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特許拒絶査定不服審判

2024-019579

ホログラフィック光学素子およびその製造方法

審判番号
2024-019579
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2022-557185
請求日
2024年12月05日
審決日
2026年02月27日
公報発行日
2026年08月28日
結論
請求不成立
当事者
  • 【請求人】エルジー・ケム・リミテッド
  • 【請求人代理人】実広 信哉
  • 【請求人代理人】渡部 崇
審判長/審判官
  • 審判長 里村 利光
  • 審判官 河原 正
  • 審判官 古屋野 浩志
分類
P18 .113-Z (G03H) / P18 .121-Z (G03H)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第17条の2第5項、特許法第29条、特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第6項第2号、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項
データ出所
審決公報(XML)

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特願2022-557185「ホログラフィック光学素子およびその製造方法」拒絶査定不服審判事件〔令和4年3月17日国際公開、WO2022/055315、令和5年5月1日国内公表、特表2023-518500〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論 本件審判の請求は、成り立たない。

理由

理 由 第1 手続の経緯 本願は2021年(令和3年)9月13日(パリ条約に基づく優先権主張 2020年(令和2年)9月14日(以下「優先日」という。) 韓国(KR))を国際出願日として出願され、令和5年10月3日付けで拒絶理由が通知され、令和6年1月16日に意見書及び手続補正書が提出され、同年3月29日付けで拒絶理由(最後)が通知され、同年7月4日付けで意見書及び手続補正書が提出されたが、同年7月22日付けで補正の却下の決定がなされるとともに、同日付で拒絶査定(以下「原査定」という。)がなされたのに対し、同年12月5日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正書が提出されたものである。 第2 令和6年12月5日に提出された手続補正書による補正について 1 補正の内容 令和6年12月5日に提出された手続補正書による補正(以下「本件補正」という。)は、特許請求の範囲を補正をするものであるところ、特許請求の範囲について、下記(1)に示す本件補正前の(すなわち、令和6年1月16日に提出された手続補正書により補正された)特許請求の範囲の請求項1~13を、下記(2)に示す本件補正後の特許請求の範囲の請求項1~8へと補正するものである(下線は、補正箇所を表し、当合議体で付したものである。以下同じ。)。 (1)「 【請求項1】 フォトポリマー樹脂を含むフォトポリマー樹脂層の一面に位相差層を備えるステップと、 第1平行レーザ光を前記位相差層が備えられていない面である前記フォトポリマー樹脂層の他面に照射し、第2平行レーザ光を前記フォトポリマー樹脂層の前記一面に照射して、前記第1平行レーザ光および前記第2平行レーザ光の干渉現象による干渉パターンを前記フォトポリマー樹脂層に記録するステップと、を含むホログラフィック光学素子の製造方法であって、 前記ホログラフィック光学素子は、前記位相差層が備えられていない面である前記フォトポリマー樹脂層の他面と垂直に照射された400nm~1600nmの波長を有する光に対する透過度が0%超過70%以下であるか、または90%超過100%以下である、 ホログラフィック光学素子の製造方法。 【請求項2】 前記第1平行レーザ光が照射されて前記フォトポリマー樹脂層に入射する入射角は、42゜超過90゜未満である、請求項1に記載のホログラフィック光学素子の製造方法。 【請求項3】 前記第1平行レーザ光は、線偏光であり、 前記第2平行レーザ光は、円偏光または楕円偏光である、請求項1または2に記載のホログラフィック光学素子の製造方法。 