特許異議申立
2023-700589
下塗り用塗料組成物及び塗膜
- 審判番号
- 2023-700589
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2022-127312
- 登録番号
- 7198961
- 請求日
- 2023年06月06日
- 審決日
- 2024年09月30日
- 公報発行日
- 2025年01月31日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】日本ペイントマリン株式会社
- 【権利者代理人】弁理士法人深見特許事務所
- 【異議申立人】居石 美奈
- 審判長/審判官
- 審判長 光本 美奈子
- 審判官 門前 浩一
- 審判官 村守 宏文
- 分類
- P1651.121-YAA(C09D) / P1651.113-YAA(C09D)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法120条の8第1項特許法135条
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項、特許法第29条第2項、特許法第120条の5第4項、特許法第126条第7項、特許法第29条第1項第3号、特許法第120条の8第1項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7198961号発明「下塗り用塗料組成物及び塗膜」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7198961号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-10〕について訂正することを認める。
特許第7198961号の請求項1、3-10に係る特許を維持する。
特許第7198961号の請求項2に係る特許異議の申立てを却下する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
1 本件特許に係る出願は、令和4年8月9日の出願であって、同年12月21日に特許権の設定登録(請求項の数、10)がされ、令和5年1月4日に特許掲載公報が発行された。その後、令和5年6月6日に居石 美奈(以下「申立人」という。)により、請求項1~10(全請求項)に係る特許に対して特許異議の申立てがされたものである。
2 当審は、令和6年3月7日付けで取消理由を通知し(発送は同年同月12日)、この取消理由通知に対し、特許権者は、その指定期間内である令和6年5月8日に意見書の提出及び訂正の請求(以下「本件訂正請求」といい、訂正の内容を「本件訂正」という。)を行った。
3 当審は、令和6年6月12日付けで申立人に訂正請求があった旨を通知し(発送は同年同月17日)、この通知に対し、申立人は、その指定期間内である令和6年7月10日に意見書を提出した。
第2 本件訂正請求について
1 請求の趣旨
本件訂正の請求の趣旨は、「特許第7198961号の特許請求の範囲を、本訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~10について訂正することを求める。」というものである。
2 本件訂正
(1)本件訂正は、次の訂正事項1~6からなるものである。以下、下線は訂正箇所を示すため当審が付した。
ア 訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1において、
「アクリル樹脂とエポキシ樹脂とアミン系硬化剤とを含む下塗り用塗料組成物であって、
前記アクリル樹脂は、溶解性パラメータが9.0以上12以下、重量平均分子量が1,000以上95,000以下であり、
前記エポキシ樹脂は、溶解性パラメータが10以上12以下、重量平均分子量が250以上2,500以下である、下塗り用塗料組成物。」
と記載されているのを、
「アクリル樹脂(ただし、アルキド変性アクリル樹脂を除く。)とエポキシ樹脂とアミン系硬化剤とを含む下塗り用塗料組成物であって、
前記アクリル樹脂は、溶解性パラメータが9.2以上12以下、重量平均分子量が1,000以上95,000以下であり、
前記エポキシ樹脂は、溶解性パラメータが10以上12以下、重量平均分子量が250以上2,500以下であり、
前記アクリル樹脂の含有量は、前記エポキシ樹脂の含有量100質量部に対して、10質量部以上50質量部未満である、下塗り用塗料組成物。」
に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項3~10も同様に訂正する)。
イ 訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2を削除する。
ウ 訂正事項3
特許請求の範囲の請求項6において、
「請求項1~5のいずれか1項に記載の」
と記載されているのを、
「請求項1、3、4及び5のいずれか1項に記載の」
に訂正する。
エ 訂正事項4
特許請求の範囲の請求項7において、
「請求項1~5のいずれか1項に記載の」
と記載されているのを、
「請求項1、3、4及び5のいずれか1項に記載の」
に訂正する。
オ 訂正事項5
特許請求の範囲の請求項8において、
「請求項1~5のいずれか1項に記載の」
と記載されているのを、
「請求項1、3、4及び5のいずれか1項に記載の」
に訂正する。
カ 訂正事項6
特許請求の範囲の請求項9において、
「請求項1~5のいずれか1項に記載の」
と記載されているのを、
「請求項1、3、4及び5のいずれか1項に記載の」
に訂正する(請求項9の記載を引用する請求項10も同様に訂正する)。
(2)一群の請求項等について
訂正前の請求項1~10について、請求項2~10はそれぞれ請求項1を直接又は間接的に引用するものであって、訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。
したがって、訂正前の請求項1~10にそれぞれ対応する本件訂正後の請求項1~10は、特許法120条の5第4項に規定する一群の請求項であり、本件訂正は、一群の請求項ごとに請求されたものである。
3 訂正要件についての判断
(1)訂正事項1について
ア 訂正の目的について
訂正事項1は、請求項1の「アクリル樹脂」を「アクリル樹脂(ただし、アルキド変性アクリル樹脂を除く。)」に訂正し(以下、「訂正事項1-1」ともいう。)、また、「前記アクリル樹脂は、溶解性パラメータが9.0以上12以下」を「前記アクリル樹脂は、溶解性パラメータが9.2以上12以下」に訂正し(以下、「訂正事項1-2」ともいう。)、さらに、「前記アクリル樹脂の含有量」について新たに「前記アクリル樹脂の含有量は、前記エポキシ樹脂の含有量100質量部に対して、10質量部以上50質量部未満である」との特定を追加する訂正する(以下、「訂正事項1-3」ともいう。)ものであるから、訂正事項1-1~訂正事項1-3からなる訂正事項1は、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 新規事項の追加の有無、及び、特許請求の範囲の拡張・変更の存否について
(ア)訂正事項1-1は、令和6年3月7日付け取消理由通知において(第5、1)、「甲1を主引用例」とする新規性・進歩性の欠如の判断が示されたので、請求項1に係る発明から甲1に記載された発明を除くことによってこれを解消するために、「アクリル樹脂」から「アルキド変性アクリル樹脂」を除くものであり、それによって新たな技術的事項が導入されるものでもないから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内でするものである。また、前記アのとおり、訂正事項1-1は、「アクリル樹脂」に「アルキド変性アクリル樹脂」が含まれないことを規定するものであって、カテゴリーや対象、目的を変更するものでもないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
(イ)訂正事項1-2及び訂正事項1-3は、令和6年3月7日付け取消理由通知において(第5、2)、「甲4を主引用例」とする新規性・進歩性の欠如の判断が示されたので、請求項1に係る発明から甲4に記載された発明を除くことによってこれを解消するために、アクリル樹脂の溶解性パラメータの範囲を「9.0以上12以下」から「9.2以上12以下」に減縮するとともに、アクリル樹脂の含有量について「前記アクリル樹脂の含有量は、前記エポキシ樹脂の含有量100質量部に対して、10質量部以上50質量部未満である」との限定を新たに追加するものであって、それによって新たな技術的事項が導入されるものでもないから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内でするものである。また、訂正事項1-2による減縮や訂正事項1-3による限定は、カテゴリーや対象、目的を変更するものでもないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
(ウ)したがって、訂正事項1は、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5、6項に適合する。
(2)訂正事項2について
