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商標取消審判

2023-300382

ユメノオクリビト、ユメノ、ユメ、オクリビト

審判番号
2023-300382
法域
商標
審判種別
取消審判(商標取消の審決)
出願番号
商願2022-076618
登録番号
6684147
請求日
2023年06月09日
審決日
2024年03月26日
公報発行日
2024年06月28日
結論
請求不成立
当事者
  • 【請求人】株式会社 おくりびとアカデミー
  • 【請求人代理人】星野 裕司
  • 【被請求人】KI-YO-RA 株式会社
  • 【被請求人代理人】弁理士法人綿貫国際特許・商標事務所
審判長/審判官
  • 審判長 旦 克昌
  • 審判官 小林 裕子
  • 審判官 清川 恵子
分類
T131 .3 -Y (W4445)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
商標法51条1項
条文(本文から自動抽出・参考)
商標法第70条第3項、商標法第51条第1項、商標法第51条、商標法第4条第1項第11号
データ出所
審決公報(XML)

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上記当事者間の登録第6684147号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。

結論

結 論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。

理由

理 由 第1 本件商標 本件登録第6684147号商標(以下「本件商標」という。)は、「夢のおくりびと」の文字を標準文字で表してなり、令和4年7月1日に登録出願、第45類「通夜・葬儀・法要の執行に関する助言・情報の提供,通夜・葬儀・法要の執行の媒介又は取次ぎ,通夜・葬儀・法要の相談」の他、第44類及び第45類に属する商標登録原簿に記載の役務を指定役務として同5年3月27日に設定登録されたものである。 第2 請求人の主張 請求人は、商標法第51条第1項の規定により、登録第6684147号商標の登録を取り消す、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第7号証を提出した。 1 請求の理由 被請求人は、故意に、本件商標と類似する商標をその指定役務について使用し、他人の業務に係る役務と混同を生ずるものをしたものであるから、商標法第51条第1項の規定により取り消されるべきものである。 (1)使用商標 本件商標の使用態様(以下「使用商標」という。)は、第3号証に示すように、第1の名詞部分「夢」と第2の名詞部分「おくりびと」を助詞「の」で接続して構成された「夢のおくりびと」であり、第1の名詞部分「夢」の文字をピンク系の色で表し、助詞および第2の名詞部分「おくりびと」を黒系の色で表したものである。 (2)本件商標と使用商標 本件商標は、「夢のおくりびと」の標準文字として、出願・登録されたもの(甲1)であって、被請求人は、拒絶理由通知書(令和4年11月17日発送)に対して、意見書(同年12月20日提出。以下、単に「意見書」という。)において、「本願商標の「夢のおくりびと」の各文字は、同じ大きさ、同じ色彩であって、「夢の」における助詞である「の」が連体修飾語として「夢」と「おくりびと」を結び付けております。したがって、本願商標の「夢のおくりびと」を「夢の」と「おくりびと」に分離して判断する理由がありません。」と主張している(甲4)。 これに対して、使用商標は、第1の名詞部分「夢」と、第2の名詞部分「おくりびと」が異なる色彩で表されたものであるから、本件商標とは外観が異なるので同一ではない。一方、使用商標と本件商標は共に、「ユメノオクリビト」という称呼を生じ得るから、本件商標と使用商標は、類似関係にある。また、被請求人のホームページには、「家族葬・自然葬ご相談承ります」と記載されており(甲3)、使用商標は、少なくとも本件商標の指定役務「通夜・葬儀・法要の相談」について用いられている。 (3)請求人の登録商標及びその周知性等について 請求人の登録商標「おくりびと」について、被請求人は、意見書において、「例えばgoogle検索では、映画作品の「おくりびと」だけではなく、2014年登録第5716811号商標「おくりびと」及び2022年登録第6534080号商標「おくりびと」の商標権者の提供する第45類役務「葬儀の執行,葬儀の執行に関する相談」等に関するサービスが上位にヒットします。」