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特許異議申立

2020-700570

硬質脆性材料製の被処理成品の表面加工方法

審判番号
2020-700570
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2018-050629
登録番号
6646700
請求日
2020年08月07日
審決日
2022年09月28日
公報発行日
2023年01月27日
結論
訂正認容
当事者
  • 【権利者】株式会社不二製作所
  • 【権利者代理人】特許業務法人小倉特許事務所
  • 【異議申立人】株式会社 レクレアル
  • 【異議申立人代理人】松浦 孝
審判長/審判官
  • 審判長 刈間 宏信
  • 審判官 河端 賢
  • 審判官 田々井 正吾
分類
P1651.121-YAA(B24C) / P1651.537-YAA(B24C)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第120条の5第2項、特許法第120条の5第9項、特許法第36条第6項第2号、特許法第36条第6項第1号、特許法第120条の5第4項、特許法第29条第2項
データ出所
審決公報(XML)

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特許第6646700号発明「硬質脆性材料製の被処理成品の表面加工方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第6646700号の明細書及び特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-3〕について訂正することを認める。 特許第6646700号の請求項1-3に係る特許を維持する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第6646700号の請求項1-3に係る特許についての出願は、平成30年3月19日に出願され、令和2年1月15日にその特許権の設定登録がされ、令和2年2月14日に特許掲載公報が発行された。本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。 令和2年8月7日 :特許異議申立人株式会社レクレアル(以下、「 特許異議申立人」という。による請求項1-3 に係る特許に対する特許異議の申立て 令和2年10月29日付け:取消理由通知書 令和2年12月25日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の提出 令和3年2月24日 :特許異議申立人による意見書の提出 令和3年4月28日 :特許権者と審判合議体との面接 令和3年6月30日付け :取消理由通知書(決定の予告) 令和3年8月31日 :特許権者による意見書及び訂正請求書(以下、 この訂正請求書による訂正請求を「本件訂正請 求」という。)の提出 令和3年11月11日 :特許異議申立人による意見書の提出 令和4年3月31日付け :特許異議申立人に対する審判合議体による審尋 令和4年4月19日 :特許異議申立人による回答書の提出 第2 訂正の適否 1 訂正の内容 (1) 訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1の 「前記凹凸形状に形成された前記被処理成品の表面に対し,低反発弾性の弾性体に前記凹部の前記幅よりも粒径の小さい砥粒を担持させた構造の弾性研磨材を使用した第2のブラスト加工を行うことにより, 前記第1のブラスト加工によって形成した前記凹凸形状を維持したまま,前記被処理成品の前記凸部及び凹部の表面を算術平均粗さRa1.6μm以下に研磨すると共に,前記凸部の上面の端部に形成されたエッジに半径R10μm以上の丸み付けを行うことを特徴とする」を、 「前記凹凸形状に形成された前記被処理成品の表面に対し,低反発弾性の弾性体に前記凹部の前記幅よりも粒径の小さい砥粒を担持させた構造の弾性研磨材を使用した第2のブラスト加工を,所定の傾斜した角度で前記被処理成品の表面上の各部に対し,平面視において少なくとも4方向より噴射して行うことにより,前記第1のブラスト加工によって形成した前記凹凸形状を維持したまま,前記被処理成品の前記各凸部及び各凹部の表面全体を算術平均粗さRa1.6μm以下に研磨すると共に,前記各凸部の上面の端部に形成されたエッジに元の半径Rよりも大きい半径R10μm以上の丸み付けを行うことを特徴とする」 に訂正する。(請求項1の記載を引用する請求項2及び3も同様に訂正する。) (2) 訂正事項2 特許請求の範囲の請求項2の 「前記第1のブラスト加工によって,平坦な上面を有する前記凸部を形成し, 前記第2のブラスト加工によって,前記凸部の前記平坦な上面の端部に形成されたエッジにR10μm以上の丸みを付けることを特徴とする」を、 「前記第1のブラスト加工によって,平坦な上面を有する前記各凸部を形成し, 前記第2のブラスト加工によって,前記各凸部の前記平坦な上面の端部に形成されたエッジに前記半径R10μm以上の丸み付けを行うことを特徴とする」 に訂正する。(請求項2の記載を引用する請求項3も同様に訂正する。) なお、本件訂正請求による訂正前の請求項1-3について、訂正前の請求項2-3は、訂正前の請求項1を直接的又は間接的に引用しているものであって、訂正事項1によって訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。 したがって、訂正前の請求項1-3に対応する請求項1-3は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項であり、本件訂正請求の訂正事項1-2は、この一群の請求項について請求されたものである。 (3) 訂正事項3 明細書の段落【0028】の 「前記凹凸形状に形成された前記被処理成品の表面に対し,低反発弾性の弾性体に前記凹部の前記幅wよりも粒径の小さい砥粒を担持させた構造の弾性研磨材を使用した第2のブラスト加工を行うことにより,前記第1のブラスト加工によって形成した前記凹凸形状を維持したまま,前記被処理成品の前記凸部21及び凹部24の表面を算術平均粗さRa1.6μm以下に研磨すると共に,前記凸部の上面の端部に形成されたエッジに半径R10μm以上の丸み付けを行うことを特徴とする(請求項1) 。」を、 「前記凹凸形状に形成された前記被処理成品の表面に対し,低反発弾性 の弾性体に前記凹部の前記幅wよりも粒径の小さい砥粒を担持させた構造の弾性研磨材を使用した第2のブラスト加工を,所定の傾斜した角度で前記被処理成品の表面上の各部に対し,平面視において少なくとも4方向より噴射して行うことにより,前記第1のブラスト加工によって形成した前記凹凸形状を維持したまま,前記被処理成品の前記各凸部21及び各凹部24の表面全体を算術平均粗さRa1.6μm以下に研磨すると共に,前記各凸部の上面の端部に形成されたエッジに元の半径Rよりも大きい半径R10μm以上の丸み付けを行うことを特徴とする(請求項1) 。」 に訂正する。 (4) 訂正事項4 明細書の段落【0029】の 「前記第1のブラスト加工によって,平坦な上面22を有する前記凸部21を形成する場合,前記第2のブラスト加工によって, 前記凸部21の前記平坦な上面22の端部に形成されたエッジeにR10μm以上の丸みを付けることが好ましい(請求項2) 。」を、 「前記第1のブラスト加工によって,平坦な上面22を有する前記各凸部21を形成する場合,前記第2のブラスト加工によって,前記各凸部21の前記平坦な上面22の端部に形成されたエッジeに前記半径R10μm以上の丸み付けを行うことが好ましい(請求項2) 。」 に訂正する。 なお、明細書に係る訂正である上記訂正事項3は請求項1について、上記訂正事項4は請求項2について行われるものである。 2 訂正の目的の適否 (1) 訂正事項1について ア 「第2のブラスト加工を,所定の傾斜した角度で前記被処理成品の表面上の各部に対し,平面視において少なくとも4方向より噴射して行う」とする訂正について 訂正事項1のうち、「弾性研磨材を使用した第2のブラスト加工を,所定の傾斜した角度で前記被処理成品の表面上の各部に対し,平面視において少なくとも4方向より噴射して行う」と訂正する事項は、訂正前に記載されていた「弾性研磨材を使用した第2のブラスト加工」に「所定の傾斜した角度で前記被処理成品の表面上の各部に対し,平面視において少なくとも4方向より噴射して」行うという限定を付加するものであるから、当該事項に係る訂正の目的は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号の特許請求の範囲の減縮に該当する。 イ 「表面全体」とする訂正について 訂正事項1のうち、「前記被処理成品の前記各凸部及び各凹部の表面全体を算術平均粗さRa1.6μm以下に研磨する」と訂正する事項は、訂正前に記載されていた「前記被処理成品の前記凸部及び凹部の表面を算術平均粗さRa1.6μm以下に研磨する」の「表面」に「全体」という限定を付加するものであるから、当該事項に係る訂正の目的は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号の特許請求の範囲の減縮に該当する。 ウ 「元の半径Rよりも大きい半径R10μm以上の丸み付け」とする訂正について 訂正事項1のうち、「各凸部の上面の端部に形成されたエッジに元の半径Rよりも大きい半径R10μm以上の丸み付けを行う」と訂正する事項は、訂正前に記載されていた「凸部の上面の端部に形成されたエッジに半径R10μm以上の丸み付けを行う」に「元の半径Rよりも大きい」という限定を付加するものであるから、当該事項に係る訂正の目的は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号の特許請求の範囲の減縮に該当する。 エ 「前記各凸部及び各凹部」及び「前記各凸部」とする訂正について 訂正事項1のうち、「前記各凸部及び各凹部」及び「前記各凸部」と訂正する事項は、訂正前の「前記凸部及び凹部」及び「前記凸部」という記載においては、「前記」されている「多数の凸部」及び「多数の凹部」の全て、あるいは、そのうちの1つのいずれを指すのかが不明であったものを、「多数の凸部」の各凸部及び「多数の凹部」の各凹部を指すことを明瞭にしたものであるから、当該事項に係る訂正の目的は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号の明瞭でない記載の釈明に該当する。 (2) 訂正事項2について ア 「前記各凸部」とする訂正について 訂正事項2のうち、「前記各凸部」と訂正する事項は、訂正前の請求項2について、訂正事項1と同様に訂正するものであるから、その訂正の目的は、上記(1)エと同様の理由により、特許法第120条の5第2項ただし書第3号の明瞭でない記載の釈明に該当する。 イ 「前記半径R10μm以上の丸み付けを行う」とする訂正について 訂正事項2のうち、「前記半径R10μm以上の丸み付けを行う」と訂正する事項は、訂正前の「R10μm以上の丸みを付ける」という記載が、請求項1の「半径R10μm以上の丸み付けを行う」という記載と同一の技術的事項を意味するにもかかわらず誤記により異なる表現が用いられていたものを、同じ表現に統一するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第2号の誤記の訂正に該当する。 (3) 訂正事項3について 訂正事項3は、訂正前の請求項1に対応する記載がなされていた明細書の段落【0028】について、訂正事項1と同様に訂正して整合を図るものであるから、その訂正の目的は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号の明瞭でない記載の釈明に該当する。 (4) 訂正事項4について 訂正事項4は、訂正前の請求項2に対応する記載がなされていた明細書の段落【0029】について、訂正事項2と同様に訂正して整合を図るものであるから、その訂正の目的は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号の明瞭でない記載の釈明に該当する。 3 新規事項の有無 (1) 訂正事項1について ア 「第2のブラスト加工を,所定の傾斜した角度で前記被処理成品の表面上の各部に対し,平面視において少なくとも4方向より噴射して行う」とする訂正について 訂正事項1のうち、「弾性研磨材を使用した第2のブラスト加工を,所定の傾斜した角度で前記被処理成品の表面上の各部に対し,平面視において少なくとも4方向より噴射して行う」という事項は、願書に添付した明細書の段落【0063】に「第2のブラスト加工は,前記被処理成品の表面に対し所定の傾斜した角度で前記弾性研磨材を噴射すると共に,前記噴射ノズルと前記被処理成品を所定のパターンで相対的に移動させながら前記弾性研磨材を噴射することで,前記凹凸面とされた前記被処理成品の表面上の各部に対し,平面視において少なくとも4方向より前記弾性研磨材が噴射されるように構成する。」