特許異議申立
2023-701248
害虫忌避性間仕切り用シート
- 審判番号
- 2023-701248
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2019-145756
- 登録番号
- 7282369
- 請求日
- 2023年11月28日
- 審決日
- 2024年05月28日
- 公報発行日
- 2024年06月28日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】広島化成株式会社
- 【権利者代理人】山口 慎太郎
- 【異議申立人】平岡織染 株式会社
- 【異議申立人代理人】青木 篤
- 【異議申立人代理人】三橋 真二
- 【異議申立人代理人】中村 和広
- 【異議申立人代理人】高橋 正俊
- 【異議申立人代理人】日浅 里美
- 審判長/審判官
- 審判長 阪野 誠司
- 審判官 野田 定文
- 審判官 齊藤 真由美
- 分類
- P1651.537-Y (A01N) / P1651.121-Y (A01N)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第1号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7282369号発明「害虫忌避性間仕切り用シート」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7282369号の請求項1~3に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7282369号(以下「本件特許」という。)の請求項1~3に係る特許についての出願は、令和元年8月7日(優先権主張 平成30年12月28日)の出願であって、令和5年5月19日にその特許権の設定登録がされ、同年同月29日に特許掲載公報が発行された。その後、全請求項に係る特許について、同年11月28日に、特許異議申立人 平岡織染株式会社(以下「申立人」という。)により特許異議の申立てがされ、当審合議体は、令和6年2月13日付けで取消理由を通知し、期間を指定して意見書を提出する機会を与えたが、特許権者から応答はなかった。
第2 本件発明
本件請求項1~3に係る発明(以下、各請求項に係る発明を請求項の番号順に「本件発明1」等といい、「本件発明1~3」をまとめて「本件発明」ともいう。)は、その特許請求の範囲の請求項1~3(以下、請求項の番号順に「本件請求項1」等という)に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
「【請求項1】
防虫成分を放出可能な徐放性防虫樹脂成形体である間仕切り用シートにおいて、
主成分として平均重合度が700~1700の塩化ビニル系樹脂と、
フタル酸エステル系可塑剤及び可塑剤全量に対して20~50重量%のリン酸エステル系可塑剤を含む二種以上の可塑剤と、
防虫成分として組成物全量に対して0.6~5.0重量%のピレスロイド系防虫剤と、
防虫性付与成分として紫外線吸収剤及びオレンジ色に着色するための染料又は顔料と、
を含む樹脂組成物をシート状に成形してなる、
ことを特徴とする害虫忌避性間仕切り用シート。
【請求項2】
前記ピレスロイド系防虫剤がエトフェンプロックスである請求項1に記載の害虫忌避性間仕切り用シート。
【請求項3】
複数のシート状樹脂成形体を積層してなる請求項1又は請求項2に記載の害虫忌避性間仕切り用シート。」
第3 特許異議申立理由及び取消理由の概要
1 特許異議申立理由の概要
申立人が特許異議申立書に記載した申立理由の概要及び添付した証拠方法は、以下に示すとおりである。以下、下記(3)に示す甲号証を、それぞれ番号順に「甲1」等という。)
(1) 申立理由1(特許法第36条第6項第1号:サポート要件)
本件発明1~3は、特許請求の範囲の記載が、以下に示すア~オの点で、発明の詳細な説明に記載したものではないから、本件請求項1~3に係る特許は、同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。
ア 実施例において、シートはシェルター内部に設置されており、害虫(チャバネゴキブリ)に対し光の透過を阻止するように設置されておらず、防虫性付与成分が「光の透過を阻止することで」生じる効果についての裏付けは全くなく、防虫性付与成分の有無による効果の差異は一切示されていないし、防虫性付与成分を用いることにより、防虫成分の含有量をどの程度抑えることができるのか不明であるから、本件発明1~3は、当業者が本件発明の課題を解決できると認識できる範囲のものとはいえない。
イ ピレスロイド系化合物は、甲1に記載されているとおり、化合物によって揮散性が大きく異なるから、実施例において防虫効果を有することが示されている「エトフェンプロックス」以外の全てのピレスロイド系化合物を用いた場合を含む本件発明1及び3は、当業者が本件発明の課題を解決できると認識できる範囲のものとはいえない。
ウ ピレスロイド系化合物は、甲1に記載されているとおり、化合物によって揮散性が大きく異なるから、所望の効果を得るために必要な含有量は化合物ごとに異なるから、全てのピレスロイド系化合物について、「エトフェンプロックス」が「0.6~5.0重量%」の含有量である場合と同様の効果が得られるとはいえず、本件発明1及び3は、当業者が本件発明の課題を解決できると認識できる範囲のもとはいえない。
エ 任意量の防虫性付与成分を含む全ての樹脂組成物を用いた場合を含む本件発明1~3は、当業者が本件発明の課題を解決できると認識できる範囲のとはいえない。
オ 任意量の可塑剤を含む全ての樹脂組成物を用いた場合を含む本件発明1~3は、当業者が本件発明の課題を解決できると認識できる範囲のものとはいえない。
(2) 申立理由2(特許法第29条第2項:進歩性)
(2-1) 申立理由2-1
本件発明1及び3は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲2及び3~6に記載された発明に基いて、本件特許の出願前に本件特許の発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件請求項1及び3に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
(2-2) 申立理由2-2
本件発明1及び3は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲7及び5に記載された発明に基いて、本件特許の出願前に本件特許の発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件請求項1及び3に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
(2-3) 申立理由2-3
本件発明1及び3は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲8及び3~5に記載された発明に基いて、本件特許の出願前に本件特許の発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件請求項1及び3に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
(3) 甲号証等一覧
甲第1号証:家庭用殺虫剤概論III,日本家庭用殺虫剤工業会,2006
甲第2号証:特開2018-166454号公報
甲第3号証:信越PVC,信越化学工業株式会社,1992年9月1日印刷
甲第4号証:特開2017-186275号公報
甲第5号証:特開2015-71548号公報
甲第6号証:特開2002-114606号公報
甲第7号証:特開昭62-278931号公報
甲第8号証:特開2002-127289号公報
2 取消理由の概要
本件請求項1~3に係る特許に対して、当審合議体が令和6年2月13日に特許権者に通知した取消理由の概要は、次のとおりである。
取消理由(サポート要件)
本件請求項1~3に係る特許は、その特許請求の範囲の記載に関し、実施例におけるシェルターの構造及び光透過性が不明であり、かつ、シェルター内に試料がどのように設置されているのか不明であることから、防虫性付与成分が光の透過を阻止しているかどうか不明であって、本件発明1~3は、「防虫成分」と「防虫性付与成分」を併用したことにより、当業者が本件発明の課題を解決できることを必ずしも認識できない点で、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、取り消すべきものである。