【請求項4】 前記位相差層は、λ/4波長位相遅延特性を有するものである、請求項1~3の何れか一項に記載のホログラフィック光学素子の製造方法。 【請求項5】 前記フォトポリマー樹脂層の前記他面にプリズムがさらに備えられる、請求項1~4の何れか一項に記載のホログラフィック光学素子の製造方法。 【請求項6】 前記位相差層の光透過度は、90%超過100%以下であり、 前記位相差層のヘイズは、0%超過1%未満である、請求項1~5の何れか一項に記載のホログラフィック光学素子の製造方法。 【請求項7】 前記位相差層は、円偏光または楕円偏光を線偏光に変換するものである、請求項1~6の何れか一項に記載のホログラフィック光学素子の製造方法。 【請求項8】 前記干渉パターンが記録された前記フォトポリマー樹脂層から前記位相差層を除去するステップをさらに含む、請求項1~7の何れか一項に記載のホログラフィック光学素子の製造方法。 【請求項9】 前記干渉パターンが記録された前記フォトポリマー樹脂層を可視光線領域乃至紫外線領域の波長を有する光を照射して漂白(bleaching)するステップをさらに含む、請求項1~8の何れか一項に記載のホログラフィック光学素子の製造方法。 【請求項10】 フォトポリマー樹脂を含むフォトポリマー樹脂層と、 前記フォトポリマー樹脂層の一面に備えられた位相差層とを含み、 前記フォトポリマー樹脂層は、光の干渉現象による干渉パターンが記録されたものであり、 前記位相差層が備えられていない面である前記フォトポリマー樹脂層の他面と垂直に照射された400nm~1600nmの波長を有する光に対する透過度が0%超過70%以下であるか、または90%超過100%以下である、ホログラフィック光学素子。 【請求項11】 前記位相差層は、λ/4波長位相遅延特性を有するものである、請求項10に記載のホログラフィック光学素子。 【請求項12】 前記位相差層の光透過度は、90%超過100%以下であり、 前記位相差層のヘイズは、0%超過1%未満である、請求項10または11に記載のホログラフィック光学素子。 【請求項13】 前記干渉パターンは、前記フォトポリマー樹脂層の前記他面に照射された第1平行レーザ光と前記フォトポリマー樹脂層の前記一面に照射された第2平行レーザ光との干渉現象によるものである、請求項10~12の何れか一項に記載のホログラフィック光学素子。」 (当合議体注:請求項13に係る発明は、請求項13における「1平行レーザ光」が「第1平行レーザ光」の誤記であることを前提として認定した。) (2)「 【請求項1】 フォトポリマー樹脂を含むフォトポリマー樹脂層の一面に位相差層を備えるステップと、 第1平行レーザ光を前記位相差層が備えられていない面である前記フォトポリマー樹脂層の他面に照射し、第2平行レーザ光を前記フォトポリマー樹脂層の前記一面に照射して、前記第1平行レーザ光および前記第2平行レーザ光の干渉現象による干渉パターンを前記フォトポリマー樹脂層に記録するステップと、を含むホログラフィック光学素子の製造方法であって、 前記位相差層は、λ/4波長位相遅延特性を有するものであり、 前記位相差層の光透過度は、90%超過100%以下であり、 前記位相差層のヘイズは、0%超過1%未満であり、 前記ホログラフィック光学素子は、前記位相差層が備えられていない面である前記フォトポリマー樹脂層の他面と垂直に照射された400nm~1600nmの波長を有する光に対する透過度が70%超過90%以下に相当する領域でピークを有さない、ホログラフィック光学素子の製造方法。 【請求項2】 前記第1平行レーザ光が照射されて前記フォトポリマー樹脂層に入射する入射角は、42゜超過90゜未満である、請求項1に記載のホログラフィック光学素子の製造方法。 【請求項3】 前記第1平行レーザ光は、線偏光であり、 前記第2平行レーザ光は、円偏光または楕円偏光である、請求項1または2に記載のホログラフィック光学素子の製造方法。 【請求項4】 前記フォトポリマー樹脂層の前記他面にプリズムがさらに備えられる、請求項1~3の何れか一項に記載のホログラフィック光学素子の製造方法。 【請求項5】 前記位相差層は、円偏光または楕円偏光を線偏光に変換するものである、請求項1~4の何れか一項に記載のホログラフィック光学素子の製造方法。 