訂正事項2は、請求項2を削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、訂正事項2は、請求項2を削除するものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内でするものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもないことが明らかであり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5、6項に適合する。
(3)訂正事項3~6について
訂正事項3~6は、本件訂正前の請求項6~9において引用していた請求項から請求項2を削除するものであるから、いずれも、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、訂正事項3~6は、本件訂正前の請求項6~9において引用していた請求項から請求項2を削除することのみを目的とするものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内でするものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
したがって、訂正事項3は、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5、6項に適合する。
(4)独立特許要件について
前記第1で述べたように、本件特許異議の申立ては、本件請求項1~10に係る特許のうち請求項1~10(全請求項)に係る特許に対してなされているので、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項に規定される独立特許要件が課される請求項はない。
(5)本件訂正の適否についての小括
以上のとおり、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に掲げる事項を目的とするものであり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5、6項の規定に適合するものである。
したがって、本件特許の特許請求の範囲を本訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~10〕について訂正することを認める。
第3 本件発明
上記第2のとおりであるから、本件特許の請求項1~10に係る発明は、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1~10に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである(請求項1~10に係る発明を、それぞれ「本件発明1」~「本件発明10」といい、まとめて「本件発明」ともいう。)。
「【請求項1】
アクリル樹脂(ただし、アルキド変性アクリル樹脂を除く。)とエポキシ樹脂とアミン系硬化剤とを含む下塗り用塗料組成物であって、
前記アクリル樹脂は、溶解性パラメータが9.2以上12以下、重量平均分子量が1,000以上95,000以下であり、
前記エポキシ樹脂は、溶解性パラメータが10以上12以下、重量平均分子量が250以上2,500以下であり、
前記アクリル樹脂の含有量は、前記エポキシ樹脂の含有量100質量部に対して、10質量部以上50質量部未満である、下塗り用塗料組成物。
【請求項2】
(削除)
【請求項3】
硬化促進剤をさらに含み、
前記硬化促進剤の含有量は、前記エポキシ樹脂の含有最100質量部に対して、0.1質量部以上16質量部以下である、請求項1に記載の下塗り用塗料組成物。
【請求項4】
第1剤と第2剤とからなる2液型の下塗り用塗料組成物であって、
前記第1剤が前記アクリル樹脂及び前記エポキシ樹脂を含有し、
前記第2剤が前記アミン系硬化剤を含有する、請求項1に記載の下塗り用塗料組成物。
【請求項5】
マイカをさらに含み、
前記マイカの含有量は、前記アクリル樹脂及び前記エポキシ樹脂の合計含有量100質量部に対して、2質量部以上95質量部以下である、請求項1に記載の下塗り用塗料組成物。
【請求項6】
請求項1、3、4及び5のいずれか1項に記載の下塗り用塗料組成物から形成される、塗膜。
【請求項7】
基材上に、請求項1、3、4及び5のいずれか1項に記載の下塗り用塗料組成物により下塗り塗膜を形成する工程を含む、塗膜の形成方法。
【請求項8】
基材上に、請求項1、3、4及び5のいずれか1項に記載の下塗り用塗料組成物により下塗り塗膜を形成する工程と、
前記下塗り塗膜上に、上塗り用塗料組成物により上塗り塗膜を形成する工程と、を含む、複層塗膜の形成方法。
【請求項9】
請求項1、3、4及び5のいずれか1項に記載の下塗り用塗料組成物から形成される下塗り塗膜を有する、物品。
【請求項10】
前記下塗り塗膜上に上塗り塗膜をさらに有する、請求項9に記載の物品。」
第4 特許異議の申立ての概要
申立人が申し立てた証拠方法及び理由は以下のとおりである。
1 証拠の一覧
申立人の提示した証拠及び参考資料は次のとおり。以下、甲第1号証を甲1などという。なお、証拠はいずれも特許異議申立書に添付して、また、参考資料はいずれも令和6年7月10日提出の意見書に添付して提示された。
甲1:国際公開第2022/025096号
甲2の1:黄 慶雲、「有機ゴム薬品の選び方・使い方 -理論と実際-」、日本ゴム協会誌、Vol.38、No.5、422~445頁(1965年)
甲2の2:特開2022-28627号公報
甲2の3:林 安男、「接着方法と試験方法 プラスチックと他の材料」、日本ゴム協会誌、Vol.45、No.11、999~1010頁(1972年)
甲3の1:三菱化学スペシャリティケミカルズ事業部、「製品案内」、2014年4月
甲3の2:特公昭62-18566号公報
甲4:特開2017-132960号公報
甲5の1:特表2004-531416号公報
甲5の2:上部に「C.T.S.S.R.L.」との記載があり、「PARALOID(R) B66 100% Solid Grade Thermoplastic Acrylic Resin」との題名があり、下部に「Print date:12.10.2015」と記載がある書類
参考資料1:特開2002-86936号公報
参考資料2:国際公開第2018/221266号
2 申立理由1(進歩性欠如)
本件発明1~10は、甲1に記載された発明及び甲1、甲2の1、甲2の2、甲2の3、甲3の1、甲3の2に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない発明であり、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
3 申立理由2(進歩性欠如)
本件発明1~10は、甲4に記載された発明及び甲3の1、甲3の2、甲5の1、甲5の2に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない発明であり、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
第5 証拠方法の記載事項
1 甲1には次の記載がある。
(1)
「発明が解決しようとする課題
[0005] 前記ロジン類含有量が比較的多い加水分解型防汚塗料から形成される防汚塗膜(以下「ロジン高含有防汚塗膜」ともいう。)は、塗膜硬度が高くなり、下塗り塗膜である防食塗膜に付着しにくいことが分かった。特に、下塗り塗膜を形成してから、防汚塗料を塗装するまでの塗装間隔(インターバル)が長い場合、該防汚塗膜は、下塗り塗膜への付着性が不十分になる傾向があった。
また、本発明者が検討したところ、従来、ロジン高含有防汚塗膜に対する付着性に優れる防食塗膜も存在はしていたが、このようなロジン高含有防汚塗膜に対する付着性に優れる防食塗膜は、防食性の点で改良の余地があった。
[0006] 本発明の一実施形態は、防食性、および、ロジン高含有防汚塗膜に対する付着性にバランスよく優れる防食塗膜を形成可能なエポキシ樹脂系防食塗料組成物を提供する。
課題を解決するための手段
[0007] 前記課題を解決する方法について鋭意検討を重ねた結果、所定の組成物によれば前記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。本発明の構成例は以下の通りである。
なお、本明細書では、数値範囲を示す「A~B」は、A以上B以下を示す。
[0008] [1] エポキシ系樹脂(A)、アルキド系樹脂(B)およびアミン系硬化剤(C)を含有するエポキシ樹脂系防食塗料組成物。
[0009] [2] 前記アルキド系樹脂(B)が、アルキド樹脂(b1)およびアルキド変性アクリル樹脂(b2)から選択される少なくとも1種の樹脂を含む、[1]に記載のエポキシ樹脂系防食塗料組成物。
[3] 前記アルキド系樹脂(B)の含有量が、前記エポキシ系樹脂(A)の固形分100質量部に対し、1~80質量部である、[1]または[2]に記載のエポキシ樹脂系防食塗料組成物。」
(2)
「[0016] 本発明の一実施形態によれば、防食性、および、ロジン高含有防汚塗膜に対する付着性にバランスよく優れる防食塗膜を形成することができる。
また、本発明の一実施形態によれば、下塗り塗膜を形成してから、防汚塗料を塗装するまでの塗装間隔(インターバル)が長い場合であっても、ロジン高含有防汚塗膜に対する付着性(以下「インターバル付着性」ともいう。)に優れる防食塗膜を形成することができる。
このため、本発明の一実施形態に係るエポキシ樹脂系防食塗料組成物は、基材、防食塗膜、および、防汚塗膜、特にロジン類を含有する防汚塗膜をこの順で含む積層防汚塗膜の形成に好適に用いることができる。
