特許異議申立
2023-700604
ドライアイスブラスト装置
- 審判番号
- 2023-700604
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2019-147699
- 登録番号
- 7228098
- 請求日
- 2023年06月08日
- 審決日
- 2023年11月15日
- 公報発行日
- 2023年12月28日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】株式会社プロテリアル
- 【権利者代理人】名古屋国際弁理士法人
- 【異議申立人】高橋 愛佳
- 審判長/審判官
- 審判長 刈間 宏信
- 審判官 渋谷 善弘
- 審判官 田々井 正吾
- 分類
- P1651.113-Y (B24C) / P1651.121-Y (B24C) / P1651.537-Y (B24C)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第1項、特許法第36条第6項第1号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7228098号発明「ドライアイスブラスト装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7228098号の請求項1~8に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7228098号の請求項1~8に係る特許についての出願は、令和元年8月9日に出願され、令和5年2月15日にその特許権の設定登録がされ、令和5年2月24日に特許掲載公報が発行された。その後、その特許に対し、令和5年6月8日に特許異議申立人高橋愛佳(以下「申立人」という。)は、特許異議の申立てを行った。
第2 本件発明
特許第7228098号の請求項1~8の特許に係る発明(以下請求項○の特許に係る発明を「本件発明○」といい、まとめて「本件発明」ということがある。)は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1~8に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
「【請求項1】
ドライアイスと噴射気体とを共に噴射する噴射ノズルと、
前記噴射ノズルから噴射される前記ドライアイスを前記噴射ノズルに供給するドライアイス供給部と、
前記噴射ノズルから噴射される前記噴射気体を前記噴射ノズルに供給する噴射気体供給部と、
前記ドライアイス供給部内の相対湿度を調整するための乾燥気体を前記ドライアイス供給部内に供給する乾燥気体供給部と、
を備え、
前記ドライアイス供給部を内部に収納する筐体を備え、
前記乾燥気体供給部は、前記筐体の内部であって前記ドライアイス供給部の外部の周辺範囲に前記乾燥気体を供給する、ドライアイスブラスト装置。
【請求項2】
請求項1に記載のドライアイスブラスト装置であって、
前記ドライアイス供給部は、
前記ドライアイスを格納するドライアイス格納部と、
前記ドライアイス格納部から、前記噴射ノズルに前記ドライアイスを供給する流路を構成する供給管を有する、ドライアイスブラスト装置。
【請求項3】
請求項2記載のドライアイスブラスト装置であって、
前記供給管の外部の周囲範囲を囲う包囲部を有し、
前記乾燥気体供給部は、さらに当該包囲部に前記乾燥気体を供給する、ドライアイスブラスト装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載のドライアイスブラスト装置であって、
供給気体を、前記噴射気体として前記噴射気体供給部に、前記乾燥気体として前記乾燥気体供給部にそれぞれ供給する気体供給部を備える、ドライアイスブラスト装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載のドライアイスブラスト装置であって、
前記ドライアイス供給部の内部又は周辺の少なくとも一部の気体の相対湿度を測定する湿度測定部と、
前記湿度測定部により測定された前記相対湿度が大きくなるに従って、前記乾燥気体供給部における前記乾燥気体の供給量が大きくなるように前記乾燥気体供給部を制御する制御部と、
を更に備える、ドライアイスブラスト装置。
【請求項6】
請求項1から請求項5までのいずれか1項に記載のドライアイスブラスト装置であって、
前記筐体の内部の相対湿度は30%以下である、ドライアイスブラスト装置。
【請求項7】
請求項1から請求項5までのいずれか1項に記載のドライアイスブラスト装置であって、
前記筐体の内部の相対湿度は15%以下である、ドライアイスブラスト装置。
【請求項8】
請求項1から請求項7までのいずれか1項に記載のドライアイスブラスト装置であって、
前記乾燥気体は圧縮空気である、ドライアイスブラスト装置。」
第3 申立ての理由
1 申立人が特許異議申立書で主張する申立ての理由の概要
(1)理由1(新規性)[甲第1号証による新規性欠如]
請求項1~2、6~8に係る発明は、甲第1号証に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、請求項1~2、6~8に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。
