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特許異議申立

2023-700267

フルオレン骨格を有するビスフェノール化合物の製造方法

審判番号
2023-700267
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2019-009948
登録番号
7134579
請求日
2023年03月10日
審決日
2023年05月26日
公報発行日
2023年06月30日
結論
維持
当事者
  • 【権利者】田岡化学工業株式会社
  • 【異議申立人】安野 詠子
審判長/審判官
  • 審判長 木村 敏康
  • 審判官 齊藤 真由美
  • 審判官 関 美祝
分類
P1651.121-Y (C07C)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第7134579号発明「フルオレン骨格を有するビスフェノール化合物の製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7134579号の請求項1ないし5に係る特許を維持する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第7134579号(以下「本件特許」という。)の請求項1~5に係る特許についての出願は、平成31年1月24日の出願であって、令和4年9月2日にその特許権の設定登録がされ、同年同月12日に特許掲載公報が発行され、その後、その特許の全請求項に対し、令和5年3月10日付けで特許異議申立人 安野 詠子(以下「申立人」という。)より、特許異議の申立てがされたものである。 第2 本件特許発明 本件特許の請求項1~5に係る発明は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1~5に記載された事項により特定される次のとおりのものである。 以下、本件特許の請求項1~5に係る発明を、それぞれ請求項順に、「本件特許発明1」などといい、これらをまとめて「本件特許発明」ともいう。 「【請求項1】 以下式(1): 【化1】 [図:0001398326000001.jpg] で表される化合物を、分岐を有してもよい炭素数5~9の脂肪族ケトン類を含む溶媒に溶解させて上記式(1)で表される化合物を含む溶液を調製し、該溶液に水を添加、混合した後、該溶液から水層を除去する工程を含む、上記式(1)で表される化合物の製造方法。 【請求項2】 前記溶液と水とを混合させる温度が70~95℃である、請求項1に記載の製造方法。 【請求項3】 脂肪族ケトン類が、2-ペンタノン、3-ペンタノン、2-ヘキサノン、3-ヘキサノン、2-ヘプタノン、3-ヘプタノン、4-ヘプタノン、2-オクタノン、3-オクタノン、4-オクタノン、メチルイソブチルケトン、メチルイソアミルケトン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン、2-メチルシクロヘキサノン、3-メチルシクロヘキサノン及び4-メチルシクロヘキサノンからなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項1又は2に記載の製造方法。 【請求項4】 脂肪族ケトン類の使用量が、以下式(1): 【化2】 [図:0001398326000002.jpg] で表される化合物1重量部に対し4~10重量部であり、水の使用量が、上記式(1)で表される化合物1重量部に対し1~5重量部である、請求項1~3のいずれか一項に記載の製造方法。 【請求項5】 更に、前記溶液から以下式(1): 【化3】 [図:0001398326000003.jpg] で表される化合物の結晶を析出させ、該結晶を分離する工程を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の製造方法。」 第3 申立理由の概要 申立人は、証拠方法として、下記2に示す甲第1号証~甲第7号証を提出し、次の申立理由を主張している。 なお、以下では、甲第1号証~甲第7号証を、それぞれ順に、「甲1」~「甲7」という。 1 申立理由(進歩性) 本件特許の請求項1~5に係る発明は、本件特許出願前に日本国内において、頒布された甲1又は甲2に記載された発明及び甲3~甲7に記載された技術的事項に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、本件特許の請求項1~5に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当するから取り消すべきものである。 2 証拠方法 甲1:特開2003-221352号公報 甲2:特開2002-47227号公報 甲3:特開平10-45655号公報 甲4:特開2011-26257号公報 甲5:特開2005-23022号公報 甲6:特開2006-290755号公報 甲7:特開2005-29504号公報 第4 判断 当審合議体は、本件特許の請求項1~5に係る特許は、上記第3に示した申立理由によっては、取り消すことはできないと判断する。その理由は以下のとおりである。 なお、以下の下線は、当審合議体で追加した。また、証拠の記載はすべて全角で表記する。 1 甲各号証の記載事項 (1)甲1の記載事項 (甲1a)「【請求項1】 チオール類および硫酸の共存下、フルオレノンと式(I) 【化1】 [図:0001398326000004.jpg] (式中、Rはアルキル基、アルコキシ基、アリール基又はシクロアルキル基を表す。nは0~4の整数を表す)で表されるフェノール類とを反応させ、炭化水素類と極性溶媒とで構成された晶析溶媒を用いて反応混合物から結晶を析出させ、式(II)(式中、R及びnは前記に同じ) 【化2】 [図:0001398326000005.jpg] で表されるビスフェノールフルオレン類を製造する方法。」 (甲1b)「【0009】 【課題を解決するための手段】本発明者らは、前記課題を達成するため鋭意検討した結果、硫酸とβ-メルカプトプロピオン酸などのチオール類とで構成された触媒系の存在下、フルオレノンとフェノール類とを反応させ、反応生成物に、生成したビスフェノールフルオレン類と水素結合して包接結晶を形成する晶析溶媒を添加して結晶を析出させると、触媒として硫酸を用いても、殆ど着色することなく透明性の高い高純度のビスフェノールフルオレン類が効率よく得られることを見出し、本発明を完成した。」 (甲1c)「【0043】本発明では、晶析溶媒を用いることにより、反応混合物から着色のない高純度の目的化合物を得ることができる。晶析溶媒は、反応終了後の反応混合物に添加して混合又は溶解してもよいが、晶析効率を高めるため、通常、残存する硫酸及びチオール類を除去した後(また、必要であれば、蒸留などによりフェノール類を除去した後)、残渣に対して晶析溶媒を添加し混合溶解する場合が多い。