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商標取消審判

2022-300709

エイトトーキョー

審判番号
2022-300709
法域
商標
審判種別
取消審判(商標取消の審決)
出願番号
商願2017-131493
登録番号
6063753
請求日
2022年08月02日
審決日
2023年11月14日
公報発行日
2024年01月26日
結論
請求不成立
当事者
  • 【請求人】ワンホワイト 株式会社
  • 【請求人代理人】古岩 信嗣
  • 【被請求人】株式会社 エイト
  • 【被請求人代理人】野原 俊介
  • 【被請求人代理人】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
審判長/審判官
  • 審判長 旦 克昌
  • 審判官 馬場 秀敏
  • 審判官 小林 裕子
分類
T131 .3 -Y (W09)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
商標法51条1項
条文(本文から自動抽出・参考)
商標法第51条第1項、商標法第4条第1項第11号
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

上記当事者間の登録第6063753号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。

結論

結 論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。

理由

理 由 第1 本件商標 本件登録第6063753号商標(以下「本件商標」という。)は、「eight tokyo」の文字を標準文字で表してなり、平成29年10月3日に登録出願、第9類「サングラス,サングラスの部品及び附属品,サングラスケース,眼鏡,眼鏡の部品及び附属品,眼鏡ケース」を指定商品として、同30年6月27日に登録査定、同年7月20日に設定登録されたものである。 第2 請求人の主張 請求人は、商標法第51条第1項の規定により、本件商標の登録を取り消す、審判費用は、被請求人の負担とする、との審決を求め、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第45号証を提出した。 1 本件商標は、被請求人(商標権者)が、故意に、指定商品についての本件商標に類似する商標の使用であって他人の業務に係る商品と混同を生ずるものをしたことから、その登録は取り消されるべきものである。 2 取消原因 (1)被請求人による指定商品についての登録商標に類似する商標の使用について 本件商標は、「eight tokyo」の文字を標準文字にて表してなる(甲1)。本件商標を構成する「eight」の文字は、数字の「8」を表す英語であり、「tokyo」の文字は、我が国の首都である「東京」を欧文字表記したものである。したがって、本件商標は、「8と東京」の観念を生じ、「エイトトーキョー」の称呼を生じる。 被請求人は、別掲1のとおり、本件商標に類似する商標(色彩が異なるものを含む。以下「本件使用商標」という。)として、数字の「8」及び該「8」の内部に欧文字の線の細い筆記体で横書きされた「Tokyo」の文字から構成される商標を、商品「サングラス,サングラスの部品及び附属品,サングラスケース,眼鏡,眼鏡の部品及び附属品,眼鏡ケース」に使用している(甲2、甲3)。 本件使用商標は、数字の「8」及び「Tokyo」の文字から構成されるものであるから本件商標とは外観を異にするものの、本件商標と同様に、「8と東京」の観念を生じ、「エイトトーキョー」の称呼を生じる。 すなわち、本件商標と本件使用商標は、観念及び称呼を共通にする相互に類似の商標であって、被請求人の本件商標の使用は、商標権者が指定商品についての登録商標に類似する商標の使用に該当する。 (2)本件使用商標の使用による商品の出所の混同について 商標登録第6092266号「8(eight)」(指定商品:第9類 サングラス,眼鏡,サングラスの部品及び附属品,眼鏡の部品及び附属品)(別掲2。以下「請求人商標」という。)は、請求人の所有に係る登録商標である(甲4)。請求人商標は、数字の「8」及びそれを表す英語の「eight」の文字よりなり、「8」又は「8と8」の観念を生じ、「ハチ」、「エイト」又は「ハチエイト」等の称呼を生じるもので、これに接する取引者、需要者に対して、「8」を強調した商標との印象を与えるものである。 請求人は、請求人商標を商品「サングラス,眼鏡,サングラスの部品及び附属品,眼鏡の部品及び附属品」に使用している(甲5)。 