(2)理由2(進歩性)[甲第1号証を主引用例とする進歩性欠如]
請求項1~2、6~8に係る発明は、甲第1号証に記載された発明に基いて、請求項4~5に係る発明は、甲第1号証、及び甲第2号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1~2、4~8に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
(3)理由3(進歩性)[甲第3号証を主引用例とする進歩性欠如]
請求項1~2、6~8に係る発明は、甲第3号証、及び甲第1号証に記載された発明に基いて、請求項4~5に係る発明は、甲第3号証、甲第1号証、及び甲第2号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1~2、4~8に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
(4)理由4(サポート要件)
本件請求項1~5、8に係る特許は、特許請求の範囲の記載が不備のため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
2 引用文献等一覧
(1)甲第1号証:特開2013-59711号公報
(2)甲第2号証:特開2014-206423号公報
(3)甲第3号証:特表昭62-502036号公報
第4 文献の記載
1 甲第1号証
(1)甲第1号証(以下「甲1」という。)の記載事項
ア 発明の詳細な説明
「【技術分野】
【0001】
本発明は、洗浄方法に係わり、特に、製品分解後の液晶表示パネルの各部材に対して、ドライエアーを用いてドライアイスペレットを吹き付けて、各部材の表面を洗浄する洗浄方法に関する。
・・・
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
・・・
本発明は、前記従来技術の問題点を解決するためになされたものであり、本発明の目的は、効率良く、UV樹脂をはがし取ることが可能なドライアイスペレットを用いた洗浄方法を提供することにある。
本発明の前記ならびにその他の目的と新規な特徴は、本明細書の記述及び添付図面によって明らかにする。
・・・
【0011】
[本発明の特徴]
本実施例では、例えば、図1に示す、フロントパネル(FW)と液晶表示パネル(LCD)とを貼り合せたハイブリッド製品において、点灯・外観検査において不良となった場合には、フロントパネル(FW)と液晶表示パネル(LCD)とを貼り合わせているUV樹脂(UVP)を接着面で分断し、液晶表示パネル(LCD)の上偏光板(POL2)と、フロントパネル(FW)の接着面に残っているUV樹脂(UVP)をドライアイスペレット用いて、除去することを特徴とする。
図3は、本発明の実施例のドライアイスペレットを用いた洗浄方法を説明するための模式機構図である。
図3において、100はドライアイスブラスト装置であり、このドライアイスブラスト装置100には、ドライエアー配管101を介してドライエアーが供給される。また、ドライアイスブラスト装置100のドライアイス投入口102から投入されたドライアイスペレットは、投入量制限装置103により、予め設定された量だけ、ドライアイスブラスト装置100に投入される。
ドライアイスブラスト装置100は、ドライエアーのエアー風量を調整し、ドライアイスペレットとドライエアーとを圧送ホース104に出力し、ノズル110から、固定治具120上に固定された洗浄対象物(図3では、液晶表示パネル(LCD);以下、単に対象物という)に吹き付ける。これにより、液晶表示パネル(LCD)の残留しているUV樹脂(UVP)を除去する。
除去されたUV樹脂(UVR)は、エアダクト配管107を介して吸引される空気と一緒に、エアダクト105から吸引され、フィルタ106で捕獲される。
・・・
【0016】
・・・
(5)ドライエアー露点
ドライエアーは、露点が、-60°C~-80°Cのドライエアーが最適である。ドライアイスの昇華温度は、-79°Cのため、露点温度が高いとドライアイスペレット(DPR)がノズル110から噴出する時に、ドライエアーに含まれる水分が結露する。そのため洗浄効率が低下する。
・・・」
イ 図面
【図3】
「
[図:0001404814000001.jpg]
」
(2)甲1の記載事項の整理
ア 段落【0011】の記載からみて、ノズル110が、洗浄対象物にドライアイスペレットとドライエアーとを吹き付ける。
イ 段落【0011】の記載からみて、ドライアイス投入口102及び投入量制限装置103は、ノズル110から吹き付けられるドライアイスペレットを、ノズル110に供給するものである。
ウ 段落【0011】の記載からみて、圧送ホース104は、ノズル110から吹き付けられるドライエアーをノズル110に供給するものである。
エ 段落【0011】の記載からみて、ドライエアー配管101はドライエアーをドライアイスブラスト装置100に供給するものであって、段落【0016】の記載からみて、その露点は水分が結露しない-60°C~-80°Cである。
