特許異議申立
2021-700596
数値制御装置、機械学習装置、及び数値制御方法
- 審判番号
- 2021-700596
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2020-515987
- 登録番号
- 6813129
- 請求日
- 2021年06月22日
- 審決日
- 2022年09月28日
- 公報発行日
- 2022年10月28日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】三菱電機株式会社
- 【権利者代理人】弁理士法人深見特許事務所
- 【異議申立人】藤江 桂子
- 審判長/審判官
- 審判長 刈間 宏信
- 審判官 河端 賢
- 審判官 田々井 正吾
- 分類
- P1652.121-Y (G05B)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第6813129号発明「数値制御装置、機械学習装置、及び数値制御方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第6813129号の請求項1-3、5-6、8-12、14-15、17-18に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第6813129号の請求項1-18に係る特許についての出願は、2019年(令和1年)6月27日を国際出願日として出願され、令和2年12月21日にその特許権の設定登録がされ、令和3年1月13日に特許掲載公報が発行された。その後、その特許に対し、令和3年6月22日に特許異議申立人 藤江 桂子(以下、「申立人」という。)により、請求項1-3、5-6、8-12、14-15、17-18に係る特許に対して特許異議の申立てがされ、当審は、令和4年3月29日付けで取消理由を通知し、同年5月10日に特許権者と面接した。そして、特許権者は、取消理由通知の指定期間内である令和4年6月2日に意見書の提出を行った。
第2 本件発明
請求項1-3、5-6、8-12、14-15、17-18に係る発明(以下、請求項1に係る発明を「本件発明1」、請求項2-3、5-6、8-12、14-15、17-18に係る発明を、各請求項の番号に対応させて、それぞれ「本件発明2」-「本件発明3」、「本件発明5」-「本件発明6」、「本件発明8」-「本件発明12」、「本件発明14」-「本件発明15」、「本件発明17」-「本件発明18」といい、請求項1-3、5-6、8-12、14-15、17-18に係る発明をまとめて「本件発明」ということがある。)は、請求項1-3、5-6、8-12、14-15、17-18に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
【請求項1】
工具及び加工対象の少なくともいずれか一方に設けられた駆動軸に接続されるモータを、当該モータの位置情報を検出する検出器を用いてフィードバック制御する駆動軸制御部に対し、前記工具及び前記加工対象を相対的に移動させながら前記加工対象の加工を行う振動切削指令を出力する数値制御装置であって、
前記振動切削指令によって指定される指令振動移動量の波形を単位時間ごとに分割する第1波形分割部と、
前記検出器によって検出される実位置の波形を前記単位時間ごとに分割する第2波形分割部と、
時間軸に対し、nを自然数として、前記第1波形分割部によって分割されたn番目の指令振動移動量の波形であるn番目指令振動波形、前記第1波形分割部によって分割されたn+1番目の指令振動移動量の波形であるn+1番目指令振動波形、前記第2波形分割部によって分割されたn番目の実位置の波形であるn番目実位置波形、及び前記第2波形分割部によって分割されたn+1番目の実位置の波形であるn+1番目実位置波形を、表示部に重畳表示する表示制御部と、
を備えることを特徴とする数値制御装置。
【請求項2】
前記表示制御部は、前記n番目指令振動波形及び前記n+1番目指令振動波形にて囲まれる領域のうち、前記n番目指令振動波形の方が前記n+1番目指令振動波形よりも大きい領域である第1空振り領域を、当該第1空振り領域の他の領域と識別可能に強調表示する
請求項1に記載の数値制御装置。
【請求項3】
前記表示制御部は、前記n番目指令振動波形及び前記n+1番目指令振動波形にて囲まれる領域のうち、前記n番目指令振動波形の方が前記n+1番目指令振動波形よりも大きい領域である第1空振り領域がない場合、当該第1空振り領域が出現するための第1ガイダンスを表示する
請求項1又は2に記載の数値制御装置。
【請求項5】
前記表示制御部は、前記n番目実位置波形及び前記n+1番目実位置波形にて囲まれる領域のうち、前記n番目実位置波形の方が前記n+1番目実位置波形よりも大きい領域である第2空振り領域を、当該第2空振り領域の他の領域と識別可能に強調表示する
請求項1~3のいずれか一項に記載の数値制御装置。
【請求項6】
前記表示制御部は、前記n番目実位置波形及び前記n+1番目実位置波形にて囲まれる領域のうち、前記n番目実位置波形の方が前記n+1番目実位置波形よりも大きい領域である第2空振り領域がない場合、当該第2空振り領域が出現するための第2ガイダンスを表示する
請求項1、2、5のいずれか一項に記載の数値制御装置。
【請求項8】
前記表示制御部は、前記n番目指令振動波形及び前記n+1番目指令振動波形にて囲まれる領域のうち、前記n番目指令振動波形の方が前記n+1番目指令振動波形よりも大きい領域である第1空振り領域があり、かつ、前記n番目実位置波形及び前記n+1番目実位置波形にて囲まれる領域のうち、前記n番目実位置波形の方が前記n+1番目実位置波形よりも大きい領域である第2空振り領域がない場合、当該第2空振り領域が出現するための第2ガイダンスを表示する
請求項1又は2に記載の数値制御装置。
【請求項9】
工具及び加工対象の少なくともいずれか一方に設けられた駆動軸に接続されるモータを、当該モータの位置情報を検出する検出器を用いてフィードバック制御する駆動軸制御部に対し、前記工具及び前記加工対象を相対的に移動させながら前記加工対象の加工を行う振動切削指令を出力する数値制御方法であって、
前記振動切削指令によって指定される指令振動移動量の波形を単位時間ごとに分割する第1波形分割ステップと、
前記検出器によって検出される実位置の波形を前記単位時間ごとに分割する第2波形分割ステップと、
時間軸に対し、nを自然数として、前記第1波形分割ステップによって分割されたn番目の指令振動移動量の波形であるn番目指令振動波形、前記第1波形分割ステップによって分割されたn+1番目の指令振動移動量の波形であるn+1番目指令振動波形、前記第2波形分割ステップによって分割されたn番目の実位置の波形であるn番目実位置波形、及び前記第2波形分割ステップによって分割されたn+1番目の実位置の波形であるn+1番目実位置波形を、表示部に重畳表示する表示制御ステップと、
を備えることを特徴とする数値制御方法。
【請求項10】
工具に設けられた駆動軸及び加工対象に設けられた主軸に接続されるモータを、当該モータの位置情報を検出する検出器を用いてフィードバック制御する駆動軸制御部に対し、前記工具及び前記加工対象を相対的に移動させながら前記加工対象の加工を行う振動切削指令を出力する制御演算部を備える数値制御装置であって、
前記振動切削指令によって指定される指令振動移動量の波形を前記主軸の1回転ごとに分割する第3波形分割部と、
前記検出器によって検出される実位置の波形を前記主軸の1回転ごとに分割する第4波形分割部と、
前記主軸の1回転の回転角度に対し、nを自然数として、前記第3波形分割部によって分割されたn番目の指令振動移動量の波形であるn番目指令振動波形、前記第3波形分割部によって分割されたn+1番目の指令振動移動量の波形であるn+1番目指令振動波形、前記第4波形分割部によって分割されたn番目の実位置の波形であるn番目実位置波形、及び前記第4波形分割部によって分割されたn+1番目の実位置の波形であるn+1番目実位置波形を、表示部に重畳表示する表示制御部と、
を備えることを特徴とする数値制御装置。
【請求項11】
前記表示制御部は、前記n番目指令振動波形及び前記n+1番目指令振動波形にて囲まれる領域のうち、前記n番目指令振動波形の方が前記n+1番目指令振動波形よりも大きい領域である第3空振り領域を、当該第3空振り領域の他の領域と識別可能に強調表示する
請求項10に記載の数値制御装置。
【請求項12】
前記表示制御部は、前記n番目指令振動波形及び前記n+1番目指令振動波形にて囲まれる領域のうち、前記n番目指令振動波形の方が前記n+1番目指令振動波形よりも大きい領域である第3空振り領域がない場合、当該第3空振り領域が出現するための第3ガイダンスを表示する
請求項10又は11に記載の数値制御装置。
【請求項14】
前記表示制御部は、前記n番目実位置波形及び前記n+1番目実位置波形にて囲まれる領域のうち、前記n番目実位置波形の方が前記n+1番目実位置波形よりも大きい領域である第4空振り領域を、当該第4空振り領域の他の領域と識別可能に強調表示する
請求項10~12のいずれか一項に記載の数値制御装置。
【請求項15】
前記表示制御部は、前記n番目実位置波形及び前記n+1番目実位置波形にて囲まれる領域のうち、前記n番目実位置波形の方が前記n+1番目実位置波形よりも大きい領域である第4空振り領域がない場合、当該第4空振り領域が出現するための第4ガイダンスを表示する
請求項10、11、14のいずれか一項に記載の数値制御装置。
【請求項17】
前記表示制御部は、前記n番目指令振動波形及び前記n+1番目指令振動波形にて囲まれる領域のうち、前記n番目指令振動波形の方が前記n+1番目指令振動波形よりも大きい領域である第3空振り領域があり、かつ、前記n番目実位置波形及び前記n+1番目実位置波形にて囲まれる領域のうち、前記n番目実位置波形の方が前記n+1番目実位置波形よりも大きい領域である第4空振り領域がない場合、当該第4空振り領域が出現するための第4ガイダンスを表示する
請求項10又は11に記載の数値制御装置。
【請求項18】
工具に設けられた駆動軸及び加工対象に設けられた主軸に接続されるモータを、当該モータの位置情報を検出する検出器を用いてフィードバック制御する駆動軸制御部に対し、前記工具及び前記加工対象を相対的に移動させながら前記加工対象の加工を行う振動切削指令を出力する数値制御方法であって、