として記載されている。 イ 「表面全体」とする訂正について 訂正事項1のうち、「前記被処理成品の前記各凸部及び各凹部の表面全体を算術平均粗さRa1.6μm以下に研磨する」という事項は、願書に添付した明細書の段落【0026】に「該凹凸の凸部の上面,側面,及び凹部の底面等の表面全体を研磨することのできる硬質脆性材料製の被処理成品の表面加工方法を提供することを目的とする」として記載され、同段落【0032】に「第2のブラスト加工により,・・・凸部21のみならず凹部24の底面25等を含む立体的な凹凸形状の表面全体を算術平均粗さRaで1.6μm以下の表面粗さに比較的容易に研磨することができた。」として記載されている。 ウ 「元の半径Rよりも大きい半径R10μm以上の丸み付け」とする訂正について 訂正事項1のうち、「各凸部の上面の端部に形成されたエッジに元の半径Rよりも大きい半径R10μm以上の丸み付けを行う」という事項は、願書に添付した明細書の段落【0077】に〔実施例1〕について「凸部上面の端部に生じたエッジは,・・・第1のブラスト加工後の表面ではR5.717μmであったものが,第2のブラスト加工後の表面ではR27.431μmまで丸められており」と記載され、同段落【0087】に〔実施例2〕について「また,凸部上面の端部にあるエッジについても,第1のブラスト加工後のエッジのRが4.150μmであったのに対し,第2のブラスト加工後のエッジのRは52.884μmとなっており,エッジの丸み付けが行われていることが確認できた。」と記載されていることから、願書に添付した明細書には第2ブラスト加工後はエッジの丸み付けが行われて「元の半径Rよりも大きい半径」となることが記載されていると理解でき、これらはその具体例と理解できる。 エ 「前記各凸部及び各凹部」及び「前記各凸部」とする訂正について 訂正事項1のうち、「前記各凸部及び各凹部」及び「前記各凸部」という事項は、願書に添付した明細書の段落【0063】に「第2のブラスト加工は,・・・前記凹凸面とされた前記被処理成品の表面上の各部に対し,平面視において少なくとも4方向より前記弾性研磨材が噴射されるように構成する。」と記載されていることから、第2ブラスト加工が、第1のブラスト加工により被処理成品の表面上に形成された多数の凸部と多数の凹部の「各部」、すなわち、「前記」された「多数の凸部」の各凸部と同「前記」された「多数の凹部」の各凹部に対して行われるように記載されていると理解できる。 オ したがって、訂正事項1に係る訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であると認められるから、特許法第120条の5第9項で準用する同法126条5項の規定に適合する。 (2) 訂正事項2について ア 「前記各凸部」とする訂正について 訂正事項2のうち、「前記各凸部」という事項は、訂正前の請求項2について、訂正事項1と同様に訂正するものであるから、上記(1)エと同様の理由により、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであると認められる。 イ 「前記半径R10μm以上の丸み付けを行う」とする訂正について 訂正事項2のうち、「前記半径R10μm以上の丸み付けを行う」という事項は、訂正前の請求項1に「前記凸部の上面の端部に形成されたエッジに半径R10μm以上の丸み付けを行う」として記載され、願書に最初に添付した明細書の段落【0068】には「凸部21上面22の端部に形成されたエッジeに,R10μm以上の丸み付けを行う。」と記載されており、訂正前の請求項2に記載された「R10μm以上の丸みを付ける」はこれと本来同一の技術的事項を意味すると理解できることから、訂正事項2のうちの上記事項は願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであると認められる。 ウ したがって、訂正事項2に係る訂正は、願書に添付した及び願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であると認められるから、特許法第120条の5第9項で準用する同法126条5項の規定に適合する。 (3) 訂正事項3について 訂正事項3は、訂正前の請求項1に対応する記載がなされていた明細書の段落【0028】について、訂正事項1と同様に訂正して整合を図るものであるから、上記(1)と同様の理由により、特許法第120条の5第9項で準用する同法126条5項の規定に適合する。 (4) 訂正事項4について 訂正事項4は、訂正前の請求項2に対応する記載がなされていた明細書の段落【0029】について、訂正事項2と同様に訂正して整合を図るものであるから、上記(2)と同様の理由により、特許法第120条の5第9項で準用する同法126条5項の規定に適合する。 4 特許請求の範囲の拡張・変更の存否 (1) 訂正事項1について 訂正事項1は、上記2.(1)に示すとおり、特許請求の範囲を減縮し、さらに、訂正前に明瞭でなかった記載を明瞭にするものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 したがって、訂正事項1に係る訂正は、特許法120条の5第9項で準用する同法126条6項の規定に適合する。 (2) 訂正事項2について 訂正事項2は、上記2.(2)に示すとおり、訂正前に明瞭でなかった記載を明瞭にし、さらに、誤記を訂正するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 したがって、訂正事項2に係る訂正は、特許法120条の5第9項で準用する同法126条6項の規定に適合する。 (3) 訂正事項3について 訂正事項3は、訂正前の請求項1に対応する記載がなされていた明細書の段落【0028】について、訂正事項1と同様に訂正して整合を図るものであるから、上記(1)と同様の理由により、訂正事項3に係る訂正は、特許法120条の5第9項で準用する同法126条6項の規定に適合する。 (4) 訂正事項4について 訂正事項4は、訂正前の請求項2に対応する記載がなされていた明細書の段落【0029】について、訂正事項2と同様に訂正して整合を図るものであるから、上記(2)と同様の理由により、訂正事項4に係る訂正は、特許法120条の5第9項で準用する同法126条6項の規定に適合する。 5 小括 上記のとおり、訂正事項1-4に係る訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号、第2号又は第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。 したがって、明細書及び特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-3〕について訂正することを認める。 第3 訂正後の本件特許発明 本件訂正請求により訂正された請求項1-3に係る発明(以下、各請求項に係る発明を「本件発明1」などといい、本件発明1-3をまとめて「本件特許発明」という。)は、訂正後の特許請求の範囲の請求項1-3に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。 「【請求項1】 硬質脆性材料製の成品である静電チャックの誘電体層を被処理成品とし, 前記被処理成品の母材硬度よりも高硬度の砥粒を使用した第1のブラスト加工により,前記被処理成品の表面を,多数の凸部と,該凸部間に形成された,最狭部において50μm以上の幅を有する多数の凹部が形成された立体的な凹凸形状に形成し, 前記凹凸形状に形成された前記被処理成品の表面に対し,低反発弾性の弾性体に前記凹部の前記幅よりも粒径の小さい砥粒を担持させた構造の弾性研磨材を使用した第2のブラスト加工を,所定の傾斜した角度で前記被処理成品の表面上の各部に対し,平面視において少なくとも4方向より噴射して行うことにより, 前記第1のブラスト加工によって形成した前記凹凸形状を維持したまま,前記被処理成品の前記各凸部及び各凹部の表面全体を算術平均粗さRa1.6μm以下に研磨すると共に,前記各凸部の上面の端部に形成されたエッジに元の半径Rよりも大きい半径R10μm以上の丸み付けを行うことを特徴とする硬質脆性材料製の被処理成品の表面加工方法。 【請求項2】 前記第1のブラスト加工によって,平坦な上面を有する前記各凸部を形成し, 前記第2のブラスト加工によって,前記各凸部の前記平坦な上面の端部に形成されたエッジに前記半径R10μm以上の丸み付けを行うことを特徴とする請求項1記載の硬質脆性材料製の被処理成品の表面加工方法。 【請求項3】 前記硬質脆性材料製の被処理成品の前記表面が,半導体製造装置に設けられた基板固定具の基板吸着面であることを特徴とする請求項1又は2記載の硬質脆性材料製の被処理成品の表面加工方法。」 第4 取消理由通知(決定の予告)にて通知した取消理由の概要 訂正前の請求項1-3に係る特許に対して、当審が令和3年6月30日付け取消理由通知(決定の予告)にて特許権者に通知した取消理由の概要は、次のとおりである。 請求項1-3に係る発明は、引用文献1に記載された発明、引用文献2に記載された技術的事項及び引用文献3に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 よって、請求項1-3に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである。 引用文献1:特開2014-27207号公報[甲第1号証;先の取消理 由通知において引用] 引用文献2:特許第579304号公報[当審にて新たに引用した文献] 引用文献3:特開2009-60035号公報[甲第2号証;先の取消理 由通知において引用] 第5 当審の判断 1 本件発明1について (1) 本件発明1 本件発明1は、上記第3において示したとおりのものである。 (2) 引用文献 引用文献1:特開2014-27207号公報[甲第1号証;取消理由通 知(決定の予告)におい て引用] 引用文献2:特許第5793014号公報[取消理由通知(決定の予告) において引用] 引用文献3:特開2009-60035号公報[甲第2号証;取消理由通 知(決定の予告)におい て引用] 甲第5号証:再公表特許第2013/022042号公報 甲第6号証:関 智宏,外1名,中小製造業の新製品開発,人材育成,国 際化 -株式会社ヤマシタワークス(尼崎)のケース・スタ ディー,阪南論集 社会科学編,学校法人阪南大学,200 9年3月,Vol.44 No.2,p159-170 (https://hannan-u.repo.nii.ac.jp/?action=pages_view_m ain&active_action=repository_view_main_item_detail&ite m_id=253&item_no=1&page_id=13&block_id=17) 甲第7号証:大橋一仁,外5名,円筒ブラスト加工に関する基礎的研究, 砥粒加工学会誌,公益社団法人砥粒加工学会,2012年9 月1日,Vol.56 No.9,p626-631(http s://www.jstage.jst.go.jp/article/jsat/56/9/56_626/_pdf /-char/ja) (3) 引用文献1の記載及び引用発明 ア 引用文献1の記載事項 引用文献1には以下のような記載がある(なお、下線は理解を容易にするために当審で付したものである。以下同様。)。 「【背景技術】 【0002】 電圧を印加し静電気の吸引力によりシリコンウェーハ等を静電吸着保持する静電チャックは、CVD装置、エッチング装置、露光装置、検査装置、搬送装置等の半導体製造装置や、液晶基板製造装置等のような、主に真空環境下で使用される。」 「【0004】 ・・・頂面と半導体ウェーハとの間の擦れによって、パーティクルが発生しやすくなるという問題がある。 このパーティクルは、擦れにより半導体ウェーハ上に付いたスクラッチから発生した半導体ウェーハの削れカスや、同じく擦れにより脱粒した誘電体の微細粒等であり、後の洗浄、搬送等の工程で半導体素子面に転写し欠陥を発生させる原因となるため、極力半導体ウェーハ等への付着を避ける必要がある。・・・」 「【0013】 本発明のパーティクルの発生が抑制された静電チャック等の基板保持具に用いられる誘電体は、図1、図2に示すような形状を有している。 ・・・ 【0014】 <突起部> 本発明にて述べる突起部は、後述する誘電体の一部として、その表面に複数設けられるものであり、その頂部が直線又は曲線形状もしくは直線と曲線の連続線を有している。 ・・・ 突起部は、頂部とその頂部から連続する側部とを有し、頂部と側部とを結ぶ外形線を曲線としている。