特許異議申立
2023-700706
接着剤組成物及び接着剤
- 審判番号
- 2023-700706
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2020-157081
- 登録番号
- 7211403
- 請求日
- 2023年07月10日
- 審決日
- 2023年10月24日
- 公報発行日
- 2023年11月24日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】三菱ケミカル株式会社
- 【権利者代理人】西藤 征彦
- 【権利者代理人】井▲崎▼ 愛佳
- 【権利者代理人】西藤 優子
- 【権利者代理人】寺尾 茂泰
- 【異議申立人】小林 瞳
- 審判長/審判官
- 審判長 関根 裕
- 審判官 安積 高靖
- 審判官 瀬下 浩一
- 分類
- P1651.121-Y (C09J) / P1651.537-Y (C09J) / P1651.536-Y (C09J)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第36条第4項第1号、特許法第36条第6項第1号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7211403号発明「接着剤組成物及び接着剤」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7211403号の請求項1~8に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本件特許(特許第7211403号)の請求項1~8に係る特許についての出願は、令和2年9月18日(優先権主張 令和元年10月23日)の出願であって、令和5年1月16日に特許権の設定登録がされ、同年同月24日に特許掲載公報が発行された。その後、請求項1~8に係る特許に対し、令和5年7月10日に特許異議申立人 小林 瞳(以下「申立人」という。)により特許異議の申立てがされたものである。
第2 本件特許の特許請求の範囲及び明細書の記載
1 本件特許の特許請求の範囲の記載
本件特許の請求項1~8に係る発明は、本件特許の特許請求の範囲の請求項1~8に記載された以下のとおりのものである(請求項1~8に係る発明を、それぞれ「本件発明1」~「本件発明8」といい、まとめて「本件発明」ともいう。)。
「【請求項1】
多価カルボン酸類由来の構造単位と多価アルコール類由来の構造単位を含むポリエステル系樹脂(A)を含有する接着剤組成物であって、
前記多価カルボン酸類としてダイマー酸類、及び前記多価アルコール類としてダイマージオール類からなる群から選ばれる少なくとも一つを含有し、前記多価カルボン酸類全体に対する前記ダイマー酸類の含有量(α)と前記多価アルコール類全体に対する前記ダイマージオール類の含有量(β)との合計含有量(α+β)が5モル%以上であり、
前記多価カルボン酸類として芳香族多価カルボン酸類を含有し、前記多価カルボン酸類全体に対する前記芳香族多価カルボン酸類の含有量が25モル%以上であり、
前記ポリエステル系樹脂(A)のエステル結合濃度が7ミリモル/g以下、アミド基、イミド基、ウレタン基、ウレア基の合計の濃度が2ミリモル/g以下、酸価が3mgKOH/g以上、ガラス転移温度(Tg)が-5℃以上であることを特徴とする接着剤組成物。
【請求項2】
多価アルコール類としてビスフェノール骨格含有モノマーを含有し、多価アルコール類全体に対するビスフェノール骨格含有モノマーの含有量が10モル%以上であることを特徴とする請求項1記載の接着剤組成物。
【請求項3】
ポリエステル系樹脂(A)が、側鎖にカルボキシ基を有することを特徴とする請求項1又は2記載の接着剤組成物。
【請求項4】
ポリエステル系樹脂中におけるポリエステル系樹脂(A)の含有量が50重量%超であることを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の接着剤組成物。
【請求項5】
更に、ポリエポキシ系化合物(B)を含有することを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載の接着剤組成物。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載の接着剤組成物が硬化されてなることを特徴とする接着剤。
【請求項7】
電子材料部材の貼り合せに用いられることを特徴とする請求項6記載の接着剤。
【請求項8】
電子材料部材が、フレキシブル銅張積層板、フレキシブルプリント基板、カバーレイ及びボンディングシートから選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項7記載の接着剤。」
2 本件特許の明細書の記載
本件特許の明細書(以下「本件明細書」ともいう。)には、次の記載がある。
「【0001】
本発明は、ポリエステル系樹脂を含有する接着剤組成物及びこの接着剤組成物が硬化されてなる接着剤に関し、更に詳しくは、低吸湿性、硬化前のタックフリー性、硬化後の初期接着性、更には湿熱環境下での長期耐久性に優れた接着剤組成物及びこの接着剤組成物が硬化された接着剤に関する。」
「【0009】
そこで、本発明ではこのような背景下において、低吸湿性、硬化前のタックフリー性、硬化後の初期接着性、更には湿熱環境下での長期耐久性に優れた接着剤組成物及びこの接着剤組成物が硬化された接着剤の提供を目的とする。
【0010】
しかるに本発明者は、かかる事情に鑑み鋭意研究を重ねた結果、ポリエステル系樹脂を含有する接着剤組成物であって、ポリエステル系樹脂のエステル結合濃度を低くしながらもガラス転移温度(Tg)は高くし、更に酸価を所定値以上に付与することにより、低吸湿性、硬化前のタックフリー性、硬化後の初期接着性、更には湿熱環境下での長期耐久性に優れた接着剤組成物となることを見出し、本発明を完成した。
【0011】
すなわち、本発明の要旨は、多価カルボン酸類由来の構造単位と多価アルコール類由来の構造単位を含むポリエステル系樹脂(A)を含有する接着剤組成物であって、ポリエステル系樹脂(A)のエステル結合濃度が7ミリモル/g以下、酸価が3mgKOH/g以上、ガラス転移温度(Tg)が-5℃以上である接着剤組成物である。」
「【0013】
上記特許文献1に関して述べたように、通常、吸水率を低下させるためには長鎖アルキル基を有する多価カルボン酸や多価アルコールが多量に用いられるが、一方で初期接着性やタックフリー性、及び湿熱環境下での長期耐久性が低下する。
本発明者は、ポリエステル系樹脂を構成するモノマーの組成を調整することによって、エステル結合濃度、酸価、ガラス転移温度(Tg)を最適化することで、低吸湿性でありながら、硬化前のタックフリー性、硬化後の初期接着性、更には湿熱環境下での長期耐久性に優れることを見出し、本発明を完成させたものである。」
「【0020】
多価カルボン酸類全体に対する芳香族多価カルボン酸類の含有量は、25モル%以上であることが好ましく、より好ましくは40モル%以上、特に好ましくは70モル%以上、更に好ましくは90モル%以上である。芳香族多価カルボン酸類が100モル%を占めてもよい。芳香族カルボン酸類の含有量が少なすぎると、湿熱環境下での長期耐久性が不充分となる傾向がある。」
「【0023】
〔多価アルコール類〕
多価アルコール類としては、例えば、ビスフェノール骨格含有モノマー、脂肪族多価アルコール、脂環族多価アルコール、芳香族多価アルコールが挙げられる。多価アルコール類は1種又は2種以上を用いることができる。
【0024】
ビスフェノール骨格含有モノマーとしては、例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールB、ビスフェノールE、ビスフェノールF、ビスフェノールAP、ビスフェノールBP、ビスフェノールP、ビスフェノールPH、ビスフェノールS、ビスフェノールZ、4,4’-ジヒドロキシベンゾフェノン、ビスフェノールフルオレンやそれらの水添物、及びビスフェノール類の水酸基にエチレンオキサイド又はプロピレンオキサイドを1~数モル付加して得られるエチレンオキサイド付加物等やプロピレンオキサイド付加物等のグリコール類等が挙げられる。なかでもビスフェノールA骨格を含有するものが好ましく、反応性の点からエチレンオキサイド付加物が好ましく、特に耐熱性や低吸湿性、湿熱環境下での長期耐久性の点からエチレンオキサイド2~3モル付加物が好ましい。
【0025】
多価アルコール類全体に対するビスフェノール骨格含有モノマーの含有量は、10モル%以上であることが好ましく、より好ましくは20モル%以上、特に好ましくは30モル%以上、更に好ましくは40モル%以上である。ビスフェノール骨格含有モノマーの含有量が少なすぎると、低吸湿性や湿熱環境下での長期耐久性が不充分となる傾向がある。
なお、多価アルコール類全体に対するビスフェノール骨格含有モノマーの含有量の上限は100モル%である。」
「【0030】
〔ポリエステル系樹脂(A)を構成する原料化合物全般〕
ポリエステル系樹脂(A)を構成する化合物は、多価カルボン酸類としてダイマー酸類を含有していてもよく、またダイマー酸類を含有しているか否かに関わらず、多価アルコール類としてダイマージオール類を含有していてもよい。
本発明においてポリエステル系樹脂(A)を構成する化合物は、特に多価カルボン酸類としてダイマー酸類、及び多価アルコール類としてダイマージオール類からなる群から選ばれる少なくとも一つを含有することが好ましい。
ダイマー酸類やダイマージオール類としては、例えば、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、エルカ酸等から誘導されるダイマー酸類(炭素数36~44のものを主とする)やこれらの還元体であるダイマージオール類、及びそれらの水素添加物等が挙げられる。なかでも製造時のゲル化抑制の点から、水素添加物が好ましく、更には多価カルボン酸類成分の芳香族酸の含有比率を高められる点から、ダイマージオール類が好ましく、特に好ましくは水素添加ダイマージオール類である。
【0031】
多価カルボン酸類全体に対するダイマー酸類の含有量(α)と多価アルコール類全体に対するダイマージオール類の含有量(β)との合計含有量(α+β)(モル%)は、5モル%以上であることが好ましく、より好ましくは10モル%以上、特に好ましくは15モル%以上、更に好ましくは20モル%以上である。また、合計含有量(α+β)(モル%)は、100モル%以下であることが好ましく、より好ましくは80モル%以下、特に好ましくは65モル%以下、更に好ましくは55モル%以下である。
ダイマー酸類及びダイマージオール類の合計含有量(α+β)(モル%)が少なすぎると、低吸湿性や湿熱環境下での長期耐久性が不充分となる傾向があり、合計含有量(α+β)(モル%)が多すぎると、硬化前のタックフリー性や硬化後の初期接着性が不充分となる傾向がある。」
「【0040】
本発明におけるポリエステル系樹脂(A)は、側鎖にカルボキシ基を有するものであることが硬化速度や硬化後の耐熱性の点で好ましい。このようなポリエステル系樹脂(A)は、多価カルボン酸類としてカルボン酸無水物構造を有する多価カルボン酸無水物(以下、単に「多価カルボン酸無水物」と称することがある。)を含む共重合成分を共重合することにより得られる。
【0041】
上記多価カルボン酸無水物は、側鎖にカルボキシ基を導入する目的から少なくとも2つのカルボン酸無水物構造を有するものであることが好ましく、例えば、1,2,4,5-ベンゼンテトラカルボン酸二無水物(ピロメリット酸二無水物)、3,3',4,4'-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、4,4-オキシジフタル酸二無水物、2,3,6,7-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,5,6-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、エチレングリコールビストリメリテート二無水物、3,3',4,4'-ジフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2',3,3'-ジフェニルスルホンテトラカルボン酸無水物、チオフェン-2,3,4,5-テトラカルボン酸二無水物等の芳香族多価カルボン酸無水物;
1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、5-(2,5-ジオキソテトラヒドロフリル)-3-メチル-3-シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸無水物、5-(2,5-ジオキソテトラヒドロフリル)-3-シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸無水物、シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物等の脂環族多価カルボン酸無水物;
エチレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4-ペンタンテトラカルボン酸二無水物等の脂肪族多価カルボン酸無水物;
等が挙げられる。これらから選ばれる1種を単独で、もしくは2種以上を併せて用いることができる。
【0042】
これらの多価カルボン酸無水物のなかでも、ポリエステル系樹脂(A)を製造する際の重合反応性や製造されたポリエステル系樹脂(A)の耐熱性、湿熱環境下での長期耐久性の点から、好ましくは芳香族多価カルボン酸無水物であり、より好ましくは1,2,4,5-ベンゼンテトラカルボン酸二無水物(ピロメリット酸二無水物)、2,3,6,7-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,5,6-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、3,3',4,4'-ジフェニルテトラカルボン酸二無水物であり、特に好ましくは1,2,4,5-ベンゼンテトラカルボン酸二無水物(ピロメリット酸二無水物)である。
【0043】
多価カルボン酸類における多価カルボン酸無水物の含有量は、多価カルボン酸類全体に対して、好ましくは0.5~20モル%であり、より好ましくは1~15モル%、特に好ましくは2~10モル%、更に好ましくは3~8モル%である。かかる含有量が少なすぎると、耐熱性が不充分となる傾向があり、含有量が多すぎると、ポリエステル系樹脂(A)の製造工程中にゲル化したり、低吸湿性や湿熱環境下での長期耐久性が不充分となる傾向がある。」
「【0048】
〔ポリエステル系樹脂(A)のエステル結合濃度〕
本発明に用いるポリエステル系樹脂(A)のエステル結合濃度は、7ミリモル/g以下であり、好ましくは2~6.5ミリモル/g、より好ましくは2.5~6ミリモル/g、特に好ましくは3~5.5ミリモル/g、更に好ましくは3.1~5ミリモル/gである。
エステル結合濃度が高すぎると、低吸湿性や湿熱環境下での長期耐久性が不充分となる。また、エステル結合濃度が低すぎると、初期接着性が不充分となる。」
「【0053】
また、エステル結合や反応性官能基以外のその他極性基濃度は、低吸湿性や湿熱環境下での長期耐久性の点から低い方が好ましい。
その他極性基としては、例えば、アミド基、イミド基、ウレタン基、ウレア基、エーテル基、カーボネート基等が挙げられる。
【0054】
アミド基、イミド基、ウレタン基、ウレア基は、それらの合計の濃度が3ミリモル/g以下であることが好ましく、より好ましくは2ミリモル/g以下、特に好ましくは1ミリモル/g以下、更に好ましくは0.5ミリモル/g以下であり、最も好ましくは0.2ミリモル/g以下である。
エーテル基としては、例えば、アルキルエーテル基やフェニルエーテル基が挙げられ、低吸湿性や湿熱環境下での長期耐久性の点から特にアルキルエーテル基の濃度を低くすることが好ましい。
