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特許異議申立

2023-700673

固体電解コンデンサ

審判番号
2023-700673
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2020-531329
登録番号
7196919
請求日
2023年06月27日
審決日
2023年09月13日
公報発行日
2023年10月27日
結論
維持
当事者
  • 【権利者】日本ケミコン株式会社
  • 【権利者代理人】木内 光春
  • 【権利者代理人】大熊 考一
  • 【権利者代理人】片桐 貞典
  • 【権利者代理人】木内 加奈子
  • 【異議申立人】益川 教親
  • 【異議申立人】小木 智彦
審判長/審判官
  • 審判長 井上 信一
  • 審判官 小池 秀介
  • 審判官 篠原 功一
分類
P1651.113-Y (H01G) / P1651.121-Y (H01G) / P1651.536-Y (H01G) / P1651.537-Y (H01G)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項、特許法第36条第4項第1号、特許法第29条第1項、特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第6項第2号、特許法第29条第1項第3号
データ出所
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特許第7196919号発明「固体電解コンデンサ」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7196919号の請求項1ないし8に係る特許を維持する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第7196919号の請求項1ないし8に係る特許についての出願は、2019年7月17日(優先権主張2018年7月18日)を国際出願日とする出願であって、令和4年12月19日にその特許権の設定登録がされ、令和4年12月27日に特許掲載公報が発行された。その後、その特許に対し、令和5年6月27日に特許異議申立人益川教親(以下、「特許異議申立人A」という。)及び特許異議申立人小木智彦(以下、「特許異議申立人B」という。)により特許異議の申立てがされたものである。 第2 本件発明 特許第7196919号の請求項1ないし8の特許に係る発明(以下、「本件発明1」ないし「本件発明8」という。)は、特許請求の範囲の請求項1ないし8に記載された事項により特定される次のとおりのものである。 「【請求項1】 陽極箔と陰極箔とを対向させて成るコンデンサ素子と、 前記コンデンサ素子内に形成された電解質層と、 を備え、 前記電解質層は、 ドーパントと共役系高分子を含む固体電解質層と、 前記固体電解質層が形成された前記コンデンサ素子内の空隙部に充填された液体と、 を有し、 前記電解質層は、前記ドーパントのドープ反応に寄与できる官能基1molに対するカチオン成分のモル比が、0.2以上6以下であること、 を特徴とする固体電解コンデンサ。 【請求項2】 前記カチオン成分は前記液体のみに含まれること、 を特徴とする請求項1記載の固体電解コンデンサ。 【請求項3】 前記カチオン成分は前記固体電解質層及び前記液体の両方に含まれ、 前記カチオン成分のモル比は、前記固体電解質層及び前記液体に含まれる前記カチオン成分の両方の合算であること、 を特徴とする請求項1記載の固体電解コンデンサ。 【請求項4】 前記電解質層には、前記官能基1molに対する前記カチオン成分のモル比が0.2以上3.5以下であること、 を特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の固体電解コンデンサ。 【請求項5】 前記電解質層には、前記官能基1molに対する前記カチオン成分のモル比が0.2以上2.8以下であること、 を特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の固体電解コンデンサ。 【請求項6】 前記ドーパントは、ポリスチレンスルホン酸であること、 を特徴とする請求項1乃至5の何れかに記載の固体電解コンデンサ。 【請求項7】 前記液体は、エチレングリコール、γ-ブチロラクトン又は両方を含むこと、 を特徴とする請求項1乃至6の何れかに記載の固体電解コンデンサ。 【請求項8】 前記エチレングリコールは、前記液体中50wt%以上を含むこと、 を特徴とする請求項7記載の固体電解コンデンサ。 」 第3 申立理由の概要 1 特許異議申立人Aは、証拠として下記の甲第1号証及び甲第2号証を提出し、以下の申立理由1ないし5により、請求項1ないし8に係る特許を取り消すべきものである旨主張する。 (1)申立理由1(進歩性) 本件発明1ないし8は、甲第1号証及び甲第2号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 よって、本件請求項1ないし8に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである。 (2)申立理由2(新規性) 本件発明2、4ないし8は、甲第2号証に記載された発明である。 よって、本件請求項2、4ないし8に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである。 (3)申立理由3(実施可能要件) 本件特許明細書の発明の詳細な説明は、当業者が本件発明1ないし8を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものでない。 よって、本件請求項1ないし8に係る特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、取り消されるべきものである。 (4)申立理由4(サポート要件) 本件発明1ないし8は、発明の詳細な説明に記載したものではない。 よって、本件請求項1ないし8に係る特許は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、取り消されるべきものである。 (5)申立理由5(明確性) 本件発明1ないし8は、明確でない。 よって、本件請求項1ないし8に係る特許は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、取り消されるべきものである。 [証拠方法] 甲第1号証(以下、「文献1」という。):国際公開第2007/091656号 甲第2号証(以下、「文献2」という。):特許第6740579号公報 2 特許異議申立人Bは、証拠として下記の甲第1号証ないし甲第4号証を提出し、以下の申立理由6ないし8により、請求項1ないし8に係る特許を取り消すべきものである旨主張する。 (1)申立理由6(新規性) 本件発明1、3ないし8は、甲第1号証に記載された発明である。 本件発明1、4ないし6は、甲第2号証に記載された発明である。 本件発明1ないし2、4ないし7は、甲第3号証に記載された発明である。 本件発明1ないし2、4ないし8は、甲第4号証に記載された発明である。 よって、本件請求項1ないし8に係る特許は、特許法第29条第1項第3号の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである。 (2)申立理由7(進歩性) 本件発明1ないし8は、甲第1号証ないし甲第4号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 よって、本件請求項1ないし8に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである。 (3)申立理由8(実施可能要件) 本件特許明細書の発明の詳細な説明は、当業者が本件発明1ないし8を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものでない。 よって、本件請求項1ないし8に係る特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、取り消されるべきものである。 [証拠方法] 甲第1号証(以下、「文献3」という。):特開2015-2274号公報 甲第2号証(以下、「文献4」という。):特表2013-539227号公報 甲第3号証(以下、「文献5」という。):特開2017-69537号公報 甲第4号証(以下、「文献6」という。):特開2017-38010号公報 第4 文献の記載 1.文献1に記載された発明 文献1には、次の記載がある。(下線は当審で付した。) 「【0158】 (実施例7) (1)導電性高分子溶液の調製 ・・・<略>・・・ 得られた反応液を透析し、未反応モノマー、酸化剤を除去して、約1.5質量%の青色ポリスチレンスルホン酸ドープポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)溶液を得た。これを複合体溶液とした。 【0159】 複合体溶液10gに、4.00gのN-メチル-N-ビニル-アセトアミドを均一に分散させて導電性高分子溶液(1)を得た。 ・・・<略>・・・ 【0161】 (2)コンデンサの製造 エッチドアルミニウム箔(陽極箔)に陽極リード端子を接続した後、アジピン酸アンモニウム10質量%水溶液中で10Vの電圧を印加し、化成(酸化処理)して、アルミニウム箔表面に誘電体層を形成してコンデンサ中間体を得た。 次に、コンデンサ中間体の陽極箔に、陰極リード端子を溶接させた対向アルミニウム陰極箔を、セルロース製のセパレータを介して積層し、これを巻き取ってコンデンサ素子とした。 このコンデンサ素子を導電性高分子溶液(1)に浸漬した後、120℃の熱風乾燥機で乾燥して、コンデンサ中間体の誘電体層側表面に固体電解質層を形成させた。 次いで、アルミニウム製のケースに、固体電解質層が形成されたコンデンサ素子と、電解液であるアジピン酸水素アンモニウム20質量%-エチレングリコール80質量%溶液とを充填し、封口ゴムで封止して、コンデンサを作製した。」 上記記載から、文献1には、次の発明が記載されていると認められる。 「陽極箔と陰極箔とをセパレータを介して積層し巻き取ったコンデンサ素子と、ポリスチレンスルホン酸ドープポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)を含む固体電解質層と、アジピン酸水素アンモニウム20質量%-エチレングリコール80質量%溶液からなる電解液とを含む固体電解コンデンサ。」 2.文献2に記載された発明 文献2には、次の記載がある。(下線は当審で付した。) 「【0048】 <実施例1の固体電解コンデンサの作製> 表面に誘電体皮膜層が形成された陽極箔と、陰極箔と、に電極引き出し手段であるリード線を接続し、両電極箔をマニラ系セパレータを介して巻回し、素子形状が直径8mm×高さ10mmのコンデンサ素子を形成した。そして、このコンデンサ素子をリン酸二水素アンモニウム水溶液に40分間浸漬して、修復化成を行った。 【0049】 その後、PEDOTの粒子と、ポリスチレンスルホン酸と、を水溶液に分散した導電性高分子分散体を作製した。コンデンサ素子を導電性高分子分散体に浸漬し、コンデンサ素子を引き上げて150℃で30分間乾燥した。コンデンサ素子は、導電性高分子分散体への浸漬および乾燥が複数回繰り返され、コンデンサ素子に導電性高分子からなる固体電解質層を形成した。 【0050】 次に、エチレングリコールに対して、アゼライン酸アンモニウム塩を添加して電解液を作製した。アゼライン酸アンモニウム塩の添加量の内訳は、溶媒に対しアゼライン酸を0.09mol/kg、アンモニウムイオンを0.09mol/kgであった。また、添加剤として、電解液中にリン酸エステルおよびp-ニトロ安息香酸を合計2wt%添加した。コンデンサ素子を作製した電解液に浸漬した後、有底筒状の外装ケースに挿入し、開口端部に封口ゴムを装着して、加締め加工によって封止した。その後、電圧印加によってエージングを行い、固体電解コンデンサを形成した。・・・」 上記記載から、文献2には、次の発明が記載されていると認められる。 「陽極箔と陰極箔とをセパレータを介して巻回したコンデンサ素子と、PEDOTの粒子とポリスチレンスルホン酸を含む固体電解質層と、エチレングリコールに対してアゼライン酸アンモニウム塩、リン酸エステル、p-ニトロ安息香酸を添加した電解液を含む固体電解コンデンサ。」 3.文献3に記載された発明 文献3には、次の記載がある。(下線は当審で付した。) 「【0117】 調製例4 撹拌装置付き1Lビーカー内に入れたエチレングリコール500gに20gのニトロベンゼンカルボン酸オクチルエステルと15gのヒドロキシナフタレンカルボン酸と5gのポリエチレングリコールジグリシジルエーテルを添加した後、24時間撹拌することによって導電性補助液を調製した。」 「【0155】 導電性高分子の分散液の調製例(I) テイカ社製ポリスチレンスルホン酸(重量平均分子量100、000)の3%水溶液600gを内容積1Lのステンレス鋼製容器に入れ、硫酸第一鉄・7水和物0.3gを添加し、その中に3,4-エチレンジオキシチオフェン4mLをゆっくり滴下した。 【0156】 それらをステンレス鋼製の攪拌翼で攪拌し、容器に陽極を取り付け、攪拌翼の付け根に陰極を取り付け、1mA/cm2の定電流で18時間電解酸化重合を行った。上記電解酸化重合後、水で6倍に希釈した後、超音波ホモジナイザー〔日本精機社製、US-T300(商品名)〕で2時間分散処理を行った。その後、オルガノ社製のカチオン交換樹脂アンバーライト120B(商品名)を100g添加し、1時間攪拌機で攪拌した。次いで、東洋濾紙社製の濾紙No.131で濾過し、このカチオン交換樹脂による処理と濾過を3回繰り返して、液中の鉄イオンなどのカチオン成分をすべて除去した。 【0157】 上記処理後の液を孔径が1μmのフィルターに通し、その通過液を限外濾過装置〔ザルトリウス社製Vivaflow200(商品名)、分子量分画5万〕で処理して、液中の遊離の低分子成分を除去した。この処理後の液を水で希釈して濃度を2%に調整した後、28%アンモニア水溶液でpHを3に調整した。そして、その溶液40gに対し、エチレングリコール4gを添加し、導電性高分子の分散液(I)を得た。」 「【0163】 実施例1 アルミニウム箔の表面をエッチング処理した後、化成処理を行ってアルミニウムの酸化被膜からなる誘電体層を形成した陽極にリード端子を取り付け、また、アルミニウム箔からなる陰極にリード端子を取り付け、それらのリード端子付き陽極と陰極とをセパレータを介して巻回して、コンデンサ素子を作製した。・・・ 【0164】 上記コンデンサ素子を前記調製例(I)で調製した導電性高分子の分散液(I)に浸漬し、5分後に取り出し、150℃で30分間乾燥した。