頂部と側部とが連続していることから、その境界は明確には表せないが、あえて表すとすれば、図2に示すように、頂部9の最高点での接線と側部10の変曲点12での接線の交点を境界と見なすことができる。 更に、側部は変曲点を有し、側部と底部との結ぶ外形線を曲線として、底部と連続している。側部と底部とが連続していることから、前述同様にその境界は明確には表せないが、あえて表すとすれば、図2に示すように、側部10の変曲点12での接線と底部11の延長線の交点を境界と見なすことができる。 底部に対する側部の傾斜角αは本発明の効果に対して特に影響を与えるものではないが、概ね1~50°とすることが好ましい。 【0015】 <突起部内領域> 本発明にて述べる突起部内領域は、前述した突起部の頂部領域を示すものであり、複数の突起毎に離散したものとなっている。なお、突起部が、頂部と側部とを有することは、前述したが、突起部内領域は、側部を含まず、頂部のみの領域を意味する。 頂部は、パーティクルの発生を抑制する効果を考慮すると緩やかな凸形状を有していることが好ましいが、大きな静電吸着力を得るという点では平坦部を有していることが好ましい。 【0016】 <突起部外領域> 本発明にて述べる突起部外領域は、前述した突起部内領域以外の領域を意味するものであり、具体的には、突起部の側部と、この側部と側部の間の部分である底部を意味する。 ・・・」 「【0019】 <誘電体> 本発明にて述べる誘電体は、その材質を限定されるものではないが、例えば、アルミナ、ムライト、窒化ケイ素、窒化アルミニウム、コージェライト、リチウムアルミノシリケート、炭化ケイ素等を主原料としたセラミックス、酸化ケイ素を主原料としたガラス、ガラスにセラミックスフィラーを添加したいわゆるガラスセラミックスなどを用いることができる。特に好ましいものとしては、導電率が小さく且つ汎用性の点から、アルミナ、コージェライト、リチウムアルミノシリケート等を主原料としたセラミックスが挙げられる。」 「【0021】 <静電チャック> 本発明にて述べる静電チャックは、本発明にて述べる上記の誘電体の、突起部を有する面と対向する裏面に、電極を当接保持させた静電チャックである。」 「【0023】 (実施例1) 誘電体として、アルミナセラミックス(日立化成工業株式会社製、商品名:H580、JIS C 2110に依る絶縁電気耐圧は20MV/m)を準備し、台座と共にダイヤモンド砥石を用いて、研削やマシニング等の通常のセラミックス機械加工を施し、平らな円盤形状を得た。台座としては、誘電体と同じアルミナセラミックス(H580)を用いた。」 「【0026】 一体化した誘電体及び台座に対し、更に平面研削を施し、特に誘電体の突起部を形成する面にはラップ加工を行い、平坦面を得た。このとき、誘電体の厚さは約0.2mmとした。 【0027】 得られた平坦面に対して、通常のマスキングとショットブラスト加工法を用いて、突起形状を形成した。マスキングには、直径0.2mm、厚さ0.1mmの円形を、横方向1mmピッチ、縦方向1mmピッチに正方配置した粘着フィルムを用いた。また、ショットブラストにより削り取られた面ができるだけ粗くならないことを目的として、ショットブラストの砥粒には、精密研磨用微粉である粒度#600のSiC砥粒を適用した。なお、SiC砥粒の粒度の表記は、JIS R 6001:1998に規定されるものである。このショットブラストにより、誘電体の突起部を形成する面のマスキングされていない部分を約20μm削り、除去した。 【0028】 粘着マスクを剥がし、直径0.2mm、高さ約20μm、横方向1mmピッチ、縦方向1mmピッチに正方配置した突起形状を得た。突起部内領域と突起部外領域との面積比の設計値は、突起部内領域面積/突起部外領域面積にて約0.031である。 【0029】 次いで、誘電体の突起部を形成する面に形成された突起形状に対し、研磨パッドと研磨材を用いて研磨加工を行った。研磨パッドにはピューラー社製マイクロクロス、研磨材には旭ダイヤモンド工業株式会社製ダイヤモンドペーストを用いた。・・・研磨材を塗布した研磨パッドを誘電体の突起部を形成する面に、面全体に均一な力が掛かるように且つ微量スライドできるように押し付け、そのままバイブレーターの振動に晒した。研磨加工後の誘電体の、突起部内領域及び突起部外領域における算術平均粗さRaは、それぞれ0.10μmと0.13μmであった。・・・」 「【0032】 (実施例2~5及び比較例1~4) 実施例1に対し、マスキングに用いる粘着フィルムの大きさと配置を変更することにより、突起部内領域と突起部外領域との面積比を変化させた。また、研磨加工時の研磨材の砥粒の粒径や研磨パッドを押し付ける強さ、バイブレーターの振動の強さ、バイブレーターの振動に晒す時間、誘電体として用いるアルミナセラミックスのグレードを変更することで、突起部内領域と突起部外領域における表面粗さ及び絶縁電気耐圧を変化させた。これらの結果も、併せて表1に示す。」 「【0033】 (実施例6) 実施例1と同様、誘電体と台座を一体化し、誘電体の突起部を形成する面にラップ加工を行った。 【0034】 得られた平坦面に対して、エポキシ樹脂によるマスキングと研磨パッドによる研磨加工にて、突起形状を形成した。・・・ 【0035】 次いで、マスキングされた平坦面に対し、研磨パッドと研磨材を用いて突起形成加工を行った。研磨パッド及び研磨材は、実施例1の研磨加工で用いたものと同じであるが、研磨材の砥粒は、粒径3μm以上の大きめの砥粒を用いた。実施例1の研磨加工と同様に、バイブレーターを利用して振動させ、誘電体の突起部を形成する面のマスキングされていない部分を約2μm削り除去した。 ・・・ 【0037】 次いで、誘電体の突起部を形成する面に形成された突起形状に対し、研磨パッドと研磨材を用いて、実施例1と同様の研磨加工を行った。研磨加工後の誘電体の、突起部内領域及び突起部外領域における算術平均粗さRaは、それぞれ0.11μmと0.07μmであった。」 「【0039】 (実施例7、8及び比較例5) 実施例6に対して、マスキングに用いるエポキシ樹脂を印刷するスクリーン版の印刷パターンを変更することにより、突起部内領域と突起部外領域との面積比を変化させた。また、突起形成加工時及び研磨加工時の研磨材の砥粒の粒径や研磨パッドを押し付ける強さ、バイブレーターの振動の強さ、バイブレーターの振動に晒す時間を変更することで、突起部内領域と突起部外領域における表面粗さを変化させた。」 「【0041】 (実施例9) 実施例1と同様に、誘電体と台座を一体化し、誘電体の突起部を形成する面にラップ加工を行い、更に突起を形成した。 【0042】 次いで、誘電体の突起部を形成する面に形成された突起形状に対し、ショットブラスト加工法にて研磨加工を行った。突起を形成する際に用いたショットブラスト加工法とは、軟質砥粒を用いた点とマスキングをしないという点で異なる。軟質砥粒とは、セラミックやダイヤモンド等の硬質砥粒をゴム製の粒や樹脂製の粒の中に分散させた砥粒や低硬度のガラスビーズなどのことであり、いわゆるソフトブラスト加工法と呼ばれているものである。この軟質砥粒を用いたショットブラスト加工により、突起部外領域の研磨を行い、表面粗さを向上させた。また、この際にマスキングをしないことにより、突起部の頂部から側部への外形線として曲線を得ることができた。すなわち、突起部を形成する際に突起部の頂部と側部との境界に形成された一般にエッジと呼ばれる角を研磨することにより、角を丸め曲線を得たものと言い換えることができる。 研磨加工後の誘電体の、突起部内領域及び突起部外領域における算術平均粗さRaは、それぞれ0.04μmと0.06μmであった。」 「【0043】 (実施例10及び11) 実施例9に対して、マスキングに用いる粘着フィルムの大きさと配置を変更することにより、突起部内領域と突起部外領域との面積比を変化させた、また、研磨加工時の軟質砥粒と加速圧力や供給量等の加工パラメータを変更することで、突起部内領域と突起部外領域における表面粗さを変化させた。」 「【0047】 (比較例6) 実施例1と同様に、誘電体と台座を一体化し、誘電体の突起部を形成する前にラップ加工を行い、更に突起を形成した。ただし、その後の研磨加工は行わず、これを本発明に対する比較例とした。」 表1 [図:0001393044000001.jpg] 図2 [図:0001393044000002.jpg] イ 引用文献1の認定事項 (ア) 上記アの段落【0014】、【0019】、【0021】、【0023】、【0027】、【0028】、【0041】及び図2を参照すると、被処理成品は、アルミナセラミックス製の成品である静電チャックの誘電体であって、その実施例1-実施例9の「突起部」は、直径0.2mmで縦横1mmピッチに正方配置されているから、「突起部」間に形成された凹部は、底部において0.8mm(800μm)程度の間隔、すなわち50μm以上の幅を有するものを含むと認められる。 (イ) 上記アの段落【0042】の「軟質砥粒とは、セラミックやダイヤモンド等の硬質砥粒をゴム製の粒や樹脂製の粒の中に分散させた砥粒・・・などのことであり」との記載からみて、ソフトブラスト加工法においては、ゴム製の粒に硬質砥粒を担持させた構造の軟質砥粒を使用していると認められる。 (ウ) 上記アの段落【0042】の記載からみて、ソフトブラスト加工法では、突起部外領域の研磨を行い表面粗さを向上させるとともに、エッジと呼ばれる角を研磨することにより角を丸め曲線を得ているまでであると認められるので、ショットブラスト加工法によって形成した凹凸形状は維持されているものと認められる。 (エ) 上記アの表1の記載からみて、実施例9においては、突起部内領域の表面粗さRaは0.04μmであり、突起部外領域の表面粗さRaは0.06μmであることから、突起部及び凹部の表面全体は、算術平均粗さRa1.6μm以下であるものと認められる。 そして、この突起部及び凹部の表面全体の算術平均粗さは、以下の各記載からみて、ソフトブラスト加工法を行うことによるものと認められる。 すなわち、 a 上記アの段落【0029】、【0032】、【0034】、【0035】、【0037】、【0039】の記載からみて、実施例1-8の研磨加工は研磨パッドと研磨材を用いていることから、突起部及び凹部の表面全体に対して行われるものと認められ、引用文献1における同じ発明についての他の実施例である実施例9のソフトブラスト加工法により行う研磨加工についても同様に、突起部及び凹部の表面全体に対して行われるものと認められる。 b 上記アの段落【0043】の記載からみて、実施例9のソフトブラスト加工法により行う研磨加工時の加工パラメータを変更した実施例10及び11の突起部内領域と突起部外領域における表面粗さは、上記アの表1の記載からみて、実施例9とはいずれも異なる値となっていることから、ソフトブラスト加工法により行う研磨加工は、突起部及び凹部の表面全体に対して行われるものと認められる。 このことは、上記アの段落【0032】、【0039】の記載からみて、実施例1及び6の研磨パッドと研磨材を用いて突起部及び凹部の表面全体に対して行われる研磨加工時の加工パラメータを変更した実施例2-5及び7-8の突起部内領域と突起部外領域における表面粗さが、上記アの表1の記載からみて、実施例1及び6とはいずれも異なる値となっているのと同様であることからも、やはり、実施例9のソフトブラスト加工法により行う研磨加工は、突起部及び凹部の表面全体に対して行われるものと認められる。 c 上記アの段落【0047】の記載からみて、突起部を形成する面にラップ加工を行い、更に突起を形成した後、研磨加工を行わない比較例6の突起部内領域の表面粗さが、上記アの表1の記載からみて、ソフトブラスト加工法により研磨加工を行う実施例9とは異なる値となっていることから、実施例9のソフトブラスト加工法により行う研磨加工は、突起部外領域のみならず、突起部内領域に対しても行われる、すなわち、突起部及び凹部の表面全体に対して行われるものと認められる。 ウ 引用発明 よって、上記アの記載事項及びイの認定事項からみて、引用文献1の(実施例9)には、以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 「アルミナセラミックス製の成品である静電チャックの誘電体を被処理成品とし, SiC砥粒を使用したショットブラスト加工法により,前記被処理成品の表面を,多数の突起部と,該突起部間に形成された,底部において50μm以上の幅を有する多数の凹部が形成された立体的な凹凸形状に形成し, 前記凹凸形状に形成された前記被処理成品の表面に対し,ゴム製の粒に硬質砥粒を担持させた構造の軟質砥粒を使用したソフトブラスト加工法を、前記被処理成品の表面上の各部に対し、噴射して行うことにより,前記ショットブラスト加工法によって形成した前記凹凸形状を維持したまま,前記被処理成品の前記突起部及び凹部の表面全体を算術平均粗さRa1.6μm以下に研磨すると共に,前記突起部の頂部の端部に形成されたエッジに丸み付けを行うことを特徴とするアルミナセラミックス製の被処理成品の表面加工方法。」 (4) 対比 本件発明1と引用発明を対比する。 ア 引用発明の「アルミナセラミックス」は本件発明1の「硬質脆性材料」に相当し、以下同様に「誘電体」は「誘電体層」に、「ショットブラスト加工法」は「第1のブラスト加工」に、「突起部」は「凸部」に、「底部」は「最狭部」に、「軟質砥粒」は「弾性研磨材」に、「ソフトブラスト加工法」は「第2のブラスト加工」に、「(突起部の)頂部」は「(凸部の)上面」に、それぞれ相当する。 イ 引用発明において「ソフトブラスト加工法を、前記被処理成品の表面上の各部に対し、噴射して行うこと」は、本件発明1において「第2のブラストプラスト加工を,所定の傾斜した角度で前記被処理成品の表面上の各部に対し,平面視において少なくとも4方向より噴射して行うこと」に、「第2のブラストプラスト加工を,前記被処理成品の表面上の各部に対し,噴射して行うこと」という点に限り共通する。 ウ 上記(3)アの段落【0027】の記載より、SiC砥粒はアルミナセラミックス製の誘電体を削っており、SiC砥粒がアルミナセラミックスよりも硬いことは明らかであるから、引用発明の「SiC砥粒」は本件発明1の「前記被処理成品の母材硬度よりも高硬度の砥粒」に相当する。 エ 引用発明の「ゴム製の粒」は本件発明1の「低反発弾性の弾性体」に、「弾性体」という点に限り共通する。 オ 上記(3)アの段落【0042】の記載より、軟質砥粒に担持された硬質砥粒は突起部間の底部も研磨しており、硬質砥粒が底部の幅よりも小さいことは明らかであるから、引用発明の「硬質砥粒」は本件発明1の「凹部の前記幅よりも粒径の小さい砥粒」に相当する。 カ 引用発明において「エッジに丸み付けを行う」ことは、本件発明1において「エッジに元の半径Rよりも大きい半径R10μm以上の丸み付けを行う」ことに、「エッジに丸み付けを行う」ことという点に限り共通する。 キ そうすると、本件発明1と引用発明は、以下の(ア)の点において一致し、また、以下の(イ)の点において相違するものである。 (ア) 一致点 「硬質脆性材料製の成品である静電チャックの誘電体層を被処理成品とし, 前記被処理成品の母材硬度よりも高硬度の砥粒を使用した第1のブラスト加工により,前記被処理成品の表面を,多数の凸部と,該凸部間に形成された,最狭部において50μm以上の幅を有する多数の凹部が形成された立体的な凹凸形状に形成し, 前記凹凸形状に形成された前記被処理成品の表面に対し,弾性体に前記凹部の前記幅よりも粒径の小さい砥粒を担持させた構造の弾性研磨材を使用した第2のプラスト加工を、前記被処理成品の表面上の各部に対し,噴射して行うことにより, 前記第1のブラスト加工によって形成した前記凹凸形状を維持したまま,前記被処理成品の前記各凸部及び各凹部の表面全体を算術平均粗さRa1.6μm以下に研磨すると共に,前記各凸部の上面の端部に形成されたエッジに丸み付けを行う硬質脆性材料製の被処理成品の表面加工方法。」 (イ) 相違点 (相違点1) 弾性研磨材の「弾性体」が、本件発明1は、「低反発弾性の弾性体」であるのに対し、引用発明は、「ゴム製の粒」である点。 (相違点2) 「弾性研磨材を使用した第2のブラスト加工」を、「被処理成品の表面上の各部に対し」、「噴射して行う」にあたり、本件発明1は、「所定の傾斜した角度で前記被処理成品の表面上の各部に対し,平面視において少なくとも4方向より噴射して」行うのに対し、引用発明は、噴射の角度及び方向について明らかでない点。 (相違点3) 本件発明1は、「各凸部の上面の端部に形成されたエッジに元の半径Rよりも大きい半径R10μm以上の丸み付けを行う」のに対し、引用発明は、「突起部の頂部の端部に形成されたエッジに丸み付けを行う」ものの、丸みの半径は不明な点。 (5) 相違点の判断 事案に鑑みて、上記相違点2についてまず検討する。 ア 特許異議申立人による令和3年11月11日提出の意見書において周知技術を例示するものとする甲第5号証-甲第7号証に記載された技術的事項について 特許異議申立人による令和3年11月11日提出の意見書において、上記相違点2に関連して、同意見書の4-2「(2)相違点の検討」の「(相違点4について)」で周知技術を例示するものとする甲第5号証-甲第7号証について検討する。 (ア) 甲第5号証の記載事項及び甲第5号証に記載された技術的事項 a 甲第5号証の記載事項 甲第5号証には以下のような記載がある。 「【請求項1】 板状素材の表面に凹面状の成形面を複数個形成し、その後、前記成形面の開口部より大径の弾性核体及び前記弾性核体の表面に固着された砥粒とからなる研磨粒子を、前記成形面を有する成形型表面に噴射して衝突させ、成形型表面を研磨することを含むマイクロレンズアレイ用成形型の製造方法。」 「【0029】 そこで、本発明においては、この凸部2bを除去するために、成形型表面の研磨を行い、凸部2bを除去すると共に、成形面2aと成形型表面が曲率を有して接続する縁部を形成するように次のように研磨加工する。なお、研磨加工の際に、成形型表面も同時に研磨され、成形面2aの深さは研磨加工前後で変わるため、所望の成形面2aを得るために研磨量に応じてパンチエ具12による押込み深さを決定するとよい。 【0030】 このとき用いる研磨加工は、研磨加工装置13により、パンチエ具12で形成された研磨加工前の凹球面状の成形面2aの最大径よりも大きな直径を有する研磨粒子14を、上型2の成形面2aを有する面に噴射して衝突させる方法により達成できる(図3の(c))。 【0031】 この研磨方法は、表面に砥粒を有する研磨粒子14を、空気等の気体と共に噴射させながら、研磨粒子と成形面が形成された成形型表面とを衝突させ、成形型表面を研磨すると同時に、凹球面状の成形面2aの縁部を成形型表面と滑らかな曲面で接続する縁部を形成するように研磨する(図3の(d))。 【0032】 このとき用いる研磨粒子14は、弾力性を有する弾性核体と、その弾性核体の表面に固着した砥粒と、から構成される。そして、この研磨粒子14は、パンチ工具12で形成された研磨加工前の凹球面状の成形面2aの開口径よりも大径の形状を有する。・・・このように、研磨粒子14の径を研磨加工前の成形面2aの開口径よりも大きくすることで、凹球面状部分に研磨粒子14が入り込むのを抑制し、成形面2aに研磨粒子が接触して、傷つけることを防止できる。このとき、例えば、研磨粒子14の径を、研磨加工前の成形面2aの開口径の2~50倍とすることが好ましい。 【0033】 また、この研磨粒子14の半径を、成形面2aの球面形状の曲率半径(パンチ工具12を用いた場合は、そのパンチ工具12の先端部分の加工球の半径)よりも大きくすれば、研磨粒子14が凹球面状部分に入り込むことを確実に防止でき好ましい。 【0034】 ここで、研磨粒子14の弾性核体は、弾力性を有する粒子である。核体が弾力性を有することで、研磨粒子14と被研磨物とが衝突した際に、研磨面が滑らかに加工され易くなり、本発明においては、成形面2aと成形型表面との接続部分である縁部が、容易に曲率を持った形状に形成される。さらに、研磨面を滑らかに加工できるように、弾性核体の形状は略球状が好ましい。なお、略球状とは、目視において球状として認められる形状をいう。 【0035】 この弾性核体としては、弾力性を有するものであればよく、例えば、ゴム、植物性繊維、樹脂、ゼラチン等が挙げられる。なかでも、水分を含有することにより粘着性を生じる特性を有する植物性繊維、ゼラチン等が好ましい。この弾性核体の大きさが、ほぼ研磨粒子の大きさとなり、本発明においては直径が0.5~2.0mm程度の核体が好ましい。 ・・・ 【0038】 次に、上記のような研磨粒子14を噴射し、成形型の成形面を形成した表面に研磨粒子14を衝突させて研磨を行う。研磨した後の研磨粒子は回収して、再び、噴射装置に投入され再利用してもよい。 【0039】 研磨粒子14を噴射させるための圧力は、0.1~1.5MPaの範囲とでき、0.5~0.8MPaが好ましい。また、噴射させる際の衝突角度θは、成形型表面を研磨粒子14が滑走を繰り返すことができるよう、成形型の表面方向を基準に、例えば、10~80度と角度をもって衝突させればよく、この角度は30~60度が好ましい。 ・・・ 【0041】 さらに、本発明において、この研磨を、成形型表面と平行な面において等角度で方向を変えてそれぞれ同じ時間研磨をし、研磨方向による成形型形状の偏りが生じないようにすることが好ましい。これは、研磨面に成形面2aという凹球面状の窪みが存在するため、研磨方向の奥側の成形面2aの縁部分が手前や横に比べて研磨され易いためである。 【0042】 このとき、研磨方向は3方向以上が好ましく、4方向以上がより好ましく、6方向以上が特に好ましい。また、この場合、研磨方向は、略等角度の間隔であれば好ましい。・・・ただし、この研磨方向は、多ければ多いほど方向の偏りは小さくなり、形状的には好ましいものとなるが、研磨方向が多い分、研磨時間が嵩んでしまうため、成形型の形状と研磨効率のバランスを考慮して決定するとよい。図4は、上型2の成形面側の表面を表した平面図であるが、この上型表面の平面において、a、b、c、dと噴射方向を90度ずつ回転して研磨方向を4方向とした場合の例を示した。」 「 [図:0001393044000003.jpg] 」(【図1】) 「 [図:0001393044000004.jpg] 」(【図2】) 「 [図:0001393044000005.jpg] 」(【図3】) b 甲第5号証に記載された技術的事項 甲第5号証には、上記各記載からみて、以下の技術的事項(以下「甲第5号証に記載された技術的事項」という。)が記載されていると認められる。 「弾性核体に砥粒を固着させた研磨粒子14を空気等の気体と共に噴射させる研磨加工を、衝突角度θで成形型表面に対し、成形型表面と平行な面において4方向以上より噴射して行うこと。」 そして、甲第5号証に記載された技術的事項における「弾性核体に砥粒を固着させた研磨粒子14を空気等の気体と共に噴射させる研磨加工」は本件発明1の「第2のブラスト加工」に対応し、以下同様に、「衝突角度θ」は「所定の傾斜した角度」に、「成形型表面」は「被処理成品の表面上の各部」に、「成形型表面と平行な面において」は「平面視において」に、「4方向以上」は「少なくとも4方向」に、それぞれ対応することから、甲第5号証に記載された技術的事項を本件発明1の用語を用いて記載すると以下のようになると認められる。 「第2のブラスト加工を、所定の傾斜した角度で被処理成品の表面上の各部に対し、平面視において少なくとも4方向より噴射して行うこと。」 (イ) 甲第6号証の記載事項及び甲第6号証に記載された技術的事項 a 甲第6号証の記載事項 甲第6号証には以下のような記載がある。 「III 新製品開発 -エアロラップの開発- 1.新製品の概要 もとより,山下社長は,研磨工程の機械化や研磨技術の習得の難しさといった課題に頭を悩ませていた。こうした課題を解決すべく,7年の期間をかけ開発し,1996年に完成したのが,エアロラップ(AERO LAP)という研磨技術である。 エアロラップとは,「“Wet・Dry” Media」を用いる,磨耗を防止し,耐久性をいっそう高めることができる鏡面仕上げ方法である。エアロラップは,マルチコーンと呼ばれる研磨材に強みを持つ。食品素材をベースに数ミクロン大のダイヤモンドパウダーを複合させた研磨材を高速で吹き付けるだけで,熟練技能を必要とせずに,初心者でも簡単に,複雑な形状の金型や切削工具,樹脂成形品などを短時間で鏡面加工(ラッピング;LAPPING)できるという特長をもっている。職人が半日かかる磨きも,1~2時間ほど教育すればパートタイマーでも数十分で加工できるという9)。このラッピングの効率性の高さが,エアロラップの特長の1つである。2つは,ラッピングの清潔さであり,「“Wet・Dry” Media」を用いることで,粉塵の発生を抑えるだけでなく,作業環境をより清潔に保つことが可能となる。3つは,多様なラッピングのニーズに対応することができるということであり,さまざまな研磨材を使うことができる。最後は,研磨材は繰り返し使用できるためランニングコストが非常に低く,エコにもつながっている。 エアロラップのメカニズムは,次の図1のとおりである。食品素材を基にし,水分などを使用してそこにダイヤモンドを複合させたものがエアロラッブで使用する研磨材(マルチコーン)である。マルチコーンのサイズは,0.5~2ミリメートルである。これを30~60°の角度で取りつけられたノズルから遠心力を利用して噴射させる。ノズル上部には,研磨時に発生する摩擦熱を冷却させるためにエアノズルが設置されている。ノズルから空気圧(0.5~0.8MPa)をかけて,対象物に吹き付け,表面を滑らしていく。」(第162ページ右欄第1行-最終行及び第164ページ左欄第1行-第4行) 「 [図:0001393044000006.jpg] 」(第163ページ) b 甲第6号証に記載された技術的事項 甲第6号証には、上記各記載からみて、以下の技術的事項(以下「甲第6号証に記載された技術的事項」という。)