本件使用商標は、数字の「8」が殊更に大きく強調して表示される一方、「Tokyo」の文字は、細い線の筆記体で「8」の内部に小さく表示されていることから極めて視認しづらい態様となっている。そのため、本件使用商標に接する取引者、需要者は、請求人商標と同様に数字の「8」を強調した商標との印象を受ける。したがって、被請求人による本件使用商標の使用は、取引者、需要者に対し、請求人の販売に係る商品との出所の混同を生じさせるおそれが十分にある。 より具体的には、本件使用商標の使用に係る商品は、EC(ネットショップ)のみで販売されている(甲6)ことから、取引者、需要者は、コンピュータ等のディスプレイを通じて本件使用商標に接することになる。元々、本件使用商標を構成する「Tokyo」の文字が小さく表示されている上、これをコンピュータディスプレイに表示した場合、本件使用商標の外観は、実質的に数字の「8」と認識されるものである。また、外観がそのように認識されることから、本件使用商標は、実質的に「8」の観念を生じ、「ハチ」又は「エイト」の称呼を生ずる。 すなわち、本件商標は「ハチ」の称呼を生じないにも関わらず、本件使用商標は「ハチ」の称呼を生じる数字の「8」を殊更に強調している。本件使用商標においては、「Tokyo」のローマ字は数字に比べて非常に小さな文字で表示していることから、「8」の数字として需要者に認識され、コンピュータディスプレイを通じて視認した場合、小さなローマ字が「Tokyo」とは識別できない。 そして、請求人商標は、数字の「8」と「eight」のローマ字を組み合わせたものである。本件使用商標は、大きな「8」と小さなローマ字5文字で、両方とも「8」とローマ字5文字の組合せだから、取引者、需要者は、本件使用商標のローマ字5文字を「eight」と誤認し、両商標の間で混同が生じるおそれがある。 したがって、本件使用商標と請求人商標の外観、観念及び称呼は、本件使用商標の使用態様に照らせば、実質的に同一又は類似するものであって、両者は相互に類似する商標である。 請求人は、請求人商標を2002年頃から使用を開始し、現在まで使用を継続している。この請求人商標を使用したサングラス及び眼鏡の販売は(甲7)、2011年から2017年まで毎年1万個以上の実績がある。具体的には、2011年ないし2013年は次第に増加し、その後2014年ないし2017年も横ばいで継続している。なお、2018年以降の販売数量は急減し、現在も1万個より少ない販売状況が継続している。 ここで、本件商標は、2018年7月20日に登録されているところ、この登録のタイミングは、請求人のサングラス等の販売数量が急減した時期と一致する。このため、販売数量の急減は、本件商標の登録に伴う被請求人による本件使用商標の使用の開始が少なくとも影響していると認められる。 また、請求人商標は、本件商標が登録される前の2017年以前に、指定商品についての取引者、需要者において周知となっていた。請求人は、ファッションブランドとして請求人商標をファッション雑誌の「smart」や「Samurai ELO」に掲載し、特に、2015年から2017年にかけて、多数の商品が雑誌に掲載され、また広告も出している。(甲8~甲33)。 上記の各雑誌は、若い男性層を対象としたものであり、請求人商標を請求人が使用し続けた結果、その層には、請求人商標は、2017年以前に周知となっていた。そして、ファッション関連の商品を取り扱う会社は、商品に関連する業界の情報や流行に関する情報に敏感であるから、被請求人の担当者は、被服やサングラスを含むファッション関連の商品に使用される請求人商標が若い男性層に周知であることを知っていたものと推認できる。そうすると、被請求人の担当者は、本件使用商標を被請求人の販売するサングラスや眼鏡に使用すれば、その商品が請求人又は請求人と経済的若しくは組織的に何らかの関係がある者の業務に係る商品ではないかと、その出所について誤認混同されるおそれがあることを認識していたと認められる。 また、本件使用商標の使用に係る眼鏡ケースと請求人商標の使用に係る眼鏡ケースを比較する(甲34)と、両商標の向き及び表示場所は異なるものの、数字の「8」が大きく強調して表示される一方、「Tokyo」の文字が判読しづらい本件使用商標と、「8」が強調された請求人商標がそれぞれ付された商品について、取引者、需要者は、両商品が請求人又は請求人と何らかの関連を有する事業者グループに属する者の販売に係る商品であると誤認する蓋然性が極めて高い。 さらに、請求人は、1月に1回程度の頻度で、需要者より、被請求人の商品に関する問合せ、返品、クレーム等の電話を受けている。また、請求人による請求人顧客に対するアンケート調査では、被請求人商品を請求人商品と間違えて買ったことがある、買ってしまったことが何回かある、間違えて買いそうになったことがあるとの回答があった(甲35~甲39)。