第4 当審合議体における判断
当審合議体は、上記取消理由で通知した理由及び申立人の申立て理由によっては、本件請求項1~3に係る特許は取り消されるべきものではないと判断する。
その理由は次のとおりである。
1 甲号証及び参考資料の記載事項
申立人が証拠方法として提出した甲号証の記載事項について、申立理由の判断に必要な箇所を摘記する(以下、「・・・」は記載の省略を表し、下線は当審合議体が追記した。)。
(1) 甲1の記載事項
摘記(1a) 「
[図:0001411350000001.jpg]
」(6ページ右欄1~12行)
摘記(1b) 「
[図:0001411350000002.jpg]
[図:0001411350000003.jpg]
[図:0001411350000004.jpg]
・・・
[図:0001411350000005.jpg]
[図:0001411350000006.jpg]
」(7ページ~8ページ右欄5行)
摘記(1c) 「
[図:0001411350000007.jpg]
」(13ページ)
(2) 甲2の記載事項
摘記(2a) 「【請求項1】
粗目織物を基材として、その全表面上が熱可塑性樹脂で被覆され、多数の貫通孔を有してなるメッシュシートを基体として、この基体の表面全面に設けられた表面透明樹脂層、及び前記基体の裏面全面に設けられた裏面透明樹脂層を有する可撓性複合積層体であって、前記貫通孔が前記表面透明樹脂層及び裏面透明樹脂層の積層によって充填されてなる透明樹脂鏡面部を成し、この透明樹脂鏡面部が、A)波長220~430nmに含む光を吸収して熱変換する紫外線吸収性化合物、B)波長370~420nmに含む光を吸収して長波長領域に放出する波長変換化合物を質量比50:1~1:1で含有し、かつ、前記透明樹脂鏡面部の透過波長の85%以上が500nm以上の波長であることを特徴とするシートシャッター用膜材。」
摘記(2b) 「【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記従来事情に鑑みてなされたものであり、その課題とする処は、工場、倉庫などの出入口に設置される自動昇降式シートシャッター装置、間仕切り、及びシート構造物用膜材などに用いられるフレキシブル膜材において、特にフレキシブル膜材の光(紫外線)透過性をコントロールすることによって、飛翔性小型昆虫類(走光性害虫)が感知する紫外線領域波長をカットし、感知領域波長のカット効果で飛翔性小型昆虫類の屋内侵入を効果的に防止することができ、それでいて人の視覚感知においては優れた内部透視、内部視認性を有するフレキシブル膜材を提供することにある。」
摘記(2c) 「【0027】
表面透明樹脂層用及び裏面透明樹脂層用に使用する軟質塩化ビニル樹脂組成物に配合する可塑剤は、DOP(DEHP)、DINP、DIDP、DBPなどのフタル酸エステル系可塑剤、DOA(DEHA)、DINAなどのアジピン酸エステル系可塑剤、セバシン酸エステル系可塑剤、TOTMなどのトリメリット酸エステル系可塑剤、ピロメリット酸エステル系可塑剤、ポリエステル系可塑剤、TCPなどのリン酸エステル系可塑剤、クエン酸系可塑剤、エチレンCO酢酸ビニルエステル系高分子可塑剤、及びエチレンCOアクリル酸エステル系高分子可塑剤などの公知可塑剤が使用できるが、表面透明樹脂層及び裏面透明樹脂層には、段落〔0021〕~〔0024〕に記載の、イソフタル酸ジアルキルエステル(〔化1〕の群),テレフタル酸ジアルキルエステル(〔化2〕の群)、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸ジアルキルエステル(〔化3〕の群)、1,3-シクロヘキサンジカルボン酸ジアルキルエステル(〔化4〕の群)、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸ジアルキルエステル(〔化5〕の群)、及び4-シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸ジエステル(〔化6〕の群)の非フタル酸エステル系可塑剤が配合されることが好ましく、粗目織物の全表面上を被覆する熱可塑性樹脂組成物に用いた非フタル酸エステル系可塑剤(〔化1〕の群~〔化6〕の群)と同一種とする仕様が好ましい。理由は定かではないが、特に〔化3〕~〔化6〕の群の可塑剤を紫外線吸収性化合物や波長変換化合物などと共に用いることで、DOPなどのフタル酸系可塑剤に比較して、蚊類、蝿類、蛾類、羽蟻類などの飛翔性小型昆虫を誘引し難くなるという実証傾向があるので、工場内、倉庫内への害虫飛来抑止により有効となる。
【0028】
本発明のシートシャッター用膜材において、透明樹脂鏡面部が、A)波長220~430nmに含む光を吸収して熱変換する紫外線吸収性化合物、B)波長370~420nmに含む光を吸収して長波長領域に放出する波長変換化合物を含有することで透明樹脂鏡面部の透過波長の85%以上を500nm以上の波長とすることが好ましく、これによって飛翔性小型昆虫類(蚊類、蝿類、蛾類、羽蟻類などの走光性害虫)が感知する紫外線領域の波長をカットし、そのカット効果で飛翔性小型昆虫類の屋内侵入を防止することができる。さらに、透明樹脂鏡面部において、少なくとも表面透明樹脂層が上記A)の紫外線吸収性化合物を複数含有し、かつ、裏面透明樹脂層が上記B)の波長変換化合物を含有することが好ましく、この表面/裏面構成によって、上記B)の波長変換化合物の耐光性を堅牢とし、耐光性向上によって飛翔性小型昆虫類(蚊類、蝿類、蛾類、羽蟻類など)が感知する紫外線領域の波長を安定的にカットし、そのカット効果で飛翔性小型昆虫類の屋内侵入を長期間防止することができるようになる。具体的に「表面透明樹脂層/裏面透明樹脂層」の構成において、「AB/AB」、「AB/A」、「A/AB」、「AB/B」、「B/AB」、「AB/」、「/AB」、「A/B」、「B/A」の組み合わせ態様が例示できるが、耐光性維持の観点で、耐光性に劣るBを裏面透明樹脂層に配合し紫外線によるダメージを保護した、「A/AB」もしくは「A/B」の態様が特に好ましい。(AはA1、A2、A3・・・の複数種が好ましい)また、表面透明樹脂層、裏面透明樹脂層には、ペルメトリン、シペルメトリン、シフェノトリン、d-フェノトリン、レスメトリン、フラメトリンなどのピレスロイド系化合物を走光性害虫の殺虫成分、ノックダウン成分として含有することが防虫対策により有効である。」
摘記(2d) 「【実施例】
【0039】
以下、本発明について実施例を挙げて具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。本発明の実施例及び比較例に使用した評価方法を下記に示す。
(1) 防虫効果(誘引阻止率)
平成28年9月、午後7~9時、栃木県那須郡那須町のロッジ庭先にて、40Wの昼光色直管式蛍光灯(1198mm長:37W:2700ルーメン)2本を10cm間隔で並設した照明器具を、正面が開放された長方形筐体(光不透過)に納め、筐体正面に幅200mm×長さ1500mmの試験体シート、及び標準試験体シートで各々蓋を閉じた筐体2個を1m間隔で設置し、各々の点灯筐体の表面を30分毎に4回デジタル撮影し、パソコン画面上の拡大画像より個々の筐体表面に群がる(表面に止まる、及び表面を飛び廻る)小型飛翔性昆虫(蚊類、ハエ類、蛾類など)をカウントし、標準試験体シートでのカウントに対する、試験体シートでのカウントの比率を求め、これを誘引阻止率とした。
・・・
【0040】
[実施例1]
(1)粗目織物(基布1)
下記組織のポリエステル(PET)マルチフィラメント糸条を経糸及び緯糸とする、空隙率68%の粗目状平織物(質量73g/m2)を用いた。
(経)1111dtex/2本合撚 × (緯)2222dtex/1本
打込6(経)×4(緯) 本/25.4mm
(2)メッシュシート基体
下記〔配合1〕の軟質塩化ビニル樹脂ペーストゾル組成物を適度な粘度に調製し、この〔配合1〕のペーストゾル組成物を充填した液浴中に、基布1を浸漬し、基布1に完全に〔配合1〕のペーストゾル組成物を含浸し、基布1を引き上げると同時にゴムロールで圧搾して180℃の熱風炉で3分間、〔配合1〕のペーストゾル組成物のゲル化を進行させ、〔配合1〕のペーストゾル組成物で含浸し、かつ被覆されてなる質量125g/m2、マンセル明度2,及びマンセル彩度9の黒色系メッシュシート基体1を得た。
〔配合1〕軟質塩化ビニル樹脂ペーストゾル組成物
乳化重合ポリ塩化ビニル樹脂(重合度1700) 100質量部
1,2-シクロヘキサンジカルボン酸ジイソノニルエステル 60質量部
※商品名:ヘキサモールDINCH(BASF社製)
