特許異議申立
2023-701289
飛行制御システム
- 審判番号
- 2023-701289
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2021-043625
- 登録番号
- 7289152
- 請求日
- 2023年12月05日
- 審決日
- 2024年06月27日
- 公報発行日
- 2024年10月25日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】株式会社RedDotDroneJapan
- 【権利者代理人】One ip弁理士法人
- 【異議申立人】小倉 啓七
- 審判長/審判官
- 審判長 一ノ瀬 覚
- 審判官 高橋 学
- 審判官 横溝 顕範
- 分類
- P1651.113-YAA(G05D) / P1651.121-YAA(G05D)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第4項、特許法第120条の5第2項、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第1項、特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7289152号発明「飛行制御システム」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7289152号の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~7〕について訂正することを認める。
特許第7289152号の請求項1~7に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7289152号(以下「本件特許」という。)の請求項1~7に係る特許についての出願は、令和3年3月17日を出願日とする出願であって、令和5年6月1日にその特許権の設定登録がされ、同年6月9日に特許掲載公報が発行された。
本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。
令和5年12月 5日 :特許異議申立人小倉啓七(以下「申立人」という。)による請求項1~7に係る特許に対する特許異議の申立て
令和6年 2月 5日付け:取消理由通知書
同年 3月14日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の提出
同年 4月23日付け:通知書(訂正請求があった旨の通知)
なお、上記通知書の指定期間内に、申立人から意見書の提出はなかった。
第2 訂正の適否
1 訂正の内容
訂正請求書による訂正(以下「本件訂正」といい、本件訂正の請求を「本件訂正請求」という。)の内容は、以下のとおりである(当審注:下線は訂正箇所を示す。)。
(1) 訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に「操作入力部を有する操縦装置」と記載されているのを、「操作可能な方向が一軸方向のみに制限された操作入力部を有する操縦装置」に訂正する。
(請求項1の記載を引用する請求項2~7も同様に訂正する)。
(2) 訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2に「前記操縦装置または前記無人航空機は、前記飛行ラインの両端部に対応する前記地図データ上の2つの地点の位置情報に基づいて前記飛行ラインを設定する飛行ライン設定部を有する」と記載されているのを、「前記操縦装置または前記無人航空機は、前記飛行ラインの両端部に対応する前記地図データ上の2つの地点の位置情報に基づいて前記飛行ラインを設定する飛行ライン設定部を有し、前記2つの地点は、スポーツ分野のコートにおけるライン両端の地点である」に訂正する。
(請求項2の記載を引用する請求項3~7も同様に訂正する)。
2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)訂正事項1について
ア 訂正の目的
訂正事項1の「操作可能な方向が一軸方向のみに制限された操作入力部を有する操縦装置」との記載は、訂正前の「操縦装置」の「操作入力部」について、「操作可能な方向が一軸方向のみに制限され」るとの特定を付して、「操作入力部」をさらに具体的に限定するものである。
よって、訂正事項1は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 新規事項の有無
訂正事項1の「操作可能な方向が一軸方向のみに制限された操作入力部を有する操縦装置」との特定に関しては、願書に添付された明細書、特許請求の範囲及び図面(以下「明細書等」という。)の段落【0020】の「操作入力部13は、操作可能な方向が上記の一軸方向のみに制限されていることが好ましい」との記載に基づくものである。
したがって、訂正事項1は、明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではなく、明細書等に記載された事項の範囲内においてされたものである。
ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項1は、特許請求の範囲の減縮を行うものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(2) 訂正事項2について
ア 訂正の目的
訂正事項2の「前記2つの地点は、スポーツ分野のコートにおけるライン両端の地点である」との記載は、訂正前の請求項2における「前記飛行ラインの両端部に対応する前記地図データ上の2つの地点」について、「スポーツ分野のコートにおけるライン両端の地点である」との特定を付し、「前記飛行ラインの両端部に対応する前記地図データ上の2つの地点」をより具体的に限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 新規事項の有無
訂正事項2の「前記2つの地点は、スポーツ分野のコートにおけるライン両端の地点である」との記載に関しては、明細書等における段落【0040】の「図1は、サッカー等のスポーツ分野のコートにおける一方のサイドラインSLの上空に設定された飛行ラインFLを示している。」との記載、段落【0041】の「飛行ライン設定部16は、例えば、サイドラインSLの両端に位置する2地点P1、P2の位置情報を取得し、この2地点P1、P2の位置情報に基づいて飛行ラインFLを設定することができる。」との記載に基づくものである。
したがって、訂正事項2は、明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではなく、明細書等に記載された事項の範囲内においてされたものである。
ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項2は、特許請求の範囲の減縮を行うものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
3 一群の請求項
訂正前の請求項1~7について、請求項2~7はそれぞれ請求項1を引用しているものであって、訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。
したがって、訂正前の請求項1~7に対応する訂正後の請求項1~7は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である。
4 小括
以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
したがって、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~7〕について訂正することを認める。
第3 本件訂正発明
上記「第2」で説示したように本件訂正請求は認められるから、本件訂正後の請求項1~7に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」・・・「本件発明7」という。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1~7に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】
操作可能な方向が一軸方向のみに制限された操作入力部を有する操縦装置と、前記操縦装置からの操縦信号に基づいて飛行制御可能な無人航空機と、を備え、
前記無人航空機は、
複数の回転翼を含む推進機構と、
前記無人航空機の位置を推定する位置推定部と、
前記無人航空機の姿勢を推定する姿勢推定部と、
前記無人航空機の移動速度を推定する速度推定部と、
前記無人航空機の現在の位置、姿勢、及び速度を含む情報に基づいて前記推進機構を制御する飛行制御部と、を有し、
前記飛行制御部は、操縦者による前記操作入力部の一軸方向の操作に応じて前記操縦装置から送信される操縦信号に基づき、予め地図データ上に設定された仮想的な飛行ラインに沿って飛行するように前記推進機構を制御し、
前記飛行制御部は、前記操縦者による前記操作入力部の一軸方向の一方側への操作に応じて、前記飛行ラインに沿う一方側に前記無人航空機が飛行するように前記推進機構を制御し、前記操作入力部の一軸方向の他方側への操作に応じて、前記飛行ラインに沿う他方側に前記無人航空機が飛行するように前記推進機構を制御する、ことを特徴とする飛行制御システム。
【請求項2】
前記操縦装置または前記無人航空機は、前記飛行ラインの両端部に対応する前記地図データ上の2つの地点の位置情報に基づいて前記飛行ラインを設定する飛行ライン設定部を有し、
前記2つの地点は、スポーツ分野のコートにおけるライン両端の地点である、請求項1に記載の飛行制御システム。
【請求項3】
前記無人航空機は、
前記無人航空機のヘディング方向を推定する方向推定部を有し、
前記飛行制御部は、現在の前記ヘディング方向に基づいて前記推進機構を制御する、請求項1又は2に記載の飛行制御システム。
【請求項4】
前記無人航空機は、
画像を撮影可能な撮像部と、
前記撮像部の撮影方向を推定する撮影方向推定部と、
前記無人航空機のヘディング方向、または前記撮像部を支持するジンバルの方向を制御することにより、前記撮影方向を変更する撮影方向制御部と、を有する、請求項3に記載の飛行制御システム。
【請求項5】
