特許異議申立
2023-700888
逆止弁
- 審判番号
- 2023-700888
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2019-137505
- 登録番号
- 7230725
- 請求日
- 2023年08月30日
- 審決日
- 2024年03月22日
- 公報発行日
- 2024年06月28日
- 結論
- 請求成立(取消)
- 当事者
- 【権利者】トヨタ紡織株式会社
- 【権利者代理人】恩田 誠
- 【権利者代理人】恩田 博宣
- 【異議申立人】辰巳 正毅
- 審判長/審判官
- 審判長 村上 聡
- 審判官 柿崎 拓
- 審判官 長馬 望
- 分類
- P1651.121-ZC (F16K)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第113条第2号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7230725号発明「逆止弁」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7230725号の請求項1、3、4に係る特許を取り消す。
同請求項2に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7230725号の請求項1~4に係る特許(以下「本件特許」という。)についての出願は、令和元年7月26日に出願され、令和5年2月20日にその特許権の設定登録がされ、令和5年3月1日に特許掲載公報が発行された。本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。
令和5年 8月30日 : 特許異議申立人 辰巳 正毅(以下「特許異議申立人」という。)による請求項1~4に係る特許に対する特許異議の申立て
令和5年11月 8日付け: 取消理由通知書
なお、令和5年11月8日付け取消理由通知により、特許権者 トヨタ紡織株式会社(以下「特許権者」という。)に取消理由を通知し、期間を指定して意見書を提出する機会を与えたが、特許権者による意見書の提出はされていない。
第2 本件特許発明
本件特許に係る請求項1~4に係る発明(以下、請求項順に「本件特許発明1」~「本件特許発明4」という。)は、本件特許の特許請求の範囲の請求項1~4に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
「【請求項1】
液体を排出する排出通路に設けられ、円形の保持孔及び前記液体が流れる複数の排出孔を有する弁座と、前記保持孔に挿通される軸部と、前記軸部における前記排出通路の下流側に設けられ、前記軸部を中心に拡径されるとともに外周側ほど前記弁座側に位置する傘部とを有する弁体と、を備え、常には前記傘部が前記排出孔の各々を閉塞する一方、前記排出孔を通じて前記傘部に作用する前記液体の重力により前記傘部が弾性変形することによって前記液体の排出を許容する逆止弁において、
前記軸部の軸線方向における基端側及び先端側を基端側及び先端側とするとき、
前記保持孔における基端側の内周縁部には、先端側ほど内径が小さくされた案内面が設けられ、
前記軸部における前記保持孔よりも先端側には、前記保持孔の内径よりも大きい外径の最大外径部から先端側に向かって延びるとともに先端側ほど外径が小さくされたテーパ面を有する抜け止め部が設けられ、
前記軸部の軸線に対する前記テーパ面の傾斜角度は、前記軸線に対する前記案内面の傾斜角度よりも小さい、
逆止弁。
【請求項2】
前記軸線方向における前記テーパ面の長さは、前記軸線方向における前記保持孔の長さよりも大きい、
請求項1に記載の逆止弁。
【請求項3】
前記軸部における前記テーパ面の先端の部分は、前記保持孔の内径よりも小さい外径を有しており、
前記軸部における前記テーパ面の先端よりも先端側の部分は、前記テーパ面の先端の部分と同一またはそれよりも小さい外径を有している、
請求項1または請求項2に記載の逆止弁。
【請求項4】
前記軸部における基端側の部分には、前記案内面の最大内径よりも拡径されるとともに前記弁座の基端側の面に対向する対向部が設けられており、
前記抜け止め部と前記対向部とによって前記弁座が挟持されている、
請求項1~請求項3のいずれか一項に記載の逆止弁。」
第3 取消理由通知に記載した取消理由について
1 取消理由の概要
当審が令和5年11月8日付けで特許権者に通知した取消理由の概要は、次のとおりである。
(進歩性)請求項1に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された以下の引用文献1に記載された発明、及び引用文献2、引用文献3に記載されたような周知の事項に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
請求項3に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された以下の引用文献1に記載された発明、引用文献2、引用文献3に記載されたような周知の事項及び慣用されている技術に基いて、本件特許出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項3に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
