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特許異議申立

2023-700594

二次電池セパレータ用コート材原料、二次電池セパレータ用コート材原料の製造方法、二次電池セパレータ用コート材、二次電池セパレータ、二次電池セパレータの製造方法、および、二次電池

審判番号
2023-700594
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2018-217140
登録番号
7185504
請求日
2023年06月07日
審決日
2024年03月07日
公報発行日
2024年06月28日
結論
訂正認容
当事者
  • 【権利者】三井化学株式会社
  • 【権利者代理人】岡本 寛之
  • 【権利者代理人】宇田 新一
  • 【異議申立人】小林 喜一
審判長/審判官
  • 審判長 山田 正文
  • 審判官 山本 章裕
  • 審判官 畑中 博幸
分類
P1652.113-YAA(H01M) / P1652.121-YAA(H01M) / P1652.16 -YAA(H01M)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項、特許法第29条第1項第3号、特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項、特許法第29条の2、特許法第29条第1項、特許法第120条の5第4項
データ出所
審決公報(XML)

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特許第7185504号発明「二次電池セパレータ用コート材原料、二次電池セパレータ用コート材原料の製造方法、二次電池セパレータ用コート材、二次電池セパレータ、二次電池セパレータの製造方法、および、二次電池」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7185504号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1、2、5-9〕について訂正することを認める。 特許第7185504号の請求項1ないし2、5ないし9に係る特許を維持する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第7185504号の請求項1ないし9に係る特許についての出願は、平成30年11月20日に出願され、令和4年11月29日にその特許権の設定登録がされ、同年12月7日に特許掲載公報が発行された。その後の本件特許異議の申立ての主な経緯は、次のとおりである。 令和5年 6月 7日 : 特許異議申立人小林 喜一(以下、「異議申立人」という。)による請求項1、2、5ないし9に係る特許に対する特許異議の申立て 令和5年 9月 7日付け: 取消理由通知 令和5年10月25日 : 特許権者による意見書及び訂正請求書の提出 当審は、令和5年12月25日付けで異議申立人に対して訂正請求があった旨の通知をして、意見書を提出する機会を与えたが提出されなかった。 第2 訂正の適否 1.訂正の内容 令和5年10月25日の訂正請求(以下、「本件訂正請求」という。)は、特許第7185504号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1、2、5ないし9について訂正することを求めるものであり、その訂正の内容は、以下の訂正事項のとおりである。なお、下線は訂正箇所を示す。 (1)訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1に、 「【請求項1】 (メタ)アクリル酸エステルおよび(メタ)アクリロニトリルを含有する第1モノマー成分を重合してなる第1ポリマーと、 (メタ)アクリルアミドを含有する第2モノマー成分を重合してなる第2ポリマーとを含み、 前記第2ポリマーの質量が、前記第1ポリマーの質量の0.1倍以上100倍未満であり、 前記第2モノマー成分が、さらに、カルボキシル基含有ビニルモノマーおよび水酸基含有ビニルモノマーを含有することを特徴とする、二次電池セパレータ用コート材原料。」 と記載されているものを、 「【請求項1】 (メタ)アクリル酸エステルおよび(メタ)アクリロニトリルを含有する第1モノマー成分を重合してなる第1ポリマーと、 (メタ)アクリルアミドを含有する第2モノマー成分を重合してなる第2ポリマーとを含み、 前記第2ポリマーの質量が、前記第1ポリマーの質量の0.1倍以上100倍未満であり、 前記第2モノマー成分が、さらに、カルボキシル基含有ビニルモノマーおよび水酸基含有ビニルモノマー(N-置換不飽和カルボン酸アミドを除く)を含有し、 前記カルボキシル基含有ビニルモノマーの含有割合が、前記第2モノマー成分100質量部に対して、3質量部以上であることを特徴とする、二次電池セパレータ用コート材原料。」 に訂正する。 請求項1を引用する請求項5ないし9も同様に訂正する。 (2)訂正事項2 特許請求の範囲の請求項2に、 「【請求項2】 前記第2モノマー成分100質量部に対して、(メタ)アクリルアミドの含有割合が、70質量部以上99質量部以下であることを特徴とする、請求項1に記載の二次電池セパレータ用コート材原料。」 と記載されているものを、 「【請求項2】 (メタ)アクリル酸エステルおよび(メタ)アクリロニトリルを含有する第1モノマー成分を重合してなる第1ポリマーと、 (メタ)アクリルアミドを含有する第2モノマー成分を重合してなる第2ポリマーとを含み、 前記第2ポリマーの質量が、前記第1ポリマーの質量の0.1倍以上100倍未満であり、 前記第2モノマー成分が、さらに、カルボキシル基含有ビニルモノマーおよび水酸基含有ビニルモノマーを含有し、 前記第2モノマー成分100質量部に対して、(メタ)アクリルアミドの含有割合が、70質量部以上99質量部以下であることを特徴とする、二次電池セパレータ用コート材原料。」 に訂正する。 請求項2を引用する請求項5ないし9も同様に訂正する。 2.一群の請求項について 訂正前の請求項1、2、5ないし9について、請求項2、5ないし9は請求項1を引用しているものであって、訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。したがって、訂正前の請求項1、2、5ないし9に対応する訂正後の請求項1、2、5ないし9は、特許法120条の5第4項に規定する一群の請求項である。 3.訂正の目的の適否、新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否 (1)訂正事項1について ア.訂正事項1-1 訂正事項1のうち、「水酸基含有ビニルモノマー」が「(N-置換不飽和カルボン酸アミドを除く)」との事項を追加する訂正(以下、「訂正事項1-1」という。)について検討する。 訂正事項1-1は、「水酸基含有ビニルモノマー」に「N-置換不飽和カルボン酸アミドを除く」ものに限られることを限定する訂正であるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。 また、訂正事項1-1は、訂正前の請求項1に記載された発明における「水酸基含有ビニルモノマー」から「N-置換不飽和カルボン酸アミドを除く」旨の規定をしたものであって、訂正前の請求項1の「水酸基含有ビニルモノマー」が本来包含していた「N-置換不飽和カルボン酸アミド」を除くものであり、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面等(以下、「明細書等」という。)との関係において新たな技術的事項を導入するものではなく、願書に添付した明細書等に記載した事項の範囲内においてされたものであり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。 イ.訂正事項1-2 訂正事項1のうち、「前記カルボキシル基含有ビニルモノマーの含有割合が、前記第2モノマー成分100質量部に対して、3質量部以上である」との事項を追加する訂正(以下、「訂正事項1-2」という。)について検討する。 訂正事項1-2は、「カルボキシル基含有ビニルモノマー」に関し、その「含有割合が、前記第2モノマー成分100質量部に対して、3質量部以上である」ことを限定する訂正である。したがって、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。 また、願書に添付した明細書の段落【0088】には「第2共重合性モノマーが、カルボキシル基含有ビニルモノマーおよび水酸基含有ビニルモノマーを含有する場合には、カルボキシル基含有ビニルモノマーの含有割合は、カルボキシル基含有ビニルモノマーおよび水酸基含有ビニルモノマーの総量100質量部に対して、例えば、35質量部以上、好ましくは、45質量部以上であり、また、例えば、85質量部以下、好ましくは、80質量部以下であり、また、第2モノマー成分100質量部に対して、0.5質量部以上、好ましくは、3質量部以上であり、また、例えば、40質量部以下、好ましくは、30質量部以下、より好ましくは、25質量部以下である。」(注、下線は当審で付した。)と記載されていることから、訂正事項1-2に係る訂正は新規事項の追加に該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。 ウ.まとめ したがって、訂正事項1は特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とする訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項、及び同条第6項の規定に適合する。 (2)訂正事項2について 訂正事項2は、訂正前の請求項1を引用する訂正前の請求項2に記載されていた発明を独立形式に改めたものである。したがって、訂正事項2は、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に掲げる、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とする訂正である。 また、訂正事項2は引用形式で記載されていた請求項を独立請求項に改める補正であるから、願書に添付した明細書等に記載した事項の範囲内においてした訂正であり、また、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 したがって、訂正事項2は特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項、及び同条第6項の規定に適合する。 4.独立特許要件について 訂正事項1は「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものであるが、本件においては、訂正前の請求項1、2、5ないし9について特許異議の申立てがなされているので、訂正前の請求項1、2、5ないし9に係る訂正事項1に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第7項の独立特許要件は課されない。 5.小括 以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号、及び第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。 よって、特許請求の範囲を訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1、2、5ないし9〕について訂正することを認める。 第3 本件発明 本件訂正請求により訂正された請求項1ないし9に係る発明(以下、請求項に付された番号と同一の番号を付し、順に「本件発明1」のようにいう。)は、訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲の請求項1ないし9に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。(なお、下線は訂正された箇所を示す。) 