[0017] 近年、防食塗料組成物は、環境対応、揮発性有機化合物(VOC)規制、塗装回数削減等の要望によりハイソリッド化が求められているが、従来の防食塗料をハイソリッド化しようとすると、該防食塗料から形成される防食塗膜と、その上に形成される防汚塗膜との付着性が低下し、従来の防食塗料から形成される防食塗膜と、その上に形成される防汚塗膜との付着性を向上させようとすると、該防食塗料をハイソリッド化できなかった。つまり、従来の防食塗料では、ハイソリッド化と防汚塗膜との付着性とはトレードオフの関係にあり、これらの両立は困難であった。
一方、本発明の一実施形態によれば、ハイソリッド化と防汚塗膜との付着性との両立が可能であり、ハイソリッドな防食塗料であっても、ロジン高含有防汚塗膜に対する付着性に優れる防食塗膜を形成することができる。」
(3)
「[0029] 代表的なビスフェノールA型エポキシ樹脂として、常温で液状のものとしては、例えば、・・・が挙げられ、
常温で半固形状のものとしては、例えば、「jER 834-X90」(三菱ケミカル(株)製、固形分エポキシ当量:230~270、キシレンカット品、固形分:90質量%)、「E-834-85X(T)」(大竹明新化学(株)製、固形分エポキシ当量:約230~270、キシレンカット品、固形分:85質量%)が挙げられ、」
(4)
「[0032]<アルキド系樹脂(B)>
アルキド系樹脂(B)としては特に制限されないが、具体的には、アルキド樹脂(b1)およびアルキド変性アクリル樹脂(b2)から選ばれる少なくとも1種の樹脂が好ましい。これらの中でも、ロジン高含有防汚塗膜に対する付着性により優れる塗膜を容易に形成することができる等の点から、アルキド系樹脂(B)は、アルキド変性アクリル樹脂(b2)を含むことが好ましい。
アルキド系樹脂(B)は、1種単独で用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
・・・
[0058]<アミン系硬化剤(C)>
前記アミン系硬化剤(C)としては、特に制限されず、脂肪族アミン系硬化剤、脂環族アミン系硬化剤、芳香族アミン系硬化剤、芳香脂肪族アミン系硬化剤、複素環アミン系硬化剤等が挙げられる。
・・・
[0069] 前記アミン系硬化剤(C)としては、従来公知の方法で合成して得た化合物を用いてもよく、市販品を用いてもよい。該市販品としては、脂肪族ポリアミンである「AD-71」(大竹明新化学(株)製、活性水素当量290、固形分:50質量%);ポリアミドアミンである「PA-66S」(大竹明新化学(株)製、活性水素当量377、固形分:60質量%)および「Ancamide 910」(エアープロダクツ社製、活性水素当量230、固形分:100質量%);ポリアミドアミンのエポキシアダクトである「PA-23」(大竹明新化学(株)製、活性水素当量375、固形分:60質量%)および「PA-290(A)」(大竹明新化学(株)製、活性水素当量277、固形分:60質量%);マンニッヒ変性芳香脂肪族ポリアミンである「MAD-204(A)」(大竹明新化学(株)製、活性水素当量202、固形分:65質量%);マンニッヒ変性ポリアミドアミンである「アデカハードナーEH-342W3」((株)ADEKA製、活性水素当量110、固形分:80質量%);マンニッヒ変性脂肪族ポリアミンである「サンマイドCX-1154」(三和化学(株)製、活性水素当量255、固形分:66質量%);フェナルカミンアダクトである「カードライトNX-5459」(カードライト社製、活性水素当量164、固形分:70質量%);ポリオキシアルキレンポリアミンである「ジェファーミン D-230」(ハンツマン社製、活性水素当量60、固形分:100質量%)および「ジェファーミン T-403」(ハンツマン社製、活性水素当量80、固形分:100質量%)などが挙げられる。
・・・
[0073] <その他の成分>
本組成物は、前記(A)~(C)の他に、必要に応じて、反応性希釈剤、顔料、硬化促進剤、付着強化剤、可塑剤、溶剤、タレ止めまたは沈降防止剤、脱水剤(安定剤)、その他の塗膜形成成分(例:分散剤、消泡剤、レべリング剤)等のその他の成分を、本発明の目的を損なわない範囲で含有してもよい。
前記その他の成分はそれぞれ、1種単独で用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
・・・
[0080] [顔料]
前記顔料としては、例えば、体質顔料、着色顔料、防錆顔料が挙げられる。
体質顔料としては、具体的には、硫酸バリウム、カリ長石、シリカ、炭酸カルシウム、タルク、マイカ、ガラスフレーク、ステアリン酸アルミ等が挙げられる。・・・
[0081] 本組成物が体質顔料を含む場合、本組成物中の体質顔料の含有量は、本組成物の固形分100質量%に対し、好ましくは0.1~80質量%である。・・・
[0082] [硬化促進剤]
前記硬化促進剤としては、例えば、3級アミン類、重合性(メタ)アクリレートモノマーが挙げられる。」
(5)
「[0142] [製造例1]アルキド樹脂溶液1の調製
反応器内に、大豆油脂肪酸41.50質量部と、無水フタル酸30.80質量部と、グリセリン10.90質量部と、ペンタエリスリトール13.20質量部と、安息香酸3.60質量部と、還流溶剤としてキシレン5.00質量部とを仕込んだ。窒素気流下で、得られた混合液を220℃まで昇温し、3時間保温した後冷却し、その後キシレン71.10質量部を加えてアルキド樹脂溶液1を調製した。アルキド樹脂溶液1中のアルキド樹脂のMwは16,000であった。また、アルキド樹脂溶液1の不揮発分は55.0質量%であり、該溶液1中のアルキド樹脂の酸価は7.3mgKOH/gであった。」
(6)
「[0145] [製造例4]アルキド変性アクリル樹脂溶液2の調製
反応器内に、前記製造例1で得られたアルキド樹脂溶液1を36.36質量部(溶液中のアルキド樹脂20質量部)と、溶剤としてキシレン33.64質量部とを仕込み、混合液を得た。窒素気流下で、前記混合液を125℃まで昇温させた後、モノマー成分の混合液(スチレン:36.0質量部、メタクリル酸メチル(MMA):11.5質量部、n-ブチルアクリレート(BA):31.5質量部、および、メタクリル酸(MAA):1.0質量部)80質量部と、開始剤(t-ブチルパーオキシベンゾエート)1.50質量部と、キシレン16.67質量部との混合液を、125℃を維持しながら3時間かけて滴下した。滴下後、同温度(125℃)で1時間保温し、次いで、t-ブチルパーオキシベンゾエート0.3質量部を加えた。2時間保温した後、冷却し、不揮発分が50質量%になるようにキシレン35.13質量部を加えてアルキド変性アクリル樹脂溶液2を調製した。
調製した溶液2中のアルキド変性アクリル樹脂の酸価は5.1mgKOH/gであった。」
(7)
「[0152][表1]
[図:0001418198000001.jpg]
」
(8)
「[0155]
[実施例1~34および比較例1~5]
ポリ容器に、表2~4の主剤成分の欄に記載の各材料を各欄に記載の数値の量(質量部)で配合し、そこにガラスビーズを添加し、常法により1時間分散させた。得られた分散液を80メッシュの濾過網で濾過することで、防食塗料組成物の主剤成分を調製した。
ポリ容器に、表2~4の硬化剤成分の欄に記載の各材料を各欄に記載の数値の量(質量部)で配合し、常法により10分間分散させた。得られた分散液を80メッシュの濾過網で濾過することで、防食塗料組成物の硬化剤成分を調製した。
得られた主剤成分と硬化剤成分とを塗装直前に常法により混合して、防食塗料組成物を調製した。
なお、各成分の詳細は表5に示す。
[0156]
[表2]
[図:0001418198000002.jpg]
[0157][表3]
[図:0001418198000003.jpg]
」(当審注:[表3]の実施例20~34の摘記を省略した)
(9)
「[0159][表5]
[図:0001418198000004.jpg]
」
(10)
「[0160] [積層防汚塗膜の作製]
サンドブラスト板(150×70×1.6mm)上に、実施例および比較例で得られた各防食塗料組成物を乾燥膜厚が約200μmとなるように塗布し、その後、直ちに屋外にて、サンドブラスト板を塗膜側を上にして、南向きに地面に対して45°の角度で傾けて、それぞれ1日、4日または7日間屋外曝露させた。
屋外曝露させたサンドブラスト板の防食塗膜表面に、製造例11で得られた防汚塗料を、アプリケーターを用いて乾燥膜厚が100μmになるよう塗布して、23℃で7日間乾燥させて防汚塗膜を形成することで、塗装間隔が1日、4日または7日である積層防汚塗膜付サンドブラスト板を作製した。
[0161]<付着性>
得られた各積層防汚塗膜付サンドブラスト板を、50℃の人工海水に浸漬し、浸漬開始から30日後および90日後の防食塗膜と防汚塗膜との間の付着性を以下のようにして評価した。
NTカッター(エヌティー(株)製)を使用し、積層防汚塗膜付サンドブラスト板の防汚塗膜面に、4mm間隔で、縦横各4本の防食塗膜に届く深さの切れ目を入れ、9個の升目を作製し、その升目が作製された塗膜表面に、セロテープ(登録商標)を圧着させた後、素早く剥離して剥離状態を観察した。作製した9個の升目の面積を100%とした場合における、剥離操作後の防食塗膜と防汚塗膜との層間で剥離している塗膜の面積(剥離面積)の割合を算出し、下記評価基準に基づいて付着性を評価した。結果を表6に示す。
(評価基準)
0:塗膜の層間剥離面積が5%未満である。
1:塗膜の層間剥離面積が5%以上25%未満である。
2:塗膜の層間剥離面積が25%以上50%未満である。
