特許異議申立
2023-701040
調理器具、加熱調理器、及び調理網
- 審判番号
- 2023-701040
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2019-046475
- 登録番号
- 7284601
- 請求日
- 2023年09月28日
- 審決日
- 2024年02月08日
- 公報発行日
- 2024年03月29日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】株式会社ハーマン
- 【権利者代理人】弁理士法人北斗特許事務所
- 【異議申立人】前田 正夫
- 審判長/審判官
- 審判長 間中 耕治
- 審判官 岩▲崎▼ 則昌
- 審判官 水野 治彦
- 分類
- P1652.113-Y (A47J) / P1652.121-Y (A47J)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第1項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7284601号発明「調理器具、加熱調理器、及び調理網」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7284601号の請求項1、9に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の概要
特許第7284601号の請求項1~9に係る特許についての出願は、平成31年3月13日の出願であって、令和5年5月23日にその特許権の設定登録がされ、同月31日に特許掲載公報が発行され、その後、請求項1、9に係る特許に対し、令和5年9月28日に特許異議申立人 前田正夫(以下「特許異議申立人」という。)により、特許異議の申立てがされたものである。
第2 本件特許発明
本件特許の請求項1、9に係る発明(以下、それぞれ「本件特許発明1」及び「本件特許発明9」という。)は、それぞれ、本件特許の特許請求の範囲の請求項1、9に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「【請求項1】
調理容器と、
前記調理容器内に設置される調理網とを備え、
前記調理網は、
前記調理容器の底部から上方に離れて位置する載置部を有し、
前記載置部は、
前記底部の上面に沿った一方向において第1距離をあけて並んだ複数の線材と、
前記複数の線材のうちの一つの線材と並んだ線状部とを有し、
前記一つの線材と前記線状部とが前記一方向において前記第1距離よりも大きい第2距離をあけて位置した、
調理器具。」
「【請求項9】
調理容器内に設置される調理網であって、
前記調理容器の底部から上方に離れて位置する載置部を備え、
前記載置部は、
前記底部の上面に沿った一方向において第1距離をあけて並んだ複数の線材と、
前記複数の線材のうちの一つの線材と並んだ線状部とを有し、
前記一つの線材と前記線状部とが前記一方向において前記第1距離よりも大きい第2距離をあけて位置した、
調理網。」
第3 特許異議申立ての概要
1 特許異議申立人による申立理由の概要
特許異議申立人は、証拠方法として、甲第1号証(以下「甲1」という。)を提出し、概略、以下の取消理由を主張している。
甲1:特開平10-2563号公報
取消理由:特許法第29条第1項第3号及び特許法第29条第2項
・請求項1
本件特許発明1は、甲1に記載された発明である。
また、本件特許発明1は、甲1に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
・請求項9
本件特許発明9は、甲1に記載された発明である。
また、本件特許発明9は、甲1に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
したがって、本件特許発明1、9は、特許法第29条第1項又は特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであり、同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである。
第4 甲1について
1 甲1の記載事項
甲1には、「高周波加熱調理器に使用する焼き網及びその高周波加熱調理器」に関して、以下の記載がある。(下線は、当審によるものである。以下同様。)
(1) 「【0009】
【発明の実施の形態】
