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特許異議申立

2023-700637

光学素子および光偏向装置

審判番号
2023-700637
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2020-548216外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
登録番号
7191970
請求日
2023年06月16日
審決日
2024年07月09日
公報発行日
2024年10月25日
結論
訂正認容
当事者
審判長/審判官
分類
P1651.121-YAA(G02B)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第120条の5第2項、特許法第120条の5第7項、特許法第29条、特許法第120条の8第1項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第7191970号発明「光学素子および光偏向装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論
特許第7191970号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正後の特許請求の範囲の請求項〔1-21〕について訂正することを認める。
特許第7191970号の請求項10ないし21に係る特許を維持する。
特許第7191970号の請求項1ないし9に係る特許に対する特許異議の申立てを却下する。

理由

目次 ▾ 14項目
理 由

第1 手続の経緯

折りたたみ中(クリックで表示)

特許第7191970号の請求項1~21に係る特許(以下「本件特許」という。)についての出願は、令和元年8月27日(先の出願に基づく優先権主張 平成30年9月28日)を国際出願日とする出願であって、令和4年12月9日にその特許権の設定登録がされたものである。

本件特許について、令和4年12月19日に特許掲載公報が発行されたところ、その発行の日から6月以内である令和5年6月16日に、特許異議申立人 大久保 直樹(以下「特許異議申立人」という。)から全請求項に対して特許異議の申立てがされた。その後の手続等の経緯の概要は、以下のとおりである。

令和 5年 8月25日付け:取消理由通知
令和 5年10月27日 :意見書(特許権者)の提出
令和 5年10月27日 :訂正請求書の提出
令和 5年12月18日 :意見書(特許異議申立人)の提出
令和 6年 2月 9日付け:取消理由通知(決定の予告)
令和 6年 4月 9日 :意見書(特許権者)の提出
令和 6年 4月 9日 :訂正請求書(この訂正請求書による訂正の請求を、以下「本件訂正請求」という。)の提出
令和 6年 5月14日 :意見書(特許異議申立人)の提出

なお、令和5年10月27日に提出された訂正請求書による訂正請求は、特許法120条の5第7項の規定により、取り下げられたものとみなす。

第2 本件訂正請求について

1 訂正の趣旨及び訂正の内容

(1)訂正の趣旨

本件訂正請求の趣旨は、特許第7191970号の特許請求の範囲を、本訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~21について訂正することを求める、というものである。

(2)訂正の内容

本件訂正請求において特許権者が求める訂正の内容は、以下のとおりである。なお、下線は当合議体が付したものであり、訂正箇所を示す。

ア 訂正事項1

特許請求の範囲の請求項1を削除する。

イ 訂正事項2

特許請求の範囲の請求項2を削除する。

ウ 訂正事項3

特許請求の範囲の請求項3を削除する。

エ 訂正事項4

特許請求の範囲の請求項4を削除する。

オ 訂正事項5

特許請求の範囲の請求項5を削除する。

カ 訂正事項6

特許請求の範囲の請求項6を削除する。

キ 訂正事項7

特許請求の範囲の請求項7を削除する。

ク 訂正事項8

特許請求の範囲の請求項8を削除する。

ケ 訂正事項9

特許請求の範囲の請求項9を削除する。

コ 訂正事項10

特許請求の範囲の請求項10に「前記第1光学異方性層と前記第3光学異方性層とは、前記断面像において、前記第1光学異方性層の前記明線および暗線の対と、前記第3光学異方性層の前記明線および暗線の対との、前記法線に対する傾き方向が異なる、請求項8又は9に記載の光学素子。」とあるのを、

「液晶化合物に由来の光学軸の向きが面内の少なくとも一方向に沿って連続的に回転しながら変化した面内配向パターンを有する光学異方性層を厚さ方向に複数備え、
前記複数の光学異方性層はそれぞれ、前記一方向において前記光学軸の向きが180°回転するまでの長さが互いに異なる複数の領域を有し、
前記複数の光学異方性層はそれぞれ、前記一方向に沿って前記厚さ方向に切断した断面を走査型電子顕微鏡で観察した断面像において、前記光学軸の向きに由来した明線および暗線の対を前記一方向に沿って複数有し、
前記複数の光学異方性層のうちの1層である第1光学異方性層は、前記断面像において前記明線および暗線の対が前記光学異方性層の界面の法線に対して互いに異なる傾き角度で傾いた領域を有する傾斜光学異方性層であり、
前記複数の光学異方性層は、前記第1光学異方性層と隣接して配置されている第2光学異方性層を含み、
前記複数の光学異方性層は、前記第1光学異方性層および前記第2光学異方性層とは異なる第3光学異方性層を含み、前記第3光学異方性層が、前記断面像において、前記明線および暗線の対が前記光学異方性層の界面の法線に対して互いに異なる傾き角度で傾いた領域を有する傾斜光学異方性層であり、
前記第3光学異方性層が、前記第2光学異方性層と隣接しており、前記断面像において、前記第2光学異方性層と前記第3光学異方性層との明線同士および暗線同士が両者の界面で繋がっており、
前記第1光学異方性層と前記第3光学異方性層とは、前記断面像において、前記第1光学異方性層の前記明線および暗線の対と、前記第3光学異方性層の前記明線および暗線の対との、前記法線に対する傾き方向が異なる、光学素子。」に訂正する(請求項10の記載を直接又は間接に引用して記載された請求項11~21についても、同様に訂正する。)。

サ 訂正事項11

特許請求の範囲の請求項11に「請求項8から10のいずれか1項に記載の光学素子。」とあるのを、「請求項10に記載の光学素子。」に訂正する(請求項11の記載を直接又は間接に引用して記載された請求項12~21についても、同様に訂正する。)。

シ 訂正事項12

特許請求の範囲の請求項12に「請求項8から11のいずれか1項に記載の光学素子。」とあるのを、「請求項10又は11に記載の光学素子。」に訂正する(請求項12の記載を直接又は間接に引用して記載された請求項13~21についても、同様に訂正する。)。

ス 訂正事項13

特許請求の範囲の請求項13に「請求項8から12のいずれか1項に記載の光学素子。」とあるのを、「請求項10から12のいずれか1項に記載の光学素子。」に訂正する(請求項13の記載を直接又は間接に引用して記載された請求項14~21についても、同様に訂正する。)。

セ 訂正事項14

特許請求の範囲の請求項14に「請求項1から13のいずれか1項に記載の光学素子。」とあるのを、「請求項10から13のいずれか1項に記載の光学素子。」に訂正する(請求項14の記載を直接又は間接に引用して記載された請求項15及び18~21についても、同様に訂正する。)。

ソ 訂正事項15

特許請求の範囲の請求項15に「請求項1から14のいずれか1項に記載の光学素子。」とあるのを、「請求項10から14のいずれか1項に記載の光学素子。」に訂正する(請求項15の記載を直接又は間接に引用して記載された請求項18~21についても、同様に訂正する。)。

タ 訂正事項16

特許請求の範囲の請求項16に「請求項1から13のいずれか1項に記載の光学素子。」とあるのを、「請求項10から13のいずれか1項に記載の光学素子。」に訂正する(請求項16の記載を直接又は間接に引用して記載された請求項17~21についても、同様に訂正する。)。

チ 訂正事項17

特許請求の範囲の請求項18に「請求項1から17のいずれか1項に記載の光学素子。」とあるのを、「請求項10から17のいずれか1項に記載の光学素子。」に訂正する(請求項18の記載を直接又は間接に引用して記載された請求項19~21についても、同様に訂正する。)。

ツ 訂正事項18

特許請求の範囲の請求項19に「請求項1から18のいずれか1項に記載の光学素子。」とあるのを、「請求項10から18のいずれか1項に記載の光学素子。」に訂正する(請求項19の記載を直接又は間接に引用して記載された請求項20~21についても、同様に訂正する。)。