※シクロヘキサンカルボン酸アルキルエステル〔化3〕のRが2個とも炭素数9の分岐鎖状のアルキル基
エポキシ化大豆油(可塑剤) 10質量部
ステアリン酸亜鉛(安定剤) 2質量部
ステアリン酸バリウム(安定剤) 2質量部
炭酸カルシウム(充填剤) 10質量部
三酸化アンチモン(難燃剤) 10質量部
カーボンブラック(黒色顔料) 1質量部
(3)可撓性複合積層体
メッシュシート基体1の表面に〔配合2〕の軟質塩化ビニル樹脂組成物から165℃~180℃の熱条件でカレンダー成型された厚さが0.25mmのフィルムを表面透明樹脂層用として、またメッシュシート基体1の裏面に〔配合3〕の軟質塩化ビニル樹脂組成物から165℃~180℃の熱条件でカレンダー成型された厚さが0.25mmのフィルムを裏面透明樹脂層用とし、この表裏フィルムでメッシュシート基体1を中間層として含む構成で、170℃の熱ロール条件のラミネーターを通過させてフィルムを熱軟化させた状態で積層圧着、冷却し、厚さが0.77mm、質量が815g/m2の可撓性複合積層体からなる膜材を得た。この膜材において透明樹脂鏡面部1個の面積は36~40mm2、透明樹脂鏡面部のヘイズ値は3.5、可撓性複合積層体における透明樹脂鏡面部の総和占有率は65%であった。
〔配合2〕軟質塩化ビニル樹脂組成物(表面透明樹脂層)
懸濁重合ポリ塩化ビニル樹脂(重合度1300) 100質量部
1,2-シクロヘキサンジカルボン酸ジイソノニルエステル 60質量部
※商品名:ヘキサモールDINCH(BASF社製)
※シクロヘキサンカルボン酸アルキルエステル〔化3〕のRが2個とも炭素数9の分岐鎖状のアルキル基
エポキシ化大豆油(可塑剤) 10質量部
ステアリン酸亜鉛(安定剤) 2質量部
ステアリン酸バリウム(安定剤) 2質量部
2-(2'-ヒドロキシ-5'-tert-オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール
0.1質量部
ジエチルアミノヒドロキシベンゾイルヘキシルベンゾエート0.1質量部
2-エチル-2-シアノ-3,3-ジフェニルアクリレート0.1質量部
※上記3つの化合物は、A)波長220~430nmに含む光を吸収して熱変換する紫外線吸収性化合物
〔配合3〕軟質塩化ビニル樹脂組成物(裏面透明樹脂層)
懸濁重合ポリ塩化ビニル樹脂(重合度1300) 100質量部
1,2-シクロヘキサンジカルボン酸ジイソノニルエステル 60質量部
※商品名:ヘキサモールDINCH(BASF社製)
※シクロヘキサンカルボン酸アルキルエステル〔化3〕のRが2個とも炭素数9の分岐鎖状のアルキル基
エポキシ化大豆油(可塑剤) 10質量部
ステアリン酸亜鉛(安定剤) 2質量部
ステアリン酸バリウム(安定剤) 2質量部
2-(2'-ヒドロキシ-5'-tert-オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール
0.1質量部
ジエチルアミノヒドロキシベンゾイルヘキシルベンゾエート0.1質量部
2-エチル-2-シアノ-3,3-ジフェニルアクリレート0.1質量部
※上記3つの化合物は、A)波長220~430nmに含む光を吸収して熱変換する紫外線吸収性化合物
4,5-ジメチルオキシ-N-(2-エチルヘキシル)ナフタルイミド
0.03質量部
(BASF社製商品名LumogenF/Violet570:吸光波長378nm/発光波長413nm)
※B)波長370~420nmに含む光を吸収して長波長領域に放出する波長変換化合物
・・・
【0047】
【表1】
[図:0001411350000008.jpg]
」
(3) 甲3の記載事項
摘記(3a) 「
[図:0001411350000009.jpg]
」
(4) 甲4の記載事項
摘記(4a) 「【請求項1】
基材フィルムと、前記基材フィルムの少なくとも一方の側に積層された防虫層とを備え、
前記防虫層は、防虫成分及び合成樹脂を含有する防虫フィルム。
・・・
【請求項3】
前記合成樹脂が塩化ビニル系樹脂である請求項1又は2に記載の防虫フィルム。」
摘記(4b) 「【0014】
防虫層20に含有される塩化ビニル系樹脂の平均重合度は、例えば、平均重合度400~3000であってもよく、平均重合度700~1700であってもよく、平均重合度800~1300が好ましい。また、塩化ビニル系樹脂は架橋させて使用しても良い。
塩化ビニル系樹脂の平均重合度を変化させることで、防虫成分のリリースコントロールが可能になる。防虫層に含有される塩化ビニル系樹脂の平均重合度が高いほど、防虫層に防虫成分が滞留する時間が長くなり、防虫成分の徐放性に優れる。」
(5) 甲5の記載事項
摘記(5a) 「【請求項1】
粗目織物を基布として、粗目織物全面を被覆する熱可塑性樹脂層とで構成された、多数の空隙部を有する可撓性メッシュシートであって、前記空隙部1個あたりの面積0.25mm2~10mm2を有し、前記熱可塑性樹脂層にピレスロイド系化合物0.1~5質量%と、ブリード性化合物0.1~5質量%、及びブリードコントロール剤1~10質量%とを含むことを特徴とする防虫メッシュシート。」
摘記(5b) 「【技術分野】
【0001】
本発明は飛翔性害虫及び衣類害虫の忌避効果を有するメッシュシートに関する。詳しく述べると、本発明の防虫メッシュシートは、1)ビルやマンションなどの建築工事・修繕工事の現場に張囲して用いる養生メッシュ、2)家屋やマンションのバルコニーやベランダに取付して採光日除として用いるメッシュシート、3)公共施設、大型商業施設、オフィス、ホテルなどの宿泊施設、などの室内窓用日除スクリーン、4)クローゼット、押入、衣類タンス、下駄箱など収納家具の中敷などに用いる家庭雑貨シートに関し、特に蚊や蛾などの飛翔性害虫の飛来抑止や、ヒメカツオブシムシ、イガなどの幼虫で衣類を食い荒らす害虫の忌避効果などを使い始めから効果的に発現し、長期間安定持続する防虫メッシュシートに関する。」
摘記(5c) 「【0018】
熱可塑性樹脂層には、熱可塑性樹脂層の質量に対してピレスロイド系化合物を0.1~5質量%、好ましくは0.5~2.5質量%含む。熱可塑性樹脂層の質量に対するピレスロイド系化合物の含有量が0.1質量%未満だと飛翔性害虫や衣類害虫の忌避効果が不十分となることがあり、また熱可塑性樹脂層の質量に対して5質量%を越えても飛翔性害虫や衣類害虫の忌避効果の比例的効果が得られない。・・・
【0019】
熱可塑性樹脂層には、熱可塑性樹脂層の質量に対してブリード性化合物を0.1~5質量%、好ましくは0.5~2.5質量%含むことによって、熱可塑性樹脂層の表面にブリード性化合物が滲み出易くなり(ブリード・ブルームし易くなり)、これらブリード性化合物がブリードやブルームを起す際に、熱可塑性樹脂層に含有するピレスロイド系化合物がブリード性化合物と共に、ピレスロイド系化合物がブリード性化合物に溶解した状態、または溶解しない状態でメッシュシート表面に移行することで使用開始から高い忌避効果を得ることができる。熱可塑性樹脂層の質量に対するブリード性化合物の含有量が0.1質量%未満だと飛翔性害虫や衣類害虫の忌避効果が初期的に不十分となることがあり、また熱可塑性樹脂層の質量に対して5質量%を越えると、ブリード過多となってメッシュシート表面にブリード性化合物が滲み出て防虫メッシュシートへの接触物(壁、床、家具、カーテン、衣服、人体)を汚すことがある。・・・
【0021】
熱可塑性樹脂層には、熱可塑性樹脂層の質量に対してブリードコントロール剤を1~10質量%、好ましくは2.5~7.5質量%含むことによって、熱可塑性樹脂層の表面へのブリード性化合物の滲み出し過多を抑止することができる。ブリードコントロール剤は一旦ブリード性化合物を担持し、経時的にブリード性化合物を放散することでブリード性化合物のブリードやブルームを長期間持続させ、これによってブリード性化合物のブリードやブルームと共に表面移行するピレスロイド系化合物の揮散を間接的に長期安定的にコントロールすることを可能とする。」
(6) 甲6の記載事項
摘記(6a) 「【請求項1】エチレン-アルキル(メタ)アクリレート共重合体、エチレン-ビニルアセテート共重合体、エチレン-ビニルアルコール共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体、及びアイオノマーから選ばれた一種又は二種以上のエチレン-極性単量体共重合体を中心層とし、その両面にポリオレフィン層を設けた防虫シートであって、該シートは紫外線吸収剤を含み且つオレンジ色であることを特徴とする防虫シート。」
