特許異議申立
2023-701047
エッチング方法
- 審判番号
- 2023-701047
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2021-075098
- 登録番号
- 7320554
- 請求日
- 2023年10月02日
- 審決日
- 2024年11月29日
- 公報発行日
- 2025年03月28日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】株式会社アルバック
- 【権利者代理人】及川 周
- 【権利者代理人】勝俣 智夫
- 【異議申立人】山下 裕介
- 審判長/審判官
- 審判長 恩田 春香
- 審判官 棚田 一也
- 審判官 中野 浩昌
- 分類
- P1652.113-YAA(H01L) / P1652.121-YAA(H01L) / P1652.537-YAA(H01L)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第2項、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第2号、特許法第29条第1項、特許法第36条第6項第1号、特許法第120条の5第4項、特許法第120条の5第9項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7320554号発明「エッチング方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7320554号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~8〕について訂正することを認める。
特許第7320554号の請求項1~6に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7320554号の請求項1~8に係る特許(以下、「本件特許」という。)についての出願は、令和3年4月27日に出願され、令和5年7月26日にその特許権の設定登録がされ、同年8月3日に特許掲載公報が発行された。
本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。
令和 5年10月 2日 :特許異議申立人山下裕介(以下「申立人」という。)による特許異議の申立て
令和 6年 4月26日付け:取消理由通知書
同年 6月19日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の提出
同年 7月24日付け:訂正拒絶理由通知書
同年 8月 9日 :特許権者による手続補正書、意見書の提出
同年 9月30日 :申立人による意見書の提出
第2 本件訂正について
1 訂正拒絶理由の概要
当審が令和6年7月24日付けで特許権者に通知した訂正拒絶理由の概要は、以下のとおりである。
令和6年6月19日提出の訂正請求書による訂正のうち、訂正事項4による訂正は、訂正前の請求項1及び6を引用する請求項7を、訂正後の請求項1及び6を引用する請求項7とするとともに、訂正後の請求項9とするものであり、1の請求項を2の請求項に増項させるものであるから、訂正事項4による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書に掲げるいずれの事項を目的とするものでもない。
また、令和6年6月19日提出の訂正請求書による訂正のうち、訂正事項5による訂正は、訂正前の請求項2及び6を引用する請求項7を、訂正後の請求項2及び6を引用する請求項7とするとともに、訂正後の請求項10とするものであり、1の請求項を2の請求項に増項させるものであるから、訂正事項5による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書に掲げるいずれの事項を目的とするものでもない。
2 令和6年8月9日に提出された手続補正書による補正(以下「本件補正」という。)について
(1)補正の内容
本件補正は、令和6年6月19日提出の訂正請求書の「7 請求の理由」に記載された訂正事項4及び5を削除する補正である。
(2)補正の適否
本件補正は、上記(1)のとおり、訂正事項を削除するものであるから、本件訂正請求書の要旨を変更しないものである。
よって、本件補正を認める。
3 本件訂正の適否
(1)訂正の趣旨
上記2のとおり、本件補正は認められたから、本件補正により補正された令和6年6月19日提出の訂正請求書(以下、「本件訂正請求書」といい、本件訂正請求書による訂正の請求を「本件訂正請求」という。また、本件訂正請求による訂正を「本件訂正」という。)による請求の趣旨は、特許第7320554号の特許請求の範囲を、本訂正請求書に添付した、訂正特許請求の範囲のとおり、本件訂正後の請求項1~8について訂正することを求める、というものである。
(2)訂正の内容
本件訂正請求において特許権者が求める訂正の内容は、以下のとおりである。(下線は、訂正箇所を示すため当審にて付した。)
ア 訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に「被処理体をエッチングするエッチング方法であって、前記被処理体に樹脂からなるパターンを有するレジスト層を形成するレジストパターン形成工程と、レジストパターン形成された前記被処理体を工ッチングするエッチング工程と、前記レジストパターンにレジスト保護膜を形成するレジスト保護膜形成工程と、を有し、前記レジスト保護膜形成工程において、処理ガスには、SixOyαzを形成可能なガスを含み、複数回繰り返す前記エッチング工程に対して、所定の頻度で前記レジスト保護膜形成工程を挿入する、ことを特徴とするエッチング方法。」と記載されているのを、「被処理体をエッチングするエッチング方法であって、前記被処理体に樹脂からなるパターンを有するレジスト層を形成するレジストパターン形成工程と、レジストパターンが形成された前記被処理体をエッチングするエッチング工程と、前記レジストパターンにレジスト保護膜を形成するレジスト保護膜形成工程と、を有し、前記エッチング工程には、前記パターンの底部および前記レジスト層の表面を少なくとも覆うデポ層を形成するデポ工程と、前記デポ工程後に、前記被処理体に対して異方性プラズマエッチング処理をおこなうドライエッチング工程と、前記ドライエッチング工程後に、残存する前記デポ層を除去するアッシング処理を行うアッシング工程と、が含まれ、前記レジスト保護膜形成工程において、処理ガスには、SixOyFzを形成可能なガスを含み、複数回繰り返す前記エッチング工程に対して、前記デポ工程の前に、所定の頻度で前記レジスト保護膜形成工程を挿入する、ことを特徴とするエッチング方法。」に訂正する。(請求項1の記載を引用する請求項4、6~8も同様に訂正する。)
イ 訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2に「被処理体をエッチングするエッチング方法であって、前記被処理体に樹脂からなるパターンを有するレジスト層を形成するレジストパターン形成工程と、レジストパターン形成された前記被処理体をエッチングするエッチング工程と、前記レジストパターンにレジスト保護膜を形成するレジスト保護膜形成工程と、を有し、複数回繰り返す前記エッチング工程に対して、所定の頻度で前記レジスト保護膜形成工程を挿入し、前記レジスト保護膜形成工程は、前記エッチング工程による前記被処理体のエッチングが所定の状態となるまでおこなわない、ことを特徴とするエッチング方法。」と記載されているのを、「被処理体をエッチングするエッチング方法であって、前記被処理体に樹脂からなるパターンを有するレジスト層を形成するレジストパターン形成工程と、レジストパターンが形成された前記被処理体をエッチングするエッチング工程と、前記レジストパターンにレジスト保護膜を形成するレジスト保護膜形成工程と、を有し、前記エッチング工程には、前記パターンの底部および前記レジスト層の表面を少なくとも覆うデポ層を形成するデポ工程と、前記デポ工程後に、前記被処理体に対して異方性プラズマエッチング処理をおこなうドライエッチング工程と、前記ドライエッチング工程後に、残存する前記デポ層を除去するアッシング処理を行うアッシング工程と、が含まれ、複数回繰り返す前記エッチング工程に対して、前記デポ工程の前に、所定の頻度で前記レジスト保護膜形成工程を挿入し、前記レジスト保護膜形成工程は、前記エッチング工程による前記被処理体のエッチングが所定の状態となるまでおこなわない、ことを特徴とするエッチング方法。」に訂正する。(請求項2の記載を引用する請求項3~8も同様に訂正する。)
ウ 訂正事項3
特許請求の範囲の請求項3に「前記レジスト保護膜形成工程において、処理ガスには、SixOyαzを形成可能なガスを含む、ことを特徴とする請求項2に記載のエッチング方法。」と記載されているのを、「前記レジスト保護膜形成工程において、処理ガスには、SixOyFzを形成可能なガスを含む、ことを特徴とする請求項2に記載のエッチング方法。」に訂正する。(請求項3の記載を引用する請求項4、6~8も同様に訂正する。)
エ 一群の請求項について
本件訂正前の請求項1~8について、請求項4、6~8は、それぞれ請求項1を直接的又は間接的に引用しているものであって、訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。また、同じく、請求項3~8は、それぞれ請求項2を直接的又は間接的に引用しているものであって、訂正事項2によって記載が訂正される請求項2に連動して訂正されるものである。
