-1を得た。得られたアクリル樹脂の樹脂固形分あたりの酸価、水酸基価及びガラス転移温度を表2にあわせて示す。
【0168】
(製造例6及び製造例7)
上記製造例5において、共重合成分のモノマー組成を表2にする以外は製造例5と同にして固形分濃度50%のアクリル樹脂A2-2及びA2’-1(比較用)のエマルションを得た。
【0169】
【表2】
[図:0001409187000002.jpg]
【0170】
<水性2液型クリヤ塗料組成物の調整方法>
(実施例1)水性2液型クリヤ塗料組成物No.1
製造例1で得られたアクリル樹脂No.A1-1エマルションの45%溶液 220部(固形分99部)、製造例6で得られたアクリル樹脂No.A2-1エマルションの50%溶液 2部(固形分1部)、BYK-348(注1) 0.5部、サーフィノール 104A(注3) 4.0部(固形分2.0部)、TINUVIN384-2(注6) 2.1部(固形分2.0質量部)、TINUVIN 292(注7) 1.0部を攪拌して主剤(I)を作成した。別容器で、硬化剤(II)としてバイヒジュール XP 2655(注9) 65部、ジメチルプロピレングリコール(注12) 39部、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート(注16) 13部、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート(注17) 13部を均一に混合して作製し、前記主剤(I)に、該硬化剤(II)と希釈水として固形分含有率が40質量%となるように加え攪拌して水性2液型クリヤ塗料組成物No.1を得た。硬化剤(II)を入れる前の各主剤の粘度特性を表3に記載した。
【0171】
(実施例2~13、比較例1~5)水性2液型クリヤ塗料組成物No.2~19
実施例1において、各成分の配合を表3~5に示す配合とする以外実施例1と同様にして、表3~5に示す固形分含有率が40質量%の水性2液型クリヤ塗料組成物No.2~19を得た。なお表3~5の配合量は、固形分の配合量を示す。
【0172】
【表3】
[図:0001409187000003.jpg]
・・・
【0175】
注1)BYK-348:商品名、ビックケミー・ジャパン社製、ポリエーテル変性シロキサン、重量平均分子量1,500、固形分100質量%、
注2)BYK-345:商品名、ビックケミー・ジャパン社製、ポリエーテル変性シロキサン、重量平均分子量1,300、固形分100質量%。
【0176】
注3)サーフィノール 104A:商品名、エアープロダクツ社製、アセチレンジオール系表面調整剤(/消泡剤)、固形分50質量%、2-エチルヘキサノール溶液、
注4)BYK-301:商品名、ビックケミー・ジャパン社製、シリコーン系表面調整剤、固形分100質量%、
注5)BYK-025:商品名、ビックケミー・ジャパン社製、シリコーン系表面調整剤、ポリエーテル変性ジメチルポリシロキサン、固形分100質量%、
注6)TINUVIN 384-2:商品名、BASF社製、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、固形分95質量%、1-メトキシ-2-プロピルアセテート5質量%。
【0177】
注7)TINUVIN 292:商品名、BASF社製、ヒンダードアミン系光安定剤、固形分100質量%。
【0178】
注8)pH7.6となる量を滴下:主剤(I)の成分を全て配合して室温(例えば23℃)で攪拌下中和剤をpH7.6となるまで滴下した。
【0179】
注9)バイヒジュール XP2655:商品名、住化コベストロウレタン社製、スルホン酸基を有するヘキサメチレンジイソシアネート系ポリイソシアネート、NCO含量21%、固形分100質量%、
注10)バイヒジュール XP2487/1:商品名、住化コベストロウレタン社製、スルホン酸基を有するヘキサメチレンジイソシアネート系ポリイソシアネート、NCO含量20.6%、固形分100質量%、