摘記(6b) 「【0011】本発明の防虫シートには、昆虫が集まらない処置を施す。昆虫が集まらないようにするには、シートに昆虫が感応する光を透過させない処置を施す。昆虫は、主に紫外線領域の350~360nmの光に感応して活動すると言われ、また、400~550nm、特に470~480nmの光に感応して活動するものもある。したがって、本発明の上記の構成のシートに防虫性を付与するには、このシートに、350~360nmの光、及び400~550nm、特に470~480nmの光の透過を阻止する性質を付与する。この性質を付与するには、シートに350~360nmの光の透過を阻止するには紫外線吸収剤を含有させ、また400~550nmの光の透過を阻止するにはシートをオレンジ色に着色することによって達成できる。」
(7) 甲7の記載事項
摘記(7a) 「特許請求の範囲
○1 380nm以下の波長の光の透過を実質上阻止し、400乃至480nmの波長の光の透過率は30%以下とし、580nm以上の波長の光の透過は実質上阻止しないことを特徴とするシート。(決定注:原文は○の中に1であるが、このように表記する。以下同様。)
・・・
○3 400乃至480nmの波長の光の透過抑制が黄、オレンジ系、顔料または染料による特許請求範囲第1項または第2項記載のシート。」
摘記(7b) 「(イ)産業上の利用分野
この発明はシート、詳細には防虫効果を有するシートおよびシートを間仕切り材に使用する防虫方法に関する。
・・・
即ち、第1図の昆虫のすう光曲線、およびヒトのすう光曲線を比較すれば理解されるように、昆虫の感応度のピークは紫外線領域の350~360nmにあり、この間の光に感応して活動するものが多い。しかし、同時に400~550nm付近のヒトの可視光線領域の光に感応して活動するものも有り、そのピークは紫外線領域にあるピークよりは低いが、470~480nm付近に有る。他方ヒトの視感度は、第1図に示すように、600nm付近にピークを有する。
例えば、昆虫における光の波長に体する感応度の極大値としては、以下のものが知られれている。
・・・
(ハ)発明が解決しようとする問題点
しかしながら、可視光線領域の400~550nm付近に感応する昆虫も存し、また、場所によってはそのような種類の昆虫の多い場所もあるため、400~550nm付近の波長の光の透過を全く阻止しないシートにおいては、実際上防虫効果を有さないことを知見した。
他方、可視光線領域内の昆虫の感応度の出る400~550nmの波長の光の通過を全て阻止しなくとも、400~480nmの波長の光の透過率を30%以下とすることで、防虫に顕著な効果を有することも知見した。
さらに、520nm以上の波長の光の透過率は、50%以上とすることで防虫効果を有するとともに、人間の視認性も向上されることを知見した。この発明はこれら発明に基づく。
・・・
(ホ) 実施例
この発明に使用するシートは無機素材または有機素材からなるフィルムまたは板状体から構成する。合成樹脂フィルム又は板状体の合成樹脂材料としては熱可塑性合成樹脂、例えば軟質又は硬質ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリエステル、ポリアミド、ポリメチルメタクリレート、ポリアクリレート、酢酸ビニール、ポリビニールアルコール又はこれら重合体を主体とする共重合体、もしくはブレンド物等が含まれる。
本発明のシートは又、必要に応じて、通常の各種樹脂添加物、例えば可塑剤、滑剤、熱安定剤、帯電防止剤、防滴剤、顔料、染料等を含むことができる。」(1ページ右下欄15行~3ページ右上欄16行)
摘記(7c) 「実施例
ポリ塩化ビニル(P1300) 100PHR
DOP又はDMP(可塑剤) 65PHR
有機複合スズ系安定剤 2.0~3.0PHR
メチレンビスアミド(滑剤) 0.1PHR
チヌビン326(紫外線吸収剤) 0.1PHR
イソインドリノンイエロー
(黄色染料) 0.0260PHR
ローダミンレーキ
(黄色染料) 0.0215PHR
アンスラキノンイエロー
(黄色染料) 0.0015PHR
上記配合を混合し、押出法、またはカレンダー法により、2mm厚のシートを得た。
・・・
[図:0001411350000010.jpg]
一般蛍光灯下では、実施例の方が比較例2よりも防虫効果を有する。」(7ページ左下欄下から2行~8ページ左下欄1行)
(8) 甲8の記載事項
摘記(8a) 「【請求項1】420nm未満の波長領域の透光率が実質的に0%であり、かつ420nm以上の波長領域の透光率が実質的に20%未満であることを特徴とする軟質合成樹脂製防虫シート。」
摘記(8b) 「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、工場などの施設において夜間室内の照明に誘引されて昆虫類が侵入し種々のトラブルの原因となることを防止するため、窓や出入口に用い昆虫の誘引を回避できるとともに、ひとの視覚においては一定の透視、視認性を確保できる軟質合成樹脂製防虫シートおよびこのシートを利用した防虫シートシャッターに関する。
・・・
【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記のロールシャッター用のシートに要求されるような高度の昆虫非誘引性と限定された透視性を兼ね備えた防虫シート、およびこのシートを用いた防虫ロールシャッターの提供を課題とするものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】上記の課題を解決する手段として、本願の発明者は昆虫類が特に強い光走行性を示す350~420nmの波長領域については実質的に光の透過を0とし、420nm以上の波長領域についても実質的に光の透過を20%未満に制限することによってほぼ目的が達成されることを見出した。」
摘記(8c) 「【0006】
【発明の実施の態様】前項で設定された透過率を実現するには、紫外線吸収剤、イエロー、オレンジ、グリーン、あるいはブラックなど数種の染料または顔料の組み合わせが必要になるが、耐光性の点では顔料系が望ましい。ただ顔料は分散状態が不良であると短波長の光を素通りさせる可能性があり微粉砕、均一分散に特に配慮を要する。」
摘記(8d) 「【0010】
【実施例1】軟質合成樹脂製防虫シート製膜用原料として下記の配合物を2本ロールミルで充分微粉砕混練し、一旦チップ化したものをTダイ方式の溶融押出機に供給して厚さ0.27mmのシートを得た。
PVC 56.4%
フタル酸系可塑剤 19.7%
リン酸系可塑剤 20.3%
Ba-Zn系安定剤 2.9%
紫外線吸収剤 0.23%
顔料イソインドリノン 0.02%
顔料フタルシアニングリン 0.30%
顔料カーボンブラック 0.15%
【0011】実施例1のシート2枚を重ね、300~700nmの間の光透過率を測定した。結果は図1に示すごとく420nm未満では光透過率は1%未満であり、420nm以上の領域ではほぼ20%未満である。
【0012】40Wの昼光色蛍光灯2本を10cm間隔で並設した照明器具を長方形の箱に納め、箱の1面に幅200mm×長さ1200mm×厚さ2mmのガラスを嵌込む。同じ内容の箱2個を用意し、一方のガラスには両面に実施例1のシートを貼着する。さらに、両方のガラスの外側の面に透明の両面粘着テープをテープの幅と同じ間隔をあけて縞模様に貼る。粘着テープの幅は数cmから10cmくらいが適当である。2つの箱を屋外に5m以上離して設置し、夜間2時間点灯する。場所を入れ替えさらに2時間点灯し、粘着テープ面に捕捉された虫の数を数える。実験の結果は、ガラスのみの場合の捕捉数127に対し実施例1のシートを貼った場合の捕捉数は7で、防虫効率は約95%であった。」
2 取消理由についての判断
(1) サポート要件の判断の前提
特許請求の範囲の記載が明細書のサポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載を対比し、特許請求の範囲で特定された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載又はその示唆により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。
(2) 本件発明の課題
本件発明が解決しようとする課題は、本件明細書の【0006】の記載によると、「防虫成分の含有量を抑えつつ防虫効果を安定して発揮できる間仕切り用シートを提供すること」と認められる。
(3) 判断
ア 本件明細書【0007】及び【0021】には、それぞれ、
「本発明者らは、上記課題に鑑み鋭意検討を重ねた結果、防虫成分と防虫性付与成分とを含む樹脂組成物の成形体とすることで、間仕切り用シートとして防虫性分の含有量を抑えつつ防虫効果を安定して発揮できる従来にない間仕切り用シートが得られることを見出し、本発明の完成に至ったのである。」
