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特許異議申立

2023-700602

歯ブラシ

審判番号
2023-700602
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2018-210804
登録番号
7190872
請求日
2023年06月08日
審決日
2023年10月04日
公報発行日
2023年11月24日
結論
維持
当事者
  • 【権利者】ライオン株式会社
  • 【権利者代理人】田▲崎▼ 聡
  • 【権利者代理人】川越 雄一郎
  • 【権利者代理人】加藤 広之
  • 【異議申立人】高松 直樹
審判長/審判官
  • 審判長 窪田 治彦
  • 審判官 関口 哲生
  • 審判官 長馬 望
分類
P1651.113-Y (A46B) / P1651.121-Y (A46B)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第1項
データ出所
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特許第7190872号発明「歯ブラシ」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7190872号の請求項1~14に係る特許を維持する。

理由

理 由 第1 手続等の経緯 特許第7190872号の請求項1~14に係る特許についての出願は、平成30年11月8日の出願であって、令和4年12月8日に特許権の設定登録がされ、令和4年12月16日に特許掲載公報が発行された。 これに対し、特許異議申立人高松直樹より、令和5年6月8日に、請求項1~14に係る特許について特許異議の申立てがされたものである。 第2 本件発明 特許第7190872号の請求項1~14の特許に係る発明(以下、請求項順に「本件発明1」等といい、総称して「本件発明」という。)は、特許請求の範囲の請求項1~14に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。 「【請求項1】 ハンドル部と、 前記ハンドル部の先端から延長されたネック部と、 前記ネック部の先端に設けられたヘッド部とを含むブラシ本体を備え、 前記ヘッド部の植毛面に複数の毛束が植設された歯ブラシであって、 前記ブラシ本体は、前記ヘッド部から前記ハンドル部に向かって前記ネック部の厚みが連続的に増加する形状を有し、 且つ、 前記ヘッド部における厚みD1が、2~4mmであり、 前記ネック部における最小厚みD2が、3~4.5mmであり、 前記ハンドル部における最大厚みD3が、13~16mmであり、 前記最大厚みD3/前記厚みD1で表される比が3.5~7であり、 前記最大厚みD3/前記最小厚みD2で表される比が3~5であり、 側面視において、前記ブラシ本体は、前記植毛面に連続した第1の略直線領域S1と、前記第1の略直線領域S1から第1の変曲点P1を介して前記ブラシ本体の植毛面側に曲率中心を有し、前記最小厚みD2よりも厚くなる第1の曲線領域E1と、前記第1の曲線領域E1から第2の変曲点P2を介して前記ブラシ本体の背面側に曲率中心を有する第2の曲線領域E2と、を有し、 前記ブラシ本体を正面視したときに、前記ブラシ本体の幅は、前記ネック部から前記ハンドル部にかけて広がり、かつ前記ネック部の最小幅W2よりも幅が広がり始める位置は、前記ネック部に位置し、 前記第1の変曲点P1は、前記最小幅W2が広がり始める位置よりも前記ヘッド部側に位置していることを特徴とする歯ブラシ。 【請求項2】 前記第1の曲線領域E1の曲率半径R1が、前記第2の曲線領域E2の曲率半径R2よりも小さいことを特徴とする請求項1に記載の歯ブラシ。 【請求項3】 前記第1の変曲点P1と前記第2の変曲点P2との間の距離が、10~45mmであることを特徴とする請求項1又は2に記載の歯ブラシ。 【請求項4】 前記第2の変曲点P2と前記最大厚みD3となる位置との間の距離が、45~65mmであることを特徴とする請求項1~3の何れか一項に記載の歯ブラシ。 【請求項5】 前記ヘッド部と前記ネック部との境界Oと、前記最大厚みD3となる位置との間の距離が、70~110mmであることを特徴とする請求項1~4の何れか一項に記載の歯ブラシ。 【請求項6】 前記ブラシ本体を側面視したときに、 前記ヘッド部の背面に連続した第2の略直線領域S2と、 前記第2の略直線領域S2から第3の変曲点P3を介して湾曲する第3の曲線領域E3を有することを特徴とする請求項1~5の何れか一項に記載の歯ブラシ。 