特許訂正審判
2023-390046
複数のアンテナからシンボルを送信すること
- 審判番号
- 2023-390046
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 訂正審判(訂正の審決)
- 出願番号
- 特願2021-552791
- 登録番号
- 7204001
- 請求日
- 2023年04月17日
- 審決日
- 2023年09月26日
- 公報発行日
- 2023年12月28日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【請求人】テレフオンアクチーボラゲット エルエム エリクソン(パブル)
- 【請求人代理人】園田 吉隆
- 【請求人代理人】小梶 晴美
- 審判長/審判官
- 審判長 千葉 輝久
- 審判官 猪瀬 隆広
- 審判官 寺谷 大亮
- 分類
- P141 .851-Y (H04B) / P141 .853-Y (H04B) / P141 .857-Y (H04B)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第126条第1項、特許法第126条第6項、特許法第126条第5項、特許法第126条第7項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7204001号に関する訂正審判事件について、次のとおり審決する。
結論
結 論
特許第7204001号の特許請求の範囲を本件審判請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項20~22について訂正することを認める。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本件訂正審判に係る特許第7204001号は、2019年(平成31年)3月11日を国際出願日とする出願(特願2021-552791号)の請求項1~20に係る発明について、令和5年1月4日に特許権の設定登録がされたものであって、同年4月17日に本件審判の請求がされ、同年6月7日付けで訂正拒絶理由が通知され、これに対して、同年7月28日に意見書が提出されたものである。
第2 請求の趣旨
本件訂正審判の請求の趣旨は、特許第7204001号の特許請求の範囲を本件審判請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項20~22について訂正することを認める、との審決を求めるものである。
第3 訂正の内容
この訂正審判の請求に係る訂正(以下「本件訂正」という。)の内容は、以下のとおりである。
1 訂正事項1
特許請求の範囲の請求項20に、「請求項2から16のいずれか一項に記載の方法」と記載されているのを、「請求項2または3に記載の方法」に訂正する。
2 訂正事項2
特許請求の範囲の請求項20に、「前記メモリは、前記装置が、請求項2から16のいずれか一項に記載の方法を実行するように動作可能であるような、前記プロセッサによって実行可能な命令を含んでいる、請求項19に記載の装置。」とあるうち、請求項4を引用するものについて、独立形式に改め、
「複数のアンテナからシンボルを送信するための装置であって、前記装置がプロセッサとメモリとを備え、前記メモリは、前記装置が、
各アンテナから、行列の選択された行のそれぞれのエレメントで乗算された前記シンボルを同時に送信すること
を行うように動作可能であるような、前記プロセッサによって実行可能な命令を含んでおり、
前記行列の列の数が少なくともアンテナの数であり、前記行列の行の数が少なくとも6であり、前記行列が、最小数の非実数エレメントのみを含むバトソン型アダマール行列の部分行列を備えるかまたは前記部分行列である、
装置。」
と記載し、新たな請求項21とする。
3 訂正事項3
特許請求の範囲の請求項20に、「前記メモリは、前記装置が、請求項2から16のいずれか一項に記載の方法を実行するように動作可能であるような、前記プロセッサによって実行可能な命令を含んでいる、請求項19に記載の装置。」とあるうち、請求項5または6を引用するものについて、
「前記メモリは、前記装置が、
請求項5または6に記載の方法を実行するように動作可能であるような、前記プロセッサによって実行可能な命令を含んでいる、請求項21に記載の装置。」
と記載し、新たな請求項22とする。
第4 訂正拒絶理由の概要
当審において、令和5年6月7日付けで通知した訂正拒絶理由の概要は、以下のとおりである。
訂正事項2及び訂正事項3は、特許法第126条第1項ただし書き第1号~第4号に掲げるいずれの事項を目的とするものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものであるから、同第6項の規定にも適合しない。
よって、訂正事項2及び訂正事項3は、いずれも訂正が認められない。
第5 当審の判断
1 訂正事項1について
(1)訂正の目的について
