特許異議申立
2022-700551
蒸着樹脂フィルム、該蒸着樹脂フィルムを備える積層体及び該積層体を備える包装容器
- 審判番号
- 2022-700551
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2020-192023
- 登録番号
- 6984718
- 請求日
- 2022年06月22日
- 審決日
- 2022年09月13日
- 公報発行日
- 2022年10月28日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】大日本印刷株式会社
- 【権利者代理人】宮嶋 学
- 【権利者代理人】堀田 幸裕
- 【権利者代理人】岡村 和郎
- 【権利者代理人】高田 泰彦
- 【権利者代理人】柏 延之
- 【権利者代理人】浅野 真理
- 【権利者代理人】中村 行孝
- 【権利者代理人】朝倉 悟
- 【異議申立人】上吉原 宏
- 審判長/審判官
- 審判長 山崎 勝司
- 審判官 藤井 眞吾
- 審判官 石田 智樹
- 分類
- P1651.121-Y (B32B) / P1651.536-Y (B32B) / P1651.537-Y (B32B)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第36条第6項、特許法第29条第2項、特許法第36条第4項第1号、特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第6項第2号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第6984718号発明「蒸着樹脂フィルム、該蒸着樹脂フィルムを備える積層体及び該積層体を備える包装容器」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第6984718号の請求項1~13に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第6984718号の請求項1~13に係る特許についての出願は、令和2年11月18日(優先権主張 令和元年11月19日、令和2年7月3日)の出願であって、令和3年11月29日にその特許権の設定登録がされ、令和3年12月22日に特許掲載公報が発行された。その後、その特許に対し、令和4年6月22日に特許異議申立人上吉原宏(以下「申立人」という。)により、本件特許異議の申立てがされた。
第2 本件発明
特許第6984718号の請求項1~13に係る発明(以下「本件発明1」等という。また、本件発明1~13を「本件発明」と総称することもある。)は、本件特許の特許請求の範囲の請求項1~13に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】
ポリエステルフィルムと、蒸着膜とを備える蒸着樹脂フィルムであって、
前記ポリエステルフィルムが、ケミカルリサイクルポリエステルを含み、
前記ポリエステルフィルムのGPCの測定から得た分子量分布曲線における分子量1,000以下の領域の面積割合が、全ピーク面積の1.8%以下であり、
前記ポリエステルフィルムにおける環状三量体の含有量が、0.510質量%以上である、蒸着樹脂フィルム。
【請求項2】
前記ポリエステルフィルムにおける環状三量体の含有量が、1.030質量%以下である、請求項1に記載の蒸着樹脂フィルム。
【請求項3】
前記ポリエステルフィルムが、ケミカルリサイクルポリエステルを主たる構成成分として含む、請求項1又は2に記載の蒸着樹脂フィルム。
【請求項4】
前記ポリエステルフィルムの融点が、250℃以下である、請求項1~3のいずれか一項に記載の蒸着樹脂フィルム。
【請求項5】
前記ポリエステルフィルムの結晶化温度が、196℃以下である、請求項1~4のいずれか一項に記載の蒸着樹脂フィルム。
【請求項6】
前記ポリエステルフィルムの蒸着膜非形成面の静摩擦係数が、0.35以上である、請求項1~5のいずれか一項に記載の蒸着樹脂フィルム。
【請求項7】
前記ポリエステルフィルムにおけるポリエステルの含有量が、90質量%以上100質量%以下である、請求項1~6のいずれ一項に記載の蒸着樹脂フィルム。
【請求項8】
前記ケミカルリサイクルポリエステルが、ケミカルリサイクルポリエチレンテレフタレートである、請求項1~7のいずれ一項に記載の蒸着樹脂フィルム。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか一項に記載の蒸着樹脂フィルムと、
前記蒸着樹脂フィルムよりも内側に設けられた、シーラント層又は粘着層と、
を備える、積層体。
【請求項10】
前記蒸着樹脂フィルムと前記シーラント層又は前記粘着層との間に、接着剤層又はアンカーコート層をさらに備える、請求項9に記載の積層体。
【請求項11】
前記積層体が、基材層と、蒸着膜と、中間層と、前記シーラント層又は前記粘着層とを備え、
前記基材層及び前記蒸着膜が、前記蒸着樹脂フィルムにより構成されている、請求項9又は10に記載の積層体。
【請求項12】
前記積層体が、基材層と、蒸着膜と、中間層と、前記シーラント層又は前記粘着層とを備え、
前記中間層が支持体層を備え、
前記支持体層及び前記蒸着膜が、前記蒸着樹脂フィルムにより構成されている、請求項9又は10に記載の積層体。
【請求項13】
請求項9~12のいずれか一項に記載の積層体を備える、包装容器。」
第3 申立理由の概要
申立人は、以下に示す甲第1号証~甲第14号証(以下「甲1」等という。)を提出し、本件発明1~13に係る特許は、以下の理由により、取り消すべきものである旨を主張する。