【請求項7】 前記第3の変曲点P3が、前記第1の変曲点P1よりも前記ハンドル部側に位置することを特徴とする請求項6に記載の歯ブラシ。 【請求項8】 前記第3の曲線領域E3の曲率半径R3が、前記第1の曲線領域E1の曲率半径R1よりも大きいことを特徴とする請求項6又は7に記載の歯ブラシ。 【請求項9】 前記第3の曲線領域E3は、前記ブラシ本体の植毛面側に曲率中心を有することを特徴とする請求項6~8の何れか一項に記載の歯ブラシ。 【請求項10】 前記ブラシ本体を側面視したときに、前記植毛面の延長ラインが前記ハンドル部の全長に亘って前記ブラシ本体と重なる位置にあることを特徴とする請求項1~9の何れか一項に記載の歯ブラシ。 【請求項11】 前記ブラシ本体を構成する樹脂の曲げ弾性率が、1000MPa以上、2800MPa以下であることを特徴とする請求項1~10の何れか一項に記載の歯ブラシ。 【請求項12】 前記ブラシ本体を構成する樹脂が、ポリプロピレン樹脂であることを特徴とする請求項1~11の何れか一項に記載の歯ブラシ。 【請求項13】 前記ハンドル部の表面を被覆する被覆材を有し、 前記被覆材は、前記ブラシ本体を構成する樹脂よりも軟質の樹脂からなることを特徴とする請求項1~12の何れか一項に記載の歯ブラシ。 【請求項14】 前記被覆材がエラストマー樹脂又はシリコーン樹脂からなることを特徴とする請求項13に記載の歯ブラシ。」 第3 特許異議の申立ての理由の概要 特許異議申立人(以下、「申立人」という。)が主張する特許異議の申立ての理由の概要は次のとおりである。 1 理由1(新規性違反) 本件発明1、2、6~9、12~14は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記甲第1号証(以下、証拠の番号に従って「甲1」などともいう。)に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、請求項1、2、6~9、12~14に係る特許は同法第29条第1項の規定に違反してされたものであるため、同法第113条第2号により取り消されるべきである。 2 理由2(進歩性違反) 本件発明1~14は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記甲1に記載された発明及び甲2~甲4に記載された事項に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであり、請求項1~14に係る特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるため、同法第113条第2号により取り消されるべきである。 (証拠方法) 甲第1号証:特開2013-43040号公報 甲第2号証:特開2016-193073号公報 甲第3号証:特開2002-336049号公報 甲第4号証:特開2005-199035号公報 第4 当審の判断 1 各甲号証の記載事項及び各甲号証に記載された発明 (1)甲1の記載事項及び甲1に記載された発明 ア 甲1の記載事項(下線は理解のために当審で付したものである。以下、同様。) (ア)「【0001】 本発明は、歯ブラシに関する。」 (イ)「【発明が解決しようとする課題】 【0005】 しかしながら、特許文献1の技術では、いわゆるネック部が太くなり、口腔内での操作性が損なわれる。特許文献2の技術では、発泡を制御する必要があるため、製造が煩雑でコスト高となる。特許文献3~4の技術では、清掃対象部への当たり心地が未だ満足できるものではない。 そこで、本発明は、ハンドル部を太くしても、手指が滑りにくく、当たり心地に優れる歯ブラシを目的とする。」 (ウ)「【発明の効果】 【0007】 本発明の歯ブラシによれば、ヘッド部と該ヘッド部に延設されたハンドル部とを備えるハンドル体と、前記ヘッド部の植毛面に植設された毛束とを備え、前記ハンドル体は、硬質樹脂で構成された本体と、該本体の少なくとも一部を軟質樹脂で被覆した被覆体とを備える歯ブラシにおいて、前記本体には、前記ハンドル体の幅方向に延びる2以上の凹条が形成され、任意の前記凹条と他の任意の前記凹条との間が中間部とされ、前記被覆体は、前記中間部と、前記の任意の凹条と、前記の他の任意の凹条とを被覆しているため、ハンドル部を太くしても、手指が滑りにくく、当たり心地に優れる。 本発明の歯ブラシによれば、前記中間部の断面形状は、前記植毛面に略直交する方向が短径とされた略楕円形であるため、当たり心地をより優れたものにできる。 