請求項4に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された以下の引用文献1に記載された発明、引用文献2、引用文献3に記載されたような周知の事項及び慣用されている技術に基いて、本件特許出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項4に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
引用文献1:特開2017-194085号公報(甲第1号証)
引用文献2:特開2009-250363号公報(甲第2号証)
引用文献3:特開2019-32053号公報(甲第3号証)
2 引用文献の記載
(1)引用文献1
ア 引用文献1の記載
特許異議申立人が提出し、令和5年11月8日付け取消理由通知で引用した前記引用文献1には、以下の事項が記載されている(下線は、理解のため当審で付与した。以下、同様。)。
(ア)「【0013】
吸気システムにおいて、吸気管(吸気ダクト)1を通流する空気が、エアクリーナなどを経て内燃機関に供給される。本実施形態では、吸気管1から分岐するようにヘルムホルツ型レゾネータ2が設けられており、排水弁は、レゾネータ2の下部に設けられている。吸気システムの中において、排水弁が設けられる部位は消音器に限定されず、エアクリーナのチャンバーの下部や、吸気管の下部であってもよい。
【0014】
図2及び図3に示すように、排水弁は、弁体4と基部3とを有していて、弁体4が基部3に取り付けられて、開閉可能に排水弁が構成される。また、弁体4はレゾネータ2の外面側に取り付けられている。なお、図2では、弁体4がレゾネータのケースの外周側から基部3に取り付けられる様子を描いている。
【0015】
弁体4は、弾性材料により形成されており、可撓性を有している。弾性材料としては、典型的にはゴム材料や熱可塑性エラストマー材料が使用される。ゴム材料としては、例えば、シリコーンゴムやエチレンプロピレンジエンゴムなどが使用できる。
【0016】
基部3は、レゾネータ2のチャンバー部分を画成するレゾネータケースの下面に設けられていて、基部3はレゾネータケースの一部として形成されている。基部3には、排水穴30,30が設けられている。排水穴30,30は、レゾネータ2のチャンバーの内部と外部を連通するように、基部3を貫くように設けられていて、排水穴30,30を水が通過して、レゾネータチャンバー内部の水が外に排出される。
【0017】
弁体4は、略円盤状の弁主部41を有し、弁主部41の中心部で基部3に対して取り付けられる。弁主部41は略一定の厚みを有する薄板状である。弁主部41の厚みは中心から周縁部に向かうにつれて薄くなるように形成されていてもよい。本実施形態においては、弁主部41は円形の周縁形状に形成されていている。そして、弁主部41の中心部に軸部材42が一体成形されていて、基部3の中央部に設けられた取り付け穴32に軸部材42が挿入され、係止されることによって、弁体4が基部3に取り付けられている。
【0018】
そして、弁体4は、排水穴30,30を覆うように取り付けられている。このように弁体4が基部3に取り付けられて排水弁が構成され、弁体4により、吸気システム内に侵入した水の排水が許容される一方で、吸気システムの外からの水の浸入が阻止されることになる。すなわち、排水弁はいわゆる逆止弁のように動作する。
【0019】
そして、弁体4の弁主部41は円錐面状に形成されている。すなわち、弁主部41は、円盤状であり、かつ円錐面状である、開いた傘のような形状をしている。本実施形態では、円錐状の弁主部41を傘に見立てた際に、傘の内側に対応する弁主部の面41aが、基部3に当接するよう構成されている。換言すると、弁主部の面41aは、円錐状の弁主部41において、円錐状の面に沿って径方向外側に進む際に、円錐の中心軸沿いに進む側の面である。傘において、持ち手が存在する側の面ということもできる。なお、弁体4は、傘の内側に対応する弁主部の面41aで基部3と当接することが好ましいが、これは必須ではない。
【0020】
基部3が弁体4に対向する部分の表面には、排水穴30,30を取り囲むように、弁主部41の直径DVよりも小さな直径DBでリング状の領域Rが設けられている。弁主部41と基部3とは、リング状領域Rの部分で当接している。リング状の領域Rの幅は特に限定されないが、リング状領域Rの幅を狭くした方が、弁主部41との接触面圧が高められて好ましい。なお、リング状領域Rの直径DBとは、領域Rのリングの幅方向の外側で測った直径とする。
そして、基部3のリング状領域Rが弁主部41と当接することによって弁が閉じられる。すなわち、排水弁の止水は、リング状領域Rと弁主部41が当接し、当接部がシールされることでなされる。」
(イ)「【0025】
弁体4の軸部材42を、基部3の取り付け穴32に挿入して、軸部材の先端部に設けられた拡径部によって、軸部材42が基部の取り付け穴32から脱落しないようにして、弁体4を基部3に取り付けて、上記実施形態の排水弁を組み立てる。弁体が脱落しないように組み立てられるのであれば、取付は他の手段、例えば、弁主部41の中央部をねじ止めするような手段であってもよい。
【0026】
上記実施形態の排水弁の作用と効果について説明する。
