特許異議申立
2023-701314
缶体の印刷システム、管理装置およびプログラム
- 審判番号
- 2023-701314
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2019-532458
- 登録番号
- 7291626
- 請求日
- 2023年12月13日
- 審決日
- 2024年07月29日
- 公報発行日
- 2024年08月30日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】アルテミラ株式会社
- 【権利者代理人】古部 次郎
- 【権利者代理人】水戸 洋介
- 【権利者代理人】尾形 文雄
- 【異議申立人】柏木 香陽子
- 審判長/審判官
- 審判長 篠塚 隆
- 審判官 野崎 大進
- 審判官 北元 健太
- 分類
- P1651.55 -Y (G06F) / P1651.537-Y (G06F) / P1651.121-Y (G06F)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第17条の2第3項、特許法第36条第6項第1号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7291626号発明「缶体の印刷システム、管理装置およびプログラム」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7291626号の請求項1ないし11に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本件特許についての出願は、令和5年6月7日にその特許権の設定登録がされ、令和5年6月15日に特許掲載公報が発行された。
本件特許異議の申立ての経緯は、以下のとおりである。
令和5年12月13日 特許異議申立人 柏木 香陽子(以下、「申立人」
という。)による請求項1-11に係る特許に対する
特許異議申立書(以下、「申立書」という。)提出
令和6年 2月26付け 取消理由通知(以下、「取消理由通知1」という。)
令和6年 4月24日 特許権者による意見書 提出
令和6年 5月13付け 取消理由通知(以下、「取消理由通知2」という。)
令和6年 7月11日 特許権者による意見書 提出
第2 本件特許発明
本件特許の請求項1-11に係る発明(以下、それぞれ「本件特許発明1」-「本件特許発明11」という。)は、本件特許の特許掲載公報の特許請求の範囲の請求項1-11に記載された事項により特定される以下のとおりの発明である。(請求項1について、対比のため当審で、<A>~<F>と分説した。)
「【請求項1】
<A> 異なる場所に設置され、インクジェット印刷により缶体に印刷を行う複数の印刷装置と、
<B> 前記複数の印刷装置を管理する管理装置と、
<C> ユーザが操作するクライアント装置に接続され、印刷が行われた缶体の試作に用いられる試作用プリンタであって、試作用印刷画像データを基に缶体への印刷を行う試作用プリンタと、
を備え、
<D> 前記管理装置は、取得したデザイン画像に対して缶体に印刷するための画像処理を施し、前記複数の印刷装置にて用いられる印刷画像データである印刷装置用印刷画像データを作成し、
<E> 前記試作用プリンタにて用いられる前記試作用印刷画像データは、デザイン画像と当該デザイン画像を基に前記クライアント装置にて作成された見本画像に対する前記ユーザの色変更情報とを基に、前記印刷装置用印刷画像データを作成する前記管理装置によって作成される、
<F> 缶体の印刷システム。
【請求項2】
前記管理装置は、缶体の素地面、または缶体の素地面上に所定の表面処理が施されたコート面に対して前記デザイン画像を印刷するための色に関する画像処理を行うことを特徴とする請求項1に記載の缶体の印刷システム。
【請求項3】
前記管理装置は、前記複数の印刷装置によって印刷を行う缶体の数に関する情報を作成することを特徴とする請求項1に記載の缶体の印刷システム。
【請求項4】
前記異なる場所ごとに設けられ、前記管理装置と前記印刷装置とを中継する複数の中継装置を備えることを特徴とする請求項1に記載の缶体の印刷システム。
【請求項5】
前記中継装置は、前記印刷装置により印刷が行われた印刷缶の数に関する情報を取得することを特徴とする請求項4に記載の缶体の印刷システム。
【請求項6】
前記印刷装置により印刷が行われた印刷缶の印刷の状態を検査する検査装置を備え、
前記検査装置は、前記印刷装置用印刷画像データを取得することを特徴とする請求項1に記載の缶体の印刷システム。
【請求項7】
前記異なる場所ごとに設けられ、前記管理装置と前記印刷装置とを中継する複数の中継装置を備え、
前記検査装置は、前記印刷缶を読み取った読取画像データと前記印刷装置用印刷画像データとに基づいて印刷の不具合が発生した印刷缶の数を特定し、特定した当該印刷缶の数に関する情報を前記中継装置に送信することを特徴とする請求項6に記載の缶体の印刷システム。
【請求項8】
前記管理装置は、前記デザイン画像が缶体に印刷された場合の見本画像をクライアント装置に送信することを特徴とする請求項1に記載の缶体の印刷システム。
【請求項9】
前記管理装置は、前記見本画像に対する色の変更に関する情報を前記クライアント装置から取得することを特徴とする請求項8に記載の缶体の印刷システム。
【請求項10】
インクジェット印刷により缶体に印刷を行うとともに異なる場所に設置される複数の印刷装置を管理する管理装置であって、
取得したデザイン画像に対して缶体に印刷するための画像処理を施し、前記複数の印刷装置にて用いられる印刷画像データである印刷装置用印刷画像データを作成する作成部と、
前記作成部が作成した前記印刷装置用印刷画像データを、前記複数の印刷装置に向けて送信する送信部と、
印刷が行われた缶体の試作に用いられユーザが操作するクライアント装置に接続される試作用プリンタが用いる印刷画像データである試作用印刷画像データを作成する試作用印刷画像データ作成部であって、デザイン画像と当該デザイン画像を基に当該クライアント装置にて作成された見本画像に対するユーザの色変更情報とを基に、当該試作用印刷画像データを作成する試作用印刷画像データ作成部と、
前記試作用印刷画像データ作成部が作成した試作用印刷画像データを、前記試作用プリンタに向けて送信する送信部と、
を備えることを特徴とする管理装置。
【請求項11】
インクジェット印刷により缶体に印刷を行うとともに異なる場所に設置される複数の印刷装置を管理する管理装置として機能するコンピュータに、
取得したデザイン画像に対して缶体に印刷するための画像処理を施し、前記複数の印刷装置にて用いられる印刷画像データである印刷装置用印刷画像データを作成する機能と、
作成された前記印刷装置用印刷画像データを、前記複数の印刷装置に向けて送信する機能と、
印刷が行われた缶体の試作に用いられユーザが操作するクライアント装置に接続される試作用プリンタが用いる印刷画像データである試作用印刷画像データを作成する機能であって、デザイン画像と当該デザイン画像を基に当該クライアント装置にて作成された見本画像に対するユーザの色変更情報とを基に、当該試作用印刷画像データを作成する機能と、
作成された試作用印刷画像データを、前記試作用プリンタに向けて送信する機能と、
を実現させるためのプログラム。」
第3 申立理由の概要
1 理由1(補正要件違反(新規事項追加):特許法第17条の2第3項)
申立人は、令和4年9月7日付けの手続補正書により補正された請求項1、10、11に記載された「試作用印刷画像データ」なる技術事項、および、請求項1、6、7、10、11に記載された「印刷装置用印刷画像データ」なる技術事項は、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載されておらず、当該手続補正書による特許請求の範囲の補正は、特許法第17条の2第3項の規定に違反したものであり、請求項1-11に係る発明は取り消されるべきものである旨主張している。(申立書 9頁4行~10頁4行)
2 理由2(サポート要件違反:特許法第36条第6項第1号)
申立人は、請求項1、10、11に記載された「試作用印刷画像データ」、請求項1、6、7、10、11に記載された「印刷装置用印刷画像データ」なる技術事項は、発明の詳細な説明に記載されておらず、これらを発明の技術的事項とする請求項1、6、7、10、11に係る発明、及び、これらを引用する請求項2-5、8-9係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものではないから、請求項1-11に係る特許は特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第1号の規定に違反したものであり、請求項1-11に係る発明は取り消されるべきものである旨主張している。(申立書 10頁5行~11頁1行)
3 理由3(進歩性欠如:特許法第29条第2項)
申立人は、下記の甲第1号証ないし甲第5号証を提出し、請求項1-11に係る発明は、甲第1号証に記載された発明および甲第2号証ないし甲第5号証に記載された技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであって、請求項1-11に係る特許は特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない旨主張している。(申立書 11頁2行~18頁9行)
記
甲第1号証:特開2002-182883号公報
甲第2号証:特開平10-113609号公報
甲第3号証:特開2002-237959号公報
甲第4号証:特開2014-50786号公報
甲第5号証:特開2016-32879号公報
第4 取消理由の概要
1 取消理由通知1
本件特許の請求項1-11に係る特許に対して、当審が令和6年2月26付けで特許権者に通知した取消理由通知1の要旨は、次のとおりである。
(進歩性)本件特許の請求項1-5、8-11に係る発明は、下記の引用文献1に記載された発明および引用文献2ならびに3に記載の周知技術に基いて、本件特許の請求項6および7に係る発明は、下記の引用文献1に記載された発明および引用文献2ないし4に記載の技術的事項に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、当該請求項に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
記
・請求項1-4
引用文献1: 特開2002-182883号公報
(申立人が提出した甲第1号証)
引用文献2: 特開2014-50786号公報
(申立人が提出した甲第4号証)
引用文献3: 特開2002-237959号公報
(申立人が提出した甲第3号証)
引用文献4: 特開2016-32879号公報
