特許異議申立
2023-701160
清掃装置
- 審判番号
- 2023-701160
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2020-534775
- 登録番号
- 7268813
- 請求日
- 2023年10月31日
- 審決日
- 2024年08月19日
- 公報発行日
- 2024年11月29日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】日立造船株式会社
- 【権利者代理人】河部 大輔
- 【権利者代理人】山中 誠司
- 【異議申立人】河村 沙希穂
- 審判長/審判官
- 審判長 北村 英隆
- 審判官 長馬 望
- 審判官 伊藤 秀行
- 分類
- P1652.537-YAA(B08B) / P1652.121-YAA(B08B)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法120条の8第1項特許法135条
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第9項、特許法第29条第1項第3号、特許法第36条第6項第1号、特許法第120条の5第5項、特許法第120条の5第2項、特許法第29条第1項、特許法第36条第6項第2号、特許法第29条第2項、特許法第120条の8第1項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7268813号発明「清掃装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7268813号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-3〕、4、7について訂正することを認める。
特許第7268813号の請求項3に係る特許を維持する。
特許第7268813号の請求項1、2及び7に対する特許異議申立てを却下する。
理由
理 由
1 手続の経緯
特許第7268813号の請求項1ないし3及び7に係る特許についての出願は、2019年(令和元年)8月2日(優先権主張 平成30年8月2日(以下、「優先日」という。))に国際出願され、令和5年4月25日にその特許権の設定登録がされ、同年5月8日に特許掲載公報が発行された。その後、その特許について、同年10月31日に特許異議申立人 河村 沙希穂(以下、「申立人」という。)より特許異議の申立てがされ、当審は、令和6年2月1日(同年1月29日付け)に取消理由を通知した。特許権者は、その指定期間内である同年4月1日に意見書の提出及び訂正の請求(以下、「本件訂正請求」という。)を行った。その後、審判長は、訂正請求があった旨の通知(特許法第120条の5第5項)を申立人に送付し、期間を指定して意見を求めたが、申立人から意見書は、提出されなかった。
2 訂正の適否についての判断
(1)訂正の内容
本件訂正請求による訂正の内容は、以下のアないしオに示す訂正事項1ないし5のとおりである(下線は、訂正箇所を示す。)。
ア 訂正事項1
特許請求の範囲の請求項3に「請求項1又は2に記載の清掃装置において、前記吸引部は、前記管群に対して前記噴射部と同じ側に配置されている清掃装置。」と記載されているのを、「複数の管が配列され、全体として、互いに対向する位置に配置された第1面と第2面を有する板状に形成された管群を清掃する清掃装置であって、前記第1面の側から前記管群に流体を噴射することによって、前記管に付着した粉塵を除去する噴射部と、前記噴射部を前記第1面に沿って移動させる走行機構と、飛散する粉塵を集塵する集塵機構とを備え、前記集塵機構は、粉塵を吸引する吸引口が形成された吸引部を有し、前記吸引部は、前記管群に対して前記噴射部と同じ側に配置されている清掃装置。」に訂正する。
イ 訂正事項2
特許請求の範囲の請求項1を削除する。
ウ 訂正事項3
特許請求の範囲の請求項2を削除する。
エ 訂正事項4
特許請求の範囲の請求項4に「請求項1乃至3の何れか1つに記載の清掃装置において、前記走行機構は、前記集塵機構の集塵量に応じて走行速度を変更する清掃装置。」とあるうち、請求項1を引用するものについて独立形式に改め、「複数の管が配列され、全体として、互いに対向する位置に配置された第1面と第2面を有する板状に形成された管群を清掃する清掃装置であって、前記第1面の側から前記管群に流体を噴射することによって、前記管に付着した粉塵を除去する噴射部と、前記噴射部を前記第1面に沿って移動させる走行機構と、飛散する粉塵を集塵する集塵機構とを備え、前記走行機構は、前記集塵機構の集塵量に応じて走行速度を変更する清掃装置。」に訂正する。
オ 訂正事項5
特許請求の範囲の請求項7を削除する。
(2)訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更、独立特許要件について
ア 訂正事項1について
本件訂正請求前の請求項3には、「請求項1又は2に記載の清掃装置において」と記載されていたところ、本件訂正請求前の請求項1及び2の記載は次のとおりである。
「【請求項1】
複数の管が配列され、全体として、互いに対向する位置に配置された第1面と第2面を有
する板状に形成された管群を清掃する清掃装置であって、
前記第1面の側から前記管群に流体を噴射することによって、前記管に付着した粉塵を除
