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特許異議申立

2023-700473

吸水性樹脂粒子及びその製造方法

審判番号
2023-700473
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2020-565606
登録番号
7165753
請求日
2023年05月08日
審決日
2023年12月21日
公報発行日
2024年03月29日
結論
請求成立(取消)
当事者
  • 【権利者】SDPグローバル株式会社
  • 【権利者代理人】古谷 信也
  • 【異議申立人】株式会社 日本触媒
  • 【異議申立人代理人】山本 秀策
  • 【異議申立人代理人】森下 夏樹
  • 【異議申立人代理人】山本 健策
  • 【異議申立人代理人】福永 聡
  • 【異議申立人代理人】本田 輝人
審判長/審判官
  • 審判長 磯貝 香苗
  • 審判官 中村 和正
  • 審判官 加藤 友也
分類
P1651.113-ZC (C08J) / P1651.121-ZC (C08J) / P1651.536-ZC (C08J) / P1651.537-ZC (C08J)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法36条6項2号特許法113条2号特許法113条4号
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項、特許法第29条第1項第3号、特許法第36条第4項第1号、特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第6項第2号、特許法第113条第2号
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第7165753号発明「吸水性樹脂粒子及びその製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7165753号の請求項7ないし10に係る特許を取り消す。 特許第7165753号の請求項1ないし6に係る特許を維持する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第7165753号(以下「本件特許」という。)の請求項1ないし10に係る特許についての出願は、2019年(令和1年)11月22日(優先権主張 平成31年1月11日)を国際出願日とする特願2020-565606号に係るものであって、令和4年10月26日にその特許権の設定登録(請求項の数10)がされ、同年11月4日に特許掲載公報が発行され、その後、その特許に対し、令和5年5月8日に特許異議申立人 株式会社 日本触媒(以下「特許異議申立人」という。)により特許異議の申立て(対象請求項:全請求項)がされ、同年8月3日付けで取消理由が通知され、期間を指定して意見書を提出する機会を与えたが、特許権者からは応答がなかったものである。 第2 本件特許発明 本件特許の請求項1ないし10に係る発明(以下「本件特許発明1」ないし「本件特許発明10」という。また、総称して「本件特許発明」という。)は、それぞれ、本件特許の願書に添付した特許請求の範囲の請求項1ないし10に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。 「【請求項1】 水溶性ビニルモノマー(a1)及び架橋剤(b)を必須構成単位とする架橋重合体(A)を含有する樹脂粒子が表面架橋剤(d)により表面架橋された構造を有する吸水性樹脂粒子であって、粒子形状が不定形破砕状であり、平均真球度(SPHT)が0.831~0.850であり、耐衝撃性試験後の平均真球度(SPHT)の変化幅が0~0.010である吸水性樹脂粒子であって、Vortex法による吸収速度が45秒以下であり、ゲルブロッキング防止剤(c)を含有する、吸水性樹脂粒子。 【請求項2】 重量平均粒子径が200~450μmである請求項1に記載の吸水性樹脂粒子。 【請求項3】 重量平均粒子径が200~370μmである請求項2に記載の吸水性樹脂粒子。 【請求項4】 無機微粒子及び/又は多価金属塩を含む請求項1~3のいずれかに記載の吸水性樹脂粒子。 【請求項5】 0.9重量%生理食塩水によるゲル通液速度が10ml/分以上である請求項1~4のいずれかに記載の吸水性樹脂粒子。 【請求項6】 0.9重量%生理食塩水の保水量が25~45g/gである請求項1~5のいずれかに記載の吸水性樹脂粒子。 【請求項7】 水溶性ビニルモノマー(a1)及び架橋剤(b)を必須構成単位とする単量体組成物を重合し、架橋重合体(A)を含有する含水ゲルを得る重合工程と、前記含水ゲルを混練細断し、(A)を含有する含水ゲル粒子を得るゲル粉砕工程と、前記含水ゲル粒子を乾燥し、(A)を含有する乾燥粉体を得る乾燥工程と、前記乾燥粉体をさらに粉砕及び/又は分級して(A)を含有する樹脂粒子を得る工程と、前記樹脂粒子の表面を表面架橋剤(d)により表面架橋する工程を含む吸水性樹脂粒子の製造方法であって、前記乾燥工程以前にゲルブロッキング防止剤(c)を添加し、かつ、前記乾燥工程では、攪拌式乾燥機を用いて乾燥を行い、乾燥後に得られる(A)の乾燥粉体の全重量に対する2.8mm以上の粒子径を有する粒子の重量割合を10~30重量%とする、吸水性樹脂粒子の製造方法。 【請求項8】 ゲルブロッキング防止剤(c)が、炭化水素基を含有する疎水性物質(c1)及び/又はポリシロキサンである疎水性物質(c2)である請求項7に記載の吸水性樹脂粒子の製造方法。 【請求項9】 ゲルブロッキング防止剤(c)の添加量が、架橋重合体(A)の重量に基づいて0.05~5.0重量%である請求項7又は8に記載の吸水性樹脂粒子の製造方法。 【請求項10】 前記乾燥工程前の含水ゲル粒子の固形分濃度が10~55重量%である請求項7~9のいずれかに記載の吸水性樹脂粒子の製造方法。」 第3 取消理由の概要 当審が令和5年8月3日付けで特許権者に通知した取消理由の概要は次のとおりである。 1 取消理由1(甲第1号証に基づく新規性) 本件特許の請求項7、8及び10に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第1号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項7、8及び10に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 2 取消理由2(甲第1号証に基づく進歩性) 本件特許の請求項7ないし10に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第1号証に記載された発明に基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項7ないし10に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 3 取消理由3(甲第2号証に基づく進歩性) 本件特許の請求項7ないし10に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第2号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項7ないし10に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 4 取消理由4(甲第3号証に基づく進歩性) 本件特許の請求項7ないし10に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第3号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項7ないし10に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 第4 特許異議申立書に記載した特許異議申立理由について 令和5年5月8日に特許異議申立人が提出した特許異議申立書(以下「特許異議申立書」という。)に記載した申立ての理由の概要は次のとおりである。 