したがって、訂正前の請求項1~8に対応する訂正後の請求項〔1~8〕は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である。
(3)訂正の適否
ア 訂正事項1~3の、訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否について、検討する。
(ア)訂正事項1について
a 訂正の目的の適否について
訂正事項1は、本件訂正前の請求項1に記載された、「レジストパターン形成された」を「レジストパターンが形成された」として、形成される対象を明瞭にし、次に、「エッチング工程」について、「前記エッチング工程には、前記パターンの底部および前記レジスト層の表面を少なくとも覆うデポ層を形成するデポ工程と、前記デポ工程後に、前記被処理体に対して異方性プラズマエッチング処理をおこなうドライエッチング工程と、前記ドライエッチング工程後に、残存する前記デポ層を除去するアッシング処理を行うアッシング工程と、が含まれ」ることを限定し、次に、「SixOyαz」を「SixOyFz」として、「α」に該当する元素を明確にし、さらに、「前記レジスト保護膜形成工程」について、「前記デポ工程の前に」挿入されることを限定するものである。
したがって、訂正事項1は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」及び「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものである。
b 新規事項の有無について
本件訂正後の請求項1の「レジストパターンが形成され」ることは、本件特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲及び図面(以下、「本件明細書等」という。)の段落0013に記載され、「前記エッチング工程には、前記パターンの底部および前記レジスト層の表面を少なくとも覆うデポ層を形成するデポ工程と、前記デポ工程後に、前記被処理体に対して異方性プラズマエッチング処理をおこなうドライエッチング工程と、前記ドライエッチング工程後に、残存する前記デポ層を除去するアッシング処理を行うアッシング工程と、が含まれ」ることは、本件明細書等の段落0019、段落0031~段落0033、段落0041に記載され、処理ガスに「SixOyFz」を形成可能なガスを含むことは、本件明細書等の段落0015に形成され、「レジスト保護膜形成工程」を「デポ工程の前に」挿入することは、本件明細書等の段落0118に記載されている。
したがって、訂正事項1は、本件明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入するものではない。
c 特許請求の範囲の拡張・変更の存否について
訂正事項1は、上記aのとおり、特許請求の範囲を減縮すると共に、明瞭でない記載を明瞭にするものであるから、特許請求の範囲を拡張・変更するものではない。
(イ) 訂正事項2について
a 訂正の目的の適否について
訂正事項2は、本件訂正前の請求項2に記載された、「レジストパターン形成された」を「レジストパターンが形成された」として、形成される対象を明瞭にし、また、「エッチング工程」について、「前記エッチング工程には、前記パターンの底部および前記レジスト層の表面を少なくとも覆うデポ層を形成するデポ工程と、前記デポ工程後に、前記被処理体に対して異方性プラズマエッチング処理をおこなうドライエッチング工程と、前記ドライエッチング工程後に、残存する前記デポ層を除去するアッシング処理を行うアッシング工程と、が含まれ」ることを限定し、さらに、「前記レジスト保護膜形成工程」について、「前記デポ工程の前に」挿入されることを限定するものである。
したがって、訂正事項2は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」及び「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものである。
b 新規事項の有無について
本件訂正後の請求項2の「レジストパターンが形成され」ることは、本件明細書等の段落0013に記載され、「前記エッチング工程には、前記パターンの底部および前記レジスト層の表面を少なくとも覆うデポ層を形成するデポ工程と、前記デポ工程後に、前記被処理体に対して異方性プラズマエッチング処理をおこなうドライエッチング工程と、前記ドライエッチング工程後に、残存する前記デポ層を除去するアッシング処理を行うアッシング工程と、が含まれ」ることは、本件明細書等の段落0019、段落0031~段落0033、段落0041に記載され、「レジスト保護膜形成工程」を「デポ工程の前に」挿入することは、本件明細書等の段落0118に記載されている。
したがって、訂正事項2は、本件明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入するものではない。
c 特許請求の範囲の拡張・変更の存否について
訂正事項2は、上記aのとおり、特許請求の範囲を減縮すると共に、明瞭でない記載を明瞭にするものであるから、特許請求の範囲を拡張・変更するものではない。
(ウ)訂正事項3について
a 訂正の目的の適否について
訂正事項3は、本件訂正前の請求項3に記載された「SixOyαz」を「SixOyFz」として、「α」に該当する元素を明確にするものである。
したがって、訂正事項3は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものである。
b 新規事項の有無について
本件訂正後の請求項3の、処理ガスに「SixOyFz」を形成可能なガスを含むことは、本件明細書等の段落0015に形成されている。
したがって、訂正事項3は、本件明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入するものではない。
c 特許請求の範囲の拡張・変更の存否について
訂正事項3は、上記aのとおり、明瞭でない記載を明瞭にするものであるから、特許請求の範囲を拡張・変更するものではない。
イ 独立特許要件について、検討する。
(ア)本件においては、本件訂正前の請求項1~6について特許異議の申立てがされているので、本件訂正前の請求項1~6に対応する、本件訂正後の請求項1~6に係る発明について、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第7項の独立特許要件は課されない。
(イ)一方、本件訂正前の請求項7及び8に対応する、本件訂正後の請求項7及び8に係る発明については、下記第4及び第5と同様の理由により、新規性及び進歩性の規定に違反するものではなく、かつ、サポート要件及び明確性要件を満たし、他の拒絶理由も存在しないため、独立特許要件を満たす。
(4)訂正の適否についてのまとめ
以上のとおりであるから、本件訂正請求は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同法同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定、並びに同法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第7項の規定に適合する。
したがって、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~8〕について訂正することを認める。
第3 本件発明
上記第2のとおり本件訂正請求は認められるから、本件特許の請求項1~8に係る発明(以下、「本件発明1」~「本件発明8」という。)は、それぞれ、訂正特許請求の範囲の請求項1~8に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「 【請求項1】
被処理体をエッチングするエッチング方法であって、
前記被処理体に樹脂からなるパターンを有するレジスト層を形成するレジストパターン形成工程と、
レジストパターンが形成された前記被処理体をエッチングするエッチング工程と、
前記レジストパターンにレジスト保護膜を形成するレジスト保護膜形成工程と、を有し、
前記エッチング工程には、
前記パターンの底部および前記レジスト層の表面を少なくとも覆うデポ層を形成するデポ工程と、
前記デポ工程後に、前記被処理体に対して異方性プラズマエッチング処理をおこなうドライエッチング工程と、
前記ドライエッチング工程後に、残存する前記デポ層を除去するアッシング処理を行うアッシング工程と、が含まれ、
前記レジスト保護膜形成工程において、処理ガスには、SixOyFzを形成可能なガスを含み、
複数回繰り返す前記エッチング工程に対して、前記デポ工程の前に、所定の頻度で前記レジスト保護膜形成工程を挿入する、
ことを特徴とするエッチング方法。
【請求項2】
被処理体をエッチングするエッチング方法であって、
前記被処理体に樹脂からなるパターンを有するレジスト層を形成するレジストパターン形成工程と、
レジストパターンが形成された前記被処理体をエッチングするエッチング工程と、
前記レジストパターンにレジスト保護膜を形成するレジスト保護膜形成工程と、を有し、
前記エッチング工程には、
前記パターンの底部および前記レジスト層の表面を少なくとも覆うデポ層を形成するデポ工程と、
前記デポ工程後に、前記被処理体に対して異方性プラズマエッチング処理をおこなうドライエッチング工程と、
前記ドライエッチング工程後に、残存する前記デポ層を除去するアッシング処理を行うアッシング工程と、が含まれ、