(申立人が提出した甲第5号証)
2 取消理由通知2
本件特許の請求項1-11に係る特許に対して、当審が令和6年5月13付けで特許権者に通知した取消理由通知2の要旨は、次のとおりである。
(進歩性)本件特許の請求項1-5、8-11に係る発明は、下記の引用文献1に記載された発明および引用文献2ないし4に記載の技術的事項に基いて、本件特許の請求項6および7に係る発明は、下記の引用文献1に記載された発明および引用文献2ないし5に記載の技術的事項に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、当該請求項に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
記
引用文献1: 特開2002-182883号公報
(申立人が提出した甲第1号証)
引用文献2: 特開2014-50786号公報
(申立人が提出した甲第4号証)
引用文献3: 特開2002-237959号公報
(申立人が提出した甲第3号証)
引用文献4: 特開平10-113609号公報
(申立人が提出した甲第2号証)
引用文献5: 特開2016-32879号公報
(申立人が提出した甲第5号証)
第5 引用文献および甲号証
1 引用文献1(甲第1号証)
(1)引用文献1(甲第1号証)の記載
申立人が主たる証拠として提出し、当審が取消理由通知1および2で引用した引用文献1(甲第1号証)には、図面とともに、以下の記載がある(下線は、当審が付した。以下、同様。)。
ア「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、印刷物を作成するまでの期間および印刷物を作成してからこれを公衆に配布するまでの期間を大幅に短縮することのできる印刷物製作方法、印刷物の配布方法および印刷物製作システムに関する。
【0002】
【従来の技術】近年のエレクトロニクスの進展は、印刷技術、製版技術にも大きな進歩をもたらしており、高品質な印刷を簡単な工程により、しかも短期間で行なえるようになってきている。そのような、企画から印刷までを短期間で行なうことが望ましい印刷物の一つに、新聞に折り込まれて新聞と一緒に一般家庭の購読者に広告のために配られる印刷物である折り込みチラシ(以後、単にチラシと言う。)がある。
【0003】このチラシの印刷工程、特に、カラーのチラシの印刷工程について図7および図8を参照して説明する。たとえばスーパーマーケットなどのチラシの発注者91においては、社内の各部門が話し合いを行ってチラシの内容を詳細にまたは大まかに定め、その内容に基づいてチラシ作成の依頼を指示書として印刷会社93に発注する。印刷会社93は、この指示書に基づいて素案(以後、カラーカンプ(color comprehensive) と言う。)を作成し、このカラーカンプを発注者91に送付し印刷原稿の提案を行なう。発注者91と印刷会社93とは、このカラーカンプをもとに協議を行い、修正した新たなカラーカンプを、たとえば、数回作成しながら最終的な印刷原稿を取りまとめる。
【0004】その印刷原稿に基づいて、印刷会社93は印刷用の原稿を作成し、この原稿により校正刷りを作成し、発注者91に提出する。発注者91と印刷会社93とは、この校正刷りをもとに協議を行い、新たな校正刷りを数回作成しながら最終的な印刷物を取り決める。この時の最終的な校正刷りはOKシート(校了紙)と呼ばれている。印刷会社93は、このOKシートを作成した印刷原稿により印刷版を作成し、印刷工程にて印刷を開始する。このOKシート(校了紙)は、印刷工程での印刷見本となる。
【0005】ところで、チラシは、極狭い地域だけでなく、広範な地域や全国に一斉に配布される場合がある。この場合に、たとえば、一か所において集中的にチラシを印刷し、このチラシを広範な地域に運搬すると、物流コストが嵩むとともに、時間的な制約も受ける。このため、図8に示すように、印刷会社93が、配布地域の近くに所在する複数の印刷会社95から印刷作業を委託し、印刷会社95からの協力を得る場合が多い。いわゆる分散印刷と言われる形態である。分散印刷をするためには、まず、印刷会社93が全国の協力印刷会社95に、印刷版を作成するための印刷原稿(フィルム)と、印刷物の色見本となる校正刷りを配送する。各協力印刷会社95においては、配送されたフィルムより製版し、これを用いて印刷を行ない、この印刷物と配送さた校正刷りとを比較することにより、その印刷物が所望の配色の印刷物であるかを確認する。刷り上がった印刷物は、新聞へ折り込むために地域ごとの折り込みセンターに送られる。この、折り込みセンターでは、新聞に折り込みやすいようにチラシを仕分けしたのち、仕分けしたチラシを各新聞販売店に届ける。新聞販売店では、チラシを新聞に折り込み、各家庭に配布する。
【0006】このようなチラシの印刷を行なう場合の、各工程に要する時間について、図9を参照して説明する。たとえば、週末の売り出しのために、金曜日の朝刊紙にチラシを折り込もうとした場合、発注者91における企画は3週間前の週末頃から開始される。そして、約1週間程の間に、カラーカンプをもとに発注者91と印刷会社93とが協議を繰り返し、印刷原稿をとりまとめる。次に、チラシ折り込みの前週の月曜日あたりからDTPを用いた印刷用の原稿の作成を開始し、発注者91と印刷会社93との間で校正刷りと協議を繰り返す。そして、その週の土曜日、すなわち、チラシ折り込みの6日前までに校了を終え、印刷会社93において校了後のフィルムを作成する。
【0007】出来上がったフィルムと校了紙(色見本)は、たとえば日曜日1日をかけて全国に配送される。そして、新聞へのチラシの折り込みをすべき週に入ったら、火曜日午前中までに各地域の協力印刷会社95で印刷が行なわれ、刷り上がったチラシが火曜日の午後には折り込みセンターに送られる。そして、木曜日の午後までに折り込みセンターから各新聞販売店に届けられ、木曜日の夜から新聞販売店で新聞に折り込まれ、金曜日の朝に各家庭に配布される。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】ところで、このようなチラシの発注者91であるスーパーマーケットなどにおいては、気象条件などにより商品の入荷が左右されたり、競合する他の商店の動向に基づいて値段を決定したりすることがあり、販売する商品の企画および仕入れは極力販売日に近いことが望ましい。このため、販売する商品の企画および仕入れを開始してから、チラシを消費者に配布するまでの時間をできる限り短縮することへの要請が強い。しかしながら、図9を参照して説明したように、チラシの作成には、ほぼ3週間かかるため、売り出しの企画なども3週間前に行なわなければならず、チラシの作成に要する時間を少しでも短くすることが望まれている。
【0009】チラシの作成に多くの時間が必要であった原因の1つに、カラーカンプの発注者91と印刷会社93との間の搬送、校正刷りの発注者91と印刷会社93との間の搬送、および、フィルムおよび校正刷りの発注者91と印刷会社93との間の搬送に時間がかかるという点がある。現状では、これらのカラーカンプ、校正刷りおよびフィルムの搬送は、たとえば、印刷会社93の営業員などが搬送物を持参することにより、あるいは、運送業者に依頼することにより、直接搬送物を送付して行なっている。そのため、車、飛行機あるいは列車などにより搬送したとしても、1度そのような搬送を行なうために長い場合ではほぼ1日を費やすことになり、結果としてチラシの作成時間が長期化することになっている。
【0010】ところで、DTP(デスクトップパブリッシング)が普及し、製版工程がデジタル化し、印刷原稿はコンピュータ内でデジタルデータとして一括して処理できるようになっている(以後、このような処理に供されるデータを総称してDTPデータと言うものとする)。具体的には、DTPデータから印刷版作成用フィルムを直接出力できるイメージセッターや、DTPデータから直接印刷版を製作できるプレートセッター(CTP装置)なども普及し始めている。したがって、分散印刷においても、DTPデータを通信ネットワークを介して印刷会社93から協力印刷会社95に配信し、協力印刷会社95でイメージセッターによりフィルムに出力し、そのフィルムにより印刷版を製作したり、あるいは、協力印刷会社95でCTP装置により直接印刷版を製作したりして、最終的に印刷を行なうことが可能である。
【0011】しかしながら、現実にはそのような形態で作業が進められていない。この原因として、1つは、カラーカンプや校正刷りを電子的に配信することが難しい点が挙げられる。カラーカンプや校正刷りは、発注者91と印刷会社93の間、あるいは印刷会社93と協力印刷会社95の間で色や印刷物の確認を行なうための見本、換言すれば印刷物の出来上がりの状態を双方で確認するための重要な印刷物である。そのため、カラーカンプや校正刷りは、印刷本紙へ印刷と同じ状態で印刷された印刷物、あるいは、そのような状態に極力近い品質の印刷物であることが要求されるととともに、それら発注者91と印刷会社93の間、および、印刷会社93と協力印刷会社95との間で同じ品質で同じ色状態のものを保持しておく必要がある。
【0012】しかしながら、これまでの通常のプリンタ装置においては、印刷用データを、チラシなどに用いられる比較的品質の悪い印刷本紙に、印刷機と同様に網点を用いて、各印刷の再現性が保証されるように印刷することができなかった。たとえば、銀塩湿式写真方式の出力装置では、専用の印画紙にプリント出力するのみで、印刷本紙に出力することはできない。また、インクジェット方式のプリンタ装置は、印刷本紙に出力することができない上に、印刷機と同等の網点出力をすることができない。また、レーザー熱転写方式のプリンタ装置では、1時間に2~4枚程度しか出力できない上に、主力コストが1枚数千円かかり、現実的に使用できるものではなかった。
【0013】カラーカンプや校正刷りを通信ネットワークを介して配信することが現実的に難しいため、デジタル化により印刷原稿が通信で送られるようになっても、カラーカンプや校正刷りを発注者91に持参したり協力印刷会社95に送付したりする作業は依然必要であり、チラシ作成の作業工程を短縮することができなかった。
【0014】また、他の原因として、このようなチラシ印刷業界の商慣習として、そのような電子的な印刷データをやりとりする形態が行なわれていなかった点が挙げられる。印刷業界においては、前述したような背景の下で、”発注者が被発注者側にて物として製作された校了紙などの印刷見本を入手し確認することは当然のことであり、そのために必要な見本の協議、確認、再修正などの煩雑な諸手続きも必要不可欠である”という認識は、長年に培われてきた印刷業界の製作プロセスにおける商慣習として定着している。このような商慣習は、チラシ印刷業界のみならず出版印刷、商業印刷の各業界でも大なり小なり同じ事情にある。それ故、印刷物製作プロセスのあり様を根本的に変えない限り、前述した事情を改善することは困難であった。