1 申立理由1(進歩性)
本件発明1~13は、甲1に記載された発明、甲2に記載された発明又は甲3に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
2 申立理由2(実施可能要件)
本件特許明細書には、「ケミカルリサイクルポリエステル」がどのようなモノマー組成を有し、どのような条件でケミカルリサイクルされて得られたものであるのか情報が開示されていないため、本件特許は、発明の詳細な説明の記載が、当業者が本件発明1~13の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものに適合しないから、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。
3 申立理由3(サポート要件)
本件特許明細書の実施例を参照しても、ポリエステルフィルムのGPCの測定から得た分子量分布曲線における分子量1,000以下の領域の面積割合が、全ピーク面積の1.8%であっても好ましい衛生性評価が得られると理解することができず、本件発明1~13の範囲まで、発明の詳細な説明に開示された内容を拡張ないし一般化できるとはいえないため、本件特許は、本件発明1~13が発明の詳細な説明に記載したものでなく、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第1号に適合しないから、特許法第36条第6項に規定する要件を満たしていない。
4 申立理由4(明確性)
本件発明1の「前記ポリエステルフィルムのGPCの測定から得た分子量分布曲線における分子量1,000以下の領域の面積割合」、「前記ポリエステルフィルムにおける環状三量体の含有量」について、本件特許明細書の記載では、低分子量成分や環状三量体の抽出を正確に行うことができないため、本件特許は、本件発明1~13が明確でなく、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第2号に適合しないから、特許法第36条第6項に規定する要件を満たしていない。
[引用文献等一覧]
甲1:特開2002-167469号公報
甲2:特開2000-169623号公報
甲3:特開2000-103023号公報
甲4:特開2002-363268号公報
甲5:特開2005-290247号公報
甲6:特開2018-150467号公報
甲7:特開2000-17061号公報
甲8:特開2008-95084号公報
甲9:日本規格協会、「食品包装用プラスチックフィルム通則 JIS Z 1707:2019」の「食品包装用プラスチックフイルム通則 General rules of plastic films for food 1 適用範囲」、「附属書A(参考)性能によるフイルムの種別 A.1一般」の項のプリントアウト
甲10:特開2003-62924号公報
甲11:特開2004-1251号公報
甲12:室井高城(当審注:「高」は正しくは異字体のいわゆるはしごだか。)、「ケミカルリサイクル技術とグローバルケミカルリサイクルビジネス」、工業材料、日刊工業新聞社、令和3年11月1日、第69巻、第11号、29~31ページ
甲13:「アイエス法ケミカルリサイクルPET樹脂の食品健康影響評価用資料」、株式会社ペットリバース、2004年(平成16年)4月13日
甲14:湯木和男、「飽和ポリエステル樹脂ハンドブック」、日刊工業新聞社、1989年(平成元年)12月22日、167~168ページ
第4 当審の判断
1 申立理由1(進歩性)について
(1)引用文献の記載
ア 甲1
甲1には、次の事項が記載されている(下線は参考のため当審が付与したものである。以下同じ。)。
「【請求項1】 市場より市販されているポリエステルを主成分とする製品及び/又はこの製品を製造する工程で発生したポリエステルを主成分とする廃棄物を回収し、
これらを原料としてエチレングリコールによる解重合反応及びメタノールによるエステル交換反応を実施して、テレフタル酸ジメチル及びエチレングリコールを分離、精製するプロセスを利用して市販と同等品質のポリエステル原料を製造し、
さらに、これらの原料によりポリエステル製品を製造して市場に循環・供給することを特徴とするポリエステルのリサイクルシステム。」
「【0004】
【発明が解決しようとする課題】現状の回収、リサイクルシステムでは次のような問題点があった。まず、異物混入の問題が完全に解決されていないため、製品の品質変動が大きくなる。また、リサイクルにより品質の低下が発生するため、適用できる製品の種類が限定され、マーケットと比較して過剰生産になる。一方、繊維やフィルム等PETボトル以外のポリエステル製品は、殆どが一般・産業廃棄物としてサーマルリサイクルされているのが実情で、環境破壊を助長しない処理方法が願望されている。本発明では、これらポリエステル廃棄物をケミカルリサイクルしてから再び重合することにより、市販と同等品質のポリエステルポリマーを生産し、これを利用することにより同品質のポリエステル製品を幾度でも生産できる循環型システムを構築できる。」
「【0014】次に、ポリエステル廃棄物を原料として、ポリエステルの主原料であるテレフタル酸ジメチルとエチレングリコールとを生成する工程を説明する。前述の前処理工程で適度に粉砕/洗浄/分離処理されたポリエステル廃棄物をまず既知の解重合触媒存在下、EG中で解重合反応させる。ここでポリエステルとして、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどが挙げられる。ポリエステルのEGによる解重合反応は温度110~195℃であることが好ましい。即ち、解重合反応温度が110℃未満であると、解重合時間が非常に長くなる。一方、195℃を越えるとナイロンを含むポリエステル廃棄物を原料とした場合、ナイロンが熱分解して、DMTやEG中に窒素化合物が混入し、これらを利用して生産するポリエステル製品の品質を落とすため好ましくない。」
