特許異議申立
2023-700424
移動体通行管理システム、及び移動体通行管理方法
- 審判番号
- 2023-700424
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2022-120142
- 登録番号
- 7161813
- 請求日
- 2023年04月25日
- 審決日
- 2025年02月12日
- 公報発行日
- 2025年05月30日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】株式会社Octa Robotics
- 【権利者代理人】弁理士法人サンネクスト国際特許事務所
- 【異議申立人】角田 朗
- 審判長/審判官
- 審判長 本庄 亮太郎
- 審判官 鈴木 貴雄
- 審判官 大山 健
- 分類
- P1651.121-YAA(G05D) / P1651.537-YAA(G05D)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法113条2号特許法113条4号特許法120条の8第1項特許法135条
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第9項、特許法第29条第2項、特許法第120条の5第2項、特許法第36条第6項第2号、特許法第120条の5第5項、特許法第36条第6項第1号、特許法第120条の5第7項、特許法第120条の5第4項、特許法第113条第2号、特許法第120条の8第1項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7161813号発明「移動体通行管理システム、及び移動体通行管理方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7161813号の明細書、特許請求の範囲及び図面を、令和6年9月27日提出の訂正請求書に添付された訂正明細書、訂正特許請求の範囲及び訂正図面のとおり、訂正後の請求項〔1~7〕、8について訂正することを認める。
特許第7161813号の請求項1~4、6~8に係る特許を維持する。
特許第7161813号の請求項5に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
1 特許掲載公報の発行までの経緯
特許第7161813号(以下「本件特許」という。)の請求項1~8に係る特許についての出願は、令和4年7月28日の出願であって、同年10月19日にその特許権の設定登録がされ、同月27日に特許掲載公報が発行された。
2 特許異議の申立て以降の経緯
本件特許についての特許異議の申立て以降の主な経緯は、次のとおりである。
(1)令和5年4月25日
特許異議申立人 角田 朗(以下「申立人」という。)による、本件特許の請求項1~8に係る特許に対する特許異議の申立て(申立てのために提出された特許異議申立書を、以下「申立書」という。)
(2)令和5年10月17日付け(発送日:同月20日)
取消理由の通知
(3)令和5年11月30日~同年12月6日(同年12月6日付け応対記録)
特許権者と当審との電話及び電子メールによる応対
(4)令和5年12月12日(受理日:同月13日)
特許権者 株式会社Octa Robotics(以下「特許権者」という。)による、意見書の提出、並びに、訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり訂正することを求める訂正の請求(請求された訂正を、以下「本件訂正1」という。)
(5)令和5年12月25日(発送日:令和6年1月4日)
訂正請求があった旨の通知(特許法第120条の5第5項)
(6)令和6年1月26日
申立人による、意見書(以下「申立人意見書1」という。)の電子特殊申請での提出
(7)令和6年2月15日付け(発送日:同月22日)
取消理由の通知<決定の予告>
(8)令和6年4月3日~同月4日(同月9日付け応対記録)
特許権者と当審との電話及び電子メールによる応対
(9)令和6年4月19日(受理日:同月22日)
特許権者による、訂正明細書、訂正特許請求の範囲及び訂正図面のとおり訂正することを求める訂正の請求(請求された訂正を、以下「本件訂正2」という。)
(10)令和6年5月1日(受理日:同月2日)
特許権者による、上申書の提出
(11)令和6年5月14日付け(発送日:同月16日)
訂正請求があった旨の通知(特許法第120条の5第5項)
(12)令和6年6月5日
申立人による、意見書(以下「申立人意見書2」という。)の電子特殊申請での提出
(13)令和6年7月23日付け(発送日:同年8月1日)
取消理由の通知<決定の予告>(通知された取消理由通知書を、以下「決定の予告2」という。)
(14)令和6年9月11日~同月19日(同月19日付け応対記録)
特許権者と当審との電話及び電子メールによる応対
(15)令和6年9月27日(受理日:同月30日)
特許権者による、意見書(以下「権者意見書3」という。)の提出、並びに、訂正明細書、訂正特許請求の範囲及び訂正図面のとおり訂正することを求める訂正の請求(請求のために提出された訂正請求書を、以下「訂正請求書3」という。また、訂正請求書3により請求された訂正を、以下「本件訂正3」という。)
(16)令和6年10月25日(受理日:同月28日)
特許権者による、権者意見書3を補正の対象とする手続補正書(方式)、及び訂正請求書3を補正の対象とする手続補正書(方式)の提出
(17)令和6年10月31日付け(発送日:同年11月6日)
訂正請求があった旨の通知(特許法第120条の5第5項)
(18)令和6年11月28日
申立人による、意見書(以下「申立人意見書3」という。)の電子特殊申請での提出
なお、本件訂正3の請求により、先にした本件訂正1及び本件訂正2の請求は、いずれも取り下げられたものとみなす(特許法第120条の5第7項)。
第2 本件訂正3の適否
1 本件訂正3の内容について
特許権者は、本件訂正3の請求により、本件特許の明細書、特許請求の範囲及び図面を、訂正請求書3に添付した訂正明細書、訂正特許請求の範囲及び訂正図面のとおり、訂正後の請求項1~8について訂正することを求めるところ、本件訂正3の内容は、以下のとおりである(訂正箇所に下線を付して示す。)。
<請求項1~7について>
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1の、
「自律して移動する移動体の通行を管理する移動体通行管理システムであって、
前記移動体を管理する運行管理サーバとは別に設けられたリソース管理サーバが、
前記移動体の通行に必要なリソースをリソースデータとして記憶する記憶部と、
前記移動体に対する前記リソースの割り当て状況を管理するリソース管理部と、
前記移動体からの要求を受け付けて前記リソースの新規割り当てを行い、前記移動体による利用が終了した場合に前記リソースを解放する利用要求処理部と、
を備え、
前記運行管理サーバは、前記リソース管理サーバから提供を受けた前記リソースデータと前記移動体の状況とを対応付けて、前記移動体の運行を管理することを特徴とする移動体通行管理システム。」
との記載を、
「自律して移動してタスクを実行する複数の移動体の通行を管理する移動体通行管理システムであって、
前記移動体の移動を管理する複数の運行管理サーバとは別に設けられたリソース管理サーバが、
前記移動体の通行に必要なリソースをリソースデータとして記憶する記憶部と、
前記移動体に対する前記リソースの割り当て状況を管理するリソース管理部と、
前記移動体からの要求を受け付けて前記リソースの新規割り当てを行い、前記移動体による利用が終了した場合に前記リソースを解放する利用要求処理部と、
を備え、
前記複数の運行管理サーバは、前記リソース管理サーバから提供を受けた前記リソースデータと、それぞれが管理する前記移動体の移動の状況とを対応付けて、前記移動体の移動を管理し、
前記リソースデータは、建物において前記移動体が通行するエリアを分割した複数のサブエリアを表すデータであり、
前記複数のサブエリアの各々は、面積を有し、前記移動体のサイズ及びタスクに応じて異なるサブエリアの組合せで割り当てが可能であり、
前記移動体は、自らの移動経路を探索し、自らのサイズ及びタスクと前記移動経路とに基づいて割り当てを要求するサブエリアを決定するものであり、自らが利用するサブエリアが1つで足りる場合にはいずれかのサブエリアを指定して前記リソース管理サーバに割り当てを要求し、自らのサイズに基づいて前記移動体が移動する方向に平行に隣接する複数のサブエリアの組合せを必要とする場合には前記サブエリアの組合せを同時に指定して前記リソース管理サーバに割り当てを要求し、自らのサイズに基づいては前記サブエリアの組合せを必要としない場合であっても自らのタスクに基づいて前記サブエリアの組合せを必要とする場合には前記サブエリアの組合せを同時に指定して前記リソース管理サーバに割り当てを要求し、前記リソース管理サーバから前記サブエリア又は前記サブエリアの組合せについて割り当てを受けることを特徴とする移動体通行管理システム。」
に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項2~4、6~7についても同様に訂正する。)。
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2の、
「請求項1に記載の移動体通行管理システムであって、
前記リソースデータは、建物において前記移動体が通行するエリアを分割したサブエリアに識別データを付与したデータであり、
前記サブエリアは、前記移動体の仕様及び/又はタスクに応じて異なる組合せで割り当てが可能であり、
前記移動体は、自らが利用するサブエリアを指定して割り当てを受けることを特徴とする移動体通行管理システム。」
との記載を、
「請求項1に記載の移動体通行管理システムであって、
前記リソースデータは、建物において前記移動体が通行するエリアを分割したサブエリアに識別データを付与したデータであることを特徴とする移動体通行管理システム。」
に訂正する(請求項2の記載を引用する請求項4についても同様に訂正する。)。
(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項3の、
「請求項1に記載の移動体通行管理システムであって、
前記リソースデータは、建物において前記移動体が通行するエリアを分割したサブエリアに識別データを付与したデータであり、
前記移動体は、自らが利用するサブエリアを指定して割り当てを要求し、
前記利用要求処理部は、
前記サブエリアに対して一度に一つの前記移動体にのみ利用許可を与える制御、
前記サブエリアに対して利用できる数を所定数に制限する制御、
前記サブエリアに対して特定の進入方向にのみ利用許可を与える制御のいずれかを行うことで、独立して稼働する複数の前記移動体の通行を交通整理することを特徴とする移動体通行管理システム。」
との記載を、
「請求項1に記載の移動体通行管理システムであって、
前記リソースデータは、建物において前記移動体が通行するエリアを分割したサブエリアに識別データを付与したデータであり、
前記利用要求処理部は、
前記サブエリアに対して一度に一つの前記移動体にのみ利用許可を与える制御、
前記サブエリアに対して利用できる数を所定数に制限する制御、