テ 訂正事項19

特許請求の範囲の請求項20に「請求項1から19のいずれか1項に記載の光学素子。」とあるのを、「請求項10から19のいずれか1項に記載の光学素子。」に訂正する(請求項20の記載を引用して記載された請求項21についても、同様に訂正する。)。

ト 訂正事項20

特許請求の範囲の請求項21に「請求項1から20のいずれか1項に記載の光学素子とを備えた光偏向装置。」とあるのを、「請求項10から20のいずれか1項に記載の光学素子とを備えた光偏向装置。」に訂正する。

(3)一群の請求項

本件訂正請求は、訂正後の一群の請求項である請求項〔1-21〕に対して請求されたものである。

2 訂正の適否

(1)訂正事項1~9について

訂正事項1~9は、それぞれ、請求項1~9を削除するものであるから、特許法120条の5第2項ただし書第1号が掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。

また、訂正事項1~9による訂正が、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでないことは明らかである。

(2)訂正事項10について

訂正事項10による訂正は、訂正前の請求項10が引用する請求項9の記載を独立請求項の形式に記載するとともに、訂正前の請求項8が削除されたことに伴い請求項間の引用関係を解消する訂正である。

したがって、訂正事項10による訂正は、特許法120条の5第2項ただし書4号に掲げる「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」及び同条同項ただし書き1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。

また、訂正事項10による訂正が、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでないことは明らかである。

請求項10の記載を直接又は間接に引用して記載された請求項11~21についても、同様である。

(3)訂正事項11について

訂正事項11は、訂正前の請求項11が訂正前の請求項8~10の記載を引用していたところ、訂正前の請求項8及び9が削除されたことに伴い、引用していた請求項から請求項8及び9を削除する訂正である。

したがって、訂正事項11は、特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。

また、訂正事項11による訂正が、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでないことは明らかである。

請求項11の記載を直接又は間接に引用して記載された請求項12~21についても、同様である。

(4)訂正事項12について

訂正事項12は、訂正前の請求項12が訂正前の請求項8~11の記載を引用していたところ、訂正前の請求項8及び9が削除されたことに伴い、引用していた請求項から請求項8及び9を削除する訂正である。

したがって、訂正事項12は、特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。

また、訂正事項12による訂正が、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでないことは明らかである。

請求項12の記載を直接又は間接に引用して記載された請求項13~21についても、同様である。

(5)訂正事項13について

訂正事項13は、訂正前の請求項13が訂正前の請求項8~12の記載を引用していたところ、訂正前の請求項8及び9が削除されたことに伴い、引用していた請求項から請求項8及び9を削除する訂正である。

したがって、訂正事項13は、特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。

また、訂正事項13による訂正が、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでないことは明らかである。

請求項13の記載を直接又は間接に引用して記載された請求項14~21についても、同様である。

(6)訂正事項14について

訂正事項14は、訂正前の請求項14が訂正前の請求項1~13の記載を引用していたところ、訂正前の請求項1~9が削除されたことに伴い、引用していた請求項から請求項1~9を削除する訂正である。

したがって、訂正事項14は、特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。

また、訂正事項14による訂正が、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでないことは明らかである。

請求項14の記載を直接又は間接に引用して記載された請求項15及び18~21についても、同様である。

(7)訂正事項15について

訂正事項15は、訂正前の請求項15が訂正前の請求項1~14の記載を引用していたところ、訂正前の請求項1~9が削除されたことに伴い、引用していた請求項から請求項1~9を削除する訂正である。

したがって、訂正事項15は、特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。

また、訂正事項15による訂正が、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでないことは明らかである。

請求項15の記載を直接又は間接に引用して記載された請求項18~21についても、同様である。

(8)訂正事項16について

訂正事項16は、訂正前の請求項16が訂正前の請求項1~13の記載を引用していたところ、訂正前の請求項1~9が削除されたことに伴い、引用していた請求項から請求項1~9を削除する訂正である。

したがって、訂正事項16は、特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。

また、訂正事項16による訂正が、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでないことは明らかである。

請求項16の記載を直接又は間接に引用して記載された請求項17~21についても、同様である。

(9)訂正事項17について

訂正事項17は、訂正前の請求項18が訂正前の請求項1~17の記載を引用していたところ、訂正前の請求項1~9が削除されたことに伴い、引用していた請求項から請求項1~9を削除する訂正である。

したがって、訂正事項17は、特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。

また、訂正事項17による訂正が、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでないことは明らかである。

請求項18の記載を直接又は間接に引用して記載された請求項19~21についても、同様である。

(10)訂正事項18について

訂正事項18は、訂正前の請求項19が訂正前の請求項1~18の記載を引用していたところ、訂正前の請求項1~9が削除されたことに伴い、引用していた請求項から請求項1~9を削除する訂正である。

したがって、訂正事項18は、特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。

また、訂正事項18による訂正が、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでないことは明らかである。

請求項19の記載を直接又は間接に引用して記載された請求項20~21についても、同様である。

(11)訂正事項19について

訂正事項19は、訂正前の請求項20が訂正前の請求項1~19の記載を引用していたところ、訂正前の請求項1~9が削除されたことに伴い、引用していた請求項から請求項1~9を削除する訂正である。

したがって、訂正事項19は、特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。

また、訂正事項19による訂正が、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでないことは明らかである。

請求項20の記載を引用して記載された請求項21についても、同様である。

(12)訂正事項20について

訂正事項20は、訂正前の請求項21が訂正前の請求項1~20の記載を引用していたところ、訂正前の請求項1~9が削除されたことに伴い、引用していた請求項から請求項1~9を削除する訂正である。

したがって、訂正事項20は、特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。

また、訂正事項20による訂正が、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでないことは明らかである。

(13)むすび

以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は、特許法120条の5第2項ただし書、同法同条9項において準用する同法126条5項及び6項の規定に適合するので、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり訂正後の請求項〔1~21〕について訂正することを認める。

第3 本件特許発明

上記「第2」のとおり、本件訂正請求による訂正は認められた。

したがって、本件特許の特許請求の範囲の請求項1~21に係る発明(以下、項番に従って「本件特許発明10」などという。)は、本件訂正請求による訂正後の特許請求の範囲の請求項1~21に記載された事項により特定される、次のものである。