このことからも実際に、被請求人の販売に係る商品が請求人の販売に係る商品であるとの混同が生じていることは明らかである。 また、上記アンケート調査では、本件使用商標と請求人商標が似ているとの回答が多数あった(甲37、甲40、甲41)。 (3)商品の出所の混同に関する被請求人の故意について 被請求人及び請求人は、いずれもサングラス及び眼鏡並びにこれらの部品及び附属品等を販売する、いわゆる同業者であり、しかも、両者ともにAmazon社のショッピングサイトに当該商品を出品していること等から、被請求人は請求人商標の情報を得ていたはずであって、被請求人が、請求人商標と同様、数字の「8」を強調した本件使用商標を本件商標の指定商品に使用するにあたり、その使用の結果、請求人の業務に係る商品と混同を生じさせることを認識していたことが容易に推認される。 したがって、被請求人による本件使用商標の使用は、故意に他人の業務に係る商品と混同を生ずるものをしたものに該当する。 (4)むすび 以上のとおり、本件商標登録は、商標法第51第1項の規定により取り消されるべきである。 3 答弁に対する弁駁 (1)本件商標と本件使用商標の類似性 答弁書において、被請求人は、本件商標と本件使用商標は非類似であると主張しているが、当該主張は、特に、商標法第51条第1項所定の「類似」概念についての解釈の誤りに基づくものであり、両者が類似することは明らかである。 ア 外観 本件商標と本件使用商標の外観が非類似であることは、請求人も認めるところであるが、少なくともいずれか一方の商標が極めて特徴的な外観的特徴を有しているならば、両商標の外観が「著しく異なる」とか「顕著に異なる」といった非類似性が認められることもあり得るが、本件商標及び本件使用商標はいずれもありふれた書体で、平易な文字及び数字で構成されるものにすぎず、両者の外観は単に「非類似」であるにすぎない。 イ 観念 被請求人は、本件商標及び本件使用商標について、造語であるから観念は比較不能と主張するが、本件商標と本件使用商標は、全く同じ意味を有する文字及び数字から構成されるものであるから、観念が共通するのは当然であり、その観念は、両商標の構成より「8と東京」とみるのが自然である。 ウ 称呼 本件商標の称呼と本件使用商標の称呼が共通することについては、被請求人も認めている。 エ 取引の実情と最高裁判所判決 被請求人は、「商標法第51条第1項にいう類否判断の基準は商標法第4条第1項第11号の類否判断基準と考えられる」と主張し、最高裁判所判決を引用しているが、当該判決は、商標の類否について、商品・役務の出所の混同のおそれの有無を前提にしているところ、商標法第51条第1項所定の「類似」は、同一人商標間の類似の問題であり、商品・役務の出所の混同は観念できないことから、当該判決の射程外であることは明らかである。 したがって、被請求人の主張は失当であり、本件商標と本件使用商標は、外観が非類似、観念及び称呼が同一の相互に類似の商標である。 (2)請求人商標への近寄せ 被請求人は、「本件使用商標を2015年から使用しているから、被請求人が、2018年に出願された請求人商標の構成態様に近似させたものではない」と主張しているが、請求人は、請求人商標を2002年頃より使用している(甲7)から、2015年には、既に請求人が請求人商標の使用を開始して10年以上が経過している。そして、同業者として、被請求人が請求人商標の存在を知っていたことは容易に推認でき、被請求人が、本件商標を請求人商標に近付けて本件使用商標の使用を開始したことは明らかである。 さらに、答弁書によれば、被請求人は、2015年当初は「名刺、眼鏡ケース及びケース等付属品」といった限られた媒体のみに本件使用商標を使用していたのに、現在では、請求人と競合するAmazonのような不特定多数の者が閲覧可能なウェブサイト(甲2)にまで、その使用の範囲を拡大していることからして、被請求人が、請求人商標の顧客吸引力にフリーライドする意図を有するは明らかである。 また、被請求人は、「本件使用商標の態様を変更していないから、商品の出所の混同を生じさせる意図はない」とも主張し、商標法第51条第1項所定の故意も否定しているが、そもそも、本件商標から本件使用商標への態様の変更が請求人商標に近付ける行為であり、また、本件使用商標の使用の範囲を拡大していることから商品の出所の混同を生じさせる意図及び故意の存在は明らかであるところ、本件使用商標の態様の変更の有無は関係がない。 被請求人において商品の出所について混同を生じさせる意図がないなら、本件商標をそのまま使用するであろうし、仮に本件商標の使用態様を変更するにしても、通常は、請求人商標から遠ざかるように変更を加えるはずであるが、あえて「eight」の文字を請求人商標と共通する数字の「8」に変更し、これを顕著に大きく表示した上、「Tokyo」の文字を小さく表示することで請求人商標に近付けたことは、被請求人において、請求人商標との間で商品の出所の混同を生じさせ、請求人商標の顧客吸引力ヘの便乗を意図したものとみるより他はない。 (3)請求人商標と本件使用商標の類否 答弁書において、被請求人は、請求人商標と本件使用商標は非類似であると主張しているが、両者が類似するものであることは明らかである。 なお、被請求人は、本件使用商標を構成する「8」が文字であると述べておきながら、一方で、「本件使用商標は・・・数字の「8」をモチーフにした図形」、「本件使用商標は、上記のとおりあくまで「8」様図形」である等と主張した上で、「両商標を比較するに、本件使用商標は図形であるのに対し、請求人商標は数字及び文字の組み合わせであるから、外観は明らかに異なる」と述べ、その主張には一貫性がない。 (4)請求人商標の周知性 被請求人は、2017年のアイウェア業界全体の小売市場規模に対する請求人売上額をもって、請求人商標の周知性を否定している。しかし、アイウェア業界全体の小売市場規模は、年間売上高100億円を超す一部の大手事業者(甲42~甲45)によって押し上げられているのであって、前記売上規模から請求人商標の周知性が否定されるものではない。 (5)請求人商品と被請求人商品の関連性 被請求人は、請求人商品と被請求人商品とは関連性がないと主張するが、まず価格面でみれば、いずれもいわゆる低価格帯の眼鏡、サングラスの範疇に入り、関連性がある。また、商品の機能、品質は、それを提供する事業者や商品毎に異なるのは当然であって、商品の関連性に影響を与えるものではない。なお、被請求人は、Amazon限定ブランドプログラムや売れ筋ランキングに言及しているが、請求人商品と被請求人商品の関連性とは無関係である。 (6)請求人商品と被請求人商品の需要者等の共通性 被請求人は、請求人商品と被請求人商品の需要者層が異なると主張しているが、被請求人が提出した証拠(乙33)を参照しても、例えば、40代女性を始め、両者の需要者層は共通する。 (7)請求人眼鏡と被請求人眼鏡の区別 被請求人は、「請求人の眼鏡やサングラスには、耳にかけるサイドフレームに「8(eight)」が付されているのに対し、被請求人の眼鏡やサングラスには本件使用商標は付されていない」ことを根拠の一つとして、請求人眼鏡と被請求人眼鏡は区別できると主張している。しかし、被請求人商品に商品の出所識別標識が付されていないのであれば、請求人商品やその他の商品と区別できるはずがないし、需要者において請求人商品に必ず請求人商標が付されていると認識しているはずもないから、当該主張は失当である。 また、被請求人は、「請求人と被請求人の主たる商品は価格帯や機能等が異なるから、需要者は、相応の注意を払ってこれらの差異や出所を確認する。」旨主張している。しかし、被請求人の主たる商品である眼鏡やサングラスには出所識別標識が付されていないから、需要者が相応の注意を払ったところで、商品の出所を区別することはできないはずである。 さらに、一般に、商品の価格帯や機能により商品の出所を識別できないことは自明であるし、被請求人の商品の価格帯や機能等が顕著に異質である等の特段の事情も認められないのであるから、当該主張も失当である。 なお、サングラスや眼鏡の購入者は、数千円程度の商品であれば、さほど高度の注意力をもって取引に臨むものではない。Amazon等でさえも、返品時に被請求人の商品と請求人の商品を勘違いするのであるから、購入者が混同するのは当然である。 (8)総括 以上のとおり、答弁書における被請求人の主張及び証拠をもってしても、被請求人の行為は、商標法第51条第1項所定の要件に該当する。 第3 被請求人の答弁 被請求人は、結論同旨の審決を求めると答弁し、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第34号証を提出した。 1 本件使用商標が本件商標に類似する商標の使用ではないこと (1)外観の相違 外観の相違は、請求人も請求書において認めている。 (2)称呼の相違 本件使用商標は、大きく太く表示された数字の「8」様図形の下側円を構成する線の内部に筆記体で表された「Tokyo」の文字を含んだ構成となっている。数字は原則として識別力を発揮しない。また、「Tokyo」の文字も「東京」をローマ字で示したものを認識でき、特段識別力を発揮するような態様で表されていないから、単独では識別力を発揮しない。 そして、本件使用商標は「8」様図形と下側円を構成する線の内部に筆記体で表された「Tokyo」の文字の結合商標と考えられるところ、「Tokyo」の文字は「8」様図形と下側円を構成する線の内部を切り抜く形で記載されており、外観上の結びつきは強い。また、上記のとおり「8」と「Tokyo」の文字はいずれも識別力が低く、一方を捨象して需要者が認識するとは考え難い。