去する噴射部と、
前記噴射部を前記第1面に沿って移動させる走行機構と、
飛散する粉塵を集塵する集塵機構とを備える清掃装置。」
「【請求項2】
請求項1に記載の清掃装置において、
前記集塵機構は、粉塵を吸引する吸引口が形成された吸引部を有し、
前記吸引部は、前記噴射部と一体的に移動する清掃装置。」
そうすると、訂正事項1は、本件訂正前の請求項3が請求項1又は2を引用する形式で記載されていたもののうち、請求項1を引用するものについて引用しない形式のものとし、本件訂正請求前の請求項1を引用する請求項3に係る発明において、明瞭でなかった「吸引部」について、「前記集塵機構は、粉塵を吸引する吸引口が形成された吸引部を有」することを明瞭にする訂正であるから、特許法(以下、単に「法」という。)第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮、第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明及び同項ただし書第4号に規定する他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものに該当し、また、特許請求の範囲の拡張及び変更するものではない。
そして、「集塵機構は、粉塵を吸引する吸引口が形成された吸引部を有」することは、本件訂正請求前の請求項2に記載されているから、新規事項を追加するものではない。
なお、請求項3は、特許異議の申立てがされている請求項である(上記1参照。)から、法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第7項の規定(特許出願の際独立して特許を受けることができるものである)は、適用されない。
イ 訂正事項2,3及び5について
訂正事項2、3及び5は、特許請求の範囲の請求項1、2及び7を削除するものであるから、いずれも、法120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当し、特許請求の範囲の拡張及び変更するものではなく、新規事項を追加するものではない。
ウ 訂正事項4について
本件訂正請求前の請求項4には、「請求項1乃至3の何れか1つに記載の清掃装置において」と記載されていたところ、本件訂正請求前の請求項1の記載は、上記アに示すとおりである。
そうすると、訂正事項4は、本件訂正前の請求項4が請求項1乃至3の何れか1つを引用する形式で記載されていたもののうち、請求項1を引用するものについて引用しない形式のものとする訂正であるから、法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮、及び、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものに該当し、また、特許請求の範囲の拡張及び変更するものではなく、新規事項を追加するものではない。
そして、訂正事項4は、上記のように、法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とし、特許異議の申立てがされていない請求項である(上記1参照。)から、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第7項の規定(特許出願の際独立して特許を受けることができるものである)に適合する必要がある。そこで、検討すると、本件特許異議の申立ての証拠として提出された中国特許第100547341号明細書(後記、甲1)及び中国特許出願公開第104976919号明細書(後記、甲2)をみても、「複数の管が配列され、全体として、互いに対向する位置に配置された第1面と第2面を有する板状に形成された管群を清掃する清掃装置であって」、「前記走行機構は、前記集塵機構の集塵量に応じて走行速度を変更する清掃装置」は、記載されておらず、これらの文献に記載された発明とはいえず、また、これらの文献に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものともいえない。また、他に特許を受けることができないとする理由もみあたらない。そうすると、訂正後の請求項4に係る発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであり、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第7項の規定に適合する。
(3)一群の請求項について
本件訂正請求前の[請求項1ないし請求項4]、[請求項5及び請求項6]、[請求項7]、[請求項8ないし請求項10]は、それぞれ一群の請求項である。また、請求項4についての訂正(訂正事項4)については、訂正が認められる場合には、一群の請求項の他の請求項とは、別の訂正単位とすることが求められている(訂正請求書9ページ18行ないし同ページ20行。空白行を含まない。以下同様。)ところ、本件訂正後の[請求項1ないし3]と[請求項4]は、それぞれ一群の請求項である。そして、請求項1ないし4及び請求項7について訂正することを求める本件訂正請求は、一群の請求項毎に訂正を請求するものである。
(4)訂正についてのまとめ
以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号、第3号又は第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