【0015】一方、販売する商品の企画および仕入れを極力販売日に近づけるためには、チラシの作成時間を短縮するだけでなく、チラシを作成してからこのちらしが消費者に届くまでに要する時間を短縮する必要がある。しかしながら、チラシを協力印刷会社95において作成してから、消費者に配布するまでに、折り込みセンターへのチラシの運搬、仕分け作業、および折り込みセンターから新聞販売店への運搬作業が必要であり、チラシを作成してからこのチラシが消費者に届くまでに要する時間を短縮することは困難であった。
【0016】本発明は、上述した問題に鑑みてなされたものであって、最終的な印刷物を製作するまでに要する時間を大幅に短縮することができる印刷物製作方法および印刷物製作システムを提供することを目的とする。また、本発明は、印刷物の製作を着手してから最終的な印刷物が公衆のもとに届くまでに要する時間を大幅に短縮することができる印刷物の配布方法を提供することを目的とする。」
イ 図1
[図:0001413347000001.jpg]
ウ「【0029】図1は、本実施の形態の印刷物製作システム10の構成を示す図である。印刷物製作システム10は、発注者装置11、印刷会社装置13、新聞販売店装置15および通信ネットワーク17を有する。
【0030】発注者装置11は、チラシ発行元であるスーパーマーケットに設けられ、印刷会社との通信および印刷会社から送信されてきたカラーカンプや校正刷りの印刷などを行なうシステムである。」
エ 図2
[図:0001413347000002.jpg]
オ 「【0031】図2は、発注者装置11の構成の一例を示す図である。図2に示すように、発注者装置11は、通信ネットワーク17を介して通信を行なう通信部21、発注者装置11全体を制御する制御部22、操作者へ情報を出力し操作を受け付ける入出力部23、および、印刷機と同等のカラー印刷を行なう校正刷りプリンタ装置24を有する。通信部21、制御部22および入出力部23は、パーソナルコンピュータおよびモデムなどにより構成され、校正刷りプリンタ装置24はそのパーソナルコンピュータに周辺装置として接続された構成である。
【0032】図3は、校正刷りプリンタ装置24の構成の一例を示す図である。図3に示す校正刷りプリンタ装置24は、最終的なチラシの印刷状態に要求される印刷品質の基準とすることができる程度の印刷品質で、また低品質な用紙を含む印刷用紙そのもの(以後、これを本紙と言う。)に印刷を行なうことができるとともに、ディジタル化された印刷画像データから直接に印刷用紙に印刷可能な装置である。この校正刷りプリンタ装置24には、DDCP(ダイレクトディジタルカラープルーファー)と呼ばれる装置を用いることができる。」
カ「【0041】印刷会社装置13の構成は、機能的には、図2を参照して説明した発注者装置11の構成と同じ構成とすることができる。また、具備する校正刷り出力装置の構成も発注者装置11の校正刷りプリンタ装置24と同一構成とすることができる。ただし、印刷会社装置13においては、実際に印刷を行なう広範囲に所在する新聞販売店装置15に対して印刷データを送信して印刷の指示を行なう処理が加わり、また、複数の印刷物について多数の発注者と同時平行的に処理を進めることになる。そのため、能力および容量的には、高速で処理能力の高いシステムであることが望まれる。したがって、印刷会社装置13の通信部、制御部および入出力部などは、パーソナルコンピュータよりも処理能力の高いワークステーションやビジネス用のコンピュータあるいはサーバ装置などにより構成される。
【0042】新聞販売店装置15は、広域、あるいは、全国に所在する各新聞販売店に設置される。新聞販売店は、業として新聞および広告印刷物としてのチラシを消費者に配布する配布業者である。新聞販売店は、一般的には、印刷されたチラシを折り込みセンターから納入され、これを新聞に折り込んで各家庭に配達することを業とするが、本実施形態では、新聞販売店は、新聞販売店装置15を用いて印刷会社装置13からの指示に基づいてチラシの実際の印刷を行なう。
【0043】図4は、新聞販売店装置15の構成の一例を示す図である。図4に示すように、新聞販売店装置15の構成は、前述した発注者装置11および印刷会社装置13の構成刷りプリンタ装置24に代えてチラシ印刷用プリン他装置54を備えた構成である。すなわち、新聞販売店装置15は、ネットワーク17を介して通信を行なう通信部51、新聞販売店装置15全体を制御する制御部52、操作者へ情報を出力し操作を受け付ける入出力部53およびチラシ印刷用プリンタ装置54を有する。
【0044】チラシ印刷用プリンタ装置54は、上記した校正刷りプリンタ装置24と同等の印刷品質で本紙に印刷を行なうことができるとともに、ディジタル化された印刷画像データから直接に本紙に印刷可能な装置である。このチラシ印刷用プリンタ装置54は、ODP(オンデマンドプリンター)と呼ばれる装置である。新聞販売店装置15は、印刷会社装置13より印刷用のDTPデータが送信されたら、このDTPデータから直接にチラシの印刷を行なう。」
キ「【0047】次に、上記構成の印刷物製作システム10を用いたチラシの製作方法およびチラシの配布方法について説明する。まず、チラシ発行元であるスーパーマーケットなどの小売業者は、商品企画部門、商品調達部門および販売促進部門(広告宣伝部門)などが話合いを行い、販売計画や目玉商品などを社内で協議の上、チラシの内容を決定し、チラシの原稿を作成する。作成された原稿は、指示書として、発注者装置11より通信ネットワーク17を介して印刷会社の印刷会社装置13に送付される。これにより、印刷会社に対してチラシの製作が発注される。
【0048】印刷会社では、印刷会社装置13において指示書に基づいてカラーカンプを作成し、印刷会社装置13内の校正刷りプリンタ装置より印刷出力するとともに、通信ネットワーク17を介して発注者装置11に送信し、発注者に対して印刷原稿の提案を行なう。発注者は、送信されるカラーカンプを発注者装置11で受信し、発注者装置11内の校正刷りプリンタ装置24で印刷出力する。
【0049】そして、発注者と印刷会社は、ともに校正刷りプリンタ装置により出力されたカラーカンプを参照しながら、発注者装置11と印刷会社装置13により通信ネットワーク17を介して協議を行う。印刷会社は、協議のたびに協議結果に基づいて新たなカラーカンプを作成し、印刷会社装置13内の校正刷りプリンタ装置で印刷するとともに、通信ネットワーク17を介して発注者装置11に送信する。発注者は、前回同様に校正刷りプリンタ装置24でこれを印刷すると、ともに新たに印刷出力したカラーカンプを参照しながら、発注者と印刷会社は再び協議を行なう。そして、このような協議およびカラーカンプの再作成を繰り返し、最終的な印刷原稿を取りまとめる。
【0050】取りまとめが終了したら、印刷会社は、その印刷原稿に基づいて印刷画像データを作成し、印刷会社装置13内の校正刷りプリンタ装置により校正刷りを行なうとともに、印刷画像データを発注者装置11に送信する。発注者は、送信される校正刷り用の印刷画像データを発注者装置11で受信し、校正刷りプリンタ装置24で印刷出力する。そして、発注者と印刷会社は、ともに校正刷りプリンタ装置により出力された校正刷りを参照しながら、発注者装置11と印刷会社装置13により通信ネットワーク17を介して協議を行う。印刷会社は、協議のたびに協議結果に基づいて新たな校正刷りを作成し、印刷会社装置13内の校正刷りプリンタ装置で印刷するとともに、通信ネットワーク17を介して発注者装置11に送信する。発注者は、前回同様に校正刷りプリンタ装置24でこれを印刷し、この新たに印刷出力した校正刷りを参照しながら、発注者と印刷会社は再び協議を行なう。
【0051】このような協議および校正刷りの再作成を繰り返しながら、最終的に印刷物を取り決め、最終的な校正刷りをOKシート(校了紙)とする。
【0052】校了紙ができたら、印刷会社は、印刷会社装置13より通信ネットワーク17を介して、各地に所在する印刷会社から委託を受けた新聞販売店の新聞販売店装置15に、チラシを印刷するための印刷画像データとしてのDTPデータを送信する。
【0053】各新聞販売店の新聞販売店装置15では、DTPデータを受信し、チラシ印刷プリンタ装置54においてチラシの印刷を行なう。チラシ印刷プリンタ装置54は、印刷会社の校正刷りプリンタ装置24と同等の印刷品質を印刷できるので、校正刷りプリンタ装置24で印刷された校了紙と略同じ印刷品質のチラシが印刷される。」
ク「【0060】なお、本発明は本実施の形態に限られるものではなく、種々の改変が可能である。たとえば、発注者装置11、印刷会社装置13および新聞販売店装置15に具わる校正刷りプリンタ装置あるいはチラシ印刷装置としては、液体トナー電子写真方式のプリンタに限られるものではなく、いわゆる校正刷りとして使える品質を持った出力を出せるものであれば、インクジェット方式、感熱転写方式、昇華型転写方式、静電写真方式のいずれの方式のプリンタであってもよい。また、DDCP装置間およびDDCP装置とODP装置との間の出力結果を許容値内に収めるために、さらにカラーマネージメントシステムを設けたようなシステムとしてもよい。」
(2)引用文献1(甲第1号証)記載発明
上記(1)の記載から、特に下線部に着目すると、引用文献1(甲第1号証)には、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「発注者装置11、印刷会社装置13、新聞販売店装置15および通信ネットワーク17を有し、
発注者装置11は、チラシ発行元であるスーパーマーケットに設けられ、印刷会社との通信および印刷会社から送信されてきたカラーカンプや校正刷りの印刷などを行なうシステムであり、
発注者装置11は、通信ネットワーク17を介して通信を行なう通信部21、発注者装置11全体を制御する制御部22、操作者へ情報を出力し操作を受け付ける入出力部23、および、印刷機と同等のカラー印刷を行なう校正刷りプリンタ装置24を有し、
通信部21、制御部22および入出力部23は、パーソナルコンピュータおよびモデムなどにより構成され、校正刷りプリンタ装置24はそのパーソナルコンピュータに周辺装置として接続された構成であり、
校正刷りプリンタ装置24は、最終的なチラシの印刷状態に要求される印刷品質の基準とすることができる程度の印刷品質で、また低品質な用紙を含む印刷用紙そのもの(以後、これを本紙と言う。)に印刷を行なうことができるとともに、ディジタル化された印刷画像データから直接に印刷用紙に印刷可能な装置であり、
印刷会社装置13の構成は、機能的には、発注者装置11の構成と同じ構成とすることができ、
新聞販売店装置15は、広域、あるいは、全国に所在する各新聞販売店に設置され、
新聞販売店は、新聞販売店装置15を用いて印刷会社装置13からの指示に基づいてチラシの実際の印刷を行ない、