「【請求項1】
(削除)
【請求項2】
(削除)
続きを表示(全51行)
【請求項3】
(削除)
【請求項4】
(削除)
【請求項5】
(削除)
【請求項6】
(削除)
【請求項7】
(削除)
【請求項8】
(削除)
【請求項9】
(削除)
【請求項10】
液晶化合物に由来の光学軸の向きが面内の少なくとも一方向に沿って連続的に回転しながら変化した面内配向パターンを有する光学異方性層を厚さ方向に複数備え、
前記複数の光学異方性層はそれぞれ、前記一方向において前記光学軸の向きが180°回転するまでの長さが互いに異なる複数の領域を有し、
前記複数の光学異方性層はそれぞれ、前記一方向に沿って前記厚さ方向に切断した断面を走査型電子顕微鏡で観察した断面像において、前記光学軸の向きに由来した明線および暗線の対を前記一方向に沿って複数有し、
前記複数の光学異方性層のうちの1層である第1光学異方性層は、前記断面像において前記明線および暗線の対が前記光学異方性層の界面の法線に対して互いに異なる傾き角度で傾いた領域を有する傾斜光学異方性層であり、
前記複数の光学異方性層は、前記第1光学異方性層と隣接して配置されている第2光学異方性層を含み、
前記複数の光学異方性層は、前記第1光学異方性層および前記第2光学異方性層とは異なる第3光学異方性層を含み、前記第3光学異方性層が、前記断面像において、前記明線および暗線の対が前記光学異方性層の界面の法線に対して互いに異なる傾き角度で傾いた領域を有する傾斜光学異方性層であり、
前記第3光学異方性層が、前記第2光学異方性層と隣接しており、前記断面像において、前記第2光学異方性層と前記第3光学異方性層との明線同士および暗線同士が両者の界面で繋がっており、
前記第1光学異方性層と前記第3光学異方性層とは、前記断面像において、前記第1光学異方性層の前記明線および暗線の対と、前記第3光学異方性層の前記明線および暗線の対との、前記法線に対する傾き方向が異なる、光学素子。
【請求項11】
前記第2光学異方性層と前記第3光学異方性層とは、前記断面像において、前記第2光学異方性層の前記明線および暗線の対と、前記第3光学異方性層の前記明線および暗線の対との、前記法線に対する傾き方向が異なる、請求項10に記載の光学素子。
【請求項12】
前記第1光学異方性層と前記第3光学異方性層とは、前記断面像において、前記第1光学異方性層の前記明線および暗線の対と、前記第3光学異方性層の前記明線および暗線の対との、前記傾き角度が互いに異なっている、請求項10又は11に記載の光学素子。
【請求項13】
前記第2光学異方性層と前記第3光学異方性層とは、前記断面像において、前記第2光学異方性層の前記明線および暗線の対と、前記第3光学異方性層の前記明線および暗線の対との、前記傾き角度が互いに異なっている、請求項10から12のいずれか1項に記載の光学素子。
【請求項14】
前記傾斜光学異方性層は、前記光学軸が厚さ方向に捩れ配向した領域を有する請求項10から13のいずれか1項に記載の光学素子。
【請求項15】
入射した光を回折して透過する機能を有する請求項10から14のいずれか1項に記載の光学素子。
【請求項16】
前記傾斜光学異方性層において、前記液晶化合物がコレステリック配向している請求項10から13のいずれか1項に記載の光学素子。
【請求項17】
入射した光を回折して反射する機能を有する請求項16に記載の光学素子。
【請求項18】
前記複数の光学異方性層のそれぞれの前記面内配向パターンが、前記一方向において前記光学軸の向きが180°回転するまでの長さが、該一方向において徐々に変化するパターンである請求項10から17のいずれか1項に記載の光学素子。
【請求項19】
前記複数の光学異方性層のそれぞれの前記面内配向パターンが、前記一方向を、内側から外側に向かう放射状に有するパターンである請求項10から18のいずれか1項に記載の光学素子。
【請求項20】
前記複数の光学異方性層のそれぞれの前記面内配向パターンにおいて、前記一方向において前記光学軸の向きが180°回転するまでの長さが10μm以下である領域を有する請求項10から19のいずれか1項に記載の光学素子。
【請求項21】
入射された光を偏向して出射する光偏向素子と、
前記光偏向素子を駆動する駆動手段と、
前記光偏向素子の光出射側に配置された、請求項10から20のいずれか1項に記載の光学素子とを備えた光偏向装置。」

第4 取消しの理由の概要及び証拠方法

1 取消しの理由の概要

令和5年10月27日提出の訂正請求書により訂正された特許請求の範囲の請求項1~21に係る特許に対して、当合議体が令和6年2月9日付けの取消理由通知書(決定の予告)において特許権者に通知した取消理由の概要は、次のとおりである。

理由1:(進歩性)本件特許の請求項1~21に係る発明は、先の出願前に日本国内又は外国において、下記の頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基づいて、先の出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。

2 特許異議申立人が提示した証拠方法

甲第1号証:国際公開第2018/094096号(以下「甲1」という。)
甲第2号証:米国特許出願公開第2015/0205182号明細書(以下「甲2」という。)
甲第3号証:特表2010-525394号公報(以下「甲3」という。)
甲第4号証:特開2002-357804号公報(以下「甲4」という。)
甲第5号証:特表2016-519327号公報(以下「甲5」という。)
甲第6号証:特開平3-213802号公報(以下「甲6」という。)
甲第7号証:国際公開第2018/149704号(以下「甲7」という。)
甲第8号証:矢田部力,外4名,“回折光学素子のFDTDシミュレーション”,[online],2005年11月25日、26日,第1回横幹連合コンファレンス,[2024年5月14日検索],インターネット

<URL:https://www.jstage.jst.go.jp/article/oukan/2005/0/2005_0_83/_pdf/-char/ja>(以下「甲8」という。)

(当合議体注:甲1は、主引用例であり、甲2~8は、副引用例、周知技術又は技術常識を示す文献である。)

第5 当合議体の判断

1 甲号証の記載及び引用発明

(1)甲1の記載

令和6年2月9日付け取消理由通知書で引用した甲1には、以下の事項が記載されている。なお、当合議体が仮訳し、訳文の下線は当合議体が付与したものであって、甲1に記載された発明の認定に用いた箇所を示す。

ア 「BACKGROUND
Field
[0003] The present disclosure relates to optical devices, including virtual reality and augmented reality imaging and visualization systems.」