3:塗膜の層間剥離面積が50%以上である。」
(11)
「[0164][表6]
[図:0001418198000005.jpg]
」(当審注:[表3]の実施例20~34、比較例1~5の摘記を省略した)
(12)
「請求の範囲
[請求項1]
エポキシ系樹脂(A)、アルキド系樹脂(B)およびアミン系硬化剤(C)を含有するエポキシ樹脂系防食塗料組成物。
[請求項2]
前記アルキド系樹脂(B)が、アルキド樹脂(b1)およびアルキド変性アクリル樹脂(b2)から選択される少なくとも1種の樹脂を含む、請求項1に記載のエポキシ樹脂系防食塗料組成物。
[請求項3]
前記アルキド系樹脂(B)の含有量が、前記エポキシ系樹脂(A)の固形分100質量部に対し、1~80質量部である、請求項1または2に記載のエポキシ樹脂系防食塗料組成物。」
2 甲2の1には次の記載がある。
(1)423頁右欄2~8行
「
[図:0001418198000006.jpg]
」
(2)424頁
「
[図:0001418198000007.jpg]
・・・
[図:0001418198000008.jpg]
」(当審注:枠線は、申立人による。)
(3)426頁
「
[図:0001418198000009.jpg]
」
3 甲2の2には次の記載がある。
(1)
「【0032】
溶解性パラメータは一般に液体分子の分子間相互作用の尺度を表すものであるが、ポリマーのSP値も種々の計算方法が知られている。本明細書においてアクリル樹脂(A)のSP値は下記式により計算して求めるものとする。
SP値=SP1×fw1+SP2×fw2+………+SPn×fwn
上記式中、SP1、SP2、………SPnは、各重合性不飽和モノマーのホモポリマーのSP値を表し、fw1、fw2、………fwnは、各重合性不飽和モノマーのモノマー総量に対する質量分率を表す。
ここで、重合性不飽和モノマーのホモポリマーのSP値は、該モノマーのホモポリマーを重量平均分子量が50,000程度になるようにして合成した試料の濁点滴定法によるSP値とする。
【0033】
濁点滴定法はポリマーのSP値を測定できる方法の一つとして知られており、例えばK.W.Suh, J.M.Corbett:J.Apply Polym.Sci.,12〔10〕,p.2359-2370 (1968)に記載されている。
【0034】
本発明では、真空吸引により揮発成分を除去した試料0.5gを100mlビーカーに秤量し、アセトン10mlを加え、マグネティックスターラーにより溶解し、これに対して測定温度20℃で、高SP貧溶媒又は低SP貧溶媒を別々に滴下し、濁りが生じた点を各貧溶媒の滴下量(体積)とし、下記式から試料のSP値を求める。
δ3=(Vml1/2・δml+Vmh1/2・δmh)/(Vml1/2+Vmh1/2)
Vml,Vmh:それぞれSP値の低い貧溶媒と高い貧溶媒の滴下量
δml,δmh:それぞれSP値の低い貧溶媒と高い貧溶媒のSP値
δ3:試料のSP値
ここで貧溶媒には、高SP貧溶媒としてイオン交換水(SP値23.4)を用い、低SP貧溶媒としてn-ヘキサン(SP値7.3)を使用する。」
(2)
「【0085】
【表1】
[図:0001418198000010.jpg]
」(当審注:【表1】の製造例11~18の摘記を省略した)
4 甲2の3には次の記載がある。
(1)1005頁
「
[図:0001418198000011.jpg]
」(当審注:枠線は、申立人による。)
5 甲3の1には次の記載がある。
(1)1頁
「
[図:0001418198000012.jpg]
」(当審注:枠線は、申立人による。)
(2)3頁上段
「
[図:0001418198000013.jpg]
」(当審注:枠線は、申立人による。)
(3)3頁下段
「
[図:0001418198000014.jpg]
」(当審注:枠線は、申立人による。)
(4)4頁上段
「
[図:0001418198000015.jpg]
」
(5)6頁右下
「
[図:0001418198000016.jpg]
」
6 甲3の2には次の記載がある。
(1)2頁左欄32行~右欄1行
「ここにいうSP値(溶解性パラメーター)とは、R.F.FedorsがPolym.Eng.Sci.14[2]147(1974)に発表した下式によつて算出されるもので、互に相溶性示す目安となる数値である。
[図:0001418198000017.jpg]
△E:蒸発エネルギー(cal/mol)
V:モル体積(cc/mol)
△ei:それぞれ原子または原子団の蒸発エネルギー(cal/mol)
△vi:それぞれ原子または原子団のモル体積(cc/mol)」
(2)3頁右欄21~25行
「なお、ここに用いた組成物の各原料は、グリシジル化合物としてフエニルグリシジルエーテル(SP値10.6)、液状エポキシ樹脂として油化シエルエポキシ社製「エピコート834」(分子量470、SP値10.3)・・・」
7 甲4には次の記載がある。
(1)
「【請求項1】
基材表面に前記基材側から防食塗膜、防汚塗膜の順序で積層して設けられる積層防汚塗膜における前記防食塗膜を形成するためのエポキシ樹脂系防食塗料組成物であって、
エポキシ樹脂(A)と、固形熱可塑性樹脂(B)と、アミン系硬化剤(C)とを含有し、
前記固形熱可塑性樹脂(B)が常温で固形であり、
前記固形熱可塑性樹脂(B)の含有量が前記エポキシ樹脂(A)の固形分100質量部に対して50質量部以上である
エポキシ樹脂系防食塗料組成物。
・・・
【請求項6】
前記固形熱可塑性樹脂(B)が石油樹脂、塩素化ポリオレフィン、アクリル樹脂、酢酸ブチル系樹脂、スチレン系樹脂、および塩化ビニル系樹脂からなる群から選択される少なくとも1種を含むことを特徴とする請求項1~5のいずれか一項に記載のエポキシ樹脂系防食塗料組成物。」
(2)
「【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エポキシ樹脂系防食塗料組成物、エポキシ樹脂系防食塗膜、該防食塗膜およびその上に積層された防汚塗膜からなる積層防汚塗膜、該積層防汚塗膜を有する防汚基材、ならびにこれらの製造方法に関する。
・・・
【0011】
このような従来技術における課題に鑑み、本発明は、エポキシ樹脂系防食塗膜と防汚塗膜とを積層してなる積層防汚塗膜であって、エポキシ樹脂が十分に硬化していない段階で防食塗膜上に防汚塗膜を形成したものであっても、防性性能(特に静置防汚性)の低下が抑制され、かつ耐ダメージ性にも優れた積層防汚塗膜のエポキシ樹脂系防食塗膜を形成するためのエポキシ樹脂系防食塗料、上記積層防汚塗膜の防食塗膜として用いられるエポキシ樹脂系防食塗膜、上記積層防汚塗膜およびその製造方法、ならびに上記積層防汚塗膜を有する防汚塗膜ならびにその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記問題を解決するために、本発明者らが鋭意研究したところ、エポキシ樹脂系防食塗料において、エポキシ樹脂と共に常温で固形の熱可塑性樹脂を比較的多く併用することで、防汚性能(特に静置防汚性)の低下が抑制され、また耐ダメージ性にも優れた、防食塗膜と防汚塗膜との積層防汚塗膜を形成できることを見い出し、本発明を完成させた。
【0013】
本発明の効果発現のメカニズムは、以下のように考えられる。
エポキシ樹脂系防食塗料から形成される防食塗膜の中で、エポキシ樹脂は、アミンなどの硬化剤と反応していない未反応の状態であると、液状または半固形状で存在している。このような状態の防食塗膜に上塗り塗料を塗布すると、防食塗膜中に上塗り塗料の溶剤が浸透し、防食塗膜が軟化し、未反応のエポキシ樹脂が上塗り塗膜にブリード(移行)する。一方で、防食塗膜中の常温で固形の樹脂は、防食塗膜中に上塗り塗料の溶剤が浸透しても、上塗り塗膜へ移行しにくい。このような理由により、固形の熱可塑性樹脂をエポキシ樹脂と併用すると、エポキシ樹脂の量が相対的に減少するために、未反応エポキシ樹脂のブリード成分を減少させることが可能となり、これにより、防食塗膜の上に積層された防汚塗膜の防汚性能(特に静置防汚性)を低下させず、かつ積層塗膜の耐ダメージ性を向上させる、と考えられる。
【0014】
本発明は、以下の[1]~[23]に関する。
[1]
基材表面に前記基材側から防食塗膜、防汚塗膜の順序で積層して設けられる積層防汚塗膜における前記防食塗膜を形成するためのエポキシ樹脂系防食塗料組成物であって、
エポキシ樹脂(A)と、固形熱可塑性樹脂(B)と、アミン系硬化剤(C)とを含有し、
前記固形熱可塑性樹脂(B)が常温で固形であり、
前記固形熱可塑性樹脂(B)の含有量が前記エポキシ樹脂(A)の固形分100質量部に対して50質量部以上である
エポキシ樹脂系防食塗料組成物。」
(3)
「【0046】
代表的なビスフェノールA型エポキシ樹脂としては、常温で液状のものでは、「jER828」(三菱化学(株)製、エポキシ当量180~190g/eq、粘度12,000~15,000cPs/25℃)、「E-028-90X」(大竹明新化学(株)製、828タイプエポキシ樹脂(キシレンカット品 NV90%)、エポキシ当量約210g/eq)、「AER260」(ビスフェノールA型エポキシ樹脂、旭化成エポキシ(株)、エポキシ当量190g/eq、NV100%)などが挙げられ、
常温で半固形状のものでは、「jER834-X90」(三菱化学(株)、エポキシ当量230~270g/eq/キシレンカット品 NV90%)、「E-834-85X」(大竹明新化学(株)、エポキシ当量約290~310g/eq/キシレンカット品 NV85%)などが挙げられ、