新聞販売店装置15は、ネットワーク17を介して通信を行なう通信部51、新聞販売店装置15全体を制御する制御部52、操作者へ情報を出力し操作を受け付ける入出力部53およびチラシ印刷用プリンタ装置54を有し、
チラシ印刷用プリンタ装置54は、校正刷りプリンタ装置24と同等の印刷品質で本紙に印刷を行なうことができるとともに、ディジタル化された印刷画像データから直接に本紙に印刷可能な装置であり、
チラシ発行元であるスーパーマーケットなどの小売業者は、チラシの内容を決定し、チラシの原稿を作成し、
作成された原稿は、指示書として、発注者装置11より通信ネットワーク17を介して印刷会社の印刷会社装置13に送付され、
印刷会社では、印刷会社装置13において指示書に基づいてカラーカンプを作成し、印刷会社装置13内の校正刷りプリンタ装置より印刷出力するとともに、通信ネットワーク17を介して発注者装置11に送信し、
発注者は、送信されるカラーカンプを発注者装置11で受信し、発注者装置11内の校正刷りプリンタ装置24で印刷出力し、
発注者と印刷会社は、ともに校正刷りプリンタ装置により出力されたカラーカンプを参照しながら、発注者装置11と印刷会社装置13により通信ネットワーク17を介して協議を行い、
印刷会社は、協議のたびに協議結果に基づいて新たなカラーカンプを作成し、印刷会社装置13内の校正刷りプリンタ装置で印刷するとともに、通信ネットワーク17を介して発注者装置11に送信し、
発注者は、前回同様に校正刷りプリンタ装置24でこれを印刷すると、ともに新たに印刷出力したカラーカンプを参照しながら、発注者と印刷会社は再び協議を行い、
このような協議およびカラーカンプの再作成を繰り返し、最終的な印刷原稿を取りまとめ、
取りまとめが終了したら、印刷会社は、その印刷原稿に基づいて印刷画像データを作成し、印刷会社装置13内の校正刷りプリンタ装置により校正刷りを行なうとともに、印刷画像データを発注者装置11に送信し、
発注者は、送信される校正刷り用の印刷画像データを発注者装置11で受信し、校正刷りプリンタ装置24で印刷出力し、
発注者と印刷会社は、ともに校正刷りプリンタ装置により出力された校正刷りを参照しながら、発注者装置11と印刷会社装置13により通信ネットワーク17を介して協議を行い、
印刷会社は、協議のたびに協議結果に基づいて新たな校正刷りを作成し、印刷会社装置13内の校正刷りプリンタ装置で印刷するとともに、通信ネットワーク17を介して発注者装置11に送信し、
発注者は、前回同様に校正刷りプリンタ装置24でこれを印刷し、この新たに印刷出力した校正刷りを参照しながら、発注者と印刷会社は再び協議を行ない、
このような協議および校正刷りの再作成を繰り返しながら、最終的に印刷物を取り決め、最終的な校正刷りをOKシート(校了紙)とし、
校了紙ができたら、印刷会社は、印刷会社装置13より通信ネットワーク17を介して、各地に所在する印刷会社から委託を受けた新聞販売店の新聞販売店装置15に、チラシを印刷するための印刷画像データとしてのDTPデータを送信し、
各新聞販売店の新聞販売店装置15では、DTPデータを受信し、チラシ印刷プリンタ装置54においてチラシの印刷を行ない、
発注者装置11、印刷会社装置13および新聞販売店装置15に具わる校正刷りプリンタ装置あるいはチラシ印刷装置としては、インクジェット方式のプリンタであってもよい、
印刷物製作システム10。」
2 引用文献2~引用文献5
(1)引用文献2(甲第4号証)
申立人が従たる証拠(甲第4号証)として提出した引用文献2には、図面とともに、次の事項が記載されている。
ア「【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット印刷装置及びこの印刷装置を用いた円筒形状容器への印刷方法に関するものであり、より詳細には、画像の鮮明性に優れていると共に印刷速度が大きく生産性にも優れたインクジェット印刷装置及びこの印刷装置を用いた円筒形状容器への印刷方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アルミやスチール等の金属からなるシームレス缶等の円筒形状容器の胴部への曲面印刷においては、オフセット印刷等の刷版を使用する版式印刷(特許文献1)と、版を使用しないインクジェット印刷、或いはこれらを組み合わせて成る印刷方式が提案されている(特許文献2~4)。
版式印刷は、インクの色毎に版を作成して多色印刷するため、同一画像のシームレス缶を大量生産する場合に効率的であるが、印刷デザインを変更する場合には、新たに版を製造する必要があることから、デザイン変更に長期間を要し、印刷デザインの自由度がなく、限られた種類のデザインしか印刷できないという問題があった。
【0003】
一方、インクジェット印刷は版を必要としないことから製版コストがかからず、しかも短期間に印刷デザインを自由に変更できるバリアブル(可変)性を有すると共に、インクを厚盛することができるので、深みのある画像を形成することができ、写真等の高精細な画像の再現性に優れているという利点を有している。
【0004】
またインクジェット印刷においては、一つのインクジェットヘッドから吐出されたインクのドット径をインクの吐出回数によって制御可能な多階調ヘッドが提案されており(特許文献5)、かかる多階調ヘッドを用いたインクジェット印刷によれば、ドット径の小さな液滴及びドット径の大きな液滴の組合せによって、写真等の高精細な画像を鮮明に且つベタ画像のような高い濃度が必要な画像を効率よく印刷することが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】 特開2008-62455号公報
【特許文献2】 特開2004-42464号公報
【特許文献3】 特許第4615999号公報
【特許文献4】 特開2010-143200号公報
【特許文献5】 特開平10-217450号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、シームレス缶のような円筒形状容器の胴部への印刷は、一般に円筒形状容器を自転可能なマンドレルに固定し、円筒形状容器を自転させて曲面印刷を行うことから、多階調ヘッドを用いて径の異なる複数種のドットによって形成される画像を印刷するには、インク液滴の吐出周波数に応じて、円筒形状容器の自転速度を小さくするか、或いは円筒形状容器を数回自転させることが必要になる。このため生産効率の点で、飲料用シームレス缶のように大量生産が必要な円筒形状容器には対応できなかった。
従って本発明の目的は、円筒形状容器に、複数種の径のドットにより形成される鮮明な画像を形成可能であると共に、印刷速度が向上され、生産効率に優れたインクジェット印刷装置及び印刷方法を提供することである。
本発明の他の目的は、写真画像及びベタ画像の両方を含む印刷画像を、鮮明且つ効率よく印刷可能なインクジェット印刷装置及び印刷方法を提供することである。」
イ 上記アの記載の、特に下線部に着目すると、引用文献2には、以下の技術(以下、「引用文献2記載周知技術」という。)が開示されていると認められる。
「アルミやスチール等の金属からなるシームレス缶等の円筒形状容器の胴部への曲面印刷においては、版を使用しないインクジェット印刷。」
(2)引用文献3(甲第3号証)
申立人が従たる証拠(甲第3号証)として提出した引用文献3には、図面とともに、次の事項が記載されている。
ア「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、印刷における色校正方法に関するものである。」
イ 図2
[図:0001413347000003.jpg]
ウ「【0002】
【従来の技術】従来の印刷工程は、図2に示すようにまずクライアント、または広告代理店30から人手やバイク便、車などを使って31で原稿や写真を企画・デザイン会社32に入稿し、この企画・デザイン会社32において写真スキャナによる取り込みや文字データの入力等の編集33を行い版下36を作成する。そして完成した版下36を、再び人手やバイク便、車などを使ってクライアント、または広告代理店30に送り、版下の校正34を依頼する。その直しの指示35でまた人手やバイク便、車などを使って送られてくるから、企画・デザイン会社32で直しを行ってまたクライアント、または広告代理店30に校正依頼する、ということをOKが出るまで繰り返す。
【0003】こうして版下に対するOKが出たら今度はその版下を、再度36で人手やバイク便、車などを使って製版・刷版会社37に送り、製版・刷版会社37は、まず38で色分解と網掛けを行って各色毎の製版フィルムを出力し、平台校正機などの色校正出力機39で色校正出力する。そしてこの色校正出力を、40、41で再び人手やバイク便、車などを用いて企画・デザイン会社32、及びクライアント、または広告代理店30に送り、色調のチェックを受ける。そして、直しが出た場合はそれが42、43で戻ってくるので、再度フィルムを出力し直すなどして同様に、OKが出るまで繰り返す。
【0004】こうして色校正もOKが出たら今度は44で刷版を作成し、作成した刷版を45で、OKをもらった色校正を46でまた人手や車などで印刷製本会社47に送り、色校正見本を元に印刷機48で印刷を行い、49で製本して印刷物50としてクライアントに納品する。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら従来のこの印刷工程は、以上の説明からもわかるとおり、入稿、校正依頼、直しなどの度に、人手やバイク便、車などを用いて原稿や写真、版下や色校正などがクライアント、または広告代理店30、企画・デザイン会社32、製版・刷版会社37を往復しており、時間及び多大な費用がかかっていた。
【0006】またクライアントは、印刷の色を実際の印刷物ではなく、製版・刷版会社37の平台校正機などの色校正出力機39による色校正出力でしか確認ができず、刷り上がった印刷物の色が希望の色と異なる等のトラブルが発生することがあった。
【0007】上述の事情に鑑み本発明は、人手やバイク便、車などによる校正依頼、直しなどの往復を不要とし、かつクライアントは、実際の印刷色に近い校正刷りで色の確認ができる、印刷における色校正方法を提供し、時間とコストの低減と印刷色がクライアントの希望と異なる等のトラブルの発生を抑えることを課題とする。」
エ 図1
[図:0001413347000004.jpg]
