商標異議申立
2025-900082
ケミカン、ケミキャン、チェミカン、チェミキャン
- 審判番号
- 2025-900082
- 法域
- 商標
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 商願2024-132131
- 登録番号
- 6894070
- 請求日
- 2025年04月16日
- 審決日
- 2025年09月11日
- 公報発行日
- 2025年10月31日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】株式会社ケミカン
- 【権利者代理人】Authense弁理士法人
- 【異議申立人】日本ケミコン 株式会社
- 【異議申立人代理人】木内 光春
- 【異議申立人代理人】片桐 貞典
- 【異議申立人代理人】木内 加奈子
- 審判長/審判官
- 審判長 山田 啓之
- 審判官 杉本 克治
- 審判官 小林 正和
- 分類
- T1652.25 -Y (W093542) / T1652.26 -Y (W093542) / T1652.27 -Y (W093542)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 商標法4条1項10号商標法4条1項11号商標法4条1項15号商標法43条の2商標法43条の3第4項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 商標法第4条第1項第11号、商標法第4条第1項第10号、商標法第4条第1項第15号、商標法第43条の2、商標法第43条の3第4項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
登録第6894070号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。
結論
結 論
登録第6894070号商標の商標登録を維持する。
理由
理 由
第1 本件商標
本件登録第6894070号商標(以下「本件商標」という。)は、「Chemican」の文字を標準文字で表してなり、令和6年12月9日に登録出願、「電気通信機械器具,電子応用機械器具及びその部品,電子応用機械器具(「ガイガー計数器・高周波ミシン・サイクロトロン・産業用X線機械器具・産業用ベータートロン・磁気探鉱機・磁気探知機・地震探鉱機械器具・水中聴音機械器具・超音波応用測深器・超音波応用探傷器・超音波応用探知機・電子応用扉自動開閉装置・電子顕微鏡」を除く。),電子管,半導体素子,電子回路(「電子計算機用プログラムを記憶させた電子回路」を除く。)」を含む第9類並びに第35類及び第42類に属する商標登録原簿に記載の商品及び役務を指定商品及び指定役務として、同7年1月30日に登録査定され、同年2月6日に設定登録されたものである。
第2 引用商標
登録異議申立人(以下「申立人」という。)が引用する商標は次のとおりであり(以下、これらをまとめて「引用商標」という。)、いずれの商標権も現に有効に存続しているものである。
1 登録第1728216号商標(以下「引用商標1」という。)
商標の構成:CHEMI-CON
指定商品 :第9類「電気通信機械器具,電気通信機械器具の部品及び付属品」
登録出願日:昭和56年9月8日
設定登録日:昭和59年11月27日
書換登録日:平成16年6月30日
2 登録第4637741号商標(以下「引用商標2」という。)
商標の態様:ケミコン(標準文字)
指定商品 :第9類「電気通信機械器具,電子応用機械器具及びその部品」
登録出願日:平成13年3月9日
設定登録日:平成15年1月17日
3 登録第4814115号商標(以下「引用商標3」という。)
商標の態様:別掲のとおり
指定商品 :第9類「電気通信機械器具,電子応用機械器具及びその部品」
登録出願日:平成16年4月15日
設定登録日:平成16年10月29日
第3 登録異議の申立ての理由