常温で固形状のものでは、「jER1001-X75」(三菱化学(株)、エポキシ当量600~650g/eq/キシレンカット品 NV75%)、「E-001-75X」(大竹明新化学(株)、エポキシ当量約610~650g/eq/キシレンカット品 NV75%)などが挙げられる。
前記エポキシ樹脂(A)は、前記防食塗料組成物中に好ましくは5~80質量%、より好ましくは10~50質量%含まれる。
・・・
【0051】
これらの固形熱可塑性樹脂のうち、アクリル樹脂の市販品としてはダイアナールBR106(三菱レイヨン(株)製、Mw=60,000)、パラロイドB66(ダウケミカル製、Mw=70,000)などの、アクリル酸とそのエステルまたはその誘導体とを共重合させた固形アクリル樹脂、メタクリル酸とそのエステルまたはその誘導体とを共重合させた固形メタクリル樹脂等を挙げることができる。
・・・
【0053】
前記防食塗料組成物中の前記固形熱可塑性樹脂(B)の量は、防食塗膜中の未反応の前記エポキシ樹脂(A)が防食塗膜上に積層された防汚塗膜に移行して、その防汚性能(特に静置防汚性)を低下させることを抑制ないし防止する観点から、前記エポキシ樹脂(A)100質量部に対して50質量部以上、好ましくは60質量部以上であり、防食塗膜に優れた防食性、上塗り性、乾燥性を発揮させる観点からは、その上限は好ましくは100質量部、さらに好ましくは80質量部である。」
(4)
「【0121】
(積層防汚塗膜の製造方法等)
本発明に係る積層防汚塗膜の製造方法は、本発明に係るエポキシ樹脂系防食塗膜を形成する工程、および前記エポキシ樹脂系防食塗膜の表面に前記防汚塗膜を形成する工程を含んでいる。また、本発明に係る防汚基材の製造方法は、基材表面に本発明に係る積層防汚塗膜を形成する工程を含んでいる。
【0122】
したがって、本発明に係る積層防汚塗膜および防汚基材は、エポキシ樹脂系防食塗膜として本発明に係るエポキシ樹脂系防食塗膜を用いる点を除いて、従来と同様の方法で製造することができる。すなわち、基材の表面に本発明に係るエポキシ樹脂系防食塗料を従来公知の方法で塗布し、硬化させてエポキシ樹脂系防食塗膜を形成し、このエポキシ樹脂系防食塗膜の表面に前記防汚塗料組成物を従来公知の方法で塗布し、硬化させることにより、本発明に係る積層防汚塗膜ないし防汚基材を製造することができる。」
(5)
「【0141】
<防食塗料組成物の調製>
[実施例1]
防食塗料組成物を以下のようにして調製した。
(主剤成分)
1000mlのポリ容器にMIBK(3g)、N-ブチルアルコール(3g)、キシレン(17g)、jER1001-X75(16g)、ラロフレックスMP-25(6g)、TTKタルク(25g)、バリコ300W(8g)、マイカパウダー325メッシュ(5g)、ベンガラ404(2g)、ディスパロン6650(1.5g)、KBM403(0.5g)を配合し、ガラスビーズ200gを添加し、1時間分散を行った。なお、原材料の一覧を表5示す。分散液を60メッシュの濾過網で濾過し、防食塗料の主剤成分を調製した。
【0142】
(硬化剤成分)
200mlのポリ容器にキシレン(5.7g)、ラッカマイドTD-966(7g)、アンカミンK-54(0.3g)を配合し、10分間分散を行った。なお原材料の一覧を表5に示す。分散液を60メッシュの濾過網で濾過し、防食塗料の硬化剤成分を調製した。
【0143】
(防食塗料組成物)
得られた主剤成分と硬化剤成分とを塗装の直前に常法により混合して、防食塗料組成物を調製した。
【0144】
[実施例2~7、比較例1~7]
主剤成分と硬化剤成分の配合を表6に示したように変更した以外は実施例1と同様にして防食塗料組成物を調製した。
【0145】
【表5】
[図:0001418198000018.jpg]
」
(6)
「【0146】
【表6】
[図:0001418198000019.jpg]
」
(7)
「【0147】
<積層防汚塗膜の作製および評価>
(1)積層防汚塗膜の消耗性
50mm×50mm×1.5mmの硬質塩化ビニル板に、アプリケーターを用いて、実施例1~7および比較例1~7で調製した各防食塗料組成物をそれぞれ乾燥膜厚150μmになるように塗布して、塗装間隔1日で、金属塩含有加水分解型防汚塗料S1、シリルエステル含有加水分解型防汚塗料S2を、アプリケーターで乾燥膜厚が100μmになるように塗布し、これを23℃で7日間乾燥させ、積層防汚塗膜を有する試験板を作製した。
【0148】
上記試験板を25℃海水を入れた恒温槽に設置した回転ドラムの側面に設置し、周速15ノットで回転させ、設置から1ヶ月毎の防汚塗膜の積算消耗量(膜厚減少量(μm))を測定した。
【0149】
(2)積層防汚塗膜の静置防汚性;
100×300×3.2mmのサンドブラスト処理鋼板に、実施例1~7および比較例1~7で調製した各防食塗料組成物をそれぞれ乾燥膜厚150μmになるようにエアスプレーを用いて塗布し、塗装間隔1日で金属塩含有加水分解型防汚塗料S1、シリルエステル含有加水分解型防汚塗料S2を、エアスプレーで防汚塗膜の乾燥膜厚が100μmになるように塗布し、これを23℃で7日間乾燥させ、積層防汚塗膜を有する試験板を作製した。
【0150】
上記試験板を、長崎県長崎湾に静置浸漬し、浸漬から1ヶ月毎の水生生物の付着面積(試験板の防汚塗膜の全面積100%に対する、水生生物が付着している部分の面積の割合(%))を目視により計測し、下記評価基準に基づき評価を行った。
0:水生生物の付着無し
0.5:水生生物の付着面積が0%を超え10%以下
1:水生生物の付着面積が10%を超え20%以下
2:水生生物の付着面積が20%を超え30%以下
3:水生生物の付着面積が30%を超え40%以下
4:水生生物の付着面積が40%を超え50%以下
5:水生生物の付着面積が50%を超える
【0151】
(3)積層防汚塗膜の耐ダメージ性
70mm×150×1.6mmのサンドブラスト処理鋼板に、エアスプレーで、実施例1~7および比較例1~7で調製した各防食塗料組成物をそれぞれ乾燥膜厚150μmになるように塗布し、5℃で1日放置して防食塗膜を形成した。この防食塗膜の表面に、塗装間隔1日で金属塩含有加水分解型防汚塗料S1またはシリルエステル含有加水分解型防汚塗料S2を、エアスプレーで防汚塗膜の乾燥膜厚が150μmになるように塗布し、5℃で乾燥させて積層防汚塗膜を有する試験板を作製した。防汚塗膜の乾燥開始から1日後、2日後、および3日後に、防汚塗膜上の中央部に30mm×30mm×10mmの木片を置きその木片の上から垂直方向に40kgf/cm2(3.9MPa)の圧力を20分間加え塗膜表面の状態を観察し(すなわち、塗膜の変形度を測定し)、下記評価基準に基づき評価を行った。
5:塗膜の変形がなく最も良好な状態を示している。
4:塗膜の変形が若干認められるが良好な状態を示している。
3、2、1はかなりの変形が認められ、部分的に鋼板の露出が認められる。
ダメージ(変形)の度合は3、2、1の順に大きくなっている。」
(8)
「【0158】
【表8】
[図:0001418198000020.jpg]
」
8 甲5の1には次の記載がある。
(1)
「【請求項1】
溶剤ベースのインクジェットインクを受容する押出された受像層を含む受像体媒体であって、前記受像層が、a)変性ポリオレフィン樹脂もしくはポリウレタン樹脂、またはそれらの組合せを含む担体樹脂と、b)前記担体樹脂と適合性があり、有効量で存在し、ヒルデブランド溶解度パラメータが前記インクの溶剤の約3.1(MPa)1/2以内であるインク吸収性樹脂とのブレンドを含み、前記受像層のインク溶剤吸収が、担体樹脂だけのフィルムより少なくとも50%大きい受像体媒体。」
(2)
「【0017】
インク吸収性樹脂は、増大した溶剤吸収性を受像層に与え、それにより、印刷中、インクブリーディングおよびインク流れがなくなる。有用なインク吸収性樹脂は、担体樹脂と適合性があり、ヒルデブランド溶解度パラメータがインクの溶剤の約1.5(cal/cm3)1/2(3.1(MPa))1/2以内である。「ヒルデブランド溶解度パラメータ」とは、材料の凝集エネルギー密度の平方根で表され、(圧力)1/2の単位を有し、(ΔH-RT)1/2/V1/2と等しい溶解度パラメータを指し、ここで、ΔHは、材料のモル蒸発エンタルピーであり、Rは、普遍的気体定数であり、Tは、絶対温度であり、Vは、溶剤のモル体積である。ヒルデブランド溶解度パラメータは、溶剤については、エー・エフ・エム・バートン、溶解度および他の凝集パラメータ便覧、第2版、CRCプレス、ボカ・ラトン、フロリダ州(Barton,A.F.M.,Handbook of Solubility and Other Cohesion Parameters,2ndEd.,CRC Press,Boca Raton,FL)(1991年)、モノマーおよび代表的なポリマーについては、ポリマー便覧、第3版、ジェイ・ブランドラップ&イー・エイチ・イマーガット、ジョン・ウィリー編、ニューヨーク州(Polymer Handbook,3rd Ed.,J.Brandrup & E.H.Immergut Eds.John Wiley,NY)、pp519~557(1989年)、および多くの市販のポリマーについては、エー・エフ・エム・バートン、ポリマー-液体相互作用パラメータおよび溶解度パラメータ便覧、CRCプレス、ボカ・ラトン、フロリダ州(Barton,A.F.M.,Handbook of Polymer-Liquid Interaction Parameters and Solubility Parameters,CRC Press,Boca Raton,FL)(1990年)に表にされている。」
(3)
「【0019】
