特許異議申立
2023-700024
プリフォーム及びプラスチックボトルの製造方法
- 審判番号
- 2023-700024
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2021-211515
- 登録番号
- 7104904
- 請求日
- 2023年01月12日
- 審決日
- 2023年11月30日
- 公報発行日
- 2024年03月29日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】大日本印刷株式会社
- 【権利者代理人】宮嶋 学
- 【権利者代理人】堀田 幸裕
- 【権利者代理人】村田 卓久
- 【権利者代理人】高田 泰彦
- 【権利者代理人】柏 延之
- 【権利者代理人】中村 行孝
- 【異議申立人】小林 寛史
- 審判長/審判官
- 審判長 神谷 健一
- 審判官 関根 洋之
- 審判官 河原 正
- 分類
- P1651.113-YAA(B29C) / P1651.121-YAA(B29C) / P1651.537-YAA(B29C)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法120条の8第1項特許法135条
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第2項、特許法第29条、特許法第36条、特許法第120条の5第7項、特許法第120条の8第1項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7104904号発明「プリフォーム及びプラスチックボトルの製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7104904号の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~4〕について訂正することを認める。
特許第7104904号の請求項1、3~4に係る特許を維持する。
特許第7104904号の請求項2に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。
理由
理 由
第1 手続等の経緯
特許第7104904号の請求項1~4に係る特許(以下「本件特許」という。)についての出願(特願2021-211515号)は、令和3年6月21日に出願した特願2021-102695号の一部を同年12月24日に新たな特許出願としたものであって、令和4年7月13日にその特許権の設定登録がされ、同年7月22日に特許掲載公報が発行された。
本件特許について、特許掲載公報の発行の日から6月以内である令和5年1月12日に特許異議申立人 小林寛史(以下「特許異議申立人」という。)から請求項1~4に対して特許異議の申立てがされた。その後の手続等の経緯の概要は、以下のとおりである。
令和5年 3月20日付け:取消理由通知書
同年 5月 9日 :意見書(特許権者)の提出
同日 :訂正請求書の提出
同年 6月16日 :意見書(特許異議申立人)の提出
同年 8月 1日付け:取消理由通知書(決定の予告)
同年 9月20日 :意見書(特許権者)の提出
同日 :訂正請求書の提出(この訂正請求書による訂
正の請求を以下「本件訂正請求」という。)
同年10月30日付け:意見書(特許異議申立人)の提出
なお、令和5年5月9日付け訂正請求書による訂正の請求は、特許法120条の5第7項の規定により、取り下げられたものとみなす。
第2 本件訂正請求について
1 訂正の趣旨
本件訂正請求の趣旨は、特許第7104904号の特許請求の範囲を、本訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~4について訂正することを求める、というものである。
2 本件訂正請求について
本件訂正請求は、一群の請求項〔1~4〕に対して請求されたものである。
3 訂正の内容
本件訂正請求において特許権者が求める訂正の内容は、以下のとおりである。なお、下線は当合議体が付したものであり、訂正箇所を示す。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に「前記胴部及び前記底部のうち最も厚い部分は、前記胴部と前記底部との境界部である第1境界部からプリフォームの中心軸方向に上下5mm以内の位置にあり、」と記載されているのを、
「前記胴部及び前記底部のうち最も厚い部分は、前記胴部と前記底部との境界部である第1境界部からプリフォームの中心軸方向に上下1mm以内の位置にあり、」に訂正する(請求項1の記載を直接又は間接的に引用して記載された、請求項3~4についても、同様に訂正する。)。
