特許異議申立
2022-700524
吸水性樹脂粒子及びその製造方法
- 審判番号
- 2022-700524
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2017-026988
- 登録番号
- 6979770
- 請求日
- 2022年06月15日
- 審決日
- 2023年04月27日
- 公報発行日
- 2023年07月28日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】SDPグローバル株式会社
- 【権利者代理人】古谷 信也
- 【異議申立人】株式会社 日本触媒
- 【異議申立人代理人】山本 秀策
- 【異議申立人代理人】森下 夏樹
- 【異議申立人代理人】▲駒▼谷 剛志
- 【異議申立人代理人】山本 健策
- 【異議申立人代理人】本田 輝人
- 審判長/審判官
- 審判長 加藤 友也
- 審判官 ▲吉▼澤 英一
- 審判官 三上 晶子
- 分類
- P1651.113-YAA(C08J) / P1651.121-YAA(C08J) / P1651.536-YAA(C08J) / P1651.537-YAA(C08J)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法120条の8第1項特許法135条
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第120条の5第4項、特許法第29条第1項第3号、特許法第120条の5第5項、特許法第120条の5第9項、特許法第126条第7項、特許法第120条の5第2項、特許法第36条第4項第1号、特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第6項第2号、特許法第120条の8第1項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第6979770号発明「吸水性樹脂粒子及びその製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第6979770号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1、6〕、〔2-5〕について訂正することを認める。
特許第6979770号の請求項2ないし5に係る特許を維持する。
特許第6979770号の請求項1及び6に係る特許に対する特許異議の申立てを却下する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第6979770号(以下、「本件特許」という。)の請求項1ないし6に係る特許についての出願は、平成29年2月16日を出願日とする特許出願であって、令和3年11月18日にその特許権の設定登録(請求項の数6)がされ、同年12月15日に特許掲載公報が発行され、その後、その特許に対し、令和4年6月15日に特許異議申立人 株式会社 日本触媒(以下、「特許異議申立人」という。)により特許異議の申立て(対象請求項:全請求項)がされ、同年10月28日付けで取消理由及び審尋が通知され、同年12月21日に特許権者 SDPグローバル株式会社(以下、「特許権者」という。)より訂正の請求(以下、「本件訂正請求」という。)とともに意見書及び当該意見書に添付した回答書の提出がされ、令和5年1月13日付けで特許法第120条の5第5項に基づく訂正請求があった旨の通知を特許異議申立人に対して行ったところ、特許異議申立人から何ら応答がなかったものである。
第2 本件訂正請求について
1 請求の趣旨
本件訂正請求における請求の趣旨は、「特許第6979770号の特許請求の範囲を、本訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~6について訂正することを求める。」というものである。
2 訂正の適否についての判断
(1) 訂正の内容
本件訂正請求による訂正の内容は、以下のとおりである。(下線は、訂正箇所について合議体が付したものである。)
ア 訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1を削除する。
イ 訂正事項2
特許請求の範囲の請求項6を削除する。
ウ 訂正事項3
特許請求の範囲の請求項2において、「4級アンモニウム塩(C)が炭素数8~30のアルキル基を少なくとも1つ有するものである」とあるのを、「4級アンモニウム塩(C)が炭素数8~12のアルキル基を分子内に2個有するものである」と訂正する。
請求項2の記載を直接又は間接的に引用する請求項3ないし5も同様に訂正する。
エ 一群の請求項について
訂正前の請求項1及び6について、請求項6は請求項1の記載を引用して特定するものであるから、請求項1及び6は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である。
また、訂正前の請求項2ないし5について、請求項3ないし5はそれぞれ請求項2の記載を直接又は間接的に引用して特定するものであるから、請求項2ないし5は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である。
(2)訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
ア 訂正事項1及び2について
訂正事項1及び2は、特許請求の範囲の請求項1及び6を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、かつ、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてするものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
イ 訂正事項3について
訂正事項3による請求項2の訂正は、訂正前の請求項2に記載された「4級アンモニウム塩(C)」を、「炭素数8~12のアルキル基を分子内に2個有するもの」に限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、当該訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてするものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
請求項2の記載を直接又は間接的に引用する請求項3ないし5についても同様である。
(3)独立特許要件について
本件においては、訂正前の全ての請求項である請求項1ないし6に対して特許異議の申立てがされているので、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項の独立特許要件は課されない。
3 訂正についてのまとめ
以上のとおりであるから、本件訂正は特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5及び6項の規定に適合する。
したがって、本件訂正は適法なものであり、結論のとおり、本件特許の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1、6〕、〔2-5〕について訂正することを認める。
第3 本件特許発明
上記第2のとおりであるから、本件特許の請求項1ないし6に係る発明(以下、「本件特許発明1」ないし「本件特許発明6」という。また、総称して「本件特許発明」という。)は、それぞれ、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1ないし6に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】(削除)
【請求項2】