前記振動切削指令によって指定される指令振動移動量の波形を前記主軸の1回転ごとに分割する第3波形分割ステップと、
前記検出器によって検出される実位置の波形を前記主軸の1回転ごとに分割する第4波形分割ステップと、
前記主軸の1回転の回転角度に対し、nを自然数として、前記第3波形分割ステップによって分割されたn番目の指令振動移動量の波形であるn番目指令振動波形、前記第3波形分割ステップによって分割されたn+1番目の指令振動移動量の波形であるn+1番目指令振動波形、前記第4波形分割ステップによって分割されたn番目の実位置の波形であるn番目実位置波形、及び前記第4波形分割ステップによって分割されたn+1番目の実位置の波形であるn+1番目実位置波形を、表示部に重畳表示する表示制御ステップと、
を備えることを特徴とする数値制御方法。
第3 取消理由通知により通知した取消理由について
本件の請求項1-3、5-6、8-12、14-15、17-18に係る特許に対して、当審が令和4年3月29日付けで特許権者に通知した取消理由の概要は以下のとおりである。
◎ 取消理由(進歩性)
1 請求項1に係る発明は、甲第1号証に記載された発明及び甲第2号証に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
2 請求項2に係る発明は、甲第1号証に記載された発明、甲第2号証に記載された技術的事項及び引用文献にて例示される周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項2に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
3 請求項3、5-6、8に係る発明は、甲第1号証に記載された発明、甲第2号証に記載された技術的事項、引用文献にて例示される周知技術及び甲第6号証にて例示される周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項3、5-6、8に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
4 請求項9に係る発明は、甲第1号証に記載された発明及び甲第2号証に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項9に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
5 請求項10に係る発明は、甲第1号証に記載された発明及び甲第2号証に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項10に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
6 請求項11に係る発明は、甲第1号証に記載された発明、甲第2号証に記載された技術的事項及び引用文献にて例示される周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項11に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
7 請求項12、14-15、17に係る発明は、甲第1号証に記載された発明、甲第2号証に記載された技術的事項、引用文献にて例示される周知技術及び甲第6号証にて例示される周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項12、14-15、17に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
8 請求項18に係る発明は、甲第1号証に記載された発明及び甲第2号証に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項18に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
◎取消理由で引用した文献等
甲第1号証:特許第6530780号公報
甲第2号証:特許第5444412号公報
引用文献:特開2006-312223号公報[周知技術を示す文献]
甲第6号証:特開2016-103193号公報[周知技術を示す文献]
第4 引用文献の記載
1 甲第1号証:特許第6530780号公報
(1)甲第1号証の記載事項(下線は当審で付した。以下同様。)
ア 発明の詳細な説明
(ア)「【0001】
本発明は、主軸と送り軸との協調動作によりワークを旋削加工する工作機械の表示装置に関し、特に、揺動切削のための表示装置および加工システムに関する。」
(イ)「【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した揺動切削において意図したとおりに切屑を細断する為には、送り軸によりワークの加工方向に工具またはワークを周期的に揺動させるための送り指令の周波数や振幅等を事前に決める必要がある。一般的に、工作機械の数値制御装置においては、主軸回転数や送り速度などの加工条件や各種パラメータを設定可能なNCプログラムが作成されて記憶されており、上述の揺動動作の送り指令は該NCプログラムに従って生成される。そのため、作業者は、数値制御装置内のNCプログラムに設定された加工条件や各種パラメータの変更を行って、揺動動作のための送り指令の周波数や振幅等を決定している。
このような作業では、数値制御装置内のNCプログラムに設定された加工条件や各種パラメータの変更に応じて、揺動動作を行う送り軸の指令データや実位置データがどのように変化するかを確認できることが望ましく、上述のような波形表示装置が有用である。
しかしながら、揺動動作を行う送り軸に関する指令データまたは実位置データの時間変化を単純に波形表示するだけでは、工具による切屑の細断が可能であるか否かを判定するのは難しいという課題がある。このため、揺動切削における切屑の細断の可否を作業者が視覚的に容易に判断できることが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様は、ワークと工具を該ワークの中心軸線まわりに相対的に回転させる主軸と、該中心軸線に沿った加工方向に前記ワークと前記工具とを相対的に送る送り軸とを協調動作して、前記ワークを旋削加工する工作機械において、旋削加工により生じる切屑を細断するために、前記加工方向に前記工具と前記ワークとを相対的に揺動させて断続切削を行う際の、前記工作機械に関する情報を表示する表示装置であって、
前記断続切削を行うときの前記送り軸の位置情報を一定時間間隔で取得する位置情報取得部と、
前記断続切削を行うときの前記主軸の回転情報として前記主軸の回転速度を取得する回転情報取得部と、
前記位置情報取得部が前記一定時間間隔で取得した前記送り軸の時系列の位置情報から、該位置情報の時間による変化を表す第一波形データを生成する第一波形生成部と、
前記回転情報取得部が取得した前記回転速度から一回転あたりの時間を求め、前記第一波形データを前記一回転あたりの時間ごとに部分波形データに分割し、各々の前記部分波形データを前記第一波形データの開始点に合わせるように時間軸方向に順次シフトすることにより複数の第二波形データを生成する第二波形生成部と、
前記複数の第二波形データを表示する波形表示部と、
を具備する、表示装置でありうる。
また、本開示の他の態様は、ワークと工具を該ワークの中心軸線まわりに相対的に回転させる主軸と、該中心軸線に沿った加工方向に前記ワークと前記工具とを相対的に送る送り軸とを協調動作して、前記ワークを旋削加工する工作機械において、旋削加工により生じる切屑を細断するために、前記加工方向に前記工具と前記ワークとを相対的に揺動させて断続切削を行う際の、前記工作機械の動作情報を表示する表示装置であって、
前記断続切削を行うときの前記送り軸の位置情報を一定時間間隔で取得する位置情報取得部と、
前記断続切削を行うときの前記主軸の回転情報として前記主軸の回転角度を取得する回転情報取得部と、
前記位置情報取得部が前記一定時間間隔で取得した前記送り軸の時系列の位置情報の、前記回転角度による変化を表す第一波形データを生成する第一波形生成部と、
前記第一波形データを一回転分の前記回転角度ごとに部分波形データに分割し、各々の部分波形データを前記第一波形データの開始点に合わせるように順次シフトすることにより複数の 第二波形データを生成する第二波形生成部と、
前記複数の第二波形データを表示する波形表示部と、
を具備する、表示装置でありうる。
【発明の効果】
【0006】
上記の各態様によれば、揺動切削を行う工作機械の制御装置に備わる表示装置によって、揺動切削における切屑の細断の可否を作業者が視覚的に容易に判断できるようになる。」
(ウ)「【0010】
図1は、一実施形態の表示装置12を備えた加工システム1を示す図である。
加工システム1は、工作機械10と、工作機械10を制御する制御装置11と、表示装置12とを備える。
【0011】
工作機械10は工具14、例えばバイトを有する。工具14は、例えば円筒形、円柱形、円錐形、または円錐台形などを有するワークを切削加工する。ワークWの形状は円柱形以外の形状でもよく、工作機械10は切削加工を行うものに限られず、研削や研磨などを行うものでもよい。
但し、以降の説明においては、図1に示されるように、回転する円柱形のワークWの外周面が工具14により旋削加工されるものとする。また、ワークWが回転すると共に工具14がワークWの外周面の母線に沿って揺動する構成を例にとって説明する。
【0012】
工作機械10は、複数の駆動軸13を有する。駆動軸13の各々は、CNC(Computer Numerical Controller)、PLC(Programmable Logic Controller)等といった制御装置11によって制御される。図1には3つの駆動軸13を有する工作機械10が図示されているが、駆動軸13の数は限定されず、工作機械10には必要数の駆動軸を備えることができる。
複数の駆動軸13は、主軸M0と、主軸M0と協調動作する少なくとも2つの送り軸M1、M2とを含む。主軸M0はスピンドルモータまたはサーボモータを備えるものである。送り軸M1、M2は、ボールねじ機構またはリニアスライダ等の送り機構と該送り機構を駆動するサーボモータとを含むものである。
【0013】