残存する硫酸は、慣用の方法、例えば、中和処理により除去できる。中和剤としては、種々の塩基、例えば、無機塩基(水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属水酸化物、炭酸ナトリウム、炭酸水素カリウムなどのアルカリ金属炭酸塩、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウムなどのアルカリ土類金属水酸化物、炭酸カルシウムなどのアルカリ土類金属炭酸塩、アンモニアなど)、有機塩基(脂肪族、脂環族、芳香族又は複素環式アミン類など)が例示できる。塩基としては、通常、アルカリ金属水酸化物が使用される。塩基の使用量は、通常、中性域pH、例えば、pH6~8程度となる量である。 【0044】中和処理は反応終了後の反応混合物に対してアルカリ水溶液を添加することにより行ってもよく、反応混合物に有機溶媒(例えば、ビスフェノールフルオレン類を可溶な溶媒、特に、トルエンなどの下記炭化水素類)、アルカリ水溶液を添加して中和処理してもよい。特に、生成したビスフェノールフルオレン類を有効に回収するため、反応混合液に抽剤を添加し、混合液を中和処理するのが有利である。抽剤としては、ビスフェノールフルオレン類を可溶な有機溶剤(例えば、ヘキサンなどの脂肪族炭化水素類、トルエンなどの芳香族炭化水素類、シクロヘキサンなどの脂環式炭化水素類、ハロゲン化炭化水素類など)とビスフェノールフルオレン類に対する貧溶媒(例えば、水)との混合溶媒が使用できる。このような抽剤を利用すると、ビスフェノールフルオレン類を有機層に分配又は移行させ、残存する硫酸を水相に分配又は移行させることができ、有効かつ効率よく残存硫酸を除去できる。特に、残存硫酸を中和処理により硫酸塩として水相に効率よく移行させることができる。また、チオール類もその溶解性に応じて、水相又は有機層(特に水相)に分配できる。なお、有機層には未反応のフェノール類が分配していてもよい。 【0045】通常、反応混合物をアルカリ水溶液で中和して水相を除去し、有機層を濃縮し、残渣に対して、晶析溶媒を添加することにより、ビスフェノールフルオレン類を晶析させる。すなわち、中和処理した後、必要により有機層を水で洗浄し、水層を除去した後、有機溶媒を蒸留などにより除去して有機層を濃縮し、残渣に対して晶析溶媒を添加する。晶析溶媒は、炭化水素類と極性溶媒とで構成されており、極性溶媒は、通常、ビスフェノールフルオレン類に対して水素結合能力を有する溶媒(特に、ビスフェノールフルオレン類との包接結晶を生成する溶媒)が使用される。 【0046】炭化水素類としては、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタンなどの脂肪族炭化水素類、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンなどの脂環式炭化水素類、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼンなどの芳香族炭化水素類、ジクロロメタン、ジクロロエタン、トリクロロエチレン、ジクロロベンゼンなどのハロゲン化炭化水素類などが含まれる。これらの炭化水素類は単独で又は二種以上混合して使用できる。好ましい炭化水素類はビスフェノールフルオレン類を可溶な溶媒、特に芳香族炭化水素類(トルエンなど)である。 【0047】極性溶媒としては、例えば、水、アルコール類(メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、シクロヘキサノールなど)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジエチルケトン、エチルプロピルケトン、ジ-n-プロピルケトン、ジイソプロピルケトン、シクロヘキサノンなど)、ニトリル類(アセトニトリル、プロピオニトリル、ベンゾニトリルなど)、セロソルブ類(メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブなど)、アミド類(ホルムアミド、アセトアミド、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなど)、スルホキシド類(ジメチルスルホキシド)、スルホランなどが例示できる。これらの極性溶媒は単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。好ましい極性溶媒は、水、アルコール類(例えば、C1-4アルコール)、ケトン類(ジC1-4アルキルケトン)、ニトリル類(アセトニトリルなど)である。」 (甲1d)「【0056】実施例1 撹拌器、冷却器、および温度計を備えた2Lのガラス製反応器に、純度99%のフルオレノン70g、オルトクレゾール250g、β-メルカプトプロピオン酸0.4g、および濃硫酸15gを仕込み、55℃で6時間攪拌することにより、反応を行った。HPLCで確認した結果、フルオレノンの残存量は0.1%以下であった。得られた反応混合液に、トルエン300gおよび水80gを加え、32%水酸化ナトリウム水溶液をpHが約7になるまで加えて中和した後、水層を除去した。有機層を80℃に加温した後に、水80gで3回洗浄した。 【0057】減圧蒸留により有機層からトルエン300gを回収したのち、有機層にトルエン-アセトンの混合溶媒(混合比率1:4)400mlを加えて70℃で1時間攪拌したのちに、10℃まで冷却し、再結晶させることにより、目的生成物である9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)フルオレン140g(収率89%)を得た。 【0058】得られた9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)フルオレンの純度は99.7%であり、b値は1.1(無色透明)であった。そのため、得られた化合物は、さらに再結晶することなく、ポリマー原料として使用できる。 ・・・ 【0061】実施例3 オルトクレゾール250gに代えてオルトフェニルフェノール425gを用いる以外は実施例1と同様にして、目的生成物である9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-フェニルフェニル)フルオレン185g(収率90%)を得た。 【0062】得られた9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-フェニルフェニル)フルオレンの純度は99.3%であり、b値は1.6(無色透明)であった。そのため、得られた化合物は、さらに再結晶を行うことなく、ポリマー原料として使用できる。」 (2)甲2の記載事項 (甲2a)「【請求項1】 フルオレノンと式(I)で表されるフェノール類とを、チオール類および塩酸水の共存下で縮合反応させて、式(II)で表されるフルオレン誘導体を製造する方法。 【化1】 [図:0001398326000006.jpg] 【化2】 [図:0001398326000007.jpg] (式中、Rはアルキル基、アルコキシ基、アリール基又はシクロアルキル基を表す。nは0~2の整数を表す)」 (甲2b)「【0007】 【発明が解決しようとする課題】従って、本発明の目的は、取扱いの難しい塩化水素ガスを使用することなく、安全かつ簡便に高収率で、フルオレン誘導体を製造する方法を提供することにある。 【0008】また、本発明の他の目的は、煩雑な精製を行うことなく、安価かつ簡便に、透明性に優れた高純度なフルオレン誘導体を製造する方法を提供することにある。 【0009】 【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記従来技術の問題点に鑑み、鋭意検討を重ねた結果、塩化水素ガスに代えて塩酸水を用い、チオール類との共存下で反応を行うと、着色度合いの少ない透明性に優れたフルオレン誘導体を簡便な方法で得られることを見出した。」 (甲2c)「【0040】反応終了後、慣用の方法により高純度なフルオレン誘導体が得られる。例えば、反応混合物にアルカリ水溶液を加えて中和し、水層を除去した後、有機層に適宜、晶析用溶媒[例えば、芳香族炭化水素(トルエン、キシレン等)、低級脂肪族アルコール(メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール等のC1-3アルキルアルコール)、低級脂肪族ケトン(アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、エチルプロピルケトン、ジ-n-プロピルケトン、ジイソプロピルケトン等のC3-7アルキルケトン)等、又はこれらの混合溶媒]を加え、冷却することによって、結晶化させる。次いで、ろ過、分離することにより目的物を得ることができる。加える晶析用溶媒の量はフルオレン誘導体の種類により異なるが、通常、粗製品の1~5重量倍(好ましくは2~5重量倍)程度である。」 (甲2d)「【0045】実施例1 撹拌器、冷却器、および温度計を備えた2Lのガラス容器に、99重量%のフルオレノン75g、o-クレゾール270g、β-メルカプトプロピオン酸8.5g、および36重量%塩酸水27gを仕込み、不活性ガス雰囲気中、25℃で6時間、続いて35℃で11時間攪拌することにより、反応を行った。反応生成物をHPLCで確認した結果、フルオレノンの残存量は0.1重量%以下であった。 【0046】得られた反応液に、トルエン300gおよび水80gを加えた後、32重量%水酸化ナトリウム水溶液を加えてpHが約7になるまで中和した後、水層を除去した。有機層を80℃に加温した後に、水80gで3回洗浄した。 【0047】減圧蒸留によりトルエン300gを回収したのち、有機層にトルエン-アセトンの混合液(混合比率1:4(重量比))500mlを加えて70℃で1時間攪拌したのちに、10℃まで冷却し、結晶化させることにより、目的生成物である9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)フルオレン140g(収率89%)を得た。 【0048】得られたフルオレン誘導体の純度は99.6重量%であった。また、黄色度は1.3(無色透明)であり、これ以上の晶析操作を行うことなく、ポリマー原料として使用できる。 ・・・ 【0051】実施例3 o-クレゾール270gに代えてo-フェニルフェノール425gを用いる以外は実施例1と同様にして行った。その結果、目的生成物である9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-フェニルフェニル)フルオレン185g(収率90%)が得られた。 【0052】得られたフルオレン誘導体の純度は99.0重量%であった。また、黄色度は1.8(無色透明)であり、これ以上の晶析操作を行うことなく、ポリマー原料として使用できる。」 (3)甲3の記載事項 (甲3a)「【請求項1】 硫酸とチオールを触媒として用いてフルオレノンとフェノキシエタノールとを反応させて9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンを製造する方法において、得られた反応液に水と相溶し難い有機溶剤及び水を加えて溶解、水洗し、水層と油層に分液し、油層から目的とする9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンを回収することを特徴とするフルオレン誘導体の製造方法。」 (甲3b)「【0013】本発明の特徴は、硫酸とチオールを触媒として用いてフルオレノンとフェノキシエタノールとを反応させて9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンを製造する方法において、得られた反応液に目的とする9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンに相溶し易いが水と相溶し難い有機溶剤(以下、単に水と相溶し難い有機溶剤という)及び水を加えて溶解し、水洗した後、水層と油層に分離し、油層から目的とする9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンを、工業的に有利な方法で、高品質、高収率で回収することにある。 【0014】本発明に用いられる水と相溶し難い有機溶剤としては、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶剤、メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶剤、その他イソブチルアセテート等が挙げられる。」 (甲3c)「【0024】 【実施例】 実施例1 攪拌機、冷却管及び滴下ロートを備えた内容積1000mlの4つ口フラスコに純度99.5重量%のフルオレノン(フルオレンを液相空気酸化して得たもの)45g(0.25mol)とフェノキシエタノール(四日市合成株式会社製、PHE-G)138g(1.00mol)、β-メルカプトプロピオン酸0.2mlを仕込み、均一に溶解させてから95%硫酸45mlを30分かけて滴下した後、反応温度を65℃で4時間保温し、反応を続けて完結させた。 【0025】次いで、反応液に水90ml、トルエン450mlを加え、80~85℃で30分間攪拌、水洗後、30分間静置して、下層の水層を分離した。更に2回同量の水を加えて水洗を繰り返し、硫酸を除去した。反応液を室温まで冷却して結晶を析出させ、濾過後、70℃で1日間減圧乾燥した。得られた粗結晶(9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンの純度は98.5%、収量は82.3g、収率74.5%であった。