2023-700962
メタン生成システム
- 審判番号
- 2023-700962
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2022-581368外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 登録番号
- 7241995
- 請求日
- 2023年09月13日
- 審決日
- 2024年10月11日
- 公報発行日
- 2025年01月31日
- 結論
- 訂正認容
- 分類
- P1651.121-YAA(C07C) / P1651.356-YAA(C07C) / P1651.357-YAA(C07C)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第4項第1号、特許法第120条の5第2項、特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第7項、特許法第120条の5第4項
- データ出所
- 審決公報(XML)
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結論
理由
目次 ▾ 17項目
第1 手続の経緯
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特許第7241995号(以下「本件特許」という。)の請求項1~19に係る特許についての出願は、2022年5月31日に国際出願され、令和5年3月9日に特許権の設定登録がされ、同年同月17日に特許掲載公報が発行され、その請求項1~19に係る発明の特許に対し、同年9月13日に西内大生(以下「申立人」という。)により、特許異議の申立てがされたものである。
特許異議の申立て以後の手続の経緯は次のとおりである。
令和6年 1月 9日付け 取消理由通知
同年 3月 8日 意見書・訂正請求書(特許権者)
同年 3月19日付け 訂正請求があった旨の通知
同年 4月22日 意見書(申立人)
同年 5月10日付け 訂正拒絶理由通知
同年 6月11日 意見書・手続補正書(特許権者)
同年 6月28日付け 取消理由通知(決定の予告)
同年 8月29日 意見書・訂正請求書(特許権者)
第2 訂正の適否
1.訂正の内容
令和6年3月8日付けの訂正請求は、特許法第120条の5第7項の規定により取り下げられたものとみなされるところ、令和6年8月29日付けの訂正請求による訂正(以下「本件訂正」という。)の「請求の趣旨」は『特許第7241995号の特許請求の範囲を、本訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~19について訂正することを求める。』というものであり、その内容は、以下の訂正事項1及び2からなるものである(なお、下線は当審合議体により追加。以下同じ。)。
(1)訂正事項1
訂正前の請求項1の「前記SOEC共電解装置と前記メタン反応器との間で熱交換を行う第1熱交換部と、を備えるメタン生成システム。」との記載部分を、
訂正後の請求項1の「前記SOEC共電解装置と前記メタン反応器との間で熱交換を行う第1熱交換部と、を備え、
前記メタン反応器に前記SOEC共電解装置より温度が高い領域があって、前記第1熱交換部は、伝熱面近傍に存在する前記SOEC共電解装置の流体と前記メタン反応器の前記SOEC共電解装置の流体より温度が高い領域の流体との温度差による熱交換により、前記メタン反応器で発生した熱を取り去りSOEC共電解装置にて利用するメタン生成システム。」との記載に訂正する(請求項1の記載を直接又は間接的に引用する請求項2~16、18、及び19も同様に訂正する)。
(2)訂正事項2
訂正前の請求項17の「前記SOEC共電解装置に前記水供給経路により供給される前記水または水蒸気を前記メタン反応器の反応熱によって加熱する予備熱交換部と、
を備えるメタン生成システム。」との記載部分を、
訂正後の請求項17の「前記SOEC共電解装置に前記水供給経路により供給される前記水または水蒸気を前記メタン反応器の反応熱によって加熱する予備熱交換部と、を備え、
前記メタン反応器に前記SOEC共電解装置より温度が高い領域があって、前記第1熱交換部は、伝熱面近傍に存在する前記SOEC共電解装置の流体と前記メタン反応器の前記SOEC共電解装置の流体より温度が高い領域の流体との温度差による熱交換により、前記メタン反応器で発生した熱を取り去りSOEC共電解装置にて利用するメタン生成システム。」との記載に訂正する。
2.本件訂正による訂正の適否
(1)訂正事項1及び2について
ア 訂正の目的について
訂正事項1及び2は、訂正前の請求項1及び17の記載に「前記メタン反応器に前記SOEC共電解装置より温度が高い領域があって、前記第1熱交換部は、伝熱面近傍に存在する前記SOEC共電解装置の流体と前記メタン反応器の前記SOEC共電解装置の流体より温度が高い領域の流体との温度差による熱交換により、前記メタン反応器で発生した熱を取り去りSOEC共電解装置にて利用」するという発明特定事項を付加して、特許請求の範囲を限定するものである。
してみると、訂正事項1及び2による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。
イ 新規事項の導入について
訂正事項1及び2は、願書に添付した明細書の段落0005の「SOEC共電解装置とメタン化反応部(メタン反応器)と、を熱的に接続し、互いに熱交換させることによってメタン反応器から反応熱を効果的に取り去り、SOEC共電解装置で再利用することによってメタン変換効率を向上させると共に、メタン生成量を安定化させることを目的とする。」との記載、及び同段落0028(図4を参照しながら説明する実施の形態4の説明)の「このようなメタン生成システム53では、SOEC共電解装置10は、メタン反応器11よりも高い位置に設けられている。そのため、SOEC共電解装置10とメタン反応器11との伝熱面近傍に存在する流体の温度差を大きくすることができる。」との記載を根拠にするものであって、なおかつ、前記段落0005の「熱交換」によって「メタン反応器」から熱を効果的に取り去り「SOEC共電解装置」で利用する場合には「前記メタン反応器に前記SOEC共電解装置より温度が高い領域」があることが前提になることが技術的に明らかであって、これにより「伝熱面近傍に存在」する「SOEC共電解装置の流体」と「前記メタン反応器の前記SOEC共電解装置の流体より温度が高い領域の流体」とが「温度差による熱交換」をできるようになることが自明であるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものとはいえない。
してみると、訂正事項1及び2による訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内において訂正するものに該当し、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。
ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否について
訂正事項1及び2は「特許請求の範囲の減縮」のみを目的とするものであって、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張するものではない。
