2023-700780
自動車補修用パテ組成物及びこれを用いた補修塗装方法
- 審判番号
- 2023-700780
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2018-231439外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 登録番号
- 7215816
- 請求日
- 2023年07月27日
- 審決日
- 2023年12月12日
- 公報発行日
- 2024年01月26日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】関西ペイント株式会社
- 【権利者代理人】弁理士法人三枝国際特許事務所
- 【異議申立人】高島 茂誉
- 分類
- P1651.113-Y (C09D) / P1651.121-Y (C09D)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第29条第1項第3号
- データ出所
- 審決公報(XML)
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結論
理由
目次 ▾ 14項目
第1 手続の経緯
特許第7215816号(以下「本件特許」ともいう。)の請求項1~7に係る特許についての出願は、平成30年12月11日の出願であって、令和5年1月23日にその特許権の設定登録がされ、同年同月31日に特許掲載公報が発行された。その後、令和5年7月27日に特許異議申立人である高島茂誉(以下「申立人」という。)によって、その全請求項に係る特許に対して特許異議の申立てがなされたものである。
第2 本件特許の特許請求の記載
本件特許の請求項1~7に係る発明(以下、請求項の項番により「本件発明1」等といい、まとめて「本件発明」ともいう。)は、その特許請求の範囲の請求項1~7に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】不飽和ポリエステル樹脂(A)、重合性不飽和化合物(B)及び体質顔料(C)を含有し、かつ、スチレンを実質的に含まない自動車補修用パテ組成物であって、前記体質顔料(C)の成分の少なくとも1種に、中空粒子(c1)及び平均粒子径2~25μmかつモース硬度が1~3かつ熱伝導率が10W/m・K未満の体質顔料(c2)、及び熱伝導率が10W/m・K以上の熱伝導性フィラーを含有し、前記体質顔料(C)の顔料容積濃度(PVC)が5~70%の範囲内であることを特徴とする自動車補修用パテ組成物。【請求項2】前記体質顔料(c2)が、タルク(含水ケイ酸マグネシウム)、炭酸カルシウム、カオリンクレーから選ばれる少なくとも1種である請求項1に記載の自動車補修用パテ組成物。続きを表示(全14行)【請求項3】前記体質顔料(C)のうち、中空粒子(c1)及び平均粒子径2~25μm以下かつモース硬度が1~3の体質顔料(c2)の併用比率が、顔料容積濃度比で成分(c1)/成分(c2)=20/80~80/20の範囲内である請求項1又は請求項2に記載の自動車補修用パテ組成物。【請求項4】前記体質顔料(C)の全質量に対して、中空粒子(c1)及び平均粒子径2~25μm以下かつモース硬度が1~3の体質顔料(c2)合計質量が、70質量%以上である請求項1~3のいずれか1項に記載の自動車補修用パテ組成物。【請求項5】前記成分(B)が、その成分の一部として、環状構造を有する重合性不飽和化合物(b1)を含有する請求項1~4のいずれか1項に記載の自動車補修用パテ組成物。【請求項6】前記自動車補修用パテ組成物の比重が0.5~1.7の範囲内である請求項1~5のいずれか1項に記載の自動車補修用パテ組成物。【請求項7】塗装体の損傷部に、請求項1~6のいずれか1項に記載の自動車補修用パテ組成物を充填する工程(1)、充填されたパテ組成物を乾燥する工程(2)、乾燥して形成したパテ層を研磨する工程(3)、研磨されたパテ層上に補修用塗料組成物を塗装する工程(4)、を順次行う補修塗装方法。」
第3 特許異議申立ての理由及び証拠方法
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1 概要
申立人は、後記2の申立理由(1)~(4)を主張し、その証拠方法として後記3の甲第1号証~甲第12号証(以下「甲1」等ともいう。)を提出した。これらのうち、甲1~甲3、甲5~甲8、甲10、甲11は、本件特許の出願日よりも前に公開されたものである。
2 申立理由
(1)申立理由1(新規性)
本件発明1、2、5~7は、甲1に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号の規定により特許を受けることができない発明であるから、それらの発明に係る特許は、同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである。
(2)申立理由2(進歩性)
本件発明1~7は、甲1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない発明であるから、それらの発明に係る特許は、同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである。
(3)申立理由3(進歩性)
本件発明1~7は、甲5に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない発明であるから、それらの発明に係る特許は、同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである。
(4)申立理由4(進歩性)
本件発明1~7は、甲6に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない発明であるから、それらの発明に係る特許は、同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである。
3 証拠方法
第4 甲号証の記載
1 甲1には、次の記載がある。
「【0001】本発明は、自動車ボディー等の損傷個所を鈑金修正した後、上塗り塗装前に行う下地補修塗装に用いられるノンスチレン型下地補修用パテと同下地補修用パテを用いた自動車ボディー等の補修方法に関する。」