前記サブエリアに対して特定の進入方向にのみ利用許可を与える制御のいずれかを行うことで、独立して稼働する複数の前記移動体の通行を交通整理することを特徴とする移動体通行管理システム。」
に訂正する。
(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項5を削除する。
<請求項8について>
(5)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項8の、
「自律して移動する移動体の通行を管理する移動体通行管理方法であって、
前記移動体を管理する運行管理サーバとは別に設けられ、前記移動体の通行に必要なリソースをリソースデータとして記憶して管理するリソース管理サーバが、前記移動体から前記リソースの要求を受信するステップと、
前記リソース管理サーバが、他の移動体による利用状況を参照した結果、利用が可能である場合に前記要求されたリソースの利用を許可するステップと、
前記リソース管理サーバが、他の移動体による利用状況を参照した結果、利用が可能でない場合に前記要求されたリソースの利用を拒否するステップと、
を含み、
前記運行管理サーバは、前記リソース管理サーバから提供を受けた前記リソースデータと前記移動体の状況とを対応付けて、前記移動体の運行を管理することを特徴とする移動体通行管理方法。」
との記載を、
「自律して移動してタスクを実行する複数の移動体の通行を管理する移動体通行管理方法であって、
前記移動体の移動を管理する複数の運行管理サーバとは別に設けられ、前記移動体の通行に必要なリソースをリソースデータとして記憶して管理するリソース管理サーバが、前記移動体から前記リソースの要求を受信するステップと、
前記リソース管理サーバが、他の移動体による利用状況を参照した結果、利用が可能である場合に前記要求されたリソースの利用を許可するステップと、
前記リソース管理サーバが、他の移動体による利用状況を参照した結果、利用が可能でない場合に前記要求されたリソースの利用を拒否するステップと、
を含み、
前記複数の運行管理サーバは、前記リソース管理サーバから提供を受けた前記リソースデータと、それぞれが管理する前記移動体の移動の状況とを対応付けて、前記移動体の移動を管理し、
前記リソースデータは、建物において前記移動体が通行するエリアを分割した複数のサブエリアを表すデータであり、
前記複数のサブエリアの各々は、面積を有し、前記移動体のサイズ及びタスクに応じて異なるサブエリアの組合せで割り当てが可能であり、
前記移動体は、自らの移動経路を探索し、自らのサイズ及びタスクと前記移動経路とに基づいて割り当てを要求するサブエリアを決定するものであり、自らが利用するサブエリアが1つで足りる場合にはいずれかのサブエリアを指定して前記リソース管理サーバに割り当てを要求し、自らのサイズに基づいて前記移動体が移動する方向に平行に隣接する複数のサブエリアの組合せを必要とする場合には前記サブエリアの組合せを同時に指定して前記リソース管理サーバに割り当てを要求し、自らのサイズに基づいては前記サブエリアの組合せを必要としない場合であっても自らのタスクに基づいて前記サブエリアの組合せを必要とする場合には前記サブエリアの組合せを同時に指定して前記リソース管理サーバに割り当てを要求し、前記リソース管理サーバから前記サブエリア又は前記サブエリアの組合せについて割り当てを受けることを特徴とする移動体通行管理方法。」
に訂正する。
<明細書について>
(6)訂正事項6
明細書の段落【0042】の、
「通信部33は、建物リソース管理サーバ60やロボット運行管理サーバ70仲介サーバ10と通信する際に使用する通信インタフェースである。」
との記載を、
「通信部33は、建物リソース管理サーバ60やロボット運行管理サーバ70と通信する際に使用する通信インタフェースである。」
に訂正する。
(7)訂正事項7
明細書の段落【0049】の、
「走行制御部31eは、リソースデータと自装置の位置関係とを用い、ルート探索を行う(ステップS204)。その後、走行制御部31e及びメッセージ送受信部31cは、は、決定した移動経路に沿って走行制御する(ステップS205)。」
との記載を、
「走行制御部31eは、リソースデータと自装置の位置関係とを用い、ルート探索を行う(ステップS204)。その後、走行制御部31e及びメッセージ送受信部31cは、決定した移動経路に沿って走行制御する(ステップS205)。」
に訂正する。
<図面について>
(8)訂正事項8
図1に2つ記載された「A12」のうち、内周側の「A12」を「A22」に訂正する。
ア 特許掲載公報における図1
「
[図:0001422370000001.jpg]
」
イ 訂正図面における図1
「
[図:0001422370000002.jpg]
」
2 一群の請求項について
本件訂正3前の請求項1~7については、請求項2~7がそれぞれ請求項1の記載を直接的又は間接的に引用する関係にあって、訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。
したがって、請求項1~7に係る本件訂正3の訂正事項1~4は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である請求項〔1~7〕について、請求されたものである。
3 独立特許要件について
本件特許異議の申立ては、全ての請求項1~8を対象としているので、訂正事項1~8に関して、特許法第120条の5第9項において読み替えて準用する同法第126条第7項の独立特許要件は課されない。
4 訂正の目的の適否、新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否について
<一群の請求項〔1~7〕について>
(1)訂正事項1について
ア 訂正の目的について
(ア)訂正事項1は、本件訂正3前の請求項1における「自律して移動する移動体」との事項を「自律して移動してタスクを実行する移動体」に訂正し、以下同様に、「移動体の通行を管理する移動体通行管理システム」との事項を「複数の移動体の通行を管理する移動体通行管理システム」に、「前記移動体を管理する運行管理サーバ」との事項を「前記移動体の移動を管理する複数の運行管理サーバ」に、それぞれ訂正をすることを含む。また、訂正事項1は、「運行管理サーバ」に関して、本件訂正3前の「前記運行管理サーバは、前記リソース管理サーバから提供を受けた前記リソースデータと、前記移動体の状況とを対応付けて、前記移動体の運行を管理」するとの事項を、「前記複数の運行管理サーバは、前記リソース管理サーバから提供を受けた前記リソースデータと、それぞれが管理する前記移動体の移動の状況とを対応付けて、前記移動体の移動を管理」するに、訂正することを含む。当該訂正は、「移動体」、「移動体運行管理システム」、及び「運行管理サーバ」をより具体的に特定し、請求項1に係る発明をさらに限定するものである。
(イ)さらに、訂正事項1は、本件訂正3前の請求項1に、「前記リソースデータは、建物において前記移動体が通行するエリアを分割した複数のサブエリアを表すデータであり、
前記複数のサブエリアの各々は、面積を有し、前記移動体のサイズ及びタスクに応じて異なるサブエリアの組合せで割り当てが可能であり、
前記移動体は、自らの移動経路を探索し、自らのサイズ及びタスクと前記移動経路とに基づいて割り当てを要求するサブエリアを決定するものであり、自らが利用するサブエリアが1つで足りる場合にはいずれかのサブエリアを指定して前記リソース管理サーバに割り当てを要求し、自らのサイズに基づいて前記移動体が移動する方向に平行に隣接する複数のサブエリアの組合せを必要とする場合には前記サブエリアの組合せを同時に指定して前記リソース管理サーバに割り当てを要求し、自らのサイズに基づいては前記サブエリアの組合せを必要としない場合であっても自らのタスクに基づいて前記サブエリアの組合せを必要とする場合には前記サブエリアの組合せを同時に指定して前記リソース管理サーバに割り当てを要求し、前記リソース管理サーバから前記サブエリア又は前記サブエリアの組合せについて割り当てを受ける」との事項を追加して、「リソースデータ」及び「移動体」をより具体的に特定し、請求項1に係る発明をさらに限定するものである。
(ウ)したがって、訂正事項1は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
イ 新規事項の有無について
(ア)訂正事項1のうち、「自律して移動してタスクを実行する移動体」との事項に関しては、明細書の段落【0011】に「ロボット30は、自律して移動する移動体であり、運搬ロボット、掃除ロボット、警備ロボットなどである。ロボット30は、建物の内部を移動し、与えられたタスクを実行する。」と記載されている。
(イ)訂正事項1のうち、「複数の移動体の通行を管理する移動体通行管理システム」との事項に関しては、明細書の段落【0011】に「本実施例の移動体通行管理システムは、1又は複数のロボット30の通行を管理する。」と記載されている。
(ウ)訂正事項1のうち、「前記移動体の移動を管理する複数の運行管理サーバ」との事項に関しては、明細書の段落【0022】に「ロボット運行管理サーバ70は、1台又は複数台のロボット30の運行を管理するサーバである。一つの建物で、複数のロボット運行管理サーバ70が並行して動作していてもよい。」と記載されている。ここで、明細書における「ロボット30の運行を管理する」との記載と本件訂正3による「移動体の移動を管理する」との事項との関係について検討する。一般的に「運行」とは「交通機関が決まった路線を運転すること。」(広辞苑第6版)を意味するところ、本件特許の請求項1における「移動体」であるロボット30に当てはめると、明細書の段落【0014】の「ロボット30は、リソースデータを地図データとして用い、自身の移動経路を探索する。そして、ロボット30は、移動経路を構成するサブエリアについて、建物リソース管理サーバ60に対してリソース利用要求を送信する。」との記載や、段落【0022】の「ロボット30は、建物の中に所在する。ロボット30は、建物内を移動し、タスクを行う物理的実体である。」との記載、段落【0023】の「ロボット運行管理サーバ70は、ロボット管理データ及びリソースデータを記憶する。ロボット運行管理サーバ70が記憶するリソースデータは、建物リソース管理サーバ60から提供を受ける。ロボット管理データは、リソースデータと、各ロボット30の状況とを対応付けるデータである。」との記載、さらには、段落【0047】~【0049】のロボット30が決定した移動経路に沿って走行制御する旨の記載等を技術常識に照らして総合してみれば、「ロボット30の運行を管理する」とは、ロボット30に設定された経路上の移動に関する情報を記憶して管理することといえるから、訂正事項1における「移動体の移動を管理する」との本件訂正3は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「本件明細書等」という。)に記載した事項の範囲内においてするものであるといえる。
(エ)訂正事項1のうち、「前記複数の運行管理サーバは、前記リソース管理サーバから提供を受けた前記リソースデータと、それぞれが管理する前記移動体の移動の状況とを対応付けて、前記移動体の移動を管理」するとの事項に関しては、上記(ウ)の、特に段落【0023】に記載されている。