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項1に「前記最も厚い部分の厚みは、前記底部の最下部の厚みよりも厚い、プリフォーム。」と記載されているのを、
「前記最も厚い部分の厚みは、前記底部の最下部の厚みよりも厚く、
前記小径部の外径及び内径は、それぞれ前記縮径部側から前記底部側に向けて徐々に細くなっており、
垂直断面において、前記小径部の外面は全体として直線状であり、垂直断面において、前記小径部の前記内面は全体として直線状であり、
垂直断面における前記小径部の前記中心軸方向の全ての箇所において、前記小径部の前記内面が前記中心軸に対して傾斜する角度と、前記小径部の前記外面が前記中心軸に対して傾斜する角度との差は、0.5°以上1.5°以下である、プリフォーム。」に訂正する(請求項1の記載を直接又は間接的に引用して記載された、請求項3~4についても、同様に訂正する。)。
(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項2を削除する。
(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項3に「請求項1又は2記載のプリフォーム。」と記載されているのを、
「請求項1記載のプリフォーム。」に訂正する(請求項3の記載を引用して記載された、請求項4についても、同様に訂正する。)。
(5)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項4に「請求項1乃至3のいずれか一項記載のプリフォームを準備する工程と、」と記載されているのを、
「請求項1又は3記載のプリフォームを準備する工程と、」に訂正する。
4 訂正の適否
(1)訂正事項1について
訂正事項1による訂正は、請求項1に記載された「最も厚い部分」の位置を限定する訂正である。そして、この点は、請求項1の記載を直接又は間接的に引用して記載された請求項3~4についてみても、同じである。
そうすると、訂正事項1による訂正は、特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とする訂正に該当する。
また、訂正事項1による訂正は、本件特許の明細書の【0035】の「胴部20及び底部30のうち最も厚い部分は、第1境界部26からプリフォーム10の中心軸CL方向に上下5mm以内の位置にあれば良い。また、胴部20及び底部30のうち最も厚い部分は、プリフォーム10の中心軸CL方向に上下3mm以内の位置にあることが好ましく、上下1mm以内の位置にあることが更に好ましい」という記載事項から導き出すことができる事項であり、当業者によって、明細書、特許請求の範囲又は図面のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものである。
そうすると、訂正事項1による訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてした訂正である。
加えて、訂正事項1による訂正によって、訂正前の特許請求の範囲には含まれないこととされた発明が訂正後の特許請求の範囲に含まれることとならないことは明らかである。
そうすると、訂正事項1による訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正に該当しない。
(2)訂正事項2について
ア 訂正事項2による訂正は、請求項1に記載された「小径部」の構成を限定する訂正である。そして、この点は、請求項1の記載を引用して記載された請求項3~4についてみても、同じである。
そうすると、訂正事項2による訂正は、特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とする訂正に該当する。
また、訂正事項2による訂正は、本件特許の明細書の【0027】の「垂直断面において、小径部23の外面23aが中心軸CLに対して傾斜する角度θ3・・・小径部23の内面23bが中心軸CLに対して傾斜する角度θ4・・・角度θ4と角度θ3との差(θ4-θ3)は、0°超2°以下としても良く、0.5°以上1.5°以下とすることが好ましい」という記載事項及び【0028】の「小径部23の外径D9及び内径D10は、それぞれ縮径部22側から底部30側に向けて徐々に細くなっている・・・垂直断面において、小径部23の外面23aは全体として直線状である・・・垂直断面において、小径部23の内面23bは全体として直線状である」という記載事項から導き出すことができる事項であり、当業者によって、明細書、特許請求の範囲又は図面のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものである。