したがって、訂正事項1及び2による訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。
(2)一群の請求項について
訂正事項1に係る訂正前の請求項1~16、18、及び19について、その請求項2~16、18、及び19は直接又は間接的に請求項1を引用するものであって、訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものであるから、訂正前の請求項1~16、18、及び19に対応する訂正後の請求項1~16、18、及び19は、特許法第120条の5第4項に規定される一群の請求項である。
3.まとめ
以上総括するに、訂正事項1及び2は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものに該当し、なおかつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
したがって、訂正後の請求項〔1~16、18、19〕及び17についての訂正を認める。
第3 本件特許発明
本件訂正により訂正された請求項1~19に係る発明(以下「本1発明」~「本19発明」といい、まとめて「本件特許発明」ということがある。)は、その特許請求の範囲の請求項1~19記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
「【請求項1】水または水蒸気を供給する水供給経路と、二酸化炭素を供給する二酸化炭素供給経路と、電力を供給する電力供給経路と、続きを表示(全53行)前記水供給経路と前記二酸化炭素供給経路と前記電力供給経路とが接続されるSOEC共電解装置と、メタン反応器と、前記SOEC共電解装置と前記メタン反応器とを接続する接続経路と、前記SOEC共電解装置と前記メタン反応器との間で熱交換を行う第1熱交換部と、を備え、前記メタン反応器に前記SOEC共電解装置より温度が高い領域があって、前記第1熱交換部は、伝熱面近傍に存在する前記SOEC共電解装置の流体と前記メタン反応器の前記SOEC共電解装置の流体より温度が高い領域の流体との温度差による熱交換により、前記メタン反応器で発生した熱を取り去りSOEC共電解装置にて利用するメタン生成システム。【請求項2】前記SOEC共電解装置は、前記メタン反応器よりも高い位置に設けられている、請求項1に記載のメタン生成システム。【請求項3】前記メタン反応器から放出される水または水蒸気の少なくとも一部を前記SOEC共電解装置に供給する熱融通流路を備える、請求項1または2に記載のメタン生成システム。【請求項4】前記SOEC共電解装置と前記メタン反応器は物理的に一体に形成されており、前記熱融通流路は外部排熱と熱交換する第2熱交換部を備える、請求項3に記載のメタン生成システム。【請求項5】前記熱融通流路にはヒータが設けられている、請求項4に記載のメタン生成システム。【請求項6】前記第2熱交換部は、換気排熱と熱交換を行う第3熱交換部、空調排熱と熱交換を行う第4熱交換部、給湯排熱と熱交換を行う第5熱交換部、ボイラ排熱と熱交換を行う第6熱交換部、SOFC燃料電池排熱と熱交換を行う第7熱交換部、のうちの少なくともいずれかを備える、請求項4に記載のメタン生成システム。【請求項7】前記SOEC共電解装置に前記水供給経路により供給される前記水または水蒸気を前記メタン反応器の反応熱によって加熱する予備熱交換部を備える請求項6に記載のメタン生成システム。【請求項8】前記水供給経路はエジェクタを備え、前記二酸化炭素供給経路は前記エジェクタを介して前記SOEC共電解装置に接続されている請求項7に記載のメタン生成システム。【請求項9】前記SOEC共電解装置に供給される二酸化炭素を前記メタン反応器の反応熱によって加熱する予備熱交換部を備える請求項6に記載のメタン生成システム。【請求項10】前記SOEC共電解装置に供給される二酸化炭素を前記メタン反応器の反応熱によって加熱する予備熱交換部を備える請求項7に記載のメタン生成システム。【請求項11】前記二酸化炭素供給経路はエジェクタを備え、前記水供給経路は前記エジェクタを介して前記SOEC共電解装置に接続されている請求項9に記載のメタン生成システム。【請求項12】前記水供給経路は、換気排熱と熱交換を行う第8熱交換部、空調排熱と熱交換を行う第9熱交換部、給湯排熱と熱交換を行う第10熱交換部、ボイラ排熱と熱交換を行う第11熱交換部、SOFC燃料電池排熱と熱交換を行う第12熱交換部、のうちの少なくともいずれかを備える、請求項7に記載のメタン生成システム。【請求項13】前記水供給経路は、換気排熱と熱交換を行う第8熱交換部、空調排熱と熱交換を行う第9熱交換部、給湯排熱と熱交換を行う第10熱交換部、ボイラ排熱と熱交換を行う第11熱交換部、SOFC燃料電池排熱と熱交換を行う第12熱交換部、のうちの少なくともいずれかを備える、請求項9に記載のメタン生成システム。【請求項14】前記水供給経路にはヒータが設けられている、請求項12に記載のメタン生成システム。【請求項15】前記熱融通流路を流通する前記水または前記水蒸気の流れ方向に対して、前記第3熱交換部、前記第4熱交換部、前記第5熱交換部、前記第6熱交換部、前記第7熱交換部のうちで、低温の熱交換部ほど上流側に配置される、請求項6に記載のメタン生成システム。【請求項16】前記水供給経路を流通する前記水または前記水蒸気の流れ方向に対して、前記第8熱交換部、前記第9熱交換部、前記第10熱交換部、前記第11熱交換部、前記第12熱交換部のうちで、低温の熱交換部ほど上流側に配置される、請求項12に記載のメタン生成システム。【請求項17】水または水蒸気を供給する水供給経路と、二酸化炭素を供給する二酸化炭素供給経路と、電力を供給する電力供給経路と、前記水供給経路と前記二酸化炭素供給経路と前記電力供給経路とが接続されるSOEC共電解装置と、メタン反応器と、前記SOEC共電解装置と前記メタン反応器とを接続する接続経路と、前記SOEC共電解装置と前記メタン反応器との間で熱交換を行う第1熱交換部と、前記SOEC共電解装置に前記水供給経路により供給される前記水または水蒸気を前記メタン反応器の反応熱によって加熱する予備熱交換部と、を備え、前記メタン反応器に前記SOEC共電解装置より温度が高い領域があって、前記第1熱交換部は、伝熱面近傍に存在する前記SOEC共電解装置の流体と前記メタン反応器の前記SOEC共電解装置の流体より温度が高い領域の流体との温度差による熱交換により、前記メタン反応器で発生した熱を取り去りSOEC共電解装置にて利用するメタン生成システム。【請求項18】前記第2熱交換部は、換気排熱と熱交換を行う第3熱交換部、空調排熱と熱交換を行う第4熱交換部、給湯排熱と熱交換を行う第5熱交換部、ボイラ排熱と熱交換を行う第6熱交換部、SOFC燃料電池排熱と熱交換を行う第7熱交換部、のうちの少なくともいずれかを備える、請求項5に記載のメタン生成システム。【請求項19】前記水供給経路は、換気排熱と熱交換を行う第8熱交換部、空調排熱と熱交換を行う第9熱交換部、給湯排熱と熱交換を行う第10熱交換部、ボイラ排熱と熱交換を行う第11熱交換部、SOFC燃料電池排熱と熱交換を行う第12熱交換部、のうちの少なくともいずれかを備える、請求項11に記載のメタン生成システム。」
第4 特許異議申立理由の概要
1.申立理由1(進歩性)について
本件特許発明1~3及び17は、甲第1号証~甲第3号証に記載された発明に基いて、当業者が容易になし得た発明であるから、特許法第29条第2項(同法第113条第2号)の規定に違反する。