図1においては、ワークWの回転軸となる該ワークの中心軸線をZ軸、Z軸に対して垂直な軸線をX軸としている。さらに、主軸M0は、ワークWを該ワークの中心軸線(Z軸)まわりに回転させる。送り軸M1は、Z軸方向に沿った第一方向(以下、加工方向と呼ぶ。)に工具14を送ることと該第一方向に工具14を往復運動、すなわち揺動させることの両方を行うことができる。送り軸M2は、X軸方向に沿った第二方向(すなわち、切込み方向)に工具14を送ることと該第二方向に工具14を往復運動、すなわち揺動させることの両方を行うことができる。
円柱形または円筒形のワークを旋削加工する場合、ワークを該ワークの中心軸線(Z軸)まわりに回転するとともに、工具14はZ軸方向に沿った第一方向(加工方向)のみに送られる。この場合、送り軸M2は基本的には不要である。
【0014】
円錐形や円錐台形等のワークのように外径がZ軸方向において異なるワークを旋削加工する場合は、ワークWが該ワークの中心軸線(Z軸)まわりに回転するとともに、工具14はX軸方向およびZ軸方向の合成方向に送られる。この場合、工具14をワークWの外周面の母線に沿って斜め方向に送るために、少なくとも2つの送り軸M1、M2が必要とされる。送り軸M1と送り軸M2の両方を制御することにより、工具14はワークWの外周面の母線に沿って斜め方向に送られる。
【0015】
制御装置11においては、主軸回転数(S)や送り速度(F)などの加工条件や各種パラメータを設定可能な加工プログラム(NCプログラム)が作成されて記憶されている。制御装置11は、加工プログラムに設定された加工条件や各種パラメータを変更できる操作盤(不図示)を備えている。
【0016】
制御装置11は、主軸M0、送り軸M1、送り軸M2などの各駆動軸13を個別に動作させるための各指令を加工プログラムに従って生成し、生成した各指令を、対応する主軸M0、送り軸M1、送り軸M2などの各駆動軸13に送信することができる。図1の例のように主軸M0によりワークWを回転させると共に送り軸M1、M2などにより工具14を送る構成では、制御装置11は、主軸M0に所定の回転速度の指令を送信し、送り軸M1、M2などには所定の目標位置の指令を送信する。
【0017】
加工システム1は、主軸M0、送り軸M1、送り軸M2などの駆動軸13ごとに、各駆動軸13の位置を検出する位置検出装置15を備えている。特に、図1に示されるように主軸M0によりワークWを回転させる構成では、主軸M0の位置検出装置15として、ワークWの回転位置(角度)を検出することが可能なセンサ、例えばロータリエンコーダが使用されうる。ロータリエンコーダは、ワークWの回転速度を検出することも可能である。また、図1に示された送り軸M1の位置検出装置15としては、ワークWの加工方向における工具14の位置を検出することが可能なセンサ、例えばエンコーダが使用されうる。送り軸M2の位置検出装置15としては、上記の切込み方向における工具14の位置を検出することが可能なセンサ、例えばエンコーダが使用されうる。
但し、送り軸M1、M2の位置検出装置15は、送り軸M1、M2の位置(図1の例では工具14の位置)を取得できれば如何なる装置でもよく、上記のエンコーダに限定されない。送り軸M1、M2の位置検出装置15は、例えば、駆動軸13から離間して配置されていてレーザトラッカまたは3次元位置センサなどを含む位置計測器でもよい。
制御装置11は、上述したように各駆動軸13に送信した指令と、各駆動軸13の位置検出装置15から制御装置11にフィードバックされる各駆動軸13の位置データとが一致するように、各駆動軸13を制御する。
【0018】
さらに、制御装置11は、旋削加工により生じる切屑を細断するために、前述の第一方向(加工方向)に工具14とワークWとを相対的に揺動させて断続切削を行うように送り軸M1を制御する機能を有する。
このような断続切削を行うための送り軸M1の送り指令もまた、制御装置11により、加工プログラムに従って生成される。作業者は、制御装置11の操作盤(不図示)を用いて加工条件や各種パラメータを変更することにより、断続切削のための送り指令の周波数や振幅等を決定することができる。
なお、上記の断続切削とは、工具14が周期的にワークWに接触およびワークWから離間しながらワークWを切削加工することを意味し、揺動切削または振動切削ともいう。」
(エ)「【0025】
そこで、本実施形態の表示装置12は、図1に示されるように、位置情報取得部16、回転情報取得部17、第一波形生成部18、第二波形生成部19、第三波形生成部20、および波形表示部21を具備する。
【0026】
図1に示された構成例においては、表示装置12は制御装置11の外部に離れて配置されているが、表示装置12は工作機械10の操作盤(不図示)に備えられていてもよいし、あるいは、表示装置12は制御装置11と一体的に備えられていてもよい。波形表示部21は、LCD(Liquid crystal display)パネルやOLED(Organic light emitting diode)パネルなどの表示パネル部でありうる。
【0027】
位置情報取得部16は、断続切削を行うときの送り軸M1の位置情報を一定時間間隔で取得する。この一定時間間隔は、例えば、制御装置11のサンプリング制御周期(例えば指令パルスの分配周期)の整数倍とすることができる。また、位置情報取得部16が取得する位置情報は、断続切削のための送り指令の値または該送り指令により駆動された送り軸M1の実位置のいずれか一方である。
さらに、送り軸M1の位置情報として送り軸M1の実位置を取得する場合、その実位置は、送り軸M1のサーボモータに備わるエンコーダの出力値でもよいし、レーザトラッカまたは3次元位置センサ等の位置計測器により遠隔計測された送り軸M1の移動端の位置、例えば工具14の先端部の位置でもよい。位置情報取得部16は、取得した送り軸M1の時系列の位置情報を表示装置12内のメモリ(不図示)に記憶させる機能も備える。
【0028】
回転情報取得部17は、ワークWおよび工具Wの相対的な回転速度および回転角度を回転情報として取得する。図1に示された構成の場合は、制御装置11に記憶された加工プログラムに主軸M0の回転速度(ワークWの回転速度)が予め設定されており、回転情報取得部17は、制御装置11から主軸M0の回転速度を回転情報として取得する。さらに、前述したように主軸M0の位置検出装置15としてロータリエンコーダが使用されており、制御装置11は、断続切削の間、ロータリエンコーダにより主軸M0の回転角度を検出することができる。このため、回転情報取得部17は、制御装置11から主軸M0の回転速度とともに回転角度も回転情報として取得することができる。
【0029】
第一波形生成部18は、位置情報取得部16により上記の一定時間間隔で取得された送り軸M1の時系列の位置情報から、その時系列の位置情報の時間による変化を表す第一波形データを生成する。例えば、断続切削のための送り指令を位置情報取得部16により取得する場合は、図2Cに示されるような波状曲線Qが第一波形データに相当する。
但し、生成される第一波形データは、送り軸M1のサーボモータに搭載されたエンコーダの出力値と時間を対応付けたもの、あるいは位置計測器により遠隔計測された工具14の先端位置と時間とを対応付けたものであってもよい。つまり、第一波形データは、送り軸M1に対する位置指令値に基づいた波形データもよいし、送り軸M1の実位置に基づいた波形データでもよい。
【0030】
第二波形生成部19は、回転情報取得部17が取得した回転速度に基づいて、一回転あたりの時間を求める。回転速度をS[min-1]、揺動周波数倍率をIとすると、周波数はS×60×Iと表すことができるため、一回転あたりの時間TR[S]は1/S×60×Iといった式によって求められる。
さらに、第二波形生成部19は、第一波形生成部18が生成した第一波形データを上記の一回転あたりの時間TRごとに部分波形データに分割し、各々の部分波形データを上記第一波形データの時間軸上の原点(開始点)に合わせるように時間軸方向に順次シフトすることにより複数の第二波形データを生成する。
波形表示部21は、第二波形生成部19により生成される複数の第二波形データを表示する。」
(オ)「【0031】
図3は、波形表示部21が表示する第二波形データの一例を示した図である。図3における横軸は時間を示し、縦軸は加工方向(すなわち、図1のZ軸方向に沿った第一方向)における位置を示している。
図3に示される曲線A1および曲線A2は、例えば図2Cに示された送り指令の時系列データ(波状曲線Q)をワークWの一回転あたりの時間TRごとに分割して得られた部分波形データ、すなわち第二波形データに相当する。図3では揺動周波数倍率Iを1.5に設定した場合で上記の時間時間TRを求めた例を示している。また、曲線A1はワークWの第一回転目における第二波形データを表し、曲線A2はワークWの第二回転目における第二波形データを表している。簡潔にする目的で、ワークWの第三回転目以降の第二波形データは図示を省略している。これら曲線A1、A2等のような第二波形データは、回転するワークW上における工具14の軌跡を表したものでもある。
また、図3には斜方向に延びる複数の直線状破線C1、C2、C3…が示されている。各破線C1、C2、C3は、図2Cに示された位置指令(点線の直線P)に相当し、図3の縦軸方向における各破線C1、C2、C3の間隔は毎回転送り量Fに相当する。このため、波形表示部21において曲線A1、A2等のような各第二波形データを表示する際、位置指令を示す破線C1、C2、C3も表示するのが良い。
【0032】
図3によると、曲線A1と曲線A2とが2箇所B1、B2で互いに重なっている。箇所B1、B2においては破線C1に対する曲線A1の最大値は、破線C2に対する曲線A2の最小値よりも大きい。
この重なり箇所B1、B2においては、工具14が曲線A2の軌跡で加工しているときにワークWから離間するので、ワークWは加工されない。このような重なり箇所B1、B2が周期的に発生するので、前述した断続切削が実現する。図3に示される例においては、曲線A2に従った動作により切屑が箇所B1、B2においてそれぞれ発生することとなる。つまり、第二回転目の曲線A2においては二つの切屑が発生する。
【0033】
したがって、作業者は、表示装置12の波形表示部21により、前の曲線A1と後の曲線A2とが部分的に互いに重なる箇所B1、B2の存在を確認することにより、切屑の細断の可否を判断することができる。重なり箇所B1、B2等が生じていないとき、作業者は、図2Bに示された揺動指令における揺動周波数や揺動振幅を変更する。この変更は、制御装置11内の加工プログラム上の設定値、例えば主軸回転速度S、毎回転送り量F、揺動周波数倍率Iなどの調整により行える。作業者は、意図した重なり箇所B1、B2が生じるように、表示装置12の波形表示部21を視認しながら揺動周波数や揺動振幅の変更を行うとよい。」