そうすると、訂正事項2による訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてした訂正である。
加えて、訂正事項2による訂正によって、訂正前の特許請求の範囲には含まれないこととされた発明が訂正後の特許請求の範囲に含まれることとならないことは明らかである。
そうすると、訂正事項2による訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正に該当しない。
イ 特許異議申立人は、令和5年10月30日提出の意見書の「(3-2)訂正要件違反について」において、「以上のとおり、明細書等のいずれの箇所にも、角度の差が「0.5°超1.5°以下」である範囲は全く記載されていません。よって、角度の差が「0.5°超1.5°以下」範囲が「垂直断面における前記小径部の前記中心軸方向の全ての箇所」であると特定する技術的事項は、明らかに、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内にはありません。」と主張する。なお、訂正事項2から、当該主張における「0.5°超1.5°以下」は「0.5°以上1.5°以下」の誤記であると認められる。
しかしながら、本件特許明細書の【0027】には、「垂直断面において、小径部23の外面23aが中心軸CLに対して傾斜する角度θ3・・・小径部23の内面23bが中心軸CLに対して傾斜する角度θ4・・・角度θ4と角度θ3との差(θ4-θ3)は、0°超2°以下としても良く、0.5°以上1.5°以下とすることが好ましい。」(下線部は当合議体が付した。)と記載されている。また、同【0027】は小径部に関する説明であり、角度θ4と角度θ3との差(θ4-θ3)が0.5°以上1.5°以下であるのが、垂直断面における小径部の中心軸方向の一部の箇所においてであっても良いという記載がないことからみると、当該差が0.5°以上1.5°以下であるのは垂直断面における小径部の中心軸方向の全ての箇所においてであると当業者であれば理解することができる。
したがって、当該主張は採用できない。
(3)訂正事項3について
訂正事項3による訂正は、特許請求の範囲の請求項2を削除する訂正である。
そうすると、訂正事項3による訂正は、特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とする訂正に該当する。
また、訂正事項3による訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてした訂正であり、かつ、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正に該当しない。
(4)訂正事項4について
訂正事項4による訂正は、訂正事項3による訂正で特許請求の範囲の請求項2を削除することに伴って、これと整合するように請求項3の記載を改める訂正である。この点は、請求項3の記載を引用して記載された請求項4についてみても、同じである。
そうすると、訂正事項4による訂正は、特許法120条の5第2項ただし書3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とする訂正に該当する。
また、訂正事項4による訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてした訂正であり、かつ、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正に該当しない。
(5)訂正事項5について
訂正事項5による訂正は、訂正事項3による訂正で特許請求の範囲の請求項2を削除することに伴って、これと整合するように請求項4の記載を改める訂正である。
そうすると、訂正事項5による訂正は、特許法120条の5第2項ただし書3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とする訂正に該当する。
また、訂正事項5による訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてした訂正であり、かつ、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正に該当しない。
5 小括