複数回繰り返す前記エッチング工程に対して、前記デポ工程の前に、所定の頻度で前記レジスト保護膜形成工程を挿入し、
前記レジスト保護膜形成工程は、前記エッチング工程による前記被処理体のエッチングが所定の状態となるまでおこなわない、
ことを特徴とするエッチング方法。
【請求項3】
前記レジスト保護膜形成工程において、処理ガスには、SixOyFzを形成可能なガスを含む、
ことを特徴とする請求項2に記載のエッチング方法。
【請求項4】
前記レジスト保護膜形成工程が、プラズマ成膜工程である、ことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか記載のエッチング方法。
【請求項5】
前記レジスト保護膜形成工程を、前記エッチング工程による前記被処理体が所定のアスペクト比となった後におこなう、
ことを特徴とする請求項2記載のエッチング方法。
【請求項6】
前記被処理体がシリコンから構成される、
ことを特徴とする請求項1から5のいずれか記載のエッチング方法。
【請求項7】
前記エッチング工程が、
前記レジストパターンに応じて、第1ガスを導入してシリコンの前記被処理体にデポ層を形成するデポ工程と、
前記レジストパターンに応じて、第2ガスを導入してシリコンの前記被処理体にドライエッチング処理をおこなうドライエッチング工程と、
第3ガスを導入してアッシング処理するアッシング工程と、を有し、
前記デポ工程において、前記第1ガスがフルオロカーボンを含み、
前記ドライエッチング工程において、前記第2ガスがフッ化硫黄およびフッ化シリコンを含み、
前記アッシング工程を、前記ドライエッチング工程の後におこなうとともに、
前記アッシング工程において、前記第3ガスが酸素ガスを含み、前記アッシング工程が、シリコンの前記被処理体表面に対して凹部パターンを形成する方向への異方性を有する異方性プラズマ処理により処理され、
前記異方性プラズマ処理が、シリコンの前記被処理体に対向配置される電極に対してシリコンの前記被処理体表面の中央部と周縁部とで周波数の異なる交流電圧を印加して誘導結合プラズマを発生させて処理する、
ことを特徴とする請求項6記載のエッチング方法。
【請求項8】
その内部の減圧が可能で、前記内部でシリコンの前記被処理体に対してプラズマ処理されるように構成されるチャンバと、
前記チャンバ内に配され、前記被処理体を載置する平板状の第一電極と、
前記第一電極に対して、第一の周波数λ1のバイアス電圧が印加されるように構成された第一の電源と、
前記チャンバ外に配置され、前記チャンバの上蓋を挟んで、前記第一電極と対向し、かつ、中央部に配置された螺旋状の第二電極、及び、前記第二電極より外周部に配置された螺旋状の第三電極と、
前記第二電極に対して、第二の周波数λ2の交流電圧を印加する第二の高周波電源と、
前記第三電極に対して、第三の周波数λ3の交流電圧を印加する第三の高周波電源と、
前記チャンバ内にフッ素を含有するプロセスガスを導入するガス導入手段と、を備え、
前記チャンバ内において、前記チャンバの上蓋側、かつ、前記第一電極と対向する位置に、スパッタリング用の固体ソースを有するプラズマ処理装置によって、前記異方性プラズマ処理をおこなう際に、
前記第二の周波数λ2と前記第三の周波数λ3が、λ2>λ3の関係にある場合は、
前記ガス導入手段が前記上蓋の中央部に配置されている、ことを特徴とする請求項7記載のエッチング方法。」
第4 令和6年4月26日付け取消理由通知書に記載した取消理由(以下、「取消理由」という。)について
1 取消理由の概要
取消理由1(新規性)請求項1~3及び5に係る発明は、申立人が提出した甲第1号証に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、請求項1~3及び5に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。
取消理由2(進歩性)請求項1~6に係る発明は、申立人が提出した甲第1号証に記載された発明に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1~6に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
取消理由3(サポート要件)本件特許は、請求項1及び3に記載された「SixOyαz」の範囲が不明であり、「α」が「F」以外の元素である場合に、発明の詳細な説明に記載された課題を解決できることを当業者が理解できるとはいえないから、請求項1及び3に係る発明の範囲まで、発明の詳細な説明に開示された内容を拡張ないし一般化できるとはいえず、本件発明1及び3は、発明の詳細な説明に記載したものとはいえない。請求項4及び6の記載は、請求項1又は3の記載を引用するところ、本件発明4及び6についても同様である。したがって、本件特許は、特許請求の範囲が不備のため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
取消理由4(明確性要件)本件特許は、請求項1及び3に記載された「SixOyαz」が不明であり、「SixOyαzを形成可能なガス」がいかなるガスか不明であるため、本件発明1及び3は明確ではない。請求項4及び6の記載は、請求項1又は3の記載を引用するところ、本件発明4及び6についても同様である。したがって、本件特許は、特許請求の範囲が不備のため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
<申立人が提出した甲号証>
甲第1号証:特開2008-060566号公報(以下、「甲1」という。)
甲第2号証:特表2012-507145号公報(以下、「甲2」という。)
甲第3号証:プラズマCVDの化学反応工学、白藤立、高温学会誌第37巻第6号(2011年11月)(以下、「甲3」という。)
甲第4号証:プラズマCVD窒化膜の組成制御技術、成田政隆、横山拓也、市川幸美、富士時報Vol.78 No.4 2005(以下、「甲4」という。)
2 取消理由1及び2についての当審の判断
(1)甲1について
ア 甲1には以下の記載がある(下線は当審にて付した。以下同じ。)
「【0016】
本発明のエッチング処理は、様々な実施形態により実現し得る。理解を容易にするため、図1は、本発明の一部の実施形態において使用し得る高レベルフローチャートである。マスクは、エッチング対象の層上に提供される(ステップ104)。図2Aは、基板上の窒化シリコン障壁層210の上にある、エッチング対象の誘電層208上に形成されたマスク204を示す。基板は、処理チャンバ内に配置される(ステップ106)。
・・・(中略)・・・
【0022】
保護シリコン含有層212は、図2Bに示したように、マスク204上に形成される(ステップ108)。保護シリコン含有層は、SiF4を含むシリコン前駆ガスを使用して形成するのが好適である。理論に縛られることなく、SiF4は、シリコン含有保護層として堆積させるシリコンと、シリコン層のプロファイルの何らかの成形をもたらすフッ素との両方を提供し、エッチング対象の特徴部の底部におけるエッチング停止を防止する。エッチングされる誘電体特徴部の底部よりも、マスキング材料及び特徴部側壁において優先的に多くの堆積量が形成されるように、堆積が非対称となるのが好適である。図2Bで確認できるように、マスク204の上部には、特徴部底部の誘電体表面よりも厚い保護シリコン層212が形成されている。好ましくは、図2Bに示したように、フッ素は、特徴部底部のシリコンを除去する。好適な実施形態において、堆積は、マスクの側壁に保護薄層を更に堆積させる化学蒸着(CVD)処理を使用して、エッチチャンバ内で原位置(in-situ)において実行される。好ましくは、堆積では、何らかのイオンエネルギを使用して、こうした堆積の選択性を可能にする。堆積の完了時には、堆積ガスの流れを停止させてよい。
・・・(中略)・・・
【0024】
シリコン含有保護層のCVD堆積に使用し得る堆積化学物質の例は、限定するわけではないが、SiH4、Si(CH3)4、SiH(CH3)3、SiH2(CH3)2、SiH3(CH3)、Si(C2H5)4、SiF4、及び他のSi(OC2H5)4等の有機シリコン化合物である。こうした化学物質は、4:1以下のハロゲン対シリコン比を有することが好適である。SiF4は、不燃性であり、容易に入手可能であるか、半導体製造工場に存在するため、最も好適な前駆物質である。SiF4から堆積用にシリコンを遊離させるために、水素(H2)等のフッ素スカベンジャを堆積プラズマに追加する。SiF4の堆積のため、適切な量の水素H2が必要となる。SiF4流量に対するH2の比は、0.5~5の範囲であり、好適な範囲は1.5~2.5である。CH4及び/又はCF4等の炭素含有前駆物質を更に追加し、膜組成を変更することが可能である。マスク及びボーイング予防のため、堆積は、マスク及び特徴部の側壁上で共形となる必要がある。同時に、エッチング停止を防止するために、堆積は、特徴部底部において抑制又は阻害する必要がある。加えて、堆積は、ウェーハ表面全体で均一にする必要がある。
【0025】
堆積させた保護層は、マスク上でアモルファスシリコン含有層(又は多形シリコン)となる。シリコン保護層は、何らかのF、C、及びH成分の存在により修飾される。Fの存在は、異なる材料表面での選択的活性をもたらし、一部の表面において堆積が優先的に発生し、他の表面では発生しないようになる。例えば、堆積は、エッチング誘電体特徴部の底部よりも、マスク表面と、エッチング特徴部の側壁とにおいて優先される。マスク表面での優先的堆積は、マスク保護をもたらし、エッチング選択性を高める。エッチング特徴部の側壁での優先堆積は、横方向のエッチングを抑制するため、エッチング特徴部のボーイングを最小化する。