「【0019】本発明は上述の点に鑑みてされたもので、環境面を重視してスチレンを一切使用することなく、加熱乾燥、常温での自然乾燥で、低VOC、低臭で、かつ皮膚刺激性が少なく、環境負荷が少なく、人体に対して安全で、しかも、塗布作業性、乾燥性、研削性、密着性、耐水性、耐熱性等の特性に優れ、自動車ボディー等の塗装損傷個所の下地補修に好適なノンスチレン型下地補修用パテとこれを用いた補修方法を提供することを課題としている。【課題を解決するための手段】【0020】上記課題を解決するために本発明にかかるノンスチレン型下地補修用パテは、自動車ボディー等の塗装損傷個所を補修するための単官能及び又は多官能(メタ)アクリレートモノマーを反応性希釈剤とする不飽和ポリエステル樹脂を主体とする主剤と、有機過酸化物を主成分とする硬化剤とを含有するノンスチレン型下地補修用パテであって、前記単官能及び又は多官能(メタ)アクリレートモノマーからなる反応性希釈剤が、環式(メタ)アクリレートモノマー(環式有機化合物)である不飽和ポリエステル樹脂からなることを特徴とする。」
「【0030】前記不飽和ポリエステル樹脂固形分として、多塩基酸成分、多価アルコール成分、空乾性成分を用いて製造されているパテ用樹脂の固形分を使用できる。またパテ用樹脂には、汎用パテ用樹脂と防錆処理鋼板用樹脂とがあるが、その何れの固形分も使用でき、樹脂合成終了後に樹脂用安定剤を加え、希釈するモノマー(反応性希釈剤)の沸点以下に冷却後、モノマーを加え溶解することにより、反応性希釈剤とポリエステル樹脂固形分からなり、均一に混合された液状の不飽和ポリエステル樹脂が得られる。」
「【0045】充填剤としては特に限定されないが、タルク、カオリン、クレー、マイカ、アルミナ、無水硅酸、含水硅酸、炭酸カルシウム、胡粉、ドロマイト、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、リトポン、パーライト、ガラス質の中空バルーン、有機質の中空バルーン、ガラス繊維、カーボン繊維、アラミド繊維、ビニロン繊維などを使用できる。【0046】着色顔料としては、酸化チタン、鉄黒、弁柄、カーボンブラックやシアニンブルー等の有機顔料、アルミペースト等を使用できる。【0047】本発明に用いられる有機過酸化物は、従来からポリエステルパテの硬化剤として用いられるベンゾイルパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイド、メチルエチルケトンパーオキサイド、メチルイソブチルケトンパーオキサイド等が挙げられ、可塑剤で希釈されたものを単独又は2種以上混合して使用できる。」
「【0061】・・・【実施例1】【0062】続きを表示(全52行)以下、本発明の下地補修用パテについて実施例を挙げて説明する。【0063】本実施例の下地補修用パテは下記表1の材料を混合撹拌することによって製造される(材料詳細は前述)。【0064】【表1】[図:0001405834000001.jpg]【0065】以下、詳細に説明する。なお、以下、「部」は「重量部」を示す。【0066】○樹脂1~5:ノンスチレン不飽和ポリエステル樹脂は、不飽和ポリエステル樹脂の固形分を反応性希釈剤としての(メタ)アクリレートモノマー、ジ(メタ)アクリレートモノマーで希釈し、均一に混合することによって下記の表2に示すものが得られた。【0067】【表2】[図:0001405834000002.jpg]【0068】ポリセット1875はディーエイチ・マテリアル株式会社より市販されている防錆鋼板用不飽和ポリエステル樹脂であり、ポリセット1147はディーエイチ・マテリアル株式会社より市販されている汎用のパテ用不飽和ポリエステル樹脂である。【0069】ライトアクリレートBP-4EA(ビスフェノールAのPO付加物ジアクリレート)(共栄社化学株式会社製)は炭素環式のジアクリレートであり、ファンクリルFA152M(ジシクロペンテニルメタクリレート)(日立化成工業株式会社製)は炭素環式のメタアクリレートであり、およびIBXA(イソボニルアクリレート)(大阪有機化学株式会社製)は炭素環式のアクリレートである。【0070】ライトアクリレートBP-4EAは粘度が700~900cpsと高いが、不飽和ポリエステル樹脂の反応性希釈剤として使用できる。但し樹脂の粘度が高くなり取扱いにくくなるので、反応性希釈剤としての(メタ)アクリレートモノマーは300cps以下がのぞましい。【0071】ライトエステルTHF(テトラヒドロフルフリルメタクリレート)(共栄社化学株式会社製)は複素環式の(メタ)アクリレートモノマーであり、カヤラッドR-604(ネオペンチルグリコール変性トリメチロールプロパンジアクリレート)(日本化薬株式会社製)は複素環式のジアクリレートモノマーである。【0072】不飽和ポリエステル樹脂の固形分を反応性希釈剤としてのスチレンおよび(メタ)アクリレートモノマーにより希釈して均一に混合することによって、下記表3の樹脂6~8が得られた。【0073】【表3】[図:0001405834000003.jpg]【0074】ライトエステルM(メチルメタクリレート)(共栄社化株式会社製)とライトエステルHO(2-ヒドロキシエチルメタクリレート)(共栄社化株式会社製)は鎖状のメタクリレートモノマーである。【実施例2】【0075】上記の表2に示す配合により混合撹拌して下記の表4に示す下地補修用パテの主剤を調整した。【0076】【表4】[図:0001405834000004.jpg]【0077】表4の主剤は良好なペースト状であり、臭気が少なく、かつ皮膚刺激性の少ないものが得られた。硬化剤として主剤100部に対し2部のF-10(化薬アクゾ株式会社製)を加え、この混合物に10分セッティングタイムを取った後、60℃の温度で20分間、近赤外線乾燥機(テーピー熱学株式会社製)で加熱した。加熱終了後、タックはなく5分冷却後、#80ペーパーで目詰りすることなく研磨できた。その後、ペーパーの番手を変えながら研磨し、車両補修用の中塗りおよび上塗り塗料を塗布することにより、光沢に優れた仕上がりを得た。【0078】ライトエステルTHFは粘度5cpsと低粘度であり、PII値は0.8と低くかつ低臭で、不飽和ポリエステル樹脂の溶解性に優れたメタクリレートモノマーである。固形分45%の樹脂1は粘度1080cps/25℃と適正な粘度であった。6%ナフテン酸コバルトは大日本インキ化学工業株式会社の商品名であり。ジメチルアニリンは三星化学研究所株式会社の商品名であり、共に促進剤としての役目をなす。ゴーセラックSDは日本合成化学工業株式会社の商品名で市販されている安定剤であり、キノン系化合物を酢酸エチルで溶解したものである。ディスパロン1830は商品名で、楠本化成株式会社の添加剤(湿潤分散剤)である。クラウンタルクSCは松村産業株式会社製のタルク粉末(充填剤)である。タイペークCR-90は石原産業株式会社製の酸化チタン粉末(着色顔料)である。【0079】以下、同様に作成した実施例2~5を下記の表5に示す。【0080】【表5】[図:0001405834000005.jpg]【0081】上記の混合物は全て良好なペースト状であり、臭気が少なく、皮膚刺激性も少なかった。硬化剤を混合撹拌してから鋼板に塗布した。加熱もしくは室温で乾燥させた後、研磨し、その表面に塗装することにより良好な仕上がりを得た。【0082】なお、フローレンG700は共栄社化学株式会社製の添加剤(湿潤分散剤)である。クラウンタルクDRは松村産業株式会社製のタルク粉末であり、炭酸カルシウムは竹原化学工業株式会社製である。」