本発明の歯ブラシによれば、前記ハンドル部には、グリップ部と、該グリップ部と前記ヘッド部とを接続するネック部とが形成され、前記グリップ部には、後端寄りに、相対的に断面積が大きい拡径部が形成され、前記中間部は、前記拡径部と前記ネック部との間に形成されているため、よりボリューム感のある外観を形成しつつ、手指が滑りにくく、当たり心地に優れる。」 (エ)「【0009】 本発明の一実施形態にかかる歯ブラシについて、以下に図面を参照して説明する。 図1~3に示すように、歯ブラシ1は、ハンドル部2と、ハンドル部2の先端に形成された平面視略矩形のヘッド部5とが形成されたハンドル体を備えるものであり、ハンドル体は、先端51から後端41にかけて、全体として長尺状のものとされている。ハンドル部2は、グリップ部4と、グリップ部4とヘッド部5との間に形成されたネック部6とを備えるものである。ハンドル体は、本体10と、本体10の一部を被覆する被覆体20とを備えるものである。 【0010】 ヘッド部5の一方の面は、植毛面52とされ、植毛面52には、複数の植毛穴54が形成されている。植毛穴54の数量は特に限定されず、例えば、20~80個程度とされる。植毛面52は、複数の用毛を束ねた毛束が植毛穴54に植毛され、植毛部が形成される面である。なお、図1~2において、毛束の図示は省略されている。」 (オ)「【0015】 先端51から後端41までの長さ、即ち、歯ブラシ1の全長L1(図1)は、歯ブラシ1の使用性等を勘案して決定でき、例えば、150~210mmが好ましく、170~195mmがより好ましい。 グリップ部4の幅は、歯ブラシ1の使用性等を勘案して決定でき、例えば、5~20mmとされる。グリップ部4における最も拡幅した部分(最拡幅部)の幅W1(図1)は、好ましくは12~16mmとされ、グリップ部4において、被覆体20と拡径部42との間で、最も縮幅した部分(最縮幅部)の幅W2(図1)は、好ましくは6~12mmとされる。本実施形態において、最拡幅部の幅W1は拡径部42の最大幅である。 【0016】 グリップ部4の厚みは、歯ブラシ1の使用性等を勘案して決定でき、例えば、5~20mmとされる。グリップ部4における最も厚みが厚い部分(最厚部)の厚みT1(図2)は、好ましくは、12~16mmとされ、グリップ部4において、最も厚みが薄い部分(最薄部)の厚みT2は、好ましくは、5~10mmとされる。本実施形態において、最厚部の厚みT1は、拡径部42の最大厚みであり、最薄部の厚みT2は、表面滑止部22と裏面滑止部24とが形成された領域に形成される。 【0017】 ネック部6の長さL2(図1)は、本体10の材質等を勘案して決定でき、例えば、20~70mmとされる。 ネック部6の幅W3(図1)は、本体10の材質等を勘案して決定でき、例えば、3~7mmとされる。 ネック部6の厚みT3(図2)は、本体の10の材質等を勘案して決定でき、例えば、3~7mmとされる。 【0018】 ヘッド部5の長さL3(図1)は、本体10の材質等を勘案して決定でき、例えば、15~50mmとされる。 ヘッド部5の幅W4(図1)は、本体10の材質等を勘案して決定でき、例えば、5~15mmとされる。 ヘッド部5の厚みは、ネック部6の厚みT3と同様である。」 (カ)「【0023】 本体10は、硬質樹脂により一体成形されたものであり、歯ブラシ1に求める剛性や機械特性等を勘案して決定でき、例えば、曲げ強さ3000N/cm2超のものが挙げられ、好ましくは曲げ強度4000~15000N/cm2のものが挙げられる。このような硬質樹脂としては、例えば、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリシクロへキシレンジメチレンテレフタレート(PCT)、ポリアセタール(POM)、ポリスチレン(PS)、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン樹脂(ABS)、セルロースプロピオネート(CP)、ポリアリレート、ポリカーボネート、アクリロニトリル・スチレン共重合樹脂(AS)等が挙げられ、中でもPBTが好ましい。これらは1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。 【0024】 被覆体20を構成する軟質樹脂は、ハンドル部2を把持した際に、手指になじむような弾力を有するものであればよく、ショアAが好ましくは90以下、より好ましくは10~40とされる。このような軟質樹脂としては、例えば、ポリオレフィン系エラストマー、スチレン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリウレタン形熱可塑性エラストマー等のエラストマー樹脂、シリコン等が挙げられる。 