一般に、有用なインク吸収性添加剤樹脂としては、ペンシルバニア州フィラデルフィアのローム・アンド・ハースのパラロイド(PARALOID)およびアクリロイド(ACRYLOID)樹脂、・・・
【0020】
有用な(メタ)アクリル樹脂の具体的な例としては、メチルメタクリレートと、ブチルアクリレート、ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、またはイソボルニルメタクリレートとのコポリマー(たとえば、パラロイド(PARALOID)DM-55、パラロイド(PARALOID)B48N、パラロイド(PARALOID)B66、・・・」
(4)
「【0070】
実施例1~12および比較例C1~C9
表1は、画像化された受像体フィルムの受像層の組成を示す。表2は、ピエゾインクジェットプリントテストの結果を要約している。インク受容フィルムに使用されたインク吸収性樹脂の記述は、表3に示されている。
・・・
【0073】
【表3】
[図:0001418198000021.jpg]
」
9 甲5の2には次の記載がある。
(1)1頁、上部
「
[図:0001418198000022.jpg]
」(当審注:枠線は、申立人による。)
(2)1頁下部
「
[図:0001418198000023.jpg]
」(当審注:枠線は、申立人による。)
第6 取消理由の概要
当審が令和6年3月7日付けで通知した取消理由の概要は、以下のとおりである。
1 新規性
本件発明1~10は、甲1または甲4に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであり、その特許は同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである。
2 進歩性
本件発明1~10は、甲1または甲4に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、その特許は同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである。
第7 当審の判断
1 甲1を主たる引用文献等とする場合について
(1) 引用発明の認定
前記第5、1に摘記した甲1の[0006]及び[0016]の記載から、甲1には、基材と防汚塗膜の間に位置する防食塗膜の形成に用いられる防食塗料組成物が記載されており、実施例14~18及びその説明の記載によれば、当該実施例に係る防食塗料組成物は、ポリ容器に、表3の主剤成分の欄に記載の各材料を各欄に記載の数値の量(質量部)で配合し、そこにガラスビーズを添加し、常法により1時間分散させて得られた分散液を80メッシュの濾過網で濾過することで調製した防食塗料組成物の主剤成分と、
ポリ容器に、表3の硬化剤成分の欄に記載の各材料を各欄に記載の数値の量(質量部)で配合し、常法により10分間分散させて得られた分散液を80メッシュの濾過網で濾過することで調製した防食塗料組成物の硬化剤成分とを、常法により混合して調製したものである。
また、実施例14~18の各成分の製品名等は[0159]の[表5]に記載されている。
したがって、甲1の実施例14~18に係る防食塗料組成物には、次の発明(以下、それぞれ、実施例の番号に基づいて「甲1発明14」等という。)が記載されていると認められる。
<甲1発明14>
「エポキシ樹脂を26.1質量部、
反応性希釈剤を3.5質量部、
アルキド変性アクリル樹脂溶液2を3.0質量部、
タルクを17.4質量部、
カリ長石を18.7質量部、
硫酸バリウムを4.3質量部、
チタン白を3.48質量部、
カーボンブラックを0.02質量部、
アクリレートモノマーを0.3質量部、
シランカップリング剤を0.5質量部、
消泡剤を0.2質量部、
たれ止め剤を0.8質量部、
キシレンを2.7質量部、
n-ブタノールを1.3質量部、
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを1.7質量部、
とからなる主剤成分と、
PA-66S、大竹明新化学(株)であるポリアミド系硬化剤を11.7質量部、
3級アミンを0.1質量部、
ベンジルアルコールを1.2質量部、
とからなる硬化剤成分と、
からなる防食塗料組成物。」
<甲1発明15>
「エポキシ樹脂を26.1質量部、
反応性希釈剤を3.5質量部、
アルキド変性アクリル樹脂溶液2を5.0質量部、
タルクを17.4質量部、
カリ長石を18.7質量部、
硫酸バリウムを4.3質量部、
チタン白を3.48質量部、
カーボンブラックを0.02質量部、
アクリレートモノマーを0.3質量部、
シランカップリング剤を0.5質量部、
消泡剤を0.2質量部、
たれ止め剤を0.8質量部、
キシレンを2.7質量部、
n-ブタノールを1.3質量部、
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを1.7質量部、
とからなる主剤成分と、
PA-66S、大竹明新化学(株)であるポリアミド系硬化剤を11.7質量部、
3級アミンを0.1質量部、
ベンジルアルコールを1.2質量部、
とからなる硬化剤成分と、
からなる防食塗料組成物。」
<甲1発明16>
「エポキシ樹脂を26.1質量部、
反応性希釈剤を3.5質量部、
アルキド変性アクリル樹脂溶液2を10.0質量部、
タルクを17.4質量部、
カリ長石を18.7質量部、
硫酸バリウムを4.3質量部、
チタン白を3.48質量部、
カーボンブラックを0.02質量部、
アクリレートモノマーを0.3質量部、
シランカップリング剤を0.5質量部、
消泡剤を0.2質量部、
たれ止め剤を0.8質量部、
キシレンを2.7質量部、
n-ブタノールを1.3質量部、
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを1.7質量部、
とからなる主剤成分と、
PA-66S、大竹明新化学(株)であるポリアミド系硬化剤を11.7質量部、
3級アミンを0.1質量部、
ベンジルアルコールを1.2質量部、
とからなる硬化剤成分と、
からなる防食塗料組成物。」
<甲1発明17>
「エポキシ樹脂を26.1質量部、
反応性希釈剤を3.5質量部、
アルキド変性アクリル樹脂溶液2を10.0質量部、
タルクを17.4質量部、
カリ長石を18.7質量部、
硫酸バリウムを4.3質量部、
チタン白を3.48質量部、
カーボンブラックを0.02質量部、
シランカップリング剤を0.5質量部、
消泡剤を0.2質量部、
たれ止め剤を0.8質量部、
キシレンを2.7質量部、
n-ブタノールを1.3質量部、
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを1.7質量部、
とからなる主剤成分と、
PA-66S、大竹明新化学(株)であるポリアミド系硬化剤を11.7質量部、
3級アミンを0.1質量部、
ベンジルアルコールを1.2質量部、
とからなる硬化剤成分と、
からなる防食塗料組成物。」
<甲1発明18>
「エポキシ樹脂を26.1質量部、
反応性希釈剤を3.5質量部、
アルキド変性アクリル樹脂溶液2を20.0質量部、
タルクを17.4質量部、
カリ長石を18.7質量部、
硫酸バリウムを4.3質量部、
チタン白を3.48質量部、
カーボンブラックを0.02質量部、
アクリレートモノマーを0.3質量部、
シランカップリング剤を0.5質量部、
消泡剤を0.2質量部、
たれ止め剤を0.8質量部、
キシレンを2.7質量部、
n-ブタノールを1.3質量部、
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを1.7質量部、
とからなる主剤成分と、
PA-66S、大竹明新化学(株)であるポリアミド系硬化剤を11.7質量部、
3級アミンを0.1質量部、
ベンジルアルコールを1.2質量部、
とからなる硬化剤成分と、
からなる防食塗料組成物。」
(2)本件発明1について
ア 甲1発明14を引用発明とする場合
(ア) 対比
本件明細書の段落【0042】には、「アミン系硬化剤は、ポリアミドアミンを含むことが好ましい」と記載されている。一方、甲1の[0069]には「ポリアミドアミンである「PA-66S」(大竹明新化学(株)・・・)」と記載されていることから、甲1発明14の「PA-66S、大竹明新化学(株)であるポリアミド系硬化剤」は、本件発明1の「アミン系硬化剤」に相当する。
また、前記(1)のとおり、甲1発明14の「防食塗料組成物」は、基材と防汚塗膜の間に位置する防食塗膜の形成に用いられるものであるから、本件発明1の「下塗り用塗料組成物」に相当する。
したがって、本件発明1と甲1発明14との一致点及び相違点は、次のとおりである。
<一致点>
「アクリル樹脂とエポキシ樹脂とアミン系硬化剤とを含む下塗り用塗料組成物。」
<相違点1>
本件発明1は、アクリル樹脂が「アクリル樹脂(ただし、アルキド変性アクリル樹脂を除く。)」であるのに対し、甲1発明14はアクリル樹脂が「アルキド変性アクリル樹脂溶液2中のアルキド変性アクリル樹脂」である点
<相違点2>
エポキシ樹脂について、本件発明1は、「前記エポキシ樹脂は、溶解性パラメータが10以上12以下、重量平均分子量が250以上2,500以下である」と特定されているのに対して、甲1発明14の「エポキシ樹脂」は、そのSP値、及び、重量平均分子量が特定されていない点
<相違点3>