「【請求項1】 (メタ)アクリル酸エステルおよび(メタ)アクリロニトリルを含有する第1モノマー成分を重合してなる第1ポリマーと、 (メタ)アクリルアミドを含有する第2モノマー成分を重合してなる第2ポリマーとを含み、 前記第2ポリマーの質量が、前記第1ポリマーの質量の0.1倍以上100倍未満であり、 前記第2モノマー成分が、さらに、カルボキシル基含有ビニルモノマーおよび水酸基含有ビニルモノマー(N-置換不飽和カルボン酸アミドを除く)を含有し、 前記カルボキシル基含有ビニルモノマーの含有割合が、前記第2モノマー成分100質量部に対して、3質量部以上であることを特徴とする、二次電池セパレータ用コート材原料。 【請求項2】 (メタ)アクリル酸エステルおよび(メタ)アクリロニトリルを含有する第1モノマー成分を重合してなる第1ポリマーと、 (メタ)アクリルアミドを含有する第2モノマー成分を重合してなる第2ポリマーとを含み、 前記第2ポリマーの質量が、前記第1ポリマーの質量の0.1倍以上100倍未満であり、 前記第2モノマー成分が、さらに、カルボキシル基含有ビニルモノマーおよび水酸基含有ビニルモノマーを含有し、 前記第2モノマー成分100質量部に対して、(メタ)アクリルアミドの含有割合が、70質量部以上99質量部以下であることを特徴とする、二次電池セパレータ用コート材原料。 【請求項3】 (メタ)アクリル酸エステルおよび(メタ)アクリロニトリルを含有する第1モノマー成分を重合してなる第1ポリマーを得る工程と、 前記第1ポリマーの存在下で、(メタ)アクリルアミドを含有する第2モノマー成分を重合してなる第2ポリマーを得る工程と を備え、 前記第2ポリマーの質量が、前記第1ポリマーの質量の0.1倍以上100倍未満であることを特徴とする、二次電池セパレータ用コート材原料の製造方法。 【請求項4】 (メタ)アクリルアミドを含有する第2モノマー成分を重合してなる第2ポリマーを得る工程と、 前記第2ポリマーの存在下で、(メタ)アクリル酸エステルおよび(メタ)アクリロニトリルを含有する第1モノマー成分を重合してなる第1ポリマーを得る工程と を備え、 前記第2ポリマーの質量が、前記第1ポリマーの質量の0.1倍以上100倍未満であることを特徴とする、二次電池セパレータ用コート材原料の製造方法。 【請求項5】 請求項1または2に記載の二次電池セパレータ用コート材原料を含むことを特徴とする、二次電池セパレータ用コート材。 【請求項6】 さらに、親水性樹脂と、顔料と、分散剤とを含むことを特徴とする、請求項5に記載の二次電池セパレータ用コート材。 【請求項7】 多孔膜と、 前記多孔膜の少なくとも片面に配置される請求項5または6に記載のセパレータ用コート材の塗布膜とを備えることを特徴とする、二次電池セパレータ。 【請求項8】 多孔膜の少なくとも片面に、請求項5または6に記載のセパレータ用コート材を塗布する工程を備えることを特徴とする、二次電池セパレータの製造方法。 【請求項9】 正極と、 負極と、 前記正極および前記負極の間に配置される請求項7に記載される二次電池セパレータとを備えることを特徴とする、二次電池。」 第4 特許異議の申立理由の概要 異議申立人による特許異議の申立理由の概要は以下のとおりである。 1.申立ての理由 その1 ・適用条文:特許法第29条第1項第3号 ・請求項1、5、7-9に対して 本件特許発明1、5、7-9は、それぞれ、甲第1~3号証に記載された発明である。 2.申立ての理由 その2 ・適用条文:特許法第29条第2項 ・請求項2に対して 本件特許発明2は、甲第1~3号証記載の発明、及び、周知技術(甲第5号証)に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 ・請求項6に対して 本件特許発明6は、甲第1号証記載の発明、及び、周知技術(甲第2号証)に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 3.申立ての理由 その3 ・適用条文:特許法第29条第2項 ・請求項1、5、7-9に対して 本件特許発明1、5、7-9は、甲第4号証記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 4.申立ての理由 その4 ・適用条文:特許法第29条の2について ・請求項1、5、7-9に対して 本件特許発明1、5、7-9は、甲第6号証に記載された発明である。 (証拠方法) 甲第1号証: 特開2016-72197号公報 甲第2号証: 特開2016-72155号公報 甲第3号証: 特開2018-56142号公報 甲第4号証: 特開2015-88253号公報 甲第5号証: 国際公開第2017/026095号 甲第6号証: 特願2017-120757号(特開2019-8884号公報) 第5 甲各号証について 1.甲第1号証の記載と甲1発明 甲第1号証には、実施例1に関連して以下の事項が記載されている。(下線は、当審で付したものである。以下同様。) 「【0093】 [蓄電デバイス用セパレータの製造方法] 多孔層(B)の形成方法としては、例えば、多孔基材層(A)の少なくとも片面に、無機充填剤(b-2)と樹脂バインダー(b-1)とを含む塗工液を塗工して多孔層(B)を形成する方法を挙げることができる。」 「【0109】 本実施の形態のセパレータを用いて蓄電デバイスを製造する方法は、特に限定されないが、蓄電デバイスが二次電池の場合、例えば、本実施の形態のセパレータを幅10~500mm(好ましくは80~500mm)、長さ200~4,000m(好ましくは1,000~4,000m)の縦長形状のセパレータとして調製し、当該セパレータを、正極-セパレータ-負極-セパレータ、又は負極-セパレータ-正極-セパレータの順で重ね、円又は扁平な渦巻状に巻回して巻回体を得、当該巻回体を電池缶内に収納し、更に電解液を注入することにより、製造することができる。この際、当該巻回体に対して加熱及び/又はプレスを行うことによって上述の積層体を形成してもよい。また、上記巻回体として上述の積層体を円又は扁平な渦巻き状に巻回したものを用いて製造することもできる。また、蓄電デバイスは、正極-セパレータ-負極-セパレータ、又は負極-セパレータ-正極-セパレータの順に平板状に積層したもの、又は上述の積層体を袋状のフィルムでラミネートし、電解液を注入する工程と、場合によって加熱及び/又はプレスを行う工程を経て製造することもできる。上記の加熱及び/又はプレスを行う工程は、前記電解液を注入する工程の前及び/又は後に行うことができる。」 「【0146】 (製造例1b)アクリル系ポリマーラテックスの製造 撹拌機、還流冷却器、滴下槽、及び温度計を取りつけた反応容器に、イオン交換水70.4質量部と、「アクアロンKH1025」(登録商標、第一工業製薬株式会社製25質量%水溶液)0.15質量部(固形分換算)と、「アデカリアソープSR1025」(登録商標、株式会社ADEKA製25質量%水溶液)0.15質量部(固形分換算)と、を投入し、反応容器内部温度を80℃に昇温し、80℃の温度を保ったまま、過硫酸アンモニウム(2質量%水溶液)を0.15質量部(固形分換算)添加した。 過硫酸アンモニウム水溶液を添加した5分後に、メタクリル酸メチル38.5質量部、アクリル酸n-ブチル19.6質量部、アクリル酸2-エチルヘキシル31.9質量部、メタクリル酸0.1質量部、アクリル酸0.1質量部、メタクリル酸2-ヒドロキシエチル2質量部、アクリルアミド5質量部、メタクリル酸グリシジル2.8質量部、トリメチロールプロパントリアクリレート(A-TMPT、新中村化学工業株式会社製)0.7質量部、「アクアロンKH1025」(登録商標、第一工業製薬株式会社製25質量%水溶液)3質量部、「アデカリアソープSR1025」(登録商標、株式会社ADEKA製25質量%水溶液)3質量部、p-スチレンスルホン酸ナトリウム0.05質量部、過硫酸アンモニウム(2質量%水溶液)0.15質量部(固形分換算)、γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン0.3質量部、及びイオン交換水52質量部の混合物を、ホモミキサーにより5分間混合させて、乳化液を作製した。得られた乳化液を、滴下槽から反応容器に150分かけて滴下した。 ・・・略・・・ 【0148】 (製造例1d)スチレン-ブタジエン系ポリマーラテックスの製造 ・・・略・・・ 【0149】 次に、シードラテックスA(固形分濃度10質量%)を0.05質量部(固形分換算)、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.3質量部(固形分換算)、イオン交換水200質量部を、撹拌装置及び温度調節用ジャケットを取り付けた耐圧反応容器に入れた後、液温を60℃にし、過硫酸アンモニウム1.0質量部(固形分換算)を添加した。次いて、単量体としてスチレン70質量部、ブタジエン15質量部、メチルメタクリレート7質量部、アクリロニトリル3質量部、アクリル酸1質量部、メタクリル酸グリシジル2質量部、及びイタコン酸2質量部、並びに連鎖移動剤としてα-メチルスチレンダイマー0.2質量部、及びt-ドデシルメルカプタン0.5質量部からなる混合液を、液温を70℃に維持したまま6時間かけて追添した。最終重合率は98質量%であった。 生成したラテックスは、200メッシュ金網で濾過した後に、水酸化アンモニウム水溶液(25質量%)を添加し、pH8に調整後、未反応単量体を除去した。更に濃縮後、ポリアクリル酸アンモニウム0.5重量部(固形分換算)及び水酸化アンモニウム水溶液を加え、最終的に固形分濃度50質量%、pH8のスチレン-ブタジエン系ポリマー(1d)ラテックスを得た。得られたラテックスポリマーの平均粒子径は200nm、比重は1.07g/cm3、ガラス転移温度は70℃であった。」 「【0152】 実施例1 体積平均分子量70万のホモポリマーのポリエチレン47.5質量部と体積平均分子量25万のホモポリマーのポリエチレン47.5質量部と体積平均分子量40万のホモポリマーのポリプ口ピレン5質量部とを、タンブラ-ブレンダーを用いてドライブレンドした。得られたポリマ一混合物99質量部に対して酸化防止剤としてペンタエリスリチルーテトラキスー[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒド口キシフェニル)フ口ピオネー卜]を1質量部添加し、再度タンブラーブレンダーを用いてドライブレンドすることにより、ポリマ一等混合物を得た。得られたポリマ一等混合物は窒素で置換を行った後に、二軸押出機へ窒素雰囲気下でフィーダーにより供給した。また流動パラフィン(37.78℃における動粘度7.59×10-5m2/s)を押出機シリンダーにプランジャーポンプにより注入した。溶融混練し、押し出される全混合物中に占める流動パラフィン量比が67質量%(樹脂組成物濃度が33質量%)となるように、フィーダー及びポンプを調整した。溶融混練条件は、設定温度200℃であり、スクリユ一回転数100rpm、吐出量12kg/hで行った。続いて、溶融混練物を、T-ダイを経て表面温度25℃に制御された冷却ロール上に押出しキャス卜することにより、厚み1,600μmのゲルシートを得た。次に、同時二軸テンター-延伸機に導き、二軸延伸を行った。設定延伸条件は、MD倍率7/0倍、TD倍率6.1倍、設定温度121℃とした。次に、延伸後のゲルシートを、メチルエチルケトン槽に導き、メチルエチルケトン中に充分に浸漬して流動パラフィンを抽出除去し、その後メチルエチルケトンを乾燥除去した。続いて、流動パラフィン除去後のゲルシートをTDテンターに導き、熱固定を行った。熱固定温度は120℃、TD最大倍率を2.0倍、緩和率は0.90とした。その結果、膜厚17μm、気孔率60%、透気度84秒/100cc、気液法によって算出した平均孔径d=0.057μm、曲路率τa=1.45、孔数B=165個/μm2、突刺強度が25μm換算で5,679fのポリオレフィン樹脂多孔膜(A1)を得た。 【0153】 次に、無機充填剤(b-2)として焼成カオリン(2a)(カオリナイト(Al2Si2O5(OH)4を主成分とする湿式カオリンを高温焼成処理したもの、平均粒径1.8μm)を93.0質量部、樹脂バインダー(b-1)としてアクリル系ポリマー(1a)ラテックス(固形分濃度40質量%)2.0質量部(固形分換算)、アクリル系ポリマー(1b)ラテックス(固形分濃度40質量%、平均粒径220nm、ガラス転移温度-15℃、最低成膜温度0℃以下)5.0質量部(固形分換算)、及びポリカルボン酸アンモニウム水溶液(サンノプコ社製、SNディスパーサン卜5468、固形分濃度40質量%)0.5質量部(固形分換算)を180質量部の水に均一に分散させて塗工液を調製し、上記ポリオレフィン樹脂多孔膜の表面にグラビアコーターを用いて塗工した。