2 甲2には、次の記載がある。
「【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、溶融成形時のロングラン性の改善された熱可塑性樹脂(A)、エチレン-酢酸ビニル共重合体ケン化物(B)(以下、EVOHと略記する。)、無機充填材(C)及び高級脂肪酸金属塩(D)からなる樹脂組成物に関し、更にそれを用いた成形方法及び多層構造体に関するものである。」
「【0037】[無機充填材(C)]C1;タルク(平均粒子径11μm、タルカンパウダーPK-C(林化成社製))C2;カオリン(平均粒子径0.4μm、ASP200(林化成社製))C3;タルク(平均粒子径22μm、クラウンタルクDR(松村産業社製))[高級脂肪酸金属塩(D)]D1;ステアリン酸カルシウム(日本油脂社製)D2;12-ヒドロキシステアリン酸マグネシウム(栄伸化成社製)」
3 甲3には、次の記載がある。
「【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、化粧台、台所部材、間仕切り、扉、各種テーブル、浴室カウンター、壁材、洗面台等に利用される内外装用の金属箔複合部材及びその製造方法に関する。」
「【0038】・・・充填剤7(比較例)物質名:タルク微粉末商品名:クラウンタルクDR 松村産業(株)製平均粒子径:22μm形状: 不定形・・・」
4 甲4には、次の記載がある。
「[図:0001405834000006.jpg][図:0001405834000007.jpg][図:0001405834000008.jpg][図:0001405834000009.jpg][図:0001405834000010.jpg]」
5 甲5には、次の記載がある。
「【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、光照射により速やかに硬化し、且つ基材との密着性に優れたパテ又はプライマーサーフェーサー組成物、及び硬化方法に関する。【0002】【従来の技術】パテ、プライマー及びプライマーサーフェーサーは産業分野における各種補修用途で使用されている。例えば自動車などの車輌及びプラスチック等の成型品は、成型加工時の成型不良や外力による損傷が生ずることがある。このような場合、損傷部の補修方法の一つとして一般的に損傷部にパテを塗布し硬化させ、その後表面を平滑に研磨し、場合によりプライマー、プライマーサーフェーサーを塗布した後、仕上げ塗装などを行い補修している。」
「【0007】【発明が解決しようとする課題】本発明はこうした現状を鑑み、作業工程時間を短縮した光硬化型で基材表面への密着性を向上したパテ組成物又は作業工程時間を短縮した表面平滑性の良好なプライマーサーフェーサー組成物及びその硬化方法を提供することを目的とする。【0008】【課題を解決するための手段】本発明は、〔1〕.(A)不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、ポリエステル(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート樹脂から選択される一種以上のラジカル重合性樹脂:100重量部、(B)分子内にカルボキシル基を1個以上有するラジカル重合性不飽和化合物:1~100重量部、(C)可視光領域に感光性を有する光重合開始剤及び/または一般式(1)で示される有機ホウ素化合物と酸性化合物の組み合わせである重合開始剤:0.01~10重量部及び(D)充填材:0.1~300重量部を含有することを特徴とするパテ又はプライマーサーフェーサー組成物、【0009】【化2】[図:0001405834000011.jpg]【0010】(式中、R1、R2、R3及びR4は、それぞれ独立してアルキル基、アリール基、アラルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シリル基、複素環基、ハロゲン原子、置換アルキル基、置換アリール基、置換アリル基、置換アラルキル基、置換アルケニル基、置換アルキニル基または置換シリル基を示し、Z+は陽イオンを示す)」
「【0047】本発明の組成物における充填材には無機充填材と有機充填材がある。本発明で使用する無機充填材としては、例えば炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸カルシウム、酸化チタン、水酸化アルミニウム、タルク、カオリン、クレー、シリカ、ガラスビーズ、ガラスバルーン、ガラス粉末、金属粉末、金属繊維、珪藻土等が使用できるが、これらに限定されることなく、これらと同様の作用有する他の樹脂粉末のような有機充填剤、数ミリ以下の無機、有機の短繊維を硬化に影響ない程度使用することもできる。このようなフィラーについては特開平6-271373号、特開昭57-10656号公報などに詳細な記載がある。【0048】本発明で使用される充填材の使用量は、一般的に樹脂等100重量部に対して0.1~300重量部、好ましくは0.5~200重量部、更に好ましくは0.5~150重量部である。充填材の使用量が0.1重量部未満では研磨性が低下する傾向があり、300重量部以上では樹脂等の流動性が低下し、コテ塗り性、スプレー性の低下、塗膜の硬化が不十分になり易く、密着性、耐久性が低下する恐れがある。」
「【0055】【実施例】以下に示す実施例および比較例により本発明を更に具体的に説明する。なお、各実施例および比較例中の「部」および「%」は重量基準である。【0056】実施例1~4および比較例1~2以下に示すパテ組成物の調製と試験板での硬化を行い,パテ塗装の性能を評価した。続きを表示(全17行)<パテ組成物の調製>実施例1では、ビニルエステル樹脂[商品名リポキシR-802:昭和高分子(株)製]:100部、アクリル酸[大阪有機化学工業(株)製]:5部からなる混合物100部に、シリカ微粒子の揺変剤AEROSIL200[日本アエロジル(株)製]:4部、揺変助剤BYK R605[ビックケミージャパン(株)製]:1.6部、可視光領域まで感光性を有するアシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤[商品名イルガキュア-819:チバスペシャリチーケミカルズ製、以下I-819と称す。]