申立人は、本件商標は、その指定商品及び指定役務中、第9類「電気通信機械器具,電子応用機械器具及びその部品,電子応用機械器具(「ガイガー計数器・高周波ミシン・サイクロトロン・産業用X線機械器具・産業用ベータートロン・磁気探鉱機・磁気探知機・地震探鉱機械器具・水中聴音機械器具・超音波応用測深器・超音波応用探傷器・超音波応用探知機・電子応用扉自動開閉装置・電子顕微鏡」を除く。),電子管,半導体素子,電子回路(「電子計算機用プログラムを記憶させた電子回路」を除く。)」(以下「本件申立商品」という。)について、商標法第4条第1項第10号、同項第11号及び同項第15号に該当するものであるから、同法第43条の2第1号により、その登録は取り消されるべきものである旨申し立て、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証から甲第17号証を提出した。以下、証拠の記載に当たっては、「甲第○号証」を「甲○」のように省略して記載する場合がある。
1 商標法第4条第1項第11号について
(1)本件商標と引用商標1の対比
本件商標は、欧文字からなる標準文字商標であり、日本人の一般的な英語読みに従えば、「ケミカン」又は「ケミコン」のいずれかの称呼を生ずると考えられる。
他方、引用商標1は、「ケミコン」の称呼を生ずることが明らかである。
本件商標が「ケミコン」と称呼される場合には、両商標の称呼は明確に一致し、その類似性は疑いようがなく、仮に「ケミカン」と称呼される場合であっても、両商標は極めて類似する。
ア 称呼における類似性と混同の蓋然性
称呼に関しては、「Chemican」と「CHEMI-CON」は語尾に僅かな差異が存在するものの、日本語話者にとってはこの語尾の差異を聴覚的に識別することは困難である。具体的には、「ケミカン」と「ケミコン」の語尾の母音の違いは、日本語において曖昧に処理されがちである上、「ン」で終わる語は日本語において非常に一般的であり、識別機能が希薄である。このような点から、両商標は聴覚印象において極めて類似しており、称呼上の混同が生じる蓋然性が高いといえる。
加えて、商標審査基準においても、「ともに同数音の称呼からなり、相違する1音が50音図の同行に属し、その母音が近似する場合」は、称呼類似と判断され得るとされている。実際、本件の「ケミカン」と「ケミコン」は、いずれも4音構成であり、「カ」と「コ」はどちらもカ行に属し子音が共通している。また、母音「ア」と「オ」も発音上近接しており、僅かな語尾の違いでは両称呼を明確に識別することは困難である。
さらに、両商標は、いずれも語頭に「CHEMI(ケミ)」を共通に有しており、この語頭構成が識別の初動段階において、需要者に両者が同一ブランド系列であるとの誤認を与える可能性を高め、また、既に「ケミコン」が電子部品業界において広く定着していることから、需要者の脳内では「ケミ~」との音声認知の時点で、「ケミコン」へと補完される心理的傾向が生じやすい。
イ 外観における類似性
外観については、「Chemican」と「CHEMI-CON」は、いずれも「CHEMI(Chemi)」の語頭部分を共通にし、語尾部分も「-can」と「-CON」で構成されており、つづりの差異は僅か1文字にとどまり、また、音節数(ケ・ミ・カンvsケ・ミ・コン)や語感、テンポの面でも酷似しており、視覚的にも極めて近い印象を与える。
加えて、実際の取引環境、特に展示会、音声広告、検索エンジンでの表示等では、視覚的なつづりの厳密な識別よりも語感や印象が優先される場面が多いため、このような軽微なつづりの相違は、かえって誤認の要因となる。
したがって、外観の点でも両商標は強い類似性を有すると評価される。
ウ まとめ
以上のとおり、本件商標は、引用商標1と称呼・外観のいずれの点においても同一又は極めて類似しており、需要者が両者を同一又は関連企業の商品と誤認し、混同するおそれは明白である。
また、両商標は、本件申立商品においても同一又は類似であり、同一の類似群コード(11B01)でもあるため、混同の危険性は一層高い。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものである。
(2)本件商標と引用商標2との対比
本件商標は、「ケミカン」又は「ケミコン」のいずれかの称呼を生ずるものである。
このうち「ケミコン」の称呼は、引用商標2から生ずる「ケミコン」の称呼と明確に一致するため、称呼の類似性は一層明確である。
仮に、本件商標が「ケミカン」と称呼される場合であっても、日本語話者においては「ケミカン」と「ケミコン」の語尾の識別が困難であり、称呼上の混同が生じるおそれがある点に変わりはない。