注11)バイヒジュール 3100:商品名、住化コベストロウレタン社製、ポリエチレングリコール変性ヘキサメチレンジイソシアネート系ポリイソシアネート、NCO含有量17.3%、固形分100質量%。
【0180】
注12)ジメチルプロピレンジグリコール:CASNo.111109-77-4、水酸基を有さないグリコールエーテル系有機溶剤、分子量162g/mol、沸点171℃、水との溶解度32.6wt%(20℃)、HLB値(デイビス法)7.1、
注13)ジエチレングリコールイソプロピルメチルエーテル:CASNo.77078-22-9、水酸基を有さないグリコールエーテル系有機溶剤、分子量162g/mol、沸点179℃、水との溶解度∞、HLB値(デイビス法)7.1、
注14)プロピレングリコールジメチルエーテル:CASNo.7778-85-0、水酸基を有さないグリコールエーテル系有機溶剤、分子量104g/mol、沸点97℃、水との溶解度43.6、HLB値(デイビス法)7.2、
注15)ジエチレングリコールジエチルエーテル:CASNo.112-36-7、水酸基を有さないグリコールエーテル系有機溶剤、分子量162g/mol、沸点189℃、水との溶解度∞、HLB値(デイビス法)7.1、
注16)エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート:CASNo.112-07-2、アセテート系有機溶剤、分子量160.2g/mol、沸点195.5℃、水との溶解度1.1、HLB値(デイビス法)7.7、
注17)ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート:CASNo.112-15-2、アセテート系有機溶剤、分子量176g/mol、沸点217.4、水との溶解度0.7、HLB値(デイビス法)7.3、
注18)ブチルアセテート:CASNo.123-86-4、分子量116g/mol、沸点126℃、水との溶解度0.7、HLB値(デイビス法)7.3。」
2 甲2の記載
甲2には、次の記載がある。
「[0001] 本発明は、有機溶媒、汎用アクリルモノマーやオリゴマーとの相溶性に優れ、活性エネルギー線に対して高硬化速度を有する(メタ)アクリルアミド系ウレタンオリゴマー及びそれを含有する密着性、耐湿性と表面硬化性に優れ、且つ低硬化収縮性、高透明性と高伸度を有する活性エネルギー線硬化性樹脂組成物及びその成形品に関する。」
「[0037] 本発明の(メタ)アクリルアミド系ウレタンオリゴマーからなる硬化膜の吸水率は2%以下であることが好ましく、更には1%以下であることがより好ましい。吸水率が2%より大きくなると、高湿度環境下で長時間に使用される場合、硬化膜が経時的に吸水し、膨膨潤による形状の歪みを生じるため密着性や透明性が低下する可能性がある。」
「[0054] 本発明の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を紙、布、不織布、ガラス、ポリエチレンテレフタレート、ジアセテートセルロース、トリアセテートセルロース、アクリル系ポリマー、ポリ塩化ビニル、セロハン、セルロイド、ポリカーボネート、ポリイミド等のプラスチック及び金属等の基材の表面や間に塗布し、活性エネルギー線照射で硬化させることにより、高性能のコーティング層やインキ層、粘着剤層、封止剤層又は接着剤層を得ることができる。特に、本発明の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物が高透明性のウレタンオリゴマーを有するため、光学用粘着剤、光学用接着剤や封止剤、光学用フィルムのコート材等光学用樹脂組成物として好適に用いることができる。又、これらの樹脂組成物を基材上に塗布する方法としては、スピンコート法、スプレーコート法、ディッピング法、グラビアロール法、ナイフコート法、リバースロール法、スクリーン印刷法、バーコーター法等通常の塗膜形成法が用いられることができる。又、基材間に塗布する方法としては、ラミネート法、ロールツーロール法等が挙げられる。」