レゾネータ内部に水が侵入してくると、水の重さにより、弁体4が開弁して、水が排出される。また、車両が冠水地域を走行するなどしてレゾネータの外部まで水位が上がったような場合においては、弁体4が閉じて、即ち、弁主部41とリング状領域Rの間がシールされて、レゾネータ内部への水の侵入が阻止される。
そして、上記実施形態の排水弁を内燃機関の吸気システムに用いれば、吸気脈動に起因する異音の発生を抑制できる。」
(ウ)図1~図3には、次の事項が図示されている。
【図1】
[図:0001411337000001.jpg]
【図2】
[図:0001411337000002.jpg]
【図3】
[図:0001411337000003.jpg]
(エ)引用文献1の段落【0017】(前記(ア))等に記載された基部3に設けられた取り付け穴32は、軸部材42が挿入されるものであり、図2(前記(ウ))の図示内容等を踏まえると、円形であるといえ、引用文献1の段落【0016】(前記(ア))等に記載された基部3に設けられた排水穴30,30は、図2(前記(ウ))の図示内容等を踏まえると、複数あるといえる。
(オ)引用文献1の段落【0017】、【0019】(前記(ア))には、弁主部41について、中心部に軸部材42が一体成形されること、円錐面状に形成されることが記載されており、段落【0026】(前記(イ))に記載された「レゾネータ内部に水が浸入してくると、水の重さにより、弁体4が開弁して、水が排出される。」という作用や、図1、図3(前記(ウ))の図示内容等も考慮すると、弁主部41は、軸部材42におけるヘルムホルツ型レゾネータ2の下部の下流側に設けられ、中心部に軸部材42が一体成形されつつ円錐面状に形成されるとともに、外周側ほど基部3側に位置するものといえる。
(カ)引用文献1の図3(前記(ウ))の図示内容によると、軸部材42の軸方向における弁主部41が一体成形された側及びその反対側の先端部側を弁主部側及び先端部側とするとき、取り付け穴32における弁主部側の内周縁部には、先端部側ほど内径が小さくされた部分が設けられているといえる。
(キ)引用文献1の段落【0025】(前記(イ))には、軸部材42の先端部に拡径部が設けられることが記載されており、図3(前記(ウ))の図示内容等も考慮すると、軸部材42における取り付け穴32よりも先端部側には、取り付け穴32の内径よりも大きい外径の最大外径部から先端部側に向かって延びるとともに先端部側ほど外径が小さくされた拡径部が設けられているといえる。
(ク)引用文献1の図3(前記(ウ))の図示内容によると、軸部材42における弁主部側の部分には、取り付け穴32における弁主部側の先端部側ほど内径が小さくされた部分の最大内径よりも大きな外径を有するとともに基部3の主弁部側の面に対向する部分が設けられ、拡径部と前記対向する部分の間に基部3が配置されているといえる。
イ 引用発明
前記ア(ア)~(ク)及び図面の図示内容を総合すると、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
[引用発明]
「吸気管1から分岐するように設けられ、レゾネータチャンバー内部の水が外に排出されるヘルムホルツ型レゾネータ2の下部に設けられ、円形の取り付け穴32及び前記水が通過する複数の排水穴30,30が設けられた基部3と、前記取り付け穴32に挿入される軸部材42と、前記軸部材42における前記ヘルムホルツ型レゾネータ2の下部の下流側に設けられ、中心部に前記軸部材42が一体成形されつつ円錐面状に形成されるとともに外周側ほど前記基部3側に位置する弁主部41とを有する弁体4と、を備え、前記基部3の前記排水穴30,30を取り囲むように設けられたリング状領域Rが前記弁主部41と当接することによって閉じられる一方、前記ヘルムホルツ型レゾネータ2内部に水が浸入してくると、水の重さにより、弾性材料により形成されており可撓性を有している弁体4が開弁する排水弁において、
前記軸部材42の軸方向における弁主部41が一体成形された側及びその反対側の先端部側を弁主部側及び先端部側とするとき、
前記取り付け穴32における弁主部側の内周縁部には、先端部側ほど内径が小さくされた部分が設けられ、
前記軸部材42における前記取り付け穴32よりも先端部側には、前記取り付け穴32の内径よりも大きい外径の最大外径部から先端部側に向かって延びるとともに先端部側ほど外径が小さくされた拡径部が設けられ、
前記軸部材42における弁主部側の部分には、前記取り付け穴32における弁主部側の先端部側ほど内径が小さくされた部分の最大内径よりも大きな外径を有するとともに前記基部3の主弁部側の面に対向する部分が設けられ、
前記拡径部と前記対向する部分の間に前記基部3が配置されている、
排水弁。」
(2)引用文献2
特許異議申立人が提出し、令和5年11月8日付け取消理由通知で引用した前記引用文献2には、以下の事項が記載されている。
ア 「【0017】
図1に単体形状を示す弁本体17は、軸17Xを中心とする回転対称形状をしている。この弁本体17は、弾性材料の一体成形品からなるもので、自由状態で円錐状(平面円形)をなす傘状シール部171を有し、この傘状シール部171の中心に、軸部172が形成されている。この弁本体17の傘状シール部171のテーパ角度(軸部172に直交する平面となす角)φは、図示例では10゜に設定されている。軸部172には抜止突起173が形成されている。