以上のとおりであるから、本件訂正請求による請求項1~4についての訂正(訂正事項1~5による訂正)は、特許法120条の5第2項ただし書、同法同条9項において準用する同法126条5項及び6項の規定に適合する。
よって、本件特許の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~4〕について訂正することを認める。
第3 本件特許発明
上記「第2」のとおり、本件訂正請求による訂正は認められることとなったから、本件特許の請求項1、3及び4に係る発明は、特許請求の範囲の請求項1、3及び4に記載された事項によって特定されるとおりの、以下のものである。
「【請求項1】
口部と、
前記口部に連結された胴部と、
前記胴部に連結された底部と、を備え、
前記胴部及び前記底部のうち最も厚い部分は、前記胴部と前記底部との境界部である第1境界部からプリフォームの中心軸方向に上下1mm以内の位置にあり、
前記胴部の厚みは、前記口部側から前記最も厚い部分側に向かって徐々に厚くなり、
前記胴部は、前記口部側に位置する大径部と、前記底部側に位置する小径部と、前記大径部と前記小径部との間に位置し、前記大径部側から前記小径部側に向けて縮径する縮径部とを有し、
垂直断面において、前記小径部の内面が前記中心軸に対して傾斜する角度は、0°超5°未満であり、
垂直断面において、前記縮径部の外面が前記中心軸に対して傾斜する角度と、前記小径部の外面が前記中心軸に対して傾斜する角度とは、互いに異なり、
垂直断面において、前記大径部の外面が前記中心軸に対して傾斜する角度と、前記縮径部の外面が前記中心軸に対して傾斜する角度とは、互いに異なり、
前記縮径部と前記小径部との境界には、第2境界部が存在し、
前記大径部と前記縮径部との境界には、第3境界部が存在し、
前記第2境界部における前記胴部の厚みは、前記第3境界部における前記胴部の厚みよりも厚く、
前記最も厚い部分の厚みは、前記第2境界部における前記胴部の厚みよりも厚く、
前記最も厚い部分の厚みは、前記底部の最下部の厚みよりも厚く、
前記小径部の外径及び内径は、それぞれ前記縮径部側から前記底部側に向けて徐々に細くなっており、
垂直断面において、前記小径部の外面は全体として直線状であり、垂直断面において、前記小径部の前記内面は全体として直線状であり、
垂直断面における前記小径部の前記中心軸方向の全ての箇所において、前記小径部の前記内面が前記中心軸に対して傾斜する角度と、前記小径部の前記外面が前記中心軸に対して傾斜する角度との差は、0.5°以上1.5°以下である、プリフォーム。」
「【請求項3】
前記底部の厚みは、前記最も厚い部分側から前記底部の最下部に向けて徐々に薄くなっている、請求項1記載のプリフォーム。
【請求項4】
プラスチックボトルの製造方法であって、
請求項1又は3記載のプリフォームを準備する工程と、
前記プリフォームを加熱する工程と、
前記プリフォームを二軸延伸ブロー成形する工程と、を備えた、プラスチックボトルの製造方法。」
第4 取消しの理由の概要
1 令和5年3月20日付け取消理由通知書により特許権者に通知した取消しの理由は、概略、次のとおりのものである。
理由1(新規性):本件特許の請求項1~4に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物である甲1号証に記載された発明であり、特許法29条1項3号に掲げる発明に該当するから、請求項1~4に係る特許は、いずれも、特許法29条1項の規定に違反してされたものである。
理由2(進歩性):本件特許の請求項1~4に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物である甲1号証又は甲2号証に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1~4に係る特許は、いずれも、特許法29条2項の規定に違反してされたものである。
・甲1号証:特許第3797156号公報(以下「甲1」という。)
・甲2号証:Z J Yang,外3名,“Finite element modelling of stretch-blow moulding of PET bottles using Buckley model:plant tests and effects of process conditions and material parameters”,JOURNAL OF Process Mechanical Engineering PROCEEDINGS PART E,Institution of Mechanical Engineers,2004年11月,Vol.218,No.E4,p.237-250(以下「甲2」という。)