【請求項6】 前記干渉パターンが記録された前記フォトポリマー樹脂層から前記位相差層を除去するステップをさらに含む、請求項1~5の何れか一項に記載のホログラフィック光学素子の製造方法。 【請求項7】 前記干渉パターンが記録された前記フォトポリマー樹脂層を可視光線領域乃至紫外線領域の波長を有する光を照射して漂白(bleaching)するステップをさらに含む、請求項1~6の何れか一項に記載のホログラフィック光学素子の製造方法。 【請求項8】 フォトポリマー樹脂を含むフォトポリマー樹脂層と、 前記フォトポリマー樹脂層の一面に備えられた位相差層とを含み、 前記フォトポリマー樹脂層は、光の干渉現象による干渉パターンが記録されたものであり、 前記干渉パターンは、前記位相差層が備えられていない面である前記フォトポリマー樹脂層の他面に照射された第1平行レーザ光と前記フォトポリマー樹脂層の前記一面に照射された第2平行レーザ光との干渉現象によるものであり、 前記位相差層は、λ/4波長位相遅延特性を有するものであり、 前記位相差層の光透過度は、90%超過100%以下であり、 前記位相差層のヘイズは、0%超過1%未満であり、 前記位相差層が備えられていない面である前記フォトポリマー樹脂層の他面と垂直に照射された400nm~1600nmの波長を有する光に対する透過度が70%超過90%以下に相当する領域でピークを有さない、ホログラフィック光学素子。」 2 補正の適否について (1)本件補正事項 本件補正は、下記の3つの補正事項を含むものと認められるところ、以下それぞれを「本件補正事項ア」~「本件補正事項ウ」といい、これらをまとめて「本件補正事項」という。 ア 本件補正事項ア 本件補正事項は、補正前の請求項1を引用する請求項4を、さらに引用する請求項6に対して、補正前の「前記位相差層が備えられていない面である前記フォトポリマー樹脂層の他面と垂直に照射された400nm~1600nmの波長を有する光に対する透過度が0%超過70%以下であるか、または90%超過100%以下である、」との記載を、「前記位相差層が備えられていない面である前記フォトポリマー樹脂層の他面と垂直に照射された400nm~1600nmの波長を有する光に対する透過度が70%超過90%以下に相当する領域でピークを有さない、」との記載とすることによって、透過度について、補正前に「0%超過70%以下であるか、または90%超過100%以下である」と特定していた事項を、補正後の「70%超過90%以下に相当する領域でピークを有さない、」と特定する事項に変更し、さらに、これを請求項1に繰り上げる事項を含む。 イ 本件補正事項イ 本件補正事項イは、上記本件補正事項アによる補正に伴い、補正前の請求項4及び請求項6を削除するとともに、補正前の請求項5を補正後の請求項4に、補正前の請求項7~9を補正後の請求項5~7にそれぞれ繰り上げた上で、補正後のそれぞれの請求項の引用先の請求項番号を、当該削除と繰り上げに整合するように記載を改める事項を含む。 ウ 本件補正事項ウ 本件補正事項は、補正前の請求項11を引用する請求項12を、さらに引用する請求項13に対して、本件補正事項アと同様に、透過度に係る「0%超過70%以下であるか、または90%超過100%以下である、」と特定する事項を、補正後の「70%超過90%以下に相当する領域でピークを有さない、」と特定する事項に変更し、さらに、請求項8に繰り上げるとともに、補正前の請求項10~12を削除する事項を含む。 (2)補正の適否 ア 本件補正事項アについて 本件補正事項アは、上記「(1)ア」において示した事項を含むところ、補正前の請求項6が引用していた請求項1の記載に含まれる事項である、「前記位相差層が備えられていない面である前記フォトポリマー樹脂層の他面と垂直に照射された400nm~1600nmの波長を有する光に対する透過度が0%超過70%以下であるか、または90%超過100%以下である」との事項のうち、「透過度が0%超過70%以下であるか、または90%超過100%以下である」との事項が、令和6年3月29日付け拒絶理由通知書及び原査定において、明確性を欠くとされたことに対応して補正がなされたものであると認められる。 したがって、本件補正事項アは、補正前の請求項1を引用する請求項4を、さらに引用する請求項6について、特許法17条の2第5項4号の明りょうでない記載の釈明を目的とする補正に該当し、適法になされたものである。 