と述べている(甲4)。 なお、登録第5716811号商標及び登録第6534080号商標「おくりびと」は、共に請求人の保有する商標権に係る商標であり、標準文字として出願・登録されたものである。(以下、上記2件の登録商標を「引用商標」という。) 確かに、甲第5号証に示すように、google検索において、請求人が提供する第45類役務「葬儀の執行,葬儀の執行に関する相談」等に関するサービスは上位にヒットしている。この他、第41類役務「技芸・スポーツ又は知識の教授」の分野でも上位にヒットしている(甲5)。 このように、引用商標が、映画作品の「おくりびと」に匹敵するくらい周知著名になったのは、請求人の代表者が父親と共に映画作品「おくりびと」に技術指導として参画し、感動を呼び起こす作品の制作に貢献したことはもとより、その後も、納棺等の技術指導に尽力し、また関係会社を通して、葬儀の執行、葬儀の執行に関する相談等について、引用商標の反復継続した使用により、多大なる信用を獲得するに至った結果である(甲6、甲7)。 (4)引用商標に係る役務との出所の混同について 葬儀の執行や葬儀の執行に関する相談は、請求人が関係会社を通して提供するサービスに含まれる(甲5)。 一方、被請求人のホームページには、「家族葬・自然葬ご相談承ります」と記載されており(甲3)、使用商標を葬儀の執行に関する相談について使用していることは明らかである。 したがって、少なくとも葬儀の執行に関する相談については、請求人と被請求人で共通する役務である。 (5)小括 上述したように、被請求人と請求人の提供する役務は共通しており、また使用商標は、第1の名詞部分「夢」と第2の名詞部分「おくりびと」の色彩が異なる外観で表されているので、使用商標に接する需要者は、第2の名詞部分から、引用商標を連想し、想起して、請求人である引用商標の商標権者と経済的又は組織的に何らかの関係にある者の業務に係る役務であるかの如く誤認し、その出所について混同する蓋然性が高い。 (6)故意について 請求人は、令和4年11月29日付で、被請求人のホームページ上の使用商標は引用商標の商標権を侵害している旨を通知した。通知した時期は、本件商標の登録前であるが、使用商標の態様は、登録後のものと同じである。本件商標の登録前の使用商標を甲第2号証に示す。 請求人の上記通知に対して、被請求人から、令和4年12月2日付で、本件商標は、現在審査中であるが、本件商標と引用商標とは非類似であると判断している旨の回答があった。その後、本件商標は、令和5年3月27日に登録になった。ただし、上述したように本件商標と使用商標は異なるものである。 すなわち、被請求人は、引用商標の存在を知り、かつ引用商標が映画「おくりびと」と同じくらいgoogle検索で上位にヒットするほど世の中に広く知られていることを知りながら、本件商標の登録後も、引用商標と誤認混同を生じ得る態様で本件商標と類似する使用商標を使用し続けた。 よって、被請求人の使用商標を使用する行為は、故意に他人の業務に係る役務と混同を生ずるものをした行為に該当する。 (7)結び したがって、本件商標の商標権者である被請求人は、故意に、本件商標と類似する商標をその指定役務について使用し、他人の業務に係る役務と混同を生ずるものをしたものであるから、商標法第51条第1項の規定に基づき、本件商標は登録を取り消されるべきである。 2 答弁に対する弁駁 (1)商標法第70条第3項による規定 ア 被請求人は、工業所有権法逐条解説の商標法第70条第3項の趣旨の記載を挙げて、本件商標の色違い類似の商標の使用は、第51条の規定の適用を受けないことは明白である旨主張したが、上記逐条解説の商標法第70条第3項は「(略)色彩が異なることによって類似となっている部分の使用は本条1項の趣旨からいっても本来的な商標の中核的部分の範囲にあると考えて、その部分の使用があれば、その場合を同条の取消審判の対象から除外する必要があるからである(略)」と記載されている。すなわち、商標法第70条第3項の規定については、本来的な商標の中核的部分の範囲にあるかどうかが問題となる。 ところで、被請求人は、意見書において、「本願商標の「夢のおくりびと」の各文字は、同じ大きさ、同じ色彩であって「夢の」における助詞である「の」が連体修飾語として「夢」と「おくりびと」を結びつけております。したがって、本願商標の「夢のおくりびと」を「夢の」と「おくりびと」に分離して判断する理由がありません。」