オ 「【0018】図1は、本発明の実施の形態を示した印刷における色校正システムの概略ブロック図である。同図において、1は印刷を発注するクライアント、または広告代理店、2は企画・デザイン会社、3は製版・刷版会社、4は印刷・製本会社で、これら企画・デザイン会社2、製版・刷版会社3、印刷・製本会社4は、印刷会社の1部門であっても良い。5は印刷を発注するクライアント、または広告代理店1に設けられたビューワで、版下データや製版データなどの印刷用データを入力して組み版された状態を表示する。6は印刷する印刷機の発色特性データを元に、印刷用データを印刷機で印刷されると同様の発色状態になるよう色変換する色変換ソフト、7は版下データや製版データなどの印刷用デジタルデータから、印刷と同様な校正用出力ができるDDCP(Direct Digital Color Proof)で構成された色校正出力機、8は色校正出力である。
【0019】企画・デザイン会社2における9は、入稿された原稿・写真を元に写真をスキャナなどで読みとると共に文字データなどを入力して編集し、レイアウトや組み処理を行う編集システムで、これはクライアント、または広告代理店1におけるビューワ5のソフトを含む、10は色変換ソフト、11はDDCPで構成された色校正出力機、12は色校正出力で、これら10、11、12は、クライアント、または広告代理店1における色変換ソフト6、DDCPで構成された色校正出力機7、色校正出力8と同じものである。製版・刷版会社3における13は版下データ20から刷版を作る製版システムで、従来のように版下データから各色のフィルムを出力して刷版を作成するか、CTP(Computer To Plate)などのデジタルデータから直接刷版を出力する機器を用いて刷版を作成する。
【0020】印刷・製本会社4における14は印刷機、15は色調管理装置で、これは印刷機が印刷しているときにインキの供給量などの変化で色調が変化するのを防ぐため、印刷物に印刷したカラーチャートやプロファイル作成用チャートを計測して濃度と色調をチェックし、印刷機にフィードバックして印刷機の色調を管理する装置である。プロファイルとは、編集機や印刷機、色校正出力機など、異なるデバイス間の色再現性を一致させるために網点面積率と色との対応を記述した発色特性データであり、印刷物に印刷したカラーチャートやプロファイル作成用チャートを測定し、国際照明委員会で定義された色座標値(CIE-L*a*b*)などを算出してC、M、Y、Kデータに対する印刷紙面の発色との関係を求めて作成する。なお、このプロファイルは、印刷機自体の印刷特性、印刷に使用する印刷紙、印刷インキなどにも関係してくるので、印刷機のプロファイルは、これら印刷機、印刷紙、印刷インキと関連して作成される。16はこのプロファイルなどの発色特性データを記憶するデータベースで、色調管理装置15で1つのジョブ毎にプロファイルを測定して記憶してあり、17は製本機である。
【0021】18はインターネットやWAN(広域通信情報網)、イントラネットなどの広域通信ネットワーク、19はクライアント、または広告代理店1などからの原稿・写真などの入稿で、これは前記従来と同様人手やバイク便、車などが用いられる。20は版下データの製版・刷版会社への搬入であるが、これは従来のように人手やバイク便、車などを用いても、インターネット等の広域通信ネットワーク18経由で送ってもどちらでも良い。21は刷版の搬入、22はインターネットやWAN(広域通信情報網)、イントラネットなどの広域通信ネットワーク18を経由して送られる版下データ、23はプロファイルデータベース16から同じく広域通信ネットワーク18を経由して送られるプロファイル(発色特性)データ、24は完成した印刷物、25は色校正出力の直し依頼で、メールなどを用いる。なお前記版下用データ22やプロファイル(発色特性)データ23はデジタルデータであるため、広域通信ネットワーク18を用いる場合はメールの添付ファイルで送ったり、ホームページからデータとを取得できるようにする。またWAN(広域通信情報網)、イントラネットなどの場合は、そのままデータとして送出する。
【0022】本発明においては、まずクライアントや広告代理店1、及び企画・デザイン会社2などにDDCP(Direct Digital Color Proof)で構成された色校正出力機7、11を設置する。一方印刷・製本会社4は、印刷・製本会社4の保有する印刷機14の印刷ジョブ毎に印刷物を色調管理装置15で測定し、使用した印刷紙、インキなどで定まるプロファイルなどの発色特性データをプロファイルデータベース16に蓄積する。そしてそのプロファイルデータ16を、インターネット等の広域通信ネットワーク18経由でクライアント、または広告代理店1、及び企画・デザイン会社2などに送り、これらに設置されたDDCPで構成された色校正出力機7、11が、印刷・製本会社の印刷機14の発色と同じ発色をするよう色変換ソフト6、10のパラメータを調節できるようにする。
【0023】今、クライアントから印刷の発注があった場合、クライアント、または広告代理店1から企画・デザイン会社2への原稿・写真の入稿19は、従来と同様人手、バイク便、車などを使って行われる。そしてこの企画・デザイン会社2で、写真はスキャナで取り込み、文字データなどは入力して編集システム9でレイアウト、組み版し、版下データを作成してポストスクリプト(Post Script)データやPDF(Potable Document Format)データとして出力する。なお、Post ScriptとPDFは、Adobe社の商標である。
【0024】一方この企画・デザイン会社2では、インターネット等の広域通信ネットワーク18を経由して印刷・製本会社4から送られてくる印刷機14のプロファイルデータ23を読み出し、色変換ソフト10に与え、企画・デザイン会社2に設置された色校正出力機11が印刷に使う印刷機の発色で出力できるようこの色変換ソフト10のパラメータを調節する。そして、作成した版下データを色変換ソフト10で色変換した後色校正出力機11に入力し、色校正出力12を出力して作成した版下データがクライアントの意図した色かどうかや組み版状態を確認し、意図した色や組み版状態でなければ直しと色校正出力を繰り返し、良ければ版下データ22としてインターネット等の広域通信ネットワーク18経由でクライアント、または広告代理店1に送出する。
【0025】一方クライアント、または広告代理店1は、企画・デザイン会社2と同様に、インターネット等の広域通信ネットワーク18を経由して印刷・製本会社4から送られてくる印刷機14のプロファイルデータ23を読み出して色変換ソフト6に与え、色校正出力機7が印刷・製本会社4の印刷機14と同じ発色となるよう色変換のパラメータを調節する。そして企画・デザイン会社2から送られてくる版下データ22を、まずビューワ5で表示して意図したレイアウトになっているか確認し、さらに色変換ソフト6で印刷に使う印刷機14の発色となるよう色変換して色校正出力機7で色校正出力8する。
【0026】こうして得られた色校正出力8は、前記したように版下データ22を色変換するソフト6のパラメータが、色校正出力機11でこの版下データ22を出力したとき印刷に使う印刷機14の発色となるよう設定されているから、印刷色に近い発色で出力される。そのためクライアントは、版下の段階でレイアウトの確認と同時に印刷色の確認ができ、それに従ってレイアウトや色についての直しを指定できるから、直しがある場合はそれを色校正の直しデータ25としてメールでインターネット等の広域通信ネットワーク18へ送り出すか、FAXなどで企画・デザイン会社2に送る。
【0027】そして企画・デザイン会社2は、これらメール等の直しデータ25、またはFAXで送られた直しを受けて指定された部分の修正を行い、その版下データ22を再度インターネット等の広域通信ネットワーク18経由でクライアント、または広告代理店1に送り、以上説明してきたことを直しが無くなるまで繰り返す。なお、企画・デザイン会社2による色校正の修正に時間がかかった場合は、印刷・製本会社4から送られてくる印刷機14のプロファイルデータ23を再度読み出し、色校正出力機7がこの印刷に使う印刷機の発色となるよう調節する。これは、印刷機のプロファイルは、使うインキの変更などで変化する可能性があるからで、前記したようにこのプロファイルは印刷ジョブ毎に作られるから、最新のプロファイルデータで色校正出力8が行われるようにするためである。
【0028】こうして版下に対するクライアントのOKが出たら、今度はその版下データ20を直接人手やバイク便、車などを使うか、インターネット等の広域通信ネットワーク18経由で製版・刷版会社3に送る。すると製版・刷版会社3は、この版下データを製版システム13で網掛けなどをして各色毎のフィルムに出力し、続けて刷版を作成するか、CTPで版下データから直接刷版を作成し、印刷・製本会社4へ刷版21として送る。そのため印刷・製本会社4は、印刷機14で印刷を行い、製本機17で製本をおこなって印刷物24としてクライアント、または広告代理店1に納品する。
【0029】このようにすることにより、従来のように版下や色校正出力を人手やバイク便、車などで運ぶ必要が無くなり、かつクライアントは、従来のように製版後ではなく、版下の完成と同時に、印刷時とほぼ同じ発色の色校正出力を見ることができ、色校正を短時間で、経費をかけることなく、また、クライアントの望むとおりの発色で印刷を実行することができる。また、刷版をCTPで出力する場合、刷版を出力後に直すということはできないから、こうしてDDCPで構成した色校正出力機で校正した版下データで出力すれば、刷版の出力後に修正が入るということが無くなり、CTPを効果的に使うことができる。」
カ 以上の記載の、特に下線部に着目すると、引用文献3には、以下の技術(以下、「引用文献3記載技術」という。)が開示されていると認められる。
「印刷における色校正方法に関し、クライアントや広告代理店1、及び企画・デザイン会社2などにDDCP(Direct Digital Color Proof)で構成された色校正出力機7、11を設置しておき、クライアント、または広告代理店1は、印刷に使う印刷機14の発色となるよう色変換して色校正出力機7で色校正出力8し、こうして得られた色校正出力8は、印刷色に近い発色で出力され、そのためクライアントは、版下の段階でレイアウトの確認と同時に印刷色の確認ができ、それに従ってレイアウトや色についての直しを指定でき、直しがある場合はそれを色校正の直しデータ25としてメールでインターネット等の広域通信ネットワーク18へ送り出して、企画・デザイン会社2に送り、企画・デザイン会社2は、これらメール等の直しデータ25を受けて指定された部分の修正を行い、その版下データ22を再度インターネット等の広域通信ネットワーク18経由でクライアント、または広告代理店1に送り、以上説明してきたことを直しが無くなるまで繰り返すこと」
(3)引用文献4(甲第2号証)
申立人が従たる証拠(甲第2号証)として提出した引用文献4には、図面とともに、次の事項が記載されている。
ア「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、塗装板見本の作成方法および塗装板見本、特に完成塗装板のデザイン把握のための検討用塗装板見本の作成方法と塗装板見本に関する。」
イ 図1
