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特許異議申立

2016-700509

整圧装置

審判番号
2016-700509
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2013-252354
登録番号
特許第5826240号(P5826240)
請求日
2016年06月01日
審決日
2017年08月08日
公報発行日
2017年11月24日
結論
訂正認容
当事者
  • 【権利者】東京瓦斯株式会社
  • 【権利者代理人】特許業務法人 エビス国際特許事務所
  • 【権利者代理人】植村 貴昭
  • 【異議申立人】大阪瓦斯 株式会社
  • 【異議申立人代理人】特許業務法人R&C
審判長/審判官
  • 審判長 西村 泰英
  • 審判官 栗田 雅弘
  • 審判官 刈間 宏信
分類
P1651.537-YAA(G05D) / P1651.121-YAA(G05D) / P1651.55 -YAA(G05D) / P1651.841-YAA(G05D)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第17条の2第3項、特許法第36条第6項第2号、特許法第36条第6項第1号、特許法第120条の5第2項、特許法第29条第2項
データ出所
審決公報(SGML)

事件の表示

特許第5826240号発明「整圧装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

【結 論】 特許第5826240号の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-6〕について訂正することを認める。 特許第5826240号の請求項1-4及び6に係る特許を維持する。 特許第5826240号の請求項5に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。

理由

【理 由】 1.手続の経緯 特許第5826240号の請求項1ないし6に係る特許についての出願は、平成22年8月10日に出願された特願2010-179682号の一部を、新たに平成25年12月5日に特許出願したものであって、平成27年10月23日にその特許権の設定登録がされ、その後、その特許について、特許異議申立人大阪瓦斯株式会社(以下「特許異議申立人」という)により特許異議の申立てがされ、平成28年9月29日付けで取消理由が通知され、その指定期間内である平成28年11月16日に意見書の提出及び訂正の請求がされ、それに対して平成28年12月28日に特許異議申立人から意見書が提出され、さらに、平成29年3月22日付けで取消理由が通知され、その指定期間内である平成29年5月2日に意見書の提出及び訂正の請求がされ、それに対して平成29年6月23日に特許異議申立人から意見書が提出されたものである。 2.訂正の適否についての判断 (1)訂正の内容 平成29年5月2日付けの訂正請求(以下「本件訂正請求」という)による訂正の内容は、以下のとおりである。 ア 訂正事項1 (ア)訂正事項1A 請求項1に 「・・・メインガバナと、 パイロット通路と、 前記パイロット通路内の流体の流量に応じて前記メインガバナの開閉量を制御するガバナ開閉手段と を備え、 前記パイロット通路は、前記配管の前記メインガバナよりも下流側と前記ガバナ開閉手段とを連通し、」 とあるのを 「・・・メインガバナと、 前記配管の前記メインガバナの上流側と下流側とを流体が流通可能に連通するパイロット通路と、 前記パイロット通路から分岐する分岐通路を有し、前記パイロット通路内の流体の流量変化にともなって変動する前記分岐通路内の流体の圧力に応じて前記メインガバナの開閉量を制御するガバナ開閉手段と を備え、」 に訂正する。 (イ)訂正事項1B 請求項1に 「前記パイロット通路に開閉動作可能に設けられ、前記ガバナ開閉手段と前記メインガバナの下流側との開度を可変させるパイロット通路開閉手段と、」 とあるのを 「前記パイロット通路に開閉動作可能に設けられ、前記パイロット通路における前記ガバナ開閉手段と前記メインガバナの下流側との間の開度を可変させるパイロット通路開閉手段と、」 に訂正する。 (ウ)訂正事項1C 請求項1に 「前記制御手段は、 ・・・前記所定時間が経過したところで前記パイロット通路の開度を前記稼働時の開度にし、 前記制御手段は、 前記停止操作信号出力手段によって停止操作信号が出力されたとき、前記パイロット通路開閉手段を閉弁して前記パイロット通路を遮断するとともに、 所定の停止操作信号が出力されてから前記パイロット通路が遮断されるまでに要する時間は、・・・短時間である」 とあるのを 「前記制御手段は、 ・・・前記所定時間が経過したところで前記パイロット通路の開度を前記稼働時の開度にする一方、 前記停止操作信号出力手段によって停止操作信号が出力されたとき、前記パイロット通路開閉手段を閉弁して前記パイロット通路を遮断し、 所定の停止操作信号が出力されてから前記パイロット通路が遮断されるまでに要する時間が、・・・短時間となるように制御する」 に訂正する。 イ 訂正事項2 請求項2に 「前記パイロット通路開閉手段は、各パイロット通路を連通状態または遮断状態のいずれかの状態にする第1電磁弁および第2電磁弁によって構成され、 前記制御手段は、 前記起動操作信号が出力されたとき、前記第2電磁弁を開弁して前記パイロット通路の開度を前記緩衝開度に制御するとともに、前記所定時間が経過したところで前記第1電磁弁を開弁して前記パイロット通路の開度を前記稼働時の開度に制御する ことを特徴とする請求項1記載の整圧装置。」 とあるのを、 「前記パイロット通路開閉手段は、開状態または閉状態のいずれかの状態にする第1電磁弁および第2電磁弁によって構成され、 前記パイロット通路は、 前記第1電磁弁が設けられ、前記メインガバナの下流側と前記ガバナ開閉手段の下流側とを連通する第1パイロット通路と、 前記第2電磁弁が設けられ、前記第1パイロット通路における前記第1電磁弁の上流側および下流側のそれぞれから分岐して互いに接続される第2パイロット通路と、を有し、 前記制御手段は、 前記起動操作信号が出力されたとき、前記第2電磁弁を開状態にすることによって前記パイロット通路における全体の開度を前記緩衝開度に制御するとともに、前記所定時間が経過したところで前記第1電磁弁を開状態にすることによって前記パイロット通路における全体の開度を前記稼働時の開度に制御する ことを特徴とする請求項1記載の整圧装置。」 に訂正する。 ウ 訂正事項3 請求項3に 「前記複数のパイロット通路は、 前記第1電磁弁が設けられた第1パイロット通路と、 前記第1パイロット通路よりも流量が制限されるとともに前記第2電磁弁が設けられた第2パイロット通路と、からなる ことを特徴とする請求項2記載の整圧装置。」 