60℃にて乾燥して水を除去し、ポリオレフィン樹脂多孔膜(A1)上の片面に厚さ2μmの多孔層(B)を形成したセパレータを得た。 このセパレータの評価結果は表1に示した。」 「【0158】 [図:0001411301000001.jpg] 」 そうしてみると、上記の記載事項から次のことがいえる。 ・実施例1の蓄電デバイス用セパレータには、段落【0153】【0158】【表1】によれば、「1d」よりなる樹脂バインダー(b-1-1)を2質量部と、「1b」よりなる樹脂バインダー(b-1-2)が5質量部含まれる。 ・段落【0148】【0149】によれば、「1d」は「メチルメタクリレート」「アクリロニトリル」を含む「スチレン-ブタジエン系ポリマーラテックス」であり、段落【0146】によれば、「1b」は「メタクリル酸0.1質量部」「アクリル酸0.1質量部」「メタクリル酸2-ヒドロキシエチル」「アクリルアミド5質量部」を含む「アクリル系ポリマーラテックス」である。 ・段落【0093】によれば、樹脂バインダーは多孔基材層に塗工する塗工液の原料といえる。 したがって、甲第1号証には実施例1に係る次の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されているものと認める。 「メチルメタクリレートとアクリロニトリルを含むスチレン-ブタジエン系ポリマー(1d)ラテックスを2質量部と、 メタクリル酸(0.1質量部)、アクリル酸(0.1質量部)、メタクリル酸2-ヒドロキシエチル及びアクリルアミド(5質量部)を含むアクリル系ポリマー(1b)ラテックスを5質量部と、を有する、 蓄電デバイス用セパレータの塗工液の原料。」 2.甲第2号証の記載と甲2発明 甲第2号証には、比較例5に関連して以下の事項が記載されている。 「【請求項1】 多孔基材層(A)に、 無機充填剤(b-2)、樹脂バインダー(b-1)、及び溶媒を含有する塗工液(B’)を塗工し、乾燥することにより多孔層(B)を形成する工程を経る、蓄電デバイス用セパレータの製造方法であって、 ・・・略・・・」 「【0001】 本発明は蓄電デバイス用セパレータの製造方法に関する。詳しくは、例えば一次電池、二次電池、燃料電池等の電池; 電気エネルギー貯蔵装置等に好適に用いられるセパレータを製造するための方法に関する。」 「【0111】 (製造例1b)アクリル系ポリマーラテックスの製造 以下の成分の使用量を以下に記載したとおりに変更した他は、前記製造例1aと同様に操作することにより、固形分濃度40質量%のアクリル系ポリマー(1b)を含有するラテックスを得た。 [初期仕込み] アクアロンKH1025:0.45質量部(固形分換算) アデカリアソープSR1025:0.45質量部(固形分換算) 過硫酸アンモニウム(2質量%水溶液):0.15質量部(固形分換算) [乳化液中のモノマー] メタクリル酸メチル:30.5質量部 アクリル酸n-ブチル:60.8質量部 アクリル酸2-エチルヘキシル:2質量部 メタクリル酸:1質量部 アクリル酸:1.5質量部 メタクリル酸2-ヒドロキシエチル:2質量部 アクリルアミド:0.2質量部 メタクリル酸グリシジル:2質量部 トリメチロールプロパントリアクリレート:0.7質量部 透過型電子顕微鏡(TEM)による観察の結果、アクリル系ポリマー(1b)は、粒子径121nmの球形、単分散であった。また、得られたアクリル系ポリマー(1b)のガラス転移温度は-20℃、最低成膜温度は0℃以下であった。」 「【0115】 (製造例1e)スチレン-ブタジエン系ポリマーラテックスの製造方法 前記製造例1dと同様にして得たシードラテックスAを用い、該シードラテックスA及び各モノマー、並びに以下に記載の添加剤の使用量をそれぞれ以下のとおりとした他は、前記製造例1d後段と同様に操作することにより、固形分濃度50質量%のスチレン-ブタジエン系ポリマー(1e)を含有するラテックスを得た。 [初期仕込み] シードラテックスA:0.8質量部(固形分換算) ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム:1質量部(固形分換算) [一括添加モノマー] スチレン:40質量部 ブタジエン:40質量部 メチルメタクリレート:10質量部 アクリロニトリル:5質量部 アクリル酸:1質量部 メタクリル酸グリシジル:2質量部 イタコン酸:2質量部 最終重合率は98%であった。 透過型電子顕微鏡(TEM)による観察の結果、スチレン-ブタジエン系ポリマー(1e)は、粒子径80nmの球形、単分散であった。また、このラテックスポリマー(1e)のガラス転移温度は-40℃、最低成膜温度は0℃以下であった。 ・・・略・・・ 【0120】 実施例2~7、並びに比較例1~6 前記実施例1において、樹脂バインダー(b-1)として、表1に記載のものを各所定量使用した他は、実施例1と同様にして塗工液を調製し、セパレータを製造した。 なお、実施例7は無機充填材(b-2)として、ベーマイト(2b)(水酸化酸化アルミニウム、平均体積粒径1.0μm)を使用した。 得られたセパレータについて、上記方法により評価した。得られた結果を表1に示した。」 「【0122】 【表2】 [図:0001411301000002.jpg] 」 そうしてみると、上記の記載事項から次のことがいえる。 ・比較例5の蓄電デバイス用セパレータには、段落【0122】【表2】によれば、「1b」よりなる第1の樹脂バインダーを2質量部と、「1e」よりなる第2の樹脂バインダーが5質量部含まれている。 ・段落【0111】によれば、「1b」は「メタクリル酸」「アクリル酸」「メタクリル酸2-ヒドロキシエチル」「アクリルアミド」を含む「アクリル系ポリマー(1b)」であり、段落【0115】によれば「1e」は「メチルメタクリレート」「アクリロニトリル」を含む、「スチレン-ブタジエン系ポリマー(1e)」である。 ・段落【0111】によれば、「1b」において、乳化液中のモノマー100質量部中の「メタクリル酸」と「アクリル酸」を合わせた割合は、2.48質量部((1+1.5)/(30.5+60.8+2+1+1.5+2+0.2+2+0.7))である。 ・段落【0111】によれば、「1b」において、乳化液中のモノマー100質量部中の「アクリルアミド」の割合は、0.2質量部(0.2/(30.5+60.8+2+1+1.5+2+0.2+2+0.7))である。 ・【請求項1】の記載からみて、樹脂バインダーは多孔基材層に塗工する塗工液の原料であることが明らかである。 したがって、甲第2号証には比較例5に係る次の発明(以下「甲2発明」という。)が記載されているものと認める。 「メタクリル酸、アクリル酸、メタクリル酸2-ヒドロキシエチル、アクリルアミドを含むアクリル系ポリマー(1b)を2質量部と メチルメタクリレート、アクリロニトリルを含むスチレン-ブタジエン系ポリマー(1e)を5質量部と、を有し、 アクリル系ポリマー(1b)において、乳化液中のモノマー100質量部中のメタクリル酸とアクリル酸を合わせた割合は2.48質量部であり、 アクリル系ポリマー(1b)において、乳化液中のモノマー100質量部中のアクリルアミドの割合は0.2質量部である、 蓄電デバイス用セパレータの塗工液の原料。」 3.甲第3号証の記載と甲3発明 甲第3号証には、以下の事項が記載されている。 「【請求項1】 少なくとも片面に接着層を有する多孔性ポリオレフィンフィルムからなる接着層付セパレータと、電極活物質および電極用結着剤を含む電極活物質層を有する電極とを、前記接着層と前記電極活物質層とが当接するように積層し、熱圧着する工程を含む、電極/セパレータ積層体の製造方法であって、 前記接着層が、ガラス転移温度-50~5℃である粒子状重合体Aと、 ガラス転移温度50~120℃である粒子状重合体Bおよび湿潤剤とを含み、 前記粒子状重合体Aおよび前記粒子状重合体Bが、一般式(1):CH2=CR1-COOR2(式中、R1は水素原子またはメチル基を、R2はアルキル基またはシクロアルキル基を表す。)で表される化合物由来の単量体単位、ニトリル基含有単量体単位、およびカルボン酸基含有単量体単位を含むアクリル重合体であり、 前記接着層の平均厚さが0.2~1.0μmであり、 前記熱圧着を50~100℃で行う、電極/セパレータ積層体の製造方法。」 「【0001】 本発明は、電極/セパレータ積層体の製造方法に関し、特にリチウムイオン二次電池の構成要素として用いられる電極/セパレータ積層体の製造方法、ならびに該電極/セパレータ積層体を組み込んだリチウムイオン二次電池に関する。」 「【0051】 (接着層付セパレータの製造方法) 接着層付セパレータは、上述した多孔性ポリオレフィンフィルムの片面もしくは両面に、前述した粒子状重合体AおよびBを含む接着層を形成して得られる。接着層の形成方法は特に限定はされないが、粒子状重合体AおよびBを含む、所定粘度に調整された接着層用水分散スラリーを多孔性ポリオレフィンフィルムの片面もしくは両面に塗布、乾燥する方法が簡便であり、作業衛生上の点からも好ましい。」 「【0126】 得られた粒子状重合体B5の数平均粒子径は0.9μm、ガラス転移温度は72℃であった。 [図:0001411301000003.jpg] 【0127】 なお、表1において、BAはブチルアクリレート、2EHAは、2-エチルヘキシルアクリレート、EAはエチルアクリレート、STはスチレン、ANはアクリロニトリル、MAAはメタクリル酸、NMAはN-メチロールアクリルアミド、AAmはアクリルアミド、E-2Fは、ラウリル硫酸ナトリウム(花王ケミカル社製、製品名「エマール2F」)、Las-Naはドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムを意味する。また、表1における粒子状重合体A6およびA7は、本願で規定する粒子状重合体Aのガラス転移温度を満たさず、粒子状重合体B6およびB7は、本願で規定する粒子状重合体Bのガラス転移温度を満たさない。」 「【0153】 上記接着層用スラリーを用い、実施例1と同様にして、接着層付セパレータを得た以外は、実施例1と同様にして、電極/セパレータ積層体およびリチウムイオン二次電池を製造した。結果を表2に示す。 [図:0001411301000004.jpg] 」 そうしてみると、上記の記載事項から次のことがいえる。 ・甲第3号証の段落【0153】【表2】によれば、実施例1、2、4~11、13、14及び比較例3、5、7~9として示されたセパレータは、粒子状重合体AとしてA1~A5、A8のいずれかを有し、粒子状重合体BとしてB1、B3~B6のいずれかを有している。 ・段落【0126】【表1】【0127】によれば、実施例1、2、4~11、13、14及び比較例3、5、7~9が有する粒子状重合体A1~A5、A8はいずれもMAA(メタクリル酸)及びNMA(N-メチロールアクリルアミド)を有し、粒子状重合体B1、B3~B6はいずれもBA(ブチルアクリレート)及びAN(アクリロニトリル)を有している。 ・【表2】によれば、実施例1、2、4~11、13、14及び比較例3、5、7~9は重合体重量比(A/B)が0.176(15/85)もしくは0.538(35/65)のいずれかである。 ・【表1】【表2】によれば、実施例1、2、4~11、13、14及び比較例3、5、7~9では、粒子状重合体AにおけるMAA(メタクリル酸)の割合は2部である。 ・【表1】【表2】によれば、実施例1、2、4~11、13、14及び比較例3、5、7~9では、粒子状重合体AにおけるNMA(N-メチロールアクリルアミド)の割合は1.2部である。 ・【請求項1】及び段落【0001】【0051】の記載を踏まえると、【表2】に示された実施例1、2、4~11、13、14及び比較例3、5、7~9に係る粒子状重合体Aと粒子状重合体Bはリチウムイオン二次電池のセパレータの接着層を構成する原料といえる。 したがって、甲第3号証には実施例1、2、4~11、13、14及び比較例3、5、7~9に関して次の発明(以下「甲3発明」という。)が記載されているものと認める。 「MAA(メタクリル酸)及びNMA(N-メチロールアクリルアミド)を有する粒子状重合体Aと、 BA(ブチルアクリレート)及びAN(アクリロニトリル)を有する粒子状重合体Bと、 を有するリチウムイオン二次電池のセパレータの接着層の原料であり、 重合体重量比(A/B)が0.176、もしくは0.538のいずれかであり、 粒子状重合体AにおけるMAA(メタクリル酸)の割合は2部であり、 粒子状重合体AにおけるNMA(N-メチロールアクリルアミド)の割合は1.2部である、 リチウムイオン二次電池のセパレータの接着層の原料。」 