訂正事項1は、請求項20について、引用する請求項を「請求項2から16のいずれか一項」から、「請求項2または3」とし、引用する請求項の一部を削除するものであるから、訂正事項1に係る訂正は、特許法第126条第1項ただし書き第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
(2)新規事項の追加の有無について
訂正事項1に係る訂正は、前記(1)で述べたとおり、本件訂正前の請求項20において引用する請求項の一部を削除して、引用する請求項を限定するものであるところ、本件訂正後の請求項20に係る発明は、願書に添付した特許請求の範囲の請求項20に記載されているものであるから、新たな技術的事項を導入するものではない。
よって、訂正事項1に係る訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「本件明細書等」という。)に記載した事項の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入するものではなく、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであるから、訂正事項1に係る訂正は、特許法第126条第5項に規定する要件に適合する。
(3)特許請求の範囲の拡張又は変更について
訂正事項1に係る訂正は、前記(1)で述べたとおり、本件訂正前の請求項20において引用する請求項の一部を削除して、引用する請求項を限定するものであるから、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことは明らかであるから、訂正事項1に係る訂正は、特許法第126条第6項に規定する要件に適合する。
(4)独立特許要件について
本件訂正後の請求項20に記載されている事項により特定される発明が特許出願の際独立して特許を受けることができないとする理由は見いだせない。
よって、訂正事項1に係る訂正は、特許法第126条第7項に規定する要件に適合する。
(5)小括
以上のとおり、訂正事項1に係る訂正は、特許法第126条第1項ただし書き第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とし、かつ、同条第5項から第7項に規定する要件に適合するものである。
2 訂正事項2について
(1)訂正の目的について
ア 本件訂正前の請求項20
本件訂正前の請求項20は、次のとおりである。
「前記メモリは、前記装置が、
請求項2から16のいずれか一項に記載の方法を実行するように動作可能であるような、前記プロセッサによって実行可能な命令を含んでいる、請求項19に記載の装置。」
イ 引用する請求項を「請求項2から16のいずれか一項」から「請求項4」としたもの
本件訂正前の請求項20について、引用する請求項を「請求項2から16のいずれか一項」から「請求項4」としたものは、次のとおりである。
「前記メモリは、前記装置が、
請求項4に記載の方法を実行するように動作可能であるような、前記プロセッサによって実行可能な命令を含んでいる、請求項19に記載の装置。」
ウ 独立形式に改めたもの
さらに、本件訂正前の請求項20について、請求項4を引用する請求項19に記載の発明を独立形式に改めると、次のとおりである。(なお、各段落頭のアルファベットは、当審にて付与したものであり、以下「構成A」~「構成J」という。)
「A メモリは、装置が、
B 複数のアンテナからシンボルを送信する方法であって、前記方法は、
C 各アンテナから、行列の選択された行のそれぞれのエレメントで乗算された前記シンボルを同時に送信することを含み、
D 前記行列の列の数が少なくともアンテナの数であり、前記行列の行の数が少なくとも6であり、前記行列が、最小数の非実数エレメントのみを含むバトソン型アダマール行列の部分行列を備えるかまたは前記部分行列である、
E 方法を実行するように動作可能であるような、プロセッサによって実行可能な命令を含んでいる、
F 複数のアンテナからシンボルを送信するための装置であって、
前記装置が前記プロセッサと前記メモリとを備え、
前記メモリは、前記装置が、
G 各アンテナから、行列の選択された列のそれぞれのエレメントで乗算された前記シンボルを同時に送信すること
H を行うように動作可能であるような、前記プロセッサによって実行可能な命令を含んでおり、
I 前記行列の行の数が少なくともアンテナの数であり、前記行列の列の数が少なくとも6であり、前記行列が、最小数の非実数エレメントのみを含むバトソン型アダマール行列の部分行列を備えるかまたは前記部分行列である、
J 装置。」
エ 発明の詳細な説明の記載
(ア)本件明細書の段落【0021】の記載
本件明細書の段落【0021】には、以下の記載がある。