2 令和5年8月1日付け取消理由通知書により特許権者に通知した取消しの理由は、概略、次のとおりのものである。
理由(明確性):本件特許の特許請求の範囲の請求項1、3及び4に係る発明は明確でなく、本件特許の特許請求の範囲の記載は、特許法36条6項2号に適合していないから、請求項1、3及び4に係る特許は、同号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
第5 当合議体の判断
1 明確性要件について
(1)上記「第2」のとおりに請求項1が訂正されたことにより、請求項1において、「垂直断面における前記小径部の前記中心軸方向の全ての箇所において」、「垂直断面において、前記小径部の前記内面が前記中心軸に対して傾斜する角度と、前記小径部の前記外面が前記中心軸に対して傾斜する角度との差」が「0.5°以上1.5°以下である」ことが明らかになった。
したがって、請求項1並びに請求項1を直接又は間接的に引用する請求項3及び4に係る発明は明確である。
(2)上記「第2」のとおりに請求項4が訂正されたことにより、請求項4は、削除された請求項2でなく、請求項3を引用するようになったため、請求項4に係る発明は明確である。
(3)したがって、本件特許の特許請求の範囲の記載は、特許法36条6項2号に適合する。
2 新規性・進歩性について
(1)甲1を主引用例とする場合
ア 甲1に記載された発明
甲1には、以下のプリフォームの発明(【0025】~【0055】及び【図1】参照。以下「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。
「口部31と、サポートリング32と、平行部21と、平行部21以外の、側壁部11の上部20と、厚肉部12が位置する下部11aを含む側壁部11と、底部13とを備え、
側壁部11の上部20の肉厚が、サポートリング32の下端から一定の肉厚の平行部21と、この平行部21の肉厚から次第に厚くなるように形成してあり、平行部21より下方の外表面の鉛直線に対する傾きに比べ、内周面の鉛直線に対する傾きを大きくすることで下方に向かって厚肉に形成され、外表面の傾きを7.9度とし、内表面の傾きを15.8度とすることで次第に肉厚を厚くするようにしてあり、
管状の側壁部11の外表面は、ほぼ全長にわたって鉛直線に対して僅かに傾斜し、射出成形時の抜き勾配を確保して、0.6度の傾斜とされ、厚肉部12が位置する側壁部11の下部11aの内表面は鉛直線に対して大きな傾斜とされ、2.3度とすることで底部13に向かって側壁部11の肉厚が漸増する厚肉部12となり、
底部13は、側壁部11の下部11aの厚肉部12の下端から内周面の傾斜が外表面と同一とされて抜き勾配を持つ4.82mmの平行部分14が形成され、この平行部分14の下端内周に連続して半球面状の底部内周面15が形成されてプリフォームが塞がれ、肉厚を定める底部外周面16は、底部13の頂部13aが最も薄肉とされ、2.5mmとしてあり、頂部13aから上方に離れるにしたがって僅かずつ肉厚が漸増する底部外周曲面17とこれに続き平行部分14の下端外周との間を繋ぐ平面状の傾斜面18とで構成されており、傾斜面18の角度が鉛直線に対して21.6度とされ、この傾斜面18で底部に向かって肉厚が漸減する面取り部19が構成され、底部13の肉厚が、底部内周面15に対して底部13の中心13aが最も薄肉とされ、これから遠ざかるにしたがって僅かずつ厚くなる曲面である底部外周曲面17および平面である傾斜面18を介して側壁部11の厚肉部12の下端の平行部分14に連続するように構成され、
全体の肉厚分布を見ると、プリフォームの厚肉部12の肉厚を上方から下方に漸増してあり、この厚肉部12より上方の側壁部11が一定肉厚とされ、さらに厚肉部12より下方の底部13の肉厚が中心13aを最薄肉部として漸増するよう形成してある、
プリフォーム。」
イ 本件特許発明1について
(ア)対比
本件特許発明1と甲1発明を対比する。