【0018】
弁座シート16は、全体として平面状をなしていて、弁本体17の傘状シール部171の周縁が面接触するシール面161と、このシール面161の中心に形成された円形凹部162を有している。そして、円形凹部162の中心部には、弁体支持孔163が形成されており、偏心部分には、複数の流体流通孔164が形成されている。この流体流通孔164は、図4の可変容積室12と入口側液溜室15A(出口側液溜室15B)を連通させる。弁本体17の軸部172は、弁座シート16の弁体支持孔163に挿入され、その抜止突起173が該支持孔163から突出して抜け止める。抜止突起173より先の軸部172’は、軸部172を弁体支持孔163にセットした後、切除される。
【0019】
図2に示す弁座シート16と弁本体17のセット状態(閉弁状態)では、傘状シール部171の周縁は、弁座シート16のシール面161に面接触していて、円形凹部162には非接触である。また傘状シール部171は、その軸部172周縁では、円形凹部162底面に接触している。また、セット状態では、シール部171は略平面状(あるいは僅かに逆傘状)をなしている。セット状態のシール部171の形状は、例えばその厚さを中心部に行くに従って増す形状とすれば、僅かに傘状とすることも可能である。」
イ 図1、2には、次の事項が図示されている。
【図1】
[図:0001411337000004.jpg]
【図2】
[図:0001411337000005.jpg]
(3)引用文献3
特許異議申立人が提出し、令和5年11月8日付け取消理由通知で引用した前記引用文献3には、以下の事項が記載されている。
ア 「【0012】
弁座部材2は、樹脂製であって、隔壁部20と、大筒部21と、小筒部22と、を備えている。隔壁部20は、円板状であって、弁軸孔200と、複数の貫通孔201と、弁座側シート面202と、を備えている。弁軸孔200は、隔壁部20を上下方向に貫通している。弁軸孔200は、上下方向に延在している。複数の貫通孔201は、隔壁部20を上下方向に貫通している。複数の貫通孔201は、弁軸孔200を中心とする環状に配置されている。貫通孔201の入口201aは、隔壁部20の上面に開口している。貫通孔201の出口201bは、隔壁部20の下面に開口している。図1に示すように、貫通孔201には、全長に亘って傾斜部Dが配置されている。傾斜部Dの軸Eと、弁軸30の軸A方向と、の間の挟角(軸Eよりも上側の挟角)θ1は、90°を上回っている。傾斜部Dは、弁軸30の軸Aに対して、挟角θ1だけ、傾斜する方向に延在している。傾斜部Dは、上側(上流側)から下側(下流側)に向かって、軸Aに近づく方向(縮径する方向)に延在している。弁座側シート面202は、隔壁部20の下面であって、複数の貫通孔201の出口201bの径方向(弁軸30の軸A方向に対して直交する方向)外側(軸Aを径方向中心とする径方向外側)に配置されている。図2に示すように、弁座側シート面202は、無端環状を呈している。図1、図3に示すように、大筒部21は、上下方向に延在する円筒状を呈している。大筒部21は、隔壁部20の下側に連なっている。小筒部22は、大筒部21よりも小径の、上下方向に延在する円筒状を呈している。小筒部22は、隔壁部20の上側に連なっている。
【0013】
弁体部材3は、ゴム製であって、弁軸30と、傘部31と、を備えている。弁軸30は、上下方向に延在する円柱状を呈している。弁軸30は、弁軸孔200に挿通、固定されている。
【0014】
傘部31は、弁軸30の下端(軸A方向両端のうち、空気の流動方向の下流側の端)に連なっている。傘部31は、弁軸30の軸Aを中心に、径方向外側に拡がっている。傘部31は、複数の貫通孔201の出口201bを、下側から覆っている。傘部31は、弁体側シート面310を備えている。弁体側シート面310は、傘部31の外周縁に配置されている。弁体側シート面310は、無端環状を呈している。弁体側シート面310は、弁座側シート面202に対して、弾性的に離座、着座可能である。」
イ 図1には、次の事項が図示されている。
【図1】
[図:0001411337000006.jpg]
3 当審の判断
(1)本件特許発明1について
ア 対比
以下、本件特許発明1と引用発明とを対比する。
(ア)引用発明の「水」は、本件特許発明1の「液体」に相当し、引用発明の「ヘルムホルツ型レゾネータ2の下部」は、レゾネータチャンバー内部の水を外に排出する部分であるから、本件特許発明1の「液体を排出する排出通路」に相当する。
(イ)引用発明の「取り付け穴32」、「排水穴30,30」及び「基部3」は、それぞれ本件特許発明1の「保持孔」、「排出孔」及び「弁座」に相当し、引用発明の「円形の取り付け穴32及び前記水が通過する複数の排水穴30,30が設けられた基部3」は、本件特許発明1の「円形の保持孔及び前記液体が流れる複数の排出孔を有する弁座」に相当する。
(ウ)引用発明の「軸部材42」は、本件特許発明1の「軸部」に相当し、引用発明の「前記取り付け穴32に挿入される軸部材42」は、本件特許発明1の「前記保持孔に挿通される軸部」に相当する。
(エ)引用発明の「中心部に前記軸部材42が一体成形されつつ円錐面状に形成されるとともに外周側ほど前記基部3側に位置する」という事項は、軸部材42を中心とした円錐面について外周側ほど基部3側に位置することを示しており、本件特許発明1の「前記軸部を中心に拡径されるとともに外周側ほど前記弁座側に位置する」という事項に相当し、引用発明の「弁主部41」は、本件特許発明1の「傘部」に相当する。