[図:0001413347000005.jpg]
ウ「【0019】
【発明の実施の形態】以下、本発明の好適な実施形態を図面に基づき説明する。図1には本実施形態の塗装板見本作成方法を実現するための処理システム10の構成ブロック図が示されている。入力部12からは、塗装板の基材となる画像や前記基材に付加する意匠の画像が入力可能であり、例えばカラーイメージスキャナやデジタルカメラ、CD-ROM等の画像情報提供装置が接続されている。前記基材は、表面が凹凸面を有する材料であり、例えば、石膏ボードや金属板、窯業系建材、樹脂ボード、壁紙等であり、実際の煉瓦や大理石等を積層して形成した内外壁面等をボード表面の凹凸で表現可能なものである。また、前記基材に付加する意匠(模様)は、例えば大理石模様、割り石模様、人造石模様、タイル模様、煉瓦模様、窯変模様、スパッタ処理模様、版ロール塗装面模様、リシン塗装面模様等の抽象的なものや幾何学的なもの、木目調のものの他、キャラクタ的なものでもよい。なお、これらの画像データの読込みを行う場合、実際の基材や意匠見本がある場合、その大きさが、例えばA4サイズ以下であれば、カラーイメージスキャナで読込み、A4以上であればデジタルカメラで撮影し、そのデータを転送する。また、CD-ROM等から直接既存の画像データを読み込むようにしてもよい。
【0020】前記入力部12から入力された基材の画像データは基材処理部14に入力され所定の処理(後述する)が行われ、意匠の画像データは意匠処理部16に入力され所定の処理(後述する)が行われる。そして、それぞれ処理された画像データはメモリ18,20に記憶される。そして、各メモリ18,20に記憶された画像データが選択的に合成部22に転送され合成された後、比較部24で前記メモリ18に記憶された基材の元画像データまたは所定の処理が施された画像データと比較され、基材の基本的特徴、例えば凹凸状態や陰影、表面荒さ等が意匠を付加されたことによって、損なわれていないか否かの判断が行われ、基材の基本的特性が損なわれていないと判断されたら表示出力部26から塗装板見本が見本画像として出力される。具体的にはディスプレイ表示やカラープリンタ等による出力である。なお、上述した各部材は図示しない制御部によって制御されている。
【0021】従って、ユーザはディスプレイに表示される塗装板見本を検討したり、イメージの異なる見本をディスプレイ上に複数表示させたり、複数種類の見本をプリンタ出力することによって、比較検討することが可能になり、実際の版ロールを作成して実物の塗装板見本を作成することなく完成塗装板の検討を行う塗装板見本を容易に作成することができる。」
エ「【0033】また、必要に応じて、S119の塗装板見本決定後の画像データについて、S103~S104やS109~S110等と同様な色変え処理を行うようにしてもよい。」
オ 上記ウおよびエの下線部の記載に着目すると、引用文献4(甲第2号証)には、「見本画像をディスプレイ等によって出力することにより、実物の見本を作成することなく、検討が行え、色変え処理が可能である」引用文献4記載周知技術が開示されていると認められる。
(4)引用文献5(甲第5号証)
申立人が従たる証拠(甲第5号証)として提出した引用文献5には、図面とともに、次の事項が記載されている。
ア 「【0057】
検缶機(5)の画像検査手段(54)による画像検査は、従来から行われているもので、画像検査手段(54)によって、マスター画像と撮影画像とが1画素ごとに比較され、画像の部分的欠落やインキ飛散による汚れなどが検査される。画像検査手段(54)では、所定の大きさを超えた欠陥が検査不合格品され、また、マスター画像に対するずれ許容値を超えたものも検査不合格品とされる。」
イ 「【0058】(中略)濃度測定結果は、検缶機(5)のディスプレイに表示される。濃度測定結果は、主印刷機(2)にフィードバックされ、これにより、インキ供給装置(3)の制御装置(34)によって各インキ呼び出しローラ(15)の位置が制御されて供給されるインキ量が変化させられる。こうして、濃度不良品が出る前に濃度を修正することで、主印刷機(2)において、良好な印刷状態が維持される。」
第6 当審の判断
1 理由1(補正要件違反(新規事項追加):特許法第17条の2第3項)
申立人は、補正要件違反(新規事項追加)を主張しているので、以下検討する。
(1) 補正要件違反(新規事項追加)の判断枠組み
補正が、特許法第17条の2第3項の規定を満たすものであるか否かは、当該補正が、出願に添付された明細書、特許請求の範囲または図面(以下、これらを総称して「当初明細書等」という。)のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項(当初明細書等に明示的に記載された事項、および、当初明細書等の記載に接した当業者であれば出願時の技術常識に照らして当初明細書等に記載されているのと同然であると理解する事項)との関係において、新たな技術的事項を導入しないものであるか否かを検討して判断すべきものである。
以下、この観点に立って、判断する。
(2) 新規事項追加とされた特許請求の範囲の記載
申立人が新規事項追加であると主張した特許請求の範囲の各記載について上記(1)の判断枠組みに基づいて検討する。
ア 「試作用印刷画像データ」
(ア)本件明細書の記載
申立人が新規事項追加であると主張した特許請求の範囲の「試作用印刷画像データ」という記載に関連して、本件特許の出願当初の明細書には以下の記載がある。
a 図5
[図:0001413347000006.jpg]
b 「【0059】
<実施形態2>
図5は、実施形態2の缶体の印刷システム1の全体図である。
続いて、実施形態2の印刷システムについて説明する。なお、実施形態2において実施形態1と同様の構成については、同一の符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0060】
実施形態2においては、発注者が発注センターに出向いて、試作品を実際に見ながら、印刷画像データを作成することを想定している。
発注センターとして、クライアント装置2および試作プリンタ装置7が同じ場所に設定されている。他の構成は、本実施形態と同様である。
【0061】
発注者は、例えばデザイン画像を発注センターに持ち込んで、実際に試作プリンタ装置7にて印刷を行う。なお、試作プリンタ装置7は、各工場に設けられるプリンタ装置4と同一または同様の仕様である。
【0062】
実施形態2の缶体の印刷システム1において、クライアント装置2からホスト装置3にデザイン画像が送信される。そして、ホスト装置3では、取得したデザイン画像に基づいて印刷画像データを作成する。さらに、試作プリンタ装置7は、ホスト装置3から取得した印刷画像データに基づいて印刷前缶にインクジェット印刷を行う。
実施形態2においては、発注者は、試作プリンタ装置7によって印刷された印刷缶を直ぐに直接確認することができる。
【0063】
なお、印刷缶の色が発注者の希望と異なっている場合には、発注者はクライアント装置2を介して、印刷画像データの変更作業を行う。
そして、最終的に、確定された印刷画像データは、ホスト装置3から各工場の中継装置5にそれぞれ送信される。
【0064】
以上のように、ユーザは、工場にて印刷が行われる場合と同じ条件で印刷された印刷缶を直接確認することができる。そして、各工場では、発注者によって確認が行われた内容に基づいて作成された印刷画像データを用いて、印刷前缶に対する大量の印刷が実施される。そのため、実施形態2においては、特に、ユーザの希望と異なる色の印刷缶が実際に生産されるという状況が極めて生じにくくなっている。」
(イ)判断
上記(ア)の本件特許の出願当初の明細書の記載から、特許請求の範囲の「試作用印刷画像データ」とは、「試作プリンタ装置7」が「ホスト装置3から取得した印刷画像データ」であると理解できる。
したがって、特許請求の範囲の「試作用印刷画像データ」に関して、新規事項を追加するものであるということはできない。
イ 「印刷装置用印刷画像データ」
(ア)本件明細書の記載
申立人が新規事項追加であると主張した特許請求の範囲の「印刷装置用印刷画像データ」という記載に関連して、本件特許の出願当初の明細書には以下の記載がある。
a 図1
[図:0001413347000007.jpg]
b 「【0009】
以下、添付図面を参照して、本発明を実施するための形態について説明する。
<実施形態1>
図1は、実施形態1の缶体の印刷システム1の全体図である。
【0010】
〔システム構成〕
図1に示すように、缶体の印刷システム1は、缶体に印刷を行うためのデザイン画像を送信するクライアント装置2と、後述する複数のインクジェットプリンタ装置4を管理するホスト装置3とが、ネットワークを介して接続している。さらに、缶体の印刷システム1は、缶体にインクジェット印刷を行う複数のインクジェットプリンタ装置4(以下、プリンタ装置4)と、ホスト装置3とプリンタ装置4とを中継する中継装置5とが、ネットワークを介して接続している。また、缶体の印刷システム1は、プリンタ装置4によって印刷が行われた印刷缶の印刷の状態を検査する検査装置6が、ネットワークを介して接続している。
なお、本実施形態において、プリンタ装置4が印刷装置の一例として機能し、ホスト装置3が管理装置の一例として機能する。
【0011】
ここで、通信回線の一例としてのネットワークは、クライアント装置2、ホスト装置3、中継装置5、プリンタ装置4および検査装置6間の情報通信に用いられる通信手段である。ここで、通信手段は、WAN(Wide Area Network)やLAN(Local Area Network
)方式などであり、システム構成を実現できるのであれば、このような方式に限られるものではない。さらに、缶体の印刷システム1のクライアント装置2は、一つに限らず、複数に分散されていても良い。また、ホスト装置3や中継装置5は、一つに限らず、遠隔地に複数あっても良い。さらに、缶体の印刷システム1は、一つ以上のクライアント装置2と、ネットワーク接続などの機能を有するプリンタ装置4を備えていれば良いものとする。
【0012】
なお、本実施形態において、プリンタ装置4によって印刷が行われる前の缶体のことを「印刷前缶」と称し、プリンタ装置4によって印刷が行われた缶体のことを「印刷缶」と称する場合がある。また、特に印刷の前後で区別しない場合には、便宜上、「缶体」と称する。
【0013】
また、本実施形態では、複数の工場として、印刷前缶に印刷を行うプリンタ装置4がそれぞれ設置されたA工場とB工場が存在する例を用いて説明する。
そして、本実施形態の説明において、クライアント装置2、ホスト装置3、A工場およびB工場は、互いに異なる離れた場所に位置していることを想定している。
【0014】