:2.0部、トリメチロールプロパントリアクリレート[大阪有機化学工業(株)製、以下TMP3Aと称す]:5部、2-ヒドロキシエチルメタクリレート[製品名ライトエステルHO、共栄社化学(株)製、2-HEMAと称す]:10部、タルク:50部、炭酸カルシウム:50部を混合し、高速ディゾルバーで20分間撹拌・混合し、パテ組成物を得た。【0057】また、実施例2~4および比較例1~2では、実施例1における樹脂、重合開始剤などの配合を第1表に示す配合に変更し、実施例1と同じ操作によりパテ組成物を得た。なお、第1表において、リポキシFM-1600はウレタンメタクリレートリゴラックFK-2000は不飽和ポリエステル樹脂〔昭和高分子(株)製〕、アクリルエステルMLはマレイン酸2-メタクリロイルオキシエチル〔三菱レイヨン(株)製〕、DP4はジブチルホスフェート〔大八化学(株)製〕であり、メタクリル酸は(株)クラレ製のものを使用した。また、PB3は有機ホウ素化合物のテトラ-n-ブチルアンモニウム・トリフェニル-n-ブチルボレート〔昭和電工(株)製〕、CI-2855は光/熱潜在性酸発生剤の有機スルホニウム・六フッ化燐酸塩〔日本曹達(株)製〕、HABIは2,2’-ビス(o-クロロフェニル)-4,5,4’、5’-テトラフェニル-1,2’-ビスイミダゾール〔和光純薬工業(株)製〕である。【0058】<試験板の調製>日本テストパネル工業(株)社製標準パネル(75×150mm):亜鉛メッキ鋼板(ジンクライト)、軟鋼板、ステンレス鋼板、アルミニウム板を使用し、表面を#80サンドペーパーにより軽く研磨し、その後アセトンにより脱脂したものを使用した。【0059】<硬化方法>実施例1~4及び比較例1~2の各パテ組成物を、各試験板上に幅4cm、厚さ3mmになるようにヘラで塗布し、可視光領域の波長を含む光源である2KWメタルハライドランプ[商品名ダイナビーム2:東芝ライテック(株)製:以下ランプ1と称す]を使用して1mの距離(380~450mmの波長領域の光照度:30mW/cm2)で5分間光照射し硬化させた。【0060】<パテ塗装性能評価>実施例1~4及び比較例1~2の得られたパテ塗膜試験片の以下の項目について評価を行った。(1)塗膜硬化性(表面及び内部):所定時間の光照射後、塗膜表面の乾燥性及び内部の硬化状態を指触により評価した。(良好:◎、表面僅かにタックあるが内部硬化:○、表面タックあるが内部は硬化:△、表面タックあり内部硬化不良:×)(2)塗膜密着性:各種パテ塗布試験板を直角に折り曲げ、その折り曲げ部のパテの密着状態を評価した。(良好:○、僅か付着:△、付着なし:×)(3)研磨性:各種パテ塗布試験板の塗膜表面を#400耐水ペーパーにて研磨し研磨状態を評価した。(良好:○、ペーパーへの付着僅かに有り:△、ペーパーへの付着が多く、研磨が重い:×)【0061】以上,実施例1~4及び比較例1~2におけるパテ組成物の配合量とパテ塗装性能評価の結果を第1表に示す。【0062】【表1】[図:0001405834000012.jpg]」
6 甲6には、次の記載がある。
「【0001】本発明は、自動車ボディー等の損傷箇所を補修するための補修用材料、この補修用材料を製造するために使用されるパテ用樹脂材料、及び前記補修用材料等を用いて行われる車体パネルの補修方法に関する。」
「【0019】上記課題を解決するものとして、本発明では不飽和ポリエステル樹脂の多価アルコール成分に、ジシクロペンタジエン及びその誘導体の少なくとも何れか、及び/又はビスフェノールA及びその誘導体の少なくとも何れかを使用している樹脂等、密着性に優れた防錆鋼板用樹脂のみを不飽和ポリエステル樹脂成分として使用し、更にポリスチレン系又はゴム系等の低収縮剤を用いることで、塗布後即加熱可能であり、速乾燥性で、更に硬化後にソリの生じないパテを作成することのできるパテ用樹脂材料を実現した。」
「【0045】体質顔料としては、タルク、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、カオリン、ドロマイト、クレー、マイカ、セライト、シリカ、胡粉、アルミナ、水酸化アルミ、中空バルーン、ガラス粉などを使用することができ、中でも特にタルク、炭酸カルシウムが望ましい。例えばタルクは松村産業(株)から商品名:クラウンタルクSCで提供されており、また炭酸カルシウムは白石カルシウム(株)から入手することができる。」
「【0066】〔実験例1〕本実験例では、表1に示す防錆鋼板用不飽和ポリエステル樹脂及びその他の成分を配合し、パテ用樹脂材料(主剤)を製造した。そして、この製造したパテ用樹脂材料100重量部に対して、硬化剤(化薬アクゾ(株)製)2重量部を配合して混合し、自然乾燥又は加熱乾燥させる。そして、その硬化時間(25℃)、乾燥性(ペーパーの目詰まり)、ソリ、硬化性(1日後のバーコル硬度)、及び密着性(1日後の折り曲げ密着性)を評価した。この評価に際しては、厚さ0.6mm、大きさ70×150mmのボンデ鋼板を#80ペーパーで研磨し、脱脂後1mmの厚みにヘラ付けして行った。【0067】続きを表示(全18行)表2中、「70℃3分加熱」とあるのは、主剤と硬化剤を混合して、これを塗布した直後に70℃で3分間加熱乾燥したことを表し、「100℃2分加熱」とあるのは、主剤と硬化剤を混合して、これを塗布した直後に100℃で2分間加熱乾燥したことを表している。「硬化時間」は25℃の環境下で主剤と硬化剤を混合し始めてから流動性が無くなるまでの時間を計測し、「乾燥性」は室温乾燥の場合は1時間後、加熱乾燥の場合は加熱終了5分後に#80ペーパーで研磨し、目詰まりの有無を調べた。表2中、目詰まりのないものには「○」と評価し、これを乾燥性良好とした。一方「△」は目詰まりやや有りのもの、「×」は目詰まり有りのものを示している。「ソリ」は、パテ付けして1日後のパテ付けされた鋼板のソリの有無を評価した。「硬化性」は1日後のバーコル硬度を、BARBER COLMAN社のバーコル硬度計(製品名:GYZJ935)で測定した。パテとしては50以上の値を必要とし、50以下の場合は硬化不良で、クラック、剥離などの不具合が生じる。「密着性」は、1日後に、パテ付けした鋼板に対して180度の折り曲げを行い、パテを剥離した後の剥離状態を調べた。表2中、凝集破壊を「○」、界面破壊を「×」とし、その中間を「○~△」、「△」、「△~×」とし、「○」及び「○~△」を合格とした。【0068】〔実験例2~5〕パテ用樹脂材料の組成及び配合を表1に示すように変更し、実施例1と同じように評価を行った。その結果を表2に示す。【表1】[図:0001405834000013.jpg]【0069】なお、表1中に記載した各成分(商品名)は前記の通りであり、また「ポリセット1127-1」はディーエイチマテリアル(株)から提供されている、従来型の、防錆鋼板やアルミ板への付着性が劣る汎用のパテ用不飽和ポリエステル樹脂である。【0070】また、表1中の「ポリセット9146」は、有効成分(固形分)であるポリスチレン33重量%をスチレンに溶解してなり、「ハイカVTBN1300X33」は実質的に有効成分(固形分)だけで構成されており、「ユピカA12」は、有効成分(固形分)であるポリスチレン70重量%をスチレンに溶解してなる。」