1 申立理由1(甲第1号証に基づく新規性) 本件特許の請求項7、8及び10に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第1号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項7、8及び10に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 2-1 申立理由2-1(甲第1号証に基づく進歩性) 本件特許の請求項1ないし10に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第1号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし10に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 2-2 申立理由2-2(甲第2号証に基づく進歩性) 本件特許の請求項1ないし10に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第2号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし10に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 2-3 申立理由2-3(甲第3号証に基づく進歩性) 本件特許の請求項1ないし10に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第3号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし10に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 3 申立理由3(実施可能要件) 本件特許の請求項1ないし10に係る特許は、下記の点で特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。 (1)本件特許発明1~6(物の発明)について 当業者が本件特許発明1の吸水性樹脂粒子を全体にわたって実施するためには、製造された吸水性樹脂粒子について、Vortex法による吸収速度の測定、SPHTの値が0.831~0.850の範囲内にあるかの測定、耐衝撃性試験を行った上でSPHTの値を測定し、その変化幅が0~0.01の範囲内にあるかの測定を逐一行う必要があり、過度の試行錯誤を要することなく、本件特許発明1の吸水性樹脂を全体にわたって実施することはできない。 したがって、本件特許発明1について本件明細書の記載は実施可能要件に違反する。 本件特許発明2~6も同様に実施可能要件に違反する。 (2)本件特許発明7~10(方法発明)について 当業者が本件特許発明7の吸水性樹脂粒子の製造方法を全体にわたって実施するためには、乾燥工程後の乾燥粉体中の粗大粒子の重量割合を測定し、その重量割合が10~30重量%の範囲内にあるかを逐一確認する必要があり、過度の試行錯誤を要することなく、本件特許発明1の吸水性樹脂粒子の製造方法を全体にわたって実施することはできない。 したがって、本件特許発明7について本件明細書の記載は実施可能要件に違反する。 本件特許発明8~10も同様に実施可能要件に違反する。 (3)ゲルブロッキング防止剤の定義について 本件特許発明1~10は、すべて、塩化セチルトリメチルアンモニウムをゲルブロッキング防止剤として使用する実施形態(すなわち、甲第1号証の比較例2において実施できない結果が確認されている実施形態)を包含しているので、本件特許発明1~10は実施可能要件に違反する。 (4)粗大粒子を制御するゲルブロッキング防止剤について ゲルブロッキング防止剤として特定の2種類の物質(ショ糖ステアリン酸エステルとノニルフェノールEOA(EO2モル付加))を使用し、かつニーダー回転数を40rpm以上に高くする方法以外の方法を包含する本件特許発明7~10は、実施可能要件に違反する。 (5)ゲルブロッキング防止剤の量について ゲルブロッキング防止剤の量が0.265重量%未満である実施形態を包含する本件特許発明1~10は、本件特許明細書に基づいて実施できるものではなく、実施可能要件に違反する。 (6)攪拌型乾燥機について 本件特許発明1~10は、すべて、流動層式乾燥機を攪拌乾燥機として使用する実施形態(すなわち、甲第3号証の実験例15において実施できない結果が確認されている実施形態)を包含しているので、本件特許発明1~10は実施可能要件に違反する。 攪拌型乾燥機の種類に限定がない本件特許発明7~10は実施可能要件に違反する。 (7)分級について 樹脂粒子の粒子径の上限を規定していない本件特許発明1及び4~6並びに樹脂粒子の製造方法において特定の目開きでの分級を規定していない本件特許発明7~10は実施可能要件に違反する。 4 申立理由4(サポート要件) 本件特許の請求項1ないし10に係る特許は、下記の点で特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない出願に対して特許されたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。 (1)本件特許発明7~10について ゲルブロッキング剤を添加すること、攪拌式乾燥機を用いて乾燥を行うことを発明特定事項としているに過ぎない本件特許発明7は、本件明細書に記載された発明ではなく、サポート要件に違反する。 加えて、当業者が本件特許発明7の吸水性樹脂粒子の製造方法を全体にわたって実施するためには、乾燥工程後の乾燥粉体中の粗大粒子の重量割合を測定し、その重量割合が10~30重量%の範囲内にあるかを逐一確認する必要があり、本件特許発明1の吸水性樹脂粒子の製造方法が、本件明細書に記載された発明であるとはいえず、サポート要件に違反する。 本件特許発明8~10も同様にサポート要件に違反する。 (2)その他の理由について 申立理由3(実施可能要件)で述べた理由と同じ理由により、当業者は、本件特許明細書を考慮して、本件特許発明が課題を解決できるとは理解できないから、本件特許発明はサポート要件を充足しない。 5 申立理由5(明確性) 本件特許の請求項1ないし10に係る特許は、下記の点で特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない出願に対して特許されたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。 (1)ゲルブロッキング防止剤について 本件明細書を参酌しても、当業者は、何がゲルブロッキング防止剤に該当して何がゲルブロッキング防止剤に該当しないのか全く理解できない。 従って、本件特許発明1~10は不明確である。 (2)本件特許発明7~10を満たす参考例5について 参考例5は本件特許発明7~10を満たすにも関わらず、実施例でなく参考例とする本件特許発明7~10は明瞭でない。 (3)本件特許発明8の疎水性物資について 本件には、本件特許発明8の疎水性物質(c1)(c2)の定義がなく、その水溶率(水への溶解度)やHLB(親水疎水バランス)の記載がなく、従って、本件特許発明8の疎水性物質の範囲が不明瞭である。 そして、本件には疎水性物質(c1)(c2)として、段落[0037][0048][0062]に具体的に記載の化合物(長鎖脂肪酸エステル、長鎖脂肪酸塩、長鎖脂肪酸族アルコール、ポリシロキサン)以外で、ゲルブロッキング防止剤が疎水性物質(c1)(c2)に該当するのか明瞭でない。 6 証拠方法 甲第1号証:国際公開第2017/221911号 甲第1号証の1:甲第1号証に係る実験成績証明書 甲第2号証:国際公開第2018/092864号 甲第2号証の1:甲第2号証に係る実験成績証明書 甲第3号証:国際公開第2018/092863号 甲第3号証の1:甲第3号証に係る実験成績証明書 甲第4号証:特開2007-71415号公報 甲第5号証:特開平8-134134号公報 甲第6号証:国際公開第2016/204302号 甲第7号証:特表2015-535539号公報 甲第8号証:特開2000-302876号公報 甲第9号証:特開2013-132433号公報 甲第10号証:JIS K-7224(1996) 甲第11号証:特開2013-49868号公報 甲第12号証:特開2015-25022号公報 甲第13号証:特許第5213092号公報 なお、証拠の表記は、特許異議申立書の記載におおむね従った。