イ 本件補正事項イについて 本件補正事項イは、上記「(1)イ」において示した事項を含むから、請求項を削除する補正または当該削除に伴う形式的な補正に該当するから、補正前の請求項4~9について、特許法17条の2第5項1号の請求項の削除を目的とする補正に該当し、本件補正は適法になされたものである。 ウ 本件補正事項ウについて 本件補正事項ウは、上記本件補正事項アまたはイと同様の事情を含むものであるから、これらと同様に、特許法17条の2第5項1号の請求項の削除または同条同項4号の明りょうでない記載の釈明を目的とする補正に該当し、適法になされたものである。 エ まとめ 上記「ア」~「ウ」で論じたとおり、本件補正は適法になされたものであると認められる。 第3 原査定の拒絶の理由 原査定の拒絶の理由は、概略、令和6年3月29日付け拒絶理由通知書に記載した、下記のとおりのものである。 1.(サポート要件)この出願は、特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。 2.(明確性)この出願は、特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。 3.(新規性)この出願の請求項1~8、10~13に係る発明は、優先日前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。 4.(進歩性)この出願の請求項1~13に係る発明は、優先日前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 引用文献1.特開平9-185313号公報 引用文献2.国際公開第2012/042793号(周知技術を示す文献) 引用文献3.特表2016-537452号公報(周知技術を示す文献) 第4 本願発明 上記「第2」で検討した事項から、本件出願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、令和6年12月5日に提出された手続補正書によって補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項によって特定される、次のとおりのものである。 「 フォトポリマー樹脂を含むフォトポリマー樹脂層の一面に位相差層を備えるステップと、 第1平行レーザ光を前記位相差層が備えられていない面である前記フォトポリマー樹脂層の他面に照射し、第2平行レーザ光を前記フォトポリマー樹脂層の前記一面に照射して、前記第1平行レーザ光および前記第2平行レーザ光の干渉現象による干渉パターンを前記フォトポリマー樹脂層に記録するステップと、を含むホログラフィック光学素子の製造方法であって、 前記位相差層は、λ/4波長位相遅延特性を有するものであり、 前記位相差層の光透過度は、90%超過100%以下であり、 前記位相差層のヘイズは、0%超過1%未満であり、 前記ホログラフィック光学素子は、前記位相差層が備えられていない面である前記フォトポリマー樹脂層の他面と垂直に照射された400nm~1600nmの波長を有する光に対する透過度が70%超過90%以下に相当する領域でピークを有さない、ホログラフィック光学素子の製造方法。」 第5 引用文献及び引用文献に記載された発明等 1 引用文献1 (1)引用文献1の記載事項 原査定において引用され、本願の優先日前に頒布された引用文献である、特開平9-185313号公報(引用文献1)には、図面とともに、以下の記載がある(合議体にて、発明の認定等に用いた箇所に下線を付した。)。 ア 「【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、ホログラム作製法に関し、特に、露光時の界面反射によるノイズ(不所望な格子)を低減することができるホログラム作製法に関するものである。 【0002】 【従来の技術】エッジリット型ホログラムを作製する際、臨界角以上の入射角で露光する必要があり、そのためにプリズム等を用いて露光を行う。図4は、このようなエッジリット型ホログラムの従来の作製法を説明するための断面図である。2つの入射光のうち、一方の入射光2はプリズム1を介して入射させ、他方の入射光2’はプリズム1を介さずホログラム記録材料3に入射させる。プリズム1側から入射した入射光2は、未露光のホログラム記録材料3を積層したガラス基板4と空気との界面で全反射されホログラム材料3中に戻ってしまい、他の光と干渉して不所望な干渉縞を形成してしまう。