「【0028】本発明において、上記方法により得られるポリエチレンテレフタレート樹脂を構成するジエチレングリコールの含有量は、ポリエチレンテレフタレートを構成する全ジオール単位に対し、0.7~2.0wt%で、好ましくは1.0~1.5wt%である。少なすぎる場合は、成形後のボトル胴部の透明性が悪化し、また、多すぎる場合は、耐熱性が低下し、さらに結晶化促進効果が小さくなる。上記範囲内にジエチレングリコール含有量を調節する方法としては、ジエチレングリコールを重合原料として使用する他、主原料として使用するエチレングリコールからジエチレングリコールが一部副生するため、反応条件と合わせて、その副生成量を調節する方法が挙げられる。また、ボトル成形時の金型汚れの要因となるポリマー中に含有するオリゴマー成分や、ボトル充填物の味や匂いに影響するポリマー中に含有するアセトアルデヒド成分を出来るだけ低減しておくこが望ましく、オリゴマー含有量としては0.5wt%以下、特に好ましいのは0.4wt%以下であり、アセトアルデヒド含有量としては、5ppm以下,特に好ましいのは2ppm以下である。オリゴマー及びアセトアルデヒドの低減は、上記の固相重合の中で行われるため、溶融重合後のポリマーのIV、固相重合時間、温度時間を調整することで目標レベルに達させるようにする。」
「【0030】前記のポリエステル重合物は、製膜設備でポリエステルフィルムにして各種ポリエステルフィルム製品群としたり、製糸設備でポリエステル原糸や綿とし、繊維衣料、カーペット、自動車用内装材、フトン、床材などの製品としたりすることもできる。また上記ポリマーを固相重合設備で必要な処理を施すことにより、PETボトルやエンジニアリングプラスチックの原料とすることもできる。」
「【0040】[実施例1]市町村によって分別収集・回収されたペットボトルベール(ベール寸法:900mm×1000mm×550mmの120kgベール)を解梱包した後に第1次粉砕機に投入し、粉砕機のスクリーン径を75mmに設定して1次粉砕を行い、次いで該粉砕物を第2次粉砕機に投入して粉砕機のスクリーン径を10mmに設定して2次粉砕を行った。
【0041】その後該粉砕物を風力選別機にかけ、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレンを主成分とするボトルに付属したラベルを除去した後、デカンターによって遠心分離を行い、ボトルの内容物を水洗・除去しつつポリプロプレン、ポリエチレンを主成分とするキャップ及び風力選別で除去されなかったラベルを除去し、回収フレークスとした。該回収フレークス100kgを空気輸送にて反応工程へと輸送した。
【0042】反応工程では該フレークスを予め185℃まで加熱しておいたエチレングリコール400kg、炭酸ナトリウム3kgの混合物中に仕込み、常圧で4時間反応させた。この際にEG液面上に浮上してきた前処理工程で除去され得なかったポリスチレン等のポリエステルと異プラスチックを固液分離により除去した。反応終了後、140~150℃、圧力13.3kPaの条件でEGを300kg留去した。次いでEGを留去した残渣200kgに炭酸ナトリウム3kg、メタノール200kgを添加して、常圧、75~80℃で1時間反応させた。
【0043】反応終了後該反応液を40℃まで冷却し、遠心分離により粗DMTを主成分とするケークとメタノール、粗EGを主成分とする濾液とに固液分離した。次いで粗DMTを圧力6.7kPa、塔底温度180~200℃、粗EGを圧力13.3kPa、塔底温度140~150℃の条件で蒸留により精製して、最終的にDMT、エチレングリコールをそれぞれ収率約85%で得た。回収したDMTは外観、酸価、溶融比色、硫酸灰分の検査項目において市販品のものと遜色なかった。
【0044】このDMTをさらに加水分解して得られたテレフタル酸(以下、原料リサイクルTAと略称することもある。)40kgとエチレングリコール22kgとからなるスラリーを重縮合槽に供給して、常圧下275℃、4時間でエステル化反応を行い、副生する水を系外に流出し、エステル化反応率97%まで反応させ、重合度5~10のオリゴマー体を調整し、その後、リン酸のエチレングリコール溶液(リン濃度5.5%)0.017kgと二酸化ゲルマニウムのエチレングリコール溶液(二酸化ゲルマニウム濃度1%)0.38kgとを加えて、2000Paの減圧下で1時間、引き続き133Paの減圧下、277℃で2時間重縮合を行った。生成したポリマーを、重縮合槽の底部に冷却水槽に直結させて設けた抜き出し口からストランド状に抜き出して水冷した後、チップ状にカットしてポリマーチップとした。
【0045】引き続いて、得られたポリマーチップを攪拌流動式結晶化機で結晶化させた後、窒素流通下140℃で3時間乾燥させ、続いて充填塔式固相重合塔に移し、窒素流通下215℃で22時間固相重合してチップ状のポリエチレンテレフタレート樹脂組成物を製造した。得られたポリエチレンテレフタレート樹脂組成物は、極限粘度0.75、DEG1.3wt%、AA=1.5ppm、Col-b=-1.0であった。本チップを乾燥機にて160℃で5時間乾燥させた後、射出成形機(名機製作所社製「M-100DM」)にて、シリンダー温度275℃、スクリュー回転数160rpm、1次圧時間3.0秒、金型温度10℃、サイクル30秒で、外径約28mm、内径約19mm、長さ136mm、重量約56gの円筒状のプリフォームを射出成形した。得られたプリフォームの極限粘度は0.69、アセトアルデヒド含有量12ppmで、成形性及び外観は良好であった。引き続き、プリフォームの表面温度約110℃に赤外線ヒーターで予熱し、ブロー圧力5~40kg/cm2、金型温度150℃に設定したブロー成形機にて延伸ブロー成形し、胴部平均肉厚330μm、内容積約1.5リットルのボトルを成形した。得られたボトルのヘーズは0.8%で、成形性及び外観は良好であった。」