a 甲1発明において、垂直断面において2つの内面のなす角度及び2つの外面のなす角度が大きく変化する箇所は、「平行部21」と「平行部21以外の、側壁部11の上部20」との境界部、「平行部21以外の、側壁部11の上部20」と「側壁部11」との境界部、及び、「平行部分14」と「底部内周面15と傾斜面18の間の部分」との境界部(平行部分14の下端)である。また、甲1発明において、「平行部21」の径は「側壁部11」の径より大きく、「平行部21以外の、側壁部11の上部20」は「平行部21」と「側壁部11」との間に位置し、「平行部21」側から「側壁部11」に向けて径が小さくなっている。そして、本件特許発明1の「第1境界部」は、「垂直断面において、小径部23の内面23bと底部30の内面30bとのなす角度、及び、小径部23の外面23aと底部30の外面30aとのなす角度が大きく変化する箇所である」(本件特許明細書【0030】参照。)。「第2境界部」、「第3境界部」についても同様である(同【0026】及び【0023】参照。)。さらに、甲1発明において、「口部31」、「平行部21と、平行部21以外の、側壁部11の上部20と、厚肉部12が位置する下部11aを含む側壁部11と、平行部分14から成る部分」及び「平行部分14を除いた底部13」は、連結されている。
そうすると、甲1発明の「平行部21」、「平行部21以外の、側壁部11の上部20」、「側壁部11」、「平行部分14と、底部内周面15と傾斜面18の間の部分との境界部」、「平行部21以外の、側壁部11の上部20と側壁部11との境界部」及び「平行部21と平行部21以外の、側壁部11の上部20との境界部」は、それぞれ、本件特許発明1の「大径部」、「縮径部」、「小径部」、「第1境界部」、「第2境界部」及び「第3境界部」に相当する。また、甲1発明の「口部31」、「平行部21と、平行部21以外の、側壁部11の上部20と、厚肉部12が位置する下部11aを含む側壁部11と、平行部分14から成る部分」及び「平行部分14を除いた底部13」は、それぞれ、本件特許発明1の「口部」、「胴部」及び「底部」に相当する。
したがって、甲1発明は、本件特許発明1の「口部と、前記口部に連結された胴部と、前記胴部に連結された底部と、を備え」、「前記胴部は、前記口部側に位置する大径部と、前記底部側に位置する小径部と、前記大径部と前記小径部との間に位置し、前記大径部側から前記小径部側に向けて縮径する縮径部とを有し」、「前記縮径部と前記小径部との境界には、第2境界部が存在し、前記大径部と前記縮径部との境界には、第3境界部が存在」する「プリフォーム」という構成を具備している。
b 甲1発明において、平行部21から底部13の間のうち、最も厚い部分は、「厚肉部12が位置する側壁部11の下部11aと平行部分14の境界部」から、「平行部分14と、底部内周面15と傾斜面18の間の部分との境界部(平行部分14の下端)」までの部分であり、また、平行部分14の寸法は4.82mmであるから、「最も厚い部分」は、「平行部分14と、底部内周面15と傾斜面18の間の部分との境界部」からプリフォームの中心軸方向に上1mm以内の位置にある。
そうすると、甲1発明は、本件特許発明1の「前記胴部及び前記底部のうち最も厚い部分は、前記胴部と前記底部との境界部である第1境界部からプリフォームの中心軸方向に上下1mm以内の位置にあり」という構成を具備している。
c 甲1発明において、「平行部21と、平行部21以外の、側壁部11の上部20と、厚肉部12が位置する下部11aを含む側壁部11と、平行部分14から成る部分」の「口部31」側の箇所の厚みが、「厚肉部12が位置する側壁部11の下部11aと平行部分14の境界部から平行部分14と、底部内周面15と傾斜面18の間の部分との境界部までの部分」側の箇所の厚みを上回っていない。そして、本件特許発明1において、「徐々に厚くなる」とは「垂直断面において、中心軸CL方向に互いに異なる任意の2箇所で胴部20の厚みを測定したとき、口部11側の箇所の厚みが最も厚い部分側の箇所の厚みを上回ることがないことをいう」(本件特許明細書【0019】参照。)。
そうすると、甲1発明は、本件特許発明1の「前記胴部の厚みは、前記口部側から前記最も厚い部分側に向かって徐々に厚くなり」という構成を具備している。
d 甲1発明において、垂直断面において「側壁部11」の内表面が中心軸である鉛直線に対して傾斜する角度は、0.6°(「厚肉部12より上方の側壁部11が一定肉厚」部分)又は2.3°(「厚肉部12」部分)であり、いずれも0°超5°未満である。
そうすると、甲1発明は、本件特許発明1の「垂直断面において、前記小径部の内面が前記中心軸に対して傾斜する角度は、0°超5°未満であり」という構成を具備している。
e 甲1発明において、垂直断面において「平行部21以外の、側壁部11の上部20」の外表面が中心軸である鉛直軸に対して傾斜する角度は7.9°であり、「側壁部11」の外表面が中心軸である鉛直軸に対して傾斜する角度は0.6°であり、互いに異なっている。
そうすると、甲1発明は、本件特許発明1の「垂直断面において、前記縮径部の外面が前記中心軸に対して傾斜する角度と、前記小径部の外面が前記中心軸に対して傾斜する角度とは、互いに異なり」という構成を具備している。
