特許異議申立
2023-701308
電子写真現像剤用キャリア芯材とその製造方法、並びに該キャリア芯材を備えた電子写真現像剤用キャリアと現像剤
- 審判番号
- 2023-701308
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2019-011440
- 登録番号
- 7335579
- 請求日
- 2023年12月11日
- 審決日
- 2024年05月21日
- 公報発行日
- 2024年06月28日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】パウダーテック株式会社
- 【権利者代理人】関口 正夫
- 【異議申立人】山本 英生
- 審判長/審判官
- 審判長 神谷 健一
- 審判官 関根 洋之
- 審判官 井口 猶二
- 分類
- P1651.121-Y (G03G) / P1651.537-Y (G03G)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第36条、特許法第29条
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7335579号発明「電子写真現像剤用キャリア芯材とその製造方法、並びに該キャリア芯材を備えた電子写真現像剤用キャリアと現像剤」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7335579号の請求項1ないし8に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続等の経緯
特許第7335579号(以下「本件特許」という。)の請求項1~8に係る特許についての出願(特願2019-11440号)は、平成31年1月25日の出願であって、令和5年8月22日にその特許権の設定登録がされ、令和5年8月30日に特許掲載公報が発行された。
本件特許について、特許掲載公報の発行の日から6月以内である令和5年12月11日に特許異議申立人 山本 英生(以下「特許異議申立人」という。)から請求項1~8に対して特許異議の申立てがされた。
第2 本件特許発明
本件特許の請求項1~8に係る発明(以下、請求項に付す番号を使って、それぞれ、「本件特許発明1」などという。)は、特許請求の範囲の請求項1~8に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。
「【請求項1】
フェライト組成を有し、上澄み透過率が85.0%以上である、電子写真現像剤用キャリア芯材の製造方法であって、以下の工程;
前記キャリア芯材の原料を混合及び粉砕して原料混合物とする工程、
前記原料混合物を仮焼成して仮焼成物とする工程、
前記仮焼成物を粉砕及び造粒して造粒物とする工程、
前記造粒物を本焼成して焼成物とする工程、
前記焼成物を解砕し、その後、分級して粗粒子や微粒子を取り除く工程、及び
前記解砕及び分級した焼成物から超微粉を除去する工程、を含み、
前記超微粉を除去する工程で、前記焼成物とグリコール類からなる溶媒とを、高速ミキサーを用いて10~100m/秒の速度で0.1~10分の条件で混合及び分散してスラリーとし、前記スラリーを10秒~60分静置して沈殿物と上澄み液に分け、前記上澄み液を除去した後に、前記沈殿物を回収して乾燥する、あるいは精密空気分級機を用いて回転速度2000rpm以上の条件で前記焼成物に分級操作を行う、方法。
【請求項2】
前記キャリア心材の上澄み透過率が90.0%以上である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記キャリア芯材の見掛け密度が1.5~2.5g/cm3である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記キャリア芯材の体積平均粒子径D50が20~50μmである、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記キャリア芯材の形状係数SF-1が105~150である、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記キャリア芯材のBET比表面積が0.05~0.55m2/gである、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記キャリ芯材の平均円相当径が20~50μmである、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記キャリア芯材は、一般式(1):(MO)x(Fe2O3)y(ただし、x+y=100mol%、y=30~95mol%、MはFe、Mn、Mg、Sr、Ca、Ti、Li、Al、Si、Zr及びBiからなる群から選択される1種又は2種以上)で表されるフェライト組成を有する、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。」