水溶性ビニルモノマー(a1)及び/又は加水分解により水溶性ビニルモノマー(a1)となるビニルモノマー(a2)、並びに架橋剤(b)を含む単量体組成物の架橋重合体(A)、還元剤(B)及び、架橋重合体(A)の重量に対して0.01~2重量%の4級アンモニウム塩(C)を含み、40℃80%Rh条件下での50日間促進試験後の黄色度(YI値)が20以下であり、還元剤(B)が無機硫黄系還元剤であり、4級アンモニウム塩(C)がアミン化合物を4級アンモニウム塩(C)の重量に基づいて、0.01~1重量%含む、吸水性樹脂粒子の製造方法であって、架橋重合体(A)に還元剤(B)を混合する工程を有し、前記混合工程の後、4級アンモニウム塩(C)を混合することを特徴とする吸水性樹脂粒子の製造方法であって、4級アンモニウム塩(C)が炭素数8~12のアルキル基を分子内に2個有するものである、前記製造方法。
【請求項3】
前記単量体組成物を水溶液重合して得られた含水ゲル状物である架橋重合体(A)を乾燥する工程を有する請求項2に記載の製造方法。
【請求項4】
4級アンモニウム塩(C)を前記乾燥工程後に混合する請求項3に記載の製造方法。
【請求項5】
還元剤(B)を前記乾燥工程前の含水ゲル状物である架橋重合体(A)に混合する請求項3又は4に記載の製造方法。
【請求項6】(削除)」
第4 特許異議申立書に記載した申立ての理由の概要
特許異議申立人が特許異議申立書において、請求項1ないし6に係る特許に対して申し立てた特許異議申立理由の概要(下記1ないし8)は、次のとおりである。
1 申立理由1(甲第1号証を主引例とする新規性・進歩性)
本件特許発明1ないし6は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第1号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、甲第1号証に記載された発明に基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであり、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、それらの発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
2 申立理由2(甲第2号証を主引例とする進歩性)
本件特許発明1ないし6は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第2号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、それらの発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
3 申立理由3(甲第3号証を主引例とする進歩性)
本件特許発明1ないし6は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第3号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、それらの発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
4 申立理由4(甲第6号証を主引例とする進歩性)
本件特許発明1ないし6は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第6号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、それらの発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
5 申立理由5(甲第13号証を主引例とする進歩性)
本件特許発明1ないし6は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第13号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、それらの発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
6 申立理由6(サポート要件)
本件特許の請求項1ないし6に係る特許は、下記(1)ないし(7)の点で特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。
(1)4級アンモニウム塩中のアミン濃度を所定範囲内に納める手段の開示がないため、本件特許の発明の詳細な説明は、本件特許発明1ないし6を実施するための手段の記載を欠くものである。
(2)本件特許発明1は、吸水性樹脂粒子中のアミン化合物の含有量の範囲を、架橋重合体の重量に対して0.000001~0.02重量%と規定しているが、比較例3においては、本件特許発明1におけるアミン化合物の含有量範囲の規定(0.000001%~0.02%)を充足する0.0006%のアミン化合物を含有しているが、その促進試験後のYI値は21であり、保管時の変色が無い吸水性樹脂粒子を提供するという課題を解決できない。本件特許発明2ないし6についても同様である。
(3)仮想実施例9の吸水性樹脂粒子は、比較例3の吸水性樹脂粒子にアンモニウム水溶液(1)を追加しただけのものであるが、アンモニウム水溶液(1)が変色防止効果を有するとは考えられないから、仮想実施例9の吸水性樹脂粒子のYI値は、比較例3の吸水性樹脂粒子のYI値よりも改善されることは考えられない。従って、本件特許明細書の比較例3を踏まえると、仮想実施例9のように、本件特許発明1に包含される吸水性樹脂粒子が「保管時の変色という課題」を解決できないことが明らかに理解される。本件特許発明1は、課題を解決できない範囲を包含しており、当業者は、本件特許発明が課題を解決できると理解することができない。本件特許発明2ないし6についても同様である。
(4)「保管時の変色という課題」という本件特許発明の課題について、実施例において課題が解決できることが確認されたのは、水溶性ビニルモノマーとしてアクリル酸を用いて、かつ架橋剤としてペンタエリスリトールトリアリルエーテルを用いた場合のみである。モノマーの種類が変われば重合した樹脂の性能が変わるのは当然であり、架橋剤の種類が変われば重合した樹脂の性能が変わるのは当然である。従って、アクリル酸とペンタエリスリトールトリアリルエーテルを用いた場合以外の樹脂について、例えば、少なくとも「保管時の変色という課題」という本件特許発明の課題について、本件特許明細書の実施例と同様の性能が達成されて課題を解決できると当業者が理解することはできない。
(5)「保管時の変色という課題」という本件特許発明の課題について、実施例において課題が解決できることが確認されたのは、還元剤として亜硫酸ナトリウムを用いた場合のみである。還元剤の種類が変われば還元力や還元特性が変わるのは当然であり、変色を防止する効果が変わるのは当然である。従って、亜硫酸ナトリウム以外の還元剤について、本件特許明細書の実施例と同様の性能が達成されて課題を解決できると当業者が理解することはできない。
(6)本件特許発明1の「C8-C30のアルキル基を含む4級アンモニウム塩(C)0.01~2重量%を含有する」ことについて、本件【0057】に開示される14種類および実施例で例示されるジデシルジメチルアンモニウム塩以外を含め、すべての4級アンモニウム塩(C)を0.01~2重量%使用することで本件課題(抗菌性による臭気抑制ならびに変色防止)を解決することはあり得ず、実施例で効果の確認されていない4級アンモニウム塩(C)を含む本件特許発明1は課題を解決しない範囲を含む。
(7)「架橋重合体(A)の重量に対して0.01~2重量%の4級アンモニウム塩(C)」との要件について、1重量%程度であれば効果があると言えるものの、1重量%未満では効果がないということが本願実施例、比較例から示されている。従って、4級アンモニウム塩(C)の含有量については、架橋重合体(A)の重量に対して1重量%未満の領域についてサポートされていない。