(オ)引用発明の「弁体4」は、本件特許発明1の「弁体」に相当する。
(カ)引用発明の「前記基部3の前記排水穴30,30を取り囲むように設けられたリング状領域Rが前記弁主部41と当接することによって閉じられる」という事項は、ヘルムホルツ型レゾネータ2内部に水が浸入していない状態において、弁主部41が複数の排水穴30,30を閉じていることを示しており、本件特許発明1の「常には前記傘部が前記排出孔の各々を閉塞する」という事項に相当する。また、引用発明の「前記ヘルムホルツ型レゾネータ2内部に水が浸入してくると、水の重さにより、弾性材料により形成されており可撓性を有している弁体4が開弁する」という事項は、ヘルムホルツ型レゾネータ2内部に水が浸入してくると、複数の排水穴30,30を通じて水の重さが弁体4に作用し、弁体4を弾性変形させることにより開弁させて排水を可能にすることを示しており、本件特許発明1の「前記排出孔を通じて前記傘部に作用する前記液体の重力により前記傘部が弾性変形することによって前記液体の排出を許容する」という事項に相当する。そして、引用発明の「排出弁」は、前記のような作用や、その形状からみて、本件特許発明1の「逆止弁」に相当する。
(キ)引用発明の「軸方向」、「弁主部41が一体成形された側」及び「その反対側の先端部側」は、それぞれ本件特許発明1の「軸線方向」、「基端側」及び「先端側」に相当し、また、引用発明の「弁主部側」及び「先端部側」とすることは、本件特許発明1の「基端側」及び「先端側」とすることに相当する。
(ク)引用発明の「先端部側ほど内径が小さくされた部分」は、本件特許発明1の「先端側ほど内径が小さくされた案内面」に相当する。
(ケ)引用発明の「拡径部」は、本件特許発明1の「抜け止め部」に相当し、引用発明の「前記軸部材42における前記取り付け穴32よりも先端部側には、前記取り付け穴32の内径よりも大きい外径の最大外径部から先端部側に向かって延びるとともに先端部側ほど外径が小さくされた拡径部が設けられ」るという事項と、本件特許発明1の「前記軸部における前記保持孔よりも先端側には、前記保持孔の内径よりも大きい外径の最大外径部から先端側に向かって延びるとともに先端側ほど外径が小さくされたテーパ面を有する抜け止め部が設けられ」るという事項とは、「前記軸部における前記保持孔よりも先端側には、前記保持孔の内径よりも大きい外径の最大外径部から先端側に向かって延びるとともに先端側ほど外径が小さくされた抜け止め部が設けられ」た点において共通する。
そうすると、本件特許発明1と引用発明とは、以下の<一致点1>で一致し、以下の<相違点1>で相違する。
<一致点1>
「液体を排出する排出通路に設けられ、円形の保持孔及び前記液体が流れる複数の排出孔を有する弁座と、前記保持孔に挿通される軸部と、前記軸部における前記排出通路の下流側に設けられ、前記軸部を中心に拡径されるとともに外周側ほど前記弁座側に位置する傘部とを有する弁体と、を備え、常には前記傘部が前記排出孔の各々を閉塞する一方、前記排出孔を通じて前記傘部に作用する前記液体の重力により前記傘部が弾性変形することによって前記液体の排出を許容する逆止弁において、
前記軸部の軸線方向における基端側及び先端側を基端側及び先端側とするとき、
前記保持孔における基端側の内周縁部には、先端側ほど内径が小さくされた案内面が設けられ、
前記軸部における前記保持孔よりも先端側には、前記保持孔の内径よりも大きい外径の最大外径部から先端側に向かって延びるとともに先端側ほど外径が小さくされた抜け止め部が設けられた、
逆止弁。」
<相違点1>
本件特許発明1は、「テーパ面を有する」抜け止め部が設けられ、「前記軸部の軸線に対する前記テーパ面の傾斜角度は、前記軸線に対する前記案内面の傾斜角度より小さい」のに対し、引用発明は、拡径部がテーパ面を有するといえるか明らかでなく、軸部材42の軸方向に対する、拡径部の傾斜角度と、取り付け穴32における弁主部側の内周縁部に設けられた先端部側ほど内径が小さくされた部分の傾斜角度との関係も明らかでない点。
イ 判断
以下、<相違点1>について検討する。
まず、本件特許発明1の「テーパ面」の意味を検討すると、本件特許発明1は、「前記軸部の軸線に対する前記テーパ面の傾斜角度は、前記軸線に対する前記案内面の傾斜角度より小さい」ことを発明特定事項とするものであり、テーパ面の傾斜角度は、案内面の傾斜角度と比較し得るものでなければならないと理解できるから、テーパ面とは、軸線に対するその傾斜角度が特定の角度に定まる面、つまり傾斜角度が一定である面を意味していると解するのが自然である。また、本件特許の明細書の発明の詳細な説明の記載(段落【0026】、【0031】等参照。)において、軸部31の軸線Lに対するテーパ面33bの傾斜角度がαという特定の角度で規定されていることを参酌しても上述のように解することが自然である。
一方、引用発明の拡径部は、引用文献1の図3(前記2(1)ア(ウ))に図示されるように、軸部材42の軸方向に対する傾斜角度が特定の角度に定まるものでなく、傾斜角度が一定であるともいえないから、「テーパ面」を有しているとはいえない。
したがって、前記<相違点1>は実質的な相違点である。