(カ)「【0036】
以上に説明したような表示装置12によれば、断続切削(揺動切削)における切屑の細断の可否を作業者が容易に判断できるようになる。それにより、作業者は、意図したとおりに切屑を細断化する断続切削を実現することができる。
【0037】
工具14の駆動機構部にバックラッシが在る場合やその駆動機構部の剛性が低い場合には、断続切削中に振動が発生し、工具14の位置精度が安定しないことがある。例えば、断続切削のための送り指令に基づいて送り軸M1を駆動したとしても、工具14の実位置は、図3に示されるような曲線A1、A2に完全には追従しない場合がある。つまり、切屑の細断が可能であると見做せる指令値であっても、実際には、意図したとおりに切屑の細断が行われない可能性がある。この点において、本実施形態の表示装置12は、送り軸M1の実位置の時間による変化をエンコーダ等の位置検出装置15によって検出し、この検出データに基づいて前述の第二波形データまたは第三波形データを生成して波形表示部21に表示することもできる。このため、作業者は、そのような送り軸M1の実位置に基づく第二波形データまたは第三波形データを見ることで、実際に切屑の細断が行われるか否かを正確に判断することができる。
【0038】
なお、以上に説明した実施形態においては、第一波形生成部18は送り軸M1の位置情報の時間による変化を表す第一波形データを生成するものとしたが、本発明はこれに限られない。例えば、第一波形生成部18は、送り軸M1の位置情報の、主軸M0の回転角度による変化を表す波形データを第一波形データとして生成してもよい。つまり、図2Cとして示された第一波形データのグラフの横軸が時間の代わりに回転角度に変更されたものとしてもよい。この場合には、第二波形生成部19は、このような第一波形データを一回転分の回転角度(360°又は2π)ごとに部分波形データに分割し、各々の部分波形データを上記の横軸上の原点(開始点、すなわちゼロ)に合わせるように順次シフトすることにより複数の第二波形データを生成するように構成されてもよい。さらに、第三波形生成部20は、(n+1)番目の第二波形データからn番目の第二波形データを減算して第三波形データを生成するように構成されてもよい。
【0039】
要するに、図3および図4の例においては、横軸を時間としているが、横軸を回転角度としてもよい。例えば、図3の横軸を時間に代えて回転角度で表した図は図5の様になる。
時間をt[s]とし、ワークWの回転角速度をω[rad/s]とすると、ワークWの回転角度θ[rad]を、θ=ω・tの式により表すことができる。ワークWの回転速度をS[min-1]、周波数倍率をIとすると、回転角速度ωは、ω=2π×S/60×Iの式により表すことができる。このため、回転角度θは、回転速度Sと時間tと周波数倍率Iとから求まる。回転情報取得部17は制御装置11から主軸M0の回転速度Sを回転情報として取得しているので、第二波形生成部19は、その回転速度Sと時間tと周波数倍率Iとに基づいて、時間tによる第二波形データを回転角度θによる第二波形データに変換することができる。さらに、第三波形生成部20は、回転角度θによる第二波形データを基に、回転角度θによる第三波形データを生成することができる。」
イ 図面
(ア)「【図1】
[図:0001389375000001.jpg]
」
(イ)「【図3】
[図:0001389375000002.jpg]
」
(ウ)「【図5】
[図:0001389375000003.jpg]
」
ウ 上記ア-イからみて、甲第1号証には以下の事項が記載されていると認められる。
(ア)本件発明の数値制御装置に対応する事項について
上記ア(イ)、(ウ)及び(エ)並びに上記イ(ア)からみて、以下のことが記載されていると認められる。
a 「工具14」には「送り軸M1、M2」が設けられ、「送り軸M1、M2」には「サーボモータ」が接続されるものと認められる。
b 「ワークW」には「主軸M0」が設けられ、「主軸M0」には「スピンドルモータまたはサーボモータ」が接続されるものと認められる。
c 「送り軸M1、M2及び主軸M0」は、「工具14の位置及びワークWの回転位置(角度)を検出する位置検出装置15を用いてフィードバック制御する」ものと認められる。
d 「加工システム1」が備える「制御装置11」は、「送り軸M1、M2及び主軸M0のうち送り軸M1」に対し、「工具14」を「ワークW」に対して「相対的に移動させながらワークWの断続切削を行うための送り軸M1の送り指令を出力する」ものと認められる。
(イ)本件発明の第1波形分割部に対応する事項について
上記ア(イ)、(エ)、(オ)及び(カ)並びに上記イ(ア)、(イ)及び(ウ)からみて、以下のことが記載されていると認められる。
a 段落【0005】及び【0029】に記載の「位置情報の時間による変化を表す第一波形データ」において位置情報として、段落【0027】に記載の「断続切削のための送り指令の値」、すなわち、段落【0018】に記載の「断続切削を行うための送り軸M1の送り指令」の値を採用することにより、該「第一波形データ」は、「断続切削を行うための送り軸M1の送り指令の値の時間による変化を示す第一波形データ」となるものと認められる。
b 上記ア(イ)、(エ)、(オ)及び(カ)並びに上記イ(ア)及び(イ)からみて、「第二波形生成部19」は、「断続切削を行うための送り軸M1の送り指令」によって指定される「断続切削のための送り指令の値の時間による変化を示す第一波形データ」を「一回転あたりの時間TRごとに分割する」ものと認められる。
c 上記bに対して、上記ア(カ)及び上記イ(ウ)からみて、「第二波形生成部19」は、「断続切削を行うための送り軸M1の送り指令」によって指定される「断続切削のための送り指令の値の時間による変化を示す第一波形データ」を「一回転分の回転角度(30°又は2n)ごとに分割する」ものでもあると認められる。
(ウ)本件発明の第2波形分割部に対応する事項について
上記ア(イ)、(エ)、(オ)及び(カ)並びに上記イ(ア)、(イ)及び(ウ)からみて、以下のことが記載されていると認められる。
a 段落【0005】及び【0029】に記載の「位置情報の時間による変化を表す第一波形データ」において位置情報として、段落【0027】に記載の「送り指令により駆動された送り軸M1の実位置」を採用することにより、該「第一波形データ」は、「位置検出装置15」によって検出される「送り指令により駆動された送り軸M1の実位置の値の時間による変化を示す第一波形データ」となるものと認められる。
b 上記ア(イ)、(エ)、(オ)及び(カ)並びに上記イ(ア)及び(イ)からみて、「第二波形生成部19」は、「位置検出装置15」によって検出される「送り指令により駆動された送り軸M1の実位置の値の時間による変化を示す第一波形データ」を「一回転あたりの時間TRごとに分割する」ものと認められる。
c 上記bに対して、上記ア(カ)及び上記イ(ウ)からみて、「第二波形生成部19」は、「位置検出装置15」によって検出される「送り指令により駆動された送り軸M1の実位置の値の時間による変化を示す第一波形データ」を「一回転分の回転角度(30°又は2n)ごとに分割する」ものでもあると認められる。
(エ)本件発明の第1波形分割部及び第2波形分割部に対応する事項について
上記ア(エ)及び(カ)並びに上記イ(イ)及び(ウ)からみて、以下のことが記載されていると認められる。
a 上記ア(エ)及び上記イ(イ)からみて、「加工システム1」は、「断続切削を行うための送り軸M1の送り指令によって指定される断続切削のための送り指令の値の時間による変化を示す第一波形データを一回転あたりの時間TRごとに分割する第二波形生成部19」と、「位置検出装置15によって検出される送り指令により駆動された送り軸M1の実位置の値の時間による変化を示す第一波形データを一回転あたりの時間TRごとに分割する第二波形生成部19」の「いずれか一方」を備えるものと認められる。
b 上記aに対して、上記ア(カ)及び上記イ(ウ)からみて、「加工システム1」は、「断続切削を行うための送り軸M1の送り指令によって指定される断続切削のための送り指令の値の時間による変化を示す第一波形データを一回転分の回転角度(30°又は2n)ごとに分割する第二波形生成部19」と、「位置検出装置15によって検出される送り指令により駆動された送り軸M1の実位置の値の時間による変化を示す第一波形データを一回転分の回転角度(30°又は2n)ごとに分割する第二波形生成部19」の「いずれか一方」を備えるものでもあると認められる。
(オ)本件発明の表示制御部に対応する事項について
上記ア(イ)、(エ)、(オ)及び(カ)並びに上記イ(イ)及び(カ)からみて、以下のことが記載されていると認められる。
a n番目指令振動波形について
(a)段落【0005】及び【0029】に記載の「位置情報の時間による変化を表す第一波形データ」において、位置情報として、段落【0027】に記載の「断続切削のための送り指令の値」を採用する場合、
「第二波形データ」は、「断続切削のための送り指令の値の時間による変化を示す第一波形データ」が「第二波形生成部19」によって「分割」されて、部分波形データとなったものであると認められる。
(b)そして、上記(a)の場合において、「曲線A1」は、第一波形データから分割された「第二波形データ」のうち、「ワークWの第一回転目」のものであると認められる。
b n+1番目指令振動波形について
上記a(a)の場合において、「曲線A2」は、第一波形データから分割された「第二波形データ」のうち、「ワークWの第二回転目」のものであると認められる。
c n番目実位置波形について
(a)段落【0005】及び【0029】に記載の「位置情報の時間による変化を表す第一波形データ」において、位置情報として、段落【0027】に記載の「断続切削により駆動された送り軸M1の実位置」を採用する場合、
「第二波形データ」は、「送り指令により駆動された送り軸M1の実位置の値の時間による変化を示す第一波形データ」が「第二波形生成部19」によって「分割」されて、部分波形データとなったものであると認められる。
(b)そして、上記(a)の場合において、「曲線A1」は、第一波形データから分割された「第二波形データ」のうち、「ワークWの第一回転目」のものであると認められる。