アルキルエーテル基濃度としては、3ミリモル/g以下であることが好ましく、より好ましくは2ミリモル/g以下、特に好ましくは1.5ミリモル/g以下、更に好ましくは1ミリモル/g以下であり、最も好ましくは0.5ミリモル/g以下である。また、フェニルエーテル基濃度としては、5ミリモル/g以下であることが好ましく、より好ましくは4ミリモル/g以下、特に好ましくは3ミリモル/g以下、更に好ましくは2.5ミリモル/g以下である。
カーボネート基濃度としては、3ミリモル/g以下であることが好ましく、より好ましくは2ミリモル/g以下、特に好ましくは1ミリモル/g以下、更に好ましくは0.5ミリモル/g以下であり、最も好ましくは0.2ミリモル/g以下である。
【0055】
〔ポリエステル系樹脂(A)の酸価〕
本発明に用いるポリエステル系樹脂(A)の酸価は3mgKOH/g以上であり、好ましくは4~60mgKOH/g、より好ましくは5~40mgKOH/g、特に好ましくは6~30mgKOH/g、更に好ましくは7~20mgKOH/gである。
酸価が低すぎると、接着剤組成物にポリエポキシ系化合物(B)を含有させた場合、ポリエポキシ系化合物(B)との架橋点が不足し架橋度が低くなるので、耐熱性が不充分となる。また、酸価が高すぎると、吸湿性や湿熱環境下での長期耐久性が低下したり、硬化時に多量のポリエポキシ系化合物(B)を必要とすることから、近年要求されることが多くなった誘電特性において劣る傾向がある。」
「【0057】
〔ポリエステル系樹脂(A)のガラス転移温度(Tg)〕
本発明に用いるポリエステル系樹脂(A)のガラス転移温度(Tg)は、-5℃以上であり、好ましくは0~100℃、より好ましくは3~80℃、特に好ましくは5~60℃、更に好ましくは7~40℃、最も好ましくは10~30℃である。
ガラス転移温度(Tg)が低すぎると、初期接着性やタックフリー性が不充分となる。また、ガラス転移温度(Tg)が高すぎると、初期接着性や屈曲性が不充分になる傾向がある。」
「【0082】
以下、実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り以下の実施例に限定されるものではない。なお、例中「部」、「%」とあるのは、重量基準を意味する。
【0083】
多価カルボン酸類全体に対する芳香族多価カルボン酸類の割合(mol%)(表1においては「芳香族酸含有量」と表記)、エステル結合濃度(mmol/g)、吸水率、ガラス転移温度(℃)、酸価(mgKOH/g)、ピークトップ分子量(Mp)、重量平均分子量(Mw)、COOHに対するエポキシ基の当量については、本明細書の記載に従って測定を行なった。
【0084】
<ポリエステル系樹脂の製造>
下記表1に記載された組成(モル比)は、出来上がりの組成比(樹脂組成比)であり、得られたポリエステル系樹脂の各構成モノマー量の相対比(モル比)である。
【0085】
〔製造例1:ポリエステル系樹脂(A-1)の製造〕
温度計、撹拌機、精留塔、窒素導入管の付いた反応缶に、多価カルボン酸類としてイソフタル酸(IPA)228.2部(1.3735モル)、多価アルコール類としてビスフェノールAのエチレンオキサイド約2モル付加物「ニューポールBPE-20」(BPE-20)(三洋化成工業社製)223.9部(0.6868モル)、ネオペンチルグリコール(NPG)28.6部(0.2746モル)、ダイマージオール「プリポール2033」(P2033)(クローダ社製)254.4部(0.4801モル)、触媒としてテトラブチルチタネート0.1部を仕込み、内温が270℃となるまで120分かけて昇温し、270℃で3時間、エステル化反応を行った。
次に、内温を200℃まで下げ、ピロメリット酸二無水物(PMAn)15.0部(0.0688モル)を添加し200℃で2時間付加反応を行い、表1に示す樹脂組成及び諸物性を有するポリエステル系樹脂(A-1)を得た。
【0086】
〔製造例2、比較製造例1~3:ポリエステル系樹脂(A-2、A'-1、A'-2、A'-3)の製造〕
樹脂組成を表1に記載のとおりになるよう変更した以外はA-1と同様にしてポリエステル系樹脂(A-2、A'-1、A'-2、A'-3)を得た。
【0087】
得られたポリエステル系樹脂の樹脂組成(成分由来の構造単位)及び諸物性について表1に示す。なお、表1中、各略称は以下のとおりである。
「TPA」:テレフタル酸
「IPA」:イソフタル酸
「AdA」:アジピン酸
「P1010」:ダイマー酸「プリポール1010」(クローダ社製)
「PMAn」:ピロメリット酸二無水物
「BPDA」:3,3',4,4',-ジフェニルテトラカルボン酸二無水物
「EG」:エチレングリコール
「NPG」:ネオペンチルグリコール
「BPE-20」:ビスフェノールAのエチレンオキサイド約2モル付加物「ニューポールBPE-20」(三洋化成工業社製)
「P2033」:ダイマージオール「プリポール2033」(クローダ社製)
【0088】
【表1】
[図:0001403695000001.jpg]
【0089】
<ポリエポキシ系化合物(B)>
ポリエポキシ系化合物(B)として、以下のものを用意した。
(B-1):フェノールノボラック型エポキシ樹脂「YDPN-638」(日鉄ケミカル&マテリアル社製)(WPE=177(g/eq))
【0090】
<接着剤組成物の製造>
上記で得られたポリエステル系樹脂及びポリエポキシ系化合物を用いて、下記のとおり接着剤組成物を製造した。
【0091】
(実施例1)
上記で得られたポリエステル系樹脂(A-1)をメチルエチルケトンで固形分濃度60%に希釈し、このポリエステル系樹脂(A-1)溶液(固形分として100部)に対し、ポリエポキシ系化合物(B-1)(固形分)を10部配合し、更にメチルエチルケトンで固形分50%になるように希釈、撹拌、混合することにより、接着剤組成物を得た。
【0092】
(実施例2~3、比較例1~5)
実施例1において、表2に示すとおりの樹脂組成とした以外は同様にして、接着剤組成物を得た。
得られた接着剤組成物を用いて以下のとおり評価を行った。その結果を表2に示す。
【0093】
<積層体の作製>
上記で調製した接着剤組成物を厚み50μmのポリイミドフィルム「カプトン200H」(東レ・デュポン社製)にアプリケーターで塗布した後、120℃で5分間乾燥し、乾燥膜厚25μmの接着層を形成した。次に(1)厚み30μmの圧延銅箔、又は、(2)厚み50μmのポリイミドフィルム「カプトン200H」をそれぞれ上記接着層付きポリイミドフィルムの接着層面とラミネート(ラミネート条件:170℃、0.2MPa、送り速度1.5m/min)し、次いで160℃のオーブンで4時間熱処理、硬化させることでそれぞれの積層体を得た。
便宜上、圧延銅箔とラミネートした積層体(ポリイミドフィルム/接着層/圧延銅箔)をPI/Cuと表記し、ポリイミドフィルムとラミネートした積層体(ポリイミドフィルム/接着層/ポリイミドフィルム)をPI/PIと表記する。
【0094】
<評価>
〔初期接着力〕
上記で得られた積層体を1cm幅に切り出したものを試験片とした。両面テープを用いて試験片を厚み2mmのガラス板に固定し、23℃、50%RHの環境下で剥離試験機を用いて、試験片の引張剥離強度を測定した(剥離速度:50mm/min、剥離角度:180°)。評価基準は下記のとおりとした。
◎:8N/cm以上
○:6N/cm以上、8N/cm未満
△:4N/cm以上、6N/cm未満
×:4N/cm未満
【0095】
〔湿熱耐久性〕
PI/Cuの試験片を85℃、85%RHの恒温恒湿機に入れ、所定時間後に取り出し、23℃50%RHの環境下に一晩静置した後、上記の初期接着力と同様にして、引張剥離強度を測定した。初期の接着力に対する湿熱処理後の接着力の百分率を「維持率」とした。
接着力の絶対値については初期接着力と同様の評価基準を用いて評価した。
接着力の維持率については下記の評価基準に基づいて評価した。
◎:維持率が80%以上
○:維持率が60%以上、80%未満
△:維持率が40%以上、60%未満
×:維持率が40%未満
【0096】
〔タックフリー性〕
上記で得られた硬化前の接着層付きポリイミドフィルムの接着層面を指で軽く触れ、下記評価基準に基づいて評価した。
◎:ベタツキがほとんど感じられない。
〇:ベタツキがあまり感じられない。
△:ややベタツキがある。
×:指にくっつく。
【0097】
〔ゲル分率〕
上記で得られた接着層付きポリイミドフィルムを160℃で4時間熱処理し硬化させた後、4cm×4cmサイズに切り出した。これを200メッシュのSUS製金網で包み、メチルエチルケトン中に23℃×24時間浸漬し、浸漬前の接着剤重量に対する金網中に残存した不溶解の接着剤成分の重量百分率をゲル分率とした。
【0098】
【表2】
[図:0001403695000002.jpg]
【0099】
上記表1、2の結果より、本発明の要件を満たす製造例1、2のポリエステル系樹脂(A-1)、(A-2)は低吸湿性に優れ、それらを用いて得られた実施例1~3の接着剤組成物は、硬化前のタックフリー性、硬化後の初期接着性、更には湿熱環境下での長期耐久性に優れるものである。
一方、エステル結合濃度が高い比較製造例1のポリエステル系樹脂(A'-1)は吸湿性が高く、それを用いて得られた比較例1、2は湿熱環境下での長期耐久性に劣るものであった。同様にエステル結合濃度が高い比較製造例2のポリエステル系樹脂(A'-2)を用いて得られた比較例3、4の接着剤組成物も、湿熱環境下での長期耐久性に劣るものであった。
また、ガラス転移温度の低い比較製造例3のポリエステル系樹脂(A'-3)を用いて得られた比較例5の接着剤組成物は、硬化前のタックフリー性及び硬化後の初期接着性に劣るものであった。」
第3 特許異議申立理由の概要
1 証拠方法の一覧
申立人が提示した証拠方法は、甲第1号証~甲第8号証である。以下、甲第1号証を「甲1」などという。
甲1:特開2015-187271号公報
甲2:特開2010-116422号公報
甲3:特開2002-47471号公報
甲4:特開2013-181159号公報
甲5:特開2014-185219号公報
甲6:特開2003-183365号公報
甲7:特開2002-3587号公報
甲8:特許第7127674号
2 申立理由1(進歩性欠如)
本件発明1~8は、甲1又は2に記載された発明、及び甲1~7に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、それらの発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
3 申立理由2(サポート要件違反)
本件発明1~8は、発明の詳細な説明に記載したものではないから、本件特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない出願に対してなされたものであり、同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。
4 申立理由3(委任省令要件違反)
本件特許の発明の詳細な説明は、本件発明1~8について、経済産業省令で定めるところにより記載されたものではないので、本件発明1~8は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。
第4 甲号証の記載
1 甲1の記載
甲1には、次の記載がある。
「【請求項1】
熱可塑性樹脂(A)、無機充填材(B)、溶剤(C)、エポキシ樹脂(D)を含有する接着剤用樹脂組成物であって、
該熱可塑性樹脂(A)の酸価(単位:当量/106g)が100以上1000以下であり、
該熱可塑性樹脂(A)の数平均分子量が5.0×103以上1.0×105以下であり、
該熱可塑性樹脂(A)が、ポリエステル系樹脂(但し、フェノール性水酸基を150当量/106g以上有するポリエステル樹脂を除く)であり、
該エポキシ樹脂(D)がジシクロペンタジエン骨格を有するエポキシ樹脂であり、
該熱可塑性樹脂(A)と該無機充填材(B)を該接着剤用樹脂組成物における含有比率で合計25質量部含み、メチルエチルケトン52質量部とトルエン23質量部からなる混合溶剤(但し、該熱可塑性樹脂(A)が前記濃度で前記混合溶剤に25℃において溶解しない場合は、前記混合溶剤に変えてジメチルアセトアミド52質量部とトルエン23質量部からなる混合溶剤を用いる)を分散媒とする分散液(α)の揺変度(TI値)を測定したとき、液温25℃における揺変度(TI値)が3以上6以下であり、
該熱可塑性樹脂(A)の酸価AV(β)(単位:当量/106g)と配合量AW(β)(単位:質量部)、エポキシ樹脂(D)のエポキシ価EV(γ)(単位:当量/106g)と配合量EW(γ)(単位:質量部)が以下に示す式(1)、
0.7≦{EV(γ)×EW(γ)}/{AV(β)×AW(β)}≦4.0 (1)
を満たす接着剤用樹脂組成物。」
「【0001】
本発明は各種プラスチックフィルムへの接着性や、銅、アルミ、ステンレスなどの金属への接着性、ガラスへの接着性、耐熱性、耐湿性、シートライフ等に優れた樹脂組成物、これを含有する接着剤、接着シートおよびこれを接着層として含むプリント配線板に関するものである。」
「【0007】
本発明の課題はこれら従来の接着剤が抱えている各問題点を改良することであり、各種プラスチックフィルムや、銅、アルミ、ステンレス鋼などの金属、ガラスエポキシへの接着性を維持しつつ、高湿度下での鉛フリーハンダにも対応できる高度の耐湿熱性、高温高湿度下での接着性に優れた接着剤を提供すること、さらには前記接着剤から得たBステージの接着シートがたとえ高温高湿下で流通された後に使用されても良好な接着特性の維持が可能なシートライフが良好な接着剤シートを提供すること、にある。また、前記接着剤または接着シートから得られた接着層を含むプリント配線板を提供することにある。」
「【0020】
本発明に用いる熱可塑性樹脂(A)の酸価(単位:当量/106g)は100以上1000以下である。酸価が100当量/106g未満だと、硬化後の金属系基材への密着性が不充分になり、また架橋度が低く耐熱性が低下する傾向にある。酸価が1000当量/106gを超えると溶剤に溶解した際のワニスの保存安定性が低下し、また架橋反応が常温下で進行し易く、安定したシートライフが得られないといった傾向にある。また、エステル結合やウレタン結合等の耐久性に悪影響を与えることも予想される。好ましくは酸価の下限は250当量/106g、より好ましくは酸価の下限は300当量/106g、さらに好ましくは酸価の下限は350当量/106gである。好ましい上限は900当量/106g、より好ましい上限は800当量/106g、さらに好ましい上限は700当量/106gである。
【0021】
(ポリエステル系樹脂)
本発明の熱可塑性樹脂(A)として用いるポリエステル系樹脂のガラス転移温度は、-10℃以上60℃以下であることが好ましい。ガラス転移温度が-10℃未満だと、高温での接着性が不十分になる傾向がある。ガラス転移温度が60℃を超えると、基材との貼り合せが不十分になり、また常温での弾性率が高くなり、常温での接着性が不十分になる傾向がある。好ましくはガラス転移温度の下限は-5℃、より好ましくはガラス転移温度の下限は0℃、さらに好ましくはガラス転移温度の下限は5℃である。好ましい上限は55℃、より好ましい上限は50℃、さらに好ましい上限は45℃である。
【0022】
該ポリエステル系樹脂は、組成における全酸成分の合計量を100モル%としたとき、芳香族カルボン酸が60モル%以上であることが好ましく、より好ましくは85モル%以上、さらに好ましくは99モル%以上である。芳香族カルボン酸が100モル%を占めても良い。芳香族カルボン酸が60モル%未満の場合、塗膜の凝集力が弱く、各種基材への接着強度の低下が見られる。
【0023】