また、結晶中の残存硫酸は600ppmであった。 ・・・ 【0027】実施例2 実施例1で使用した水と相溶し難い有機溶剤としてトルエンに代え、メチルイソブチルケトン450mlを用い、他は実施例1と同様に実施した。得られた粗結晶(9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンの純度は98.0、収量は79.9g、収率72%であった。また、結晶中の残存硫酸は620ppmであった。」 (4)甲4の記載事項 (甲4a)「【請求項1】 酸触媒存在下、フルオレノンと式(I) 【化1】 [図:0001398326000008.jpg] (式中、R2はアルキレン基、R1はアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、アルコキシ基又はハロゲン原子を示す。nは0又は1以上の整数を示し、mは0又は1~4の整数を示す。但しmが0のときnは1以上の整数である。) で表される化合物とを反応させて、式(II) 【化2】 [図:0001398326000009.jpg] (式中、R2はアルキレン基、R1はアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、アルコキシ基又はハロゲン原子を示す。nは0又は1以上の整数を示し、mは0又は1~4の整数を示す。但しmが0のときnは1以上の整数である。) で表されるフルオレン誘導体を製造する方法において、反応終了後、フルオレン誘導体を含む反応混合液にアルカリを添加した後、添加したアルカリおよびアルカリの反応物を除去することなく、濃縮により未反応の式(I)で表される化合物を分離する事を特徴とするフルオレン誘導体の製造法。」 (甲4b)「【実施例1】 【0034】 攪拌器、冷却器、および温度計を備えた500mlのガラス製反応器に、フルオレノン40.0g、2-フェノキシエタノール306.7g、トルエン160gおよびリンタングステン酸1.0gを仕込み、トルエン還流下8時間攪拌することにより反応を行った。HPLCで確認した結果、フルオレノンの残存量は0.1%以下であった。得られた反応混合液に29%水酸化ナトリウム水溶液1.0gを加えた後、減圧濃縮によりトルエンおよび2-フェノキシエタノール240.0gを留去した。得られた濃縮液にトルエン280g、水60gを加え80℃で攪拌後、水相を分液除去し目的物を有機相に分配回収した。分液排水を分析した結果、全有機炭素(以下TOCと称す)=850mg/L、化学的炭素要求量(以下CODと称す)=2500mg/L、生物学的酸素要求量(以下BODと称す)=200mg/L、フェノール分=0.1mg/L以下であった。 得られた有機相を水60gで2回洗浄した後、この有機相を20℃まで冷却し、析出した結晶をろ過、乾燥することにより9,9-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレン76.8g(収率78.8%、LC純度98.2%)を得た。得られた9,9-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレンを230℃で2時間加熱溶解した後の色相はAPHAで100であった。製造に使用した全トルエン量は9,9-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレン1重量部に対して5.7重量部であった。 ・・・ 【実施例4】 【0039】 攪拌器、冷却器、および温度計を備えた500mlのガラス製反応器に、フルオレノン23.0g、ドデシルメルカプタン0.4g、2-メチルフェノール276.0gおよびナフィオンNR50(デュポン社製パーフルオロスルホン酸系陽イオン交換樹脂)17.5gを仕込み、95℃で8時間攪拌することにより反応を行った。HPLCで確認した結果、フルオレノンの残存量は0.1%以下であった。ろ過によりイオン交換樹脂を除いて得られた反応混合液に29%水酸化ナトリウム水溶液0.5gを加えた後、減圧濃縮により有機層から2-メチルフェノール95.0gを留去した。得られた濃縮液にトルエン161g、水23gを加え80℃で攪拌後、水相を分液除去し目的物を有機相に分配回収した。更に有機相を水23gで2回洗浄した。この有機相を10℃まで冷却し、析出した結晶をろ過、乾燥することにより、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)フルオレン38.5g(収率85.7%、LC純度99.5%)を得た。得られた9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)フルオレンを230℃で2時間加熱溶解した後の色相はガードナーで2であった。製造に使用した全トルエン量は9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)フルオレン1重量部に対して4.2重量部であった。」 (5)甲5の記載事項 (甲5a)「【請求項1】 シクロヘキサノンと一般式(I) 【化1】 [図:0001398326000010.jpg] (式中、Rは水素原子又はアルキル基を示す。) で表されるフェノール類を酸触媒の存在下に反応させ、得られた反応混合物をアルカリで中和した後、生成した1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン類を1次晶析し、濾過して、1次晶析濾過物を得、次いで、この1次晶析濾過物100重量部を水5~10重量部と低級脂肪族ケトン溶媒100~200重量部とからなる混合溶媒又は低級脂肪族アルコール溶媒200~400重量部に溶解させて溶液とし、この溶液をゼータ電位フィルターで濾過し、かくして、得られた濾液から水の存在下に1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン類を2次晶析し、濾過することを特徴とする一般式(II) 【化2】 [図:0001398326000011.jpg] (式中、Rは上記と同じである。) で表される高純度1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン類の製造方法。」 (甲5b)「【0035】 参考例1 温度計、滴下漏斗、冷却器及び攪拌装置を備えた1L容量の四つ口フラスコにo-クレゾール194.4g(1.8モル)と水3.8gを仕込み、内温を40℃に保って、反応系内を窒素置換した後、塩化水素ガスを飽和するまで吹き込んだ。 【0036】 温度を40℃に維持しつつ、これにシクロヘキサノン58.8g(0.6モル)とo-クレゾール64.8g(0.6モル)の混合物を4時間かけて滴下した後、同じ温度で更に18時間、反応させた。 