d n+1番目実位置波形について
上記c(a)の場合において、「曲線A2」は、第一波形データから分割された「第二波形データ」のうち、「ワークWの第二回転目」のものであると認められる。
e 表示部に重畳表示する表示制御部について
「加工システム1」が備える「表示装置12」は、「時間を示す横軸」に対し、上記aの「曲線A1」(指令波形の一回転目)及びbの「曲線A2」(指令波形の二回転目)、または上記cの「曲線A1」(実位置波形の一回転目)及びdの「曲線A2」(実位置波形の二回転目)のいずれか一方を、「波形表示部21」に「表示する」ものであると認められる。
(2)甲第1号証に記載された発明
(2)-1 甲第1号証に記載された第1発明
甲第1号証には、上記(1)ウ(ア)、(イ)a及びb、(ウ)a及びb、(エ)a並びに(オ)からみて、表示する波形の横軸を時間とし、縦軸を指令位置又は実位置とする、以下の発明(以下、「甲第1号証に記載された第1発明」という。)が記載されていると認められる。
「工具14に設けられた送り軸M1、M2に接続されるサーボモータ及びワークWに設けられた主軸M0に接続されるスピンドルモータまたはサーボモータを、当該工具14の位置及び当該ワークWの回転位置(角度)を検出する位置検出装置15を用いてフィードバック制御する送り軸M1、M2及び主軸M0のうち送り軸M1に対し、工具14及びワークWを相対的に移動させながらワークWの断続切削を行うための送り軸M1の送り指令を出力する制御装置11を備える加工システム1であって、
断続切削を行うための送り軸M1の送り指令の値の時間による変化を示す第一波形データを一回転あたりの時間TRごとに分割する第二波形生成部19と、位置検出装置15によって検出される送り指令により駆動された送り軸M1の実位置の値の時間による変化を示す第一波形データを一回転あたりの時間TRごとに分割する第二波形生成部19のいずれか一方と、
時間を示す横軸に対し、第二波形生成部19によって分割されたワークWの第一回転目の断続切削のための送り指令の値の時間による変化である第二波形データを表す曲線A1及び第二波形生成部19によって分割されたワークWの第二回転目の断続切削のための送り指令の値の時間による変化である第二波形データを表す曲線A2、または第二波形生成部19によって分割されたワークWの第一回転目の送り軸M1の実位置の値の時間による変化である第二波形データを表す曲線A1及び第二波形生成部19によって分割されたワークWの第二回転目の送り軸M1の実位置の値の時間による変化である第二波形データを表す曲線A2のいずれか一方を、波形表示部21に表示する表示装置12と、
を備える加工システム1。」
(2)-2 甲第1号証に記載された第2発明
甲第1号証には、上記(1)からみて、甲第1号証に記載された第1発明による数値制御方法の発明(以下、「甲第1号証に記載された第2発明」という。)が記載されていると認められる。
(2)-3 甲第1号証に記載された第3発明
甲第1号証には、上記(1)ウ(ア)、(イ)a及びc、(ウ)a及びc、(エ)b並びに(オ)からみて、表示する波形の横軸を回転角度とし、縦軸を指令位置又は実位置とする、以下の発明(以下、「甲第1号証に記載された第3発明」という。)が記載されていると認められる。
「工具14に設けられた送り軸M1、M2に接続されるサーボモータ及びワークWに設けられた主軸M0に接続されるスピンドルモータまたはサーボモータを、当該工具14の位置及び当該ワークWの回転位置(角度)を検出する位置検出装置15を用いてフィードバック制御する送り軸M1、M2及び主軸M0のうち送り軸M1に対し、工具14及びワークWを相対的に移動させながらワークWの断続切削を行うための送り軸M1の送り指令を出力する制御装置11を備える加工システム1であって、
断続切削を行うための送り軸M1の送り指令の値の時間による変化を示す第一波形データを一回転分の回転角度(30°又は2n)ごとに分割する第二波形生成部19と、位置検出装置15によって検出される送り指令により駆動された送り軸M1の実位置の値の時間による変化を示す第一波形データを一回転分の回転角度(30°又は2n)ごとに分割する第二波形生成部19のいずれか一方と、
回転角度を示す横軸に対し、第二波形生成部19によって分割されたワークWの第一回転目の断続切削のための送り指令の値の時間による変化である第二波形データを表す曲線A1及び第二波形生成部19によって分割されたワークWの第二回転目の断続切削のための送り指令の値の時間による変化である第二波形データを表す曲線A2、または第二波形生成部19によって分割されたワークWの第一回転目の送り軸M1の実位置の値の時間による変化である第二波形データを表す曲線A1及び第二波形生成部19によって分割されたワークWの第二回転目の送り軸M1の実位置の値の時間による変化である第二波形データを表す曲線A2のいずれか一方を、波形表示部21に表示する表示装置12と、
を備える加工システム1。」
(2)-4 甲第1号証に記載された第4発明
甲第1号証には、上記(1)からみて、甲第1号証に記載された第3発明の「加工システム1」による数値制御方法の発明(以下、「甲第1号証に記載された第4発明」という。)が記載されていると認められる。
2 甲第2号証:特許第5444412号公報
(1)甲第2号証の記載事項
ア 発明の詳細な説明
(ア)「【0001】
本発明は、加工処理の評価を行うための情報を表示する表示部を備えた数値制御装置に関する。」
(イ)「【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、補間処理の前後における指令の変化を考慮して加工処理の精度を評価できるように必要な情報を表示する表示部を備えた数値制御装置を提供することを目的とする。
・・・
【0007】
1番目の発明において、表示部は、補間処理前の指令座標であるプログラム座標と、補間処理後の指令座標である指令座標とを互いに対比可能なように表示する。それにより、操作者は、補間処理の前後において座標がどのように変化したかを視覚的に確認できるようになる。したがって、操作者は、補間処理に起因して加工形状に誤差が生じているか否かを判別できる。
【0008】
本願の2番目の発明によれば、1番目の発明において、各駆動軸の位置を検出することによって各駆動軸の実位置を取得する実位置取得部と、前記実位置及び前記工作機械の前記機械構成情報に基づいて、前記実位置に対応する前記加工点の座標である実座標を算出する実座標算出部と、前記実座標を記憶する実座標記憶部と、をさらに備えており、前記表示部が、前記実座標を前記プログラム座標及び前記指令座標に対して互いに対比可能なようにさらに表示することを特徴とする、数値制御装置が提供される。
【0009】
2番目の発明において、表示部は、プログラム座標及び指令座標に加えて、工具が実際に通過した実座標を対比可能なように表示する。したがって、加工形状に誤差が生じている場合に、操作者は、誤差の発生が加工プログラム、設定パラメータ又は補間処理などのいずれの要因によるものなのかを正確に判別できる。
【0010】
本願の3番目の発明によれば、1番目の発明において、前記プログラム座標の間を所定の形状に従って接続することによりプログラム軌跡を生成するプログラム軌跡生成部と、前記指令座標の間を所定の形状に従って接続することにより指令軌跡を生成する指令軌跡生成部と、をさらに備えており、前記表示部が、前記プログラム軌跡及び前記指令軌跡を互いに対比可能なようにさらに表示することを特徴とする、数値制御装置が提供される。
【0011】
3番目の発明において、表示部は、プログラム座標及び指令座標に加えて、プログラム軌跡及び指令軌跡を対比可能なように表示する。このように補間処理前後の軌跡が表示されるので、操作者は補間処理前後の指令の変化を容易に確認できる。
【0012】
本願の4番目の発明によれば、3番目の発明において、各駆動軸の位置を検出することによって各駆動軸の実位置を取得する実位置取得部と、前記実位置及び前記工作機械の前記機械構成情報に基づいて、前記実位置に対応する前記加工点の座標である実座標を算出する実座標算出部と、前記実座標を記憶する実座標記憶部と、前記実座標の間を所定の形状に従って接続することにより実軌跡を生成する実軌跡生成部をさらに備えており、前記表示部が、前記実軌跡を前記プログラム軌跡及び前記指令軌跡に対して互いに対比可能なようにさらに表示することを特徴とする、数値制御装置が提供される。
【0013】
4番目の発明において、表示部は、プログラム座標及び指令座標並びにプログラム軌跡及び指令軌跡に加えて、実座標及び実軌跡を対比可能なように表示する。したがって、加工形状に誤差が生じている場合に、操作者は、誤差の発生が加工プログラム、設定パラメータ又は補間処理などのいずれの要因によるものなのかを正確かつ容易に判別できる。」
(ウ)「【0042】
図10は、第2の実施形態に係る数値制御装置12の表示部52による表示例を示す図である。図中の黒色の円は、ステップS23において取得されるプログラム座標の位置を表している。また、図中の黒色の正方形は、ステップS24において取得される指令座標の位置を表している。図中の黒色の三角形は、ステップS26において取得される実座標の位置を表している。図10に示されるように、本実施形態における表示部52によれば、プログラム座標及び指令座標に加えて実座標が重ねて表示されており、プログラム座標、指令座標及び実座標を互いに対比可能なようになっている。操作者は、表示部52によって表示されるモニタ画像を確認することによって、加工形状に誤差が発生している場合に、誤差の原因が補間処理、加工プログラムその他設定パラメータのいずれに存するかを一度に分析できる。」
(エ)「【0050】
図12は、第4の実施形態に係る数値制御装置16の表示部56による表示例を示す図である。図中の実線は、ステップS45において生成されたプログラム軌跡を表している。図中の破線は、ステップS46において生成された指令軌跡を表している。また、図中の点線は、ステップS49において生成された実軌跡を表している。図12に示されるように、本実施形態における表示部56によれば、プログラム座標、指令座標及び実座標に加えてプログラム軌跡、指令軌跡及び実軌跡が重ねて表示される。それにより、各座標と各軌跡を互いに対比可能なようになっている。操作者は、表示部56によって表示されるモニタ画像を確認することによって、加工形状に誤差が発生している場合に、誤差の原因が補間処理、加工プログラムその他設定パラメータのいずれに存するかを一度にかつ容易に分析できる。」