及び
「3.防虫性付与成分
防虫性付与成分とは、間仕切り用シート1に害虫が忌避する機能(防虫性)を付与する成分のことで、具体的には、樹脂組成物の防虫性付与成分としては、350~360nmの光の透過を阻止するための紫外線吸収剤と、400~550nmの光の透過を阻止するべく間仕切り用シート1をオレンジ色に着色するための染料又は顔料が用いられる。害虫は、主に紫外線領域の350~360nmの光に感応して活動し、400~550nm、特に470~480nmの光に感応して活動するものがあるため、かかる波長の光の透過を阻止することで、間仕切り用シート1として上述した防虫成分で不足する性能を補いつつ、長期に渡り安定して防虫性能を発揮できるようになる。」
と記載されている。
以上によると、本件明細書には、「防虫成分」と「防虫性付与成分」を併用することで、「防虫成分」の含有量を抑えても、本件発明の「間仕切り用シート」が「防虫効果」を示すこと、さらに、特定波長の「光」の透過阻止と「害虫の活動」の関係に基づいた「防虫性付与成分」が「防虫成分」の性能を補えることによって、本件発明の上記課題を解決しようとしたものであることが示されているといえる。
イ これに関し、本件明細書には、実施例として、
「【0034】
<試料の調製>
主成分としての塩化ビニル系樹脂、防虫成分としてのピレスロイド系防虫剤、防虫性付与成分としての紫外線吸収剤及び顔料、可塑剤、安定剤等を、表1に示す割合でそれぞれ配合した樹脂組成物を混練し、混練物をカレンダー成形機にて180℃で成形を行って、厚さが0.5mmの各試料(シート状樹脂成形体)を得た。各試料は、防虫剤としてマスターバッチペレット(エトフェンプロックス濃度が15重量%及び20重量%のもの)の配合量を変えることで、樹脂組成物中のエトフェンプロックスの成分濃度が異なるように調製した(実施例1~4、比較例1~2)。なお、同様に、防虫成分の含有しない試料を調製し、これをブランク試料とした。
【0035】
なお、本実施例では、以下の配合剤を用いた。
塩化ビニル系樹脂:PVC(カネビニールS1003N、カネカ社製)
可塑剤:DOP(DOP、ジェイ・プラス社製)
可塑剤:TPP(レオフォス65、味の素ファインテクノ社製)
可塑剤:ESBO(ケミサイザーSE-100、三和合成化学社製)
安定剤(AC-293、AP-551、AC-292、ADEKA社製)
ピレスロイド系防虫剤:エトフェンプロックス(NIXAM416-X、ニックス社製)
紫外線吸収剤(キマソーブ81、BASFジャパン社製)
顔料(イソインドリノンイエロー、縮合アゾレッド、大日精化工業社製)
【0036】
【表1】
[図:0001411350000011.jpg]
【0037】
<害虫忌避率試験>
間切り用シートとしての忌避性能を評価するために害虫忌避率試験を行った。具体的には、上部が開放された有底の試験容器内に、餌及び水とともに、害虫(チャバネゴキブリ)が隠れることのできる2つの営巣用シェルターA、Bを設置した。シェルターAは内部に実施例1~4及び比較例1~2に係る試料(一辺の長さが50mmの正方形)を設置したものとし、シェルターBは防虫成分の含有しないブランク試料を設置したものとした。そして、試験容器内にチャバネゴキブリ10匹を投入して上方より光を照射した状態で10時間放置した後、試験容器からシェルターA、Bを取り出して、それぞれのシェルター内にいるチャバネゴキブリの数を数え、忌避率[%]={(シェルターBの害虫の数-シェルターAの害虫の数)/シェルターBの害虫の数}×100の式により、忌避率(%)を算出した。同様の試験をそれぞれ3回行い、その平均値から忌避性能を評価した。
【0038】
【表2】
[図:0001411350000012.jpg]
【0039】
表2に示すように、実施例1~4に係る試料はいずれも高い害虫忌避率であり、他方、比較例1~2に係る試料は、結果にバラつきがあったため有意な忌避率の値を採用することができず、忌避性能を評価することができなかった。この結果から、実施例1~4に係る間切り用シートは高い害虫忌避率を発揮することから、防虫効果を有することが示された。特に、中でも実施例4に係る試料の害虫忌避率は100%であった。実施例4に係る試料は、防虫成分の濃度が0.9重量%以上であり、防虫成分の濃度が0.9重量%未満である実施例1~3に係る試料と比較して忌避率が13%以上も向上している。この結果から、防虫成分の濃度が0.9重量%以上である間切り用シートは、優れた防虫効果を有することが示された。」
と記載されている。
ウ ここで、実施例におけるシェルターの構造及び光透過性、並びにシェルター内に試料がどのように設置されているかについては、詳細な説明が記載されていないものの、当該シェルターは、「害虫(チャバネゴキブリ)が隠れることのできる」ことを前提としていることから、試験容器の底部とシェルター上部の挟まれた空間に害虫が入り込むことが可能な構造を有しているものといえる。また、実施例は、本件発明の「害虫忌避性間仕切り用シート」である「間切り用シート」としての「忌避性能を評価するため」の試験であり(【0037】)、「実施例1~4に係る間切り用シートは高い害虫忌避率を発揮する」結果が記載されているから(【0039】)、シェルターAに設置された試料及びシェルターBに設置された試料は、「間切りシート」としてシェルター内部に設置され、機能しているといえる。そして、当該試験は、「防虫性付与成分」としての「紫外線吸収剤」及び「顔料」の作用を評価するものであるから、上方から照射する光は、シェルター内部にも入射するように、シェルターが形成されていると理解できる(例えば、シェルターの透明な天井部分の直下に試料の間切りシートを設置するか、試験容器の底面又は側壁からの反射光がシェルター内部に入射することが考えられる。)。そして、シェルター内部に設置したシートは「間切り用」であるから、当該シートに対して入射した光は「透過及び/又は反射」しているものといえ、その結果、当該シートに含まれる「紫外線吸収剤及びオレンジ色に着色するための染料又は顔料」である「防虫性付与成分」は、「透過光」及び/又は「反射光」の「350~360nm及び400~550nm」の光強度を低減していることが理解できる。
エ そのような実施例の<害虫忌避率試験>において、「防虫成分の含有しないブランク試料」を参照とした場合に、防虫成分の濃度が0.6重量%に満たない「比較例1~2に係る試料」では、「ブランク試料」に対して優れた忌避性能を発揮することができず、防虫成分の濃度が0.6重量%以上の「実施例1~4に係る間切り用シート」では、高い害虫忌避率を発揮し、特に、防虫成分の濃度が0.9重量%であれば、100%の害虫忌避率を示し、それ以上、防虫成分の濃度を高める必要がないことが確認されている。この結果は、「実施例1~4に係る間切り用シート」が、「防虫性付与成分」を「防虫成分」と一緒に配合することにより、本件明細書【0004】に記載の従来の防虫成分の含有量である「10~40重量%」よりはるかに少ない量で害虫忌避効果を得ていることが理解できるから、本件発明は、本件発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるといえる。
オ これにつき、申立人は、以下の主張をする(第3の1(1)ア)。
「ア 実施例において、シートはシェルター内部に設置されており、害虫(チャバネゴキブリ)に対し光の透過を阻止するように設置されておらず、防虫性付与成分が「光の透過を阻止することで」生じる効果についての裏付けは全くなく、防虫性付与成分の有無による効果の差異は一切示されていないし、防虫性付与成分を用いることにより、防虫成分の含有量をどの程度抑えることができるのか不明であるから、本件発明1~3は、当業者が本件発明の課題を解決できると認識できる範囲のものとはいえない。」
しかしながら、上述のように、実施例において、間切りシートの具体的な設置の仕方は明らかでないが、実施例の試験において、害虫に対して光の透過を阻止するように間切りシートが設置されていることは理解でき、防虫性付与成分の配合によって、防虫成分量を大幅に低減できることが示されているから、「防虫性付与成分の有無による効果の差異は一切示されていない」とはいえない。また、「防虫性付与成分」を「防虫成分」と一緒に配合することにより、防虫成分の濃度が0.9重量%であっても、100%の害虫忌避率となることが示されているから、「防虫性付与成分を用いることにより、防虫成分の含有量をどの程度抑えることができるのか不明である」とはいえないから、上記申立人の主張は採用できない。
カ したがって、取消理由通知に記載した取消理由によっては、本件請求項1~3に係る特許を取り消すことはできない。