4.甲第4号証の記載と甲4発明 甲第4号証には、実施例9に関連して以下の事項が記載されている。 「【0225】 〔1-4.接着剤の製造〕 前記の粒子状重合体を含む水分散液を粒子状重合体の量で100部、接着層用バインダーとして多孔膜用バインダーとして製造した前記(メタ)アクリル重合体の水分散液を(メタ)アクリル重合体の量で6部、並びに、水溶性重合体としてエーテル化度0.8~1.0のカルボキシメチルセルロース(ダイセルファインケム社製「Daicel 1220」)0.5部を混合し、さらにイオン交換水を固形分濃度が20%になるように混合し、スラリー状の接着剤を得た。 【0226】 〔1-5.セパレータの製造〕 ポリエチレン製の有機多孔基材(厚み16μm、ガーレー値210s/100cc)をセパレータ基材として用意した。用意したセパレータ基材の両面に、前記多孔膜用スラリーを塗布し、50℃で3分間乾燥させて、セパレータ基材の両面に多孔膜を形成した。多孔膜の1層当たりの厚みは、3μmであった。 次いで、各多孔膜の上に、前記のスラリー状の接着剤をスプレーコート法により塗布し、50℃で1分間乾燥した。これにより、1層当たりの厚みが2μmの接着層を多孔膜上に設けて、セパレータを得た。 ・・・略・・・ 【0232】 〔1-11.リチウムイオン二次電池の製造〕 プレス後の正極を49×5cm2に切り出した。切り出された正極の正極活物質層上に、55×5.5cm2に切り出したセパレータを配置した。さらに、プレス後の負極を50×5.2cm2の正方形に切り出し、この切り出された負極を前記セパレータの正極とは反対側に、負極活物質層側の表面がセパレータに向かい合うよう配置した。これを捲回機によって捲回し、捲回体を得た。この捲回体を60℃0.5MPaでプレスし、扁平体とした。この扁平体を、電池の外装としてのアルミニウム包材外装で包み、電解液(溶媒:EC/DEC/VC=68.5/30/1.5体積比、電解質:濃度1MのLiPF6)を空気が残らないように注入した。さらに、アルミニウム包材の開口を密封するために、150℃のヒートシールをしてアルミニウム外装を閉口した。これにより、800mAhの捲回型リチウムイオン二次電池を製造した。 こうして得られたリチウムイオン二次電池について、上述した方法で、高温サイクル試験の前後でのセル体積変化、高温サイクル特性、及び、低温出力特性を評価した。」 「【0241】 [実施例8] 前記工程〔1-3〕に係るコア部の製造に用いる単量体組成物において、メタクリル酸メチルの量を75.35部に変更し、エチレンジメタクリレートの量を0.15部に変更した。 以上の事項以外は、実施例1と同様にして、リチウムイオン二次電池の製造及び評価を行った。 【0242】 [実施例9] 前記工程〔1-3〕に係るコア部の製造に用いる単量体組成物において、メタクリル酸メチル74.5部の代わりに、アクリロニトリル64.5部及び2-エチルヘキシルアクリレート10部を組み合わせて用いた。 以上の事項以外は、実施例1と同様にして、リチウムイオン二次電池の製造及び評価を行った。」 「【0260】 【表2】 [図:0001411301000005.jpg] 」 そうしてみると、上記の記載事項から次のことがいえる。 ・段落【0260】【表2】によれば、実施例9のリチウムイオン二次電池用接着剤は、AN(アクリロニトリル)と2-EHA(2-エチルヘキシルアクリレート)を有する粒子状重合体と、MAA(メタクリル酸)、NMA(N-メチロールアクリルアミド)、AAm(アクリルアミド)を有するバインダを含んでいる。そして、バインダの単量体全体におけるMAA(メタクリル酸)の割合は2部であり、AAm(アクリルアミド)の割合は1部である。 ・段落【0225】【0242】及び【0260】【表2】によれば、実施例9において粒子状重合体は100部、バインダは6部である。 ・AN(アクリロニトリル)と2-EHA(2-エチルヘキシルアクリレート)を有する粒子状重合体と、MAA(メタクリル酸)、NMA(N-メチロールアクリルアミド)、AAm(アクリルアミド)を有するバインダは段落【0226】【0232】を参照すればリチウムイオン二次電池用セパレータの接着剤の原料といえるから、甲第4号証には実施例9に関連して次の発明(以下、「甲4発明」という。)が記載されていると認める。 「AN(アクリロニトリル)と2-EHA(2-エチルヘキシルアクリレート)を有する粒子状重合体を100部と、 MAA(メタクリル酸)、NMA(N-メチロールアクリルアミド)、AAm(アクリルアミド)を有するバインダを6部と、 を有するリチウムイオン二次電池用セパレータの接着剤の原料であって、 バインダの単量体全体におけるMAA(メタクリル酸)の含有割合は2部であり、AAm(アクリルアミド)の割合は1部である、 リチウムイオン二次電池用セパレータの接着剤の原料。」 5.甲第5号証の記載と甲5技術 甲第5号証には、以下の事項が記載されている。 「[0003] ここで、二次電池においては、電池部材に所望の性能(例えば、耐熱性や強度など)を付与する機能層を備えた電池部材が使用されている。具体的には、例えば、セパレータ基材上に機能層を形成してなるセパレータや、集電体上に電極合材層を設けてなる電極基材の上に機能層を形成してなる電極が、電池部材として使用されている。また、電池部材の耐熱性や強度などを向上させ得る機能層としては、非導電性粒子をバインダー(結着材)で結着して形成した多孔膜層よりなる機能層が用いられている。そして、この機能層は、例えば、非導電性粒子と、結着材と、分散媒とを含む機能層用組成物を基材(セパレータ基材や電極基材など)の表面に塗布し、塗布した機能層用組成物を乾燥させることにより形成される。 ・・・・略・・・・ [0009] 本発明者は、上記課題を解決することを目的として鋭意検討を行った。そして、本発明者は、所定の組成および性状を有する水溶性重合体と、粒子状重合体との双方を結着材として併用することにより、非導電性粒子の再分散性に優れ、且つ、柔軟性に優れる非水系二次電池用機能層を形成することができる非水系二次電池機能層用組成物が得られることを見出し、本発明を完成させた。 ・・・・略・・・・ [0022] そして、水溶性重合体は、全単量体単位の量を100質量%として、(メタ)アクリルアミド単量体単位を40質量%以上の割合で含有することを必要とし、水溶性重合体が含有する(メタ)アクリルアミド単量体単位の割合は、50質量%以上であることが好ましく、60質量%以上であることがより好ましく、99質量%以下であることが好ましく、95質量%以下であることがより好ましい。(メタ)アクリルアミド単量体単位の含有割合が40質量%未満の場合、非導電性粒子の再分散性が低下すると共に、重合体の水溶性が低下する。なお、(メタ)アクリルアミド単量体単位の含有割合を上記下限値以上とした場合には、非導電性粒子の再分散性を高めることができるだけでなく、非水系二次電池機能層用組成物を用いて形成した機能層中に残留する水分の量を低減し、非水系二次電池の高温サイクル特性の低下を抑制することもできる。また、(メタ)アクリルアミド単量体単位の含有割合を上記上限値以下とした場合には、機能層の耐熱性を向上させることができる。」 上記記載事項によれば、甲第5号証には以下のような技術事項(以下、「甲5技術」という。)が記載されていると認められる。 「水溶性重合体を含む結着材をセパレータ基材表面に塗布し形成する機能層において、 水溶性重合体は、全単量体単位の量を100質量%として、(メタ)アクリルアミド単量体単位を60質量%以上99質量%以下とすること。」 6.甲第6号証の記載と先願発明 甲第6号証に係る先願(特願2017-120757号)は、本件出願の出願日前の他の特許出願であって、その出願日後に出願公開(特開2019-8884号)がされた特許出願であるところ、先願の願書に最初に添付した明細書(以下、「先願明細書」という。)には、実施例16に関連して以下の記載がある。 「【0105】 蓄電デバイスとしては、限定されないが、例えば、非水系電解液二次電池等の電池、コンデンサー、及びキャパシタが挙げられる。本実施形態の効果による利益がより有効に得られる観点から、蓄電デバイスは、好ましくは電池であり、より好ましくは非水系電解液二次電池であり、更に好ましくはリチウムイオン二次電池である。蓄電デバイスがリチウムイオン二次電池等の非水系電解液二次電池である場合について、好適な態様を以下に説明する。」 「【0132】 《熱可塑性ポリマー粒子の合成》 〈水分散体a1〉 撹拌機、還流冷却器、滴下槽及び温度計を取り付けた反応容器に、イオン交換水70.4質量部と、乳化剤として「アクアロンKH1025」(登録商標、第一工業製薬株式会社製25%水溶液、表中「KH1025」と表記。以下同様。)0.5質量部と、「アデカリアソープSR1025」(登録商標、株式会社ADEKA製25%水溶液、表中「SR1025」と表記。以下同様。)0.5質量部とを投入した。次いで、反応容器内部の温度を80℃に昇温し、80℃の温度を保ったまま、過硫酸アンモニウムの2%水溶液(表中「APS(aq)と表記。以下同様。」)を7.5質量部添加し、初期混合物を得た。過硫酸アンモニウム水溶液を添加終了した5分後に、乳化液を滴下槽から反応容器に150分かけて滴下した。 【0133】 なお、上記乳化液は: ポリエチレングリコール基含有単量体単位(P)を構成するモノマーとしてメトキシポリエチレングリコールメタクリレート(表中PEGMと表記。以下同様。)10質量部; シクロアルキル基含有単量体単位(A)を構成するモノマーとしてシクロヘキシルメタクリレート(表中、「CHMA」と表記。以下同様。)30質量部; カルボキシル基含有単量体単位(b1)を構成するモノマーとしてメタクリル酸(表中、「MAA」と表記。以下同様。)1.0質量部; アクリル酸(表中、「AA」と表記。以下同様。)1.0質量部; アミド基含有単量体単位(b2)を構成するモノマーとしてアクリルアミド(表中、「AM」と表記。以下同様。)0.1質量部; ヒドロキシル基含有単量体単位(b3)を構成するモノマーとして2-ヒドロキシエチルメタクリレート(表中、「2HEMA」と表記。以下同様。)5質量部; 架橋性単量体単位(b4)を構成するモノマーとしてトリメチロールプロパントリアクリレート(A-TMPT、新中村化学工業株式会社製商品名、表中、「A-TMPT」と表記。以下同様。)0.5質量部; 上記以外の(メタ)アクリル酸エステル単量体単位(b5)を構成するモノマーとしてメチルメタクリレート(表中、「MMA」と表記。以下同様。)1.0質量部; ブチルメタクリレート(表中、「BMA」と表記。以下同様。)0.4質量部; ブチルアクリレート(表中、「BA」と表記。以下同様。)1.0質量部; 2-エチルヘキシルアクリレート(表中、「2EHA」と表記。以下同様。)50.0質量部; 乳化剤として「アクアロンKH1025」(登録商標、第一工業製薬株式会社製25%水溶液)3質量部と「アデカリアソープSR1025」(登録商標、株式 会社ADEKA製25%水溶液)3質量部とp-スチレンスルホン酸ナトリウム(表中、「NaSS」と表記。以下同様。)0.05質量部; 過硫酸アンモニウムの2%水溶液7.5質量部;及び イオン交換水52質量部 の混合物を、ホモミキサーにより5分間混合させて調製した。 【0134】 乳化液の滴下終了後、反応容器内部の温度を80℃に保ったまま90分間維持し、その後室温まで冷却した。得られたエマルジョンを、25%の水酸化アンモニウム水溶液(表中、「AW」と表記。)でpH=8.0に調整し、少量の水を加えて固形分40%の水分散体を得た(水分散体a1)。得られた水分散体a1中の共重合体について、上記方法により、平均粒径、ガラス転移点、熱可塑性層形成後の形状、及び熱可塑性層形成後の粒径を測定した。得られた結果を表2に示す。 【0135】 〈水分散体A1~A9〉 表2及び3に記載の初期混合物を水分散体a1と同様な配合比に、それ以外の乳化液は表2及び3の配合比に変更し、a1と同様な合成を行うことでA1~A9の各シードポリマー水分散体(40%固形分)を得た。引き続き初期混合物及び乳化液を表2および3示すように変更した以外は、水分散体a1と同様にして合成することで、水分散体A1~A9を得た。得られた水分散体A1~A9及びa1の共重合体について、上記方法により、粒子径、及びガラス転移点(Tg)を測定した。得られた結果を表2及び3に示す。なお、表中、原材料の組成は質量基準である。」 