(オ)「【図12】
[図:0001389375000004.jpg]
」
(2)甲第2号証に記載された技術的事項
甲第2号証には、上記(1)からみて、以下の技術的事項(以下、「甲第2号証に記載された技術的事項」という。)が記載されていると認められる。
「数値制御装置の表示部に、プログラム座標におけるプログラム軌跡、指令座標における指令軌跡及び実座標における実軌跡を重畳表示することで、加工形状に誤差が発生している場合に、誤差の原因を分析できること。」
第5 当審の判断
1 取消理由(進歩性)について
(1)本件発明1について
ア 甲第1号証に記載された発明との対比
本件発明1と甲第1号証に記載された第1発明を対比する。
(ア)数値制御装置について
a 甲第1号証に記載された第1発明における「工具14」は、本件発明1における「工具」に相当し、同様に、「工具14に設けられた送り軸M1、M2」は「工具」「に設けられた駆動軸」に相当する。
そうすると、甲第1号証に記載された第1発明における「工具14に設けられた送り軸M1、M2に接続されるサーボモータ」は本件発明1における「工具」「に設けられた駆動軸に接続されるモータ」に相当する。
b 甲第1号証に記載された第1発明における「ワークW」は、本件発明1における「加工対象」に相当し、同様に、「ワークWに設けられた主軸M0」は「加工対象」「に設けられた駆動軸」に相当する。
そうすると、甲第1号証に記載された第1発明における「ワークWに設けられた主軸M0に接続されるスピンドルモータまたはサーボモータ」は本件発明1における「加工対象」「に設けられた駆動軸に接続されるモータ」に相当する。
c a及びbより、甲第1号証に記載された第1発明における「工具14に設けられた送り軸M1、M2に接続されるサーボモータ及びワークWに設けられた主軸M0に接続されるスピンドルモータまたはサーボモータ」は本件発明1における「工具及び加工対象の少なくともいずれか一方に設けられた駆動軸に接続されるモータ」に相当する。
d 甲第1号証に記載された第1発明における「工具14の位置」は本件発明1における「モータの位置情報」に相当し、同様に、「ワークWの回転位置(角度)」は「モータの位置情報」に相当する。
そうすると、甲第1号証に記載された第1発明における「工具14の位置及びワークWの回転位置(角度)を検出する位置検出装置15」は本件発明1における「モータの位置情報を検出する検出器」に相当する。
e 甲第1号証に記載された第1発明における「工具14の位置及びワークWの回転位置(角度)を検出する位置検出装置15を用いてフィードバック制御する」ことは、本件発明1における「モータの位置情報を検出する検出器を用いてフィードバック制御する」ことに相当する。
f 甲第1号証に記載された第1発明における「工具14及びワークWを相対的に移動させながらワークWの断続切削を行うための送り軸M1の送り指令」は本件発明1における「工具及び加工対象を相対的に移動させながら加工対象の加工を行う振動切削指令」に相当する。
g そして、甲第1号証に記載された第1発明における制御装置11は、「送り軸M1、M2及び主軸M0のうち送り軸M1」に対し、「送り指令を出力する」ものであり、本件発明の「駆動軸制御部」に相当する手段を備えることが明らかであるといえるから、甲第1号証に記載された第1発明における「送り軸M1、M2及び主軸M0のうち送り軸M1に対し、工具14及びワークWを相対的に移動させながらワークWの断続切削を行うための送り軸M1の送り指令を出力する制御装置11を備える加工システム1」は本件発明1における「駆動軸制御部に対し、工具及び加工対象を相対的に移動させながら加工対象の加工を行う振動切削指令を出力する数値制御装置」に相当する。
(イ)第1波形分割部について
甲第1号証に記載された第1発明における「断続切削を行うための送り軸M1の送り指令の値の時間による変化を示す第一波形データ」は、本件発明1における「振動切削指令によって指定される指令振動移動量の波形」に相当する。
また、甲第1号証に記載された第1発明における「一回転あたりの時間TR」は、本件発明1における「単位時間」に相当する。
そうすると、甲第1号証に記載された第1発明における「断続切削を行うための送り軸M1の送り指令の値の時間による変化を示す第一波形データを一回転あたりの時間TRごとに分割する第二波形生成部19」は、本件発明1における「振動切削指令によって指定される指令振動移動量の波形を単位時間ごとに分割する第1波形分割部」に相当する。
(ウ)第2波形分割部について
甲第1号証に記載された第1発明における「位置検出装置15によって検出される送り指令により駆動された送り軸M1の実位置の値の時間による変化を示す第一波形データ」は、本件発明1における「検出器によって検出される実位置の波形」に相当する。
また、甲第1号証に記載された第1発明における「一回転あたりの時間TR」は、本件発明1における「単位時間」に相当する。
そうすると、甲第1号証に記載された第1発明における「位置検出装置15によって検出される送り指令により駆動された送り軸M1の実位置の値の時間による変化を示す第一波形データを一回転あたりの時間TRごとに分割する第二波形生成部19」は、本件発明1における「検出器によって検出される実位置の波形を単位時間ごとに分割する第2波形分割部」に相当する。
(エ)第1波形分割部及び第2波形分割部について
甲第1号証に記載された第1発明における「断続切削を行うための送り軸M1の送り指令の値の時間による変化を示す第一波形データを一回転あたりの時間TRごとに分割する第二波形生成部19と、位置検出装置15によって検出される送り指令により駆動された送り軸M1の実位置の値の時間による変化を示す第一波形データを一回転あたりの時間TRごとに分割する第二波形生成部19のいずれか一方」を備えることは、
「振動切削指令によって指定される指令振動移動量の波形を単位時間ごとに分割する第1波形分割部または検出器によって検出される実位置の波形を単位時間ごとに分割する第2波形分割部の一方」を備えるという限りにおいて、
本件発明1における「振動切削指令によって指定される指令振動移動量の波形を単位時間ごとに分割する第1波形分割部と、検出器によって検出される実位置の波形を単位時間ごとに分割する第2波形分割部」を備えることに相当する。
(オ)表示制御部について
a n番目指令振動波形について
(a)甲第1号証に記載された第1発明における「ワークWの第一回転目」は本件発明1における「nを自然数として、」「n番目」に相当する。
(b)そうすると、甲第1号証に記載された第1発明における「第二波形生成部19によって分割されたワークWの第一回転目の断続切削のための送り指令の値の時間による変化である第二波形データを表す曲線A1」は、本件発明1における「第1波形分割部によって分割されたn番目の指令振動移動量の波形であるn番目指令振動波形」に相当する。
b n+1番目指令振動波形について
(a)甲第1号証に記載された第1発明における「ワークWの第二回転目」は本件発明1における「nを自然数として、」「n+1番目」に相当する。
(b)そうすると、甲第1号証に記載された第1発明における「第二波形生成部19によって分割されたワークWの第二回転目の断続切削のための送り指令の値の時間による変化である第二波形データを表す曲線A2」は、本件発明1における「第1波形分割部によって分割されたn+1番目の指令振動移動量の波形であるn+1番目指令振動波形」に相当する。
c n番目実波形について
(a)上記a(a)と同様に、甲第1号証に記載された第1発明における「ワークWの第一回転目」は本件発明1における「nを自然数として、」「n番目」に相当する。
(b)そうすると、甲第1号証に記載された第1発明における「第二波形生成部19によって分割されたワークWの第一回転目の送り軸M1の実位置の値の時間による変化である第二波形データを表す曲線A1」は、本件発明1における「第2波形分割部によって分割されたn番目の実位置の波形であるn番目実位置波形」に相当する。
d n+1番目実波形について
(a)上記b(a)と同様に、甲第1号証に記載された第1発明における「ワークWの第二回転目」は本件発明1における「nを自然数として、」「n+1番目」に相当する。
(b)そうすると、甲第1号証に記載された第1発明における「第二波形生成部19によって分割されたワークWの第二回転目の送り軸M1の実位置の値の時間による変化である第二波形データを表す曲線A2」は、本件発明1における「第2波形分割部によって分割されたn+1番目の実位置の波形であるn+1番目実位置波形」に相当する。
e 表示部に重畳表示する表示制御部について
(a)甲第1号証に記載された第1発明における「時間を示す横軸」は本件発明1における「時間軸」に相当し、同様に、「波形表示部21」は「表示部」に、「表示装置12」は「表示制御部」に、それぞれ相当する。
(b)そして、甲第1号証に記載された第1発明における「時間を示す横軸に対し、第二波形生成部19によって分割されたワークWの第一回転目の断続切削のための送り指令の値の時間による変化である第二波形データを表す曲線A1及び第二波形生成部19によって分割されたワークWの第二回転目の断続切削のための送り指令の値の時間による変化である第二波形データを表す曲線A2、または第二波形生成部19によって分割されたワークWの第一回転目の送り軸M1の実位置の値の時間による変化である第二波形データを表す曲線A1及び第二波形生成部19によって分割されたワークWの第二回転目の送り軸M1の実位置の値の時間による変化である第二波形データを表す曲線A2のいずれか一方を、波形表示部21に表示する」ことは、
「時間軸に対し、nを自然数として、第1波形分割部によって分割されたn番目の指令振動移動量の波形であるn番目指令振動波形及び第1波形分割部によって分割されたn+1番目の指令振動移動量の波形であるn+1番目指令振動波形を、表示部に重畳表示する、または第2波形分割部によって分割されたn番目の実位置の波形であるn番目実位置波形及び第2波形分割部によって分割されたn+1番目の実位置の波形であるn+1番目実位置波形を、表示部に重畳表示する」という限りにおいて、