とあるのを、 「前記第2パイロット通路は、前記第1パイロット通路よりも流量が制限されるように構成される ことを特徴とする請求項2記載の整圧装置。」 に訂正する。 エ 訂正事項4 請求項5を削除する。 オ 訂正事項5 請求項6に 「・・・を特徴とする請求項2~5のいずれかに記載の整圧装置。」 とあるのを、 「・・・を特徴とする請求項2~4のいずれかに記載の整圧装置。」 に訂正する。 カ 訂正事項6 (ア)訂正事項6A 明細書の段落【0008】に 「本発明は、前提として、・・・メインガバナと、パイロット通路と、パイロット通路内の流体の流量に応じてメインガバナの開閉量を制御するガバナ開閉手段とを備えている。 パイロット通路は、配管のメインガバナよりも下流側とガバナ開閉手段とを連通している。」とあるのを、 「本発明は、前提として、・・・メインガバナと、配管のメインガバナの上流側と下流側とを流体が流通可能に連通するパイロット通路と、パイロット通路から分岐する分岐通路を有し、パイロット通路内の流体の流量変化にともなって変動する分岐通路内の流体の圧力に応じてメインガバナの開閉量を制御するガバナ開閉手段とを備えている。」に訂正する。 (イ)訂正事項6B 明細書の段落【0010】に 「上記の構成を前提として請求項1に記載の発明は、・・・二次圧力を設定圧に調整する整圧装置において、パイロット通路に開閉動作可能に設けられ、ガバナ開閉手段とメインガバナの下流側との開度を可変させるパイロット通路開閉手段・・・を備えている。 制御手段は、・・・所定時間が経過したところでパイロット通路の開度を稼働時の開度にしている。 制御手段は、停止操作信号出力手段によって停止操作信号が出力されたとき、パイロット通路開閉手段を閉弁してパイロット通路を遮断するとともに、所定の停止操作信号が出力されてからパイロット通路が遮断されるまでに要する時間は、・・・短時間である。」とあるのを、 「上記の構成を前提として請求項1に記載の発明は、・・・二次圧力を設定圧に調整する整圧装置において、パイロット通路に開閉動作可能に設けられ、パイロット通路におけるガバナ開閉手段とメインガバナの下流側との間の開度を可変させるパイロット通路開閉手段・・・を備えている。 制御手段は、・・・所定時間が経過したところでパイロット通路の開度を稼働時の開度にする一方、停止操作信号出力手段によって停止操作信号が出力されたとき、パイロット通路開閉手段を閉弁してパイロット通路を遮断し、所定の停止操作信号が出力されてからパイロット通路が遮断されるまでに要する時間が、・・・短時間となるように制御する。」に訂正する。 (ウ)訂正事項6C 明細書の段落【0016】に 「請求項1に記載の発明を前提として、請求項2に記載の発明は、前記パイロット通路開閉手段は、各パイロット通路を連通状態または遮断状態のいずれかの状態にする第1電磁弁および第2電磁弁によって構成され、前記制御手段は、前記起動操作信号が出力されたとき、前記第2電磁弁を開弁して前記パイロット通路の開度を前記緩衝開度に制御するとともに、前記所定時間が経過したところで前記第1電磁弁を開弁して前記パイロット通路の開度を前記稼働時の開度に制御することを特徴とする。」とあるのを、 「請求項1に記載の発明を前提として、請求項2に記載の発明は、前記パイロット通路開閉手段は、開状態または閉状態のいずれかの状態にする第1電磁弁および第2電磁弁によって構成され、前記パイロット通路は、前記第1電磁弁が設けられ、前記メインガバナの下流側と前記ガバナ開閉手段の下流側とを連通する第1パイロット通路と、前記第2電磁弁が設けられ、前記第1パイロット通路における前記第1電磁弁の上流側および下流側のそれぞれから分岐して互いに接続される第2パイロット通路と、を有し、前記制御手段は、前記起動操作信号が出力されたとき、前記第2電磁弁を開状態にすることによって前記パイロット通路における全体の開度を前記緩衝開度に制御するとともに、前記所定時間が経過したところで前記第1電磁弁を開状態にすることによって前記パイロット通路における全体の開度を前記稼働時の開度に制御することを特徴とする。」に訂正する。 (エ)訂正事項6D 明細書の段落【0018】に 「また、請求項2に記載の発明において、第2電磁弁を複数設けることとした場合には、・・・第2電磁弁を所定の間隔で順次開弁していくようにしても構わない。 また、請求項2に記載の発明において、・・・」とあるのを、 「また、請求項2に記載の発明において、第2電磁弁を複数設けることとした場合には、・・・第2電磁弁を所定の間隔で順次開弁していくようにしても構わない。」に訂正する。 (オ)訂正事項6E 明細書の段落【0019】に 「請求項2に記載の発明を前提として、請求項3に記載の発明は、前記複数のパイロット通路は、前記第1電磁弁が設けられた第1パイロット通路と、前記第1パイロット通路よりも流量が制限されるとともに前記第2電磁弁が設けられた第2パイロット通路と、からなることを特徴とする。」とあるのを、 「請求項2に記載の発明を前提として、請求項3に記載の発明は、前記第2パイロット通路は、前記第1パイロット通路よりも流量が制限されるように構成されることを特徴とする。」に訂正する。 (カ)訂正事項6F 明細書の段落【0022】に 「請求項2~5のいずれかに記載の発明を前提として、請求項6に記載の発明は、・・・」とあるのを、 「請求項2~4のいずれかに記載の発明を前提として、請求項6に記載の発明は、・・・」に訂正する。 (キ)訂正事項6G 明細書の段落【0080】に 「・・・また、上記実施形態における一次圧調整管4および二次圧調整管5が本発明のパイロット通路に相当する。 また、上記第1実施形態におけるオキジャリボール14、第2実施形態および第3実施形態におけるベンチュリ・レストリクタ53が本発明のガバナ開閉手段に相当する。・・・」とあるのを、 「・・・また、上記第1実施形態における一次圧調整管4、中圧補助ガバナ12におけるガスGが流通する部分、調整管3、低圧補助ガバナ13におけるガスGが流通する部分および二次圧調整管5、第2実施形態~第4実施形態における一次圧調整管4および二次圧調整管5が本発明のパイロット通路に相当する。 また、上記第1実施形態におけるオキジャリボール14および調整管3(第2調整管3b)とオキジャリボール14とを接続する配管、第2実施形態~第4実施形態におけるベンチュリ・レストリクタ53および調整管52が本発明のガバナ開閉手段に相当する。・・・」に訂正する。 (ク)訂正事項6H 明細書の段落【0021】を削除する。 (2)訂正の目的の適否、一群の請求項、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否 ア 訂正事項1について (ア)訂正事項1A 訂正事項1Aは、「パイロット通路」により連通される部分について、訂正前の請求項1では「配管のメインガバナよりも下流側」と「ガバナ開閉手段」とを連通することのみが明示されていたのに対し、訂正により「配管のメインガバナの下流側」と「ガバナ開閉手段」とを「パイロット通路から分岐する分岐通路」で連通したことを明確にするとともに、「メインガバナの上流側」とも連通すると特定するものであり、さらに、「ガバナ開閉手段」が「メインガバナの開閉量を制御する」のを、訂正前の請求項1では「パイロット通路内の流体の流量に応じて」行っていたのに対し、訂正により「パイロット通路内の流体の流量変化にともなって変動する分岐通路内の流体の圧力に応じて」行うものに具体化したものといえるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 また、訂正事項1Aについては、明細書の段落【0027】の「・・・この整圧装置10は、上流側配管1と下流側配管2との間に接続されたメインガバナ11と、調整管3(第1調整管3aおよび第2調整管3b)を介して互いに連結された中圧補助ガバナ12、低圧補助ガバナ13およびオキジャリボール14と、を備えている。・・・」、段落【0030】の「・・・ガスGが消費されて二次圧力P2が低下すると、中圧補助ガバナ12および低圧補助ガバナ13が稼働するとともに、二次圧調整管5を介して調整管3から下流側配管2へとガスGが流通してオキジャリボール14内の圧力が低下する。・・・」、段落【0061】の「なお、この第3実施形態においては、メインガバナおよびガバナ開閉手段を第2実施形態と同様の構成としたが、これらは第1実施形態と同様の構成であってもよい・・・」との記載からみて、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (イ)訂正事項1B 訂正事項1Bは、パイロット通路開閉手段が可変させる「開度」について、訂正前の請求項1では「ガバナ開閉手段とメインガバナの下流側との開度」と記載されていたものを、訂正により「パイロット通路におけるガバナ開閉手段とメインガバナの下流側との間の開度」と明確にしたものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであって、各図面に記載された「開閉手段30」の位置からみて、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (ウ)訂正事項1C 訂正事項1Cは、「制御手段」が行う制御内容について、訂正前の請求項1では、「前記制御手段は、・・・前記稼働時の開度にし」、「前記制御手段は、・・・遮断するとともに」と並列の形式で記載されていたものを、訂正により「前記制御手段は、・・・前記稼働時の開度にする一方、・・・遮断し」と1つにまとめて記載するとともに、訂正前の請求項1では「・・・前記パイロット通路が遮断されるまでに要する時間は、・・・前記パイロット通路が前記稼働時の開度になるまでに要する時間よりも短時間である」と記載されていたものを、訂正により「・・・前記パイロット通路が遮断されるまでに要する時間が、・・・前記パイロット通路が前記稼働時の開度になるまでに要する時間よりも短時間となるように制御する」と、時間が制御の対象であることを明確にしたものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。 そして、訂正事項1Cは、記載の体裁を整えて意味を明確にしたにすぎないから、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 イ 訂正事項2について 訂正事項2は、平成28年9月29日付け取消理由通知での理由2についての指摘に対応し、パイロット通路の全体構造及びパイロット通路の開度について明確になるよう特定しているものであるから、特許請求の範囲の減縮及び明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。 そして、訂正前の請求項3及び5の記載、明細書の段落【0050】の「・・・第1パイロット通路61および第2パイロット通路62には、それぞれ第1電磁弁63および第2電磁弁64が並行して設けられており、これら両電磁弁63,64によって開閉手段30が構成されている。これら両電磁弁63,64は、通常、第1パイロット通路61および第2パイロット通路62を連通状態に維持しており、通電されることによって、第1パイロット通路61および第2パイロット通路62を遮断状態に切り換えるものである。・・・」、段落【0055】の「・・・上記ステップS11において、入力した操作信号が起動操作信号であると判断した場合には、CPU101aは、第2電磁弁64の通電を停止して、第2パイロット通路62を連通状態とする。整圧装置60の稼働が停止している状態では、両電磁弁63,64が通電されて閉弁しているが、当該ステップS14の処理によって、ベンチュリ・レストリクタ53と下流側配管2とが第2パイロット通路62を介して連通することとなる。・・・」、段落【0058】の「・・・上記ステップS16において、セットした時間が経過したと判定した場合には、CPU101aは、第1電磁弁63の通電を停止して第1パイロット通路61を連通状態にする。」という記載からみて、訂正事項2は、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 ウ 訂正事項3について 訂正事項3は、訂正事項2により訂正前の請求項3に記載された事項の一部が請求項2に移動したことに伴って、請求項3の記載を整えるものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。 そして、訂正事項3は、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 エ 訂正事項4について 訂正事項4は、訂正前の請求項5の記載を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 オ 訂正事項5について 訂正事項5は、訂正事項4により請求項5が削除されたことにより、訂正前の請求項6が請求項5を引用する記載であったのを、請求項5を引用しない記載にするものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。 