2.申立理由2(サポート要件)について
本件明細書には定性的な説明はあるものの(0014段落)、本件特許発明の構成によりどの程度メタン変換効率が向上し、どの程度メタン生成量を安定化させることができたかに関する定量的かつ具体的な実験例等の記載がなく、熱が高温から低温に移動するという熱力学第2法則に基づけば、メタン反応器がSOEC共電解装置より高温であることが前提になるのに、甲第2~5号証の作動温度に関する技術常識をみると、この前提が反映されてない本件特許発明1~19は課題を解決できない構成を含んでおり、特許法第36条第6項第1号(同法第113条第4号)に規定する要件を満たさない。
3.申立理由3(実施可能要件)について
本件明細書にはSOEC共電解装置及びメタン反応器の作動温度が記載されておらず、形状や配置等に関しても設計指針や具体例の記載がなく、メタン変換効率を上げるために当業者が過度の試行錯誤を余儀なくされることは明らかであるから、本件特許発明1~19は実施可能要件を充足せず、特許法第36条第4項第1号(同法第113条第4号)に規定する要件を満たさない。
第5 取消理由通知の概要
令和6年1月9日付けの取消理由通知においては、次の〔理由1〕(進歩性欠如)、〔理由2〕(実施可能要件違反)、及び〔理由3〕(サポート要件違反)からなる理由が通知され、令和6年6月28日付けの取消理由通知(決定の予告)において上記〔理由2〕及び〔理由3〕が再度通知されている。
〔理由1〕本件特許の請求項1、3及び17に係る発明は、本件出願日前に日本国内又は外国において頒布された下記刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、本件出願日前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
記
https://pubs.rsc.org/en/content/articlelanding/2014/ee/c4ee02786h
https://www.j-lpgas.gr.jp/data/greenlpg_presen_DG_20210122.pdf
https://project.nikkeibp.co.jp/ms/atcl/19/news/00001/02493/?ST=msb_print
よって、本件特許の請求項1、3及び17に係る発明の特許は、同法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
〔理由2〕本件特許は、発明の詳細な説明の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第4項第1号に適合するものではない。
記
本件特許明細書の発明の詳細な説明には、SOEC共電解装置とメタン反応器の作動温度が記載されておらず、低温域(摘記5aの例で200~400℃)で作動する「メタン反応器」からの熱エネルギーを、高温域(摘記5aの例で700~800℃)で作動する「SOEC共電解装置」に供給して、メタン生成量を安定化させるための「熱交換を行う第1熱交換部」の具体的な装置構成について、当業者が過度の試行錯誤を要することなく実施できるといえる程度の説明が見当たらない。(令和6年1月9日付け取消理由通知2(2)及び令和6年6月28日付け取消理由通知(決定の予告)の第5の1(1)参照)
意見書の図面で示された装置においても、「共電解装置の低温領域の流体」や、それよりも温度の高い「メタン反応器の高温領域の流体」を選択して熱交換器まで流入させる手段が不明である上、上記流体が、いかなる温度分布となるのか具体的な説明がない。(令和6年6月28日付け取消理由通知(決定の予告)第5の1(3)参照)
よって、本件特許の請求項1~19に係る発明の特許は、同法第36条第4項の規定を満たしていない特許出願に対してされたものである。
〔理由3〕本件特許は、特許請求の範囲の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第1号に適合するものではない。
記
本件発明の構成によりどの程度メタン変換効率が向上し、どの程度メタン生成量を安定化させることができたかに関する定量的かつ具体的な実験例等の記載がなく、SOEC共電解装置で必要とされる熱量を、メタン反応器で発生する熱量で賄うことができ、これにより「メタン生成量を安定化させる」という課題を解決できると当業者が認識できる程度の「作用機序」の説明や「技術常識」の存在も見当たらない。(令和6年1月9日付け取消理由通知3(2)及び令和6年6月28日付け取消理由通知(決定の予告)第5の2(2)参照)
特許権者が主張する「メタン反応器の流体の温度が、SOEC共電解装置の流体の温度より高いという前提」が発明特定事項として盛り込まれていないので、本1~本19発明は、課題を解決できない構成を含んでいる。(令和6年6月28日付け取消理由通知(決定の予告)第5の2(3)参照)
よって、本件特許の請求項1~19に係る発明の特許は、同法第36条第6項の規定を満たしていない特許出願に対してされたものである。
第6 当審合議体の判断
1.理由2(実施可能要件)について
事案に鑑み、先ず、理由2について検討する。
(1)発明の詳細な説明の記載について
本件特許明細書の発明の詳細な説明には、次の記載がある。
「【0001】本開示は、メタン生成システムに関する。【背景技術】【0002】続きを表示(全23行)従来、二酸化炭素と水と電力とを用いてメタンを製造するに際して、メタン化反応部におけるメタン反応熱を水蒸気生成部で再利用することによって水のメタンへの変換効率を改善させるメタネーションシステムが知られている(特許文献1)。【先行技術文献】【特許文献】【0003】【特許文献1】特開2022-22978号公報【発明の概要】【発明が解決しようとする課題】【0004】500℃以上の高温下で二酸化炭素と水蒸気を同時に電気分解(共電解)する固体酸化物形電気分解セル(SOEC:Solid Oxide Electrolysis Cell)共電解装置を使用するメタネーションシステムでは、SOEC共電解装置において水と電力と二酸化炭素からメタンを生成する工程において、メタン化反応部におけるメタン反応熱の再利用だけでは熱量が不足し、メタン変換効率が低下したり、メタン生成量が不安定になったりする可能性がある。【0005】本開示は、このような背景の下になされ、SOEC共電解装置とメタン化反応部(メタン反応器)と、を熱的に接続し、互いに熱交換させることによってメタン反応器から反応熱を効果的に取り去り、SOEC共電解装置で再利用することによってメタン変換効率を向上させると共に、メタン生成量を安定化させることを目的とする。【課題を解決するための手段】【0006】本開示に係るメタン生成システムの一つの態様は、水または水蒸気を供給する水供給経路と、二酸化炭素を供給する二酸化炭素供給経路と、電力を供給する電力供給経路と、前記水供給経路と前記二酸化炭素供給経路と前記電力供給経路とが接続されるSOEC共電解装置と、メタン反応器と、前記SOEC共電解装置と前記メタン反応器とを接続する接続経路と、前記SOEC共電解装置と前記メタン反応器との間で熱交換を行う第1熱交換部と、を備える。【0007】本開示に係るメタン生成システムの一つの態様は、水または水蒸気を供給する水供給経路と、二酸化炭素を供給する二酸化炭素供給経路と、電力を供給する電力供給経路と、前記水供給経路と前記二酸化炭素供給経路と前記電力供給経路とが接続されるSOEC共電解装置と、メタン反応器と、前記SOEC共電解装置と前記メタン反応器とを接続する接続経路と、前記SOEC共電解装置と前記メタン反応器との間で熱交換を行う第1熱交換部と、前記SOEC共電解装置に前記水供給経路により供給される前記水または水蒸気を前記メタン反応器の反応熱によって加熱する予備熱交換部と、を備える。【発明の効果】【0008】本開示によれば、メタン反応熱をSOEC共電解装置で再利用することで、メタン変換効率を向上させることができる。」