(オ)訂正事項1のうち、「前記リソースデータは、建物において前記移動体が通行するエリアを分割した複数のサブエリアを表すデータであり、
前記複数のサブエリアの各々は、面積を有し、前記移動体のサイズ及びタスクに応じて異なるサブエリアの組合せで割り当てが可能であり、」との事項に関しては、
本件訂正3前の請求項2に、
「前記リソースデータは、建物において前記移動体が通行するエリアを分割したサブエリアに識別データを付与したデータであり、
前記サブエリアは、前記移動体の仕様及び/又はタスクに応じて異なる組合せで割り当てが可能であり、」と記載され、
図1とともに、段落【0013】には、「図1に例示したリソースデータは、建物のあるフロアにおいて、ロボット30が通行するエリアを分割したサブエリアに識別データ(ID)を付与したデータである。フロアの出入り口には、IDが「A1」であるサブエリアA1が設定されている。また、サブエリアA11~A14とサブエリア21~24は、フロア内の廊下の一部である。なお、サブエリアA11~A14は廊下の外周側であり、サブエリアA21~A24は廊下の内周側である。サブエリアA2は廊下と出入り口を接続する。サブエリアA41はエレベーターであり、サブエリア42はエレベーターホールである。」と記載され、及び、
段落【0016】に「ここで、ロボット30は、自らのスペックやタスクの内容に基づいて、割り当てを要求するサブエリアを決定する。例えば、ロボット30のサイズが十分に小さければ、サブエリアA11又はサブエリアA21のいずれかについて割り当てを要求し、廊下を走行することができる。しかし、ロボット30のサイズが大きければ、サブエリアA11及びサブエリアA21の双方を同時に要求する必要が生じる。また、サイズが小さくとも廊下の清掃というタスクを実行するため、サブエリアA11及びサブエリアA21の双方を同時に要求することもあり得る。」と記載されている。また、図1から、サブエリアの各々が面積を有する領域であることが看取される。
(カ)訂正事項1のうち、「前記移動体は、自らの移動経路を探索し、自らのサイズ及びタスクと前記移動経路とに基づいて割り当てを要求するサブエリアを決定するものであり、自らが利用するサブエリアが1つで足りる場合にはいずれかのサブエリアを指定して前記リソース管理サーバに割り当てを要求し、自らのサイズに基づいて前記移動体が移動する方向に平行に隣接する複数のサブエリアの組合せを必要とする場合には前記サブエリアの組合せを同時に指定して前記リソース管理サーバに割り当てを要求し、自らのサイズに基づいては前記サブエリアの組合せを必要としない場合であっても自らのタスクに基づいて前記サブエリアの組合せを必要とする場合には前記サブエリアの組合せを同時に指定して前記リソース管理サーバに割り当てを要求し、前記リソース管理サーバから前記サブエリア又は前記サブエリアの組合せについて割り当てを受ける」との事項に関しては、
本件訂正3前の請求項3に「前記移動体は、自らが利用するサブエリアを指定して割り当てを要求し」と記載され(同様の事項は、段落【0014】、【0050】、図8にも記載されている。)、
本件訂正3前の請求項2に「前記移動体は、自らが利用するサブエリアを指定して割り当てを受ける」と記載され(同様の事項は、段落【0015】、【0051】、図8にも記載されている。)、及び、
上記(ウ)にて示した段落【0014】や、上記(オ)にて示した段落【0013】、【0016】、図1に記載された事項を技術常識に照らして総合してみれば、訂正事項1の当該事項についても、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであるといえる。
(キ)したがって、訂正事項1は、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてする訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項に適合するものである。
ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否について
訂正事項1は、上記アのとおり、本件訂正3前の請求項1に記載された事項を具体的に特定するものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではない。
したがって、訂正事項1は、実質的に特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項に適合するものである。
(2)訂正事項2~3について
ア 訂正の目的について
(ア)訂正事項2は、本件訂正3前の請求項2における、
「前記サブエリアは、前記移動体の仕様及び/又はタスクに応じて異なる組合せで割り当てが可能であり、
前記移動体は、自らが利用するサブエリアを指定して割り当てを受ける」
との事項を、訂正事項1によって実質的に請求項1において限定して特定する(上記(1)イ(オ)~(カ)を参照)ことに伴い、当該請求項1を引用する請求項2からその記載を削除するものである。
(イ)また、訂正事項3は、本件訂正3前の請求項3における、
「前記移動体は、自らが利用するサブエリアを指定して割り当てを要求し、」
との事項を、訂正事項1によって実質的に請求項1において限定して特定する(上記(1)イ(カ)を参照)ことに伴い、当該請求項1を引用する請求項3からその記載を削除するものである。
(ウ)したがって、訂正事項2~3は、請求項2及び請求項3の記載を、請求項1の記載との関係で整合させるものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものである。
イ 新規事項の有無について
訂正事項2~3は、上記アのとおり、訂正事項1により本件訂正3前の請求項2及び3に記載された事項を請求項1にて特定することに伴い、その記載を削除するものであって、新たな技術的事項が追加されるものではない。
したがって、訂正事項2~3は、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてする訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項に適合するものである。
ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否について
訂正事項2~3は、上記アのとおり、訂正事項1により本件訂正3前の請求項2及び3に記載された事項を請求項1にて特定することに伴い、その記載を削除するものであって、カテゴリーや対象、目的を変更するものではない。
したがって、訂正事項2~3は、実質的に特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項に適合するものである。
(3)訂正事項4について
訂正事項4は、本件訂正3前の請求項5を削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
また、訂正事項4は、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてする訂正であり、実質的に特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものにも該当しないことは明らかであるから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5~6項に適合するものである。
<請求項8について>
(4)訂正事項5について
訂正事項5は、本件訂正3前の方法の発明(移動体通行管理方法)である請求項8に対して、実質的に本件訂正3前の物の発明(移動体通行管理システム)である請求項1を訂正する訂正事項1と同様の事項にて具体的に特定し、請求項8に係る発明をさらに限定するものである。したがって、訂正事項5は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
また、訂正事項5は、訂正事項1と同様に、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてする訂正であり、実質的に特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものにも該当しないから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5~6項に適合するものである。
<明細書、図面について(請求項1~8に関係する訂正)>
(5)訂正事項6
ア 訂正の目的について
訂正事項6は、本件訂正3前の段落【0042】における、
「通信部33は、建物リソース管理サーバ60やロボット運行管理サーバ70仲介サーバ10と通信する際に使用する通信インタフェースである。」
との記載から、「仲介サーバ10」を削除する訂正をすることで、「ロボット運行管理サーバ70仲介サーバ10と通信する」との誤記を「ロボット運行管理サーバ70と通信する」に訂正するものである。
したがって、訂正事項6は、特許法第120条の5第2項ただし書第2号に掲げる「誤記(又は誤訳)の訂正」を目的とするものである。
イ 新規事項の有無について
訂正事項6は、「ロボット運行管理サーバ70仲介サーバ10と通信する」との誤記を「ロボット運行管理サーバ70と通信する」に訂正するものであるところ、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「本件当初明細書等」という。)には、段落【0042】以外に「仲介サーバ10」についての記載がないことから、当該記載が誤記であることは明らかである。
他方、本件当初明細書等の図2においては、「ロボット30」と「建物リソース管理サーバ60」との間、及び、「建物リソース管理サーバ60」と「ロボット運行管理サーバ70」との間に、それぞれ両方向矢印が図示され、段落【0030】の「建物リソース管理サーバ60」の「通信部63」に関する記載を併せてみれば、それぞれの間では通信がなされることが明らかである一方、「ロボット30」と「ロボット運行管理サーバ70」との間には矢印が示されていない。そのため、「ロボット30」と「ロボット運行管理サーバ70」との間で通信されるのか、すなわち「(ロボット30)の通信部33」が「ロボット運行管理サーバ70」と通信する際に使用する通信インタフェースであるかは、本件当初明細書等の段落【0042】以外では明記されていない。
しかしながら、一般的に「ロボット30」と「建物リソース管理サーバ60」との間、及び、「建物リソース管理サーバ60」と「ロボット運行管理サーバ70」との間での通信が可能であるならば、「ロボット30」と「ロボット運行管理サーバ70」との間でも通信が可能であることは、技術常識に照らせば自明な事項であるといえ、「ロボット30」と「ロボット運行管理サーバ70」との間でどのような情報が送受信されるかまでは、本件当初明細書等にて説明されていないものの、本件訂正3前の段落【0042】は、「(ロボット30)の通信部33」が「建物リソース管理サーバ60」や「ロボット運行管理サーバ70」と通信する際に使用する通信インタフェースであることを意図して記載したものであると解釈される。