「本開示の例示的な実施形態は、行(または代替的に列)が、たとえばロングトレーニングフィールド(LTF)またはパイロットシンボルのために、直交カバーコードとして使用される行列を提供する。たとえば、行列および関連する直交カバーコードは、(最高)10個の時空間ストリームと、(最高)14個の時空間ストリームとをサポートし得る。提案される直交カバーコードの例は、バトソン型(4,6)、(4,10)および(4,14)のアダマール行列に関して規定され、これらの行列のエレメントは、±{1,j}のみからなる。すなわち、各エレメントは、+1、-1、+jまたは-jである。その上、たとえば、バトソン型アダマール行列H(4,n)の場合、行列は、それぞれ、n個の非実数(たとえば、純虚数jまたは-j)エレメントのみを含んでいることがあり、これは、いくつかの例では、最小可能数の非実数エレメントであり得る。たとえば、(たとえば、シンボルが送信される前の)jによる乗算が虚部および実部のスワッピングのみを伴い得るので、本明細書で開示される行列をLTFまたはパイロットシンボルに適用することは、いくつかの例では、より多くの非実数エレメントをもつバトソン型アダマール行列を使用することと比較して、より低い計算複雑さを有し得る。」
(イ)本件明細書の段落【0032】の記載
本件明細書の段落【0032】には、以下の記載がある。
「図5は、複数のアンテナからシンボルを送信する方法500の代替例を示す。方法500は、シンボルが行列の、行の代わりに、選択された列のそれぞれのエレメントで乗算されるという点で、方法400とは異なる。したがって、方法500は、ステップ502において、各アンテナから、行列の選択された行のそれぞれのエレメントで乗算されたシンボルを同時に送信することを含む。行列の列の数が少なくともアンテナの数であり、行列の行の数が少なくとも6であり、行列は、最小数の非実数エレメントのみを含むバトソン型アダマール行列の部分行列を備えるかまたは部分行列である。図4の方法400に関して説明された代替形態は、必要に応じて列の代わりに行を指すことおよび行の代わりに列を指すこと以外は、図5の方法500にも適用され得る。」
(ウ)本件明細書の段落【0037】の記載
本件明細書の段落【0037】には、以下の記載がある。
「装置600は、プロセッサ602と、プロセッサ602と通信しているメモリ604とを備える。メモリ604は、プロセッサ602によって実行可能な命令を含んでいる。一実施形態では、メモリ604は、装置600が、各アンテナから、行列の選択された列のそれぞれのエレメントで乗算されたシンボルを同時に送信するように動作可能であるような、プロセッサ602によって実行可能な命令を含んでいる。行列の行の数が少なくともアンテナの数であり、行列の列の数が少なくとも6であり、行列は、最小数の非実数エレメントのみを含むバトソン型アダマール行列の部分行列を備えるかまたは部分行列である。」
(エ)本件明細書の段落【0039】の記載
本件明細書の段落【0039】には、以下の記載がある。
「装置700は、プロセッサ702と、プロセッサ702と通信しているメモリ704とを備える。メモリ704は、プロセッサ702によって実行可能な命令を含んでいる。一実施形態では、メモリ704は、装置700が、各アンテナから、行列の選択された行のそれぞれのエレメントで乗算されたシンボルを同時に送信するように動作可能であるような、プロセッサ702によって実行可能な命令を含んでいる。行列の列の数が少なくともアンテナの数であり、行列の行の数が少なくとも6であり、行列は、最小数の非実数エレメントのみを含むバトソン型アダマール行列の部分行列を備えるかまたは部分行列である。」
オ 対比
前記ウの発明では、
「C 各アンテナから、行列の選択された行のそれぞれのエレメントで乗算された前記シンボルを同時に送信することを含み、
D 前記行列の列の数が少なくともアンテナの数であり、前記行列の行の数が少なくとも6であり、前記行列が、最小数の非実数エレメントのみを含むバトソン型アダマール行列の部分行列を備えるかまたは前記部分行列である、
E 方法を実行するように動作可能であるような、プロセッサによって実行可能な命令」(以下「構成Dの行列について構成Cをプロセッサによって実行可能な命令」という。)と、
「G 各アンテナから、行列の選択された列のそれぞれのエレメントで乗算された前記シンボルを同時に送信すること
I 前記行列の行の数が少なくともアンテナの数であり、前記行列の列の数が少なくとも6であり、前記行列が、最小数の非実数エレメントのみを含むバトソン型アダマール行列の部分行列を備えるかまたは前記部分行列であること、
H を行うように動作可能であるような、前記プロセッサによって実行可能な命令」(以下「構成Iの行列について構成Gをプロセッサによって実行可能な命令」という。)を含んでいるメモリを備える装置が特定されている。