また、被覆体20を構成する軟質樹脂は、可視光に対して透明又は半透明なものであってもよいし、可視光に対して透明性を有しないものであってもよい。ただし、被覆体20を通して第一の蛇腹部13a又は第二の蛇腹部13bを視認できると、意匠性の向上が図れることから、被覆体20を構成する樹脂は、可視光に対して透明又は半透明が好ましい。」 (キ)甲1には、以下の図が示されている。 「【図1】 【図2】 [図:0001403683000001.jpg] 」 (ク)図2の記載において、以下の点A~Dを定める。図2に基づき、点A~Dを付した以下の図を参考図1という。 「(参考図1) [図:0001403683000002.jpg] 」 そして、点A~Dに関して、以下のことが把握できる。 (ク-1)参考図1において、点Aは、矢印で示した縦線2本で示される箇所に定め、点Cは、矢印で示した薄い縦線1本で示される箇所に定めた。そして、前記(オ)並びに図1及び2の記載から、ネック部6の範囲は、図1のL2の範囲であるところ、図1のL2の範囲は、参考図1において、点Aから点Cの範囲であることが看取される。また、参考図1の点Aから点Cの範囲は、ネック部6の範囲であるといえる。 (ク-2)参考図1において、ネック部6の厚さが曲線的に変化することが看取されるところ、即ち、点Bは、変曲点となっている箇所に定めた。 (ク-3)参考図1において、点Dは、歯ブラシの略中央の山の頂点の箇所に定めた。そして、点Dは、グリップ部4内にあり、また、変曲点となっていることが看取される。 (ク-4)参考図1の点Bから点Cにおいて、厚みが曲線的に増加することが看取され、即ち、グリップ部4に向かってネック部6の厚みが連続的に増加する形状を有していることが看取される。 (ケ)図2及び参考図1の記載から、ネック部6の厚みは、点Aでは、厚みT3であるところ、厚みT3が点Bまでつづき、更に、点Cでは、厚みがT3よりも大きくなっていることが看取され、即ち、ネック部6における最小厚みは、厚みT3であることがわかる。 (コ)前記(オ)の記載から、(グリップ部4における最厚部の厚みT1)/(ヘッド部5における厚みT3)で表される比は、(12~16mm)/(3~7mm)の計算式から、1.7(12/7)~5.3(16/3)の範囲を導くことができる。 また、(グリップ部4における最厚部の厚みT1)/(ネック部6における最小厚みT3)で表される比は、(12~16mm)/(3~7mm)の計算式から、1.7~5.3の範囲を導くことができる。 (サ)前記エ並びに図2及び参考図1の記載から、側面視において、ヘッド部5の植毛面52に連続した第1直線領域と、第1直線領域から点Bを介して、前記植毛面52側に曲率中心を有し、ネック部6における最小厚みT3よりも厚くなる第1曲線領域が点Dまでつながることが看取され、更に、点Dを介してハンドル体の植毛面側に曲率中心を有する第2曲線領域があることが看取される。 イ 甲1に記載された発明 以上から、甲1には、以下の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されている。 「グリップ部4と、 前記グリップ部4の先端から延長されたネック部6と、 前記ネック部6の先端に設けられたヘッド部5とを含むハンドル体を備え、 前記ヘッド部5の植毛面52に複数の毛束が植毛された歯ブラシ1であって、 前記ハンドル体は、前記ヘッド部5から前記グリップ部4に向かって前記ネック部6の厚みが連続的に増加する形状を有し、 且つ、 前記ヘッド部5における厚みT3が、3~7mmであり、 前記ネック部6における最小厚みT3が、3~7mmであり、 前記グリップ部4における最厚部の厚みT1が、12~16mmであり、 前記最厚部の厚みT1/前記厚みT3で表される比が1.7~5.3であり、 前記最厚部の厚みT1/前記最小厚みT3で表される比が1.7~5.3であり、 側面視において、前記ハンドル体は、前記植毛面52に連続した第1直線領域と、前記第1直線領域から点Bを介して前記ハンドル体の植毛面52側に曲率中心を有し、前記最小厚みT3よりも厚くなる第1曲線領域と、 前記第1曲線領域から点Dを介して前記ハンドル体の植毛面52側に曲率中心を有する第2曲線領域と、を有する歯ブラシ1。」 (2)甲2の記載事項 ア 「【0005】 本発明は、以上のような点を考慮してなされたもので、ヘッド部を薄型化しても反りを抑制できる歯ブラシを提供することを目的とする」 イ 「【0006】 本発明の第1の態様に従えば、植毛面に複数の植毛穴が設けられたヘッド部を備え、用毛の毛束が前記植毛穴に植設されてなる歯ブラシであって、前記ヘッド部の最小厚さは、2.0mm以上、3.5mm以下であり、前記ヘッド部の最小厚さをT、前記ヘッド部の短手方向の最大幅をW、前記植毛穴の直径をd、前記植毛穴の深さをD、前記ヘッド部の長手方向における前記植毛穴が設けられた範囲の長さをL、前記長手方向における前記植毛穴の配置ピッチをl、前記短手方向の前記植毛穴の数をnとしたときに、(T-D)×(l-d)×(W-n×d)×(T/L/W)×100で表される値が1.5以上、4.0以下であることを特徴とする歯ブラシが提供される。 