こうして作製されたホログラムは非常にノイズの多いホログラムとなってしまっていた。不所望な干渉縞の原因となる界面反射光5は全反射光であるため、適切な低減法は従来存在しなかった。 ・・・ 【0004】 【発明が解決しようとする課題】従って、本発明の目的は、露光時の界面反射による不所望な格子によるノイズを低減することができるホログラム作製法を提供することにある。 【0005】 【課題を解決するための手段】本発明は、前述の問題点を解決すべくなされたものであり、位相差板を用いて、界面反射による反射光の偏光方向を入射光の偏光方向と直交させることにより、さらには、ND板を用いて、界面での反射光を減衰させることにより、不所望な干渉縞の発生を抑制することを特徴とする。 ・・・ 【0007】このように、ホログラム感光材料の臨界角以上の入射角で第1の入射光を入射させる側の面とは反対側の面であって第2の入射光を入射させる面側に位相差板を設けることにより、ホログラム感光材料あるいはホログラム感光材料が積層される透明基板と空気との界面でおきる全反射光を、位相差板を用いて入射光の偏光方向と直交する偏光に変えることができ、その結果、界面の全反射光による不所望な干渉縞の発生を低減することができる。」 イ 「【0015】(第1の実施の形態)図1は、本実施の形態におけるエッジリット型ホログラム作製法を説明するための概念断面図である。ガラス基板4に積層された未露光ホログラム感光材料3を、60゜プリズム10と位相差板11とで屈折率整合液をそれぞれ介して挟持し、プリズム10側からプリズム10内で60゜の第1の入射光15をホログラム感光材料3に入射させ、位相差板11側からは空気中で50゜の第2の入射光13をホログラム感光材料3に入射させてホログラムを記録した。ホログラム記録に用いた光は、発振波長555nmの色素レーザー光であった。 【0016】プリズム側からの第1の入射光15はS偏光の光とした。この第1の入射光15が位相差板11と空気との界面で全反射されて界面反射光12を生じるが、界面反射光12は、S偏光の第1の入射光15が結晶軸を偏光方向に対し45゜回転させた位相差板11を2回通過することで生じるから、P偏光となる。一方、50゜側からの第2の入射光13は、位相差板11を1回通過後にS偏光になるよう予め波長板14で偏光状態を変えて入射させている。 【0017】この場合、ホログラム感光材料3に入射する第1の入射光15および第2の入射光13は、共にS偏光であるので、これらの第2の入射光13および第1の入射光15によってホログラム感光材料3にホログラムが記録される。一方、界面反射光12はP偏光であるため、S偏光である第2の入射光13や第1の入射光15とは干渉せず、不所望な干渉縞は発生しない。 【0018】ここで、使用する位相差板11は、60゜入射光に関して、2回通過してπ/2の位相差が生まれる様なリタデーション値(本実施例の場合555nm/4=139nm)を持たなくてはならず、そのような位相差板11は、次式を満足する。」 ウ 「【図1】 [図:0001437893000001.jpg] 」 (2)引用発明 上記(1)からみて、引用文献1には、第1の実施の形態として、以下に示す「エッジリット型ホログラム」の作製方法の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 「ガラス基板4に積層された未露光ホログラム感光材料3を、60゜プリズム10と位相差板11とで挟持し、プリズム10側からプリズム10内で60゜の第1の入射光15をホログラム感光材料3に入射させ、位相差板11側からは空気中で50゜の第2の入射光13をホログラム感光材料3に入射させてホログラムを記録し、ホログラム記録に用いた光は、発振波長555nmの色素レーザー光であり(【0015】)、 プリズム10側からの第1の入射光15はS偏光の光とし、界面反射光12は、S偏光の第1の入射光15が結晶軸を偏光方向に対し45゜回転させた位相差板11を2回通過することで生じるから、P偏光となり、50゜側からの第2の入射光13は、位相差板11を1回通過後にS偏光になるよう予め波長板14で偏光状態を変えて入射させており(【0016】)、 ホログラム感光材料3に入射する第1の入射光15および第2の入射光13は、共にS偏光であるので、これらの第2の入射光13および第1の入射光15によってホログラム感光材料3にホログラムが記録され、界面反射光12はP偏光であるため、S偏光である第2の入射光13や第1の入射光15とは干渉せず、不所望な干渉縞は発生しない(【0017】)、 使用する位相差板11は、60゜入射光に関して、2回通過してπ/2の位相差が生まれる様なリタデーション値(555nm/4=139nm)を持たなくてはならない(【0018】)、 エッジリット型ホログラム作製法(【0015】)。」 