訳「背景技術

技術分野 本開示は、仮想現実および拡張現実結像および可視化システムを含む、光学デバイスに関する。」

イ 「DETAILED DESCRIPTION
[0084] In some embodiments, diffractive optical elements such as polarization gratings include liquid crystal grating structures (e.g., liquid crystal polarization gratings) that are configured to diffract light at high efficiencies (e.g., diffraction efficiencies greater than or equal to about 40%) for a wide range of incident angles. The liquid crystal grating structure comprises a plurality of sublayers of liquid crystal material comprising liquid crystal molecules. The orientations of the liquid crystal molecules vary at regular intervals along a lateral axis across a sublayer, thereby forming repeating units of spaced-apart elongated liquid crystal molecules along the lateral axis. The repeating liquid crystal units are laterally offset relative to similar repeating units in an immediately adjacent sublayer of liquid crystal material, such that the offset repeating units of different sublayers (e.g. immediately neighboring sublayers) define a tilt angle (Θ) with respect to a normal to the lateral axis, with the normal extending parallel to the thickness dimension of the liquid crystal grating structure. Multiple liquid crystal grating structures, each formed by a plurality of sublayers of liquid crystal material, may form a stack of liquid crystal grating structures. The tilt angle of the sublayers forming each liquid crystal grating structure may have a different magnitude than the tilt angle of the sublayers forming a neighboring liquid crystal grating structure of the stack, in some embodiments, the liquid crystal grating structures may have different compositions and/or thicknesses from one another. For example, different liquid crystal grating structures may have different concentrations and/or types of chiral dopants. In some embodiments, at least some of the liquid crystal grating structures may- include different liquid crystal material than other liquid crystal grating structures, and the material for each structure may be selected to facilitate providing a desired tilt angle.
[0085] In some embodiments, the liquid crystal material of each sublayer includes liquid crystal molecules that are rotated relative to liquid crystal molecules in other sublayers of the grating structure by a twist angle (Φ). In some embodiments, the twist angle is the relative azimuthal angular rotation between a liquid crystal molecule on an uppermost sublayer and an underlying (e.g., directly underlying) liquid crystal molecule on a lowermost sublayer of the plurality of sublayers. In some embodiments, the twist angles of the liquid crystal molecules in different ones of the liquid crystal grating structures may be different, causing different tilt angles for the different grating structures. For a given type of liquid crystal molecules, it will be appreciated that the twist angle may be varied based upon chiral dopants present in the sublayers, and the thickness of the liquid crystal material forming the liquid crystal grating structure (e.g., the aggregate thickness of the sublayers forming a particular liquid crystal grating structure). Consequently, the different twist angle magnitudes for different liquid crystal grating structures may be achieved using different compositions and/or different thicknesses for the liquid crystal material forming each of the liquid crystal grating structures, as discussed herein.
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[0090] In addition, it will be appreciated that changing the grating period (e.g., the periodicity of individual liquid crystal molecules) may change the wavelengths of light that are most efficiently diffracted by a liquid crystal grating structure. In some embodiments, multiple grating structures, having different grating periods, may be used to diffract light of different wavelengths. Such grating structures may be stacked vertically and/or disposed on the same vertical level (e.g., laterally spaced-apart from one another).
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[0141] With continued reference to Figure 10A, the grating structure 1001 has a surface normal 1003 intersecting the first and the second surfaces 1002a and 1002b. As noted above, in some embodiments, the liquid crystal material may have a twist angle Φ defined by the angular rotation between a liquid crystal molecule (e.g., 1005b) of an uppermost sublayer 1004a of the grating structure 1001, and an underlying liquid crystal molecule (e.g., 1005b') of a lowermost sublayer 1004d of the grating structure 1001. Without being limited by theory, interactions between neighboring liquid crystal molecules may cause the orientations of the molecules to vary in a regular progression across the grating structure 1001, along the lateral axis (X). Thus, the liquid crystal molecules may form repeating units, each of which has a similar progression of liquid crystal orientations along the X-axis. As a result, groups of liquid crystal molecules for the repeating units in each of the sublayers 1004a-1004d may have a periodicity (A) equal to the lateral distance 1006' between two consecutive liquid crystal molecules having the same orientation, as seen in a side and/or top-down view.
[0142] With reference again to Figures 10A and 10B, the grating structure 1001 can comprise a chiral nematic liquid crystal material in some embodiments. For example, the plurality of sublayers of liquid crystal material may comprise a cholesteric liquid crystal material. Preferably, the liquid crystal material is polymerizable. As discussed herein, the liquid crystal material may comprise a reactive mesogen (RM), such as, for example, liquid crystalline di-acrylate. As also discussed herein, the grating structure 1001 preferably also includes chiral dopants, which may be utilized to influence the twist angle Φ of the liquid crystal molecules. Examples of chiral dopants include cholesteryl benzoate, cholesteryl nonanoate, cholesteryl chloride, and cholesteryl oley carbonate.
[0143] With reference to Figure 10B, a single repeating unit of each sublayer 1004a, 1004b, 1004c, and 1004d is illustrated. The repeating units 1006 have a periodicity of length 1006'. While the repeating units are illustrated completely directly vertically aligned for ease of discussion, it will be appreciated that the twisting the liquid crystal molecules over the thickness of the grating structure 1001 may cause the repeating units of different sublayers to be laterally shifted relative to one another.
[0144] With reference to Figure 11, in some embodiments, the sublayers 1004a, 1004b, 1004c, and 1004d of liquid crystal material may be laterally offset with respect to each other. The offset may be such that a grating optic axis that passes through corresponding liquid crystal molecules (that is, liquid crystal molecules having the same orientation) in each of the plurality of sublayers 1004a, 004b, 1004c, and 1004d is tilted at an angle θ with respect to a normal to the lateral axis X, and this normal may also be the normal to a major surface of the polarization grating structure. Accordingly, the sublayers 1004a, 1004b, 1004c, and 1004d form a tilted grating pattern having a grating optic axis that is tilted at an angle θ with respect to the normal to a major surface of the polarization grating structure 1001. In some embodiments, without being limited by theory, such a tilted grating pattern may diffract normally incident light at a high efficiency when the grating period satisfies the following condition with the wavelength λ, the average refractive index n, the grating period Λ (corresponding to the length 1006') and the tilt angle θ of the grating optic axis of the grating structure in equation (1) below.
[図:0001415273000001.jpg]
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[0153] Various embodiments of the liquid crystal polarization grating structures described herein may be configured to diffract a variety of wavelengths in the ultraviolet, visible and infra-red spectral ranges. For example, the grating structures can be configured to diffract incident light having a wavelength in a range between about 300 nm and about 10 μm. In some embodiments, to achieve high diffraction angles, it may be desirable for the periodicity A of the grating structure to be approximately equal to or even smaller than the wavelength of the incident light. Accordingly, the periodicity Λ of the grating structure may be between about 200 nm and about 100 μm depending on the wavelength range that the grating structure is configured to operate on. For example, the periodicity A of the grating structure may be between about 200 nm and about 350 nm; between about 330 nm and about 410 nm; between about 370 nm and about 480 nm; between about 450 nm and about 510 nm; between about 500 nm and about 570 nm; between about 550 nm and about 700 nm; between about 650 nm and about 1 μm; between about 980 nm and about 3 μm; between about 1.3 μm and about 3.2 μm; between about 2,3 μm and about 5 μm; between about 5 μm and about 10 μm; between about 5 μm and about 100 μm; or any value in these ranges or sub-ranges. Preferably, in display applications, the grating structure is configured to diffract visible light so that the light propagates away from the grating structure at wide diffraction angles, e.g., angles suitable for TIR within a waveguide on which the grating structure may be formed.
・・・省略・・・
[0155] In some embodiments, the tilt angle θ (e.g., θ1, θ2 and θ3) of the grating optic axis may be in a range between -85 degrees and about 85 degrees. For example, the tilt angle θ may be in a range between -10 degrees and about 10 degrees; between -20 degrees and about 20 degrees; between -35 degrees and about 35 degrees; between -45 degrees and about 45 degrees; between -50 degrees and about 50 degrees; between -65 degrees and about 65 degrees; between -75 degrees and about 75 degrees; or any value in these ranges or subranges. Preferably, tilt angles between the gratings structures forming a stack differ by about 0 to ±90 degrees, including about 0 to ±10 degrees; about ±10 degrees to ±20 degrees; about ±20 degrees to ±30 degrees; about ±30 degrees to ±40 degrees; about ±40 degrees to ±50 degrees; about ±50 degrees to ±60 degrees; about ±60 degrees to ±70 degrees; about ±70 degrees to ±80 degrees; or about ±80 degrees to ±90 degrees.
・・・省略・・・
[0157] In some embodiments, all sublayers of all of the grating structures of a grating structure stack may be shifted in the same direction as depicted in Figures 10A, 10B, 1 1 , 12A and 12B-1. For examples, the repeating liquid crystal molecules units of each sublayer may be shifted to the same side, e.g., to the left or to the right. For example, as depicted in Figures 2A and 12B-1 the grating optic axis of the different polarization grating stacks are all tilted to the right of the surface normal. Tilting the grating optical axis of the different sublayers to the same side can be advantageous in increasing diffraction efficiencies over a wider range of input angles as explained below with reference to Figures 12C-1, 12C- 2, 12D-1, and 12D-2.
・・・省略・・・
[0168] Advantageously, each underlying liquid crystal layer may act as an alignment layer for an overlying liquid crystal layer in direct contact with that underlying layer. This can provide for a simplified fabrication process flow, and may also reduce Fresnel reflections at the interfaces between liquid crystal layers.」

訳「発明の詳細な説明

[0084] いくつかの実施形態では、偏光格子等の回折光学要素は、広範囲の入射角にわたって高効率(例えば、約40%以上の回折効率)で光を回折するように構成される、液晶格子構造(例えば、液晶偏光格子)を含む。液晶格子構造は、液晶分子を備える、液晶材料の複数のサブ層を備える。液晶分子の配向は、サブ層を横断して側方軸に沿って規則的インターバルで変動し、それによって、側方軸に沿って離間された伸長液晶分子の反復ユニットを形成する。反復液晶ユニットは、異なるサブ層(例えば、直近傍のサブ層)のオフセットされた反復ユニットが側方軸に対する法線に対して傾斜角度(θ)を画定するように(法線は、液晶格子構造の厚さ寸法と平行に延在する)、液晶材料のサブ層に直ぐ隣接する類似反復ユニットに対して側方にオフセットされる。それぞれ、液晶材料の複数のサブ層によって形成される、複数の液晶格子構造は、液晶格子構造のスタックを形成してもよい。各液晶格子構造を形成する、サブ層の傾斜角度は、スタックの近傍液晶格子構造を形成するサブ層の傾斜角度と異なる大きさを有してもよい。いくつかの実施形態では、液晶格子構造は、相互と異なる組成および/または厚さを有してもよい。例えば、異なる液晶格子構造は、異なる濃度および/またはタイプのキラルドーパントを有してもよい。いくつかの実施形態では、液晶格子構造のうちの少なくともいくつかは、他の液晶格子構造と異なる液晶材料を含んでもよく、構造毎の材料は、所望の傾斜角度の提供を促進するように選択されてもよい。

