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特許異議申立

2023-701284

ドライフィルムレジスト基材用ポリエステルフィルム

審判番号
2023-701284
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2019-025486
登録番号
7290034
請求日
2023年12月05日
審決日
2024年03月14日
公報発行日
2024年04月26日
結論
維持
当事者
  • 【権利者】三菱ケミカル株式会社
  • 【権利者代理人】田口 昌浩
  • 【異議申立人】浅野 幸義
審判長/審判官
  • 審判長 磯貝 香苗
  • 審判官 淺野 美奈
  • 審判官 植前 充司
分類
P1651.536-Y (C08J) / P1651.537-Y (C08J) / P1651.121-Y (C08J)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第36条第6項第2号、特許法第36条第4項第1号、特許法第36条第6項第1号、特許法第29条第2項、特許法第2条第3項第1号、特許法第29条
データ出所
審決公報(XML)

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特許第7290034号発明「ドライフィルムレジスト基材用ポリエステルフィルム」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7290034号の請求項1ないし10に係る特許を維持する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第7290034号(以下、「本件特許」という。)についての出願は、平成31年2月15日(優先権主張 平成30年2月15日)の出願であって、令和5年6月5日にその特許権の設定登録(請求項の数10)がされ、同年同月13日に特許掲載公報が発行され、その後、その特許に対し、同年12月5日に特許異議申立人 浅野 幸義(以下、「特許異議申立人」という。)より特許異議の申立て(対象となる請求項:全請求項)がされたものである。 第2 本件特許発明 本件特許の請求項1ないし10に係る発明(以下、これらの発明を順に「本件特許発明1」、「本件特許発明2」などという場合があり、また、これらをまとめて「本件特許発明」という場合がある。)は、願書に添付された特許請求の範囲の請求項1ないし10に記載された事項により特定される次のとおりのものである。 「【請求項1】 ポリエステルフィルムの少なくとも片面に塗布層を有し、 該塗布層中にエーテル型非イオン系界面活性剤を含有し、 該塗布層中に粒子A-1及び粒子A-2を含有し、 該粒子A-1の平均粒径が0.001μm以上0.045μm以下であり、 該粒子A-2の平均粒径が0.06μm以上1.0μm以下であり、 該塗布層の表面を観察した際の該塗布層表面に占める粒子の面積合計に対し、粒径が30~80nmの粒子ASの面積割合が60~99.9%の範囲内であり、粒径が100~400nmの粒子ALの面積割合が0.1~15%の範囲内であり、粒径が1μmを超える粒子を実質的に含まない、ことを特徴とするドライフィルムレジスト基材用ポリエステルフィルム。 【請求項2】 前記塗布層中のエーテル型非イオン系界面活性剤の含有量が0.01~10質量%の範囲内である、請求項1に記載のドライフィルムレジスト基材用ポリエステルフィルム。 【請求項3】 前記塗布層を有する表面の平均表面粗さ(Ra)が1~10nmの範囲内である請求項1又は2に記載のドライフィルムレジスト基材用ポリエステルフィルム。 【請求項4】 前記塗布層を有する表面は、JIS P8119に準拠して測定した空気漏れ指数が400000秒以下である請求項1~3のいずれか1項に記載のドライフィルムレジスト基材用ポリエステルフィルム。 【請求項5】 前記塗布層の厚さが0.001~1μmの範囲内である請求項1~4のいずれか1項に記載のドライフィルムレジスト基材用ポリエステルフィルム。 【請求項6】 前記塗布層中にワックスを含有する請求項1~5のいずれか1項に記載のドライフィルムレジスト基材用ポリエステルフィルム。 【請求項7】 前記ポリエステルフィルム中に粒子Bを含有することを特徴とする請求項1~6のいずれか1項に記載のドライフィルムレジスト基材用ポリエステルフィルム。 【請求項8】 前記塗布層が塗布液から形成され、該塗布液が架橋剤を含有し、該架橋剤がメラミン化合物またはオキサゾリン化合物である請求項1~7のいずれか1項に記載のドライフィルムレジスト基材用ポリエステルフィルム。 【請求項9】 前記塗布液中の全不揮発成分に対する前記架橋剤の含有量が5~85質量%である、請求項8に記載のドライフィルムレジスト基材用ポリエステルフィルム。 【請求項10】 請求項1~9のいずれか1項に記載のドライフィルムレジスト基材用ポリエステルフィルムの前記塗布層側と反対側に感光性樹脂層を有するドライフィルムレジスト。」 第3 特許異議申立理由の概要 特許異議申立人が申し立てた請求項1ないし10に係る特許に対する特許異議申立理由の概要は、次のとおりである。 1 申立理由1(明確性要件) 本件特許の請求項1ないし10に係る特許は、下記の点で特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。 本件特許の請求項1の発明には、以下のように粒径の異なる4種類の粒子が存在する。 ・平均均粒径が0.001μm以上0.045μm以下(つまり、1nm~45nm)の粒子A-1 ・平均粒径が0.06μm以上1.0μm以下(つまり、60nm~1000nm)の粒子A-2 ・粒径が30~80nmの粒子AS ・粒径が100~400nmの粒子AL 本件特許の請求項1では、これらの粒子のうち、粒子A-1と粒子A-2は塗布層中に併用して含有されることが規定され、粒子ASと粒子ALはそれぞれ塗布層の表面において特定の面積割合を占めることが規定されている。 このうち、粒子A-1と粒子ASは、平均粒径と粒径の数値範囲が一部重複するため、どのような関係にあるのかが不明である。また、粒子A-2と粒子ALについても、平均粒径と粒径の数値範囲が一部重複するため、どのような関係にあるのかが不明である。 請求項1の記載を直接又は間接的に引用して特定する請求項2ないし10についても同様である。 2 申立理由2(実施可能要件) 本件特許の請求項1ないし10に係る特許は、下記の点で特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。 (1) 申立理由2-1(本件特許の請求項1について) 本件特許の請求項1の規定のうち、「該塗布層の表面を観察した際の該塗布層表面に占める粒子の面積合計に対し、粒径が30~80nmの粒子ASの面積割合が60~99.9%の範囲内であり、粒径が100~400nmの粒子ALの面積割合が0.1~15%の範囲内であり、」という部分では、塗布層の表面において、粒径の異なる2種類の粒子AS及び粒子ALがそれぞれ特定の面積割合で存在することが規定されている。 しかし、本件特許明細書を精査しても、具体的にどのようにして粒子AS及び粒子ALのそれぞれを上記のように特定の面積割合で塗布層の表面に存在させることができるのかが全く不明である。また、このような粒子AS及び粒子ALの面積割合を制御する手段は、当業者の常識でもない。そのため、たとえ当業者であっても、本件特許の請求項1に規定される粒子AS及び粒子ALの面積割合を達成するためには、過度の実験や試行錯誤を要する。 したがって、本件特許の請求項1の発明は、実施可能要件違反である。 請求項1の記載を直接又は間接的に引用して特定する請求項2ないし10についても同様である。 (2) 申立理由2-2(本件特許の請求項4について) 本件特許の請求項4に規定される「空気漏れ指数」の達成方法が本件特許明細書を見ても全く不明である。 本件特許明細書には、「空気漏れ指数」について、上下限の例示、その臨界的意義、及び測定方法に関する説明しか存在しない。また、本件特許明細書の実施例、比較例を見ても、比較例8以外はすべて請求項4で規定される範囲内であり、どのようにして請求項4で規定される「空気漏れ指数」の数値を達成しているのか、全く理解できない。さらに、この「空気漏れ指数」の数値の制御手段は、当業者の常識でもない。 したがって、本件特許の請求項4の発明は、実施可能要件である。 請求項4の記載を直接又は間接的に引用して特定する請求項5ないし10についても同様である。 3 申立理由3(サポート要件) 本件特許の請求項1ないし10に係る特許は、下記の点で特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。 (1) 申立理由3-1(本件特許の請求項1について) 本件特許の請求項1の規定のうち、「該塗布層の表面を観察した際の該塗布層表面に占める粒子の面積合計に対し、粒径が30~80nmの粒子ASの面積割合が60~99.9%の範囲内であり、粒径が100~400nmの粒子ALの面積割合が0.1~15%の範囲内であり、」という部分では、塗布層の表面において、粒径の異なる2種類の粒子AS及び粒子ALがそれぞれ特定の面積割合で存在することが規定されている。 しかし、本件特許明細書を精査しても、具体的にどのようにして粒子AS及び粒子ALのそれぞれを上記のように特定の面積割合で塗布層の表面に存在させることができるのかが全く不明である。また、このような粒子AS及び粒子ALの面積割合を制御する手段は、当業者の常識でもない。そのため、たとえ当業者であっても、本件特許の請求項1に規定される粒子AS及び粒子ALの面積割合を達成するためには、過度の実験や試行錯誤を要する。 したがって、本件特許の請求項1の発明は、サポート要件違反である。 請求項1の記載を直接又は間接的に引用して特定する請求項2ないし10についても同様である。 (2) 申立理由3-2(本件特許の請求項4について) 本件特許の請求項4に規定される「空気漏れ指数」の達成方法が本件特許明細書を見ても全く不明である。 本件特許明細書には、「空気漏れ指数」について、上下限の例示、その臨界的意義、及び測定方法に関する説明しか存在しない。また、本件特許明細書の実施例、比較例を見ても、比較例8以外はすべて請求項4で規定される範囲内であり、どのようにして請求項4で規定される「空気漏れ指数」の数値を達成しているのか、全く理解できない。さらに、この「空気漏れ指数」の数値の制御手段は、当業者の常識でもない。 したがって、本件特許の請求項4の発明は、サポート要件違反である。 請求項4の記載を直接又は間接的に引用して特定する請求項5ないし10についても同様である。 4 申立理由4(進歩性) 本件特許の請求項1ないし10に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第1号証に記載された発明に基いて、本件特許の優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、それらの発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。 