【0007】 本発明の歯ブラシにおいては、前記値は、2.0以上、3.5mm以下であることが好ましい。 【0008】 本発明の歯ブラシにおいては、前記ヘッド部の最小厚さは、2.5mm以上、3.5mm以下であることが好ましい。」 ウ 「【0013】 本実施形態の歯ブラシ1は、用毛の毛束11が植毛されたヘッド部10と、ヘッド部10の基端側から延設されたネック部20と、ネック部20の基端側から延設されたハンドル部30(以下、ヘッド部10とネック部20とハンドル部30とを合わせてハンドル体という。)とを備える。 ・・・ 【0015】 図2に示すように、ヘッド部10の表面である植毛面12には、複数の植毛穴12aが形成され、その植毛面12に毛束11が植毛されている。ヘッド部10の最小厚さは、2.0mm以上、3.5mm以下である。ヘッド部10の最小厚さは、2.5mm以上、3.5mm以下であることがより好ましい。ヘッド部10の最小厚さが前記上限値以下であれば、歯ブラシ1の口腔内の操作性を向上させることができ、前記下限値以上であれば、ヘッド部10の強度低下を防止できる。」 エ 「【0028】 (使用材料) ハンドル部;ポリブチレンテレフタレート(PBT):曲げ弾性率2300MPa 用毛;ポリブチレンテレフタレート(PBT):東レモノフィラメント株式会社製アクラス」 オ 「【図1】 [図:0001403683000003.jpg] 」 (3)甲3の記載事項 ア 「【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、ブラッシング中に握り部が水や唾液、歯磨剤などで濡れても、手指が滑ることなくしっかりと安定に保持することができ、ブラッシングのしやすい歯ブラシに関する。」 イ 「【0006】本発明は、上記問題を解決するためになされたもので、手にフィットして握りやすく、また、ハンドルを持つ向きを変えても滑り止め効果を確実に発揮でき、しかも、手指に当たる感触も良好な滑り止め付きの歯ブラシを提供することを目的とするものである。」 ウ 「【0007】 【課題を解決するための手段】上記課題を解決するため、本発明は次のような手段を採用した。すなわち、請求項1記載の歯ブラシは、握り部の長さがハンドル全長の1/2以上の長さである歯ブラシにおいて、前記握り部の最大幅および/または最大厚みの位置が握り部全長の首部側から30~70%、好ましくは35~65%、より好ましくは40~60%の範囲内に存在することを特徴としている。 【0008】請求項2記載の歯ブラシは、請求項1記載の発明において、前記握り部の最大幅および/または最大厚みと握り部の長さとの比率が0.1~0.2、好ましくは0.12~0.18であることを特徴している。」 エ 「【0040】 【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。図1および図2に、本発明に係る歯ブラシの一実施の形態を示す。図1(a)は歯ブラシハンドルの平面図、図1(b)はその側面図、図1(c)はその背面図、図2(a)~(j)は図1(b)中のA-A'~J-J'線各位置における拡大断面図である。また、この実施の形態に係る歯ブラシの実際の寸法図を図3および図4に示す。図3(a)~(c)は図1(a)~(c)の各図に対応する寸法図(単位:mm)、図4(a)~(j)は図2(a)~(j)の各図に対応する寸法図(単位:mm)である。なお、各図において、1はヘッド部、2はヘッド部1の植毛面、3は植毛面2に穿たれた植毛穴、4は首部、5は握り部である。植毛穴3に植毛された毛束については図示を省略した。 【0041】この実施の形態に係る歯ブラシは、ヘッド部1と握り部5との間を断面略円形状(図2(b)参照)をした細長い首部4で連結し、この首部4に連なる握り部5は、握り部中央付近が滑らかに膨らんだ断面略円形状の柄部として構成されている。そして、この握り部5には、首部4との境界位置に、リング状の凹凸部からなる第1の滑り止め部6が形成されている。」 