前記飛行ラインは、全体が一直線状である、請求項1~4の何れかに記載の飛行制御システム。
【請求項6】
前記飛行ラインは、屈曲部又は湾曲部を有する、請求項1~4の何れかに記載の飛行制御システム。
【請求項7】
前記操縦信号は、前記操作入力部の操作度合の情報を含み、
前記飛行制御部は、前記操作度合の情報に基づいて、前記無人航空機の飛行速度を制御する、請求項1~6の何れかに記載の飛行制御システム。」
第4 取消理由通知で通知した取消理由について
訂正前の請求項1~7に係る特許に対して、当審が令和6年2月5日に特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。
<理由1>(新規性)本件特許の下記請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当するので、その発明に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである。
<理由2>(進歩性)本件特許の下記請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、その発明に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである。
記
<引用文献等一覧>
甲第1号証:特開2019-20962号公報
甲第2号証:特開2020-135327号公報
以下「甲第○号証」を「甲○」ともいう。
<理由1>及び<理由2>
・請求項 1~3、6~7
・引用文献 甲1
<理由2>
・請求項 5
・引用文献 甲1
・請求項 4~7
・引用文献 甲1、甲2
第5 当審の判断
1 甲1に記載された発明
甲1には、以下の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認められる(括弧内に根拠箇所を示した。以下同様。)。
「前面に平面視で360度任意の方向に傾けることができる2本のスティック17、19が立設されている無線操縦器3と(段落【0043】)、無線操縦器3は、ユーザに操作されて、その操作の種類(例えば、どのスティックをどの方向に傾けたか)と操作の量(例えば、スティックを傾けた角度)に応じた運動指令を生成して、その運動指令を無人航空機1に無線で送信し(段落【0033】)、無人航空機1は飛行制御器9と、飛行制御器9に接続された航法装置10を有し、飛行制御器9は、複数の速度制御器7を制御することで飛行運動を制御される無人航空機1と(段落【0035】)、を備え、
無人航空機1は、複数のモータ5と、複数の速度制御器7と、複数のプロペラと(段落【0034】)、無人航空機1の現在位置の地理座標と姿勢と運動状態(例えば、直線移動の方角と速度、転舵運動の方向と速度、など)を測定する航法装置10と、航法装置10による測定データを与えられて、飛行制御する飛行制御器9とを有し(段落【0037】、【0035】)、
飛行制御器9は、飛行計画13を記憶することができ、飛行計画13は、無人航空機1が飛行すべき経路の定義を含み、この飛行経路の定義は、その飛行経路上の複数の位置のそれぞれの地理座標を含み、飛行計画13は、無線操縦器3等から飛行制御器9に入力することができ(段落【0039】)、地理的領域21において、例えば3つの地理的位置点P1、P2、P3をこの順で直線的に経由して出発点P1に戻る三角形の飛行経路R12→R23→R31を、飛行計画で定義でき(段落【0051】)、
調和飛行モードでは、飛行計画13が指定する経路に沿って自律的に無人航空機1を飛行させる自律制御と、無線操縦器3からの運動指令に応じて無人航空機1の飛行を制御する手動制御とが、調和的に融合または組み合わされ(段落【0040】)、入力される運動指令のうち飛行計画13との関係が許容条件15を満たしている運動指令だけが許容されて飛行制御に使用され、許容条件15を満たしていない運動指令は無視されて飛行制御に使用されず(段落【0041】)、
スティック17を前方に傾けると前進指令が、後方に傾けると後退指令が送信され(段落【0044】)、運動指令が指示する運動のスピードまたは強度は、対応するスティック17の傾き角度の比例関数である(段落【0046】)、
移動制御システム。」
2 新規性、進歩性についての判断
(1)本件発明1の新規性、進歩性について
ア 本件発明1と甲1発明との対比
(ア)本件発明1と甲1発明とを対比すると、後者の「運動指令」は前者の「操縦信号」に相当し、以下同様に、後者の「飛行運動を制御」することは前者の「飛行制御可能」に、後者の「無人航空機1」は前者の「無人航空機」に、後者の「プロペラ」は前者の「回転翼」に、後者の「複数のモータ5と、複数の速度制御器7と、複数のプロペラ」は前者の「複数の回転翼を含む推進機構」に、後者の「無人航空機1の現在位置の地理座標」「を測定する航法装置10」は前者の「無人航空機の位置を推定する位置推定部」に、後者の「無人航空機1の」「姿勢」「を測定する航法装置10」は前者の「無人航空機の姿勢を推定する姿勢推定部」に、後者の「無人航空機1の」「運動状態(例えば、直線移動の方角と速度、転舵運動の方向と速度、など)を測定する航法装置10」は前者の「無人航空機の移動速度を推定する速度推定部」に、後者の「飛行制御器9」は前者の「飛行制御部」に、後者の「操作」する「ユーザ」は前者の「操縦者」に、後者の「飛行すべき経路」又は「飛行経路」又は「飛行計画13が指定する経路」は前者の「仮想的な飛行ライン」又は「飛行ライン」に、後者の「スティック17を前方に傾ける」ことは前者の「操作入力部の一軸方向の一方側への操作」に、後者の「スティック17を」「後方に傾ける」ことは前者の「操作入力部の一軸方向の他方側への操作」に、後者の「前進指令」の「前進」は前者の「飛行ラインに沿う一方側」に、後者の「後進指令」の「後進」は前者の「飛行ラインに沿う他方側」に、後者の「移動制御システム」は前者の「飛行制御システム」に、それぞれ相当する。