【0026】
シリコン含有保護層の堆積は、様々な材料の様々なエッチング用途のために、堆積ガスの異なる組み合わせを含み得る、エッチング処理における独立したステップであり、可能な多段階ガス切り替え手順を使用して、マスキング特徴部を含むエッチング特徴部の周囲に、シリコン含有保護被覆が堆積により提供される。このステップを達成するために、コントローラ335は、第一の制御バルブ337により、堆積ガスソース312からのSiF4含有堆積ガスが処理チャンバ300へ入るのを可能にすると同時に、第二の制御バルブ339により、エッチャントガスソース314からのエッチングガスが処理チャンバに入るのを防止する。コントローラ335は、更に、第一及び第二のRFソース344、348により供給される電力と、排気ポンプ320とを制御する。コントローラは、ウェーハ領域の圧力と、裏面He冷却圧力と、基板上のバイアスと、様々な温度とを制御するのにも使用し得る。
【0027】
次に、マスク204を介して誘電層208がエッチングされ、図2Cに示したように、特徴部216が形成される。エッチングの用途は、一部として、誘電セルエッチング、誘電コンタクトエッチング(高アスペクト比コンタクト(HARC)又はダマシン)、導体トレンチエッチング(浅型又は深型)、自己整合コンタクトエッチング、ゲートマスク開口エッチング、コンタクトエッチング、誘電体経由エッチング、二重ダマシンビアエッチング、二重ダマシントレンチエッチング、導体ゲートエッチング、導体深トレンチエッチング、導体浅トレンチ分離エッチング、及びハードマスク開口を含む。好ましくは、エッチングでは高イオンエネルギを使用して、指向性エッチングを提供する。エッチングは、図示したように、保護シリコン含有層212の一部を除去してもよい。一部の表面では、保護層の全てを除去してもよい。本例では、マスク204において側壁を形成する保護層が除去されている。保護シリコン含有層の他の部分では、部分的にのみ除去してよい。本例では、マスク204の上面において、保護シリコン含有層212の一部のみが除去されている。別の実施形態では、保護層の別の部分を部分的にエッチングで除去するか、或いは完全にエッチングで除去してよい。このステップを達成するために、コントローラ335は、第一の制御バルブ337により、堆積ガスソース312からの処理チャンバ300への堆積ガスの流動を停止させると同時に、第二のバルブ339により、エッチャントガスソース314から処理チャンバへのエッチャントガスの流入を可能にする。コントローラ335は、第一及び第二のRFソース344、348により供給する電力を変更し、排気ポンプ320の設定を変更して、エッチングを調整し得る。コントローラは、更に、エッチング処理を調整するために、ウェーハ領域の圧力と、裏面圧力と、様々な温度とを変更するのに使用し得る。
【0028】
特徴部が少なくとも部分的にエッチングされた後、更にエッチングするかを判断する(ステップ116)。これは、設定されたレシピにより、或いは測定を行うことにより、実行し得る。更なるエッチングが望ましい場合、処理サイクルは、ステップ108に戻り、図2Dに示したように、追加シリコン保護層218をマスクに堆積させる。本例では、古い保護層の残留部分が、新たな保護シリコン層218の一部となる。このステップでも、コントローラ335は、第一の制御バルブ337を開いて堆積ガスを提供し、第二の制御バルブ339を閉じて、エッチングガスの流入を停止する。コントローラ335は、堆積を調整するために他のパラメータも変更し得る。
【0029】
特徴部は、その後、マスクを介して更にエッチングされ(ステップ112)、図2Eに示したように、更に深い特徴部216を提供する。このステップでも、コントローラ335は、第一の制御バルブ337を閉じて堆積ガスを停止し、第二の制御バルブ339を開いて、エッチングガスの流入を可能にする。コントローラ335は、エッチングを調整するために他のパラメータも変更し得る。
【0030】
好ましくは、この堆積及びエッチングステップを交互に提供するサイクル又はループは、一回より多く繰り返される。好ましくは、このサイクルは、三回より多く繰り返される。好ましくは、このサイクルは、少なくとも五回繰り返される。このサイクルは、数十回繰り返してもよい。このサイクルは、100回繰り返すことが望ましい場合がある
【0031】
別の実施形態では、マスクにシリコン保護層を堆積させるステップ108の前に、エッチングステップを追加してもよい。
【0032】
好ましくは、エッチングと保護層の堆積とは、同じチャンバで実行されるが、異なるチャンバで実行されてもよい。堆積とエッチングとを同じチャンバで行うことで、堆積とエッチングとを迅速に循環し得る。
【0033】
好ましくは、マスクは有機材料であり、有機材料は、フォトレジスト、ポリマ、又はアモルファスカーボンとして定義される。無機材料もマスクとして使用できる。誘電体エッチング用の無機材料マスクの例は、ポリシリコンマスク及び酸化金属マスクを含む。有機材料マスク用の材料の例は、限定するわけではないが、深紫外線フォトレジスト、193nmフォトレジスト、157nmフォトレジスト、EUVフォトレジスト、電子ビームフォトレジスト、及びX線フォトレジスト等の新世代フォトレジストと、アモルファスカーボン等の他の非リソグラフィマスクとを含む。旧世代フォトレジストポリマ材料は、必要な高エッチング耐性、即ち、エッチングガス混合物に対する化学的不活性を提供するために、C-C二重結合、更にはC-C三重結合等の不飽和C-C結合を含むように設計される。こうした結合は強く、切断に高い活性エネルギを必要とするため、比較的低いイオンエネルギにおいて、旧世代フォトレジストは、エッチングガス混合物に対して著しく低いエッチング速度を示す可能性がある。リソグラフィ露光波長において、こうした不飽和結合は吸収を行うため、193nm及び157nmを含む新世代フォトレジストは、こうした不飽和結合を含まず、フォトレジストエッチング耐性の大きな低減をもたらす。エッチング段階中にシリコン含有保護被覆をフォトレジスト上に提供することで、高いイオン衝撃エネルギにおいても、フォトレジストのエッチング耐性は大きく改善される。本発明がマスクのエッチング耐性を改善し得る高イオン衝撃エネルギは、50~2,000eVとなり得る。更に好ましくは、イオン衝撃エネルギは、200~1,500eVとなり得る。最も好ましくは、イオン衝撃エネルギは、500~1,000eVとなり得る。
・・・(中略)・・・
【0036】
保護シリコン含有層618は、図6Cに示したように堆積させる(ステップ512)。好適な実施形態において、保護シリコン層618は、SiF4を含む堆積ガスを提供することで形成される。プラズマは、堆積ガスから形成される。プラズマは、保護シリコン含有層618を堆積させる。以前の実施形態で説明したように、プラズマパラメータは、シリコンがマスクの上面に選択的に堆積し、マスク上面に最も厚い層が形成されるように調整し得る。プラズマは、より薄い層が特徴部の側壁に形成されるように、より低い選択性で特徴部の側壁に堆積させる。プラズマは、特徴部の底部に最も低い選択性で堆積させる。上記のように、SiF4と適切なプラズマパラメータとの使用により、図示したように、特徴部616の底部にシリコンが堆積しない状態にできると考えられる。特徴部のエッチングは、その後、図6Dに示したように完了させる(ステップ516)。マスクは、剥離させる(ステップ520)。
・・・(中略)・・・
【0040】
・・・(中略)・・・エッチング対象層は、誘電層(酸化シリコン等)、導電層(金属及びシリコン又は他の種類の半導体等)、又はハードマスク層(窒化シリコン及び酸窒化シリコン)にしてよい。導体層をエッチングするために、エッチングステップにおいて、塩素、フッ素、又は臭素等のハロゲンを使用してよい。」
「
[図:0001420298000001.jpg]
」
「
[図:0001420298000002.jpg]
[図:0001420298000003.jpg]
」
「
[図:0001420298000004.jpg]
」
「
[図:0001420298000005.jpg]
」
イ 上記アより、甲1について、以下のことがいえる。
(ア)段落0016には、「本発明のエッチング処理」と記載され、さらに、「実施形態において」「マスクは、エッチング対象の層上に提供される(ステップ104)。図2Aは、基板上の窒化シリコン障壁層210の上にある、エッチング対象の誘電層208上に形成されたマスク204を示す。」と記載され、図2Aから、マスク204がパターンを有することが見て取れる。
よって、エッチング処理において、ステップ104で、パターンを有するマスク204が、基板上の窒化シリコン障壁層210の上にあるエッチング対象の誘電層208上に提供される。
(イ)段落0016には、「基板は、処理チャンバ内に配置される(ステップ106)。」と記載されている。
よって、ステップ106で、基板が、処理チャンバ内に配置される。
(ウ)段落0022には、「保護シリコン含有層212は、図2Bに示したように、マスク204上に形成される(ステップ108)。」と記載され、図2Bから、保護シリコン含有層212が、マスク204の上部及び側壁に形成されることが見て取れる。
よって、ステップ108で、保護シリコン含有層212が、マスク204の上部及び側壁に形成される。
(エ)段落0024には、「シリコン含有保護層のCVD堆積に使用し得る堆積化学物質の例は」「Si(OC2H5)4等の有機シリコン化合物である。」と記載され、段落0025には、「シリコン保護層は、何らかのF、C、及びH成分の存在により修飾される。」と記載されている。