さらに、本件申立商品に関し、指定商品も同一又は類似であることから、需要者が両商標を同一又は関連企業の商標であると誤認、混同するおそれは極めて高い。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものである。
(3)本件商標と引用商標3との対比
本件商標は、「ケミカン」又は「ケミコン」との称呼を生ずると解される。
他方、引用商標3は、「CHEMI-CON」の文字と図形からなる商標であり、当該文字部分の称呼は「ケミコン」となる。
引用商標3は、図形的構成を有する点を除けば、構成文字や称呼の面において、引用商標1と実質的に同一であるため、本件商標と引用商標3は、引用商標1との関係と同様の理由により、称呼・外観の各点において極めて類似している。
さらに、両商標は、本件申立商品に関し、指定商品も同一又は類似であることから、需要者が両商標を同一又は関連企業の商標であると誤認・混同するおそれは極めて高い。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものである。
(4)むすび
上記のとおり、本件商標は、引用商標と類似のものであり、また、本件申立商品も同一又は類似であって、同一の類似群コードのものである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものである。
2 商標法第4条第1項第15号について
(1)著名な表示が存在すること
申立人は、「CHEMI-CON(ケミコン)」の表示を、複数の登録商標において採用し、長年にわたり日本国内外で継続的に使用してきた(甲2~甲17)。
具体的には、登録第1728216号(文字商標「CHEMI-CON」)、登録第4637741号(標準文字商標「ケミコン」)、登録第4814115号(文字と図形からなる商標「CHEMI-CON」)等、いずれも第9類「電気通信機械器具」等を指定商品としており、いずれの商標も「ケミコン」の称呼を生ずる(甲2~甲4)。
また、これらの商標はいずれも、実際の商取引において共通して「CHEMI-CON」という表示として使用されており、異なる図形的構成や標準文字の差異にかかわらず、業界の需要者・取引者においては「CHEMI-CON」の表示として広く認識されている(甲5~甲17)。
申立人は、2023年4月より、国内外のグループ全体で「CHEMI-CON」ブランドヘの統一を図っており(甲5、甲6)、カタログ・Webサイト・梱包・製品に至るまで「CHEMI-CON」の名称で統一的に展開している。
また、「CHEMI-CON」ブランドはコンデンサ業界における豊富な製品群において用いられており(甲7)、アルミ電解コンデンサの国内外市場での圧倒的な品目数・シリーズ展開は、当業界の技術者・需要者に対するブランドの認知に資するものである。
さらに、YouTube動画(甲8)では、登録者数45万人を超える電子系インフルエンサーが「ケミコン(CHEMI-CON)」の電解コンデンサを取り上げ、企業名・製品ブランドとして紹介している。当該動画は、日本語では約18万回再生、英語では約24万回再生されており、電子工学に関心を持つ一般層にも当該商標の認知が広がっていることがうかがえる。
申立人は、長年にわたり「CHEMI-CON」の表示を、企業ブランド・製品ブランド・商標として一貫して使用しており、日本国内のみならず、グローバルにおいても当該商標は広く知られている。
特に、世界的に著名な電子部品流通業者であるDigiKey及びMouserにおいて、「United Chemi-Con」ブランドのコンデンサ製品が恒常的に取り扱われており(甲9、甲10)、製品情報はオンライン上に常時掲載され、誰もがアクセス可能な状態である。これにより、電子部品業界の需要者、技術者、調達担当者の間で、「CHEMI-CON」ブランドの認知が蓄積されていることは明白である。
また、申立人は、「人とくるまのテクノロジー展」や「CEATEC」、「TECHNO-FRONTIER」といった、国内主要技術展示会に継続的に出展しており(甲11~甲14)、いずれの展示会においても「CHEMI-CON」のロゴ及び製品が前面に掲示されている。これにより、業界関係者やメディア、研究者に対しての訴求力が高く、周知性の裏付けとなる。