と主張している。この主張は、商標の中核的部分を判断する上で重要な事項である(甲4)。一方、使用商標は、「夢」の色彩と他の文字の色彩が異なる態様で表されている。すなわち、意見書での主張内容と異なり、使用商標の各文字は同じ色彩ではない。したがって、使用商標は、本来的な商標の中核的部分の範囲にないので、商標法第70条第3項による規定の趣旨からいって、本件商標の使用態様は、法第51条の規定の適用を免れるものではない。 イ 被請求人は、意見書において「本願商標を構成する各文字は、同じ書体で同じ大きさで外観上まとまりよく一体的に構成されており、構成文字「夢のおくりびと」全体より生ずる「ユメノオクリビト」の称呼も淀みなく一連に称呼し得るものです。」と述べている。また、令和5年10月18日付け異議の決定の当審の判断において「本件商標は、同じ書体および同じ大きさをもって等間隔に、視覚上、全体としてまとまりよく一体的に表されているものであり、構成文字全体から生じる「ユメノオクリビト」の称呼も無理なく一連に称呼し得る」と述べられている。 これに対して、使用商標は、全体がデザイン化された文字からなり、「夢のおくりびと」のうち、「夢の」は楷書体に近く、「おくりびと」は行書体に近い態様で表されている。したがって、「夢の」と「おくりびと」は同じ書体とはいえないので、たとえ使用商標の色彩を登録商標と同一にしても、使用商標は登録商標と同一にはならない。よって、商標法第70条第3項の条文からいっても、本件商標の使用態様は、法第51条の規定の適用を免れるものではない。 (2)使用商標 本件商標「夢のおくりびと」における「の」は助詞であり、また「夢」と「おくりびと」は名詞であることは被請求人のみならず、一般需要者も当然に認識できるものである。したがって、「の」が助詞であると認識できる以上、「夢の」と「おくりびと」に色分けされていても、或いは「夢」と「のおくりびと」に色分けされていても、「の」が結びつける二つの構成要素「夢」と「おくりびと」を容易に認識でき、使用商標は「夢」と「おくりびと」に分離観察可能な態様で表されている。 (3)誤認・混同 本件商標のうち、「夢」を他の文字と異なる色彩にすることにより、「おくりびと」が容易に認識でき、その結果、請求人の登録商標「おくりびと」と誤認混同を生じ得ることは明白である。 ところで、被請求人は意見書で「映画作品の題名と同一の登録商標「おくりびと」ですら社会公共の利益を害することなく事業活動が行われていると認識できる」旨述べており、何の根拠もなく、あたかも請求人が映画「おくりびと」と何ら関係がないかのごとく誤った主張を行うことこそ悪質な印象操作である。 (4)故意について 請求人は、令和4年11月29日付けで、被請求人のホームページ上の使用商標は請求人の登録商標の商標権を侵害している旨を通知した。被請求人は、当該通知によってホームページの使用商標が自身の登録商標(当時は出願商標)と異なることを知りながら対応を怠ったのである。 本件不正使用取消審判の請求がなければ、被請求人は永遠と使用商標を使い続けたことは明らかである。 被請求人の本件商標の権利化までの対応や請求人からの通知に対する不誠実な対応等を含め、本規定の適用に十分値するものである。 (5)請求人の登録商標「おくりびと」について 請求人の登録商標が映画作品「おくりびと」と並ぶくらい周知著名であることを被請求人自身が認識していることは、被請求人の意見書から明らかである(甲4)。 以上のごとく、答弁書における被請求人の主張はいずれも失当、又は理由がない。 第3 被請求人の答弁 被請求人は、結論同旨の審決を求めると答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし乙第2号証を提出した。 1 商標法第70条第3項による規定 商標法第51条は、商標権者が指定商品又は指定役務についての登録商標に類似する商標の使用をして一般公衆を害したような場合における制裁規定である。 商標法第70条第3項には、「第37条第1号又は第51条第1項における「登録商標に類似する商標」には、その登録商標に類似する商標であって、色彩を登録商標と同一にするものとすれば登録商標と同一の商標であると認められるものを含まないものとする。」と規定されている。 