この操作を2回行って、コンデンサ素子の誘電体層上に導電性高分子を設けた。 【0165】 次に、上記のように導電性高分子を設けたコンデンサ素子を前記調製例1で調製した導電性補助液に浸漬し、コンデンサ素子に導電性補助液を含浸させ、5分後に取り出し、これを外装材で外装して、巻回型アルミニウム電解コンデンサを製造した。 【0166】 実施例2~14および比較例1~3 調製例1で調製した導電性補助液に代えて、調製例2~14で調製した導電性補助液および調製例15~17で調製した電解液をそれぞれ別々に用いた以外は、すべて実施例1と同様の操作を行って、巻回型アルミニウム電解コンデンサを製造した。」 上記記載によれば、「導電性高分子の分散液(I)」における導電性高分子は、ポリスチレンスルホン酸水溶液に硫酸第一鉄・7水和物を添加し、その中に3,4-エチレンジオキシチオフェンをゆっくり滴下し、電解酸化重合することで作製されており、さらに、コンデンサ素子を当該「導電性高分子の分散液(I)」に浸漬し、コンデンサ素子の誘電体層上に当該導電性高分子を設けているので、誘電体層上に、ポリスチレンスルホン酸水溶液中で3,4-エチレンジオキシチオフェンを電解酸化重合した導電性高分子を含む固体電解質層が形成されていると認められる。 したがって、文献3には、次の発明が記載されていると認められる。 「陽極と陰極とをセパレータを介して巻回したコンデンサ素子と、ポリスチレンスルホン酸水溶液中で3,4-エチレンジオキシチオフェンを電解酸化重合した導電性高分子と、エチレングリコールにニトロベンゼンカルボン酸オクチルエステルとヒドロキシナフタレンカルボン酸とポリエチレングリコールジグリシジルエーテルを添加した導電性補助液とを含む固体電解コンデンサ。」 4.文献4に記載された発明 文献4には、次の記載がある。(下線は当審で付した。) 「【0101】 【図1】本発明に係るコンデンサの一部分の概略断面図を示す。本発明に係るコンデンサは、アルミニウムなどの多孔性電極材料2から大部分が構成される電極体1を有する。電極材料2の表面4に、誘電体3が薄層として形成され、そうして、依然として多孔性であり、かつ電極材料2および誘電体3から構成される電極体1を含むアノード体5が形成される。誘電体3の上に、任意にさらなる層のあとに、固体電解質6(例えば、PEDOT/PSS粒子から構成される)の層が続き、そうして、電極材料2、誘電体3および固体電解質6から構成される電極体1を含むコンデンサ体7が形成される。固体電解質6の上に、含浸剤8(例えば、ポリエチレングリコール)の層が続き、そうして、電極材料2、誘電体3、固体電解質6および含浸剤8から構成される電極体1を含むコンデンサが形成される。含浸剤8は、例えば、含浸剤8が完全にまたは部分的に細孔9を充填するようにして、コンデンサ体7へと導入される。」 「【0121】 実施例4:導電性ポリマーの均質化した分散液の製造 実施例1から得たポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)/ポリスチレンスルホン酸分散液を、高圧ホモジナイザーの中で、1500barの圧力下で5回均質化した。このあと、この分散液を、ロータリー・エバポレーターの中で2.5%の固形分含量へと濃縮し、次いで、高圧ホモジナイザーの中で、1500barの圧力でさらに5回さらに均質化した。 【0122】 100gのこの分散液および10gのエチレングリコールを、ガラスのビーカーの中で撹拌機を用いて激しく撹拌し、次いで、アンモニア水を用いて3のpH値に調整した。」 「【0134】 実施例6: 6.1. 酸化された電極体の製造: 131mm×3mmの寸法を持つ150Vで形成した多孔性アルミニウム膜(アノード膜)および145mm×3mmの寸法を持つ多孔性アルミニウム膜(カソード膜)に、それぞれ接続ワイヤを設け、次いで各々、2つのセルロースセパレーター紙を用いて巻きとり、接着テープを用いて固定した。20個のこれらの酸化された電極体を製造した。この酸化された電極体のセパレーター紙を300℃のオーブンの中で炭化させた。 【0135】 6.2 固体電解質の製造: 6.1から得た酸化された電極体を、実施例4から得た分散液に15分間浸漬した。このあと、この電極体を150℃で30分間乾燥した。浸漬および乾燥をさらに2回繰り返した。次いでこのコンデンサを、50重量%の、4~8℃の融点を持つポリエチレングリコール400(PEG 400)を含む水性含浸溶液に15分間浸漬した。この後、このコンデンサを120℃で30分間乾燥した。」 上記実施例6(段落【0134】参照)に記載されているとおり、コンデンサの「電極材料」は「アノード膜」及び「カソード膜」から構成されていると認められる。 したがって、文献4には、次の発明が記載されていると認められる。 「アノード膜とカソード膜からなる電極材料、誘電体、PEDOT/PSS粒子からなる固体電解質、ポリエチレングリコールからなる含浸剤から構成される電極体を含むコンデンサ」 5.文献5に記載された発明 文献5には、次の記載がある。(下線は当審で付した。) 「【0077】 (実施例1) <電解液の製造> 77.1gのサリチル酸(酸成分)と、22.9gの1-メチルイミダゾール(塩基成分)をγ-ブチルラクトン1000mlに加え、80℃で溶解し減圧濃縮し水を留去して、電解液を得た。 【0078】 <導電性高分子分散液の製造> 14.2gの3,4-エチレンジオキシチオフェンと、42.6gのポリスチレンスルホン酸(質量平均分子量:75,000)を2000mlのイオン交換水に溶かした溶液とを20℃で混合して混合溶液を得た。 得られた混合溶液を20℃に保ち、撹拌しながら、200mlのイオン交換水に溶かした29.6gの過硫酸アンモニウムと8.0gの硫酸第二鉄の酸化触媒溶液とを添加し、3時間撹拌して反応させた。 【0079】 反応後、強酸性陽イオン交換樹脂(三菱樹脂社製、PK-216)を添加し、アンモニウム塩を除去した後、イオン交換樹脂を取り除いた。次に、強塩基性陰イオン交換樹脂(三菱樹脂社製、PA-418)を添加して硫酸塩を除去した後、イオン交換樹脂を取り除いて、1.5%ポリエチレンジオキシチオフェン/ポリスチレンスルホン酸水分散液を得た。 【0080】 1.5%ポリエチレンジオキシチオフェン/ポリスチレンスルホン酸水分散液100mlに、エチレングリコール20mlを含有させて、導電性高分子分散液を得た。 【0081】 <コンデンサ素子の製造> 陽極に用いる弁作用金属として、表面をエッチングし、粗面化処理を施したエッチドアルミニウム箔(縦2mm×横300mm)を用い、該アルミニウム箔に、アジピン酸アンモニウム水溶液中、電圧90Vで化成処理を行って誘電体層を形成した陽極にリード端子を取り付け、また、アルミニウム箔からなる陰極にリード端子を取り付け、それらのリード端子付き陽極と陰極とをセパレータを介して対向させることにより、コンデンサ素子を作製した。 【0082】 次に、上記で得られた導電性高分子分散液に、上記コンデンサ素子を5分浸漬し、150℃5分乾燥させる工程を3回繰り返して、ポリエチレンジオキシチオフェン/ポリスチレンスルホン酸を付着させたコンデンサ素子を作製した。 【0083】 <電解コンデンサの製造> 該コンデンサ素子を上記電解液に含浸させた。この電解液を含浸したコンデンサ素子を、筒状のアルミニウムよりなる外装ケースに収納し、外装ケースの開口端部にリード線を導出する貫通孔を有するブチルゴムの封口体を挿入し、さらに外装ケースの端部を加締めることにより電解コンデンサの封口を行い、定格電圧35V、静電容量150μFの電解コンデンサを作製した。」 