したがって、訂正事項6は、本件当初明細書等に記載した事項の範囲内においてする訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項に適合するものである。
ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否について
訂正事項6は、上記アのとおり、明細書中の誤記を単に訂正するものであって、特許請求の範囲に記載された発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではない。
したがって、訂正事項6は、実質的に特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項に適合するものである。
エ 関係する請求項についての説明
訂正事項6は、誤記を訂正することを目的とするものであり、一群の請求項〔1~7〕、請求項8に関係する訂正である。
したがって、訂正事項6は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第4項に適合するものである。
(6)訂正事項7
ア 訂正の目的について
訂正事項7は、本件訂正3前の段落【0049】における「走行制御部31e及びメッセージ送受信部31cは、は、」との記載を、「走行制御部31e及びメッセージ送受信部31cは、」に訂正するものであって、誤って重複して記載された助詞の一方を削除するものである。
したがって、訂正事項7は、特許法第120条の5第2項ただし書第2号に掲げる「誤記(又は誤訳)の訂正」を目的とするものである。
イ 新規事項の有無について
訂正事項7は、本件当初明細書等の段落【0050】~【0051】、図8に記載されている走行制御について、段落【0049】において誤って重複して記載された助詞を正しく訂正するものである。
したがって、訂正事項7は、本件当初明細書等に記載した事項の範囲内においてする訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項に適合するものである。
ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否について
訂正事項7は、上記アのとおり、明細書中の誤記を単に訂正するものであって、特許請求の範囲に記載された発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではない。
したがって、訂正事項7は、実質的に特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項に適合するものである。
エ 関係する請求項についての説明
訂正事項7は、誤記を訂正することを目的とするものであり、一群の請求項〔1~7〕、請求項8に関係する訂正である。
したがって、訂正事項7は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第4項に適合するものである。
(7)訂正事項8
ア 訂正の目的について
訂正事項8は、本件当初明細書等の段落【0013】に「なお、サブエリアA11~A14は廊下の外周側であり、サブエリアA21~A24は廊下の内周側である。」と記載されるものの、本件訂正3前の図1には符号「A12」が2つ記載される一方「A22」が存在せず、廊下の内周側には符号A21、A12、A23、A24が付されているため、図1において、内周側の「A12」を正しい符号である「A22」に訂正するものである。
したがって、訂正事項8は、特許法第120条の5第2項ただし書第2号に掲げる「誤記(又は誤訳)の訂正」を目的とするものである。
イ 新規事項の有無について
訂正事項8は、本件当初明細書等の段落【0013】に「なお、サブエリアA11~A14は廊下の外周側であり、サブエリアA21~A24は廊下の内周側である。」と記載される。
したがって、訂正事項8は、本件当初明細書等に記載した事項の範囲内においてする訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項に適合するものである。
ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否について
訂正事項8は、上記アのとおり、図面中の誤記を単に訂正するものであって、特許請求の範囲に記載された発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではない。
したがって、訂正事項8は、実質的に特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項に適合するものである。
エ 関係する請求項についての説明
訂正事項8は、誤記を訂正することを目的とするものであり、一群の請求項〔1~7〕、請求項8に関係する訂正である。
したがって、訂正事項8は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第4項に適合するものである。
5 小括
上記4(1)~(7)のとおり、訂正事項1~8に係る本件訂正3は、特許法第120条の5第2項ただし書第1~3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第4~6項の規定に適合する。
よって、本件特許の明細書、特許請求の範囲及び図面を、訂正請求書3に添付された訂正明細書、訂正特許請求の範囲及び訂正図面のとおり、本件訂正3後の請求項〔1~7〕、8について訂正することを認める。
第3 本件発明
上記第2のとおり本件訂正3は認められることから、本件特許の請求項1~8に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」~「本件発明8」という。)は、訂正請求書3に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1~8に記載された、以下の事項により特定されるとおりのものである。
「【請求項1】
自律して移動してタスクを実行する複数の移動体の通行を管理する移動体通行管理システムであって、
前記移動体の移動を管理する複数の運行管理サーバとは別に設けられたリソース管理サーバが、
前記移動体の通行に必要なリソースをリソースデータとして記憶する記憶部と、
前記移動体に対する前記リソースの割り当て状況を管理するリソース管理部と、
前記移動体からの要求を受け付けて前記リソースの新規割り当てを行い、前記移動体による利用が終了した場合に前記リソースを解放する利用要求処理部と、
を備え、
前記複数の運行管理サーバは、前記リソース管理サーバから提供を受けた前記リソースデータと、それぞれが管理する前記移動体の移動の状況とを対応付けて、前記移動体の移動を管理し、
前記リソースデータは、建物において前記移動体が通行するエリアを分割した複数のサブエリアを表すデータであり、
前記複数のサブエリアの各々は、面積を有し、前記移動体のサイズ及びタスクに応じて異なるサブエリアの組合せで割り当てが可能であり、
前記移動体は、自らの移動経路を探索し、自らのサイズ及びタスクと前記移動経路とに基づいて割り当てを要求するサブエリアを決定するものであり、自らが利用するサブエリアが1つで足りる場合にはいずれかのサブエリアを指定して前記リソース管理サーバに割り当てを要求し、自らのサイズに基づいて前記移動体が移動する方向に平行に隣接する複数のサブエリアの組合せを必要とする場合には前記サブエリアの組合せを同時に指定して前記リソース管理サーバに割り当てを要求し、自らのサイズに基づいては前記サブエリアの組合せを必要としない場合であっても自らのタスクに基づいて前記サブエリアの組合せを必要とする場合には前記サブエリアの組合せを同時に指定して前記リソース管理サーバに割り当てを要求し、前記リソース管理サーバから前記サブエリア又は前記サブエリアの組合せについて割り当てを受けることを特徴とする移動体通行管理システム。
【請求項2】
請求項1に記載の移動体通行管理システムであって、
前記リソースデータは、建物において前記移動体が通行するエリアを分割したサブエリアに識別データを付与したデータであることを特徴とする移動体通行管理システム。
【請求項3】
請求項1に記載の移動体通行管理システムであって、
前記リソースデータは、建物において前記移動体が通行するエリアを分割したサブエリアに識別データを付与したデータであり、
前記利用要求処理部は、
前記サブエリアに対して一度に一つの前記移動体にのみ利用許可を与える制御、
前記サブエリアに対して利用できる数を所定数に制限する制御、
前記サブエリアに対して特定の進入方向にのみ利用許可を与える制御のいずれかを行うことで、独立して稼働する複数の前記移動体の通行を交通整理することを特徴とする移動体通行管理システム。
【請求項4】
請求項2に記載の移動体通行管理システムであって、
前記リソース管理部は、前記リソースデータを前記移動体に提供し、
前記移動体は、前記リソースデータを用いて移動経路を探索し、前記移動経路を構成するサブエリアについて割り当てを要求することを特徴とする移動体通行管理システム。
【請求項5】(削除)
【請求項6】
請求項1に記載の移動体通行管理システムであって、
前記利用要求処理部は、前記リソースを前記移動体に割り当てる場合に、当該リソースの利用条件を前記移動体に通知し、
前記利用条件は、最大制限速度、最大音量、最大光度、時刻によって変更される制限のうち少なくともいずれかを含むことを特徴とする移動体通行管理システム。
【請求項7】
請求項1に記載の移動体通行管理システムであって、
前記記憶部は、前記移動体が通行するエリアに配置されたマーカーの位置情報と当該マーカーの識別データとを対応付けたマーカーデータをさらに記憶し、
前記移動体から前記マーカーデータの識別情報を指定した問い合わせを受けた場合に、対応するマーカーの位置情報を提供するマーカー管理部をさらに備えたことを特徴とする移動体通行管理システム。
【請求項8】
自律して移動してタスクを実行する複数の移動体の通行を管理する移動体通行管理方法であって、
前記移動体の移動を管理する複数の運行管理サーバとは別に設けられ、前記移動体の通行に必要なリソースをリソースデータとして記憶して管理するリソース管理サーバが、前記移動体から前記リソースの要求を受信するステップと、
前記リソース管理サーバが、他の移動体による利用状況を参照した結果、利用が可能である場合に前記要求されたリソースの利用を許可するステップと、
前記リソース管理サーバが、他の移動体による利用状況を参照した結果、利用が可能でない場合に前記要求されたリソースの利用を拒否するステップと、
を含み、
前記複数の運行管理サーバは、前記リソース管理サーバから提供を受けた前記リソースデータと、それぞれが管理する前記移動体の移動の状況とを対応付けて、前記移動体の移動を管理し、
前記リソースデータは、建物において前記移動体が通行するエリアを分割した複数のサブエリアを表すデータであり、
前記複数のサブエリアの各々は、面積を有し、前記移動体のサイズ及びタスクに応じて異なるサブエリアの組合せで割り当てが可能であり、