第70条第3項の趣旨は、「登録商標に類似する商標という場合には当然に色彩が異なることによって同一ではなくなり類似になっている部分を含むのであるが、37条1号においてはこの部分は既に25条に本条1項が適用されることによって同一の部分とみられ、本来的な商標権の侵害となるから、あえてその部分を類似部分に含ませる必要はないし、51条1項においては色彩が異なることによって類似となっている部分の使用は本条1項の趣旨からいっても本来的な商標の中核的部分の範囲にあると考えて、その部分の使用があれば、その場合を同条の取消審判の対象から除外する必要があるからである。すなわち、このような特則を設けないと51条1項については色違いの商標を使用しても同条の取消審判の適用を受けることとなって甚だ不都合だからである。」(「工業所有権法逐条解説第22版」1867ページ)と記載されている。 したがって、本件商標の色違い類似の使用商標は、第51条の規定の適用を受けないことは明白であり、請求人の主張には根拠がない。 2 使用商標 使用商標は、被請求人のホームページ(甲3)によれば「夢」の文字のみがピンクがかった赤色で表示され、「のおくりびと」の文字は黒系の色で表示されている。 請求人は、審判請求書の取消原因(1)使用商標、(2)本件商標と使用商標、(5)小括において、あえて第1の名詞部分「夢」と助詞および第2の名詞部分「おくりびと」を記載し、あたかも被請求人が「おくりびと」の部分を強調して使用しているような主張をしているが、実際にそのような事実はなく、被請求人ホームページ上の使用商標は「のおくりびと」の文字が黒系の色で表示されているものであって、請求人の主張には誤りがある。 なお、もし請求人が主張するように、被請求人が請求人の引用商標と誤認・混同を生じせしめる意図があったとするならば、「おくりびと」の部分が目立つように、まず「夢の」を目立たない色にしたり小さいフォントとし、「おくりびと」の部分を目立つ色にしたり大きいフォントにするのではないかと考えられるが、被請求人の実際の使用商標はピンクがかった赤色へ変更された「夢」のみが目立ち「のおくりびと」はあまり目立たないように形成されていることから、使用商標は請求人の引用商標と誤認・混同を生じることはない。 3 誤認・混同 本件商標は、その審査の過程において請求人の引用商標を引用されて商標法第4条第1項第11号違反として拒絶理由を受けた経緯はなく、「夢のおくりびと」と「おくりびと」は非類似と判断されており、誤認・混同は生じ得ない。 また、使用商標は「夢」と「のおくりびと」が異なる色彩で使用されていたとしても、引用商標とは非類似であって、商標法第51条が適用されるものではないことは明白であり、使用商標が被請求人の業務に係る役務等との混同を生じさせるおそれを有することは皆無といえる。 よって、被請求人の使用商標の表記は、引用商標を使用する請求人の業務等に係る役務との混同を生じさせるおそれを有するものではない。 なお、被請求人の事業運営において、需要者・取引者から、引用商標を想起し混同した等の連絡を受けたことは一度もなく、需要者・取引者が請求人の事業と、被請求人の事業については混同の事実あるいは混同のおそれがあると認識された事実は皆無である。 4 故意について 被請求人は、本件商標をホームページ上でどのような使用態様にするかは決めておらず、ホームページ制作会社に全て任せていた。 被請求人は特に色の指定をせずに、ホームページ制作会社にホームページの制作を依頼したところ、ホームページ制作会社は「夢」の文字を強調してやさしい感じを出そうと思い、「夢」の文字のみピンクがかった赤色で作成し、「のおくりびと」の文字を黒色で作成したとのことである。 このように、本件商標に対し「夢」と「のおくりびと」とを異なる色彩で使用したことは被請求人の意思で行ったことではない。 なお、本件審判請求書の副本が被請求人のもとに届いてから、被請求人は、令和5年7月18日にホームページ上の使用商標を、全て同一の色となるように変更した(乙2)。 したがって、本件商標の使用に対し、「夢」と「のおくりびと」とを異なる色彩で掲載した使用商標は現在では解消しており、制裁規定である商標法第51条を適用させることは適当ではない。 5 請求人の引用商標について 請求人は、甲第6号証及び甲第7号証に基づいて引用商標が周知著名になったことを主張している。 しかし、甲第6号証では、映画「おくりびと」で父とともに技術指導をした納棺師の木村光希氏のことは記載されているが、請求人会社のことや、請求人の引用商標について一切の記載は存在しない。したがって、これをもって、請求人の引用商標が周知著名であるとは言えない。 また、甲第7号証では「おくりびと(R)のお葬式」として代表取締役の木村光希氏に話を伺ったことが記載されている。