オ 「【図1】 [図:0001403683000004.jpg] 【図2】 [図:0001403683000005.jpg] 【図3】 [図:0001403683000006.jpg] 」 (4)甲4の記載事項 ア 「【技術分野】 【0001】 本発明は、ソフトで当たり心地が優しく、高い刷掃実感とマッサージ感および優れた歯垢除去力を得ることができる、歯周病や歯肉炎の治療あるいは予防用として好適な歯ブラシに関するものである。」 イ 「【0015】 本発明は、上記のような問題を解決するためになされたもので、ソフトで当たり心地が優しく、高い刷掃実感とマッサージ感および優れた歯垢除去力を得ることができ、重度あるいは軽度の歯周病・歯肉炎の治療または予防用として好適な歯ブラシを提供することを第1の目的とするものである。さらに、植毛強度が高くて毛抜けがなく、ヘッド部のワレや白化も少ない高品質な歯ブラシを提供することを第2の目的とするものである。」 ウ 「【0016】 上記目的を達成するため、請求項1記載の歯ブラシは、合成樹脂用毛を束ねて毛束とし、該毛束をヘッド部の植毛穴に植設した歯ブラシにおいて、前記植毛穴の横断面積を直径1.8mm以上の円形穴もしくは該円形穴相当の大きさとするとともに、該植毛穴に植設される合成樹脂用毛の横断面積を直径0.127mm(5mil)以下の円形毛もしくは該円形毛相当の大きさとしたことを特徴とするものである。」 エ 「【図面の簡単な説明】 【0090】 ・・・ 【図9】本発明を適用して構成した歯ブラシハンドルの具体的な形状例を示すもので、(a)は平面図、(b)は側面図である。」 オ 「【図9】 [図:0001403683000007.jpg] 」 2 本件発明について (1)本件発明1について ア 本件発明1と甲1発明の対比 本件発明1と甲1発明とを、その有する機能に照らして対比すると、甲1発明の「グリップ部4」は本件発明1の「ハンドル部」に相当し、同様に、「ネック部6」は「ネック部」に、「ヘッド部5」は「ヘッド部」に、「ハンドル体」は「ブラシ本体」に、「植毛面52」は「植毛面」に、「植毛」は「植設」に、「歯ブラシ1」は「歯ブラシ」に、「ヘッド部5における厚みT3」は「ヘッド部における厚みD1」に、「ネック部6における最小厚みT3」は「ネック部における最小厚みD2」に、「グリップ部4における最厚部の厚みT1」は「ハンドル部における最大厚みD3」に、「第1直線領域」は「第1の略直線領域S1」に、「点B」は「第1の変曲点P1」に、「第1曲線領域」は「第1の曲線領域E1」に、「点D」は「第2の変曲点P2」に、「第2曲線領域」は「第2の曲線領域E2」に、それぞれ相当する。 そうすると、本件発明1と甲1発明とは、以下の点で一致し、相違する。 (一致点) 「ハンドル部と、 前記ハンドル部の先端から延長されたネック部と、 前記ネック部の先端に設けられたヘッド部とを含むブラシ本体を備え、 前記ヘッド部の植毛面に複数の毛束が植設された歯ブラシであって、 前記ブラシ本体は、前記ヘッド部から前記ハンドル部に向かって前記ネック部の厚みが連続的に増加する形状を有し、 且つ、 側面視において、前記ブラシ本体は、前記植毛面に連続した第1の略直線領域S1と、前記第1の略直線領域S1から第1の変曲点P1を介して前記ブラシ本体の植毛面側に曲率中心を有し、前記最小厚みD2よりも厚くなる第1の曲線領域E1と、前記第1の曲線領域E1から第2の変曲点P2を介して第2の曲線領域E2と、を有する歯ブラシ。」 (相違点1) 本件発明1は「前記ヘッド部における厚みD1が、2~4mmであり、 前記ネック部における最小厚みD2が、3~4.5mmであり、 前記ハンドル部における最大厚みD3が、13~16mmであり、 前記最大厚みD3/前記厚みD1で表される比が3.5~7であり、 前記最大厚みD3/前記最小厚みD2で表される比が3~5であ」るのに対し、 甲1発明は、前記ヘッド部5における厚みT3が、3~7mmであり、 前記ネック部6における最小厚みT3が、3~7mmであり、 前記グリップ部4における最厚部の厚みT1が、12~16mmであり、 前記最厚部の厚みT1/前記厚みT3で表される比が1.7~5.3であり、 前記最厚部の厚みT1/前記最小厚みT3で表される比が1.7~5.3であり、 甲1発明には、本件発明1と重複する数値範囲はあるものの、本件発明1の数値範囲から外れた数値範囲も含む点。 (相違点2) 本件発明1は、第2の曲線領域E2が「前記ブラシ本体の背面側に曲率中心を有する」のに対し、甲1発明は、第2曲線領域が前記ハンドル体の植毛面52側に曲率中心を有する点。 (相違点3) 本件発明1は、「前記ブラシ本体を正面視したときに、前記ブラシ本体の幅は、前記ネック部から前記ハンドル部にかけて広がり、かつ前記ネック部の最小幅W2よりも幅が広がり始める位置は、前記ネック部に位置し、前記第1の変曲点P1は、前記最小幅W2が広がり始める位置よりも前記ヘッド部側に位置して」いるのに対し、甲1発明は、ハンドル体を正面視したときに、ネック部6の最小幅よりも幅が広がり始める位置がどこであるのか不明であり、また、点Bとネック部6の最小幅よりも幅が広がり始める位置との位置関係も不明である点。 