前記移動体は、自らの移動経路を探索し、自らのサイズ及びタスクと前記移動経路とに基づいて割り当てを要求するサブエリアを決定するものであり、自らが利用するサブエリアが1つで足りる場合にはいずれかのサブエリアを指定して前記リソース管理サーバに割り当てを要求し、自らのサイズに基づいて前記移動体が移動する方向に平行に隣接する複数のサブエリアの組合せを必要とする場合には前記サブエリアの組合せを同時に指定して前記リソース管理サーバに割り当てを要求し、自らのサイズに基づいては前記サブエリアの組合せを必要としない場合であっても自らのタスクに基づいて前記サブエリアの組合せを必要とする場合には前記サブエリアの組合せを同時に指定して前記リソース管理サーバに割り当てを要求し、前記リソース管理サーバから前記サブエリア又は前記サブエリアの組合せについて割り当てを受けることを特徴とする移動体通行管理方法。」
第4 申立人による申立ての理由及び意見の内容
1 申立書における申立ての理由は以下のとおりである。
(1)特許法第29条第2項(申立書第7~47ページ)
請求項1~8
証拠:甲第1~10号証
(2)特許法第36条第6項第1号(申立書第47~48ページ)
請求項1~8
(3)特許法第36条第6項第2号(申立書第48~49ページ)
請求項1~8
2 申立人意見書1による意見の内容は以下のとおりである。
(1)訂正要件違反(申立人意見書1第3~4ページ)
本件訂正1の訂正事項1
(なお、訂正要件に係る当審の判断は、上記第2のとおりである。)
(2)特許法第29条第2項(申立人意見書1第4~10ページ)
本件訂正1後の請求項1~4、6~8に係る発明
(3)特許法第36条第6項第2号(申立人意見書1第10~11ページ)
本件訂正1後の請求項1~4、6~8に係る発明
3 申立人意見書2による意見の内容は以下のとおりである。
特許法第29条第2項(申立人意見書2第3~6ページ)
本件訂正2後の請求項1~4、6~8に係る発明
4 申立人意見書3による意見の内容は以下のとおりである。
特許法第29条第2項(申立人意見書3第3~7ページ)
本件発明1~4、6~8
5 証拠方法(書証)
(1)申立書に添付された証拠方法
甲第1号証:平山紀之ほか、“多種多様な移動ロボットの共存を実現するシステムアーキテクチャ”、ロボティクス・メカトロニクス講演会 2022、一般社団法人 日本機械学会 ロボティクス・メカトロニクス部門、2022年6月2日、p.IP1-P09(1)~(4)
甲第2号証:ロボティクス・メカトロニクス講演会2022講演概要集
甲第3号証:ロボティクス・メカトロニクス講演会2022のWEBページ(「論文投稿」に関するページ)
甲第4号証:特開2020-149370号公報
甲第5号証:国際公開第2021/177377号
甲第6号証:特開2022-83144号公報
甲第7号証:特開平2-309406号公報
甲第8号証:特表2009-541177号公報
甲第9号証:山本大介ほか、“自律移動ロボットの地図仕様標準化について”、ロボティクス・メカトロニクス講演会 2021、一般社団法人 日本機械学会 ロボティクス・メカトロニクス部門、2021年6月、p.IP2-D04(1)~(4)
甲第10号証:「位置情報基盤を構成するパブリックタグ情報共有のための標準仕様」、国土交通省 国土地理院 測地部、平成31年3月18日、p.3
(甲第1号証等を、以下「甲1」等という。また甲2~甲3は、甲1が、一般社団法人 日本機械学会 ロボティクス・メカトロニクス部門が主催した、ロボティクス・メカトロニクス講演会 2022において、2022年6月2日付け講演の際に配布されたものであることを示すための証拠である。)
(2)申立人意見書2に添付された証拠方法
参考資料1:特開2022-18224号公報
参考資料2:国際公開第2018/043180号
参考資料3:特開2021-96602号公報
参考資料4:米国特許出願公開第2022/0050468号明細書
(参考資料1等を、以下「参考1」等という。)
第5 決定の予告2における取消理由の概要
決定の予告2における、本件特許の本件訂正2後の請求項1~4、6~8に係る特許に対する取消理由の要旨は、以下のとおりである。
<理由1:進歩性について>
本件特許の本件訂正2後の請求項1~4、6~8に係る発明は、甲1に記載された発明、並びに甲4及び参考1に記載された技術的事項に基づいて、本件特許の出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、当該請求項1~4、6~8に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
ここで、本件発明1~4、6~8が、決定の予告2にて示した上記理由1(進歩性)の取消理由を有するかについて、以下の第6欄にて当審の判断を示す。なお、先の申立人意見書2において、実質的に新たな証拠方法として参考1~4が提示されているが、本件訂正2により追加された事項についての証拠方法であって、本件訂正2の内容に付随して提出されたものであり、本件訂正3の内容にも関連するため、当審の判断は、参考1~4も踏まえて行う(審判便覧67-05.4の1.(2))。
第6 理由1(進歩性:特許法第29条第2項)についての当審の判断
1 本件発明1について
(1)本件発明1の認定
本件発明1は、上記第3のとおり、訂正請求書3に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものである。
(2)甲1発明Aの認定
ア 甲1には、多種多様な移動ロボットの共存を実現するシステムアーキテクチャに関して、以下のとおり記載されている(なお、括弧内に示した甲1の記載箇所の行数は、空白行・図・表を除いたものである。また、下線部は合議体が付したものである。以下同様。)。
(ア)1.はじめに
「本稿では高度な技術が実装されていない、複数種、複数台移動ロボットの円滑な走行を支援するために、移動ロボットおよび上位の運行管理システムが備えるべきシステムアーキテクチャを提案する。対象とする移動ロボットは自律移動機能をもつロボットに限定し、ライントレースやマーカ認識により移動するロボットは対象外とする。」(第1ページ左欄下から2行~同ページ右欄5行)
(イ)2.システムアーキテクチャ
「清掃ロボットと配送ロボットのように異なる種類の移動ロボットがビルなど施設内の同一フロア内を走行するユースケースを考える。各移動ロボットは、施設内の業務アプリケーションにより指示された名称の地点へ自律移動するものとする。各移動ロボットに取り付けられたセンサは種類と床面からの高さが同じとは限らないため、各移動ロボットが自律移動するために参照する走行環境地図、自己位置推定地図は異なることが一般的である。また、センサで検知できる範囲外ではお互いの移動ロボットの位置を検出することができず、見通しの悪い通路では互いに衝突する懸念がある。
上記課題を解決するために、移動ロボットの種類に依存しない同一形式の地図と交通整理するための仕組みを提案する。同一形式の地図については、走行環境地図、自己位置推定地図のような物理的特性に依存しない、論理的なトポロジカル・グラフ形式を採用し、運行管理地図と定義する。交通整理するための仕組みについては、運行管理地図内の付加情報として走行ルールを定義し、さらに、交差点において各移動ロボットの走行可否を調停する機能を設ける。
上記の仕組みを反映した移動ロボットシステムアーキテクチャを図1に示す。
」(第1ページ右欄10行~第2ページ左欄2行)
(ウ)図1
「
[図:0001422370000003.jpg]
」(第2ページ左欄)
(エ)3.走行ルール
「複数種、複数台の移動ロボットが共存する環境で想定される走行ルールの例を表1に示す。各走行ルールに基づく情報は時間と共に変化するもので、時間変化の度合いにより静的、準静的、準動的、動的に分類することができる。表1に挙げた走行ルールは移動ロボットが順守すべきルールすべてを網羅したものではなく、また、すべての走行ルールを一律に順守する必要があるわけではない。どの走行ルールを採用するかは、施設の属性や導入する移動ロボットの種類を考慮して施設運用者が決定すればよい。」(第2ページ左欄5~13行)
(オ)表1 走行ルールの例
「
[図:0001422370000004.jpg]
」(第2ページ左欄)
(カ)4.運行管理地図
「運行管理地図は、移動ロボットが最終的な目標点への大局的な経路計画であるノードの通過順序を生成するための地図であり、ノードとエッジから構成されるトポロジカル・グラフ形式で定義する。トポロジカル・グラフ形式による論理的構造で定義することで、種類の異なる移動ロボット間の物理的な構造の差異を隠蔽することができる。さらに、前章で述べた走行ルールに対応し、施設全体に適用されるグローバルルールとノード、エッジ単位で適用されるローカルルールを付加する。上記をまとめた運行管理地図のデータ構造を図2に示す。
運行管理地図は、移動ロボット共通の運行管理全体地図と移動ロボットの種類に依存する運行管理部分地図に分類される。移動ロボットは機体幅など物理的な特性の違いにより、すべての移動ロボットが施設内の同じ通路を走行できるとは限らないので、施設全体の運行管理地図(運行管理全体地図)から移動ロボットが走行可能な運行管理地図(運行管理部分地図)を生成する。
運行管理全体地図から運行管理部分地図を生成する方法について具体例を挙げて説明する。図3に例示した運行管理全体地図は、A~Gの7つのノードと矢印の進行方向を表すエッジから構成されている。各エッジは、静的な走行ルールに分類される、壁間の距離で表現される通路幅と、準静的な走行ルールに分類される、進行方向別に壁からの距離の組で表現される走行可能領域の通路幅が走行ルールとして定められている。例えばノードBとノードEを結ぶエッジは図3右下に示すように、通路幅3の左側走行で、ノードBからノードE方向は壁から0.1と1.0の間を走行可能、ノードEからノードB方向は壁から1.0と2.0の間を走行可能である。
移動ロボットは走行可能領域の範囲内で走行するルールであるので、運行管理全体地図を構成する全エッジから機体幅が走行可能領域の範囲内に収まるエッジを抽出する。機体幅0.8のロボットA、機体幅0.95のロボットBに対して、それぞれ、図4に示すように、F・G間のエッジを除いた運行管理部分地図、D・F・G間のエッジを除いた運行管理部分地図が生成される。
次に、運行管理部分地図を用いて、移動ロボットが最終的な目標点へ移動するフローについて説明する。施設内の業務を管理する上位アプリケーションが例えば物品の配送先である目標点に対応するノードを大局的経路計画へ指示する。大局的経路計画は運行管理全体地図から移動ロボットに対応する運行管理部分地図を取得し、現在位置から最終的な目標点へ到達するためのノードの通過順序リストを生成する。続いて、大局的経路計画は自律移動機能に対して通過順序リスト内最初のノードへ移動を指示し、自律移動機能は指示されたノードへ局所的経路計画を生成して自律移動する[3]。指示されたノードへ到達したら、大局的経路計画は通過順序リスト内の次のノードへ移動を指示し、移動ロボットが最終的な目標点に対応するノードへ到達するまで同じ処理を繰り返す。運行管理地図内のノードと走行環境地図内の座標を関連づけることで、特性の異なる両地図間の連携が可能になり、自律移動機能が目標点であるノードの座標を特定して、自律移動することができる。」(第2ページ左欄下から4行~第3ページ左欄18行)
(キ)図3 運行管理全体地図の例
「
[図:0001422370000005.jpg]
」(第2ページ右欄)
(ク)図4 運行管理部分地図の例
「
[図:0001422370000006.jpg]