本件発明1における「時間軸に対し、nを自然数として、第1波形分割部によって分割されたn番目の指令振動移動量の波形であるn番目指令振動波形、第1波形分割部によって分割されたn+1番目の指令振動移動量の波形であるn+1番目指令振動波形、第2波形分割部によって分割されたn番目の実位置の波形であるn番目実位置波形、及び第2波形分割部によって分割されたn+1番目の実位置の波形であるn+1番目実位置波形を、表示部に重畳表示する」ことに相当する。
(カ)一致点、相違点
したがって、本件発明1と甲第1号証に記載された第1発明とは、以下のaの点で一致し、bの点で相違する。
a 一致点
「工具及び加工対象の少なくともいずれか一方に設けられた駆動軸に接続されるモータを、当該モータの位置情報を検出する検出器を用いてフィードバック制御する駆動軸制御部に対し、工具及び加工対象を相対的に移動させながら加工対象の加工を行う振動切削指令を出力する数値制御装置であって、
振動切削指令によって指定される指令振動移動量の波形を単位時間ごとに分割する第1波形分割部または、
検出器によって検出される実位置の波形を単位時間ごとに分割する第2波形分割部の一方と、
時間軸に対し、nを自然数として、第1波形分割部によって分割されたn番目の指令振動移動量の波形であるn番目指令振動波形及び第1波形分割部によって分割されたn+1番目の指令振動移動量の波形であるn+1番目指令振動波形を、表示部に重畳表示する、または第2波形分割部によって分割されたn番目の実位置の波形であるn番目実位置波形及び第2波形分割部によって分割されたn+1番目の実位置の波形であるn+1番目実位置波形を、表示部に重畳表示する表示制御部と、
を備える数値制御装置。」
b 相違点
<相違点1>
「第1波形分割部」と「第2波形分割部」について、本件発明1は、「第1波形分割部」と「第2波形分割部」の両方を備えるのに対し、甲第1号証に記載された第1発明では、これらに相当するもののいずれか一方を備え、「表示制御部」が「表示部に重畳表示する」波形が、本件発明1は、「n番目指令振動波形」、「n+1番目指令振動波形」、「n番目実位置波形」、及び「n+1番目実位置波形」の4つの波形であるのに対し、甲1に記載された第1発明では、「n番目指令振動波形」及び「n+1番目指令振動波形」に相当するものという2つの波形、または「n番目実位置波形」及び「n+1番目実位置波形」に相当するものという2つの波形のいずれか一方である点。
イ 判断
相違点1について検討する。
(ア)甲第2号証に記載された技術的事項は「数値制御装置の表示部に、プログラム座標におけるプログラム軌跡、指令座標における指令軌跡及び実座標における実軌跡を重畳表示することで、加工形状に誤差が発生している場合に、誤差の原因を分析できること。」(上記第5の2(2))というものであり、指令軌跡と実軌跡を重畳表示させることが示されている。
そして、甲第2号証記載の技術的事項において、そのような重畳表示を行う技術的な意義は、誤差の原因を分析すること、すなわち指令軌跡と実軌跡を一致させることにあると理解できる。
(イ)これに対して、甲第1号証に記載された第1発明は、揺動切削における切屑の細断の可否を作業者が視覚的に容易に判断できるようにするもの(上記第4の1(1)ア(イ)の段落【0006】)であるから、実位置波形において、n番目の波形とn+1番目の波形を重畳表示させることで足りるのであって、指令軌跡と実軌跡を一致させる必要まではなく、甲第1号証に記載された第1発明に甲第2号証記載の技術的事項を適用する動機があるとはいえない。
(ウ)当審は、令和4年3月29日付けの取消理由通知書の第4ページにおいて、甲第1号証には、送り指令に基づいて送り軸M1を駆動したとしても、工具14の実位置が完全には追従しないこと、すなわち加工形状に誤差が生じることの示唆があり(上記第4の1(1)ア(カ)の段落【0037】)、当該誤差が生じないように誤差の原因を分析することは、当業者が当然に考慮すべき事項であるから、甲第1号証に記載された第1発明に甲第2号証記載の技術的事項を適用する動機がある旨を説示した。
(エ)しかし、甲第1号証の段落【0037】には、工具の実位置が追従しない場合に対して、送り軸M1の実位置に基づく第二波形データまたは第三波形データ((n+1)番目の第二波形データとn番目の第二波形データとの偏差を示す波形データ)を表示させることが示されているから、甲第1号証の当該記載に接した当業者であれば、工具の実位置が追従しない場合を認識したとしても、送り軸M1の実位置に基づく第二波形データまたは第三波形データを表示させることを試みるというべきであり、甲第2号証記載の技術的事項のように、指令軌跡と実軌跡を重畳表示させることを試みるとはいえない。
ウ 小括
したがって、相違点1に係る本件発明1の特定事項には当業者が容易に想到し得るものではないことから、本件発明1は、取消理由通知書に記載した取消理由において引用した甲第1号証に記載された第1発明及び甲第2号証に記載された技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(2)本件発明2-3、5-6、8について
上記(1)のとおり、本件発明1は、取消理由通知書に記載した取消理由において引用した甲第1号証に記載された第1発明及び甲第2号証に記載された技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではないことから、請求項1を引用する本件発明2-3、5―6、8についても、甲第1号証に記載された第1発明、甲第2号証に記載された技術的事項、引用文献にて例示される周知技術及び甲第6号証にて例示される周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではないものである。
(3)本件発明9について
ア 甲第1号証に記載された発明との対比
本件発明9は、本件発明1の「数値制御装置」による「数値制御方法」に対応する発明であり、本件発明1における「第1波形分割部」、「第2波形分割部」及び「表示制御部」を、本件発明9においてそれぞれ「第1波形分割ステップ」、「第2波形分割ステップ」及び「表示制御ステップ」としたものに対応したものと認められる。
そして、本件発明9と甲第1号証に記載された第2発明は、上記<相違点1>と同様な点で相違し、その余の点で一致しているといえる。
イ 判断・小括
上記(1)のとおり、相違点1に係る本件発明1の特定事項には当業者が容易に想到し得るものではないことから、本件発明9についても同様であり、本件発明9は、甲第1号証に記載された第2発明、甲第2号証に記載された技術的事項、引用文献にて例示される周知技術及び甲第6号証にて例示される周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(4)本件発明10について
ア 甲第1号証に記載された発明との対比
本件発明10と甲第1号証に記載された第3発明を対比する。
(ア)数値制御装置について
上記(1)ア(ア)と同様である。
(イ)第3波形分割部について
甲第1号証に記載された第3発明における「断続切削を行うための送り軸M1の送り指令の値の時間による変化を示す第一波形データ」は、本件発明10における「振動切削指令によって指定される指令振動移動量の波形」に相当する。
また、甲第1号証に記載された第3発明における「一回転分の回転角度(30°又は2n)」は、本件発明10における「主軸の1回転」に相当する。
そうすると、甲第1号証に記載された第3発明における「断続切削を行うための送り軸M1の送り指令値の時間による変化を示す第一波形データを一回転分の回転角度(30°又は2n)ごとに分割する第二波形生成部19」は、本件発明10における「振動切削指令によって指定される指令振動移動量の波形を主軸の1回転ごとに分割する第3波形分割部」に相当する。
(ウ)第4波形分割部について
甲第1号証に記載された第3発明における「位置検出装置15によって検出される送り指令により駆動された送り軸M1の実位置の値の時間による変化を示す第一波形データ」は、本件発明10における「検出器によって検出される実位置の波形」に相当する。
また、甲第1号証に記載された第3発明における「一回転分の回転角度(30°又は2n)」は、本件発明10における「主軸の1回転」に相当する。
そうすると、甲第1号証に記載された第3発明における「位置検出装置15によって検出される送り指令により駆動された送り軸M1の実位置の値の時間による変化を示す第一波形データを一回転分の回転角度(30°又は2n)ごとに分割する第二波形生成部19」は、本件発明10における「検出器によって検出される実位置の波形を主軸の1回転ごとに分割する第4波形分割部」に相当する。
(エ)第3波形分割部及び第4波形分割部について
甲第1号証に記載された第3発明における「断続切削を行うための送り軸M1の送り指令の値の時間による変化を示す第一波形データを一回転分の回転角度(30°又は2n)ごとに分割する第二波形生成部19」と「位置検出装置15によって検出される送り指令により駆動された送り軸M1の実位置の値の時間による変化を示す第一波形データを一回転分の回転角度(30°又は2n)ごとに分割する第二波形生成部19」の「いずれか一方」を備えることは、
「振動切削指令によって指定される指令振動移動量の波形を主軸の1回転ごとに分割する第3波形分割部」と「検出器によって検出される実位置の波形を主軸の1回転ごとに分割する第4波形分割部」の「一方」を備えるという限りにおいて、
本件発明10における「振動切削指令によって指定される指令振動移動量の波形を主軸の1回転ごとに分割する第3波形分割部」と「検出器によって検出される実位置の波形を主軸の1回転ごとに分割する第4波形分割部」を備えることに相当する。
(オ)表示制御部について
甲第1号証に記載された第3発明の「回転角度を示す横軸に対し」という事項が、本件発明10の「主軸の1回転の回転角度に対し」という事項に相当することのほかは、上記(1)ア(オ)と同様である。
(カ)一致点、相違点
したがって、本件発明10と甲第1号証に記載された第3発明とは、以下のaの点で一致し、bの点で相違する。
a 一致点
「工具に設けられた駆動軸及び加工対象に設けられた主軸に接続されるモータを、当該モータの位置情報を検出する検出器を用いてフィードバック制御する駆動軸制御部に対し、工具及び加工対象を相対的に移動させながら加工対象の加工を行う振動切削指令を出力する制御演算部を備える数値制御装置であって、
振動切削指令によって指定される指令振動移動量の波形を主軸の1回転ごとに分割する第3波形分割部と、
検出器によって検出される実位置の波形を主軸の1回転ごとに分割する第4波形分割部の一方と、