第3 申立理由の概要
1 明確性要件違反
本件特許の特許請求の範囲の請求項1~8に係る発明は明確でないから、本件特許は、特許法36条6項2号に規定する要件を満たしていない出願に対してされたものである。
2 サポート要件違反
本件特許の特許請求の範囲の請求項1~8に係る発明は発明の詳細な説明に記載したものでないから、本件特許は、特許法36条6項1号に規定する要件を満たしていない出願に対してされたものである。
3 進歩性欠如
本件特許発明1~8は、甲第1号証(特開平2-64559号公報:以下「甲1」という。)に記載された発明及び甲第2号証(特開2011-180296号公報:以下「甲2」という。)に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1~8に係る特許は、特許法29条2項の規定に違反してされたものである。
4 特許異議申立人が提出した証拠方法
甲第1号証:特開平2-64559号公報
甲第2号証:特開2011-180296号公報
甲第3号証:日清エンジニアリング株式会社,「AIR CLASSIFIER TURBO CLASSIFIER 精密空気分級機」のカタログ,2008年11月
第4 当合議体の判断
1 明確性要件違反について
(1)特許異議申立人は、特許異議申立書6~7頁の「4」アにおいて、「「精密空気分級機」がいかなる分級機であるか明らかではない。仮に、“精密空気分級”が高い分級精度を有するものを意味するものとしても、どの程度の分級精度が「精密」に該当するのか不明である」と主張する。
しかしながら、本件特許明細書の【0062】及び【0063】を参酌すれば、当業者は、請求項1に記載の「精密空気分級機」は、電子写真現像剤用キャリア芯材の上澄み透過率が85.0%以上となるように超微粉を分級除去できる程度に精密な空気分級機のことであると理解できるから、上記主張は採用できない。
(2)特許異議申立人は、特許異議申立書6~7頁(「4」ア)において、「空気分級機の種類によっては、分級ロータやブロアなど複数の回転部分を有しているものがあり、回転速度のみの規定ではいずれの回転部分の回転速度であるのか明らかでない」と主張する。
しかしながら、本件特許明細書の【0062】及び【0063】を参酌すれば、当業者は、請求項1に記載の「回転速度」は、焼成物を分散させる回転ロータ(分級ロータ)の回転速度であると理解できるから、上記主張は採用できない。
(3)したがって、請求項1及び請求項1を直接又は間接的に引用する請求項2~8に係る発明は明確である。
2 サポート要件違反について
(1)特許異議申立人は、特許異議申立書9頁19行~10頁1行(「4」イ)において、「本件明細書には、強制渦型の遠心力分級方式の空気分級機である日清エンジニアリング株式会社製の「ターボクラシファイアTC-15」を用いて、回転速度(分級ロータの回転速度かは不明)2000rpm以上とすれば、サブミクロン~数μmレベルのフェライト超微粉を除去できることしか開示されておらず、これ以外の分級方式の空気分級機を用いて、特定されていない回転部の回転速度を2000rpm以上とした場合にフェライト超微粉を除去できることは何ら開示および示唆されていない。また、強制渦型の遠心力分級方式の空気分級機を用いた場合であっても「ターボクラシファイアTC-15」の分級ロータの回転半径と異なる回転半径の分級機を用いて、分級ロータの回転速度を2000rpm以上としたときにフェライト超微粉を除去できることも何ら開示および示唆されていない。また出願時の技術常識に照らしても、請求項に係る発明の範囲まで、発明の詳細な説明に開示された内容を拡張ないし一般化することはできない」と主張する。
しかしながら、本件特許明細書において、日清エンジニアリング株式会社製の「ターボクラシファイアTC-15」は例として挙げられたものであり、本件特許明細書の記載からみて、本件特許発明は、請求項に記載された発明特定事項を備えることにより、「フェライト超微粉に起因するトナー色汚れを防止することができる電子写真現像剤用キャリア芯材」「の製造方法」「の提供」という課題(本件特許明細書【0015】)を解決できるものであると認められ、当業者であれば、例として挙げられた「ターボクラシファイアTC-15」を用いなくても、本件特許発明が上記課題を解決できることを認識できるといえるから、上記主張は採用できない。
(2)したがって、請求項1及び請求項1を直接又は間接的に引用する請求項2~8に係る発明は発明の詳細な説明に記載したものである。
3 進歩性欠如について
(1)甲1に記載された発明