が記載されていると認められる。 「核体にダイヤモンドを複合させた研磨材(マルチコーン)を高速で吹き付けるエアロラップという研磨を、30°から60°の角度で対象物の表面に対し、噴射して行うこと。」 ここで、特許異議申立人は、令和3年11月11日提出の意見書において「甲第六号証(162頁右欄1行~163頁左欄4行に記載のエアロラップ(新製品)の概要、必要に応じて2016年11月30日公開エアロラップの動画も参考。噴射ノズルが固定され、作業員の手で立体的なワークが回転し、少なくとも4方向より噴射材が噴射されてブラスト研磨される(https://www.youtube.com/watch?v=7PUN5JSKnlw))」と主張しているが、該動画については、令和3年11月11日提出の証拠説明書にも記載されておらず証拠とされているものではないし、複数の証拠(甲第6号証及び動画)を総合して1つの技術的事項を認定することが適切であるとはいえない。したがって、上記意見書の「噴射ノズルが固定され、作業員の手で立体的なワークが回転し、少なくとも4方向より噴射材が噴射されてブラスト研磨される」ことについては、甲第6号証において該当する記載は見当たらないため、甲第6号証の記載から把握されるものとは認められない。 そして、甲第6号証に記載された技術的事項における「核体にダイヤモンドを複合させた研磨材(マルチコーン)を高速で吹き付けるエアロラップという研磨」は本件発明1の「第2のブラスト加工」に対応し、以下同様に、「30°から60°の角度」は「所定の傾斜した角度」に、「対象物の表面」は「被処理成品の表面上の各部」に、それぞれ対応することから、甲第6号証に記載された技術的事項を本件発明1の用語を用いて記載すると以下のようになると認められる。 「第2のブラスト加工を、所定の傾斜した角度で被処理成品の表面上の各部に対し、噴射して行うこと。」 (ウ) 甲第7号証の記載事項及び甲第7号証に記載された技術的事項 a 甲第7号証の記載事項 甲第7号証には以下のような記載がある。 「1.緒言 ブラスト加工は,従来バリ取りや下地の面粗し処理などの比較的ラフな仕上げに用いられてきた.しかし近年では,ブラスト加工に微細砥粒を用いることによって,ガラス,シリコンあるいはセラミックス等の硬脆材料を対象とした精度を要求されるマイクロ加工へも利用され始めており,作業の安全性や加工能率,コストパフォーマンスなどの点に優れる加工法として注目されている1)2).ブラストによる精密加工については,これまでにいくつか研究報告もされている3)4)が,そのほとんどは平面への加工であり,3次元形状を有する表面の精密加工を対象とした報告はほとんどされていない.3次元形状を有する表面の精密加工にブラスト加工を適用すれば,そのアプリケーションがさらに拡がるものと期待される.そこで本研究では,円筒形の工作物外周面にブラスト加工する場合の基礎的知見を明らかにするため,円筒ブラスト加工による加工深さ,表面粗さおよび加工面性状からその加工メカニズムおよび加工特性を実験的に検討した.」(第626ページ左欄第1行-第17行) 「2.実験方法 図1に本研究で試作した円筒ブラスト加工装置を示す.実験は,タイミングベルトを介してモータにより所定の速度で両センタにより支持された円筒形の工作物を回転させながら円筒面にブラスト加工を行った.砥粒はコンプレッサから供給されるエアにより生じる噴射ノズル内でのベンチュリ効果によってタンクから供給され,ノズル先端から噴射される.なお,タンク内にはフィーダを設置し,砥粒の定量供給を行った.噴射ノズルは,工作物軸方向と直交する二軸方向に移動する精密ステージに設置した.図2に工作物に対するノズル位置座標の定義を示す.図のように,工作物軸のレベルにおけるノズル先端から工作物表面までの距離を投射距離yとし,工作物軸レベルからのノズル位置のオフセット量をz(上方を正)と定義する.」(第626ページ左欄下から第8行-右欄第6行) 「 [図:0001393044000007.jpg] 」(図1、図2) 「図12のように工作物表面に対して,噴流束中心における砥粒の噴射角度θは次式で与えられる. [図:0001393044000008.jpg] ここで,zはノズルオフセット量,rは工作物の半径を示す.つまり,ノズルオフセット量を正または負に与えるほど,砥粒の噴射角度が小さくなり,砥粒の干渉による被削材の塑性変形効果よりも切削効果が強調され,加工深さが増加するものと考えられる.これらの結果から,円筒ブラスト加工では,ノズル位置を工作物中心からオフセットさせることが,加工能率を向上させる有効手段の一つと判断できる.」(第629ページ左欄下から第14行-第5行) 「 [図:0001393044000009.jpg] 」(図12) b 甲第7号証に記載された技術的事項 甲第7号証には、上記各記載からみて、以下の技術的事項(以下「甲第7号証に記載された技術的事項」という。)が記載されていると認められる。 「ブラストによる精密加工を、噴射角度θで円筒形の工作物表面に対し、円筒形の工作物の軸線方向からみて周方向に全ての方向より噴射して行うこと。」 そして、甲第7号証に記載された技術的事項における「ブラストによる精密加工」は本件発明1の「第2のブラスト加工」に対応し、以下同様に、「噴射角度θ」は「所定の傾斜した角度」に、「円筒形の工作物表面」は「被処理成品の表面上の各部」に、「全ての方向」は「少なくとも4方向」に、それぞれ対応することから、甲第7号証に記載された技術的事項を本件発明1の用語を用いて記載すると以下のようになると認められる。 「第2のブラスト加工を、所定の傾斜した角度で被処理成品の表面上の各部に対し、少なくとも4方向より噴射して行うこと。」 (エ) 相違点2の容易想到性 引用発明及び甲第5号証-甲第7号証のそれぞれに記載された技術的事項に基いて、相違点2に係る本件発明1の発明特定事項に容易に想到し得るかについて、以下に個々に検討する。 a 引用発明及び甲第5号証に記載された技術的事項に基づく容易想到性 (a) 引用発明における軟質砥粒を使用したソフトブラスト加工法 引用発明は、上記(3)アの段落【0042】及び【図2】の記載並びに上記(3)イ(エ)からみて、「軟質砥粒を使用したソフトブラスト加工法」(第2のブラスト加工)により、「突起部」(凸部)の「凸部内領域」及び「突起部外領域」の「凹部」(凹部)の表面全体を研磨し、「突起部」(凸部)の「凸部内領域」及び「突起部外領域」の「凹部」(凹部)の表面全体の表面粗さを向上させるものであると認められる。 (b) 甲第5号証に記載された研磨加工 これに対して、甲第5号証に記載された「弾性核体に砥粒を固着させた研磨粒子14を空気等の気体と共に噴射させる研磨加工」(第2のブラスト加工)は、上記(ア)aの段落【0032】及び【0033】の記載からみて、「凹球面状の成形面2a」(凹部)に「研磨粒子14」(弾性研磨材)が入り込み接触することを防止するものであると認められる。 (c) 容易想到性 そうすると、「突起部外領域」の「凹部」(凹部)を研磨するものである引用発明において、「凹球面状の成形面2a」(凹部)に「研磨粒子14」(弾性研磨材)が入り込み接触することを防止するものである甲第5号証に記載された技術的事項を採用する動機付けはなく、むしろ、引用発明における「突起部外領域」の「凹部」(凹部)を研磨することを妨げる阻害要因があると認められる。 したがって、相違点2に係る本件発明1の発明特定事項は、引用発明及び甲第5号証に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に想到し得るものであるとはいえない。 b 引用発明及び甲第6号証に記載された技術的事項に基づく容易想到性 (a) 甲第6号証に記載された技術的事項 甲第6号証に記載された技術的事項は、上記(イ)bのとおり、相違点2に係る本件発明1の発明特定事項のうち、「第2ブラスト加工」を「平面視において少なくとも4方向より噴射して行う」ものに対応する事項を備えるものではない。 (b) 容易想到性 そうすると、引用発明に甲第6号証に記載された技術的事項を採用したとしても、相違点2に係る本件発明1の発明特定事項に至るものではないことから、相違点2に係る本件発明1の発明特定事項は、引用発明及び甲第6号証に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に想到し得るものであるとはいえない。 c 引用発明及び甲第7号証に記載された技術的事項に基づく容易想到性 (a) 引用発明における軟質砥粒を使用したソフトブラスト加工法 引用発明は、上記(3)アの段落【0023】及び【図2】の記載からみて、その「被処理成品」である「誘電体」は「平らな円盤形状」であると認められる。 (b) 甲第7号証に記載されたブラストによる精密加工 これに対して、甲第7号証に記載されたブラストによる精密加工は、上記(ウ)aの各記載からみて、「被処理成品」である「工作物」は「円筒形」であり、「両センタにより支持され」て「回転させながら円筒面にブラスト加工」を行うものであると認められる。 また、甲第7号証に記載された技術的事項は、上記(ウ)bのとおり、相違点2に係る本件発明1の発明特定事項のうち、「第2ブラスト加工」を「平面視において少なくとも4方向より噴射して行う」ものに対応する事項を備えるものではない。 (c) 容易想到性 そうすると、「被処理成品」である「誘電体」が「平らな円盤形状」である引用発明に対して、「被処理成品」である「工作物」が「円筒形」であり「両センタにより支持され」て「回転させながら円筒面にブラスト加工」を行う甲第7号証に記載されたブラストによる精密加工は、被処理成品の基本形状が大きく異なり、同基本形状のもとで被処理成品を「両センタに支持され」て「回転させながら」という保持態様についても大きく異なる上、さらに「円筒面に」という噴射部位も大きく異なるから、引用発明に甲第7号証に記載された技術的事項を採用する動機があるとは認められない。 また、甲第7号証に記載された技術的事項には、「平面視において少なくとも4方向より噴射して行う」ことが示されていないことから、仮に、引用発明に甲第7号証に記載された技術的事項を採用したとしても、相違点2に係る本件発明1の発明特定事項に至るものではなく、相違点2に係る本件発明1の発明特定事項は、引用発明及び甲第7号証に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に想到し得るものであるとはいえない。 したがって、相違点2に係る本件発明1の発明特定事項は、引用発明及び甲第7号証に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に想到し得るものであるとはいえない。 イ 特許異議申立人による令和4年4月19日提出の回答書において提示された甲第8号証-甲第12号証に記載された技術的事項について 特許異議申立人による令和4年4月19日提出の回答書において、上記相違点2に関連して、同回答書の「(エ)付言」で技術常識を例示するものとする甲第8号証、甲第9号証、甲第11号証及び甲第12号証についても検討する。また、同回答書において他に提示された甲第10号証についても検討する。 甲第8号証 :特許第5606824号公報 甲第9号証 :特開2009-202307号公報 甲第10号証:特開2001-129762号公報 甲第11号証:特開2006-159402号公報 甲第12号証:特許第5793014号公報 (ア) 甲第8号証の記載事項及び甲第8号証に記載された技術的事項 a 甲第8号証の記載事項 甲第8号証には以下のような記載がある。 「【0025】 第3のブラスト処理を,弾性研磨材乃至は板状研磨材を使用して金型表面に対して傾斜した入射角で噴射することにより,比較的容易に研磨材を金型表面で滑走させることができ,これにより,第2のブラスト処理によって金型表面の凹凸における山頂部分を除去して平坦化することを容易に行うことができた。」 「【0056】 このような凸部の山頂部分を平坦化するために,第3のブラスト処理では,噴射した研磨材を前記金型表面上で滑動させている。 【0057】 このような滑動を生じさせるために使用する研磨材としては,前述した第1のブラスト処理において同様に研磨材の滑動を生じさせる場合に使用する研磨材と同様の研磨材を使用することができ,一例として弾性材料の表面に平均粒径1~50μmの研磨材を担持させ,及び/又は弾性材料中に同様の研磨材を練り込んだ弾性研磨材,又は最長部分が0.05~10mm程度の平面形状を成し,該平面形状における最長部分が厚みに対して1.5~100倍である板状研磨材を使用することができ,このような研磨材を,金型表面に対して90°未満,好ましくは傾斜角Xが0°≦X≦80°で噴射すると,噴射した研磨材を金型表面に沿って滑動させることができ,これによって,凸部の山頂部付近を略一定の高さで除去することにより,ワークの離型性の改善と,金型表面における部分的な荷重の集中を防止することができるようになっている。 