7 甲7には、次の記載がある。
「【請求項1】 基材上への塗装として使用するためのスプレー塗装が可能でハイソリッドで揮発分の少ない充填剤組成物であって、前記充填剤組成物は充填剤/艶出し成分を含有し、前記充填剤/艶出し成分は、不飽和ポリエステル、ビニルエステル、エポキシ樹脂、アクリルポリオール、ポリエステルポリオール、およびそれらの混合物からなる群から選択される樹脂と、充填剤と、チキソトロープ性の粘土の混合物と、活性ヒュームドシリカと、中空ガラス微小球と、およびケトン溶剤との混合物からなり、前記充填剤組成物は触媒の存在下で硬化することによって耐食性とペーパー仕上げが可能な表面を与える、充填剤組成物。」
「【0038】実施例 1スプレー塗装が可能な充填剤組成物の充填剤/艶出し成分が、本発明に従って調製された。各々の成分の割合を表1に示す。【0039】[図:0001405834000014.jpg]続きを表示(全17行)1 32-374(ライヒホルトケミカルズ社製)2 92-955(ライヒホルトケミカルズ社製)3 MPA-60-x(レオックス社製)4 Advitrol 6-8(ユナイテッドカタリスツ社製)5 Tiona RCL-9(SMCケミカルズ社製)6 MP25-38(ファイザー社製)7 Camel Wite(ゲンスター社製)8 Aerosil 200(デグッサ社製)9 Ten-Cem(ムーニーケミカル社製)10 N,N DMA(デュポン社製)11 37-140(ライヒホルトケミカルズ社製)12 E-22-X Bubbles(3M社製)充填剤組成物は上に挙げた成分の全てを混合することによって調製された。得られた充填剤/艶出し成分はチキソトロープ自由流動性の液体で、粘度がおよそ1500~2500 cps(30RPMでLVT#3)であった。その重量/ガロンは約7.8~8.2 lbs/ガロンであり、揮発分(VOC)は0.62 lbs/ガロンすなわち74.5g/lであり、その可使時間は無限であった。」
8 甲8の5頁右下欄8~15行には、次の記載がある。
「[図:0001405834000015.jpg]」
9 甲9には、次の記載がある。
「[図:0001405834000016.jpg]」
「[図:0001405834000017.jpg]」
10 甲10の11頁右下欄7~9行には、次の記載がある。
「[図:0001405834000018.jpg]」
11 甲11には、次の記載がある。
「[図:0001405834000019.jpg]」
12 甲12には、次の記載がある。
「[図:0001405834000020.jpg]」
第5 当審の判断
1 申立理由1、2(甲1を主たる引用例とした場合)について
(1)甲1に記載された発明
甲1(前記第4の1参照。)の【0001】には、「本発明は、自動車ボディー等の損傷個所を鈑金修正した後、上塗り塗装前に行う下地補修塗装に用いられるノンスチレン型下地補修用パテ」に関するものであることが記載されている。
また、甲1の【0062】に実施例として記載された「下地補修用パテ」は、同【0063】~【0066】に記載されるように、不飽和ポリエステル樹脂の固形分を反応性希釈剤で希釈したノンスチレン不飽和ポリエステル樹脂に、促進剤、重合禁止剤、添加剤、充填剤、着色顔料を添加したものである。
そして、甲1の【0080】の【表5】において、「クラウンタルクDR」を含む「実施例3」に着目し、同【0067】の【表2】の「樹脂3」の組成について【0068】~【0082】の記載も参酌すれば、甲1には、次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されているものと認められる。
(甲1発明)
「樹脂3の46.0重量部(内、樹脂固形分23.0重量部、反応性希釈剤23.0重量部)に、促進剤として6%ナフテン酸コバルトの0.6重量部及びジエチルアニリンの0.3重量部と、安定剤としてゴーセラックSD(キノン系化合物を酢酸エチルで溶解したもの)の0.5重量部と、添加剤としてフローレンG700(湿潤分散剤)の0.3重量部と、充填剤としてクラウンタルクDR(松村産業株式会社製のタルク粉末)の41.3重量部及び炭酸カルシウム(竹原化学工業株式会社製)の10.0重量部と、並びに着色顔料としてタイペークCR90(石原産業株式会社製の酸化チタン粉末)の1.0重量部とを添加した自動車ボディー等の下地補修塗装に用いられるノンスチレン型下地補修用パテであって、樹脂3は、不飽和ポリエステル樹脂であるポリセット1875を、反応性希釈剤であるライトアクリレートBP-4EA(ビスフェノールAのPO付加物ジアクリレート)及びカヤラッドR-604(ネオペンチルグリコール変性トリメチロールプロパンジアクリレート:複素環式のジアクリレートモノマー)で希釈したノンスチレン不飽和ポリエステル樹脂である、下地補修用パテ。」
(2)対比・判断
ア 本件発明1
本件発明1と甲1発明を対比すると、甲1発明の「不飽和ポリエステル樹脂であるポリセット1875」は、本件発明1の「不飽和ポリエステル樹脂(A)」に相当する。
甲1発明の「反応性希釈剤であるライトアクリレートBP-4EA(ビスフェノールAのPO付加物ジアクリレート)及びカヤラッドR-604(ネオペンチルグリコール変性トリメチロールプロパンジアクリレート:複素環式のジアクリレートモノマー)」は、本件発明1の「重合性不飽和化合物(B)」に相当する。
甲1発明の「充填剤としてクラウンタルクDR(松村産業株式会社製のタルク粉末)の41.3重量部及び炭酸カルシウム(竹原化学工業株式会社製)の10.0重量部」は、本件発明1の「体質顔料(C)」に相当する。
甲1発明の「自動車ボディー等の下地補修塗装に用いられるノンスチレン型下地補修用パテ」は、本件発明1の「スチレンを実質的に含まない自動車補修用パテ組成物」に相当する。
また、甲1発明の「クラウンタルクDR(松村産業株式会社製のタルク粉末)」は、甲2(前記第4の2参照。)の【0037】の「C3;タルク(平均粒子径22μm、クラウンタルクDR(松村産業社製))」との記載や甲3(前記第4の3参照。)の【0038】の「物質名:タルク微粉末」「商品名:クラウンタルクDR 松村産業(株)製」「平均粒子径:22μm」との記載によれば、その平均粒子径は22μmである蓋然性が高いから、甲1発明の「クラウンタルクDR(松村産業株式会社製のタルク粉末)」は、本件発明1の「平均粒子径2~25μmかつモース硬度が1~3かつ熱伝導率が10W/m・K未満の体質顔料(c2)」に相当するものと認められる。