5 証拠方法 ・甲第1号証:特開2018-63341号公報 ・甲第2号証:特開2013-99907号公報 ・甲第3号証:特開2016-87854号公報 第4 当審の判断 以下のとおり、当審は、いずれの申立理由によっても、本件特許発明1ないし10に係る特許を取り消すことはできないものと判断する。 1 申立理由1(明確性要件)について (1) 明確性要件の判断基準 特許を受けようとする発明が明確であるかは、特許請求の範囲の記載だけではなく、願書に添付した明細書の記載及び図面を考慮し、また、当業者の出願時における技術常識を基礎として、特許請求の範囲の記載が、第三者の利益が不当に害されるほどに不明確であるか否かという観点から判断されるべきである。 (2) 特許請求の範囲の記載 上記第2に記載のとおりである。 (3) 明確性要件についての判断 特許請求の範囲の請求項1は、「ドライフィルムレジスト基材用ポリエステルフィルム」に関し、「ポリエステルフィルムの少なくとも片面に塗布層を有」すること、「該塗布層中にエーテル型非イオン系界面活性剤を含有」すること、「該塗布層中に粒子A-1及び粒子A-2を含有し、 該粒子A-1の平均粒径が0.001μm以上0.045μm以下であり、 該粒子A-2の平均粒径が0.06μm以上1.0μm以下であ」ること、 「該塗布層の表面を観察した際の該塗布層表面に占める粒子の面積合計に対し、粒径が30~80nmの粒子ASの面積割合が60~99.9%の範囲内であり、粒径が100~400nmの粒子ALの面積割合が0.1~15%の範囲内であり、粒径が1μmを超える粒子を実質的に含まない」ことが特定されているものであり、明細書の記載、及び出願時の技術常識を加味しても、その特定事項は明確であって、第三者の利益が不当に害されるほどに不明確であるとはいえない。 特許請求の範囲の請求項2ないし10のそれぞれの特定事項についても、明細書の記載、及び出願時の技術常識を加味しても、その特定事項は明確であって、第三者の利益が不当に害されるほどに不明確であるとはいえない。 (4) 特許異議申立人の主張について 特許異議申立人は、「本件特許の請求項1では、これらの粒子のうち、粒子A-1と粒子A-2は塗布層中に併用して含有されることが規定され、粒子ASと粒子ALはそれぞれ塗布層の表面において特定の面積割合を占めることが規定されている。このうち、粒子A-1と粒子ASは、平均粒径と粒径の数値範囲が一部重複するため、どのような関係にあるのかが不明である。また、粒子A-2と粒子ALについても、平均粒径と粒径の数値範囲が一部重複するため、どのような関係にあるのかが不明である。」と主張するが、粒子A-1と粒子A-2は、塗布層中に含有させる際の粒子であって、粒子ASと粒子ALは、「塗布層の表面を観察した際の該塗布層表面に占める粒子」に関するものであるから、各々独立して明確に理解することができる。 したがって、特許異議申立人の上記主張は採用できない。 (5) 申立理由1についてのまとめ 上記(3)及び(4)のとおりであるから、申立理由1の理由では、本件特許発明1ないし10に係る特許を取り消すことはできない。 2 申立理由2(実施可能要件)について (1) 実施可能要件の判断基準 本件特許発明1ないし10は、上記第2のとおり、「物」の発明であるところ、物の発明における実施とは、その物の生産、使用等をする行為をいうから(特許法第2条第3項第1号)、例えば、明細書等にその物を生産することができる具体的な記載があるか、そのような記載がなくても、出願時の技術常識に基づいて当業者がその物を生産することができるのであれば、実施可能要件を満たすと言うことができる。 (2) 実施可能要件についての判断 本件特許の明細書の発明の詳細な説明には、「本発明は、例えば、フレキシブルプリント基板などを作成するドライフィルムレジスト工程における基材用フィルムなどとして好適に使用することのできるフィルムに関するもの」(【0001】)であって、「課題は、フレキシブルプリント配線板などを作成するドライフィルムレジスト工程において基材フィルムとして好適に使用することができるドライフィルムレジスト基材用ポリエステルフィルム(以下、「DFR基材用フィルム」とも称する。)を提供すること」(【0010】)であり、「本発明の要旨は、ポリエステルフィルムの少なくとも片面に塗布層を有し、塗布層中に界面活性剤を含有し、該塗布層中に粒子を含有し、該塗布層の表面を観察した際の該塗布層表面に占める粒子の面積合計に対し、粒径が30~80nmの粒子ASの面積割合が60~99.9%の範囲内であり、粒径が100~400nmの粒子ALの面積割合が0.1~15%の範囲内であり、粒径が1μmを超える粒子を実質的に含まない、ことを特徴とするドライフィルムレジスト基材用ポリエステルフィルムに存する」(【0012】)ことが記載されている。 そして、「本発明の実施形態に係るDFR基材用フィルムは、ポリエステルフィルムの少なくとも片面に塗布層を有し、該塗布層中に界面活性剤と粒子とを含有するため、この塗布層により、基材フィルムとしての透明性を維持したまま、傷付き防止性、削れ防止性、空気抜け性、及び滑り性を同時に満足させることができる。また、本発明の実施形態に係るDFR基材用フィルムは、塗布層中に界面活性剤を含み、界面活性剤によりポリエステルフィルムに対する塗布液の濡れ性を向上させて、塗布ムラや塗布液のハジキを抑制し、塗布層の外観を良好にすることができる」(【0016】)ことの記載、「本発明の実施形態に係るDFR基材用フィルムは、塗布層中に、粒径が30~80nmの粒子ASを、塗布層表面の面積割合で60~99.9%の範囲内で含有するため、透明性を維持したまま、傷付き防止性を向上することができる。