そして、「シリコン含有保護層」が上記(ウ)の「保護シリコン含有層212」であることは明らかであるから、保護シリコン含有層212のCVD堆積に使用し得る堆積化学物質の例はSi(OC2H5)4であり、保護シリコン含有層212は、何らかのF、C、及びH成分の存在により修飾されるといえる。
(オ)段落0027には、「次に、マスク204を介して誘電層208がエッチングされ、図2Cに示したように、特徴部216が形成される。」及び「マスク204の上面において、保護シリコン含有層212の一部のみが除去されている。」と記載されている。また、図1には、「マスクを介して特徴部をエッチング112」と記載されている。
よって、ステップ112で、マスク204を介して誘電層208がエッチングされて特徴部216が形成され、その際、マスク204の上面において、保護シリコン含有層212の一部のみが除去されるといえる。
(カ)段落0028には、「更にエッチングするかを判断する(ステップ116)。」、「更なるエッチングが望ましい場合、処理サイクルは、ステップ108に戻り、図2Dに示したように、追加シリコン保護層218をマスクに堆積させる。」と記載され、図2Dから、追加シリコン保護層218がマスク204の上部及び側壁並びに特徴部側壁に堆積されることが見て取れる。
そして、「シリコン保護層」は、ステップ108に戻って堆積されるから、上記(ウ)の「保護シリコン含有層」であることは明らかである。
よって、ステップ116で、更にエッチングするかを判断し、更なるエッチングが望ましい場合、処理サイクルは、ステップ108に戻り、追加の保護シリコン含有層218をマスク204の上部及び側壁並びに特徴部側壁に堆積させる。
(キ)段落0029には、「特徴部は、その後、マスクを介して更にエッチングされ」「更に深い特徴部216を提供する。」と記載されている。
よって、特徴部は、その後、マスク204を介して更にエッチングされて更に深い特徴部216が提供される。
(ク)段落0030には、「好ましくは、この堆積及びエッチングステップを交互に提供するサイクル又はループは、一回より多く繰り返される。」と記載され、段落0031には、「マスクにシリコン保護層を堆積させるステップ108の前に、エッチングステップを追加してもよい。」と記載されている。
よって、好ましくは、この堆積及びエッチングステップを交互に提供するサイクル又はループは、一回より多く繰り返され、マスクにシリコン保護層を堆積させるステップ108の前に、エッチングステップを追加してもよい。
(ケ)段落0033には、「マスクは有機材料であり、有機材料は、フォトレジスト」「として定義される。」及び「エッチング段階中にシリコン含有保護被覆をフォトレジスト上に提供することで」「フォトレジストのエッチング耐性は大きく改善される。」と記載されている。
よって、マスクはフォトレジストであり、エッチング段階中に、保護シリコン含有層をマスク上に提供することで、フォトレジストのエッチング耐性が大きく改善される。
(コ)甲1発明
上記(ア)~(ケ)より、甲1には、図1、2に示される実施の形態について、次の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されている。
<甲1発明>
「エッチング処理において、ステップ104で、パターンを有するマスク204が、基板上の窒化シリコン障壁層210の上にあるエッチング対象の誘電層208上に提供され、
ステップ106で、基板が、処理チャンバ内に配置され、
ステップ108で、保護シリコン含有層212が、マスク204の上部及び側壁に形成され、
保護シリコン含有層212のCVD堆積に使用し得る堆積化学物質の例はSi(OC2H5)4であり、保護シリコン含有層212は、何らかのF、C、及びH成分の存在により修飾され、
ステップ112で、マスク204を介して誘電層208がエッチングされて特徴部216が形成され、その際、マスク204の上面において、保護シリコン含有層212の一部のみが除去され、
ステップ116で、更にエッチングするかを判断し、更なるエッチングが望ましい場合、処理サイクルは、ステップ108に戻り、追加の保護シリコン含有層218をマスク204の上部及び側壁並びに特徴部側壁に堆積させ、
特徴部は、その後、マスク204を介して更にエッチングされて更に深い特徴部216が提供され、
好ましくは、この堆積及びエッチングステップを交互に提供するサイクル又はループは、一回より多く繰り返され、マスク204に保護シリコン含有層212を堆積させるステップ108の前に、エッチングステップを追加してもよく、
マスク204はフォトレジストであり、エッチング段階中に、保護シリコン含有層212をマスク204上に提供することで、フォトレジストのエッチング耐性が大きく改善される、
エッチング処理。」
(2)本件発明1について
ア 対比
本件発明1と甲1発明とを対比する。
(ア)甲1発明の「誘電層208」は、「エッチング処理」において「エッチング対象」となるものであるから、「被処理体をエッチングするエッチング方法」である本件発明1における「被処理体」に相当する。
(イ)甲1発明の「マスク204」は、「パターンを有」し、「フォトレジストとして定義される有機材料」であるから、本件発明1の「樹脂からなるパターンを有するレジスト層」に相当する。また、甲1発明の「ステップ104で、パターンを有するマスク204が、基板上の窒化シリコン障壁層210の上にあるエッチング対象の誘電層208上に提供され」ることは、本件発明1の「前記被処理体に樹脂からなるパターンを有するレジスト層を形成するレジストパターン形成工程」に相当する。
(ウ)甲1発明の「ステップ112で、マスク204を介して誘電層208がエッチングされて特徴部216が形成され」ることは、本件発明1の「レジストパターンが形成された前記被処理体をエッチングするエッチング工程」に相当する。
(エ)甲1発明において、「マスク204はフォトレジストであり、エッチング段階中に、保護シリコン含有層212をマスク204上に提供することで、フォトレジストのエッチング耐性が大きく改善される」から、甲1発明の「保護シリコン含有層212」は、本件発明1の「レジスト保護膜」に相当する。そして、甲1発明の「ステップ108で、保護シリコン含有層212が、マスク204の上部及び側壁に形成され」ること及び「ステップ108に戻り、追加の保護シリコン含有層218をマスク204の上部及び側壁並びに特徴部側壁に堆積させ」ることは、いずれも、本件発明1の「前記レジストパターンにレジスト保護膜を形成するレジスト保護膜形成工程」に相当する。
(オ)甲1発明の「更なるエッチングが望ましい場合、処理サイクルは、ステップ108に戻り、追加の保護シリコン含有層218をマスク204の上部及び側壁並びに特徴部側壁に堆積させ、特徴部は、その後、マスク204を介して更にエッチングされて更に深い特徴部216が提供され、好ましくは、この堆積及びエッチングステップを交互に提供するサイクル又はループは、一回より多く繰り返され」ることは、本件発明1の「複数回繰り返す前記エッチング工程に対して」「所定の頻度で前記レジスト保護膜形成工程を挿入する」ことに相当する。
(カ)甲1発明の「エッチング処理」は、「マスク204を介して誘電層208がエッチングされて特徴部216が形成され」、「マスク204を介して更にエッチングされて更に深い特徴部216が提供され」ることを含むものであるから、本件発明1の「エッチング方法」に相当する。
(キ)上記(ア)~(カ)によれば、本件発明1と甲1発明とは、以下の点で一致し、相違する。
<一致点>
「被処理体をエッチングするエッチング方法であって、
前記被処理体に樹脂からなるパターンを有するレジスト層を形成するレジストパターン形成工程と、
レジストパターンが形成された前記被処理体をエッチングするエッチング工程と、
前記レジストパターンにレジスト保護膜を形成するレジスト保護膜形成工程と、を有し、
複数回繰り返す前記エッチング工程に対して、所定の頻度で前記レジスト保護膜形成工程を挿入する、
エッチング方法。」
<相違点1>
本件発明1において「前記エッチング工程には、前記パターンの底部および前記レジスト層の表面を少なくとも覆うデポ層を形成するデポ工程と、前記デポ工程後に、前記被処理体に対して異方性プラズマエッチング処理をおこなうドライエッチング工程と、前記ドライエッチング工程後に、残存する前記デポ層を除去するアッシング処理を行うアッシング工程と、が含まれ」るのに対し、甲1発明は、「ステップ112」にはそのような構成が含まれない点。
<相違点2>
本件発明1において「前記レジスト保護膜形成工程において、処理ガスには、SixOyFzを形成可能なガスを含」むのに対し、甲1発明は、「ステップ108」においてそのような構成を有さない点。
<相違点3>
「レジスト保護膜形成工程を挿入する」ことを、本件発明1では「前記デポ工程」の前に行うのに対し、甲1発明において「追加の保護シリコン含有層218」を「堆積させ」ることは、そのようなものではない点。
イ 相違点についての判断
相違点1について検討する。
(ア)相違点1に係る本件発明1の構成は、「前記エッチング工程」には、「デポ層を形成するデポ工程」が含まれるものであるところ、甲1発明は、「ステップ112」の「エッチング」の前に、本件発明1の「レジスト層」及び「レジスト保護膜」に相当する「マスク204」及び「保護シリコン含有層」以外の層を形成するものではないから、相違点1は、実質的なものである。
(イ)また、甲1~甲4のいずれにも、相違点1に係る本件発明1の構成に関連する記載はなく、甲2~甲4に記載された事項を甲1発明に適用しても、相違点1に係る本件発明1の構成とすることはできない。