一方、甲1発明の「炭酸カルシウム(竹原化学工業株式会社製)」は、本件発明1の「中空粒子(c1)」に該当しないし、同「熱伝導率が10W/m・K以上の熱伝導性フィラー」にも該当しない。
そうすると、両者の一致点及び相違点は次のとおりである。
<一致点>
「不飽和ポリエステル樹脂(A)、重合性不飽和化合物(B)及び体質顔料(C)を含有し、かつ、スチレンを実質的に含まない自動車補修用パテ組成物であって、前記体質顔料(C)の成分の少なくとも1種に、平均粒子径2~25μmかつモース硬度が1~3かつ熱伝導率が10W/m・K未満の体質顔料(c2)を含有する自動車補修用パテ組成物。」
<相違点1>
本件発明1は、「体質顔料(C)の成分の少なくとも1種に、中空粒子(c1)」「及び熱伝導率が10W/m・K以上の熱伝導性フィラーを含有し、前記体質顔料(C)の顔料容積濃度(PVC)が5~70%の範囲内である」のに対し、甲1発明は「充填剤としてクラウンタルクDR(松村産業株式会社製のタルク粉末)の41.3重量部及び炭酸カルシウム(竹原化学工業株式会社製)の10.0重量部」を含むものであるが、中空粒子や熱伝導性フィラーを含むものではなく、また、顔料容積濃度(PVC)の値も不明である点。
前記相違点1について検討する。甲1(前記第4の1参照。)の【0045】には「充填剤としては特に限定されないが、タルク、カオリン、クレー、マイカ、アルミナ、無水硅酸、含水硅酸、炭酸カルシウム、胡粉、ドロマイト、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、リトポン、パーライト、ガラス質の中空バルーン、有機質の中空バルーン、ガラス繊維、カーボン繊維、アラミド繊維、ビニロン繊維などを使用できる。」と記載され、「パーライト、ガラス質の中空バルーン、有機質の中空バルーン」のような中空粒子や、「アルミナ」のような熱伝導性フィラーを添加し得ることが記載されている。
しかしながら、甲1発明において、【0045】に列挙された充填剤の中から、特に中空粒子と熱伝導性フィラーを選択して添加することを示唆するような記載はないし、そうすることが合理的といえるような技術常識も見当たらない。中空粒子と熱伝導性フィラーの添加量が定まらなければ、顔料容積濃度(PVC)の値も特定することはできない。
そうすると、本件発明1は、甲1発明及び甲1に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
また、甲4(前記第4の4参照。)には、申立人が令和5年7月21日に作成した実験成績証明書として、甲第1号証の比較例1の代替材料を用いた試験用組成物(1)の体質顔料の含有量が59.5重量%で比重が1.754であったこと、及び甲5号証の実施例6の代替材料を用いた試験用組成物(2)の体質顔料の含有量が43.5重量%で比重が1.441であったことが記載され、体質顔料の重量%を横軸とし、比重を縦軸としたグラフにおいて、それら2点を結んだものを検量線と称して、甲1、甲5及び甲6に示された各実施例や各比較例の体質顔料の含有量の重量%及び比重の値が、この検量線上に存在することを前提にして、甲1、甲5及び甲6の各実施例や各比較例の体質顔料の含有量の重量%及び比重を推定している。
しかしながら、甲4には、甲1発明、甲5発明又は甲6発明において、中空粒子や熱伝導性フィラーを添加する動機付けになるような記載が存在しないから、本件発明1は、甲1発明、甲1及び甲4に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
また、甲5(前記第4の5参照。)、甲6(前記第4の6参照。)には、後記2及び3で検討するとおり、甲1と類似したパテ組成物が開示され、それらの明細書中には、本件発明1の「中空粒子」や「熱伝導性フィラー」に相当する充填材を添加し得ることが記載されている。
しかしながら、明細書中に列挙された充填剤の中から、特に中空粒子と熱伝導性フィラーを選択して添加することを示唆するような記載はなく、中空粒子と熱伝導性フィラーの添加量が定まらなければ、顔料容積濃度(PVC)の値も特定することはできないから、本件発明1は、甲1発明、甲1、甲5及び甲6に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
また、甲7(前記第4の7参照。)の【0039】の実施例1には、不飽和ポリエステル(32-374:ライヒホルトケミカルズ社製)を38.3重量%、不飽和ポリエステル(92-955:ライヒホルトケミカルズ社製)を7.3重量%、スチレンモノマーを3.9重量%、有機質チキソトロープ性粘土(MPA-60-X:レオックス社製)を4.1重量%、微細タルクを14.68重量%、炭酸カルシウムを9.79重量%、中空ガラス球7.34重量%等を含む充填材組成物が記載されている。
しかしながら、甲7に記載された充填材組成物は、希釈剤としてスチレンモノマーを用いるものであって、スチレンを実質的に含まないものには該当しないから、甲7に記載された中空ガラス球の含有量を甲1発明に適用する動機付けは存在せず、よって、本件発明1は、甲1発明及び甲7に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
また、甲8(前記第4の8参照。)の5頁右下欄8~15行には、ファイザー社製のタルク「MP25-38」が「粒子99.5%が20μm未満」であることが記載され、甲9(前記第4の9参照。)には、「Camel-WhiteTM(2019年7月)」の粒子サイズが3μmであり、炭酸カルシウム92%で構成されることが記載され、甲10(前記第4の10参照。)の11頁右下欄7~9行には、「キャメルホワイト(Camel White)」が、「H.T.キャンベル社により販売されている平均粒径2.5ミクロンを有する炭酸カルシウム」であることが記載され、甲11(前記第4の11参照。)の「AEROSIL(R)の基本的特徴及び性質」には、「真比重2.2」であることが記載され、甲12(前記第4の12参照。)の「“スリーエム”グラス バブルズ E22X」には、「平均粒子密度(真密度)」が「公称g/cc」で「0.22」であることが記載されている。また、甲2、甲3には、前記のとおり、松村産業(株)製の「クラウンタルクDR」の平均粒子径が22μmであることが記載されている。
しかしながら、甲8~甲12、甲2、甲3には、甲1発明において、中空粒子や熱伝導性フィラーを添加する動機付けになるような記載は存在しないから、本件発明1は、甲1発明及び甲8~甲12、甲2、甲3に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