「【0010】[実施の形態1]以下、本開示の実施の形態1に係るメタン生成システム50を、図1を参照しながら説明する。【0011】続きを表示(全17行)メタン生成システム50は、SOEC共電解装置10と、メタン反応器11と、SOEC共電解装置10とメタン反応器11とに熱的に接続される第1熱交換部20と、を備える。図1の例では、SOEC共電解装置10と、第1熱交換部20と、メタン反応器11とは、横方向に並んでいる。SOEC共電解装置10には、電力を供給する電力供給経路1と、水(H20)または水蒸気を供給する水供給経路2と、二酸化炭素(CO2)を供給する二酸化炭素供給経路3とが接続されている。水供給経路2と、二酸化炭素供給経路3とからSOEC共電解装置10に供給される、水または水蒸気と二酸化炭素は、SOEC共電解装置10において同時に電気分解され、水素と一酸化炭素とに変換される。水供給経路2を流通する水または水蒸気と、二酸化炭素供給経路3を流通する二酸化炭素は、不図示のポンプ又はブロワ等の流体機械から運動エネルギーを得てSOEC共電解装置10に移動する。【0012】電気分解によりSOEC共電解装置10で変換された水素と一酸化炭素は、SOEC共電解装置10とメタン反応器11とを接続する接続経路4を経由してメタン反応器11に供給される。【0013】メタン反応器11に供給された水素と一酸化炭素は、メタン反応器11において、メタン(CH4)と水とに変換され、メタンはガス経路6を介して外部のガスインフラ30に供給される。【0014】ここで、SOEC共電解装置10で行われる反応は吸熱反応であるため、反応には熱量が必要とされる。一方、メタン反応器11で行われる反応は発熱反応であるため、熱量が発生する。従って、メタン反応器11の発熱反応で発生した熱量と、SOEC共電解装置10で必要とされる熱量とが、第1熱交換部20を介して熱交換される。このように、メタン反応器11で発生した熱量を、SOEC共電解装置10にて再利用することで、メタン反応器11で発生する熱量を効果的に取り去ることができる。また、SOEC共電解装置10で必要とされる熱量をメタン反応器11で発生する熱量で賄うことができるので、メタン変換効率を向上させるとともに、メタン生成量を安定化させることができる。【0015】ここで、SOEC共電解装置10に供給される電力は、風力発電及び太陽光発電等の再生可能エネルギーであることが望ましい。または、固体酸化物燃料電池(SOFC:Solid Oxide Fuel Cell)から発電される電力であっても良い。SOFCは、水素を燃料とし、空気から取り込んだ酸素から電子を取り出すとともに、電子を取り出された酸素(酸素イオン)が水素と反応することで水が生成される過程で外部に電流を取り出す装置である。なお、SOEC共電解装置10に供給される電力は、再生可能エネルギー又はSOFCからの電力でなくとも良い。【0016】また、SOEC共電解装置10に供給される二酸化炭素は、例えば、SOFCから排気される二酸化炭素、DAC(Direct Air Capture)により大気中から回収された二酸化炭素、又は、その他の二酸化炭素供給源から供給されても良い。【0017】ここで、第1熱交換部20の構成は特に限定されず、SOEC共電解装置10とメタン反応器11との間で熱交換ができる熱交換器であれば公知の熱交換器を使用して良い。例えば、多管式熱交換器、プレート式熱交換器、コイル式熱交換器、二重管、スパイラル式熱交換器等の公知の熱交換器を使用可能である。」
「[実施の形態4]【0026】以下、本開示の実施の形態4に係るメタン生成システム53を、図4を参照しながら説明する。なお、図3に示す実施の形態3と同様の構成には同様の参照番号を付し、その説明を省略し、実施の形態3と異なる構成のみを説明する。【0027】メタン生成システム53では、SOEC共電解装置10は、メタン反応器11よりも高い位置に設けられている。即ち、メタン反応器11の上側にSOEC共電解装置10が設けられるように、図3に示すメタン生成システム52を時計回りに回転させた構成である。この場合、SOEC共電解装置10と、第1熱交換部20と、メタン反応器11とは、縦方向に並んでいる。このように、メタン反応器11の上側にSOEC共電解装置10が設けられる構成を、縦型に配置した構成と呼ぶ場合がある。なお、SOEC共電解装置10は、メタン反応器11よりも高い位置に、第1熱交換部20を介在させずにメタン反応器11に直接面するように設けられていても良い。【0028】このようなメタン生成システム53では、SOEC共電解装置10は、メタン反応器11よりも高い位置に設けられている。そのため、SOEC共電解装置10とメタン反応器11との伝熱面近傍に存在する流体の温度差を大きくすることができる。よって、SOEC共電解装置10とメタン反応器11との間での熱交換性能を向上させることができるので、メタン変換効率を向上させることができる。」
(2)判断
ア 熱交換を行う「第1熱交換部」の装置構成について
熱交換を行う「第1熱交換部」の具体的な装置構成について、令和6年6月11日付けの意見書(以下「第2意見書」ともいう。)の第3頁の「
[図:0001418210000001.jpg]
」という概念図に示される具体的構成のものを初めとして、本件特許明細書の段落0017の「例えば、多管式熱交換器、プレート式熱交換器、コイル式熱交換器、二重管、スパイラル式熱交換器等の公知の熱交換器を使用可能である。」との記載にあるとおりの種々の形態の「具体的な装置構成」が想定できる。
してみると、本件特許発明は、発明の詳細な説明の記載に基づき、当業者が過度の試行錯誤を要することなく実施できるといえる。
イ SOEC共電解装置とメタン反応器の作動温度について
SOEC共電解装置内とメタン反応器内に温度分布があることは当然であり、令和6年3月8日付けの意見書に添付された乙第1号証(米国特許第4839391号明細書)の記載にあるように、メタン反応器内にはその発熱反応によって700℃を超える高温に達する領域が存在することは知られており、メタン反応器においてSOEC共電解装置の温度よりも高くなる領域があれば、その個所ではメタン反応器の熱を取り去ってSOEC共電解装置に利用することが可能となることも、熱力学の法則から明らかである。
してみると、本件特許発明は、発明の詳細な説明の記載に基づき、当業者が過度の試行錯誤を要することなく実施できるといえる。
ウ 申立人の令和6年4月22日付けの意見書の主張
ここで、令和6年4月22日付けの意見書(以下「申立人意見書」ともいう。)の第4~5頁において、申立人は『本件訂正発明1は、依然として、SOEC共電解装置とメタン反応器との作動温度の関係が不明であり、…メタン生成量を安定化させるための「第1熱交換部」の具体的な装置構成について、当業者が過度の試行錯誤を要することなく実施できるといえる程度の説明が見当たらず、また、このような第1熱交換部の構造を設計的に定めることは、本件特許明細書の発明の詳細な説明及び本件特許の出願時の技術常識に照らしても、当業者が過度な試行錯誤を行うことなく実現できるものではない。』と主張する。