特に重視すべきは、「CHEMI-CON」は、申立人の創業以来の企業ブランドであり、同社の名称そのものにも含まれる表示である。そして、統合報告書(CHEMI-CON REPORT 2024)(甲15)には、企業理念、事業戦略、サステナビリティ方針に至るまで「CHEMI-CON」ブランドが一貫して中核的要素として取り上げられており、この表示が単なる製品名を超えて、企業全体の信用・価値を象徴する商標として戦略的に用いられていることが明らかにされている。また、同報告書には、「CHEMI-CON」ブランドが長年にわたり継続的かつ一貫して使用されてきた具体的実績が記載されており、例えば1970年に米国に「UNITED CHEMI-CON,INC.」、1977年にドイツに「EUROPE CHEMI-CON GmbH」を現地法人として設立したことが明記されており、これらは、「CHEMI-CON」の表示が国際市場でも商号・ブランドとして継続的に用いられてきた実績であり、国内での評価にも波及的影響を及ぼすものといえる。加えて、同報告書には、2023年度の連結売上高が1,507億円に達したことが記載されており、これは国内電子部品業界における申立人の確固たる事業基盤と高い認知度を裏付ける指標といえる。さらに、自動車のECUやADAS、充電器、産業機器、ロボット、データセンター、通信基地局等、多岐にわたる日本国内の産業分野において「CHEMI-CON」ブランドの製品が採用されていることが示されており、特定の市場に限定されることなく、複数分野にわたる浸透が確認される。
さらに、2004/2005年版及び2011/2012年版の製品カタログ(甲16、甲17)には、表紙裏面(2頁)に「ケミコン○○」の国内関連会社名の表記が、裏表紙裏面(3頁)には「www.chemi-con.co.jp」等のURLの記載が確認され、これらの資料は、「CHEMI-CON」の表示が2000年代初頭から企業名称やインターネットドメイン等に一貫して使用されていたことを明示するものであり、長年にわたる継続使用の客観的証拠である。
このように、2000年代から現在に至るまでの継続的かつ一貫した使用実態に照らしても、「CHEMI-CON」は単なる製品名を超えた企業全体のブランドとして広く認識されており、本件異議申立てにおける引用商標の著名性の主張を強く裏付けるものである。
このような長年の使用実績、顕著な売上規模、幅広い使用分野の実態に加え、統合報告書(CHEMI-CON REPORT 2024)(甲15)には、「社会に受け入れられてきたのは、技術力の高さだけでなく企業姿勢にもよる」との理念的記述も見られる。これは、「CHEMI-CON」ブランドが企業の社会的評価や信用と深く結びついていることを示しており、商標法上の「著名な商標」の要件の一つである「企業イメージとの結びつき」を裏付ける要素となり得る。さらに、同報告書には、「世界シェアNo.1」、「海外売上比率80%以上」といった記述も含まれているが、これらの内容は、日本国内の市場においても継続的に高い売上実績と認知を維持してきたことの延長線上にあるものであり、グローバルでの地位が国内での周知性・著名性を強化する補強資料となる。事実、「CHEMI-CON」ブランドは、取引先による指名購入や製品選定の場面でも広く利用されており、品質保証の担保として認識されている。これは、商標自体が独立の経済的価値を有し、第三者による使用が出所混同を招く蓋然性が高いことを示す。
以上のように、「CHEMI-CON」の表示は、単なる商品名ではなく、企業名や企業戦略、製品ブランドとして長期間にわたって継続的に使用され、我が国の電気通信機器・電子部品業界を中心に、取引者・業界関係者の間において広く認識されており、加えて、展示会出展、業界誌、企業広報資料等を通じて継続的な情報発信が行われ、需要者の接触機会も豊富である。
よって、申立人の「CHEMI-CON」商標は、少なくとも我が国の関連業界において「著名な商標」に該当する蓋然性が極めて高いといえる。
したがって、「CHEMI-CON」の表示は、商標法第4条第1項第15号にいう「著名な商標」に該当する。
(2)本件商標が著名な商標と同一又は類似であること
本件商標は、申立人の使用する「CHEMI-CON」及び「ケミコン」と構成・称呼において極めて類似している。特に、いずれの商標も「ケミコン」の称呼を生じさせる点において一致しており、僅かな文字構成の違いでは、需要者や取引者による識別を困難にする。