「【0144】 《実施例1》 表2に記載の水分散体A3とa1とを固形分重量比でA3:a1=80:20となるように混合し、精製水を加えることで固形分25質量%の有機バインダー含有スラリーを作製した。次いでスラリーに添加剤として、固形分濃度1.5質量%に調製したキサンタンガム(三晶株式会社製、ケルザンM)水溶液、及びアルキルスルホン酸系界面活性剤(三井サイテック株式社製、OT-75)をそれぞれ少量加え5分間撹拌し、粘度上昇率が10mPa/%以上となる固形分、及び滑落角を測定した。上記添加材料の調整を繰り返すことによって、粘度上昇率が10mPa/%以上となる固形分が35質量%であり、かつ滑落角が60°であるパターン塗工用スラリーを得た。 【0145】 調整した塗料を、表1に記載のポリオレフィン微多孔基材B3の片面表面にドット径200μm、深さ5μmにドット型刻印されたグラビアロールを用いて塗工液をパターン塗布し、60℃にて乾燥して塗工液の水を除去することでセパレータS1を得た。セパレータ上に形成されたドットの径は250μm、ドット同士の間隔は300μmであった。 ・・・略・・・ 【0147】 《実施例4~20及び比較例1~4》 表1~3に示したポリオレフィン微多孔性基材、水分散体、調整済みスラリーを用いたこと以外は実施例1~3と同様にして、パターン塗工を行い、それぞれのセパレータを得た。なお、実施例19及び比較例4における基材4への塗工に関しては、水酸化酸化アルミニウムの層上ではなく、ポリオレフィン面へのパターン塗工を行った。」 「【0149】【表2】 [図:0001411301000006.jpg] 」 「【0150】【表3】 [図:0001411301000007.jpg] 」 「【0152】【表5】 [図:0001411301000008.jpg] 」 そうしてみると、上記の記載事項から次のことがいえる。 ・段落【0152】の【表5】によれば実施例16は水分散体としてA9とa1を含んでいることが読み取れる。 ・水分散体A9は段落【0150】の【表3】によれば、AN(アクリロニトリル)、(メタ)アクリル酸エステル単量体b5としてMMA、BA、2EHAを有している。 ・水分散体a1は段落【0149】の【表2】によれば、MAA(メタクリル酸)、AA(アクリル酸)、AM(アクリルアミド)、2HEMA(2-ヒドロキシエチルメタクリレート)を有している。そして、【表2】によれば、水分散体a1の乳化液の全単量体に対してMAA(メタクリル酸)、AA(アクリル酸)はそれぞれ1質量部であり、AM(アクリルアミド)は0.1質量部である。 ・段落【0132】ないし【0135】によれば、水分散体A9及び水分散体a1 はポリマー水分散体である。 ・段落【0147】によれば実施例16は表1~3に示したポリオレフィン微多孔性基材、水分散体、調整済みスラリーを用いたこと以外は実施例1~3と同様である。したがって、実施例1について記載された段落【0144】を参照すると、実施例16において水分散体としてのA9とa1とは固形分重量比でA9:a1=80:20であるといえる。 ・実施例16は蓄電デバイス用セパレータであり、水分散体A9とa1の混合体は蓄電デバイス用セパレータのパターン塗工用スラリーの原料といえる。 以上から、甲第6号証に係る先願には次の発明(以下、「先願発明」という。)が記載されているものと認める。 「AN(アクリロニトリル)、及び(メタ)アクリル酸エステル単量体b5としてMMA、BA、2EHAを有するポリマー水分散体A9と、 乳化液の全単量体に対してMAA(メタクリル酸)1質量部、AA(アクリル酸)1質量部、AM(アクリルアミド)0.1質量部、2HEMA(2-ヒドロキシエチルメタクリレート)を有するポリマー水分散体a1とを、 固形分重量比A9:a1=80:20で混合した蓄電デバイス用セパレータのパターン塗工用スラリーの原料。」 第6 取消理由の概要 令和5年9月7日付けで当審より通知した取消理由通知の概要は以下のとおりである。 理由A.(新規性)下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、下記の請求項に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。 理由B.(進歩性)下記の請求項に係る発明は、その出願前日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、下記の請求項に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 理由C.(拡大先願)下記の請求項に係る発明は、その特許出願日前の他の特許出願であって当該特許出願後に出願公開がされたものの願書に最初に添付した明細書、請求の範囲又は図面に記載された発明と同一であり、しかも、この出願の発明者がその出願前の他の特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、またこの出願の時において、その出願人が上記他の特許出願の出願人と同一でもないので、特許法29条の2の規定により、特許を受けることができない。 記 (刊行物等については刊行物等一覧参照) 1.甲第1号証を主引例とする取消理由 (1)新規性(理由A) ・請求項: 1、5、7ないし9 ・刊行物: 甲第1号証 (2)進歩性(理由B) ・請求項: 6 ・刊行物: 甲第1号証、甲第2号証 2.甲第2号証を主引例とする取消理由 (1)新規性(理由A) ・請求項: 1、5、7ないし9 ・刊行物: 甲第2号証 (2)進歩性(理由B) ・請求項: 6 ・刊行物: 甲第2号証、甲1号証 3.甲第3号証を主引例とする取消理由(理由A、新規性) ・請求項: 1、5、7ないし9 ・刊行物: 甲第3号証 4.甲第4号証を主引例とする取消理由(理由B、進歩性) ・請求項: 1、5、7ないし9 ・刊行物: 甲第4号証 5.甲第6号証を主引例とする取消理由(理由C、拡大先願) ・請求項: 1、5、7ないし9 ・先願: 特願2017-120757号(甲第6号証に係る出願) <刊行物一覧> 甲第1号証: 特開2016-72197号公報 甲第2号証: 特開2016-72155号公報 甲第3号証: 特開2018-56142号公報 甲第4号証: 特開2015-88253号公報 甲第6号証: 特開2019-8884号公報(特願2017-120757号) 第7 取消理由通知に記載した取消理由について 1.甲1発明を主引例とする取消理由 (1)本件発明1について ア.本件発明1と甲1発明 本件発明1は上記「第3」のとおり、甲1発明は上記「第5 1.」のとおりである。 イ.当審の判断 (ア)対比 本件発明1と甲1発明とを対比すると、 ・甲1発明の、「メチルメタクリレート」、「アクリロニトリル」、「スチレン-ブタジエン系ポリマー(1d)ラテックス」が本件発明1の「(メタ)アクリル酸エステル」「(メタ)アクリロニトリル」「第1ポリマー」にそれぞれ相当する。 ・甲1発明の「メタクリル酸、アクリル酸」「アクリルアミド」「アクリル系ポリマー(1b)ラテックス」が、本件発明1の「カルボキシル基含有ビニルモノマー」「(メタ)アクリルアミド」「第2ポリマー」にそれぞれ相当する。 ・甲1発明の「アクリル系ポリマー(1b)ラテックス」が含む「メタクリル酸2-ヒドロキシエチル」は「N-置換不飽和カルボン酸アミド」とはいえず、本件発明1の「第2モノマー成分を重合してなる第2ポリマー」の「第2モノマー成分が、さらに」含有する「水酸基含有ビニルモノマー(N-置換不飽和カルボン酸アミドを除く)」に相当する。 ・甲1発明は「スチレン-ブタジエン系ポリマー(1d)ラテックス」を2質量部、「アクリル系ポリマー(1b)ラッテクス」を5質量部有しているから「アクリル系ポリマー(1b)ラテックス」の質量が「スチレン-ブタジエン系ポリマー(1d)ラテックス」の質量の2.5倍となり、本件発明1の「第2ポリマーの質量が、第1ポリマーの質量の0.1倍以上100倍未満」の範囲内である。 ・本件発明1において「前記カルボキシル基含有ビニルモノマーの含有割合が、前記第2モノマー成分100質量部に対して、3質量部以上」であるのに対して、甲1発明では「カルボキシル基含有ビニルモノマー」に相当する「メタクリル酸、アクリル酸」は合計で0.2質量部(0.1+0.1)である点で相違する。 ・甲1発明の「蓄電デバイス用セパレータの塗工液の原料」において、塗工液はコートを形成することは明らかであり、また、段落【0109】によれば蓄電デバイスは二次電池である。したがって、甲1発明の「蓄電デバイス用セパレータの塗工液の原料」は、本件発明1の「二次電池セパレータ用コート原料」に相当する。 したがって、本件発明1と甲1発明とは以下の点で一致ないし相違する。 (一致点) 「(メタ)アクリル酸エステルおよび(メタ)アクリロニトリルを含有する第1モノマー成分を重合してなる第1ポリマーと、 (メタ)アクリルアミドを含有する第2モノマー成分を重合してなる第2ポリマーとを含み、 前記第2ポリマーの質量が、前記第1ポリマーの質量の0.1倍以上100倍未満であり、 前記第2モノマー成分が、さらに、カルボキシル基含有ビニルモノマーおよび水酸基含有ビニルモノマー(N-置換不飽和カルボン酸アミドを除く)を含有する、二次電池セパレータ用コート材原料。」 (相違点1) 本件発明1において「前記カルボキシル基含有ビニルモノマーの含有割合が、前記第2モノマー成分100質量部に対して、3質量部以上」であるのに対して、甲1発明では「メタクリル酸」「アクリル酸」は合計で0.2質量部である点。 (イ)判断 上記のとおり本件発明1と甲1発明とは相違点を有するから、本件発明1は甲第1号証に記載された発明ではなく、本件請求項1に係る特許は特許法第29条第1項第3号の規定に該当しない。 更に進んで進歩性についても検討する。甲1発明では「カルボキシル基含有ビニルモノマー」に相当する「メタクリル酸、アクリル酸」は合計で0.2質量部である。一般に組成比の変更によって特性が変化することを鑑みると、「メタクリル酸、アクリル酸」を本件発明1のように3質量部以上とすることには、敢えて行う動機付けはないと言うべきであり、また、甲第2号証ないし甲第6号証を参照してもこのように変更すべき何らの示唆も見いだせないから、上記相違点1は当業者が容易に成し得た事項であるということはできない。 したがって、本件請求項1に係る特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではない。 (2)本件発明2について 令和5年9月7日付け取消理由通知書において本件請求項2に係る発明について取消理由は通知していないが、請求項5ないし9が請求項2を直接又は間接的に引用しているので、ここで本件発明2について検討しておく。 ア.本件発明2と甲1発明 本件発明2は上記「第3」のとおり、甲1発明は上記「第5 1.」のとおりである。 イ.当審の判断 (ア)対比 本件発明2と甲1発明とを対比すると、 ・甲1発明の、「メチルメタクリレート」、「アクリロニトリル」、「スチレン-ブタジエン系ポリマー(1d)ラテックス」が本件発明2の「(メタ)アクリル酸エステル」「(メタ)アクリロニトリル」「第1ポリマー」にそれぞれ相当する。 ・甲1発明の「メタクリル酸、アクリル酸」「アクリルアミド」「メタクリル酸2-ヒドロキシエチル」「アクリル系ポリマー(1b)ラテックス」が、本件発明2の「カルボキシル基含有ビニルモノマー」「(メタ)アクリルアミド」「水酸基含有ビニルモノマー」「第2ポリマー」にそれぞれ相当する。 ・甲1発明は「スチレン-ブタジエン系ポリマー(1d)ラテックス」を2質量部、「アクリル系ポリマー(1b)ラッテクス」を5質量部有しているから「アクリル系ポリマー(1b)ラッテクス」の質量が「スチレン-ブタジエン系ポリマー(1d)ラテックス」の質量の2.5倍となり、本件発明2の「第2ポリマーの質量が、第1ポリマーの質量の0.1倍以上100倍未満」の範囲内である。 ・本件発明2において「前記第2モノマー成分100質量部に対して、(メタ)アクリルアミドの含有割合が、70質量部以上99質量部以下である」であるのに対して、甲1発明では「アクリル系ポリマー(1b)ラテックス」における「アクリルアミド」は5質量部である点で相違する。 ・甲1発明の「蓄電デバイス用セパレータの塗工液の原料」において、塗工液はコートを形成することは明らかであり、また、段落【0109】によれば蓄電デバイスは二次電池である。したがって、甲1発明の「蓄電デバイス用セパレータの塗工液の原料」は、本件発明2の「二次電池セパレータ用コート原料」に相当する。 したがって、本件発明2と甲1発明とは以下の点で一致ないし相違する。 (一致点) 「(メタ)アクリル酸エステルおよび(メタ)アクリロニトリルを含有する第1モノマー成分を重合してなる第1ポリマーと、 (メタ)アクリルアミドを含有する第2モノマー成分を重合してなる第2ポリマーとを含み、 前記第2ポリマーの質量が、前記第1ポリマーの質量の0.1倍以上100倍未満であり、 前記第2モノマー成分が、さらに、カルボキシル基含有ビニルモノマーおよび水酸基含有ビニルモノマーを含有する、二次電池セパレータ用コート材原料。」 (相違点2) 本件発明2において「前記第2モノマー成分100質量部に対して、(メタ)アクリルアミドの含有割合が、70質量部以上99質量部以下である」のに対して、甲1発明では「アクリル系ポリマー(1b)ラテックス」における「アクリルアミド」の割合は5質量部である点。 (イ)判断 上記のとおり本件発明2と甲1発明とは相違点を有するから、本件発明2は甲第1号証に記載された発明ではなく、本件請求項2に係る特許は特許法第29条第1項第3号の規定に違反してされたものではない。 更に進んで進歩性についても検討すると、上記「第5 5.」において検討したように以下の甲5技術は公知である。 「水溶性重合体を含む結着材をセパレータ基材表面に塗布し形成する機能層において、 水溶性重合体は、全単量体単位の量を100質量%として、(メタ)アクリルアミド単量体単位を60質量%以上99質量%以下とすること。」 甲5技術は(メタ)アクリルアミド単量体単位を60質量%以上99質量%以下とする技術であり、当該技術を甲1発明に適用し本件発明2を発明することができるか検討する。 甲5技術も甲1発明と同様にセパレータ上に形成する層に関する技術であり、技術分野は共通するものの、甲1発明において「アクリル系ポリマー(1b)ラテックス」における「アクリルアミド」は5質量部にすぎず、これに甲5技術を適用して60質量部以上、あるいはそれ以上の70質量部以上とすることは、付加的な添加物にすぎない「アクリルアミド」を主成分とすることに他ならない。したがって、「アクリル系ポリマー(1b)ラテックス」の特性が大きく変化することは明らかであり、これにより甲1発明が目指している効果が損なわれる可能性があることは当業者が容易に予測されることから、甲1発明に甲5技術を適用することには阻害要因が存在するといえる。また、甲第2号証ないし甲第4号証、甲第6号証を参照してもアクリルアミドを70質量部以上99質量部以下とすべき何らの示唆も見いだせない。 よって、本件の請求項2に係る発明は甲第1号証に記載された発明、及び甲第5号証に記載された技術から当業者が容易に発明することができたものとはいえない。 したがって、本件請求項2に係る特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではない。 (3)本件発明5ないし9について 本件発明5ないし9は、本件発明1または2の「二次電池セパレータ用コート材原料」にさらに限定を付加して「二次電池セパレータ用コート材」「二次電池セパレータ」「二次電池セパレータの製造方法」及び「二次電池」としたものであるから、本件発明5ないし9は、本件発明1または2の構成を全て含み、更に限定を付したものといえる。 一方、上記(1)(2)において検討したように本件発明1及び2は、甲1発明と同一であるとも、また甲1発明及び甲5技術から容易に発明できたものともいえない。 そうしてみると、先の取消理由通知で言及した本件発明5、7ないし9についても上記(1)(2)と同様の理由により甲1発明と同一であるとはいえず、また本件発明6について甲1発明、甲第2号証記載の技術及び甲5技術から容易に発明できたものとはいえない。 したがって、本件請求項5、7ないし9に係る特許は特許法第29条第1項の規定に違反してされたものではなく、本件請求項6に係る特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではない。 2.甲2発明を主引例とする取消理由 (1)本件発明1について ア.本件発明1と甲2発明 本件発明1は上記「第3」のとおり、甲2発明は上記「第5 2.」のとおりである。 イ.当審の判断 (ア)対比 本件発明1と甲2発明とを対比すると、 ・甲2発明の、「メタクリル酸、アクリル酸」「メタクリル酸2-ヒドロキシエチル」「アクリルアミド」「アクリル系ポリマー(1b)」が、本件発明1の「カルボキシル基含有ビニルモノマー」「水酸基含有ビニルモノマー(N-置換不飽和カルボン酸アミドを除く)」「(メタ)アクリルアミド」「第2ポリマー」にそれぞれ相当する。 ・甲2発明の「メチルメタクリレート」「アクリロニトリル」「スチレン-ブタジエン系ポリマー(1e)」が本件発明1の「(メタ)アクリル酸エステル」「(メタ)アクリロニトリル」「第1ポリマー」にそれぞれ相当する。 ・甲2発明は「アクリル系ポリマー(1b)」を2質量部と「スチレン-ブタジエン系ポリマー(1e)」を5質量部有しているから「アクリル系ポリマー(1b)」の質量が「スチレン-ブタジエン系ポリマー(1e)」の質量の0.4倍となり、本件発明1の「第2ポリマーの質量が、第1ポリマーの質量の0.1倍以上100倍未満」に相当する。 ・甲2発明の「蓄電デバイス用セパレータの塗工液の原料」について、塗工液はコートを形成することは明らかであり、また、段落【0001】によれば二次電池などの蓄電デバイス用であることから、本件発明1の「二次電池セパレータ用コート原料」に相当する。 ・本件発明1において「前記カルボキシル基含有ビニルモノマーの含有割合が、前記第2モノマー成分100質量部に対して、3質量部以上」であるのに対して、甲2発明では「カルボキシル基含有ビニルモノマー」に相当する「メタクリル酸、アクリル酸」は合計で乳化液中のモノマー成分100質量部中2.48質量部である点で相違する。 したがって、本件発明1と甲2発明とは以下の点で一致ないし相違する。 (一致点) 「(メタ)アクリル酸エステルおよび(メタ)アクリロニトリルを含有する第1モノマー成分を重合してなる第1ポリマーと、 (メタ)アクリルアミドを含有する第2モノマー成分を重合してなる第2ポリマーとを含み、 前記第2ポリマーの質量が、前記第1ポリマーの質量の0.1倍以上100倍未満であり、 前記第2モノマー成分が、さらに、カルボキシル基含有ビニルモノマーおよび水酸基含有ビニルモノマー(N-置換不飽和カルボン酸アミドを除く)を含有する、二次電池セパレータ用コート材原料。」 (相違点3) 本件発明1において「前記カルボキシル基含有ビニルモノマーの含有割合が、前記第2モノマー成分100質量部に対して、3質量部以上」であるのに対して、甲2発明では「メタクリル酸」「アクリル酸」は、合計で乳化液中のモノマー成分100質量部中2.48質量部である点。 (イ)判断 上記のとおり本件発明1と甲2発明とは相違点を有するから、本件発明1は甲第2号証に記載された発明ではなく、本件請求項1に係る特許は特許法第29条第1項第3号の規定に該当しない。 更に進んで進歩性についても検討する。甲2発明では「カルボキシル基含有ビニルモノマー」に相当する「メタクリル酸、アクリル酸」は合計で2.48質量部である。一般に組成比の変更によって特性が変化することを鑑みると、「メタクリル酸、アクリル酸」を本件発明1のように3質量部以上とすることは、敢えて行う動機付けはないと言うべきであり、また、甲第1号証、甲第3号証ないし甲第6号証を参照してもこのように変更すべき何らの示唆も見いだせないから、上記相違点3は当業者が容易に成し得た事項であるということはできない。 したがって、本件請求項1に係る特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではない。 (2)本件発明2について 令和5年9月7日付け取消理由通知書において本件請求項2に係る発明について取消理由は通知していないが、請求項5ないし9が請求項2を直接又は間接的に引用しているので、ここで本件発明2について検討しておく。 ア.本件発明2と甲2発明 本件発明2は上記「第3」のとおり、甲2発明は上記「第5 2.」のとおりである。 イ.当審の判断 (ア)対比 本件発明2と甲2発明とを対比すると、 ・甲2発明の、「メタクリル酸、アクリル酸」「メタクリル酸2-ヒドロキシエチル」「アクリルアミド」「アクリル系ポリマー(1b)」が、本件発明2の「カルボキシル基含有ビニルモノマー」「水酸基含有ビニルモノマー」「(メタ)アクリルアミド」「第2ポリマー」にそれぞれ相当する。 ・甲2発明の「メチルメタクリレート」「アクリロニトリル」「スチレン-ブタジエン系ポリマー(1e)」が本件発明2の「(メタ)アクリル酸エステル」「(メタ)アクリロニトリル」「第1ポリマー」にそれぞれ相当する。 ・甲2発明は「アクリル系ポリマー(1b)」を2質量部と「スチレン-ブタジエン系ポリマー(1e)」を5質量部有しているから「アクリル系ポリマー(1b)」の質量が「スチレン-ブタジエン系ポリマー(1e)」の質量の0.4倍となり、本件発明2の「第2ポリマーの質量が、第1ポリマーの質量の0.1倍以上100倍未満」に含まれる。 ・甲2発明の「蓄電デバイス用セパレータの塗工液の原料」について、塗工液はコートを形成することは明らかであり、また、段落【0001】によれば蓄電デバイス用であることから、本件発明2の「二次電池セパレータ用コート原料」に相当する。 ・本件発明2において「前記第2モノマー成分100質量部に対して、(メタ)アクリルアミドの含有割合が、70質量部以上99質量部以下である」のに対して、甲2発明では「アクリル系ポリマー(1b)」において、乳化液中のモノマー100質量部中の「アクリルアミド」の割合は0.2質量部である点で相違する。 したがって、本件発明2と甲2発明とは以下の点で一致ないし相違する。 (一致点) 「(メタ)アクリル酸エステルおよび(メタ)アクリロニトリルを含有する第1モノマー成分を重合してなる第1ポリマーと、 (メタ)アクリルアミドを含有する第2モノマー成分を重合してなる第2ポリマーとを含み、 前記第2ポリマーの質量が、前記第1ポリマーの質量の0.1倍以上100倍未満であり、 前記第2モノマー成分が、さらに、カルボキシル基含有ビニルモノマーおよび水酸基含有ビニルモノマーを含有する、二次電池セパレータ用コート材原料。」 (相違点4) 本件発明2において「前記第2モノマー成分100質量部に対して、(メタ)アクリルアミドの含有割合が、70質量部以上99質量部以下である」のに対して、甲2発明では「アクリル系ポリマー(1b)」において、乳化液中のモノマー100質量部中の「アクリルアミド」の割合は0.2質量部である点。 (イ)判断 上記のとおり本件発明2と甲2発明とは相違点を有するから、本件発明2は甲第2号証に記載された発明ではなく、本件請求項2に係る特許は特許法第29条第1項第3号の規定に違反してされたものではない。 更に進んで進歩性についても検討すると、上記「第5 5.」において検討したように甲5技術は公知である。 甲5技術は(メタ)アクリルアミド単量体単位を60質量%以上99質量%以下とする技術であり、当該技術を甲2発明に適用し本件発明2を発明することができるか検討する。 甲5技術も甲2発明と同様にセパレータ上に形成する層に関する技術であり、技術分野は共通するものの、甲2発明において乳化液中のモノマー100質量部中の「アクリルアミド」の割合は0.2質量部にすぎず、これに甲5技術を適用して60質量部以上、あるいはそれ以上の70質量部以上とすることは、付加的な添加物にすぎない「アクリルアミド」を主成分とすることに他ならない。したがって、「アクリル系ポリマー(1b)」の特性が大きく変化することは明らかであり、これにより甲2発明が目指している効果が損なわれる可能性があることは当業者が容易に予測されることから、甲2発明に甲5技術を適用することには阻害要因が存在するといえる。また、甲第1号証、甲第3号証、甲第4号証、甲第6号証を参照してもアクリルアミドを70質量部以上99質量部以下とすべき何らの示唆も見いだせない。 よって、本件の請求項2に係る発明は甲第2号証に記載された発明、及び甲第5号証に記載された技術から当業者が容易に発明することができたものとはいえない。 したがって、本件請求項2に係る特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではない。 (3)本件発明5ないし9について 本件発明5ないし9は、本件発明1または2の「二次電池セパレータ用コート材原料」にさらに限定を付加して「二次電池セパレータ用コート材」「二次電池セパレータ」「二次電池セパレータの製造方法」及び「二次電池」としたものであるから、本件発明5ないし9は、本件発明1または2の構成を全て含み、更に限定を付したものといえる。 