甲1の上記記載から、特に、【0030】においてポリエステル重合物を製膜設備でポリエステルフィルムにしたものに着目すると、甲1には、次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されているものと認められる。
「ポリエステル廃棄物をケミカルリサイクルしてから再び重合することにより、市販と同等品質のポリエステルポリマーであるポリエステル重合物を、製膜設備で製膜したポリエステルフィルム。」
イ 甲2
甲2には、次の事項が記載されている。
「【請求項1】 使用済みのポリエチレンテレフタレート廃棄物に粉砕、洗浄、異物分別等の前処理を施して粗製ポリエチレンテレフタレートフレークを得る前処理工程と、得られた粗製ポリエチレンテレフタレートフレークに過剰の精製及び/又は粗製のエチレングリコールを加えて触媒の存在下で解重合を行い粗製ビス-β-ヒドロキシエチルテレフタレート(BHET)を得る解重合工程と、得られた粗製BHETと粗製エチレングリコールの二種混合溶液中からポリエチレンテレフタレート樹脂以外のポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレン、塩化ビニールの如き異プラスチック類、及び/又は金属、ガラス、砂等の固形異物、及び/又は沈殿物を除去する異物除去工程と、得られた粗製BHETと粗製エチレングリコールの二種混合溶液中から着色物及び/又は溶存イオンを除去する前精製工程と、前精製工程を経た二種混合溶液に蒸留・ 蒸発操作を施してエチレングリコールを蒸発・留去させて濃縮BHETを得るか、もしくは二種混合溶液を10℃以下まで冷却してBHETを晶析させた後エチレングリコールとBHETを固液分離することにより濃縮BHETを得るBHET濃縮工程と、得られた濃縮BHETを190℃を越え250℃以下の温度で且つ蒸発器内での濃縮BHETの滞留時間が10分以下となるように真空蒸発させることにより精製ビス-β-ヒドロキシエチルテレフタレートを得るBHET精製工程と、得られた精製BHET及び/又は前記BHET濃縮工程で得られた濃縮BHETを原料として溶融重縮合し高純度ポリエチレンテレフタレートポリマーを得るポリエチレンテレフタレートポリマー生成工程とを経てポリエチレンテレフタレート廃棄物から高純度のポリエチレンテレフタレート重合物を得ることを特徴とするポリエチレンテレフタレート廃棄物のケミカルリサイクル方法。」
「【0021】また、通常、粗製BHET中には線状オリゴマーの他にも環状オリゴマーが数%程度存在している。この環状オリゴマーは融点がポリエチレンテレフタレートよりもはるかに高く、325~327℃であり、ペットボトルの成型時及び成型後の製品に悪影響を与える。本発明によれば、精製ビス-β-ヒドロキシエチルテレフタレートとしてこの環状オリゴマーを全く含有しないものが得られるので、極めて良質なポリエチレンテレフタレートが得られる。
【0022】解重合反応終了後の粗製BHETと粗製エチレングリコールの二種混合溶液を降温し、濾過して高融点沈殿物としての未反応の線状及び環状オリゴマー、ポリエチレンテレフタレート以外の残存異プラスチックの凝固物、金属等の固形異物を除去し、次いで吸着・イオン 交換処理を施して、着色物と溶存イオンを除去することにより、粗製BHET中に含まれる有害な異物を全て取り除くことができる。」
「【0030】図1は、上記リサイクル処理によって得られた高純度BHETを中間原料として各種ポリエチレンテレフタレート製品を製造する工程を表すもので、高純度BHETを中間原料として得られるポリエチレン重合物(ポリマー)を製膜設備でポリエチレンテレフタレートフィルムにして各種ポリエチレンテレフタレートフィルム製品群とすることもできるし、上記ポリマーを製糸設備でポリエチレンテレフタレート原糸、綿とし、高級繊維衣料、カーペット、タイヤコード、自動車内装材等の製品とすることもできる。また、上記ポリマーを固相重合設備で必要な処理をすることにより、エンジニアリングプラスチック製品群やペットボトル製品群の原料とすることもできる。」
「【0041】この精製BHETを原料としてビーカースケールの溶融重合を行い、ポリエチレンテレフタレートポリマーを得た。得られたポリエチレンテレフタレートポリマーの品質は以下の通りであり、バージンの市販ポリエチレンテレフタレートペレットの品質と同等であった。」
「【0044】
【発明の効果】以上に説明した如く、本発明にかかるポリエチレンテレフタレート廃棄物のリサイクル方法は、使用済みポリエチレンテレフタレートを一旦高純度の精製BHETとし、これらを中間原料として再度高純度ポリエチレンテレフタレート製品群を製造するものであるから、使用済みポリエチレンテレフタレート製品のリサイクルを閉リサイクルシステムで行うことが可能となり、一般・産業廃棄物として、焼却処理や埋立処理を行う必要がなく、目的とする省資源、省エネルギーを達成することが可能となる。本方式のリサイクルシステムによれば、ポリエチレンテレフタレート製の使用済みのボトル、フィルム、衣料、自動車内装材(シュレダーダスト)を高純度ポリエチレンテレフタレートにリサイクルするだけでなく、ポリエチレンテレフタレート以外の使用済みポリエステル系材料、例えば、ポリブチレンテレフタレート、液晶ポリエステル、ポリエチレンナフタレートを再度高純度のポリエステル系材料にリサイクルすることが可能である。」