したがって、明細書、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正明細書、特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項[1-3]、4、7について訂正することを認める。
3 訂正後の本件発明
本件訂正請求により訂正された請求項1ないし3び7に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」ないし「本件発明3」及び「本件発明7」という。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1ないし3及び7に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
「【請求項1】
(削除)
【請求項2】
(削除)
【請求項3】
複数の管が配列され、全体として、互いに対向する位置に配置された第1面と第2面を有する板状に形成された管群を清掃する清掃装置であって、
前記第1面の側から前記管群に流体を噴射することによって、前記管に付着した粉塵を除去する噴射部と、
前記噴射部を前記第1面に沿って移動させる走行機構と、
飛散する粉塵を集塵する集塵機構とを備え、
前記集塵機構は、粉塵を吸引する吸引口が形成された吸引部を有し、
前記吸引部は、前記管群に対して前記噴射部と同じ側に配置されている清掃装置。
【請求項7】
(削除)」
4 取消理由通知に記載した取消理由について
訂正前の請求項1ないし3及び7に係る特許に対して、当審が令和6年2月1日(同年1月29日付け)に特許権者に通知した取消理由の要旨は、次の(1)ないし(4)のとおりである。
(1) 請求項1及び2に係る発明は、優先日前に日本国内又は外国において、頒布された中国特許第100547341号明細書(以下、「甲1」という。)に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、請求項1及び2に係る特許は、法第29条第1項の規定に違反してされたものであり、また、請求項1及び2に係る発明は、優先日前に日本国内又は外国において、頒布された甲1に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1及び2に係る特許は、法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
(2)請求項7に係る発明は、優先日前に日本国内又は外国において、頒布された中国特許出願公開第104976919号明細書(以下、「甲2」という。)に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、請求項7に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。
(3)本件特許は、特許請求の範囲の請求項2及び3の記載が不備のため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
(4)本件特許は、特許請求の範囲の請求項3の記載が不備のため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
5 当審の判断
まず、上記2及び3に示すとおり、本件訂正請求により請求項1、2及び7の記載が削除されたことから、特許権者に通知した取消理由のうち、請求項1、2及び7を対象としたもの(上記4(1)、4(2)に示す取消理由)は、対象となる請求項の記載がないものとなった。また、上記4(3)に示す取消理由のうち、請求項2を対象とするものも、取消理由の対象となる請求項の記載がないものとなった。
そこで、上記4(3)、4(4)に示す取消理由のうち請求項3を対象とするものについて検討する。
(1)請求項3に係る発明
上記2に示すとおり、本件訂正請求は、認められるので、本件発明3は、上記3に示すとおりである。
(2)発明の詳細な説明の記載
本件の発明の詳細な説明には、概ね次の事項が記載されている。
ア 「ここに開示された技術は、清掃装置に関する。」([0001])
イ 「従来より、複数の管が配列され、全体として板状に形成された管群を備えた装置が知られている。」([0002])
ウ 「このような管群を清掃する方法としては、管群を含む装置の運転を停止し、管群の周りに足場を仮設し、粉塵飛散の養生対策等を施した上で、作業員が手作業で管の外表面の粉塵を除去することが考えられる。しかしながら、このような方法の場合、足場の仮設や養生対策等が煩雑であり、それに加えて、それらに要する時間が実際に粉塵を除去する作業に比べて長くて効率が悪いという問題がある。」([0005])
エ 「ここに開示された技術は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、管に付着した粉塵の清掃を簡単に行うことにある。」([0006])
オ 「管群3においては、複数の分岐管22が互いに概ね平行に配列され、全体として、互いに対向する位置に配置された第1面31及び第2面32を有する板状に形成されている。」([0017])