【0037】 反応終了後、得られた反応混合物に16%水酸化ナトリウム水溶液を加えて中和した後、メチルイソブチルケトン176gを加え、100℃まで昇温し、反応生成物を溶解させた。この後、反応混合物から水層を分液除去し、水洗した。得られた混合物から水層を除去し、残留油層に水92gを加え、メチルイソブチルケトンを留去した後、冷却、濾過して、1次晶析濾過物150gを得た。この1次晶析濾過物中の目的物の純度は97%(液体クロマトグラフィー分析による測定)、不純物金属ナトリウムは1600ppb(原子吸光法による測定)であった。 【0038】 実施例1 (メチルイソブチルケトン溶媒を用いる精製) 温度計、冷却器及び攪拌装置を備えた1L容量の四つ口フラスコに上記1次晶析濾過物150g、メチルイソブチルケトン225g及び水7.5gを仕込み、100℃に昇温して、溶解させた。その後、この混合溶液を70℃に維持して、キュノフィルター濾過を行った。 ・・・ 【0042】 比較例1 (トルエン溶媒を用いる精製) 温度計、冷却器及び攪拌装置を備えた1L容量の四つ口フラスコに上記1次晶析濾過物150gとトルエン300gと水150gを仕込み、85℃に昇温した。その後、この混合溶液を70℃に維持して、キュノフィルター濾過を行ったが、結晶が完全に溶解しないために、フィルターが目詰まりを起こした。 【0043】 そこで、温度計、冷却器及び攪拌装置を備えた1L容量の四つ口フラスコに上記1次晶析濾過物150gとトルエン300gと水150gを仕込み、135℃に昇温して、溶解させた。・・・」 (6)甲6の記載事項 (甲6a)「【0011】 かかる本発明による新規な2,2’-メチレンビスフェノール化合物は、その製造方法については、特に制限はないが、例えば、下記一般式(2)で表される2,4-ジアルキルフェノールと下記一般式(3)で表されるカルボキシベンズアルデヒドを原料とし、酸又はアルカリ触媒の存在下に脱水縮合反応を行うことにより得ることができる。下記に化学反応式を例示する。 【0012】 【化3】 [図:0001398326000012.jpg] ・・・ 【0015】 ・・・ 反応に際し、通常、反応によって生成する2,2’-メチレンビスフェノール化合物は、反応溶剤に溶解し難いために、上記反応温度条件下では、反応液中に析出する場合がある。この場合は、反応終了後、得られた反応液に、酸触媒を用いている場合は、アンモニア水、水酸化ナトリウム水溶液等のアルカリを加えて、また、アルカリ触媒を用いている場合は、塩酸等の酸を加えて、酸触媒又はアルカリ触媒を中和した後、脂肪族ケトン等の良溶媒を加えて、加温し、結晶を溶解する。次いで、水層を分離して、得られた油層を晶析、濾過するか、又は必要に応じて溶媒を蒸留等により留去した後に油層と違う組成の溶媒を加えて晶析、濾過して粗結晶を得る。さらに、必要に応じて、再度溶媒を加えて、晶析し、濾過、乾燥して、これを必要に応じて1回ないし複数回行えば、本発明の2,2’-メチレンビスフェノール化合物の高純度品を得ことができる。」 (甲6b)「【実施例1】 【0018】 (2,2’-〔(4-カルボキシフェニル)メチレン〕ビス(6-t-ブチル-4-メチルフェノール):化合物Bの合成) 撹拌機、温度計及び還流コンデンサーを備えた3L容量の四つ口フラスコに35wt%塩酸67.5g(原料アルキルフェノールに対し、27.4wt%)、2-t-ブチル-4-メチルフェノール246.0g(1.5mol)及びトルエン196.8gを仕込み、フラスコ内温を44~47℃に保持しつつ撹拌下、これに、p-カルボキシベンズアルデヒド45.0g(0.3mol)を30分かけて添加した。 添加終了後、同温度を維持しつつ、さらに約8時間反応させた。反応途中において結晶が析出した。反応終了後、トルエン50gを加え、次いで16%水酸化ナトリウム水溶液で中和した後、メチルイソブチルケトンを加えて85℃に昇温して析出した結晶を溶解した。その後、混合液から水層を分液して除去した。得られた油層を水洗した後、この油層を110mmHgで140℃まで昇温して溶媒を除去後、濃縮残液にトルエンとメチルエチルケトンを加えて、晶析して得られた粗結晶103.1gを濾別した。この粗結晶に再度トルエンを加えて再結晶し、白黄色粉末結晶として下記の2,2’-〔(4-カルボキシフェニル)メチレン〕ビス(6-t-ブチル-4-メチルフェノール)95.3g(高速液体クロマトグラフ分析による純度99.8%)を得た。 ・・・ 【実施例2】 【0021】 (2,2’-〔(4-カルボキシフェニル)メチレン〕ビス(4,6-ジメチルフェノール):(化合物A)の合成) 撹拌機、温度計及び還流コンデンサーを備えた1L容量四つ口フラスコに35wt%塩酸48.8g(原料アルキルフェノールに対し、20wt%)、2,4-ジメチルフェノール244.0g(2.0mol)を仕込み、フラスコ内温を50~55℃に保持しつつ撹拌下、これにp-カルボキシベンズアルデヒド30g(0.2mol)を30分かけて添加した。 添加終了後、同温度を維持しつつ、さらに約6時間反応させた。反応途中において結晶が析出した。反応終了後、メチルイソブチルケトン300gを加え、次いで16%水酸化ナトリウム水溶液で中和した後、昇温し、析出した結晶を全て溶解した。その後、混合液から水層を分液して除去した。得られた油層を水洗した後、この油層を40mmHgで135℃まで昇温して溶媒を除去後、濃縮残液にトルエンとメチルエチルケトンを加えて、晶析して得られた粗結晶57.4gを濾別した。 この粗結晶に再度トルエンを加えて再結晶し、淡黄色粉末結晶として下記の2,2’-〔(4-カルボキシフェニル)メチレン〕ビス(4,6-ジメチルフェノール)54.2g(高速液体クロマトグラフ分析による純度97.4%)を得た。」 (7)甲7の記載事項 (甲7a)「【0012】 【発明の実施の形態】 本発明のフェノール誘導体の製造方法は、原料としてフェノール類及び芳香族アルデヒド類、酸触媒としてリン酸類を必須とし、これらから形成される二層分離状態を、例えば機械的攪拌、超音波等によりかき混ぜ混合した二層が交じり合った白濁状の不均一反応系において、フェノール類と芳香族アルデヒド類との反応を進めて縮合物を合成する工程を有する。この反応の際、不均一状態を維持する範囲で適当な有機溶剤を添加しても良い。 【0013】 次に、濾別してリン酸及び未反応モノマーを除去し、得られた粗結晶を例えばメチルエチルケトンやメチルイソブチルケトンなどの非水溶性有機溶剤に溶解した後純水で洗浄する事により残留するリン酸触媒を除去し、例えばトルエン、キシレンなどの目的物に対して貧溶媒として作用する有機溶媒に置換して晶析し、再度濾別してフェノール誘導体を製造する。あるいは、反応終了後、例えばメチルエチルケトンやメチルイソブチルケトン等の非水溶性有機溶剤を添加混合して該縮合物を溶解した後、静置して有機相と水相の二層に分離させ、その後、水相を除去してリン酸類と反応補助溶媒の回収を図る一方、有機相については湯水洗によりリン酸類を除去した後、減圧蒸留により非水溶性有機溶剤と残留するフェノール類を除去する方法によりフェノール誘導体を製造する。」 (甲7b)「【0046】 <実施例8>4,4’-(フェニルメチレン)ビス〔2-メチルフェノール〕の合成 温度計、攪拌装置、コンデンサーを備えた反応容器内に、o-クレゾールを108部、ベンズアルデヒドを31.8部(モル比0.3)、89%リン酸を54部、メルカプト酢酸を2.2部仕込み40℃で24時間縮合反応を行い、ゲル濾過クロマトグラフィーで反応の終了を確認して反応を停止した。この時の未反応モノマーは29.5%であり、4,4’-(フェニルメチレン)ビス〔2-メチルフェノール〕の反応選択率は97.5%であった。 【0047】 次いで、攪拌混合しながらメチルイソブチルケトンを添加して縮合物を溶解した後、攪拌混合を停止して内容物を分液フラスコ内に移して静置し、メチルイソブチルケトン溶液層(上層)とリン酸水溶液層(下層)に分離させた。次いで、リン酸水溶液層を除去し、メチルイソブチルケトン溶液を数回水洗してリン酸を除いた後、再び内容物を反応容器内に戻し、減圧蒸留によりメチルイソブチルケトン及び未反応o-クレゾールを完全に除去して純度93.5%の4,4’-(フェニルメチレン)ビス〔2-メチルフェノール〕82.1部を得た。」 2 申立理由(進歩性)について (1)甲1を主たる引用発明とする申立理由について ア 甲1に記載された発明 甲1は、フルオレノンとフェノール類とを反応させ、炭化水素類と極性溶媒とで構成された晶析溶媒を用いて反応混合物から結晶を析出させ、ビスフェノールフルオレン類を製造する方法に関する技術的事項を開示するものである(上記1(1)(甲1a)。以下、上記1の甲各号証の記載事項については、単に(甲1a)などと示す。)。 そして、その具体例を示した実施例3からみて(甲1d)、甲1には、次の「甲1発明」が記載されていると認める。 甲1発明: 「反応器に、純度99%のフルオレノン70g、オルトフェニルフェノール425g、β-メルカプトプロピオン酸0.4g及び濃硫酸15gを仕込み、55℃で6時間攪拌することにより、反応を行い、得られた反応混合液に、トルエン300g及び水80gを加え、32%水酸化ナトリウム水溶液をpHが約7になるまで加えて中和した後、水層を除去し、有機層を80℃に加温した後に、水80gで3回洗浄し、減圧蒸留により有機層からトルエン300gを回収した後、有機層にトルエン-アセトンの混合溶媒(混合比率1:4)400mlを加えて70℃で1時間攪拌した後に、10℃まで冷却し、再結晶させることによる、純度は99.3%であり、b値は1.6(無色透明)である、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-フェニルフェニル)フルオレン185g(収率90%)の製造方法。」 イ 本件特許発明1について (ア)対比 a 甲1発明の「9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-フェニルフェニル)フルオレン」は、本件特許発明1の「式(1):(化学構造式略)で表される化合物」に該当する。 b 本件特許明細書の段落【0019】に「本発明の具体的実施方法としては・・・無機酸又は有機酸存在下、フルオレノンとo-フェニルフェノールとを反応させ上記式(1)で表される化合物を含む反応液を得、該反応液に、分岐を有してもよい炭素数5~9の脂肪族ケトン類、水及び必要に応じ塩基を添加し、下記する温度で有機層と水層とを混合し、混合させた後、有機層から水層を除去することにより実施する方法が例示される(以下、一連の操作を「水洗」と称することがある)。」と記載され、同段落【0022】に「・・・使用する塩基は・・・水酸化ナトリウム・・・が例示される。」と記載され、同段落【0025】に「得られた有機層は、必要に応じて複数回水洗を行ってもよく」と記載され、同段落【0026】に「有機層から上記式(1)で表される化合物の結晶を析出させ、該結晶をろ別することで上記式(1)で表される化合物を結晶として単離する(以下、晶析と称することがある)方が、該化合物の純度が向上し、また着色が低減されることから好ましい。」と記載されている。 そして、同段落【0033】の製造例1では、98%硫酸存在下、9-フルオレノンとo-フェニルフェノールを反応させることにより、式(1)で表される化合物を含む反応液を得たことが示され、同段落【0034】の実施例1では、製造例1で得られた反応液に、水、水酸化ナトリウムを添加撹拌後、メチルイソブチルケトンを添加し、85℃で撹拌し、静置後、水層を分離し、得られた有機層に水を加えて80~85℃で撹拌し、静置後、水層を分離し、同じ操作を3回繰り返したこと、得られた有機層を濃縮することでメチルイソブチルケトンを除去し、得られた濃縮物にメチルイソブチルケトンを添加し、115℃で撹拌後、25℃に冷却して結晶を得たことが示されている。 c 上記bの記載から、甲1発明における「反応器に、純度99%のフルオレノン70g、オルトフェニルフェノール425g、β-メルカプトプロピオン酸0.4g及び濃硫酸15gを仕込み、55℃で6時間攪拌することにより、反応を行い」9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-フェニルフェニル)フルオレンを含む反応混合液を得ること、水層を除去した「有機層を80℃に加温した後に、水80gで3回洗浄し、減圧蒸留により有機層からトルエン300gを回収した後、有機層にトルエン-アセトンの混合溶媒(混合比率1:4)400mlを加えて70℃で1時間攪拌した後に、10℃まで冷却し、再結晶させる」ことは、本件特許発明1の「上記式(1)で表される化合物の製造方法。」に相当する。 d また、上記bの記載から、本件特許発明1の式(1)で表される化合物を「分岐を有してもよい炭素数5~9の脂肪族ケトン類を含む溶媒に溶解させて上記式(1)で表される化合物を含む溶液を調製し、該溶液に水を添加、混合した後、該溶液から水層を除去する工程」には、式(1)で表される化合物を含む反応液に、分岐を有してもよい炭素数5~9の脂肪族ケトン類、水及び水酸化ナトリウムを添加して混合した後、水層を除去する工程が含まれるといえる。 したがって、甲1発明の「得られた反応混合液に、トルエン300g及び水80gを加え、32%水酸化ナトリウム水溶液をpHが約7になるまで加えて中和した後、水層を除去」することは、本件特許発明1の「以下式(1):(化学構造式略)で表される化合物を、分岐を有してもよい炭素数5~9の脂肪族ケトン類を含む溶媒に溶解させて上記式(1)で表される化合物を含む溶液を調製し、該溶液に水を添加、混合した後、該溶液から水層を除去する工程」と、式(1)で表される化合物を「溶媒に溶解させて上記式(1)で表される化合物を含む溶液を調製し、該溶液に水を添加、混合した後、該溶液から水層を除去する工程」という点において一致する。 