「[0088](5) 硬化性
乾燥した塗膜を用い、上記のスポット式UV照射及びUV-LED照射により樹脂組成物を硬化させ、完全硬化するまでの所要時間を測定し、積算光量を算出した。完全硬化とは硬化膜の表面をシリコンゴムでなぞった際に跡がつかなくなる状態とする。
(6) 耐タック性
上記(5)のUV照射で得られた完全硬化塗膜を用い、硬化膜の表面を指で触り、べたつき具合を評価した。
◎:べたつきが全くない。
○:若干のべたつきがあるが、表面に指の跡が残らない。
△:べとつきがあり、表面に指の跡が残る。
×:べとつきがひどく、表面に指が貼りつく。
(7) 耐収縮性
上記(5)のUV照射で得られた完全硬化塗膜を用い、10cm角に切り取り、四隅の浮き上がりの高さを測定し、平均値を算出した。
◎:0.5mm以下の浮き上がりがある
○:1mm以下の浮き上がりがある
△:3mm以下の浮き上がりがある
×:大きくカールする
(8) 透明性(目視)
上記(5)のUV照射で得られた完全硬化塗膜を用いて、目視によって観察し、透明性を評価した。
◎:透明であり、曇りが全くない。
○:透明であり、曇りが僅かにある。
△:曇りがあるが、透明な部分も残ってある。
×:極度な曇りがあり、透明な部分が確認できない。
(9) 吸水率
深さ1mmとなるようにくり抜いたフッ素樹脂シート上に硬化性樹脂組成物を流し込み、真空乾燥(50℃、400torr)した後、UV照射(700mW/cm2、2000mJ/cm2)にて硬化させ、硬化シートを作製した。得られたシートを3cm角に切り取り、それを試験片とした。得られた試験片を温度50℃、相対湿度95%の環境に24時間静置し、その吸水率を式1に従って算出した。
(式1)
吸水率(%)=(恒温恒湿後の重量-恒温恒湿前の重量)/恒温恒湿前の重量×100
(10)密着性
上記(5)のUV照射で得られた完全硬化塗膜を用い、JIS K 5600に準拠して、1mm角のマス目を100個作成し、セロハンテープを貼り付け、一気に剥がした時に基板側に塗膜が残ったマス目の数を数えて評価した。
(11)破断強度・破断伸度
上記(5)のUV照射で得られた完全硬化塗膜を用い、JIS K 7127に準拠して、温度25℃、相対湿度50%の雰囲気下にて測定した(測定機器:テンシロン万能材料試験機RTA-100(オリエンテック社製)、試験条件:試験速度10mm/min、試験片サイズ:標線間距離25mm、幅15mm、厚さ50μm)」
「[0090]
[表3]
[図:0001409187000004.jpg]
」
3 甲3の記載
甲3には、次の記載がある。
「【技術分野】
【0001】
本発明は、塗料組成物および該塗料組成物を用いた塗膜形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車車体等の被塗物に塗装される塗料には、耐擦り傷性、耐酸性、耐汚染性等の塗膜性能に優れ、かつ塗膜外観に優れることが要求されている。
・・・
【0008】
したがって、本発明は、耐擦り傷性、耐酸性、耐汚染性及び塗膜外観に優れた塗膜を形成することができる塗料組成物を提供することを課題とする。」
「【0012】
以下、本発明の塗料組成物について詳細に説明する。本発明の塗料組成物(以下、「本塗料」と略称する場合がある)は、(A)水酸基価が110~700mgKOH/gの範囲内であり、かつ数平均分子量が200~1,800の範囲内である1分子中に3個以上の水酸基を有するポリオール化合物、(B)ポリイソシアネート化合物ならびに(C)(C1)水酸基価が50~200mgKOH/gの範囲内であり、かつ重量平均分子量が1,000以上5,000未満の範囲内である水酸基含有アクリル樹脂及び(C2)シリカ粒子を混合し80℃以上で加熱して得られる樹脂被覆シリカ粒子を含有する塗料組成物である。