(ウ)a 申立人は、令和6年9月30日提出の意見書において、請求項1及び2に記載された「前記エッチング工程には、前記パターンの底部および前記レジスト層の表面を少なくとも覆うデポ層を形成するデポ工程と、前記デポ工程後に、前記被処理体に対して異方性プラズマエッチング処理をおこなうドライエッチング工程と、前記ドライエッチング工程後に、残存する前記デポ層を除去するアッシング処理を行うアッシング工程と、が含まれ」ることは、意見書に添付して提出した甲第5号証(特許第4578893号公報、以下「甲5」という。)及び甲第6号証(再表2017/217132号公報、以下「甲6」という。)に記載されているように周知技術であり、甲1発明において当該周知技術を適用することは、当業者が容易になし得たことである旨主張している。
b 上記主張について検討する。甲5には、段落0005に「エッチング溝の側壁部を保護するために堆積させる保護膜」と記載され、段落0018に「エッチング側面の保護膜破壊を防止して、高精度なエッチング形状を得ることができる。」と記載されているから、「保護膜」は溝の側壁部を保護するものである。
また、甲6には、段落0011に「半導体基板の第1面の側から行う異方性エッチングで前記半導体基板に貫通孔を形成する第1工程」及び「前記貫通孔の開口縁部を含む前記第1面に炭素含有薄膜をプラズマ成膜する第3工程」と記載され、段落0037には、「半導体基板10の裏面10bに形成された絶縁膜30Aを保護する炭素含有薄膜50を成膜する(図4(e))。」と記載されているから、「炭素含有薄膜50」は、貫通孔の開口縁部を含む面に形成された絶縁膜を保護するものである。
一方、甲1発明は、「パターンを有するマスク204が、基板上の窒化シリコン障壁層210の上にあるエッチング対象の誘電層208上に提供され」、「マスク204を介して誘電層208がエッチングされて特徴部216が形成され」、「保護シリコン含有層212が、マスク204の上部及び側壁に形成され」、「追加の保護シリコン含有層218をマスク204の上部及び側壁並びに特徴部側壁に堆積させ」るものであるから、「保護シリコン含有層」は、基板上のマスクの上部及び側壁と、特徴部側壁に堆積されるものである。
そうすると、甲5及び甲6に記載された、溝の側壁部、又は貫通孔の開口縁部を含む面に形成された絶縁膜を形成する技術が周知であったとしても、甲1発明において、特徴部側壁及び基板上のマスクには上記「保護シリコン含有層」が堆積されるから、甲1発明において「保護シリコン含有層」に加えて、さらに、甲5及び甲6に記載された「保護膜」ないし「炭素含有薄膜層50」を形成する動機は当業者にはない。
よって、甲5及び甲6の記載を参酌しても、甲1発明を、上記相違点1に係る本件発明1の構成を備えたものとすることはできないから、aの主張を採用することはできない。
ウ 小括
したがって、相違点2及び3について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1発明ではなく、また、甲1発明に基づき、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(3)本件発明2について
ア 対比
本件発明2と甲1発明とを対比すると、上記(2)ア(ア)~(カ)と同様のことがいえるから、両者は以下の点で一致し、相違する。
<一致点>
「被処理体をエッチングするエッチング方法であって、
前記被処理体に樹脂からなるパターンを有するレジスト層を形成するレジストパターン形成工程と、
レジストパターンが形成された前記被処理体をエッチングするエッチング工程と、
前記レジストパターンにレジスト保護膜を形成するレジスト保護膜形成工程と、を有し、
複数回繰り返す前記エッチング工程に対して、所定の頻度で前記レジスト保護膜形成工程を挿入する、
ことを特徴とするエッチング方法。」
<相違点4>
本件発明2において「前記エッチング工程には、前記パターンの底部および前記レジスト層の表面を少なくとも覆うデポ層を形成するデポ工程と、前記デポ工程後に、前記被処理体に対して異方性プラズマエッチング処理をおこなうドライエッチング工程と、前記ドライエッチング工程後に、残存する前記デポ層を除去するアッシング処理を行うアッシング工程と、が含まれ」るのに対し、甲1発明は、「ステップ112」には、そのような構成が含まれない点。
<相違点5>
「レジスト保護膜形成工程を挿入する」ことについて、本件発明2においては、「前記デポ工程」の前に行うのに対し、甲1発明において「追加の保護シリコン含有層218」を「堆積させ」ることは、そのようなものではない点。
<相違点6>
「前記レジスト保護膜形成工程」について、本件発明2においては、「前記エッチング工程による前記被処理体のエッチングが所定の状態となるまでおこなわない」のに対し、甲1発明は、「保護シリコン含有層212」の形成について、そのような特定はなされていない点。
イ 相違点についての検討
相違点4について検討する。
上記(2)イにおける検討と同様の理由により、相違点4に係る本件発明2の構成は実質的なものであり、また、甲1発明を、相違点4に係る本件発明2の構成を備えたものとすることは、当業者が容易になし得たことではない。
ウ 小括
したがって、相違点5及び6について検討するまでもなく、本件発明2は、甲1発明ではなく、また、甲1発明に基づき、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(4)本件発明3~6について
請求項3~6の記載は、請求項1又は2の記載を引用し、本件発明3~6は、本件発明1又は2の構成をすべて備えるものであるから、少なくとも相違点1又は4の点で、甲1発明と相違するものである。
そうすると、上記(2)又は(3)と同様の理由により、本件発明3及び5は、甲1発明ではなく、また、本件発明3~6は、甲1発明に基づき、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(5)取消理由1及び2についてのまとめ
以上のとおりであるから、本件発明1~3及び5は、特許法第29条第1項第3号に該当するものではなく、請求項1~3及び5に係る特許は、同法同条同項の規定に違反してされたものであるとはいえず、また、請求項1~6に係る特許は、同法同条第2項の規定に違反してされたものであるとはいえない。
したがって、取消理由1(新規性)及び取消理由2(進歩性)は解消した。
3 取消理由3及び4について
本件訂正前の請求項1及び3に記載された「SixOyαz」は、「α」に該当する元素が特定されていなかったところ、本件訂正により「SixOyFz」に訂正され、発明の詳細な説明に記載した課題を解決できることを当業者が理解できるようになり、また、「SixOyFzを形成可能なガス」は、形成される材料が具体的にSixOyFzに特定されるから、明確である。
よって、本件発明1、3、4及び6は、発明の詳細な説明に記載したものであり、明確であるから、本件の請求項1、3、4及び6に係る特許は、特許法第36条第6項第1号及び第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるとはいない。
したがって、取消理由3(サポート要件)及び取消理由4(明確性要件)は解消した。
第5 取消理由で採用しなかった申立理由について
1 申立理由の概要
取消理由で採用しなかった特許異議の申立て理由(以下、「申立理由」という。)は以下のとおりである。
申立理由1(新規性)請求項4及び6に係る発明は、申立人が提出した甲第1号証に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、請求項4及び6に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。
申立理由2(進歩性)請求項1~6に係る発明は、申立人が提出した甲2に記載された発明と、甲3及び4に記載された周知技術とに基いて、本件特許出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1~6に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
申立理由3(明確性要件)本件特許は、特許請求の範囲が不備のため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
2 申立理由1についての当審の判断
上記第4の2(4)において検討したとおり、請求項4及び6の記載は、請求項1又は2の記載を引用し、本件発明4及び6は、本件発明1又は2の構成をすべて備えるものであるから、少なくとも相違点1又は4の点で、甲1発明と相違するものである。
そうすると、上記第4の2(2)又は(3)と同様の理由により、本件発明4及び6は、甲1発明ではない。
3 申立理由2についての当審の判断
(1)甲2について
ア 甲2には以下の記載がある。
「【請求項1】
シリコン層が中に置かれたエッチングチャンバを使用して、前記シリコン層の上に形成されたパターン化マスクを通して前記シリコン層をエッチングする方法であって、
前記シリコン層内に特徴をエッチングするためのフッ素(F)含有エッチングガス、及び、前記特徴の側壁上にシリコン含有蒸着層を形成するためのシリコン(Si)含有化学気相蒸着ガスを提供することと、
前記エッチングガス及び前記化学気相蒸着ガスからプラズマを生成することと、
バイアス電圧を印加することと、