上記(ア)を踏まえると以下のことがいえる。
(イ)後者の「平面視で360度任意の方向に傾けることができる2本のスティック17、19」と前者の「操作可能な方向が一軸方向のみに制限された操作入力部」とは、「操作可能な操作入力部」である点で共通するので、後者の「前面に平面視で360度任意の方向に傾けることができる2本のスティック17、19が立設されている無線操縦器3」と前者の「操作可能な方向が一軸方向のみに制限された操作入力部を有する操縦装置」とは、「操作可能な操作入力部を有する操縦装置」である点で共通する。
(ウ)後者の「無線操縦器3は、ユーザに操作されて、その操作の種類(例えば、どのスティックをどの方向に傾けたか)と操作の量(例えば、スティックを傾けた角度)に応じた運動指令を生成して、その運動指令を無人航空機1に無線で送信し、無人航空機1は飛行制御器9と、飛行制御器9に接続された航法装置10を有し、飛行制御器9は、複数の速度制御器7を制御することで飛行運動を制御される無人航空機1」は、前者の「前記操縦装置からの操縦信号に基づいて飛行制御可能な無人航空機」に相当する。
(エ)後者の「無人航空機1は、複数のモータ5と、複数の速度制御器7と、複数のプロペラ」を「飛行制御器9」により飛行制御されることは明らかであるから、後者の「無人航空機1の現在位置の地理座標と姿勢と運動状態(例えば、直線移動の方角と速度、転舵運動の方向と速度、など)を測定する航法装置10と、航法装置10による測定データを与えられて、飛行制御する飛行制御器9」は、前者の「前記無人航空機の現在の位置、姿勢、及び速度を含む情報に基づいて前記推進機構を制御する飛行制御部」に相当する。
(オ)後者の「地理的領域21において、例えば3つの地理的位置点P1、P2、P3をこの順で直線的に経由して出発点P1に戻る三角形の飛行経路R12→R23→R31」は、前者の「予め地図データ上に設定された仮想的な飛行ライン」に相当するから、後者の「飛行制御器9は、飛行計画13を記憶することができ、飛行計画13は、無人航空機1が飛行すべき経路の定義を含み、この飛行経路の定義は、その飛行経路上の複数の位置のそれぞれの地理座標を含み、飛行計画13は、無線操縦器3等から飛行制御器9に入力することができ、地理的領域21において、例えば3つの地理的位置点P1、P2、P3をこの順で直線的に経由して出発点P1に戻る三角形の飛行経路R12→R23→R31を、飛行計画で定義でき」、「調和飛行モードでは、飛行計画13が指定する経路に沿って自律的に無人航空機1を飛行させる自律制御と、無線操縦器3からの運動指令に応じて無人航空機1の飛行を制御する手動制御とが、調和的に融合または組み合わされ、入力される運動指令のうち飛行計画13との関係が許容条件15を満たしている運動指令だけが許容されて飛行制御に使用され、許容条件15を満たしていない運動指令は無視されて飛行制御に使用されず、スティック17を前方に傾けると前進指令が、後方に傾けると後退指令が送信され、運動指令が指示する運動のスピードまたは強度は、対応するスティック17の傾き角度の比例関数である」ことは、前者の「前記飛行制御部は、操縦者による前記操作入力部の一軸方向の操作に応じて前記操縦装置から送信される操縦信号に基づき、予め地図データ上に設定された仮想的な飛行ラインに沿って飛行するように前記推進機構を制御し、前記飛行制御部は、前記操縦者による前記操作入力部の一軸方向の一方側への操作に応じて、前記飛行ラインに沿う一方側に前記無人航空機が飛行するように前記推進機構を制御し、前記操作入力部の一軸方向の他方側への操作に応じて、前記飛行ラインに沿う他方側に前記無人航空機が飛行するように前記推進機構を制御する」ことに相当する。
(カ)そうすると、両者は、
「操作可能な操作入力部を有する操縦装置と、前記操縦装置からの操縦信号に基づいて飛行制御可能な無人航空機と、を備え、
前記無人航空機は、
複数の回転翼を含む推進機構と、
前記無人航空機の位置を推定する位置推定部と、
前記無人航空機の姿勢を推定する姿勢推定部と、
前記無人航空機の移動速度を推定する速度推定部と、
前記無人航空機の現在の位置、姿勢、及び速度を含む情報に基づいて前記推進機構を制御する飛行制御部と、を有し、
前記飛行制御部は、操縦者による前記操作入力部の一軸方向の操作に応じて前記操縦装置から送信される操縦信号に基づき、予め地図データ上に設定された仮想的な飛行ラインに沿って飛行するように前記推進機構を制御し、