【0013】
ポリオール化合物(A)
ポリオール化合物(A)は、水酸基価が110~700mgKOH/gの範囲内であり、かつ数平均分子量が200~1,800の範囲内である1分子中に3個以上の水酸基を有するポリオール化合物である。
【0014】
なかでも、形成される塗膜の耐擦り傷性、耐酸性、耐汚染性及び外観の観点から、水酸基価が130~600mgKOH/gの範囲内であることが好ましく、150~500mgKOH/gの範囲内であることがさらに好ましい。
【0015】
また、形成される塗膜の耐擦り傷性、耐酸性、耐汚染性及び外観の観点から、数平均分子量が250~1,500の範囲内であることが好ましく、300~1,200の範囲内であることがさらに好ましい。
【0016】
ポリオール化合物(A)としては、例えば、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール等を使用することができる。なかでも、形成される塗膜の耐擦り傷性の観点から、ポリエステルポリオール及びポリエーテルポリオールが好ましく、ポリエステルポリオールがさらに好ましい。」
第5 申立理由1、2(新規性欠如、進歩性欠如)についての当審の判断
1 甲1に記載された発明
甲1の請求項1及び8を引用する請求項9に記載された塗装体の補修塗装方法、並びに、同段落【0163】~【0180】、表1~3に記載された上記補修塗装方法で用いられるアクリル樹脂を含む水性2液型クリヤ塗料組成物の実施例のうち、製造例2のNo.A1-2のアクリル樹脂、製造例5のNo.A2-1のアクリル樹脂及びこれらを用いた実施例2の水性2液型クリヤ塗料組成物に着目して、整理すると、甲1には、以下の発明が記載されているといえる。
(甲1発明)
「塗装体の損傷部に、下地処理剤を充填もしくは塗装して下地処理層を形成する工程(1)、形成された下地処理層を乾燥させ、研磨する工程(2)、研磨された下地処理層上に、水溶性樹脂及び/又は水分散性樹脂、着色顔料及び/又は光輝顔料を主成分として含有する水性ベースコート塗料組成物からなる補修用着色ベースコート塗料組成物を塗装して着色ベース塗膜を形成する工程(3)、該工程(3)で得られた着色ベース塗膜上に水性2液型クリヤ塗料組成物を塗装し、乾燥させる工程(4)を含む塗装体の補修塗装方法であって、
上記水性2液型クリヤ塗料組成物が、アクリル樹脂を含む主剤(I)及び硬化剤(II)を含む水性2液型クリヤ塗料組成物において、主剤(I)に酸価が40mgKOH/g未満のアクリル樹脂(A1)と、酸価が100~300mgKOH/gの範囲内のアクリル樹脂(A2)と、を含み、かつ、硬化剤(II)に酸基を有するポリイソシアネート化合物(B)と、水酸基を有さないグリコールエーテル系有機溶剤(C)とを含み、
アクリル樹脂(A1)が、温度計、撹拌機、還流冷却管、窒素導入口を備えたガラス製4つ口フラスコにプロピレングリコールモノプロピルエーテルを50部入れ、撹拌しながら窒素気流下120℃まで昇温し、120℃に達したところで、スチレン11.7質量部、メチルメタクリレート13.0質量部、i-ブチルメタクリレート18.9質量部、n-ブチルメタクリレート13.5質量部、n-ブチルアクリレート3.6質量部、2-ヒドロキシエチルメタクリレート23.7質量部、グリシジルメタクリレート0.6質量部のモノマーと、重合開始剤であるt-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート1.5質量部とを予め混合した混合溶液1を4時間かけて滴下し、さらに滴下終了後120℃の温度に1時間保持し、120℃の温度を保持したまま、上記フラスコ中に、スチレン1.3質量部、メチルメタクリレート1.44質量部、n-ブチルメタクリレート1.5質量部、i-ブチルメタクリレート2.1質量部、n-ブチルアクリレート1.4質量部、2-ヒドロキシエチルメタクリレート4.26質量部、アクリル酸3.00質量部のモノマーと、