一方、上記(1)(2)において検討したように本件発明1及び2は、甲2発明と同一であるとも、また甲2発明及び甲5技術から容易に発明できたものともいえない。 そうしてみると、先の取消理由通知で言及した本件発明5、7ないし9についても上記(1)(2)と同様の理由により甲2発明と同一であるとはいえず、また本件発明6について甲2発明、甲第1号証記載の技術及び甲5技術から容易に発明できたものとはいえない。 したがって、本件請求項5、7ないし9に係る特許は特許法第29条第1項の規定に違反してされたものではなく、本件請求項6に係る特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではない。 3.甲3発明を主引例とする取消理由 (1)本件発明1について ア.本件発明1と甲3発明 本件発明1は上記「第3」のとおり、甲3発明は上記「第5 3.」のとおりである。 イ.当審の判断 (ア)対比 本件発明1と甲3発明とを対比すると、 ・甲3発明の「MAA(メタクリル酸)」「粒子状重合体A」が本件発明1の「カルボキシル基含有ビニルモノマー」「第2ポリマー」に相当し、甲3発明の「NMA(N-メチロールアクリルアミド)」が、本件発明1の「(メタ)アクリルアミド」に相当する。 ・甲3発明の「NMA(N-メチロールアクリルアミド)」は「水酸基含有ビニルモノマー」ではあるが、「N-置換不飽和カルボン酸アミド」であるから、本件発明1の「水酸基含有ビニルモノマー(N-置換不飽和カルボン酸アミドを除く)」とは相違する。 ・甲3発明の「BA(ブチルアクリレート)」「AN(アクリロニトリル)」「粒子状重合体B」が、本件発明1の「(メタ)アクリル酸エステル」「(メタ)アクリロニトリル」「第1ポリマー」にそれぞれ相当する。 ・甲3発明の重合体重量比(A/B)が0.176、もしくは0.538のいずれかであることは、本件発明1の「前記第2ポリマーの質量が、前記第1ポリマーの質量の0.1倍以上100倍未満であ」る範囲に含まれる。 ・甲3発明の「リチウムイオン二次電池のセパレータの接着層の原料」は本件発明1の「二次電池セパレータ用コート材原料」に相当する。 ・本件発明1において「前記カルボキシル基含有ビニルモノマーの含有割合が、前記第2モノマー成分100質量部に対して、3質量部以上」であるのに対して、甲3発明では「カルボキシル基含有ビニルモノマー」に相当する「MAA(メタクリル酸)」の割合は2部である点で相違する。 したがって、本件発明1と甲3発明とは以下の点で一致ないし相違する。 (一致点) 「(メタ)アクリル酸エステルおよび(メタ)アクリロニトリルを含有する第1モノマー成分を重合してなる第1ポリマーと、 (メタ)アクリルアミドを含有する第2モノマー成分を重合してなる第2ポリマーとを含み、 前記第2ポリマーの質量が、前記第1ポリマーの質量の0.1倍以上100倍未満であり、 前記第2モノマー成分が、さらに、カルボキシル基含有ビニルモノマーを含有する、二次電池セパレータ用コート材原料。」 (相違点5) 本件発明1は「水酸基含有ビニルモノマー(N-置換不飽和カルボン酸アミドを除く)」であるのに対して、甲3発明の「NMA(N-メチロールアクリルアミド)」は「N-置換不飽和カルボン酸アミド」である点。 (相違点6) 本件発明1において「前記カルボキシル基含有ビニルモノマーの含有割合が、前記第2モノマー成分100質量部に対して、3質量部以上」であるのに対して、甲3発明は「MAA(メタクリル酸)」の割合は2部である点。 (イ)判断 上記のとおり本件発明1と甲3発明とは相違点を有するから、本件発明1は甲第3号証に記載された発明ではなく、本件請求項1に係る特許は特許法第29条第1項第3号の規定に該当しない。 (2)本件発明2について 令和5年9月7日付け取消理由通知書において本件請求項2に係る発明について取消理由は通知していないが、請求項5ないし9が請求項2を直接又は間接的に引用しているので、先に本件発明2について検討をする。 ア.本件発明2と甲3発明 本件発明2は上記「第3」のとおり、甲3発明は上記「第5 3.」のとおりである。 イ.当審の判断 (ア)対比 本件発明2と甲3発明とを対比すると、 ・甲3発明の「MAA(メタクリル酸)」「粒子状重合体A」が本件発明2の「カルボキシル基含有ビニルモノマー」「第2ポリマー」に相当し、甲3発明の「NMA(N-メチロールアクリルアミド)」が、本件発明2の「(メタ)アクリルアミド」及び「水酸基含有ビニルモノマー」に相当する。 ・甲3発明の「BA(ブチルアクリレート)」「AN(アクリロニトリル)」「粒子状重合体B」が、本件発明2の「(メタ)アクリル酸エステル」「(メタ)アクリロニトリル」「第1ポリマー」にそれぞれ相当する。 ・甲3発明の重合体重量比(A/B)が0.176、もしくは0.538のいずれかであることは、本件発明2の「前記第2ポリマーの質量が、前記第1ポリマーの質量の0.1倍以上100倍未満であ」る範囲に含まれる。 ・甲3発明の「リチウムイオン二次電池のセパレータの接着層の原料」は本件発明2の「二次電池セパレータ用コート材原料」に相当する。 ・本件発明2において「前記第2モノマー成分100質量部に対して、(メタ)アクリルアミドの含有割合が、70質量部以上99質量部以下である」のに対して、甲3発明では粒子状重合体AにおけるNMA(N-メチロールアクリルアミド)の割合は1.2部である点で相違する。 したがって、本件発明2と甲3発明とは以下の点で一致ないし相違する。 (一致点) 「(メタ)アクリル酸エステルおよび(メタ)アクリロニトリルを含有する第1モノマー成分を重合してなる第1ポリマーと、 (メタ)アクリルアミドを含有する第2モノマー成分を重合してなる第2ポリマーとを含み、 前記第2ポリマーの質量が、前記第1ポリマーの質量の0.1倍以上100倍未満であり、 前記第2モノマー成分が、さらに、カルボキシル基含有ビニルモノマーおよび水酸基含有ビニルモノマーを含有する、二次電池セパレータ用コート材原料。」 (相違点7) 本件発明2において「前記第2モノマー成分100質量部に対して、(メタ)アクリルアミドの含有割合が、70質量部以上99質量部以下である」のに対して、甲3発明では粒子状重合体AにおけるNMA(N-メチロールアクリルアミド)の割合は1.2部である点。 (イ)判断 上記のとおり本件発明2と甲3発明とは相違点を有するから、本件発明2は甲第3号証に記載された発明ではなく、本件請求項2に係る特許は特許法第29条第1項第3号の規定に違反してされたものではない。 更に進んで進歩性についても検討すると、上記「第5 5.」において検討したように甲5技術は公知である。 甲5技術は(メタ)アクリルアミド単量体単位を60質量%以上99質量%以下とする技術であり、当該技術を甲3発明に適用し本件発明2を発明することができるか検討する。 甲5技術も甲3発明と同様にセパレータ上に形成する層に関する技術であり、技術分野は共通するものの、甲3発明において「粒子状重合体A」における「NMA(N-メチロールアクリルアミド)」の割合は1.2部にすぎず、これに甲5技術を適用して60質量%以上、あるいはそれ以上の70質量%以上とすることは、付加的な添加物であった「NMA(N-メチロールアクリルアミド)」を主成分とすることに他ならない。したがって、「粒子状重合体A」の特性が大きく変化することは明らかであり、これにより甲3発明が目指している効果が損なわれる可能性があることは当業者が容易に予測されることから、甲3発明に甲5技術を適用することには阻害要因が存在するといえる。また、甲第1号証、甲第2号証、甲第4号証、甲第6号証を参照してもNMAを70質量部以上99質量部以下とすべき何らの示唆も見いだせない。 よって、本件の請求項2に係る発明は甲第3号証に記載された発明、及び甲第5号証に記載された技術から当業者が容易に発明することができたものとはいえない。 したがって、本件請求項2に係る特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではない。 (3)本件発明5、7ないし9について 本件発明5、7ないし9は、本件発明1または2の「二次電池セパレータ用コート材原料」にさらに限定を付加して「二次電池セパレータ用コート材」「二次電池セパレータ」「二次電池セパレータの製造方法」及び「二次電池」としたものであるから、本件発明5、7ないし9は、本件発明1または2の構成を全て含み、更に限定を付したものといえる。 一方、上記(1)(2)において検討したように本件発明1及び2は、甲3発明と同一であるとはいえない。 そうしてみると、甲第3号証に本件発明1及び2が記載されていないといえるから、更に限定を付加した本件発明5、7ないし9についても上記(1)(2)と同様の理由により甲3発明と同一であるとはいえない。 したがって、本件請求項5、7ないし9に係る特許は特許法第29条第1項の規定に違反してされたものではない。 4.甲4発明を主引例とする取消理由 (1)本件発明1について ア.本件発明1と甲4発明 本件発明1は上記「第3」のとおり、甲4発明は上記「第5 4.」のとおりである。 イ.当審の判断 (ア)対比 本件発明1と甲4発明とを対比すると、 ・甲4発明の「AN(アクリロニトリル)」「2-EHA(2-エチルヘキシルアクリレート)」「粒子状重合体」が、本件発明1の「(メタ)アクリロニトリル」「(メタ)アクリル酸エステル」「第1ポリマー」にそれぞれ相当する。 ・甲4発明の「MAA(メタクリル酸)」「AAm(アクリルアミド)」「バインダ」が、本件発明1の「カルボキシル基含有ビニルモノマー」「(メタ)アクリルアミド」「第2ポリマー」にそれぞれ相当する。 ・本件発明1の「水酸基含有ビニルモノマー(N-置換不飽和カルボン酸アミドを除く)」に関して、甲4発明の「NMA(N-メチロールアクリルアミド)」は「水酸基含有ビニルモノマー」ではあるが、「N-置換不飽和カルボン酸アミド」であるから、本件発明1の「水酸基含有ビニルモノマー(N-置換不飽和カルボン酸アミドを除く)」とは相違する。 ・本件発明1では「前記第2ポリマーの質量が、前記第1ポリマーの質量の0.1倍以上100倍未満」であるのに対して、甲4発明では、粒子状重合体は100部、バインダは6部であるから、バインダは粒子状重合体の0.06倍であり、本件発明1の範囲に含まれない点で相違する。 ・本件発明1において「前記カルボキシル基含有ビニルモノマーの含有割合が、前記第2モノマー成分100質量部に対して、3質量部以上」であるのに対して、甲4発明では本件発明1の「カルボキシル基含有ビニルモノマー」に相当する「MAA(メタクリル酸)」の含有割合はバインダの単量体全体に対して2部である点で相違する。 ・甲4発明Aの接着剤の原料は本件発明1のコート材原料に相当する。 そうしてみると、本件発明1と甲4発明Aとは以下の点で一致ないし相違する。 (一致点) 「(メタ)アクリル酸エステルおよび(メタ)アクリロニトリルを含有する第1モノマー成分を重合してなる第1ポリマーと、 (メタ)アクリルアミドを含有する第2モノマー成分を重合してなる第2ポリマーとを含み、 前記第2モノマー成分が、さらに、カルボキシル基含有ビニルモノマーを含有する、 二次電池セパレータ用コート材原料。」 (相違点8) 本件発明1は「水酸基含有ビニルモノマー(N-置換不飽和カルボン酸アミドを除く)」であるのに対して、甲4発明の「NMA(N-メチロールアクリルアミド)」は「N-置換不飽和カルボン酸アミド」である点。 (相違点9) 本件発明1では「前記第2ポリマーの質量が、前記第1ポリマーの質量の0.1倍以上100倍未満」であるのに対して、甲4発明では、粒子状重合体は100部、バインダは6部であるから、バインダは粒子状重合体の0.06倍である点。 (相違点10) 本件発明1において「前記カルボキシル基含有ビニルモノマーの含有割合が、前記第2モノマー成分100質量部に対して、3質量部以上」であるのに対して、甲4発明では「MAA(メタクリル酸)」のバインダの単量体全体に対する含有割合は2部である点。 (イ)判断 上記相違点について検討する。 事案に鑑み相違点10から検討する。甲4発明では「カルボキシル基含有ビニルモノマー」に相当する「MAA(メタクリル酸)」はバインダの単量体全体に対する含有割合が2部である。