(3)出所の混同又はブランド価値の希釈化等、「不当に害するおそれ」があること
「CHEMI-CON」が高い識別力を有する著名商標であることからすれば、「Chemican」の使用は、当該著名表示の顧客吸引力・信用力に便乗する行為に該当し、商標の希釈化を招くおそれがあるといわざるを得ない。
実際に「Chemican」が本件申立商品に使用された場合、需要者はこれを申立人あるいはその関連会社の商品であると誤信し、出所の混同が生じる可能性が高く、また、そのような誤認によって、申立人の築き上げたブランドの独自性・信頼性が損なわれることにもなり、著名表示の信用が毀損される具体的なおそれがある。
(4)むすび
以上より、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものである。
3 商標法第4条第1項第10号について
(1)周知表示との混同
仮に、「CHEMI-CON」の文字は、その表示が著名の域に達していないとしても、上記のとおり、継続的な商標使用、展示会出展、ブランド統一施策、製品カタログ展開、第三者販売サイトでの販売により、少なくとも日本国内の電気通信機器・電子部品業界における需要者の間においては広く知られた商標であり、周知商標に該当する。
本件商標は、「CHEMI-CON」と称呼において極めて近似しており、僅かなつづりの違いによって識別されることは困難である。
また、引用商標においては、本件商標と指定商品が同一又は類似であり、甲第5号証から甲第17号証においては、主に電気通信機械器具であるコンデンサ(蓄電器)に関する取引・流通・周知性の実績が確認されている。
したがって、本件商標が本件申立商品に使用された場合、需要者はこれを申立人の業務に係る商品と誤認し、あるいは関連会社の商品であると混同するおそれがある。
(2)むすび
以上より、本件商標は、商標法第4条第1項第10号に違反して登録されたものである。
第4 当審の判断
1 引用商標の周知著名性について
(1)申立人の主張、同人の提出に係る証拠及び職権調査によれば、次の事実が認められる。
ア 申立人は、1931年に創業したアルミ電解コンデンサを製造販売する企業であり、2024年10月1日時点で、海外では、米国、台湾、中国、ドイツ、シンガポール等23か所に製造、販売拠点等を有し、日本国内では、東京に本社を有するほか、茨城、新潟、愛知、大阪等9か所に製造、販売拠点等を有し、宮城、岩手、福島等13か所に関係会社の拠点を有している(甲15)。
イ 申立人のアルミ電解コンデンサの世界シェアはNo.1であり、同人の2023年度の売上額は1507億円、そのうち、コンデンサの売上げが94%を占めている(甲15、申立人の主張、職権調査)。
ウ 申立人は、2023年4月よりブランド統一を図り、別掲のとおりの商標(これと色彩のみにおいて異なる商標等、社会通念上同一の商標を含む。以下同じ。以下「別掲商標」という。)を社標(ロゴマーク)とし、ブランド名を「CHEMI-CON」、和文表記を「ケミコン」とする旨の周知活動を行い(甲5、甲6)、2024年カタログには別掲商標が表示されている(甲7)。
エ チャンネル登録者数が45万人以上のユーチューバーが開設するYouTubeチャンネルに投稿されている動画画面には、別掲商標が表示されていた(甲8)。
オ 本件商標の登録出願日後の印刷日ではあるが、電子部品流通業者のウェブサイト記事には、「Chemi-Conは世界最大のアルミ電解コンデンサメーカーです。」、及び「United Chemi-Con(UCC)(日本ケミコンの完全子会社)は、北米最大手のアルミ電解コンデンサメーカーであり、サプライヤーです。」の記載とともに、別掲商標が表示されている(甲9、甲10)。
カ 申立人は、「人とくるまのテクノロジー展2023 YOKOHAMA」、「CEATEC 2023」及び「TECHNO-FRONTIER 2023-第38回 電源システム展」に出展し、当該展示会においては「CHEMI-CON」の文字及び別掲商標が表示されていた(甲11)。