[0085] いくつかの実施形態では、各サブ層の液晶材料は、格子構造の他のサブ層内の液晶分子に対してある捻転角度(Φ)だけ回転される、液晶分子を含む。いくつかの実施形態では、捻転角度は、複数のサブ層の最上サブ層上の液晶分子と最下サブ層上の下層(例えば、真下層)液晶分子との間の相対的方位角角度回転である。いくつかの実施形態では、液晶格子構造の異なるもの内の液晶分子の捻転角度は、異なり、異なる格子構造に関する異なる傾斜角度を生じさせることができる。所与のタイプの液晶分子に関して、捻転角度は、サブ層内に存在するキラルドーパントおよび液晶格子構造を形成する液晶材料の厚さ(例えば、特定の液晶格子構造を形成するサブ層の厚さの合計)に基づいて変動され得ることを理解されたい。その結果、異なる液晶格子構造に関する異なる捻転角度の大きさは、本明細書に議論されるように、液晶格子構造のそれぞれを形成する液晶材料のための異なる組成および/または異なる厚さを使用して達成されてもよい。

・・・省略・・・

[0090] 加えて、格子周期(例えば、個々の液晶分子の周期性)を変化させることは、液晶格子構造によって最も効率的に回折される、光の波長を変化させ得ることを理解されたい。いくつかの実施形態では、異なる格子周期を有する、複数の格子構造は、異なる波長の光を回折するために使用されてもよい。そのような格子構造は、垂直にスタックされ、および/または同一垂直レベル上に配置されてもよい(例えば、相互から側方に離間される)。

・・・省略・・・

[0141] 図10Aを継続して参照すると、格子構造1001は、第1および第2の表面1002aおよび1002bと交差する、面法線1003を有する。上記に述べられたように、いくつかの実施形態では、液晶材料は、格子構造1001の最上サブ層1004aの液晶分子(例えば、1005b)と、格子構造1001の最下サブ層1004dの下層液晶分子(例えば、1005b’)との間の角度回転によって画定される、捻転角度Φを有してもよい。理論によって限定されるわけではないが、近傍液晶分子間の相互作用は、分子の配向に、側方軸(X)に沿って格子構造1001を横断した規則的進行性を変動させ得る。したがって、液晶分子は、それぞれ、X-軸に沿って液晶配向の類似進行性を有する、反復ユニットを形成し得る。その結果、サブ層1004a-1004dのそれぞれ内の反復ユニットのための液晶分子の群は、側面図および/または上下図に見られるように、同一配向を有する2つの連続液晶分子間の側方距離1006’と等しい周期性(Λ)を有してもよい。

[0142] 再び図10Aおよび10Bを参照すると、格子構造1001は、いくつかの実施形態では、キラルネマチック液晶材料を備えることができる。例えば、液晶材料の複数のサブ層は、コレステリック液晶材料を備えてもよい。好ましくは、液晶材料は、重合化可能である。本明細書で議論されるように、液晶材料は、例えば、液晶性ジアクリレート等の反応性メソゲン(RM)を備えてもよい。また、本明細書で議論されるように、格子構造1001はまた、好ましくは、キラルドーパントを含み、これは、液晶分子の捻転角度Φに影響を及ぼすために利用されてもよい。キラルドーパントの実施例は、安息香酸コレステリル、ノナン酸コレステリル、塩化コレステリル、および炭酸コレステリルオレイルを含む。

[0143] 図10Bを参照すると、各サブ層1004a、1004b、1004c、および1004dの単一反復ユニットが、図示される。反復ユニット1006は、長さ1006’の周期性を有する。反復ユニットは、議論を容易にするために、完全に直接垂直に整合されて図示されるが、格子構造1001の厚さにわたって液晶分子を捻転させることは、異なるサブ層の反復ユニットを相互に対して側方に偏移させ得ることを理解されたい。

[0144] 図11を参照すると、いくつかの実施形態では、液晶材料のサブ層1004a、1004b、1004c、および1004dは、相互に対して側方にオフセットされてもよい。オフセットは、複数のサブ層1004a、1004b、1004c、および1004dがそれぞれ内の対応する液晶分子(すなわち、同一配向を有する液晶分子)を通して通過する、格子光学軸が、側方軸Xに対する法線に対して角度θ傾斜され、本法線がまた、偏光格子構造の主表面に対して法線であり得るようなものである。故に、サブ層1004a、1004b、1004c、および1004dは、偏光格子構造1001の主表面に対する法線に対して角度θで傾斜される格子光学軸を有する、傾斜された格子パターンを形成する。いくつかの実施形態では、理論によって限定されるわけではないが、そのような傾斜された格子パターンは、格子周期が、下記の方程式(1)における、波長λ、平均屈折率n、格子周期Λ(長さ1006’に対応する)、および格子構造の格子光学軸の傾斜角度θを伴う条件を満たすとき、法線入射光を高効率で回折し得る。

[図:0001415273000002.jpg]

・・・省略・・・

[0153] 本明細書に説明される液晶偏光格子構造の種々の実施形態は、紫外線、可視、および赤外線スペクトル範囲内の種々の波長を回折するように構成されてもよい。例えば、格子構造は、約300nm~約10μmの範囲内の波長を有する入射光を回折するように構成されることができる。いくつかの実施形態では、高回折角度を達成するために、格子構造の周期性Λは、入射光の波長とほぼ等しいまたはさらにそれより小さいことが望ましくあり得る。故に、格子構造の周期性Λは、格子構造が作用するように構成される波長範囲に応じて、約200nm~約100μmであってもよい。例えば、格子構造の周期性Λは、約200nm~約350nm、約330nm~約410nm、約370nm~約480nm、約450nm~約510nm、約500nm~約570nm、約550nm~約700nm、約650nm~約1μm、約980nm~約3μm、約1.3μm~約3.2μm、約2.3μm~約5μm、約5μm~約10μm、約5μm~約100μm、またはこれらの範囲または下位範囲内の任意の値であってもよい。好ましくは、ディスプレイ用途では、格子構造は、光が、広回折角度、例えば、その上に格子構造が形成され得る導波管内のTIRのために好適な角度で、格子構造から伝搬するように、可視光を回折するように構成される。

・・・省略・・・

[0155] いくつかの実施形態では、格子光学軸の傾斜角度θ(例えば、θ1、θ2、およびθ3)は、-85度~約85度の範囲内であってもよい。例えば、傾斜角度θは、-10度~約10度、-20度~約20度、-35度~約35度、-45度~約45度、-50度~約50度、-65度~約65度、-75度~約75度、またはこれらの範囲または下位範囲内の任意の値の範囲内であってもよい。好ましくは、スタックを形成する格子構造間の傾斜角度は、約0~±90度だけ異なり、約0~±10度、約±10度~±20度、約±20度~±30度、約±30度~±40度、約±40度~±50度、約±50度~±60度、約±60度~±70度、約±70度~±80度、または約±80度~±90度を含む。

・・・省略・・・

[0157] いくつかの実施形態では、格子構造スタックの格子構造の全ての全サブ層は、図10A、10B、11、12A、および12B-1に描写されるように、同一方向に偏移されてもよい。例えば、各サブ層の反復液晶分子ユニットは、同一側、例えば、左または右に偏移されてもよい。例えば、図12Aおよび12B-1に描写されるように、異なる偏光格子スタックの格子光学軸は全て、面法線の右に傾斜される。異なるサブ層の格子光学軸を同一側に傾斜させることは、図12C-1、12C-2、12D-1、および12D-2を参照して下記に説明されるように、より広範囲の入力角度にわたって回折効率を増加させることに有利であり得る。

・・・省略・・・

[0168] 有利には、各下層液晶層は、その下層と直接接触する上層液晶層のための整合層として作用してもよい。これは、簡略化された加工プロセスフローを提供することができ、また、液晶層間の界面におけるフレネル反射を低減させ得る。」