上記記載から、文献5には、次の発明が記載されていると認められる。 「陽極と陰極とをセパレータを介して対向させたコンデンサ素子に、ポリエチレンジオキシチオフェン/ポリスチレンスルホン酸を付着させ、サリチル酸と1-メチルイミダゾールをγ-ブチルラクトンに加えた電解液に含浸させた固体電解コンデンサ。」 6.文献6に記載された発明 文献6には、次の記載がある。(下線は当審で付した。) 「【0048】 <実施例1の固体電解コンデンサの作製> 表面に誘電体皮膜層が形成された陽極箔と、陰極箔と、に電極引き出し手段であるリード線を接続し、両電極箔をマニラ系セパレータを介して巻回し、素子形状が直径8mm×高さ10mmのコンデンサ素子を形成した。そして、このコンデンサ素子をリン酸二水素アンモニウム水溶液に40分間浸漬して、修復化成を行った。 【0049】 その後、PEDOTの粒子と、ポリスチレンスルホン酸と、を水溶液に分散した導電性高分子分散体を作製した。コンデンサ素子を導電性高分子分散体に浸漬し、コンデンサ素子を引き上げて150℃で30分間乾燥した。コンデンサ素子は、導電性高分子分散体への浸漬および乾燥が複数回繰り返され、コンデンサ素子に導電性高分子からなる固体電解質層を形成した。 【0050】 次に、エチレングリコールに対して、アゼライン酸アンモニウム塩を添加して電解液を作製した。アゼライン酸アンモニウム塩の添加量の内訳は、溶媒に対しアゼライン酸を0.09mol/kg、アンモニウムイオンを0.09mol/kgであった。また、添加剤として、電解液中にリン酸エステルおよびp-ニトロ安息香酸を合計2wt%添加した。コンデンサ素子を作製した電解液に浸漬した後、有底筒状の外装ケースに挿入し、開口端部に封口ゴムを装着して、加締め加工によって封止した。その後、電圧印加によってエージングを行い、固体電解コンデンサを形成した。・・・」 上記記載から、文献6には、次の発明が記載されていると認められる。 「陽極箔と陰極箔とをセパレータを介して巻回したコンデンサ素子と、PEDOTの粒子とポリスチレンスルホン酸を含む固体電解質層と、エチレングリコールに対してアゼライン酸アンモニウム塩、リン酸エステル、p-ニトロ安息香酸を添加した電解液を含む固体電解コンデンサ。」 第5 当審の判断 1 申立理由1(進歩性)について (1)本件発明1について 本件発明1と文献1に記載された発明とを対比すると、 文献1に記載された発明の「陽極箔」及び「陰極箔」は、それぞれ、本件発明1の「陽極箔」及び「陰極箔」に相当し、 文献1に記載された発明の「コンデンサ素子」は、本件発明1の「コンデンサ素子」に相当し、 文献1に記載された発明の「ポリスチレンスルホン酸」は、本件発明1の「ドーパント」に相当し、 文献1に記載された発明の「ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)」は、本件発明1の「共役系高分子」に相当し、 文献1に記載された発明の「固体電解質層」は、本件発明1の「固体電解質層」に相当し、 文献1に記載された発明の「電解液」は、コンデンサ素子内部にも浸透していることから、本件発明1の「コンデンサ素子内の空隙部に充填された液体」に相当し、 文献1に記載された発明の「固体電解質層」及び「電解液」は、いずれもコンデンサ素子の内部にあるから、本件発明1の「コンデンサ素子内に形成された電解質層」に相当する。 また、文献1には「ドーパントのドープ反応に寄与できる官能基1molに対するカチオン成分のモル比」が明記されておらず、文献1の実施例に記載された作製条件から当該モル比を合理的に推認することもできない。 特に、文献1には、ドーパントである「ポリスチレンスルホン酸」のスルホン化度が記載されておらず、ドーパントのドープ反応に寄与できる官能基(スルホン酸基)の総量を算出することができない。 また、文献1には、固体電解質層が形成されたコンデンサ素子に充填された電解液の総量が記載されておらず、カチオン成分の総量を算出することができない。 したがって、文献1の実施例に記載された作製条件から「ドーパントのドープ反応に寄与できる官能基1molに対するカチオン成分のモル比」を合理的に推認することができない。 したがって、本件発明1と文献1に記載された発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。 【一致点】 陽極箔と陰極箔とを対向させて成るコンデンサ素子と、 前記コンデンサ素子内に形成された電解質層と、 を備え、 前記電解質層は、 ドーパントと共役系高分子を含む固体電解質層と、 前記固体電解質層が形成された前記コンデンサ素子内の空隙部に充填された液体と、 を有する固体電解コンデンサ。 【相違点1】 本件発明1では「ドーパントのドープ反応に寄与できる官能基1molに対するカチオン成分のモル比が、0.2以上6以下」であると特定するのに対し、文献1に記載された発明ではそのような特定を有していない点 上記相違点について検討する。 上述したように、文献1には「ドーパントのドープ反応に寄与できる官能基1molに対するカチオン成分のモル比」が明記されておらず、文献1の実施例に記載された作製条件から当該モル比を合理的に推認することもできない。 また、文献1に記載された発明の「電解液」として、文献2に記載された発明の「電解液」を採用したとしても、上記のとおり、ドーパントのドープ反応に寄与できる官能基(スルホン酸基)の総量及び固体電解質層が形成されたコンデンサ素子に充填された電解液の総量が特定できない以上、文献2に記載された発明の「電解液」の組成に依らず、「ドーパントのドープ反応に寄与できる官能基1molに対するカチオン成分のモル比」を合理的に推認することはできない。 よって、本件発明1は、文献1及び文献2に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 なお、特許異議申立人Aは、ドーパントのドープ反応に寄与できる官能基(スルホン酸基)の総量を算出するための前提条件として、「スチレン単位1個に1つのスルホン基が導入されている(PSSのスルホン化度が100%)と仮定」しているが(特許異議申立書の第33頁参照)、文献1の実施例で使用されている「ポリスチレンスルホン酸」のスルホン化度が100%であることの根拠が示されていないから、かかる主張には理由がない。 また、特許異議申立人Aは、固体電解質層が形成されたコンデンサ素子に充填された電解液の総量に関して、「下記表Aは、固体電解質層と電解液(液体)が同量で電解コンデンサに含まれていると仮定したときの計算結果であり、下記表Bは、固体電解質層の1/2倍の量の電解系(液体)が電解コンデンサに含まれていると仮定したときの計算結果であり、表Cは、固体電解質層の2倍の量の電解液(液体)が電解コンデンサに含まれていると仮定したときの計算結果である(以上の仮定は、当業者の経験上、妥当な仮定であると考える)。」としているが(特許異議申立書の第39頁参照)、文献1には、固体電解質層が形成されたコンデンサ素子に充填された電解液の総量が、固体電解質層の1/2~2倍の範囲にあることの根拠が示されていないから、かかる主張にも理由がない。 (2)本件発明2ないし8について 請求項2ないし8は請求項1を引用するものであり、本件発明2ないし8は、本件発明1の発明特定事項をすべて含み、さらに他の発明特定事項を追加して限定したものであるから、上記(1)に示した本件発明1についての判断と同様の理由により、本件発明2ないし8は、上記文献1及び文献2に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものではない。 (3)まとめ 以上のとおり、本件発明1ないし8は、文献1及び文献2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 2 申立理由2(新規性)について (1)本件発明2について 本件発明2と文献2に記載された発明とを対比すると、 文献2に記載された発明の「陽極箔」及び「陰極箔」は、それぞれ、本件発明2の「陽極箔」及び「陰極箔」に相当し、 文献2に記載された発明の「コンデンサ素子」は、本件発明2の「コンデンサ素子」に相当し、 文献2に記載された発明の「ポリスチレンスルホン酸」は、本件発明2の「ドーパント」に相当し、 文献2に記載された発明の「PEDOTの粒子」は、本件発明2の「共役系高分子」に相当し、 文献2に記載された発明の「固体電解質層」は、本件発明2の「固体電解質層」に相当し、 文献2に記載された発明の「電解液」は、「コンデンサ素子を作製した電解液に浸漬し」ていることから(段落【0050】参照)、本件発明2の「コンデンサ素子内の空隙部に充填された液体」に相当し、 文献2に記載された発明の「固体電解質層」及び「電解液」は、いずれもコンデンサ素子の内部にあるから、本件発明2の「コンデンサ素子内に形成された電解質層」に相当する。 また、文献2に記載された発明の「導電性高分子分散体」は、PEDOTの粒子とポリスチレンスルホン酸とを水溶液に分散したものであり、その他の成分を含んでいないことから、カチオン成分を含有していない。そうすると、文献2に記載された発明の固体電解コンデンサに含まれるカチオン成分は電解液中のアンモニウムイオンのみであり、カチオン成分は電解液(液体)のみに含まれていると認められる。 また、文献2には「ドーパントのドープ反応に寄与できる官能基1molに対するカチオン成分のモル比」が明記されておらず、文献2の実施例に記載された作製条件から当該モル比を合理的に推認することもできない。 特に、文献2には、ドーパントである「ポリスチレンスルホン酸」のスルホン化度が記載されておらず、ドーパントのドープ反応に寄与できる官能基(スルホン酸基)の総量を算出することができない。 また、文献2には、固体電解質層が形成されたコンデンサ素子に充填された電解液の総量が記載されておらず、カチオン成分の総量を算出することができない。 したがって、文献2の実施例に記載された作製条件から「ドーパントのドープ反応に寄与できる官能基1molに対するカチオン成分のモル比」を合理的に推認することができない。 したがって、本件発明2と文献2に記載された発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。 【一致点】 陽極箔と陰極箔とを対向させて成るコンデンサ素子と、 前記コンデンサ素子内に形成された電解質層と、 を備え、 前記電解質層は、 ドーパントと共役系高分子を含む固体電解質層と、 前記固体電解質層が形成された前記コンデンサ素子内の空隙部に充填された液体と、 を有し、 前記電解質層のカチオン成分は前記液体のみに含まれる固体電解コンデンサ 【相違点2】 本件発明2では「ドーパントのドープ反応に寄与できる官能基1molに対するカチオン成分のモル比が、0.2以上6以下」であることを特定するのに対し、文献2に記載された発明ではそのような特定を有していない点 よって、上述のとおり、相違点があるから、本件発明2は、文献2に記載された発明ではない。 なお、申立理由2についての特許異議申立人Aの主張とそれに対する当審の判断は、前記申立理由1についての(1)に記載したとおりである。 (2)本件発明4ないし8について 請求項4ないし8は請求項2を引用するものであり、本件発明4ないし8は、本件発明2の発明特定事項をすべて含み、さらに他の発明特定事項を追加して限定したものであるから、上記(1)に示した本件発明2についての判断と同様の理由により、本件発明4ないし8は、上記文献2に記載された発明ではない。 (3)まとめ 以上のとおり、本件発明2、4ないし8は、文献2に記載された発明ではない。 3 申立理由3(実施可能要件)について 特許異議申立人Aは、「本件特許明細書には、対象となる『ドーパントと共役系高分子を含む固体電解質層』に含まれるドーパントのドープ反応に寄与できる官能基を如何にして定量するのかが理解できるように記載されておらず、当業者が請求項に係る発明を実施することができる程度に、発明の詳細な説明に必要な事項が明確かつ十分に記載されているとはいえず、本件発明は実施可能要件を満たさない。」と主張している。 しかし、ドーパントである「ポリスチレンスルホン酸」のスルホン化度は、例えば、特開2000-180355号公報の【従来の技術】に記載されている元素分析法やNMR、同公報が開示する「標準試料の吸光度と対象試料の吸光度とを比較して対象試料のスルホン化度を定量する方法」等が知られており、これら既知の方法により「電解質層におけるドーパントのドープ反応に寄与できる官能基」の量を定量することができる。 そして、固体電解コンデンサの固体電解質層の重量は、固体電解質層形成前後の重量差から算出でき、固体電解質層に占めるドーパントの重量は、ドーパントと共役系高分子との配合割合から算出できることは、当業者の技術常識である。 したがって、本件特許明細書に当該定量方法が記載されていなかったとしても、既知の各種手段から定量可能であるため、特許異議申立人Aの実施可能要件についての上記主張は採用できず、本件発明1ないし8について、本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載が実施可能要件を満たさないとまではいえない。 4 申立理由4(サポート要件)について 特許異議申立人Aは、「固体電解コンデンサのESRには、ドープ官能基1molに対するカチオン成分のモル比だけでなく、固体電解質層に含まれるドーパントのスルホン化度、ドーパントと共役系高分子の質量割合、固体電解質層に含まれるカチオン成分の濃度、コンデンサ素子内の空隙部に充填された液体に含まれるカチオン成分の濃度、固体電解コンデンサに収容される液体の量などが関係すると考えることが常識的である」とした上で、「固体電解質層に含まれるドーパントのスルホン化度、ドーパントと共役系高分子の質量割合、固体電解質層に含まれるカチオン成分の濃度、コンデンサ素子内の空隙部に充填された液体に含まれるカチオン成分の濃度、固体電解コンデンサに収容される液体の量などに関係なく、『(C)前記電解質層は、前記ドーパントのドープ反応に寄与できる官能基1molに対するカチオン成分のモル比が、0.2以上6以下であること』により、常に、『電解質として固体電解質と液体とを有する固体電解コンデンサにおいて、熱ストレス負荷後にもESRが急上昇し難い固体電解コンデンサを提供すること』が可能であることを当業者が認識できるように記載されているとはいえない。」と主張している。 たしかに、固体電解コンデンサのESRは、上記各種要因に影響されるものである。 しかし、「ドーパントのドープ反応に寄与できる官能基1molに対するカチオン成分のモル比」が熱ストレス負荷後のESRの上昇に強く影響していることは、本件特許明細書の図1から明らかであり、本件発明1ないし8の課題解決手段は、本件特許明細書において当業者が認識できるように記載されている。 