さらに、本件使用商標からは、「ハチトーキョー」、「トーキョーハチ」、「エイトトーキョー」、さらに「トーキョーエイト」など複数の称呼が生じる余地があるところ、最長でも7音と冗長ではなく一息に称呼できる。 以上より、本件使用商標のうち「Tokyo」の文字部分は「8」様図形から分離して観察することが取引上不自然であると思われるほど強く結合しているものといえるから、本件使用商標から生じる称呼はその構成全体から生じるものであり、上記のように複数の称呼が生じるというべきである。 一方、本件商標もその構成文字たる「eight」と「tokyo」の結合商標であるところ、いずれも識別力が低い語であり需要者が一方を捨象するとは考え難いこと、いずれも小文字のアルファベットでスペースを介するものの外観上まとまりよく一体性が高いこと、「エイトトーキョー」の称呼も冗長ではなく一息に称呼できることから、当該称呼のみが生じる。 以上より、両称呼を比較した場合、「エイトトーキョー」においては共通するが、他は共通しない。 (3)観念の相違 本件使用商標から生じ得る観念については、その構成全体から生じるものと認定すべきである。 一方、本件商標についても数字の「8」を表す「eight」の語と産地表示と認識し得る「tokyo」の語はいずれも識別力が低いため、一連一体のものとして観念が生じると考えるべきである。そして同語自体は造語であり、請求人が主張する「8と東京」のほか、「8番目の東京」「8つの東京」などの観念が生じ得るとしてもどれか特定の観念が生じるものではないというべきである。このことは本件使用商標についても同様と考えられる。 以上より、本件使用商標と本件商標とはいずれも特定の観念を生じない造語というべきであるから、観念を比較することができない。 (4)取引の実情 被請求人の商品はオンラインショップで販売されており、商品やその出所を、聴覚を通じて把握することは稀であり、称呼の共通性は類否判断の考慮要素として弱く、観念と特に外観の相違が重視されるべきである。 (5)類否判断 商標法第51条第1項にいう類否判断の基準は商標法第4条第1項第11号の類否判断基準と考えられるところ、昭和39年(行ツ)第110号判決(乙1)を本件使用商標と本件商標についてみると、称呼の一部が共通する場合があるとしても、取引の実情に鑑みると考慮要素としては弱い。さらに観念は比較できず、外観は明らかに相違するから、非類似の商標である。 なお、請求人は、本件使用商標から「Tokyo」の文字が視認できないと主張するが、そうであれば、本件使用商標は「8」の文字のみで認識され、本件商標と非類似であることは明白であろう。 (6)請求人商標の構成態様に近似させたものでないこと 本件使用商標を、被請求人が設立当初(2015年)から名刺、眼鏡ケース及びケース等付属品に付して使用している(乙2~乙6)ことから、2018年に出願された請求人商標の構成態様に近似させたものではない。 (7)小括 以上より、両商標は非類似の商標であり、かつ、本件使用商標は、請求人商標の構成に近似するよう変更を加えたものではないから、商標法第51条第1項の「登録商標に類似する商標の使用」に該当しない。 2 商標法第51条第1項所定の「混同を生ずるもの」がないこと 仮に本件商標と本件使用商標が類似するとしても、商標法第51条第1項に該当するための他の要件として「混同を生ずるもの」である必要がある。 以下、検討する。 (1)請求人商標と本件使用商標との類似性の程度 ア 非類似であること 本件使用商標は、数字の「8」をモチーフにした図形であって、全体の外観上の印象をもって取引に資されるものである。 一方、請求人商標は数字の「8」の隣に小括弧を配し、括弧内部に数字の「8」を意味する平易な英単語の「eight」の文字から構成される。 両商標を比較するに、本件使用商標は図形であるのに対し、請求人商標は数字及び文字の組み合わせであるから、外観は明らかに異なる。 次に、請求人商標から生ずる称呼はその構成全体から「エイトエイト」や「ハチエイト」の他、括弧内の「eight」は数字「8」の読みを表したものとして「エイト」のみの称呼も生じると考えられる。これに対し、本件使用商標からは「ハチトーキョー」など複数の称呼が考えられるものの、いずれも請求人商標から生じる称呼とは明らかに異なる。 さらに、請求人商標からは数字の「8」の観念が生じるところ、本件使用商標からは特定の観念は生じないとしても、あえて言えば「Tokyo」の文字部分に相応する観念も併せて生じるため、観念上紛れる可能性もない。 したがって、請求人商標と本件使用商標は、非類似の商標である。 イ 請求人の主張に対する反論 請求人は、被請求人が数字の「8」を殊更に強調していると主張するが、本件使用商標が数字の「8」として取引者・需要者に認識されるのであれば、もはやそれは商標としての識別力が存しない標章というべきである。