これを本件発明1のように3質量部以上とすることは、一般に組成比の変更によって特性が変化することを鑑みると、敢えて行う動機付けはないと言うべきであり、また、甲第1号証ないし甲第3号証、甲第5号証、甲第6号証を参照してもこのように変更すべき何らの示唆も見いだせないから、上記相違点9は当業者が容易に成し得た事項であるということはできない。 したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件請求項1に係る特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではない。 (2)本件発明2について 令和5年9月7日付け取消理由通知書において本件請求項2に係る発明について取消理由は通知していないが、請求項5ないし9が請求項2を直接又は間接的に引用しているので、ここで本件発明2について検討しておく。 ア.本件発明2と甲4発明 本件発明2は上記「第3」のとおり、甲4発明は上記「第5 4.」のとおりである。 イ.当審の判断 (ア)対比 本件発明2と甲4発明とを対比すると、 ・甲4発明の「AN(アクリロニトリル)」「2-EHA(2-エチルヘキシルアクリレート)」「粒子状重合体」が、本件発明2の「(メタ)アクリロニトリル」「(メタ)アクリル酸エステル」「第1ポリマー」にそれぞれ相当する。 ・甲4発明の「MAA(メタクリル酸)」「NMA(N-メチロールアクリルアミド)」「AAm(アクリルアミド)」「バインダ」が、本件発明2の「カルボキシル基含有ビニルモノマー」「水酸基含有ビニルモノマー」「(メタ)アクリルアミド」「第2ポリマー」にそれぞれ相当する。 ・本件発明2では「前記第2ポリマーの質量が、前記第1ポリマーの質量の0.1倍以上100倍未満」であるのに対して、甲4発明では、粒子状重合体は100部、バインダは6部であるから、バインダは粒子状重合体の0.06倍であり、本件発明2の範囲に含まれない点で相違する。 ・本件発明2において「前記第2モノマー成分100質量部に対して、(メタ)アクリルアミドの含有割合が、70質量部以上99質量部以下である」のに対して、甲4発明では「バインダ」において「AAm(アクリルアミド)」の割合は2部である点で相違する。 ・甲4発明の接着剤の原料は本件発明2のコート材原料に相当する。 そうしてみると、本件発明2と甲4発明Aとは以下の点で一致ないし相違する。 (一致点) 「(メタ)アクリル酸エステルおよび(メタ)アクリロニトリルを含有する第1モノマー成分を重合してなる第1ポリマーと、 (メタ)アクリルアミドを含有する第2モノマー成分を重合してなる第2ポリマーとを含み、 前記第2モノマー成分が、さらに、カルボキシル基含有ビニルモノマーおよび水酸基含有ビニルモノマーを含有する、二次電池セパレータ用コート材原料。」 (相違点11) 本件発明2では「前記第2ポリマーの質量が、前記第1ポリマーの質量の0.1倍以上100倍未満」であるのに対して、甲4発明では、粒子状重合体は100部、バインダは6部であるから、バインダは粒子状重合体の0.06倍である点 (相違点12) 本件発明2において「前記第2モノマー成分100質量部に対して、(メタ)アクリルアミドの含有割合が、70質量部以上99質量部以下である」のに対して、甲4発明では「バインダ」において単量体全体に対する「AAm(アクリルアミド)」の割合は1部である点。 (イ)判断 事案に鑑み相違点12から検討する。甲4発明では、「バインダ」において「AAm(アクリルアミド)」の割合は1部である。これを本件発明2のように70質量部以上99質量部以下とすることは、一般に組成比の変更によって特性が変化することを鑑みると、敢えて行う動機付けはないと言うべきであり、また、甲第1号証ないし甲第3号証、甲第5号証、甲第6号証を参照してもこのように変更すべき何らの示唆も見いだせないから、上記相違点11は当業者が容易に成し得た事項であるということはできない。 したがって、相違点11について検討するまでもなく、本件請求項2に係る特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではない。 (3)本件発明5、7ないし9について 本件発明5、7ないし9は、本件発明1または2の「二次電池セパレータ用コート材原料」にさらに限定を付加して「二次電池セパレータ用コート材」「二次電池セパレータ」「二次電池セパレータの製造方法」及び「二次電池」としたものであるから、本件発明5、7ないし9は、本件発明1または2の構成を全て含み、更に限定を付したものといえる。 一方、上記(1)(2)において検討したように本件発明1及び2は、甲4発明から容易に発明できたものとはいえない。 そうしてみると、先の取消理由通知で言及した本件発明5、7ないし9についても上記(1)(2)と同様の理由により甲4発明から容易に発明できたものとはいえない。 したがって、本件請求項5、7ないし9に係る特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではない。 5.先願発明を引例とする取消理由 (1)本件発明1について ア.本件発明1と先願発明 本件発明1は上記「第3」のとおり、先願発明は上記「第5 6.」のとおりである。 イ.当審の判断 本件発明1と先願発明とを対比すると、 ・先願発明の「AN(アクリロニトリル)」「(メタ)アクリル酸エステル単量体b5としてMMA、BA、2EHA」「ポリマー水分散体A9」が、本件発明1の「(メタ)アクリロニトリル」「(メタ)アクリル酸エステル」「第1ポリマー」にそれぞれ相当する。 ・先願発明の「MAA(メタクリル酸)、AA(アクリル酸)」「AM(アクリルアミド)」「2HEMA(2-ヒドロキシエチルメタクリレート)」「ポリマー水分散体a1」が、本件発明1の「カルボキシル基含有ビニルモノマー」「(メタ)アクリルアミド」「水酸基含有ビニルモノマー(N-置換不飽和カルボン酸アミドを除く)」「第2ポリマー」にそれぞれ相当する。 ・先願発明において「固形分重量比A9:a1=80:20」であるから「ポリマー水分散体a1」が「ポリマー水分散体A9」の0.25倍となり、本件発明1の「前記第2ポリマーの質量が、前記第1ポリマーの質量の0.1倍以上100倍未満」の範囲内である。 ・先願発明の「蓄電デバイス用セパレータのパターン塗工用スラリーの原料」は、段落【0105】によれば蓄電デバイス用であるから本件発明1の「二次電池セパレータ用コート材原料」に相当する。 ・本件発明1において「前記カルボキシル基含有ビニルモノマーの含有割合が、前記第2モノマー成分100質量部に対して、3質量部以上」であるのに対して、先願発明では「カルボキシル基含有ビニルモノマー」に相当する「MAA(メタクリル酸)」「AA(アクリル酸)」を合計した割合は2質量部(1+1)である点で相違する。 したがって、本件発明1と先願発明とは以下の点で一致ないし相違する。 (一致点) 「(メタ)アクリル酸エステルおよび(メタ)アクリロニトリルを含有する第1モノマー成分を重合してなる第1ポリマーと、 (メタ)アクリルアミドを含有する第2モノマー成分を重合してなる第2ポリマーとを含み、 前記第2ポリマーの質量が、前記第1ポリマーの質量の0.1倍以上100倍未満であり、 前記第2モノマー成分が、さらに、カルボキシル基含有ビニルモノマーおよび水酸基含有ビニルモノマー(N-置換不飽和カルボン酸アミドを除く)を含有する、 二次電池セパレータ用コート材原料。」 (相違点13) 本件発明1において「前記カルボキシル基含有ビニルモノマーの含有割合が、前記第2モノマー成分100質量部に対して、3質量部以上」であるのに対して、先願発明では「MAA(メタクリル酸)」「AA(アクリル酸)」を合計した割合は2質量部である点。 したがって、上記のとおり本件発明1と先願発明とは相違点を有するから、本件発明1は甲第6号証に記載された発明と同一ではなく、本件請求項1に係る特許は特許法第29条の2の規定に違反してされたものではない。 (2)本件発明2について 令和5年9月7日付け取消理由通知書において本件請求項2に係る発明について取消理由は通知していないが、請求項5ないし9が請求項2を直接又は間接的に引用しているので、ここで本件発明2について検討しておく。 ア.本件発明2と先願発明 本件発明2は上記「第3」のとおり、先願発明は上記「第5 6.」のとおりである。 イ.当審の判断 (ア)対比 本件発明2と先願発明とを対比すると、 ・先願発明の「AN(アクリロニトリル)」「(メタ)アクリル酸エステル単量体b5としてMMA、BA、2EHA」「ポリマー水分散体A9」が、本件発明2の「(メタ)アクリロニトリル」「(メタ)アクリル酸エステル」「第1ポリマー」にそれぞれ相当する。 ・先願発明の「MAA(メタクリル酸)、AA(アクリル酸)」「AM(アクリルアミド)」「2HEMA(2-ヒドロキシエチルメタクリレート)」「ポリマー水分散体a1」が、本件発明2の「カルボキシル基含有ビニルモノマー」「(メタ)アクリルアミド」「水酸基含有ビニルモノマー」「第2ポリマー」にそれぞれ相当する。 ・先願発明において「固形分重量比A9:a1=80:20」であるから「ポリマー水分散体a1」が「ポリマー水分散体A9」の0.25倍となり、本件発明2の「前記第2ポリマーの質量が、前記第1ポリマーの質量の0.1倍以上100倍未満」の範囲内である。 ・先願発明の「蓄電デバイス用セパレータのパターン塗工用スラリーの原料」は、段落【0105】によれば蓄電デバイス用であるから本件発明2の「二次電池セパレータ用コート原料」に相当する。 ・本件発明2において「前記第2モノマー成分100質量部に対して、(メタ)アクリルアミドの含有割合が、70質量部以上99質量部以下である」であるのに対して、先願発明では「AM(アクリルアミド)」の割合は0.1質量部である点で相違する。 したがって、本件発明2と先願発明とは以下の点で一致ないし相違する。 (一致点) 「(メタ)アクリル酸エステルおよび(メタ)アクリロニトリルを含有する第1モノマー成分を重合してなる第1ポリマーと、 (メタ)アクリルアミドを含有する第2モノマー成分を重合してなる第2ポリマーとを含み、 前記第2ポリマーの質量が、前記第1ポリマーの質量の0.1倍以上100倍未満であり、 前記第2モノマー成分が、さらに、カルボキシル基含有ビニルモノマーおよび水酸基含有ビニルモノマーを含有する、 二次電池セパレータ用コート材原料。」 (相違点14) 本件発明2において「前記第2モノマー成分100質量部に対して、(メタ)アクリルアミドの含有割合が、70質量部以上99質量部以下である」であるのに対して、先願発明では「AM(アクリルアミド)」の割合は0.1質量部である点。 したがって、上記のとおり本件発明2と先願発明とは相違点を有するから、本件発明2は甲第6号証に記載された発明と同一ではなく、本件請求項2に係る特許は特許法第29条の2の規定に違反してされたものではない。 (3)本件発明5、7ないし9について 本件発明5、7ないし9は、本件発明1または2の「二次電池セパレータ用コート材原料」にさらに限定を付加して「二次電池セパレータ用コート材」「二次電池セパレータ」「二次電池セパレータの製造方法」及び「二次電池」としたものであるから、本件発明5、7ないし9は、本件発明1または2の構成を全て含み、更に限定を付したものといえる。 一方、上記(1)(2)において検討したように本件発明1及び2は、先願発明と同一であるとはいえない。 そうしてみると、先の取消理由通知で言及した本件発明5、7ないし9についても甲第6号証に記載された発明と同一であるとはいえない。 したがって、本件請求項5、7ないし9に係る特許は特許法第29条の2の規定に違反してされたものではない。 第8 取消理由において採用しなかった特許異議申立理由について 異議申立人が主張する申立理由のうち、本件発明2に対する甲第1号証ないし甲第3号証を主引例とし、甲第5号証を副引例とする申立理由(進歩性)については取消理由において採用しなかった。 しかしながら、これらについては、上記「第7 1.(2)イ.(イ)」「第7 2.(2)イ.(イ)」「第7 3.(2)イ.(イ)」において検討したとおりであり、採用することはできない。 第9 むすび 以上のとおり、本件発明1、2、5ないし9に係る特許は、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては取り消すことはできない。また、他に本件発明1、2、5ないし9に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2023-700594

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