しかしながら、本件訂正による訂正後の請求項1及び17においては「前記メタン反応器に前記SOEC共電解装置より温度が高い領域」があることが発明特定事項とされているので、SOEC共電解装置とメタン反応器との「作動温度の関係」は、メタン反応器にSOEC共電解装置より「温度が高い領域」があると明確に規定されており、その温度の関係が「不明」であるとはいえない。
また、メタン生成量を安定化させるための「第1熱交換部」の具体的な装置構成については、第2意見書の「概念図」以外の形態として、本件特許明細書の段落0017の「例えば、多管式熱交換器、プレート式熱交換器、コイル式熱交換器、二重管、スパイラル式熱交換器等の公知の熱交換器を使用可能である。」との記載にあるとおりの種々の形態が記載されているから、申立人意見書の主張は採用できない。
エ 理由2(実施可能要件)のまとめ
以上総括するに、本件特許の発明の詳細な説明の記載は、請求項1~19に係る発明について、当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載されているものではないとはいえないから、本件特許が特許法第36条第4項第1号の規定を満たしていない特許出願に対してされたとはいえず、理由2(実施可能要件)の取消理由に理由はない。
2.理由3(サポート要件)について
事案に鑑み、次に、理由3について検討する。
(1)本件特許発明の解決しようとする課題について
本件特許の請求項1~19に係る発明の解決しようとする課題は、本件特許明細書の段落0001及び0005の記載を含む発明の詳細な説明の記載からみて『メタン反応器から反応熱を効果的に取り去り、SOEC共電解装置で再利用することによってメタン変換効率を向上させると共に、メタン生成量を安定化させるメタン生成システムの提供』にあるものと認められる。
(2)発明の詳細な説明の記載
本件特許明細書の発明の詳細な説明には、その段落0014に「SOEC共電解装置10で行われる反応は吸熱反応であるため、反応には熱量が必要とされる。一方、メタン反応器11で行われる反応は発熱反応であるため、熱量が発生する。従って、メタン反応器11の発熱反応で発生した熱量と、SOEC共電解装置10で必要とされる熱量とが、第1熱交換部20を介して熱交換される。このように、メタン反応器11で発生した熱量を、SOEC共電解装置10にて再利用することで、メタン反応器11で発生する熱量を効果的に取り去ることができる。また、SOEC共電解装置10で必要とされる熱量をメタン反応器11で発生する熱量で賄うことができるので、メタン変換効率を向上させるとともに、メタン生成量を安定化させることができる。」という定性的な説明が記載されている。
(3)本件訂正により付加された構成
また、本件訂正による訂正後の請求項1及び17においては「前記メタン反応器に前記SOEC共電解装置より温度が高い領域があって、前記第1熱交換部は、伝熱面近傍に存在する前記SOEC共電解装置の流体と前記メタン反応器の前記SOEC共電解装置の流体より温度が高い領域の流体との温度差による熱交換により、前記メタン反応器で発生した熱を取り去りSOEC共電解装置にて利用する」という装置構成が、発明特定事項として付加されている。
(4)メタン反応器にSOEC共電解装置より「温度が高い領域」があること
してみると、本件訂正による訂正で発明特定事項として付加された装置構成を具備することにより「伝熱面近傍」において「SOEC共電解装置の流体」と「メタン反応器の流体」との間で温度差(SOEC共電解装置の流体よりも、メタン反応器の流体が、高い温度にあるという温度差)を利用した「第1熱交換部」での「熱交換」により「前記メタン反応器で発生した熱を取り去りSOEC共電解装置にて利用する」ことが可能になることは、その装置構成の仕組みから当業者に明らかである。
したがって、定量的かつ具体的な実験例の試験結果を示さずとも、SOEC共電解装置及びメタン反応器の内部温度に相当の温度分布があることは自明であることを考慮すると、上記『メタン反応器から反応熱を効果的に取り去り、SOEC共電解装置で再利用することによってメタン変換効率を向上させると共に、メタン生成量を安定化させるメタン生成システムの提供』という課題を解決できると当業者が認識できるといえる。
(5)申立人が主張する「温度が高いという前提」の反映について
ここで、申立人意見書の第10~11頁において、申立人は『本件訂正発明1は、依然として、SOEC共電解装置とメタン反応器との作動温度の関係が不明であり、…本件訂正発明1においては、メタン反応器がSOEC共電解装置より温度が高いという前提が反映されていないため、熱が当然にメタン反応器からSOEC共電解装置へ移動するとは言えず、本件訂正発明1は当該課題を解決できないことは明らかである。』と主張する。
しかしながら、本件訂正による訂正後の請求項1及び17においては「前記メタン反応器に前記SOEC共電解装置より温度が高い領域」があるという前提が反映されたことは上述のとおりであり、伝熱面近傍において「SOEC共電解装置の流体」よりも「メタン反応器の流体」の「温度が高い領域」にあることも特定されているので、その作動温度の関係が不明であるとはいえず、申立人意見書の上記主張は採用できない。
(6)理由3(サポート要件)のまとめ
以上総括するに、本件特許の請求項1~19に係る発明が、発明の詳細な説明に記載された発明ではないとはいえず、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものではないともいえないから、本件特許が特許法第36条第6項第1号の規定を満たしていない特許出願に対してされたとはいえず、理由3(サポート要件)の取消理由に理由はない。
3.理由1(進歩性)について
(1)甲第1~5号証及び参考例Aの記載事項
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ア 甲第1号証には、次の記載がある。
「【請求項2】発熱反応により炭化水素を製造する燃料製造システムに用いられると共に、水蒸気を吸熱反応させて水素を製造する水素製造装置であって、水に熱エネルギーを供給して前記水蒸気を製造する水蒸気製造器と、前記水蒸気を吸熱反応させて前記水素を製造する水素製造器と、を備え、前記発熱反応により発生する熱エネルギーを前記水および前記吸熱反応の少なくとも一方に供給する水素製造装置。」