ウ 「WHAT IS CLAIMED IS
1. An optical device comprising:
a first polarization grating structure comprising:
a first plurality of liquid crystal sublayers comprising liquid crystal molecules, wherein the liquid crystal molecules form repeating units having a first periodicity along a lateral axis, and
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wherein the repeating units are laterally shifted by a first shift distance in comparison to similar repeating units of an immediately adjacent one of the first plurality of sublayers, wherein the repeating units shifted by the first shift distance define a first tilt angle with respect to a normal to the lateral axis, the normal extending along a thickness axis of the first polarization grating structure; and
a second polarization grating structure over the first polarization grating structure, the second polarization grating structure comprising:
a second plurality of liquid crystal sublayers comprising liquid crystal molecules, wherein the liquid crystal molecules form repeating units having a second periodicity along the lateral axis, and
wherein the repeating units are laterally shifted by a second shift distance in comparison to similar repeating units of an immediately adjacent one of the plurality of sublayers, wherein the repeating units shifted by the second shift distance define a second tilt angle with respect to the normal to the lateral axis,
wherein magnitudes of the first and second tilt angles are different.
・・・省略・・・
10. The device of Claim 1, further comprising a third polarization grating structure over the second polarization grating structure, the third polarization grating structure including a plurality of liquid crystal sublayers comprising liquid crystal molecules,
wherein the liquid crystal molecules form repeating units having a third periodicity,
wherein the repeating units are laterally shifted by a third shift distance in comparison to similar repeating units of an immediately adjacent one of the plurality of sublayers, wherein the repeating units shifted by the third shift distance define a third tilt angle with respect to the normal to the lateral axis,
wherein magnitudes of the first, second, and third tilt angles are different.
・・・省略・・・
22. A method for fabricating an optical device, the method comprising:
providing an alignment layer over a substrate;
patterning the alignment layer;
depositing a first liquid crystal layer on the alignment layer;
aligning liquid crystal molecules of the first liquid crystal layer with the alignment layer, thereby forming a first plurality of levels of repeating liquid crystal molecules defining a first tilt angle;
depositing a second liquid crystal layer on the first liquid crystal layers;
aligning liquid crystal molecules of the second liquid crystal layer with the liquid crystal molecules of an immediately underlying first liquid crystal layer, thereby forming a second plurality of levels of repeating liquid crystal molecules defining a second tilt angle;
wherein magnitudes of the first and second tilt angles differ.」

訳「特許請求の範囲

1.光学デバイスであって、

第1の偏光格子構造は、

液晶分子を備える第1の複数の液晶サブ層であって、前記液晶分子は、側方軸に沿って第1の周期性を有する反復ユニットを形成する第1の複数の液晶サブ層

を備え、前記反復ユニットは、前記第1の複数のサブ層のうちの1つに直ぐ隣接する類似反復ユニットと比較して、第1の偏移距離だけ側方に偏移され、前記第1の偏移距離だけ偏移される前記反復ユニットは、前記側方軸に対する法線に対して第1の傾斜角度を画定し、前記法線は、前記第1の偏光格子構造の厚さ軸に沿って延在する、第1の偏光格子構造と、

前記第1の偏光格子構造にわたる第2の偏光格子構造であって、前記第2の偏光格子構造は、

液晶分子を備える第2の複数の液晶サブ層であって、前記液晶分子は、前記側方軸に沿って第2の周期性を有する反復ユニットを形成する、第2の複数の液晶サブ層

を備え、前記反復ユニットは、前記複数のサブ層のうちの1つに直ぐ隣接する類似反復ユニットと比較して、第2の偏移距離だけ側方に偏移され、前記第2の偏移距離だけ偏移される前記反復ユニットは、前記側方軸に対する法線に対して第2の傾斜角度を画定する、第2の偏光格子構造と

を備え、

前記第1の傾斜角度および第2の傾斜角度の大きさは、異なる、デバイス。

・・・省略・・・

10.前記第2の偏光格子構造にわたる第3の偏光格子構造をさらに備え、前記第3の偏光格子構造は、液晶分子を備える複数の液晶サブ層を含み、

前記液晶分子は、第3の周期性を有する反復ユニットを形成し、

前記反復ユニットは、前記複数のサブ層のうちの1つに直ぐ隣接する類似反復ユニットと比較して、第3の偏移距離だけ側方に偏移され、前記第3の偏移距離だけ偏移される前記反復ユニットは、前記側方軸に対する法線に対して第3の傾斜角度を画定し、

前記第1、第2、および第3の傾斜角度の大きさは、異なる、

請求項1に記載のデバイス。

・・・省略・・・

22.光学デバイスを加工するための方法であって、前記方法は、

整合層を基板にわたって提供することと、

前記整合層をパターン化することと、

第1の液晶層を前記整合層上に堆積させることと、

前記第1の液晶層の液晶分子と前記整合層を整合させ、それによって、第1の複数のレベルの反復液晶分子を形成し、第1の傾斜角度を画定することと、

第2の液晶層を前記第1の液晶層上に堆積させることと、

前記第2の液晶層の液晶分子と第1の液晶層の直下の液晶分子を整合させ、それによって、第2の複数のレベルの反復液晶分子を形成し、第2の傾斜角度を画定することと

を含み、

前記第1の傾斜角度および第2の傾斜角度の大きさは、異なる、方法。」

エ 図10A

[図:0001415273000003.jpg]

オ 図10B

[図:0001415273000004.jpg]

カ 図11

[図:0001415273000005.jpg]

キ 図12A

[図:0001415273000006.jpg]

ク 図12B-1

[図:0001415273000007.jpg]

ケ 図12C-1

[図:0001415273000008.jpg]

コ 図12D-1

[図:0001415273000009.jpg]

サ 図13E

[図:0001415273000010.jpg]

シ 図14

[図:0001415273000011.jpg]

(2)引用発明

甲1には、請求項1に係る発明を引用する請求項10に係る発明として、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。

「 光学デバイスであって、
第1の偏光格子構造は、
液晶分子を備える第1の複数の液晶サブ層であって、前記液晶分子は、側方軸に沿って第1の周期性を有する反復ユニットを形成する第1の複数の液晶サブ層
を備え、前記反復ユニットは、前記第1の複数のサブ層のうちの1つに直ぐ隣接する類似反復ユニットと比較して、第1の偏移距離だけ側方に偏移され、前記第1の偏移距離だけ偏移される前記反復ユニットは、前記側方軸に対する法線に対して第1の傾斜角度を画定し、前記法線は、前記第1の偏光格子構造の厚さ軸に沿って延在する、第1の偏光格子構造と、
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前記第1の偏光格子構造にわたる第2の偏光格子構造であって、前記第2の偏光格子構造は、
液晶分子を備える第2の複数の液晶サブ層であって、前記液晶分子は、前記側方軸に沿って第2の周期性を有する反復ユニットを形成する、第2の複数の液晶サブ層
を備え、前記反復ユニットは、前記複数のサブ層のうちの1つに直ぐ隣接する類似反復ユニットと比較して、第2の偏移距離だけ側方に偏移され、前記第2の偏移距離だけ偏移される前記反復ユニットは、前記側方軸に対する法線に対して第2の傾斜角度を画定する、第2の偏光格子構造と
を備え、
前記第2の偏光格子構造にわたる第3の偏光格子構造をさらに備え、前記第3の偏光格子構造は、液晶分子を備える複数の液晶サブ層を含み、
前記液晶分子は、第3の周期性を有する反復ユニットを形成し、
前記反復ユニットは、前記複数のサブ層のうちの1つに直ぐ隣接する類似反復ユニットと比較して、第3の偏移距離だけ側方に偏移され、前記第3の偏移距離だけ偏移される前記反復ユニットは、前記側方軸に対する法線に対して第3の傾斜角度を画定し、
前記第1、第2、および第3の傾斜角度の大きさは、異なる、デバイス。」