e よって、両発明は、次の一致点及び相違点を有する。 一致点: 「以下式(1):(化学構造式略)で表される化合物を、溶媒に溶解させて上記式(1)で表される化合物を含む溶液を調製し、該溶液に水を添加、混合した後、該溶液から水層を除去する工程を含む、上記式(1)で表される化合物の製造方法。」である点。 相違点: 「溶媒」が、本件特許発明1は、「分岐を有してもよい炭素数5~9の脂肪族ケトン類を含む溶媒」であるのに対し、甲1発明は、「トルエン」である点。 (イ)判断 a 甲1発明の「有機層にトルエン-アセトンの混合溶媒(混合比率1:4)400mlを加えて70℃で1時間攪拌した後に、10℃まで冷却し、再結晶させる」ことは、甲1の請求項1に係る発明における「炭化水素類と極性溶媒とで構成された晶析溶媒を用いて反応混合物から結晶を析出」(甲1a)させることに該当し、甲1発明は、この工程を採用することで、触媒として硫酸を用いても、殆ど着色することなく透明性の高い高純度の9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-フェニルフェニル)フルオレンを効率よく得たものといえる((甲1b)及び(甲1d))。 一方、甲1発明の「得られた反応混合液に、トルエン300g及び水80gを加え、32%水酸化ナトリウム水溶液をpHが約7になるまで加えて中和した後、水層を除去」することは、上記晶析溶媒を用いる晶析効率を高めるため、残存する硫酸及びβ-メルカプトプロピオン酸を中和処理により除去する工程であり、抽剤として、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-フェニルフェニル)フルオレンを可溶なトルエンと、水酸化ナトリウム水溶液との混合溶媒を使用して、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-フェニルフェニル)フルオレンを有機層に分配又は移行させ、残存する硫酸を水層に分配又は移行させるために行うものといえる((甲1c)及び(甲1d))。 そして、甲1の段落【0044】には、上記中和処理に用いる抽剤について「ビスフェノールフルオレン類を可溶な有機溶剤(例えば、ヘキサンなどの脂肪族炭化水素類、トルエンなどの芳香族炭化水素類、シクロヘキサンなどの脂環式炭化水素類、ハロゲン化炭化水素類など)」が例示されているだけで(甲1c)、本件特許発明1の「分岐を有してもよい炭素数5~9の脂肪族ケトン類」(以下「本件脂肪族ケトン類」という。)や、これを含む溶媒は記載されていない。 なお、甲1の段落【0047】には、本件脂肪族ケトン類に該当する溶媒の例示記載はあるが、これは、炭化水素類と極性溶媒とで構成される晶析溶媒のうちの極性溶媒の好ましい例を示したものであり(甲1c)、中和処理に用いる抽剤を例示するものではなく、また、抽剤にも使用できることは示唆を含めて記載がない。 よって、甲1に記載された事項から、甲1発明の「トルエン」を「本件脂肪族ケトン類」とする動機付けはない。 b 甲3及び甲4には、フルオレノンとフェノール類とを反応させて得られた反応液を水洗する工程を有するフルオレノン誘導体の製造方法に関する記載があり、甲3には、水洗にトルエンと本件脂肪族ケトン類が同様に使用できることや、トルエン又はメチルイソブチルケトンを用いた実施例が記載されている((甲3a)~(甲3c)、(甲4a)~(甲4b))。 しかしながら、甲3及び甲4に記載された製造方法は、いずれも甲1発明の製造方法とは、原料であるフェノール類が異なっており、得られるフルオレノン誘導体も、甲1発明で得られる化合物と類似した骨格を有するものの置換基が異なる化合物であるから、甲3及び甲4に記載された技術的事項を甲1発明に採用する動機付けはない。 c 甲5~甲7には、原料としてフェノール類を用いた反応で得られる反応液を、メチルイソブチルケトンを用いて水洗する工程を有する化合物の製造方法に関して、実施例を伴う記載があるが、フェノール類と反応させる化合物がフルオレノンとは全く異なり、得られる化合物も甲1発明で得られる化合物とは全く異なる化合物であるから((甲5a)~(甲5b)、(甲6a)~(甲6b)及び(甲7a)~(甲7b))、甲5~甲7に記載された技術的事項を甲1発明に採用する動機付けはない。 d よって、効果について検討するまでもなく、本件特許発明1は、甲1発明及び甲3~甲7に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 ウ 本件特許発明2~5について 本件特許発明2~5は、それぞれ本件特許発明1を引用しさらに限定するものである。 そうすると、本件特許発明1のすべての発明特定事項を含む本件特許発明2~5についても、上記イで検討したのと同様の理由により、甲1発明及び甲3~甲7に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 (2)甲2を主たる引用発明とする申立理由について ア 甲2に記載された発明 甲2は、フルオレノンとフェノール類とを反応させて、フルオレン誘導体を製造する方法に関する技術的事項を開示するものであるところ(甲2a)、その具体例を示した実施例3からみて(甲2d)、甲2には、次の「甲2発明」が記載されていると認める。 甲2発明: 「ガラス容器に、99重量%のフルオレノン75g、o-フェニルフェノール425g、β-メルカプトプロピオン酸8.5g及び36重量%塩酸水27gを仕込み、不活性ガス雰囲気中、25℃で6時間、続いて35℃で11時間攪拌することにより、反応を行い、得られた反応液に、トルエン300g及び水80gを加えた後、32重量%水酸化ナトリウム水溶液を加えてpHが約7になるまで中和した後、水層を除去し、有機層を80℃に加温した後に、水80gで3回洗浄し、減圧蒸留によりトルエン300gを回収した後、有機層にトルエン-アセトンの混合液(混合比率1:4(重量比))500mlを加えて70℃で1時間攪拌した後に、10℃まで冷却し、結晶化させることによる、純度は99.0重量%であり、黄色度は1.8(無色透明)である、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-フェニルフェニル)フルオレン185g(収率90%)の製造方法。」 イ 本件特許発明1について (ア)対比 a 甲2発明の「9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-フェニルフェニル)フルオレン」は、本件特許発明1の「式(1):(化学構造式略)で表される化合物」に該当する。 