しかし、請求人会社のことは何ら記載されておらず「おくりびと(R)のお葬式」と記載されているだけで請求人の引用商標が周知著名であるとは言えない。 6 結び 使用商標は、商標法第70条第3項の規定に基づき、第51条の審判の対象外である。 また、請求人が主張している「夢」と「おくりびと」が異なる色彩で使用されているということもなく、実際には「夢」と「のおくりびと」が異なる色彩で使用されているものであり、かつ請求人の引用商標が周知著名であるとも言えないことから被請求人の使用商標によって請求人の引用商標と誤認・混同を生じることは無い。 さらに使用商標における「夢」と「のおくりびと」が異なる色彩で使用されている事情は、被請求人の意思ではなく、故意という要件も満たさない。 したがって、本件審判請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求めるものである。 第4 当審の判断 1 商標法第51条第1項について 商標法第51条第1項は、「商標権者が故意に指定商品若しくは指定役務についての登録商標に類似する商標の使用…であって…他人の業務に係る商品若しくは役務と混同を生ずるものをしたときは、何人も、その商標登録を取り消すことについて審判を請求することができる。」と規定している。同項の規定は、商標の不当な使用によって一般公衆の利益が害されるような事態を防止し、そのような場合に当該商標権者に制裁を課す趣旨のものであり、需要者一般を保護するという公益的性格を有するものである(最高裁昭和58年(行ツ)第31号同61年4月22日第三小法廷判決・裁判集民事147号587頁参照)。 商標法51条1項の上記のような趣旨に照らせば、同項にいう「商標の使用…であって…他人の業務に係る商品若しくは役務と混同を生ずるもの」に当たるためには、使用に係る商標の具体的表示態様が他人の業務に係る商品等との間で具体的に混同を生ずるおそれを有するものであることが必要であるというべきであり、そして、その混同を生ずるおそれの有無については、商標権者が使用する商標と引用する他人の商標との類似性の程度、当該他人の商標の周知著名性及び独創性の有無、程度、商標権者が使用する商品等と当該他人の業務に係る商品等との間の性質、用途又は目的における関連性の程度並びに商品等の取引者及び需要者の共通性その他取引の実情等に照らし、当該商品等の取引者及び需要者において普通に払われる注意力を基準として、総合的に判断されるべきものである(知的財産高等裁判所平成24年12月26日判決・平成24年(行ケ)第10187号)。 以下、上記の観点を踏まえて検討する。 2 引用商標の周知著名性及び独創性の程度について 請求人は、引用商標「おくりびと」が、請求人により使用された結果、これが請求人の業務に係る役務「葬儀の執行,葬儀の執行に関する相談」等の出所を表示するものとして周知・著名になっている旨主張するので、以下検討する。 なお、請求人は被請求人が、使用商標を引用商標と誤認混同を生じ得る態様で使用し続けている旨主張し、その根拠として提出した証拠(甲2、甲3)のうち、最も古い使用は2022(令和4)年12月27日(甲2)時点(以下「使用商標使用時点」という。)であるから、当該時点について判断する。 (1)請求人が提出してきた証拠によれば、以下の事実が認められる。 ア 請求人は、請求人が提供する役務に関して検索結果で上位にヒットするとして、「おくりびと」のGoogle検索結果(甲5)を提出しているが、「おくりびとアカデミー「おくりびと」とは 納棺士(納棺師)の学校」、「【おくりびと(R)のお葬式】初めての方へ」の記載があることはうかがえるものの、請求人の会社名が表示されている表題は1件のみである。 イ NHKの番組紹介ページ(甲6)では、2019年5月28日の番組で、映画「おくりびと」で父と共に技術指導をした納棺師「木村光希」と紹介されているが、引用商標及び請求人の会社名は表示されていない。 ウ 札幌テレビの番組紹介ページ(甲7)では、2017年8月9日の番組で「おくりびと(R)のお葬式」及び「代表取締役の木村光希」氏が紹介されているが、請求人の会社名は表示されておらず、請求人が「葬儀場」を運営していることも確認できない。 (2)検討 上記(1)によれば、アについては、「【おくりびと(R)のお葬式】」の表示は1件のみであり、検索結果で上位に表示されることは、費用をかけて広告として上位に表示するためのサービスなどがあることからすれば、上位でヒットすることのみをもって、引用商標が請求人の業務に係る役務を表示するものとして、その需要者に広く知られていると認めることはできない。