前記エッチングされている特徴の前記側壁上にシリコン含有パッシベーション層を蒸着させることであって、前記パッシベーション層中のシリコンは、主として前記化学気相蒸着ガスに由来する、ことと、
前記エッチングガス及び前記化学気相蒸着ガスを停止させることと、
を備える方法。」
「【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載の方法であって、
前記シリコン含有パッシベーション層を蒸着させることは、x及びyをともにゼロでないとして、SiOxHyを含有するパッシベーション層を蒸着させることを含む、方法。」
「【請求項18】
請求項1~6及び14~17のいずれか一項に記載の方法であって、
前記シリコン層をエッチングする方法は、交互する蒸着ステップとエッチングステップとを含むガス調整プロセスにおける蒸着ステップにおいて実施される、方法。」
「【0019】
本発明の一実施形態にしたがうと、化学気相蒸着によって特徴の側壁上に材料を直接的に蒸着させることによって、シリコンエッチング用のパッシベーション層が形成される。このような蒸着は、特徴側壁の酸化又は表面反応を必要としないので、従来のパッシベーションよりも、時定数が大幅に小さく、そしてそれゆえにパッシベーション層が大幅に速く形成されると考えられる。本発明の一実施形態にしたがうと、化学気相蒸着を使用して、シリコン酸化物、シリコン窒化物、シリコン炭化物、シリコン酸窒化物などのシリコン含有誘電体層が蒸着される。表面成長ではなく化学気相蒸着によるパッシベーション層の形成は、より耐性に優れたパッシベーション層を提供すると考えられる。また、化学気相蒸着プロセスは、パッシベーション層のプロファイルを制御にあたり、より柔軟であるとも考えられる。
【0020】
理解を促すために、図1は、発明の一実施形態で使用されるプロセスのハイレベルなフローチャートであり、ここで、シリコン層は、その上に形成されたパターン化マスクを通してエッチングチャンバを使用してエッチングされる。シリコン層を中に置かれたエッチングチャンバ内へ、フッ素(F)含有ガスを含むエッチングガス(フッ素含有エッチングガス)と、シリコン(Si)含有ガスを含む化学気相蒸着ガス(シリコン含有化学気相蒸着ガス)とが提供される(ステップ102)。・・・(中略)・・・
【0021】
シリコン含有化学気相蒸着ガス(シリコン含有ガス)は、特徴の側壁上にシリコン含有蒸着層を形成するために提供される。例えば、シリコン含有化学気相蒸着ガスは、シラン(例えばSiH4、より一般的にはSinH2n+2)、シリケート、又はシロキサン(Rを水素原子又は炭化水素基としてR2SiO)の蒸気を含んでよい。好ましくは、化学気相蒸着ガスは、テトラエチルオルトシリケート(TEOS)蒸気又はオクタメチルシクロテトラシロキサン(OMCTS)蒸気を含む。化学気相蒸着ガスは、また、(1つ又は複数の)添加ガスを含んでもよい。例えば、化学蒸着ガスは、酸化物を蒸着させるためにシラン及び酸素を、又はシリコン窒化物及びシリコン酸窒化物を蒸着させるためにシラン若しくはシリケート若しくはシロキサン及びアンモニアを含んでよい。
【0022】
化学気相蒸着ガスは、エッチングチャンバに導入される前に、フッ素含有エッチングガスと混合されてよい。或いは、エッチングガス及び化学気相蒸着ガスは、別々のガス入口からエッチングチャンバに導入されてよく、そのなかで、プラズマが生成される。
【0023】
再び図1を参照すると、エッチングガス及び化学気相蒸着ガスからプラズマが生成される(ステップ104)。異方性エッチングを促進するために(すなわち、専ら水平面上のみをエッチングするために)、バイアス電圧が印加され(ステップ106)、プラズマを使用してシリコン層内に特徴がエッチングされる(ステップ108)。同時に、エッチングされている特徴の側壁上に、シリコン含有パッシベーション層(誘電体層)が蒸着される(ステップ110)。このようにして形成されたパッシベーション層は、x及びyをともにゼロでないとして、SiOxCyを含んでいる。・・・(中略)・・・
【0024】
理解を促すために、図2は、特徴をエッチングされているシリコン層200の断面の一例を概略的に示している。シリコン層200は、シリコンウエハであってよい。シリコン材料は、結晶質シリコン、ポリシリコン、又は非晶質シリコンであってよい。シリコン材料は、ドープシリコン又は歪みシリコンであってもよい。シリコン層200の上に、シリコン材料上の特徴204を定めたパターン化マスク202が提供される。マスク202は、フォトレジスト(PR)マスク又はハードマスク(酸化物)であってよい。マスク202は、前のステップでエッチングされたであろう導電層及び/又は誘電体層などのその他の層もマスクの下に含んでよい(不図示)。・・・(中略)・・・
【0025】
エッチングプロセス中は、特徴204の側壁206上及び底部208上においてパッシベーションが発生する。バイアス電圧が印加されるので(図1のステップ106)、荷電粒子(イオン)は、特徴の底部208には衝突するが、側壁206には全く又はほとんど衝突しない。底部に衝突するイオンは、化学反応を促してエッチングをもたらす。したがって、側壁上では、パッシベーション層210の蒸着が、エッチングガスからのエッチャント(F)ラジカルから側壁206を保護し続ける。その一方で、特徴の底部208では、パッシベーション層210は、蒸着されると同時にイオン支援エッチングによって除去されるので、露出されたシリコンは、ラジカルによってエッチングされる。パッシベーション層は、従来のシリコン材料の表面酸化よりも大幅に速く形成されるので、エッチングプロセスは、より効率的に実施することができると考えられる。」
「
[図:0001420298000006.jpg]
」
イ 上記アによれば、甲2には次の発明(以下、「甲2発明」という。)が記載されている。
<甲2発明>
「シリコン層が中に置かれたエッチングチャンバを使用して、前記シリコン層の上に形成されたパターン化マスクを通して前記シリコン層をエッチングする方法であって、
前記シリコン層内に特徴をエッチングするためのフッ素(F)含有エッチングガス、及び、前記特徴の側壁上にシリコン含有蒸着層を形成するためのシリコン(Si)含有化学気相蒸着ガスを提供することと、
前記エッチングガス及び前記化学気相蒸着ガスからプラズマを生成することと、
異方性エッチングを促進するために、バイアス電圧を印加することと、
プラズマを使用して前記シリコン層内に前記特徴をエッチングすることと、
同時に、前記エッチングされている特徴の前記側壁上にシリコン含有パッシベーション層を蒸着させることであって、前記パッシベーション層中のシリコンは、主として前記化学気相蒸着ガスに由来する、ことと、
前記エッチングガス及び前記化学気相蒸着ガスを停止させることと、
を備え、
前記シリコン含有パッシベーション層を蒸着させることは、x及びyをともにゼロでないとして、SiOxHyを含有するパッシベーション層を蒸着させることを含み、
側壁上では、パッシベーション層の蒸着が、エッチングガスからのエッチャント(F)ラジカルから側壁を保護し続け、
前記シリコン層をエッチングする方法は、交互する蒸着ステップとエッチングステップとを含むガス調整プロセスにおける蒸着ステップにおいて実施され、
前記パターン化マスクは、フォトレジスト(PR)マスクである、
方法。」
(2)本件発明1について
ア 対比
本件発明1と甲2発明とを対比する。
(ア)甲2発明は「前記シリコン層をエッチングする」ものであるから、甲2発明の「シリコン層」は、エッチングにより処理されるといえ、本件発明1の「被処理体」に相当する。そして、甲2発明の「前記シリコン層をエッチングする方法」は、本件発明1の「被処理体をエッチングするエッチング方法」に相当する。
(イ)甲2発明の「フォトレジスト(PR)マスク」である「パターン化マスク」が樹脂からなることは、技術常識から明らかである。そうすると、甲2発明の「パターン化マスクを通して前記シリコン層をエッチング」し、「マスクは、フォトレジスト(PR)マスクであってよ」く、「プラズマを使用して前記シリコン層内に前記特徴をエッチングする」ことは、本件発明1の「前記被処理体に樹脂からなるパターンを有するレジスト層を形成するレジストパターン形成工程と、レジストパターンが形成された前記被処理体をエッチングするエッチング工程と」「を有」することに相当する。
(ウ)上記(ア)~(イ)によれば、本件発明1と甲2発明とは、以下の点で一致し、相違する。
<一致点>
「被処理体をエッチングするエッチング方法であって、
前記被処理体に樹脂からなるパターンを有するレジスト層を形成するレジストパターン形成工程と、
レジストパターンが形成された前記被処理体をエッチングするエッチング工程と、
を有するエッチング方法。」
<相違点7>
本件発明1は、「前記レジストパターンにレジスト保護膜を形成するレジスト保護膜形成工程」を有し、「前記レジスト保護膜形成工程において、処理ガスには、SixOyFzを形成可能なガスを含」むのに対し、甲2発明は、「フォトレジスト(PR)マスク」である「パターン化マスク」について、そのような特定はなされていない点。
<相違点8>
本件発明1において「前記エッチング工程には、前記パターンの底部および前記レジスト層の表面を少なくとも覆うデポ層を形成するデポ工程と、前記デポ工程後に、前記被処理体に対して異方性プラズマエッチング処理をおこなうドライエッチング工程と、前記ドライエッチング工程後に、残存する前記デポ層を除去するアッシング処理を行うアッシング工程と、が含まれ」るのに対し、甲2発明は、「エッチングすること」について、特定はなされていない点。
<相違点9>