一方、前記エにおいては、前記(エ)に示されるとおり、本件明細書の段落【0039】には、構成Dの行列について構成Cをプロセッサによって実行可能な命令を含んでいるメモリを備える装置が記載され、前記(ウ)に示されるとおり、段落【0037】には、構成Iの行列について構成Gをプロセッサによって実行可能な命令を含んでいるメモリを備える装置が記載されているものの、構成Dの行列について構成Cをプロセッサによって実行可能な命令と、構成Iの行列について構成Gをプロセッサによって実行可能な命令の両方を含んでいるメモリを備える装置については、段落【0037】にも、段落【0039】にも記載されておらず、段落【0037】、【0039】以外の本件明細書中の発明の詳細な説明にも記載されていない。
また、前記(ア)に示されるとおり、段落【0021】には、構成Iの行列と、構成Dの行列は、互いに代替的なものであることが記載されており、さらに、前記(イ)に示されるとおり、段落【0032】には、構成Iの行列について構成Gを実行する方法の代替例として、構成Dの行列について構成Cを実行する方法が記載されており、構成Dの行列について構成Cを実行する方法と、構成Iの行列について構成Gを実行する方法は、互いに代替的なものであることが記載されている。
つまり、当該段落には、構成Dの行列について構成Cを実行する方法と、構成Iの行列について構成Gを実行する方法のどちらか一つの方法を備えればよいことが説示されているものといえ、その両方の方法を備えることは考慮されていないと考えられる。
したがって、構成Dの行列について構成Cをプロセッサによって実行可能な命令と、構成Iの行列について構成Gをプロセッサによって実行可能な命令の両方を含んでいるメモリを備える装置は、本件明細書の記載から、当業者が自明なこととして導き出せる事項であるということはできない。
よって、前記ウの構成Dの行列について構成Cをプロセッサによって実行可能な命令と、構成Iの行列について構成Gをプロセッサによって実行可能な命令の両方を含んでいるメモリを備える装置に係る発明は、上述したとおり、本件明細書の発明の詳細な説明には記載されておらず、当業者にとって自明な事項でもないから、前記ウの訂正前の請求項20に係る発明の記載は、全体として明瞭でない記載となっているものである。
カ 明瞭でない記載の釈明について
前記ウの発明を、前記エに示した本件明細書の発明の詳細な説明と整合するようにするため、前記ウの発明の記載において、構成Iの行列について構成Gをプロセッサによって実行可能な命令に係る記載を削除することで、前記ウの発明を、本件明細書の段落【0039】等の発明の詳細な説明と整合させ、当該発明の記載を明瞭な記載になるように訂正をしたものが、本件訂正後の請求項21に係る発明である。
つまり、前記ウの発明の記載において「G 各アンテナから、行列の選択された列のそれぞれのエレメントで乗算された前記シンボルを同時に送信すること」及び「I 前記行列の行の数が少なくともアンテナの数であり、前記行列の列の数が少なくとも6であり、前記行列が、最小数の非実数エレメントのみを含むバトソン型アダマール行列の部分行列を備えるかまたは前記部分行列である、」の記載を削除し、重複する各構成(構成A、構成B及び構成E並びに構成F及び構成H)の記載を整理することで、前記ウの発明を、前記エ(エ)の本件明細書の段落【0039】等の発明の詳細な説明と整合するように改め、本件訂正後の請求項21に係る発明の記載のとおりに、明瞭な記載としたものである。
したがって、訂正事項2に係る訂正のうち、前記ウの発明の記載を、本件訂正後の請求項21に係る発明の記載に改める訂正は、特許法第126条第1項ただし書き第3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものである。
キ まとめ
(ア)前記アの発明の記載を、前記イの発明の記載に改める訂正は、引用する請求項を「請求項2から16のいずれか一項」から「請求項4」とし、引用する請求項の一部を削除するものであるから、当該訂正は、特許法第126条第1項ただし書き第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
(イ)前記イの発明の記載を、前記ウの発明の記載に改める訂正は、本件訂正前の請求項20に記載された発明が請求項4及び請求項19を引用するものであったものを、請求項間の引用関係を解消し、独立形式の請求項へ改めるものであるから、当該訂正は、特許法第126条第1項ただし書き第4号に掲げる「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものである。
(ウ)前記ウの発明の記載を、本件訂正後の請求項21に係る発明の記載に改める訂正は、前記カに示したとおり、明瞭でない記載を、明瞭な記載へ改めるものであるから、当該訂正は、特許法第126条第1項ただし書き第3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものである。
したがって、前記(ア)~(ウ)を踏まえると、訂正事項2に係る訂正は、特許法第126条第1項ただし書き第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」、同第3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」、及び同第4号に掲げる「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものである。