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート0.3質量部とを予め混合した混合溶液2を1時間かけて滴下し、さらに滴下終了後120℃に1.5時間保持してアクリルポリオール溶液とし、固形分が85%になるまでプロピレングリコールモノプロピルエーテルを減圧下で留去し、これを95℃まで冷却し、ジメチルエタノールアミンでpHを8.0に調整して30分間撹拌し、さらに、撹拌しながら樹脂固形分が45%となるように脱イオン水を2時間かけて滴下して得られた、水酸基価が120mgKOH/gのNo.A1-2のアクリル樹脂エマルションであり、
アクリル樹脂(A2)が、還流冷却器、撹拌器、温度計、滴下ロートを装備した反応容器に、脱イオン水28.5質量部、「Newcol 707SF」(日本乳化剤社製、商品名、アニオン性乳化剤、固形分30%)0.12質量部を加え、窒素置換後、80℃に保ち、この中に過硫酸アンモニウム0.1質量部を添加し、添加20分後から、脱イオン水36.1質量部、エチルアクリレート57.5質量部、メタクリル酸42.0質量部、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート0.5質量部、30%Newcol 707SF6.6質量部、過硫酸アンモニウム0.2質量部をエマルション化してなるプレエマルションを4時間にわたって滴下し、滴下終了後、さらに2.5時間80℃に保持し、その後脱イオン水を加えながら40℃以下に温度を下げ、アンモニア水でpH7~8に調整して得られた、固形分濃度50%のNo.A2-1のアクリル樹脂エマルションであり、
上記水性2液型クリヤ塗料組成物が、上記No.A1-2のアクリル樹脂エマルションの45%溶液220質量部(固形分99質量部)、No.A2-1のアクリル樹脂エマルションの50%溶液2質量部(固形分1質量部)、BYK-348(ビックケミー・ジャパン社製、ポリエーテル変性シロキサン、重量平均分子量1,500、固形分100質量%)0.5質量部、サーフィノール104A(エアープロダクツ社製、アセチレンジオール系表面調整剤(/消泡剤)、固形分50質量%、2-エチルヘキサノール溶液)4.0質量部(固形分2.0部)、TINUVIN 384-2(BASF社製、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、固形分95質量%、1-メトキシ-2-プロピルアセテート5質量%)2.1質量部(固形分2.0質量部)、TINUVIN 292(BASF社製、ヒンダードアミン系光安定剤、固形分100質量%)1.0質量部を攪拌して得られた主剤(I)と、バイヒジュール XP 2655(住化コベストロウレタン社製、スルホン酸基を有するヘキサメチレンジイソシアネート系ポリイソシアネート、NCO含量21%、固形分100質量%)65質量部、ジメチルプロピレングリコール(水酸基を有さないグリコールエーテル系有機溶剤)39質量部、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート(アセテート系有機溶剤)13質量部、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート(アセテート系有機溶剤)13質量部を均一に混合して得られた硬化剤(II)と、と希釈水とを混合して、固形分含有率が40質量%となるようにしたものである
塗装体の補修塗装方法。」
2 対比
甲1発明と本件発明1を対比する。
甲1発明の「補修塗装方法」は、本件発明1の「補修塗装方法」に相当する。
また、甲1発明の「塗装体の損傷部に、下地処理剤を充填もしくは塗装して下地処理層を形成する工程(1)」は、本件発明1の「塗装体の損傷部に・・・下地処理塗膜(I)を形成する工程(1)」に相当する。