実施の形態1.図1から図7はこの発明の実施の形態を示す図であり、図において上記従来例と同一部分には同一符号を付して示している。図1は、内部に棚皿と焼き網を収納した高周波加熱装置の扉を開けた状態の斜視図である。図において、3は高周波加熱装置本体、4は加熱室、5は加熱室4内の左右両壁面を突出させて形成した棚、1はこの棚5に載置した棚皿、2はこの棚皿1上に載置した焼き網である。
【0010】図2は、棚皿1の斜視図である。棚皿1は鉄板等の金属板をプレス加工して形成され、表面に弗素コーティング等の塗装が施されている。図において、1aは棚皿1の外周囲を構成するフランジ、1bは棚皿1の中央部をへこませて形成され調理物を載置する凹状部である。
【0011】図3は、焼き網2の斜視図である。焼き網2はステンレス鋼線等の金属製の線材をプレス加工等で折曲形成し、ほぼ矩形状に形成されている。図において、2aは焼き網2の外周囲を構成する略矩形状の外周枠、2bはこの外周枠2aを矩形状に固定するために線材を溶接等の手段で接合する接合部である溶接部(A)、2cは所望の間隔をもって複数平行に設けられ、両端を外周枠2aに溶接等の手段で接合した支棒、2dは支棒2cを外周枠2aに接合する接合部である溶接部(B)である。」
(2) 「【0013】また、2fは焼き網2の支棒2cに下方に向かって突出した凸部(以下、上記凸部2eと区別して脚部という)で、最外方に位置した支棒2cにそれぞれ2個所形成してある。図7は焼き網2を棚皿1に収納した状態を示す図であるが、焼き網2は脚部2fを棚皿1の底面に接触させて棚皿1の凹部1bに収納されており、脚部2fは、棚皿1の凹部1b内で焼き網2をずらしても凸部2eが凹部1bからはみ出さない高さに形成している。
【0014】次に、この実施の形態における焼き網を使用して、例えばとりのもも肉等を加熱調理する場合について説明する。まず、棚皿1の凹部1b内に焼き網2を収納する。焼き網2には脚部2fが設けられているので、焼き網2は棚皿1と所定距離を保って載置される。次に、焼き網2にとりのもも肉を載せた後、棚皿1を加熱室4内の棚5に載置し、扉を閉じて電源を投入して加熱を行なう。加熱調理の熱源は、高周波とヒーターを同時、あるいは交互又は別々に印加する方法を適宜選択する。」
(3) 「【図7】
[図:0001407860000001.jpg]
」
(4) 上記(2)及び(3)から、焼き網2の脚部2f以外の部分は、棚皿1の凹部1bと第1の所定距離を保って載置されることが把握される。
(5) 上記(1)の段落【0011】及び上記(3)から、焼き網2は、棚皿1の凹部1bに沿った一方向において所望の間隔をもって平行に設けられた6本の支棒2cを有することが把握される。
(6) 上記(3)から、焼き網2の外周枠2aは、支棒2cのうち最も外側に配置されるもの、すなわち、脚部2fが設けられた支棒2cのいずれか一方と並んだ部分を有することが看取される。
(7) 上記(3)から、脚部2fが設けられた支棒2cのいずれか一方と、焼き網2の外周枠2aのうち当該いずれか一方の支棒2cと並んだ部分とは、棚皿1の凹部1bに沿った一方向において第2の所定距離をあけて位置することが看取される。
(8) 上記(2)の段落【0014】及び上記(3)から、棚皿1と焼き網2とを組み合わせてとりのもも肉等を加熱調理することが把握されるから、棚皿1と焼き網2とは、調理器具を構成するものであると認められる。
2 甲1に記載された発明
上記1から、甲1には、以下の発明(以下、それぞれ「甲1発明1」及び「甲1発明2」という。)が記載されている。
<甲1発明1>
「棚皿1と、
棚皿1の凹部1b内に収納される焼き網2とを備え、
焼き網2の脚部2f以外の部分は、棚皿1の凹部1bと第1の所定距離を保って載置され、
焼き網2は、棚皿1の凹部1bに沿った一方向において所望の間隔をもって平行に設けられた6本の支棒2cを有し、
焼き網2の外周枠2aは、脚部2fが設けられた支棒2cのいずれか一方と並んだ部分を有し、
脚部2fが設けられた支棒2cのいずれか一方と、焼き網2の外周枠2aのうち当該いずれか一方の支棒2cと並んだ部分とは、棚皿1の凹部1bに沿った一方向において第2の所定距離をあけて位置する、
調理器具。」
<甲1発明2>
「棚皿1の凹部1b内に収納される焼き網2であって、
焼き網2の脚部2f以外の部分は、棚皿1の凹部1bと第1の所定距離を保って載置され、
焼き網2は、棚皿1の凹部1bに沿った一方向において所望の間隔をもって平行に設けられた6本の支棒2cを有し、
焼き網2の外周枠2aは、脚部2fが設けられた支棒2cのいずれか一方と並んだ部分を有し、
脚部2fが設けられた支棒2cのいずれか一方と、焼き網2の外周枠2aのうち当該いずれか一方の支棒2cと並んだ部分とは、棚皿1の凹部1bに沿った一方向において第2の所定距離をあけて位置する、
焼き網2。」
第5 当審の判断