そして、訂正事項5は、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 カ 訂正事項6について (ア) 訂正事項6A~6F、6H 訂正事項6A~6F、6Hは、訂正事項1~5により訂正前の請求項1~3、5及び6が訂正されたことに伴い、明細書中の記載を整合させるものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであり、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (イ) 訂正事項6G 訂正事項6Gは、平成29年3月22日付け取消理由通知での指摘に対応し、実施例における部材について、パイロット通路及びガバナ開閉手段に対応する部材を明確にするものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。 そして、明細書の【0027】、【0030】、【0047】、【0050】や図1、図4、図5、図9を参酌すれば、各実施例の部材が、訂正事項6Gに記載されたようにパイロット通路又はガバナ開閉手段に対応することは、当業者には当然理解されるものであるから、訂正事項6Gは、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 キ 一群の請求項について 訂正前の請求項1~6は、請求項2~6が訂正の請求の対象である請求項1の記載を直接又は間接的に引用する関係にあるから、訂正前において一群の請求項に該当するものである。 よって、上記訂正事項1~6による訂正の請求は、一群の請求項ごとにされたものである。 (3)本件訂正請求に対する特許異議申立人の意見について 特許異議申立人は、平成29年6月23日付け意見書において、本件訂正が訂正要件違反であると主張しているので、検討する。 ア 訂正事項1Aについて(意見書の〔項目A1〕及び〔項目A2〕参照) 特許異議申立人は、訂正事項1Aにより、「パイロット通路」はガバナ開閉手段との関係が不明でガバナ開閉手段と無関係なものに変更されたため、訂正要件を満たしていないと主張する。しかし、訂正事項1Aでは、「ガバナ開閉手段」について「パイロット通路から分岐する分岐通路を有」するものであることも特定されており、「パイロット通路」と「ガバナ開閉手段」との関係は明示されていると認められるから、特許異議申立人の上記主張は採用できない。 また、特許異議申立人は、訂正事項1Aにより、「ガバナ開閉手段」が「パイロット通路から分岐する分岐通路を有」するものであると定義されたが、この訂正は新規事項の導入であり訂正要件を満たしていないと主張する。しかし、当初図面である図1には、調整管3とオキジャリボール14とを接続する配管が記載されており、当該図1の記載に基づいて、調整管3とオキジャリボール14とを接続する配管を分岐通路と定義し、同時にガバナ開閉手段に分岐通路も含まれることを明示して、ガバナ開閉手段の構成を明確にするとともにパイロット通路との切り分けをはっきりさせたものである。よって、ガバナ開閉手段が分岐通路を有するとした訂正は、新規事項を含むものではない。 イ 訂正事項6Gについて(意見書の〔項目A3〕~〔項目A5〕参照) 特許異議申立人は、訂正事項6Gは、訂正後の「パイロット通路開閉手段」の設置範囲が広がることになり、訂正要件を満たしていないものと主張する。しかし、当該訂正は、訂正事項1Aにより本件発明1の「パイロット通路」の定義が明確にされたのに伴い、訂正前の図1において、一次圧調整管4及び二次圧調整管5が含まれていること以外が不明であった「パイロット通路」の構成部材に、中圧補助ガバナ12におけるガスGが流通する部分、調整管3、低圧補助ガバナ13におけるガスGが流通する部分も含まれることを明確にしただけであり、「パイロット通路」の意味するものは実質的に変わっていないものである。 また、特許異議申立人は、訂正事項6Gは、調整管3と二次圧調整管5との意味を変更するものであり、訂正要件を満たしていないものと主張する。しかし、訂正事項6Gでは、上記のとおり「パイロット通路」の構成を明確化するために、どの部材が「パイロット通路」に含まれるかを特定しただけであり、各部材それぞれの技術的意味合いが変更されるものではない。 よって、訂正事項6Gは訂正要件を満たしている。 ウ 訂正事項1Cについて(意見書の〔項目A6〕参照) 特許異議申立人は、訂正事項1Cは、「所定の停止操作信号が出力されてから前記パイロット通路が遮断されるまでに要する時間」について、訂正前は「短時間である」という単なる事象を示す結果が得られる内容に留まっていたものを、「短時間となるように制御する」という内容に変更したもので、訂正要件を満たしていないと主張する。しかし、訂正前の「短時間である」という表現においても、「制御手段は、」という主語に対して係り受ける記載であるから、制御内容を意味しているものと認められ、「短時間であるような制御を行う」という意味に解されるものである。そうすると、訂正後の「短時間となるように制御する」という表現と実質的に変わらないものといえる。よって、訂正事項1Cは、日本語としてわかりやすい言い回しとなるよう形式的に変更しただけで、内容については変わらないものと言えるから、訂正要件を満たしていないものとは言えない。 (4)小括 したがって、本件訂正請求による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号又は第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項、及び、同条第9項において準用する同法第126条第4項から第6項までの規定に適合するので、訂正後の請求項〔1~6〕について訂正を認める。 3.特許異議の申立てについて (1)本件発明 本件訂正請求により訂正された訂正請求項1~6に係る発明(以下「本件発明1」などという)は、訂正特許請求の範囲の請求項1~6に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。 「【請求項1】 流体が流通する配管に開閉動作可能に接続されたメインガバナと、 前記配管の前記メインガバナの上流側と下流側とを流体が流通可能に連通するパイロット通路と、 前記パイロット通路から分岐する分岐通路を有し、前記パイロット通路内の流体の流量変化にともなって変動する前記分岐通路内の流体の圧力に応じて前記メインガバナの開閉量を制御するガバナ開閉手段と を備え、 前記ガバナ開閉手段は、 前記下流側の二次圧力が降下すると前記パイロット通路内の流体の流量増加にともなって前記メインガバナを開動作させ、 前記二次圧力が上昇すると前記パイロット通路内の流体の流量減少にともなって前記メインガバナを閉動作させて、前記二次圧力を設定圧に調整する整圧装置において、 前記パイロット通路に開閉動作可能に設けられ、前記パイロット通路における前記ガバナ開閉手段と前記メインガバナの下流側との間の開度を可変させるパイロット通路開閉手段と、 前記パイロット通路開閉手段によって前記パイロット通路が遮断されて前記メインガバナの稼働が停止しているときに、前記メインガバナを起動させるための起動操作信号を出力する起動操作信号出力手段と、 