f 甲1発明において、垂直断面において「平行部21」の外表面が中心軸である鉛直線に対して傾斜する角度は、「平行部21以外の、側壁部11の上部20」の外表面が中心軸である鉛直線に対して傾斜する角度7.9°とは異なっている。
そうすると、甲1発明は、本件特許発明1の「垂直断面において、前記大径部の外面が前記中心軸に対して傾斜する角度と、前記縮径部の外面が前記中心軸に対して傾斜する角度とは、互いに異なり」という構成を具備している。
g 甲1発明において、「平行部21以外の、側壁部11の上部20と側壁部11との境界部」における厚みは、「平行部21と平行部21以外の、側壁部11の上部20との境界部」における厚みよりも厚い。
そうすると、甲1発明は、本件特許発明1の「前記第2境界部における前記胴部の厚みは、前記第3境界部における前記胴部の厚みよりも厚く」という構成を具備している。
h 甲1発明において、平行部21から底部13の間のうちの最も厚い部分(b参照)の厚みは、「平行部21以外の、側壁部11の上部20と側壁部11との境界部」における厚みよりも厚く、また、底部13の最下部である中心13aの厚みよりも厚い。
そうすると、甲1発明は、本件特許発明1の「前記最も厚い部分の厚みは、前記第2境界部における前記胴部の厚みよりも厚く、前記最も厚い部分の厚みは、前記底部の最下部の厚みよりも厚い」という構成を具備している。
i 甲1発明において、側壁部11の外表面は、ほぼ全長にわたって鉛直線に対して僅かに傾斜し、射出成形時の抜き勾配を確保して、0.6度の傾斜とされ、また、厚肉部12が位置する側壁部11の下部11aの内表面は鉛直線に対して大きな傾斜とされ、2.3度とされているから、側壁部11の外径及び内径は、それぞれ平行部21以外の、側壁部11の上部20側から底部13側に向けて徐々に細くなっているといえる。
そうすると、甲1発明は、本件特許発明1の「前記小径部の外径及び内径は、それぞれ前記縮径部側から前記底部側に向けて徐々に細くなっており」という構成を具備している。
j 甲1発明の「プリフォーム」は、本件特許発明1の「プリフォーム」に対応する。
(イ)一致点
上記アによると、本件特許発明1と甲1発明は以下の点で一致する。
「口部と、
前記口部に連結された胴部と、
前記胴部に連結された底部と、を備え、
前記胴部及び前記底部のうち最も厚い部分は、前記胴部と前記底部との境界部である第1境界部からプリフォームの中心軸方向に上下1mm以内の位置にあり、
前記胴部の厚みは、前記口部側から前記最も厚い部分側に向かって徐々に厚くなり、
前記胴部は、前記口部側に位置する大径部と、前記底部側に位置する小径部と、前記大径部と前記小径部との間に位置し、前記大径部側から前記小径部側に向けて縮径する縮径部とを有し、
垂直断面において、前記小径部の内面が前記中心軸に対して傾斜する角度は、0°超5°未満であり、
垂直断面において、前記縮径部の外面が前記中心軸に対して傾斜する角度と、前記小径部の外面が前記中心軸に対して傾斜する角度とは、互いに異なり、
垂直断面において、前記大径部の外面が前記中心軸に対して傾斜する角度と、前記縮径部の外面が前記中心軸に対して傾斜する角度とは、互いに異なり、
前記縮径部と前記小径部との境界には、第2境界部が存在し、
前記大径部と前記縮径部との境界には、第3境界部が存在し、
前記第2境界部における前記胴部の厚みは、前記第3境界部における前記胴部の厚みよりも厚く、
前記最も厚い部分の厚みは、前記第2境界部における前記胴部の厚みよりも厚く、
前記最も厚い部分の厚みは、前記底部の最下部の厚みよりも厚く、
前記小径部の外径及び内径は、それぞれ前記縮径部側から前記底部側に向けて徐々に細くなっている、プリフォーム。」
(ウ)相違点
他方、本件特許発明1と甲1発明は次の点で相違する。
(相違点1)
本件特許発明1は、「垂直断面において、前記小径部の外面は全体として直線状であり、垂直断面において、前記小径部の前記内面は全体として直線状であり、垂直断面における前記小径部の前記中心軸方向の全ての箇所において、前記小径部の前記内面が前記中心軸に対して傾斜する角度と、前記小径部の前記外面が前記中心軸に対して傾斜する角度との差は、0.5°以上1.5°以下である」のに対し、甲1発明は、そのような構成を有しない点。
(エ)判断
a 新規性について
上記(ウ)により、本件特許発明1と甲1発明には、上記相違点1がある。
そうすると、本件特許発明1は、甲1発明ではない。
b 進歩性について