第6 対比及び判断 1 対比 本願発明と引用発明とを対比する。 (1)位相差層を備えるステップについて 引用発明の「未露光ホログラム感光材料3」は、「ガラス基板4に積層され」るとともに、「60゜プリズム10と位相差板11とで挟持」されるものである。 引用発明の「未露光ホログラム感光材料3」の上記機能及び形態からみて、本願発明の「フォトポリマー樹脂層」と引用発明の「「未露光ホログラム感光材料3」」とは、少なくとも「層」をなす点において共通する。 また、引用発明の「位相差板11」は、位相差を生じる機能を備える層を含むことは明らかであって、「板」との形状から層をなすものと認められるから、本願発明の「位相差層」に相当する。 さらに、引用発明の「未露光ホログラム感光材料3」は、「60゜プリズム10と位相差板11とで挟持」されるものであることから、上述のとおり「層」をなす「未露光ホログラム感光材料3」の一方の面の側に「位相差板11」が配置される関係にあるといえ、(ガラス基板4を介して)「未露光ホログラム感光材料3」の「一面」に「位相差板11」が設けられていると解することができるから、本願発明と引用発明とは、「層の一面に位相差層を備えるステップ」を備える点において一致する。 (2)記録するステップについて 引用発明の「プリズム10側からの第1の入射光15」は、「発振波長555nmの色素レーザー光」であって、「未露光ホログラム感光材料3を、60゜プリズム10と位相差板11とで挟持」するとの層構成をなすことからみて、本願発明の「第1平行レーザ光」に相当するとともに、「位相差層が備えられていない面である」「層の他面に照射」するものである点において一致する。 また、引用発明の「第2の入射光13」は、「位相差板11側から」「入射させ」るものであるから、本願発明の「第2平行レーザ光」に相当するとともに、「層の前記一面に照射」するものである点において一致する。 さらに、引用発明の「第1の入射光15」及び「第2の入射光13」は、ともに「未露光ホログラム感光材料3」に「入射させてホログラムを記録」するものであるから、本願発明と引用発明とは、「第1平行レーザ光および」「第2平行レーザ光の干渉現象による干渉パターンを」「層に記録するステップ」を備える点において一致する。 (3)位相差層の位相遅延特性について 引用発明の「位相差板11」は、「60゜入射光に関して、2回通過してπ/2の位相差が生まれる様なリタデーション値(555nm/4=139nm)を持たなくてはならない」ものであって、「S偏光の」「第1の入射光15」を、「位相差板11を2回通過することで」「P偏光」とするものであるから、「プリズム側からの第1の入射光15」に対して、λ/4板としての機能を有するものといえる。 そうすると、引用発明の「位相差板11」は、本願発明の「λ/4波長位相遅延特性を有するものであ」る「位相差層」に相当する。 (4)ホログラフィック光学素子の製造方法であることについて 引用発明の「エッジリット型ホログラム作製法」により製造される(エッジリット型の)「ホログラム」は、その記録、再生原理からみて、ホログラフィック光学素子といえる(本願明細書の【0001】~【0003】の従来技術及び技術分野の記載からも理解できる。)。 そうすると、引用発明の「エッジリット型ホログラム作製法」は、本願発明の「ホログラフィック光学素子の製造方法」に相当する。 2 一致点・相違点 したがって、本願発明と引用発明とは、 「 層の一面に位相差層を備えるステップと、 第1平行レーザ光を前記位相差層が備えられていない面である前記層の他面に照射し、第2平行レーザ光を前記層の前記一面に照射して、前記第1平行レーザ光および前記第2平行レーザ光の干渉現象による干渉パターンを前記層に記録するステップと、を含むホログラフィック光学素子の製造方法であって、 前記位相差層は、λ/4波長位相遅延特性を有するものである、 ホログラフィック光学素子の製造方法。」である点において一致し、次の点において一応相違する(以下それらをまとめて「相違点」という。)