7 申立理由7(実施可能要件)
本件特許の請求項1ないし6に係る特許は、下記の点で特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。
上記6(1)ないし(7)と同様の点で、実施可能要件を充足しない。
8 申立理由8(明確性要件)
本件特許の請求項1ないし6に係る特許は、下記の点で特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。
架橋重合体(A)中のポリマー鎖に共有結合した酸基の少なくとも1つが、4級アンモニウムカチオンの対アニオン基X-となって塩を形成する場合、4級アンモニウム塩の量は、架橋重合体(A)の量よりも大きくなるので、本件特許請求項1に規定される「架橋重合体(A)の重量に対して0.01~2重量%の4級アンモニウム塩(C)」ではあり得ないことから、「架橋重合体(A)の重量に対して0.01~2重量%の4級アンモニウム塩(C)」は不明確である。
9 証拠方法
・甲第1号証:国際公開第91/03497号
・甲第2号証:特開平10-182311号公報
・甲第3号証:特開2000-79159号公報
・甲第4号証:特開2001-39802号公報
・甲第5号証:特開平10-182734号公報
・甲第6号証:特表2010-533766号公報
・甲第7号証:特表2008-535640号公報
・甲第8号証:特開2006-273738号公報
・甲第9号証:実験成績証明書
・甲第10号証:特開平10-120921号公報
・甲第11号証:国際公開第2016/117523号
・甲第12号証:本件特許の令和2年11月30日付の拒絶理由通知書
・甲第13号証:特開2003-206305号公報
・甲第14号証:特開平9-248454号公報
・甲第15号証:特開平11-43405号公報
・甲第16号証:特開2003-183996号公報
・甲第17号証:特開2003-212705号公報
・甲第18号証:本件特許の審査段階で提出された令和3年(2021年)1月27日付の意見書
証拠の表記は、おおむね特許異議申立書の記載にしたがった。
第5 令和4年10月28日付けで特許権者に通知した取消理由の概要
本件特許の請求項1ないし6に係る特許に対して、当審が令和4年10月28日付けで特許権者に通知した取消理由の概要は次の1及び2のとおりである。なお、取消理由は、申立理由のうち、申立理由1の一部を包含する。
取消理由1(甲第1号証を主引例とする新規性)
本件特許の請求項1及び6に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲第1号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるから、それらの発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
取消理由2(甲第1号証を主引例とする進歩性)
本件特許の請求項1ないし6に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲第1号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、それらの発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
第6 当審の判断
1 令和4年10月28日付けで特許権者に通知した取消理由についての判断
取消理由1及び2(甲第1号証を主引例とする新規性・進歩性)について
(1)甲第1号証の記載事項等
ア 甲第1号証の記載事項
甲第1号証には、「吸水性樹脂の製造方法」について、次の記載がある。
・「したがって、本発明の目的は、吸水性樹脂およびその新規な製造方法を提供することにある。
本発明の他の目的は、吸水特性に優れかつ残存モノマー含有量の低い吸水性樹脂およびこれを安定に操業性よく得るための製造方法を提供することにある。」(3ページ12~16行)
・「参考例
アクリル酸ナトリウム141部、アクリル酸36.1部およびΝ,Ν’-メチレンビスアクリルアミド0.093部を脱イオン水329部に溶解し、これに窒素ガスを吹き込んで溶存酸素を追いだした。このモノマーの水溶液を30℃に保った。次いで過硫酸ナトリウム0.3部およびl-アスコルビン酸0.01部を加えて静置重合し、ゲル状の含水重合体を得た。
これを150℃で熱風乾燥を行なった後、ハンマー型粉砕機にて粉砕し、20メッシュ金網で篩分けして20メッシュ通過物の吸水性樹脂粉末(a)を得た。吸水性樹脂粉末(a)中の残存モノマーは343ppmであった。なお、吸水性樹脂粉末(a)の含水率は4%であった。さらに、この吸水性樹脂粉末(a)100重量部にグリセリン1重量部、水4重量部およびエタノール4重量部からなる水性液を混合し、180℃で30分間加熱処理することにより表面部分および近傍が架橋処理された吸水性樹脂粉末(b)を得た。吸水性樹脂粉末(b)中の残存モノマーは360ppmであった。なお、吸水性樹脂粉末(b)の含水率は2%であった。
実施例1
参考例で得た吸水性樹脂粉末(b)100部に、添加剤(A)として二酸化ケイ素(日本アエロジル(株)製、アエロジル200)1.0部を混合した。還元性物質として亜硫酸水素ナトリウム0.05部を水30部、イソプロパノール2部に溶解し、還元性物質の水性液を調整した。この水性液を上記吸水性樹脂粉末(b)と二酸化ケイ素の混合物に高速回転パドル型混合機を用いて添加混合した。その後、さらに対流型熱風乾燥器を用いて70℃の温度で2時間加熱し、本発明の吸水性樹脂(1)を得た。吸水性樹脂(1)中の残存モノマーは、52ppm、低減率は86%であった。」(16ページ7行~17ページ14行)
・「実施例15
参考例で得た吸水性樹脂粉末(b)100部に、還元性物質として亜硫酸ナトリウム0.04部を溶解させた水30部、イソプロパノール2部からなる水性液にジアルキルスルホコハク酸ナトリウム(花王(株)製、ペレックスOT-P)1.0部をさらに添加し、得られた分散液を、高速回転パドル型混合機を用いて添加、混合した。その後、さらに流動床乾燥器を用いて90℃の温度で2時間加熱し、本発明の吸水性樹脂(15)を得た。吸水性樹脂(15)中の残存モノマーは83ppm、低減率は77%であった。」(21ページ11~20行)
・「実施例25~28
実施例15における吸水性樹脂粉末(b)に代えて、吸水性樹脂粉末(a)を用いて実施例15と同様の処理を行ない、実施例25とした。また、実施例25において添加剤(A)の種類、添加水量等を第3表に示したように変更した他は同様の操作を行ない、それぞれ実施例26~28とし、吸水性樹脂(26)~(28)を得た。 実施例25~28の結果を第3表に示した。」(25ページ1~8行)
・「
[図:0001399352000001.jpg]
」(第3表)
イ 甲第1号証に記載された発明
甲第1号証には、特に実施例28の記載によると、次の発明が記載されているものと認める。
「アクリル酸ナトリウム141部、アクリル酸36.1部およびΝ,Ν’-メチレンビスアクリルアミド0.093部を脱イオン水329部に溶解し、これに窒素ガスを吹き込んで溶存酸素を追いだし、このモノマーの水溶液を30℃に保ち、次いで過硫酸ナトリウム0.3部およびl-アスコルビン酸0.01部を加えて静置重合し、ゲル状の含水重合体を得、これを150℃で熱風乾燥を行なった後、ハンマー型粉砕機にて粉砕し、20メッシュ金網で篩分けして20メッシュ通過物の吸水性樹脂粉末(a)を得、吸水性樹脂粉末(a)100部に、還元性物質として亜硫酸ナトリウム0.04部を溶解させた水20部からなる水性液にラウリルトリメチルアンモニウムクロライド(花王(株)製、コータミン24P)2.0部をさらに添加し、得られた分散液を、高速回転パドル型混合機を用いて添加、混合した後、さらに流動床乾燥器を用いて90℃の温度で2時間加熱する、吸水性樹脂の製造方法。」(以下、「甲1方法発明」という。)