また、本発明の実施形態に係るDFR基材用フィルムは、塗布層中に、粒径が100~400nmの粒子ALを、塗布層表面の面積割合で0.1~15%の範囲内で含有するため、傷付き防止性を維持したまま、削れ防止性、空気抜け性及び滑り性を向上することができる。さらに本発明の実施形態に係るDFR基材用フィルムは、塗布層中に、粒径が1μmを超える粒子を実質的に含まないため、削れ防止性が向上する」(【0017】)ことの記載、用いるポリエステルフィルムに関する記載(【0018】~【0022】)、ポリエステルフィルムの製膜方法に関する記載(【0031】、【0032】)、塗布層の形成方法及び塗布液に関する記載(【0033】~【0058】、【0078】、【0079】、【0090】~【0109】)、界面活性剤についての記載(【0059】~【0077】)、粒子A(粒子A-1、粒子A-2)、粒子AS及び粒子ALに関する記載(【0080】~【0089】)、空気漏れ指数についての記載(【0114】及び【0115】)があり、具体的な実施例の記載もある。 してみると、本件特許の明細書には、本件特許発明1ないし10に関し、その物を生産することができる具体的な記載があるものといえるから、実施可能要件を満たすと言うことができる。 (3) 特許異議申立人の主張について 特許異議申立人は、「具体的にどのようにして粒子AS及び粒子ALのそれぞれを上記のように特定の面積割合で塗布層の表面に存在させることができるのかが全く不明である。また、このような粒子AS及び粒子ALの面積割合を制御する手段は、当業者の常識でもない。そのため、たとえ当業者であっても、本件特許の請求項1に規定される粒子AS及び粒子ALの面積割合を達成するためには、過度の実験や試行錯誤を要する」(申立理由2-1)及び「どのようにして請求項4で規定される「空気漏れ指数」の数値を達成しているのか、全く理解できない。さらに、この「空気漏れ指数」の数値の制御手段は、当業者の常識でもない」(申立理由2-2)旨主張する。 しかしながら、上記(2)のとおり、本件特許発明1ないし10のポリエステルフィルムを製造するにあたり、用いることのできる材料、方法が具体的に記載され、かつ、測定方法も明らかにされていること、具体的な実施例の記載があることを踏まえるならば、これらの記載を考慮の上で適宜調整し為すことは、当業者にとって過度の試行錯誤を要するものとまではいえない。 したがって、特許異議申立人の上記主張は採用できない。 (4) 申立理由2についてのまとめ 上記(2)及び(3)のとおりであるから、申立理由2の理由では、本件特許発明1ないし10に係る特許を取り消すことはできない。 3 申立理由3(サポート要件)について (1) サポート要件の判断基準 特許請求の範囲の記載が、サポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。 (2) 特許請求の範囲の記載 上記第2に記載のとおりである。 (3) サポート要件についての判断 本件特許発明の課題(以下、「発明の課題」という。)は、「フレキシブルプリント配線板などを作成するドライフィルムレジスト工程において基材フィルムとして好適に使用することができるドライフィルムレジスト基材用ポリエステルフィルム(以下、「DFR基材用フィルム」とも称する。)を提供すること」(【0010】)である。 そして、本件特許の明細書の発明の詳細な説明には、「本発明の実施形態に係るDFR基材用フィルムは、ポリエステルフィルムの少なくとも片面に塗布層を有し、該塗布層中に界面活性剤を含み、該塗布層中に粒子を含有し、該塗布層の表面を観察した際の該塗布層表面に占める粒子の面積合計に対し、粒径が30~80nmの粒子ASの面積割合が60~99.9%の範囲内であり、粒径が100~400nmの粒子ALの面積割合が0.1~15%の範囲内であり、粒径が1μmを超える粒子を実質的に含まない」(【0015】)ものであること、「本発明の実施形態に係るDFR基材用フィルムは、ポリエステルフィルムの少なくとも片面に塗布層を有し、該塗布層中に界面活性剤と粒子とを含有するため、この塗布層により、基材フィルムとしての透明性を維持したまま、傷付き防止性、削れ防止性、空気抜け性、及び滑り性を同時に満足させることができる。また、本発明の実施形態に係るDFR基材用フィルムは、塗布層中に界面活性剤を含み、界面活性剤によりポリエステルフィルムに対する塗布液の濡れ性を向上させて、塗布ムラや塗布液のハジキを抑制し、塗布層の外観を良好にすることができる」(【0016】)こと、「本発明の実施形態に係るDFR基材用フィルムは、塗布層中に、粒径が30~80nmの粒子ASを、塗布層表面の面積割合で60~99.9%の範囲内で含有するため、透明性を維持したまま、傷付き防止性を向上することができる。また、本発明の実施形態に係るDFR基材用フィルムは、塗布層中に、粒径が100~400nmの粒子ALを、塗布層表面の面積割合で0.1~15%の範囲内で含有するため、傷付き防止性を維持したまま、削れ防止性、空気抜け性及び滑り性を向上することができる。さらに本発明の実施形態に係るDFR基材用フィルムは、塗布層中に、粒径が1μmを超える粒子を実質的に含まないため、削れ防止性が向上する。本明細書において、DFR基材用フィルムの塗布層に含有された粒子を粒子Aとも称する。粒子Aは、塗布層中に含まれる粒子をいう。粒子Aには、粒径が30~80nmの粒子ASと、粒径100~400nmの粒子ALを含み、粒子AS及び粒子AL以外の粒径1μm未満の粒子(以下、「その他の粒子AE」とも称する。)を含んでいてもよい」(【0017】)ことが記載され、具体的な実施例による効果の検討も示されている。 