」(第3ページ左欄)
(ケ)5.調停機能
「施設内同一フロアを走行する移動ロボットの台数が1台であれば前章で述べた方法で自律移動可能である。複数台の移動ロボットが施設内同一フロアを走行するケースでは、信号あり交差点の走行ルールに基づいて移動ロボットの走行可否を調停することにより、移動ロボット同士の衝突を回避する。移動ロボットの走行可否は、即時性が求められない程度に短期間で変化するので、調停機能は準動的な走行ルールを実現するための機能といえる。
本稿では、サーバ配信型とロボットからの問合せ型の2つの調停方式を提案する。各方式について次に述べるが、いずれもメリット、デメリットがあるので、施設運用者が開発面、運用面を考慮して導入する施設に適した方式を選択すればよい。」(第3ページ左欄下から15行~下から3行)
(コ)5.2 ロボットからの問合せ型
「ロボットからの問合せ型は大局的経路計画から調停機能へ走行可否を問合せるものである。個々の移動ロボットの状態を認識する必要があるのでサーバ配信型と比較すると実装が困難というデメリットがあるが、きめ細やかな調停が可能で、システム全体の走行効率向上を期待できるというメリットがある。
ロボットからの問合せ型調停機能を利用した移動ロボットの走行について説明する。調停機能は、サーバ型配信型で定義した、移動元ノードと交差点ノード、交差点ノードと移動先ノードの2組のエッジに加え、ロボットIDを加味して走行可否を管理する。大局的経路計画は調停機能へ移動元ノード、交差点ノード、移動先ノード、ロボットIDの4つの属性を送信する。調停機能は受信した4つの属性を元に走行可否を判定し、結果を大局的経路計画へ応答する。大局的経路計画は調停機能から受信した応答が走行可であれば自律移動を開始し、交差点ノード、移動先ノードの順で移動する。走行否であれば移動元ノードにて待機し、一定時間経過後改めて調停機能へ走行可否を問合せる。応答が走行可に変化するまで問合せを繰返す。移動ロボットが移動先ノードに到達したら、大局的経路計画は交差点ノードからの離脱通知を調停機能に送信し、調停機能は当該移動ロボットの走行許可を解放する。走行許可を解放することで別の移動ロボットに走行を許可することができる。」(第3ページ右欄下から4行~第4ページ左欄19行)
(サ)6.終わりに
「今後は、ブロック間のメッセージ仕様を具体化するとともに、エレベータなど設備と連携したフロア間移動をスコープに追加する予定である。」(第4ページ右欄6~8行)
イ 上記アから、甲1には以下の事項が記載されているといえる。
(ア)上記ア(ア)~(イ)から、甲1に記載のシステムアーキテクチャを備える運行管理システムは、施設内等を自律移動して、清掃や配送等のタスクを実行する複数台の移動ロボットの交通整理をするためのシステムであるといえる。
(イ)上記ア(イ)、(カ)~(ク)及び(サ)から、甲1に記載のシステムアーキテクチャを備える運行管理システムは、移動ロボットの通行に必要な施設のフロアの通路やエレベータなどの設備(以下「通路等」という。)を、ノードとエッジから構成され走行ルールが付加された運行管理地図として備えているものであるといえる。そして、運行管理システムが、当該運行管理地図を記憶する部分を備えていることは自明である。
(ウ)上記ア(ケ)~(コ)から、甲1に記載の運行管理システムの調停機能は、移動ロボット同士の衝突を回避するために複数台の移動ロボットの個々の移動の状態を認識するものであって、移動元ノードと交差点ノード、交差点ノードと移動先ノードの2組のエッジに加え、ロボットIDを加味して走行可否を管理するものであるから、当該運行管理システムは、移動ロボットの移動の状態を認識する部分(以下「調停機能の部分A」という。)を備え、当該調停機能の部分Aは、上記(イ)の運行管理地図のノード及びエッジと、管理する移動ロボットの移動の状態とを対応付けて、移動ロボットの移動を管理するものであるといえる。
(エ)上記ア(ケ)~(コ)から、甲1に記載の運行管理システムの調停機能は、前記移動ロボットに対する通路等の割り当て状況を、運行管理地図のノード及びエッジに基づいて管理する部分(以下「調停機能の部分B」という。)を備えるといえる。そして、上記ア(イ)、(エ)~(ク)から、移動ロボットに対する通路等の割り当ては、運行管理地図内の付加情報である走行ルールに基づき、移動ロボットの機体幅など物理的な特性の違いに応じてなされるものであるといえる。
(オ)上記ア(コ)から、ロボットからの問合せ型では、大局的経路計画から調停機能へ走行可否を問合せることから、移動ロボットが大局的経路計画を備えているといえ、また、上記ア(ケ)~(コ)から、甲1に記載の運行管理システムの調停機能は、移動ロボットの大局的経路計画からの問合せを受け付けて通路等の走行許可を行い、移動ロボットによる利用が終了した場合に前記通路等の走行許可を解放する部分(以下「調停機能の部分C」という。)を備えるといえる。
(カ)上記(イ)及び(エ)、並びにア(カ)~(ク)から、運行管理地図は、建物において移動ロボットが通行する通路等を分割した複数のノード及びエッジで構成されているといえる。そして、各エッジは、上記ア(カ)~(キ)から、ノードとノードとを結ぶものであるとともに、進行方向別に壁からの距離の組で表現される走行可能領域の通路幅が定められているものであるから、長さと幅とを有するといえるため、面積を有するといえる。
(キ)上記(オ)及び上記ア(カ)から、移動ロボットの大局的経路計画は、運行管理全体地図から移動ロボットに対応する運行管理部分地図を取得し、現在位置から最終的な目標点へ到達するための大局的な経路計画であるノードの通過順序リストを自ら生成するものであるといえる。
また、現在位置から最終的な目標点へ到達するためのノードの通過順序リストを生成するにあたり、移動ロボットが例えば上記ア(キ)~(ク)におけるノードBからノードEへ移動する場合に、ロボットAは、ノードBとノードEとを結ぶ1つのエッジを指定することができる一方、ロボットAよりも機体幅の大きなロボットBは、ノードB、ノードC、ノードD及びノードEの通過順序にて指定する必要があるといえる。ここで、ノードBとノードCとを結ぶエッジと、ノードCとノードDとを結ぶエッジとは、ノードCにおいて隣接し、同様に、ノードCとノードDとを結ぶエッジと、ノードDとノードEとを結ぶエッジとは、ノードDにおいて隣接している、といえる。
してみると、上記ア(コ)と併せてみれば、ロボットAは、移動元ノードであるノードBと移動先ノードであるノードEの間を結ぶ1つのエッジについて、走行可否の問合せをし、走行許可を受けるものといえる。また、ロボットAよりも機体幅の大きなロボットBは、移動元ノードであるノードB、交差点ノードであるノードC及びD、並びに移動先ノードであるノードEの、それぞれの間を結ぶロボットAが移動する進行方向に隣接する複数のエッジの組合せを必要とする場合は、当該エッジの組合せを同時に指定して、走行可否の問合せをし、走行許可を受けるものといえる。
また、上記ア(イ)から、各移動ロボットは、清掃や配送等のタスクに応じて移動先ノードが異なることがあるといえ、移動先ノードに応じてノードの通過順序リストを生成するものであるといえる。その場合、1つのエッジを経由することで移動先ノードに移動できるときには、そのエッジの走行可否の問合せをして走行許可を受ける一方、移動先ノードまで複数のエッジを通過する必要があるときには、交差点ノードにて隣接している複数のエッジの組合せについて、同時に走行可否の問合せをして走行許可を受けることができることも明らかである。
ウ 上記ア~イから、甲1に記載された事項を本件発明1に合わせて整理すると、甲1には次の発明(以下「甲1発明A」という。)が記載されているといえる(なお、括弧内には、甲1発明Aに対応する本件発明1の発明特定事項を示す。)。
「自律移動(自律して移動)してタスクを実行する複数台(複数)の移動ロボットを交通整理する(移動体の通行を管理する)運行管理システム(移動体通行管理システム)であって、
前記複数台の移動ロボットの移動の状態を認識する(前記移動体の移動を管理する)調停機能の部分Aと、
前記移動ロボット(前記移動体)の通行に必要な通路等(リソース)をノードとエッジから構成される運行管理地図(リソースデータ)として記憶する部分(記憶部)と、
前記移動ロボット(前記移動体)に対する前記通路等(前記リソース)の割り当て状況を管理する調停機能の部分B(リソース管理部)と、
前記移動ロボット(前記移動体)からの問合せ(要求)を受け付けて前記通路等(前記リソース)の走行許可(新規割り当て)を行い、前記移動ロボット(前記移動体)による利用が終了した場合に前記通路等(前記リソース)を解放する調停機能の部分C(利用要求処理部)と、
を備え、
前記調停機能の部分Aは、前記運行管理地図(前記リソースデータ)と、管理する前記移動ロボットの移動の状態(前記移動体の移動の状況)とを対応付けて、前記移動ロボット(前記移動体)の移動を管理し、
前記運行管理地図(前記リソースデータ)は、施設内(建物)において前記移動ロボット(前記移動体)が通行するフロア(エリア)を分割した複数のノード及びエッジで構成され(サブエリアを表すデータであり)、
前記複数のエッジ(サブエリア)の各々は、面積を有し、前記移動ロボット(前記移動体)の機体幅(サイズ)に応じて異なるエッジ(サブエリア)の組合せで割り当てが可能であり、
前記移動ロボット(前記移動体)は、自らのノードの通過順序リストを生成(移動経路を探索)し、自らの機体幅(サイズ)と前記通過順序リスト(前記移動経路)とに基づいて走行可否を問合せる(割り当てを要求する)エッジ(サブエリア)を指定する(決定する)ものであり、自らが利用するエッジ(サブエリア)が1つで足りる場合にはいずれかのエッジ(サブエリア)を指定して前記調停機能の部分C(前記リソース管理サーバの前記利用要求処理部)に走行可否を問合せ(割り当てを要求し)、自らの機体幅(サイズ)に基づいて前記移動ロボット(前記移動体)が移動する進行方向に隣接する複数のエッジ(サブエリア)の組合せを必要とする場合には前記エッジ(前記サブエリア)の組合せを同時に指定して前記調停機能の部分C(前記リソース管理サーバの前記利用要求処理部)に走行可否を問合せ(割り当てを要求し)、前記調停機能の部分C(前記リソース管理サーバの前記利用要求処理部)から前記エッジ(前記サブエリア)又は前記エッジ(前記サブエリア)の組合せについて走行許可(割り当て)を受ける運行管理システム(移動体通行管理システム)。」
(3)本件発明1と甲1発明Aとの対比
本件発明1と甲1発明Aとを対比すると、両者は以下の相違点1~3で相違し、その余の点で一致する。
ア 相違点1
本件発明1においては、記憶部、リソース管理部及び利用要求処理部を備える「リソース管理サーバ」とは別に、移動体の移動を管理する「複数の運行管理サーバ」が設けられているのに対し、
甲1発明Aにおいては、移動ロボットの移動を管理する「調停機能の部分A」と、「記憶する部分」、「調停機能の部分B」及び「調停機能の部分C」とが、別のサーバとして設けられているか、また、「調停機能の部分A」が複数あるか、不明である点。
イ 相違点2
自らのサイズに基づいて割り当てを要求するサブエリア(エッジ)の組合せに関して、
本件発明1においては、「移動体が移動する方向に平行に隣接する複数のサブエリア」の組合せであるのに対し、