(2)対比・判断
ア 本件特許発明1及び6について
上記第2で述べたとおり、訂正により特許請求の範囲の請求項1及び6は削除された。そうすると本件特許発明1及び6については取消理由1及び2の対象は存在しない。
イ 本件特許発明2について
本件特許発明2と甲1方法発明とを対比する。
甲1方法発明の「アクリル酸ナトリウム」及び「アクリル酸」は、本件特許発明2の「水溶性ビニルモノマー(a1)及び/又は加水分解により水溶性ビニルモノマー(a1)となるビニルモノマー(a2)」に相当し、甲1方法発明の「Ν,Ν’-メチレンビスアクリルアミド」は、本件特許発明2の「架橋剤(b)」に相当し、甲1方法発明の「亜硫酸ナトリウム」は、本件特許発明2の「無機硫黄系還元剤」である「還元剤(B)」に相当し、甲1方法発明の「ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド(花王(株)製、コータミン24P)」は、本件特許発明2の「4級アンモニウム塩(C)」に相当する。
また、甲1方法発明の「ゲル状の含水重合体」及び「吸水性樹脂」は、本件特許発明2の「架橋重合体(A)」及び「吸水性樹脂粒子」に、それぞれ相当する。
さらに、甲1方法発明は、吸水性樹脂粉末(a)100部に対して、ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド(花王(株)製、コータミン24P)2.0部を添加していることから、本件特許発明2の「架橋重合体(A)の重量に対して0.01~2重量%の4級アンモニウム塩(C)を含み」との特定事項を満足する。
そうすると、両者は次の点で一致する。
<一致点>
「水溶性ビニルモノマー(a1)及び/又は加水分解により水溶性ビニルモノマー(a1)となるビニルモノマー(a2)、並びに架橋剤(b)を含む単量体組成物の架橋重合体(A)、還元剤(B)及び、架橋重合体(A)の重量に対して0.01~2重量%の4級アンモニウム塩(C)を含み、還元剤(B)が無機硫黄系還元剤である、吸水性樹脂粒子の製造方法であって、架橋重合体(A)に還元剤(B)を混合する工程を有」する「製造方法。」
そして、両者は次の点で相違する。
<相違点1-1>
本件特許発明2は、「40℃80%Rh条件下での50日間促進試験後の黄色度(YI値)が20以下である」のに対し、甲1方法発明は、そのような特定がない点。
<相違点1-2>
本件特許発明2は、「4級アンモニウム塩(C)がアミン化合物を4級アンモニウム塩(C)の重量に基づいて、0.01~1重量%含む」のに対し、甲1方法発明は、アミン化合物の含有量について特定されていない点。
<相違点1-3>
本件特許発明2は、架橋重合体(A)に還元剤(B)を混合する工程「の後、4級アンモニウム塩(C)を混合する」のに対し、甲1方法発明は、還元剤と4級アンモニウム塩とを含む分散液を、架橋重合体と混合している点。
<相違点1-4>
本件特許発明2は、「4級アンモニウム塩(C)が炭素数8~12のアルキル基を分子内に2個有するものである」のに対し、甲1方法発明は、そのような特定がない点。
そこで、事案に鑑み、相違点1-4について検討する。
甲第1号証には、「4級アンモニウム塩(C)が炭素数8~12のアルキル基を分子内に2個有するもの」についての記載はなく、甲1方法発明の「4級アンモニウム塩(C)が炭素数8~12のアルキル基を分子内に2個有するものである」ことを示す証拠もない。
そうすると、相違点1-4は、実質的な相違点である。
また、甲第1号証には、甲1方法発明において、相違点1-4に係る本件特許発明2の発明特定事項を採用する動機付けとなる記載はないし、他の提出された証拠にもそのような記載はない。
したがって、甲1方法発明において、相違点1-4に係る本件特許発明2の発明特定事項を採用することは、当業者が容易に想到し得たものであるとはいえない。
そして、本件特許発明2の奏する「保管時の黄変を防止し、耐黄変性に優れる。また、抗菌性にも優れる。」(【0007】)という効果は、甲1方法発明並びに甲第1号証及びその他の提出された証拠に記載された事項からみて、本件特許発明2の構成から当業者が予測できる範囲の効果を超える顕著なものである。
したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明2は、甲1方法発明並びに甲第1号証及びその他の提出された証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
ウ 本件特許発明3ないし5について
本件特許発明3ないし5は、請求項2を直接又は間接的に引用して特定するものであり、本件特許発明2の発明特定事項を全て有するものである。
そして、上記イで検討したとおり、本件特許発明2は甲1方法発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、本件特許発明2の発明特定事項を全て含む発明である本件特許発明3ないし5は、甲1方法発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(3)取消理由1及び2についてのまとめ
取消理由1及び2はその理由がない。
2 令和4年10月28日付けで特許権者に通知した取消理由以外の特許異議申立理由についての判断
取消理由において採用しなかった特許異議申立理由は次のとおりである。
・申立理由1(請求項2ないし5を対象とした甲第1号証を主引例とする新規性)
・申立理由2(甲第2号証を主引例とする進歩性)
・申立理由3(甲第3号証を主引例とする進歩性)
・申立理由4(甲第6号証を主引例とする進歩性)
・申立理由5(甲第13号証を主引例とする進歩性)
・申立理由6(サポート要件)
・申立理由7(実施可能要件)
・申立理由8(明確性要件)
以下、順に検討する。
(1)本件特許発明1及び6について
上記第2で述べたとおり、訂正により特許請求の範囲の請求項1及び6は削除された。そうすると本件特許発明1及び6については申立理由2ないし8の対象は存在しない。
(2)本件特許発明2ないし5について
ア 申立理由1(請求項2ないし5を対象とした甲第1号証を主引例とする新規性)について
(ア)本件特許発明2ないし5について
本件特許発明2ないし5と甲1方法発明とを対比すると、少なくとも上記1(2)イの相違点1-4の点で相違し、相違点1-4は上記1(2)イで検討したとおり、実質的な相違点である。
したがって、本件特許発明2ないし5は、甲1方法発明ではない。
(イ)申立理由1についてのまとめ
申立理由1はその理由がない。
イ 申立理由2(甲第2号証を主引例とする進歩性)について
(ア)甲第2号証に記載された発明
甲第2号証には、特に実施例1の記載によると、次の発明が記載されているものと認める。
「容量1リットルのガラス製反応容器にアクリル酸ナトリウム76.6g、アクリル酸23g、N,N'-メチレンビスアクリルアミド0.4gおよび脱イオン水295gを仕込み、攪拌・混合しながら内容物の温度を5℃に保ち、内容物に窒素を流入して溶存酸素量を1ppm以下とした後、過酸化水素の1%水溶液1g、アスコルビン酸の0.2%水溶液1.2gおよび2,2'-アゾビスアミジノプロパンジハイドロクロライドの2%水溶液2.4gを添加して重合を開始させ、約5時間重合することにより吸水性樹脂濃度25%の含水ゲル状重合体(1)を得、この含水ゲル状重合体(1)400部をニーダーで混練しながらジデシルジメチルアンモニウム炭酸塩の30%メタノール/水混合溶液(メタノール/水比=50/50質量%)3部を添加して均一に混練し、この混練物を90℃で減圧乾燥し、ピンミルで粉砕した後、850~150ミクロンの粒度が約95%となるように粒度調整する、抗菌性吸水剤の製造方法。」(以下、「甲2方法発明」という。)