次に、この<相違点1>について、当業者が容易に想到できるものであるか否かについて検討すると、弁体の軸部を穴部に挿入する逆止弁において、軸部に前記のような「テーパ面」を備えた抜け止め部を設けることは、本件特許の出願前より周知の事項である(例えば、引用文献2の図1、図2(前記2(2)イ)、引用文献3の図1(前記2(3)イ)参照。)。そして、引用発明の拡径部は、軸部材42が基部の取り付け穴32から脱落しないようにするためのものである(引用文献1の段落【0025】(前記2(1)ア(イ)))から、前記周知の事項にならい、「テーパ面」を備えたものとすることは、当業者が容易に想到し得たものである。
また、引用発明の取り付け穴32における弁主部側の内周縁部に設けられた先端部側ほど内径が小さくされた部分(以下「取り付け穴32の先端部側ほど内径が小さくされた部分」という。)は、当業者がみれば、軸部材42を取り付け穴32に挿入する作業を容易にするためのものであることは明らかであり、前記したように、引用発明の拡径部を、前記周知の事項にならい、「テーパ面」を備えたものとする際、軸部材42の軸方向に対する、「テーパ面」の傾斜角度を、「取り付け穴32の先端部側ほど内径が小さくされた部分」の傾斜角度よりも小さくすることにより、軸部材42を挿入する作業がより容易になることも、当業者にとって、明らかである。
そうすると、引用発明の拡径部を、前記周知の事項にならい、「テーパ面」を備えたものとする際、軸部材42の軸方向に対する、「テーパ面」の傾斜角度を、「取り付け穴32の先端部側ほど内径が小さくされた部分」の傾斜角度よりも小さくすることに格別の困難性はない。
また、本件特許発明1は、「前記軸部の軸線に対する前記テーパ面の傾斜角度は、前記軸線に対する前記案内面の傾斜角度より小さい」ことを発明特定事項とするものであるが、案内面の傾斜角度や、テーパ面の傾斜角度が特定されていないから、案内面の傾斜角度が大きくなれば、テーパ面の傾斜角度が大きいものも含まれることになる(例えば、本件特許の明細書及び図面に比較例として記載された図5、図6に係るテーパ面233bの傾斜角度と同様の傾斜角度を備えたテーパ面も含み得るものであり、その場合、本件特許の図面の図7において比較例を示す一点鎖線と同様に挿入加重が推移すると解される。)。すると、抜け止め部の軸線方向における長さが必ずしも長くなるとはいえず、抜け止め部の剛性も必ずしも高められるとはいえないものである。
そうすると、本件特許発明1は、本件特許の明細書の段落【0012】、【0032】等に記載された、弁体の誤組み付けを抑制できるという効果を必ずしも奏するとはいえないから、引用発明と比較した有利な効果を認めることはできない。
ウ まとめ
以上のとおりであるから、本件特許発明1は、引用発明及び前記周知の事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
(2)本件特許発明3について
ア 対比
本件特許発明3と引用発明とを対比すると、前記(1)アに示した、本件特許発明1と引用発明との対比と同様に対比をとることができ、本件特許発明3と引用発明とは、前記<一致点1>で一致し、前記<相違点1>の他、以下の<相違点2>で相違する。
<相違点2>
本件特許発明3は、「前記軸部における前記テーパ面の先端の部分は、前記保持孔の内径よりも小さい外径を有しており、前記軸部における前記テーパ面の先端よりも先端側の部分は、前記テーパ面の先端の部分と同一またはそれよりも小さい外径を有している」のに対し、引用発明は、軸部材42における拡径部の先端の部分の外径と、取り付け穴32の内径との関係や、拡径部の先端よりも先端部側の部分の外径との関係が明らかでない点。
イ 判断
<相違点1>についての判断は、前記(1)イに示したとおりである。
次に<相違点2>について検討する。
抜け止め部を備えた軸状の部品を穴部に挿入する際、軸状の部品の抜け止め部よりも先端側の外径を、穴部の内径よりも小さくすることにより、軸状の部品を穴部に挿入する作業を容易にすることは、この特許の出願前から慣用されている技術であり、この点は引用文献1の図3(前記2(1)ア(ウ))にも示唆されている。
すると、引用発明において、前記慣用されている技術を適用し、本件特許発明3の相違点2に係る発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たものである。
ウ まとめ
以上のとおりであるから、本件特許発明3は、引用発明、前記周知の事項及び前記慣用されている技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
(3)本件特許発明4について
ア 対比
本件特許発明4と引用発明とを対比すると、前記(1)アに示した、本件特許発明1と引用発明との対比と同様に対比をとることができる。
また、引用発明の「前記軸部材42における弁主部側の部分には、前記取り付け穴32における弁主部側の先端部側ほど内径が小さくされた部分の最大内径よりも大きな外径を有するとともに前記基部3の主弁部側の面に対向する部分が設けられ」るという事項は、本件特許発明4の「前記軸部における基端側の部分には、前記案内面の最大内径よりも拡径されるとともに前記弁座の基端側の面に対向する対向部が設けられて」いるという事項に相当する。