芳香族カルボン酸の例としてはテレフタル酸、イソフタル酸、オルソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ビフェニルジカルボン酸、ジフェン酸、5-ヒドロキシイソフタル酸等の芳香族ジカルボン酸が例示できる。また、スルホテレフタル酸、5-スルホイソフタル酸、4-スルホフタル酸、4-スルホナフタレン-2,7-ジカルボン酸、5(4-スルホフェノキシ)イソフタル酸、などのスルホン酸基を有する芳香族ジカルボン酸、それらの金属塩、アンモニウム塩などのスルホン酸塩基を有する芳香族ジカルボン酸、p-ヒドロキシ安息香酸、p-ヒドロキシフェニルプロピオン酸、p-ヒドロキシフェニル酢酸、6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸、4,4-ビス(p-ヒドロキシフェニル)バレリック酸などの芳香族オキシカルボン酸等を挙げることができる。これらのうちでもテレフタル酸、イソフタル酸、およびその混合物が塗膜の凝集力を上げる点で特に好ましい。
【0024】
なおその他の酸成分としては、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、1,3-シクロヘキサンジカルボン酸、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸とその酸無水物などの脂環族ジカルボン酸、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、ダイマー酸などの脂肪族ジカルボン酸を挙げることができる。
【0025】
一方、グリコール成分は脂肪族グリコール、脂環族グリコール、芳香族含有グリコール、エ-テル結合含有グリコ-ルなどよりなることが好ましく、脂肪族グリコ-ルの例としては、エチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、2-メチル-1,3,-プロパンジオール、1,5-ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6-ヘキサンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、1,9-ノナンジオール、2-エチル-2-ブチルプロパンジオール、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールエステル、ジメチロールヘプタン、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール等を挙げることができ、脂環族グリコールの例としては、1,4-シクロヘキサンジオ-ル、1,4-シクロヘキサンジメタノール、トリシクロデカンジオール、トリシクロデカンジメチロール、スピログリコール、水素化ビスフェノールA、水素化ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物およびプロピレンオキサイド付加物、等を挙げることができる。エ-テル結合含有グリコ-ルの例としては、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、さらに、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ネオペンチルグリコールエチレンオキサイド付加物、ネオペンチルグリコールプロピレンオキサイド付加物も必要により使用しうる。芳香族含有グリコールの例としてはパラキシレングリコール、メタキシレングリコール、オルトキシレングリコール、1,4-フェニレングリコール、1,4-フェニレングリコ-ルのエチレンオキサイド付加物、ビスフェノールA、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物およびプロピレンオキサイド付加物等の、ビスフェノール類の2つのフェノール性水酸基にエチレンオキサイド又はプロピレンオキサイドをそれぞれ1~数モル付加して得られるグリコール類等を例示できる。
【0026】
また、分子構造の中に、水酸基とカルボキシル基を有する、オキシカルボン酸化合物もポリエステル原料として使用することができ、5-ヒドロキシイソフタル酸、p-ヒドロキシ安息香酸、p-ヒドロキシフェニチルアルコール、p-ヒドロキシフェニルプロピオン酸、p-ヒドロキシフェニル酢酸、6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸、4,4-ビス(p-ヒドロキシフェニル)バレリック酸等を例示できる。
【0027】
本発明で使用されるポリエステル系樹脂中には、必要により分岐骨格を導入する目的で、0.1モル%以上5モル%以下の3官能以上のポリカルボン酸類および/又はポリオール類を共重合しても構わない。特に硬化剤と反応させて硬化塗膜を得る場合、分岐骨格を導入することにより、樹脂の末端基濃度(反応点)が増え、架橋密度が高い、強度な塗膜を得ることができる。その場合の3官能以上のポリカルボン酸の例としてはトリメリット酸、トリメシン酸、エチレングルコールビス(アンヒドロトリメリテート)、グリセロールトリス(アンヒドロトリメリテート)、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸(PMDA)、オキシジフタル酸二無水物(ODPA)、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物(BTDA)、3,3’,4,4’-ジフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)、3,3’,4,4’-ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物(DSDA)、4,4’-(ヘキサフロロイソプロピリデン)ジフタル酸二無水物(6FDA)、2,2’-ビス[(ジカルボキシフェノキシ)フェニル]プロパン二無水物(BSAA)などの化合物等、が使用でき、一方3官能以上のポリオ-ルの例としてはグリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等が使用できる。3官能以上のポリカルボン酸および/またはポリオールを使用する場合は、全酸成分あるいは全グリコ-ル成分に対し0.1モル%以上5モル%以下、好ましくは0.1モル%以3モル%以下の範囲で共重合するのが好ましく、5モル%を越えると塗膜の破断点伸度などの力学物性の低下が生じることがあり、また重合中にゲル化を起こす可能性がある。
【0028】
本発明で使用されるポリエステル系樹脂に酸価を導入する方法としては、重合後に酸付加によってカルボン酸を樹脂に導入する方法が挙げられる。酸付加にモノカルボン酸、ジカルボン酸、多官能カルボン酸化合物を用いると、エステル交換により分子量の低下が起こる可能性があり、カルボン酸無水物を少なくとも一つもった化合物を用いることが好ましい。酸無水物としては、無水コハク酸、無水マレイン酸、オルソフタル酸、2,5-ノルボルネンジカルボン酸無水物、テトラヒドロ無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸(PMDA)、オキシジフタル酸二無水物(ODPA)、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物(BTDA)、3,3’,4,4’-ジフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)、3,3’,4,4’-ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物(DSDA)、4,4’-(ヘキサフロロイソプロピリデン)ジフタル酸二無水物(6FDA)、2,2’-ビス[(ジカルボキシフェノキシ)フェニル]プロパン二無水物(BSAA)などの化合物等が使用できる。本発明で使用されるポリエステル系樹脂を構成する全酸成分を100モル%としたとき、10モル%以上の酸付加を行うと、ゲル化を起こすことがあり、またポリエステルの解重合を起こし樹脂分子量を下げてしまうことがある。酸付加はポリエステル重縮合後、バルク状態で直接行う方法と、ポリエステルを溶液化し付加する方法がある。バルク状態での反応は、速度が速いが、多量に付加するとゲル化が起こることがあり、かつ高温での反応になるので、酸素ガスを遮断し酸化を防ぐなどのケアが必要である。一方、溶液状態での付加は、反応は遅いが、多量のカルボキシル基を安定に導入することができる。」
「【0066】
<プリント配線板>
本発明におけるプリント配線板は、導体回路を形成する金属箔と樹脂層とから形成された積層体を構成要素として含むものである。プリント配線板は、例えば、金属張積層体を用いてサブトラクティブ法などの従来公知の方法により製造される。必要に応じて、金属箔によって形成された導体回路を部分的、或いは全面的にカバーフィルムやスクリーン印刷インキ等を用いて被覆した、いわゆるフレキシブル回路板(FPC)、フラットケーブル、テープオートメーティッドボンディング(TAB)用の回路板などを総称している。」
「【0089】
本発明をさらに詳細に説明するために以下に実施例を挙げるが、本発明は実施例になんら限定されるものではない。なお、実施例中に単に部とあるのは質量部を示す。また、特記なくエポキシ樹脂配合率と記した場合には、{EV(γ)×EW(γ)}/{AV(β)×AW(β)}の値を指すこととする。また、表中において、例えば「>40」とあれば40を超えることを、「<230」とあれば230未満であることを示す。
【0090】
(物性評価方法)
(1)熱可塑性樹脂の組成
熱可塑性樹脂を重クロロホルムに溶解し、1H-NMR分析により、各成分のモル比を求めた。但し、該熱可塑性樹脂が重クロロホルムに溶解しない場合には、重ジメチルスルホキシドに溶解して1H-NMR分析を行った。
【0091】
(2)数平均分子量Mn
試料を、樹脂濃度が0.5%程度となるようにテトラヒドロフランに溶解または希釈し、孔径0.5μmのポリ四フッ化エチレン製メンブランフィルターで濾過したものを測定用試料として、テトラヒドロフランを移動相とし示差屈折計を検出器とするゲル浸透クロマトグラフィーにより分子量を測定した。流速は1mL/分、カラム温度は30℃とした。カラムには昭和電工製KF-802、804L、806Lを用いた。分子量標準には単分散ポリスチレンを使用した。但し、試料がテトラヒドロフランに溶解しない場合は、テトラヒドロフランに変えてN,N-ジメチルホルムアミドを用いた。
【0092】
(3)ガラス転移温度
ポリエステル樹脂およびポリウレタン樹脂の場合は、示差走査熱量計(DSC)を用いて20℃/分の昇温速度で測定した。
ポリアミドイミド樹脂の場合は、幅10mm、厚さ30μmの短冊状試料について、アイテイ計測制御社製動的粘弾性測定装置DVA-220を用いて、周波数110Hzで動的粘弾性の測定を行い、その貯蔵弾性率の変曲点をガラス転移点とした。なお、短冊状試料は、ポリアミドイミドの重合溶液をポリプロピレン製フィルムに塗布し、1~10mmHgの減圧状態で、120℃で10時間乾燥することにより溶剤を除いたフィルムから得た。
【0093】
(4)酸価
試料0.2gを20mlのクロロホルムに溶解し、指示薬としてフェノールフタレインを用い、0.1Nの水酸化カリウムエタノール溶液、ポリアミドイミド系樹脂の場合のみナトリウムメトキシドメタノール溶液で滴定し、樹脂106gあたりの当量(eq/106g)を算出した。
【0094】
(5)エポキシ価
JIS K 7236に準拠し、過塩素酸滴定法を用いて得られたエポキシ当量(1当量のエポキシ基を含む樹脂の質量)から樹脂106gあたりの当量(eq/106g)を算出した。
【0095】
(特性評価方法)
(1)耐ハンダ性、剥離強度
(1)-1 評価用サンプル1作成方法
後述する接着剤組成物を厚さ25μmのポリイミドフィルム(株式会社カネカ製、アピカル)に、乾燥後の厚みが30μmとなるように塗布し、130℃で3分乾燥した。この様にして得られた接着性フィルム(Bステージ品)を30μmの圧延銅箔と貼り合わせる際、圧延銅箔の光沢面が接着剤と接する様にして、160℃で35kgf/cm2の加圧下に30秒間プレスし、接着した。次いで140℃で4時間熱処理して硬化させて、耐ハンダ性及び剥離強度評価用サンプル1を得た(初期評価用)。
また、接着性フィルム(Bステージ品)を、40℃、80%加湿下にて14日間放置後、上記条件にて圧延銅箔とプレス、熱処理して硬化させ、経時評価用のサンプル1を得た。
【0096】
(1)-2 評価用サンプル2作成方法
後述する接着剤組成物を厚さ50μmのポリプロピレンフィルム(東洋紡績株式会社製、パイレン)に、乾燥後の厚みが30μmとなるように塗布し、130℃で3分乾燥し接着性フィルム(Bステージ品)を得た。評価用基板は、片面銅張積層版(25μmポリイミドフィルム、18μm圧延銅箔)を通常の回路作製工程(穴あけ、めっき、ドライフィルムレジスト(以下DFRと略すことがある)ラミネート、露光・現像・エッチング、DFR剥離)にて作製し、硬化することで評価用基板を得た。この様にして得られた評価用基板上に、前記接着性フィルム(Bステージ品)を仮圧着した後、ポリプロピレンフィルムを剥離し、補強板として500μmのSUS304板を160℃で35kgf/cm2の加圧下に30秒間プレスし、接着した。次いで140℃で4時間熱処理して硬化させて、耐ハンダ性および剥離強度評価用サンプル2を得た(初期評価用)。
また、接着性フィルム(Bステージ品)を、40℃、80%加湿下にて14日間放置後、上記条件にて圧延銅箔とプレス、熱処理して硬化させ、経時評価用のサンプル2を得た。
【0097】
各特性の評価は以下の方法で行った;
耐ハンダ性(加湿):サンプルを40℃、80%加湿下にて2日間放置後、加熱したハンダ浴に1分間浮かべて、膨れが発生しない上限の温度を10℃ピッチで測定した。この試験において、測定値の高い方が良好な耐熱性を持つことを示すが、各基材、接着剤層に含まれた水蒸気の蒸発による衝撃をも抑制する必要があり、乾燥状態よりも、さらに厳しい耐熱性が要求される。実用的性能から考慮すると250℃以上が好ましく、より好ましくは260℃以上である。
剥離強度:25℃において、引張速度50mm/minで90°剥離試験を行ない、剥離強度を測定した。この試験は常温での接着強度を示すものである。実用的性能から考慮すると10N/cm以上が好ましく、より好ましくは15N/cm以上である。
【0098】
(2)クリープ特性
前述した評価サンプル2を用いて、60℃×90%雰囲気下、200gの錘をぶら下げ、30分間で剥がれた距離を測定した。なお錘のぶら下げ方は、剥離形態が180°剥離となるように行った。この試験は、高温高湿下での接着強度を示すもので、剥離のないものが好ましく、剥離距離が大きくなるほど、接着強度が低い。実用的性能から考慮すると10mm以下が好ましく、より好ましくは4mm以下である。
【0099】
(3)高温高湿環境試験
前述した耐ハンダ性および剥離強度評価用サンプル2(初期評価用)を85℃、85%加湿環境下に放置し、500時間経過後及び1000時間経過後の剥離強度を測定した。この試験は、実使用時の信頼性を確認する目的で高温且つ高湿環境下での耐久性を評価したものであり、実使用時の信頼性から5N/cm以上が好ましく、より好ましくは10N/cm以上である。
【0100】
ポリエステル樹脂Aの重合例
撹拌器、温度計、流出用冷却器を装備した反応缶内に、テレフタル酸243部、イソフタル酸237部、アジピン酸107部、無水トリメリット酸7部、2-メチル-1,3-プロパンジオール455部、1,4-ブタンジオール205部、テトラブチルチタネート0.3部を仕込み、4時間かけて250℃まで徐々に昇温し、留出する水を系外に除きつつエステル化反応を行った。エステル化反応終了後30分かけて10mmHgまで減圧初期重合を行うと共に温度を250℃まで昇温し、更に1mmHg以下で1時間後期重合を行った。その後、窒素にて常圧に戻し、無水トリメリット酸28部を投入し、220℃で30分間反応させることによってポリエステル樹脂Aを得た。この様にして得られたポリエステル樹脂Aの組成、特性値を表1に示した。各測定評価項目は前述の方法に従った。