(イ)本件特許発明2について
本件特許発明2と甲2方法発明とを対比する。
甲2方法発明の「抗菌性吸水剤」は、含水ゲル状重合体を含み、850~150ミクロンの粒度が約95%となるように粒度調整していることから、本件特許発明2の「吸水性樹脂粒子」に相当する。
甲2方法発明の「ジデシルジメチルアンモニウム炭酸塩」は、炭素数10のアルキル基であるデシル基を2個有していることから、本件特許発明2の「4級アンモニウム塩(C)が炭素数8~12のアルキル基を分子内に2個有するものである」との特定事項を満足するとともに、含水ゲル状重合体400部に対して、ジデシルジメチルアンモニウム炭酸塩の30%メタノール/水混合溶液(メタノール/水比=50/50質量%)3部、すなわちジデシルジメチルアンモニウム炭酸塩を0.9部添加していることから、本件特許発明2の「架橋重合体(A)の重量に対して0.01~2重量%の4級アンモニウム塩(C)を含み」との特定事項を満足する。
甲2方法発明は、「アクリル酸ナトリウム」、「アクリル酸」及び「N,N'-メチレンビスアクリルアミド」を重合することにより含水ゲル状重合体を得ていることから、本件特許発明2の「水溶性ビニルモノマー(a1)及び/又は加水分解により水溶性ビニルモノマー(a1)となるビニルモノマー(a2)、並びに架橋剤(b)を含む単量体組成物の架橋重合体(A)」との特定事項を満足する。
そうすると、両者は次の点で一致する。
<一致点>
「水溶性ビニルモノマー(a1)及び/又は加水分解により水溶性ビニルモノマー(a1)となるビニルモノマー(a2)、並びに架橋剤(b)を含む単量体組成物の架橋重合体(A)、及び、架橋重合体(A)の重量に対して0.01~2重量%の4級アンモニウム塩(C)を含」む、「吸水性樹脂粒子の製造方法であって、4級アンモニウム塩(C)が炭素数8~12のアルキル基を分子内に2個有するものである、前記製造方法。」
そして、両者は次の点で相違する。
<相違点2-1>
本件特許発明2は、「還元剤(B)」を含む、「還元剤(B)が無機硫黄系還元剤であ」るのに対し、甲2方法発明は、そのような特定がない点。
<相違点2-2>
本件特許発明2は、「40℃80%Rh条件下での50日間促進試験後の黄色度(YI値)が20以下である」のに対し、甲2方法発明は、そのような特定がない点。
<相違点2-3>
本件特許発明2は、「4級アンモニウム塩(C)がアミン化合物を4級アンモニウム塩(C)の重量に基づいて、0.01~1重量%含む」のに対し、甲2方法発明は、アミン化合物の含有量について特定されていない点。
<相違点2-4>
本件特許発明2は、「架橋重合体(A)に還元剤(B)を混合する工程を有し、前記混合工程の後、4級アンモニウム塩(C)を混合する」のに対し、甲2方法発明は、そのような特定がない点。
そこで、事案に鑑み、相違点2-3について検討する。
甲第2号証には、「4級アンモニウム塩(C)がアミン化合物を4級アンモニウム塩(C)の重量に基づいて、0.01~1重量%含む」ことについての記載はなく、甲2方法発明の「4級アンモニウム塩(C)がアミン化合物を4級アンモニウム塩(C)の重量に基づいて、0.01~1重量%含む」ことを示す証拠もない。
そうすると、相違点2-3は、実質的な相違点である。
また、甲第2号証には、甲2方法発明において、相違点2-3に係る本件特許発明2の発明特定事項を採用する動機付けとなる記載はないし、他の提出された証拠にもそのような記載はない。
したがって、甲2方法発明において、相違点2-3に係る本件特許発明2の発明特定事項を採用することは、当業者が容易に想到し得たものであるとはいえず、本件特許発明2の奏する効果は、本件特許発明2の構成から当業者が予測できる範囲の効果を超える顕著なものである。
したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明2は、甲2方法発明並びに甲第2号証及びその他の提出された証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(ウ)本件特許発明3ないし5について
本件特許発明3ないし5は、請求項2を直接又は間接的に引用して特定するものであり、本件特許発明2の発明特定事項を全て有するものである。
そして、上記(イ)で検討したとおり、本件特許発明2は甲2方法発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、本件特許発明2の発明特定事項を全て含む発明である本件特許発明3ないし5は、甲2方法発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(エ)申立理由2についてのまとめ
申立理由2はその理由がない。
ウ 申立理由3(甲第3号証を主引例とする進歩性)について
(ア)甲第3号証に記載された発明
甲第3号証には、特に実施例1の記載によると、次の発明が記載されているものと認める。
「容量1リットルのガラス製反応容器にアクリル酸ナトリウム76.6g、アクリル酸23g、N,N’-メチレンビスアクリルアミド0.5gおよび脱イオン水295gを仕込み、攪拌・混合しながら内容物の温度を5℃に保ち、内容物に窒素を流入して溶存酸素量を1ppm以下とした後、過酸化水素の1%水溶液1g、アスコルビン酸の0.2%水溶液1.2gおよび2,2'-アゾビスアミジノプロパンジハイドロクロライドの2%水溶液2.4gを添加して重合を開始させ、約5時間重合することにより吸水性樹脂濃度約25%の含水ゲル状重合体(I)を得、この含水ゲル状重合体(I)100部をニーダーで混練しながら、エチレングリコールジグリシジルエーテルの1%水溶液5部を添加して均一に混練した後、ジデシルジメチルアンモニウムグルコン酸塩の30%水溶液0.17部を添加して、均一に混練し、この混合物を90℃で減圧乾燥し、ピンミルで粉砕した後、150~850ミクロンの粒度が約95%となるように篩いにかけて粒度調整し、こうして得られた吸水剤に、微粉状カリウムみょうばん(大明化学工業株式会社製:タイエースK20、平均粒径;20μm、1%水溶液のpHは4.2)1.0部を添加し、30分間ナウターミキサーで混合する、消臭性/抗菌性吸水剤の製造方法。」(以下、「甲3方法発明」という。)
(イ)本件特許発明2について
本件特許発明2と甲3方法発明とを対比する。
甲3方法発明の「消臭性/抗菌性吸水剤」は、含水ゲル状重合体を含み、150~850ミクロンの粒度が約95%となるように篩いにかけて粒度調整していることから、本件特許発明2の「吸水性樹脂粒子」に相当する。
甲3方法発明の「ジデシルジメチルアンモニウムグルコン酸塩」は、炭素数10のアルキル基であるデシル基を2個有していることから、本件特許発明2の「4級アンモニウム塩(C)が炭素数8~12のアルキル基を分子内に2個有するものである」との特定事項を満足するとともに、含水ゲル状重合体100部に対して、ジデシルジメチルアンモニウムグルコン酸塩の30%水溶液0.17部、すなわちジデシルジメチルアンモニウムグルコン酸塩を0.051部添加していることから、本件特許発明2の「架橋重合体(A)の重量に対して0.01~2重量%の4級アンモニウム塩(C)を含み」との特定事項を満足する。
甲3方法発明は、「アクリル酸ナトリウム」、「アクリル酸」及び「N,N'-メチレンビスアクリルアミド」を重合することにより含水ゲル状重合体を得ていることから、本件特許発明2の「水溶性ビニルモノマー(a1)及び/又は加水分解により水溶性ビニルモノマー(a1)となるビニルモノマー(a2)、並びに架橋剤(b)を含む単量体組成物の架橋重合体(A)」との特定事項を満足する。
そうすると、両者は次の点で一致する。
<一致点>