前記飛行制御部は、前記操縦者による前記操作入力部の一軸方向の一方側への操作に応じて、前記飛行ラインに沿う一方側に前記無人航空機が飛行するように前記推進機構を制御し、前記操作入力部の一軸方向の他方側への操作に応じて、前記飛行ラインに沿う他方側に前記無人航空機が飛行するように前記推進機構を制御する、飛行制御システム。」
の点で一致し、以下の点で、相違する。
[相違点]
「操作可能な操作入力部」に関して、本件発明1では、「操作入力部」の「操作可能な方向が一軸方向のみに制限され」ているのに対して、甲1発明では、「2本のスティック17、19」が「平面視で360度任意の方向に傾けることができる」点。
イ 相違点についての判断
まず、新規性について判断すると、上記相違点は実質的な相違点であるところ、本件発明1は、甲1発明ではない。
次に、進歩性について判断すると、上記相違点に係る本件発明1の発明特定事項は、提出された他の証拠である甲2にも記載されていない。
すなわち、甲2には、「飛行体10」を「無線」で「操縦」する「送信機20のレバー」に関しては、「送信機20のレバーはエレベータ(前進・後退)、エルロン(左・右)、ラダー(回転)、スロットル(上下)、及び、撮像装置13の向きに割り当てられており、ユーザは飛行体10の位置、高さ、向き、速度、及び、撮像方向の光軸を任意に操縦できる。」(段落【0021】)、「送信機20は、操縦受付部21、制御部22、制御信号送信部23、及び、第3無線通信部24を有している。操縦受付部21は、送信機20に設けられたレバーの操作により飛行体10に対する操縦を受け付ける。例えば、レバーを押し倒している間、レバーに対応付けられている動作(エレベータ、エルロン、ラダー、スロットル)に関する操作を受け付ける。また、撮像装置13に対応したレバーが操作された場合、撮像装置13の向きを変更する操作を受け付ける。なお、各レバーに対応する操縦のインタフェースをチャンネルともいう。」(段落【0038】)、及び「・・・送信機20のレバー位置又は速度、高度、旋回に関するモータ制御部59から制御に応じて電圧ONの時間を変化させることで、モータ35の回転数をコントロールする。」(段落【0058】)の記載があるのみであり、「送信機20のレバー」の操作可能な方向が一軸方向のみに制限されることについては、記載も示唆もされていない。
また、甲1発明は、「典型的な無線操縦器は、360度全方向に傾け得る2本のスティックを有し、その2本のスティックをユーザが指で操作することで、ドローンを操縦すること」(段落【0007】)を前提として、「無線操縦器の操作に習熟してないユーザは、自分の意図と違う手動操縦を誤って行ってしまう可能性がある」(段落【0010】)という課題を解決するために、「移動計画に沿った移動に有害な運動指令をユーザが誤って入力したとしても、それをマスクして移動制御に使用されないようにする」(段落【0014】)という発明である。すなわち、平面視で360度任意の方向に傾けることができるスティック固有の発明である甲1発明には、操作可能な方向が一軸方向のみに制限されたスティックに変更することの阻害事由があるといえる。
そうすると、甲2に記載された「送信機20のレバー」に関する技術事項を踏まえても、甲1発明において、上記相違点に係る本件発明1の発明特定事項を採ることは、当業者が容易に想到し得たとはいえない。
したがって、本件発明1は、甲1発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(2)本件発明2~3及び本件発明6~7の新規性、進歩性について
本件発明2~3及び本件発明6~7は、本件発明1の構成を全て含み、さらに限定を付加したものであるから、本件発明1は、甲1発明ではなく、また、甲1発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない以上、本件発明2~3及び本件発明6~7も、甲1発明ではなく、また、甲1発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(3)本件発明4~7についての進歩性について
本件発明4~7は、本件発明1の構成を全て含み、さらに限定を付加したものであるから、本件発明1が、甲1発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない以上、本件発明4~7も、甲1発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
第6 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由によっては、本件特許の訂正後の請求項1~7に係る特許を取り消すことはできない。
そして、特許異議申立書に記載した異議申立理由は、取消理由通知書に記載した取消理由に全て包含されるので、特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっても、本件特許の訂正後の請求項1~7に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件特許の訂正後の請求項1~7に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。
J-PlatPat 審決検索を開く
2023-701289