【0101】
ポリエステル樹脂Bの重合例
撹拌器、温度計、流出用冷却器を装備した反応缶内に、テレフタル酸99.6部、イソフタル酸229.1部、無水トリメリット酸3.8部、2-メチル-1,3-プロパンジオール54.0部、1,6-ヘキサンジオール401.2部、テトラブチルチタネート0.2部を仕込み、4時間かけて250℃まで徐々に昇温し、留出する水を系外に除きつつエステル化反応を行った。エステル化反応終了後30分かけて10mmHgまで減圧初期重合を行うと共に温度を250℃まで昇温し、更に1mmHg以下で1時間後期重合を行った。得られた樹脂を撹拌器、温度計、還流式冷却管及び蒸留管を具備した反応容器に100部仕込み、トルエン182部を加えて溶解後、トルエン70部を蒸留させ、トルエン/水の共沸により反応系を脱水した。60℃まで冷却後、メチルエチルケトン112部、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物を7部加え70℃で3時間反応させることによってポリエステル樹脂Bの溶液を得た。この様にして得られたポリエステル樹脂Bの組成、特性値を表1に示した。」
「【0103】
[図:0001403695000003.jpg]
」
「【0110】
<実施例1>
熱可塑性樹脂(A)としてポリエステル樹脂A100部(固形分のみの質量、以下同様)、無機充填材(B)としてR972[日本アエロジル(株)製 疎水性煙霧状シリカ]20部、溶剤(C)としてメチルエチルケトン248部、トルエン112部を配合し固形分濃度25%である樹脂組成物(β)を調整した。次に、エポキシ樹脂(D)としてエポキシ樹脂ア[大日本インキ化学工業(株)製 HP7200-H(ジシクロペンタンジエン型エポキシ樹脂)、エポキシ価=3540当量/106g]11.9部、溶剤(C)としてメチルエチルケトン5.1部を配合し固形分濃度70%である樹脂組成物(γ)を調整した。得られた樹脂組成物(β)と樹脂組成物(γ)を配合することで目的とする接着剤用樹脂組成物を得た。エポキシ樹脂の配合量は、ポリエステル樹脂の酸価の総量の1.05倍のエポキシ基を含むように算出して決定した。接着評価試料を上述の方法で作製し、評価した結果を表4に示す。初期評価、経時評価ともに良好な結果を示している。
【0111
実施例2
実施例1と同様に、表3に示される成分、配合量で樹脂組成物を作成し特性を評価した。また、全ての実施例において、樹脂組成物(β)は固形分濃度25%、樹脂組成物(γ)は固形分濃度70%で調製した。
【0112】
実施例3
熱可塑性樹脂(A)としてポリウレタン樹脂溶液aを333.3部、無機充填材(B)としてR972を20部、溶剤(C)としてメチルエチルケトン94.7部、トルエン32部を配合し固形分濃度25%である樹脂組成物(β)を調整した。次に、エポキシ樹脂(D)としてエポキシ樹脂アを19.3部、溶剤(C)としてメチルエチルケトン8.3部を配合し固形分濃度70%である樹脂組成物(γ)を調整した。得られた樹脂組成物(β)と樹脂組成物(γ)を配合することで目的とする接着剤用樹脂組成物を得た。エポキシ樹脂の配合量は、ポリエステル樹脂の酸価の総量の1.05倍のエポキシ基を含むように算出して決定した。接着評価試料を上述の方法で作製し、評価した結果を表4に示す。初期評価、経時評価ともに良好な結果を示している。
【0113】
実施例4~11
実施例3と同様に、表3に示される成分、配合量で接着剤用樹脂組成物を作成し特性を評価した。また、全ての実施例において、組成物(β)は固形分濃度25%、組成物(γ)は固形分濃度70%で調製した。
【0114】
実施例12
熱可塑性樹脂(A)としてポリアミドイミド樹脂溶液Iを333.3部、無機充填材(B)としてR972を20部、溶剤(C)としてジメチルアセトアミド98.5部、トルエン28.2部を配合し固形分濃度25%である樹脂組成物(β)を調整した。次に、エポキシ樹脂(D)としてエポキシ樹脂アを13.3部、溶剤(C)としてメチルエチルケトン5.7部を配合し固形分濃度70%である樹脂組成物(γ)を調整した。得られた樹脂組成物(β)と樹脂組成物(γ)を配合することで目的とする接着剤用樹脂組成物を得た。エポキシ樹脂の配合量は、ポリエステル樹脂の酸価の総量の1.05倍のエポキシ基を含むように算出して決定した。接着評価試料を上述の方法で作製し、評価した結果を表4に示す。初期評価、経時評価ともに良好な結果を示している。
【0115】
実施例13、14
実施例3と同様に、表3に示される成分、配合量で接着剤用樹脂組成物を作成し特性を評価した。また、全ての実施例において、組成物(β)は固形分濃度25%、組成物(γ)は固形分濃度70%で調製した。
【0116】
以下に各成分の詳細を記す。
アエロジル R8200:日本アエロジル(株)製 疎水性煙霧状シリカ
レオロシール DM-10:(株)トクヤマ製 疎水性煙霧状シリカ
レオロシール HM-20L:(株)トクヤマ製 疎水性煙霧状シリカ
SYLOPHOBIC 200:富士シリシア化学(株)製 疎水性シリカ
ハイジライト H-42M:昭和電工(株)製 水酸化アルミニウム
エポキシ樹脂イ:三菱瓦斯化学(株)製 TETRAD-X(N,N,N’,N’-テトラグリシジル-m-キシレンジアミン)、エポキシ価=10000当量/106g。
エポキシ樹脂ウ:東都化成社製 YDCN703(o-クレゾールノボラック型エポキシ樹脂)、エポキシ価=4550当量/106g。
【0117】
エポキシ樹脂の配合量は、熱可塑性樹脂(A)の酸価の総量の0.8~1.3倍のエポキシ基を含むように算出して決定した。評価した結果を表4に示す。初期評価、経時評価ともに良好な結果を示している。
【0118】
[図:0001403695000004.jpg]
」
2 甲2の記載
甲2には、次の記載がある。
「【請求項1】
ガラス転移点が30℃以下のポリエステル樹脂(A)と、ガラス転移点が50℃以上のポリエステル樹脂(B)とを含有し、樹脂(A)と樹脂(B)との配合比が(A)/(B)=90/10~50/50(質量比)であり、ポリエステル樹脂(B)が、酸成分として少なくともテレフタル酸とイソフタル酸とのどちらか一方を含有し、かつアルコール成分としてビスフェノール骨格を有する多価アルコールを1~70モル%含有していることを特徴とするポリエステル樹脂組成物。」
「【0001】
本発明はポリエステル樹脂組成物に関し、特に、電化製品や自動車関連製品などの配線材用の接着剤として用いることができるポリエステル樹脂組成物に関する。」
「【0004】
これらの特性を利用して、例えば、デジタル家電あるいは自動車用の配線材として利用可能なフレキシブルフラットケーブル等に、ポリエステル系接着剤が広く用いられている。」
「【0009】
本発明は、ガラス転移点の低いポリエステル樹脂とガラス転移点の高いポリエステル樹脂とを含有するとともに、銅やアルミニウム等の金属への密着性に優れかつUL60℃定格以上の耐熱型の、ポリエステル系のフレキシブルフラットケーブルに適した接着剤とすることができるポリエステル樹脂組成物に関して、主剤であるガラス転移点の低い方のポリエステル樹脂の接着性などの特徴を損ねることなく、アンチブロッキング性、耐熱性を飛躍的に向上できるようにすることを目的とする。」
「【0017】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明に使用するポリエステル樹脂(A)は、ガラス転移点が30℃以下であることが必要であり、20℃以下であることが好ましく、10℃以下であることがさらに好ましい。ガラス転移点が30℃を超えると、導体への接着強力が低下する。ガラス転移点の下限は特に規定されないが、-40℃以上であることが好ましく、-30℃以上であることがより好ましく、-20℃以上がさらに好ましい。ガラス転移点が-40℃よりも低温であると、粘着性が強い樹脂となり取り扱いにくい。」
「【0020】
ポリエステル樹脂(A)の酸価は、導体接着性を維持する観点から、2.0~30mgKOH/gが好ましく、2.0mgKOH/g未満でも、30mgKOH/gを超えても導体接着性が低下することがある。」
「【0023】
本発明に使用するポリエステル樹脂(B)は、ガラス転移点が50℃以上であることが必要である。このガラス転移点は、55℃以上であることが好ましく、60℃以上であることがより好ましく、65℃以上であることがさらに好ましく、70℃以上であることがもっとも好ましい。ガラス転移点が50℃未満では、アンチブロッキング性が低下する。すると、本発明のポリエステル樹脂組成物を接着剤として、基材フィルムに顔料などのフィラーと当該接着剤との混合物をコートして得られるインシュレーションフィルムを巻き取って保管する際に、ブロッキングを起こす可能性がきわめて高い。」
「【0025】
ポリエステル樹脂(B)は、酸成分として少なくともテレフタル酸とイソフタル酸とのどちから一方を含有することが必要である。テレフタル酸を含有することが好ましく、両方含有することがさらに好ましい。そのどちらも含有しないと、ガラス転移点や軟化点が下がり、耐熱性が下がるとともにアンチブロッキング性が低下する。テレフタル酸の含有量は、接着強度の点で、酸成分に対して20モル%以上であることが好ましく、40モル%以上であることがより好ましく、60モル%以上であることがさらに好ましい。イソフタル酸の含有量は、アンチブロッキング性の点で、酸成分に対して80モル%未満であることが好ましく、60モル%未満であることがより好ましく、40モル%未満であることがさらに好ましい。
【0026】
ポリエステル樹脂(B)は、アルコール成分に、ビスフェノール骨格を有する多価アルコールを1~70モル%含有することが必要である。その含有率は、5~60モル%であることが好ましく、10~50モル%であることがより好ましく、15~40モル%であることが最も好ましい。ビスフェノール骨格を有する多価アルコールの含有率が1モル%未満であると、アンチブロッキング性、耐熱性が低下する。一方、その含有率が70モル%を超えると、本発明のポリエステル樹脂組成物を有機溶剤に溶解させた場合に、ポリエステル樹脂(A)とポリエステル(B)とが二層に相分離しやすくなり、溶液の分散性が低下し、平均粒径が大きいものとなって、導体接着性、アンチブロッキング性共に低下する。」
「【0033】
ポリエステル樹脂(B)の酸価は、2.0~30mgKOH/gであることが好ましく、2.5~25mgKOH/gであることがより好ましく、3.0~20mgKOH/gであることがさらに好ましく、3.5~15mgKOH/gであることがいっそう好ましく、4.0~10mgKOH/gであることが最も好ましい。酸価が2.0mgKOH/g未満であると、本発明のポリエステル樹脂混合物を汎用有機溶剤に溶解させた溶液の平均粒子径が大きくなり、液が2層に分離し、導体接着性、アンチブロッキング性共に低下するため好ましくない。一方、酸価が30mgKOH/gを超えると、導体接着性が低下するため好ましくない。」
「【0037】
本発明のポリエステル樹脂(B)を構成するモノマーとしては、酸成分としては、たとえばマロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、トリデカン二酸、テトラデカン二酸、ペンタデカン二酸、ヘキサデカン二酸、ヘプタデカン二酸、オクタデカン二酸、ノナデカン二酸、エイコサン二酸、ドコサン二酸、フタル酸、ナフタレンジカルボン酸、4、4’-ジカルボキシビフェニル、5-ナトリウムスルホイソフタル酸、5-ヒドロキシ-イソフタル酸、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸、メサコン酸、シトラコン酸、1,3,4-ベンゼントリカルボン酸、1,2,4,5-ベンゼンテトラカルボン酸、ピロメリット酸、トリメリット酸、シュウ酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、1,3-シクロヘキサンジカルボン酸、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸、2,5-ノルボルネンジカルボン酸、ダイマー酸、水添ダイマー酸等の多価カルボン酸またはその無水物を、必要に応じ用いてもよい。ただし、酸成分は、上記に限定されるものではない。
【0038】
また、上述の多価アルコール以外に用いることができるアルコール成分としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,7-ヘプタンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、1,12-ドデカンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、1,3-シクロヘキサンジメタノール、トリシクロデカンジメタノール、スピログリコール、ダイマージオールなどを挙げることができる。中でも、エチレングリコール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、1,3-シクロヘキサンジメタノール、トリシクロデカンジメタノール、スピログリコールを好ましく用いることができる。」
「【0051】
本発明のポリエステル樹脂組成物には、必要に応じて、エポキシ樹脂、酸無水物、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリレンジイソシナネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシナネート等のイソシアネート類およびそのブロックイソシアネート;ウレトジオン類、β-ヒドロキシアルキルアミド等の硬化剤;トリエチレンジアミン、トリエチルアミン等の硬化触媒;二酸化チタン、炭酸カルシウム、酸化亜鉛等の顔料;タルク;ポリエチレンワックス;パラフィンワックス;タッキファイヤー等を使用することができる。
【0052】
本発明のポリエステル樹脂組成物は前述のように溶剤型接着剤とすることができるが、その溶剤型接着剤を公知のコーティング法で基材フィルムにコートし、乾燥することで、積層体を得ることができる。コーターとしては、例えば、バーコーター、コンマコーター、ダイコーター、ロールコーター、リバースロールコーター、グラビアコーター、グラビアリバースコーター、フローコーターなどを用いることができる。これらのコーターを用いたコーティング法では、接着層の厚さを任意に制御することができる。また、複数回のコーティングによって接着性樹脂を積層してもよい。
【0053】
フレキシブルフラットケーブルは、たとえば次のようにして製造することができる。
すなわち、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステルにて形成された肉厚10~200μm程度の基材フィルムに、本発明のポリエステル樹脂組成物を含む接着剤を2~100μm程度の乾燥肉厚になるように塗布し、80~150℃でフィルムを乾燥してインシュレーションフィルムを作成する。そして、2枚のインシュレーションフィルムの接着剤層の面どうしの間に、肉厚20~100μm程度のスズ鍍金銅等の導体を挟み込み、ヒートシーラーで150~180℃程度の温度で0.2~0.8MPaの圧力で1~20秒程度処理することで、フレキシブルフラットケーブルを製造することができる。」
「【0055】
次に、実施例によって本発明を具体的に説明する。なお、以下の実施例、比較例における各種物性値は、下記の方法によって測定した。
(1)ポリエステル樹脂の数平均分子量
GPC分析により求めた。詳しくは、島津製作所社製の送液ユニット LC-10ADvp型、および紫外-可視分光光度計 SPD-6AV型を使用した。検出波長は254nm、溶媒はテトラヒドロフランを用いた。ポリスチレン換算とした。
【0056】
(2)ガラス転移点(Tg)