前記メインガバナが稼働しているときに、前記メインガバナの稼働を停止させるための停止操作信号を出力する停止操作信号出力手段と、 前記起動操作信号出力手段によって起動操作信号が出力されたとき、前記パイロット通路開閉手段を開弁して、前記パイロット通路の開度を前記メインガバナの稼働時の開度に制御する制御手段と、を備え、 前記制御手段は、 前記起動操作信号が出力されてから所定時間が経過するまでは、前記パイロット通路の開度を前記稼働時の開度よりも小さい緩衝開度に制御するとともに、前記所定時間が経過したところで前記パイロット通路の開度を前記稼働時の開度にする一方、 前記停止操作信号出力手段によって停止操作信号が出力されたとき、前記パイロット通路開閉手段を閉弁して前記パイロット通路を遮断し、 所定の停止操作信号が出力されてから前記パイロット通路が遮断されるまでに要する時間が、前記起動操作信号が出力されてから前記パイロット通路が前記稼働時の開度になるまでに要する時間よりも短時間となるように制御する ことを特徴とする整圧装置。 【請求項2】 前記パイロット通路開閉手段は、開状態または閉状態のいずれかの状態にする第1電磁弁および第2電磁弁によって構成され、 前記パイロット通路は、 前記第1電磁弁が設けられ、前記メインガバナの下流側と前記ガバナ開閉手段の下流側とを連通する第1パイロット通路と、 前記第2電磁弁が設けられ、前記第1パイロット通路における前記第1電磁弁の上流側および下流側のそれぞれから分岐して互いに接続される第2パイロット通路と、を有し、 前記制御手段は、 前記起動操作信号が出力されたとき、前記第2電磁弁を開状態にすることによって前記パイロット通路における全体の開度を前記緩衝開度に制御するとともに、前記所定時間が経過したところで前記第1電磁弁を開状態にすることによって前記パイロット通路における全体の開度を前記稼働時の開度に制御する ことを特徴とする請求項1記載の整圧装置。 【請求項3】 前記第2パイロット通路は、前記第1パイロット通路よりも流量が制限されるように構成される ことを特徴とする請求項2記載の整圧装置。 【請求項4】 前記第2パイロット通路には、前記第1パイロット通路よりも流量を制限する絞りが設けられた ことを特徴とする請求項3記載の整圧装置。 【請求項5】(削除) 【請求項6】 前記制御手段は、 前記第1電磁弁を開弁するとともに前記第2電磁弁を閉弁することを特徴とする請求項2~4のいずれかに記載の整圧装置。」 (2)取消理由の概要 訂正前の請求項1~6に係る特許に対して、平成28年9月29日付け及び平成29年3月22日付けで特許権者に通知した取消理由の要旨は、それぞれ次のとおりである。 ア 特許法第17条の2第3項(平成28年9月29日付け取消理由通知) 請求項1に係る特許は、平成27年4月7日付け手続補正書でした「パイロット通路を備え、前記パイロット通路は、前記配管の前記メインガバナよりも下流側と前記ガバナ開閉手段とを連通し」とした補正は、パイロット通路がメインガバナの上流側に連通されていない構成も含むから、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものでないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。 イ 特許法第36条第6項第2号(平成28年9月29日付け取消理由通知) (ア)請求項2の「各パイロット通路」という記載は、パイロット通路の全体構造が特定できず、また、請求項1に記載された「パイロット通路」との関係も不明瞭であり、発明が不明確になっている。 (イ)請求項2の「前記パイロット通路の開度」が、何を意味しているのか不明で、発明が不明確になっている。 (ウ)請求項3の「前記複数のパイロット通路」という記載は、引用しているものが不明で、発明が不明確になっている。 ウ 特許法第36条第6項第1号(平成29年3月22日付け取消理由通知) (ア)請求項1の「前記パイロット通路は、前記配管の前記メインガバナの上流側及び下流側と、前記ガバナ開閉手段とをそれぞれ連通し、」という記載は、「パイロット通路」及び「ガバナ開閉手段」を発明の詳細な説明に発明として記載されたものと対比すると、対応関係が明確でなく、記載が整合しないため、サポート要件を満たしているとは認められない。 (イ)請求項1の「前記パイロット通路に開閉動作可能に設けられ、前記ガバナ開閉手段および前記メインガバナの下流側の開度をそれぞれ可変させるパイロット通路開閉手段」という記載は、発明の詳細な説明には、ガバナ開閉手段についてその開度を可変させることの記載はなく、メインガバナの下流側の開度を可変とすることについても、発明の詳細な説明のどの箇所の記載を根拠としているのか不明であり、請求項1-4、6に係る発明は、発明の詳細な説明に記載されたものではない。 (3)判断 ア 取消理由通知に記載した取消理由について (ア)特許法第17条の2第3項について 本件訂正の上記訂正事項1Aにより、本件発明1は「前記配管の前記メインガバナの上流側と下流側とを流体が流通可能に連通するパイロット通路」を備えたものとして訂正された。よって、本件発明1には、パイロット通路がメインガバナの上流側に連通されていない構成は含まれないことになったため、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしているものとなった。 (イ)特許法第36条第6項第2号について 本件訂正の上記訂正事項2により、本件発明2から「各パイロット通路」という記載は削除されるとともに、パイロット通路が「前記第1電磁弁が設けられ、前記メインガバナの下流側と前記ガバナ開閉手段の下流側とを連通する第1パイロット通路」及び「前記第2電磁弁が設けられ、前記第1パイロット通路における前記第1電磁弁の上流側および下流側のそれぞれから分岐して互いに接続される第2パイロット通路」と全体構造が明確に定義され、請求項1の「パイロット通路」との関係も明確にされた。 また、上記訂正事項2により、本件発明2において「前記パイロット通路における全体の開度」と訂正され、第1パイロット通路及び第2パイロット通路をまとめた全体の開度を意味することも明確になった。 さらに、本件訂正の上記訂正事項3により、本件発明3から、訂正前の「前記複数のパイロット通路」という不明確な記載は削除された。 よって、請求項2及び3に係る特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものとは言えない。 (ウ)特許法第36条第6項第1号について 本件訂正の上記訂正事項1Aにより、「パイロット通路」及び「ガバナ開閉手段」について、「前記配管の前記メインガバナの上流側と下流側とを流体が流通可能に連通するパイロット通路」及び「前記パイロット通路から分岐する分岐通路を有し、前記パイロット通路内の流体の流量変化にともなって変動する前記分岐通路内の流体の圧力に応じて前記メインガバナの開閉量を制御するガバナ開閉手段」と定義され、それに対して、本件訂正の上記訂正事項6Gにより、明細書の段落【0080】が、「上記第1実施形態における一次圧調整管4、中圧補助ガバナ12におけるガスGが流通する部分、調整管3、低圧補助ガバナ13におけるガスGが流通する部分および二次圧調整管5、・・・が本発明のパイロット通路に相当する。 また、上記第1実施形態におけるオキジャリボール14および調整管3(第2調整管3b)とオキジャリボール14とを接続する配管、・・・が本発明のガバナ開閉手段に相当する。」訂正されたことで、本件発明1の「パイロット通路」及び「ガバナ開閉手段」と第1実施形態との対応関係が明確になり、サポート要件を満たしているものと認められる。 また、本件訂正の上記訂正事項1Bにより、「パイロット通路開閉手段」が「前記パイロット通路に開閉動作可能に設けられ、前記パイロット通路における前記ガバナ開閉手段と前記メインガバナの下流側との間の開度を可変させる」ものであるとされたことで、明細書の段落【0032】や図1に示された開閉手段30との対応関係も明確になり、発明の詳細な説明に記載されたものと認められる。 よって、請求項1に係る特許並びに請求項1を引用する請求項2~4及び6に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものとは言えない。 イ 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について (ア)特許法第29条第2項 特許異議申立人は、訂正前の特許請求の範囲に関し、特許異議申立書において、請求項1~6に係る発明は、甲第1号証に記載された発明に甲第2~6号証に記載された技術を適用することで当業者が容易に想到し得るか、又は、甲第2号証に記載された発明に甲第3~6号証に記載された技術を適用することで当業者が容易に想到し得る、と主張しているので、検討する。 a.甲第1号証を主引用例とした場合について 本件発明1と甲第1号証に記載された発明とを対比すると、甲第1号証の段落【0010】~【0015】の記載からみて、甲第1号証に記載された「流体圧調整弁1」、「一次側配管A1と二次側配管A2とを接続する調整管4と、中圧補助ガバナ6及び低圧補助ガバナ5におけるガスが流通する部分」、「導入管8」、「助動球盤3」、「流量調整弁19」、「制御装置21」が、本件発明1の「メインガバナ」、「パイロット通路」、「分岐通路」、「ガバナ開閉手段」、「パイロット通路開閉手段」、「制御手段」に相当するものと認められる。 また、甲第1号証の段落【0015】の「前記制御装置21は、・・・ガスの流量を大きく減少させるべく、流量調整弁19を自動調節操作するように構成してある。つまり、・・・平均検出圧力Qが許容圧力R2に達すると弁開度(%)をゼロにして、それ以上の圧力上昇を防止するように構成してある。」という記載からみて、甲第1号証には本件発明1の「停止操作信号出力手段」も備わっているものと認められる。 そうすると、本件発明1は、甲第1号証に記載された発明とは、以下の点で相違し、その余の点では一致するものと認められる。 <相違点1> 本件発明1の「制御手段」が、「前記起動操作信号が出力されてから所定時間が経過するまでは、前記パイロット通路の開度を前記稼働時の開度よりも小さい緩衝開度に制御するとともに、前記所定時間が経過したところで前記パイロット通路の開度を前記稼働時の開度にする一方、前記停止操作信号出力手段によって停止操作信号が出力されたとき、前記パイロット通路開閉手段を閉弁して前記パイロット通路を遮断し、所定の停止操作信号が出力されてから前記パイロット通路が遮断されるまでに要する時間が、前記起動操作信号が出力されてから前記パイロット通路が前記稼働時の開度になるまでに要する時間よりも短時間となるように制御する」のに対し、甲第1号証に記載された発明の「制御装置21」は、このような制御を行うかは不明である点。 <相違点2> 本件発明1が「前記パイロット通路開閉手段によって前記パイロット通路が遮断されて前記メインガバナの稼働が停止しているときに、前記メインガバナを起動させるための起動操作信号を出力する起動操作信号出力手段」を有するのに対し、甲第1号証に記載された発明は、このような「起動操作信号出力手段」については不明である点。 上記相違点1について検討する。特許異議申立人は、甲第3号証の段落【0048】には「・・・流体供給制御装置100は、・・・第2弁109をクイックシャットさせることができる・・・」、段落【0049】には「・・・流体供給制御装置100は、第2弁をスローオープンさせることができる・・・」という記載があり、これらの記載から甲第3号証には、「a:メインガバナを起動させるとき、メインガバナの開放に要する時間を長くさせること、b:メインガバナの稼働を停止させるとき、メインガバナの遮断に要する時間を短くさせること、c:メインガバナの遮断に要する時間は、メインガバナの開放に要する時間よりも短時間であること」が記載されているとし、当該a、b、cの事項が、甲第3号証を引用するまでもなく、都市ガスや水道等の流体取扱分野において、緊急時の流体の停止はできる限り短時間で弁等を閉め、流体の通流開始時は徐々に弁等を開けるということは技術常識であると主張する。しかし、特許異議申立人の主張は、メインガバナの開閉の仕方に係る事項であって、メインガバナの上流側と下流側とを連通したパイロット通路に設けられた「パイロット通路開閉手段」の開閉の制御に係る事項ではないから、甲第1号証に記載された発明に上記メインガバナの開閉の仕方に係る事項を適用したからといって、相違点1に係る発明特定事項に係る構成には至らないから、当業者が容易に想到するものとは言えない。 また、甲第4号証には、6ページ左欄下から5行~右欄2行に「レギュレータの運転は次の手順に従います。図2を参照してください。 1)ハンドバルブAを徐々に開きます。 2)上流側ブロックバルブを徐々に開きます。 3)下流側ブロックバルブを徐々に開きます。 4)ハンドバルブBを徐々に開きます。 5)バイパスバルブを徐々に閉じます。」と記載され、特許異議申立人は当該記載内容が、本件発明1の「制御手段」が「前記起動操作信号が出力されてから所定時間が経過するまでは、前記パイロット通路の開度を前記稼働時の開度よりも小さい緩衝開度に制御するとともに、前記所定時間が経過したところで前記パイロット通路の開度を前記稼働時の開度にする」という事項に相当すると主張している。しかし、甲第4号証に記載の当該事項は、単にレギュレータの手動運転操作の方法を開示したものであり、特に6ページ右欄の「4-3.シャットダウン」の「注意」には、「・・・各バルブの開閉はゆっくりと行なって下さい。」という記載があることを参照すると、甲第4号証には起動と停止のいずれにおいてもゆっくり作動させることが示されていると解するのが相当である。