(2)新規事項の追加の有無について
本件訂正後の請求項21に係る構成は、本件明細書等には、「本装置が、各アンテナから、行列の選択された行のそれぞれのエレメントで乗算されたシンボルを同時に送信するように動作可能であるような、プロセッサによって実行可能な命令を含んでいる。行列の列の数が少なくともアンテナの数であり、行列の行の数が少なくとも6であり、行列は、最小数の非実数エレメントのみを含むバトソン型アダマール行列の部分行列を備えるかまたは部分行列である。」(段落【0014】)の記載、「図700(当審注:「図700」は「図7」の誤記と認める。)は、複数のアンテナからシンボルを送信するための装置700の一例を示す。」(段落【0038】)の記載、及び、「装置700は、プロセッサ702と、プロセッサ702と通信しているメモリ704とを備え・・・メモリ704は、プロセッサ702によって実行可能な命令を含んでいる。・・・メモリ704は、装置700が、各アンテナから、行列の選択された行のそれぞれのエレメントで乗算されたシンボルを同時に送信するように動作可能であるような、プロセッサ702によって実行可能な命令を含んでいる。行列の列の数が少なくともアンテナの数であり、行列の行の数が少なくとも6であり、行列は、最小数の非実数エレメントのみを含むバトソン型アダマール行列の部分行列を備えるかまたは部分行列である。」(段落【0039】)の記載がある。
したがって、本件明細書等には、本件訂正後の請求項21に係る発明が記載されている。
よって、訂正事項2に係る訂正は、本件明細書等に記載した事項の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入するものではなく、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであるから、訂正事項2に係る訂正は、特許法第126条第5項に規定する要件に適合する。
(3)特許請求の範囲の拡張又は変更について
ア 前記(1)キ(ア)に係る訂正は、引用する請求項の一部を削除するものであるから、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことは明らかであるから、前記(1)キ(ア)に係る訂正は、特許法第126条第6項に規定する要件に適合する。
イ 前記(1)キ(イ)に係る訂正は、請求項間の引用関係を解消し、独立形式の請求項へ改めるものであり、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではないことは明らかであるから、前記(1)キ(イ)に係る訂正は、特許法第126条第6項に規定する要件に適合する。
ウ 前記(1)キ(ウ)に係る訂正は、明瞭でない記載の釈明を目的として行われるものであるから、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものには該当しないので、前記(1)キ(ウ)に係る訂正は、特許法第126条第6項に規定する要件に適合する。
前記ア~ウを踏まえると、訂正事項2に係る訂正は、いずれも発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから、特許法第126条第6項に規定する要件に適合する。
(4)独立特許要件について
本件訂正後の請求項21に記載されている事項により特定される発明が特許出願の際独立して特許を受けることができないとする理由は見いだせない。
よって、訂正事項2に係る訂正は、特許法第126条第7項の規定に適合する。
(5)小括
以上のとおり、訂正事項2に係る訂正は、特許法第126条第1項ただし書き第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」、同第3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」、及び同第4号に掲げる「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とし、かつ、同条第5項から第7項に規定する要件に適合するものである。
3 訂正事項3について
(1)訂正の目的について
訂正事項3は、本件訂正前の請求項20に、
「前記メモリは、前記装置が、請求項2から16のいずれか一項に記載の方法を実行するように動作可能であるような、前記プロセッサによって実行可能な命令を含んでいる、請求項19に記載の装置。」と記載されているのを、
「前記メモリは、前記装置が、請求項5または6に記載の方法を実行するように動作可能であるような、前記プロセッサによって実行可能な命令を含んでいる、請求項21に記載の装置。」と記載し、新たな請求項22とする訂正であるから、