2 本件特許発明10

(1)対比

本件特許発明10と引用発明とを対比する。

ア 光学異方性層

引用発明の「第1の偏光格子構造」は、「液晶分子を備える第1の複数の液晶サブ層であって、前記液晶分子は、側方軸に沿って第1の周期性を有する反復ユニットを形成する第1の複数の液晶サブ層を備え」、引用発明の「第2の偏光格子構造」は、「液晶分子を備える第2の複数の液晶サブ層であって、前記液晶分子は、側方軸に沿って第2の周期性を有する反復ユニットを形成する第2の複数の液晶サブ層を備え」、引用発明の「第3の偏光格子構造」は、「液晶分子を備える複数の液晶サブ層を含み、前記液晶分子は、第3の周期性を有する反復ユニットを形成」するものである。

そして、液晶分子が光学軸を有することは技術常識であることから、引用発明は、引用発明の「第1の偏光格子構造」、「第2の偏光格子構造」及び「第3の偏光格子構造」における液晶分子に由来の光学軸の向きが側方軸に沿って周期性を有する反復ユニットを形成するといえる。ここで、「側方軸に沿って」における「側方軸」とは、「光学デバイス」の面内の一方向を意味することは明らかである。

また、引用発明の「偏光格子構造」は「液晶分子を備える第1の複数の液晶サブ層であって、前記液晶分子は、側方軸に沿って第1の周期性を有する反復ユニットを形成する」ものである。ここで、甲1には「液晶格子構造は、液晶分子を含む液晶材料の複数のサブ層を備える。液晶分子の配向は、サブ層を横断して側方軸に沿って規則的インターバルで変動し、それによって、側方軸に沿って離間された伸長液晶分子の反復ユニットを形成する。」(上記1(1)イ[0084])と記載されている。一方、本件特許発明10の「連続的に回転しながら変化した面内配向パターン」とは、本件明細書の【0013】及び図1等の記載に照らせば、液晶化合物由来の光学軸の向きが一方向に沿って規則的インターバルで、すなわち、離散的に変動(変化)しているような面内配向パターンを含むと理解することができる。

そうすると、引用発明における「周期性を有する反復ユニットを形成する」とは、液晶分子(液晶化合物)に由来の光学軸の配向(向き)が、側方軸(少なくとも一方向)に沿って連続的に回転しながら変化した面内配向パターンを有することを意味しているといえる。さらに、引用発明の「第1の偏光格子構造」、「第2の偏光格子構造」及び「第3の偏光格子構造」は、それぞれ「複数のサブ層を備え」ることから、これらが層をなすことは明らかである。

以上によれば、引用発明の「第1の偏光格子構造」、「第2の偏光格子構造」及び「第3の偏光格子構造」は、いずれも本件特許発明10の「光学異方性層」に相当する。また、引用発明の「第1の偏光格子構造」、「第2の偏光格子構造」及び「第3の偏光格子構造」は、いずれも本件特許発明10の「光学異方性層」の「液晶化合物に由来の光学軸の向きが面内の少なくとも一方向に沿って連続的に回転しながら変化した面内配向パターンを有する」との要件を満たす。

イ 第1光学異方性層、第2光学異方性層及び第3光学異方性層

引用発明は、「第1の偏光格子構造」と、「前記第1の偏光格子構造にわたる第2の偏光格子構造」と、「前記第2の偏光格子構造にわたる第3の偏光格子構造をさらに備え」る。

上記アと上記構成からみて、引用発明の「第1の偏光格子構造」、「第2の偏光格子構造」及び「第3の偏光格子構造」は、それぞれ、本件特許発明10の「第1光学異方性層」、「第2光学異方性層」及び「第3光学異方性層」に相当する。

また、上記構成からみて、引用発明の「第1の偏光格子構造」、「第2の偏光格子構造」及び「第3の偏光格子構造」は、「第1の偏光格子構造」と隣接して配置されている「第2の偏光格子構造」を含み、「第1の偏光格子構造」及び「第2の偏光格子構造」とは異なる「第3の偏光格子構造」を含み、「第3の偏光格子構造」が「第2の偏光格子構造」と隣接しているといえる。

そうしてみると、引用発明の「第1の偏光格子構造」、「第2の偏光格子構造」及び「第3の偏光格子構造」は、本件特許発明10の「複数の光学異方性層」の、「前記第1光学異方性層と隣接して配置されている第2光学異方性層を含み」、「前記第1光学異方性層および前記第2光学異方性層とは異なる第3光学異方性層を含み」及び「前記第3光学異方性層が、前記第2光学異方性層と隣接しており」との要件を満たす。

ウ 光学素子

引用発明の「光学デバイス」は、「第1の偏光格子構造と」、「第2の偏光格子構造と」、「第3の偏光格子構造」を「備え」る。

上記ア及びイ並びに上記構成からみて、引用発明の「光学デバイス」は、本件特許発明10の「光学素子」に相当する。

また、引用発明の「光学デバイス」は、「第1の偏光格子構造と」、「第2の偏光格子構造と」、「第3の偏光格子構造」を厚さ方向に備えるといえる。そうしてみると、引用発明の「光学デバイス」は、本件特許発明10の「光学素子」の「光学異方性層を厚さ方向に複数備え」るとの要件を満たす。

(2)一致点及び相違点

上記(1)によると、本件特許発明10と引用発明は、

「 液晶化合物に由来の光学軸の向きが面内の少なくとも一方向に沿って連続的に回転しながら変化した面内配向パターンを有する光学異方性層を厚さ方向に複数備え、
前記複数の光学異方性層は、前記第1光学異方性層と隣接して配置されている第2光学異方性層を含み、
前記複数の光学異方性層は、前記第1光学異方性層および第2光学異方性層とは異なる第3光学異方性層を含み、
前記第3光学異方性層が、前記第2光学異方性層と隣接している、光学素子。」の点で一致し、以下の点で相違するか、一応相違する。

<相違点1>

「複数の光学異方性層」について、本件特許発明10は、「それぞれ、前記一方向において前記光学軸の向きが180°回転するまでの長さが互いに異なる複数の領域を有」するのに対して、引用発明の「第1の偏光格子構造」、「第2の偏光格子構造」及び「第3の偏光格子構造」は、この点が明らかでない点。

<相違点2>

「複数の光学異方性層」について、本件特許発明10は、「それぞれ、前記一方向に沿って前記厚さ方向に切断した断面を走査型電子顕微鏡で観察した断面像において、前記光学軸の向きに由来した明線および暗線の対を前記一方向に沿って複数有」するのに対して、引用発明の「第1の偏光格子構造」、「第2の偏光格子構造」及び「第3の偏光格子構造」は、この点が明らかでない点。

<相違点3>

「複数の光学異方性層のうちの1層である第1光学異方性層」について、本件特許発明10は、「前記複数の光学異方性層のうちの1層である第1光学異方性層は、前記断面像において前記明線および暗線の対が前記光学異方性層の界面の法線に対して互いに異なる傾き角度で傾いた領域を有する傾斜光学異方性層であ」るのに対して、引用発明の「第1の偏光格子構造」は、この点が明らかでない点。

<相違点4>

「第3光学異方性層」について、本件特許発明10は、「前記断面像において、前記明線および暗線の対が前記光学異方性層の界面の法線に対して互いに異なる傾き角度で傾いた領域を有する傾斜光学異方性層であ」るのに対して、引用発明の「第3の偏光格子構造」は、この点が明らかでない点。

<相違点5>

「第2光学異方性層」と「第3光学異方性層」について、本件特許発明10は、「前記断面像において、前記第2光学異方性層と前記第3光学異方性層との明線同士および暗線同士が両者の界面で繋がって」いるのに対して、引用発明の「第2の偏光格子構造」及び「第3の偏光格子構造」は、この点が明らかでない点。