「水溶性ビニルモノマー(a1)及び/又は加水分解により水溶性ビニルモノマー(a1)となるビニルモノマー(a2)、並びに架橋剤(b)を含む単量体組成物の架橋重合体(A)、及び、架橋重合体(A)の重量に対して0.01~2重量%の4級アンモニウム塩(C)を含」む、「吸水性樹脂粒子の製造方法であって、4級アンモニウム塩(C)が炭素数8~12のアルキル基を分子内に2個有するものである、前記製造方法。」
そして、両者は次の点で相違する。
<相違点3-1>
本件特許発明2は、「還元剤(B)」を含む、「還元剤(B)が無機硫黄系還元剤であ」るのに対し、甲3方法発明は、そのような特定がない点。
<相違点3-2>
本件特許発明2は、「40℃80%Rh条件下での50日間促進試験後の黄色度(YI値)が20以下である」のに対し、甲3方法発明は、そのような特定がない点。
<相違点3-3>
本件特許発明2は、「4級アンモニウム塩(C)がアミン化合物を4級アンモニウム塩(C)の重量に基づいて、0.01~1重量%含む」のに対し、甲3方法発明は、アミン化合物の含有量について特定されていない点。
<相違点3-4>
本件特許発明2は、「架橋重合体(A)に還元剤(B)を混合する工程を有し、前記混合工程の後、4級アンモニウム塩(C)を混合する」のに対し、甲3方法発明は、そのような特定がない点。
そこで、事案に鑑み、相違点3-3について検討する。
甲第3号証には、「4級アンモニウム塩(C)がアミン化合物を4級アンモニウム塩(C)の重量に基づいて、0.01~1重量%含む」ことについての記載はなく、甲3方法発明の「4級アンモニウム塩(C)がアミン化合物を4級アンモニウム塩(C)の重量に基づいて、0.01~1重量%含む」ことを示す証拠もない。
そうすると、相違点3-3は、実質的な相違点である。
また、甲第3号証には、甲3方法発明において、相違点3-3に係る本件特許発明2の発明特定事項を採用する動機付けとなる記載はないし、他の提出された証拠にもそのような記載はない。
したがって、甲3方法発明において、相違点3-3に係る本件特許発明2の発明特定事項を採用することは、当業者が容易に想到し得たものであるとはいえず、本件特許発明2の奏する効果は、本件特許発明2の構成から当業者が予測できる範囲の効果を超える顕著なものである。
したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明2は、甲3方法発明並びに甲第3号証及びその他の提出された証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(ウ)本件特許発明3ないし5について
本件特許発明3ないし5は、請求項2を直接又は間接的に引用して特定するものであり、本件特許発明2の発明特定事項を全て有するものである。
そして、上記(イ)で検討したとおり、本件特許発明2は甲3方法発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、本件特許発明2の発明特定事項を全て含む発明である本件特許発明3ないし5は、甲3方法発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(エ)申立理由3についてのまとめ
申立理由3はその理由がない。
エ 申立理由4(甲第6号証を主引例とする進歩性)について
(ア)甲第6号証に記載された発明
甲第6号証には、特に【0087】の半製品A及び実施例11の記載によると、次の発明が記載されているものと認める。
「撹拌機及び冷却コイルを備えたポリエチレン容器中に、25.0kgの50%NaOHと37kgの蒸留水を加えて、20℃に冷却し、次に、9.6kgの氷アクリル酸をその苛性溶液に加えて、溶液を20℃に再冷却し、47.8gのポリエチレングリコールモノアリルエーテルアクリレート、47.8gのエトキシル化トリメチロールプロパントリアクリレートSARTOMER(登録商標)454製品、及び19.2kgの氷アクリル酸を第一の溶液に加えて、次に4~6℃に冷却し、そのモノマー溶液に窒素を約10分間バブリングし、次に、モノマー溶液を7.7kgの回分で長方形のトレイ中に放出し、モノマータンクからトレイ中へ搬送されているモノマー溶液流中にエリソルビン酸ナトリウム溶液を注入することにより、各回分に対して、80gの1重量%のH2O2水溶液、120gの2重量%過硫酸ナトリウム水溶液、及び72gの0.5重量%エリソルビン酸ナトリウム水溶液をモノマー溶液流中に均質的に加え、投与されたモノマーを20分間で重合させ、得られたヒドロゲルを切り刻んで、Hobart 4M6工業用押し出し機で押し出して、次にProcter&Schwartz062型の空気吹き込み型オーブン内において175℃で、20インチ×40インチ穴あき金属トレイ上で、空気の上昇流で10分間、空気の下降流で6分間、5重量%未満の最終製品水分レベルまで乾燥させ、乾燥した材料をProdeva315-S型粉砕機内で粗粉砕し、MPI666-F3段ロールミル内で粉砕し、Minox MTS600DS3Vを用いてふるいにかけて、850μmより大きくて150μmより小さい粒子を除去して半製品Aを得、キッチンエイドミキサーセット内において、噴霧器により最低速度で、0.1Wt%の亜硫酸水素ナトリウムNaHSO3(Sigma-Aldrich社製ACS試薬品質、製品番号:243973)を含む50gの水溶液を、半製品A由来の約200gの乾燥粒子ポリマーにスプレーし、湿潤ポリマーを対流式オーブン内において176℃で30分間乾燥し、次に、Brinkmann-Retschミルを用いて乾燥したサンプルを粉砕し、次に、20及び100メッシュサイズのスクリーン間でコーティングした粉砕ポリマーをふるいにかけ、次に、20重量%の水溶液を用いて、1重量%エチレンカーボネート及び4重量%の水をスプレーすることにより、NaHSC3で処理した各サンプルを表面架橋させて、次に対流式オーブン内において190℃で30分間加熱し、次に、1000ppmのポリエチレングリコール8000(8000の平均分子量を有するポリエチレングリコール)及び5%の水で表面架橋した粒子材料を後処理する、超吸収性ポリマー組成物の製造方法。」(以下、「甲6方法発明」という。)
(イ)本件特許発明2について
本件特許発明2と甲6方法発明とを対比する。
甲6方法発明の「超吸収性ポリマー組成物」は、粉砕ポリマーをふるいにかけていることから、本件特許発明2の「吸水性樹脂粒子」に相当する。
甲6方法発明の「亜硫酸水素ナトリウムNaHSO3(Sigma-Aldrich社製ACS試薬品質、製品番号:243973)」は、本件特許発明2の「無機硫黄系還元剤」である「還元剤(B)」に相当する。
甲6方法発明は、「ポリエチレングリコールモノアリルエーテルアクリレート」、「エトキシル化トリメチロールプロパントリアクリレートSARTOMER(登録商標)454製品」及び「氷アクリル酸」を重合することによりヒドロゲルを得ていることから、本件特許発明2の「水溶性ビニルモノマー(a1)及び/又は加水分解により水溶性ビニルモノマー(a1)となるビニルモノマー(a2)、並びに架橋剤(b)を含む単量体組成物の架橋重合体(A)」との特定事項を満足する。
そうすると、両者は次の点で一致する。
<一致点>
「水溶性ビニルモノマー(a1)及び/又は加水分解により水溶性ビニルモノマー(a1)となるビニルモノマー(a2)、並びに架橋剤(b)を含む単量体組成物の架橋重合体(A)、還元剤(B)を含み、還元剤(B)が無機硫黄系還元剤であ」る「、吸水性樹脂粒子の製造方法。」
そして、両者は次の点で相違する。
<相違点4-1>
本件特許発明2は、「架橋重合体(A)の重量に対して0.01~2重量%の4級アンモニウム塩(C)」を含み、「4級アンモニウム塩(C)がアミン化合物を4級アンモニウム塩(C)の重量に基づいて、0.01~1重量%含」み、「4級アンモニウム塩(C)が炭素数8~12のアルキル基を分子内に2個有するものである」のに対し、甲6方法発明は、そのような特定がない点。
<相違点4-2>