そして、ドライアイスブラスト装置100内部には、ドライアイス投入口102及び投入量制限装置103を備えるが、ドライエアーがドライアイス投入口102及び投入量制限装置103に供給されているかまでは不明である。
オ 段落【0011】及び図3の記載からは、ドライエアー配管101は、ドライアイスブラスト装置100にドライエアーを供給するが、ドライアイス投入口102及び投入量制限装置103の外部の周辺範囲に供給されているかまでは不明である
(3)甲1に記載された発明
上記(1)~(2)より、甲1には次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されているといえる。
「ドライアイスペレットとドライエアーを吹き付けるノズル110と、
前記ノズル110から吹き付けられる前記ドライアイスペレットを前記ノズル110に供給するドライアイス投入口102及び投入量制限装置103と、
前記ノズル110から吹き付けられる前記ドライエアーを前記ノズル110に供給する圧送ホース104と、
水分が結露しない露点-60°C~-80°Cのドライエアーをドライアイスブラスト装置100に供給するドライエアー配管101と、
を備え、
前記ドライアイス投入口102及び投入量制限装置103を内部に備え、
前記ドライエアー配管101が、ドライエアーを供給する、ドライアイスブラスト装置100。」
2 甲第2号証
(1)甲第2号証(以下「甲2」という。)の記載事項
ア 発明の詳細な説明
「【技術分野】
【0001】
本発明は、構造物床面や壁面及び複雑な構造の機器や電気制御盤等に付着した放射性廃棄物等の各種汚染物質をドライアイスを用いて除染する除染システム及び除染方法に関する。
・・・
【0013】
本発明は、上述した各種の課題を解決して、長距離の除染対象に対しても円滑にドライアイスを供給して支障なく除染を行うことを可能としたドライアイスを用いた除染システム及び除染方法を提供することを目的とする。
・・・
【0023】
ドライアイス除染システムを構成する主たる要素は、大別してドライアイス供給装置11、乾燥圧縮空気供給装置12、ドライアイス移送ホース13、圧縮空気移送ホース14、ドライアイス噴射台車15、仮設電源16並びに制御部20から構成されている。
・・・
【0026】
乾燥圧縮空気供給装置12は、空気を圧縮するコンプレッサ21と、このコンプレッサ21からの圧縮空気中の水分を除去する除湿装置で構成され、一例としてメインテナンスフリーの中空糸膜乾燥装置22(例えば商品名マクダス)から構成されており、生成された高露点の圧縮乾燥空気は圧縮乾燥空気貯蔵部23に貯蔵される。なお、上記では乾燥装置として中空糸膜を用いたが、乾燥剤を用いた吸着方式でもよい。このように、ドライアイスを長距離移送し、更に後述する噴射により目的通りに的確な除染を行うためには、移送空気中の水分を極力除去することが重要である。
【0027】
水分除去が不十分な場合には、移送途中で大きな塊となってしまい、ドライアイス移送ホースを損傷させるのみならず他の機器を損傷させたり不具合を起こすこととなり、特に遠隔操作により無人で各種機器、部材を用いなければならないことから、除染自体を適正に継続することができなくなる。なお、本例では乾燥圧縮空気を用いているが、窒素でもよくこれらを総称して圧縮乾燥空気と総称している。
【0028】
ドライアイス供給装置11からのドライアイスは、ドライアイス移送装置24にて圧縮乾燥空気貯蔵部23からの圧縮空気によってドライアイス移送ホース13に圧送される。ドライアイス移送ホース13は、直径が概略30~50mmの高強度素材で作られており、このドライアイス移送ホース13には凍結防止が施されている。すなわち、ドライアイス移送ホース内に乾燥空気を供給したり、ホース外周面に断熱材を施す等の手段がある。また、ドライアイス移送ホースとしては、LNG(液化天然ガス)の移送にも用いられているような耐低温素材で生成されたホースが用いられている。
・・・
【0035】
ドライアイス噴射台車15は、遠隔操作による自走機構を備えており除染が必要な個所に制御部20からの指令によって走行可能となっている。ドライアイス噴射台車15にはドライアイストライアイス分離装置30が設置されている。このドライアイス分離装置30は、ドライアイス移送ホース13から移送されてくるドライアイスを粒径によって分離する機能を有している。すなわち、除染噴射に適した大きさのドライアイスと、所定の大きさに満たない微小になった物や粉体状になったドライアイスは閉塞要因となるので取り除く。そして噴射に適したドライアイスをドライアイス分離装置30の下方に設けられた収納部31に貯蔵する。
【0036】
ドライアイス分離装置30の構造の概略を図3を用いて説明する。ドライアイス移送ホース13から移送されてくるドライアイスは、投入口32からドライアイス分離装置30の内部に入る。投入口32の下方には振動する網目状のフィルタ33が設置されていて、このフィルタ33はいわゆる篩の機能を有している。
【0037】
投入口32から内部に投入されたドライアイスは、このフィルタ33の網目より小さい粒子はフィルタ33の下方に落下し、図には詳細を表示していないが、規格外の落下ドライアイスは気化させて消滅される。なお、このとき落下貯蔵された規格外のドライアイスの量が多い場合には、気化を促進させるために、自然気化に加えて加熱することもある。
【0038】