「【0006】そこで、本発明が解決しようとする課題は、熱エネルギーを効率良く利用して水素および炭化水素を製造できる水素製造装置、燃料製造システム、水素製造方法、および燃料製造方法を提供することである。…【0010】以下、実施形態に係る燃料製造システムについて、図1および図2を用いて説明する。図1は、実施形態に係る燃料製造システムの概要図である。図1の実線は動作の順序を、図1の一点鎖線は熱の流れをそれぞれ示す。図1に示すように、燃料製造システム1は、水素製造装置2と、炭化水素製造装置3から構成される。続きを表示(全32行)【0011】水素製造装置2は、水蒸気製造器2aと、水素製造器2bから構成される。【0012】水蒸気製造器2aは、水に熱エネルギーを供給して水蒸気を製造する。この水蒸気は、後述する水素製造器2bでの水素製造に適した温度まで昇温される。【0013】水素製造器2bは、水蒸気製造器2aで製造された水蒸気に熱エネルギーを供給して、高温水蒸気電解法により電気分解を行って水素を製造する。なお、ここでは例として高温水蒸気電解法による水素の製造を説明しているが、水素製造器2bは、水蒸気を用いた吸熱反応により水素を製造するものであればよい。【0014】炭化水素製造装置3は、一酸化炭素および二酸化炭素の少なくとも一方を含む気体と、水素製造器2bで製造した水素の一部とを反応させてメタンを製造する。その際に、熱エネルギーが発生する。ここで発生した熱エネルギーは、水蒸気製造器2aおよび水素製造器2bの少なくとも一方に供給される。【0015】なお、炭化水素製造装置3は、水素を用いた発熱反応を引き起こして炭化水素を製造すると共に、熱エネルギーが発生するものであればよい。また、水素製造器2bで製造した水素を全て用いてメタンを製造してもよい。【0016】次に、図2を用いて燃料製造システム1の動作を説明する。図2は、実施形態に係る燃料製造システムの動作フローである。図2に示すように、水蒸気製造器2aに水および熱エネルギーを供給して水蒸気を製造する(S1)。この水蒸気は、水蒸気製造器2aまたは水素製造器2bにおいて、水素製造器2bでの水素製造に適した温度まで昇温される。【0017】水蒸気製造器2aで製造された水蒸気が水素製造器2bへ導入されると、水素製造器2bでは、高温水蒸気電解法により、この水蒸気を電気分解して水素を製造する(S2)。炭化水素製造装置3が稼動していない状態でステップS1およびS2を実施する際には、水素製造器2bに供給される熱エネルギーは、加熱器(図示していない)等の熱源から供給される。炭化水素製造装置3が稼動した状態でステップS1およびS2を実施する場合の水素製造器2bに供給される熱エネルギーについては、後述する。【0018】水素製造器2bで製造された水素の一部が炭化水素製造装置3へ導入されると、炭化水素製造装置3では、一酸化炭素および二酸化炭素の少なくとも一方を含む気体と、この水素とを発熱反応させてメタンを製造する。この際に、熱エネルギーが発生する(S3)。ここで製造されたメタンは、燃料として利用される。【0019】炭化水素製造装置3で発生した熱エネルギーは、水蒸気製造器2aおよび水素製造器2bの少なくとも一方に供給される(S4)。これにより、炭化水素製造装置3が稼動した状態でステップS1およびS2を実施する際には、必要な熱エネルギーの一部または全部をこの熱エネルギーで賄うことができる。この際に、水蒸気製造器2aおよび水素製造器2bの少なくとも一方を稼動するのに必要な熱エネルギーを、炭化水素製造装置3で発生する熱エネルギーで全て賄える場合には、加熱器等の熱源からの熱エネルギーの供給を必要としない。【0020】一方で、炭化水素製造装置3へ導入されなかった水素は、水素貯蔵器(図示していない)で保存され、燃料として利用される。なお、炭化水素製造装置3へ導入される水素と水素貯臓器で保存される水素の物質量比は特定の範囲に限定されず、例えば炭化水素製造装置3へ導入される水素の物質量が、水素貯蔵器で保存される水素の物質量より少なくてもよい。【0021】上述した実施形態によれば、燃料電池や火力発電設備を稼動する燃料である水素や炭化水素を製造すると共に、炭化水素製造装置3で発生した熱エネルギーが、水蒸気製造器2aおよび水素製造器2bの少なくとも一方に供給されるため、熱エネルギーを効率良く利用して水素および炭化水素を製造できる。【0022】なお、本実施形態では、水蒸気製造器2aが水素製造装置2に含まれる場合を例として説明したが、水素製造装置の構成として水蒸気製造器が含まれず、外部から水素製造器に水蒸気を導入してもよい。その場合は、炭化水素製造装置で発生した熱エネルギーが水素製造器に供給される。【0023】また、本実施形態では、水蒸気製造器2a、水素製造器2b、炭化水素製造装置3を順次稼動させる場合を例示して説明したが、炭化水素製造装置3、水蒸気製造装置2a、水素製造装置2bの順に稼動させてもよい。その場合において、水蒸気製造装置2aおよび水素製造装置2bが稼動していない状態では、外部から水素を供給して炭化水素製造装置3を稼動させる。ただし、水蒸気製造装置2aおよび水素製造装置2bが稼動した状態では、外部から炭化水素製造装置3に水素を供給せずともよい。【0024】さらに、本実施形態では、水素製造器2bにおいて水素を製造したが、水素製造器2bに二酸化炭素も供給し、水蒸気および二酸化炭素を電気分解反応させてもよい。その場合には、二酸化炭素の電気分解反応によって一酸化炭素が製造され、水素、一酸化炭素、および電気分解反応をしなかった二酸化炭素が炭化水素製造装置3に供給される。水素製造器2bで一酸化炭素も製造することにより、炭化水素製造装置3での反応性が向上する。これは、二酸化炭素に比べて一酸化炭素の方が、水素と反応しやすいからである。」
「[図:0001418210000002.jpg]」
イ 甲第2号証には、次の図の記載がある。
「[図:0001418210000003.jpg]図1 高温SOECと低温フィッシャー・トロプシュ反応器とを組み合わせた管状ユニットにおけるCO2-H2O共電解からの直接メタン合成を示す。」
ウ 甲第3号証には、次の記載があり、図面が示されている。
「【0124】かくして、図3~図5に示されているように、本発明者は、SOEC電解セルのスタックを備えた電解/共電解反応器1と電解/共電解反応器1から離れて位置する触媒変換に必要な固体触媒の両方を統合した不均一系触媒作用によってメタンを得る新規な反応器6を設計した。…【0128】漏れ止めチャンバ7の内部には、合成ガスをメタンに変換し又は二酸化炭素CO2と水素の混合物をメタンに変換する固体触媒80を収容した多孔質仕切り8が配置されている。…【0130】また図示のように、仕切り8はそれ自体閉鎖され、それにより反応器1周りに同心状に且つこの反応器1から距離を置いて配置された筒体を形成している。」
「【0135】図3~図5に示されているように、仕切り8は、固体電解質80内に、触媒メタン化反応を冷却し、或いは、換言すると、この反応のために有利には400℃の一定の温度を維持するのに適した冷却回路85の一部を有する。具体的に説明すると、メタン化反応は、発熱反応なので、触媒80内の冷却回路85により、この触媒を好ましくは400℃に近い適当な温度に維持することができる。…【0137】蒸気を圧力下で生じさせるため、熱交換器12がチャンバ7の外部に配置された状態で設けられ、この熱交換器は、蒸気発生装置又は蒸気発生器を構成している。これを行うため、前もって所与の圧力に圧縮された管13内の液体としての水が蒸気発生器(SG)12に送られる。反応器1による共電解の場合、二酸化炭素CO2が管14を経て導入されて、生成された蒸気とSG12内で、混合される。蒸気発生器12をチャンバ7の内部に配置することが想定できるが、SG(特に、減圧の場合のガスの存在量)と関連した安全上の理由で、蒸気発生器を図示のように外部に配置することが好ましい。続きを表示(全16行)【0138】SG12のための熱源として、有利には、メタン化反応の閉冷却回路85を用いるのが良い。かくして、図3~図5に示されているように、仕切り8内に通常のコイルの状態で且つそれ自体閉鎖された管85は、チャンバのベース71を貫通して一次回路、即ち、蒸気発生器‐熱交換器12の最も高温の流体を運ぶ回路を形成している。換言すると、仕切り8内の触媒反応の冷却回路85は、有利には、液体としての水をSG‐熱交換器12内で圧力下で蒸発させる熱回路を構成する。…【0140】図3~図5に示されているように、生じたメタンを回収するための管17が設けられ、チャンバを画定する内壁74上で凝縮した水を重力で回収する管18が設けられ、各管17,18は、チャンバ7のベース71を貫通している。…【0141】有利には、管18によって回収された凝縮水をSG‐熱交換器12の同一圧力状態にある液体としての水の入口13中に再導入することが想定できる。…【0144】…‐仕切り8とチャンバ7との間に画定された内容積部内の、生じたメタンCH4及びHTE内で変換されなかった水と、メタン化により形成された水を、外壁82の穴83を経て除去し、‐チャンバ7を画定している壁74上に水を凝縮させ、‐30barの圧力で生じたメタンを管17経由で回収し、‐重力により管18経由で凝縮された液体としての水を30barの圧力で回収し、‐30barで回収された液体としての水を蒸気発生器12中に再注入する。」