【0058】 [金型の表面形状] 以上のようにして表面処理がされた金型の表面は,第2のプラスト処理で球状研磨材を噴射した場合,図1(C)中の拡大図に示すように,開口部の直径Rが10~150μm,深さDが2~20μmの半球状の凹部が形成されると共に,該凹部間に,凸部先端に形成された幅Wが20~60μmの平坦部が形成される。」 「【0069】 (2)実施例1 (半球状の凹部を形成) 加工対象 比較例と同一品 プラスト装置 不二製作所製ニューマプラスターSGK-3(サクション式) (1)第1プラスト処理 研磨材 不ニランダムWA♯220(平均粒子径60μm) 噴射圧力 0.3MPa (2)第2プラスト処理 研磨材 不ニガラスビーズFGB♯320(球形ガラスビーズ;平均粒子径40μm) 噴射圧力 0.3MPa (3)第3ブラスト処理 プラスト装置 不二製作所製LDQ-SR-3(プロワー方式) 研磨材 弾性体(ゴム)に砥粒 炭化珪素♯3000(平均粒子径4μm)を練り込んだもの 噴射圧力 0.06MPa 噴射角度 30度 表面粗さ Ra:0.09μm 【0070】 (3)実施例2 (谷底の尖った凹部を形成) 加工対象 比較例と同一品 プラスト装置 不二製作所製ニューマブラスターSGK-3 (1)第1プラスト処理 研磨材 不ニランダムWA♯220(平均粒子径60μm) 噴射圧力 0.3MPa (2)第2プラスト処理 研磨材 不ニランダム♯400(平均粒子径30μm) 噴射圧力 0.3MPa (3)第3ブラスト処理 プラスト装置 不二製作所製LDQーSR-3(プロワー方式) 研磨材 弾性体(ゴム)に砥粒,炭化珪素♯3000(平均粒子径4μm)を練り込んだもの 噴射圧力 0.06MPa 噴射角度 30度 表面粗さ Ra:0.11μm」 「 [図:0001393044000010.jpg] 」 (【図1】(B)(C)) 「 [図:0001393044000011.jpg] 」 (【図2】(B)(C)) b 甲第8号証に記載された技術的事項 甲第8号証には、上記各記載からみて、以下の技術的事項(以下「甲第8号証に記載された技術的事項」という。)が記載されていると認められる。 「第3のブラスト処理を、90°未満好ましくは0°以上80°以下の傾斜した入射角で金型表面に対し、噴射して行うこと。」 そして、甲第8号証に記載された技術的事項における「第3のブラスト処理」は本件発明1の「第2のブラスト加工」に対応し、以下同様に、「90°未満好ましくは0°以上80°以下の傾斜した入射角」は「所定の傾斜した角度」に、「金型表面」は「被処理成品の表面上の各部」に、それぞれ対応することから、甲第8号証に記載された技術的事項を本件発明1の用語を用いて記載すると以下のようになると認められる。 「第2のブラスト加工を、所定の傾斜した角度で被処理成品の表面上の各部に対し、噴射して行うこと。」 (イ) 甲第9号証の記載事項及び甲第9号証に記載された技術的事項 a 甲第9号証の記載事項 甲第9号証には以下のような記載がある。 「【請求項2】 前記第一の研磨工程が、前記第一の研磨粒子を略90°の角度で被研磨物表面に衝突させることを特徴とする請求項1記載の転動摺動装置部材の研磨方法。 【請求項3】 前記第二の研磨工程が、前記被研磨物の表面に対して前記第二の研磨粒子を0°以上90°以下の角度で衝突させることを特徴とする請求項1又は2記載の転動摺動装置部材の研磨方法。」 「【0011】 ここで、前記硬質な微粒子とは、被研磨物よりも硬度が高い微粒子であることを示し、具体的には、ビッカース硬度計で測定したときに、HV800以上(HV800~HV6000)である微粒子をいう。 本発明の請求項2に係る発明は、請求項1記載の転動摺動装置部材の研磨方法であって、前記第一の研磨工程が、前記第一の研磨粒子を略90°の角度で被研磨物表面に衝突させることを特徴とする。このように、第一の研磨粒子を被研磨物表面に衝突させる角度を略90°とすることにより、油溜まりを深く形成することができる。 【0012】 本発明の請求項3に係る発明は、請求項1又は2記載の転動摺動装置部材の研磨方法であって、前記第二の研磨工程が、前記被研磨物の表面に対して前記第二の研磨粒子を0°以上90°以下の角度で衝突させることを特徴とする。 このように、弾性体からなり且つ砥粒を含有する第二の研磨粒子を前記被研磨物の表面に対して0°以上90°以下の角度で衝突させるので、前記被研磨物の表面を鏡面状とすることができる。」 「【0025】 また、第一の研磨粒子2a及び第二の研磨粒子2bの粒度の測定方法としては、JIS R6001による電気抵抗法が挙げられる。第一の研磨粒子2a及び第二の研磨粒子2bの平均粒径の測定方法としては、JIS R6001による電気抵抗法が挙げられる。 第一の研磨工程においては、転動体1の表面に対して第一の研磨粒子2aを略90°で投射することが好ましい。 【0026】 第二の研磨工程において、転動体1の表面1Iに対して第二の研磨粒子2bを投射する角度は、0°以上90°以下が好ましく、45°以下がより好ましく、20°以下が更に好ましい。上記範囲において、投射角度が小さいほど、投射される第二の研磨粒子2bが転動体1の表面1aを滑走する距離が長くなり、研磨効率が向上する。 このように、第一の研磨工程において、第一の研磨粒子2aを転動体1の表面に対して略90°で投射することにより、油溜まりを転動体1の表面に深く形成することができる。また、第二の研磨工程において、第二の研磨粒子2bを用いることによって、第一の研磨工程において形成された油溜まりを維持したまま、表面を平滑化し、接触対象への損傷を低減した表面性状を形成することができる。」 「 [図:0001393044000012.jpg] 」(【表3】) 「 [図:0001393044000013.jpg] 」(【図1】) b 甲第9号証に記載された技術的事項 甲第9号証には、上記各記載からみて、以下の技術的事項(以下「甲第9号証に記載された技術的事項」という。)が記載されていると認められる。 「第二の研磨工程を、0°以上90°以下より好ましくは45°以下更に好ましくは20°以下の角度で転動体1の表面11に対し、投射して行うこと。」 そして、甲第9号証に記載された技術的事項における「第二の研磨工程」は本件発明1の「第2のブラスト加工」に対応し、以下同様に、「0°以上90°以下より好ましくは45°以下更に好ましくは20°以下の角度」は「所定の傾斜した角度」に、「転動体1の表面11」は「被処理成品の表面上の各部」に、「投射」は「噴射」に、それぞれ対応することから、甲第9号証に記載された技術的事項を本件発明1の用語を用いて記載すると以下のようになると認められる。 「第2のブラスト加工を、所定の傾斜した角度で被処理成品の表面上の各部に対し、噴射して行うこと。」 (ウ) 甲第10号証の記載事項及び甲第10号証に記載された技術的事項 a 甲第10号証の記載事項 甲第10号証には以下のような記載がある。 「【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は粉粒体噴射加工方法および加工装置に係り、とくに粉粒体を気体とともに固気2相流としてノズルから被加工物に対して噴射して被加工物の加工を行なうようにした粉粒体噴射加工方法および加工装置に関する。」 「【0002】 【従来の技術】研磨材を含んだ高圧空気の固気2相流をノズルから被加工物の表面に噴射し、高精度の溝状あるいは円筒状等の各種の形状の盲穴あるいは貫通穴等の穴部を研削加工する方法および装置が知られている。 【0003】このような加工においては、高圧空気の流れに研磨材を吸込み、図15に示すような丸形のノズル1の噴射口からワーク2に噴射するようにしたものである。ここでワーク2の表面には例えばレジスト3を縞状に形成しておき、レジスト3が形成されていない部分に加工溝4を形成する。ここでワーク2をレジスト3の縞の方向と直交する方向にゆっくり移動させるとともに、ノズル1をレジスト3の縞の方向に往復運動させるようにしている。」 「【0005】 【発明が解決しようとする課題】図15に示すような円形のノズル1による加工の場合は、図16に示すようにノズル1から出た研磨材がノズル1の軸線に対して360度広がってワーク2の表面に衝突する。そしてレジスト3の側面や加工溝4の側面に図17に示すように斜めの方向から広がりながら衝突することになり、このようにして研磨材は加工溝4の側面を研磨した後に跳返って加工溝4の中心に当り、この部分をも研削した後に加工溝4に沿ってその長さ方向に流れることになる。このためにガラスやセラミックの場合には、加工溝4が図17に示すようにその断面が曲面状に加工される欠点があった。このような欠点によって、プリンタ用ヘッドのインクの流路のように、溝の断面形状が矩形を必要とする場合には不適当であるという問題があった。」 「【0007】ここで丸いノズル1によって360度広がって噴射される研磨材は、低融点ガラスペースト6の加工溝4の側面に衝突して研磨し、跳返って溝4の底に当って溝4に沿って流動する。硬度が高い基盤5は加工されないために、溝4の底部に基盤5が露出するとそれ以上深くならない。この結果加工溝4の側面がえぐられてリブ形状になり、リブ強度の低下をもたらす。またプラズマディスプレイパネルに用いた場合には、その輝度の低下を招来する問題がある。」 「【0046】図11はノズル12の研磨材加速室56の傾きθ(図3参照)と等しい研磨材の噴射角度θと被加工物11の加工溝63のテーパ角度βとの関係を示したものである。被加工物11の加工溝63のテーパ角度βが0になるのは、ソーダガラスの場合で噴射角度θが30度のときで、PZTセラミックスの場合で噴射角度θが10度で、PDPリブ加工の場合で噴射角度θが5度である。PZTセラミックスはソーダガラスに比べて加工速度が約3倍速い。加工され易い材料は、小さい噴射角度θで被加工物の溝63のテーパ角度βをほぼ0にすることができる。このためにノズル加工室の傾きθは5~30度の範囲が適当と言える。」 「 [図:0001393044000014.jpg] 」(【図11】) 「 [図:0001393044000015.jpg] 」(【図15】) 「 [図:0001393044000016.jpg] 」(【図16】) 「 [図:0001393044000017.jpg] 」(【図17】) 「 [図:0001393044000018.jpg] 」(【図21】) b 甲第10号証に記載された技術的事項 甲第10号証には、上記各記載からみて、以下の技術的事項(以下「甲第10号証に記載された技術的事項」という。)が記載されていると認められる。 「粉粒体噴射加工を、斜めの方向からワーク2の表面に対し、平面図において360度広がって噴射して行うこと。」 そして、甲第10号証に記載された技術的事項における「粉粒体噴射加工」は本件発明1の「第1のブラスト加工」に対応し、以下同様に、「斜めの方向」は「所定の傾斜した角度」に、「ワーク2の表面」は「被処理成品の表面上の各部」に、「平面図において」は「平面視において」に、「360度広がって」は「少なくとも4方向より」に、それぞれ対応することから、甲第10号証に記載された技術的事項を本件発明1の用語を用いて記載すると以下のようになると認められる。 「第1のブラスト加工を、所定の傾斜した角度で被処理成品の表面上の各部に対し、平面視において少なくとも4方向より噴射して行うこと。」 (エ) 甲第11号証の記載事項及び甲第11号証に記載された技術的事項 a 甲第11号証の記載事項 甲第11号証には以下のような記載がある。 「【要約】 【課題】ブラスト加工により被加工物の加工面を研磨することが可能であると共に,長時間又は複数回にわたっての使用に耐えることが可能な研磨材及び該研磨材を用いたプラスト加工方法を提供する。」 「【請求項6】 前記入射角が0~90°であることを特徴とする請求項5記載のプラスト加工方法。」 「【0029】 さらに,前記本発明のブラスト加工方法は,前記本発明の研磨材を,被加工物の加工表面に対して所定角度に傾斜した入射角で噴射あるいは投射することを特徴とする(請求項5)。前記入射角は0~90°であり,好ましくは0~70°,より好ましくは0~60°,一例としては45° とすることができる(請求項6)。」 「【0040】 特に,前記入射角を0~70°の範囲とすることにより,前記加工表面に衝突した前記研磨材が反跳することを防止して,該加工表面上を良好に滑走させることができるため,前記加工表面に梨地状の凹凸が形成されるのを抑制しつつ,前記加工表面を研磨,切削するといった所望のブラスト加工をよリー層好適に行なうことができる。」 