イ 判断 事案に鑑み、まず、相違点3について検討する。 (ア)甲1には、ネック部6の幅について、段落0017に「ネック部6の幅W3(図1)は、本体10の材質等を勘案して決定でき、例えば、3~7mmとされる。」(前記1(1)ア(エ)を参照)と記載されるのみで、ネック部6内で幅が変化して、最小幅及び最小幅が広がり始める位置が存在することについて、何ら開示されていない。また、図1等の図面を参照するも、ネック部6の最小幅について看取できず、ネック部6内で幅が変化して、最小幅及び最小幅が広がり始める位置が存在することについて、何ら開示されていない。 そうすると、甲1に記載されている事項、又は、記載されているに等しい事項から、本件発明1の前記相違点3に係る構成について、何ら把握することができない。 したがって、前記相違点3は、実質的な相違点であるといえる。 よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1発明であるとはいえない。 (イ)甲2には、ヘッド部を薄型化しても反りを抑制できる歯ブラシが開示されているところ、ネック部の幅について、何ら説明がされていない。また、歯ブラシ全体を示した図1を参照するも、図1には、ヘッド部10、ネック部20、ハンドル部30が開示されているのみで、ネック部の幅について、何ら開示されておらず、ネック部20内で幅が変化して、最小幅及び最小幅が広がり始める位置が存在することについても不明である。 したがって、甲2には、本件発明1の前記相違点3に係る構成は、何ら開示されていない。 (ウ)甲3には、手にフィットして握りやすく、また、ハンドルを持つ向きを変えても滑り止め効果を確実に発揮でき、しかも、手指に当たる感触も良好な滑り止め付きの歯ブラシが開示されているところ、甲3の図1(b)及び図2の記載から、歯ブラシの幅が首部4から握り部5にかけて広がる点が示されており、また、首部4内においても幅が広がることが示されていることから、首部4内に最小幅が存在することがわかる。そして、更に、首部4には、最小幅より幅が広がり始める位置が存在していることが、理解できる。 しかし、首部4の最小幅より幅が広がり始める位置について、甲3の発明の詳細な説明には何ら記載されておらず、また、寸法図である図3を参照しても、その位置は特定できず不明である。さらに、本件発明1の第1の変曲点P1に相当する位置も不明である。 なお、申立人は、甲3の図3(b)において、ヘッド部1先端から、24.3mm+18.498mmの位置(図3(a)を参照)が本件発明1の第1の変曲点P1に相当する位置であると主張していると理解される(特許異議申立書の14頁最終行~15頁4行)ところ、仮に、申立人の主張を採用し得たとしても、首部4の最小幅より幅が広がり始める位置については、依然として不明である。 したがって、甲3には、首部4の最小幅より幅が広がり始める位置と本件発明1の第1の変曲点P1に相当する位置との配置関係について、何ら開示されていない。 よって、甲3には、本件発明1の前記相違点3に係る構成における、「前記第1の変曲点P1は、前記最小幅W2が広がり始める位置よりも前記ヘッド部側に位置して」いることは、何ら開示されていない。 (エ)甲4には、ソフトで当たり心地が優しく、高い刷掃実感とマッサージ感および優れた歯垢除去力を得ることができ、重度あるいは軽度の歯周病・歯肉炎の治療または予防用として好適な歯ブラシ、また、植毛強度が高くて毛抜けがなく、ヘッド部のワレや白化も少ない高品質な歯ブラシが開示されているところ、甲4の段落0016(前記1(4)エ)に記載されるように、特に、ヘッド部の植毛穴の横断面積及び、植毛穴に植設される合成樹脂用毛の横断面積に特徴を持たせた発明が開示されている。そして、歯ブラシ全体については、図9が示されるのみである。 甲4の図9を参照すると、ヘッド部、ネック部及びハンドル部があることは理解できるところ、特に、ネック部とハンドル部との境界が不明である。また、ネック部の幅がどのようになっているのかも不明であるから、ネック部内で幅が変化して、最小幅及び最小幅が広がり始める位置が存在することについて不明である。 したがって、甲4には、本件発明1の前記相違点3に係る構成は、何ら開示されていない。 (オ)ところで、歯ブラシにおいて、ヘッド部、ネック部及びハンドル部のそれぞれの寸法は、それぞれの課題を解決するために、全体のバランスを考慮して採用されたものであると理解されるところ、甲2~甲4に記載された歯ブラシから、本件発明1の相違点3に係る構成に関係する部分のみを取り出し、甲1発明に適用する動機はない。 