フィルタ33によって落下しない規格内の粒径を有するドライアイスは、図3の矢印34に示すように下方に設置されている収納部31内へ落下して下方の矢印36で示す圧縮乾燥空気によって図の右方へ圧送される。このようにして、図1に示すように、圧縮乾燥空気が圧縮乾燥空気貯蔵部23から圧縮空気移送ホース14を介して供給され、ドライアイス噴射ノズル装置35へドライアイスを移送する。また、図1に示す圧縮空気移送ホース14の特性、材質等は前述したドライアイス移送ホース13と同様であって、この圧縮空気移送ホース14においても途中に予備ホース巻回部27が設けられている。
【0039】
ドライアイス分離装置30の収納部31の下部には、炭酸ガスセンサ17が装着されていて、この炭酸ガスセンサ17は収納部31のドライアイスが落下する近傍の収納部内の炭酸ガス濃度を検出する。ドライアイス分離装置30が正常に機能している状態では、収納部31から選別されたドライアイスが下方へ落下して噴射ノズルへ送出される。
【0040】
しかしながら、時に収納部31内のドライアイスが塊状になってしまい、収納部31から下方へドライアイスが落下することなく詰まってしまう事態が招来することがある。また、作業終了後に収納部にドライアイスが残ると凍結する恐れがあり、残量確認が必要となる。このような事態のときに、収納部31に装着されている炭酸ガスセンサ17が収納部内部の炭酸ガス濃度が所定濃度以上に上昇したことを検知する。この炭酸ガス濃度上昇の信号は、制御部20に伝送され、制御部20からは遠隔制御によって、ドライアイス分離装置30へのドライアイスの供給を停止するとともに、ドライアイス分離装置30へは乾燥空気または加温した乾燥空気を供給して、収納部31内の詰まっているドライアイスを気化させて除去する。
・・・」
イ 図面
(ア)【図1】
「
[図:0001404814000002.jpg]
」
(イ)【図3】
「
[図:0001404814000003.jpg]
」
(2)甲2記載の技術的事項の整理
ア 段落【0023】、【0038】~【0039】、図1、3の記載からみて、ドライアイス噴射ノズル装置35は、ドライアイスと圧縮乾燥空気とを共に噴射する。
イ 段落【0035】、【0038】~【0039】、図1、3の記載からみて、ドライアイス分離装置30は、ドライアイス噴射ノズル装置35から噴射される前記ドライアイスを前記噴射ノズル装置35に供給する
ウ 段落【0023】、【0038】、図1、3の記載からみて、圧縮空気移送ホース14は、ドライアイス噴射ノズル装置35から噴射される圧縮乾燥空気をドライアイス噴射ノズル装置35に供給する。
エ 段落【0023】、【0026】~【0028】、【0035】~【0036】、【0040】、図1、3の記載からみて、ドライアイス移送ホース13は、ドライアイス分離装置30内のドライアイスの移送空気中の水分を除去する、又はドライアイス分離装置30下部の収納部31で詰まっているドライアイスを気化させて除去するための圧縮乾燥空気を前記ドライアイス分離装置30内に供給する。
(3)甲2記載の技術的事項
上記(1)~(2)より、甲2には次の技術的事項(以下「甲2記載の技術的事項」という。)が記載されているといえる。
「ドライアイスと圧縮乾燥空気とを共に噴射するドライアイス噴射ノズル装置35と、
前記ドライアイス噴射ノズル装置35から噴射される前記ドライアイスを前記噴射ノズル装置35に供給するドライアイス分離装置30と、
前記ドライアイス噴射ノズル装置35から噴射される前記圧縮乾燥空気を前記ドライアイス噴射ノズル装置35に供給する圧縮空気移送ホース14と、
前記ドライアイス分離装置30内のドライアイスの移送空気中の水分を除去する、又はドライアイス分離装置30下部の収納部31で詰まっているドライアイスを気化させて除去するための圧縮乾燥空気を前記ドライアイス分離装置30内に供給するドライアイス移送ホース13と、
を備える、ドライアイスを用いた除染システム。」
3 甲第3号証
(1)甲第3号証(以下「甲3」という。)の記載事項
ア 発明の詳細な説明
(ア)「図面に示すドライアイスまたは二酸化炭素アイス吹付け装置は、粉砕機1と、この粉砕機にドライアイス片を供給する装置2と、計量装置3と、噴射装置5が設けられた媒質ガス導管4と、湿気から保護するためのカバー6とを主として具える。吹付け装置の素子1~5は地面7に固定された金属枠(図示せず)上に取付けられ、地面はカバー6をも支持している。」(第2ページ左下欄第11~17行)
(イ)「粉砕機1はロッド式粉砕機である。この粉砕機は上端開放の上方供給ホッパー8と下端開放の下方出口導管9とを具えている。
供給装置2はコンベヤベルト10と、振動シュート11とを具え、この振動シュート11はシリンダー装置12によって上昇させることができ、シュート出口はホッパー8の上方に位置されている。計量装置3は粒子タンク11を具え、タンク下端にほぼ水平の出口管32が設けられている。スプリングスクリュー13が出口管と同一軸線でタンク31の下部に貫通して出口管12の開放出口端14にまで延長して設けられている。モーター15がスクリュー13およびタンク内に設けられた攪拌羽根16を駆動して回転するよう設けられている。他のモーター17が設けられ、このモーターの出力軸18の軸端部はフォーク形状を有して開放出口端14からスクリュー13の端部の内側にまで同軸的に延長している。