3 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について
(1) 申立理由1について
申立理由1のうち、アの点についての理由は、取消理由と同旨の理由であるから、以下、第3の1(1)のイ~オの点について検討する。
ア 第3の1(1)のイ及びウの点について
防虫成分及び防虫付与成分について、本件明細書には、以下の記載がある。
「【0019】
2.防虫成分
樹脂組成物の防虫成分としては、通常防虫剤として用いられる各種生理活性物質のうち、非蒸散性で、優れた忌避性と速効性を有し、しかも急性毒性を示しにくいピレスロイド系防虫剤が用いられる。ピレスロイド系化合物としては、例えば、ピレトリン、ペルメトリン、アレスリン、フタルスリン、プラレトリン、シフェノトリン、フェノトリン、レスメトリン、フラメトリン、イミプロトリン、フェンバレレート、フェンプロパトリン、シハロトリン、シフルトリン、エトフェンプロックス、トラロメトリン、エスビオスリン及びテラレトリン等が挙げられ、これらの中でも、特にエトフェンプロックスが好ましく用いられる。エトフェンプロックスは、ピレスロイド系防虫剤の中でも、低濃度で防虫効果を発揮しやすいとともに、人や動物に対する安全性を確保しやすいため好適である。これらの防虫成分は、一種類又は二種類以上を組み合わせて用いることができる。
【0020】
防虫成分の含有量は、防虫成分の種類、塩化ビニル系樹脂の種類、その他の成分(可塑剤等)の種類やその量、さらには間仕切り用シート1の厚さや有効期間等の諸条件によって適宜調整されるが、樹脂組成物中において0.2重量%~5.0重量%で、好ましくは0.6重量%以上、より好ましくは0.9重量%以上である。防虫成分の含有量が0.2重量%より少ないと防虫効果が低くなり、防虫効果の持続時間が短縮するからであり、5.0重量%を超えると間仕切り用シート1の強度が低下するとともに、タック性が生じて現場使用に支障をきたすからである。
【0021】
3.防虫性付与成分
防虫性付与成分とは、間仕切り用シート1に害虫が忌避する機能(防虫性)を付与する成分のことで、具体的には、樹脂組成物の防虫性付与成分としては、350~360nm
の光の透過を阻止するための紫外線吸収剤と、400~550nmの光の透過を阻止するべく間仕切り用シート1をオレンジ色に着色するための染料又は顔料が用いられる。害虫は、主に紫外線領域の350~360nmの光に感応して活動し、400~550nm、特に470~480nmの光に感応して活動するものがあるため、かかる波長の光の透過を阻止することで、間仕切り用シート1として上述した防虫成分で不足する性能を補いつつ、長期に渡り安定して防虫性能を発揮できるようになる。」
上記記載によれば、防虫成分は「非蒸散性で、優れた忌避性と速効性を有し、しかも急性毒性を示しにくいピレスロイド系防虫剤」であればよいところ(【0019】)、「揮発性」がエトフェンプロックスと異なることによって、防虫成分として用いることができないという事情はない。そして、本件発明は防虫性付与成分を併用することによって防虫成分の含有量を抑えたものであり、本件明細書の実施例には、エトフェンプロックスを用いてそのことが実施されている。
ここで、防虫性付与成分は、特定の波長の光に感応して活動する害虫について、かかる波長の光を阻止することで防虫性を付与するものであり(【0021】)、防虫成分とはその作用が異なることを考えれば、「ピレスロイド系防虫剤」の化学構造によって放出特性(揮発性)の違いがあったとしても、「防虫成分(ピレスロイド系防虫剤)」は「防虫性付与成分」との併用によって、「防虫付与成分」の特定波長の吸収に伴う光に感応した害虫の活動が抑制され、結果として、従来の防虫成分の含有量より少ない量で害虫忌避効果が得られることが理解できる。
また、防虫成分の含有量は、「防虫成分の種類、塩化ビニル系樹脂の種類、その他の成分(可塑剤等)の種類やその量、さらには間仕切り用シート1の厚さや有効期間等の諸条件によって適宜調整される」と記載され(【0020】)、防虫成分の種類がエトフェンプロックスとは違っていても、「0.6~5.0重量%」の範囲において、樹脂やその他の成分の種類を適宜選択することによって、上記本件発明の課題が解決できるように調整できるといえる。
それゆえ、本件発明1及び3は、その課題を解決できると認識できるものであり、申立人の主張は採用できない。
イ 第3の1(1)のエ及びオの点について
本件発明は、特定量の「放出可能」な「防虫成分」を、「防虫付与成分」と併用するに当たり、特定の「可塑剤」を含有すること等を発明特定事項とする「シート」であるところ、「防虫性付与成分」及び「可塑剤」の含有量については、本件明細書【0021】、【0026】及び実施例の記載、並びにそれらの添加目的を考慮すれば、「防虫付与成分」の特定波長の吸収に伴う光に感応した害虫の活動抑制がある程度機能し、本件発明のシートが防虫効果を示さないという理由はないから、特定の防虫付与成分と可塑剤を、特定量使用した実施例以外の組成である本件発明についても、その発明の課題を一定程度解決できることは、当業者であれば認識できるものであり、申立人の主張は採用できない。
(2) 申立理由2-1について
ア 甲2に記載された発明
甲2には、間仕切りなどに用いられるシートシャッター用膜材について(摘記(2a)及び(2b))、当該膜材が、飛翔性小型昆虫類が感知する紫外線領域の波長を安定的にカットし、そのカット効果で飛翔性小型昆虫類の屋内侵入を長期間防止することができるものであって(摘記(2c))、実施例1として、具体的な膜材の製造と防虫効果の結果等(摘記(2d))が記載されている。
そうすると、甲2には、実施例1として、以下に示す甲2発明が記載されているといえる。
<甲2発明>
メッシュシートを基体として、この基体の表面全面に設けられたフィルムである表面透明樹脂層、及び前記基体の裏面全面に設けられたフィルムである裏面透明樹脂層を有する可撓性複合積層体であって、当該裏面透明樹脂層が以下の配合3からなる、防虫のための間仕切り用であるシートシャッター用膜材。
〔配合3〕
懸濁重合ポリ塩化ビニル樹脂(重合度1300) 100質量部
1,2-シクロヘキサンジカルボン酸ジイソノニルエステル 60質量部
エポキシ化大豆油(可塑剤) 10質量部
ステアリン酸亜鉛(安定剤) 2質量部
ステアリン酸バリウム(安定剤) 2質量部
2-(2'-ヒドロキシ-5'-tert-オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール
0.1質量部
ジエチルアミノヒドロキシベンゾイルヘキシルベンゾエート0.1質量部
2-エチル-2-シアノ-3,3-ジフェニルアクリレート0.1質量部
4,5-ジメチルオキシ-N-(2-エチルヘキシル)ナフタルイミド(BASF社製商品名LumogenF/Violet570:吸光波長378nm/発光波長413nm)
0.03質量部
イ 本件発明と甲2に記載された発明との対比・判断
(ア) 本件発明1について
a 本件発明1と甲2発明との対比
甲2発明の「懸濁重合ポリ塩化ビニル樹脂」及び「防虫のための間仕切り用であるシートシャッター用膜材」は、それぞれ、本件発明1の「塩化ビニル系樹脂」及び「害虫忌避性間仕切り用シート」に相当し、甲2発明の「塩化ビニル系樹脂」は主成分であって、その重合度1300は、本件発明1の重合度の範囲に該当する。そして、甲2発明の膜材は、その組成及び形態から樹脂成形体であって、フィルムからシート状に成形されたものといえる。
また、甲2発明の「1,2-シクロヘキサンジカルボン酸ジイソノニルエステル」及び「エポキシ化大豆油」は、いずれも本件発明1の「可塑剤」に相当し、甲2発明の「2-(2'-ヒドロキシ-5'-tert-オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール」、「ジエチルアミノヒドロキシベンゾイルヘキシルベンゾエート」及び「2-エチル-2-シアノ-3,3-ジフェニルアクリレート」は、いずれも本件発明1の「紫外線吸収剤」に相当し、甲2発明の「4,5-ジメチルオキシ-N-(2-エチルヘキシル)ナフタルイミド」は、バイオレット色(青紫色)である「Violet570」であって、本件発明1の「着色するための染料又は顔料」に相当する。
そうすると、本件発明1と甲2発明とは、
「防虫樹脂成形体である間仕切り用シートにおいて、
主成分として平均重合度が700~1700の塩化ビニル系樹脂と、
二種以上の可塑剤と、
防虫性付与成分として紫外線吸収剤及び着色するための染料又は顔料と、
を含む樹脂組成物をシート状に成形してなる害虫忌避性間仕切り用シート。」