甲1発明Aにおいては、移動ロボットが移動する進行方向に隣接する複数のエッジ」の組合せである点。
ウ 相違点3
サブエリアの組合せを同時に指定してリソース管理サーバに割り当てを要求することに関して、
本件発明1においては、「自らのサイズに基づいては前記サブエリアの組合せ(すなわち、移動体が移動する方向に平行に隣接する複数のサブエリアの組合せ)を必要としない場合であっても自らのタスクに基づいて前記サブエリアの組合せ(すなわち、移動体が移動する方向に平行に隣接する複数のサブエリアの組合せ)を必要とする場合」にサブエリアの組合せを同時に指定するのに対し、
甲1発明Aにおいては、上記イ(相違点2)のとおり、自らの機体幅に基づいて、移動ロボットが移動する方向に平行に隣接する複数のエッジの組合せを必要とするか否かを場合分けするものでなく、また、自らのタスクに基づいて前記複数のエッジの組合せ(すなわち、移動ロボットが移動する方向に平行に隣接する複数のエッジ)を必要とするか否かを場合分けするものでもない点。
(4)相違点に対する判断
上記相違点1~3について検討する。
ア 相違点1について
(ア)甲4には、移動体同士の競合を回避して、複数の移動体を効率的に運行させることを目的(段落【0010】)として、「各移動体が行うべき作業の内容及び作業の順序に基づき各移動体が走行すべき経路を表した経路計画を生成し、経路計画に基づき、各移動体に衝突又はデッドロックを生じさせないように、各移動体が各走行路を走行するタイミングを定めた走行タイミング計画を生成する「運行計画装置100」(段落【0022】)と、各移動体の走行状態を検知して、各移動体の運行を管理する「運行管理装置200」(段落【0022】)とを、異なる計算機システム上に存在させ、互いにネットワークを介して接続させる(段落【0015】)こと。」(以下「甲4記載の技術的事項」という。)が記載されている。
(イ)甲1発明Aと甲4記載の技術的事項とは、いずれも移動体同士の衝突を回避するためのシステムである点で、技術分野が関連し、課題が共通し、かつ作用機能が共通することから、甲1発明Aにおける運行管理システムを実現するシステムアーキテクチャを計算機システムに実装するにあたり、甲4記載の技術的事項を適用し、移動ロボットの運行を管理する調停機能の部分Aを、他の部分と異なる計算機システム上に存在させ、互いにネットワークを介して接続させるようにすることで、上記相違点1に係る本件発明1のようにすることは、当業者であれば容易に想到し得たことである。また、処理を分散化させるにあたり、調停機能の部分Aを複数の移動ロボットに対応して、複数設けることも、当業者であれば適宜なし得たことである。
イ 相違点2について
(ア)参考1には、複数の移動体20とサーバ30を用いて構成され(段落【0015】)、割り当てられた移動タスクを行うための経路計画を移動体毎に生成するために、経路地図生成部33で生成された経路地図で示されている通路と車線数情報に基づき、目的地までの経路を決定する(段落【0035】)移動体制御システム10において、
「ノードとエッジで構成されるトポロジカルマップ(経路地図)において各ノードに車線数情報を付与しておき(段落【0056】)、移動体20の移動体幅(段落【0041】)に応じて、占有する車線数(ライン数)を決定する(段落【0066】~【0067】、【0070】)こと。」(以下「参考1記載の技術的事項」という。)が記載されている。
ここで、移動体幅は、移動方向に対して直交する幅の最大値である(段落【0041】)ことから、「占有する車線」が複数である場合、その「複数の車線」を占有することは、「移動体が移動する方向に平行に隣接する複数の車線の組合せ」を占有することに相当する、といえる。
(イ)甲1発明Aと参考1記載の技術的事項とは、いずれもノードとエッジで構成されるトポロジカルマップに基づいて移動体の経路を生成する点で、技術分野が関連し、作用・機能が共通する。また、甲1に記載された施設全体の運行管理地図は、上記(2)ア(カ)~(キ)に記載されるように、ノードと矢印の進行方向を表すエッジから構成されるものであるものの、「どの走行ルールを採用するかは、施設の属性や導入する移動ロボットの種類を考慮して施設運用者が決定すればよい」(上記(2)ア(エ)参照)ことが記載されるように、甲1には、施設運用者により走行ルールを適宜変更することが可能であることが示唆されている。
してみると、甲1発明Aにおいて、参考1記載の技術的事項を適用し、例えば「ノードBとノードEを結ぶエッジは図3右下に示すように、通路幅3の左側走行で、ノードBからノードE方向は壁から0.1と1.0の間を走行可能、ノードEからノードB方向は壁から1.0と2.0の間を走行可能である」(上記(2)ア(カ))とした走行ルールを変更し、移動ロボットの機体幅に応じて、例えば、機体幅の大きなロボットBがノードBからノードEまで移動する際には、ノードBからノードEへ向かう方向のエッジと、ノードEからノードBへ向かう方向のエッジとの組合せを同時に指定して、走行可否を問合せ、当該エッジの組合せについて走行許可を受けるようにすることで、上記相違点2に係る本件発明1のようにすることは、当業者であれば容易に想到し得たことである。
ウ 相違点3について
以下のとおり、甲4~甲10及び参考1~参考4のいずれにも、上記相違点3に係る本件発明1の発明特定事項は記載されていない。
(ア)甲4~甲10について
甲4には、上記ア(ア)に示した事項のほか、申立書第16~19、31、36~37、39ページにて示された事項等が記載される(甲4の参照箇所:段落【0014】~【0015】、【0017】、【0022】、【0027】、【0029】、【0039】、【0044】、【0149】~【0151】)。
また、甲5~甲6は、上記相違点1に関して、自律移動体の移動を管理するシステムにおいて、移動体の通行にエレベーター(リソース)が利用されること、及びエレベーター(リソース)を管理するサーバを、移動体を管理するサーバとは別に備えることが、本件特許の出願前において周知技術であったことを示す証拠として提出されたものである(申立書第19~21、32~33ページ、甲5の参照箇所:段落[0014]、[0018]、[0020]~[0021]、甲6の参照箇所:段落【0001】、【0018】、【0020】、【0025】~【0026】、図1)。
また、甲7~甲10は、本件発明7に関して、自律移動する移動ロボットの運行を管理するシステムにおいて、移動ロボットに対して特定の位置を認識させるためにマーカーを用いることが、本件特許の出願前において周知技術であったことを示す証拠として提出されたものである(申立書第22~25、43~45ページ、甲7の参照箇所:第2ページ左下欄第10行~右下欄第17行、第3ページ左上欄第2~6行、甲8の参照箇所:段落【0009】、【0020】~【0021】、【0047】、甲9の参照箇所:第3ページ左欄第1~6、34~36行、図6、甲10の参照箇所:第3ページ第6~8行)。
しかしながら、いずれの文献にも、上記相違点3に係る本件発明1のように、
「自らのサイズに基づいては前記サブエリアの組合せ(すなわち、移動体が移動する方向に平行に隣接する複数のサブエリアの組合せ)を必要としない場合」であっても「自らのタスクに基づいて前記サブエリアの組合せ(すなわち、移動体が移動する方向に平行に隣接する複数のサブエリアの組合せ)を必要とする場合」にサブエリアの組合せを同時に指定してリソース管理サーバに割り当てを要求することについては、記載も示唆もない。
(イ)参考1について
参考1には、上記イ(ア)に示した事項が記載される(申立人意見書2の第3~5ページに対応。)。
しかしながら、参考1には、上記相違点3に係る本件発明1のように、
「自らのサイズに基づいては前記サブエリアの組合せ(すなわち、移動体が移動する方向に平行に隣接する複数のサブエリアの組合せ)を必要としない場合」であっても「自らのタスクに基づいて前記サブエリアの組合せ(すなわち、移動体が移動する方向に平行に隣接する複数のサブエリアの組合せ)を必要とする場合」にサブエリアの組合せを同時に指定してリソース管理サーバに割り当てを要求することについて、記載も示唆もない。
この点に関し、申立人は申立人意見書3において、参考1の段落【0041】には、「搬送する物品を含めた移動体幅は、割り当てられた移動タスクによって判別することが可能であり、例えば移動タスクによってどのような物品を搬送するか明らかであれば、搬送する物品と移動体の形状等に基づいて移動体幅を算出できる。」ことが記載され、実質的には、移動体ロボットの移動タスクに応じて、占有する車線数が決定されていることは明らかであり、占有する車線数の決定が、移動体ロボット自体の幅ではなく、その移動タスクに応じて行われていることを意味している旨を主張する(申立人意見書3第5~6ページ)。
しかしながら、参考1の段落【0041】に「また、移動体が無軌道のAGV(Automatic Guided Vehicle)等である場合、移動体幅は搬送する物品を含めたサイズである。」と記載され、段落【0066】に「なお、移動体幅は上述のように搬送する物品を含めたサイズとする。」と記載されるように、参考1における「自らのサイズ」とは、搬送する物品を含めたサイズと解するのが相当である。してみると、参考1においては、「移動体MOaの移動では2ライン(Ka=2)、移動体MObの移動では3ライン(Kb=3)、移動体MOcの移動では5ライン(Kc=5)を占有する」(段落【0067】)ことから、相違点3に係る本件発明1の構成の前提である「自らのサイズに基づいては前記サブエリアの組合せを必要としない場合」に相当する事項が開示されているとはいえない。なお仮に、申立人意見書3にて主張する、参考1の段落【0067】の「MWb+mb」の幅を80cmに、「MWc+mc」の幅を120cmにそれぞれ変更し、「基底車線幅BW」が40cmであるとした「変更した他の例」を検討する。その場合に、相違点3に係る本件発明1の構成の前提である「自らのサイズに基づいては前記サブエリアの組合せを必要としない場合」に相当するのは「1ラインのみを占有する移動体MOaの移動の場合」であるといえるものの、当該移動体MOaにおいて、タスクに基づいて、複数のライン数を必要とする場合について、参考1には開示も示唆もされていない。
したがって、甲1発明Aに参考1に記載された事項を適用したとしても、相違点3に係る本件発明1を想到し得たということはできない。
(ウ)参考2~参考4について
参考2~参考4は、上記相違点2に関して、ロボットが清掃ロボット或いは掃除ロボットである場合に、ロボットが清掃領域或いは掃除領域の全体をくまなく走行するように走行経路を設定することが、本件特許の出願前において周知技術であったことを示す証拠として提出されたものである(申立人意見書2第5~6ページ、参考2の参照箇所:要約、段落[0017]、[0066]等、参考3の参照箇所:段落【0022】、【0043】等、参考4の参照箇所:段落[0027]、[0031]等)。
しかしながら、いずれの文献も、ロボットが清掃領域或いは掃除領域の全体をくまなく走行することを開示するものであって、建物において移動体が通行するエリアを分割した複数のサブエリアのうち、タスクに基づいて必要なサブエリアの組合せを要求することについては開示も示唆もないことから、甲1発明Aに参考2~参考4に記載された事項を適用したとしても、上記相違点3に係る本件発明1のように、