<相違点6>

「第1光学異方性層」と「第3光学異方性層」について、本件特許発明10は、「前記断面像において、前記第1光学異方性層の前記明線および暗線の対と、前記第3光学異方性層の前記明線および暗線の対との、前記法線に対する傾き方向が異なる」のに対して、引用発明の「第1の偏光格子構造」及び「第3の偏光格子構造」は、このような構成でない点。

(3)判断

事案に鑑み、上記相違点6について検討する。

ア 本件明細書の【0021】及び【0023】等の記載によれば、相違点6に係る「明線および暗線」は、「液晶分子」の「光学軸の向きに由来した」もの、すなわち、光学軸の傾斜角度に由来したものと解される。そこで、甲1における「光学軸の傾斜角度」に関する記載について検討すると、甲1の[0155]には、「いくつかの実施形態では、格子光学軸の傾斜角度θ(例えば、θ1、θ2、およびθ3)は、-85度~約85度の範囲内であってもよい。例えば、傾斜角度θは、-10度~約10度、-20度~約20度、-35度~約35度、-45度~約45度、-50度~約50度、-65度~約65度、-75度~約75度、またはこれらの範囲または下位範囲内の任意の値の範囲内であってもよい。好ましくは、スタックを形成する格子構造間の傾斜角度は、約0~±90度だけ異なり、約0~±10度、約±10度~±20度、約±20度~±30度、約±30度~±40度、約±40度~±50度、約±50度~±60度、約±60度~±70度、約±70度~±80度、または約±80度~±90度を含む。」と記載されている。上記記載は、傾斜角度θが取り得る角度が例示されていることにとどまり、複数の偏光格子構造における格子光学軸の傾斜角度の方向が互いに異なることを示唆するとまではいえない。

また、甲1の[0157]には、「いくつかの実施形態では、格子構造スタックの格子構造の全ての全サブ層は、図10A、10B、11、12A、および12B-1に描写されるように、同一方向に偏移されてもよい。例えば、各サブ層の反復液晶分子ユニットは、同一側、例えば、左または右に偏移されてもよい。例えば、図12Aおよび12B-1に描写されるように、異なる偏光格子スタックの格子光学軸は全て、面法線の右に傾斜される。異なるサブ層の格子光学軸を同一側に傾斜させることは、図12C-1、12C-2、12D-1、および12D-2を参照して下記に説明されるように、より広範囲の入力角度にわたって回折効率を増加させることに有利であり得る。」と記載されていて、上記記載は、異なるサブ層の格子光学軸を同一側に傾斜させることが記載されていることにとどまり、複数の偏光格子構造における格子光学軸の傾斜角度の方向が互いに異なることを示唆するとまではいえない。

さらに、図11、12A、12B-1、12C-1、12D-1、13E及び14からも、複数の偏光格子構造の格子光学軸の傾斜角度の方向は同一であることが看取できる。そして、甲1のその他の記載を検討しても、複数の偏光格子構造の格子光学軸の傾斜角度の方向が異なることを示唆する記載はない。

以上によれば甲1には、ある偏光格子構造の明線および暗線の対が、別の偏光格子構造の明線および暗線の対との、偏光格子構造の界面の法線に対する傾き方向が異なることは、記載されているとはいえない。

そうすると、甲1には、上記相違点6に係る傾き方向を異ならせることは記載も示唆もない。引用発明において、上記相違点6に係る傾き方向を異ならせる動機付けはない。

イ 次に甲3の記載について検討する。

甲3の【0055】、【0060】及び図1C等には、2つの偏光回折格子層が逆のねじれ性を有していることが記載されている。しかしながら、甲3に記載された2つの偏光回折格子層は、そもそも本件特許発明10に係る傾斜光学異方性層ではないことから、本件特許明細書の【0043】の記載を参酌したとしても、上記相違点6に係る傾き方向が異なるものであるとはいえない。

また、上記相違点6に係る傾き方向を異ならせることは、他の甲号証にも記載されていない。

ウ 上記ア及びイより、引用発明において、上記相違点6に係る構成を採用する動機付けがあるとはいえず、その他の文献を検討しても判断は変わらない。

したがって、当業者であっても、上記相違点6に係る本件特許発明10の構成とすることが容易に想到し得たとはいえない。

(4)特許異議申立人に主張について

ア 特許異議申立人の主張の概要

特許異議申立人は、令和6年5月14日に提出された意見書において、「甲3には、互いに逆の捩じれ性を有する2つのツイスト偏光回折格子(PG)を組み合わせることで、広いスペクトル幅(広い波長範囲)にわたって、高い回折効率を示すことができること(例えば、可視波長域の大半において、高い回折効率を示すこと)、が記載されている。本件明細書の【0043】より、捩じれの方向は明暗線の法線に対する傾きに対応するため、甲3には、明暗線の法線に対する傾き方向が異なる光学異方性層を組み合わせることで、広いスペクトル幅(広い波長範囲)にわたって、高い回折効率を示すことができることが記載されている。・・・甲1の実施形態の一つである「複数の波長の光及び所定の光を回折する実施形態」において回折効率を良好にすることを考慮すれば、当業者は、甲1に記載された発明において、互いに異なる方向に傾く明線と暗線の対を備えるという相違点10の構成を採用する動機付けがあるといえる。」(当合議体注:「相違点10」は、上記相違点6のことである認められる。)(5頁5行~下から2行)、「FDTD法によるシミュレーションが様々な構造の偏光回折格子PGに対応できることは、甲3に記載されているように周知の事項である。」(6頁15行~17行)、「甲8には、FDTD法によるシミュレーションの解析対象になる構造の制限はほとんどないことが記載され、さらに、実際に様々な構造の回折格子を用いたFDTD法によるシミュレーション結果が記載されている。」(7頁14行~17行)、及び「FDTD法によるシミュレーションが様々な構造の偏光回折格子PGに対応できることは周知の事項であるから、第2光学異方性層を挟んで配置される第1光学異方性層と第3光学異方性層とが逆の捩じれ性を有する構成においてシミュレーションすることは当業者が適宜なし得ることである。また、当業者は、甲3の記載から、相違点10の構成により、広いスペクトル幅(広い波長範囲)にわたって高い回折効率を示すことができること、すなわち、回折効率を増加できることを予測できる。」(7頁下から2行~8頁5行)と主張している。

イ 特許異議申立人の主張についての判断

上記(3)イで示したとおり、甲3に記載された2つの偏光回折格子層は、そもそも本件特許発明10に係る傾斜光学異方性層ではなく、上記相違点6に係る傾き方向が異なるものではない。また、上記(3)アで示したとおり、甲1には、上記相違点6に係る構成(傾き方向を異ならせる構成)を採用する動機付けがあるとはいえないので、FDTD法によるシミュレーションがたとえ周知の事項であったとしても、進歩性についての上記(3)の判断に影響を及ぼすものではない。その余の点も、上記(3)で述べたとおりである。

そうしてみると、特許異議申立人の主張は、いずれも採用できない。

(5)小括

したがって、他の相違点について検討するまでもなく、当業者であっても、本件特許発明10は、引用発明に基づいて容易に発明をすることができたとはいえない。

3 本件特許発明11~21

本件特許発明11~21は、本件特許発明10の構成を全て具備するものであるから、本件特許発明11~21も、本件特許発明10と同じ理由により、当業者であっても、引用発明に基づいて容易に発明をすることができたとはいえない。

4 まとめ

本件特許発明10~21は、当業者であっても、甲1に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたとはいえない。

第6 むすび

本件特許10~21は、取消理由通知書に記載した取消しの理由及び特許異議申立書に記載された特許異議の申立ての理由によっては、取り消すことができない。

また、他に本件特許10~21を取り消すべき理由を発見しない。

そして、本件訂正請求により、請求項1~9は削除されたから、本件特許1~9についての特許異議の申立ての対象は存在しないこととなった。

したがって、本件特許1~9についての特許異議の申立ては、特許法120条の8第1項で準用する同法135条の規定により却下する。

よって、結論のとおり決定する。

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2023-700637

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