「【図1】
[図:0001389433000001.jpg]
」
甲2の上記記載から、特に、【0030】においてポリエステル重合物(ポリマー)を製膜設備でポリエチレンテレフタレートフィルムにしたものに着目すると、甲2には、次の発明(以下「甲2発明」という。)が記載されているものと認められる。
「ポリエチレンテレフタレート廃棄物から、ケミカルリサイクル方法により得られた高純度のポリエチレンテレフタレート重合物を、製膜設備で製膜したポリエチレンテレフタレートフィルム。」
ウ 甲3
甲3には、次の事項が記載されている。
「【請求項1】 二軸配向積層ポリエステルフィルムの片面に金属または金属酸化物による蒸着層を有するフィルムであって、前記二軸配向積層ポリエステルフィルムは、ポリエステル層Bの少なくとも片面に、クロロホルム溶媒による低分子量体抽出量が50mg/m2未満であるポリエステル層Aが積層されてなるフィルムであり、前記蒸着層はポリエステル層Aの表面に設けられていることを特徴とする透明蒸着用積層ポリエステルフィルム。」
「【0004】
【課題を解決するための手段】本発明者は、上記課題に鑑み鋭意検討した結果、ポリエステルフィルムを積層化し、蒸着するフィルム表面から発生する低分子量体(オリゴマー等)を低減することによりガスバリヤー性がより改良されることを見いだし、本発明を完成するに至った。」
「【0034】実施例1
(ポリエステルフィルムの製造)平均粒径1.45μm、吸油性310ml/100gの無定型二酸化ケイ素粒子0.6部を含有する極限粘度0.65のチップをポリエチレンテレフタレート(I)とし、常法により得られた実質的に粒子を含まない極限粘度0.60のチップをポリエステル原料(II)とし、実質的に粒子を含まない極限粘度0.53のポリエステル原料を回転型真空重合装置で、真空度0.3mmHg、225℃15時間固相重合して、低分子量物の含有量を0.5%以下とした極限粘度0.75のものをポリエステル原料(III)とした。表層として、ポリエステル(I)を30部、ポリエステル(III)を70部混合したもの(ポリエステルA)を用い、一方、中間層にはポリエステル(II)を単独(ポリエステルB)で用いた。 これらを別々の押出機から厚み方向にA/B/Aの順の積層となるように280~300℃の温度で口金より押出し、静電密着法を併用しつつ冷却ドラム上に急冷キャストし、未延伸フィルムを得た。この際表層は、二軸延伸機を用いて押し出した。
【0035】次に得られたシートを縦方向に85℃で3.9倍延伸した後、さらに横方向に110℃で4.6倍延伸した後、235℃で熱処理を施し、基材のポリエステルフィルムの厚さ12μmの二軸延伸フィルムを得た。得られたフィルムの厚さ構成は、1.35μm/9.3μm/1.35μmのA/B/Aの2種3層構造であった。
【0036】かくして得られたフィルムの全体ヘーズは、1.8%、Raは、0.028μm、ΔPは0.163、nは1.6051、Δnは、-20×10-3であり、A層(表層)の低分子量体の抽出量は、32mg/m2であった。一方、B層(中間層)の抽出量は、52mg/m2であった。このフィルムの片面に上述の方法で、蒸着を実施し、ラミ、印刷を施し製品としたところ、ガスバリヤー性は、安定して◎であり、加工性にも問題がなく、極めて良好なものであった。」
甲3の上記記載から、特に、【請求項1】に着目すると、甲3には、次の発明(以下「甲3発明」という。)が記載されているものと認められる。
「二軸配向積層ポリエステルフィルムの片面に金属または金属酸化物による蒸着層を有するフィルムであって、前記二軸配向積層ポリエステルフィルムは、ポリエステル層Bの少なくとも片面に、クロロホルム溶媒による低分子量体抽出量が50mg/m2未満であるポリエステル層Aが積層されてなるフィルムであり、前記蒸着層はポリエステル層Aの表面に設けられている透明蒸着用積層ポリエステルフィルム。」
(2)本件発明1について
ア 甲1発明に基づく理由について
(ア)対比
本件発明1と甲1発明とを対比する。
甲1発明の「ポリエステルフィルム」が「ポリエステル廃棄物をケミカルリサイクルしてから再び重合することにより、市販と同等品質のポリエステルポリマーであるポリエステル重合物を、製膜設備で製膜した」ものであることは、本件発明1の「前記ポリエステルフィルムが、ケミカルリサイクルポリエステルを含」むことに相当する。
甲1発明の「ポリエステルフィルム」と本件発明1の「ポリエステルフィルムと、蒸着膜とを備える蒸着樹脂フィルム」とは、「ポリエステルフィルムを備える樹脂フィルム」の限りで一致する。
そうすると、本件発明1と甲1発明とは、次の点で一致し、相違する。
[一致点1]
「ポリエステルフィルムを備える樹脂フィルムであって、
前記ポリエステルフィルムが、ケミカルリサイクルポリエステルを含む、樹脂フィルム。」
[相違点1-1]
「ポリエステルフィルムを備える樹脂フィルム」に関して、本件発明1は、「ポリエステルフィルムと、蒸着膜とを備える蒸着樹脂フィルム」であるのに対して、甲1発明は、「ポリエステルフィルム」である点。
[相違点1-2]
本件発明1は「前記ポリエステルフィルムのGPCの測定から得た分子量分布曲線における分子量1,000以下の領域の面積割合が、全ピーク面積の1.8%以下であり、前記ポリエステルフィルムにおける環状三量体の含有量が、0.510質量%以上である」のに対して、甲1発明はそのようなものであるか不明である点。