「[図:0001418210000004.jpg]」
エ 甲第4号証には、次の図の記載がある。
「[図:0001418210000005.jpg]」
オ 甲第5号証には、次の記載があり、図面が示されている。
「[図:0001418210000006.jpg]」
カ 参考例Aには、次の記載がある。
「[図:0001418210000007.jpg]」
「[図:0001418210000008.jpg]」
(2)甲第1号証に記載された発明
甲第1号証の請求項2の「発熱反応により炭化水素を製造する燃料製造システムに用いられる…吸熱反応させて水素を製造する水素製造装置であって、…前記発熱反応により発生する熱エネルギーを前記水および前記吸熱反応の少なくとも一方に供給する水素製造装置。」との記載、及び請求項2に対応した記載として、
同段落0010、0013、0014、0019及び0024の「図1の実線は動作の順序を、図1の一点鎖線は熱の流れをそれぞれ示す。…水素製造器2bは、水蒸気製造器2aで製造された水蒸気に熱エネルギーを供給して、高温水蒸気電解法により電気分解を行って水素を製造する。…炭化水素製造装置3は、一酸化炭素…を含む気体と、…水素…とを反応させてメタンを製造する。…炭化水素製造装置3で発生した熱エネルギーは、水蒸気製造器2aおよび水素製造器2bの少なくとも一方に供給される…本実施形態では、水素製造器2bにおいて水素を製造したが、水素製造器2bに二酸化炭素も供給し、水蒸気および二酸化炭素を電気分解反応させてもよい。その場合には、二酸化炭素の電気分解反応によって一酸化炭素が製造され、水素、一酸化炭素…が炭化水素製造装置3に供給される。」との記載、並びに、
図1の「
[図:0001418210000009.jpg]
」において、一点鎖線(熱の流れ)が、炭化水素製造装置3から、水素製造器2b及び水蒸気製造器2aの両方に送られていることが示されていることからみて、甲第1号証には、ひとまとまりの技術的思想を表すものとして、請求項2に対応した、段落0010、0013、0014、0019及び0024の図面を含めた実施態様の記載に係る発明として、
『水素製造器2b(吸熱反応させて水素を製造する水素製造装置)に、水蒸気と二酸化炭素を供給し、水蒸気および二酸化炭素を電気分解反応させ、製造された水素および一酸化炭素を炭化水素製造装置3に供給し、炭化水素製造装置3は、一酸化炭素を含む気体と、水素とを反応させてメタンを製造し、炭化水素製造装置3で発生した熱エネルギーを、水蒸気製造器2aおよび水素製造器2bの少なくとも一方に供給する、発熱反応により炭化水素(メタン)を製造する燃料製造システム。』についての発明(以下「甲1発明」という。)が記載されているといえる。
(3)本1発明の進歩性について
ア 対比
本1発明と甲1発明とを対比する。
甲1発明の「水素製造器2b(吸熱反応させて水素を製造する水素製造装置)に、水蒸気と二酸化炭素を供給し、水蒸気および二酸化炭素を電気分解反応させ」は、
その「水蒸気」を「水素製造器2b」に供給する構成が、本1発明の「水または水蒸気を供給する水供給経路」に相当し、
その「二酸化炭素」を「水素製造器2b」に供給する構成が、本1発明の「二酸化炭素を供給する二酸化炭素供給経路」に相当し、
その「電気分解反応」を行うために必要な電力を供給する構成が、本1発明の「電力を供給する電力供給経路」に相当し、
その「水蒸気および二酸化炭素を電気分解反応」させる「水素製造器2b(吸熱反応させて水素を製造する水素製造装置)」は、甲第1号証の段落0024に記載の「電気分解反応」が、本件特許明細書の段落0004に記載の固体酸化物形電気分解セル(SOEC)を用いているのか不明であるところ、本1発明の「前記水供給経路と前記二酸化炭素供給経路と前記電力供給経路とが接続されるSOEC共電解装置」と「前記水供給経路と前記二酸化炭素供給経路と前記電力供給経路とが接続される共電解装置」の点で少なくとも共通する。
甲1発明の「一酸化炭素を含む気体と、水素とを反応させてメタンを製造」する「炭化水素製造装置3」は、本1発明の「メタン反応器」に相当する。
甲1発明の「水素製造器2b」で製造された「水素および一酸化炭素を炭化水素製造装置3に供給」する構成は、供給するためには、何らかの接続経路が設けられることは明らかであるから、本1発明の「前記…共電解装置と前記メタン反応器とを接続する接続経路」に相当する。
甲1発明の「発熱反応により炭化水素(メタン)を製造する燃料製造システム」は、本1発明の「メタン生成システム」に相当する。
してみると、本1発明と甲1発明は『水または水蒸気を供給する水供給経路と、二酸化炭素を供給する二酸化炭素供給経路と、電力を供給する電力供給経路と、前記水供給経路と前記二酸化炭素供給経路と前記電力供給経路とが接続される共電解装置と、メタン反応器と、前記共電解装置と前記メタン反応器とを接続する接続経路と、を備えるメタン生成システム。』という点において一致し、次の(α)~(γ)の3つの点で相違する。
(α)本1発明は「前記SOEC共電解装置と前記メタン反応器との間で熱交換を行う第1熱交換部」を備えるのに対して、甲1発明は「炭化水素製造装置3で発生した熱エネルギーを、水蒸気製造器2aおよび水素製造器2bの少なくとも一方に供給」するものである点
(β)本1発明は「前記メタン反応器に前記SOEC共電解装置より温度が高い領域があって、前記第1熱交換部は、伝熱面近傍に存在する前記SOEC共電解装置の流体と前記メタン反応器の前記SOEC共電解装置の流体より温度が高い領域の流体との温度差による熱交換により、前記メタン反応器で発生した熱を取り去りSOEC共電解装置にて利用する」のに対して、甲1発明は、炭化水素製造装置3(メタン反応器)に、水素製造器2b(共電解装置)より温度が高い領域があるか否か不明である点
(γ)共電解装置が、本1発明は「SOEC共電解装置」であるのに対して、甲1発明は、固体酸化物形電気分解セル(SOEC)を用いる共電解装置であるか否か不明である点
イ 判断
事案に鑑み、先ず、上記(β)の相違点について検討するに、甲第1~5号証及び参考例Aには「伝熱面近傍に存在する前記SOEC共電解装置の流体と前記メタン反応器の前記SOEC共電解装置の流体より温度が高い領域の流体との温度差による熱交換により、前記メタン反応器で発生した熱を取り去りSOEC共電解装置にて利用」する構成の「第1熱交換部」について示唆を含めて記載がない。