タンク11は可撓性部分19を介して振動ホッパー20の下端に連結されている。ホッパー20の入口開口は粉砕機の出口管と同一軸線上で下方に離間され、すなわち、粉砕機とホッパー20とは接触していない。」(第2ページ左下欄第18行~右下欄第13行)
(ウ)「媒質ガス導管4は、例えば、加圧COガスのような媒質ガス源(図示せず)に接続された上流管21と、可撓ホースによって形成された下流管22とを具え、下流管22の内側は平滑で、管端に剛性のノズル管23が取付けられている。導管4の管21および23は噴射装置5を介して互に接続されており、噴射装置5は第2図に示す詳細構造を有する。」(第2ページ右下欄第14~20行)
(エ)「噴射装置5はT字管継手を具え、その上方に延長する部分には入口漏斗24が取付けられている。T字管継手の下部の出口管部分はホース22に直接に接続されており、他方、下部入口管部分はエジェクターを経て管21に接続されている。エジェクターは大径の入口孔26と小径の出口孔27とを有する端部材25によって構成されている。第1人口孔26には内側ねじが形成されていて管21の管端に螺合され、第2の出口孔27には噴射ノズル28の上流端が固着され、噴射ノズルの下流端は漏斗24の軸線上に位置されている。漏斗24の下入口端は出口管12の出口開口14の下方に位置し、出口管12から離間され、すなわち、出口管に接触していない。」(第2ページ右下欄第21行~第3ページ左上欄第8行)
(オ)「上方ホッパー8およびホース22を除く全ての装置素子をカバー6が包囲しており、ホース22は適当なシールを経てカバー6を貫通し、供給装置2は完全にカバーの外側に設けられている。」(第3ページ左上欄第9~12行)
(カ)「作動に際し、ドライアイス片を製造する機械(図示せず)からドライアイス片がベルト10の上流端(図示せず)上に供給される。これらのドライアイス片は、例えば、直径が15mm程度で、長さが25mm程度の小さい棒形状を有する。このような棒状のドライアイスは極めて確実な方法で製造することができるが、大きすぎてドライアイス吹付け用に直接に用いることはできない。
ベルト10からドライアイス片はシュート11内に重力作用で落下して送入され、シュート11の下降した作動位置において、ドライアイス片はシュート11から重力作用によって粉砕機1のホッパー8内に落下する。粉砕機1において、ドライアイス片は極めてギザギザした小粒子に粉砕され、その寸法は、例えば、予定の用途に対して、約0.5mmから約1.5mmの範囲の種々の大きさを有する。これらの小粒子は重力作用によって振動中のホッパー20内に落下し、攪拌羽根16によって攪拌される。スプリングスクリュー13はドライアイス粒子を予定流量で出口管32の開口14から送出するよう駆動回転される。軸18の反対方向への回転によって開口14におけるスプリングのピッチに対応する粒子の固り(当審注:「固り」は「固まり」の誤記と認める。)の形成を防止する。このようにして、粒子は規則正しい流れで漏斗24内に落下する。
ノズル28から高速で噴出された媒質ガスは漏斗24内に負圧を生じ、これにより粒子はベンチュリー効果によってガス流中に流入する。」(第3ページ左上欄第13行~右上欄第13行)
(キ)「上述の構成を具える本発明による吹付け装置は完全に満足すべきものである。驚くべきことに、ドライアイス粒子がホッパー20およびタンク11内でブリッジ現象を生じないことが確められた。噴射粒子の流量は一定であり、極めて高い接着力を有する塗料が塗布された金属板を極めて良好な状態で清掃することが可能であり、金属板の表面に傷をつけることなく光沢のある外観に仕上げることができる。さらにまた、粉砕機の部分で主として生じたと考えられるCO2の損失は5%程度で、許容し得るものである。さらに、装置を寒冷状態にするまでの間に、ドライアイスの昇華により乾燥したCO2ガスが発生し、このガスは空気より重いので、カバー6内に徐々に充満し、カバー6の上端開口29から溢流するまでに、カバー6内から空気および湿気を追い出し、カバーと、特に、ホース22および粉砕機1との曲の間隙を経て外部に流出する量は極めて僅かである。これがため、二酸化炭素アイスの粒子が周りの雰囲気に露出される装置の部分の全て(ホッパー20、開口14、漏斗24)は大気圧近くの圧力下の乾燥CO2の雰囲気下に維持され、粒子内部に湿気が入り込むのを防止している。」(第3ページ右上欄第14行~左下欄第9行)
イ 図面
(ア)図1
「
[図:0001404814000004.jpg]
」
(イ)図2
「
[図:0001404814000005.jpg]
」
(2)甲3の記載事項の整理
ア 上記(1)ア(ア)、(ウ)、(エ)、(カ)の記載、及び図1~2の図示内容からみて、ノズル管23は、ドライアイス粒子と媒質ガスとを共に噴射する。
イ 上記(1)ア(ア)、(イ)(カ)の記載、及び図1の図示内容からみて、ノズル管23から噴射される前記ドライアイス粒子は、ホッパー20、タンク11、スプリングスクリュー13、及び漏斗24により、ノズル管23に供給する。
ウ 上記(1)ア(ア)、(ウ)、(エ)、(カ)の記載、及び図1~2の図示内容からみて、噴射装置5は、ノズル管23から噴射される前記媒質ガスを前記ノズル管23に供給する。