1 申立理由(特許法第29条第1項第3号及び特許法第29条第2項)について
(1) 本件特許発明1について
ア 対比
本件特許発明1と甲1発明1とを対比する。
(ア) 甲1発明1の「棚皿1」及び「焼き網2」は、それぞれ、本件特許発明1の「調理容器」及び「調理網」に相当する。
甲1発明1の「焼き網2」が「棚皿1の凹部1b内に収納される」ことは、本件特許発明1の「調理網」が「前記調理容器内に設置される」ことに相当する。
そうすると、甲1発明1の「棚皿1と、棚皿1の凹部1b内に収納される焼き網2とを備え」ることは、本件特許発明1の「調理容器と、前記調理容器内に設置される調理網とを備え」ることに相当する。
(イ) 甲1発明1の「焼き網2のうち脚部2f以外の部分」及び「棚皿1の凹部1bと第1の所定距離を保って載置され」ることは、それぞれ、本件特許発明1の「載置部」及び「前記調理容器の底部から上方に離れて位置する」ことに相当する。
そうすると、甲1発明1の「焼き網2のうち脚部2f以外の部分は、棚皿1の凹部1bと所定距離を保って載置され」ることは、本件特許発明1の「前記調理網は、前記調理容器の底部から上方に離れて位置する載置部を有」することに相当する。
(ウ) 甲1発明1の「棚皿1の凹部1bに沿った一方向」、「所望の間隔」、「所望の間隔をもって平行に設けられた」こと及び「6本の支棒2c」は、それぞれ、本件特許発明1の「前記底部の上面に沿った一方向」、「第1距離」、「第1距離をあけて並んだ」こと及び「複数の線材」に相当する。
そうすると、甲1発明1の「焼き網2は、棚皿1の凹部1bに沿った一方向において所望の間隔をもって平行に設けられた6本の支棒2cを有」することは、本件特許発明1の「前記載置部は、前記底部の上面に沿った一方向において第1距離をあけて並んだ複数の線材」を有することに相当する。
(エ) 甲1発明1の「脚部2fが設けられた支棒2cのいずれか一方」は、本件特許発明1の「前記複数の線材のうちの一つの線材」に相当する。そして、甲1発明1の「焼き網2の外周枠2a」のうち「脚部2fが設けられた支棒2cのいずれか一方と並んだ部分」は、本件特許発明1の「線状部」に相当する。
そうすると、甲1発明1の「焼き網2の外周枠2aは、脚部2fが設けられた支棒2cのいずれか一方と並んだ部分を有」することは、本件特許発明1の「前記載置部は、」「前記複数の線材のうちの一つの線材と並んだ線状部」を有することに相当する。
(オ) 甲1発明1の「第2の所定距離」は、本件特許発明1の「第2距離」に相当する。
そうすると、甲1発明1の「脚部2fが設けられた支棒2cのいずれか一方と、焼き網2の外周枠2aのうち当該いずれか一方の支棒2cと並んだ部分とは、棚皿1の凹部1bに沿った一方向において第2の所定距離をあけて位置する」ことと、本件特許発明1の「前記一つの線材と前記線状部とが前記一方向において前記第1距離よりも大きい第2距離をあけて位置した」こととは、「前記一つの線材と前記線状部とが前記一方向において第2距離をあけて位置した」ことの限りにおいて一致する。
(カ) 甲1発明1の「調理器具」は、本件特許発明1の「調理器具」に相当する。
以上のことから、本件特許発明1と甲1発明1との一致点及び相違点は、以下のとおりである。
<一致点>
「調理容器と、
前記調理容器内に設置される調理網とを備え、
前記調理網は、
前記調理容器の底部から上方に離れて位置する載置部を有し、
前記載置部は、
前記底部の上面に沿った一方向において第1距離をあけて並んだ複数の線材と、
前記複数の線材のうちの一つの線材と並んだ線状部とを有し、
前記一つの線材と前記線状部とが前記一方向において第2距離をあけて位置した、
調理器具。」
<相違点1>
「第2距離」に関して、本件特許発明1は、「前記第1距離よりも大きい」ものであるのに対して、甲1発明1は、当該事項を特定していない点。
イ 判断
相違点1について検討する。
相違点1は、実質的な相違点である。
よって、本件特許発明1は、甲1発明1ではない。
また、甲1には、第2の所定距離(本件特許発明1の「第2距離」に相当する。)が隣接する支棒2cの所望の間隔(本件特許発明1の「第1距離」に相当する。)よりも大きいことが記載も示唆もされていない。
また、甲1発明1において、第2の所定距離を隣接する支棒2cの所望の間隔よりも大きくするという着想に至る動機付けを、甲1から見いだすことはできない。
したがって、当業者であっても、甲1発明1から、相違点1に係る本件特許発明1の発明特定事項を容易に想到することはできない。
よって、本件特許発明1は、甲1発明1に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(2) 本件特許発明9について