(イ)判断
事案に鑑み、相違点1-2について検討する。
相違点1-2に係る本件発明1の構成について、本件特許の発明の詳細な説明には次の記載がある。
「ポリエステルフィルム11のGPC(ゲル浸透クロマトグラフィー:Gel Permeation Chromatography)の測定から得た分子量分布曲線における分子量1,000以下の領域の面積割合が、全ピーク面積の1.8%以下であることを特徴とする。このようなポリエステルフィルム11は、分子量1,000以下の成分(以下、低分子量成分ともいう)の含有量が低減されているため、包装容器に充填される内容物への低分子量成分の混入を抑制でき、本発明の蒸着樹脂フィルムを用いて製造した包装容器の衛生性を改善できる。」(【0033】)
「ポリエステルフィルム11の融点は、250℃以下であることが好ましく、248.5℃以下であることがより好ましい。これにより、ポリエステルフィルム11の製膜を高速化、即ち、製膜性を向上できる。
ポリエステルフィルム11の融点は、230℃以上であることが好ましく、240℃以上であることがより好ましい。これにより、ポリエステルフィルム11の耐熱性を向上できる。
ポリエステルフィルム11の結晶化温度は、196℃以下であることが好ましく、195℃以下であることがより好ましい。これにより、ポリエステルフィルム11の延伸安定性を向上、即ち、製膜性を向上できる。
ポリエステルフィルム11の結晶化温度は、185℃以上であることが好ましく、190℃以上であることがより好ましい。これにより、ポリエステルフィルム11の耐熱性を向上できる。」(【0035】~【0037】)
「ポリエステルフィルム11の蒸着膜非形成面の静摩擦係数は、0.35以上であることが好ましく、0.40以上であることがより好ましい。これにより、本発明の蒸着樹脂フィルムを用いて製造した包装容器の表面の過剰な滑りを抑制でき、積み重ね時の積載安定性を向上できる。
ポリエステルフィルム11の蒸着膜非形成面の静摩擦係数は、0.60以下であることが好ましく、0.50以下であることがより好ましい。これにより、包装機での走行性が安定し、高速充填包装性が向上する。」(【0039】)
「本発明による蒸着樹脂フィルム10において、ポリエステルフィルム11における環状三量体の含有量は、好ましくは0.510質量%以上1.030質量%以下あり、より好ましくは0.600質量%以上1.010質量%以下であり、更に好ましくは0.650質量%以上1.000質量%以下である。環状三量体の含有量を該範囲とすることにより、上記した融点及び結晶化温度有するポリエステルフィルム11、並びに上記した静摩擦係数を有する蒸着樹脂フィルムを好適に製造できる。」(【0041】)
すなわち、相違点1-2に係る本件発明1の構成は、包装容器に充填される内容物への低分子量成分の混入を抑制し、かつ、ポリエステルフィルムの融点及び結晶化温度を所定の範囲として製膜性及び耐熱性を向上するために選択されたものである。
甲1発明において、相違点1-2に係る本件発明1の構成に至るためには、「ポリエステルフィルムのGPCの測定から得た分子量分布曲線における分子量1,000以下の領域の面積割合が、全ピーク面積の1.8%以下であ」るようにしつつ、「ポリエステルフィルムにおける環状三量体の含有量が、0.510質量%以上である」ようにする必要がある。
一方で、甲1には、「ボトル成形時の金型汚れの要因となるポリマー中に含有するオリゴマー成分・・・を出来るだけ低減しておくこが望ましく、オリゴマー含有量としては0.5wt%以下、特に好ましいのは0.4wt%以下であり」(甲1の【0028】)と記載されている。
すなわち、甲1には、オリゴマー成分などの低分子量成分をできるだけ低減することについては記載されているものの、低分子量成分をできるだけ低減しながらも、「ポリエステルフィルムにおける環状三量体の含有量が、0.510質量%以上である」ようにすることは記載も示唆もされていない。
また、相違点1-2に係る本件発明1の構成は、申立人が提出した証拠には記載されておらず、かつ、本件特許に係る出願前における周知技術でもない。
したがって、甲1発明において、相違点1-2に係る本件発明1の構成とすることを、当業者が容易に想到し得たとはいえない。
よって、本件発明1は、当業者が甲1発明に基いて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
イ 甲2発明に基づく理由について
(ア)対比
本件発明1と甲2発明とを対比する。
甲2発明の「ポリエチレンテレフタレートフィルム」が「ポリエチレンテレフタレート廃棄物から、ケミカルリサイクル方法により得られた高純度のポリエチレンテレフタレート重合物を、製膜設備で製膜した」ものであることは、本件発明1の「前記ポリエステルフィルムが、ケミカルリサイクルポリエステルを含」むことに相当する。
甲2発明の「ポリエチレンテレフタレートフィルム」と本件発明1の「ポリエステルフィルムと、蒸着膜とを備える蒸着樹脂フィルム」とは、「ポリエステルフィルムを備える樹脂フィルム」の限りで一致する。
そうすると、本件発明1と甲2発明とは、次の点で一致し、相違する。
[一致点2]
「ポリエステルフィルムを備える樹脂フィルムであって、
前記ポリエステルフィルムが、ケミカルリサイクルポリエステルを含む、樹脂フィルム。」
[相違点2-1]
「ポリエステルフィルムを備える樹脂フィルム」に関して、本件発明1は、「ポリエステルフィルムと、蒸着膜とを備える蒸着樹脂フィルム」であるのに対して、甲2発明は、「ポリエチレンテレフタレートフィルム」である点。
[相違点2-2]