エ 上記(1)ア(オ)の記載、及び図1の図示内容からみて、カバー6は、上方ホッパー8およびホース22を除く全ての装置素子を包囲する。
(3)甲3に記載された発明
上記(1)~(2)より、甲3には次の発明(以下「甲3発明」という。)が記載されているといえる。
「ドライアイス粒子と媒質ガスとを共に噴射するノズル管23と、
前記ノズル管23から噴射される前記ドライアイス粒子を前記ノズル管23に供給するホッパー20、タンク11、スプリングスクリュー13、及び漏斗24と、
前記ノズル管23から噴射される前記媒質ガスを前記ノズル管23に供給する噴射装置5と、
を備え、
上方ホッパー8およびホース22を除く全ての装置素子を包囲するカバー6を備える、ドライアイス粒子の投射装置。」
第5 当審の判断
1 理由1(甲1による新規性欠如)
(1)本件発明1
ア 本件発明1と甲1発明の対比
(ア)甲1発明の「ドライアイスペレット」は本件発明1の「ドライアイス」に相当し、以下同様に「ドライエアー」は「噴射気体」に、「吹き付ける」は「噴射する」に、「ノズル110」は「噴射ノズル」に、「ドライアイス投入口102及び投入量制限装置103」は「ドライアイス供給部」に、「圧送ホース104」は「噴射気体供給部」に、「ドライアイスブラスト装置100」は「ドライアイスブラスト装置」に、それぞれ相当する。
(イ)甲1発明の「水分が結露しない露点-60°C~-80°Cのドライエアーをドライアイスブラスト装置100に供給する」ことと、本件発明1の「前記ドライアイス供給部内の相対湿度を調整するための乾燥気体を前記ドライアイス供給部内に供給する」ことを対比すると、両者は「乾燥気体を供給する」という点に限り一致する。
そして、甲1発明の「ドライエアー配管101」は本件発明1の「乾燥気体供給部」に相当する。
(ウ)甲1の図1の図示内容から、ドライアイスブラスト装置100は筐体が看取され、その内部に「ドライアイス投入口102及び投入量制限装置103」を備えており、甲1発明の「ドライアイス投入口102及び投入量制限装置103」は本件発明1の「ドライアイス供給部」に相当するから、甲1発明の「前記ドライアイス投入口102及び投入量制限装置103を内部に備え」ることは、本件発明1の「前記ドライアイス供給部を内部に収納する筐体を備え」ることに相当する。
そうすると、本件発明1と甲1発明は以下のイの点で一致し、ウの点で相違する。
イ 一致点
ドライアイスと噴射気体とを共に噴射する噴射ノズルと、
前記噴射ノズルから噴射される前記ドライアイスを前記噴射ノズルに供給するドライアイス供給部と、
前記噴射ノズルから噴射される前記噴射気体を前記噴射ノズルに供給する噴射気体供給部と、
乾燥気体を供給する乾燥気体供給部と、
を備え、
前記ドライアイス供給部を内部に収納する筐体を備え、
前記乾燥気体供給部は、前記筐体に前記乾燥気体を供給する、ドライアイスブラスト装置。
ウ 相違点
本件発明1の乾燥気体供給部が、「前記ドライアイス供給部内の相対湿度を調整するための乾燥気体を前記ドライアイス供給部内に供給」し、かつ、「前記筐体の内部であって前記ドライアイス供給部の外部の周辺範囲に前記乾燥気体を供給する」のに対して、甲1発明の乾燥気体供給部(ドライエアー配管101)は、乾燥気体を筐体には供給しているものの、ドライアイス供給部内の相対湿度を調整するためにドライアイス供給部内に供給し、かつドライアイス供給部の外部の周辺範囲に供給しているか否かが不明である点。
エ 新規性の検討
したがって、本件発明1と甲1発明には、相違点が存在するから、本件発明1と甲1発明は同一では無く、本件発明1は甲1に記載された発明ではない。
(2)本件発明2、6~8
本件発明2、6~8は、本件発明1に対して、さらに技術的事項を追加したものである。よって、上記(1)に示した理由と同様の理由により、本件発明2、6~8は、甲1発明と同一では無く、甲1に記載された発明ではない。
(3)小括
以上のとおりであるから、本件発明1~2、6~8に係る特許は、理由1によっては取り消すことはできない。
2 理由2(甲1を主引用例とする進歩性欠如)
(1)本件発明1
ア 本件発明1と甲1発明の一致点及び相違点
本件発明1と甲1発明は、上記1(1)イの点で一致し、同ウの点で相違する。
イ 相違点の検討
(ア)甲2記載の技術的事項の「ドライアイス分離装置30」は本件発明1の「ドライアイス供給部」に相当し、以下同様に、「圧縮乾燥空気」は「噴射気体」に、「ドライアイス移送ホース13」は「乾燥気体供給部」にそれぞれ相当する。
また、甲2記載の技術的事項の「前記ドライアイス分離装置30内のドライアイスの移送空気中の水分を除去する、又はドライアイス分離装置30下部の収納部31で詰まっているドライアイスを気化させて除去するための圧縮乾燥空気」は、本件発明1の「ドライアイス供給部内の相対湿度を調整するための乾燥気体」に相当すると言えるから、甲2記載の技術的事項の乾燥気体供給部(ドライアイス移送ホース13)は、本件発明1と同様に「ドライアイス供給部(ドライアイス分離装置30)内の相対湿度を調整するための乾燥気体(圧縮乾燥空気)を前記ドライアイス供給部(ドライアイス分離装置30)内に供給」しているものであることが認められる。