である点で一致し、以下の相違点1~3で相違する。
相違点1:本件発明1は、防虫成分として組成物全量に対して0.6~5.0重量%のピレスロイド系防虫剤を含有し、当該防虫成分は放出可能な徐放性を示すのに対して、甲2発明は、防虫成分を含有していない点
相違点2:2種の可塑剤について、本件発明1は、フタル酸エステル系可塑剤及びリン酸エステル系可塑剤であって、可塑剤全量に対して20~50重量%のリン酸エステル系可塑剤であるのに対して、甲2発明は、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸ジイソノニルエステル及びエポキシ化大豆油であって、60:10の質量比である点
相違点3:本件発明1は、着色がオレンジ色であるのに対して、甲2発明は、着色が青紫色である点
b 相違点についての検討
まず、相違点1について検討する。
甲2には、「ピレスロイド系化合物」を「殺虫成分、ノックダウン成分」として含有させることが防虫対策により有効であることが、一般的な記載(摘記(2c))にあるが、どの程度の「ピレスロイド系化合物」の含有量が、「防虫性付与成分」との併用において害虫忌避に有用であるのか記載も示唆もなく、「ピレスロイド系化合物」を用いた調製手法が明らかな具体例の記載もないことから、「ピレスロイド系化合物」が「放出可能な徐放性」を示すようにシートに含有されているとする記載もあるとはいえない。
また、甲3~6には(摘記(3a)、(4a)、(4b)、(5a)~(5c)、(6a)及び(6b))、「防虫性付与成分」とともに、「徐放性」の「防虫成分」を併用することの記載も示唆もない。
特に、甲5には、防虫メッシュシートの熱可塑性樹脂層に「ピレスロイド系化合物0.1~5質量%」含むことが記載されているが、当該防虫メッシュシートは、特定量の「ブリード性化合物」及び「ブリードコントロール剤」を用いることによって、ピレスロイド系化合物による高い忌避効果が得られ、プレスロイド系化合物の揮散を長期安定的にコントロールするものであって、防虫性付与成分と併用することによって、防虫成分であるピレスロイド系化合物の量を抑えつつ防虫効果を発揮するものではない。
そうすると、甲2には、防虫性付与成分とともに、放出可能な徐放性を示す防虫成分として、組成物全量に対して0.6~5.0重量%のピレスロイド系防虫剤を含有させることの動機付けの記載がなく、甲3~6にも、ピレスロイド系防虫剤の併用に関する記載も示唆もないから、甲2発明において、相違点1に係る本件発明1の構成を採用することは、当業者が容易に想到することではない。
また、仮に、甲2発明において、放出可能な徐放性を示す状態でピレスロイド系防虫剤を含有させることが容易に想到し得、かつ、甲5に記載の含有量を採用すること自体が容易になし得たことであったとしても、本件発明1は、特定量の防虫成分と防虫性付与成分を併用することで、防虫成分の含有量を抑えつつ防虫効果を安定して発揮できるものであって、本件発明1の当該効果は、当業者が予測できるものとはいえない。
c 相違点1に関する申立人の主張について
申立人は、甲2発明において、「防虫成分としてのピレスロイド系化合物」を用いることは容易であり、さらに、甲5に記載のピレスロイド系化合物の配合量と同程度とすることは容易であり、シートがピレスロイド系防虫剤を含有すれば、防虫成分が放出可能であることは当然に備える性質である旨の主張をしている。
しかしながら、上記bで述べたとおり、甲2には、防虫性付与成分とともに、放出可能な徐放性を示す防虫成分として、組成物全量に対して0.6~5.0重量%のピレスロイド系防虫剤を含有させることの動機付けの記載はなく、さらに、甲5には、甲2発明などに対して、甲5のピレスロイド系化合物の配合量と同程度に添加することの記載も示唆もないから、甲2発明において、相違点1に係る本件発明1の構成を採用することは、当業者が容易に想到することではない。さらに、本件発明1の効果は当業者が予測できるものでもない。
したがって、申立人の主張は採用できない。
d よって、本件発明1は、相違点2及び3について検討するまでもなく、甲2及び3~6に記載された発明に基いて、当業者が容易になし得たものではない。
(イ) 本件発明3について
本件発明3は、本件発明1の発明特定事項を全て備え、本件発明1を更に限定するものであるから、本件発明3は、上記(ア)bと同様の理由により、甲2及び3~6に記載された発明に基いて、当業者が容易になし得たものではない。
(3) 申立理由2-2について
ア 甲7に記載された発明
甲7には、間仕切り材に使用するシートについて(摘記(7a)及び(7b))、昆虫の感応度の出る波長の光の透過率を下げることで、防虫効果を示すことが記載され、実施例として、具体的なシートの製造と防虫効果の結果(摘記(7c))が記載されている。
そうすると、甲7には、実施例として、以下に示す甲7発明が記載されているといえる。
<甲7発明>
以下の配合からなる、押出法又はカレンダー法による、防虫のための間仕切り材であるシート。
ポリ塩化ビニル(P1300) 100PHR
DOP又はDMP(可塑剤) 65PHR
有機複合スズ系安定剤 2.0~3.0PHR
メチレンビスアミド(滑剤) 0.1PHR
チヌビン326(紫外線吸収剤) 0.1PHR
イソインドリノンイエロー
(黄色染料) 0.0260PHR
ローダミンレーキ
(黄色染料) 0.0215PHR
アンスラキノンイエロー
(黄色染料) 0.0015PHR
イ 本件発明と甲7に記載された発明との対比・判断
(ア) 本件発明1について
a 本件発明1と甲7発明との対比
甲7発明の「ポリ塩化ビニル(P1300)」及び「防虫のための間仕切り材であるシート」は、それぞれ、本件発明1の「塩化ビニル系樹脂」及び「害虫忌避性間仕切り用シート」に相当し、甲7発明の「塩化ビニル系樹脂」は主成分であって、その重合度は、「(P1300)」の記載から1300といえ、本件発明1の重合度の範囲に該当する。そして、甲7発明は、樹脂を主成分とする組成を、押出法又はカレンダー法によって製造したものであるから、樹脂成形体であって、かつ、シート状に成形されたものといえる。
また、甲2発明の「可塑剤」である「DOP」及び「DMP」は、それぞれ、「フタル酸ジオクチル」及び「フタル酸ジメチル」であって、いずれも本件発明1の「フタル酸エステル系可塑剤」に該当する。
そして、甲7発明の「イソインドリノンイエロー」、「ローダミンレーキ」及び「アンスラキノンイエロー」は、いずれも「黄色」の「染料」であって、本件発明1の「着色するための染料又は顔料」に相当する。
なお、甲2発明の「PHR」は「parts by weight per 100 parts by weight of rubber」であって、割合表示ではなく、単に「重量部」を意味しているものである。
そうすると、本件発明1と甲7発明とは、
「防虫樹脂成形体である間仕切り用シートにおいて、
主成分として平均重合度が700~1700の塩化ビニル系樹脂と、
フタル酸エステル系可塑剤を含む可塑剤と、
防虫性付与成分として紫外線吸収剤及び着色するための染料又は顔料と、
を含む樹脂組成物をシート状に成形してなる害虫忌避性間仕切り用シート。」
である点で一致し、以下の相違点4~6で相違する。
相違点4:本件発明1は、防虫成分として組成物全量に対して0.6~5.0重量%のピレスロイド系防虫剤を含有し、当該防虫成分は放出可能な徐放性を示すのに対して、甲7発明は、防虫成分を含有していない点
相違点5:可塑剤について、本件発明1は、フタル酸エステル系可塑剤及びリン酸エステル系可塑剤であって、可塑剤全量に対して20~50重量%のリン酸エステル系可塑剤であるのに対して、甲7発明は、フタル酸エステル系可塑剤であるDOP又はDMPである点
相違点6:本件発明1は、着色がオレンジ色であるのに対して、甲7発明は、着色が黄色である点
b 相違点についての検討
まず、相違点4について検討する。
甲7には、「ピレスロイド系防虫剤」をシートに含有させることの記載も示唆もなく、昆虫における光の波長に対する感応度を制御することで防虫効果を有するものであるから(摘記(7b))、そもそも、「徐放性」の「防虫成分」自体を更に含有させることの記載も示唆もないといえる。
また、甲5には(摘記(5a)~(5c))、「防虫性付与成分」とともに、「徐放性」の「防虫成分」を併用することの記載も示唆もなく、防虫メッシュシートの熱可塑性樹脂層に「ピレスロイド系化合物0.1~5質量%」含むことが記載されているが、当該防虫メッシュシートは、特定量の「ブリード性化合物」及び「ブリードコントロール剤」を用いることによって、ピレスロイド系化合物による高い忌避効果が得られ、プレスロイド系化合物の揮散を長期安定的にコントロールするものであって、防虫性付与成分と併用することによって、防虫成分であるピレスロイド系化合物の量を抑えつつ防虫効果を発揮するものではない。