これらの記載に接した当業者であれば、DFR基材用フィルムとして、「ポリエステルフィルムの少なくとも片面に塗布層を有し、該塗布層中に界面活性剤を含み、該塗布層中に粒子を含有し、該塗布層の表面を観察した際の該塗布層表面に占める粒子の面積合計に対し、粒径が30~80nmの粒子ASの面積割合が60~99.9%の範囲内であり、粒径が100~400nmの粒子ALの面積割合が0.1~15%の範囲内であり、粒径が1μmを超える粒子を実質的に含まない」との特定事項を満たすものであれば、発明の課題を解決すると認識できる。 そして、本件特許発明は、上記発明の課題を解決できると認識できる特定事項を全て有し、さらに限定するものであるから、当然、発明の課題を解決できるものである。 (4) 特許異議申立人の主張について 特許異議申立人は、「具体的にどのようにして粒子AS及び粒子ALのそれぞれを上記のように特定の面積割合で塗布層の表面に存在させることができるのかが全く不明である。また、このような粒子AS及び粒子ALの面積割合を制御する手段は、当業者の常識でもない。そのため、たとえ当業者であっても、本件特許の請求項1に規定される粒子AS及び粒子ALの面積割合を達成するためには、過度の実験や試行錯誤を要する」(申立理由3-1)及び「どのようにして請求項4で規定される「空気漏れ指数」の数値を達成しているのか、全く理解できない。さらに、この「空気漏れ指数」の数値の制御手段は、当業者の常識でもない」(申立理由3-2)点をあげ、本件特許発明1ないし10はサポート要件を満たすものではない旨主張する。 しかしながら、上記(3)における検討のとおり、DFR基材用フィルムとして、「ポリエステルフィルムの少なくとも片面に塗布層を有し、該塗布層中に界面活性剤を含み、該塗布層中に粒子を含有し、該塗布層の表面を観察した際の該塗布層表面に占める粒子の面積合計に対し、粒径が30~80nmの粒子ASの面積割合が60~99.9%の範囲内であり、粒径が100~400nmの粒子ALの面積割合が0.1~15%の範囲内であり、粒径が1μmを超える粒子を実質的に含まない」との特定事項を満たすものであれば、発明の課題を解決すると認識できるものといえるから、これら発明の課題を解決できると認識できる特定事項を満たすものである本件特許発明1ないし10は、サポート要件に適合するものといえるものであり、塗布層に含まれる粒子AL及び粒子ASの調整方法や、「空気漏れ指数」の制御手法そのものは、上記検討に何ら影響するものではない。 (5) 申立理由3についてのまとめ 上記(3)及び(4)のとおりであるから、申立理由3の理由では、本件特許発明1ないし10に係る特許を取り消すことはできない。 4 申立理由4(進歩性)について (1) 本件特許の優先権主張について ドライフィルムレジスト基材用ポリエステルフィルムに関し、本件特許発明1ないし10で特定される「該塗布層の表面を観察した際の該塗布層表面に占める粒子の面積合計に対し、粒径が30~80nmの粒子ASの面積割合が60~99.9%の範囲内であり、粒径が100~400nmの粒子ALの面積割合が0.1~15%の範囲内であり、粒径が1μmを超える粒子を実質的に含まない、」との特定事項は、本件特許の優先権主張の基礎とされた特願2018-25515号の明細書又は特許請求の範囲において何ら記載されていないものであるから、本件特許発明1ないし10について、前記優先権主張が有効なものと認めることができない。 したがって、本件特許発明1ないし10について、特許法第29条の判断基準日は、本件出願日である平成31年2月15日として取り扱う。 (2) 甲第1号証の記載事項等 ア 甲第1号証の記載事項 甲第1号証は平成30年4月19日、すなわち、上記判断基準日前に公開されたものであって、「ドライフィルムレジスト用ポリエステルフィルム」に関し、次の記載がある。 「【請求項1】 平均粒径が0.03~0.15μmの粒子を含み、かつ、平均粒径0.10μm以上の粒子の含有量が430ppm以下であり、回収樹脂の含有量が40.0重量%以下の基材ポリエステルフィルムと、 前記基材ポリエステルフィルムの片面に、平均粒径が0.05μm超0.15μm未満の粒子を含む塗布層と、 を有するドライフィルムレジスト用ポリエステルフィルム。 【請求項2】 前記塗布層が、更に、帯電防止剤、及びワックスを含む請求項1に記載のドライフィルムレジスト用ポリエステルフィルム。 【請求項3】 前記基材ポリエステルフィルムが2層以上の積層フィルムであり、前記積層フィルムの表層の片方又は両方が、前記平均粒径が0.03~0.15μmの粒子を含む請求項1または2に記載のドライフィルムレジスト用ポリエステルフィルム。 【請求項4】 前記基材ポリエステルフィルムの前記塗布層が備えられている表面と反対の表面に、前記平均粒径が0.03~0.15μmの粒子を含む表層を有する請求項3に記載のドライフィルムレジスト用ポリエステルフィルム。 【請求項5】 前記基材ポリエステルフィルム中の前記回収樹脂の含有量が3.0重量%以上である請求項1~4のいずれか1項に記載のドライフィルムレジスト用ポリエステルフィルム。 【請求項6】 前記回収樹脂が、回収ポリエステル樹脂を含む請求項1~5のいずれか1項に記載のドライフィルムレジスト用ポリエステルフィルム。」 「【0008】 近年は、電子機器の小型化により形成する回路が極めて複雑になり、線が細く、その間隔も狭くなってきており、画像形成の再現性、解像度が高度であることが必要になった。このため、支持体として用いられるポリエステルフィルムに対しても、高度な品質が要求されるようになった。支持体として用いられるポリエステルフィルムは、表面が平坦で透明性が高く、フィルムのヘーズ値が低いことが必要である。フォトレジストフィルムにおいて、フォトレジスト層を露光する場合、前述のとおり光は支持体層を通ることになる。