以下、順に「甲1」のようにいう。 第5 当審の判断 1 取消理由についての判断 本件特許の請求項7ないし10に係る特許について、令和5年8月3日付けで取消理由を通知し、期間を指定して意見書を提出する機会を与えたが、特許権者は応答しなかった。 そして、上記の取消理由は妥当なものと認められるので、本件特許の請求項7ないし10に係る特許は、上記の取消理由によって取り消されるべきものである。 2 取消理由として採用しなかった申立理由についての判断 以下に述べるとおり、申立理由2-1ないし2-3、3(1)、(3)及び(5)ないし(7)、4(2)並びに5(1)のうち請求項1ないし6に対する理由はいずれも理由がないものと判断される。 (1)申立理由2-1(甲1に基づく進歩性)について ア 甲1に記載された事項等 (ア)甲1に記載された事項 甲1には、「吸水剤の製造方法」に関して、おおむね次の事項が記載されている。なお、下線は当審で付したものである。他の文献についても同様。 ・「[0011] 本発明の課題は、物性に優れた吸水性樹脂を、効率良く製造する方法を提供することにある。」 ・「[0016] 本発明に係る製造方法によれば、特定の構造を有する少量の乾燥助剤により、粒子状含水ゲル状架橋重合体の凝集及び/又は塊状化が効果的に抑制される。よって、乾燥工程における乾燥効率が向上する。さらに、粉砕工程における粉砕時の負荷が低減され、目的外の微粉発生が効果的に抑制される。その結果、最終的に得られる吸水剤等の製造物の物性(品質)が向上する。」 ・「[0093] 上記乾燥助剤の添加量(即ち、中間体組成物における乾燥助剤の含有量)は、上記粒子状含水ゲルのゲル固形分に対して、好ましくは0.001質量%~0.5質量%、より好ましくは0.010質量%~0.3質量%、更に好ましくは0.020質量%~0.2質量%、特に好ましくは0.025質量%~0.2質量%である。なお、上記乾燥助剤として複数の化合物を併用する場合には、その合計量が上記範囲内となっていればよい。上記乾燥助剤は、0.5質量%以下という少ない添加量で、乾燥時の粒子状含水ゲルの凝集及び/又は塊状化を効果的に抑制し、高いゲル分散性を発揮する。この結果、乾燥効率が向上する。また、この乾燥助剤を上記範囲内の添加量で含む粒子状含水ゲル(即ち、中間体組成物)を乾燥させた場合、最終的に得られる吸水剤の物性に対する乾燥助剤による影響が少ない。この吸水剤は、無加圧下吸水倍率及び加圧下吸水倍率が高く、良好な外観性(色調)を呈する。」 ・「[0166] [製造例1] 容量1L、内径80mmのポリプロピレン製の容器に、アクリル酸368g、48.5質量%の水酸化ナトリウム水溶液307g、脱イオン水303g、及び、内部架橋剤としてポリエチレングリコールジアクリレート0.8gを入れて混合し、単量体水溶液(1)を調製した。上記ポリエチレングリコールジアクリレートのエチレンオキシドの平均付加モル数nは9であり、添加量はアクリル酸に対して0.03モル%であった。 [0167] なお、上記単量体水溶液(1)は、中和率が73モル%、単量体濃度が45質量%であった。また、混合の過程で発生した中和熱及び溶解熱によって、単量体水溶液(1)は98℃まで上昇した。 [0168] その後、上記単量体水溶液(1)の攪拌を継続し、単量体水溶液(1)の温度が95℃となった時点で、重合開始剤として3.0質量%の過硫酸ナトリウム水溶液20gを加えて、約5秒間攪拌し、反応液(1)とした。 [0169] 次に、上記反応液(1)をステンレス製バット型容器に、大気開放系で流し込んだ。なお、該ステンレス製バット型容器は、底面の大きさが250mm×250mm、上面の大きさが640mm×640mm、高さが50mm、中心断面が台形状であり、内面にシリコンシートを貼付したものであった。また、該ステンレス製バット型容器は、100℃に加熱されたホットプレート(株式会社井内盛栄堂製;NEO HOTPLATE H1-1000)上に載置し、プレヒートしておいた。 [0170] 上記反応液(1)を上記ステンレス製バット型容器に流し込んだ後、重合反応が開始した。該重合反応は、水蒸気を発生しながら上方に向かって四方八方に膨張、発泡しながら進行した。その後、ステンレス製バット型容器の底面より若干大きいサイズにまで収縮した。なお、該重合反応(膨張、収縮)は約1分以内に終了したがその後3分間はステンレス製バット型容器内に保持した。該重合反応によって、板状の含水ゲル状架橋重合体(以下、「含水ゲル」という)(1)を得た。なお、製造例1における含水ゲルの重合率は99質量%であった。 [0171] 次に、上記板状の含水ゲル(1)を裁断して、短冊状の含水ゲル(1)とした後、ミートチョッパー(レマコム株式会社製;HL-3225N)にてゲル粉砕し、粒子状の含水ゲル(1)を得た。なお、上記ミートチョッパーには、孔径が9.5mmΦ、孔数が24個の多孔板が備えられていた。得られた粒子状の含水ゲル(1)のゲル粒子径は、1300μmであった。また、ゲル固形分は50質量%、ゲルExtは8質量%であった。 [0172] [実施例1] 上記製造例(1)で得られた粒子状の含水ゲル(1)について、下記の乾燥を行った。なお、乾燥装置には、容量5Lの攪拌型乾燥機(株式会社栗本鐵工所製;CDドライヤー、型式;CD-80)を使用した。このCDドライヤーは、攪拌盤の回転軸及びジャケットの温度をそれぞれ180℃とし、回転数30rpmとした。 [0173] 先ず、乾燥助剤溶液として、3.1質量%のラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン(花王株式会社製;アンヒトール(登録商標)20BS)水溶液を準備した。続いて、上記粒子状の含水ゲル(1)に対して、アンヒトール20BS水溶液を添加しながら、1軸シャフトレススクリュー(株式会社クマエンジニアリング製;アキュレートフィーダー)を用いて、上記CDドライヤーに連続的に供給した。なお、乾燥助剤溶液を添加する直前の粒子状の含水ゲル(1)のゲル温度は、55℃であった。粒子状の含水ゲル(1)の処理量は4.5kg/hrであり、アンヒトール20BS水溶液の添加量は0.14kg/hrであった。また、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタインは、含水ゲル(1)のゲル固形分に対して0.20質量%であった。 [0174] この乾燥操作によって、固形分が98.3質量%である粒子状の乾燥重合体(1)を得た。 [0175] なお、上記連続乾燥中、CDドライヤー内の雰囲気露点は85℃であり、酸素濃度9.0容積%であった。上記粒子状の含水ゲル(1)のCDドライヤー内での滞留量は1.1kgであり、平均滞留時間は35分間であった。 [0176] 続いて、得られた粒子状の乾燥重合体(1)を、ロールミルを用いて粉砕した後、目開きが850μmと150μmのJIS標準篩を用いて分級した。この粉砕、分級によって、粒子径が150μm以上850μm未満の吸水性樹脂粉末(1)を得た。得られた吸水性樹脂粉末(1)の含水率は、1.7質量%であった。 [0177] 次に、上記吸水性樹脂粉末(1)100質量部に対して、エチレングリコールジグリシジルエーテル0.025質量部、1,4-ブタンジオール0.4質量部、プロピレングリコール0.6質量部及び脱イオン水3.0質量部からなる表面架橋剤溶液を添加し、均一となるように混合した。その後、190℃で30分間、加熱処理を行い、その後、60℃まで強制冷却した。 [0178] 上記一連の操作によって、吸水剤(1)を得た。吸水剤(1)の諸物性を表1に示す。」 ・「[0181] [実施例4] 実施例1において、3.1質量%のアンヒトール20BS水溶液を、2.7質量%のステアリルジメチルアミノ酢酸ベタイン(花王株式会社製;アンヒトール(登録商標)86B)水溶液に変更し、更にその添加量を0.02kg/hr(含水ゲル(1)のゲル固形分に対しては0.02質量%)に変更した以外は、実施例1と同様の操作を行って、吸水性樹脂粉末(4)及び吸水剤(4)を得た。得られた吸水性樹脂粉末(4)の含水率は、2.7質量%であった。また、吸水剤(4)の諸物性を表1に示す。」 ・「[0208] [図:0001407838000001.jpg] 」 (イ)甲1に記載された発明 甲1に記載された事項を、特に実施例4に関して整理すると、甲1には次の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されていると認める。 <甲1発明> 「容量1L、内径80mmのポリプロピレン製の容器に、アクリル酸368g、48.5質量%の水酸化ナトリウム水溶液307g、脱イオン水303g、及び、内部架橋剤としてポリエチレングリコールジアクリレート0.8gを入れて混合し、単量体水溶液(1)を調製し、重合反応によって、板状の含水ゲル(1)を得、上記板状の含水ゲル(1)を裁断して、短冊状の含水ゲル(1)とした後、ミートチョッパー(レマコム株式会社製;HL-3225N)にてゲル粉砕し、ゲル固形分が50質量%である粒子状の含水ゲル(1)を得、得られた粒子状の含水ゲル(1)について、乾燥助剤溶液として、2.7質量%のステアリルジメチルアミノ酢酸ベタイン(花王株式会社製;アンヒトール(登録商標)86B)水溶液を準備し、乾燥装置には、容量5Lの攪拌型乾燥機(株式会社栗本鐵工所製;CDドライヤー、型式;CD-80)を使用し、乾燥を行い、得られた粒子状の乾燥重合体を、ロールミルを用いて粉砕した後、目開きが850μmと150μmのJIS標準篩を用いて分級し、粒子径が150μm以上850μm未満の吸水性樹脂粉末(4)を得、吸水性樹脂粉末(4)100質量部に対して、エチレングリコールジグリシジルエーテル0.025質量部、1,4-ブタンジオール0.4質量部、プロピレングリコール0.6質量部及び脱イオン水3.0質量部からなる表面架橋剤溶液を添加し、均一となるように混合し、得られた吸水剤(4)。」 イ 本件特許発明1について (ア)対比 本件特許発明1と甲1発明を対比する。 甲1発明における「アクリル酸」、「ポリエチレングリコールジアクリレート」、「吸水性樹脂粉末(4)」、「表面架橋剤溶液」、「吸水剤(4)」、「ステアリルジメチルアミノ酢酸ベタイン(花王株式会社製;アンヒトール(登録商標)86B)水溶液」は、それぞれ、本件特許発明1における「水溶性ビニルモノマー(a1)」、「架橋剤(b)」、「架橋重合体(A)を含有する樹脂粒子」、「表面架橋剤(d)」、「吸水性樹脂粒子」、「ゲルブロッキング防止剤(c)」に相当する。 甲1発明における「吸水剤(4)」は、「得られた粒子状の乾燥重合体を、ロールミルを用いて粉砕した」ものであるから、本件特許発明1における「不定形破砕状」との特定事項を満たす。 したがって、両者は次の点で一致する。 <一致点> 「水溶性ビニルモノマー(a1)及び架橋剤(b)を必須構成単位とする架橋重合体(A)を含有する樹脂粒子が表面架橋剤(d)により表面架橋された構造を有する吸水性樹脂粒子であって、粒子形状が不定形破砕状であり、ゲルブロッキング防止剤(c)を含有する、吸水性樹脂粒子。」 そして、両者は次の点で相違する。 <相違点1-1> 本件特許発明1においては、「平均真球度(SPHT)が0.831~0.850であり、耐衝撃性試験後の平均真球度(SPHT)の変化幅が0~0.010である」と特定されているのに対して、甲1発明においては、そのようには特定されていない点。 <相違点1-2> 本件特許発明1においては、「Vortex法による吸収速度が45秒以下であり」と特定されているのに対して、甲1発明においては、そのようには特定されていない点。 (イ)判断 相違点1-1について検討する。 甲1及び他の証拠には、甲1発明において相違点1-1に係る本件特許発明1の発明特定事項を採用することの動機付けとなる記載はない。 してみると、甲1発明において、相違点1-1に係る本件特許発明1の発明特定事項を採用することは当業者が容易に想到し得たものであるとはいえない。 したがって、その他の相違点については検討するまでもなく、本件特許発明1は、甲1発明並びに甲1及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 ウ 本件特許発明2ないし6について 本件特許発明2ないし6は、請求項1を直接又は間接的に引用して特定するものであり、本件特許発明1の発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明1と同様に判断される。 したがって、本件特許発明2ないし6は、甲1発明並びに甲1及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 エ 申立理由2-1(甲1に基づく進歩性)についてのむすび 本件特許発明1ないし6は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるとはいえず、本件特許の請求項1ないし6に係る特許は、同法第113条第2号に該当しないので、申立理由2-1によっては取り消すことはできない。 (2)申立理由2-2(甲2に基づく進歩性)について ア 甲2に記載された事項等 (ア)甲2に記載された事項 甲2には、「吸水性樹脂粉末の製造方法及びその製造装置」に関して、おおむね次の事項が記載されている。 ・「[0019] 本発明の課題は、効率的な吸水性樹脂の製造方法を提供することである。さらには、吸水速度などの吸水性能に優れ、かつ、製造過程での微粉発生量や必要により行われる微粉回収量が少なく、効率的な粒度調整が可能なコンパクトな吸水性樹脂粉末の製造方法及びその製造装置の提供である。」 ・「[0023] 本発明に係る製造方法及び製造装置によれば、乾燥後にほぼ目的とする製品粒度の粒状乾燥物が得られる。そのため、乾燥後の粉砕工程や分級工程に用いる装置類を小型化でき、コンパクトな製造工程の提供が可能である。また、乾燥後の粉砕工程における微粉発生量を低減できるため、多量の微粉を回収及びリサイクルする必要がなく、得られる吸水性樹脂粉末の物性も向上する。さらに、この製造方法及び製造装置によれば、後架橋(表面架橋)と乾燥とを同時に行うことも可能であるため、製造工程をさらにコンパクト化することができる。この製造方法では、後架橋後の加熱乾燥工程における機械的ダメージが少なく、微粉の発生及び粒子表面の架橋構造の破壊に伴う物性低下も抑制される。また、微粉発生量の低減により、従来、微粉回収及びリサイクルに要していた費用及び時間が軽減され、性能及び製造効率が向上する。更に、コンパクトな整粒工程における粒度調整が容易である。本発明に係る製造方法及び乾燥造粒装置によれば、従来の製造方法と比較して、吸水性能が遜色なく、かつ所望の粒度分布を有する吸水性樹脂粉末を効率的に製造することができる。」 ・「[0167] 〔2-5〕後架橋工程 本工程は、重合後の含水ゲルやその乾燥物に、吸水性樹脂の官能基(特にカルボキシル基)と反応する後架橋剤を添加して架橋反応させる工程であり、主として、吸水性樹脂粒子の表面から架橋されるため、表面架橋又は2次架橋とも呼ばれる。本発明に係る製造方法では、本工程において、粒子状含水ゲル及び/又は粒状乾燥物(以下、吸水性樹脂と総称する場合がある)に後架橋剤を添加して反応させる。本工程は、後架橋剤添加工程と熱処理工程とを有し、必要に応じて熱処理工程後に冷却工程を有していてもよい。 [0168] 〔2-5-1〕後架橋剤添加工程 本工程は、粒子状含水ゲル及び/又は粒状乾燥物に、後架橋剤を添加する工程である。後架橋剤は、乾燥前あるいは乾燥途中の粒子状含水ゲルに対して、あるいは、乾燥後の粒状乾燥物、さらには整粒後の粒状乾燥物に対して添加される。」 ・「[0259] [製造例1] アクリル酸300質量部、48質量%水酸化ナトリウム水溶液100質量部、ポリエチレングリコールジアクリレート(平均n数9)0.61質量部、0.1質量%ジエチレントリアミン5酢酸3ナトリウム水溶液16.4質量部、脱イオン水273.2質量部からなる単量体水溶液を作成した。 [0260] 次に、38℃に調温した上記単量体水溶液を定量ポンプで連続供給した後、更に48質量%水酸化ナトリウム水溶液150.6質量部を連続的にラインミキシングした。尚、この時、中和熱によって単量体水溶液の液温は87℃まで上昇した。 [0261] 更に、4質量%過硫酸ナトリウム水溶液14.6質量部を連続的にラインミキシングした後、両端に堰を備えた平面状の重合ベルトを有する連続重合機に、厚みが10mmとなるように連続的に供給した。その後、重合(重合時間3分間)が連続的に行われ、帯状の含水ゲル(1a)を得た。