そうすると、甲第4号証からは、ハンドバルブ等を手動で開閉する際にゆっくり作動させることは読み取れても、パイロット通路開閉手段の自動制御について、上記相違点1に係る本件発明1の特定事項に至るものとは認められない。そして、甲第4号証の他の記載を見ても、相違点1に係る発明特定事項を当業者が容易に想到するものではない。 さらに、甲第6号証には、ガス供給を迅速に停止させるため、ガバナ2を遮断するガス遮断電磁弁を遮断するSI制御部について記載されている(段落【0016】)が、当該記載事項はメインガバナの閉止に係るもので、パイロット通路開閉手段の開閉制御に係るものではない上、開弁時のタイミングについては不明であるから、上記相違点1に係る発明特定事項を公知とするものではない。 そして、上記相違点1に係る本件発明1の特定事項は、甲第2及び5号証も含め、他の文献に記載されている事項とは認められず、当該技術分野における技術常識でもない。 よって、相違点2について検討するまでもなく、本件発明1は、甲第1号証に記載された発明、甲第2~6号証に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明することができたものではない。 また、本件発明2~4及び6については、直接又は間接的に本件発明1を引用するものであるから、本件発明1と同様、甲第1号証に記載された発明、甲第2~6号証に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明することができたものではない。 b.甲第2号証を主引用例とした場合について 本件発明1と甲第2号証に記載された発明とを対比すると、甲第2号証の3ページ左下欄14行-5ページ左上欄16行の記載からみて、甲第2号証に記載された「メインガバナー4」、「メインガバナー4」の上流側配管に接続し「2進デジタルバルブ61」を経由して「メインガバナー4」の下流側配管に接続される配管、「2進デジタルバルブ61」と「メインガバナー4」の操作部とを接続し途中で分岐した配管、「2進デジタルバルブ61」、「ドライバー回路62及びマイクロコンピュータ67」が、本件発明1の「メインガバナ」、「パイロット通路」、「分岐通路」、「ガバナ開閉手段及びパイロット通路開閉手段」、「制御手段」に相当するものと認められる。 そうすると、本件発明1は、甲第2号証に記載された発明とは、以下の点で相違し、その余の点では一致するものと認められる。 <相違点3> 本件発明1の「制御手段」が、「前記起動操作信号が出力されてから所定時間が経過するまでは、前記パイロット通路の開度を前記稼働時の開度よりも小さい緩衝開度に制御するとともに、前記所定時間が経過したところで前記パイロット通路の開度を前記稼働時の開度にする一方、前記停止操作信号出力手段によって停止操作信号が出力されたとき、前記パイロット通路開閉手段を閉弁して前記パイロット通路を遮断し、所定の停止操作信号が出力されてから前記パイロット通路が遮断されるまでに要する時間が、前記起動操作信号が出力されてから前記パイロット通路が前記稼働時の開度になるまでに要する時間よりも短時間となるように制御する」のに対し、甲第2号証に記載された発明の「ドライバー回路62及びマイクロコンピュータ67」は、このような制御を行うかは不明である点。 <相違点4> 本件発明1が「前記パイロット通路開閉手段によって前記パイロット通路が遮断されて前記メインガバナの稼働が停止しているときに、前記メインガバナを起動させるための起動操作信号を出力する起動操作信号出力手段」及び「前記メインガバナが稼働しているときに、前記メインガバナの稼働を停止させるための停止操作信号を出力する停止操作信号出力手段」を有するのに対し、甲第2号証に記載された発明は、このような「起動操作信号出力手段」及び「停止操作信号出力手段」を有するかは不明である点。 上記相違点3について検討すると、当該相違点3は上記相違点1と実質的に同じである。 よって、相違点4について検討するまでもなく、本件発明1は、甲第2号証に記載された発明、甲第3~6号証に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明することができたものではない。 また、本件発明2~4及び6については、直接又は間接的に本件発明1を引用するものであるから、本件発明1と同様、甲第2号証に記載された発明、甲第3~6号証に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明することができたものではない。 (イ)特許法第36条第6項第2号 a.請求項1の「前記起動操作信号出力手段によって起動操作信号が出力されたとき、前記パイロット通路開閉手段を開弁して、前記パイロット通路の開度を前記メインガバナの稼働時の開度に制御する」という記載は、明細書の段落【0037】、【0041】-【0045】に説明されているとおり、「起動操作スイッチ40」から「起動操作信号」が出力されると、「CPU101a」は「開閉手段30」を開弁方向に動作させ、「二次圧調整管5」が「整圧装置10」の稼働時の開度にすることを意味しており、「整圧装置10」は「メインガバナ11」とも言えるから、上記記載の技術的意味は明確である。 b.請求項1の「パイロット通路」の定義は、本件訂正により「前記配管の前記メインガバナの上流側と下流側とを流体が流通可能に連通するパイロット通路」となり、下流側の二次圧力の降下又は上昇によりパイロット通路内の流体の流量増加又は流量減少が生じることも明確である。 ウ 平成29年6月23日付け意見書における特許異議申立人の主張について (ア)明確性 特許異議申立人は、本件発明1~4及び6は、以下の点で、特許を受けようとする発明が明確ではないため、取り消されるべきものであると主張するので、検討する。 a.「ガバナ開閉手段」の構成の点(意見書の〔項目B1〕及び〔項目B2〕参照) 特許異議申立人は、ガバナ開閉手段及びガバナ開閉手段が有する分岐通路に関して、明細書に記載された第1~4実施形態の部材との対応関係が不明瞭になっており、本件発明1が不明確になっていると主張する。 ここで、本件発明1の「ガバナ開閉手段」は、「前記パイロット通路から分岐する分岐通路を有し、前記パイロット通路内の流体の流量変化にともなって変動する前記分岐通路内の流体の圧力に応じて前記メインガバナの開閉量を制御する」ものである。 そして、明細書に記載された第1実施形態においては、段落【0080】や図1にも示されたように、「オキジャリボール14および調整管3(第2調整管3b)とオキジャリボール14とを接続する配管」が「ガバナ開閉手段」であることが示されており、「調整管3とオキジャリボール14とを接続する配管」が「分岐通路」に相当することも明らかであるから、本件発明1は明確であると認められる。 