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特許異議申立

2023-700272

フォトポリマー組成物

審判番号
2023-700272
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2020-520628
登録番号
7134545
請求日
2023年03月13日
審決日
2023年07月07日
公報発行日
2023年08月25日
結論
維持
当事者
  • 【権利者】エルジー・ケム・リミテッド
  • 【権利者代理人】実広 信哉
  • 【権利者代理人】渡部 崇
  • 【異議申立人】安井 健治
審判長/審判官
  • 審判長 里村 利光
  • 審判官 河原 正
  • 審判官 松波 由美子
分類
P1651.113-Y (G03H) / P1651.121-Y (G03H)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第1項、特許法第29条第2項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第7134545号発明「フォトポリマー組成物」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7134545号の請求項1ないし12に係る特許を維持する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第7134545号(以下「本件特許」という。)の請求項1~12に係る特許についての出願(特願2020-520628号)は、2018年(平成30年)12月7日(パリ条約に基づく優先権主張 外国庁受理 2017年12月11日 韓国)を出願日とする国際出願であって、令和4年9月2日にその特許権の設定登録がされ、令和4年9月12日に特許掲載公報が発行された。 その後、令和5年3月13日に、請求項1~12に係る特許に対し、特許異議申立人 安井 健治(以下「特許異議申立人」という。)により特許異議の申立てがされた。 第2 本件発明 特許第7134545号の請求項1~12の特許に係る発明(以下、それぞれ「本件特許発明1」~「本件特許発明12」という。)は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1~12に記載された事項により特定される次のとおりのものである。 「【請求項1】 多重水素結合が可能な水素結合性官能基と1以上のイソシアネート基を有する反応性イソシアネート化合物と2以上のヒドロキシ基を有するポリオール間の反応物を含む高分子マトリックスまたはその前駆体; 光反応性単量体;および 光開始剤;を含み、 前記多重水素結合が可能な水素結合性官能基と1以上のイソシアネート基を有する反応性イソシアネート化合物は、 多重水素結合が可能な水素結合性官能基を含有するヘテロ環化合物;と、1以上のイソシアネート基を有する脂肪族、脂環式または芳香族化合物; が結合された構造を有する、ホログラム記録用フォトポリマー組成物。 【請求項2】 前記多重水素結合が可能な水素結合性官能基は、-OH、-OR、-NH2、-NHR(Rは炭素数1乃至20の脂肪族基)、-NR2(Rは炭素数1乃至20の脂肪族基)、-COOH基、-COOR(Rは炭素数1乃至20の脂肪族基)、-CONH2、-CONR2、-NHOH、および-NROR(Rは炭素数1乃至20の脂肪族基)からなる群より選択される1価官能基であるか、 -NHCO-、-NRCO-、-O-、-NH-、-NR-、-COO-、-CONHCO-、-CONRCO-、-NH-NH-、-NR-NH-、および-NR-NR-からなる群より選択される2価官能基であり、 前記Rは炭素数1乃至20の脂肪族基、炭素数4乃至20の脂環式基、または炭素数6乃至20の芳香族である、 請求項1に記載のホログラム記録用フォトポリマー組成物。 【請求項3】 前記多重水素結合が可能な水素結合性官能基を含有するヘテロ環化合物は、2-ウレイド-4-ピリミジノン(2-ureido-4-pyrimidinone)、2-ウレイド-4-ピリミジノール(4-ureido-4-pyrimidinol)、2-ウレイド-4-ピリミドン(2-uriedo-4-pyrimidone)、ジアシルピリミジン(diacylpyrimidine)、2,6-ジ(アセチルアミノ)-4-ピリジル(2,6-di(acetylamino)-4-pyridyl)、2,7-ジアミノ-1,8-ナフチリジン(2,7-diamino-1,8-naphthyridine)、アデニン(adenine)、チミン(thymine)、ウラシル(uracil)、グアニン(guanine)シトシン(cytosine)、アデニン-チミン二量体(adenine-thymine dimer)、アデニン-ウラシル二量体(adenine-uracil dimer)、およびグアニン-シトシン二量体(guanine-cytosine dimer)からなる群より選択されるいずれか一つである、 請求項1または2に記載のホログラム記録用フォトポリマー組成物。 【請求項4】 前記1以上のイソシアネート基を有する脂肪族、脂環式または芳香族化合物は、1以上のイソシアネート基を含む炭素数1乃至20の脂肪族化合物、1以上のイソシアネート基を含み、炭素数1乃至10の脂肪族基が1以上置換された炭素数4乃至20の脂環式化合物、または1以上のイソシアネート基を含み、炭素数1乃至10の脂肪族基が1以上置換された炭素数6乃至20の芳香族化合物である、 請求項1から3のいずれか一項に記載のホログラム記録用フォトポリマー組成物。 【請求項5】 前記2以上のヒドロキシ基を有するポリオールは、1,000g/mol乃至3,000g/molの水酸基当量を有し、 前記多重水素結合が可能な水素結合性官能基と1以上のイソシアネート基を有する反応性イソシアネート化合物に対比して2以上のヒドロキシ基を有するポリオールのモル比が2乃至8である、請求項1から4のいずれか一項に記載のホログラム記録用フォトポリマー組成物。 【請求項6】 前記光反応性単量体は、多官能(メタ)アクリレート単量体、または単官能(メタ)アクリレート単量体を含む、請求項1から5のいずれか一項に記載のホログラム記録用フォトポリマー組成物。 【請求項7】 前記高分子マトリックスまたはその前駆体1重量%乃至80重量%;前記光反応性単量体1重量%乃至80重量%;および光開始剤0.1重量%乃至20重量%;を含む、請求項1から6のいずれか一項に記載のホログラム記録用フォトポリマー組成物。 【請求項8】 低屈折率フッ素系化合物をさらに含む、請求項1から7のいずれか一項に記載のホログラム記録用フォトポリマー組成物。 【請求項9】 前記低屈折率フッ素系化合物は、エーテル基、エステル基およびアミド基からなる群より選択された1種以上の官能基および2以上のジフルオロメチレン基を含む、請求項8に記載のホログラム記録用フォトポリマー組成物。 【請求項10】 請求項1から9のいずれか一項に記載のホログラム記録用フォトポリマー組成物から製造されたホログラム記録媒体。 【請求項11】 請求項10に記載のホログラム記録媒体を含む光学素子。 【請求項12】 可干渉性光源により請求項1から9のいずれか一項に記載のホログラム記録用フォトポリマー組成物に含まれている光反応性単量体を選択的に重合させる段階を含む、ホログラフィック記録方法。」 第3 特許異議申立書に記載した申立ての理由の概要 令和5年3月13日に特許異議申立人が提出した特許異議申立書に記載した申立ての理由の概要は次のとおりである。 1 申立理由 (1) 理由1 請求項1~7、10~12の特許に係る発明は、その優先日前に日本国内又は外国において頒布された刊行物である甲第1号証乃至甲第3号証のいずれかに記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し、本件特許の請求項1~7、10~12に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号に該当し取り消されるべきものである。 (2) 理由2 請求項1~12の特許に係る発明は、その優先日前に、日本国内又は外国において頒布された刊行物である甲第1号証乃至甲第3号証のいずれに記載された発明、あるいは、甲第1号証乃至甲第3号証のいずれかに記載された発明及び周知技術、あるいは甲第1号証乃至甲第3号証のいずれかに記載された発明及び甲第4号証に記載された事項に基づいて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1~12に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消されるべきものである。 2 証拠方法 甲第1号証:特表2010-523774号公報(主引用例) 甲第2号証:特表2010-524037号公報(主引用例) 甲第3号証:特開平11-352303号公報(主引用例) 甲第4号証:特表2013-510203号公報(副引用例) 甲第5号証:Ulrich Meier-Westhues,「Polyurethanes-Coatings,Adhesives and Sealants」,Hannover:Vincentz Network,1-7葉,2007年(周知技術を示す文献) 甲第6号証:Dennis P. Curran,他1名,「Altering the Stereochemistry of Allylation Reactions of Cyclic α-Sulfinyl Radicals with Diarylureas」,1994年,J.Org.Chem.,Vol.59,No.12,p.3259-3261(周知技術を示す文献) 甲第7号証:Dennis P. Curran 他1名,「Acceleration of a Dipolar Claisen Rearrangement by Hydrogen Bonding to a Soluble Diaryl Urea」,1995年,Tetrahedron Letters,Volume.36,No.37,p.6647-6650(周知技術を示す文献) 甲第8号証:Iskender Yilgor 他1名,「Critical parameters in designing segmented polyurethanes and their effect on morphology and properties: A comprehensive review」,2015年,Polymer,Vol.58,p.A1-A36(周知技術を示す文献) 甲第9号証:Holger Mundstock 他3名,「New Low Viscous Polyisocyanates for VOC Compliant Systems」,2002年,Macromolecular Symposia,Vol.187,281,1-15葉,WILLEY-VCH Verlag GmBH(周知技術を示す文献) 第4 当合議体の判断 1 甲第1号証~甲第3号証及び甲第9号証について 以下、甲第1号証を、甲1と略し、他も同様とする。 (1) 甲1の記載及び引用発明1 ア 甲1の記載 甲1には、以下の記載がある。 (ア) 「【技術分野】 【0001】 本発明は、放射線および熱作用によって架橋して硬化するポリウレタン系およびホログラフィック媒体の製造のためのその使用に関する。 ・・・略・・・ 【発明が解決しようとする課題】 【0006】 本発明の目的は、ホログラフィック記憶媒体用の記憶層の製造に適した、ポリウレタンマトリックスポリマーとその中に存在するオレフィン性不飽和放射線硬化性モノマーとの光学的に十分な適合性を有するポリウレタン系を提供することであった。 【課題を解決するための手段】 【0007】 マトリックスポリマーと不飽和モノマーとの優れた適合性は、正確には、イソシアネート反応性ブロックコポリマーをマトリックスポリマー用のビルディングブロックとして用いる場合に得られることを見出した。 【0008】 本発明は、 A)ポリイソシアネート、 B)イソシアネート反応性ブロックコポリマー、 C)化学線への暴露によりエチレン性不飽和化合物と重合を伴って反応する基(放射線硬化性基)を有する化合物、 D)必要に応じて、フリーラジカル安定剤、および E)光開始剤 を含むポリウレタン系に関する。」 (イ) 「【0019】 全てのヒドロキシ官能性ブロックコポリマーを成分B)に用いることができる。これらは、例えば、2以上のポリエステル、ポリエーテル、ポリカーボネート、ポリ(メタ)アクリレートおよび/またはポリウレタンのブロック状に配置されたセグメントを含有し得る。 ・・・略・・・ 【0037】 内部ポリエーテルセグメントは、・・・略・・・特に好適にはテトラヒドロフランをベースとする。 ・・・略・・・ 【0038】 好適には、ラクトンブロックは、ε-カプロラクトンをベースとするものであり、・・・略・・・。 【0039】 極めて特に好適なブロックコポリマーは、・・・略・・・特に好適には700g/mol~3000g/molの数平均モル質量を有する直鎖状のポリ(ε-カプロラクトン)ブロック-ポリ(テトラヒドロフラン)ブロック-ポリ(ε-カプロラクトン)ポリオールであり、・・・略・・・。 【0040】 本発明によるブロックコポリマーは、例えば、以下のブロックを上記の方法によりジヒドロキシ官能性ポリオールブロックと付加または縮合反応させることによって得られる。 ラクトンブロックの場合には、適当なラクトンを付加させ、適当な重合用の触媒を添加する。適当な触媒は、エステル化に適当な全てのものであり、例えばオクタン酸錫・・・略・・・などである。 ・・・略・・・ 【0048】 成分C)の好適な化合物は、・・・略・・・およびプロパン-2,2-ジイルビス[(2.6-ジブロモ-4,1-フェニレン)オキシ(2-{[3,3,3-トリス(4-クロロフェニル)プロパノイル]オキシ}プロパン-3,1-ジイル)オキシエタン-2,1-ジイル]ジアクリレートである。 ・・・略・・・ 【0050】 1以上の光開始剤を成分E)として用いる。・・・略・・・(II型)開始剤、例えば、・・・略・・・例えば、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド・・・略・・・がさらに適当である。 ・・・略・・・ 【0063】 本発明によるPU系は通常、まず、ポリイソシアネートA)を除く全ての成分を互いに混合させる手順によって得られる。 ・・・略・・・ 【0065】 次いで、ポリイソシアネート成分A)との混合は塗布直前に行い、・・・略・・・。混合によって、組成物に応じて、数秒~数時間内に室温で硬化する透明な液体処方物が得られる。 ・・・略・・・ 【0076】 次いで、記載の方法の1つによって得られる材料は、ホログラムの記録に用いることができる。この目的のため、2つの光線が、ホログラフィーの当業者に既知の方法によって物質中において阻害され(当合議体注:「阻害」は、「干渉」の誤訳である。)(P.Hariharan、Optical Holography 2nd Edition、Cambridge University Press 、1996年)、ホログラムが生じる。 ・・・略・・・ 【0077】 記載された方法の一つによって製造されるホログラムは、データ貯蔵用、例えば人物または物体の三次元表示用および人物または記事の確認用として働くイメージの表示、レンズ、鏡、フィルター、散乱スクリーン、回折素子、光学導波管および/またはマスクとして働く光学部品の製造に役立ち得る。 【0078】 従って、本発明は、ホログラフィック媒体の製造における本発明によるPU系の使用、およびホログラフィック媒体自体にさらに関する。 【実施例】 ・・・略・・・ 【0082】 ブロックコポリマーB: まず、0.25gのオクタン酸錫、172.29gのε-カプロラクトンおよび327.46gの二官能性ポリテトラヒドロフランポリエーテルポリオール(OHの当量325g/mol)を1Lフラスコ中に導入し、120℃に加熱し、この温度で固形分(不揮発性構成成分の割合)が99.5重量%以上になるまで維持した。次いで、冷却を行い、生成物を粘性の液体として得た。 ・・・略・・・ 【0088】 PU処方物C: イソシアネート反応性成分を9.049gのブロックコポリマーB、0.660gのプロパン-2,2-ジイルビス[(2,6-ジブロモ-4,1-フェニレン)オキシ(2-{[3,3,3-トリス(4-クロロフェニル)プロパノイル]オキシ}プロパン-3,1-ジイル)オキシエタン-2,1-ジイル]ジアクリレート、0.026gのDarocure TPO(Ciba Specialty Chemicals製の生成物)、0.079gのベンズヒドロールおよび0.396gのジブチルフタレートから、透明な溶液が存在するまで該混合物を50℃で撹拌することによって調製した。用いるイソシアネート成分は高オキサジアジン含量を有するヘキサンジイソシアネートから得られたポリイソシアネートであった(Desmodur XP 2410、Bayer MaterialScience AG製の試験生成物、NCO含量:23.5%)。 ・・・略・・・ 【0093】 試験試料を表に示すPU処方物から、イソシアネート成分およびイソシアネート反応性成分を記載した割合で、ウレタン化触媒としてジメチルジカルボキシレート(Fomrez UL 28、GE Siliconesの生成物)の記載量を添加して混合することによって製造した。 【0094】 【表1】 [図:0001400500000001.jpg] 【0095】 次いで、各処方物をガラス板に塗布し、2枚のガラス板を適当な間隔(例えば250μm)に保持するスペーサーを有する第2ガラス板でカバーし、該混合物でガラス板の2枚の内部表面を完全に湿潤させた。硬化するため、まず、このように調製した試料を30分間室温で貯蔵し、次いで2時間、50℃または60℃で硬化した。光学的透明度を、室温硬化の開始、30分室温硬化の終わりおよび2時間50度の強制硬化の終わりに評価した。評価は以下の体系を基準とした: 1=透明 2=軽微な不透明 3=完全に不透明 【0096】 以下の値を記載の実施例の処方物のために得た: 【0097】 【表2】 [図:0001400500000002.jpg] ・・・略・・・ 【0101】 上記のように、本発明による2成分処方物A~Fが全ての評価基準において比較例Gより実質的に高い透明度を有することを見出した。」 イ 引用発明1 (ア) 甲1の【0088】には、実施例として、「PC処方物C」の「イソシアネート反応性成分」を調製すること、「PC処方物C」における「イソシアネート成分」として、「高オキサジアジン含量を有するヘキサンジイソシアネートから得られたポリイソシアネート」である「Desmodur XP 2410、Bayer MaterialScience AG製の試験生成物、NCO含量:23.5%」を用いることが記載されている。 また、甲1の【0093】及び【0094】【表1】によれば、「PU処方物C」は、「イソシアネート成分」を「2.988g」、「イソシアネート反応性成分」を「10.212g」、「ウレタン化触媒」として「ジメチルジカルボキシレート(Fomrez UL 28、GE Siliconesの生成物)」を「0.005g」添加して混合して製造したものと理解できる ここで、上記目的及び「PU処方物C」の組成からみて、「PU」は、「ポリウレタン」を意味することは、当業者にとって明らかなことである。 (イ) また、甲1の【0082】には、「PU処方物C」の「イソシアネート反応性成分」の調製に用いられる「ブロックコポリマーB」の製造方法が記載されている。 (ウ) 上記(ア)及び(イ)の甲1の【0006】や実施例(【0088】、【0093】、【0094】【表1】、【0082】)の記載からみて、甲1には、「ホログラフィック記憶媒体用の記憶層の製造に適した」「ポリウレタン」「処方物C」に係る発明(以下「引用発明1」という。)として、次の発明が記載されている認められる。 「 イソシアネート成分を2.988g、イソシアネート反応性成分を10.212g、ウレタン化触媒としてジメチルジカルボキシレート(Fomrez UL 28、GE Siliconesの生成物)を0.005g添加して混合して製造された、ホログラフィック記憶媒体用の記憶層の製造に適したポリウレタン処方物Cであって、 イソシアネート反応性成分は、9.049gのブロックコポリマーB、0.660gのプロパン-2,2-ジイルビス[(2,6-ジブロモ-4,1-フェニレン)オキシ(2-{[3,3,3-トリス(4-クロロフェニル)プロパノイル]オキシ}プロパン-3,1-ジイル)オキシエタン-2,1-ジイル]ジアクリレート、0.026gのDarocure TPO(Ciba Specialty Chemicals製の生成物)、0.079gのベンズヒドロールおよび0.396gのジブチルフタレートから、透明な溶液が存在するまで該混合物を50℃で撹拌することによって調製したものであり、 イソシアネート成分は、高オキサジアジン含量を有するヘキサンジイソシアネートから得られたポリイソシアネートである、Desmodur XP 2410、Bayer MaterialScience AG製の試験生成物、NCO含量:23.5%、であり、 ブロックコポリマーBは、0.25gのオクタン酸錫、172.29gのε-カプロラクトンおよび327.46gの二官能性ポリテトラヒドロフランポリエーテルポリオール(OHの当量325g/mol)を1Lフラスコ中に導入し、120℃に加熱し、この温度で固形分が99.5重量%以上になるまで維持し、次いで、冷却を行い、生成物を粘性の液体として得られたものである、 ポリウレタン処方物C。」 (2) 甲2の記載及び引用発明2 ア 甲2の記載 甲2には、以下の記載がある。 (ア) 「【0002】 背景 発明の分野 本発明は、一般に、ホログラフィおよび他の関連分野における使用のための、高性能光重合性記録材料に関する。本発明は、一般に、そのような光重合性材料を含んで成る物品にも関する。さらに、本発明は、一般に、そのような物品でホログラムを記録することにも関する。 ・・・略・・・ 【発明の概要】 【発明が解決しようとする課題】 【0009】 しかし、高い回折効率、高ダイナミックレンジならびに他の望ましい特性を有するフォトポリマーを形成する光活性モノマーの性能を向上させる他の方法が存在しうる。 【課題を解決するための手段】 【0010】 本発明の第一の広い態様によれば、ポリマーマトリックスに組み込まれた少なくとも1種の光活性インデックスコントラスティング重合性材料および光開始剤系を含んで成る物品であって、該光活性重合性材料が適切に高い分子量であり、組成物が330~490nmの光学的吸収を有する物品が提供される。 【0011】 本発明の第二の広い態様によれば、物品のポリマーマトリックスは、イソシアネート官能基を有する成分とポリオール官能基を有する成分との重合反応によって形成される。」 (イ) 「【0023】 本発明の目的にとって、「ホログラフィック格子」、「ホログラフ」または「ホログラム」(以下、集合的かつ互換的に、「ホログラム」と称する)という用語は、信号ビームおよぴ参照ビームが互いに干渉する際に形成される干渉パターンを表わす通常の意味で使用される。 ・・・略・・・ 【0050】 本発明の目的にとって、「インデックスコントラスト」という用語は、より高いまたはより低い屈折率の空間的独立ボリュームを形成する材料の能力を意味する。例えば、交差レーザ光によって生じる干渉パターンを使用することによって、より低いインデックスコントラスティング支持マトリックス中で重合したより高いインデックスコントラスティングモノマーにおいて、重合モノマーのパターンは、この干渉パターンによく似ており、従って、より高い屈折率を有する材料のボリューム(ここは、光強度がより高い)、およびより低い屈折率を有する材料のボリューム(ここは、光強度がより低いかまたはゼロである)を形成する。 ・・・略・・・ 【0062】 本発明の目的にとって、「光学物品」という用語は、ホログラフィック媒体・・・略・・・などを含んで成る物品を意味する。光学物品の例は、記録媒体・・・略・・・などである。 【0063】 A.記録媒体、物品および記録ホログラム 本発明のホログラフィック記憶媒体の形態は、媒体へのホログラフィ書き込み、および媒体からの読み取りを可能にするように形成しうる。ホログラフィック記憶媒体の製造は、支持マトリックス、光活性重合性材料、光開始剤などの、組み合わせ、プレンド、混合物などを、支持構造物、例えば基材に付着させるか、または、より一般的には、1対(即ち2つ)の基材の間に配置し、例えば、混合物を入れるためのガスケットを使用することを含む。 ・・・略・・・ 【0086】 本発明の光開始剤の形態は、アシルホスフィンオキシドまたはオキシムエステルまたはそれらの組み合わせを含んで成る光開始剤を包含しうる。 ・・・略・・・ 【実施例1】 【0088】 2種類の配合物(一方は比較的低い分子量のモノマーを使用し、他方は高分子量モノマーを使用する)のホログラフィック性能を比較する。モノマーの比較しうるモル数が使用されるように、光活性モノマーの量(質量%)を調節する。 モノマーA: 【化3】 [図:0001400500000003.jpg] ・・・略・・・ 【実施例2】 【0091】 変化する光学密度を有する配合物のホログラフィック性能を比較する。 配合物は以下の物質を含む: 配合物1: Darocur TOP 可変量(質量%) モノマーA 5.00質量% ベンズヒドロール 0.11質量% ヒドロキシプロピルアクリレート 0.03質量% Desmodur XP2410 29.4質量% ポリカプロラクトン(Mw:約750) 25.7質量% 【0092】 Darocur TPOは、Ciba Specialty Chemicalsから入手可能な2,4,6-トリメチル-ベンゾイル-ジフェニルホスフィンオキシドである。 Desmodur XP2410は、23.5%のNCO分子(当合議体注:「NCO分」は「NCO分子」の誤記と認められる。)を有し、高含有量のオキサジアジンジオン構造を含有するヘキサンジイソシアネート-1,6に基づくポリイソシアネートであり、Bayer MaterialScience AG, Leverkusen, Germanyから入手可能である。 【0093】 図1は、媒体の光学密度に対するM/#の依存性を示す。 【0094】 上記実施例は、媒体の光学的吸収を少なくとも1.0未満の数値に調節することが有利であることを示している。 【0095】 ブロックコポリマー1: 1リットル三つ口フラスコに、0.25gのオクタン酸第一錫、172.29gのカプロラクトンおよび327.46gの二官能性ポリテトラヒドロフランポリエーテルポリオール(当量325g/Mol OH)を装入し、120℃に加熱した。その温度を、固形分が99.5質量%より高くなるまで維持した。冷却後、粘性生成物を得た。 【0096】 ブロックコポリマー2: 1リットル三つ口フラスコに、0.18gのオクタン酸第一錫、374.81gのカプロラクトンおよび374.81gの二官能性ポリテトラヒドロフランポリエーテルポリオール(当量500g/Mol OH)を装入し、120℃に加熱した。温度を、固形分が99.5質量%より高くなるまで維持した。冷却後、ワックス状生成物を得た。 ・・・略・・・ 【実施例4】 【0099】 可塑剤を使用するかまたは使用しない配合物のホログラフィック性能を比較する。配合物は下記の物質を含有していた: 配合物1: Darocur TPO 0.15質量% モノマーA 8.00質量% ベンズヒドロール 0.50質量% Desmodur XP2410 25.13質量% ブロックコポリマー1 66.19質量% Fomrez UL 28 0.05質量% 配合物2: Darocur TPO 0.15質量% モノマーA 8.00質量% ベンズヒドロール 0.50質量% Desmodur XP2410 22.35質量% ブロックコポリマー1 58.87質量% Fomrez UL 28 0.05質量% ジブチルフタレート 10.0質量% Fomrez UL 28:GE Silicones製ウレタン触媒 【表3】 [図:0001400500000004.jpg] 【0100】 上記実施例は、より高い感光性媒体を生じる可塑剤を使用することが有利であることを示している。」 イ 引用発明2 (ア) 甲2でいう本発明の技術分野は、「ホログラフィおよび他の関連分野における使用のための、高性能光重合性記録材料に関する」(甲2【0002】)ものであるところ、【0099】には、実施例4の「配合物1」が記載されている。 また、上記「配合物1」で用いられる「Darocur TPO」、「モノマーA」、「Desmodur XP2410」については、【0092】、【0088】【化3】に説明されている。 さらに、【0088】の記載から、「モノマーA」は、「光活性モノマー」であることが理解できる。 (イ) また、甲2の【0095】には、上記「配合物1」で用いられる「ブロックコポリマー1」の調製方法が記載されている。 (ウ) 上記(ア)及び(イ)より、甲2には、実施例4の「配合物1」に係る発明(以下「引用発明2」という。)として、次の発明が記載されているものと認められる。 「 ホログラフィおよび他の関連分野における使用のための、高性能光重合性記録材料に関する、配合物1であって、 配合物1は、 Darocur TPO 0.15質量% 光活性モノマーA 8.00質量% ベンズヒドロール 0.50質量% Desmodur XP2410 25.13質量% ブロックコポリマー1 66.19質量% Fomrez UL 28 0.05質量%、からなり、 Darocur TPOは、Ciba Specialty Chemicalsから入手可能な2,4,6-トリメチル-ベンゾイル-ジフェニルホスフィンオキシドであり、 Desmodur XP2410は、23.5%のNCO分子を有し、高含有量のオキサジアジンジオン構造を含有するヘキサンジイソシアネート-1,6に基づくポリイソシアネートであり、Bayer MaterialScience AG, Leverkusen, Germanyから入手可能であり、 Fomrez UL 28は、GE Silicones製ウレタン触媒であり、 ブロックコポリマー1は、1リットル三つ口フラスコに、0.25gのオクタン酸第一錫、172.29gのカプロラクトンおよび327.46gの二官能性ポリテトラヒドロフランポリエーテルポリオール(当量325g/Mol OH)を装入し、120℃に加熱した。その温度を、固形分が99.5質量%より高くなるまで維持し、冷却後、得られた粘性生成物であり、 光活性モノマーAは、 [図:0001400500000005.jpg] である、 配合物1。」 (3) 甲3の記載及び引用発明3 ア 甲3の記載 甲3には、以下の記載がある。 (ア) 「【0002】 【発明の属する技術分野】本発明は、ホログラフィ記録媒体を含む光学製品、特にホログラフィ記録システムとともに用いると有用な媒体および光学フィルタやビーム配向体などの素子として有用な媒体に関する。 ・・・略・・・ 【0005】 【発明が解決しようとする課題】 ・・・略・・・この記事に記載されている材料は、液体モノマー物質(光活性モノマー)と光重合開始剤(光に暴露されてモノマーの重合を促進する)を含有する光画像化システムを含有し、光画像化システムは光の暴露に対し実質的に不活性である有機ポリマーホストマトリックスである。情報を材料に書き込む間(データを表示する配列に記録光を通過させることにより)、露光されている領域でモノマーの重合が起こる。重合によるモノマー濃度低下により、材料の露光されていない暗い領域のモノマーは、露光されている領域に拡散する。重合とそれによる濃度勾配が屈折率を変化させ、データを表示するホログラムを形成する。 ・・・略・・・ 【0007】したがって、ホログラフィ記憶システムへの使用に適した光記録媒体を製造するのに進歩が見られたが、さらなる進歩が望まれる。特に、マトリックス材料と光活性モノマーの反応を実質的に避け、有用なホログラフィ特性を示すような比較的厚い層、例えば200μmより厚い層に製造できる媒体が望まれている。 【0008】 【課題を解決するための手段】本発明は、従来の記憶媒体の改善で構成されている。本発明では、マトリックス前駆体(すなわち、マトリックスを形成する1種または複数の化合物)および独立した反応で重合する光活性モノマーを使用するので、硬化の間の光活性モノマーとマトリックス前駆体との相互反応およびそれに続くモノマーの重合の阻害の両方を実質的に防止できる。また、相溶性のあるポリマーを形成するマトリックス前駆体と光活性モノマーを使用するので、相分離を実質的に避けることができる。また、そのままで形成するので、所望の厚さの媒体を製造できる。」 (イ) 「【0015】 【発明の実施の形態】本発明においてマトリックスポリマーを形成するのに熟慮された重合反応の例としては、・・・略・・・イソシアネート-ヒドロキシル段階重合(ウレタン形成)およびイソシアネート-アミン段階重合(ウレア形成)がある。 【0016】上記の反応は、適当な触媒により可能になり、または促進される。例えば、・・・略・・・ウレタンとウレア形成はスズ触媒が用いられるとき速く進行する。 ・・・略・・・ 【0035】 ・・・略・・・一般的にホログラフィ光学素子と言われるこれらの製品は、データ記憶に関して以上で述べたように、記録媒体内に、特定の光学干渉パターンを作ることにより製造される。これらのホログラフィ光学素子用の媒体は、記録媒体や導波管に関して本願で述べた技術により製造できる。 ・・・略・・・ 【0037】以下の典型的な実施例により、本発明はさらに明確になるであろう。 【実施例】比較例1 89.25重量%のフェノキシエチルアクリレート(光活性モノマー)、10.11重量%のエトキシ化ビスフェノールAジアクリレート(光活性モノマー)、0.5重量%のCiba CGI-784(上記で説明済み)(光重合開始剤)および0.14重量%のジブチルスズジラウリレート(マトリックス形成用の触媒)を含む溶液を調製した。0.0904gの溶液を、0.2784gのジイソシアネート末端ポリプロピレングリコール(分子量=2471)(マトリックス前駆体)と0.05gのα、ω-ジヒドロキシポリプロピレングリコール(分子量=425)(マトリックス前駆体)を含む瓶に加えた。