プリフォームにおいて、垂直断面における小径部の中心軸方向の全ての箇所において、小径部の内面が中心軸に対して傾斜する角度と小径部の外面が中心軸に対して傾斜する角度との差を0.5°以上1.5°以下とする技術的事項は、特許異議申立人が提出した甲1及び甲2のいずれにも記載されておらず、また、当該技術的事項が公知の技術又は周知慣用技術であることを示す証拠を発見することもできない。
また、甲1発明は、「厚肉部12より上方の側壁部11が一定肉厚」であることが前提である(甲1の【請求項1】の記載も参照。)。ここで、当該厚肉部12より上方の側壁部11(本件特許発明1の「小径部」の一部に相当。)の、内面が中心軸に対して傾斜する角度と外面が中心軸に対して傾斜する角度との差を0.5°以上1.5°以下にすると、肉厚が変化し、一定肉厚でなくなってしまうから、甲1発明において、一定肉厚である、厚肉部12より上方の側壁部11の、内面が中心軸に対して傾斜する角度と外面が中心軸に対して傾斜する角度との差を0.5°以上1.5°以下にする動機付けはないといえる。
そうすると、甲1発明において、相違点1に係る本件特許発明1の構成とすることは、当業者が容易になし得たことであるということはできない。
したがって、本件特許発明1は、甲1発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(オ)特許異議申立人は、令和5年10月30日提出の意見書6頁において、「構成(b)のうち「垂直断面における前記小径部の前記中心軸方向の全ての箇所において、小径部の内面が中心軸に対して傾斜する角度と、小径部の外面が中心軸に対して傾斜する角度との差は、0.5°以上1.5°以下であること」の部分は、明らかに当業者の設計事項です。以上をまとめると、構成(b)の構成要素は、全て、甲1発明が備えるものであるか、当業者の設計事項ですので、構成(b)を想起して甲1発明に適用することは容易です。」と主張する。
しかしながら、上記(エ)bのとおりであるから、当該主張は採用できない。
(カ)小括
本件特許発明1は、甲1に記載された発明ではない。また、本件特許発明1は、甲1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
ウ 本件特許発明3~4について
本件特許の特許請求の範囲の請求項3~4は、いずれも、請求項1を直接又は間接的に引用するものであって、本件特許発明3~4は、本件特許発明1の構成を全て具備し、これに限定を加えたものに該当する。そうすると、上記イのとおり、本件特許発明1が、甲1に記載された発明ではなく、また、甲1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない以上、本件特許発明3~4も、甲1に記載された発明ではなく、また、甲1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(2)甲2を主引用例とする場合
甲2には、重量が18.5gであるプリフォーム発明(238頁右欄下から3行~239頁右欄1行、図2及び図3参照。以下「甲2発明」という。)が記載されていると認められる。
本件特許発明1と甲2発明とを対比すると、両者は、少なくとも、上記相違点1((1)イ(ウ))と同様の点において相違する。
そして、当該相違点については、上記(1)イ(エ)と同様に判断される。
したがって、本件特許発明1は、甲2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
また、本件特許発明1の構成を全て具備し、これに限定を加えたものに該当する本件特許発明3~4も、甲2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
第6 むすび
1 請求項1、3及び4に係る特許は、いずれも、取消理由通知書によって通知した取消しの理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては取り消すことはできない。また、他に請求項1、3及び4に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
2 本件特許の請求項2は、本件訂正請求による訂正で削除された。これにより、特許異議申立人による特許異議の申立てについて、本件特許の請求項2に係る申立ては、申立ての対象が存在しないものとなったため、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。
3 よって、結論のとおり決定する。
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2023-700024