したがって、支持体の透明性が低いとフォトレジスト層が十分に露光されず、また、フィルムのヘーズ値が高く、フィルム表面粗さが粗いとフィルム表面および内部の光の散乱により解像度が悪化する等の問題が生ずることがあった。 【0009】 表面が平坦で透明性が高く、フィルムのヘーズ値が低いポリエステルフィルムは、フィルムの製造工程、巻き取り工程等での取り扱い性が悪く、かつ帯電も生じ易かった。ポリエステルフィルム表面にフォトレジスト層を形成させてDFRを製造する際に、このような帯電を生じたフィルムロールを使用すると静電気の作用によってごみやほこりなどの微少な異物を引きつけるため、クリーンルーム内においても異物の付着が発生し、特にロールからの巻きだしの際には、剥離による激しい帯電が生じ、異物の付着が一層大きくなった。また、帯電箇所のレジスト密着性が強くなり、露光後の支持フィルム剥離に支障をきたす等の問題が生じることがあった。 【0010】 こうしたフィルムの帯電性及び取扱い性を良好にするため、または、DFR自身の取り扱い性、巻き特性を良好とするため、通常、ポリエステルフィルム中に粒子を含有させ、表面に微細な突起を形成させる方法が用いられている。しかしながら、粒子添加による突起形成を行うと、突起による紫外線の散乱やレジスト表面に凹みを生じ、極細線の回路形成に解像性の低下や欠陥を及ぼしたり、フィルムの透明性を低下させたりすることになり易かった。 このように、透明性、帯電防止性、滑り性、平坦性を同時に満足する高解像度用DFR用フィルムを得る方法は未だ見いだされていない。 【0011】 本発明は上記実情に鑑みなされたものであって、その解決課題は、フィルム表面に帯電した静電気の放電を防止したり、基材ポリエステルフィルムの表面にごみやほこりなどが引きつけられ付着することを防止して、異物付着によるパターン不整を防止し、品質の安定化を図り、かつ平坦なフィルムをロール状に巻きとる際の作業性、易滑性等の加工適正に優れ、さらには回収ポリエステル樹脂を使用しても透明性を阻害しない微粒子を含有させたフィルムを提供することにある。」 「【発明の効果】 【0019】 本発明によれば、透明性、帯電防止性、滑り性、平坦性を同時に満足する高解像度用DFRに好適なドライフィルムレジスト用ポリエステルフィルムを提供することができる。」 「【0020】 <ドライフィルムレジスト用ポリエステルフィルム> 本発明のドライフィルムレジスト用ポリエステルフィルムは、平均粒径が0.03~0.15μmの粒子を含み、かつ、平均粒径0.10μm以上の粒子の含有量が430ppm以下であり、回収樹脂の含有量が40.0重量%以下の基材ポリエステルフィルムと、前記基材ポリエステルフィルムの片面に、平均粒径が0.05μm超0.15μm未満の粒子を含む塗布層とを有する。 基材ポリエステルフィルムを上記構成とすることで、高解像性が必要なドライフィルムレジストの支持体として、透明性が高く、表面粗さが極めて平坦な基材ポリエステルフィルムとすることができる。また、当該基材ポリエステルフィルム表面に帯電防止易滑性を有する塗布層を設けることにより、フィルム表面に帯電した静電気の放電を防止し、基材ポリエステルフィルムの表面にごみやほこりなどが引きつけられ付着するのを防止しすることができる。更には、異物付着によるパターン不整を防止し、品質の安定化を図り、かつ平坦なフィルムをロール状に巻きとる際の作業性、易滑性等の加工適正に優れることから、本発明のドライフィルムレジスト用ポリエステルフィルムの工業的価値は非常に大きい。 以下、本発明のドライフィルムレジスト用ポリエステルフィルム(以下、「本発明のDFR用フィルム」と称することがある)の詳細について説明する。 【0021】 〔基材ポリエステルフィルム〕 本発明のDFR用フィルムは、平均粒径が0.03~0.15μmの粒子を含み、かつ、平均粒径0.10μm以上の粒子の含有量が430ppm以下であり、回収樹脂の含有量が40.0重量%以下の基材ポリエステルフィルム(以下、単に「基材フィルム」と称することがある)を有する。 本発明における基材ポリエステルフィルムに用いる樹脂としては、特に限定されるものではなく、芳香族ジカルボン酸またはそのエステルとグリコールとを主たる出発原料として得られるポリエステルを主とするものであり、繰り返し構造単位の60%以上がエチレンテレフタレート単位またはエチレン-2,6-ナフタレート単位を有するポリエステルを指す。そして、上記の範囲を逸脱しない条件であれば、他の第三成分を含有していてもよい。 例えば、ポリカーボネート等のポリエステル系樹脂と相溶性のある樹脂の混合が挙げられる。」 「【0043】 〔塗布層〕 本発明のDFR用フィルムは、基材ポリエステルフィルムの片面に、平均粒径が0.05μm超0.15μm未満の粒子を含む塗布層を有する。塗布層は、更に、帯電防止剤、ワックス、バインダー、架橋剤等の添加剤を更に含んでいてもよい。 塗布層が、平均粒径が0.05μm以下の粒子のみを含むと、DFR用フィルムの滑り性及び巻き性が低下し、平均粒径が0.15μm以上の粒子のみ含むと、塗布層から粒子が脱落し易くなり、また、塗布層が削れ易くなる。 なお、塗布層が含有する粒子の平均粒径は、TEM(株式会社日立ハイテクノロジーズ製H7650、加速電圧100kV)を使用して塗布層を観察し、粒子10個の粒径の平均値から算出することができる。 【0044】 塗布層は、平均粒径が0.05μm超0.15μm未満の粒子を含んでいれば、更に、 平均粒径が0.05μm以下となる粒子を含んでいてもよいし、平均粒径が0.15μm以上となる粒子を含んでいてもよい。 