混合物を完全に混合し、光を遮蔽しながら室温で一晩重合させた。重合はイソシアネート基とヒドロキシル基の段階重合であり、ポリウレタンおよび溶解したアクリル酸エステルモノマーが生成した。前記混合物は何もつけていない目には透明に見えた。アクリル酸エステルモノマーの重合を開始する強いタングステンライトにあてると、前記物質は乳白色になり、ポリウレタンマトリックスとアクリル酸エステルポリマーが相溶性でないことを示した。Krauseから出版されている上述のポリマー混和性の表で調べてみると、ポリウレタンは、塩素化されたポリマーであるSaranRと混和性、したがって相溶性であることが分かる。実施例1では、この情報を利用して作られた系を考慮する。 【0038】実施例1 98.86重量%の4-クロロフェニルアクリレートおよび1.14重量%のジブチルスズジラウリレートを含む溶液を調製した。この溶液0.017gを、0.2519gのジイソシアネート末端ポリプロピレングリコール(分子量=2471)、0.047gのα、ω-ジヒドロキシポリプロピレングリコール(分子量=425)、0.051gの4-クロロフェニルアクリレートおよび0.00063gのCiba CGI-784(光重合開始剤)を含む瓶に加えた。この混合物を完全に混合し、光を遮蔽しながら室温で一晩重合させた。重合はイソシアネート基とヒドロキシル基の段階重合であり、ポリウレタンおよび溶解したクロロフェニルアクリレートモノマーが生成した。前記混合物は何もつけていない目には透明に見えた。アクリレートモノマーの重合 を開始する強いタングステンライトにあてても、試料は透明のままであり、モノマーとマトリックスポリマーの相溶性を示した。」 イ 引用発明3 (ア) 甲3でいう本発明は、「ホログラフィ記録媒体を含む光学製品、特にホログラフィ記録システムとともに用いると有用な媒体および光学フィルタやビーム配向体などの素子として有用な媒体に関する」(【0002】)ものである。 (イ) 甲3の【0038】には、実施例1が記載されているところ、「実施例1では、この情報を利用して作られた系を考慮する」とされる【0037】に記載の「比較例1」によれば、実施例1の「ジブチルスズジラウリレート」は「マトリックス形成用の触媒」であることが理解できる。 (ウ) 上記(ア)及び(イ)より、甲3には、実施例1で製造された、「ホログラフィ記録媒体を含む光学製品、特にホログラフィ記録システムとともに用いると有用な媒体」「に関する」、「混合物」に係る発明(以下「引用発明3」という。)として、次の発明が記載されているものと認められる。 「ホログラフィ記録媒体を含む光学製品、特にホログラフィ記録システムとともに用いると有用な媒体に関する、混合物であって、 8.86重量%の4-クロロフェニルアクリレートおよび1.14重量%のジブチルスズジラウリレート(マトリックス形成用の触媒)を含む溶液を調製し、この溶液0.017gを、0.2519gのジイソシアネート末端ポリプロピレングリコール(分子量=2471)、0.047gのα、ω-ジヒドロキシポリプロピレングリコール(分子量=425)、0.051gの4-クロロフェニルアクリレートおよび0.00063gのCiba CGI-784(光重合開始剤)を含む瓶に加えて、製造された、混合物。」 (4) 甲9の記載 甲9には、以下の記載がある。 ア 第2葉 「 Products ・・・略・・・ Low Viscous Symmetric Trimmer(ST) → Desmodur N 3600 Very Low Viscous Asymmetric Trimmer → Desmodur XP 2410 (VLV AST) ・・・略・・・ Uretdione → Desmodur N 3400」 (日本語訳) 「 製品 ・・・略・・・ 低粘度対称3量体(ST) → Desmodur N 3600 超低粘度非対称3量体 → Desmodur XP 2410 (VLV AST) ・・・略・・・ ウレトジオン → Desmodur N 3400」 イ 第3葉(第3頁) タイトル 「New Low Viscous Polyisocyanates for VOC Compliant Systems」 (日本語訳) 「VOC準拠系のための新しい低粘度ポリイソシネート」 ウ 第3葉(第3頁) 要約 4~7行 「The most recent development in HDI-polyisocyanate research are the iminooxadiazinediones (asymmetric trimers). In this paper, a new product based on that technology with a very low viscosity (700 mPas@23℃) and a NCO-functionality of more than 3 is presented.」 (日本語訳) 「HDI-ポリイソシアネート研究の最も最近の進歩は、イミノオキサジアジンジオン(非対称3量体)である。この論文では、超低粘度(700mPas(23℃))、3以上のNCO官能性を持つこの技術に基づく新製品が示される。」 エ 第4葉(第4頁)11~16行 「Later on, the biuret-type of Desmodur N hardeners experienced support - and competition - by HDIisocyanurates or simply 'trimers'4. Their advantages over the biurets are a better monomer stability, and a somewhat lower viscosity as well (Fig. 3). Both effects can be attributed to the absence of N-H-fragments in the isocyanurate's backbone rendering the structure essentially inert towards reverse reaction (monomer formation) and intermolecular hydrogen bonding, respectively, the latter beeing one reason for a higher viscosity of biurets versus trimers. [図:0001400500000006.jpg] 」 (日本語訳) 「後に、Desumodur N 硬化剤のビウレットタイプは、HDIイソシアヌレート又は単純な’3量体’、による支持と競争を経験した。ビウレットを超えるそれら(HDIイソシアヌレート、単純な3量体)の利点は、より良いモノマーの安定性と、幾分かのより低粘度にもある(図3)。両方の効果は、イソシアヌレートのバックボーンにN-H断片ないことと、分子間の水素結合がないことにそれぞれ起因し、N-H断片がないことは、構造を本質的に反対方向の反応(モノマーの形成)に対して不活性とし、後者の分子間の水素結合は、3量体に対するビウレットのより高い粘度の1つの理由である。 (図3略)」 オ 第6葉(第6頁)下から7行~第8葉(8頁)Table2 「2. Low Viscous Asymmetric Trimmers At the end of the last century, the hithereto almost unknown iminooxadiazinediones - isomers of the well known isocyanurates - have been investigated in more detail5. Structurally they differ from the latter only in one detail: one NCO-group is incorporated into the six membered ring by opening the C=O double bond, instead of the usually occuring C=N bond scission. This detail renders the structure, in contrast to the flat and centrosymmetric isocyanurate ring, completely asymmetric, and thus leads us to name them asymmetric trimers ("AST" for short, see Fig. 6). [図:0001400500000007.jpg] ・・・略・・・ Finally, the main advantage of HDI-ASTs is their dramatically lower viscosity over isocyanurates of comparable molecular weight. Therefore, ASTs are a promising approach to achieving lower viscosity, while maintaining at least NCO trifunctional hardeners, avoiding the use of difunctional products like uretdiones or allophanates (Fig. 7, Table 2). [図:0001400500000008.jpg] [図:0001400500000009.jpg] 」 (日本語訳) 「2.超低粘度非対称3量体 前世紀の終わり、これまでのところ殆ど知られていなかったイミノオキサジアジンジオン、よく知られていたイソシアヌレートの異性体である、がより詳しく調べられた。 構造的に、イミノオキサジアジンジオは、イソシアヌレートと一点の詳細で異なり、通常の生じるC=N結合の切断に代わりに、1つのNCO基が、C=O二重結合が開くことにより6員環に導入される。この詳細は、構造を、平坦な中心対称のイソシアヌレートとは対照的な、完全に非対称とする、そして、これらを、非対称3量体(「AST」と省略する。図6参照。)と呼ぶ。 (図6省略) ・・・略・・・ 最終的に、HDI-ASTの主要な利点は、同程度の分子量のイソシアヌレートを超える、劇的により低い粘度にある。したがって、ASTsは、ウレトジオンあるいはアロファネートのような2官能性の製品の使用を避け、少なくともNCO3官能性硬化剤を維持しながら、低粘度を得るためのアプローチとして有望である(図7、テーブル2。)。 (図7略) (テーブル2略)」 カ 第14葉(第14頁)6~11行 「6 Conclusion A new isocyanate hardener for 2-K polyurethane coatings based on HDI iminooxadiazinediones (asymmetric trimers, AST)has been developed. This product, herein referred to as VLV AST, combines the advantages of a very low viscosity (700 mPas/23℃) with a high NCO-functionality (≧3), thus making it an ideal candidate for promising future developments in the coatings industry aimed at low VOC or 'high solids' in the conventional, solventborne sector, and for waterborne applications as well.」 (日本語訳) 「6 結論 HDIイミノオキサジアジンジオン(非対称3量体,AST)に基づく、2液ポリウレタンコーティングのための新しいイソシアネート硬化剤が開発された。この製品は、ここではVLV ASTと呼ばれ、高NCO官能性(3以上)と、超低粘度(700mPas/23℃)の利点を結合し、そして、従来からの溶剤型分野において、同様に水溶型への応用のために、低VOC、あるいはハイソリッドを目指したコーティング産業における有望な将来の開発のための理想的な候補にしている。」 2 甲1を主引用例とする理由1(新規性欠如)・理由2(進歩性欠如)について (1) 本件特許発明1について ア 対比 本件特許発明1と引用発明1とを対比する。 (ア) 高分子マトリックス 調整工程及び材料の組成からみて、引用発明1の「ポリウレタン処方物C」が、本件特許発明1の「高分子マトリクス」を具備することは明らかである。 (イ) ポリオール 引用発明1の「イソシアネート反応性成分」は、「ブロックコポリマーB」を用いて「調整したものであ」る。 また、引用発明1の「ブロックコポリマーB」は、その調製工程からみて、「ブロックコポリマーB」は、末端ヒドロキシ基を有するポリオールであるといえるから、本件特許発明1の「2以上のヒドロキシル基を有するポリオール」に相当する。 (ウ) 反応性イソシアネート化合物 引用発明1の「イソシアネート成分」である「Desmodur XP 2410」は、甲9の上記1(4)アの記載によれば、「超低粘度非対称3量体(VLV AST)」の製品名であって、その構造式は、甲9の上記1(4)ウ、オ(Figure 7)及びカに記載された23℃における粘度の値(700mPas)からみて、下記化学構造式X(多重水素結合可能な水素結合性官能基を有しない構造である。)で表されるものと推認される。 (化学構造式X) 「 [図:0001400500000010.jpg] として、 [図:0001400500000011.jpg] 」 加えて、「Desmodur XP 2410」が上記(化学構造式X)を有するものであることは、国際公開第2016/049107号(以下「参考例1」という。)の19頁の化学構造式(VId)(下記構造式(a)参照)及び19頁下から5行~下から3行の「ジイソシアネート3量体(VIa-e)が、例えば、DESMODUR Z4470,DESMODUR IL,DESMODUR N-3300,DESMODUR XP2410,及びDESMODUR N100として、バイエルコーポレーションよりそれぞれ利用可能である。」との記載や、「HDI ologomers, iminooxadiazindion EC number:931-297-3 Cas number:-」,[online],欧州化学機関(ECHA),[令和5年6月22日検索],インターネット<URL: https://echa.europa.eu/registration-dossier/-/registered-dossier/11215>(以下「参考例2」という。)の「Identification」(化学構造式(下記構造式(b)参照))及び「Substance Identifiers」(「Trade name」「Desmodur XP 2410」について)の欄の記載からも推認できる事項である。 (a)参考例1の17頁に記載の式(VId) [図:0001400500000012.jpg] (b)参考例2の「Identification」欄に記載の化学構造式 [図:0001400500000013.jpg] そうしてみると、引用発明1の「Desmodur XP 2410」は、本件特許発明1の「反応性イソシアネート化合物」に相当し、両者は、「1以上のイソシアネート基を有する」及び「ヘテロ環化合物;と、1以上のイソシアネート基を有する脂肪族、脂環式または芳香族化合物;が結合された構造を有」している点で共通する。 (エ) 1以上のイソシアネート基を有する反応性イソシアネート化合物と2以上のヒドロキシ基を有するポリオール間の反応物を含む高分子マトリックス又はその前駆体 上記(ア)~(ウ)より、引用発明1と、本件特許発明1は、「1以上のイソシアネート基を有する反応性イソシアネート化合物と2以上のヒドロキシ基を有するポリオール間の反応物を含む高分子マトリックス又はその前駆体」含む点で共通する。 (オ) 光反応性単量体 引用発明1の「イソシアネート反応性成分」のうちの「プロパン-2,2-ジイルビス[(2,6-ジブロモ-4,1-フェニレン)オキシ(2-{[3,3,3-トリス(4-クロロフェニル)プロパノイル]オキシ}プロパン-3,1-ジイル)オキシエタン-2,1-ジイル]ジアクリレート」は、本件特許発明1の「光反応性単量体」に相当する。 (カ) 光開始剤 引用発明1の「Darocure TPO」は、本件特許発明1の「光開始剤」に相当する。 (キ) ホログラム記録用フォポリマー 上記(オ)及び(カ)で述べたとおり、引用発明1の「ポリウレタン処方物C」は、放射線硬化性のモノマー及び光開始剤を有するから、感光性を有する組成物、すなわち、フォトポリマー組成物といえる。 また、引用発明1の「ホログラフィック記憶媒体用の記憶層の製造に適した」ものであるから、ホログラム記録用のものといえる。 したがって引用発明1の「ポリウレタン処方物C」は、本件特許発明1の「ホログラム記録用フォトポリマー組成物」に相当し、両者は、「光反応性単量体;および」、「光開始剤;を含」む点で共通する。 (ク) 一致点及び相違点 以上の対比結果を踏まえると、本件特許発明1と、引用発明1は、 「1以上のイソシアネート基を有する反応性イソシアネート化合物と2以上のヒドロキシ基を有するポリオール間の反応物を含む高分子マトリックスまたはその前駆体; 光反応性単量体;および 光開始剤;を含み、 1以上のイソシアネート基を有する反応性イソシアネート化合物は、 ヘテロ環化合物;と、1以上のイソシアネート基を有する脂肪族、脂環式または芳香族化合物; が結合された構造を有する、 ホログラム記録用フォトポリマー組成物。」である点で一致し、次の点で相違する。 (相違点1-1) 「反応性イソシアネート化合物」が、本件特許発明1においては、「多重水素結合が可能な水素結合性官能基」を有し、「多重水素結合が可能な水素結合性官能基を含有するヘテロ環化合物」と「1以上のイソシアネート基を有する脂肪族、脂環式または芳香族化合物」「が結合された構造を有する」ものであるのに対して、引用発明1においては、「多重水素結合が可能な水素結合性官能基」を有しておらず、「多重水素結合が可能な水素結合性官能基を含有するヘテロ環化合物」と「1以上のイソシアネート基を有する脂肪族、脂環式または芳香族化合物」「が結合された構造を有する」ものではない点。 イ 判断 (ア) 理由1(新規性欠如)についての判断 上記ア(ウ)で述べたとおり、引用発明1の「Desmodur XP 2410」は、多重水素結合が可能な水素結合性官能基を有しているとはいえないから、本件特許発明1と引用発明1は、上記相違点1-1において相違する。 したがって、本件特許発明1は、甲1に記載された発明であるとはいえない。 (イ) 理由2(進歩性欠如)についての判断 相違点1-1について検討する 引用発明1は、「ホログラフィック記憶媒体用の記憶層の製造に適した、ポリウレタンマトリックスポリマーとその中に存在するオレフィン性不飽和放射線硬化性モノマーとの光学的に十分な適合性を有するポリウレタン系を提供すること」(【0006】)を課題として、「マトリックスポリマーと不飽和モノマーとの優れた適合性は、正確には、イソシアネート反応性ブロックコポリマーをマトリックスポリマー用のビルディングブロックとして用いる場合に得られることを見出し」(【0007】)なされたものであるところ、甲1には、ポリウレタンマトリックスポリマーとその中に存在するオレフィン性不飽和放射線硬化性モノマーとの光学的に十分な適合性を与えることに関連して、あるいは、イソシアネート反応性ブロックコポリマーをマトリックスポリマー用のビルディングブロックとして用いることに関連して、ポリイソシアネート成分による多重水素結合に着目し、ポリイソシアネート成分を、多重水素結合が可能な水素結合性官能基を有する構造とすることや、多重水素結合が可能な水素結合性官能基を含有するヘテロ環化合物と1以上のイソシアネート基を有する脂肪族、脂環式または芳香族化合物が結合された構造とすることは記載も示唆もされていない。 したがって、甲1に接した当業者にとって、引用発明1において、相違点1-1に係る本件特許発明1の構成を採用しようとする動機付けはない。 また、ポリウレタンを高分子マトリックスとするホログラム記録用フォトポリマー組成物において、ポリイソシアネート成分を、多重水素結合が可能な水素結合性官能基を有する構造とすることは、特許異議申立人が提出した、他の引用文献にも記載も示唆もされていないし、文献を掲げるまでもなく、本件優先日当時における技術常識であったことを示す証拠もない。 してみると、引用発明1において、相違点1-1に係る本件特許発明1の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。 (ウ) 特許異議申立書における特許異議申立人の主張について 特許異議申立人は、特許異議申立書の「(ア)甲1発明との対比」「1.本件発明1~7及び10から12」(27頁7行~29頁12行)において、「甲1号証、0088~0094段落には、イソシアネートとしてDesmodur XP 2410、イソシアネート反応性成分としてヒドロキシ官能性ブロックポリマーをそれぞれ用いて、ポリウレタンを生成したことが記載されている。ここで、Desmodur XP 2410の構造は、以下の図の上部に示す通りであり(甲第9号証参照)、多重水素結合が可能な水素結合性官能基である-NHCO-基を含有し、ヘテロ環構造であるオキサジアジンジオン構造を有する化合物と、1つのイソシアネート基を有する炭素数6の脂肪族化合物とが結合された構造を有することが明らかである。」、 「 [図:0001400500000014.jpg] (以下の図面略)」、 「甲1号証には、さらに光反応性単量体(0006段落)を含むことも記載されている。」、「さらに、甲1号証には、光開始剤(請求項1)を含むことも記載されている。」、「甲1号証には、目的は、ホログラフィック記憶媒体用の記憶層の製造に適した、ポリウレタンマトリックスポリマーを提供することであることも記載されている(0006段落)。」、「なお、尿素は、ステレオ制御のアリル化反応やクライゼン転移の添加剤として使用されることが周知であった(甲6~8号証)。」、「以上の通り、本願発明1~7及び10~12の構成が全て甲1号証に記載されていることが明らかである。」と主張する(下線は、当合議体が付した。)。 しかしながら、上記の下線部の主張に関しては、上記ア(ウ)で述べたとおり、引用発明1の「Desmodur XP 2410」(「反応性イソシアネート化合物」)が、多重水素結合が可能な水素結合性官能基を有さないことは、その(化学構造式X)からみて明らかである。 したがって、特許異議申立人の上記主張を採用することはできない。 