JIS-K7121にしたがって、入力補償型示差走査熱量測定装置(パーキンエルマー社製 ダイヤモンドDSC)を用いて10℃/minの昇温速度でスキャンさせたチャートから、ガラス転移点(Tg)(補外ガラス転移開始温度(℃))を読み取った。
【0057】
(3)軟化点(Ts)
TAインスツルメンツ社製の熱機械分析装置(TMA)を用い、樹脂を2mm前後の厚みに切断し、直径3mmφのプローブを樹脂にのせ、窒素雰囲気下で177mNの力をかけて、-50℃から2℃/minの昇温速度で昇温させた場合の変曲点について引いた接線を交点の温度をTsとした。
【0058】
(4)ポリエステルの組成
日本電子社製 NMR測定装置 JNM-LA400型を用いて、1H-NMR測定を行い、それぞれの共重合成分のピーク強度から組成を求めた。測定溶媒としては、重水素化トリフルオロ酢酸を用いた。
【0059】
(5)溶解性
ポリエステル樹脂(A)または(B)を固形分濃度10質量%になるようにトルエン/メチルエチルケトンの8/2(質量比)の混合溶剤に溶解し、目視で溶解性を評価した。すなわち、均一に溶解したものを溶解性良好(○)と評価し、それ以外を不溶(×)と評価した。
【0060】
(6)導体接着性
ポリエステル樹脂組成物を固形分濃度30質量%になるようにトルエン/メチルエチルケトンの8/2(質量比)の混合溶剤に溶解させ、その溶解液を肉厚0.3mmの銅板にバーコーターを用いて塗布し、120℃で2分間熱処理して、乾燥肉厚20μmの接着層を有するラミネート用シートを作製した。このラミネート用シートに肉厚38μmのPET(ポリエチレンテレフタレート)フィルムの非コロナ面を重ね、温度180℃、圧力100kPaで1分間プレスし、ラミネートした。得られたラミネートシートを25mm幅に成形し、23℃で180度剥離試験を行い、剥離強度を測定した。
【0061】
表1に示すように、25N/25mm幅以上である場合を優秀(◎)と評価し、17N/25mm幅以上かつ25N/25mm幅未満である場合を良好(○)と評価し、14N/25mm幅以上かつ17N/25mm幅未満である場合をやや不良(△)と評価し、14N/25mm幅未満である場合を不良(×)と評価した。
[図:0001403695000005.jpg]
【0062】
(7)耐熱性
上記(6)の場合と同様にラミネートシートを25mm幅に成形し、60℃で180度剥離試験を行い、剥離強度を測定した。同様の試験を23℃の条件でも行い、23℃のときの剥離強度と60℃のときの剥離強度との対比による強度保持率を求めて、耐熱性を評価した。
【0063】
表1に示すように、強度保持率が90%以上である場合を優秀(◎)と評価し、70%以上90%未満である場合を良好(○)と評価し、50%以上70%未満をやや不良(△)と評価し、50%未満である場合を不良(×)と評価した。
【0064】
(8)アンチブロッキング性
ポリエステル樹脂組成物を固形分濃度30質量%になるようにトルエン/メチルエチルケトンの8/2(質量比)の混合溶剤に溶解させ、その溶解液を肉厚38μmのPETフィルムのコロナ面にバーコーターを用いて塗布し、120℃で1分間熱処理して、乾燥肉厚15μmの接着層を有するラミネート用シートを作製した。このシートの接着剤面に肉厚38μmのPETフィルムの非コロナ面を重ね、圧力50hPaで60℃で24時間プレスした。その後、25mm幅に成形し、23℃で180度剥離試験を行い、剥離強度を測定した。
【0065】
表1に示すように、剥離強度が3N/25mm幅未満である場合を優秀(◎)と評価し、3N/25mm幅以上かつ8N/25mm幅未満である場合を良好(○)と評価し、83N/25mm幅以上かつ11N/25mm幅未満である場合をやや不良(△)と評価し、11N/25mm幅以上である場合を不良(×)と評価した。
・・・
【0068】
(11)酸価
試料0.5gにジオキサン/水(9/1 体積比)を加え、加熱還流後、クレゾールレッドを指示薬とし、KOHメタノール溶液(濃度:100mol/m3 )で滴定し、その滴定量から酸価を求めた。
【0069】
(12)総合評価
合格(○)あるいは不合格(×)と評価した。
【0070】
次にポリエステル樹脂の合成例を説明する。
[合成例A1]
テレフタル酸62モル%、イソフタル酸10モル%、セバシン酸28モル%、エチレングリコール53モル%、ネオペンチルグリコール47モル%になるように、原料をエステル化反応缶に投入し、アンカー翼の撹拌機で100rpmの回転数で撹拌しながら、0.25MPaの制圧下で250℃で5時間エステル化を行った。次に、重縮合缶へ移送して、重合触媒を投入し、60分かけて徐々に1.3hPaになるまで減圧していき、その後、所定の分子量に到達するまで260℃で重縮合反応を行い、ポリエステル樹脂(A1)を得た。得られた樹脂(A1)は、数平均分子量が26000、Tgが9℃、酸価が2.5mgKOH/g、Tsが63℃であった。
【0071】
[合成例B1]
表2の組成になるように、原料をエステル化反応缶に投入した。それ以外はポリエステル樹脂(A1)の場合と同様にして、重縮合反応を行った後、酸変性用の原料として無水トリメリット酸を1モル%投入し、常圧で1時間撹拌し、ポリエステル樹脂(B1)を得た。得られた樹脂(B1)は、数平均分子量が11000、Tgが65℃、酸価が7.1mgKOH/g、Tsが114℃であった。
【0072】
[合成例A2~A3、合成例B2~B13]
酸変性用の原料として無水トリメリット酸を使用している場合はB1に準じ、それ以外はA1に準じて、樹脂を合成した。
【0073】
ポリエステル樹脂(A1)~(A3)、ポリエステル樹脂(B1)~(B13)の詳細を表2に示す。
【0074】
【表2】
[図:0001403695000006.jpg]
【0075】
実施例1
ポリエステル樹脂(A1)とポリエステル樹脂(B1)とを、表3に示す配合比率でガラス瓶に投入し、さらに、樹脂(A1)と樹脂(B1)との合計の樹脂固形分の濃度が30質量%になるように、トルエン:メチルエチルケトンが質量比で8:2である混合溶剤を投入した。次に瓶を密栓し、ペイントシェイカーを用いることにより、樹脂を溶剤に溶解させた。
【0076】
その結果、溶液は層分離しなかった。すなわち、溶液特性は良好(○)であった。この溶液にて形成される接着剤の導体接着強力は26N/25mm幅であり、導体接着性は優秀(◎)であった。60℃における導体接着強力は24N/25mm幅であり、したがって強度保持率は92%となり耐熱性は優秀(◎)であった。アンチブロッキング性は、剥離強力が4N/25mm幅と小さく、良好(○)であった。メディアン径は61μmであった。
【0077】
さらに、上記の溶液100質量部に対して、添加物としてヘキサブロモベンゼンを15質量部、三酸化アンチモンを5質量部、二酸化チタンを7質量部、二酸化珪素を2質量部、水酸化アルミニウムを1質量部を加えて均一になるまで撹拌することで、添加物入りの接着剤を得た。
【0078】
この接着剤を、肉厚25μmのPETフィルムに塗布し、120℃で2分間乾燥することで、厚み50μmの積層フィルムを得た。この積層フィルムを用いて、導体接着性、耐熱性、アンチブロッキング性を評価したところ、いずれも、添加物を含まない接着剤の評価結果と同等であった。
【0079】
実施例2~10
ポリエステル樹脂(A)および(B)を、表3に示す種類および配合比率にした。それ以外は実施例1と同様として接着剤を作製し、評価した。その結果を表3に示す。
【0080】
【表3】
[図:0001403695000007.jpg]
【0081】
表3に示すように、実施例1~7は、いずれも、導体接着性、耐熱性、アンチブロッキング性のすべてにおいて優れたものであった。」
3 甲3の記載
甲3には、次の記載がある。
「【請求項1】ジカルボン酸成分と1,4-ブタンジオールを主たる成分とする結晶性の共重合ポリエステルであって、ジカルボン酸成分がポリエステルを構成する全酸成分に対してテレフタル酸30~98.5モル%、ダイマー酸0.5~25モル%、イソフタル酸及び/又は脂肪族ジカルボン酸1~30モル%からなり、エステル形成性の官能基を2つ以上有する有機リン化合物をポリエステル中のリン原子含有量が500~50000ppmとなる量含有し、かつ融点が50~200℃であることを特徴とする難燃性ホットメルト接着剤用ポリエステル。」
「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、難燃性ホットメルト接着剤に好適なポリエステルに関するものである。さらに詳しくは、耐熱性、耐湿性、難燃性が要求される電子機器関連の分野で有用であり、接着性が良好なホットメルト接着剤用ポリエステルに関するものである。」
「【0013】また、本発明のポリエステルにはダイマー酸を共重合する必要がある。これにより樹脂の耐湿熱性が向上し、湿熱環境下での接着性低下を著しく改善できるとともに接着性が向上する。ダイマー酸の割合は共重合ポリエステルを構成する全酸成分に対して0.5~25モル%である必要があり、好ましくは5~15モル%である。ダイマー酸の割合が0.5モル%未満になると、接着性や耐湿熱性の改良効果が乏しくなる。また、ダイマー酸の割合が25モル%を超えると、重縮合時の反応性が低下し、所望とする重合度のポリエステルが得られない。」
「【0029】
【作用】本発明の共重合ポリエステルは、適度の結晶性を持ち、使用に十分な柔軟性、難燃性を有しており、接着性、特に金属に対する接着性及び耐湿熱性に優れたものである。すなわち、ダイマー酸が共重合されていることで金属に対する密着性が向上すると共に、ポリエステル中のエステル基濃度が低下するため、加水分解も起こり難くなり、耐湿熱性が向上する。また、難燃剤である有機リン化合物が、ポリエステルに共重合されているため、難燃剤とポリエステルとの相溶性不良によるブリードや接着性の低下がない。」
「【0031】実施例1~7、比較例1~8
表1及び表2に示した原料化合物を、表1及び表2に示した量でエステル化反応槽に仕込み、圧力 0.5MPaG、温度 240℃で4時間のエステル化反応を行った。得られたエステル化物を重縮合反応槽に移送した後、重縮合触媒としてテトラブチルチタネートをポリエステルを構成する酸成分1モルに対して4×10-4モル添加し、60分間で反応系内を最終的に0.4hPaとなるまで徐々に減圧し、255℃で5時間の重縮合反応を行った。得られた共重合ポリエステルの組成と特性値及び接着試験、燃焼試験を行った結果を表1及び表2に示す。
【0032】
【表1】
[図:0001403695000008.jpg]
【0033】
[図:0001403695000009.jpg]
【0034】表1から明らかなように、実施例1~7の共重合ポリエステルは、接着性、耐湿熱性及び難燃性が良好なものであった。
【0035】これに対して、表2に示すように比較例1~8では次のような問題があった。比較例1では、有機リン化合物を添加していないため、難燃性が認められなかった。比較例2では、有機リン化合物の添加量が多すぎるため、被着材との密着性が低くなり、接着力が低かった。また、ポリエステルが非晶性であり、フィルムを重ねた時にタックが発生した。比較例3は、テレフタル酸が少なく、セバシン酸が多量に共重合されているので融点が低くなり、50℃での接着力が低下し、耐熱性が悪かった。比較例4は、テレフタル酸の共重合割合が多く、さらにイソフタル酸又は脂肪族ジカルボン酸が共重合されていないため融点が高くなっており、接着温度を200℃としても接着しなかっただけでなく、フィルムが収縮した。比較例5は、ダイマー酸を共重合していないため50℃での接着力が低く、また、湿熱処理による接着力の低下が大きく、耐湿熱性が悪かった。比較例6は、ダイマー酸の共重合割合が多いため重合性が十分でなく、重合度が低めとなり、接着力が低かった。また、ポリエステルが非晶性であり、フィルムを重ねた時にタックが発生した。比較例7は、1,4-ブタンジオールの共重合割合が少ないため共重合ポリエステルが非晶性であり、50℃での接着力が低下し、耐熱性が悪かった。比較例8は、有機リン化合物がエステル形成性の官能基を1つしか有していないため重合度が上がらず、接着力が低かった。」
4 甲4の記載
甲4には、次の記載がある。
「【請求項1】
主としてジカルボン酸成分とグリコール成分からなる共重合ポリエステル樹脂であって、前記共重合ポリエステルを構成する全多価カルボン酸成分を100モル%としたとき、前記ジカルボン酸成分が芳香族ジカルボン酸を50モル%以上含有し、ダイマー酸を5モル%以上含有し、かつ前記グリコール成分として飽和脂環からなる橋かけ環構造を有するジオールを10~35モル%含有する共重合ポリエステル樹脂。」
「【0011】
一方、本発明の共重合ポリエステル樹脂において、全カルボン酸成分の合計を100モル%とした場合、ダイマー酸の共重合比率は5モル%以上30モル%以下、より好ましくは10モル%以上20モル%以下である。ダイマー酸の共重合比率が高すぎると、得られる塗膜の機械的強度が低くなる傾向にあり、実用に値しないことがある。一方、ダイマー酸の共重合比率が低すぎると、バイオマス度を高くするのが困難になり、バイオマスプラ識別表示制度の基準となるバイオマス度25%を得ることが困難となる。」
5 甲5の記載
甲5には、次の記載がある。
「【請求項1】
酸成分とグリコール成分からなるポリエステル樹脂において、酸成分として、テレフタル酸とイソフタル酸を含有し、酸成分中のテレフタル酸とイソフタル酸の合計含有量が80モル%以上であり、グリコール成分として、ダイマージオールとネオペンチルグリコールを含有し、グリコール成分中のダイマージオールの含有量が10~40モル%、ネオペンチルグリコールの含有量が30~60モル%であることを特徴とする共重合ポリエステル樹脂。」
「【0017】
また、グリコール成分としてダイマージオールを10~40モル%含有することが必要であり、中でも20~30モル%含有することが好ましい。ダイマージオールを含有することにより、湿熱耐久性を向上させることができる。したがって、ダイマージオールの含有量が10モル%未満では耐湿熱性が低下する。一方、40モル%より多くなると樹脂の凝集力が低下し、被着剤への接着強度が低下する。ここでダイマージオールとは、不飽和脂肪酸が重合またはDiels-Alder反応等によって二量化して生じる脂肪族または脂環族ジカルボン酸(大部分の2量体の他、3量体、モノマー等を数モル%含有するものが多い)をアルコールに還元したものをいう。ダイマージオールとしてはクローダ社のプリポール等が挙げられる。本発明で用いるダイマージオールは、上記で例示した化合物に限定されるものではない。」
「【0039】
実施例1
エステル化反応缶に、テレフタル酸とエチレングリコール(EG)(モル比1/1.6)のスラリーを連続的に供給し、温度250℃、圧力0.2MPaの条件で反応させ、滞留時間を8時間として、エステル化反応率95%の反応物を得た。
得られたエステル化物22.2重量部、イソフタル酸18.3重量部、ダイマージオール35.6重量部、ネオペンチルグリコール10.3重量部、ビスフェノールAのエチレンオキシド付加物17.5重量部を反応容器に投入し、240℃で3時間エステル化反応を行った。次に、テトラ-n-ブチルチタネート0.1重量部を反応容器に添加し、60分かけて徐々に1.3hPaになるまで減圧していき、その後、所望の極限粘度、水酸基末端基量に到達するまで250℃で重縮合反応を行い、表1に示す組成を有する共重合ポリエステル樹脂を得た。
【0040】
実施例2~5、比較例1~4
酸成分、グリコール成分として表1に示すものを用い、実施例1と同様の方法で、表1の樹脂組成になるよう原料を投入し、エステル化反応、重縮合反応を行い、共重合ポリエステル樹脂を得た。なお、このとき、得られる共重合ポリエステル樹脂が表1に示す極限粘度、水酸基末端基量となるように、重縮合反応の時間、温度を適宜調整しながら行った。
【0041】
実施例1~5、比較例1~4で得られた共重合ポリエステル樹脂の組成及び特性値を表1に示す。
【0042】
【表1】
[図:0001403695000010.jpg]
【0043】