また、本件発明1ないし8は、ESRの絶対値ではなく熱ストレス負荷後のESRの変化に着目し、ESRの上昇を抑制できる条件を見い出した発明であるから、ESRの絶対値に影響する上記要因の全てを特許請求の範囲に特定していないからといって、ESRの上昇を抑制するための課題解決手段が特定されていないとまではいえない。 よって、特許異議申立人Aのサポート要件についての上記主張は採用できず、本件発明1ないし8が発明の詳細な説明に記載したものではないとはいえない。 5 申立理由5(明確性)について 特許異議申立人Aは、「液体におけるカチオン成分の濃度が同じでも、コンデンサ素子に接触し得る液体の量によってドーパントのドープ反応に寄与できる官能基1molに対するカチオン成分のモル比は大きく変動する。例えば、液体のみにカチオン成分が含まれる場合、液体におけるカチオン濃度が同じでも固体電解コンデンサに収容される液体の量が2倍になれば、『ドーパントのドープ反応に寄与できる官能基1molに対するカチオン成分のモル比』は2倍になる。しかし、コンデンサ素子内の空隙部に充填された液体のカチオン濃度は同じであるから、実際にドーパントのドープ反応に寄与できる官能基1molに対するカチオン成分のモル量は変わらないと考えることが妥当である」とした上で、「本件発明1における『(C)前記電解質層は、前記ドーパントのドープ反応に寄与できる官能基1molに対するカチオン成分のモル比が、0.2以上6以下であること』の技術的意味が出願時の技術常識を考慮しても全く理解できない。」と主張している。 しかし、本件特許明細書の段落【0071】に、「実施例8-2は、電解液100gに対するアニオン成分量およびカチオン成分量はともに17mmolであり、実施例8と同一であるが、電解液量を実施例8の2倍としており、電解質層中全体のドープ能官能基1molに対するカチオン成分のmol比は、実施例12と同じ5.6となっている。この実施例8-2の熱ストレス負荷後のESRは、表1に示すように、実施例12と同等である。この結果より、電解液量又はカチオン成分の濃度が変化しても電解質層中のカチオン成分の総量が同一であれば、熱ストレス負荷前後のESRが同等になることが確認できる。」と記載されており、熱ストレス負荷前後のESRは、カチオン成分の「濃度」ではなく「総量」に依存していることが検証結果と共に示されている。 したがって、本件発明における「前記電解質層は、前記ドーパントのドープ反応に寄与できる官能基1molに対するカチオン成分のモル比が、0.2以上6以下であること」の技術的意義は、本件特許明細書の記載を参酌すれば理解できると認められる。 よって、特許異議申立人Aの明確性についての上記主張は採用できず、本件発明1ないし8が明確でないとはいえない。 6 申立理由6(新規性)について (1)文献3を証拠とする場合 ア 本件発明1について 本件発明1と文献3に記載された発明とを対比すると、 文献3に記載された発明の「アルミニウム箔」からなる「陽極」及び「陰極」は、それぞれ、本件発明1の「陽極箔」及び「陰極箔」に相当し、 文献3に記載された発明の「コンデンサ素子」は、本件発明1の「コンデンサ素子」に相当し、 文献3に記載された発明の「ポリスチレンスルホン酸」は、本件発明1の「ドーパント」に相当し、 文献3に記載された発明の「3,4-エチレンジオキシチオフェン」を電解酸化重合した重合体は、本件発明1の「共役系高分子」に相当し、 文献3に記載された発明の「導電性高分子」は、本件発明1の「固体電解質層」に相当し、 文献3に記載された発明の「導電性補助液」は、「コンデンサ素子に導電性補助液を含浸させ」ていることから(段落【0165】参照)、本件発明1の「コンデンサ素子内の空隙部に充填された液体」に相当し、 文献3に記載された発明の「導電性高分子」及び「導電性補助液」は、いずれもコンデンサ素子の内部にあるから、本件発明1の「コンデンサ素子内に形成された電解質層」に相当する。 また、文献3には、ドーパントである「ポリスチレンスルホン酸」のスルホン化度が記載されておらず、ドーパントのドープ反応に寄与できる官能基(スルホン酸基)の総量を算出することができない。 また、文献3には、導電性高分子分散液(I)浸漬後の乾燥時におけるアンモニウムイオンの揮発量が記載されておらず、カチオン成分の総量を算出することができない。 したがって、文献3の実施例に記載された作製条件から「ドーパントのドープ反応に寄与できる官能基1molに対するカチオン成分のモル比」を合理的に推認することができない。 したがって、本件発明1と文献3に記載された発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。 【一致点】 陽極箔と陰極箔とを対向させて成るコンデンサ素子と、 前記コンデンサ素子内に形成された電解質層と、 を備え、 前記電解質層は、 ドーパントと共役系高分子を含む固体電解質層と、 前記固体電解質層が形成された前記コンデンサ素子内の空隙部に充填された液体と、 を有する固体電解コンデンサ 【相違点3】 本件発明1では「ドーパントのドープ反応に寄与できる官能基1molに対するカチオン成分のモル比が、0.2以上6以下」であると特定するのに対し、文献3に記載された発明ではそのような特定を有していない点 よって、上記のとおり、相違点があるから、本件発明1は、文献3に記載された発明ではない。 ここで、特許異議申立人Bは、「ポリスチレンスルホン酸(PSS)およびアンモニア水溶液の酸解離係数の値(甲5号証には、ポリスチレンスルホン酸(PSS)の酸解離係数pKaが1.7であることが記載されており、甲6号証には、アンモニア水溶液(28%)の酸解離係数pKaが9.3であることが記載されている)を用いて、pHが3の場合の[PSS-]:[PSS]、[NH3]:[NH4+]をそれぞれ計算」している。 しかし、文献3の実施例は、「導電性高分子の分散液(I)に浸漬し、5分後に取り出し、150℃で30分間乾燥し」ており(段落【0164】参照)、150℃で乾燥している間に導電性高分子分散液(I)のアンモニウムイオンの一部はアンモニアガスとして揮発するため、乾燥後のアンモニウムイオンの総量は、乾燥前のアンモニウムイオンの総量とは異なると認められる。 また、仮にアンモニウムイオンが揮発していなかったと仮定しても、文献3の実施例に、「28%アンモニア水溶液でpHを3に調整した。そして、その溶液40gに対し、エチレングリコール4gを添加し、導電性高分子の分散液(I)を得た。」と記載されているとおり(段落【0157】参照)、導電性高分子分散液(I)は溶媒として水だけでなくエチレングリコールも含有するため、水溶液中での酸解離係数を用いて計算可能なのか疑義がある。 したがって、特許異議申立人Bが計算した「ドーパントのドープ反応に寄与できる官能基1molに対するカチオン成分のモル比」は乾燥後のモル比とは異なると認められる。 よって、本件発明1は、文献3に記載された発明であるとはいえない。 イ 本件発明3ないし8について 請求項3ないし8は請求項1を引用するものであり、本件発明3ないし8は、本件発明1の発明特定事項をすべて含み、さらに他の発明特定事項を追加して限定したものであるから、上記アに示した本件発明1についての判断と同様の理由により、本件発明3ないし8は、上記文献3に記載された発明ではない。 ウ まとめ 以上のとおり、本件発明1、3ないし8は、文献3に記載された発明ではない。 (2)文献4を証拠とする場合 ア 本件発明1について 本件発明1と文献4に記載された発明とを対比すると、 文献4に記載された発明の「アノード膜」及び「カソード膜」は、それぞれ、本件発明1の「陽極箔」及び「陰極箔」に相当し、 文献4に記載された発明の「コンデンサ体」は、本件発明1の「コンデンサ素子」に相当し、 文献4に記載された発明の「PSS」は、本件発明1の「ドーパント」に相当し、 文献4に記載された発明の「PEDOT」は、本件発明1の「共役系高分子」に相当し、 文献4に記載された発明の「固体電解質」は、本件発明1の「固体電解質層」に相当し、 文献4に記載された発明の「含浸剤」は、「完全にまたは部分的に細孔9を充填するようにして、コンデンサ体7へと導入される」ことから(段落【0101】参照)、本件発明1の「コンデンサ素子内の空隙部に充填された液体」に相当し、 文献4に記載された発明の「固体電解質」は、コンデンサ体の内部にあるから、本件発明1の「コンデンサ素子内に形成された電解質層」に相当する。 したがって、本件発明1と文献4に記載された発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。 【一致点】 陽極箔と陰極箔とを対向させて成るコンデンサ素子と、 前記コンデンサ素子内に形成された電解質層と、 を備え、 ドーパントと共役系高分子を含む固体電解質層と、 前記固体電解質層が形成された前記コンデンサ素子内の空隙部に充填された液体と、 を有する固体電解コンデンサ 【相違点4】 本件発明1の「固体電解質層が形成された前記コンデンサ素子内の空隙部に充填された液体」は「電解質層」の一部であるのに対し、文献4に記載された発明の「ポリエチレングリコール」からなる「含浸剤」は導電性材料ではなく電解質層の一部ではない点 【相違点5】 本件発明1では「ドーパントのドープ反応に寄与できる官能基1molに対するカチオン成分のモル比が、0.2以上6以下」であると特定するのに対し、文献4に記載された発明ではそのような特定を有していない点 よって、上記のとおり、相違点があるから、本件発明1は、文献4に記載された発明ではない。 イ 本件発明4ないし6について 請求項4ないし6は請求項1を引用するものであり、本件発明4ないし6は、本件発明1の発明特定事項をすべて含み、さらに他の発明特定事項を追加して限定したものであるから、上記アに示した本件発明1についての判断と同様の理由により、本件発明4ないし6は、上記文献4に記載された発明ではない。 ウ まとめ 以上のとおり、本件発明1、4ないし6は、文献4に記載された発明ではない。 (3)文献5を証拠とする場合 ア 本件発明1について 本件発明1と文献5に記載された発明とを対比すると、 文献5に記載された発明の「アルミニウム箔」からなる「陽極」及び「陰極」は、それぞれ、本件発明1の「陽極箔」及び「陰極箔」に相当し、 文献5に記載された発明の「コンデンサ素子」は、本件発明1の「コンデンサ素子」に相当し、 文献5に記載された発明の「ポリスチレンスルホン酸」は、本件発明1の「ドーパント」に相当し、 文献5に記載された発明の「ポリエチレンジオキシチオフェン」は、本件発明1の「共役系高分子」に相当し、 文献5に記載された発明の「ポリエチレンジオキシチオフェン/ポリスチレンスルホン酸」は、本件発明1の「固体電解質層」に相当し、 文献5に記載された発明の「電解液」は、「コンデンサ素子を上記電解液に含浸させ」ていることから、本件発明1の「コンデンサ素子内の空隙部に充填された液体」に相当し、 文献5に記載された発明の「ポリエチレンジオキシチオフェン/ポリスチレンスルホン酸」及び「電解液」は、いずれもコンデンサ素子の内部にあるから、本件発明1の「コンデンサ素子内に形成された電解質層」に相当する。 また、文献5には「ドーパントのドープ反応に寄与できる官能基1molに対するカチオン成分のモル比」が明記されておらず、文献5の実施例に記載された作製条件から当該モル比を合理的に推認することもできない。 特に、文献5には、ドーパントである「ポリスチレンスルホン酸」のスルホン化度が記載されておらず、ドーパントのドープ反応に寄与できる官能基(スルホン酸基)の総量を算出することができない。 また、文献5には、固体電解質層が形成されたコンデンサ素子に充填された電解液の総量が記載されておらず、カチオン成分の総量を算出することができない。 したがって、文献5の実施例に記載された作製条件から「ドーパントのドープ反応に寄与できる官能基1molに対するカチオン成分のモル比」を合理的に推認することができない。 したがって、本件発明1と文献5に記載された発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。 【一致点】 陽極箔と陰極箔とを対向させて成るコンデンサ素子と、 前記コンデンサ素子内に形成された電解質層と、 を備え、 前記電解質層は、ドーパントと共役系高分子を含む固体電解質層と、 前記固体電解質層が形成された前記コンデンサ素子内の空隙部に充填された液体と、 を有する固体電解コンデンサ 【相違点6】 本件発明1では「ドーパントのドープ反応に寄与できる官能基1molに対するカチオン成分のモル比が、0.2以上6以下」であると特定するのに対し、文献5に記載された発明ではそのような特定を有していない点 よって、上記のとおり、相違点があるから、本件発明1は、文献5に記載された発明ではない。 なお、特許異議申立人Bは、「コンデンサ素子が保持できる導電性高分子分散液の量と電解液の量が同一と仮定」して計算している。 しかし、文献5には、固体電解質層が形成されていないコンデンサ素子に充填された導電性高分子分散液の量と、固体電解質層が形成されたコンデンサ素子に充填された電解液の量とが同一となる根拠が示されていないから、かかる主張には理由がない。 イ 本件発明2、4ないし7について 請求項2、4ないし7は請求項1を引用するものであり、本件発明2、4ないし7は、本件発明1の発明特定事項をすべて含み、さらに他の発明特定事項を追加して限定したものであるから、上記アに示した本件発明1についての判断と同様の理由により、本件発明2、4ないし7は、上記文献5に記載された発明ではない。 ウ まとめ 以上のとおり、本件発明1ないし2、4ないし7は、文献5に記載された発明ではない。 (3)文献6を証拠とする場合 ア 本件発明1と文献6に記載された発明とを対比すると、 文献6に記載された発明の「陽極箔」及び「陰極箔」は、それぞれ、本件発明1の「陽極箔」及び「陰極箔」に相当し、 文献6に記載された発明の「コンデンサ素子」は、本件発明1の「コンデンサ素子」に相当し、 文献6に記載された発明の「ポリスチレンスルホン酸」は、本件発明1の「ドーパント」に相当し、 文献6に記載された発明の「PEDOTの粒子」は、本件発明1の「共役系高分子」に相当し、 文献6に記載された発明の「固体電解質層」は、本件発明1の「固体電解質層」に相当し、 文献6に記載された発明の「電解液」は、「コンデンサ素子を作製した電解液に浸漬し」ていることから(段落【0050】参照)、本件発明1の「コンデンサ素子内の空隙部に充填された液体」に相当し、 文献6に記載された発明の「固体電解質層」及び「電解液」は、いずれもコンデンサ素子の内部にあるから、本件発明1の「コンデンサ素子内に形成された電解質層」に相当する。 また、文献6には「ドーパントのドープ反応に寄与できる官能基1molに対するカチオン成分のモル比」が明記されておらず、文献6の実施例に記載された作製条件から当該モル比を合理的に推認することもできない。 特に、文献6には、ドーパントである「ポリスチレンスルホン酸」のスルホン化度が記載されておらず、ドーパントのドープ反応に寄与できる官能基(スルホン酸基)の総量を算出することができない。 