ア 対比
本件特許発明9と甲1発明2とを対比する。
上記(1)アの対比を踏まえると、両者の一致点及び相違点は、以下のとおりである。
<一致点>
「調理容器内に設置される調理網であって、
前記調理容器の底部から上方に離れて位置する載置部を備え、
前記載置部は、
前記底部の上面に沿った一方向において第1距離をあけて並んだ複数の線材と、
前記複数の線材のうちの一つの線材と並んだ線状部とを有し、
前記一つの線材と前記線状部とが前記一方向において第2距離をあけて位置した、
調理網。」
<相違点2>
「第2距離」に関して、本件特許発明9は、「前記第1距離よりも大きい」ものであるのに対して、甲1発明2は、当該事項を特定していない点。
イ 判断
相違点2は、実質的に相違点1と同じものである。
よって、上記(1)イと同様の理由により、本件特許発明9は、甲1発明2ではない。
また、上記(1)イと同様の理由により、本件特許発明9は、甲1発明2に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(3) 特許異議申立人の主張
相違点1及び相違点2に関して、特許異議申立人は、特許異議申立書において、「(4)4本の直線状の支棒2cのうち、外方の支棒2cと、それに近い、支棒2cと平行な外周枠2aの2辺のうちの1つとの間には、脚部2fを有する支棒2cが存在することから、4本の直線状の支棒2cのうち、外方の支棒2cと、それに近い、支棒2cと平行な外周枠2aの2辺のうちの1つとの間の距離は、支棒2c間の所望の間隔よりも大きい」(第7ページ第14行~第19行)ことが甲1の記載から理解できるとし、甲1に記載された発明(第7ページ第23行~第8ページ第19行)に係る主張をしている。
しかしながら、上記第4の1(2)のとおり、甲1の段落【0013】には、「2fは焼き網2の支棒2cに下方に向かって突出した凸部(以下、上記凸部2eと区別して脚部という)で、最外方に位置した支棒2cにそれぞれ2個所形成してある。」と記載されており、脚部2fの有無によって支棒2cを区別せず、いずれも支棒2cと呼称していることが明らかである。
そうすると、支棒2cを「4本の直線状の支棒2c」と「脚部2fを有する支棒2c」とに区別することを前提に行った甲1に記載された発明に係る主張は、その前提において妥当でないといわざるを得ない。
さらに、本件特許発明1、9は、「前記一つの線材と前記線状部とが前記一方向において前記第1距離よりも大きい第2距離をあけて位置した」ことによって、「各端部線材741aと、対応する第1線状部711との間には、隣り合う第1線材741の間に形成される隙間742よりも、前後方向の寸法が大きい隙間743が形成されて」(本件明細書の段落【0070】)おり、「調理対象物90を端部線材741a及び第1線状部711が支持する場合、利用者は、調理対象物90の一部が、端部線材741aと対応する第1線状部711との間に形成された隙間743から下方に突出するように調理対象物90を配置することができる。このため、サイズの大きなゆで卵等の調理対象物90を、くん製調理において加熱される蓋50に接触しないように調理網7に載せることができる。この場合、くん製調理を行っている時には、端部線材741aと第1線状部711とで支持された調理対象物90には、蓋50の熱が伝わり難い。このため、当該調理対象物90が蓋50の熱によって高温に加熱されて部分的に変色したり、焦げたりすることが抑制される」(本件明細書の段落【0080】)という作用効果を奏するものである。
一方、甲1の記載からは、6本の支棒2cが同一平面上に存在すると解されるため、甲1発明1及び甲1発明2は、上記のように「調理対象物90の一部が、端部線材741aと対応する第1線状部711との間に形成された隙間743から下方に突出するように調理対象物90を配置することができる」ことを想定するものではない。また、甲1には、「蓋50」に相当するものが記載されておらず、「サイズの大きなゆで卵等の調理対象物90を、くん製調理において加熱される蓋50に接触しないように調理網7に載せることができる」ものでもない。
したがって、甲1の記載からは、本件特許発明1、9の上記の作用効果を予測することができない。
よって、特許異議申立人の主張は、採用することができない。
第6 むすび
以上のとおりであるから、特許異議申立書に記載した申立理由及び証拠によっては、本件請求項1、9に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1、9に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2023-701040