そして、引用発明の「前記拡径部と前記対向する部分の間に前記基部3が配置されている」という事項と、本件特許発明4の「前記抜け止め部と前記対向部とによって前記弁座が挟持されている」という事項とは、「前記抜け止め部と前記対向部との間に前記弁座が配置されている」点において共通する。
そうすると、本件特許発明4と引用発明とは、前記<一致点1>の他、以下の<一致点2>で一致し、前記<相違点1>の他、以下の<相違点3>で相違する。
<一致点2>
「前記軸部における基端側の部分には、前記案内面の最大内径よりも拡径されるとともに前記弁座の基端側の面に対向する対向部が設けられており、
前記抜け止め部と前記対向部との間に前記弁座が配置されている」点。
<相違点3>
本件特許発明4は、「前記抜け止め部と前記対向部とによって前記弁座が挟持されている」のに対し、引用発明は、「前記拡径部と前記対向する部分の間に前記基部3が配置されている」ものの、拡径部と対向する部分とによって基部3を挟持しているか明らかでない点。
イ 判断
<相違点1>についての判断は、前記(1)イに示したとおりである。
次に<相違点3>について検討する。
引用発明の拡径部が、軸部材42が基部の取り付け穴32から脱落しないようにして、弁体4を基部3に取り付けるためのものである(引用文献1の段落【0025】(前記2(1)ア(イ)))ことを踏まえると、引用文献1の図3(前記2(1)ア(ウ))に図示された、軸部材42における弁主部側の基部3の主弁部側の面に対向する部分についても、前記拡径部とともに基部3を挟持し、弁体4を基部3に取り付けるための構成であると把握することができる。そうすると、相違点3は実質的な相違点ではない。
仮に、相違点3が実質的な相違点であるとしても、引用発明において、引用文献1の図3の図示内容に基づいて、拡径部と前記対向する部分とによって基部3を挟持するようにし、本件特許発明4の前記相違点3に係る発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たものである。
ウ まとめ
以上のとおりであるから、本件特許発明4は、引用発明、引用文献1に記載された事項及び前記周知の事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
第4 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について
1 請求項2に係る特許に対する特許異議申立理由について
特許異議申立書において、特許異議申立人が申立てた、請求項2に係る特許に対する特許異議申立理由の概要は、次のとおりである。
本件特許発明2は、甲第1号証(前記引用文献1)に記載された発明、並びに甲第2号証(前記引用文献2)、甲第3号証(前記引用文献3)及び甲第4号証(実願昭55-48625号(実開昭56-149171号)マイクロフィルム、以下「引用文献4」という。)に記載された技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるので、請求項2に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
2 引用文献の記載
(1)引用文献1~3
引用文献1には、前記第3 2(1)アに示した事項が記載され、前記第3 2(1)イに示した引用発明が記載されていると認められる。
また、引用文献2には、前記第3 2(2)に示した事項が記載され、引用文献3には、前記第3 2(3)に示した事項が記載されている。
(2)引用文献4
特許異議申立人が提出した引用文献4には、以下の事項が記載されている。
ア 「以下、図面に基いて本考案によるチエツクバルブブの実施例について説明する。第2図の実施例においては、ゴム様弾性材をもつて、略傘形状に製せられ、略円錐形状を呈する板状部14の両面に第3図の平面図、及び第4図の側視図に示す如く、中心側から外方端へ達する浅溝15を付された弁体10が、連通孔21と取付孔22とを穿たれてケーシング1の内部空室3を流入口4側と流出口5側とに仕切る如くなしてケーシング1に取付けられている隔壁20に、板状部14から突出する取付軸部17を取付孔22へ挿入されて取付けられ、板状部14が隔壁20の側面に圧接して流入口4側と流出口5側とを互いに遮断させ、浅溝10により、板状部14と隔壁20との間にオリフイスを形成させている。」(明細書第4ページ第2行~第16行)
イ 第2図には、次の事項が図示されている。
[図:0001411337000007.jpg]
3 当審の判断
(1)対比
本件特許発明2と引用発明とを対比すると、前記第3 3(1)アに示した、本件特許発明1と引用発明との対比と同様に対比をとることができ、本件特許発明2と引用発明とは、前記<一致点1>で一致し、前記<相違点1>の他、以下の<相違点4>で相違する。
<相違点4>
本件特許発明2は、「前記軸線方向における前記テーパ面の長さは、前記軸線方向における前記保持孔の長さよりも大きい」のに対し、引用発明は、軸方向における拡径部の長さと取り付け穴32の長さとの関係が明らかでない点。
(2)判断
<相違点1>についての判断は、前記第3 3(1)イに示したとおりである。
次に<相違点4>について検討する。