A工場には、複数のプリンタ装置4として第1プリンタ装置41、第2プリンタ装置42および第3プリンタ装置43が設置されている。また、A工場には、ホスト装置3と複数のプリンタ装置4とを中継する第1中継装置51が設置されている。さらに、A工場には、印刷缶の状態を検査する第1検査装置61が設置されている。
【0015】
また、B工場には、複数のプリンタ装置4として第4プリンタ装置44、第5プリンタ装置45および第6プリンタ装置46が設置されている。また、B工場には、ホスト装置3と複数のプリンタ装置4とを中継する第2中継装置52が設置されている。さらに、B工場には、印刷缶の状態を検査する第2検査装置62が設置されている。」
c 図2
[図:0001413347000008.jpg]
d 「【0021】
〔ホスト装置3〕
次に、ホスト装置3について詳細に説明する。
図2は、本実施形態のホスト装置3の機能ブロック図である。
ホスト装置3は、デザイン画像を取得するデザイン取得部31と、生産計画情報を取得する計画情報取得部32と、デザイン画像に対する画像処理を行う画像処理部33(作成部の一例)と、を有している。また、ホスト装置3は、デザイン画像に基づいて見本画像を作成する見本画像作成部34と、ユーザによる見本画像に対する色の変更に関する指示を受け付ける色変更情報受付部35と、を有している。さらに、ホスト装置3は、複数のプリンタ装置4の状態を監視するプリンタ監視部36と、印刷缶の生産条件を決定する生産条件決定部37と、中継装置5に対して印刷に関する指示を送信する印刷情報送信部38(送信部の一例)と、を有している。
(中略)
【0036】
印刷情報送信部38は、複数のプリンタ装置4に対する印刷指示情報を作成する。そして、印刷情報送信部38は、第1中継装置51および第2中継装置52に対し、作成した印刷指示情報をそれぞれ送信する。
印刷指示情報には、プリンタ装置4にて用いられる印刷画像データと、印刷画像データに対応づけられた生産条件情報とが含まれる。そして、あるデザイン画像に対応する印刷指示情報のうち生産条件情報の内容は、中継装置5(工場)ごとに異なる場合がある。一方で、あるデザイン画像に対応する印刷指示情報のうち印刷画像データは、中継装置5(工場)に関わらず同じ内容のものである。
【0037】
以上のように構成されるホスト装置3は、異なる複数の中継装置5に対して、それぞれ印刷指示情報を送信する。さらに、各中継装置5では、受信した印刷指示情報に基づいて、各中継装置5に接続しているプリンタ装置4に対して印刷前缶へのインクジェット印刷を実行させる。」
(イ)判断
上記(ア)の本件特許の出願当初の明細書の記載から、特許請求の範囲の「印刷装置用印刷画像データ」とは、「複数のプリンタ装置4に対する印刷指示情報」に含まれる「プリンタ装置4にて用いられる印刷画像データ」であると理解できる。
したがって、特許請求の範囲の「印刷装置用印刷画像データ」に関して、新規事項を追加するものであるということはできない。
(3)小括
以上から、申立人が主張する特許異議の申立ての理由1(補正要件違反(新規事項追加):特許法第17条の2第3項)によって、請求項1-11に係る特許を取り消すことはできない。
2 理由2(サポート要件違反:特許法第36条第6項第1号)
申立人1は、サポート要件違反を主張しているので、以下検討する。
(1) サポート要件違反の判断枠組み
特許請求の範囲の記載がサポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できる範囲のものであるか否か、また、発明の詳細な説明に記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。
以下、この観点に立って、判断する。
(2) サポート要件違反であるとされた特許請求の範囲の記載
申立人1がサポート要件違反であると主張した特許請求の範囲の各記載について上記(1)の判断枠組みに基づいて検討する。
ア 「試作用印刷画像データ」
上記1(2)アで述べたように、特許請求の範囲の請求項1、10、11の「試作用印刷画像データ」という記載に対応する記載が、本件特許の出願時の明細書の記載のまま、本件特許掲載公報の発明の詳細な説明にも存在しているから、本件特許の特許請求の範囲の請求項1、10、11に記載された発明、および、これらを引用する請求項2-9に記載された発明は、いずれも、発明の詳細な説明に記載された発明であって、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できる範囲のものであるといえる。
イ 「印刷装置用印刷画像データ」
上記1(2)イで述べたように、特許請求の範囲の請求項1、10、11の「印刷装置用印刷画像データ」という記載に対応する記載が、本件特許の出願時の明細書の記載のまま、本件特許掲載公報の発明の詳細な説明にも存在しているから、本件特許の特許請求の範囲の請求項1、10、11に記載された発明、および、これらを引用する請求項2-9に記載された発明は、いずれも、発明の詳細な説明に記載された発明であって、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できる範囲のものであるといえる。
(3)小括
以上から、申立人が主張する特許異議の申立ての理由2(サポート要件違反:特許法第36条第6項第1号)によって、請求項1-11に係る特許を取り消すことはできない。
3 理由3(進歩性欠如:特許法第29条第2項)及び取消理由
申立人は、甲第1号証に基づく進歩性欠如を主張しており、さらに、当審も、甲第1号証に基づく進歩性欠如を理由とする取消理由を通知しているので、以下検討する。
(1) 対比
本件特許発明1と引用発明とを上記第2で分説した構成要件ごとに対比する。
ア <A>
引用発明において、「新聞販売店装置15は、広域、あるいは、全国に所在する各新聞販売店に設置され」、「新聞販売店装置15は」、「チラシ印刷用プリンタ装置54を有し」、「チラシ印刷用プリンタ装置54は」、「ディジタル化された印刷画像データから直接に本紙に印刷可能な装置であり」「新聞販売店装置15に具わる」「チラシ印刷装置としては、インクジェット方式のプリンタであってもよい」から、引用発明の「チラシ印刷用プリンタ装置54」は、本件特許発明1の<A>「異なる場所に設置され、インクジェット印刷により缶体に印刷を行う複数の印刷装置」と、「異なる場所に設置され、インクジェット印刷により物体に印刷を行う複数の印刷装置」である点で共通する。
イ <B>
引用発明の「印刷会社装置13」は、「校了紙ができたら」、「通信ネットワーク17を介して、各地に所在する」「新聞販売店の新聞販売店装置15に、チラシを印刷するための印刷画像データとしてのDTPデータを送信し」、「各新聞販売店の新聞販売店装置15では、DTPデータを受信し、チラシ印刷プリンタ装置54においてチラシの印刷を行な」うことから、複数のチラシ印刷プリンタ装置54を管理しているといえる。
したがって、引用発明の「印刷会社装置13」は、本件特許発明1の<B>「前記複数の印刷装置を管理する」「管理装置」に相当する。
ウ <C>
引用発明において、「発注者装置11は、通信ネットワーク17を介して通信を行なう通信部21、発注者装置11全体を制御する制御部22、操作者へ情報を出力し操作を受け付ける入出力部23、および、印刷機と同等のカラー印刷を行なう校正刷りプリンタ装置24を有し」、「通信部21、制御部22および入出力部23は、パーソナルコンピュータおよびモデムなどにより構成され、校正刷りプリンタ装置24はそのパーソナルコンピュータに周辺装置として接続された構成であ」るから、コンピュータ技術分野の技術常識に照らすと、「パーソナルコンピュータおよびモデム」は、発注者が操作するクライアント装置であるといえ、また、「発注者装置11内の校正刷りプリンタ装置24」は、「パーソナルコンピュータおよびモデム」に接続されているといえる。さらに、「校正刷りプリンタ装置24は」、「ディジタル化された印刷画像データから直接に印刷用紙に印刷可能な装置であり」、「印刷会社は、その印刷原稿に基づいて印刷画像データを作成し、印刷会社装置13内の校正刷りプリンタ装置により校正刷りを行なうとともに、印刷画像データを発注者装置11に送信し」、「発注者は、送信される校正刷り用の印刷画像データを発注者装置11で受信し、校正刷りプリンタ装置24で印刷出力」することから、発注者装置11内の校正刷りプリンタ装置24は、印刷が行われた印刷用紙の試作に用いられる試作用プリンタであって、校正刷り用の印刷画像データを基に印刷用紙への印刷を行う試作用プリンタであるといえる。加えて、引用発明の「発注者」は、本件特許発明1の「ユーザ」に相当し、また、引用発明の「校正刷り用の印刷画像データ」は、本件特許発明1の「試作用印刷画像データ」に相当する。
したがって、引用発明の「校正刷りプリンタ装置24」は、本件特許発明1の<C>「ユーザが操作するクライアント装置に接続され、印刷が行われた缶体の試作に用いられる試作用プリンタであって、試作用印刷画像データを基に缶体への印刷を行う試作用プリンタ」と、「ユーザが操作するクライアント装置に接続され、印刷が行われた物体の試作に用いられる試作用プリンタであって、試作用印刷画像データを基に物体への印刷を行う試作用プリンタ」である点で共通する。
エ <D>
引用発明において、「チラシ印刷用プリンタ装置54は」、「ディジタル化された印刷画像データから直接に本紙に印刷可能な装置であり」、「チラシ発行元であるスーパーマーケットなどの小売業者は、チラシの内容を決定し、チラシの原稿を作成し、」「作成された原稿は、指示書として、発注者装置11より通信ネットワーク17を介して印刷会社の印刷会社装置13に送付され」、「印刷会社では、印刷会社装置13において指示書に基づいてカラーカンプを作成し、印刷会社装置13内の校正刷りプリンタ装置より印刷出力するとともに、通信ネットワーク17を介して発注者装置11に送信し」、「発注者は、送信されるカラーカンプを発注者装置11で受信し、発注者装置11内の校正刷りプリンタ装置24で印刷出力し」、「発注者と印刷会社は、ともに校正刷りプリンタ装置により出力されたカラーカンプを参照しながら、発注者装置11と印刷会社装置13により通信ネットワーク17を介して協議を行い」、「印刷会社は、協議のたびに協議結果に基づいて新たなカラーカンプを作成し、印刷会社装置13内の校正刷りプリンタ装置で印刷するとともに、通信ネットワーク17を介して発注者装置11に送信し」、「発注者は、前回同様に校正刷りプリンタ装置24でこれを印刷すると、ともに新たに印刷出力したカラーカンプを参照しながら、発注者と印刷会社は再び協議を行い」、「このような協議およびカラーカンプの再作成を繰り返し、最終的な印刷原稿を取りまとめ」、「取りまとめが終了したら、印刷会社は、その印刷原稿に基づいて印刷画像データを作成し、印刷会社装置13内の校正刷りプリンタ装置により校正刷りを行なうとともに、印刷画像データを発注者装置11