しかしながら、甲2記載の技術的事項は、本件発明1の「ドライアイス供給部を内部に収納する「筐体」を備えていないことから、筐体の内部に乾燥気体を供給しておらず、また、ドライアイス供給部の外部の周辺範囲に乾燥気体を供給しているものでもなく、すなわち、本件発明1のように「筐体の内部であって前記ドライアイス供給部の外部の周辺範囲に前記乾燥気体を供給する」ことにより、本件発明1の流路の外部において断熱層の役割をする氷霜100dの発生を抑制することで、流路の内部が詰まることを抑制する(本件明細書段落【0064】)という技術的思想を何ら開示しているものとはいえない。
そうすると、甲1発明に、甲2記載の技術的事項を適用しても、上記相違点に係る本件発明1の発明特定事項は、当業者が容易に想到し得たものとはいえない。
(イ)したがって、本件発明1が、甲1発明、及び甲2記載の技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(ウ)なお、甲3発明についてみても、甲3発明は、乾燥気体供給部に相当する構成自体を備えておらず(下記の3(1)ウ)、仮に、甲1発明に適用しても相違点1に係る本件発明1の発明特定事項を欠き、本件発明1に至ることがないことは明らかである。
(2)本件発明2、4~8
本件発明2、4~8は、本件発明1に対して、さらに技術的事項を追加したものである。よって、上記(1)に示した理由と同様の理由により、本件発明2、4~8は、甲1発明、及び甲2記載の技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(3)小括
以上のとおり、本件発明1~2、4~8に係る特許は、理由2によっては取り消すことはできない。
3 理由3(甲3を主引用例とする進歩性欠如)
(1)本件発明1
ア 本件発明1と甲3発明の対比
(ア)甲3発明の「ドライアイス粒子」は本件発明1の「ドライアイス」に、「媒質ガス」は「噴射気体」に、「ノズル管23」は「噴射ノズル」にそれぞれ相当する。
(イ)甲3発明の「ホッパー20、タンク11、スプリングスクリュー13、及び漏斗24」は本件発明1の「ドライアイス供給部」に、同様に「噴射装置5」は「噴射気体供給部」に相当する。
(ウ)甲3発明の「上方ホッパー8およびホース22を除く全ての装置素子を包囲するカバー6」は、カバー6が包囲するものに上記(イ)の「ホッパー20、タンク11、スプリングスクリュー13、及び漏斗24」が含まれていることから、本件発明1の「ドライアイス供給部を内部に収納する筐体」に相当する。
したがって、本件発明1と甲3発明は、次のイの点で一致し、ウの点で相違する。
イ 一致点
ドライアイスと噴射気体とを共に噴射する噴射ノズルと、
前記噴射ノズルから噴射される前記ドライアイスを前記噴射ノズルに供給するドライアイス供給部と、
前記噴射ノズルから噴射される前記噴射気体を前記噴射ノズルに供給する噴射気体供給部と、
を備え、
前記ドライアイス供給部を内部に収納する筐体を備える、ドライアイスブラスト装置。
ウ 相違点
本件発明1が、「前記ドライアイス供給部内の相対湿度を調整するための乾燥気体を前記ドライアイス供給部内に供給」し、かつ「前記筐体の内部であって前記ドライアイス供給部の外部の周辺範囲に前記乾燥気体を供給する」「乾燥気体供給部」を備えるのに対して、甲3発明は乾燥気体供給部に相当する技術的手段を備えない点。
エ 相違点の検討
(ア)副引用例としての甲1発明のアイスブラスト装置100は、「前記ドライアイス投入口102及び投入量制限装置103を内部に備え、前記ドライエアー配管101が、ドライエアーを供給する」ものである。
したがって、甲1発明の乾燥気体供給部(ドライエアー配管101)は、筐体に乾燥気体(ドライエアー)を供給する点では本件発明1と一致しているものの、「前記ドライアイス供給部内の相対湿度を調整するための乾燥気体を前記ドライアイス供給部内に供給」するものかどうかは明らかでなく、また、「前記ドライアイス供給部の外部の周辺範囲に前記乾燥気体を供給する」ものかどうかも明らかではないから、仮に甲3発明に甲1発明を適用したとしても、上記相違点において本件発明1を特定する事項を充足しない。
また、甲3発明は、上記第4の3(1)ア(キ)の記載からみて、「ドライアイスの昇華により発生する乾燥したCO2」ガスにより、「二酸化炭素アイスの粒子が周りの雰囲気に露出される装置の部分の全て(ホッパー20、開口14、漏斗24)は大気圧近くの圧力下の乾燥CO2の雰囲気下に維持され、粒子内部に湿気が入り込むのを防止」するのであるから、別途、甲1発明の乾燥気体供給部(ドライエアー配管101)を適用する動機も存在しない。
(イ)甲2記載の技術的事項についても、乾燥気体供給部(ドライアイス移送ホース13)は、「ドライアイス供給部内の相対湿度を調整するための乾燥気体を前記ドライアイス供給部内に供給」するといえる(上記2(1)イ(ア))ものの、「筐体の内部であって前記ドライアイス供給部の外部の周辺範囲に前記乾燥気体を供給する」ものではないから、仮に甲3発明に甲2記載の技術的事項を適用したとしても、上記相違点において本件発明1を特定する事項を充足しない。
また、甲3発明について、上記(ア)と同様に、別途、甲2記載の技術的事項の乾燥気体供給部(ドライアイス移送ホース13)を適用する動機も存在しない。