。 [相違点1] (干渉パターンを記録する)層が、本願発明では「フォトポリマー樹脂」からなる層であるのに対して、引用発明では「未露光ホログラム感光材料3」と特定されているにとどまり、いかなる材料からなるものかが明らかではない点。 [相違点2] 位相差層に関して、本願発明において「光透過度は、90%超過100%以下であ」るのに対して、引用発明ではそのようなものであるのかが明らかではない点。 [相違点3] 位相差層に関して、本願発明において「ヘイズは、0%超過1%未満であ」 るのに対して、引用発明ではそのようなものであるのかが明らかではない点。 [相違点4] ホログラフィック光学素子としての透過度に関して、本願発明において「位相差層が備えられていない面である前記フォトポリマー樹脂層の他面と垂直に照射された400nm~1600nmの波長を有する光に対する透過度が70%超過90%以下に相当する領域でピークを有さない」のに対して、引用発明ではそのようなものであるのかが明らかではない点。 3 判断 (1)相違点1 相違点1について検討すると、「未露光ホログラム感光材料3」として、「フォトポリマー樹脂を用いることは本願の優先日当時の技術常識であるから、記載されているに等しいし、仮に相違点であるとしても、ホログラム感光材料として「フォトポリマー樹脂」を採用することは、当業者が容易に想到できたことである。 (2)相違点2及び3 光透過度とヘイズは互いに密接に関連する光学特性であることから、相違点2及び3についてまとめて検討する。 本願発明の解決しようとする課題が「位相差層を用いて所望しない干渉パターンを除去するホログラフィック光学素子およびその製造方法を提供すること」であると理解されるところ、引用発明においてもこれと同様の課題を備えるものである(引用文献の【0004】等)から、本願発明と引用発明とは、より鮮明なホログラフィック像を形成しようとするものである点において課題が共通する。 また、ホログラムの(記録)原理を踏まえれば、参照光及び物体光の散乱や吸収が少なからず発生することは技術常識の範疇であるから、当該散乱及び吸収がホログラム(干渉パターン)の記録にとって好ましくないことは、当業者にとって自明な課題あるいは技術常識といえる。 そうすると、ホログラフィック光学素子を形成するための要素としての「位相差層」が、その「光透過度」及び「ヘイズ」との光学的性質を、上記課題の解決に資するように調整することは、当業者であれば当然に考慮する事項といえるから、相違点2及び3は実質的な相違点ではない。 また、仮に相違点であったしても、それらの物性値が本願発明の相違点2及び3に係る数値範囲内のものとすることは当業者が容易に想到できたことである。 (3)相違点4 相違点4について検討すると、本願発明において、「位相差層が備えられていない面である」「フォトポリマー樹脂層の他面と垂直に照射された400nm~1600nmの波長を有する光に対する透過度」が、「所望しない干渉パターンが記録され」た場合に、「70%超過90%以下に相当する領域でピークを有」することになるから、上述のとおり位相差板を用いた引用発明によって、「記録」された「ホログラム」以外に「不所望な干渉縞は発生しない」ものが作製される以上、本願発明が「所望しない干渉パターンが形成されないように位相差層を用い」たのと同様に、上記相違点5に係る構成を充足すると認められる。 したがって、上記相違点4は実質的な相違点であるとはいえないし、仮に相違点であるとしても当業者が容易に想到できたことである。 (4)まとめ 上記(1)~(3)で検討したとおり、上記相違点はいずれも実質的な相違点ではないし、仮にそうではないとしても、引用発明から当業者が容易に発明をすることができたものである。 第7 むすび 以上のとおり、本願発明は、特許法29条1項3号に該当し、また、特許法29条2項の規定により、特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本件出願は拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。

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2024-019579

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