本件使用商標は、上記のとおりあくまで「8」様図形と「Tokyo」の文字の結合商標である。 ウ 小括 以上より、請求人商標と本件使用商標は非類似である。 (2)請求人商標の周知著名性及び独創性の程度 ア 請求人商標の周知性 (ア)2017年のアイウェア業界全体の小売市場規模は5,023億円であるところ(乙9)、同年における請求人の売上額は約2,550万円であり(甲7)、これは小売市場規模全体のわずか0.00005%程度にすぎない。2016年も同程度である(乙9、甲7)。 (イ)雑誌以外の宣伝広告媒体及びその費用等について具体的な証拠は提出されていない。 (ウ)雑誌は「smart」と「Samurai ELO」(甲8~甲33)の2タイトルのみで、各誌の発行部数も不明である。 (エ)請求人商標の指定商品としては、サングラスが一度掲載されただけで(甲30)、他は指定商品と無関係な被服のみであり、「請求人商標の指定商品の主たる需要者層」が若い男性層であるという事実、及びこれらの男性層に広く知られていたという事実は示されていない。 (オ)このように、請求人商標が、被服はもちろんのこと指定商品についても、請求人の出所を表示するものとして周知であったことは証明されていない。 イ 請求人商標の独創性 請求人商標の構成は、数字の「8」の右隣に小括弧をして、小括弧内部に数字の8を意味する平易な英単語「eight」を記載するものである。既存の数字とその数字を表す平易な英単語との組合せであり、小括弧は括弧内で直前の文字の読み方や内容を表すという使用方法が普通になされていることからすれば、請求人商標の独創性は低い。他の「8」「eight/EIGHT/Eight」をモチーフとした登録商標(乙10)と比較した場合も、請求人商標につき特段独創性が高いとまではいえない。 ウ 小括 請求人商標の周知性は証明されず、独創性も低い。 (3)商標権者が使用する商品等と当該他人の業務に係る商品等との間の性質、用途又は目的における関連性の程度 ア 本件使用商標の使用と請求人の商品販売数量との間に因果関係がない 請求人は、2018年から請求人のサングラス等の販売数量が急減した原因が本件使用商標の使用にあると主張する。しかし、被請求人が本件使用商標を使用し始めたのは2015年であるから、2013年から2014年の急減を説明できない(甲7)。そうである以上、2018年の急減も同様に無関係である。また、2015年から2017年までは微増傾向にあるが、これは本件使用商標の使用と何ら影響がないことを裏付けるものである。 したがって、販売数量と本件使用商標の使用との間に因果関係はない。 イ 関連性 被請求人が使用する商品はサングラス、眼鏡、これらの付属品であり、請求人の商品と共通するが、以下の点で大きく異なる。 (ア)被請求人の商品の平均価格帯は、約3,000円から5,000円であるのに対し、請求人のそれは約2,000円である(乙11~乙14)。 (イ)被請求人の商品価格が高いのは、紫外線カットやブルーライトカットといった機能や品質を備えているからである(乙12、乙15~乙18)。これに対し、価格が低すぎるものはこのような機能を備えていないものも存在し(乙16)、請求人の商品にはこのような機能や品質を備えていることが示されていない(乙11、乙13、乙14)。 (ウ)被請求人は、Amazon限定ブランドプログラムに参加しており、同プログラムの商品には「Amazon限定ブランド」と表示され、価格帯も上がる(乙20、乙13)。限定商品の出品数、売上額等は増加傾向にある(乙19)。被請求人の限定商品には、ブルーライトカット機能を有する商品や偏光レンズを使用する商品がある(乙20~乙22)。請求人はこのようなプログラムに参加していないため限定商品は存在しない。 (エ)Amazonの売れ筋ランキングでは、被請求人のサングラスはメンズで5つ、レディースで7つが上位100位に入っており、楽天市場のランキングでも被請求人の商品が51位にランキングされている一方、請求人の商品はゼロである(乙23~乙27)。 (オ)仕入先についてみると、被請求人は、7社からフレームやレンズを仕入れているのに対し、請求人は、被請求人との取引がない1社のみであり(乙28~乙32)、生産場所や流通経路が異なる。 現代社会において、眼鏡やサングラスは、疲れ目の予防や目周りの皮膚の保護といった用途・機能にも着目されている。このような機能等を果たすためには、相応のコストが販売価格に反映される。売れ筋ランキングは、価格が多少高くなるとしても、なおこのような用途・機能等を有する品質が重視されていることを示している。そうすると、品質面に大きな相違がある以上、請求人の商品と被請求人の商品との関連性の程度は低いといえる。 なお、眼鏡やサングラスと、請求人の販売する被服とは目的や用途が異なるから、両者の関連性はない。 (4)商品等の取引者及び需要者の共通性その他取引の実情 ア 取引者及び需要者が相違すること 上記のとおり、生産場所や流通経路は異なるため、取引者は異なる。 請求人の商品を購入する主たる需要者は、楽天市場の口コミを見る限り、20代から40代の男性及び30代から40代の女性であって、低価格帯で設定されているのに対し、被請求人の主たる需要者は50代以上の男性及び40代以上の女性であって、価格帯も請求人のそれに比べ高めに設定されている(乙33)。年齢、性別の相違に加え、平均価格帯が異なるということは、価格よりも機能性や品質を重視する購入者層とそうでない購入者層が存在することを意味する。したがって、需要者は相当範囲にわたって異なる。 なお、請求人は主たる需要者層は若い男性層と主張するが、そうであれば、被請求人の主たる需要者と大きく異なることになる。 イ 請求人の眼鏡と被請求人の眼鏡は区別できること(取引の実情) 請求人の眼鏡やサングラスには、耳にかけるサイドフレームに「8(eight)」が付されているのに対し(甲5)、被請求人の眼鏡やサングラスには本件使用商標は付されておらず、ウェブサイト上で使用されているにすぎない(甲2)。そして、ウェブサイト上では、本件使用商標の真横に小さな文字で「eighttokyo(エイトトウキョウ)」、右上には大きな文字で「eight tokyo」「エイトトウキョウ公式サイト」の文字が付されているのだから、請求人のものと誤認することはあり得ない。 サングラスや眼鏡は、その性質上、全体的な形状は同じにならざるを得ない。似た形状が多数存在することは、購入者が出所、商品の機能、価格等を確認しなければ区別できないことを意味するから、購入時には相応の注意を払うものである。そして、楽天市場やAmazonのサイトでは、被請求人の商品欄には「eighttokyo」と表示され、請求人の商品欄に「8(eight)」と表示されていることも踏まえれば(乙11~乙15)、購入者は区別できる状態にある。特にAmazonの限定ブランドプログラムの商品は、その表示から(乙20、乙13)請求人の商品と区別が可能である。 また、請求人は付属品を比較するが(甲34)、付属品に付された商標に着目して、主たる商品を購入することはあり得ない。 両者の商品は価格帯や機能等が異なり、商品欄には出所や機能等が表示されているのであるから(甲3)、需要者が誤認することはない。 売れ筋ランキングに請求人の商品がないことは(乙23~乙27)、周知性が低いことを示している。 ウ アンケート調査結果について 請求人は、アンケート調査結果として7通(甲35~甲41)を提出しているが、以下の点で公平性が担保されておらず、考慮されるべきではない。 (ア)アンケートを行った全期間及びアンケート総数が開示されていない。 (イ)少なくとも1ヶ月間はアンケート調査が実施されていたようであるにもかかわらず、提出された証拠はわずか7通である。 (ウ)アンケートでは、本件商標及び本件使用商標を、あたかも請求人商標と類似するかのように表記し、回答者を誘導している。 エ 小括 以上からすれば、商品等の取引者及び需要者は異なり、取引の実情を踏まえれば、誤認混同を生ずるおそれは極めて低い。 (5)混同を生ずるおそれがないこと(総合考慮) 以上の事情を総合考慮すると、取引者及び需要者において普通に払われる注意力を基準とした場合、本件使用商標を請求人の販売に係る商品に使用したとしても、これに接する取引者及び需要者が、請求人商標を連想、想起して、当該商品が請求人との間に緊密な営業上の関係又は同一の表示による商品化事業を営むグループに属する関係にある者の業務に係る商品であると誤認することはないから、混同を生ずるおそれは生じない。 3 故意 (1)本件使用商標は2015年から使用を開始しているところ、これと請求人商標とは非類似であるから、そもそも混同することはない。そして、2015年以降も本件使用商標の態様を変えていないのは、その必要がないからであり、請求人の販売に係る眼鏡やサングラスと混同を生じさせるような意図はない。したがって、請求人の主張するような認識はない。 (2)いわゆる不正使用を行うとすれば、通常、類似先行商標に化体する信用へのフリーライドやその信用毀損等、何らかの動機が認められるはずである。しかしながら、請求人商標と本件使用商標は非類似で、請求人商標は周知でもなく、本件使用商標の使用開始後に請求人商標の構成に近づけるように変更した事実もないから、フリーライドや信用毀損を目的とする動機はない。したがって、請求人の商品と混同を生じさせることの認識はない。 (3)被請求人のAmazon.co.jpにおける直近1年のアクセス数は、合計で15万を超え、2020年9月から翌年8月までの一年間の売上額は、Amazon限定商品だけでも約1,000万円である(乙19)。