表1から明らかなように、実施例1~5で得られた共重合ポリエステル樹脂は、有機溶剤に対する溶解性に優れ、接着強度が高く、基材に対する接着力が良好であり、かつ湿熱耐久性にも優れていた。
【0044】
比較例1の共重合ポリエステル樹脂は、ダイマージオールを40モル%より多く含有しているため、樹脂の凝集力が低く接着強度が低いものであった。比較例2の共重合ポリエステル樹脂は、ダイマージオールが10モル%より少ないものであったため、耐湿耐久性に劣るものであった。比較例3の共重合ポリエステル樹脂は、ネオペンチルグリコールが30モル%より少ないため、樹脂に柔軟性と接着性を付与することができず、接着強度が低いものであった。また、有機溶剤に対する溶解性にも劣っていた。比較例4の共重合ポリエステル樹脂は、ダイマージオールが10モル%より少ないものであり、ガラス転移温度が10℃よりも高いため、基材との密着性に乏しく接着力の劣るものとなり、かつ湿熱耐久性にも劣るものであった。」
6 甲6の記載
甲6には、次の記載がある。
「
[図:0001403695000011.jpg]
」
「【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、耐湿熱性と耐カチオン酸性に優れ、さらにエポキシ樹脂との相溶性と接着性を併せ持った共重合ポリエステルとそれを含有する接着剤組成物を提供しようとするものである。」
「【0012】ここで、a)成分として必要なダイマージオールとは、不飽和脂肪酸を2量化したダイマー酸を還元して得られる脂肪族両末端ジオールである。本発明の共重合ポリエステルは、ダイマージオールを3~50モル%、好ましくは10~30モル%含有することが必要である。5モル%未満では耐湿熱性の改善効果が乏しく、50モル%を越えると接着剤組成物の相溶性が低下する。」
「【0031】実施例1
(共重合ポリエステル樹脂の製造方法)ポリエチレンテレフタレートオリゴマー1.3kg(エチレンテレフタレート繰り返し単位として6.5mol)、イソフタル酸1.1kg(6.5mol)、ビスフェノールAのエチレンオキサイド2モル付加物(明成化学社製)1.2kg(3.9mol)、ポリプロピレングリコール(ライオン社製レオコンPG1000、分子量1000)0.7kg(0.7mol)、ダイマージオール(ユニケマ社製PRIPOL2033)1.0kg(1.9mol)、2,4-ジエチルペンタンジオール0.6kg(3.9mol)、ヘキサンジオール0.3kg(2.6mol)さらに触媒としてテトラブチルチタネート3gを反応器に仕込み、系内を窒素に置換した。仕込み原料を30rpmで撹拌しながら、反応器を0.4MPaに加圧し、240℃で加熱し、内容物を溶融させた。反応器内温度が240℃に到達してから4時間エステル化反応を進行させた。エステル化反応終了後、系内を245℃に上昇させかつ減圧にする。系内が66.5Paに到達してから8時間重合反応を行なった。重合反応終了後、系内に窒素を封入することで常圧に戻し、生成した樹脂を系外に払い出した。この樹脂の組成を分析したところ、TPA/IPA/BAEO/PPG/DD/DEPD/HD=50/50/30/5/15/30/20(モル比)であった。(各略号については表1参照)
(接着剤組成物の調製)上記の共重合ポリエステル樹脂70部、エポキシ樹脂(エピコート828)30部、光カチオン重合開始剤(アデカオプトマーSP170)1部、及びトルエンとメチルエチルケトンとの混合溶剤(質量比1:1)100部を撹拌混合し、接着剤組成物を調製した。
(積層体の作成)接着剤組成物を厚さ50μmのPET(ポリエチレンテレフタレート)フィルム上に塗布した後、乾燥して、厚み100μmとなるように塗工した接着剤層側に波長365nmの紫外線を2400mJ/cm2となるように照射した後、直ちに厚さ30μmの銅板を重ね、室温でラミネートし接着させた積層体を得た。表1に樹脂および接着剤組成物の特性を示す。
【0032】
【表1】
[図:0001403695000012.jpg]
【0033】以下実施例2~5および比較例1~6は表1記載の樹脂組成となるように仕込みをした以外は実施例1と同様にして樹脂および接着剤組成物を得た。表1に実施例2~5および比較例1~6の樹脂および接着剤組成物の特性を示す。
【0034】表1から明らかなように、実施例1~5の共重合ポリエステルは耐湿熱性及び耐カチオン酸性が良好であり、該共重合ポリエステルを含有する接着剤組成物は相溶性が良く、この接着剤組成物からなる積層体は接着性が良好であった。これに対して、比較例では次のような問題があった。比較例1では、ダイマージオール成分を含んでおらず、本発明の範囲外であるポリテトラメチレングリコールを共重合しているので、耐湿熱性が十分でなく、耐カチオン酸性に劣る。またカチオン酸によって分解揮発物が発生し、接着性も悪い。比較例2では、ダイマージオール成分を含んでおらず、ポリプロピレングリコールの共重合量が本発明の範囲を超えているので、耐湿熱性が十分でなく、耐カチオン酸性に劣る。比較例3は、ダイマージオールの共重合量が本発明の範囲を外れているので、接着剤組成物にしたときのエポキシ樹脂との相溶性に劣り、接着性も悪い。比較例4は、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物の共重合量が本発明の範囲を下方に外れていたので、得られた樹脂は耐湿熱性とエポキシ樹脂との相溶性に劣り、接着性能が低い結果となった。比較例5は、酸成分としてダイマー酸を多量に共重合したので、耐湿熱性、相溶性、接着性を満たすものが得られなかった。比較例6は、酸成分として脂環族カルボン酸のシクロヘキサンジカルボン酸を多量に共重合したので、耐湿熱性、接着性を満たすものが得られなかった。比較例7は、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物の共重合量が本発明の範囲を上方に外れていた結果、耐湿熱性に劣り、接着性も低かった。」
7 甲7の記載
甲7には、次の記載がある。
「
[図:0001403695000013.jpg]
」
「【0027】<リンを共重合した樹脂の合成例1>撹拌器、温度計、流出用冷却機を装備した反応缶内に、式3のエチレングリコール溶液(固形分濃度50%)(三光株式会社製GHM-1)2013部、テトラブチルチタネート0.6部を仕込み、200℃まで昇温する。次に反応系を250℃まで昇温する一方、系内を徐々に減圧していき、60分かけて500Paとした。そして、さらに130Pa以下55分間重縮合反応を行い、ポリエステルオリゴマー式4を得た。
[図:0001403695000014.jpg]
nは2以上の整数このオリゴマーは、ガラス転移温度75℃、数平均分子量2200の淡黄色固体であった。別の反応缶にテレフタル酸852部、イソフタル酸825部、セバシン酸1166部、無水トリメリット酸30部、2-メチル1,3-プロパンジオール866部、1,6-ヘキサンジオール1704部、テトラブチルチタネート3.28部をオートクレーブに仕込み、180~240℃で2時間エステル化反応を実施した。次いでエステル化反応終了後、ポリエステルオリゴマー(式4)2940部を加え、10分間撹拌した後、反応系を240℃から275℃に昇温する一方、系内を徐々に減圧していき、60分かけて500Paとした。そして、さらに130Pa以下で65分間重縮合反応を行い、共重合ポリエステルを得た。共重合ポリエステルはNMR分析の結果テレフタル酸23モル%、イソフタル酸19モル%、セバシン酸28モル%、式5の成分29モル%(式5は便宜上ジカルボン酸として表した)、トリメリット酸1モル%、エチレングリコール8モル%、2メチル-1,3プロパンジオール27モル%、1,6-ヘキサンジオール65モル%の組成を有しており、数平均分子量25000、リン含有量3.5wt%、ガラス転移温度は6℃の淡黄色樹脂であった。
【0028】
[図:0001403695000015.jpg]
【0029】<リンを共重合した樹脂の合成例2~6、比較合成例1~6>合成例1と同様にして、各原料を用い表1及び表2に示す組成のポリエステル樹脂を得た。比較合成例1~3はリンを共重合していないかあるいは共重合量が少ないので本発明の範囲外である。また、比較合成例4~6は、エチレングリコールを40モル%以上含むので本発明の範囲外である。
【0030】
【表1】
[図:0001403695000016.jpg]
[図:0001403695000017.jpg]
<実施例1>
難燃性:JIS K7201酸素指数法に準じて限界酸素指数(L.O.I)で評価した。これは、試料が燃焼するために必要な最低酸素濃度である。この酸素指数が大きいほど難燃性が高いことを示す。
接着性:合成例1で得られたポリエステル接着剤を50μmの2軸延伸PETフィルム上に厚みが30μmになるように積層する。接着層同志を合わせ、テスター産業社製ロールラミネータを用いて接着した。なお、ラミネートは温度170℃、圧力0.3mPa、速度0.5m/minで行った。接着強度は東洋ボールドウイン社製RTM100を用いて、25℃及び、60℃雰囲気下で引っ張り試験を行い、50mm/minの引っ張り速度でT型剥離接着力を測定した。
分子量低下率:合成例1で得られたポリエステル接着剤を50μmの2軸延伸PPフィルム上に接着剤を厚みが30μmになるように積層する。このフィルムの接着剤面を上にして40℃、90%の恒温恒湿機に入れ、100時間静置した。このようにして加速試験したサンプルの耐加水分解を調べるために、PPフィルムから接着剤をはがして数平均分子量を測定し、その低下率を算出した。
(判定)
◎:分子量低下率5%未満、○:分子量低下率5%以上10%未満、×:分子量低下率10%以上
【0032】<実施例2~6、比較例1~6>表1及び表2に記載したポリエステル接着剤サンプルの各評価を実施例1と同様に行った。表3から分かる様に、本発明のポリエステル接着剤は、従来技術と比較して、難燃性に優れ、又、耐加水分解性、接着性に優れた性能を有することがわかる。それに対して、表4に見られるように、比較例1~6は、酸素指数(難燃性)、接着性、耐加水分解性のいずれかが劣っている。
【0033】
【表3】
[図:0001403695000018.jpg]
*1)40℃、90%RH下保存、100時間後測定
◎:分子量低下率5%未満、○:5%以上10%未満、×:10%以上
【0034】
【表4】
[図:0001403695000019.jpg]
【0035】
【発明の効果】本発明は、接着剤や含浸用樹脂等として用いた場合、高温雰囲気下においても優れた接着性を有し、高い難燃性を有すると共に、加水分解が少ないため、長期間使用できる耐久接着性を実現することができる。」
8 甲8の記載
甲8には、次の記載がある。
「【請求項1】
多価カルボン酸類由来の構造単位と多価アルコール類由来の構造単位とを含むポリエステル系樹脂(A)を含有する接着剤組成物であって、ポリエステル系樹脂(A)が下記の要件を満足することを特徴とする接着剤組成物。
[I]多価カルボン酸類が、芳香族多価カルボン酸類を25モル%以上含有すること。[II]多価カルボン酸類が、酸無水物基数が0又は1である3価以上の多価カルボン酸類(a1)を含有すること。
[III]ポリエステル系樹脂(A)のエステル結合濃度が7ミリモル/g以下であること。
[IV]ポリエステル系樹脂(A)の酸価が3mgKOH/g以上であること。
[V]多価カルボン酸類としてダイマー酸類、及び多価アルコール類としてダイマージオール類からなる群から選ばれる少なくとも一つを含有し、多価カルボン酸類全体に対するダイマー酸類の含有量(α)と多価アルコール類全体に対するダイマージオール類の含有量(β)との合計含有量(α+β)が5モル%以上であること。
【請求項2】
多価アルコール類がビスフェノール骨格含有モノマーを含有し、多価アルコール類全体に対するビスフェノール骨格含有モノマーの含有量が10モル%以上であることを特徴とする請求項1記載の接着剤組成物。
【請求項3】
ポリエステル系樹脂(A)のガラス転移温度が-5℃以上であることを特徴とする請求項1又は2記載の接着剤組成物。
【請求項4】
ポリエステル系樹脂(A)が、多価カルボン酸類(a1)を用いた解重合の工程を経て得られたポリエステル系樹脂であることを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の接着剤組成物。
【請求項5】
ポリエステル系樹脂中におけるポリエステル系樹脂(A)の含有量が50重量%超であることを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載の接着剤組成物。
【請求項6】
更に、ポリエポキシ系化合物(B)を含有することを特徴とする請求項1~5のいずれか一項に記載の接着剤組成物。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載の接着剤組成物が硬化されてなることを特徴とする接着剤。
【請求項8】
電子材料部材の貼り合せに用いられることを特徴とする請求項7記載の接着剤。
【請求項9】
電子材料部材が、フレキシブル銅張積層板、フレキシブルプリント基板、カバーレイ及びボンディングシートから選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項8記載の接着剤。」
「【0009】
そこで、本発明ではこのような背景下において、低吸湿性、湿熱環境下での長期耐久性に優れ、更には高い接着性を有する接着剤組成物及びこの接着剤組成物が硬化された接着剤の提供を目的とする。」
「【0082】
<ポリエステル系樹脂の製造>
下記表1に記載された組成(モル比)は、出来上がり組成比(樹脂組成比)であり、得られたポリエステル系樹脂の各構成モノマー量の相対比(モル比)である。
【0083】
〔製造例1:ポリエステル系樹脂(A-1)の製造〕
温度計、撹拌機、精留塔、窒素導入管の付いた反応缶に、多価カルボン酸類としてイソフタル酸(IPA)231.1部(1.3910モル)、トリメリット酸無水物(TMAn)2.7部(0.0141モル)、多価アルコール類としてビスフェノールAのエチレンオキサイド約2モル付加物「ニューポールBPE-20」(BPE-20)(三洋化成工業社製)230.1部(0.7058モル)、エチレングリコール(EG)57.0部(0.9183モル)、ダイマージオール「プリポール2033」(P2033)(クローダ社製)261.5部(0.4941モル)、触媒としてテトラブチルチタネート0.1部を仕込み、内温が270℃となるまで2.5時間かけて昇温し、270℃で1.5時間、エステル化反応を行った。
次いで、触媒としてテトラブチルチタネート0.1部を追加し、系内を2.5hPaまで減圧し、3時間かけて重合反応を行った。
その後、内温を240℃まで下げ、トリメリット酸無水物(TMAn)17.6部(0.0916モル)を添加し240℃で1時間解重合反応を行い、ポリエステル系樹脂(A-1)を得た。
【0084】
〔製造例2~4、比較製造例5:ポリエステル系樹脂(A-2)~(A-4)及び(A'-5)の製造〕
樹脂組成を表1に記載のとおりになるよう変更した以外はA-1と同様にしてポリエステル系樹脂(A-2)~(A-4)及び(A'-5)を得た。
【0085】
〔比較製造例1:ポリエステル系樹脂(A'-1)の製造〕
温度計、撹拌機、精留塔、窒素導入管の付いた反応缶に、多価カルボン酸類としてイソフタル酸(IPA)228.2部(1.3735モル)、多価アルコール類としてビスフェノールAのエチレンオキサイド約2モル付加物「ニューポールBPE-20」(BPE-20)(三洋化成工業社製)223.9部(0.6868モル)、ネオペンチルグリコール(NPG)28.6部(0.2746モル)、ダイマージオール「プリポール2033」(P2033)(クローダ社製)254.4部(0.4801モル)、触媒としてテトラブチルチタネート0.1部を仕込み、内温が270℃となるまで2時間かけて昇温し、270℃で3時間、エステル化反応を行った。