また、イ及びウは、請求人及び引用商標の表示はないため、引用商標を使用して、請求人が当該役務を提供していることは確認できない。なお、請求人が主張するように「葬儀の執行や葬儀の執行に関する相談」を請求人の関係会社を通して提供するサービスであるとしても、引用商標が請求人又は関係会社に係る役務を表示するものとして広く認識されていたことは認められない。 また、上記(1)及び請求人の全主張を総合しても、請求人による引用商標の使用開始時期及び使用期間、請求人の役務(葬儀の執行、葬儀の執行に関する相談等)に関する提供数、提供地域及び市場シェアなどの実績は不明である上に、メディア等における請求人の役務に関する広告宣伝の実績についても明らかではなく、使用商標使用時点において、引用商標が、我が国の需要者の間で、請求人の業務に係る役務を表示するものとして広く認識されていたと認めるに足りる事実は見いだせない。 (3)引用商標の独創性 引用商標の「おくりびと」の文字は、「【送り人】見送りの人。」(「広辞苑」株式会社岩波書店)を意味する既成語であるから、独創性の程度が高いということはできない。さらに、請求人が関わったとする映画「おくりびと」のタイトルでもあることから、直ちに請求人を想起させる文字とはいえない。 3 本件商標と使用商標について (1)本件商標について 本件商標は、上記第1のとおり、「夢のおくりびと」の文字を標準文字で表してなるものであり、その構成文字から、「ユメノオクリビト」の称呼が生じ、当該文字は一般的な辞書に掲載されているものではないから、特定の意味合いは生じない。 (2)使用商標について 使用商標は、被請求人のウェブサイトでの使用(甲2、甲3)のとおり、「夢」の文字をピンクがかった赤色で、「のおくりびと」の文字を黒色で表し、色彩を異にしているとしても、同じ筆文字風の書体で、同大、同間隔に一連に横書きで表記されたものであり、全体として一つのまとまりある標章として認識されるから、その構成文字から、「ユメノオクリビト」の称呼が生じ、当該文字は一般的な辞書に掲載されているものではないから、特定の意味合いは生じない。 (3)使用商標の使用に係る役務について 被請求人のウェブサイト(甲2、甲3)によれば、「家族葬・自然葬ご相談承ります」と記載されていることから、使用商標を「葬儀の相談」について使用していることが認められる。 (4)本件商標と使用商標との類否 本件商標と使用商標とは、外観上、文字が筆文字風のデザインで表されていること及び一部文字に色彩の差異があるものの、「夢のおくりびと」の構成文字の全てを共通にし、それぞれの構成文字から生じる「ユメノオクリビト」の称呼が同一であるから、両者は、観念は比較できないとしても、外観が類似し、称呼を同一にする類似の商標である。 (5)以上によれば、被請求人は、使用商標使用時点において本件商標の指定役務又はこれに類似する役務について、本件商標に類似する使用商標の使用をしていたものと認めることができる。 なお、被請求人は、使用商標が、商標法第70条第3項の規定に基づき、同法第51条の審判の対象外である旨主張しているが、本件商標は標準文字で表されているところ、使用商標は、筆文字風の書体で表されており、色彩のみではなく書体も相違するものである。そして商標法第70条第3項の規定は、「登録商標に類似する商標であって、色彩を登録商標と同一にするものとすれば登録商標と同一の商標であると認められるもの」を含まない、とするものであって、使用商標は、色彩を登録商標と同一にしても登録商標と同一の商標であるとは認められないから、使用商標が、商標法第70条第3項の規定に基づき、商標法第51条の審判の対象外ということはできない。 4 使用商標と引用商標の類似性の程度について (1)使用商標 ア 使用商標は、上記3(2)のとおり、「夢」の文字をピンクがかった赤色で、「のおくりびと」の文字を黒色で色彩を異にしているとしても、全体として一つのまとまりある標章として認識され、その構成文字から、「ユメノオクリビト」の称呼が生じ、当該文字は一般的な辞書に掲載されているものではないから、特定の意味合いは生じない。 イ これに対し請求人は、使用商標が「夢」と「おくりびと」の色彩が異なる外観で表されているので、使用商標に接する需要者は「おくりびと」の部分から、引用商標を連想し、想起して、請求人である引用商標の商標権者と経済的又は組織的に何らかの関係にある者の業務に係る役務であるかの如く誤認し、その出所について混同する旨主張する。 