に送信し」、「発注者は、送信される校正刷り用の印刷画像データを発注者装置11で受信し、校正刷りプリンタ装置24で印刷出力し」、「発注者と印刷会社は、ともに校正刷りプリンタ装置により出力された校正刷りを参照しながら、発注者装置11と印刷会社装置13により通信ネットワーク17を介して協議を行い」、「印刷会社は、協議のたびに協議結果に基づいて新たな校正刷りを作成し、印刷会社装置13内の校正刷りプリンタ装置で印刷するとともに、通信ネットワーク17を介して発注者装置11に送信し」、「発注者は、前回同様に校正刷りプリンタ装置24でこれを印刷し、この新たに印刷出力した校正刷りを参照しながら、発注者と印刷会社は再び協議を行ない」、「このような協議および校正刷りの再作成を繰り返しながら、最終的に印刷物を取り決め、最終的な校正刷りをOKシート(校了紙)とし」、「校了紙ができたら、印刷会社は、印刷会社装置13より通信ネットワーク17を介して、各地に所在する印刷会社から委託を受けた新聞販売店の新聞販売店装置15に、チラシを印刷するための印刷画像データとしてのDTPデータを送信し」、「各新聞販売店の新聞販売店装置15では、DTPデータを受信し、チラシ印刷プリンタ装置54においてチラシの印刷を行な」うことから、印刷会社装置13は、取得した指示書に対して本紙に印刷するための画像処理を施し、複数のチラシ印刷プリンタ装置54にて用いられるチラシを印刷するための印刷画像データであるDTPデータを作成しているといえ、また、指示書がチラシのデザイン画像を含んでいるのは明らかであり、さらに、引用発明の「DTPデータ」は、チラシ印刷プリンタ装置54用の印刷画像データであるといえる。
したがって、上記ア、イを踏まえると、引用発明の「印刷会社装置13」は、本件特許発明1の<D>「取得したデザイン画像に対して缶体に印刷するための画像処理を施し、前記複数の印刷装置にて用いられる印刷画像データである印刷装置用印刷画像データを作成」する構成と、「取得したデザイン画像に対して物体に印刷するための画像処理を施し、前記複数の印刷装置にて用いられる印刷画像データである印刷装置用印刷画像データを作成」する点で共通する。
オ <E>
引用発明において、「印刷会社では、印刷会社装置13において指示書に基づいてカラーカンプを作成し、印刷会社装置13内の校正刷りプリンタ装置より印刷出力するとともに、通信ネットワーク17を介して発注者装置11に送信し」、「発注者は、送信されるカラーカンプを発注者装置11で受信し、発注者装置11内の校正刷りプリンタ装置24で印刷出力し」、「発注者と印刷会社は、ともに校正刷りプリンタ装置により出力されたカラーカンプを参照しながら、発注者装置11と印刷会社装置13により通信ネットワーク17を介して協議を行い」、「印刷会社は、協議のたびに協議結果に基づいて新たなカラーカンプを作成し、印刷会社装置13内の校正刷りプリンタ装置で印刷するとともに、通信ネットワーク17を介して発注者装置11に送信し」、「発注者は、前回同様に校正刷りプリンタ装置24でこれを印刷すると、ともに新たに印刷出力したカラーカンプを参照しながら、発注者と印刷会社は再び協議を行い」、「このような協議およびカラーカンプの再作成を繰り返し、最終的な印刷原稿を取りまとめ」、「取りまとめが終了したら、印刷会社は、その印刷原稿に基づいて印刷画像データを作成し、印刷会社装置13内の校正刷りプリンタ装置により校正刷りを行なうとともに、印刷画像データを発注者装置11に送信し」、「発注者は、送信される校正刷り用の印刷画像データを発注者装置11で受信し、校正刷りプリンタ装置24で印刷出力」することから、発注者装置11内の校正刷りプリンタ装置24にて用いられる校正刷り用の印刷画像データは、指示書に基づいて作成されたカラーカンプと発注者と印刷会社との協議結果とを基に、印刷会社装置13によって作成されているといえる。また、引用発明の「カラーカンプ」は、本件特許発明1の「見本画像」に相当する。さらに、上記エで述べたとおり、印刷会社装置13は、チラシを印刷するための印刷画像データであるDTPデータを作成している。加えて、引用発明の「発注者と印刷会社との協議結果」は、本件特許発明1の「ユーザの色変更情報」と、「ユーザの情報」である点で共通する。
したがって、上記ア~エを踏まえると、引用発明は、本件特許発明1の<E>「前記試作用プリンタにて用いられる前記試作用印刷画像データは、デザイン画像と当該デザイン画像を基に前記クライアント装置にて作成された見本画像に対する前記ユーザの色変更情報とを基に、前記印刷装置用印刷画像データを作成する前記管理装置によって作成される」構成と、「前記試作用プリンタにて用いられる前記試作用印刷画像データは、デザイン画像を基に作成された見本画像に対する前記ユーザの情報を基に、前記印刷装置用印刷画像データを作成する前記管理装置によって作成される」構成である点で共通する。
カ <F>
引用発明の「印刷物製作システム10」は、本件特許発明1の<F>「缶体の印刷システム」と、「物体の印刷システム」である点で共通する。
(2) 一致点・相違点
以上から、本件特許発明1と引用発明とは、下記アの一致点、および、下記イの相違点があるといえる。
ア [一致点]
「<A’> 異なる場所に設置され、インクジェット印刷により物体に印刷を行う複数の印刷装置と、
<B> 前記複数の印刷装置を管理する管理装置と、
<C’> ユーザが操作するクライアント装置に接続され、印刷が行われた物体の試作に用いられる試作用プリンタであって、試作用印刷画像データを基に物体への印刷を行う試作用プリンタと、
を備え、
<D’> 前記管理装置は、取得したデザイン画像に対して物体に印刷するための画像処理を施し、前記複数の印刷装置にて用いられる印刷画像データである印刷装置用印刷画像データを作成し、
<E’> 前記試作用プリンタにて用いられる前記試作用印刷画像データは、デザイン画像を基に作成された見本画像に対する前記ユーザの情報を基に、前記印刷装置用印刷画像データを作成する前記管理装置によって作成される、
<F’> 物体の印刷システム」
イ [相違点]
(ア)<相違点1>
印刷対象である物体が、本件特許発明1では、「缶体」であるのに対し、引用発明では、「印刷用紙」である点。
(イ)<相違点2>
試作用印刷画像データの作成において、本件特許発明1では、「デザイン画像と当該デザイン画像を基に前記クライアント装置にて作成された見本画像に対する前記ユーザの色変更情報とを基に」作成されるのに対し、引用発明では、カラーカンプに対する発注者と印刷会社との協議結果を基に作成される点。
(3) 判断
事案に鑑みて、先ず、<相違点2>について検討する。
ア 上記第5の2(3)オで述べたように、引用文献4(甲第2号証)には、以下の引用文献4記載周知技術が開示されていると認められる。
「見本画像をディスプレイ等によって出力することにより、実物の見本を作成することなく、検討が行え、色変え処理が可能である」こと。
引用発明においても、上記周知技術を適用して、チラシの原稿(デザイン画像)に基づくカラーカンプ(見本画像)を発注者装置(クライアント装置)で作成することは、本件特許の優先日前に当業者が容易に想到し得たものである。
イ しかし、引用発明に上記周知技術を適用して得られたカラーカンプ(見本画像)は、「ディスプレイ等によって出力」されるものであり、複数の印刷装置にて印刷されたものとは異なるカラーカンプ(見本画像)となり、協議の前提となる、共通のカラーカンプ(見本画像)が作成されず、適切な協議が行えなくなるといえる。
ウ 以上から、引用発明において、試作用印刷画像データの作成において、チラシの原稿(デザイン画像)に基づくカラーカンプ(見本画像)を発注者装置(クライアント装置)で作成し、カラーカンプ(見本画像)に対する発注者と印刷会社との協議結果を基に作成する際に、クライアント装置にて作成した「色校正の直しデータ25」をメールで送付する構成としても、本件特許発明1の<相違点2>に係る「デザイン画像と当該デザイン画像を基に前記クライアント装置にて作成された見本画像に対する前記ユーザの色変更情報とを基に」作成される構成とすることは、当業者が容易に想到し得たものとはいえない。
(4)小括
以上から、申立人が主張する特許異議の申立ての理由3(進歩性欠如:特許法第29条第2項)によって、請求項1に係る特許を取り消すことはできない。
また、当審が取消理由通知において通知した取消理由(進歩性欠如:特許法第29条第2項)によって、請求項1に係る特許を取り消すことはできない。
さらに、請求項2ないし9に記載の発明は、請求項1に記載の発明を減縮したものであり、請求項10に記載の発明は、請求項1に記載の「缶体の印刷システム」の発明から、「複数の印刷装置を管理する管理装置」の構成を抽出したものであって、上記<相違点2>と同様の構成を有しており、請求項11に記載の発明は、請求項10に記載の「複数の印刷装置を管理する管理装置」の発明のカテゴリを、単に、「複数の印刷装置を管理する管理装置として機能するコンピュータに、・・・機能と、を実現させるためのプログラム」に変更するものであるから、申立人が主張する特許異議の申立ての理由3(進歩性欠如:特許法第29条第2項)や、当審が取消理由通知において通知した取消理由(進歩性欠如:特許法第29条第2項)によって、請求項2ないし11に係る特許を取り消すことはできない。
(5)申立人の主張について
ア 申立人2は、上記<相違点2>に係る構成に関して、概略、以下のように主張している。(申立書13頁下から1行~14頁6行)
「甲第2号証、甲第3号証等にも記載されているように、相違点2を構成する「E:前記試作用プリンタにて用いられる前記試作用印刷画像データは、デザイン画像と当該デザイン画像を基に前記クライアント装置にて作成された見本画像に対する前記ユーザの色変更情報とを基に、前記印刷装置用印刷画像データされる」なる技術事項は周知の技術である。
以上のことから、本件特許発明1と甲第1号証に記載された発明との相違点2は、単なる設計事項、あるいは、甲第1号証に記載された発明から当業者が容易に想到できたものである。」
イ しかし、上記(3)で述べたように、引用発明に、甲第2号証等に記載の周知技術を適用しても、協議の前提となる共通のカラーカンプ(見本画像)が作成されず、適切な協議が行えなくなるといえるから、引用発明、および、甲第2号証ならびに甲第3号証に記載の周知技術に基づいて、本件特許発明1の<相違点2>に係る構成を当業者が容易に想到し得たものであるとはいえない。
また、当該<相違点2>に係る事項が周知事項であるという証拠もない。
第7 むすび
以上のとおり、取消理由通知に記載した理由、および、特許異議の申立ての理由によっては、請求項1ないし11に係る特許を取り消すことはできない。
他に請求項1ないし11に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2023-701314