一方、明細書に記載された第2~4実施形態については、「ベンチュリ・レストリクタ53および調整管52」が、「前記パイロット通路内の流体の流量変化にともなって変動する前記分岐通路内の流体の圧力に応じて前記メインガバナの開閉量を制御する」機能を有する「ガバナ開閉手段」であると理解できる。ただし、「ベンチュリ・レストリクタ53」は上流側及び下流側のパイロット通路に接続されるが、分岐部分は「ベンチュリ・レストリクタ53」内に設けられており、分岐通路に相当する「調整管52」は「ベンチュリ・レストリクタ53」から分岐しているから、本件発明1の「前記パイロット通路から分岐する分岐通路を有」する構成とは、一見対応していないようにみえる。しかし、明細書の段落【0049】の「なお、上記第2実施形態においては、ベンチュリ・レストリクタ53を設けることとしたが、ベンチュリ・レストリクタ53の代わりに固定絞りを設けることも可能である。」という記載や、段落【0061】の「なお、この第3実施形態においては、メインガバナおよびガバナ開閉手段を第2実施形態と同様の構成としたが、これらは第1実施形態と同様の構成であってもよい・・・」という記載からみて、第2~4実施形態においても、「前記パイロット通路から分岐する分岐通路を有」する「ガバナ開閉手段」を認識できるから、本件発明1は明確である。 b.「パイロット通路における」「開度」の記載の点(意見書の〔項目B3〕参照) 特許異議申立人は、パイロット通路における「開度」とはどの部分の開度を変化させることをいうのか、また、「開度」という用語の意味が不明確であると主張する。 しかし、本件発明1の「パイロット通路開閉手段」は、「前記パイロット通路における前記ガバナ開閉手段と前記メインガバナの下流側との間の開度を可変させる」ものであるから、「前記パイロット通路における」「開度」とは、「前記ガバナ開閉手段と前記メインガバナの下流側との間の」「パイロット通路開閉手段」の「開度」であることは明確である。 また、本件発明2における「前記パイロット通路における全体の開度」とは、「パイロット通路開閉手段」である「第1電磁弁」及び「第2電磁弁」の開閉により得られる、各パイロット通路をまとめた全体の開度を意味していることも明らかであり、本件発明1の「開度」と矛盾した記載であるとも認められない。 (イ)サポート要件 特許異議申立人は、本件発明1~4及び6は、以下の点で、特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載したものではないため、取り消されるべきものであると主張するので、検討する。 a.ガバナ開閉手段が分岐通路を有する点(意見書の〔項目C1〕及び〔項目C4〕参照) 特許異議申立人は、ガバナ開閉手段の「パイロット通路から分岐する分岐通路」は、発明の詳細な説明に記載されていないと主張する。 しかし、本件発明1の「ガバナ開閉手段」が「前記パイロット通路から分岐する分岐通路を有し」とした点については、上記(ア)a.で述べたとおり、明細書の第1~4実施形態として記載されているので、発明の詳細な説明に記載したものである。 なお、ガバナ開閉手段に、「分岐通路」以外に「中圧補助ガバナ12及び低圧補助ガバナ13」や「ニードルバルブ22」の手段が含まれるか否かは、本件発明1~4及び6には特定されておらず、特許異議申立人の主張するように本件発明1~4及び6のガバナ開閉手段にこれらの手段が「含まれない」と限定されるものでもない。よって、特許異議申立人の主張は失当である。 b.パイロット通路の開閉速度制御の点(意見書の〔項目C2〕参照) 特許異議申立人は、「所定の停止操作信号が出力されてから前記パイロット通路が遮断されるまでに要する時間」を、目標とする「前記稼働時の開度になるまでに要する時間」よりも短時間に調節するという制御は、発明の詳細な説明に記載されていないと主張する。 しかし、「所定の停止操作信号が出力されてから前記パイロット通路が遮断されるまでに要する時間が、前記起動操作信号が出力されてから前記パイロット通路が前記稼働時の開度になるまでに要する時間よりも短時間となるように制御する」点については、明細書の段落【0041】に「・・・入力した操作信号が起動操作信号であると判断した場合には、CPU101aは、開閉手段30の開弁速度を規制する処理を行う。ここで、例えば、開閉手段30の開弁速度は、閉弁速度の10分の1程度に規制される。」と記載されており、開弁速度を閉弁速度よりも遅くする制御を行うことが示されている。そして、開弁速度が閉弁速度よりも遅いということは、開弁に要する時間が閉弁に要する時間よりも長くなるように制御しており、つまり、遮断されるまでに要する時間が開弁に要する時間よりも短時間となるように制御していることと同じである。 よって、上記のように制御する点は、発明の詳細な説明に記載されたものである。 c.「前記分岐通路内の流体の圧力に応じて前記メインガバナの開閉量を制御する」点(意見書の〔項目C3〕参照) 特許異議申立人は、ガバナ開閉手段は、分岐通路内の流体の圧力ではなく、パイロット通路内の流体の圧力に応じてメインガバナの開閉量を制御していると解釈できるから、「前記分岐通路内の流体の圧力に応じて前記メインガバナの開閉量を制御する」点は、発明の詳細な説明に記載されていないと主張する。 しかし、本件発明1では、例えば図1に記載された第1実施形態をみると、パイロット通路内の流体の圧力の変動により、オキジャリボール14内の圧力が変動し、ダイヤフラム14aが作動するものである(明細書の段落【0030】を参照)。そうすると、パイロット通路内の流体の圧力の変動により、分岐通路である「調整管3とオキジャリボール14とを接続する配管」内の流体の圧力の変動に伴って、ダイヤフラム14が作動し、メインガバナ11の開閉量が制御されるものであることが理解できる。よって、「前記分岐通路内の流体の圧力に応じて前記メインガバナの開閉量を制御する」点は、発明の詳細な説明に記載されているものである。 4.むすび 以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件請求項1~4及び6に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に本件請求項1~4及び6に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 さらに、本件請求項5に係る特許は、訂正により削除されたため、本件請求項5に対して、特許異議申立人がした特許異議の申立てについては、対象となる請求項が存在しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2016-700509

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