主軸の1回転の回転角度に対し、nを自然数として、第3波形分割部によって分割されたn番目の指令振動移動量の波形であるn番目指令振動波形及び第3波形分割部によって分割されたn+1番目の指令振動移動量の波形であるn+1番目指令振動波形を、表示部に重畳表示する、または第4波形分割部によって分割されたn番目の実位置の波形であるn番目実位置波形及び第4波形分割部によって分割されたn+1番目の実位置の波形であるn+1番目実位置波形を、表示部に重畳表示する表示制御部と、
を備える数値制御装置。」
b 相違点
<相違点2>
「第3波形分割部」と「第4波形分割部」について、本件発明10は、「第3波形分割部」と「第4波形分割部」を備えるのに対し、甲第1号証に記載された第3発明では、これらに相当するもののいずれか一方を備え、「表示制御部」が「表示部に重畳表示する」波形が、本件発明10は、「n番目指令振動波形」、「n+1番目指令振動波形」、「n番目実位置波形」、及び「n+1番目実位置波形」であるのに対し、甲第1号証に記載された第3発明では、「n番目指令振動波形」及び「n+1番目指令振動波形」に相当するもの、または「n番目実位置波形」及び「n+1番目実位置波形」に相当するもののいずれか一方である点。
イ 判断
相違点2についての判断は、上記(1)イと同様である。
ウ 小括
したがって、相違点2に係る本件発明10の特定事項には当業者が容易に想到し得るものではないことから、本件発明10は、取消理由通知書に記載した取消理由において引用した甲第1号証に記載された第3発明及び甲第2号証に記載された技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(5)本件発明11-12、14-15、17について
上記(4)のとおり、本件発明10は、甲第1号証に記載された第3発明及び甲第2号証に記載された技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではないことから、請求項10を引用する本件発明11-12、14―15、17についても、甲第1号証に記載された第3発明、甲第2号証に記載された技術的事項、引用文献にて例示される周知技術及び甲第6号証にて例示される周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではないものである。
(6)本件発明18について
ア 甲第1号証に記載された発明との対比
本件発明18は、本件発明10の「数値制御装置」による「数値制御方法」に対応する発明であり、本件発明10における「第3波形分割部」、「第4波形分割部」及び「表示制御部」を、本件発明18においてそれぞれ「第3波形分割ステップ」、「第4波形分割ステップ」及び「表示制御ステップ」としたものに対応したものと認められる。
そして、本件発明18と甲第1号証に記載された第4発明は、上記(4)ア(カ)bのように、上記<相違点2>と同様な点で相違し、その余の点で一致しているといえる。
イ 判断・小括
上記(4)のとおり、相違点2に係る本件発明10の特定事項には当業者が容易に想到し得るものではないことから、本件発明18についても同様であり、本件発明18は、取消理由通知書に記載した取消理由において引用した甲第1号証に記載された第4発明及び甲第2号証に記載された技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(7)まとめ
以上のとおりであるから、取消理由通知書により通知した取消理由によっては、請求項1-3、5-6、8-12、14-15、17-18に係る特許を取り消すことはできない。
2 取消理由として採用しなかった理由について
(1)取消理由として採用しなかった理由(進歩性)
異議申立書に記載した特許異議申立理由のうち、請求項1-3、5-6、8-12、14-15、17-18に係る特許に対して、当審が令和4年3月29日付けで特許権者に通知した取消理由として採用しなかった理由のうち、請求項1、9、10、18に係る特許については以下のア-エのとおりである。
ア 請求項1に係る発明は、甲第1号証に記載された発明、甲第2号証に記載された技術的事項及び甲第3号証-甲第5号証にて例示される周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
イ 請求項9に係る発明は、甲第1号証に記載された発明、甲第2号証に記載された技術的事項及び甲第3号証-甲第5号証にて例示される周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項9に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
ウ 請求項10に係る発明は、甲第1号証に記載された発明、甲第2号証に記載された技術的事項及び甲第3号証-甲第5号証にて例示される周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項10に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
エ 請求項18に係る発明は、甲第1号証に記載された発明、甲第2号証に記載された技術的事項及び甲第3号証-甲第5号証にて例示される周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項18に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
また、請求項1、10を引用する請求項2-3、5-6、8、11-12、14-15、17に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
◎引用文献等
甲第3号証:特開2016-207156号公報
甲第4号証:特開2015-207249号公報
甲第5号証:特開2018-49529号公報
(2)上記(1)についての当審の判断
ア 本件発明1について
(ア)甲号証に記載された技術的事項
a 甲第3号証の記載
甲第3号証には、段落【0059】に「表示部22は、位置指令値に基づいて生成された工具軸の軌跡と、位置検出器の検出値に基づいて生成された工具軸の軌跡とを重ねた画像を表示している。同一平面で切断した時の2つの工具軸の軌跡を重ねて表示することにより、位置指令値に対する実際の駆動軸の位置の誤差の評価を行うことができる。」と記載されている。
b 甲第4号証の記載
甲第4号証には、段落【0005】に「進行方向の違いにより加速度変化による影響が変化し、その結果、指令軌跡と実軌跡との間の軌跡誤差が大きくなる位置やその量も変化する。」と記載され、段落【0041】に「指令軌跡と実軌跡とを重ねて表示されるので、操作者は指令軌跡と実軌跡との間の軌跡誤差を容易に把握できる。」と記載されている。
c 甲第5号証の記載
甲第5号証には、【要約】の【課題】欄に「実位置と指令位置との間の連続的な誤差を演算し、誤差要素と速度要素との少なくとも2次元要素で表示あるいは評価を行う」と記載され、また、同【解決手段】欄に「前記指令経路と前記実経路との間の誤差ベクトルから誤差要素を演算し前記速度要素とともに2次元の座標系で速度・誤差を表示する速度・誤差表示部を有する数値制御工作機械測定装置を提供する。」と記載され、段落【0002】に「どれだけの誤差(実際に運動する実経路と指令経路との誤差)で運動できるかを測定することが一般に行なわれる。」と記載されている。
d 甲第3号証-第5号証に記載された技術的事項
甲第3号証-第5号証に記載されているのは、いずれも、甲第2号証に記載された技術的事項と同様に、指令軌跡と実軌跡を重畳表示することで、誤差の把握ないし評価を行うものであると認められる。
(イ)判断
上記(ア)dのとおり、甲第3号証-第5号証に記載された技術的事項は、甲第2号証に記載された技術的事項と同様なものであることから、上記1(1)イで示した判断と同様に、本件発明1は、甲第1号証に記載された第1発明及び甲第3号証-第5号証に記載された技術的事項に基いても当業者が容易に想到し得るものではなく、上記(1)アのように、甲第2号証に記載された技術的事項をさらに加えても、甲第1号証に記載された第1発明、甲第2号証に記載された技術的事項及び甲第3号証-第5号証に記載された技術的事項に基いて当業者が容易に想到し得るものではない。
したがって、上記(1)アの理由を考慮に入れても、本件発明1は当業者が容易に発明をすることができたものではないとの判断が変わるものではない。
また、本件発明1を引用する本件発明2-3、5-6、8も、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
イ 本件発明9、10、18について
本件発明1と同様に、上記(ア)dのとおり、甲第3号証-第5号証に記載された技術的事項は、甲第2号証に記載された技術的事項と同様なものであることから、上記1(3)イ、上記1(4)イ、上記1(6)イで示した判断と同様に、本件発明9、10、18は、甲第1号証に記載された第2-4発明及び甲第3号証-第5号証に記載された技術的事項に基いても当業者が容易に想到し得るものではなく、上記(1)イ、ウ、エのように、甲第2号証に記載された技術的事項をさらに加えても、甲第1号証に記載された第2-4発明、甲第2号証に記載された技術的事項及び甲第3号証-第5号証に記載された技術的事項に基いて当業者が容易に想到し得るものではない。
したがって、上記(1)イ、ウ、エの理由を考慮に入れても、本件発明9、10、18は当業者が容易に発明をすることができたものではないとの判断が変わるものではない。
また、本件発明10を引用する本件発明11-12、14-15、17も、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
第6 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知書に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、請求項1-3、5-6、8-12、14-15、17-18に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1-3、5-6、8-12、14-15、17-18に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2021-700596