「【0043】 研磨材 本発明の研磨材は,母材となる弾性体に研削能力を有する砥粒を分散して成り,前記母材の弾性力を利用して,前記研磨材が被加工物の加工表面に衝突した際に該加工表面に打痕が形成されるのを好適に防止することを可能とするほか,前記研磨材における砥粒の含有率を所定範囲内として該研磨材の反発弾性率を抑えることにより,前記加工表面に衝突した前記研磨材が前述する母体の弾性力によって反跳するのを防止できるものであり、前記加工表面との衝突時に発生する衝撃を吸収しつつ該加工表面を滑走させて,前記加工表面に梨地状の凹凸が形成されることを防ぎつつ研磨や切削等のプラスト加工を施すことを可能とするものである。」 b 甲第11号証に記載された技術的事項 甲第11号証には、上記各記載からみて、以下の技術的事項(以下「甲第11号証に記載された技術的事項」という。)が記載されていると認められる。 「ブラスト加工を、0~90°の入射角で被加工物の加工表面に対し、噴射あるいは投射して行うこと。」 そして、甲第11号証に記載された技術的事項における「ブラスト加工」は本件発明1の「第2のブラスト加工」に対応し、以下同様に、「0~90°の入射角」は「所定の傾斜した角度」に、「被加工物の加工表面」は「被処理成品の表面上の各部」に、「噴射あるいは投射」は「噴射」に、それぞれ対応することから、甲第11号証に記載された技術的事項を本件発明1の用語を用いて記載すると以下のようになると認められる。 「第2のブラスト加工を、所定の傾斜した角度で被処理成品の表面上の各部に対し噴射して行うこと。」 (オ) 甲第12号証の記載事項及び甲第12号証に記載された技術的事項 a 甲第12号証の記載事項 甲第12号証には以下のような記載がある。 「【0079】 弾性研磨材20の噴射は,図4に示すように前記被加工物10(基板10’)の側部上の一点を加工点Pとし,前記加工点Pを通る前記被加工物の幅方向線Wと,前記幅方向線Wと直交し,前記加工点Pで前記基板10’の側部(側面)と接する接触線Tを想定し,前記加工点Pで前記幅方向線Wと交叉し,前記接触線Tに対し所定の傾斜角θを成す噴射方向Dで,前記加工点Pを中心とした所定の加工領域Fに対して前記弾性研磨材の噴射を行うと共に,前記加工領域Fが前記被加工物の周縁上で周方向〔図4(A),(B)中の矢印参照〕に一定の速度で移動すると共に,移動した各位置における加工点P’において前記噴射方向Dが前記傾斜角θに維持されるよう,前記噴射ノズル30と前記被加工物10(基板10’)とを相対的に移動させる。 【0080】 噴射方向Dと幅方向線Wとの交叉角は,図示の実施形態にあっては直角(90°)としているが,この交叉角rは,0~90°の範囲で傾斜させても良い。 【0081】 前記相対移動は,ノズル30を移動させても良く,基板101を移動させても良く,更には双方共に移動させても良い。 【0082】 傾斜角θは,これを小さくすればする程,弾性研磨材20が被加工物10(基板10’)の側面を滑走し易くなるが,あまり小さくし過ぎると切削性が低下する一方,これを大きくし過ぎると弾性研磨材20が被加工物10(基板10’)の側面上を滑走し難くなり,衝突時の衝撃が十分に吸収されずに被加工物10の側面に凹凸が形成されて必要な平滑性が得られない。このことから,傾斜角θは2~60°,好ましくは5~30°の範囲とする。 【0083】 また,被加工物10と噴射ノズル30の相対移動は,前述の加工領域F(加工点P)が3~1000mm/sec程度で被加工物10の周方向に移動するよう行う。 【0084】 なお,被加工物10が,図1を参照して説明したように,複数枚の基板10’を重ねたものである場合には,図5に示すように加工を,被加工物10の周方向(接触線Tの長手方向)のみならず,幅方向(幅方向線Wの長手方向)に対しても所定の速度で徐々に移動させ,前述した加工領域F(加工点P)の移動軌跡が,被加工物の外周上で螺旋を描くように移動させる。 【0085】 〔作用等〕 以上のようにして被加工物10の側部に対して圧縮空気と共に弾性研磨材20を噴射すると,噴射された弾性研磨材20は被加工物10(基板10’)の側面に対して衝突するが,衝突時の衝撃は,弾性研磨材20の母材21が変形することにより吸収されるため,基板10’に対しては大きな衝撃は加わらない。 【0086】 また,このようにして弾性研磨材20は,衝突時の衝撃を変形によって吸収すると共に,前述したように所定の傾斜角θに傾斜させた噴射方向Dで噴射されていることとも相挨って,基板10’の側面上での跳躍が抑制されることから,基板10’の側面表面に沿って基板10’の周方向に滑動すると共に,この滑動の際に弾性研磨材20の母材21中に分散し,又は母材21表面に付着させた砥粒22が切削力を発揮して,基板10’の側面における表面粗さが改善される。」 「【0096】 なお,使用したノズルの先端部内径は,直径5mmであり,図4,5に示す投射角θを20°とし,更に,ノズルの先端から被加工物の表面迄の距離を50mmとした。 ・・・ 【0100】 すなわち,弾性研磨材では,図6に示すように被加工物の表面に対して着地(衝突)した際に変形することで,衝突エネルギーが局部集中し難い構成となっているが,これを高い噴射圧力で噴射すると衝突エネルギーが局部的に集中して衝突部位が選択的に加工される結果,平滑面が得にくくなるためであり,噴射圧力は、このように表面粗さの調整に使用できる。また研磨材の粒径を小さくすることにより衝突エネルギーを小さくして最終仕上げ面にすることもできる。」 「 [図:0001393044000019.jpg] 」(【図4】) 「 [図:0001393044000020.jpg] 」(【図5】) 「 [図:0001393044000021.jpg] 」(【図6】) b 甲第12号証に記載された技術的事項 甲第12号証には、上記各記載からみて、以下の技術的事項(以下「甲第12号証に記載された技術的事項」という。)が記載されていると認められる。 「弾性研磨材20の噴射を、2~60°の傾斜角θで被加工物10の表面に対し、略円盤状の被加工物10の平面に直交する方向からみて周方向に全ての方向より噴射して行うこと。」 そして、甲第12号証に記載された技術的事項における「弾性研磨材20の噴射」は本件発明1の「第2のブラスト加工」に対応し、以下同様に、「2~60°の傾斜角θ」は「所定の傾斜した角度」に、「被加工物10の表面」は「被処理成品の表面上の各部」に、「全ての方向」は「少なくとも4方向」という限りにおいて「少なくとも4方向」に、それぞれ対応することから、甲第12号証に記載された技術的事項を本件発明1の用語を用いて記載すると以下のようになると認められる。 「第2のブラスト加工を、所定の傾斜した角度で被処理成品の表面上の各部に対し、少なくとも4方向より噴射して行うこと。」 (カ) 相違点2の容易想到性 引用発明及び甲第8号証-甲第12号証のそれぞれに記載された技術的事項に基いて、相違点2に係る本件発明1の発明特定事項に容易に想到し得るかについて、以下に個々に検討する。 a 引用発明及び甲第8号証に記載された技術的事項に基づく容易想到性 (a) 甲第8号証に記載された技術的事項 甲第8号証に記載された技術的事項は、上記(ア)bのとおり、相違点2に係る本件発明1の発明特定事項のうち、「第2ブラスト加工」を「平面視において少なくとも4方向より噴射して行う」ものに対応する事項を備えるものではない。 (b) 容易想到性 そうすると、引用発明に甲第8号証に記載された技術的事項を採用したとしても、相違点2に係る本件発明1の発明特定事項に至るものではないことから、相違点2に係る本件発明1の発明特定事項は、引用発明及び甲第8号証に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に想到し得るものであるとはいえない。 b 引用発明及び甲第9号証に記載された技術的事項に基づく容易想到性 (a) 甲第9号証に記載された技術的事項 甲第9号証に記載された技術的事項は、上記(イ)bのとおり、相違点2に係る本件発明1の発明特定事項のうち、「第2ブラスト加工」を「平面視において少なくとも4方向より噴射して行う」ものに対応する事項を備えるものではない。 (b) 容易想到性 そうすると、引用発明に甲第9号証に記載された技術的事項を採用したとしても、相違点2に係る本件発明1の発明特定事項に至るものではないことから、相違点2に係る本件発明1の発明特定事項は、引用発明及び甲第9号証に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に想到し得るものであるとはいえない。 c 引用発明及び甲第10号証に記載された技術的事項に基づく容易想到性 (a) 甲第10号証に記載された技術的事項 甲第10号証に記載された粉粒体噴射加工は、上記(ウ)bのとおり、「第1ブラスト加工」を「所定の傾斜した角度で被処理成品の表面上の各部に対し、平面視において少なくとも4方向より噴射して行う」ものではあると認められる。 (b) 容易想到性 そうすると、引用発明の「ソフトブラスト加工法」(第2ブラスト加工)に対して、甲第10号証に記載された「粉粒体噴射加工」(第1ブラスト加工)における噴射の態様は、異なる加工における研磨材の噴射に係る態様であり、採用する動機があるとは認められない。 したがって、相違点2に係る本件発明1の発明特定事項は、引用発明及び甲第10号証に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に想到し得るものであるとはいえない。 d 引用発明及び甲第11号証に記載された技術的事項に基づく容易想到性 (a) 甲第11号証に記載された技術的事項 甲第11号証に記載された技術的事項は、上記(エ)bのとおり、相違点2に係る本件発明1の発明特定事項のうち、「第2ブラスト加工」を「平面視において少なくとも4方向より噴射して行う」ものに対応する事項を備えるものではない。 (b) 容易想到性 そうすると、引用発明に甲第11号証に記載された技術的事項を採用したとしても、相違点2に係る本件発明1の発明特定事項に至るものではないことから、相違点2に係る本件発明1の発明特定事項は、引用発明及び甲第11号証に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に想到し得るものであるとはいえない。 e 引用発明及び甲第12号証に記載された技術的事項に基づく容易想到性 (a) 引用発明における軟質砥粒を使用したソフトブラスト加工法 上記ア(オ)c(a)のとおりである。 (b) 甲第12号証に記載された技術的事項 甲第12号証に記載された弾性研磨材20の噴射は、上記(オ)aの各記載からみて、 「被加工物10」は「略円盤状」であり、回転させながら側部(側面)に弾性研磨材20を噴射するものであると認められる。 また、甲第12号証に記載された技術的事項は、上記(オ)bのとおり、相違点2に係る本件発明1の発明特定事項のうち、「第2ブラスト加工」を「平面視において少なくとも4方向より噴射して行う」ものに対応する事項を備えるものではない。 (c) 容易想到性 そうすると、「被処理成品」である「誘電体」が「平らな円盤形状」である引用発明に対して、「被処理成品」である「被加工物10」が「略円盤状」ではあるものの回転させながら側部(側面)に弾性研磨材20を噴射する甲第12号証に記載された弾性研磨材20の噴射は、被処理成品を回転させながらという保持態様が大きく異なる上、さらに「側部(側面)に」という噴射部位も大きく異なるから、引用発明に甲第12号証に記載された技術的事項を採用する動機があるとは認められない。 また、甲第12号証に記載された技術的事項には、「平面視において少なくとも4方向より噴射して行う」ことが示されていないことから、仮に、引用発明に甲第12号証に記載された技術的事項を採用したとしても、相違点2に係る本件発明1の発明特定事項に至るものではなく、相違点2に係る本件発明1の発明特定事項は、引用発明及び甲第12号証に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に想到し得るものであるとはいえない。 したがって、相違点2に係る本件発明1の発明特定事項は、引用発明及び甲第12号証に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に想到し得るものであるとはいえない。 (6) 小活 よって、相違点1及び3について検討するまでもなく、本件発明1は、引用発明及び甲第5号証-甲第7号証に記載された技術的事項に基いて、また、引用発明及び甲第8号証-甲第12号証に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 2 本件発明2及び3について 本件発明2は、本件発明1である請求項1に係る発明の発明特定事項を全て含み、さらに、「第1のブラスト加工」及び「第2のブラスト加工」に関する特定事項を追加したものであるから、本件発明2は、本件発明1と同様に、引用発明及び甲第5号証-甲第12号証に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 また、本件発明3は、本件発明1である請求項1に係る発明の発明特定事項又は本件発明2である請求項2に係る発明の発明特定事項を全て含み、さらに、「被処理成品」に関する特定事項を追加したものであるから、本件発明3は、本件発明1及び2と同様に、引用発明及び甲第5号証-甲第12号証に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 第6 当審が取消理由通知(決定の予告)で採用しなかった特許異議申立理由についての判断 1 特許法第36条第6項第1号の理由 (1) 理由の概要 ア 訂正前の請求項1に記載された「半径R10μm以上の丸み付け」は半径の上限値を特定しておらず、元の凹凸形状を維持しながら研磨できない数値を含んでいることは明らかであるため、訂正前の請求項1及び当該請求項1を引用する訂正前の請求項2-3に係る特許は、発明の詳細な説明において「発明の課題が解決できることを当業者が 認識できるように記載された範囲」を超えるものである。 イ 実施例において半径の数値は2点のみ開示されているのに対し、訂正前の請求項1に記載された「半径R10μm以上」の全範囲において発明の課題を解決できるのか不明であるため、訂正前の請求項1及び当該請求項1を引用する訂正前の請求項2-3に係る特許は、発明の詳細な説明において「発明の課題が解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲」を超えるものである。 ウ よって、訂正前の請求項1-3に係る特許は、特許請求の範囲の記載に不備があるため、特許法第36条第6項第1号の規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、取り消されるべきものである。(特許異議申立書第6ページ第6行-第7ページ第15行) (2) 当審の判断 ア 上記(1)ア(半径Rの上限値の特定がない点)について (ア) 発明が解決しようとする課題について 本件特許発明が解決しようとする課題について、発明の詳細な説明には、次のような記載がある。 a 段落【0026】において、「被処理製品の表面に付与された凹凸形状を維持しつつ、該凹凸の凸部の上面,側面,及び凹部の底面等の表面全体を研磨することのできる硬質脆性材料製の被処理製品の表面加工方法を提供すること」を目的(課題)とする旨が記載されている。 b そして、かかる「凹凸形状を維持」することについて、上記段落に対して先行して記載されている段落【0024】において、「特許文献6には、・・・第3ブラスト処理は、第2ブラスト処理によって形成された凹凸の山頂部を削り落として平坦にするために行うものであり、第2ブラストによって形成された凹凸形状を維持したまま、凸部の側面や凹部の底面を研磨するものではない。」と記載されている。 そうすると、段落【0026】における「凹凸形状を維持」するというのは、少なくとも段落【0024】に記載された従来技術(特許文献6)のような「山頂部を削り落として平坦にする」ことがないようにすることを意味すると理解することができ、本件特許発明が解決しようとする課題は、このような理解のもとで、段落【0026】に記載されたものと認められる。 (イ) 本件発明1について a 本件発明1の理解 本件発明1では、訂正前の請求項1の「前記凸部の上面の端部に形成されたエッジに半径R10μm以上の丸み付けを行う」を「前記各凸部の上面の端部に形成されたエッジに元の半径Rよりも大きい半径R10μm以上の丸み付けを行う」に訂正している。 そして、本件発明1における「前記第1のブラスト加工によって形成した前記凹凸形状を維持したまま、・・・研磨すると共に、前記各凸部の上面の端部に形成されたエッジに元の半径Rよりも大きい半径R10μm以上の丸み付けを行う」という事項は、「山頂部を削り落として平坦にする」ことがないようにするような程度を意味すると理解される「凹凸形状を維持したまま」であって、その「維持」された「凹凸形状」のうちの「各凸部の上面の端部に形成されたエッジ」に「丸み付けを行う」程度が、「元の半径Rよりも大きい半径R10μm以上」、すなわち、「元の半径Rよりも大きい半径R」となり「半径R10μm以上」のような数値範囲に至ればよいことを特定しているものと認められる。 b 課題を解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲であること 上記aからすると、本件発明1では、上記(ア)の課題を解決できる範囲のものが特定されると認められ、本件発明1における各特定事項のうち「半径R」の数値範囲の上限値が特定されていないことだけをもって、「元の半径Rよりも大きい半径R」として「各凸部」の「エッジ」に「丸み付けを行う」のを超えて凹凸形状が維持されない程度をも含むものとまで解するべきものではないから、発明の詳細な説明において「発明の課題が解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲」を超えるものとまではいえない。 また、かかる「各凸部」の「エッジ」に「丸み付けを行う」ことは、発明が解決しようとする課題の前提となる、段落【0009】に記載された「パーティクルの発生を抑制するために、誘電体層13の基板吸着面は、・・・研磨によってエッジeを丸めておくことが好ましい。」とされる処理を施すことに対応するものであり、このようなことは特許請求の範囲の請求項1の記載から当業者が認識できるものと認められる。 イ 上記(1)イ(半径Rの数値は2点のみ開示の点)について (ア) 発明が解決しようとする課題について 上記ア(ア)と同様である。 (イ) 本件発明1について a 本件発明1の理解 上記ア(イ)aと同様である。 b 課題を解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲であること 上記aからすると、本件発明1では、上記(ア)の課題を解決できる範囲のものが特定されると認められる。 したがって、発明の詳細な説明において、本件発明1における各特定事項のうち「半径R」の数値範囲に含まれる具体的な数値の例として2点のみが開示されていることだけをもって、本件発明1が「発明の課題が解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲」を超えるものとまではいえない。 ウ 小括 以上のとおり、本件発明1-3に係る発明は、発明の詳細な説明に記載されたものであるから、特許法第36条第6項第1号に係る特許異議申立理由により本件発明1-3に係る特許を取り消すことはできない。 2 特許法第36条第6項第2号の理由 (1) 理由の概要 ア 訂正前の請求項1の「前記凸部」は「多数の凸部」の全て、あるいは、そのうちの1つのいずれを指すのかが不明であるため、訂正前の請求項1及び当該請求項1を引用する訂正前の請求項2-3に係る発明は明確でない。 イ 訂正前の請求項1に記載された「前記凹凸形状を維持したまま」の形状の維持の程度や「半径R10μm以上の丸み付けを行う」ことによる形状の変化の程度が不明であるため、元の凹凸形状がどの程度まで変化することを許容しているのかが不明であり、訂正前の請求項1及び当該請求項1を引用する訂正前の請求項2-3に係る発明は明確でない。 ウ よって、訂正前の請求項1-3に係る特許は、特許請求の範囲の記載に不備があるため、特許法第36条第6項第2号の規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、取り消されるべきものである。(特許異議申立書第7ページ第16行-第8ページ第11行) (2) 当審の判断 ア 上記(1)ア(「前記凸部」が指す「多数の凸部」が不明の点)について 本件発明1では、訂正前の請求項1の「前記凸部」を「前記各凸部」に訂正しており、これにより、該「前記各凸部」は、「多数の凸部」を構成する「各凸部」、すなわち、「多数の凸部」の全てを指すものであることが明確に理解できる。 イ 上記(1)イ(「前記凹凸形状を維持」する程度が不明の点)について (ア) 発明が解決しようとする課題における「凹凸形状を維持」が意味する程度について 上記1(2)ア(ア)において説示したのと同様に、発明の詳細な説明の【発明が解決しようとする課題】欄の「段落【0026】における「凹凸形状を維持」するというのは、少なくとも段落【0024】に記載された従来技術(特許文献6)のような「山頂部を削り落として平坦にする」ことがないようにすることを意味すると理解することができ、本件発明が解決しようとする課題は、このような理解のもとで、段落【0026】に記載されたものと認められる。」 (イ) 本件発明1における「前記凹凸形状を維持したまま」の形状の維持の程度や「半径R10μm以上の丸み付けを行う」ことによる形状の変化の程度について a 本件発明1の理解 上記(ア)の課題を解決するための手段である本件発明1の理解は、上記1(2)ア(イ)aにおいて説示したのと同様である。 すなわち、本件発明1では、訂正前の請求項1の「前記凸部の上面の端部に形成されたエッジに半径R10μm以上の丸み付けを行う」を「前記各凸部の上面の端部に形成されたエッジに元の半径Rよりも大きい半径R10μm以上の丸み付けを行う」に訂正している。 そして、本件発明1における「前記第1のブラスト加工によって形成した前記凹凸形状を維持したまま、・・・研磨すると共に、前記各凸部の上面の端部に形成されたエッジに元の半径Rよりも大きい半径R10μm以上の丸み付けを行う」という事項は、「山頂部を削り落として平坦にする」ことがない程度を意味すると理解される「凹凸形状を維持したまま」であって、その「維持」された「凹凸形状」のうちの「各凸部の上面の端部に形成されたエッジ」に「丸み付けを行う」程度が、「元の半径Rよりも大きい半径R10μm以上」、すなわち、「元の半径Rよりも大きい半径R」となり「半径R10μm以上」のような数値範囲に至ればよいことを特定しているものと認められる。 b 本件発明1の明確性 上記aのように明確に理解されることから、本件発明1は明確である。 ウ 小括 以上のとおり、本件発明1-3は明確であるから、特許法第36条第6項第2号に係る特許異議申立理由により本件発明1-3に係る特許を取り消すことはできない。 第7 特許異議申立人による令和3年11月11日提出の意見書における主張及び令和4年4月19日提出の回答書における主張について 1 令和3年11月11日提出の意見書における主張について (1) 取消理由通知書(決定の予告)により通知された取消理由(進歩性欠如の取消理由)が解消していないとの主張について(意見書の4「意見の内容」4-2) 当審では、特許異議申立人の上記主張に対して、意見書に添付された甲第5号証-甲第7号証に記載された技術的事項(上記第5の1(5)ア)も含めて本件発明の進歩性について検討し、その判断は上記第5に記載したとおりである。 (2) 訂正後の請求項1-3の記載は不明確であるとの主張について(意見書の4「意見の内容」4-3) ア 特許異議申立人の主張の概要 特許異議申立人は、令和3年11月11日提出の意見書において、本件発明1は、「平面視において少なくとも4方向より噴射して行うこと」という発明特定事項を含み、「「少なくとも4方向」がどのような関係にあるものまでが本件訂正発明の範囲に含まれるのか」、また、「被加工物表面に対する入射角がどの範囲のものまでが本件訂正発明の範囲に含まれるのか」について不明であるから、本件発明1-3は不明確であり、特許法第36条第6項第2号に規定される要件(明確性要件)を満たしていない旨主張している。 イ 上記アの主張の検討 しかしながら、本件発明1の発明特定事項における「少なくとも4方向」については、噴射する方向の数の下限値を特定するものであって、各方向の関係まで特定しないとその方向の数が明確でないとまではいえない。 また、「入射角」についても、本件発明1において「所定の傾斜角度で」と特定されており、具体的な数値範囲までは特許請求の範囲の記載として必ずしも必要とされるものであるとはいえない。 したがって、本件発明1は明確であり、特許法第36条第6項第2号に規定される要件(明確性要件)を満たしているものである。 2 令和4年4月19日提出の回答書における主張について 当審では、回答書に添付された甲第8号証-甲第12号証に記載された技術的事項(上記第5の1(5)イ)も含めて本件特許発明の進歩性について検討し、その判断は上記第5に記載したとおりである。 第8 むすび 以上のとおりであるから、本件発明1-3は、取消理由通知書(決定の予告)にて通知した取消理由及び特許異議申立書に記載した異議申立理由によっては、請求項1-3に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に請求項1-3に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2020-700570

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