甲1には、実施例1に係る以下のキャリア芯材の製造方法の発明(甲1の5頁左上欄9行~右上欄18行、特許請求の範囲を参照のこと。以下「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。
「Fe2O3、CuO、ZnOを主成分とするフェライトキャリア芯材を造粒・乾燥後焼成し、次いで、解砕-篩分し、中心粒径50μmであり中心粒径±10μmの粒径を持つ粒子が70wt%以上となるキャリア芯材を得て、このキャリア芯材を、風力分級し、超微粉を0.8wt%まで除去した、静電像現像用キャリア芯材の製造方法。」
(2)本件特許発明1について
ア 対比、一致点・相違点
本件特許発明1と甲1発明を対比すると、両者は、下記(ア)の点において一致し、また、下記(イ)の点で相違する。
(ア)一致点
「フェライト組成を有する、電子写真現像剤用キャリア芯材の製造方法であって、以下の工程;
造粒物を焼成して焼成物とする工程、
前記焼成物を解砕し、その後、分級して粗粒子や微粒子を取り除く工程、及び
前記解砕及び分級した焼成物から超微粉を除去する工程、を含む、方法。」
(イ)相違点
(相違点1)
本件特許発明1は、「前記キャリア芯材の原料を混合及び粉砕して原料混合物とする工程」、「前記原料混合物を仮焼成して仮焼成物とする工程」及び「前記仮焼成物を粉砕及び造粒して造粒物とする工程」を含むのに対し、甲1発明は、そのような工程を含んでいない点。
(相違点2)
本件特許発明1は、「前記超微粉を除去する工程で、前記焼成物とグリコール類からなる溶媒とを、高速ミキサーを用いて10~100m/秒の速度で0.1~10分の条件で混合及び分散してスラリーとし、前記スラリーを10秒~60分静置して沈殿物と上澄み液に分け、前記上澄み液を除去した後に、前記沈殿物を回収して乾燥する、あるいは精密空気分級機を用いて回転速度2000rpm以上の条件で前記焼成物に分級操作」を行って、「上澄み透過率が85.0%以上である、電子写真現像剤用キャリア芯材」を製造するのに対し、甲1発明は、焼成して得られたキャリア芯材を風力分級し、超微粉を0.8wt%まで除去されたものを製造する点。
イ 判断
事案に鑑み、相違点2について検討する。
甲1発明における風力分級には、DS分級機を用いることが好ましいとされている(甲1の3頁右上欄20頁~左下欄3行を参照のこと。)ところ、このDS分級機は、旋回気流による分散を図った後に分級する旋回気流型分級器であり(例えば、特開平7-148467号公報の【0003】参照。)、回転ロータを備え、焼成物表面に付着している超微粉の離脱を促進する精密空気分級機ほど高精度な分級を行うことはできないものである。
そして、精密空気分級機を用いて回転速度2000rpm以上の条件で、焼成物であるキャリア芯材に分級操作を行って、上澄み透過率が85.0%以上である電子写真現像剤用キャリア芯材を製造することは、特許異議申立人が提出した甲1及び甲2のいずれにも記載も示唆もされておらず、また、相違点2に係る構成を具備することが公知の技術、周知慣用技術又は技術常識であることを示す他の証拠を発見することもできない。
また、甲1にはフェライト超微粉に起因するトナー色汚れについて記載されていないから、甲1発明において、フェライト超微粉に起因するトナー色汚れを防止するために相違点2に係る構成を具備する動機付けもないというべきである。
したがって、甲1発明において、相違点2に係る本件特許発明1の構成とすることは、当業者が容易になし得たことであるとはいえない。
ウ 小括
本件特許発明1は、甲1に記載された発明及び甲2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(3)本件特許発明2~8について
本件特許の特許請求の範囲の請求項2~8は、いずれも、請求項1を直接又は間接的に引用するものであって、本件特許発明2~8は、本件特許発明1の構成を全て具備し、これに限定を加えたものに該当する。そうすると、上記(2)のとおり、本件特許発明1が、甲1に記載された発明及び甲2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない以上、本件特許発明2~8も、甲1に記載された発明及び甲2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
第5 むすび
請求項1~8に係る特許は、いずれも、特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては取り消すことはできない。
また、他に請求項1~8に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。
J-PlatPat 審決検索を開く
2023-701308