以上をまとめると、本件発明1は、甲1発明及び甲1~甲12に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
イ 本件発明2~7
本件発明2~7は、いずれも本件発明1を全て包含し、それぞれ個別の技術事項を追加したものである。よって、本件発明2~7は、前記アに示した理由と同様の理由により、甲1発明及び甲1~甲12に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明できたものとはいえない。
2 申立理由3(甲5を主たる引用例とした場合)について
(1)甲5に記載された発明
甲5(前記第4の5参照。)の【0001】~【0002】には、「本発明は、光照射により速やかに硬化し、且つ基材との密着性に優れたパテ組成物」であって、「例えば自動車などの車輌及びプラスチック等の成型品」の「補修」に用いることができるものであることが記載されている。
そして、甲5の【0062】の【表1】において、不飽和ポリエステル樹脂を含む「実施例3」に着目し、同【0008】、【0055】~【0057】の記載を参酌すれば、甲5には、次の発明(以下「甲5発明」という。)が記載されているものと認められる。
(甲5発明)
「A(ラジカル重合性樹脂)としてリゴラックFK-2000(不飽和ポリエステル樹脂:昭和高分子(株)製)の100部と、B(カルボキシル基を有するラジカル重合性不飽和化合物)としてアクリルエステルML(マレイン酸2-メタクリロイルオキシエチル:三菱レイヨン(株)製)の5部と、C(光重合開始剤)としてI-819(アシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤[商品名イルガキュア-819:チバスペシャリチーケミカルズ製])の2部と、D(充填材)としてAEROSIL200(シリカ微粒子の揺変剤:日本アエロジル(株)製)の4部、BYK R605(揺変助剤:ビックケミージャパン(株)製)の1.8部、炭酸カルシュウムの50部及びタルクの50部とからなる、自動車の補修に用いることができるパテ組成物。」
(2)対比・判断
ア 本件発明1
本件発明1と甲5発明を対比すると、甲5発明の「リゴラックFK-2000(不飽和ポリエステル樹脂:昭和高分子(株)製)」は、本件発明1の「不飽和ポリエステル樹脂(A)」に相当する。
甲5発明の「アクリルエステルML(マレイン酸2-メタクリロイルオキシエチル:三菱レイヨン(株)製)」は、本件発明1の「重合性不飽和化合物(B)」に相当する。
甲5発明の「D(充填材)としてAEROSIL200(シリカ微粒子の揺変剤:日本アエロジル(株)製)の4部、BYK R605(揺変助剤:ビックケミージャパン(株)製)の1.8部、炭酸カルシュウムの50部及びタルクの50部」は、本件発明1の「体質顔料(C)」に相当する。
甲5発明の「自動車の補修に用いることができるパテ組成物」は、その組成から見て、実質的にスチレンを含まないものであるから、本件発明1の「スチレンを実質的に含まない自動車補修用パテ組成物」に相当する。
そうすると、両者の一致点及び相違点は次のとおりである。
<一致点>
「不飽和ポリエステル樹脂(A)、重合性不飽和化合物(B)及び体質顔料(C)を含有し、かつ、スチレンを実質的に含まない自動車補修用パテ組成物。」
<相違点5>
本件発明1は、「体質顔料(C)の成分の少なくとも1種に、中空粒子(c1)及び平均粒子径2~25μmかつモース硬度が1~3かつ熱伝導率が10W/m・K未満の体質顔料(c2)、及び熱伝導率が10W/m・K以上の熱伝導性フィラーを含有し、前記体質顔料(C)の顔料容積濃度(PVC)が5~70%の範囲内である」のに対し、甲5発明は「D(充填材)としてAEROSIL200(シリカ微粒子の揺変剤:日本アエロジル(株)製)の4部、BYK R605(揺変助剤:ビックケミージャパン(株)製)の1.8部、炭酸カルシュウムの50部及びタルクの50部」を含むものであるが、中空粒子や熱伝導性フィラーを含むものではなく、また、顔料容積濃度(PVC)の値も不明である点。
前記相違点5について検討する。甲5の【0047】には「本発明の組成物における充填材には無機充填材と有機充填材がある。本発明で使用する無機充填材としては、例えば炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸カルシウム、酸化チタン、水酸化アルミニウム、タルク、カオリン、クレー、シリカ、ガラスビーズ、ガラスバルーン、ガラス粉末、金属粉末、金属繊維、珪藻土等が使用できるが、これらに限定されることなく、これらと同様の作用有する他の樹脂粉末のような有機充填剤、数ミリ以下の無機、有機の短繊維を硬化に影響ない程度使用することもできる。このようなフィラーについては特開平6-271373号、特開昭57-10656号公報などに詳細な記載がある。」と記載され、「シリカ、ガラスビーズ、ガラスバルーン」のような中空粒子や、「炭酸マグネシウム」のような熱伝導性フィラーを添加し得ることが記載されている。
しかしながら、甲5発明において、【0047】に列挙された充填剤の中から、特に中空粒子と熱伝導性フィラーを選択して添加することを示唆するような記載はなし、そうすることが合理的といえるような技術常識も見当たらない。中空粒子と熱伝導性フィラーの添加量が定まらなければ、顔料容積濃度(PVC)の値も特定することはできない。
また、甲1~甲12には、前記1(2)アで検討したとおり、甲5発明において、中空粒子や熱伝導性フィラーを添加する動機付けになるような記載は存在しないから、本件発明1は、甲5発明及び甲1~甲12に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
イ 本件発明2~7
本件発明2~7は、いずれも本件発明1を全て包含し、それぞれ個別の技術事項を追加したものである。よって、本件発明2~7は、前記アに示した理由と同様の理由により、甲5発明及び甲1~12に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明できたものとはいえない。
3 申立理由4(甲6を主たる引用例とした場合)について
(1)甲6に記載された発明
甲6(前記第4の6参照。)の【0001】には、「本発明は、自動車ボディー等の損傷箇所を補修するための補修用材料、この補修用材料を製造するために使用されるパテ用樹脂材料」に関するものであることが記載されている。
そして、甲6の【0068】の【表1】の実験例1~5に着目しつつ、【0070】の記載も参酌すれば、甲6には、次の発明(以下「甲6発明」という。)が記載されているものと認められる。