次に、内温を200℃まで下げ、ピロメリット酸二無水物(PMAn)15.0部(0.0688モル)を添加し200℃で2時間重付加反応を行い、ポリエステル系樹脂(A'-1)を得た。
【0086】
〔比較製造例2~4:ポリエステル系樹脂(A'-2)~(A'-4)の製造〕
樹脂組成を表1に記載のとおりになるよう変更した以外はA'-1と同様にしてポリエステル系樹脂(A'-2)~(A'-4)を得た。
【0087】
得られたポリエステル系樹脂の樹脂組成(成分由来の構造単位)及び諸物性を表1に示す。なお、表1中の各略称は以下のとおりである。
「TPA」:テレフタル酸
「IPA」:イソフタル酸
「TMAn」:トリメリット酸無水物
「AdA」:アジピン酸
「P1009」:ダイマー酸「プリポール1009」(クローダ社製)
「P1010」:ダイマー酸「プリポール1010」(クローダ社製)
「PMAn」:ピロメリット酸二無水物
「BPDA」:3,3',4,4',-ジフェニルテトラカルボン酸二無水物
「EG」:エチレングリコール
「NPG」:ネオペンチルグリコール
「BPE-20」:ビスフェノールAのエチレンオキサイド約2モル付加物「ニューポールBPE-20」(三洋化成工業社製)
「P2033」:ダイマージオール「プリポール2033」(クローダ社製)
【0088】
【表1】
[図:0001403695000020.jpg]
【0089】
<ポリエポキシ系化合物(B)>
ポリエポキシ系化合物(B)として、以下のものを用意した。
(B-1):フェノールノボラック型エポキシ樹脂「YDPN-638」(日鉄ケミカル&マテリアル社製)(WPE=177(g/eq))
【0090】
<接着剤組成物の製造>
上記で得られたポリエステル系樹脂及びポリエポキシ系化合物(B)を用いて、下記のとおり接着剤組成物を製造した。
【0091】
(実施例1)
上記で得られたポリエステル系樹脂(A-1)をトルエン/メチルエチルケトン=5/1(重量比)混合溶媒で固形分濃度55%に希釈し、このポリエステル系樹脂(A-1)溶液(固形分として100部)に対し、ポリエポキシ系化合物(B-1)(固形分)を10部配合し、更にメチルエチルケトンで固形分50%になるように希釈、撹拌、混合することにより、接着剤組成物を得た。
【0092】
(実施例2~4、比較例1~6)
実施例1において、表2に示す樹脂組成とした以外は同様にして、接着剤組成物を得た。
得られた接着剤組成物を用いて以下のとおり評価を行った。その結果を表2に示す。
【0093】
<積層体の作製>
上記で製造した接着剤組成物を厚み50μmのポリイミドフィルム「カプトン200H」(東レ・デュポン社製)にアプリケーターで塗布した後、120℃で5分間乾燥し、乾燥膜厚25μmの接着層を形成した。次に、厚み30μmの圧延銅箔を上記接着層付きポリイミドフィルムの接着層面とラミネート(ラミネート条件:170℃、0.2MPa、送り速度1.5m/min)し、次いで160℃のオーブンで4時間熱処理、硬化させることで積層体(PI(基材)/Cu(被着体))を得た。
【0094】
<評価>
〔初期接着力〕
上記で得られた積層体を1cm幅に切り出したものを試験片とした。両面テープを用いて試験片を厚み2mmのガラス板に固定し、23℃、50%RHの環境下で剥離試験機を用いて積層体のポリイミドフィルム側を引っ張り、試験片の引張剥離強度を測定した(剥離速度:50mm/min、剥離角度:180°)。評価基準は下記のとおりとした。
◎:12N/cm以上
○:9N/cm以上、12N/cm未満
△:6N/cm以上、9N/cm未満
×:6N/cm未満
【0095】
〔湿熱耐久性〕
試験片を85℃、85%RHの恒温恒湿機に入れ、所定時間後に取り出し、23℃50%RHの環境下に一晩静置した後、上記の初期接着力と同様にして、引張剥離強度を測定した。初期の接着力に対する湿熱処理後の接着力の百分率を「維持率」とした。
接着力の絶対値については上記の初期接着力と同様の評価基準を用いて評価した。
接着力の維持率については下記の評価基準に基づいて評価した。
◎:維持率が80%以上
○:維持率が60%以上、80%未満
△:維持率が40%以上、60%未満
×:維持率が40%未満
【0096】
〔ゲル分率〕
上記で得られた接着層付きポリイミドフィルムを160℃で4時間熱処理し硬化させた後、4cm×4cmサイズに切り出した。これを200メッシュのSUS製金網で包み、メチルエチルケトン中に23℃×24時間浸漬し、浸漬前の接着剤重量に対する金網中に残存した不溶解の接着剤成分の重量百分率をゲル分率とした。
【0097】
【表2】
[図:0001403695000021.jpg]
【0098】
上記表1の結果より、製造例1~4により得られた本発明の要件を満たすポリエステル系樹脂(A-1)~(A-4)は低吸湿性に優れることが分かる。また上記表2の結果より、これらポリエステル系樹脂(A-1)~(A-4)を用いて得られた実施例1~4の接着剤組成物は、湿熱環境下での長期耐久性に優れ、更に高い接着性をも有することが分かる。
一方、酸無水物基数が0又は1である3価以上の多価カルボン酸類(a1)以外での酸価付与を行った比較製造例1及び2で得られたポリエステル系樹脂(A'-1)及び(A'-2)を用いて得られた比較例1及び2の接着剤組成物は、湿熱環境下での長期耐久性には優れるものの、接着性は実施例に比べ低いものであった。
また、比較製造例3及び4により得られたエステル結合濃度が高いポリエステル系樹脂(A'-3)及び(A'-4)は吸湿性が高く、それらを用いて得られた比較例3~5の接着剤組成物は、初期接着性には良好であるものもあるが、湿熱環境下での長期耐久性に劣るものであった。
また、比較製造例5により得られた芳香族酸含有量が低いポリエステル系樹脂(A'-5)は吸湿性は低いものの、それらを用いて得られた比較例6の接着剤組成物は、初期接着性が低く、また、湿熱環境下での長期耐久性にも劣るものであった。」
第5 当審の判断
1 申立理由1(進歩性欠如)について
(1)甲1に記載された発明を主引用発明とする場合
ア 甲1に記載された発明
甲1の実施例1(【0110】、【0118】の【表4】)に着目し、【0100】、【0103】の【表1】を参照すると、甲1には、「多価カルボン酸成分として、テレフタル酸40モル%、イソフタル酸39モル%、アジピン酸20モル%、無水トリメリット酸1モル%を含み、多価アルコール成分として、2-メチル-1,3-プロパンジオール58モル%、1,4-ブタンジオール42モル%を含み、付加酸として無水トリメリット酸4モル%を含み、数平均分子量が15000であり、酸価が400当量/106gであり、ガラス転移温度が10℃であるポリエステル樹脂Aを100質量部と、無機充填材であるR972を20質量部と、エポキシ樹脂アを11.9質量部と、溶剤としてメチルエチルケトンとトルエンを含む、接着剤用樹脂組成物」の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されているといえる。
イ 対比
甲1発明と本件発明1を対比する。
甲1発明の「ポリエステル樹脂A」は、多価カルボン酸成分と多価アルコール成分を含むものであり、本件発明1の「多価カルボン酸類由来の構造単位と多価アルコール類由来の構造単位を含むポリエステル系樹脂(A)」に相当する。
甲1発明の「テレフタル酸」、「イソフタル酸」、「無水トリメリット酸」は、本件発明1の「芳香族多価カルボン酸」に相当する。また、テレフタル酸40モル%、イソフタル酸39モル%、無水トリメリット酸1モル%を含み、さらに付加酸として無水トリメリット酸4モル%を含むため、甲1発明は、本件発明1の「前記多価カルボン酸類として芳香族多価カルボン酸類を含有し、前記多価カルボン酸類全体に対する前記芳香族多価カルボン酸類の含有量が25モル%以上であり」を充足する。
甲1発明のポリエステル樹脂は、アミド基、イミド基、ウレタン基、ウレア基を形成する成分を含まないため、甲1発明は、本件発明1の「前記ポリエステル系樹脂(A)の」「アミド基、イミド基、ウレタン基、ウレア基の合計の濃度が2ミリモル/g以下」を充足する。
甲1発明の「酸価が400当量/106g」は、KOH(分子量56)の質量で換算すると、106g当たり400×56×103mgKOHであり、1g当たりにすると、400×56×103/106mgKOH/g=22.4mgKOH/gであるから、本件発明1の「酸価が3mgKOH/g以上」を充足する。
甲1発明のポリエステル樹脂Aは「ガラス転移温度が10℃」であり、本件発明1の「ガラス転移温度(Tg)が-5℃以上である」を充足する。
そうすると、本件発明1と甲1発明は、以下の一致点及び相違点を有する。
<一致点>
「多価カルボン酸類由来の構造単位と多価アルコール類由来の構造単位を含むポリエステル系樹脂(A)を含有する接着剤組成物であって、
前記多価カルボン酸類として芳香族多価カルボン酸類を含有し、前記多価カルボン酸類全体に対する前記芳香族多価カルボン酸類の含有量が25モル%以上であり、
前記ポリエステル系樹脂(A)のアミド基、イミド基、ウレタン基、ウレア基の合計の濃度が2ミリモル/g以下、酸価が3mgKOH/g以上、ガラス転移温度(Tg)が-5℃以上である、接着剤組成物。」
<相違点1-1>
多価カルボン酸類及び多価アルコール類について、本件発明1は、「前記多価カルボン酸類としてダイマー酸類、及び前記多価アルコール類としてダイマージオール類からなる群から選ばれる少なくとも一つを含有し、前記多価カルボン酸類全体に対する前記ダイマー酸類の含有量(α)と前記多価アルコール類全体に対する前記ダイマージオール類の含有量(β)との合計含有量(α+β)が5モル%以上」であると特定するのに対し、甲1発明は、ダイマー酸類及びダイマージオール類を含まない点。
<相違点1-2>
ポリエステル系樹脂について、本件発明1は、「エステル結合濃度が7ミリモル/g以下」と特定するのに対し、甲1発明は、エステル結合濃度が特定されていない点。
ウ 相違点の検討
事案に鑑み、まず、<相違点1-2>について検討する。
<相違点1-2>について
甲3【0029】には、「ダイマー酸が共重合されていることで金属に対する密着性が向上すると共に、ポリエステル中のエステル基濃度が低下するため、加水分解も起こり難くなり、耐湿熱性が向上する。」ことが記載され、同【0013】には、ポリエステルとして、ダイマー酸が共重合したものを用いることにより、「樹脂の耐湿熱性が向上し、湿熱環境下での接着性低下を著しく改善できるとともに接着性が向上する。」こと、及び「ダイマー酸の割合は共重合ポリエステルを構成する全酸成分に対して0.5~25モル%である必要があり、好ましくは5~15モル%である。」ことが記載されているが、ダイマー酸の割合を共重合ポリエステルを構成する全酸成分に対して0.5~25モル%とした場合の、ポリエステル中のエステル基濃度の値は不明であり、加水分解が起こり難くなるエステル結合濃度の値については記載されていない。
また、甲2には、ポリエステル樹脂を構成しうる成分としてダイマー酸やダイマージオールが例示され(【0037】、【0038】)、甲4には、共重合ポリエステル樹脂において、全多価カルボン酸成分を100モル%としたとき、「ダイマー酸の共重合比率は5モル%以上30モル%以下」が好ましいことが記載され(【0011】)、甲5には、共重合ポリエステル樹脂において、「グリコール成分としてダイマージオールを10~40モル%含有する」ことで湿熱耐久性を向上させることが記載され(【0017】)、甲6には、共重合ポリエステルにおいて、「ダイマージオールを3~50モル%」含有することで耐湿熱性を改善効することが記載され(【0012】)、甲7には、グルコール成分中にダイマージオールを5又は8モル%含むポリエステル樹脂の例が記載されているが(【0030】合成例3、5)、甲2、4~7のいずれにも、ダイマー酸又はダイマージオールと、エステル結合濃度との関係については記載も示唆もない。
そして、本件発明1は、「エステル結合濃度が高すぎると、低吸湿性や湿熱環境下での長期耐久性が不充分となる」ため、エステル結合濃度を7ミリモル/g以下とするものであり(【0043】)、【0088】、【0098】、【0099】には、エステル結合濃度が4.12又は3.42ミリモル/gである実施例1~3では湿熱環境下での長期耐久性等に優れる一方、エステル結合濃度が9.85ミリモル/g又は7.18ミリモル/gである比較例1~4においては、湿熱環境下での長期耐久性に劣ることが具体的に実験例で示されており、「エステル結合濃度を7ミリモル/g以下」とすることにより湿熱環境下での長期耐久性等に優れる顕著な効果を奏するものといえるため、当該効果は、エステル結合濃度の値の記載がない甲1~7から当業者が予測し得ないものといえる。
そうすると、甲1発明において、耐湿熱性向上等のため、甲2~7記載の技術を採用しても、エステル結合濃度の値を「7ミリモル/g以下」とすることが、当業者が容易になし得ることとはいえない。
エ 申立人の主張
申立人は、「ポリエステル系樹脂(A)のエステル結合濃度の上限値(7ミリモル/g以下)」は、「ダイマー酸またはダイマージオールを共重合した結果として、必然的に得られる値であり、技術的意義を有していない」旨、当業者であれば「エステル結合濃度の上限値(7ミリモル/g以下)についても同様に容易に想到することができたものと思料する」旨を主張している。
しかしながら、甲1発明において、ダイマー酸又はダイマージオールを共重合したとしても、共重合するダイマー酸及びダイマージオールの量、ダイマー酸以外の多価カルボン酸成分の種類及び量、ダイマージオール以外の多価アルコール成分の種類及び量、反応条件等によってエステル結合濃度は異なるため、必然的にポリエステル樹脂のエステル結合濃度の値が「7ミリモル/g以下」となるとは認められない。そして、甲1~7にエステル結合濃度の具体値が記載されておらず、本件発明1がエステル結合濃度を「7ミリモル/g以下」とすることにより湿熱環境下での長期耐久性等に優れる顕著な効果を奏することを考慮すると、甲1発明において、エステル結合濃度を「7ミリモル/g以下」とすることが、当業者が容易になし得たことであるとはいえない。よって、申立人の主張は採用できない。
オ 小括
以上のとおり、本件発明1は、<相違点1-1>について検討するまでもなく、甲1発明及び甲2~甲7に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとすることはできないから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものであるとはいえない。
カ 本件発明2~8について
本件発明2~8は、いずれも本件発明1を引用して特定するものであり、本件発明1に発明特定事項をさらに追加したものである。
したがって、本件発明2~8は、甲2~甲7に記載された事項を踏まえたとしても、前記ア~オで検討した理由と同様の理由により、甲1発明に対して進歩性を有するものであり、本件発明2~8に係る特許は、申立理由1によって取り消されるべきものとすることはできない。
(2)甲2に記載された発明を主引用発明とする場合
ア 甲2に記載された発明
甲2の実施例1(【0075】~【0078】、【0080】の【表3】)に着目し、【0071】、【0074】の【表2】を参照すると、甲2には、「ポリエステル樹脂A1を70質量%、ポリエステル樹脂B1を30質量%含む接着剤であって、ポリエステル樹脂A1は、酸成分として、テレフタル酸62mol%、イソフタル酸10mol%、セバシン酸28mol%を含み、アルコール成分として、エチレングリコール53mol%、ネオペンチルグリコール47mol%を含み、数平均分子量26000、Tg9℃、酸価2.5mgKOH/g、Ts63℃であり、ポリエステル樹脂B1は、酸成分として、テレフタル酸50mol%、イソフタル酸50mol%を含み、アルコール成分として、エチレングリコール49mol%、BisA-2EO:ビスフェノールAの2モルエチレンオキサイド付加体50mol%、プロピレングリコール1mol%を含み、酸変性原料としてトリメリット酸1mol%を含むものであり、数平均分子量11000、Tg65℃、酸価7.1mgKOH/g、Ts114℃である、接着剤」の発明(以下「甲2発明」という。)が記載されているといえる。