「自らのサイズに基づいては前記サブエリアの組合せ(すなわち、移動体が移動する方向に平行に隣接する複数のサブエリアの組合せ)を必要としない場合」であっても「自らのタスクに基づいて前記サブエリアの組合せ(すなわち、移動体が移動する方向に平行に隣接する複数のサブエリアの組合せ)を必要とする場合」にサブエリアの組合せを同時に指定してリソース管理サーバに割り当てを要求することについてまで、想到し得たということはできない。
(5)小括
以上のとおり、本件発明1は、特に相違点3について、甲1発明A、甲4記載の技術的事項、及び参考1記載の技術的事項、並びに、甲5~甲10及び参考2~参考4に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえないから、本件特許の請求項1に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものとはいえない。
2 本件発明2~4、6~7について
本件発明2~4、6~7は、いずれも請求項1の記載を直接的又は間接的に引用するものであって、甲1発明Aと対比すると、少なくとも上記1(3)ウに示した相違点3で相違する。
してみると、本件発明2~4、6~7は、上記1と同様の理由により、甲1発明A、甲4記載の技術的事項、及び参考1記載の技術的事項、並びに、甲5~甲10及び参考2~参考4に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえないから、本件特許の請求項2~4、6~7に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものとはいえない。
3 本件発明8について
甲1には、甲1発明Aの運行管理システムを用いた、運行管理方法に関する発明(以下「甲1発明B」という。)も記載されている(リソースの利用を許可又は拒否するステップについては、上記1(2)ア(コ)を参照。)ところ、本件発明8と甲1発明Bとを対比すると、少なくとも上記1(3)ウに示した相違点3と同様の点で相違する。
してみると、本件発明8は、上記1と同様の理由により、甲1発明B、甲4記載の技術的事項、及び参考1記載の技術的事項、並びに、甲5~甲10及び参考2~参考4に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえないから、本件特許の請求項8に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものとはいえない。
第7 当審にて採用しなかった申立ての理由等について
1 サポート要件(特許法第36条第6項第1号)について
(1)申立書における申立ての理由
申立人は、申立書において、本件特許の明細書の段落【0008】に「本発明によれば、自律して移動する移動体の通行を効率的に調停できる。」と記載されるものの、特許請求の範囲の請求項1には「前記移動体からの要求を受け付けて前記リソースの新規割り当てを行い、前記移動体による利用が終了した場合に前記リソースを解放する」と記載されるだけであり、発明の課題を解決するための手段が反映されていない、と主張する。
(2)当審の判断
しかしながら、本件特許の発明の詳細な説明には、「従来は運行管理サーバを一元化する方法が取られている。しかし、それぞれのロボットをそのサーバの仕様に合わせる改修が必要となっており、時間的、金銭的なコストが高くなる。また、ロボットベンダーの保証範囲外となり、ロボット側の改修が難しい場合もあった。」(段落【0005】)ため、「自律して移動する移動体の通行を効率的に調停する」(段落【0006】)との課題を解決することが記載されている。そしてその課題解決のため、「建物リソース管理サーバ60は、リソース管理データ及びリソースデータを記憶する。ロボット運行管理サーバ70は、ロボット管理データ及びリソースデータを記憶する。」(段落【0023】)こととした上で、「建物リソース管理サーバ60は、ロボット30からの要求を受け付けてリソースの新規割り当てを行い、移動体による利用が終了した場合にリソースを解放する。」(段落【0015】)ことにより、「建物リソース管理サーバ60が建物のリソースを管理することで、独立して稼働する複数のロボット30の通行が交通整理され、自律的に調停できる。」(段落【0017】)ようにしたことが記載される。
特許請求の範囲においても、例えば請求項1においては、「運行管理サーバ」と「リソース管理サーバ」が特定されるとともに、「リソース管理サーバ」の「利用要求処理部」により「前記移動体からの要求を受け付けて前記リソースの新規割り当てを行い、前記移動体による利用が終了した場合に前記リソースを解放する」との機能が特定されることから、本件発明1には、発明の詳細な説明に記載された課題を解決するための手段が反映されているといえる。
なお、発明の課題を解決するための手段が反映されていないため、発明の詳細な説明に記載した範囲を超えて特許を請求することになっていると主張するためには、審査基準(第II部 第2章 第2節 3.1.2)に示されるように、発明の詳細な説明に記載された課題を解決するための具体的な手段を示しつつ、発明の課題を解決するための手段が特許請求の範囲に反映されていないことを示す必要があるところ、申立書には、発明の詳細な説明に記載されるものの特許請求の範囲に記載されていない具体的な手段についての説明がない。
(3)小括
したがって、本件発明1、及び請求項1の記載を引用する本件発明2~4、6~7、並びに、本件発明1と同様に特定される本件発明8は、発明の詳細な説明に記載された課題を解決するための手段が反映されているから、本件特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるとはいえない。
2 明確性要件(特許法第36条第6項第2号)について
(1)「移動体の状況」について
本件訂正3前の請求項1における「移動体の状況」との記載は、本件訂正3により「移動体の移動の状況」と訂正された。
したがって、本件発明1において、「移動体の状況」とは、移動体の「移動の状況」を意味することが明らかとなった。
(2)「運行管理サーバ」について
「運行管理サーバ」に関して、本件訂正3後の請求項1では「複数の運行管理サーバ」は、「リソース管理サーバから提供を受けたリソースデータと、それぞれが管理する前記移動体の移動の状況とを対応付けて、前記移動体の移動を管理」することが特定された。
一般的に「管理」とは、「管轄し処理すること。良い状態を保つように処置すること。とりしきること。」(広辞苑第6版)を意味するところ、本件発明1においては、「移動体の移動を管理」するとは、「リソース管理サーバから提供を受けた前記リソースデータと、それぞれが管理する前記移動体の移動の状況とを対応付け」て「移動体の移動を管理」することと特定されるものの、「管理」との語が意味する技術的範囲については、必ずしも一義的に定まるものとはいえない。
そのため、発明の詳細な説明を参酌すると、「運行管理サーバ」が「移動体の移動を管理」することに関連する記載として、
本件特許の段落【0023】には、
「ロボット運行管理サーバ70は、ロボット管理データ及びリソースデータを記憶する。ロボット運行管理サーバ70が記憶するリソースデータは、建物リソース管理サーバ60から提供を受ける。ロボット管理データは、リソースデータと、各ロボット30の状況とを対応付けるデータである。」
と記載され、
本件特許の段落【0030】には、建物リソース管理サーバ60の「通信部63」が「ロボット30及びロボット運行管理サーバ70と通信する際に使用する通信インタフェースである。」と記載されるともに、
本件訂正3後の段落【0042】には、ロボット30の「通信部33」が「建物リソース管理サーバ60やロボット管理サーバ70と通信する際に使用する通信インタフェースである。」と記載される。
してみると、本件発明1における「運行管理サーバ」は、ロボット30の通信部33及び建物リソース管理サーバ60の通信部63と「通信」する機能を備える(なお、「運行管理サーバ」の「通信」とは、建物リソース管理サーバ60との通信では、リソースデータの提供を受けることが説明されるものの、ロボット30との通信では、どのような情報が送信又は受信されるかについては発明の詳細な説明に明示的な記載がないものの、「運行管理サーバ」がリソースデータと各ロボット30の移動の状況を対応付けるものであることから、技術常識に照らせば、ロボット30から現在どのサブエリアにいるか等の位置情報を受信するための通信であると推察される。)とともに、「運行管理サーバ」が「移動体の移動を管理」するとは、建物リソース管理サーバ60から提供を受けたリソースデータと、(ロボット30から受信した)移動体の移動の状況とを対応付けて「記憶する」ことであると理解することができる。
なお、特許権者は権者意見書1において、段落【0046】の「この他、ロボット30は各種センサーや、タスク実行のための機構と処理部を備えるが、ここでは説明を省略する」との記載を引用して、ロボット運行管理サーバ70による移動体の通行の管理として「通信」を行っている旨、説明をしているものの、当該段落の記載、及び段落【0047】~【0049】及び図7、並びに、段落【0050】~【0056】及び図8からは、ロボット30が、ロボット運行管理サーバ70から制御指令等を受信することなく、建物リソース管理サーバ60とのみ通信して自律して走行制御されることが理解できるのみである。
(3)小括
以上のとおり、本件発明1における「移動体の移動の状況」及び「運行管理サーバ」との発明特定事項については、特許請求の範囲の記載だけではなく、本件明細書等の記載及び図面を考慮し、また、当業者の出願当時における技術常識を基礎として判断すれば、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるとまでいうことはできない。
また、請求項1の記載を直接的又は間接的に引用する本件発明2~4、6~7についても、本件発明1と同様に、不明確であるとまでいうことはできない。
また、本件発明1と同様の記載により特定される「移動体通行管理方法」の発明である本件発明8についても、不明確であるとまでいうことはできない。
したがって、本件発明1~4、6~8は、明確であるから、本件特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるとはいえない。
第8 むすび
以上のとおり、本件特許の請求項1~4、6~8に係る特許は、取消理由通知書に記載した取消理由、及び、特許異議申立書に記載した申立ての理由(特許法第113条第2号及び第4号)によっては、取り消すことはできない。
また、他に本件特許の請求項1~4、6~8に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
一方、請求項5に係る特許は、上記第2及び第3のとおり、本件訂正3により削除された。これにより、申立人による請求項5に係る特許異議の申立ては、申立ての対象が存在しないものとなったため、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。
よって、結論のとおり決定する。
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2023-700424