ウ 小括 本件特許発明1は、甲1に記載された発明であるということはできない。また、本件特許発明1は、甲1に記載された発明及び周知技術に基づいて、あるいは、甲1に記載された発明及び甲4に記載された技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものということはできない。 (2) 本件特許発明2~9について 本件特許発明2~9は、本件特許発明1の構成を全て具備し、これに限定を加えたものである。 そうすると、上記(1)イ及びウのとおり、本件特許発明1が、甲1に記載された発明であるということができず、また、本件特許発明1が、甲1に記載された発明及び周知技術に基づいて、あるいは、甲1に記載された発明及び甲4に記載された技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものということもできない以上、本件特許発明2~9は、甲1に記載された発明であるということができず、また、本件特許発明2~9が、甲1に記載された発明及び周知技術に基づいて、あるいは、甲1に記載された発明及び甲4に記載された技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものということもできない。 (3) 本件特許発明10について ア 引用ホログラフィック記録媒体発明1 甲1の技術分野(【0001】)、課題(【0006】)の記載や、【0078】や「PU処方物C」に係る実施例の記載からみて、甲1には、引用発明1から製造された「ホログラフィック記録媒体」に係る発明(以下、「引用ホログラフィック記録媒体発明1」という。)が記載されているものと認められる。 イ 対比 (ア) 本件特許発明10と、引用ホログラフィック記録媒体発明1との対比は、上記(1)アにおける対比と同様である。また、引用ホログラフィック記録媒体発明1の「ホログラフィック記録媒体」は、本件特許発明10の「ホログラム記録媒体」に相当する。 (イ) 本件特許発明10と、引用ホログラフィック記録媒体発明1は、少なくとも、上記(1)ア(ク)で抽出した相違点1-1と同じ点で相違する。 ウ 判断 上記(1)イで述べた理由と同様な理由により、本件特許発明10は、甲1に記載された発明であるということができず、また、本件特許発明10が、甲1に記載された発明及び周知技術に基づいて、あるいは、甲1に記載された発明及び甲4に記載された技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものということもできない。 (4) 本件特許発明11について ア 引用ホログラム発明1 甲1の記載(【0077】等)からみて、甲1には、引用ホログラフィック記録媒体発明1を含むホログラムに係る発明(以下「引用ホログラム発明1」という。)が記載されているものと認められる。 イ 対比 (ア) 本件特許発明11と、引用ホログラム発明1との対比は、上記(1)アにおける対比と同様である。また、引用ホログラム発明1の「ホログラム」は、本件特許発明11の「光学素子」に相当する。 (イ) 本件特許発明11と、引用ホログラム発明1は、少なくとも、上記(1)ア(ク)で抽出した相違点1-1と同じ点で相違する。 ウ 判断 上記(1)イで述べた理由と同様な理由により、本件特許発明11は、甲1に記載された発明であるということができず、また、本件特許発明11が、甲1に記載された発明及び周知技術に基づいて、あるいは、甲1に記載された発明及び甲4に記載された技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものということもできない。 (5) 本件特許発明12について ア 引用ホログラム記録方法発明1 (ア) 甲1の【0076】には、「記載の方法の1つによって得られる材料は、ホログラムの記録に用いることができる。この目的のため、2つの光線が、ホログラフィーの当業者に既知の方法によって物質中において干渉され・・・略・・・、ホログラムが生じる。」と記載されている。 (イ) 上記(ア)より、甲1には、2つの光線が引用発明1中において干渉されてホログラムを生成する、ホログラム記録方法に係る発明(以下「引用ホログラム記録方法発明1」という。)が記載されているものと認められる。 イ 対比 (ア) 本件特許発明12と、引用ホログラム記録方法発明1との対比は、上記(1)アにおける対比と同様である。また、引用ホログラム記録方法発明1の「ホログラム記録方法」は、本件特許発明11の「ホログラフィック記録方法」に相当する。 (イ) 本件特許発明12と、引用ホログラム記録方法発明1とは、少なくとも、上記(1)ア(ク)で抽出した相違点1-1と同じ点で相違する。 ウ 判断 上記(1)イで述べた理由と同様な理由により、本件特許発明12は、甲1に記載された発明であるということができず、また、本件特許発明12が、甲1に記載された発明及び周知技術に基づいて、あるいは、甲1に記載された発明及び甲4に記載された技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるということもできない。 3 甲2を主引用例とする理由1(新規性欠如)・理由2(進歩性欠如)について (1) 本件特許発明1について ア 対比 本件特許発明1と引用発明2とを対比する。 (ア) 引用発明2の「配合物1」の組成や「ウレタン触媒」(「Fomrez UL 28」)含むこと、また、「Desmodur XP2410」の構造、「ブロックコポリマー1」の組成及びその調製方法からみて、引用発明2の「配合物1」においては、「Desmodur XP2410」を、2以上のイソシアート基を有するポリイソシアネート成分とし、「ブロックコポリマー1」を、2以上のヒドロキシ基を有するポリオール成分として、両成分を反応、硬化させてポリウレタンを含む高分子マトリクスを生成していると理解できる。 (イ) ポリオール 上記(ア)より、引用発明2の「ブロックコポリマー1」は、本件特許発明1の「2以上のヒドロキシ基を有するポリオール」に相当する。 (ウ) 反応性イソシアネート化合物 引用発明2の「Desmodur XP2410」は、上記2(1)ア(ウ)で述べたとおりの化学構造式X(多重水素結合可能な水素結合性官能基を有しない構造である。)を有する。 してみると、引用発明2の「Desmodur XP 2410」は、本件特許発明1の「反応性イソシアネート化合物」に相当し、両者は、「1以上のイソシアネート基を有する」及び「ヘテロ環化合物;と、1以上のイソシアネート基を有する脂肪族、脂環式または芳香族化合物;が結合された構造を有」している点で共通する。 (エ) 高分子マトリックス 上記(ア)~(ウ)より、引用発明2は、2以上のイソシアート基を有するポリイソシアネート成分(「Desmodur XP 2410」)と2以上のヒドロキシ基を有するポリオール成分(「ブロックコポリマー1」)間の反応物(ポリウレタン)を含む高分子マトリックスを含んでいるといえる。 してみると、引用発明2と、本件特許発明1は、「1以上のイソシアネート基を有する反応性イソシアネート化合物と2以上のヒドロキシ基を有するポリオール間の反応物を含む高分子マトリックス又はその前駆体」含む点で共通する。 (オ) 光反応性単量体 引用発明2の「光活性モノマーA」は、その文言の意味や、その化学構造式からみて、本件特許発明1の「光反応性単量体」に相当する。 (カ) 光開始剤 引用発明2の「Darocur TPO」(「2,4,6-トリメチル-ベンゾイル-ジフェニルホスフィンオキシド」)は、甲2の【0086】に光開始剤として例示されたアシルフォスヒンオキシドであるから、本件特許発明1の「光開始剤」に相当する。 (キ) ホログラム記録用フォポリマー a 上記(オ)及び(カ)で述べたとおり、引用発明2の「配合物1」は、「光活性モノマーA」及び光開始剤(「Darocur TPO」)を有するから、感光性を有するといえる。。 そうすると、上記(ア)より、引用発明2の「配合物1」は、感光性を有する高分子に係る組成物、すなわち、フォトポリマー組成物であるといえる。 また、引用発明2は「ホログラフィおよび他の関連分野における使用のための、高性能光重合性記録材料に関する」ものである。 そうすると、引用発明2は、ホログラム記録用のものということができる。 b そうすると、上記(ア)~(カ)より、引用発明2の「配合物1」は、本件特許発明1の「ホログラム記録用フォトポリマー組成物」に相当し、両者は、「光反応性単量体;および」、「光開始剤;を含」んでいる点で共通する。 (ク) 一致点及び相違点 以上の対比結果を踏まえると、本件特許発明1と、引用発明2は、上記2(1)ア(ク)で抽出した一致点と同じ点で一致し、上記2(1)ア(ク)で抽出した相違点1-1と同じ点で相違する。 イ 判断 (ア) 理由1(新規性欠如)についての判断 上記ア(ウ)で述べたとおり、引用発明2の「Desmodur XP 2410」は、多重水素結合が可能な水素結合性官能基を有しているとはいえないから、本件特許発明1と引用発明2は、相違点1-1において相違する。 したがって、本件特許発明1は、甲2に記載された発明であるとはいえない。 (イ) 理由2(進歩性欠如)についての判断 相違点1-1について検討する 甲2でいう本発明は、「高い回折効率、高ダイナミックレンジならびに他の望ましい特性を有するフォトポリマーを形成する光活性モノマーの性能を向上させる」(【0009】)ことを課題として、「ポリマーマトリックスに組み込まれた少なくとも1種の光活性インデックスコントラスティング重合性材料および光開始剤系を含んで成る物品であって、該光活性重合性材料が適切に高い分子量であり、組成物が330~490nmの光学的吸収を有する物品」とする(【0010】)こと、「物品のポリマーマトリックスは、イソシアネート官能基を有する成分とポリオール官能基を有する成分との重合反応」によって形成する(【0011】)ことを課題を解決する手段としてなされたものであるところ、甲2には、高い回折効率、高ダイナミックレンジを有するフォトポリマーを形成する光活性モノマーの性能を向上させることに関連して、あるいは、ポリマーマトリックスの光活性重合性材料を適切な高い分子量とし、組成物が330~490nmの光学的吸収を有するものとすることや、ポリマーマトリックスをイソシアネート官能基を有する成分とポリオール官能基を有する成分との重合反応によって形成することに関連して、ポリイソシアネート成分による多重水素結合に着目し、ポリイソシアネート成分を、多重水素結合が可能な水素結合性官能基を有する構造とすることは記載も示唆もされていない。 したがって、甲2に接した当業者にとって、引用発明2において、相違点1-1に係る本件特許発明1の構成を採用しようとする動機付けはない。 また、ポリウレタンを高分子マトリックスとするホログラム記録用フォトポリマー組成物において、ポリイソシアネート成分を、多重水素結合が可能な水素結合性官能基を有する構造とすることは、特許異議申立人が提出した、他の引用文献にも記載も示唆もされていないし、文献を揚げるまでもなく、本件優先日当時における技術常識であったことを示す証拠もない。 してみると、引用発明2において、相違点1-1に係る本件特許発明1の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。 (ウ) 特許異議申立書における特許異議申立人の主張について 特許異議申立人は、特許異議申立書の「(イ)甲2発明との対比」「1.