キ 申立人は、上記ウのブランド統一前においては、輪郭図形の中に「NIPPON」及び「CHEMI-CON」の各文字を2段に配した構成からなる商標を使用するとともに、複数の関連事業所名に「ケミコン岩手株式会社」、「ケミコン宮城株式会社」並びにその英語表記として「CHEMI-CON IWATE Corp.」、「CHEMI-CON MIYAGI Corp.」のように「ケミコン○○」又は「CHEMI-CON○○」(○○は地名等。)と表示していた(甲16、甲17)。
(2)上記(1)によれば、申立人は、創業90年以上のアルミ電解コンデンサを製造販売する企業であり、当該商品のシェアが世界第1位であること、2023年度の売上げが相当額あること、本件商標の登録出願日後ではあるものの、インターネット上の記事において、申立人が世界最大のアルミ電解コンデンサメーカーとして紹介されていること等が認められ、これら事実を総合すれば、申立人の使用に係る「CHEMI-CON」の文字からなる引用商標1及び「ケミコン」の文字からなる引用商標2、並びに別掲の構成からなる引用商標3は、本件商標の登録出願日及び登録査定日において、申立人の業務に係る商品「アルミ電解コンデンサ」を表示するものとして、我が国の需要者、取引者の間に広く認識されていたというのが相当である。
2 商標法第4条第1項第11号該当性について
(1)本件商標
本件商標は、上記第1のとおり、「Chemican」の文字を標準文字により表してなるものであり、その構成文字に相応し、「ケミカン」の称呼を生じ、当該文字は、一般的な辞書に掲載がなく、特定の意味合いを有する語として親しまれているものでもないから、造語として認識されるものである。
なお、申立人は、本件商標からは、日本人の一般的な英語読みに従えば「ケミコン」の称呼も生じる旨主張しているところ、これを裏付ける証拠の提出はなく、「can」を末尾とする英語である「American」(アメリカン)、「Mexican」(メキシカン)、「pelican」(ペリカン)等の語はいずれも「カン」と発音される一方で、末尾が「コン」と読まれて我が国において親しまれている語は見当たらないことからすれば、本件商標から「ケミコン」の称呼が生じるとは認め難く、申立人の上記主張は採用することができない。
したがって、本件商標は、「ケミカン」の称呼を生じ、特定の観念を生じないものである。
(2)引用商標
引用商標1は、上記第2の1のとおり、「CHEMI-CON」の文字を同じ大きさ、同じ書体でまとまりよく一体的に書してなるものであり、その構成文字に相応して「ケミコン」の称呼を生じ、また、構成中、「-」(ハイフン)は「欧文で、2語を結びつけたり、1語を行末で区切って2行に分けて書いたりするときに間に記す短い横線の符号「-」。」(デジタル大辞泉(株式会社小学館))であり、「化学」の意味を有する英語である「CHEMI」(ランダムハウス英和大辞典 第2版(株式会社小学館))の欧文字と、「CON」の欧文字から構成されると理解されるものの、その構成全体としては一般的な辞書に掲載がなく、特定の意味合いを想起させることのない造語を表したと理解されるものであるから、特定の観念が生じないものである。
引用商標2は、「ケミコン」の片仮名からなるものであり、これより「ケミコン」の称呼を生じ、当該文字は、一般的な辞書に掲載がなく、特定の意味合いを想起させることのない造語を表したものと理解されるものであるから、特定の観念が生じないものである。
引用商標3は、別掲のとおり、輪郭図形の中に「CHEMI-CON」の文字を配した構成からなるものであるところ、「CHEMI-CON」の文字に相応し、「ケミコン」の称呼を生じ、特定の観念が生じないものである。
(3)本件商標と引用商標の類否
ア 外観について
(ア)本件商標と引用商標1を比較すると、両者は、語頭の「Chemi」と「CHEMI」の文字を共通にするとしても、「-」(ハイフン)の有無並びに後半部の「can」と「CON」における「a」と「O」、及び本件商標は語頭の「C」の文字のみ大文字で、それに続く文字が全て小文字からなるのに対し、引用商標1は構成文字全てが大文字からなるという差異を有し、また、「化学の」の意味を有する比較的親しまれている英語である「CHEMI」の欧文字と「CON」の欧文字とを、2語を連結する際に使用される符号である「-」(ハイフン)で結合した構成からなると理解されるものであって、本件商標とは、別異の語であるとの印象を与えるものであるから、視覚的な印象が相違し、両者は外観において、判然と区別し得るものである。