得られた帯状の含水ゲル(1a)を重合ベルトの進行方向に対して幅方向に、切断長が300mmとなるように等間隔に連続して切断することで、短冊状の含水ゲル(1b)を得た。 [0262] スクリュー押出機に、得られた含水ゲル(1b)と、3.1質量%ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン水溶液とを、同時に供給しながらゲル粉砕した。ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン水溶液の供給量は、含水ゲル(1b)の固形分に対して0.15質量%であった。該スクリュー押出機としては、スクリュー軸の外径が86mmであり、先端部に直径100mm、孔径8.0mm、厚さ10mmの多孔板が備えられたミートチョッパーを使用し、含水ゲル(1b)と同時に水及び水蒸気を供給しながらゲル粉砕(第1ゲル粉砕)を行った。次に、多孔板の孔径を4.7mmに変更した後、水及び水蒸気を供給しながら、第1ゲル粉砕で得られた粉砕ゲルをさらにゲル粉砕(第2ゲル粉砕)した。2回の粉砕に要したゲル粉砕エネルギーは51J/gであった。得られた粒子状含水ゲルPG(1)は、固形分率が44質量%(含水率が56質量%)、乾燥質量換算の平均粒子径d1が130μm、粒子径150μm以下の粒子の割合が約53質量%であった。また粒子状含水ゲルの重合率は98.6%、CRCは36g/g、可溶性分は6%であった。粒子状含水ゲルPG(1)の物性は下表1に示されている。」 ・「[0269] [製造例8] 製造例1の第1ゲル粉砕において、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタインに代えてポリエチレングリコール(重量平均分子量20000)を使用し、その供給量を2.00質量%とした以外は、製造例1と同様にして、粒子状含水ゲルPG(8)を得た。この粒子状含水ゲルPG(8)の物性は、下表1に示されている。」 ・「[0272] [実験例1] 製造例1で得られた粒子状含水ゲルPG(1)(Particulate Gel)を、図1-2に示される基本構成を備えた加熱管付き回転型乾燥機を用いて乾燥した。この乾燥機は、その内部に回転軸方向に延在する10本の加熱管と2枚の障壁(中心部に一つの円形開口部を有するドーナツ状の仕切り板、開口率50%)とを有する円筒状の回転容器(容積100L)を備えており、投入部から取り出し口に向かって、0.6°の下向きの傾斜が付けられている。さらに、回転容器内の取り出し口側の端部には、中心に一つの円形開口部(開口率24%)を有するドーナツ状の仕切り板(別称;排出堰)を有している。はじめに、各加熱管に2.7MPa(温度228.1℃)の水蒸気を導入して、回転容器内部(接触温度計で規定)を予め200℃超に加熱した後、さらに回転容器の外壁もトレスで十分に加熱した。次いで、乾燥機に製造例1で得られた95℃の粒子状含水ゲルPG(1)を15kg/hで供給し、フルード数Fr0.07となるように回転容器を回転させて、平均滞留時間50分で連続乾燥を行った。乾燥時、回転容器の内部の外気に対する気圧差が-20Paであり、排気露点が90℃となるように、空気(キャリアーガス;140℃)の供給量及び排気量を調整した。なお、乾燥機の複数箇所から、回転容器内部の含水ゲルをサンプリングして、その固形分率を測定したところ、乾燥中の含水ゲルは、回転容器の中間2箇所に設置された2枚のドーナツ状の障壁(開口率50%)により、固形分率約約90質量%及び約95質量%を境界として、3つの領域に区分されていた。乾燥後、取り出し口で採取した乾燥物(1)の温度は200℃であり、その大部分が造粒粒子であった。この乾燥物(1)は、固形分率98.5質量%、質量平均粒子径(d2)625μm(d2/d1=4.8)、粒子径850μm以下の粒子の割合が乾燥重量換算で68質量%、粒子径150μm未満の粒子の割合が2.5質量%であった。この乾燥物(1)中の乾燥重量換算の微粉量(粒子径150μm未満の粒子の割合)は、粒子状含水ゲルPG(1)中の微粉量53質量%に対して約1/21に低減された。つまり、乾燥工程のみで、目的とする一般的な製品粒度(850~150μm)の乾燥物(乾燥造粒物)65.5質量%が得られ、微粉量は僅か2.5質量%であった。 [0273] 続いて、回転型乾燥機の取り出し口から排出された乾燥物(1)を、冷風により、強制的に80℃以下に冷却した後、その冷却物を1段のロールミル(粉砕機)に供給して粉砕することにより粒度を調整して、吸水性樹脂粉末(1)を得た。吸水性樹脂粉末(1)は、質量平均粒子径(d3)400μm(d3/d2=0.64)、粒子径850μm非通過物の粒子の割合が1質量%未満、粒子径150μm未満の粒子の割合が6質量%であった。つまり、1段のロールミルによる粉砕工程のみで、目的とする製品粒度(850~150μm)の吸水性樹脂粉末94質量%が得られ、微粉量は僅か6%であった。その後連続乾燥を24時間実施したところ、収率は約100%(添加した粒子状含水ゲルに対する得られた吸水性樹脂粉末の質量比)であり、装置の運転状態及び吸水性樹脂の物性は安定していた。また、特に回転乾燥機内部への付着や乾燥物の過度の凝集も見られなかった。得られた吸水性樹脂粉末(1)の物性が表2及び3に示されている。」 ・「[0297] [実験例26及び27] 実験例1において、粒子状含水ゲルPG(1)に代えて、製造例7及び8で得た粒子状含水ゲルPG(7)及びPG(8)をそれぞれ使用した以外は、実験例1と同様に乾燥を行って、吸水性樹脂粉末(27)及び(28)を得た。結果を表2及び3に示す。 [0298] [実験例28] 乾燥後の後架橋 実験例1で得られた吸水性樹脂粉末(1)について、さらに分級して850-160μmの篩分を採取した後、エチレングリコールジグリシジルエーテル0.2質量%及び水3質量%を含む表面架橋剤溶液を噴霧し、150℃で30分間加熱することにより、表面架橋された吸水性樹脂粉末(28)(別称;吸水剤)を得た。吸水性樹脂粉末(28)のCRCは33g/gであり、AAPは24g/gであった。」 ・「[0303] [図:0001407838000002.jpg] 」 (イ)甲2に記載された発明 甲2に記載された事項を、特に実験例27に関して整理すると、甲2には次の発明(以下、「甲2発明」という。)が記載されていると認める。 <甲2発明> 「アクリル酸300質量部、48質量%水酸化ナトリウム水溶液100質量部、ポリエチレングリコールジアクリレート(平均n数9)0.61質量部、0.1質量%ジエチレントリアミン5酢酸3ナトリウム水溶液16.4質量部、脱イオン水273.2質量部からなる単量体水溶液を作成し、重合を連続的に行い、帯状の含水ゲル(1a)を得、得られた帯状の含水ゲル(1a)を重合ベルトの進行方向に対して幅方向に、切断長が300mmとなるように等間隔に連続して切断することで、短冊状の含水ゲル(1b)を得、スクリュー押出機に、得られた含水ゲル(1b)と、2.00質量%ポリエチレングリコール(重量平均分子量20000)とを、同時に供給しながらゲル粉砕し、固形分率が44質量%である粒子状含水ゲルPG(8)を得、得られた粒子状含水ゲルPG(8)を、加熱管付き回転型乾燥機を用いて乾燥し、回転型乾燥機の取り出し口から排出された乾燥物を、冷風により、強制的に80℃以下に冷却した後、その冷却物を1段のロールミル(粉砕機)に供給して粉砕することにより粒度を調整して、得られた吸水性樹脂粉末(28)。」 イ 本件特許発明1について (ア)対比 本件特許発明1と甲2発明を対比する。 甲2発明における「アクリル酸」、「ポリエチレングリコールジアクリレート」、「吸水性樹脂粉末(28)」、「ポリエチレングリコール」は、それぞれ、本件特許発明1における「水溶性ビニルモノマー(a1)」、「架橋剤(b)」、「架橋重合体(A)を含有する」「吸水性樹脂粒子」、「ゲルブロッキング防止剤(c)」に相当する。 甲2発明における「吸水性樹脂粉末(28)」は、「ロールミル(粉砕機)に供給して粉砕」したものであるから、本件特許発明1における「不定形破砕状」との特定事項を満たす。 したがって、両者は次の点で一致する。 <一致点> 「水溶性ビニルモノマー(a1)及び架橋剤(b)を必須構成単位とする架橋重合体(A)を含有する吸水性樹脂粒子であって、粒子形状が不定形破砕状であり、ゲルブロッキング防止剤(c)を含有する、吸水性樹脂粒子。」 そして、両者は次の点で相違する。 <相違点2-1> 本件特許発明1においては、「表面架橋剤(d)により表面架橋された構造を有する」と特定されているのに対して、甲2発明においては、そのようには特定されていない点。 <相違点2-2> 本件特許発明1においては、「平均真球度(SPHT)が0.831~0.850であり、耐衝撃性試験後の平均真球度(SPHT)の変化幅が0~0.010である」と特定されているのに対して、甲2発明においては、そのようには特定されていない点。 <相違点2-3> 本件特許発明1においては、「Vortex法による吸収速度が45秒以下であり」と特定されているのに対して、甲2発明においては、そのようには特定されていない点。 (イ)判断 事案に鑑みて、相違点2-2について先に検討する。 甲2及び他の証拠には、甲2発明において相違点2-2に係る本件特許発明1の発明特定事項を採用することの動機付けとなる記載はない。 してみると、甲2発明において、相違点2-2に係る本件特許発明1の発明特定事項を採用することは当業者が容易に想到し得たものであるとはいえない。 したがって、その他の相違点については検討するまでもなく、本件特許発明1は、甲2発明並びに甲2及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 ウ 本件特許発明2ないし6について 本件特許発明2ないし6は、請求項1を直接又は間接的に引用して特定するものであり、本件特許発明1の発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明1と同様に判断される。 したがって、本件特許発明2ないし6は、甲2発明並びに甲2及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 エ 申立理由2-2(甲2に基づく進歩性)についてのむすび 本件特許発明1ないし6は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるとはいえず、本件特許の請求項1ないし6に係る特許は、同法第113条第2号に該当しないので、申立理由2-2によっては取り消すことはできない。 (3)申立理由2-3(甲3に基づく進歩性)について ア 甲3に記載された事項等 (ア)甲3に記載された事項 甲3には、「吸水性樹脂粉末の製造方法、並びに粒子状含水ゲルの乾燥装置及び乾燥方法」に関して、おおむね次の事項が記載されている。 ・「[0020] 本発明の課題は、製造過程での微粉発生量が少なく、微粉に起因する物性低下が抑制された吸水性樹脂粉末の製造方法並びに粒子状含水ゲルの乾燥装置および乾燥方法(特に乾燥開始方法)を提供することである。さらに、本発明の課題は、製造工程が簡略化およびコンパクト化された吸水性樹脂粉末の製造方法を提供することである。」 ・「[0026] 本発明に係る製造方法、乾燥方法及び乾燥装置によれば、乾燥工程における機械的ダメージが少なく、微粉の発生及び表面架橋の破壊に伴う物性低下が抑制される。また、微粉量の低減により、従来、微粉回収及びリサイクルに要していた費用及び時間が軽減され、製造効率が向上する。本発明に係る製造方法及び製造設備によれば、従来の製造方法と比較して、その後の製造工程をコンパクト化ないし簡略化でき、吸水性能が遜色ない吸水性樹脂粉末を効率的に製造することができる。」 ・「[0165] 〔2-5〕表面架橋工程 本工程は、重合後の含水ゲルやその乾燥物に、吸水性樹脂の官能基(特にカルボキシル基)と反応する表面架橋剤を添加して架橋反応させる工程である。この架橋反応により、主として、吸水性樹脂粒子の表面から架橋される。表面架橋は、後架橋又は2次架橋とも称される。本発明に係る製造方法では、本工程において、粒子状含水ゲル及び/又は粒状乾燥物(以下、吸水性樹脂と総称する場合がある)に表面架橋剤を添加して反応させる。本工程は、表面架橋剤添加工程と熱処理工程とを有し、必要に応じて熱処理工程後に冷却工程を有していてもよい。 [0166] 〔2-5-1〕表面架橋剤添加工程 本工程は、粒子状含水ゲル及び/又は粒状乾燥物に、表面架橋剤を添加する工程である。表面架橋剤は、乾燥前あるいは乾燥途中の粒子状含水ゲルに対して、あるいは、乾燥後の粒状乾燥物、さらには整粒後の粒状乾燥物に対して添加される。」 ・「[0261] [製造例1] アクリル酸300質量部、48質量%水酸化ナトリウム水溶液100質量部、ポリエチレングリコールジアクリレート(平均n数9)0.61質量部、0.1質量%ジエチレントリアミン5酢酸3ナトリウム水溶液16.4質量部、脱イオン水273.2質量部からなる単量体水溶液を作成した。 [0262] 次に、38℃に調温した上記単量体水溶液を定量ポンプで連続供給した後、更に48質量%水酸化ナトリウム水溶液150.6質量部を連続的にラインミキシングした。尚、この時、中和熱によって単量体水溶液の液温は87℃まで上昇した。 [0263] 更に、4質量%過硫酸ナトリウム水溶液14.6質量部を連続的にラインミキシングした後、両端に堰を備えた平面状の重合ベルトを有する連続重合機に、厚みが10mmとなるように連続的に供給した。その後、重合(重合時間3分間)が連続的に行われ、帯状の含水ゲル(1a)を得た。得られた帯状の含水ゲル(1a)を重合ベルトの進行方向に対して幅方向に、切断長が300mmとなるように等間隔に連続して切断することで、短冊状の含水ゲル(1b)を得た。 [0264] スクリュー押出機に、得られた含水ゲル(1b)と、3.1質量%ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン水溶液とを、同時に供給しながらゲル粉砕した。ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン水溶液の供給量は、含水ゲル(1b)の固形分に対して0.15質量%であった。該スクリュー押出機としては、スクリュー軸の外径が86mmであり、先端部に直径100mm、孔径8.0mm、厚さ10mmの多孔板が備えられたミートチョッパーを使用し、含水ゲル(1b)と同時に水及び水蒸気を供給しながらゲル粉砕(第1ゲル粉砕)を行った。次に、多孔板の孔径を4.7mmに変更した後、水及び水蒸気を供給しながら、第1ゲル粉砕で得られた粉砕ゲルをさらにゲル粉砕(第2ゲル粉砕)した。2回の粉砕に要したゲル粉砕エネルギーは51J/gであった。得られた粒子状含水ゲルPG(1)は、固形分率が44質量%(含水率が56質量%)、乾燥質量換算の平均粒子径d1が130μm、粒子径150μm以下の粒子の割合が約53質量%であった。また粒子状含水ゲルの重合率は98.6%、CRCは36g/g、可溶性分は6%であった。粒子状含水ゲルPG(1)の物性は下表1に示されている。」 ・「[0271] [製造例8] 製造例1の第1ゲル粉砕において、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタインに代えてポリエチレングリコール(重量平均分子量20000)を使用し、その供給量を2.00質量%とした以外は、製造例1と同様にして、粒子状含水ゲルPG(8)を得た。この粒子状含水ゲルPG(8)の物性は、下表1に示されている。」 ・「[0274] [実験例1] 製造例1で得られた粒子状含水ゲルPG(1)(Particulate Gel)を、図1-2に示される基本構成を備えた乾燥装置(加熱管付き回転型加熱装置)を用いて乾燥した。この乾燥装置は、その内部に回転軸方向に延在する10本の加熱管と2枚の障壁(中心部に一つの円形開口部を有するドーナツ状の仕切り板、開口率50%)とを有する円筒状の回転容器(容積100L)を備えており、投入部から取り出し口に向かって、0.6°の下向きの傾斜が付けられている。さらに、回転容器内の取り出し口側の端部には、中心に一つの円形開口部(開口率24%)を有するドーナツ状の仕切り板(別称;排出堰)を有している。はじめに、各加熱管に2.7MPa(温度228.1℃)の水蒸気を導入して、回転容器内部(接触温度計で規定)を予め200℃超に加熱した後、さらに回転容器の外壁もトレスで十分に加熱した。次いで、乾燥装置に製造例1で得られた95℃の粒子状含水ゲルPG(1)を15kg/hで供給し、フルード数Fr0.07となるように回転容器を回転させて、平均滞留時間50分で連続乾燥を行った。