本件発明1は「前記ポリエステルフィルムのGPCの測定から得た分子量分布曲線における分子量1,000以下の領域の面積割合が、全ピーク面積の1.8%以下であり、前記ポリエステルフィルムにおける環状三量体の含有量が、0.510質量%以上である」のに対して、甲2発明はそのようなものであるか不明である点。
(イ)判断
事案に鑑み、相違点2-2について検討する。
上記ア(イ)で示したとおり、相違点2-2に係る本件発明1の構成は、包装容器に充填される内容物への低分子量成分の混入を抑制し、かつ、ポリエステルフィルムの融点及び結晶化温度を所定の範囲として製膜性及び耐熱性を向上するために選択されたものである。
甲2発明において、相違点2-2に係る本件発明1の構成に至るためには、「ポリエチレンテレフタレートフィルム」の「GPCの測定から得た分子量分布曲線における分子量1,000以下の領域の面積割合が、全ピーク面積の1.8%以下であ」るようにしつつ、「ポリエチレンテレフタレートフィルム」における「環状三量体の含有量が、0.510質量%以上である」ようにする必要がある。
一方で、甲2には、「通常、粗製BHET中には線状オリゴマーの他にも環状オリゴマーが数%程度存在している。この環状オリゴマーは・・・、ペットボトルの成型時及び成型後の製品に悪影響を与える。本発明によれば、・・・この環状オリゴマーを全く含有しないものが得られるので、極めて良質なポリエチレンテレフタレートが得られる。」(甲2の【0021】)と記載されている。
すなわち、甲2には、環状オリゴマーを全く含有しないものについては記載されているものの、「ポリエチレンテレフタレートフィルム」における「環状三量体の含有量が、0.510質量%以上である」ようにすることは記載も示唆もされていない。
また、相違点2-2に係る本件発明1の構成は、申立人が提出した証拠には記載されておらず、かつ、本件特許に係る出願前における周知技術でもない。
したがって、甲2発明において、相違点2-2に係る本件発明1の構成とすることを、当業者が容易に想到し得たとはいえない。
よって、本件発明1は、当業者が甲2発明に基いて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
ウ 甲3発明に基づく理由について
(ア)対比
本件発明1と甲3発明とを対比する。
甲3発明の「二軸配向積層ポリエステルフィルム」は本件発明1の「ポリエステルフィルム」に相当し、以下同様に、「金属または金属酸化物による蒸着層」は「蒸着膜」に、「透明蒸着用積層ポリエステルフィルム」は「蒸着樹脂フィルム」に相当する。
そうすると、本件発明1と甲3発明とは、次の点で一致し、相違する。
[一致点3]
「ポリエステルフィルムと、蒸着膜とを備える蒸着樹脂フィルム。」
[相違点3-1]
本件発明1は、「前記ポリエステルフィルムが、ケミカルリサイクルポリエステルを含」むのに対して、甲3発明は、そのようなものではない点。
[相違点3-2]
本件発明1は「前記ポリエステルフィルムのGPCの測定から得た分子量分布曲線における分子量1,000以下の領域の面積割合が、全ピーク面積の1.8%以下であり、前記ポリエステルフィルムにおける環状三量体の含有量が、0.510質量%以上である」のに対して、甲3発明は、「前記二軸配向積層ポリエステルフィルムは、ポリエステル層Bの少なくとも片面に、クロロホルム溶媒による低分子量体抽出量が50mg/m2未満であるポリエステル層Aが積層されて」なる点。
(イ)判断
事案に鑑み、相違点3-2について検討する。
上記ア(イ)で示したとおり、相違点3-2に係る本件発明1の構成は、包装容器に充填される内容物への低分子量成分の混入を抑制し、かつ、ポリエステルフィルムの融点及び結晶化温度を所定の範囲として製膜性及び耐熱性を向上するために選択されたものである。
甲3発明において、相違点3-2に係る本件発明1の構成に至るためには、「二軸配向積層ポリエステルフィルム」の「GPCの測定から得た分子量分布曲線における分子量1,000以下の領域の面積割合が、全ピーク面積の1.8%以下であ」るようにしつつ、「二軸配向積層ポリエステルフィルム」における「環状三量体の含有量が、0.510質量%以上である」ようにする必要がある。
一方で、甲3には、「ポリエステルフィルムを積層化し、蒸着するフィルム表面から発生する低分子量体(オリゴマー等)を低減することによりガスバリヤー性がより改良されることを見いだし」(甲3の【0004】)と記載されている。
すなわち、甲3には、蒸着するフィルム表面から発生する低分子量体(オリゴマー等)を低減することについては記載されているものの、「二軸配向積層ポリエステルフィルム」の「GPCの測定から得た分子量分布曲線における分子量1,000以下の領域の面積割合が、全ピーク面積の1.8%以下であり」、「二軸配向積層ポリエステルフィルム」における「環状三量体の含有量が、0.510質量%以上である」ようにすることは記載も示唆もされていない。
また、相違点3-2に係る本件発明1の構成は、申立人が提出した証拠には記載されておらず、かつ、本件特許に係る出願前における周知技術でもない。
したがって、甲3発明において、相違点3-2に係る本件発明1の構成とすることを、当業者が容易に想到し得たとはいえない。
よって、本件発明1は、当業者が甲3発明に基いて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(3)本件発明2~13について
本件発明2~13は、本件発明1の特定事項を全て含み、さらに限定を加えるものであるから、上記(2)で検討したのと同じ理由により、本件発明2~13は、当業者が甲1発明、甲2発明又は甲3発明に基いて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