本件特許発明2は、「40℃80%Rh条件下での50日間促進試験後の黄色度(YI値)が20以下である」のに対し、甲6方法発明は、そのような特定がない点。
<相違点4-3>
本件特許発明2は、「架橋重合体(A)に還元剤(B)を混合する工程を有し、前記混合工程の後、4級アンモニウム塩(C)を混合する」のに対し、甲6方法発明は、そのような特定がない点。
そこで、相違点4-1について検討する。
甲第6号証には、「4級アンモニウム塩(C)」を含むことについての記載はなく、甲6方法発明が「4級アンモニウム塩(C)」を含むこと、さらには「4級アンモニウム塩(C)がアミン化合物を4級アンモニウム塩(C)の重量に基づいて、0.01~1重量%含む」こと、及び「4級アンモニウム塩(C)が炭素数8~12のアルキル基を分子内に2個有するものである」ことを示す証拠もない。
そうすると、相違点4-1は、実質的な相違点である。
また、甲第6号証には、甲6方法発明において、相違点4-1に係る本件特許発明2の発明特定事項を採用する動機付けとなる記載はないし、他の提出された証拠にもそのような記載はない。
したがって、甲6方法発明において、相違点4-1に係る本件特許発明2の発明特定事項を採用することは、当業者が容易に想到し得たものであるとはいえず、本件特許発明2の奏する効果は、本件特許発明2の構成から当業者が予測できる範囲の効果を超える顕著なものである。
したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明2は、甲6方法発明並びに甲第6号証及びその他の提出された証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(ウ)本件特許発明3ないし5について
本件特許発明3ないし5は、請求項2を直接又は間接的に引用して特定するものであり、本件特許発明2の発明特定事項を全て有するものである。
そして、上記(イ)で検討したとおり、本件特許発明2は甲6方法発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、本件特許発明2の発明特定事項を全て含む発明である本件特許発明3ないし5は、甲6方法発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(エ)申立理由4についてのまとめ
申立理由4はその理由がない。
オ 申立理由5(甲第13号証を主引例とする進歩性)について
(ア)甲第13号証に記載された発明
甲第13号証には、特に実施例1の記載によると、次の発明が記載されているものと認める。
「撹拌機、還流冷却器、滴下ロート、温度計および窒素ガス導入管を備えた1000ml容の五つ口円筒型丸底フラスコにn-ヘプタンを500ml加え、これにHLBが3.0のショ糖脂肪酸エステル(界面活性剤:三菱化学株式会社製S-370)を0.92g添加して分散させ、昇温して界面活性剤を溶解後、55℃まで冷却し、上記とは別に、500ml容の三角フラスコに、80重量%アクリル酸水溶液92gを加え、これに、外部から冷却しつつ、30重量%水酸化ナトリウム水溶液102.2gを滴下して、アクリル酸の75モル%を中和し、アクリル酸の部分中和物を調製し、さらに、水50.2gと、重合開始剤の過硫酸カリウム0.11gと、架橋剤のエチレングリコールジグリシジルエーテル9.2mgを添加し、1段目重合用の単量体水溶液を調製し、この1段目重合用の単量体水溶液を、上記の五つ口円筒型丸底フラスコに、撹拌下で全量加えて分散させ、系内を窒素で十分に置換した後に昇温し、浴温を70℃に保持して、重合反応を1時間行った後、重合スラリー液を室温まで冷却し、さらに別の500ml容の三角フラスコに、80重量%アクリル酸水溶液119.1gを加え、冷却しつつ30重量%水酸化ナトリウム水溶液132.2gを滴下して、アクリル酸の75モル%を中和し、さらに水27.4g、過硫酸カリウム0.14g、エチレングリコールジグリシジルエーテル35.7mgを添加し、2段目重合用の単量体水溶液を調製し、氷水浴内で冷却し、この2段目重合用の単量体水溶液を、上記重合スラリー液に全量添加後、再び系内を窒素で十分に置換した後に昇温し、浴温を70℃に保持して、2段目の重合反応を2時間行い、重合終了後、n-ヘプタンに分散した含水ゲル状物に、3重量%亜硫酸ナトリウム水溶液3.52gを添加して、30分間撹拌した後、40重量%ジエチレントリアミン5酢酸5ナトリウム水溶液5.28gを撹拌下で添加し、その後、含水ゲル状物から、共沸脱水により水分を系外に除去し、得られたゲル状物に2重量%エチレングリコールジグリシジルエーテル水溶液8.44gを添加し、さらに水分およびn-ヘプタンを蒸留により除去して乾燥する、吸水性樹脂の製造方法。」(以下、「甲13方法発明」という。)
(イ)本件特許発明2について
本件特許発明2と甲13方法発明とを対比する。
甲13方法発明の「吸水性樹脂」は、本件特許発明2の「吸水性樹脂粒子」に相当する。
甲13方法発明の「亜硫酸ナトリウム水溶液」は、本件特許発明2の「無機硫黄系還元剤」である「還元剤(B)」に相当する。
甲13方法発明は、「アクリル酸の部分中和物」及び「架橋剤のエチレングリコールジグリシジルエーテル」を重合することにより含水ゲル状物を得ていることから、本件特許発明2の「水溶性ビニルモノマー(a1)及び/又は加水分解により水溶性ビニルモノマー(a1)となるビニルモノマー(a2)、並びに架橋剤(b)を含む単量体組成物の架橋重合体(A)」との特定事項を満足する。
そうすると、両者は次の点で一致する。
<一致点>
「水溶性ビニルモノマー(a1)及び/又は加水分解により水溶性ビニルモノマー(a1)となるビニルモノマー(a2)、並びに架橋剤(b)を含む単量体組成物の架橋重合体(A)、還元剤(B)を含み、還元剤(B)が無機硫黄系還元剤であ」る「、吸水性樹脂粒子の製造方法。」
そして、両者は次の点で相違する。
<相違点5-1>
本件特許発明2は、「架橋重合体(A)の重量に対して0.01~2重量%の4級アンモニウム塩(C)」を含み、「4級アンモニウム塩(C)がアミン化合物を4級アンモニウム塩(C)の重量に基づいて、0.01~1重量%含」み、「4級アンモニウム塩(C)が炭素数8~12のアルキル基を分子内に2個有するものである」のに対し、甲13方法発明は、そのような特定がない点。
<相違点5-2>
本件特許発明2は、「40℃80%Rh条件下での50日間促進試験後の黄色度(YI値)が20以下である」のに対し、甲13方法発明は、そのような特定がない点。
<相違点5-3>
本件特許発明2は、「架橋重合体(A)に還元剤(B)を混合する工程を有し、前記混合工程の後、4級アンモニウム塩(C)を混合する」のに対し、甲13方法発明は、そのような特定がない点。
そこで、相違点5-1について検討する。
甲第13号証には、「4級アンモニウム塩(C)」を含むことについての記載はなく、甲13方法発明が「4級アンモニウム塩(C)」を含むこと、さらには「4級アンモニウム塩(C)がアミン化合物を4級アンモニウム塩(C)の重量に基づいて、0.01~1重量%含む」こと、及び「4級アンモニウム塩(C)が炭素数8~12のアルキル基を分子内に2個有するものである」ことを示す証拠もない。
そうすると、相違点5-1は、実質的な相違点である。
また、甲第13号証には、甲13方法発明において、相違点5-1に係る本件特許発明2の発明特定事項を採用する動機付けとなる記載はないし、他の提出された証拠にもそのような記載はない。
したがって、甲13方法発明において、相違点5-1に係る本件特許発明2の発明特定事項を採用することは、当業者が容易に想到し得たものであるとはいえず、本件特許発明2の奏する効果は、本件特許発明2の構成から当業者が予測できる範囲の効果を超える顕著なものである。
したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明2は、甲13方法発明並びに甲第13号証及びその他の提出された証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(ウ)本件特許発明3ないし5について