ア 本件訂正前の請求項20について、引用する請求項を「請求項2から16のいずれか一項」から「請求項5又は6」とし、引用する請求項の一部を削除する訂正(以下「訂正事項3(1)」という。)、及び
イ 本件訂正前の請求項19に記載された発明を本件訂正後の請求項21に記載された発明とする訂正(以下「訂正事項3(2)」という。)
を含むものである。
なお、請求項5及び6は、請求項4を引用するものである。
すると、前記アの訂正事項3(1)は、本件訂正前の請求項20について、引用する請求項の一部を削除する訂正であるから、当該訂正は、特許法第126条第1項ただし書き第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
また、前記イの訂正事項3(2)は、前記2(1)カ及びキ(ウ)を踏まえると、本件訂正前の請求項20について、請求項4を引用する請求項19の発明の記載が明瞭でない記載であったものを、訂正後の請求項21の発明の記載のように明瞭な記載へと改め、当該請求項21を引用する発明として記載した訂正であるから、特許法第126条第1項ただし書き第3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものである。
したがって、訂正事項3に係る訂正は、特許法第126条第1項ただし書き第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」及び同第3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものである。
(2)新規事項の追加の有無について
本件訂正後の請求項21に係る構成は、前記2(2)を踏まえると、本件明細書等の段落【0014】、段落【0038】及び段落【0039】に記載されているものである。
また、本件明細書等には、さらに、「装置700は、・・・本明細書で説明される他の例のうちのいずれかを実施するように設定され得る。」こと(段落【0038】)が記載され、請求項5に係る構成として、「少なくとも1つのさらなるシンボルを送信することであって、各さらなるシンボルについて、各アンテナから、さらなるシンボルに関連する行列の列のそれぞれのエレメントで乗算されたさらなるシンボルを同時に送信することを含む、少なくとも1つのさらなるシンボルを送信すること」(段落【0031】)の記載があり、請求項6に係る構成として、「選択された列と、各さらなるシンボルに関連する各列とが、行列の異なる列を備える」こと(段落【0031】)について記載がある。
したがって、本件明細書等には、本件訂正後の請求項22に係る発明が記載されている。
よって、訂正事項3に係る訂正は、本件明細書等に記載した事項の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入するものではなく、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであるから、訂正事項3に係る訂正は、特許法第126条第5項に規定要件に適合する。
(3)特許請求の範囲の拡張又は変更について
ア 訂正事項3(1)に係る訂正は、引用する請求項の一部を削除するものであるから、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことは明らかであるから、前記訂正事項3(1)に係る訂正は、特許法第126条第6項に規定する要件に適合する。
イ 訂正事項3(2)に係る訂正は、明瞭でない記載の釈明を目的として行われるものであるから、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しないので、特許法第126条第6項に規定する要件に適合する。
したがって、前記ア~イを踏まえると、訂正事項3に係る訂正は、いずれも発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもないから、特許法第126条第6項の規定に適合する。
(4)独立特許要件について
本件訂正後の請求項22に記載されている事項により特定される発明が特許出願の際独立して特許を受けることができないとする理由は見いだせない。
よって、訂正事項3に係る訂正は、特許法第126条第7項の規定に適合する。
(5)小括
以上のとおり、訂正事項3に係る訂正は、特許法第126条第1項ただし書き第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」及び同第3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とし、かつ、同条第5項から第7項に規定する要件に適合するものである。
第6 むすび
前記第5のとおり、本件訂正は適法である。
よって、結論のとおり審決する。
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