アクリル樹脂について、本件発明1は、「溶解性パラメータが9.2以上12以下、重量平均分子量が1,000以上95,000以下であ」る「アクリル樹脂(ただし、アルキド変性アクリル樹脂を除く。)」、「の含有量は、前記エポキシ樹脂の含有量100質量部に対して、10質量部以上50質量部未満である」のに対して、甲1発明14は、SP値、及び、重量平均分子量が不明な「アルキド変性アクリル樹脂」をエポキシ樹脂の含有量26.1重量部に対し、3×0.5(不揮発分50%)=1.5重量部含む点
(イ) 検討
相違点1について検討する。
甲1発明は、「防食性、および、ロジン高含有防汚塗膜に対する付着性にバランスよく優れる防食塗膜を形成可能なエポキシ樹脂系防食塗料組成物を提供する」([0006])ことを解決しようとする課題とするものであるところ、甲1発明14の成分である「アルキド変性アクリル樹脂」について、[0032]に「アルキド系樹脂(B)としては特に制限されないが、具体的には、アルキド樹脂(b1)およびアルキド変性アクリル樹脂(b2)から選ばれる少なくとも1種の樹脂が好ましい。これらの中でも、ロジン高含有防汚塗膜に対する付着性により優れる塗膜を容易に形成することができる等の点から、アルキド系樹脂(B)は、アルキド変性アクリル樹脂(b2)を含むことが好ましい。」と記載されている。
してみれば、甲1発明14において、アルキド変性アクリル樹脂を他のアクリル樹脂に置換して、アルキド変性アクリル樹脂を含まないものとすることを、当業者が容易に想到し得たとはいえない。
(ウ) 小括
前記(イ)のとおりであるから、相違点2、3について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1発明14ではないし、甲1発明14及び甲1~甲5の2に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
イ 甲1発明15~甲1発明18を引用発明とする場合
(ア)対比
前記アの本件発明1と甲1発明14との対比を踏まえて、本件発明1と甲1発明15~甲1発明18を対比すると、いずれの場合においても、少なくとも以下の点で相違する。
<相違点4>
本件発明1は、アクリル樹脂が「アクリル樹脂(ただし、アルキド変性アクリル樹脂を除く。)」であるのに対し、甲1発明15~18はアクリル樹脂が「アルキド変性アクリル樹脂溶液2中のアルキド変性アクリル樹脂」である点
(イ)検討
前記ア(イ)で検討したとおりの理由から、甲1発明15~甲1発明18において、アルキド変性アクリル樹脂を他のアクリル樹脂に置換して、アルキド変性アクリル樹脂を含まないものとすることを、当業者が容易に想到し得たとはいえない。
(ウ) 小括
前記(イ)のとおりであるから、本件発明1は、甲1に記載された発明ではなく、甲1に記載された発明及び甲1~甲5の2に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
(3) 本件発明3~10について
本件発明3~10は、本件発明1を引用しさらに限定した発明であるから、前記(2)と同様の理由から、甲1に記載された発明ではなく、甲1に記載された発明及び甲1~甲5の2に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
2 甲4を主たる引用文献等とする場合について
(1) 引用発明の認定
前記第5、7に摘記した甲4は「エポキシ樹脂が十分に硬化していない段階で防食塗膜上に防汚塗膜を形成したものであっても、防性性能(特に静置防汚性)の低下が抑制され、かつ耐ダメージ性にも優れた積層防汚塗膜のエポキシ樹脂系防食塗膜を形成するためのエポキシ樹脂系防食塗料」の提供(【0011】)を解決しようとする課題とするものであり、実施例5、6、7及びその説明の記載から、甲4には次の発明(以下、それぞれ、「甲4発明5」、「甲4発明6」、「甲4発明7」という。)が記載されていると認められる。
<甲4発明5>
「1000mlのポリ容器にMIBK(3g)、N-ブチルアルコール(3g)、キシレン(17g)、jER1001-X75(16g)、パラロイドB-66(6g)、TTKタルク(25g)、バリコ300W(8g)、マイカパウダー325メッシュ(5g)、ベンガラ404(2g)、ディスパロン6650(1.5g)、KBM403(0.5g)を配合し、ガラスビーズ200gを添加し、1時間分散を行って得た防食塗料の主剤成分(87g)と、
200mlのポリ容器にキシレン(5.7g)、ラッカマイドTD-966(7g)、アンカミンK-54(0.3g)を配合し、10分間分散を行って得た防食塗料の硬化剤成分(13g)を混合して得た、
防食塗料組成物。」
<甲4発明6>
「1000mlのポリ容器にMIBK(3g)、N-ブチルアルコール(3g)、キシレン(17g)、jER834-X90(14g)、パラロイドB-66(7g)、TTKタルク(25g)、バリコ300W(8g)、マイカパウダー325メッシュ(5g)、ベンガラ404(2g)、ディスパロン6650(1.5g)、KBM403(0.5g)を配合し、ガラスビーズ200gを添加し、1時間分散を行って得た防食塗料の主剤成分(87g)と、
200mlのポリ容器にキシレン(2.7g)、ラッカマイドTD-966(10g)、アンカミンK-54(0.3g)を配合し、10分間分散を行って得た防食塗料の硬化剤成分(13g)を混合して得た、
防食塗料組成物。」
<甲4発明7>
「1000mlのポリ容器にMIBK(3g)、N-ブチルアルコール(3g)、キシレン(17g)、jER834-X90(13g)、パラロイドB-66(8g)、TTKタルク(25g)、バリコ300W(8g)、マイカパウダー325メッシュ(5g)、ベンガラ404(2g)、ディスパロン6650(1.5g)、KBM403(0.5g)を配合し、ガラスビーズ200gを添加し、1時間分散を行って得た防食塗料の主剤成分(87g)と、
200mlのポリ容器にキシレン(2.7g)、ラッカマイドTD-966(10g)、アンカミンK-54(0.3g)を配合し、10分間分散を行って得た防食塗料の硬化剤成分(13g)を混合して得た、
防食塗料組成物。」
(2)本件発明1について
ア 甲4発明5を主引用発明とする場合
(ア) 対比
本件発明1と甲4発明5を対比する。
甲4発明5の「パラロイドB-66」は、甲4の段落【0145】(前記第5、7(5))の【表5】によればダウケミカル製の固形アクリル樹脂(Tg50℃)であるところ、アルキド変性されたと明示されていないから、本件発明1の「アクリル樹脂(ただし、アルキド変性アクリル樹脂を除く。)」に相当する。
甲4発明5の「jER1001-X75」は、甲4の段落【0145】、【0146】(前記第5、7(5)、(6))によれば三菱化学製のエポキシ樹脂であるから、本件発明1の「エポキシ樹脂」に相当する。
甲4発明5の「ラッカマイドTD-966」は、甲4の段落【0146】(前記第5、7(5)、(6))に「アミン系硬化剤」として記載されるものであるから、本件発明1の「アミン系硬化剤」に相当する。
前記アから、甲4発明5の「防食塗料組成物」は、防汚塗膜の下に形成されるものであるから、本件発明1の「下塗り用塗料組成物」に相当する。
また、甲4発明5の「jER1001-X75」は、甲4の段落【0145】の【表5】(前記第5、7(5))によれば、固形分(質量%)が75であるから、甲4発明5の防食塗料組成物は、エポキシ樹脂を12g(=16*0.75)含有するものである。一方、甲4発明5の防食塗料組成物におけるアクリル樹脂(パラロイドB-66)の含有量は、6gであるから、甲4発明5の防食塗料組成物におけるエポキシ樹脂の含有量100質量部に対するアクリル樹脂の含有量は、50質量部(=6/12*100)である。
したがって、本件発明1と甲4発明5との一致点及び相違点は、次のとおりである。
<一致点>
「アクリル樹脂(ただし、アルキド変性アクリル樹脂を除く。)とエポキシ樹脂とアミン系硬化剤とを含む下塗り用塗料組成物。」
<相違点5>
本件発明1は、「前記アクリル樹脂(ただし、アルキド変性アクリル樹脂を除く。)」は「溶解性パラメータが9.2以上12以下、重量平均分子量が1,000以上95,000以下であ」ると特定されているのに対して、甲4発明5の「パラロイドB-66」は、そのSP値、及び、重量平均分子量が特定されていない点
<相違点6>
エポキシ樹脂について、本件発明1は、「前記エポキシ樹脂は、溶解性パラメータが10以上12以下、重量平均分子量が250以上2,500以下である」と特定されているのに対して、甲4発明5の「jER1001-X75」は、そのSP値、及び、重量平均分子量が特定されていない点
<相違点7>
アクリル樹脂(ただし、アルキド変性アクリル樹脂を除く。)の含有量について、本件発明1は、「前記アクリル樹脂の含有量は、前記エポキシ樹脂の含有量100質量部に対して、10質量部以上50質量部未満である」と特定されているのに対して、甲4発明5は、エポキシ樹脂(jER1001-X75)の含有量100質量部に対するアクリル樹脂(パラロイドB-66)の含有量が50質量部である点
(イ) 検討
事案に鑑み、相違点5及び相違点7について検討する。
[相違点7について]
甲4は「エポキシ樹脂が十分に硬化していない段階で防食塗膜上に防汚塗膜を形成したものであっても、防性性能(特に静置防汚性)の低下が抑制され、かつ耐ダメージ性にも優れた積層防汚塗膜のエポキシ樹脂系防食塗膜を形成するためのエポキシ樹脂系防食塗料」の提供(【0011】)を解決しようとする課題とするものである。