また、前記(イ)~(エ)で検討したように、甲2~甲4には、それぞれ、本件発明1の前記相違点3に係る構成がすべて開示されているとはいえないから、仮に、甲1発明に、甲2~甲4に記載された事項を適用し得たとしても、前記相違点3に係る構成のように特定された本件発明1には至らない。 以上のとおりであるから、相違点1及び2について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1発明及び甲2~4に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 ウ 申立人の主張に対して 申立人は、特許異議申立書(以下、「申立書」という。)において、甲1について、「ハンドル体を正面視したときに、ハンドル体の幅は、ネック部6からグリップ部4にかけて広がり、かつ前記ネック部6の最小幅(W2)よりも幅が広がり始める位置は、前記ネック部6に位置している(図1、下記図参照)。)」(申立書10頁1~3行)と主張し、甲1の図1を加工した図面(申立書10頁)にて、ネック部6とグリップ部4との境界部分を示して、ネック部の最小幅より広がり始める位置である旨主張している。 しかし、甲1の段落0017及び図1(前記1(1)ア(オ)、(キ))を参照するも、ネック部6内で幅が変化して、最小幅及び最小幅が広がり始める位置が存在することは、何ら記載も示唆もされておらず、また、図1からも看取できない。さらに、ネック部6とグリップ部4との境界部分を、ネック部の最小幅より広がり始める位置であるとする根拠はない。また、仮に、甲1の図1から、ネック部6内では一定の幅が保たれて構成され、グリップ部4において幅が広がるものを看取し得たとしても、その甲1の図1から看取し得たものは、ネック部6の最小幅よりも幅が広がり始める位置が、ネック部に位置しているものとはいえない。 また、本件発明1は、例えば、本件特許明細書の段落0113に「本実施形態の歯ブラシ1では、ヘッド部5を薄くしてネック部4を細くした場合でも、ブラシ本体2の全体でネック部の撓みを抑制している。これにより、ハンドル部3の優れた把持性及び良好な口腔内の操作性を両立した歯ブラシ1を提供することが可能である。」と記載されるように、ネック部を細くしつつも、歯ブラシ全体でネック部の撓みを抑制したものであるといえるところ、本件発明1の前記相違点3に係る構成を含む全体構成により、ヘッド部からネック部とハンドル部との境界までにおいて、ネック部を太くせずに、ネック部の背面方向への撓みを軽減し、ネック部とハンドル部との境界に生じる応力をハンドル部に分散して、ブラシ本体全体で応力分散を図ることができたものであると理解されるから、ブラシ本体の幅について、本件発明1から「前記ネック部から前記ハンドル部にかけて広がり、かつ前記ネック部の最小幅W2よりも幅が広がり始める位置は、前記ネック部に位置」する事項を抜き出し、この事項が単なる設計事項であるということもできない。 したがって、前記申立人の主張を採用することはできない。 (2)本件発明2~14について 本件発明1を直接又は間接的に引用する本件発明2~14は、本件発明1を特定するための事項を全て含み、本件発明1をさらに減縮したものである。したがって、その余の事項を検討するまでもなく、前記本件発明1についての判断と同様の理由により、本件発明2、6~9、12~14は、甲1発明であるとはいえず、また、本件発明2~14は、甲1発明及び甲2~甲4に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 (3)まとめ 以上によれば、本件発明1、2、6~9、12~14に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものということはできず、また、本件発明1~14に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものということはできず、同法第113条第2号により取り消すことができない。 第5 まとめ 以上のとおりであるから、請求項1~14に係る特許は、申立書に記載された特許異議の申立ての理由によっては、取り消すことができない。 また、他に請求項1~14に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2023-700602

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