(ウ)よって、甲3発明に、甲1発明、あるいは甲2記載の技術的事項を適用しても、本件発明1を特定する事項を充足せず、また、適用する動機も存在しないから、本件発明1が、甲3発明、甲1発明、あるいは甲2記載の技術的事項から容易に想到し得たものとはいえない。
(2)本件発明2、4~8
本件発明2、4~8は、本件発明1に対して、さらに技術的事項を追加したものである。よって、上記(1)に示した理由と同様の理由により、本件発明2、4~8は、甲3発明、及び甲2記載の技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(3)小括
以上のとおり、本件発明1~2、4~8に係る特許は、理由3によっては取り消すことはできない。
4 理由4(サポート要件)
(1)理由の内容
理由4の具体的な内容は以下のとおりである。
本件発明1~5、8は、「ドライアイス供給部の内部に含まれるドライアイス粒が通る流路の詰まりを低減したドライアイスブラスト装置を提供すること」(本件発明の詳細な説明の段落【0009】)を目的(課題)としている。
そして、本件発明の詳細な説明には、段落【0059】に、「・・・装置内湿度(RH%)が20%の場合では、詰まり率が33%であり、詰まりが生じる可能性がある。さらに、装置内湿度(RH%)が35%以上の場合では、詰まり率が100%であり、すなわち必ず詰まりが生じるとの実験結果が得られた。」と記載されている。
他方、請求項1~5、8では、筐体の内部の相対湿度が規定されていないので、相対湿度35%以上の場合、すなわち課題解決できない発明を含んでおり、請求項1~5、8に係る特許の発明は、発明の詳細な説明に記載された、課題を解決するための手段が反映されていないため、発明の詳細な説明に記載した範囲を超えており、サポート要件を充足していない。
(2)理由の検討
上記(1)で申立人が言及している本件発明の詳細な説明の段落【0059】には、本件発明に関し、装置内湿度(RH%)が35%以上の場合では、必ず詰まりが生じるとの実験結果が記載され、また、段落【0045】には、この実験結果に基づき、具体的には、筐体10a内部の相対湿度が30%以下あるいは15%以下となるように保つような相対湿度を有する乾燥空気を供給することが記載されている。
これに対して、本件発明の詳細な説明の段落【0011】には、「このような構成によれば、ドライアイス供給部内に乾燥気体が供給されることにより、相対湿度が調整される結果、ドライアイス供給部の内部におけるドライアイス周辺の気体が冷やされ、当該気体に含まれる水蒸気に由来する氷や霜が発生することを抑制することができる。これにより、ドライアイス供給部の内部に含まれるドライアイス粒が通る流路内の詰まりを低減することができる。」と記載されており、本件発明のドライアイスブラスト装置が、「前記ドライアイス供給部内の相対湿度を調整するための乾燥気体を前記ドライアイス供給部内に供給する乾燥気体供給部」を備えることにより、上記段落【0009】記載の課題を解決するものであることが認識される。
そうすると、上記段落【0059】の装置内湿度(RH%)が35%以上であっても、本件発明1~5、8のドライアイスブラスト装置が「前記ドライアイス供給部内の相対湿度を調整するための乾燥気体を前記ドライアイス供給部内に供給する乾燥気体供給部」により、装置内湿度を低下させて課題を解決できることが発明の詳細な説明には記載されているといえる一方で、「筐体の内部の相対湿度は30%以下である」こと、あるいは「筐体の内部の相対湿度は15%以下である」ことは、当該ドライアイスブラスト装置を動作させる上での目標値であって、課題を解決するための直接的な手段ではない。
さらに、例えば、段落【0033】の「コンプレッサ21は、コンプレッサ21の外部から空気を吸気し、吸気した空気を圧縮し、圧縮された空気である圧縮空気を冷却して凝集された水分を除湿し、除湿された圧縮空気を噴射空気供給チューブ22及び第1乾燥空気供給チューブ23aに供給する。」の記載、あるいは段落【0045】の「コンプレッサ21は、空気を圧縮し、圧縮空気である噴射空気を噴射空気供給チューブ22に、乾燥空気を第1乾燥空気供給チューブ23aに供給する。圧縮空気は、圧縮空気の温度と筐体10aの内部の温度を同じとしたときの相対湿度が筐体10aの内部の相対湿度に比べ低くなるように、コンプレッサ21が外部の空気を圧縮する。」の記載から、当業者は、本件発明のドライアイスブラスト装置が、コンプレッサ21の制御により、筐体の内部の相対湿度は30%以下、あるいは15%以下にして課題を解決できることを理解できるから、本件発明1~5、8について、筐体の内部の相対湿度に関する事項が反映されていないことにより発明の詳細な説明に記載した範囲を超えているとする根拠を見出すことができない。
(3)小括
したがって、本件発明1~5、8は、課題を解決するための手段が反映されているから、請求項1~5、8に係る特許は、理由4によっては取り消すことができない。
第6 むすび
以上のとおりであるから、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、請求項1~8に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1~8に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2023-700604