(イ)本件商標と引用商標2を比較すると、本件商標は全て欧文字からなるのに対し、引用商標2は、片仮名からなるものであるから、両者は、視覚的な印象が相違し、外観において、判然と区別し得るものである。
(ウ)本件商標と引用商標3を比較すると、両者は、全体の比較においては、輪郭図形の有無によって、明確に区別できるものであり、また、本件商標と引用商標3の「CHEMI-CON」の文字部分とは、引用商標1と同じ理由により、別異の語であるとの印象を与えるものであるから、両者は、視覚的な印象が相違し、外観において、判然と区別し得るものである。
イ 称呼について
本件商標から生じる「ケミカン」の称呼と引用商標から生じる「ケミコン」の称呼を比較すると、両者は、中間において「カ」と「コ」の音の差異を有し、これらの音は、ともに、弱音である「ン」の音の前に位置すること、及び全体として、僅か4音という音構成であることから、本件商標と引用商標とを、それぞれ一連に称呼するときは、全体の語調、語感が著しく相違し、明瞭に区別することができるものである。
ウ 観念について
本件商標と引用商標は、いずれも特定の観念を生じないから、両者は、観念において比較することができない。
エ 上記アからウのとおり、本件商標と引用商標は、観念において比較できないとしても、外観及び称呼において容易に区別し得るから、両者の外観、観念、称呼等によって取引者、需要者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に考察すれば、両者は相紛れるおそれのない非類似の商標というべきものである。
(4)小括
上記のとおり、本件商標と引用商標は非類似の商標というべきものであるから、本件商標は、本件申立商品と引用商標の指定商品との類否について言及するまでもなく、商標法第4条第1項第11号に該当しない。
3 商標法第4条第1項第10号該当性について
引用商標は、上記1のとおり、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人の業務に係る「アルミ電解コンデンサ」を表示するものとして我が国の需要者の間に広く認識されていると認められるものであるが、本件商標と引用商標は、上記2(3)のとおり、相紛れるおそれのない非類似の商標であるから、本件商標は、商標法第4条第1項第10号に該当しない。
4 商標法第4条第1項第15号該当性について
引用商標は、上記1のとおり、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人の業務に係る「アルミ電解コンデンサ」を表示するものとして我が国の需要者の間に広く認識されていると認められるものであるから、その周知性は高いものといえ、また、「CHEMI-CON」及び「ケミコン」の文字は、いずれも造語であるから、独創性も高いものである。
しかしながら、本件商標と引用商標は、上記2(3)のとおり、相紛れるおそれのない非類似の商標であって、別異のものであるから、類似性の程度は極めて低いものである。
そうすると、本件商標は、商標権者がこれをその指定商品に使用した場合に、本件商標から引用商標との関連性を連想、想起し、他人(申立人)あるいは同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係るものであるかのように、その商品の出所について混同を生じさせるおそれはないものと判断するのが相当である。
その他、本件商標が出所の混同を生じさせるおそれがあるというべき事情は見いだせない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しない。
5 まとめ
以上のとおり、本件商標は、その指定商品及び指定役務中、本件申立商品について、商標法第4条第1項第10号、同項第11号及び同項第15号に該当するものではなく、その登録は同項の規定に違反してされたものとはいえない。
他に、本件商標の登録が商標法第43条の2各号に該当するというべき事情は見いだせない。
したがって、本件商標の登録は、商標法第43条の3第4項の規定により、維持すべきである。
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。
J-PlatPat 審決検索を開く
2025-900082