本件発明1~7及び10から12」(29頁下から5行~30頁19行)において、「甲2号証、0091~0096段落には、イソシアネートとしてDesmodur XP 2410、イソシアネート反応性成分としてヒドロキシ官能性ブロックポリマーをそれぞれ用いて、ポリウレタンを生成したことが記載されている。ここで、Desmodur XP 2410の構造は、上記の通り、多重水素結合が可能な水素結合性官能基である-NHCO-基を含有し、ヘテロ環構造であるオキサジアジンジオン構造を有する化合物と、1つのイソシアネート基を有する炭素数6の脂肪族化合物とが結合された構造を有することが明らかである。」、「以上の通り、本願発明1~7及び10~12の構成が全て甲2号証に記載されていることが明らかである。」と主張する(下線は、当合議体が付した。)。 しかしながら、Desmodur XP 2410が、その化学構造式Xからみて、多重水素結合が可能な水素結合性官能基を含有しているということはできないことは、既に述べたとおりである。 したがって、特許異議申立人の上記の主張を採用することはできない。 ウ 小括 本件特許発明1は、甲2に記載された発明であるということはできない。また、本件特許発明1は、甲2に記載された発明及び周知技術に基づいて、あるいは、甲2に記載された発明及び甲4に記載された技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものということはできない。 (2) 本件特許発明2~9について 本件特許発明2~9は、本件特許発明1の構成を全て具備し、これに限定を加えたものである。 そうすると、上記(1)イ及びウのとおり、本件特許発明1が、甲2に記載された発明であるということができず、また、本件特許発明1が、甲2に記載された発明及び周知技術に基づいて、あるいは、甲2に記載された発明及び甲4に記載された技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものということもできない以上、本件特許発明2~9は、甲2に記載された発明であるということができず、また、本件特許発明2~9が、甲2に記載された発明及び周知技術に基づいて、あるいは、甲2に記載された発明及び甲4に記載された技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものということもできない。 (3) 本件特許発明10について ア 引用ホログラフィック記録媒体発明2 甲2の【0063】には、「ホログラフィック記憶媒体の製造は、支持マトリックス、光活性重合性材料、光開始剤などの、組み合わせ、プレンド、混合物などを、支持構造物、例えば基材に付着させるか、または、より一般的には、1対(即ち2つ)の基材の間に配置し、例えば、混合物を入れるためのガスケットを使用することを含む。」と記載されている。 そうすると、甲2には、「引用発明2」(「配合物1」)から製造された「ホログラフィック記憶媒体」に係る発明(以下「引用ホログラフィック記録媒体発明2」という。)が記載されているものと認められる。 イ 対比 (ア) 本件特許発明10と、引用ホログラフィック記録媒体発明2との対比は、上記(1)アにおける対比と同様である。また、引用ホログラフィック記録媒体発明2の「ホログラフィック記憶媒体」は、本件特許発明10の「ホログラム記録媒体」に相当する。 (イ) 本件特許発明10と、引用ホログラフィック記録媒体発明2とは、少なくとも、上記(1)ア(ク)で抽出した相違点1-1と同じ点で相違する。 ウ 判断 上記(1)イ及びウで述べた理由と同様な理由により、本件特許発明10は、甲2に記載された発明であるということができず、また、本件特許発明10が、甲2に記載された発明及び周知技術に基づいて、あるいは、甲2に記載された発明及び甲4に記載された技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものということもできない。 (4) 本件特許発明11について ア 引用光学物品発明2 甲2の【0062】には、「「光学物品」という用語は、ホログラフィック媒体・・・略・・・などを含んで成る物品を意味する。」と記載されている。 そうすると、甲2には、「引用ホログラフィック記録媒体発明2」を含んで成る「光学物品」の発明(以下「引用光学物品発明2」という。)が記載されているものと認められる。 イ 対比 (ア) 本件特許発明11と、引用光学物品発明2との対比は、上記(1)ア及び上記(3)イにおける対比と同様である。また、引用光学物品発明2の「光学物品」は、本件特許発明11の「光学素子」に相当する。 (イ) 本件特許発明11と、引用光学物品発明2とは、少なくとも、上記(1)ア(ク)で抽出した相違点1-1と同じ点で相違する。 ウ 判断 上記(1)イ及びウで述べた理由と同様な理由により、本件特許発明11は、甲2に記載された発明であるということができず、また、本件特許発明11が、甲2に記載された発明及び周知技術に基づいて、あるいは、甲2に記載された発明及び甲4に記載された技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものということもできない。 (5) 本件特許発明12について ア 引用ホログラム記録方法発明2 (ア) 2の【0023】には、「本発明の目的にとって、「ホログラフィック格子」、「ホログラフ」または「ホログラム」(以下、集合的かつ互換的に、「ホログラム」と称する)という用語は、信号ビームおよぴ参照ビームが互いに干渉する際に形成される干渉パターンを表わす通常の意味で使用される。」と記載されている。 また、甲2の【0050】には、「交差レーザ光によって生じる干渉パターンを使用することによって、より低いインデックスコントラスティング支持マトリックス中で重合したより高いインデックスコントラスティングモノマーにおいて、重合モノマーのパターンは、この干渉パターンによく似ており、従って、より高い屈折率を有する材料のボリューム(ここは、光強度がより高い)、およびより低い屈折率を有する材料のボリューム(ここは、光強度がより低いかまたはゼロである)を形成する。」と記載されている。 (イ) 上記(ア)より、甲2には、「交差レーザ光によって生じる干渉パターンを使用することによって」、「引用発明2」に含まれる「光活性モノマーA」の、「この干渉パターンによく似」た「重合モノマーのパターン」を形成して、「ホログラム」を記録する方法に係る発明(以下「引用ホログラム記録方法発明2」という。)が記載されているものと認められる。 イ 対比 (ア) 本件特許発明12と、引用ホログラム記録方法発明2との対比は、上記(1)アにおける対比と同様である。また、引用ホログラム記録方法発明2の「ホログラムを記録する方法」は、本件特許発明12の「ホログラフィック記録方法」に相当する。 (イ) 本件特許発明12と、引用ホログラム記録方法発明2とは、少なくとも、上記(1)ア(ク)で抽出した相違点1-1と同じ点で相違する。 ウ 判断 上記(1)イ及びウで述べた理由と同様な理由により、本件特許発明12は、甲2に記載された発明であるということができず、また、本件特許発明12が、甲2に記載された発明及び周知技術に基づいて、あるいは、甲2に記載された発明及び甲4に記載された技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるということもできない。 4 甲3を主引用例とする理由1(新規性欠如)・理由2(進歩性欠如)について (1) 本件特許発明1について ア 対比 本件特許発明1と引用発明3とを対比する。 (ア) 引用発明3の「混合物」の「ジイソシアネート末端ポリプロピレングリコール」、「α、ω-ジヒドロキシポリプロピレングリコール」などの組成や、「ジブチルスズジラウリレート(マトリックス形成用の触媒)」は、ウレタン形成を早く進行させるためのスズ触媒(甲3【0016】)であることからみて、引用発明3の「混合物」においては、「ジイソシアネート末端ポリプロピレングリコール」を、2以上のイソシアート基を有するポリイソシアネート成分とし、「α、ω-ジヒドロキシポリプロピレングリコール」を、2以上のヒドロキシ基を有するポリオール成分として、両成分をウレタン反応、硬化させてポリウレタンを含む高分子マトリクスを生成するものといえる。 (イ) ポリオール成分 引用発明3の「α、ω-ジヒドロキシポリプロピレングリコール」は、本件特許発明1の「2以上のヒドロキシ基を有するポリオール」に相当する。 (ウ) 反応性イソシアネート 引用発明3の「ジイソシアネート末端ポリプロピレングリコール」は、その名称から、下記構造のポリプロピレングリコールを基本骨格とし、その両末端をイソシアネート基(-N=C=O)としたポリイソシアネートであると理解される。 (ポリプロピレングリコール) [図:0001400500000015.jpg] そうすると、引用発明3の「α、ω-ジヒドロキシポリプロピレングリコール」は、本件特許発明1の「反応性イソシアネート化合物」に相当し、両者は、「1以上のイソシアネート基を有する」点で共通する。 (エ) 高分子マトリックス 上記(ア)~(ウ)より、引用発明3は、2以上のイソシアート基を有するポリイソシアネート成分(「ジイソシアネート末端ポリプロピレングリコール」)と2以上のヒドロキシ基を有するポリオール成分(「α、ω-ジヒドロキシポリプロピレングリコール」)間の反応物(ポリウレタン)を含む高分子マトリックスを含んでいるといえる。 してみると、引用発明3と、本件特許発明1は、「1以上のイソシアネート基を有する反応性イソシアネート化合物と2以上のヒドロキシ基を有するポリオール間の反応物を含む高分子マトリックス又はその前駆体」含む点で共通する。 (オ) 光反応性単量体 引用発明3の「4-クロロフェニルアクリレート」は、その名称や名称が示す構造からみて、本件特許発明1の「光反応性単量体」に相当する。 (カ) 光開始剤 引用発明3の「Ciba CGI-784」は、「光重合開始剤」であるから、本件特許発明1の「光開始剤」に相当する。 (キ) ホログラム記録用フォポリマー a 上記(オ)及び(カ)で述べたとおり、引用発明3の「混合物」は、「4-クロロフェニルアクリレート」(「光反応性単量体」)及び「Ciba CGI-784」(「光重合開始剤」)を有する。 そうすると、上記(ア)より、引用発明3の「混合物」は、感光性を有する高分子に係る組成物、すなわち、フォトポリマー組成物であるといえる。 b 引用発明3は、「ホログラフィ記録媒体を含む光学製品、特にホログラフィ記録システムとともに用いると有用な媒体に関する」ものである。 そうすると、上記aより、引用発明3は、ホログラム記録用のものということができる。 c そうすると、上記(ア)~(カ)より、引用発明3の「混合物」は、本件特許発明1の「ホログラム記録用フォトポリマー組成物」に相当し、両者は、「光反応性単量体;および」、「光開始剤;を含」む点で共通する。 (ク) 一致点及び相違点 以上の対比結果を踏まえると、本件特許発明1と、引用発明3は、 「 1以上のイソシアネート基を有する反応性イソシアネート化合物と2以上のヒドロキシ基を有するポリオール間の反応物を含む高分子マトリックスまたはその前駆体; 光反応性単量体;および 光開始剤;を含む、 ホログラム記録用フォトポリマー組成物。」である点で一致し、次の点で相違する。 (相違点3-1) 「反応性イソシアネート化合物」が、本件特許発明1においては、多重水素結合が可能な水素結合性官能基」を有し、「多重水素結合が可能な水素結合性官能基を含有するヘテロ環化合物」と「1以上のイソシアネート基を有する脂肪族、脂環式または芳香族化合物」「が結合された構造を有する」ものであるのに対して、引用発明3においては、「多重水素結合が可能な水素結合性官能基」を有しておらず、「多重水素結合が可能な水素結合性官能基を含有するヘテロ環化合物」と「1以上のイソシアネート基を有する脂肪族、脂環式または芳香族化合物」「が結合された構造を有する」ものでもない点。 イ 判断 (ア) 理由1(新規性欠如)についての判断 上記ア(ア)及び(ウ)で述べたように、引用発明3の「混合物」においては、「マトリックス形成用の触媒」として、「ジブチルスズジラウリレート」を用いることにより、(2以上のイソシアート基を有するポリイソシアネート成分である)「ジイソシアネート末端ポリプロピレングリコール」と、(2以上のヒドロキシ基を有するポリオール成分である)「α、ω-ジヒドロキシポリプロピレングリコール」を逐次ウレタン反応させて、素早くポリウレタンの形成がなされるようにしていると理解できるところ、ポリオールと反応してウレタンを形成する「ジイソシアネート末端ポリプロピレングリコール」は、上記ア(ウ)で示した構造からみて、多重水素結合が可能な水素結合性官能基とを有するとも、多重水素結合が可能な水素結合性官能基を含有するヘテロ環化合物を有するともいえない。 したがって、本件特許発明1と引用発明3とは、上記相違点3-1において相違するから、本件特許発明1は、甲3に記載された発明であるとはいえない。 (イ) 理由2(進歩性欠如)についての判断 相違点3-1について検討する 甲3でいう本発明は、従来、「マトリックス材料と光活性モノマーの反応を実質的に避け、有用なホログラフィ特性を示すような比較的厚い層、例えば200μmより厚い層に製造できる媒体が望まれてい」(【0007】)たところ、「マトリックス前駆体(すなわち、マトリックスを形成する1種または複数の化合物)および独立した反応で重合する光活性モノマーを使用する」ことにより、「硬化の間の光活性モノマーとマトリックス前駆体との相互反応およびそれに続くモノマーの重合の阻害の両方を実質的に防止できる」、「相溶性のあるポリマーを形成するマトリックス前駆体と光活性モノマーを使用するので、相分離を実質的に避けることができる」、「そのままで形成するので、所望の厚さの媒体を製造できる」(【0008】)ことに基づきなされたものである。 しかしながら、甲3には、「マトリックス前駆体(すなわち、マトリックスを形成する1種または複数の化合物)および独立した反応で重合する光活性モノマーを使用する」ことに関連して、ポリイソシアネート成分による多重水素結合に着目し、ポリイソシアネート成分を、1以上のイソシアネート基に加えて、多重水素結合が可能な水素結合性官能基を有する構造とすることは記載も示唆もされていない。 したがって、甲3に接した当業者にとって、引用発明3において、相違点3-1に係る本件特許発明1の構成を採用しようとする動機付けはない。 また、ポリウレタンを高分子マトリックスとするホログラム記録用フォトポリマー組成物において、ポリイソシアネート成分に、1以上のイソシアネート基に加えて、多重水素結合が可能な水素結合性官能基を有する構造とすることは、特許異議申立人が提出した、他の引用文献にも記載も示唆もされていないし、文献を揚げるまでもなく、本件湯煎日当時における技術常識であったことを示す証拠もない。 してみると、引用発明3において、相違点3-1に係る本件特許発明1の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。 (ウ) 特許異議申立書における特許異議申立人の主張について 特許異議申立人は、特許異議申立書の「(ウ)甲3発明との対比」「1.本件発明1~7及び10から12」(31頁3行~32頁6行)において、「甲3号証、0038段落には、イソシアネート官能基を有するジイソシアネート末端ポリプロピレングリコールと、ポリオール官能基を有するα、ω-ジヒドロキシポリプロピレングリコールとを反応させて、ポリマーマトリックスを生成したことが記載されており、ジイソシアネート末端ポリプロピレングリコールは3分子が重合することによりオキサジアジンジオン構造を有する化合物を生成することから(甲5号証)、かかる生成物は、多重水素結合が可能な水素結合性官能基である-NHCO-基(ジイソシアネート末端ポリプロピレングリコールと、α、ω-ジヒドロキシポリプロピレングリコールとの反応により生じる)を含有し、ヘテロ環構造であるオキサジアジンジオン構造を有する化合物;と、1つのイソシアネート基を有する脂肪族化合物;が結合された構造を有する。」、「以上の通り、本願発明1~7及び10~12の構成が全て甲3号証に記載されていることが明らかである。」と主張する(下線は、当合議体が付した。)。 しかしながら、上記(ア)で述べたとおり、引用発明3の、ポリオールと反応してウレタンを形成する「ジイソシアネート末端ポリプロピレングリコール」は、上記ア(ウ)で示した構造からみて、多重水素結合が可能な水素結合性官能基とを有するとも、多重水素結合が可能な水素結合性官能基を含有するヘテロ環化合物を有するともいえない。 したがって、特許異議申立人の上記の主張を採用することはできない。 ウ 小括 本件特許発明1は、甲3に記載された発明であるということはできない。また、本件特許発明1は、甲3に記載された発明及び周知技術に基づいて、あるいは、甲3に記載された発明及び甲4に記載された技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものということはできない。 (2) 本件特許発明2~9について 本件特許発明2~9は、本件特許発明1の構成を全て具備し、これに限定を加えたものである。 そうすると、上記(1)イ及びウのとおり、本件特許発明1が、甲3に記載された発明であるということができず、また、本件特許発明1が、甲3に記載された発明及び周知技術に基づいて、あるいは、甲3に記載された発明及び甲4に記載された技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものということもできない以上、本件特許発明2~9は、甲3に記載された発明であるということができず、また、本件特許発明2~9が、甲3に記載された発明及び周知技術に基づいて、あるいは、甲3に記載された発明及び甲4に記載された技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものということもできない。 (3) 本件特許発明10について ア 引用ホログラフィ記録媒体発明3 甲3の【0002】には、「本発明は、ホログラフィ記録媒体を含む光学製品、特にホログラフィ記録システムとともに用いると有用な媒体および光学フィルタやビーム配向体などの素子として有用な媒体に関する。」と記載されている。 そうすると、甲3には、「引用発明3」から製造された「ホログラフィ記録媒体」に係る発明(以下「引用ホログラフィ記録媒体発明3」という。)が記載されているものと認められる。 イ 対比 (ア) 本件特許発明10と、引用ホログラフィ記録媒体発明3との対比は、上記(1)アにおける対比と同様である。また、引用ホログラフィ記録媒体発明3の「ホログラフィ記録媒体」は、本件特許発明10の「ホログラム記録媒体」に相当する。 (イ) 本件特許発明10と、引用ホログラフィ記録媒体発明3とは、少なくとも、上記(1)ア(ク)で抽出した相違3-1と同じ点で相違する。 ウ 判断 上記(1)イ及びウで述べた理由と同様な理由により、本件特許発明10は、甲3に記載された発明であるということができず、また、本件特許発明10が、甲3に記載された発明及び周知技術に基づいて、あるいは、甲3に記載された発明及び甲4に記載された技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものということもできない。 (4) 本件特許発明11について ア 引用光学製品発明3 甲3の【0002】の記載からみて、甲3には、引用ホログラフィ記録媒体発明3を含む光学製品に係る発明(以下「引用光学製品発明3」という。)が記載されているものと認められる。 イ 対比 (ア) 本件特許発明11と、引用光学製品発明3との対比は、上記(1)アにおける対比と同様である。また、引用光学製品発明3の「光学製品」は、本件特許発明11の「光学素子」に相当する。 (イ) 本件特許発明11と、引用光学製品発明3とは、少なくとも、上記(1)ア(ク)で抽出した相違点3-1と同じ点で相違する。 ウ 判断 上記(1)イ及びウで述べた理由と同様な理由により、本件特許発明11は、甲3に記載された発明であるということができず、また、本件特許発明11が、甲3に記載された発明及び周知技術に基づいて、あるいは、甲3に記載された発明及び甲4に記載された技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものということもできない。 (5) 本件特許発明12について ア 引用ホログラム記録方法発明3 (ア) 甲3の【0005】には、「情報を材料に書き込む間(データを表示する配列に記録光を通過させることにより)、露光されている領域でモノマーの重合が起こる。重合によるモノマー濃度低下により、材料の露光されていない暗い領域のモノマーは、露光されている領域に拡散する。重合とそれによる濃度勾配が屈折率を変化させ、データを表示するホログラムを形成する。」こと、【0035】には、「一般的にホログラフィ光学素子と言われるこれらの製品は、データ記憶に関して以上で述べたように、記録媒体内に、特定の光学干渉パターンを作ることにより製造される。これらのホログラフィ光学素子用の媒体は、記録媒体や導波管に関して本願で述べた技術により製造できる。」ことが記載されている。 (イ) そうすると、上記(ア)より、甲3には、「特定の光学干渉パターンを作ることにより」、 「引用発明3」に含まれる「4-クロロフェニルアクリレート」を重合させて、ホログラムを記録する方法に係る発明(以下「引用ホログラム記録方法3」という。) イ 対比 (ア) 本件特許発明12と、引用ホログラム記録方法発明3との対比は、上記(1)アにおける対比と同様である。また、引用ホログラム記録方法発明3の「ホログラムを記録する方法」は、本件特許発明12の「ホログラフィック記録方法」に相当する。 (イ) 本件特許発明12と、引用ホログラム記録方法発明3とは、少なくとも、上記(1)ア(ク)で抽出した相違点3-1と同じ点で相違する。 ウ 判断 上記(1)イ及びウで述べた理由と同様な理由により、本件特許発明12は、甲3に記載された発明であるということができず、また、本件特許発明12が、甲3に記載された発明及び周知技術に基づいて、あるいは、甲3に記載された発明及び甲4に記載された技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるということもできない。 第5 むすび したがって、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、請求項1~12に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に請求項1~12に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2023-700272

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