カ 「図3は、清掃装置5の構成を示すブロック図である。清掃装置5は、各管群3に設けられている。清掃装置5は、分岐管22に付着した粉塵を除去するノズル61とノズル61を管群3の第1面31に沿って移動させる走行機構8とを備えている。清掃装置5は、飛散する粉塵を集塵する集塵機構7をさらに備えていてもよい。清掃装置5は、清掃装置5の全体を制御する制御装置9をさらに備えていてもよい。」([0021])
キ 「ノズル61は、分岐管22に付着した粉塵を除去する噴射機構6に含まれている。噴射機構6は、6個のノズル61と、6個のバルブ62と、パルス発生器63と、エアタンク64と、コンプレッサ65とを有している。」([0022])
ク 「ノズル61は、第1面31の側から管群3に噴射することによって、分岐管22に付着した粉塵を除去する。」([0023])
ケ 「集塵機構7は、集塵フード71と、集塵機73とを有している。」([0024])
コ 「集塵フード71は、配管又はホースを介して集塵機73と接続されている。集塵機73は、空気を吸引するように構成されている。つまり、集塵機73は、集塵フード71の近傍の粉塵を空気と共に集塵フード71を介して吸引する。」(0025])
サ 「集塵フード71は、6個のノズル61の略中央に配置されている。つまり、集塵フード71は、管群3に対してノズル61と同じ側に配置されている。Y方向においては、集塵フード71は、6個のノズル61と略同じ位置に配置されている。」([0038])
シ 「このように、清掃が開始されると、ノズル61が、キャリッジ81に従って移動しながら空気を間欠的に噴射すると共に、集塵機73が、キャリッジ81に従って移動する集塵フード71の周辺の空気及び粉塵を吸引する。ノズル61から噴射された空気は、管群3を第1面31から第2面32の方へ貫通する際に、分岐管22に付着した粉塵を除去する。」([0053])
ス 「除去された粉塵は飛散するが、集塵フード71の周辺においては集塵フード71の方へ向かう気流が発生している。飛散する粉塵は、この気流に乗って集塵フード71から吸引される。また、蒸気復水器2の運転が継続されているので、管群3の第2面32の側にはファン14による気流が発生している。そのため、ノズル61からの空気により除去された粉塵の多くは管群3の第2面32の側へ飛散するが、ファン14からの気流によって管群3を通過して管群3の第1面31の側へ飛散し得る。これにより、集塵フード71からの粉塵の吸引効率が高められる。」([0056])
セ 本件特許公報には、図3として、次の図が記載されている。
[図:0001416469000001.jpg]
(3)法第36条第6項第1号(サポート要件)について
上記(2)より、発明の詳細な説明には、「複数の管が配列され、全体として板状に形成された管群」([0002])を清掃する方法としては、「管群の周りに足場を仮設し、粉塵飛散の養生対策等を施した上で、作業員が手作業で管の外表面の粉塵を除去することが考えられ」([0005])るが、「足場の仮設や養生対策等が煩雑であり、それに加えて、それらに要する時間が実際に粉塵を除去する作業に比べて長くて効率が悪い」([0005])という課題があったことから、「管に付着した粉塵の清掃を簡単に行うこと」([0006])を目的として、「複数の分岐管22が互いに概ね平行に配列され、全体として、互いに対向する位置に配置された第1面31及び第2面32を有する板状に形成されている」([0017])管群3に対し、「第1面31の側から管群3に噴射することによって、分岐管22に付着した粉塵を除去する」([0023])ノズル61と、「ノズル61を管群3の第1面31に沿って移動させる走行機構8」(0021])と、「飛散する粉塵を集塵する集塵機構7」([0021])とを備え、「集塵機構7は、集塵フード71」を有し([0024」)、「集塵フード71は、管群3に対してノズル61と同じ側に配置されている」([0038])清掃装置5が記載されている。そして、このような清掃装置5により、「清掃が開始されると、ノズル61が、キャリッジ81に従って移動しながら空気を間欠的に噴射する」([0053])ことにより、「ノズル61から噴射された空気は、管群3を第1面31から第2面32の方へ貫通する際に、分岐管22に付着した粉塵を除去する」([0053])と共に、「集塵フード71の周辺の空気及び粉塵を吸引する」([0053])ことで、「集塵フード71の周辺においては集塵フード71の方へ向かう気流が発生し」([0056])、「飛散する粉塵は、この気流に乗って集塵フード71から吸引される」([0056])ことで、上記課題を解決したものが記載されている。
そして、本件発明3は、このような清掃装置5を特定したものであるから、本件発明3は、発明の詳細な説明に記載されたものといえ、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしているものである。