さらに、甲1発明の「研磨された下地処理層上に、水溶性樹脂及び/又は水分散性樹脂、着色顔料及び/又は光輝顔料を主成分として含有する水性ベースコート塗料組成物からなる補修用着色ベースコート塗料組成物を塗装して着色ベース塗膜を形成する工程(3)」は、本件発明1の「下地処理塗膜上に、水性着色ベース塗料組成物を塗装して着色ベース塗膜(II)を形成する工程(2)」に相当する。
加えて、甲1発明の「該工程(3)で得られた着色ベース塗膜上に水性2液型クリヤ塗料組成物を塗装し、乾燥させる工程(4)」は、本件発明1の「該工程(2)で得られた着色ベース塗膜上に水性2液型クリヤ塗料組成物を塗装し、乾燥させクリヤ塗膜(III)を形成する工程(3)」に相当する。
そして、甲1発明の水性2液型クリヤ塗料組成物は、「水酸基価が120mgKOH/gのNo.A1-2のアクリル樹脂」を含む「主剤(I)」と、「バイヒジュール XP 2655(住化コベストロウレタン社製、スルホン酸基を有するヘキサメチレンジイソシアネート系ポリイソシアネート」を含む「硬化剤(II)」が混合されたものであるところ、「水酸基価が120mgKOH/gのNo.A1-2のアクリル樹脂」は、本件発明1の「水酸基含有アクリル樹脂」に相当し、「バイヒジュール XP 2655(住化コベストロウレタン社製、スルホン酸基を有するヘキサメチレンジイソシアネート系ポリイソシアネート」は、本件発明1の「親水性ポリイソシアネート化合物(b1)」に相当するから、甲1発明は、本件発明1の「水性2液型クリヤ塗料組成物が、水酸基含有アクリル樹脂を含む主剤及び親水性ポリイソシアネート化合物(b1)を含む硬化剤を混合して得られる」という発明特定事項を充足する。
そうすると、本件発明1と甲1発明とは、以下の一致点及び相違点を有する。
(一致点)
「塗装体の損傷部に、下地処理塗膜(I)を形成する工程(1)、
前記下地処理塗膜上に、水性着色ベース塗料組成物を塗装して着色ベース塗膜(II)を形成する工程(2)、
該工程(2)で得られた着色ベース塗膜上に水性2液型クリヤ塗料組成物を塗装し、乾燥させクリヤ塗膜(III)を形成する工程(3)、
を含む塗装体の補修塗装方法であって、
前記水性2液型クリヤ塗料組成物が、水酸基含有アクリル樹脂を含む主剤及び親水性ポリイソシアネート化合物(b1)を含む硬化剤を混合して得られる水性2液型クリヤ塗料組成物である、塗装体の補修塗装方法。」
(相違点1)
本件発明1は、クリヤ塗膜(III)の吸水率が10%未満であるのに対し、甲1発明ではそのような特定がされていない点。
(相違点2)
本件発明1の下地処理塗膜(I)は、水性プライマーサーフェイサーを塗装して形成され、吸水率が10%未満であるのに対し、甲1発明ではそのような特定がされていない点。
3 相違点の検討
(1)相違点1について
甲1には、水性2液型クリヤ塗料組成物の組成についての記載はある一方、それを用いて得られたクリヤ塗膜についての吸水率についての記載はない。
ここで、甲1発明のクリヤ塗膜が、その組成等に基づいて、吸水率が10%未満といえるかを検討する。
本件発明1の実施例である製造例6の水性2液型クリヤ塗料組成物に含まれる製造例2のNo.a-2のアクリル樹脂について、モノマー成分全体の含有量を100として、各成分の含有量及びSPが9.2未満のモノマー成分の合計量を質量%基準として整理すると以下の表のとおりである。また、甲1発明の水性2液型クリヤ塗料組成物に含まれるNo.A1-2のアクリル樹脂のモノマー成分の含有量及びSPが9.2未満のモノマー成分の合計量についても同表に示す。
表
[図:0001409187000005.jpg]
また、本件発明1の実施例で用いられる製造例6の水性2液型クリヤ塗料組成物は、製造例2のNo.a-2のアクリル樹脂を含む主剤と、ポリイソシアネート化合物を含む硬化剤とをNCO/OHが1.5になるように混合されたものである一方、甲1発明の水性2液型クリヤ塗料組成物は、主剤として、水酸基価が120mgKOH/gである製造例2のNo.A1-2のアクリル樹脂を99質量部含み、硬化剤として、NCO含量が21%のポリイソシアネート化合物(バイヒジュール XP2655)を65.0質量部含むものである。