イ 対比
甲2発明と本件発明1を対比する。
甲2発明の「ポリエステル樹脂B1」は、酸成分として、多価カルボン酸である「テレフタル酸」、「イソフタル酸」、「トリメリット酸」を含み、アルコール成分として、多価アルコールである「エチレングリコール」、「BisA-2EO:ビスフェノールAの2モルエチレンオキサイド付加体」、「プロピレングリコール」を含むため、本件発明1の「多価カルボン酸類由来の構造単位と多価アルコール類由来の構造単位を含むポリエステル系樹脂(A)」に相当する。
甲2発明の「テレフタル酸」、「イソフタル酸」、「トリメリット酸」は、本件発明1の「芳香族多価カルボン酸」に相当する。そして、甲2発明のポリエステル樹脂B1の酸成分は「芳香族多価カルボン酸」のみであるため、本件発明1の「前記多価カルボン酸類として芳香族多価カルボン酸類を含有し、前記多価カルボン酸類全体に対する前記芳香族多価カルボン酸類の含有量が25モル%以上であり」を充足する。
甲2発明のポリエステル樹脂B1は、アミド基、イミド基、ウレタン基、ウレア基を形成する成分を含まないため、甲2発明は、本件発明1の「前記ポリエステル系樹脂(A)の」「アミド基、イミド基、ウレタン基、ウレア基の合計の濃度が2ミリモル/g以下」を充足する。
甲2発明のポリエステル樹脂B1は、「Tg65℃」、「酸価7.1mgKOH/g」であるため、本件発明1の「ガラス転移温度(Tg)が-5℃以上」、「酸価が3mgKOH/g以上」を充足する。
そうすると、本件発明1と甲2発明は、以下の一致点及び相違点を有する。
<一致点>
「多価カルボン酸類由来の構造単位と多価アルコール類由来の構造単位を含むポリエステル系樹脂(A)を含有する接着剤組成物であって、
前記多価カルボン酸類として芳香族多価カルボン酸類を含有し、前記多価カルボン酸類全体に対する前記芳香族多価カルボン酸類の含有量が25モル%以上であり、
前記ポリエステル系樹脂(A)のアミド基、イミド基、ウレタン基、ウレア基の合計の濃度が2ミリモル/g以下、酸価が3mgKOH/g以上、ガラス転移温度(Tg)が-5℃以上である、接着剤組成物。」
<相違点2-1>
多価カルボン酸類及び多価アルコール類について、本件発明1は、「前記多価カルボン酸類としてダイマー酸類、及び前記多価アルコール類としてダイマージオール類からなる群から選ばれる少なくとも一つを含有し、前記多価カルボン酸類全体に対する前記ダイマー酸類の含有量(α)と前記多価アルコール類全体に対する前記ダイマージオール類の含有量(β)との合計含有量(α+β)が5モル%以上」であると特定するのに対し、甲2発明は、ダイマー酸類及びダイマージオール類を含まない点。
<相違点2-2>
ポリエステル系樹脂について、本件発明1は、「エステル結合濃度が7ミリモル/g以下」と特定するのに対し、甲2発明は、エステル結合濃度が特定されていない点。
ウ 相違点の検討
事案に鑑み、まず、<相違点2-2>について検討する。
<相違点2-2>について
<相違点2-2>は、前記「(1)甲1に記載された発明を主引用発明とする場合」の<相違点1―2>と同様であるため、前記<相違点1-2>で検討した理由と同様の理由により、甲2発明において、エステル結合濃度の値を「7ミリモル/g以下」とすることが、当業者が容易になし得ることとはいえない。
エ 申立人の主張
申立人は、前記「(1)甲1に記載された発明を主引用発明とする場合」の「エ 申立人の主張」に記載した内容と同様の主張をしているが、前記同様に申立人の主張は採用できない。
オ 小括
以上のとおり、本件発明1は、<相違点2-1>について検討するまでもなく、甲2発明及び甲1、3~7に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとすることはできないから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものであるとはいえない。
カ 本件発明2~8について
本件発明2~8は、いずれも本件発明1を引用して特定するものであり、本件発明1に発明特定事項をさらに追加したものである。
したがって、本件発明2~8は、甲1、3~7に記載された事項を踏まえたとしても、前記ア~オで検討した理由と同様の理由により、甲2発明に対して進歩性を有するものであり、本件発明2~8に係る特許は、申立理由1によって取り消されるべきものとすることはできない。
2 申立理由2(サポート要件違反)について
(1)判断手法について
特許請求の範囲の記載がサポート要件を満たすか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らして当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。
(2)本件への当てはめ
ア 本件特許発明が解決しようとする課題は、本件明細書の【0009】の記載から、「低吸湿性、硬化前のタックフリー性、硬化後の初期接着性、更には湿熱環境下での長期耐久性に優れた接着剤組成物及びこの接着剤組成物が硬化された接着剤の提供」であると認められる。
イ 本件明細書の【0088】、【0098】、【0099】には、本件発明1の発明特定事項を全て充足する実施例1~3は、低吸湿性、硬化前のタックフリー性、硬化後の初期接着性、湿熱環境下での長期耐久性、のいずれも優れることが記載されている。また、本件明細書には、「多価カルボン酸類全体に対するダイマー酸類の含有量(α)と多価アルコール類全体に対するダイマージオール類の含有量(β)との合計含有量(α+β)(モル%)は、5モル%以上であることが好ましく」、「ダイマー酸類及びダイマージオール類の合計含有量(α+β)(モル%)が少なすぎると、低吸湿性や湿熱環境下での長期耐久性が不充分となる傾向があり」(【0031】)、「多価カルボン酸類全体に対する芳香族多価カルボン酸類の含有量は、25モル%以上であることが好ましく」、「芳香族カルボン酸類の含有量が少なすぎると、湿熱環境下での長期耐久性が不充分となる傾向がある。」(【0020】)、「ポリエステル系樹脂(A)のエステル結合濃度は、7ミリモル/g以下であり」、「エステル結合濃度が高すぎると、低吸湿性や湿熱環境下での長期耐久性が不充分となる。」(【0048】)、「エステル結合や反応性官能基以外のその他極性基濃度は、低吸湿性や湿熱環境下での長期耐久性の点から低い方が好ましい。その他極性基としては、例えば、アミド基、イミド基、ウレタン基、ウレア基、エーテル基、カーボネート基等が挙げられる。」、「アミド基、イミド基、ウレタン基、ウレア基は、それらの合計の濃度が3ミリモル/g以下であることが好ましく」(【0053】、【0054】)と記載されており、本件発明1の発明特定事項は、極性が低く親水性が低い部分の含有量を所定値以上とし、極性が高く親水性が高い部分の含有量を所定値以下とすることを含むものであるから、本件発明1の発明特定事項を充足することにより、低吸湿性及び湿熱環境下での長期耐久性に優れた接着剤組成物を提供するという課題を解決できるものといえる。また、本件明細書には、「ポリエステル系樹脂(A)のガラス転移温度(Tg)は、-5℃以上であり」、「ガラス転移温度(Tg)が低すぎると、初期接着性やタックフリー性が不充分となる。」(【0057】)と記載されており、ガラス転移温度を「-5℃以上」とすることにより、「硬化前のタックフリー性」、「硬化後の初期接着性」に優れた接着剤組成物を提供するという課題を解決できるものといえる。そうすると、本件発明1の発明特定事項を全て充足することにより、前記アに記載した課題を解決できるものと認められる。
ウ したがって、本件発明1は、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであると認められる。
エ また、本件発明2~8は、本件発明1を直接的又は間接的に引用して特定するものであり、いずれも本件発明1を全て包含し、それぞれ個別の技術事項を追加したものである。そうすると、本件発明2~8は、前記アに記載した課題を解決できるものである。したがって、本件発明2~8も、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであると認められる。
(3)申立人の主張について
ア 申立人は、本件明細書の【0098】に記載の実施例1~3で用いられているポリエステル系樹脂A-1及びA-2が、いずれも「BPE-20(ビスフェノールAのエチレンオキサイド約2モル付加物:段落【0087】)」を含むこと、【0025】に「多価アルコール類全体に対するビスフェノール骨格含有モノマーの含有量は、10モル%以上であることが好ましく、より好ましくは20モル%以上、特に好ましくは30モル%以上、更に好ましくは40モル%以上である。ビスフェノール骨格含有モノマーの含有量が少なすぎると、低吸湿性や湿熱環境下での長期耐久性が不充分となる傾向がある。」との記載があることから、ビスフェノール骨格含有モノマーは、「吸湿性や湿熱環境下での長期耐久性」に優れた接着剤を提供するという本件発明の課題を解決するため必要不可欠な成分である旨を主張している。
しかしながら、前記(2)で検討したとおり、本件発明1は、ダイマー酸類及びダイマージオール類の合計含有量、芳香族多価カルボン酸類の含有量、エステル結合濃度、アミド基、イミド基、ウレタン基、ウレア基の合計濃度を特定することにより、「低吸湿性」、「湿熱環境下での長期耐久性」に優れた接着剤組成物を提供するという課題を解決するものであるから、「ビスフェノール骨格含有モノマー」が当該課題を解決するために必要不可欠な成分であるとは認められない。
イ 申立人は、「PMAn(ピロメリット酸無水物)」についても、実施例1~3のポリエステル系樹脂に含まれており、本件発明の課題を解決するために必要不可欠な成分である旨を主張している。
しかしながら、前記(2)で検討したとおり、本件発明1は、ダイマー酸類及びダイマージオール類の合計含有量、芳香族多価カルボン酸類の含有量、エステル結合濃度が、アミド基、イミド基、ウレタン基、ウレア基の合計濃度を特定し、さらにガラス転移温度を特定することにより、本件発明の課題を解決できるものであり、「PMAnピロメリット酸無水物」が、当該課題を解決するために必要不可欠な成分であるとは認められない。
ウ したがって、本件発明1は、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであると認められる。よって、申立人の主張はいずれも採用できない。
(4)小括
以上で検討したとおり、本件発明1~8は、発明の詳細な説明及び技術常識に基いて、当業者が発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるから、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たすものである。
3 申立理由3(委任省令要件違反)について
(1)判断手法
特許法第36条第4項第1号で委任する経済産業省令(特許法施行規則第24条の2)では、発明がどのような技術的貢献をもたらすものであるかが理解でき、また審査及び調査に役立つように、発明が解決しようとする課題、その解決手段などの、「当業者が発明の技術上の意義を理解するために必要な事項」を、発明の詳細な説明に記載することが規定されている。
そして、委任省令要件で記載することが求められる事項とは、発明の属する技術分野並びに発明が解決しようとする課題及びその解決手段である。
また、発明特定事項に数式又は数値を含む場合であって、当業者が発明の詳細な説明の記載並びに出願時の技術常識に基づいて、発明の課題とその数式又は数値による特定との実質的な関係を理解することができず、発明の課題の解決手段を理解できない場合には、発明の技術上の意義が不明であり、委任省令要件違反に該当する。
(2)本件への当てはめ
ア 本件明細書【0001】には、「本発明は、ポリエステル系樹脂を含有する接着剤組成物及びこの接着剤組成物が硬化されてなる接着剤に関し、更に詳しくは、低吸湿性、硬化前のタックフリー性、硬化後の初期接着性、更には湿熱環境下での長期耐久性に優れた接着剤組成物及びこの接着剤組成物が硬化された接着剤に関する。」と記載されており、発明の属する技術分野の記載がある。
イ 本件明細書の【0009】には、「そこで、本発明ではこのような背景下において、低吸湿性、硬化前のタックフリー性、硬化後の初期接着性、更には湿熱環境下での長期耐久性に優れた接着剤組成物及びこの接着剤組成物が硬化された接着剤の提供を目的とする。」と発明が解決しようとする課題が記載されている。
ウ 本件明細書の【0010】には、「しかるに本発明者は、かかる事情に鑑み鋭意研究を重ねた結果、ポリエステル系樹脂を含有する接着剤組成物であって、ポリエステル系樹脂のエステル結合濃度を低くしながらもガラス転移温度(Tg)は高くし、更に酸価を所定値以上に付与することにより、低吸湿性、硬化前のタックフリー性、硬化後の初期接着性、更には湿熱環境下での長期耐久性に優れた接着剤組成物となることを見出し、本発明を完成した。」、【0013】には「本発明者は、ポリエステル系樹脂を構成するモノマーの組成を調整することによって、エステル結合濃度、酸価、ガラス転移温度(Tg)を最適化することで、低吸湿性でありながら、硬化前のタックフリー性、硬化後の初期接着性、更には湿熱環境下での長期耐久性に優れることを見出し、本発明を完成させたものである。」と記載され、課題の解決手段が記載されている。また、発明特定事項に含まれる数値について、前記2(2)イに記載のとおり課題との関係が説明がされており、発明の技術上の意義を理解することができる。
エ したがって、本件特許の発明の詳細な説明の記載は委任省令要件に違反するものとはいえない。
(3)申立人の主張について
申立人は、本件明細書に記載の実施例1、3は、甲8号証の【0097】の【表2】に比較例1、2として記載されているため、「本件特許発明は、同じ接着剤の技術分野において、本件特許発明の課題を解決できないことが記載されているものである。そのため、本件特許発明は、出願時の技術水準に照らしてどのような技術上の意義を有するかを理解できないことから、経済産業省令に定める委任省令要件を満足していない。」と主張している。
しかしながら、甲8号証の【0009】には、「低吸湿性、湿熱環境下での長期耐久性に優れ、更には高い接着性を有する接着剤組成物及びこの接着剤組成物が硬化された接着剤の提供を目的とする。」と課題が記載され、比較例1、2は、「湿熱環境下での長期耐久性に優れるものの、接着性は実施例と比べて低いものであった」(【0098】)と記載されていることから、比較例1、2は、甲8号証において「高い接着性」を有する接着剤を提供するという課題を解決できない例として記載されているものといえるが、「高い接着性」は、本件発明の課題とは異なるため、甲8号証において比較例として記載されているとしても、本件明細書に記載の実施例1、3が、本件発明の課題を解決できるものであることに変わりは無く、前記(2)の判断に影響を与えるものではない。
よって、申立人の主張は採用できない。
(4)小括
以上で検討したとおり、本件明細書の発明の詳細な説明は、本件発明が解決しようとする課題、その解決手段などの、「当業者が発明の技術上の意義を理解するために必要な事項」が記載されたものであるから、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たすものである。
第6 むすび
以上のとおりであるから、申立人による特許異議申立書の理由及び証拠によっては、本件特許の請求項1~8に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1~8に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。
J-PlatPat 審決検索を開く
2023-700706