本件特許発明3ないし5は、請求項2を直接又は間接的に引用して特定するものであり、本件特許発明2の発明特定事項を全て有するものである。
そして、上記(イ)で検討したとおり、本件特許発明2は甲13方法発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、本件特許発明2の発明特定事項を全て含む発明である本件特許発明3ないし5は、甲13方法発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(エ)申立理由5についてのまとめ
申立理由5は、その理由がない。
カ 申立理由6(サポート要件)について
(ア)サポート要件の判断基準
特許請求の範囲の記載が、サポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。
そこで、検討する。
(イ)サポート要件の判断
本件特許の特許請求の範囲の記載は上記第3のとおりである。
本件特許の発明の詳細な説明の【0002】ないし【0006】によると、本件特許発明の解決しようとする課題(以下、「発明の課題」という。)は「十分な吸収性能を発現するとともに、保管時の変色がなく、かつ排尿後、時間経過に伴う臭気の発生がない吸水性樹脂粒子の製造方法を提供する」ことである。
そして、本件特許の発明の詳細な説明の【0055】には、「還元剤(B)」と耐黄変性との関連性について記載され、【0064】には、「4級アンモニウム塩(C)」に含まれる「アミン化合物」の量と耐黄変性との関連性について記載され、【0065】には、「4級アンモニウム塩(C)」の含有量と抗菌性との関連性について記載され、「還元剤(B)」及び「4級アンモニウム塩(C)」を含有すること、及び「4級アンモニウム塩(C)」に含まれる「アミン化合物」の量についての条件を満たすことの技術的意味が具体的に記載されている。
さらに、本件特許の発明の詳細な説明の【0096】ないし【0123】には、「還元剤(B)」及び「4級アンモニウム塩(C)」を含有し、「4級アンモニウム塩(C)」に含まれる「アミン化合物」の量が特定の範囲である本件特許発明に係る「吸水性樹脂粒子」は、YI値、臭気試験、大腸菌抗菌性試験及びアンモニア産生菌抗菌性試験において、「4級アンモニウム塩(C)」を含有しない比較例1、「還元剤(B)」を含有しない比較例2及び「4級アンモニウム塩(C)」に含まれる「アミン化合物」の量が本件特許発明に係る範囲外である比較例3の吸水性樹脂粒子と比べて、優れていることを確認する記載もある。
そうすると、当業者は、「還元剤(B)」及び「4級アンモニウム塩(C)」を含有し、「4級アンモニウム塩(C)」に含まれる「アミン化合物」の量が特定の範囲である吸水性樹脂粒子の製造方法は、発明の課題を解決できると認識できる。
そして、本件特許発明2ないし5は、発明の課題を解決できると認識される特定事項をすべて含み、さらに限定したものである。
したがって、本件特許発明2ないし5は、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるといえ、本件特許発明2ないし5に関して、特許請求の範囲の記載はサポート要件に適合する。
(ウ)特許異議申立人の主張について
特許異議申立人は、上記第4 6(1)~(7)の主張をしているが、いずれの主張も、本件特許発明2ないし5の製造方法であっても上記課題を解決しないことを示す証拠をあげたものではなく、上記サポート要件の判断に影響するものではない。
(エ)申立理由6についてのまとめ
申立理由6は、その理由がない。
キ 申立理由7(実施可能要件)について
(ア)実施可能要件の判断基準
上記第3のとおり、本件特許発明2ないし5は物を生産する方法の発明であるところ、物を生産する方法の発明にあっては、当業者が明細書及び図面の記載並びに出願時の技術常識に基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、その方法を使用し、その方法により生産した物の使用等をできる程度の記載があることを要する。
そこで、検討する。
(イ)実施可能要件の判断
本件特許の明細書の発明の詳細な説明及び図面には、単量体組成物(【0010】ないし【0019】)、架橋重合体の重合方法(【0020】ないし【0029】)、還元剤(【0046】ないし【0055】)、4級アンモニウム塩(【0056】ないし【0065】)、吸水性樹脂粒子の製造方法(【0067】ないし【0089】)、黄色度(YI値)及びその測定方法(【0090】及び【0102】)、並びに4級アンモニウム塩のアミン化合物含量の測定方法(【0097】)が記載されており、また、具体的な実施例(【0105】ないし【0118】、【0122】及び【0123】)の記載もある。
したがって、本件特許発明2ないし5について、発明の詳細な説明に、当業者が、明細書及び図面の記載並びに出願時の技術常識に基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、その方法を使用し、その方法により生産した物の使用等をできる程度の記載があるといえる。
よって、本件特許発明2ないし5に関して、発明の詳細な説明の記載は実施可能要件に適合する。
(ウ)特許異議申立人の主張について
特許異議申立人は、上記第4 7の主張をしているが、上記(イ)で述べたとおり、本件特許の明細書には実施可能要件を満たす記載があり、上記主張は、本件特許発明2ないし5の製造方法が実施できないことを示す具体的な技術的証拠をあげたものではなく、上記実施可能要件の判断に影響するものではない。
(エ)申立理由7についてのまとめ
申立理由7は、その理由がない。
ク 申立理由8(明確性要件)について
(ア)明確性要件の判断基準
特許を受けようとする発明が明確であるかは、特許請求の範囲の記載だけではなく、願書に添付した明細書の記載及び図面を考慮し、また、当業者の出願時における技術常識を基礎として、特許請求の範囲の記載が、第三者の利益が不当に害されるほどに不明確であるか否かという観点から判断されるべきである。
そこで、検討する。
(イ)明確性要件の判断
本件特許の請求項2ないし5の記載は、上記第3のとおりであり、それ自体に不明確な記載はなく、明細書の記載とも整合する。
したがって、本件特許発明2ないし5に関して、特許請求の範囲の記載だけではなく、願書に添付した明細書の記載及び図面を考慮し、また、当業者の出願時における技術常識を基礎として、特許請求の範囲の記載が、第三者の利益が不当に害されるほどに不明確であるとはいえない。
(ウ)特許異議申立人の主張について
特許異議申立人の上記第4 8の主張について検討すると、上記(イ)で述べたとおり、本件特許の特許請求の範囲の記載は明確であり、上記主張が上記明確性要件の判断に影響するものではない。
(エ)申立理由8についてのまとめ
申立理由8は、その理由がない。
第7 結語
上記第6のとおり、本件特許の請求項2ないし5に係る特許は、取消理由及び特許異議申立書に記載した申立ての理由によっては、取り消すことはできない。
また、他に本件特許の請求項2ないし5に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
さらに、本件特許の請求項1及び6に係る特許は、訂正により削除されたため、特許異議申立人による請求項1及び6に係る特許異議の申立ては、申立ての対象が存在しないものとなったので、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。
よって、結論のとおり決定する。
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2022-700524