ここで、甲1発明の水性2液型クリヤ塗料組成物におけるNo.A1-2のアクリル樹脂の水酸基価と含有量から、水性2液型クリヤ塗料組成物に含まれる水酸基のモル数を計算すると、
120(mgKOH/g)÷56100(mg/mol)(KOHのモル質量)×99(g)=0.212(mol)
となる。
また、甲1発明の水性2液型クリヤ塗料組成物におけるポリイソシアネート化合物の含有量とNCO含量から、水性2液型クリヤ塗料組成物に含まれるNCOのモル数を計算すると、
65(g)×21/100÷42(g)(NCOのモル質量)=0.325
となる。
これらから、甲1発明の水性2液型クリヤ塗料組成物におけるNCO/OHを計算すると、1.53となる。
そうすると、水性2液型クリヤ塗料組成物に含まれるアクリル樹脂のモノマー組成やSPが9.2以下のモノマーの含有量、NCO/OHの値は、本件発明1と甲1発明とで類似しているといえる。
また、本件明細書の段落【0095】には、「特にアクリル樹脂(a)の溶解性パラメーター(SP値)が8.7~9.2の範囲内であることが、乾燥塗膜の吸水率を下げる点、複層塗膜の耐水付着性の点から好まし」いと記載されており、同段落【0097】には、「アクリル樹脂(a)の溶解性パラメーターを上記範囲内とするために、共重合成分の内、モノマーのSP値が9.2未満のモノマーが少なくとも10質量%以上、15~60質量%範囲内、好ましくは20~55質量%範囲内で含まれることが、塗膜の吸水率を低くしかつ耐水性及び耐水付着性を向上させる点から好ましい。」と記載されており、甲1発明の水性2液型クリヤ塗料組成物に含まれるアクリル樹脂のSP値が9.2以下のモノマーの総量は、本件明細書において塗膜の吸水率を低くするのに好ましいとされる範囲を満たしている。
しかしながら、クリヤ塗膜の吸水率は、アクリル樹脂の組成やNCO/OHの値だけでなく、水性2液型クリヤ塗料組成物における、ポリエーテルポリオールや希釈剤等の他の含有成分、粘度、塗装の際の乾燥条件、温度条件等の他の条件にも影響されるものであるから、上記のように、甲1発明の水性2液型クリヤ塗料組成物におけるアクリル樹脂のモノマー組成やSPが9.2以下のモノマーの含有量、NCO/OHの値が、本件発明1と類似しているとしても、必ずしも、得られたクリヤ塗膜の吸水率が10%未満になるとはいえない。
そうすると、上記相違点1は実質的な相違点である。
また、甲2の段落【0001】、【0037】、【0054】には、高性能のコーティング層、インキ層、粘着剤層、封止剤層、接着剤層等に用いられる活性エネルギー線で硬化させる(メタ)アクリルアミド系ウレタンオリゴマーからなる硬化膜において、吸水率が2%より大きくなると、高湿度環境下で長時間使用される場合、硬化膜が経時的に吸水し、膨潤による形状の歪みを生じるため密着性や透明性が低下する旨記載されているところ、甲2に記載された技術は、塗装体の補修塗装に用いるものではなく、水性2液型クリヤ塗料組成物に関するものでもないため、甲2に記載された技術を適用して、甲1発明のクリヤ塗膜の吸水率を10%未満とする動機付けはない。
よって、甲1発明において、クリヤ塗膜の吸水率を10%未満とすることは、当業者が容易になし得ることとはいえない。
(2)相違点2について
甲1の段落【0144】~【0145】には、下地処理層を形成する工程に関し、下地処理材としては、特に制限なく使用することができ、従来から公知の例えば、パテ組成物やプライマーサーフェイサーなどが用いられる旨記載されている。
しかしながら、甲1には、下地処理材として、水性のプライマーサーフェイサーを用いることや、その具体的な組成、下地処理層の吸水率については記載も示唆もされていないから、甲1発明の下地処理層の吸水率が10%未満であるということはできない。
そうすると、上記相違点2は、実質的な相違点といえる。