そして、上記(1)イ(ア)で検討したのと同様に、甲2発明における「ガラス容器に、99重量%のフルオレノン75g、o-フェニルフェノール425g、β-メルカプトプロピオン酸8.5g及び36重量%塩酸水27gを仕込み、不活性ガス雰囲気中、25℃で6時間、続いて35℃で11時間攪拌することにより、反応を行い」9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-フェニルフェニル)フルオレンを含む反応液を得ること、水層を除去した「有機層を80℃に加温した後に、水80gで3回洗浄し、減圧蒸留によりトルエン300gを回収した後、有機層にトルエン-アセトンの混合液(混合比率1:4(重量比))500mlを加えて70℃で1時間攪拌した後に、10℃まで冷却し、結晶化させる」ことは、本件特許発明1の「上記式(1)で表される化合物の製造方法。」に相当する。 また、甲2発明の「得られた反応液に、トルエン300g及び水80gを加えた後、32重量%水酸化ナトリウム水溶液を加えてpHが約7になるまで中和した後、水層を除去」することは、本件特許発明1の「以下式(1):(化学構造式略)で表される化合物を、分岐を有してもよい炭素数5~9の脂肪族ケトン類を含む溶媒に溶解させて上記式(1)で表される化合物を含む溶液を調製し、該溶液に水を添加、混合した後、該溶液から水層を除去する工程」と、式(1)で表される化合物を「溶媒に溶解させて上記式(1)で表される化合物を含む溶液を調製し、該溶液に水を添加、混合した後、該溶液から水層を除去する工程」という点において一致する。 c よって、両発明は、次の一致点及び相違点を有する。 一致点: 「以下式(1):(化学構造式略)で表される化合物を、溶媒に溶解させて上記式(1)で表される化合物を含む溶液を調製し、該溶液に水を添加、混合した後、該溶液から水層を除去する工程を含む、上記式(1)で表される化合物の製造方法。」である点。 相違点: 「溶媒」が、本件特許発明1は、「分岐を有してもよい炭素数5~9の脂肪族ケトン類を含む溶媒」であるのに対し、甲2発明は、「トルエン」である点。 (イ)判断 a 甲2発明は、取扱いの難しい塩化水素ガスを使用することなく、塩酸水を用い、チオール類との共存下で反応を行うことで、着色度合いの少ない透明性に優れた9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-フェニルフェニル)フルオレンを簡便に高収率で得たものである((甲2b)及び(甲2d))。 そして、甲2発明の「得られた反応液に、トルエン300g及び水80gを加えた後、32重量%水酸化ナトリウム水溶液を加えてpHが約7になるまで中和した後、水層を除去」すること、及び、「有機層にトルエン-アセトンの混合液(混合比率1:4(重量比))500mlを加えて70℃で1時間攪拌した後に、10℃まで冷却し、結晶化させる」ことについては、反応終了後の慣用の方法であると記載され、後者の晶析用溶媒として、トルエンとともに本件脂肪族ケトン類が例示されているものの、前者の水洗については例示の記載もない(甲2c)。 よって、甲2に記載された事項から、甲2発明の「トルエン」を「本件脂肪族ケトン類」とする動機付けはない。 b また、上記(1)イ(イ)b及びcで述べたとおり、甲3及び甲4に記載された製造方法は、いずれも甲2発明の製造方法とは、原料であるフェノール類が異なっており、得られるフルオレノン誘導体も、甲2発明で得られる化合物と類似した骨格を有するものの置換基が異なる化合物であるから、甲3及び甲4に記載された技術的事項を甲2発明に採用する動機付けはないし、甲5~甲7は、フェノール類と反応させる化合物がフルオレノンとは全く異なり、得られる化合物も甲2発明で得られる化合物とは全く異なる化合物であるから、甲5~甲7に記載された技術的事項を甲2発明に採用する動機付けもない。 c よって、効果について検討するまでもなく、本件特許発明1は、甲2発明及び甲3~甲7に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 ウ 本件特許発明2~5について 本件特許発明2~5は、それぞれ本件特許発明1を引用しさらに限定するものである。 そうすると、本件特許発明1のすべての発明特定事項を含む本件特許発明2~5についても、上記イで検討したのと同様の理由により、甲2発明及び甲3~甲7に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 (3)申立人の主張について 申立人は、甲3には、甲1発明又は甲2発明と製法が共通し、基本骨格も同一の化合物の精製工程において、トルエン又はメチルイソブチルケトンを用いてほぼ同様の結果が得られた実施例が示されており、甲4には、甲3の目的化合物と同一の化合物と、甲1の実施例1の目的化合物と同一の化合物について、同じトルエンを用いた精製工程が記載されているから、甲1発明又は甲2発明について、甲3の技術的事項を組み合わせることに困難性はないことを主張している。 さらに、本件特許明細書には、トルエンでは結晶が溶解せず、精製が困難であったことが記載されているが、ビスフェノール類に関して、甲5には、トルエンに溶解しにくい場合にも、メチルイソブチルケトンを用いることで溶解させて精製できることが記載され、甲6には、メチルイソブチルケトンが良溶媒であることが記載され、甲7には、メチルイソブチルケトンは水洗に適した溶媒であり、トルエンは晶析に適した溶媒であることが記載されているから、甲1発明又は甲2発明について、トルエンを、より溶解性が高いメチルイソブチルケトンにかえることは容易であると主張している。 しかしながら、甲4には、トルエンを用いた実施例の記載しかないし(甲4b)、甲3の実施例では、トルエンの方がメチルイソブチルケトンよりも優れた結果が得られているのであるから(甲3c)、甲1発明又は甲2発明において、トルエンに換えてメチルイソブチルケトンを採用することが動機付けられるとはいえない。 また、甲5~甲7は、甲1発明又は甲2発明とは、全く異なる化合物に関する技術的事項を開示するものであり、甲1発明又は甲2発明の化合物が、同様の性質であることや、甲1発明又は甲2発明の化合物について、同様の精製工程を採用することが、技術常識であるもいえないので、甲1発明又は甲2発明において、トルエンに換えてメチルイソブチルケトンを採用することが動機付けられるとはいえない。 よって、申立人の上記主張は採用できない。 (4)まとめ 以上のとおりであるから、申立理由(進歩性)は理由がない。 第5 むすび したがって、申立人の特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、請求項1~5に係る発明の特許を取り消すことはできない。 また、ほかに請求項1~5に係る発明の特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2023-700267

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