引用文献4には、前記2(2)アに示した事項によると、略傘形状の板状部14から突出する取付軸部17を取付孔22へ挿入して取り付けるチエツクバルブが記載されている。また、第2図(前記2(2)イ)には、該取付軸部17の軸方向の先端側に断面略三角形状の部材が設けられることが図示され、軸方向における該断面略三角形状の部材の長さが、軸方向における取付孔22の長さよりも大きく描かれている。
しかしながら、引用文献4には、軸方向における該断面略三角形状の部材の長さを、軸方向における取付孔22の長さよりも大きくすることに関する技術的な意義について何ら記載されておらず、また、そもそも引用文献4の第2図が正確な寸法関係で描かれているものとはいえない。
そうすると、当業者といえども、引用文献4の記載から、軸方向における該断面略三角形状の部材の長さを、軸方向における取付孔22の長さよりも大きくすることに関する技術的な意義を把握することはできず、引用発明への適用を試みる動機付けは存在しない。
そして、引用文献2及び引用文献3には、本件特許発明2の前記相違点4に係る発明特定事項について、何ら記載も示唆もされていないから、引用発明において、引用文献4に記載された事項に加え、引用文献2に記載された事項及び引用文献3に記載された事項を考慮しても、本件特許発明2の前記相違点4に係る発明特定事項には想到し得ない。
一方、本件特許発明2は、「前記軸線方向における前記テーパ面の長さは、前記軸線方向における前記保持孔の長さよりも大きい」という発明特定事項を備えることにより、「軸線方向における保持孔21の長さを短くできるため、抜け止め部33の最大外径部33aが保持孔21内に進入することで上記挿入荷重が最大となってから上記最大外径部33aが保持孔21を通過するまで、すなわち上記挿入荷重が一定となる期間を短くできる。したがって、作業者が、弁体30の組み付けが完了していないにもかかわらず、組み付けが完了したと誤った判断をすることを抑制できる。」(本件特許の明細書の段落【0034】)という作用効果を奏するものである。さらに、本件特許発明2は、前記発明特定事項を備えることにより、軸線方向におけるテーパ面の長さが、少なくとも軸線方向における保持孔の長さよりも大きくなるため、軸線方向における保持孔の長さよりも短いものと比べて、抜け止め部の長さが長くなり、その結果、抜け止め部の剛性が高くなり、変形がしにくいものとなるから、「作業者は抜け止め部33が保持孔21を通過した際、すなわち弁体30の組み付けが完了した際に、弁体30に対して作用する挿入荷重の大きな変化を自身の手指を通じて感じることができる。したがって、弁座20への弁体30の誤組み付けを抑制できる。」(本件特許の明細書の段落【0032】)という作用効果も奏するものである。
特許異議申立人は、引用文献4には、「・・・軸線方向におけるテーパ面Iの長さは、軸線方向における取付孔22の長さよりも大きいもの」(本件特許異議申立書第20ページ第15行~18行、及び第28ページ第1行~第13行)が開示されているとし、これより、引用発明において、軸方向における拡径部の長さを取り付け穴32の長さよりも大きくすることは、容易に想到し得るものであると解される主張をしている(本件特許異議申立書第28ページ第20行~第23行)。しかし、上記事項が記載されていると請求人が主張する根拠とした引用文献4の第2図は、上記のように、正確な寸法関係で描かれているものとはいえず、また、引用文献4には、軸方向における該断面略三角形状の部材の長さを、軸方向における取付孔22の長さよりも大きくすることに関する技術的な意義について何ら記載されていないから、当業者であっても、引用文献4の記載から、軸方向における該断面略三角形状の部材の長さを、軸方向における取付孔22の長さよりも大きくすることに関する技術的な意義を把握し、これを引用発明に適用することが容易であるとはいえず、特許異議申立人の主張は採用することができない。
4 まとめ
したがって、本件特許発明2は、引用発明、引用文献2に記載された事項、引用文献3に記載された事項及び引用文献4に記載された事項に基いて、当業者といえども、容易に発明をすることができたものではない。
第5 むすび
以上のとおり、本件特許発明1は、引用発明及び前記周知の事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、本件特許発明3は、引用発明、前記周知の事項及び前記慣用されている技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、本件特許発明4は、引用発明、引用文献1に記載された事項及び前記周知の事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1、3、4に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
したがって、請求項1、3、4に係る特許は、特許法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
また、請求項2に係る特許は、特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては取り消すことはできない。さらに、他に請求項2に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
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2023-700888