また、上記(1)において検討した甲1発明のクリヤ塗膜の吸水率が、仮に10%未満であったとしても、甲1には、下地処理材としてどのような組成の塗料を用いるかについては、何ら具体的に記載されていないから、甲1発明の下地処理層に、甲1発明のクリヤ塗膜と同様の塗膜を用いる動機付けはない。
さらに、上記(1)でも記載したとおり、甲2には、(メタ)アクリルアミド系ウレタンオリゴマーからなる硬化膜において、吸水率が2%より大きくなると、高湿度環境下で長時間使用される場合、硬化膜が経時的に吸水し、膨潤による形状の歪みを生じるため密着性や透明性が低下する旨記載されているところ、甲2に記載された技術は、塗装体の補修塗装に用いるものではなく、水性2液型クリヤ塗料組成物に関するものでもないため、甲2に記載された技術を適用して、甲1発明のクリヤ塗膜の吸水率を10%未満とする動機付けはない。
よって、甲1発明において、甲1~2に記載された事項に基づいて、下地処理層の吸水率を10%未満とすることは、当業者が容易になし得ることとはいえない。
(3)したがって、本件発明1は、甲1発明と同一ではなく、甲1発明及び甲2に記載された事項に基づいて当業者が容易になし得たものとはいえない。
4 申立人の主張について
申立人は、申立書の第7~11ページにおいて、上記相違点1及び2は、実質的な相違点ではない旨主張する。
そこで、申立人の上記主張について検討すると、上記3(1)で説示したように、甲1発明は、水性2液型クリヤ塗料組成物におけるアクリル樹脂のモノマー組成やSPが9.2以下のモノマーの含有量、NCO/OHの値が、本件発明1と類似しているとしても、クリヤ塗膜の吸水率は、アクリル樹脂の組成やNCO/OHの値だけでなく、水性2液型クリヤ塗料組成物におけるポリエーテルポリオールや希釈剤等の他の含有成分、粘度、塗装の際の乾燥条件、温度条件等の他の条件にも影響されるものであるから、必ずしも得られるクリヤ塗膜の吸水率が10%未満になるとはいえず、相違点1は実質的な相違点である。
仮に、甲1発明のクリヤ塗膜の吸水率が10%未満であるといえたとしても、上記3(2)で説示したように、甲1には、下地処理層の吸水率を10%未満にすることについては記載も示唆もなく、下地処理材としてどのような組成の塗料を用いるかについても、何ら具体的に記載されていないから、甲1発明の下地処理層に、甲1発明のクリヤ塗膜と同様の塗膜が用いられているとはいえず、甲1発明の下地処理層の吸水率が10%未満であるとはいえないから、相違点2は実質的な相違点である。
また、申立人は、本件明細書の段落【0022】、【0055】の記載から、塗膜の吸水率を低くすることは、耐水性を向上させるために必要と主張しているが、このような主張は本件優先日前に本件発明が容易に発明できたという主張にはなり得ないから、このような主張は失当である。
よって、上記申立人の主張はいずれも採用できない。
5 小括
以上のとおり、本件発明1は、甲1に記載された発明でなく、特許法第29条第1項第3号の発明に該当せず、甲1に記載された発明及び甲2に記載された事項に基づいて本件優先日前に当業者が容易に発明できたものといえないから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものではない。
6 本件発明2~5について
本件発明2~5は、本件発明1を引用するものであるから、上記1~5で検討したのと同様の理由により、甲1に記載された発明でなく、甲1に記載された発明及び甲2~3に記載された事項に基いて当業者が容易になし得たものではない。
第6 むすび
以上のとおりであるから、申立人による特許異議申立書の理由及び証拠によっては、本件特許の請求項1~5に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1~5に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2023-701376