令和6年2月1日(同年1月29日付け)に通知した取消理由では、発明の詳細な説明に「管群3の第2面32の側にはファン14による気流が発生している。そのため、ノズル61からの空気により除去された粉塵の多くは管群3の第2面32の側へ飛散するが、ファン14からの気流によって管群3を通過して管群3の第1面31の側へ飛散し得る。これにより、集塵フード71からの粉塵の吸引効率が高められる。」([0056])と記載されていることから、発明の詳細な説明に記載されたものは、このようなファン14を備えるものであり、このようなファンを有することや、このファンによって発生する気流の方向が特定されていない本件発明3は、法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていないとしたが、上記のように、ファン14の有無にかかわらず、「集塵フード71の周辺においては集塵フード71の方へ向かう気流が発生し」([0056])、「飛散する粉塵は、この気流に乗って集塵フード71から吸引される」([0056])から、本件発明3は、法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていないとはいえない。
(4)法第36条第6項第2号(明確性)について
令和6年2月1日(同年1月29日付け)に通知した法第36条第6項第2号についての取消理由は、請求項3が「請求項1又は2」を引用する形式で記載されていたところ、請求項1を引用する請求項3の記載において「前記吸引部」とは何か不明であるというものである。
これに対し、本件発明3は、「前記集塵機構は、粉塵を吸引する吸引口が形成された吸引部を有し」と特定され、吸引部が集塵機構が有するものであることが明らかであるから、本件発明3は、法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていないとはいえない。
6 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立て理由について
(1) 特許異議申立て理由
本件発明3に対して申立てられた特許異議申立て理由は、「本件発明3は、その出願前(当審注:「優先日前」の誤記)に日本国内又は外国において、頒布された甲第1号証(当審注:本決定の甲1)に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない」(特許異議申立書13ページ2行ないし同ページ5行)というものである。
(2)甲号証の記載及び甲1発明
甲1の図2及び3は、「一般的な空冷放熱器の”A”型配置概念図である」(9ページ23行。なお、訳は、当審による。)から、これらの図に記載された「空冷放熱器フィン5」は、複数の放熱管に設けられたものであり、これらの放熱管は、互いに対向する表面と裏面とを有する面状に配置された放熱管群であると解され、このような解釈は、図3に空冷放熱器フィンが面状に記載されていることと整合する。ここで、甲1に記載された図1ないし3は、次のとおりである。
[図:0001416469000002.jpg]
また、パージノズル4は、ビーズと共に空気圧縮機1と連通し圧縮空気を噴射し、この噴射された圧縮空気によっても上記の空冷放熱器フィン5が設けられた放熱管の洗浄が行われているといえ、さらにこのパージノズル4が設けられたパージ台車24は、回収台車25と共に放熱管群に沿って設けられている縦方向レール23及び横方向レール(図2参照)を移動する(9ページ23行ないし10ページ6行参照)から、パージ台車24及び回収台車25は、放熱管群の表面及び裏面に沿って移動し、そのための移動機構を備えているといえることを考慮すると、甲1には、次の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。
・甲1発明
「複数の空冷放熱器フィン5が設けられた放熱管が配置され、互いに対向する表面と裏面を有する面状に配置された放熱管群を清掃するパージ台車24及び回収台車25であって、
前記裏面の側から前記放熱管群にビーズと共に圧縮空気を噴射することによって、前記放熱管の洗浄をするパージノズル4と、
前記パージノズル4を前記裏面に沿って移動させる移動機構と、
放熱管群から集塵する回収台車25とを備え、
前記回収台車25は、塵埃と共にビーズを回収する負圧回収ヘッド6が設けられ、
前記負圧回収ヘッド6は、前記放熱管群に対して前記パージノズル4の反対側に配置されているパージ台車24及び回収台車25。」
(3)対比、及び判断
本件発明3と甲1発明とを対比すると、甲1発明の「複数の空冷放熱器フィン5が設けられた放熱管が配置され」ることは、本件発明3の「複数の管が配列され」ることに相当する。また、甲1発明の「互いに対向する表面と裏面を有する面状に配置された放熱管群」は、本件発明3の「全体として、互いに対向する位置に配置された第1面と第2面を有する板状に形成された管群」に相当し、甲1発明の「放熱管群を清掃するパージ台車24及び回収台車25」は、本件発明3の「管群を清掃する清掃装置」に相当する。そうすると、甲1発明の「複数の空冷放熱器フィン5が設けられた放熱管が配置され、互いに対向する表面と裏面を有する面状に配置された放熱管群を清掃するパージ台車24及び回収台車25」は、本件発明3の「複数の管が配列され、全体として、互いに対向する位置に配置された第1面と第2面を有する板状に形成された管群を清掃する清掃装置」に相当する。
甲1発明の「裏面の側」、「放熱管群」は、それぞれ、本件発明3の「第1面の側」、「管群」に相当し、甲1発明において「ビーズと共に圧縮空気を噴射すること」は、少なくとも流体である圧縮空気を噴射しているから、甲1発明の「ビーズと共に圧縮空気を噴射すること」は、本件発明3の「流体を噴射すること」に相当する。さらに、甲1発明の「前記放熱管の洗浄をする」ことは、本件発明3の「前記管に付着した粉塵を除去する」ことに相当し、甲1発明の「パージノズル4」は、本件発明3の「噴射部」に相当する。そうすると、甲1発明の「前記裏面の側から前記放熱管群にビーズと共に圧縮空気を噴射することによって、前記放熱管の洗浄をするパージノズル4」は、本件発明3の「前記第1面の側から前記管群に流体を噴射することによって、前記管に付着した粉塵を除去する噴射部」に相当する。