そして、本件特許の出願時の技術常識を考慮しても、甲1発明において共電解装置とメタン反応器の伝熱面近傍などの具体的システムの構造ないし構成がないから、上記(β)の相違点に係る構成を導き出すことが、当業者にとって容易であるとはいえない。
また、本1発明は上記(β)の相違点に係る構成を具備することにより、反応が生じる部分の温度関係としては熱利用が想定しにくい装置間の熱交換を行い、熱を有効に利用できるという当業者が予測できない、かつ顕著な効果を奏するものである。
したがって、上記(α)及び(γ)の相違点について検討するまでもなく、本1発明は、甲1発明並びに甲第1~5号証及び参考例Aに記載された技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえないから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものに該当しない。
ウ 申立人の主張について
申立人意見書の第8頁において、申立人は『特定の機器から発生した熱エネルギーを他の機器で利用するための技術的手段の一つとして、当該熱エネルギーを熱交換する熱交換部を採用することは当業者が通常行う技術的手段の選択であり、このような熱交換部では、特定の機器の流体と他の機器の流体との伝熱面において、特定の機器の流体と他の機器の流体との温度差による熱交換を温度の高い側から熱を取り去り且つその熱を温度の低い側に与える(温度の低い側で利用する)ように構成することも、本件特許の出願時の技術常識である。』と主張する。
しかしながら、甲第1~5号証には「特定の機器の流体と他の機器の流体との伝熱面において、特定の機器の流体と他の機器の流体との温度差による熱交換を温度の高い側から熱を取り去り且つその熱を温度の低い側に与える(温度の低い側で利用する)ように構成すること」について示唆を含めて記載がなく、伝熱面近傍に存在する「メタン反応器の流体」と「SOEC共電解装置の流体」との温度差による熱交換を、伝熱面近傍で直接的に熱交換をするものについて、一般論として、伝熱面において、温度差による熱交換を行い、温度の高い側から熱を取り去り温度の低い側で利用すること自体が知られていたとしても、引1発明において「伝熱面近傍に存在」する異なる装置の流体の「温度差による熱交換」を利用すること、及び反応部分の温度としてはメタン反応器の反応部温度より高温が想定されるにもかかわらず、メタン反応器で発生した熱を取り去り「SOEC共電解装置にて利用する」という構成を導入することに動機付けがないので、申立人意見書の上記主張は採用できない。
(4)本3発明の進歩性について
本3発明は、本1発明を引用して、さらに限定したものであるから、本1発明の進歩性が、甲第1~5号証及び参考例Aによって否定できない以上、本3発明の進歩性を否定することができない。
したがって、本3発明は、甲1発明並びに甲第1~5号証及び参考例Aに記載された技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではなく、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものに該当しない。
(5)本17発明の進歩性について
本17発明は、本1発明の構成に「前記SOEC共電解装置に前記水供給経路により供給される前記水または水蒸気を前記メタン反応器の反応熱によって加熱する予備熱交換部」を備えるという構成を付加して、さらに限定したものに相当するから、本1発明の進歩性が、甲第1~5号証及び参考例Aによって否定できない以上、本17発明の進歩性を否定することができない。
したがって、本17発明は、甲1発明並びに甲第1~5号証及び参考例Aに記載された技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではなく、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものに該当しない。
4.取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について
(1)申立理由1(進歩性)について
申立人が主張する申立理由1(進歩性)は、請求項1~3及び17に係る発明は、甲第1号証~甲第3号証に記載された発明に基いて、当業者が容易になし得た発明であるから、特許法第29条第2項(同法第113条第2号)の規定に違反するというものである。
そして、請求項1、3及び17に係る発明に対する申立理由1(進歩性)は、上記第4の〔理由1〕において採用されている。
また、請求項2に係る発明に対する申立理由1(進歩性)について、請求項2に係る発明は、請求項1に係る発明を引用して、両装置の位置関係をさらに限定したものであるから、請求項1に係る発明の進歩性が、甲第1~5号証及び参考例Aによって否定できない以上、請求項2に係る発明の進歩性を甲第1~3号証によって否定することができない。
したがって、請求項2に係る発明は、甲第1号証~甲第3号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではなく、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものに該当しないから、請求項2に係る発明に対する申立理由1(進歩性)に理由はない。
(2)申立理由2(サポート要件)について
申立人が主張する申立理由2(サポート要件)は、本件明細書には定性的な説明はあるものの(0014段落)、本件発明の構成によりどの程度メタン変換効率が向上し、どの程度メタン生成量を安定化させることができたかに関する定量的かつ具体的な実験例等の記載がなく、熱が高温から低温に移動するという熱力学第2法則に基づけば、メタン反応器がSOEC共電解装置より高温であることが前提になるのに、甲第2~5号証の作動温度に関する技術常識をみると、この前提が反映されてない本件特許発明は課題を解決できない構成を含んでおり、特許法第36条第6項第1号(同法第113条第4号)に規定する要件を満たさないというものである。
そして、本件特許発明に対する申立理由2(サポート要件)は、上記第4の〔理由3〕において実質的に採用されているから、取消理由において採用しなかった特許異議申立理由に該当しない。
(3)申立理由3(実施可能要件)について
申立人が主張する申立理由3(実施可能要件)は、本件明細書にはSOEC共電解装置及びメタン反応器の作動温度が記載されておらず、形状や配置等に関しても設計指針や具体例の記載がなく、メタン変換効率を上げるために当業者が過度の試行錯誤を余儀なくされることは明らかであるから、本件特許発明は実施可能要件を充足せず、特許法第36条第4項第1号(同法第113条第4号)に規定する要件を満たさないというものである。
そして、本件特許発明に対する申立理由3(実施可能要件)は、上記第4の〔理由2〕において実質的に採用されているから、取消理由において採用しなかった特許異議申立理由に該当しない。
第7 むすび
以上のとおり、取消理由通知に記載した取消理由、並びに特許異議申立人が申立てた理由及び証拠によっては、請求項1~19に係る特許を取り消すことができない。
また、ほかに請求項1~19に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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