甲4の「上記問題を解決するために、本発明者らが鋭意研究したところ、エポキシ樹脂系防食塗料において、エポキシ樹脂と共に常温で固形の熱可塑性樹脂を比較的多く併用することで、防汚性能(特に静置防汚性)の低下が抑制され、また耐ダメージ性にも優れた、防食塗膜と防汚塗膜との積層防汚塗膜を形成できることを見い出し、本発明を完成させた。」(【0012】)及び「前記防食塗料組成物中の前記固形熱可塑性樹脂(B)の量は、防食塗膜中の未反応の前記エポキシ樹脂(A)が防食塗膜上に積層された防汚塗膜に移行して、その防汚性能(特に静置防汚性)を低下させることを抑制ないし防止する観点から、前記エポキシ樹脂(A)100質量部に対して50質量部以上、好ましくは60質量部以上であり、防食塗膜に優れた防食性、上塗り性、乾燥性を発揮させる観点からは、その上限は好ましくは100質量部、さらに好ましくは80質量部である。」(【0053】)との記載は、前記課題を解決するために、防食塗料組成物は固形熱可塑性樹脂(B)を50質量部以上とすることを記載するものである。
してみれば、甲4発明5において「固形熱可塑性樹脂(B)」に相当する「パラロイドB-66」の含有量を50質量部未満とすることを、当業者が動機づけられたとはいえない。
[相違点5について]
甲4発明5の「パラロイドB-66」のSP値について、甲5の1の段落【0073】(前記第5、8(4))の【表3】には、「パラロイド(PARALOID)B66」の溶解度パラメータ(cal/cm3)1/2が9.0であると記載されており、また、甲5の2にも、「PARALOID(R) B66」(当審注:「(R)」の表記は○の中にR。)について、その「Typical Physical Properties」の表に、「Solubility parameter」が9.0であることが記載されている。さらに、甲5の2には「パラロイド(PARALOID)B66」の「Molecular weight wt. ave.」が70,000であることも記載されている。
すると、甲4発明5の「パラロイドB-66」のSP値は9.0であり、重量平均分子量は70,000であるから、甲4発明5の「パラロイドB-66」は、本件発明1の「前記アクリル樹脂は、溶解性パラメータが9.2以上12以下、重量平均分子量が1,000以上95,000以下であり」を充足しない。
また、甲4には、「固形熱可塑性樹脂(B)」としてパラロイドB-66の他にダイアナールBR106がアクリル樹脂の市販品の例として例示されているが(前記第5、7(3)の段落【0051】等)、溶解性パラメータが9.2以上12以下であり、かつ、重量平均分子量が1,000以上95,000以下である樹脂の方が好ましい旨の記載や、ダイアナールBR106が好ましいとの記載もなされていない。
したがって、甲4に記載された事項に基づき甲4発明5の「パラロイドB-66」に代えてダイアナールBR106を用いることや、その溶解性パラメータが9.2以上12以下であり、かつ、重量平均分子量が1,000以上95,000以下であるアクリル樹脂を用いることを動機づけられることはなく、甲1~甲3の2、甲5の1、甲5の2にも、これを動機づけるような記載や示唆もない。
(ウ)小括
そうすると、当業者といえども、甲4発明5において、「パラロイドB-66」に代えて「溶解性パラメータが9.2以上12以下、重量平均分子量が1,000以上95,000以下」であるアクリル樹脂を含有するものとするとともに、その含有量を、「エポキシ樹脂の含有量100質量部に対して、10質量部以上50質量部未満」とすることを容易になし得たとはいえない。
したがって、相違点6について検討するまでもなく、本件発明1は、甲4発明5ではなく、甲4発明5及び甲1~甲5の2に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
イ 甲4発明6又は甲4発明7を引用発明とする場合について
(ア)対比
前記アの本件発明1と甲4発明5との対比を踏まえて、本件発明1と甲4発明6又は甲4発明7を対比すると、いずれの場合においても、少なくとも以下の点で相違する。
<相違点8>
アクリル樹脂について、本件発明1は、「前記アクリル樹脂は、溶解性パラメータが9.2以上12以下、重量平均分子量が1,000以上95,000以下であり」と特定されているのに対して、甲4発明6又は甲4発明7の「パラロイドB-66」は、そのSP値、及び、重量平均分子量が特定されていない点
<相違点9>
アクリル樹脂の含有量について、本件発明1は、「前記アクリル樹脂の含有量は、前記エポキシ樹脂の含有量100質量部に対して、10質量部以上50質量部未満である」と特定されているのに対して、甲4発明6又は甲4発明7は、エポキシ樹脂(jER834-X90。甲4の段落【0145】の【表5】(前記第5、7(5))によれば、固形分(質量%)が90である。)の含有量100質量部に対するアクリル樹脂(パラロイドB-66)の含有量がそれぞれ、56(=7/(14*0.9))質量部(甲4発明6)、68(=8/(13*0.9))質量部(甲4発明7)である点
(イ)検討
相違点8及び9は、それぞれ、相違点5及び7についての検討と同様に当業者が容易に想到し得たものとはいえないから、上記アと同様の理由により、本件発明1は、甲4発明6又は甲4発明7ではないし、甲4発明6又は甲4発明7及び甲1~甲5の2に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
ウ 申立人の主張について
(ア)申立人の主張の概要
申立人は、令和6年7月10日提出の意見書(2頁1行~12頁末行)において、当業者であれば、防食塗膜と防汚塗膜の積層膜の物性の最適化を図るため、甲4の段落【0051】に並列的に記載されている市販品パラロイドB66、ダイアナールBR106において、パラロイドB66に代えて、溶解性パラメータが9.25であるダイアナールBR106を使用することは当業者が容易に考えつく程度のものであり、代えたことによる顕著な効果は本件特許明細書に示されていない旨主張する(以下、「主張1」という。)。
また、申立人は、甲4の請求項1には、アクリル樹脂の含有量がエポキシ樹脂の含有量100質量部に対して50質量%以上と記載されていても、当業者であれば、防食塗料と防汚塗料の塗装間隔(インターバル)が短い塗料発明をインターバルが長い塗料に改良することは容易に考えつくことであるから、当業者であれば、技術常識及び参考資料2の記載からアクリル樹脂の含有量を50質量%未満にすることは容易に考えつくことであり、アクリル樹脂の含有量をエポキシ樹脂の含有量100質量部に対して、10質量部以上50質量部未満とすることによる顕著な効果は示されていないから、相違点2は甲4の記載内容、参考資料2の背景技術及び技術常識により容易になし得る(以下、「主張2」という。)とも主張する。
(イ)主張の検討
申立人は、「パラロイドB-66」に代えてダイアナールBR106を用いることや、溶解性パラメータが9.2以上12以下であり、かつ、重量平均分子量が1,000以上95,000以下であるアクリル樹脂を用いることが動機づけられることを示す具体的な根拠等を提示するものでなく、この点は前記ア(イ)で検討したとおりであるから、前記主張1は、採用できない。
また、塗装間隔(インターバル)が短い塗料発明をインターバルが長い塗料に改良することは、仮に一般的な課題として認識されている場合があったとしても、甲4は、「エポキシ樹脂が十分に硬化していない段階で防食塗膜上に防汚塗膜を形成したものであっても、防性性能(特に静置防汚性)の低下が抑制され、かつ耐ダメージ性にも優れた積層防汚塗膜のエポキシ樹脂系防食塗膜を形成するためのエポキシ樹脂系防食塗料」(甲4【0011】)の提供を解決すべき課題とするものであるから、甲4の記載に接した当業者が塗装間隔(インターバル)を長くするような変更を動機づけられるとはいえない。したがって、前記主張2も採用できない。
エ 本件発明1についての小括
前記ア~ウのとおりであるから、本件発明1は、甲4に記載された発明ではなく、甲4に記載された発明及び甲1~甲5の2に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
(3)本件発明3~10について
本件発明3~10は、本件発明1を引用しさらに限定した発明に該当するところ、本件発明1は、前記(2)のとおり、甲4に記載された発明ではないし、甲4に記載された発明及び甲1~甲5の2に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもないので、同様の理由から、本件発明3~10も、甲4に記載された発明ではなく、甲4に記載された発明及び甲1~甲5の2に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
第8 取消理由通知で採用しなかった特許異議の申立理由について
取消理由通知で採用しなかった特許異議の申立理由はない。
第9 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件発明1、3~10に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件発明1、3~10に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
また、本件請求項2に係る特許異議の申立ては、対象となる請求項が存在しないものとなったから、特許法第120条の8第1項において準用する同法第135条の規定により却下する。
よって、結論のとおり決定する。
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2023-700589