そうすると、甲7には、防虫性付与成分とともに、放出可能な徐放性を示す防虫成分として、組成物全量に対して0.6~5.0重量%のピレスロイド系防虫剤を含有させることの動機付けの記載がなく、甲5にも、ピレスロイド系防虫剤を防虫性付与成分と併用することに関する記載も示唆もないから、甲7発明において、相違点4に係る本件発明1の構成を採用することは、当業者が容易に想到することではない。
c 相違点4に関する申立人の主張について
申立人は、甲5は甲7と同様、昆虫に対する防虫効果を目的とするものであるから、甲7発明において、「防虫成分としてのピレスロイド系化合物」を用いることは容易であり、さらに、本件が効果の顕著性を示していないから、甲5に記載のピレスロイド系化合物の配合量と同程度とすることは容易であり、シートがピレスロイド系防虫剤を含有すれば、防虫成分が放出可能であることは当然に備える性質である旨の主張をしている。
しかしながら、上記bで述べたとおり、甲7には、ピレスロイド系防虫剤といった徐放性防虫成分に関する記載が一切なく、さらに、甲5には、甲7発明などに対して、甲5のピレスロイド系化合物の配合量と同程度に添加することの記載も示唆もないから、甲7発明において、相違点4に係る本件発明1の構成を採用することは、当業者が容易に想到することではない。
したがって、申立人の主張は採用できない。
d よって、本件発明1は、相違点5及び6について検討するまでもなく、甲7及び5に記載された発明に基いて、当業者が容易になし得たものではない。
(イ) 本件発明3について
本件発明3は、本件発明1の発明特定事項を全て備え、本件発明1を更に限定するものであるから、本件発明3は、上記(ア)bと同様の理由により、甲7及び5に記載された発明に基いて、当業者が容易になし得たものではない。
(4) 申立理由2-3について
ア 甲8に記載された発明
甲8には、軟質合成樹脂製防虫シートのシャッターについて(摘記(8a)~(8c))、昆虫類が特に強い光走行性を示す350~420nmの波長領域については実質的に光の透過を0とし、420nm以上の波長領域についても実質的に光の透過を20%未満に制限することによって、昆虫の誘引を回避できる目的が達成されることが記載され、実施例1として、具体的なシートの製造と防虫効果の結果(摘記(8d))が記載されている。
そうすると、甲8には、実施例として、以下に示す甲8発明が記載されているといえる。
<甲8発明>
以下の配合物を原料として、溶融押出機により得た、軟質合成樹脂製防虫シートのシャッター。
PVC 56.4%
フタル酸系可塑剤 19.7%
リン酸系可塑剤 20.3%
Ba-Zn系安定剤 2.9%
紫外線吸収剤 0.23%
顔料イソインドリノン 0.02%
顔料フタルシアニングリン 0.30%
顔料カーボンブラック 0.15%
イ 本件発明と甲8に記載された発明との対比・判断
(ア) 本件発明1について
a 本件発明1と甲8発明との対比
甲8発明の「PVC」、「フタル酸系可塑剤」及び「リン酸系可塑剤」は、それぞれ、本件発明1の「塩化ビニル系樹脂」、「フタル酸エステル系可塑剤」及び「リン酸エステル系可塑剤」に相当し、甲8発明の「塩化ビニル系樹脂」は主成分であって、甲8発明において、「可塑剤全量」に対する「リン酸エステル系可塑剤」の含有量は51重量%である。
そして、甲8発明は、樹脂を主成分とする組成を、溶融押出機により得たものであるから、樹脂成形体であって、かつ、シート状に成形されたものといえ、甲8発明の「シャッター」は、空間を区切るシートを意味するから、本件発明1の「間仕切り用シート」といえる。
また、甲8発明において、特定量で混合している3種の顔料の混合色の色合いは不明であるが、主成分である「顔料フタルシアニングリン」(決定注:「グリン」は「グリーン」の誤記と認める。)の色(緑色)から、オレンジ色ではない。
そうすると、本件発明1と甲8発明とは、
「防虫樹脂成形体である間仕切り用シートにおいて、
主成分として塩化ビニル系樹脂と、
フタル酸エステル系可塑剤及びリン酸エステル系可塑剤を含む二種以上の可塑剤と、
防虫性付与成分として紫外線吸収剤及び着色するための染料又は顔料と、
を含む樹脂組成物をシート状に成形してなる害虫忌避性間仕切り用シート。」
である点で一致し、以下の相違点7~10で相違する。
相違点7:本件発明1は、防虫成分として組成物全量に対して0.6~5.0重量%のピレスロイド系防虫剤を含有し、当該防虫成分は放出可能な徐放性を示すのに対して、甲8発明は、防虫成分を含有していない点
相違点8:塩化ビニル系樹脂の平均重合度について、本件発明1は、700~1700であるのに対して、甲8発明は、不明である点
相違点9:本件発明1は、可塑剤全量に対して20~50重量%のリン酸エステル系可塑剤を含有するのに対して、甲8発明は、可塑剤全量に対して51重量%のリン酸エステル系可塑剤を含有する点
相違点10:本件発明1は、着色がオレンジ色であるのに対して、甲8発明は、色が不明であって、少なくともオレンジ色ではない点
b 相違点についての検討
まず、相違点7について検討する。
甲8には、「ピレスロイド系防虫剤」をシートに含有させることの記載も示唆もなく、そもそも、光の波長に応じた透過を制御することで、昆虫の誘引を回避できる目的が達成されることが記載されているから、そもそも、「徐放性」の「防虫成分」自体を更に含有させることの記載も示唆もないといえる。
また、甲3~5には(摘記(3a)、(4a)、(4b)及び(5a)~(5c))、「防虫性付与成分」とともに、「徐放性」の「防虫成分」を併用することの記載も示唆もない。
特に、甲5には、防虫メッシュシートの熱可塑性樹脂層に「ピレスロイド系化合物0.1~5質量%」含むことが記載されているが、当該防虫メッシュシートは、特定量の「ブリード性化合物」及び「ブリードコントロール剤」を用いることによって、ピレスロイド系化合物による高い忌避効果が得られ、プレスロイド系化合物の揮散を長期安定的にコントロールするものであって、防虫性付与成分と併用することによって、防虫成分であるピレスロイド系化合物の量を抑えつつ防虫効果を発揮するものではない。
そうすると、甲8には、防虫性付与成分とともに、放出可能な徐放性を示す防虫成分として、組成物全量に対して0.6~5.0重量%のピレスロイド系防虫剤を含有させることの動機付けの記載がなく、甲3~5にも、ピレスロイド系防虫剤を防虫性付与成分と併用することに関する記載も示唆もないから、甲8発明において、相違点7に係る本件発明1の構成を採用することは、当業者が容易に想到することではない。
c 相違点7に関する申立人の主張について
申立人は、甲5は甲8と同様、昆虫に対する防虫効果を目的とするものであるから、甲8発明において、「防虫成分としてのピレスロイド系化合物」を用いることは容易であり、さらに、本件が効果の顕著性を示していないから、甲5に記載のピレスロイド系化合物の配合量と同程度とすることは容易であり、シートがピレスロイド系防虫剤を含有すれば、防虫成分が放出可能であることは当然に備える性質である旨の主張をしている。
しかしながら、上記bで述べたとおり、甲8には、ピレスロイド系防虫剤といった徐放性防虫成分に関する記載が一切なく、さらに、甲5には、甲8発明などに対して、甲5のピレスロイド系化合物の配合量と同程度に添加することの記載も示唆もないから、甲8発明において、相違点7に係る本件発明1の構成を採用することは、当業者が容易に想到することではない。
したがって、申立人の主張は採用できない。
d よって、本件発明1は、相違点8~10について検討するまでもなく、甲8及び3~5に記載された発明に基いて、当業者が容易になし得たものではない。
(イ) 本件発明3について
本件発明3は、本件発明1の発明特定事項を全て備え、本件発明1を更に限定するものであるから、本件発明3は、上記(ア)bと同様の理由により、甲8及び3~5に記載された発明に基いて、当業者が容易になし得たものではない。
(5) 小括
したがって、申立理由1及び2によっては、請求項1~3に係る特許を取り消すことはできない。
第5 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由並びに申立人の申し立てた特許異議申立理由及び証拠によっては、本件請求項1~3に係る特許を取り消すことはできない。
また、ほかに本件請求項1~3に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2023-701248