本件発明1において「複数回繰り返す前記エッチング工程に対して、前記デポ工程の前に、所定の頻度で前記レジスト保護膜形成工程を挿入する」のに対し、甲2発明は、そのような構成を有さない点。
イ 相違点についての判断
相違点7について検討する。
(ア)甲3及び甲4には、レジスト保護膜を形成することは記載されておらず、甲2発明に甲3及び甲4に記載された事項を適用しても、本件発明1の構成とすることはできない。
(イ)a 申立人は、令和5年10月2日提出の特許異議申立書の第10頁第16行~第24行、及び第13頁第3行~第11行において、甲3の第1及び図2、並びに甲4の図4及び図5には、プラズマCVDにより成膜した際に、基板の上面にも膜が形成される構成が記載されており、甲3及び甲4の記載を考慮すれば、甲2発明において、マスク上面にパッシベーション層が形成されることは明らかである旨主張する。
b 上記主張について検討する。
甲2発明は、「エッチングするためのフッ素(F)含有エッチングガス」及び「シリコン含有蒸着層を形成するためのシリコン(Si)含有化学気相蒸着ガスを提供することと、前記エッチングガス及び前記化学気相蒸着ガスからプラズマを生成することと」を備えるものであり、エッチングするためのエッチングガス、及び、蒸着層を形成するための化学気相蒸着ガスを導入して、プラズマを生成するものであるといえる。
一方、甲3には、第282頁左欄第14行~15行に「PVD法に比べてCVD法は段差被覆性に優れているといえる。」と記載され、甲4には、第313頁右欄第13行~第18行に「この方法で得られた結果は以下のとおりであった。 (1)SiH4-NH3系:η=0.08の1種類の成膜前駆体でフィッティング (2)SiH4-NH2系:η=0.8と0.05の2種類の前駆体を考慮することによりフィッティング」と記載され、図4に、カバレッジ法において、トレンチに堆積した窒化膜がウェーハ上面にも堆積されることが示されているものの、甲3及び甲4には、原料ガスにエッチングガスを含有させることは記載も示唆もされていない。
したがって、甲2発明において提供されるガスは、エッチングガスを含む点で、甲3及び甲4に記載されたガスとは異なるから、甲3に記載されたCVD法又は甲4に記載されたカバレッジ法において、基板の上面に膜が堆積されるからといって、甲2発明においても、パターン化マスク202上面にパッシベーション層210が形成されるとはいえない。
むしろ、甲2の段落0023には「異方性エッチングを促進するために(すなわち、専ら水平面上のみをエッチングするために)、バイアス電圧が印加され(ステップ106)」と記載されているところ、甲2発明の「パターン化マスク」の上面は水平面であることは明らかであるから、甲2発明において、エッチングと同時に蒸着を行う際に、「パターン化マスク」の上面においては、異方性エッチングが促進され、パッシベーション層210が堆積されないことは明らかである。
したがって、甲3及び甲4の記載を考慮しても、甲2発明において、パターン化マスク上面にパッシベーション層が形成されないと認められるから、上記主張は採用できない。
ウ 小括
したがって、相違点8及び9について検討するまでもなく、本件発明1は、甲2発明と、甲3及び甲4の記載とに基づき、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(3)本件発明2について
ア 対比
本件発明2と甲2発明とを対比すると、上記(2)ア(ア)~(ウ)と同様のことがいえるから、両者は以下の点で一致し、相違する。
<一致点>
「被処理体をエッチングするエッチング方法であって、
前記被処理体に樹脂からなるパターンを有するレジスト層を形成するレジストパターン形成工程と、
レジストパターンが形成された前記被処理体をエッチングするエッチング工程と、
保護膜を形成する保護膜形成工程と、
を有するエッチング方法。」
<相違点10>
本件発明2は、「前記レジストパターンにレジスト保護膜を形成するレジスト保護膜形成工程」を有するのに対し、甲2発明は、「パッシベーション層」が「フォトレジスト(PR)マスク」である「パターン化マスク」を保護しない点。
<相違点11>
本件発明2において「前記エッチング工程には、前記パターンの底部および前記レジスト層の表面を少なくとも覆うデポ層を形成するデポ工程と、前記デポ工程後に、前記被処理体に対して異方性プラズマエッチング処理をおこなうドライエッチング工程と、前記ドライエッチング工程後に、残存する前記デポ層を除去するアッシング処理を行うアッシング工程と、が含まれ」るのに対し、甲2発明は、そのような構成を有さない点。
<相違点12>
本件発明2において「複数回繰り返す前記エッチング工程に対して、前記デポ工程の前に、所定の頻度で前記レジスト保護膜形成工程を挿入する」のに対し、甲2発明は、そのような構成を有さない点。
<相違点13>
本件発明2において「前記レジスト保護膜形成工程は、前記エッチング工程による前記被処理体のエッチングが所定の状態となるまでおこなわない」のに対し、甲2発明は、そのような構成を有さない点。
イ 相違点についての検討
相違点10について検討する。
上記(2)イにおける検討と同様の理由により、甲2発明を、相違点10に係る本件発明2の構成を備えるものとすることは、当業者が容易になし得たことではない。
ウ 小括
したがって、相違点11~13について検討するまでもなく、本件発明2は、甲2発明と甲3及び甲4の記載に基づき、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(4)本件発明3~6について
請求項3~6の記載は、請求項1又は2の記載を引用し、本件発明3~6は、本件発明1又は2の構成をすべて備えるものであるから、少なくとも相違点7又は10の点で、甲2発明と相違するものである。
そうすると、上記(2)又は(3)と同様の理由により、本件発明3~6は、甲2発明と甲3及び甲4の記載とに基づき、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(5)申立理由2についてのまとめ
以上のとおりであるから、請求項1~6に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるとはいえない。したがって、申立理由2(進歩性)は理由がない。
4 申立理由3(明確性要件)についての当審の判断
(1)申立人は、特許異議申立書の第17頁第15行~第20行において、本件訂正前の請求項1及び3には「前記レジスト保護膜形成工程において、処理ガスには、SixOyαzを形成可能なガスを含み」と記載されているが、「処理ガス」が何の処理に用いられるどのようなガスなのか明確ではない旨主張する。
しかし、「処理ガス」は、「レジスト保護膜形成工程において」「SixOyFzを形成可能なガス」であるから、レジスト保護膜の形成に用いられる、レジスト保護膜を形成する原料ガスであることは明らかである。よって、上記主張を採用することはできない。
(2)申立人は、特許異議申立書の第17頁第22行~第24行において、「SixOyαzを形成可能」とは、どこにSixOyαzを形成するのかが不明である旨主張する。
しかし、本件訂正により「SixOyαz」は、「SixOyFz」となり、「レジスト保護膜形成工程において」形成されるから、「レジスト保護膜」であるといえる。そして、「レジスト保護膜」がレジスト表面に形成されることは明らかであるから、「SixOyFz」がレジスト表面に形成されることは明らかである。よって、上記主張を採用することはできない。
(3)申立人は、特許異議申立書の第17頁下から2行~第18頁3行において、本件訂正前の請求項2には「前記レジスト保護膜形成工程は、前記エッチング工程による前記被処理体のエッチングが所定の状態となるまでおこなわない」と記載されているが、「前記被処理体のエッチングが所定の状態となる」とは被処理体がどんな状態となるのかが明確ではない旨主張する。
しかし、「前記被処理体のエッチング」の状態は、被処理体のエッチングの程度であるから、「前記被処理体のエッチングが所定の状態となる」は、予め定めた程度まで被処理体がエッチングされることであることは明らかである。よって、上記主張を採用することはできない。
(4)申立人は、特許異議申立書の第18頁第4行~第12行において、本件訂正前の請求項5には「前記レジスト保護膜形成工程を、前記エッチング工程による前記被処理体が所定のアスペクト比となった後におこなう」と記載されているが、「前記被処理体が所定のアスペクト比となった」とは、被処理体がどのようになったことかが明確ではない旨主張する。
しかし、「被処理体」は、「エッチング工程」により「所定のアスペクト比」になるのであるから、「アスペクト比」がエッチングされた部分の縦横比であることは明らかである。よって、上記主張を採用することはできない。
(5)上記(1)~(4)によれば、本件発明1~6に不明なところはなく、明確であるから、請求項1~6に係る特許が、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるとはいえない。したがって、申立理由3(明確性要件)は理由がない。
5 申立理由についてのまとめ
上記2~4のとおりであるから、申立理由1(新規性)、申立理由2(進歩性)及び申立理由3(明確性要件)は理由がない。
第6 まとめ
以上のとおりであるから、取消理由、並びに申立理由及びその証拠によっては、請求項1~6に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1~6に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2023-701047