乾燥時、回転容器の内部の外気に対する気圧差が-20Paであり、排気露点が90℃となるように、空気(キャリアーガス;140℃)の供給量及び排気量を調整した。なお、乾燥装置の複数箇所から、回転容器内部の含水ゲルをサンプリングして、その固形分率を測定したところ、乾燥中の含水ゲルは、回転容器の中間2箇所に設置された2枚のドーナツ状の障壁(開口率50%)により、固形分率約約90質量%及び約95質量%を境界として、3つの領域に区分されていた。乾燥後、取り出し口で採取した乾燥物(1)の温度は200℃であり、その大部分が造粒粒子であった。この乾燥物(1)は、固形分率98.5質量%、質量平均粒子径(d2)625μm(d2/d1=4.8)、粒子径850μm以下の粒子の割合が乾燥重量換算で68質量%、粒子径150μm未満の粒子の割合が2.5質量%であった。この乾燥物(1)中の乾燥重量換算の微粉量(粒子径150μm未満の粒子の割合)は、粒子状含水ゲルPG(1)中の微粉量53質量%に対して約1/21に低減された。つまり、乾燥工程のみで、目的とする一般的な製品粒度(850~150μm)の乾燥物(乾燥造粒物)65.5質量%が得られ、微粉量は僅か2.5質量%であった。 [0275] 続いて、加熱装置の取り出し口から排出された乾燥物(1)を、冷風により、強制的に80℃以下に冷却した後、その冷却物を1段のロールミル(粉砕機)に供給して粉砕することにより粒度を調整して、吸水性樹脂粉末(1)を得た。吸水性樹脂粉末(1)は、質量平均粒子径(d3)400μm(d3/d2=0.64)、粒子径850μm非通過物の粒子の割合が1質量%未満、粒子径150μm未満の粒子の割合が6質量%であった。つまり、1段のロールミルによる粉砕工程のみで、目的とする製品粒度(850~150μm)の吸水性樹脂粉末94質量%が得られ、微粉量は僅か6%であった。その後連続乾燥を24時間実施したところ、収率は約100%(添加した粒子状含水ゲルに対する得られた吸水性樹脂粉末の質量比)であり、装置の運転状態及び吸水性樹脂の物性は安定していた。また、特に乾燥装置内部への付着や乾燥物の過度の凝集も見られなかった。得られた吸水性樹脂粉末(1)の物性が表2及び3に示されている。」 ・「[0299] [実験例26及び27] 実験例1において、粒子状含水ゲルPG(1)に代えて、製造例7及び8で得た粒子状含水ゲルPG(7)及びPG(8)をそれぞれ使用した以外は、実験例1と同様に乾燥を行って、吸水性樹脂粉末(27)及び(28)を得た。結果を表2及び3に示す。 [0300] [実験例28] 乾燥後の後架橋 実験例1で得られた吸水性樹脂粉末(1)について、さらに分級して850-160μmの篩分を採取した後、エチレングリコールジグリシジルエーテル0.2質量%及び水3質量%を含む表面架橋剤溶液を噴霧し、150℃で30分間加熱することにより、表面架橋された吸水性樹脂粉末(28)(別称;吸水剤)を得た。吸水性樹脂粉末(28)のCRCは33g/gであり、AAPは24g/gであった。」 ・「[0305] [図:0001407838000003.jpg] 」 (イ)甲3に記載された発明 甲3に記載された事項を、特に実験例27に関して整理すると、甲3には次の発明(以下、「甲3発明」という。)が記載されていると認める。 <甲3発明> 「アクリル酸300質量部、48質量%水酸化ナトリウム水溶液100質量部、ポリエチレングリコールジアクリレート(平均n数9)0.61質量部、0.1質量%ジエチレントリアミン5酢酸3ナトリウム水溶液16.4質量部、脱イオン水273.2質量部からなる単量体水溶液を作成し、重合を連続的に行い、帯状の含水ゲル(1a)を得、得られた帯状の含水ゲル(1a)を重合ベルトの進行方向に対して幅方向に、切断長が300mmとなるように等間隔に連続して切断することで、短冊状の含水ゲル(1b)を得、スクリュー押出機に、得られた含水ゲル(1b)と、2.00質量%ポリエチレングリコール(重量平均分子量20000)とを、同時に供給しながらゲル粉砕し、固形分率が44質量%である粒子状含水ゲルPG(8)を得、得られた粒子状含水ゲルPG(8)を、加熱管付き回転型加熱装置を用いて乾燥し、加熱装置の取り出し口から排出された乾燥物を、冷風により、強制的に80℃以下に冷却した後、その冷却物を1段のロールミル(粉砕機)に供給して粉砕することにより粒度を調整して、得られた吸水性樹脂粉末(28)。」 イ 本件特許発明1について (ア)対比 本件特許発明1と甲3発明を対比する。 甲3発明における「アクリル酸」、「ポリエチレングリコールジアクリレート」、「吸水性樹脂粉末(28)」、「ポリエチレングリコール」は、それぞれ、本件特許発明1における「水溶性ビニルモノマー(a1)」、「架橋剤(b)」、「架橋重合体(A)を含有する」「吸水性樹脂粒子」、「ゲルブロッキング防止剤(c)」に相当する。 甲3発明における「吸水性樹脂粉末(28)」は、「ロールミル(粉砕機)に供給して粉砕」したものであるから、本件特許発明1における「不定形破砕状」との特定事項を満たす。 したがって、両者は次の点で一致する。 <一致点> 「水溶性ビニルモノマー(a1)及び架橋剤(b)を必須構成単位とする架橋重合体(A)を含有する吸水性樹脂粒子であって、粒子形状が不定形破砕状であり、ゲルブロッキング防止剤(c)を含有する、吸水性樹脂粒子。」 そして、両者は次の点で相違する。 <相違点3-1> 本件特許発明1においては、「表面架橋剤(d)により表面架橋された構造を有する」と特定されているのに対して、甲3発明においては、そのようには特定されていない点。 <相違点3-2> 本件特許発明1においては、「平均真球度(SPHT)が0.831~0.850であり、耐衝撃性試験後の平均真球度(SPHT)の変化幅が0~0.010である」と特定されているのに対して、甲3発明においては、そのようには特定されていない点。 <相違点3-3> 本件特許発明1においては、「Vortex法による吸収速度が45秒以下であり」と特定されているのに対して、甲3発明においては、そのようには特定されていない点。 (イ)判断 事案に鑑みて、相違点3-2について先に検討する。 甲3及び他の証拠には、甲3発明において相違点3-2に係る本件特許発明1の発明特定事項を採用することの動機付けとなる記載はない。 してみると、甲3発明において、相違点3-2に係る本件特許発明1の発明特定事項を採用することは当業者が容易に想到し得たものであるとはいえない。 したがって、その他の相違点については検討するまでもなく、本件特許発明1は、甲3発明並びに甲3及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 ウ 本件特許発明2ないし6について 本件特許発明2ないし6は、請求項1を直接又は間接的に引用して特定するものであり、本件特許発明1の発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明1と同様に判断される。 したがって、本件特許発明2ないし6は、甲3発明並びに甲3及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 エ 申立理由2-3(甲3に基づく進歩性)についてのむすび 本件特許発明1ないし6は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるとはいえず、本件特許の請求項1ないし6に係る特許は、同法第113条第2号に該当しないので、申立理由2-3によっては取り消すことはできない。 (4)申立理由3(実施可能要件)について ア 実施可能要件の判断基準 上記第2のとおり、本件特許発明1ないし6は物の発明であるところ、物の発明について実施可能要件を充足するためには、発明の詳細な説明に、当業者が、発明の詳細な説明の記載及び出願時の技術常識に基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、その物を生産し、使用することができる程度の記載があることを要する。 そこで検討する。 イ 実施可能要件の判断 発明の詳細な説明には、本件特許発明1ないし6の各発明特定事項について具体的に記載され、本件特許発明1ないし6の実施例についてもその製造方法を含め具体的に記載されている。 したがって、発明の詳細な説明に、当業者が、発明の詳細な説明の記載及び出願時の技術常識に基づき、過度の試行錯誤を要することなく、本件特許発明1ないし6を生産し、使用をすることができる程度の記載があるといえる。 