甲1発明の「前記パージノズル4を前記裏面に沿って移動させる移動機構」は、本件発明3の「前記噴射部を前記第1面に沿って移動させる走行機構」に相当する。
甲1発明において、「塵埃と共にビーズを回収する」ことは、少なくとも塵埃を回収しているから、甲1発明の「塵埃と共にビーズを回収する」ことは、本件発明3の「飛散する粉塵を集塵する」ことに相当し、甲1発明「回収台車25」は、本件発明3の「集塵機構」に相当する。
甲1発明において、「塵埃と共にビーズを回収する負圧回収ヘッド6が設けられ」ることは、本件発明3の「粉塵を吸引する吸引口が形成された吸引部を有し」ていることに相当する。
そうすると、本件発明3と甲1発明とは、次の一致点と相違点を有する。
・一致点
「複数の管が配列され、全体として、互いに対向する位置に配置された第1面と第2面を有する板状に形成された管群を清掃する清掃装置であって、
前記第1面の側から前記管群に流体を噴射することによって、前記管に付着した粉塵を除去する噴射部と、
前記噴射部を前記第1面に沿って移動させる走行機構と、
飛散する粉塵を集塵する集塵機構とを備え、
前記集塵機構は、粉塵を吸引する吸引口が形成された吸引部を有している清掃装置」
・相違点
本件発明3は、「前記吸引部は、前記管群に対して前記噴射部と同じ側に配置されている」のに対し、甲1発明は、「前記負圧回収ヘッド6は、前記放熱管群に対して前記パージノズル4の反対側に配置されている」点
上記相違点について検討する。
甲1発明において負圧回収ヘッド6が「前記放熱管群に対して前記パージノズル4の反対側に配置されている」のは、パージノズル4が「ビーズと共に圧縮空気を噴射」し、このビーズと圧縮空気とにより、放熱管群を洗浄した後、パージノズル4の反対側に流れたビーズを塵埃と共に回収するためであると解される。
そして、甲1発明において、負圧回収ヘッド6を放熱管群に対してパージノズル4と同じ側に配置すると、放熱管群を洗浄した後のビーズを回収できなくなる、あるいは、回収率が低下することは、当業者にとって自明な事項である。
そうすると、甲1発明において、負圧回収ヘッド6を放熱管群に対してパージノズル4と同じ側に配置し、上記相違点に係る本件発明3の発明特定事項を得ることには、阻害要因があるといえ、当業者にとって容易な事項とはいえない。
したがって、本件発明3は、甲1発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
申立人は、特許異議申立書において、上記相違点の存在を認定した上で、「本件発明3の装置と、甲第1発明の装置とは、管群を清掃する装置という点で共通します。そのため、両者の技術分野は関連しています。また、管に付着した粉塵の清掃を簡単に行うことに着目すると、本件発明3と甲第1発明との間で課題は共通しています。さらに、管に流体を噴射して発生した粉塵を吸引する作用に着目すると、本件発明3と甲第1発明との間で作用は共通しています。したがって、吸引部と噴射部を同じ側に配置することに、明確な動機付けがあります。また、吸引部と噴射部を同じ側に配置することは、当業者の通常の創作能力の発揮に過ぎず、設計事項であると思料します。」と主張している(特許異議申立書12ページ11行ないし同ページ18行(行数に図面及び空白行を含まない。))。しかし、本件発明3と甲1発明との間に技術分野、課題、作用等が共通していたとしても、本件発明3で特定されている事項は、このことをもって、本件の優先日前において公知あるいは周知であった事項であるとはいえないから、本件の優先日前に当業者が甲1発明において、上記相違点に係る本件発明3の発明特定事項を得ることが容易であったとはいえない。また、甲1発明においては、上記のように、負圧回収ヘッド6が「前記放熱管群に対して前記パージノズル4の反対側に配置されている」のは、パージノズル4が「ビーズと共に圧縮空気を噴射」し、このビーズと圧縮空気とにより、放熱管群を洗浄した後、パージノズル4の反対側に流れたビーズを塵埃と共に回収するためであると解され、負圧回収ヘッド6とパージノズル4を同じ側に配置することが当業者の通常の創作能力の発揮に過ぎないとはいえず、申立人の意見は採用することができない。
7 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、請求項3に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項3に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
請求項1、2及び7に係る特許は、本件訂正請求により削除され、特許異議の申立てについて、請求項1、2及び7に係る申立てはその対象が存在しないものとなったため、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。
よって、結論のとおり決定する。
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2023-701160