(甲6発明)
「不飽和ポリエステル樹脂、促進剤、安定剤、反応性希釈剤、低収縮剤、体質顔料、及び着色顔料からなる、自動車ボディー等の損傷箇所を補修するための補修用材料を製造するために使用されるパテ用樹脂材料であって、反応性希釈剤はスチレンであり、低収縮剤は、ポリセットB9146(有効成分(固形分)であるポリスチレン33重量%をスチレンに溶解してなるもの)、ハイカVTBN1300X33(実質的に有効成分(固形分)だけで構成されたもの)、ユピカA12(有効成分(固形分)であるポリスチレン70重量%をスチレンに溶解してなるもの)のいずれかであり、体質顔料は、クラウンタルクSCであるか、クラウンタルクSC及び炭酸カルシウムであるパテ用樹脂材料。」
(2)対比・判断
ア 本件発明1
本件発明1と甲6発明を対比すると、甲6発明の「不飽和ポリエステル樹脂」は、本件発明1の「不飽和ポリエステル樹脂(A)」に相当する。
甲6発明の「反応性希釈剤」である「スチレン」は、本件発明1の「重合性不飽和化合物(B)」に相当する。
甲6発明の「体質顔料」である「クラウンタルクSC」及び「炭酸カルシウム」は、本件発明1の「体質顔料(C)」に相当する。
甲6発明の「自動車ボディー等の損傷箇所を補修するための補修用材料を製造するために使用されるパテ用樹脂材料」は、本件発明1の「自動車補修用パテ組成物」に相当する。
そうすると、両者の一致点及び相違点は次のとおりである。
<一致点>
「不飽和ポリエステル樹脂(A)、重合性不飽和化合物(B)及び体質顔料(C)を含有する自動車補修用パテ組成物。」
<相違点6-1>
本件発明1は、「スチレンを実質的に含まない自動車補修用パテ組成物」であるのに対し、甲6発明は、反応性希釈剤としてスチレンを含有し、また、低収縮剤としてもスチレンを含有するものであるから、スチレンを実質的に含まないものではない点。
<相違点6-2>
本件発明1は、「体質顔料(C)の成分の少なくとも1種に、中空粒子(c1)及び平均粒子径2~25μmかつモース硬度が1~3かつ熱伝導率が10W/m・K未満の体質顔料(c2)、及び熱伝導率が10W/m・K以上の熱伝導性フィラーを含有し、前記体質顔料(C)の顔料容積濃度(PVC)が5~70%の範囲内である」のに対し、甲6発明は「クラウンタルクSC」又は「クラウンタルクSC及び炭酸カルシウム」を含むものであるが、中空粒子や熱伝導性フィラーを含むものではなく、また、顔料容積濃度(PVC)の値も不明である点。
事案に鑑み、相違点6-2について検討する。
甲6の【0045】には「体質顔料としては、タルク、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、カオリン、ドロマイト、クレー、マイカ、セライト、シリカ、胡粉、アルミナ、水酸化アルミ、中空バルーン、ガラス粉などを使用することができ、中でも特にタルク、炭酸カルシウムが望ましい。例えばタルクは松村産業(株)から商品名:クラウンタルクSCで提供されており、また炭酸カルシウムは白石カルシウム(株)から入手することができる。」と記載され、「中空バルーン」のような中空粒子や、「炭酸マグネシウム」及び「アルミナ」のような熱伝導性フィラーを添加し得ることが記載されている。
しかしながら、甲6発明において、【0045】に列挙された充填剤の中から、特に中空粒子と熱伝導性フィラーを選択して添加することを示唆するような記載はなし、そうすることが合理的といえるような技術常識も見当たらない。中空粒子と熱伝導性フィラーの添加量が定まらなければ、顔料容積濃度(PVC)の値も特定することはできない。
また、甲1~甲12には、前記1(2)アで検討したとおり、甲6発明において、中空粒子や熱伝導性フィラーを添加する動機付けになるような記載は存在しない。
そうすると、前記相違点6-1について検討するまでもなく、本件発明1は、甲6発明及び甲1~甲12に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
イ 本件発明2~7
本件発明2~7は、いずれも本件発明1を全て包含し、それぞれ個別の技術事項を追加したものである。よって、本件発明2~7は、前記アに示した理由と同様の理由により、甲6発明及び甲1~12に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明できたものとはいえない。
4 申立人の主張について
申立人は、特許異議申立書の21頁において、甲4は、甲1の比較例1及び甲5の実施例6を模した代替配合から、「比重と体質顔料の含有量(質量%)との検量線〕を作成した旨を主張し、甲4として、2023年(令和5年)7月21日という日付けとともに、申立人の住所及び氏名が記された実験成績証明書を提出している。
しかしながら、甲4には、実際に再現実験を行った日時及び場所のみならず、実験者の氏名すら記載されていないから、甲4は、実際に実験をした者によって作成された、実験の証明すべき事項、実験内容、及び実験結果が明確に確認できる程度に必要な事項が記載された文書に該当しない。
さらに、甲4に記載された実験は、甲1の比較例1や甲5の実施例6に記載された材料を用いてなされたものではなく、それらを模した代替材料によるものであるから、甲1の比較例1や甲5の実施例6に記載された実験を再現したものとはいえない。
仮に、甲4の実験成績証明書が証拠能力を有し、甲号証に記載された組成物と等しい重量%と比重を示したものであったとしても、甲号証に示された各実施例や各比較例の組成物全体の比重は、それらに含まれる原料の組み合わせや個々の原料の比重によって大きく左右されるものであるから、甲1の比較例1の重量%及び比重と、甲5の重量%及び比重という2点を結んだ線上に、原料の組み合わせや比重が様々に異なる甲1、甲5及び甲6の実施例や比較例の体質顔料の含有量の重量%及び比重の値が存在するはずという、申立人の主張する前提を理解することができない。そして、前記1~3で検討したとおり、甲4には中空粒子や熱伝導性フィラーを添加する動機付けになるような記載はないから、甲4の存在によって、本件発明1から6が、甲1発明、甲5発明又は甲6発明から容易想到といえないことは、前記1(2)アで検討したとおりである。
したがって、申立人の主張は採用できない。
5 小括
前記1~4のとおり、申立理由1~4は、いずれも理由がない。
第6 むすび
以上のとおりであるから、異議申立人による特許異議申立書の理由及び証拠によっては、本件特許の請求項1~7に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1~7に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2023-700780