よって、本件特許発明1ないし6に関して、発明の詳細な説明の記載は、実施可能要件を充足する。 ウ 特許異議申立人の主張について 特許異議申立人の上記第4 3の主張について検討する。 (ア)本件特許発明1~6(物の発明)について 本件特許の発明の詳細な説明の【0035】、【0093】、【0095】及び実施例には、Vortex吸収速度、SPHT及びその変化幅を所定の範囲とする制御方法について記載され、同【0096】及び【0110】には、それらの測定方法が記載されているから、上記イで述べたとおり、その実施において過度の試行錯誤を要するとはいえず、特許異議申立人の主張は採用できない。 (イ)ゲルブロッキング防止剤の定義について 甲1の比較例2には、特定の吸水性樹脂粉末の製造方法において、乾燥助剤溶液として塩化セチルトリメチルアンモニウムを添加した場合に、ドライヤーへの被乾燥物の付着や被乾燥物同士の凝集又は塊状化が発生したことが一例として示されているが、乾燥助剤溶液の量や添加する対象の性質によって得られる吸水性樹脂粉末の物性が異なることは技術常識であるところ、このような特定の例を以て、本件特許発明1ないし6におけるゲルブロッキング防止剤(c)が塩化セチルトリメチルアンモニウムである場合に、本件特許発明1ないし6が実施不可能であるとする具体的な証拠とすることはできず、また他に具体的な証拠ないし説明もないから、特許異議申立人の主張は採用できない。 (ウ)ゲルブロッキング防止剤の量について 発明の詳細な説明には、ゲルブロッキング防止剤の量が0.265重量%未満である場合に、本件特許発明1ないし6が技術的に実施不可能であるとまで記載されている訳ではないし、ゲルブロッキング防止剤の量が0.265重量%未満である場合に、本件特許発明1ないし6が実施不可能であることを示す具体的な証拠もないから、特許異議申立人の主張は採用できない。 (エ)攪拌型乾燥機について 甲3の実験例15には、特定の製造方法において攪拌乾燥機として流動層式乾燥機を使用した場合に、特定の吸水性樹脂粉末の含水ゲルの凝集を抑制することができなかったことが示されているに過ぎず、攪拌乾燥機として流動層式乾燥機を使用した場合に、本件特許発明1ないし6が実施不可能であることを示す具体的な証拠もないから、特許異議申立人の主張は採用できない。 (オ)分級について 当業者であれば、本件特許の発明の詳細な説明の【0077】及び出願時の技術常識に基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、本件特許発明1ないし6を実施可能であるから、特許異議申立人の主張は採用できない。 エ 申立理由3(実施可能要件)についてのむすび 本件特許の請求項1ないし6に係る特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるとはいえず、同法第113条第4号に該当しないので、申立理由3によっては取り消すことはできない。 (5)申立理由4(サポート要件) について ア サポート要件の判断基準 特許請求の範囲の記載が、サポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。 そこで、検討する。 イ サポート要件の判断 本件特許の特許請求の範囲の記載は上記第2のとおりである。 本件特許の発明の詳細な説明の【0007】によると、本件特許発明1の解決しようとする課題(以下、「発明の課題」という。)は、「吸水性樹脂粒子の製造直後から吸収性物品の使用に至るまで安定した吸収速度及び通液性能を維持し、かつ吸収性物品に使用したときに優れた風合いを発揮できる吸水性樹脂粒子及びその製造方法を提供すること」である。 そして、本件特許の発明の詳細な説明の【0008】、【0035】、【0078】、【0085】、【0093】、【0095】、【0100】ないし【0102】及び表1には、本件特許発明1ないし6に対応する記載がある。 さらに、本件特許の発明の詳細な説明の【0107】ないし【0133】には、水溶性ビニルモノマー(a1)及び架橋剤(b)を必須構成単位とする架橋重合体(A)を含有する樹脂粒子が表面架橋剤(d)により表面架橋された構造を有する吸水性樹脂粒子であって、粒子形状が不定形破砕状であり、平均真球度(SPHT)が0.800~0.900であり、耐衝撃性試験後の平均真球度(SPHT)の変化幅が0~0.015という条件を満たす吸水性樹脂粒子の実施形態について説明があり、【0009】には当該吸水性樹脂粒子による発明の効果が記載されている。 そうすると、当業者は、上記吸水性樹脂粒子により、吸水性樹脂粒子の製造直後から吸収性物品の使用に至るまで安定した吸収速度及び通液性能を維持し、かつ吸収性物品に使用したときに優れた風合いを発揮できる吸水性樹脂粒子を提供すること、すなわち、発明の課題を解決できると認識できる。 そして、本件特許発明1ないし6は、上記吸水性樹脂粒子をさらに限定したものである。 したがって、本件特許発明1ないし6は、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるといえ、本件特許発明1ないし6に関して、特許請求の範囲の記載はサポート要件に適合する。 ウ 特許異議申立人の主張について 特許異議申立人の上記第4 4の主張について検討する。 ・その他の理由について サポート要件の判断は、上記イのとおりに判断されるものであり、サポート要件の判断に実施可能要件違反であるかどうかは影響しないし、上記(4)のとおり、発明の詳細な説明の記載は実施可能要件を満たしているから、特許異議申立人の主張は採用できない。 エ 申立理由4(サポート要件)についてのむすび 本件特許発明1ないし6に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるとはいえず、同法第113条第4号に該当しないので、申立理由4によっては取り消すことはできない。 (6)申立理由5(明確性)について ア 明確性要件の判断基準 特許を受けようとする発明が明確であるかは、特許請求の範囲の記載だけではなく、願書に添付した明細書の記載及び図面を考慮し、また、当業者の出願時における技術常識を基礎として、特許請求の範囲の記載が、第三者の利益が不当に害されるほどに不明確であるか否かという観点から判断されるべきである。 そこで、検討する。 イ 明確性要件の判断 本件特許の特許請求の範囲の請求項1ないし6の記載自体に不明確な記載はなく、本件特許の発明の詳細な説明の記載とも整合する。 したがって、願書に添付した明細書の記載及び図面を考慮し、また、当業者の出願時における技術常識を基礎とすれば、本件特許発明1ないし6に関して、特許請求の範囲の記載が、第三者の利益が不当に害されるほどに不明確であるとはいえない。 よって、本件特許発明1ないし6は明確である。 ウ 特許異議申立人の主張について 特許異議申立人の上記第4 5の主張について検討する。 ・ゲルブロッキング防止剤について 本件特許発明1ないし6における「ゲルブロッキング防止剤」は、本件特許の発明の詳細な説明の【0035】ないし【0064】に記載のとおり明確であり、第三者の利益が不当に害されるほどに不明確であるとはいえないから、特許異議申立人の主張は採用できない。 エ 申立理由5についてのむすび したがって、本件特許の請求項1ないし6に係る特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない出願に対してされたものであるとはいえないので、同法第113条第4号に該当せず、申立理由5によっては取り消すことはできない。 第6 結語 以上のとおり、本件特許の請求項7ないし10に係る特許は、特許法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 また、本件特許の請求項1ないし6に係る特許は、取消理由及び特許異議申立書に記載した申立ての理由によっては取り消すことはできない。 また、他に本件特許の請求項1ないし6に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2023-700473

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