2 申立理由2(実施可能要件)について
(1)発明の詳細な説明の記載について
本件特許の発明の詳細な説明には、本件発明が解決しようとする課題(【0006】~【0007】)、当該課題を解決するための手段(【0008】~【0018】)、本件発明の効果(【0019】)、本件発明を実施するための形態(【0021】~【0126】)、実施例(【0127】~【0145】)が記載されており、これら記載を参照することで、本件発明を実施することが可能である。
特に、申立人が、「ケミカルリサイクルプロセスとして多数のプロセスが存在することが知られている。」(特許異議申立書71ページ1~2行)と主張するように、「ケミカルリサイクルプロセス」は周知の技術であり、「ケミカルリサイクルポリエステル」についても、当該周知の「ケミカルリサイクルプロセス」により得られることは明らかである。
そして、本件発明における「ケミカルリサイクルポリエステル」についても、当該周知の「ケミカルリサイクルプロセス」により得ることで実施可能である。
したがって、申立人の申立理由2(実施可能要件)についての主張は、採用できない。
(2)小括
よって、本件特許の発明の詳細な説明の記載は、当業者が本件発明1~13の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものである。
3 申立理由3(サポート要件)について
(1)発明の詳細な説明の記載
本件発明が解決しようとする課題は、「環境負荷を低減でき、衛生性に極めて優れる包装容器の製造を可能にする、蒸着樹脂フィルムを提供すること」(【0007】)である。
当該課題を解決する手段に関して、発明の詳細な説明には次の記載がある。
「ポリエステルフィルム11のGPC(ゲル浸透クロマトグラフィー:Gel Permeation Chromatography)の測定から得た分子量分布曲線における分子量1,000以下の領域の面積割合が、全ピーク面積の1.8%以下であることを特徴とする。このようなポリエステルフィルム11は、分子量1,000以下の成分(以下、低分子量成分ともいう)の含有量が低減されているため、包装容器に充填される内容物への低分子量成分の混入を抑制でき、本発明の蒸着樹脂フィルムを用いて製造した包装容器の衛生性を改善できる。」(【0033】)
また、包装容器に充填される内容物への低分子量成分の混入について、その作用機序は、「基材等として使用されるポリエステルフィルムに低分子の重合物が含まれている場合、ロール状の積層体の保管時に、低分子の重合物はシーラント層側へ移行し、低分子の重合物が包装容器に充填される内容物へ混入」(【0006】)と記載されている。
さらに、実施例として、実施例1-1:低分子含有量が1.32%、実施例1-2:低分子含有量1.25%のもので、衛生性の評価において、イオン交換水の味の変化に気づかなかったとされている(【0138】、【0139】)。
(2)判断
本件発明1は、「前記ポリエステルフィルムのGPCの測定から得た分子量分布曲線における分子量1,000以下の領域の面積割合が、全ピーク面積の1.8%以下であ」ることを発明特定事項としており、上記作用機序を踏まえると、分子量1,000以下の低分子量成分の含有量が低減していくと、それに応じて、程度の違いはあれイオン交換水の味の変化が減少していくものであるから、上記(1)に示した発明の詳細な説明の記載を総合すると、当該発明特定事項により、本件発明の課題を解決できることが当業者であれば認識することができるといえる。
(3)申立人の主張について
発明の詳細な説明の【0033】の記載及び上記作用機序から、「分子量1,000以下の成分(以下、低分子量成分ともいう)の含有量が低減されている」ほど、「包装容器に充填される内容物への低分子量成分の混入を抑制でき」ることが理解できる。
本件発明1は、「分子量1,000以下」の成分の含有量の上限を特定するものであるから、本件発明の発明特定事項により、本件発明の課題を解決できることが当業者であれば認識することができる。
したがって、申立人の申立理由3(サポート要件)についての主張は、採用できない。
(4)小括
よって、本件発明1~13は、発明の詳細な説明に記載したものである。
4 申立理由4(明確性)について
(1)発明の詳細な説明の記載について
本件発明1の「前記ポリエステルフィルムのGPCの測定から得た分子量分布曲線における分子量1,000以下の領域の面積割合」、「前記ポリエステルフィルムにおける環状三量体の含有量」の記載はその意味内容を理解できるため、明確である。
(2)申立人の主張について
本件特許の明細書では、「低分子量成分の構成比率の測定」(【0134】)や「環状三量体の含有量測定」(【0135】)における抽出条件が一義的に規定されていないとしても、そのこと自体によって本件発明1の「前記ポリエステルフィルムのGPCの測定から得た分子量分布曲線における分子量1,000以下の領域の面積割合」、「前記ポリエステルフィルムにおける環状三量体の含有量」の記載が不明確であるとはいえない。
したがって、申立人の申立理由4(明確性)についての主張は、採用できない。
(3)小括
よって、本件発明1~13は明確である。
第5 むすび
以上のとおり、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、請求項1~13に係る特許を取り消すことはできない。また、他に請求項1~13に係る特許を取り消すべき理由は発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2022-700551