また、文献6には、固体電解質層が形成されたコンデンサ素子に充填された電解液の総量が記載されておらず、カチオン成分の総量を算出することができない。 したがって、文献6の実施例に記載された作製条件から「ドーパントのドープ反応に寄与できる官能基1molに対するカチオン成分のモル比」を合理的に推認することができない。 したがって、本件発明1と文献6に記載された発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。 【一致点】 陽極箔と陰極箔とを対向させて成るコンデンサ素子と、 前記コンデンサ素子内に形成された電解質層と、 を備え、 前記電解質層は、ドーパントと共役系高分子を含む固体電解質層と、 前記固体電解質層が形成された前記コンデンサ素子内の空隙部に充填された液体と、 を有する固体電解コンデンサ 【相違点7】 本件発明1では「ドーパントのドープ反応に寄与できる官能基1molに対するカチオン成分のモル比が、0.2以上6以下」であると特定するのに対し、文献6に記載された発明はそのような特定を有していない点 よって、上記のとおり、相違点があるから、本件発明1は、文献6に記載された発明ではない。 なお、特許異議申立人Bは、「本件特許発明1と甲第4号証記載の発明とは、電解液中に含まれるカチオン成分の量の点でも共通しており、甲第4号証の表1の実施例1~11に記載された電解液中のPSSスルホン基1モルに対するカチオン成分のモル比は0.2以上6以下である蓋然性が高く、本件特許発明1は、甲第4号証記載の発明を別の切り口からパラメータ化しただけであり、両者は実質的に同一である。」と主張している。 しかし、文献6の実施例に記載された作製条件と本件特許明細書の実施例に記載された作製条件とを比較すると、コンデンサ素子のサイズが異なること(文献6では直径8mm×高さ10mm、本件特許明細書では直径6.1mm×高さ6.3mm)や、導電性高分子分散体の固形分含有量、浸漬回数が明記されていないこと等から、電解液中に含まれるカチオン成分の量が共通していたとしても、両者が実質的に同一の電解コンデンサであるとはいえない。 よって、特許異議申立人Bの上記主張には理由がない。 イ 本件発明2、4ないし8について 請求項2、4ないし8は請求項1を引用するものであり、本件発明2、4ないし8は、本件発明1の発明特定事項をすべて含み、さらに他の発明特定事項を追加して限定したものであるから、上記アに示した本件発明1についての判断と同様の理由により、本件発明2、4ないし8は、上記文献6に記載された発明ではない。 ウ まとめ 以上のとおり、本件発明1ないし2、4ないし8は、文献6に記載された発明ではない。 7 申立理由7(進歩性)について ア 本件発明1と文献5に記載された発明との相違点は上記「相違点6」のとおりであり、本件発明1と文献6に記載された発明との相違点は上記「相違点7」のとおりである。 また、文献5または文献6に記載された発明の導電性高分子分散液に、文献3または文献4に記載されているようにアンモニア水を添加してpHを3にした結果、本件発明1の当該モル比に関する条件(0.2以上6以下)を満たしたとしても、本件発明1の当該モル比に関する条件を満たすようにアンモニア水を添加しpHを調整することは、後知恵と言うべきものであり、当該モル比に関する条件を満たすことにより格別顕著な効果を奏する本件発明1の進歩性を否定することはできない。 よって、本件発明1は、文献3ないし6に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 イ 本件発明2ないし8について 請求項2ないし8は請求項1を引用するものであり、本件発明2ないし8は、本件発明1の発明特定事項をすべて含み、さらに他の発明特定事項を追加して限定したものであるから、上記アに示した本件発明1についての判断と同様の理由により、本件発明2ないし8は、上記文献3ないし6に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 ウ まとめ 以上のとおり、本件発明1ないし8は、文献3ないし6に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 8 申立理由8(実施可能要件)について 特許異議申立人Bは、「本件特許明細書の発明の詳細な説明には、実施例及び比較例において使用した固体電解質層形成用の溶液中に含まれるPSS量に関する記載が存在しておらず、電解質層におけるドーパントのドープ反応に寄与できる官能基1molに対するカチオン成分のモル比が特定の比率である固体電解質層形成用の溶液を調製しようとしても、カチオン成分として水酸化ナトリウムやトリエチルアミンをどれだけ添加すればよいか、その添加量を算出することができず、実施例の記載を見ても、その算出方法が不明である。また、分散液にコンデンサ素子を浸漬した後、乾燥する処理を複数回繰り返すことでコンデンサ素子に固体電解質層を形成しているが、繰り返し回数も明確ではなく、結果として固体電解質層におけるドーパントとしてのPSS量がどうなったのか、コンデンサ素子内に形成された固体電解質層に含まれるPSS量に関する記載も存在しない。同様に、コンデンサ素子内の空隙部に充填された液体(電解液)量についても何も記載されていない。よって、本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載は、当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されていない。」と主張している。 しかし、前記申立理由3(実施可能要件)に対して記載したとおり、ドーパントの重量や「電解質層におけるドーパントのドープ反応に寄与できる官能基」の量は、既知の手段により定量することができる。 また、「コンデンサ素子内の空隙部に充填された液体」(電解液)の充填量は、例えば、特開2017-37950号公報の段落【0058】に、「測定方法としては、まず、固体電解質層を形成したコンデンサ素子の重量を測定した後、電解液に浸漬し、外装ケースに挿入して封口ゴムで封止した。作製した固体電解コンデンサの重量を測定し、電解液の含浸量を算出した。」と記載されているとおり、電解液に浸漬する前後の重量差から算出することができる。 さらに、電解液中のカチオン成分の添加量は、電解液の充填量と電解液のカチオン成分の濃度から算出することができる。 したがって、本件特許明細書に当該算出方法が記載されていなかったとしても、既知の各種手段から定量可能であるため、特許異議申立人Bの実施可能要件についての上記主張は採用できず、本件発明1ないし8について、本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載が実施可能要件を満たさないとまではいえない。 第6 むすび したがって、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、請求項1ないし8に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に請求項1ないし8に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2023-700673

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