塗布層は、粒子の含有量を抑えてDFR用フィルムの透明性を維持し、滑りをより効果的に改善し、かつ抱え込み空気をより逃がし易くする観点から、平均粒径が0.05μm超0.15μm未満の範囲で粒径の異なる2種以上の粒子を含むか、平均粒径が0.05μm超0.15μm未満の粒子と他の平均粒径の粒子を含むことが好ましい。中でも、上記観点から、平均粒径が0.05μm超0.15μm未満の粒子と、平均粒径が0.05μm以下となる粒子とを含むことが好ましい。」 「【実施例】 【0057】 以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は、その要旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。 【0058】 以下の実施例、比較例において用いた塗布層の成分は、以下のとおりである。 [塗布層成分] ・帯電防止剤(A1) ポリジアリルジメチルアンモニウムクロライド(平均分子量:約30000) 【0059】 ・ワックス(B1) 攪拌機、温度計、温度コントローラーを備えた内容量1.5Lの乳化設備に融点105℃、酸化16mgKOH/g、密度0.93g/mL、平均分子量5000の酸化ポリエチレンワックス300g、イオン交換水650gとデカグリセリンモノオレエート界面活性剤を50g、48%水酸化カリウム水溶液10gを加え、窒素で置換後、密封し、150℃で一時間高速攪拌した後、130℃に冷却し、高圧ホモジナイザーを400気圧下で通過させ、40℃に冷却したワックスエマルジョン。 【0060】 ・粒子(C1):平均粒径0.05μmのシリカ粒子 ・粒子(C2):平均粒径0.08μmのシリカ粒子 ・粒子(C3):平均粒径0.18μmのシリカ粒子 なお、粒子(C1)~粒子(C3)の平均粒径は、TEM(株式会社日立ハイテクノロジーズ製H7650、加速電圧100kV)を用いて求めた。 【0061】 水分散体(D1) 下記の組成で重合した、ガラス転移点が40℃のアクリル樹脂水分散体 エチルアクリレート/n-ブチルアクリレート/メチルメタクリレート/N-メチロールアクリルアミド/アクリル酸=65/21/10/2/2(重量%)の乳化重合体(乳化剤:アニオン系界面活性剤) 【0062】 ・架橋剤(E1):ヘキサメトキシメチロールメラミン 【0063】 次に以下の例において使用したポリエステル原料について説明する。 <ポリエステル樹脂I> ジカルボン酸成分としてテレフタル酸、多価アルコール成分としてエチレングリコールを使用し、定法の溶融重合法にて極限粘度が0.65dl/gとする滑剤粒子を含有しないポリエステルチップを製造した。 【0064】 <ポリエステル樹脂II> ジカルボン酸成分としてテレフタル酸、多価アルコール成分としてエチレングリコールを使用し、定法の溶融重合法にて極限粘度が0.65dl/gであり、平均粒径0.05μmのアルミナ粒子を含有するポリエステルチップを製造した。ポリエステル樹脂IIのポリエステルチップ中のアルミナ粒子の含有量は1.5重量%である。」 「【0083】 <DFR用フィルムの製造> 〔実施例1〕 ポリエステル樹脂Iとポリエステル樹脂IIを、ポリエステル樹脂I:ポリエステル樹脂II=85:15の重量比率で配合し押出機にて溶融させてA層形成用の積層ダイに供給した。また、ポリエステル樹脂Iと回収ポリエステル樹脂aを、ポリエステル樹脂I:回収ポリエステル樹脂a=80:20の重量比率で配合し押出機にて溶融させてB層形成用の積層ダイに供給した。A層/B層/A層の構成からなる2種3層のポリエステル樹脂積層体をフィルム状に押出して、35℃の冷却ドラム上にキャストして急冷固化した未延伸フィルムを作製した。次いで、未延伸フィルムを75℃の加熱ロールで予熱した後、赤外線加熱ヒータと加熱ロールを併用して85℃のロール間で縦方向に3.2倍延伸した。その後、延伸フィルム(基材ポリエステルフィルム)の片面に、A1:B1:C1:C2:D1:E1=30:5:3:2:40:20で配合した塗布層用溶液をインラインコーティングし、塗布層を形成した。次いで、塗布層付きの延伸フィルムのフィルム端部をクリップで把持してテンター内に導き、95℃の温度で加熱しつつ横方向に4.0倍延伸し、235℃で10秒間の熱処理を行い、平均厚さが16μm、幅2000mmのポリエステルフィルムのマスターロールを得た。A層の厚さは1.0μmであった。本マスターロールを得る際、口金からのネックイン現象により、ポリエステルフィルムは分厚くなり、クリップの噛み代として使用された、ポリエステルフィルムの端部は、耳部フィルムとして切断し、分離した。このマスターロールの両端から400mmの位置よりスリットを行い、製品幅1200mm幅のポリエステルフィルム(DFR用フィルム)を得た。」 「【0112】 【表1】 [図:0001409168000001.jpg] 」 イ 甲第1号証に記載された発明 上記アの記載、特に実施例1の記載を中心に整理すると、甲第1号証には次の発明が記載されているものと認める。 「基材ポリエステルフィルムの片面に、A1:B1:C1:C2:D1:E1=30:5:3:2:40:20で配合した塗布層用溶液をインラインコーティングし、塗布層を形成し、 次いで、塗布層付きの延伸フィルムのフィルム端部をクリップで把持してテンター内に導き、95℃の温度で加熱しつつ横方向に4.0倍延伸し、235℃で10秒間の熱処理を行い、平均厚さが16μm、幅2000mmのポリエステルフィルムのマスターロールを得、 このマスターロールの両端から400mmの位置よりスリットを行い、得られた製品幅1200mm幅のポリエステルフィルム(DFR用フィルム)。 ・帯電防止剤(A1) ポリジアリルジメチルアンモニウムクロライド(平均分子量:約30000) ・ワックス(B1) 攪拌機、温度計、温度コントローラーを備えた内容量1.5Lの乳化設備に融点105℃、酸化16mgKOH/g、密度0.93g/mL、平均分子量5000の酸化ポリエチレンワックス300g、イオン交換水650gとデカグリセリンモノオレエート界面活性剤を50g、48%水酸化カリウム水溶液10gを加え、窒素で置換後、密封し、150℃で一時間高速攪拌した後、130℃に冷却し、高圧ホモジナイザーを400気圧下で通過させ、40℃に冷却したワックスエマルジョン。 ・粒子(C1):平均粒径0.05μmのシリカ粒子 ・粒子(C2):平均粒径0.08μmのシリカ粒子 ・水分散体(D1) 下記の組成で重合した、ガラス転移点が40℃のアクリル樹脂水分散体 エチルアクリレート/n-ブチルアクリレート/メチルメタクリレート/N-メチロールアクリルアミド/アクリル酸=65/21/10/2/2(重量%)の乳化重合体(乳化剤:アニオン系界面活性剤) ・架橋剤(E1):ヘキサメトキシメチロールメラミン」(以下、「甲1発明」という。) (3) 対比・判断 ア 本件特許発明1について (ア) 対比 本件特許発明1と甲1発明とを対比する。 甲1発明の「ポリエステルフィルム(DFR用フィルム)」は、本件特許発明1の「ドライフィルムレジスト基材用ポリエステルフィルム」に相当する。 してみると、両者は、 「ポリエステルフィルムの少なくとも片面に塗布層を有する、ドライフィルムレジスト基材用ポリエステルフィルム。」 で一致し、次の点で相違する。 (相違点1-1) 塗布層に関し、本件特許発明1は「エーテル型非イオン系界面活性剤」を有することが特定されているのに対し、甲1発明にはそのような特定がない点。 (相違点1-2) 塗布層に関し、本件特許発明1は「粒子A-1及び粒子A-2を含有し、該粒子A-1の平均粒径が0.001μm以上0.045μm以下であり、該粒子A-2の平均粒径が0.06μm以上1.0μm以下であり」と特定されるのに対し、甲1発明にはそのような特定がない点。 (相違点1-3) 塗布層に関し、本件特許発明1は「該塗布層の表面を観察した際の該塗布層表面に占める粒子の面積合計に対し、粒径が30~80nmの粒子ASの面積割合が60~99.9%の範囲内であり、粒径が100~400nmの粒子ALの面積割合が0.1~15%の範囲内であり、粒径が1μmを超える粒子を実質的に含まない、」と特定されるのに対し、甲1発明にはそのような特定がない点。 (イ) 判断 事案に鑑み、相違点1-3について検討する。 甲第1号証及び他の全ての証拠において、ポリエステルフィルム(DFR用フィルム)に設けられた塗布層表面の粒子の分布についての記載はない。 してみると、甲1発明において、ポリエステルフィルム(DFR用フィルム)に設けられた塗布層表面に関し、その粒子の分布を調整する動機付けがない。 よって、甲1発明において、相違点1-3に係る本件特許発明1の特定事項を満たすものとすることは、当業者が容易になし得たものとはいえない。 以上のとおりであるから、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明1は、甲1発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (ウ) 特許異議申立人の主張について 特許異議申立人は特許異議申立書において、甲1発明は塗布液中の粒子A-1及びA-2の含有組成から見て、相違点1-3に係る本件特許発明1の特定事項を満たしている蓋然性が極めて高い旨主張する(特許異議申立書第35頁第15行ないし第20行)。 しかしながら、甲1発明(甲第1号証の実施例1)で用いている粒子は、「粒子(C1):平均粒径0.05μmのシリカ粒子」及び「粒子(C2):平均粒径0.08μmのシリカ粒子」であって、本件特許発明1の粒子A-1及び粒子A-2の特定事項を共に満たすものではないし、また、本件特許発明1の粒子A-1及び粒子A-2の平均粒径の数値範囲と甲1発明の粒子の平均粒径が近接しているとしても、塗布層となった際の表面における粒子の分布条件として、相違点1-3に係る本件特許発明1の特定事項を満たすものであるとする具体的な証拠があるものでもない。 してみると、甲1発明において、相違点1-3に係る本件特許発明1の特定事項を満たすものということはできないものであるから、特許異議申立人の上記主張を採用することはできない。 イ 本件特許発明2ないし10について 本件特許発明2ないし10は、本件特許発明1の発明特定事項の全てを有するものである。 そして、本件特許発明1は、上記アのとおり、甲1発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、本件特許発明2ないし10もまた、甲1発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (4) 申立理由4についてのまとめ 上記(3)のとおりであるから、申立理由4の理由では、本件特許発明1ないし10に係る特許を取り消すことはできない。 第5 結語 以上のとおりであるから、特許異議申立人が提出した特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件特許の請求項1ないし10に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に本件特許の請求項1ないし10に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2023-701284

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