しかしながら、上記2(2)のとおり、引用商標の周知著名性は認められないことに照らせば、「おくりびと」の文字部分が取引者、需要者に対し、役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものとは認められない。また、色彩が異なる外観で表されているのは、「夢」の文字と「のおくりびと」の文字であることからすれば、ここからさらに「の」文字を捨象して「おくりびと」の文字部分を抽出する理由は見いだせない。 したがって、使用商標から「おくりびと」の文字部分を要部として抽出することはできないから、請求人の上記主張は、採用できない。 (2)引用商標 引用商標は、上記第2の1(3)のとおり、「おくりびと」の文字を標準文字で表してなるものであり、当該構成文字から「オクリビト」の称呼が生じ、「おくりびと」の文字は、「【送り人】見送りの人。」(「広辞苑」株式会社岩波書店)の意味を有する語であるから、「見送りの人」の観念を生じるものである。 (3)使用商標と引用商標との類否 使用商標と引用商標を対比すると、使用商標は筆文字風の書体で「夢」(ピンクがかった赤字)「のおくりびと」(黒字)で「夢のおくりびと」との文字から構成されるのに対し、引用商標は「おくりびと」の文字から構成されるものであるから、書体、色彩及び「夢の」の文字の有無という顕著な差異があり、両者は外観において相紛れるおそれはなく判然と区別することができるものである。 また、使用商標からは「ユメノオクリビト」の称呼が生ずるのに対し、引用商標からは、「オクリビト」の称呼が生じ、「ユメノ」の音の有無という構成音において著しい差異を有するから、両者は称呼において相紛れるおそれはなく明瞭に聴別することができる。 そして、使用商標は特定の観念は生じないのに対し、引用商標からは、「見送りの人」の観念を生じるものであるから、両者は観念においても相紛れるおそれがないこと明らかである。 そうすると、使用商標と引用商標は、外観及び称呼が異なり、観念においても相違することから、いずれの点においても類似の商標ではなく相紛れるおそれのない非類似の商標である。 5 出所の混同のおそれの有無について 上記4(3)のとおり、使用商標は、引用商標と類似の商標とは認められず、別異の出所を示すものとして看取されるものである。また、引用商標は、上記2(2)のとおり、使用商標使用時点において、請求人の業務に係る役務を表示する商標として、需要者の間で広く認識されるに至っていたと認めることはできない。さらに、上記2(3)のとおり、引用商標の独創性の程度は高いということもできない。 したがって、使用商標は、被請求人がこれを本件商標の指定役務のうち「葬儀の相談」の役務に使用しても、需要者をして請求人の業務に係る役務であると誤認を生じさせるおそれはなく、請求人の業務に係る役務と混同を生じるものをしたとはいえない。 6 故意について 請求人は、被請求人が引用商標の存在を知り、かつ引用商標が映画「おくりびと」と同じくらいGoogle検索で上位にヒットするほど世の中に広く知られていることを知りながら、本件商標の登録後も、引用商標と誤認混同を生じ得る態様で本件商標と類似する使用商標を使用し続けているから、当該行為は、故意に他人の業務に係る役務と混同を生ずるものをした行為に該当する旨主張する。 しかしながら、引用商標が、請求人の業務に係る役務を表示するものとして、需要者の間で広く認識されるに至っていたと認めることはできないこと、引用商標と誤認混同を生じ得る態様で使用商標を使用しているとは認められないことは、上記2(2)及び4のとおりであるから、被請求人による使用商標の使用について、商標法第51条第1項所定の「故意」を認めることはできない。 7 むすび 以上のとおり、被請求人である本件商標権者による本件商標の指定役務又はこれに類似する役務について、本件商標に類似する商標(使用商標)の使用は、故意に他人である請求人の業務に係る役務と混同を生じるものをしたとはいうことができないから、商標法第51条第1項の要件に該当しないものである。 したがって、本件商標の登録は、商標法第51条第1項により取り消すことはできない。 よって、結論のとおり審決する。

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2023-300382

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