一方、請求人のサングラス・眼鏡の売上額は、2020年において販売している媒体全体でも合計450万円程度にすぎず(甲7)、2020年頃においても、被請求人が請求人商標に近似させて変更する動機はなかった。 以上からすれば、請求人の主張するような認識はないから、「故意」の要件は満たさない。 4 陳述書 被請求人は、乙第19号証及び乙第28号証に記載の情報が正確であることを陳述する(乙34)。 5 結語 以上より、商標法第51条第1項の要件をいずれも充たさないことは明らかであり、本件商標登録に、商標法第51条第1項に該当する理由はない。 よって、本件審判請求は成り立たないとの審決を求める。 第4 当審の判断 商標法第51条第1項は、「商標権者が故意に指定商品若しくは指定役務についての登録商標に類似する商標の使用又は指定商品若しくは指定役務に類似する商品若しくは役務についての登録商標若しくはこれに類似する商標の使用であつて商品の品質若しくは役務の質の誤認又は他人の業務に係る商品若しくは役務と混同を生ずるものをしたときは、何人も、その商標登録を取り消すことについて審判を請求することができる。」と規定している。 そこで、請求人の主張に係る本件使用商標の使用行為が、上記規定に該当するものであるか否かについて、以下検討する。 1 本件商標と本件使用商標の類否 (1)本件商標及びその指定商品について ア 本件商標は、前記第1のとおり、「eight tokyo」の文字を標準文字で表してなるところ、構成中の「eight」の文字は、「(数の)8」等を意味する平易な英語であり、「tokyo」の文字は、「日本の首都」である「東京」の読みを欧文字で表したものと容易に認識させるものであることから、本件商標は全体として、「8と東京」程の意味合いを理解させるものとみるのが相当である。 したがって、本件商標は、「エイトトーキョー」の称呼を生じ、「8と東京」の観念を生じる。 イ 本件商標の指定商品は、前記第1のとおり、第9類「サングラス,サングラスの部品及び附属品,サングラスケース,眼鏡,眼鏡の部品及び附属品,眼鏡ケース」である。 (2)本件使用商標及びその使用に係る商品について ア 被請求人(本件商標権者)が商品「サングラス,サングラスの部品及び附属品,サングラスケース,眼鏡,眼鏡の部品及び附属品,眼鏡ケース」について使用していた(甲2、甲3ほか)と認められる本件使用商標は、別掲1のとおり、太線をもってややデザイン化して表された数字の「8」の内部下方に、筆記体風の「Tokyo」の文字を表してなるところ、全体として、「8」の数字と「Tokyo」の文字とをモノグラム風に表したものとみるのが相当であって、「8と東京」程の意味合いを理解させるものと認められる。 したがって、本件使用商標は、その構成に相応して、「エイトトーキョー」又は「ハチトーキョー」の称呼を生じ、「8と東京」の観念を生じる。 イ 本件使用商標の使用に係る商品(以下「本件使用商品」という。)は、上記アのとおり、「サングラス,サングラスの部品及び附属品,サングラスケース,眼鏡,眼鏡の部品及び附属品,眼鏡ケース」と認められる。 (3)本件商標と本件使用商標及び本件商標の指定商品と本件使用商品との類否について ア 上記(1)ア及び(2)アからすれば、本件商標と本件使用商標とは、外観においては構成態様を異にし、差異を有するものの、ともに「エイトトーキョー」の称呼及び「8と東京」の観念を生じるものであるから、これらを総合して勘案すれば、両者は類似の商標とみるのが相当である。 イ 上記(1)イ及び(2)イからすれば、本件商標の指定商品と本件使用商品とは、同一又は類似の商品である。 ウ 以上より、本件商標と本件使用商標は類似の商標であり、かつ、本件商標の指定商品は本件使用商品と同一又は類似の商品であるから、本件使用商品について本件使用商標を使用することは、「指定商品についての登録商標に類似する商標又は指定商品に類似する商品についての登録商標に類似する商標」に該当する。 2 請求人商標の周知性について (1)請求人は、請求人商標は、本件商標が登録された2017年以前において、その指定商品の需要者の間で周知となっていた旨主張しているので、以下検討する。 請求人の主張及び提出された甲各号証によれば、以下のとおりである。 ア 請求人商標が、サングラス又は眼鏡に付して使用されていることがうかがえる(甲5)。 イ 請求人は、請求人商標を使用したサングラス及び眼鏡の販売が、2011年ないし2017年に毎年1万個以上であると主張し、甲第7号証(2010年~2020年のサングラス・眼鏡売上個数表)を提出している。 ウ 2015年から2017年にかけて、請求人商標を使用した被服や帽子、靴等の商品が、雑誌2誌に掲載された(甲8~甲33)。なお、請求人商標を使用した商品「サングラス」が掲載されたことが確認できるのは、そのうち一回(「Samurai ELO」2017年9月号、甲30)のみである。 (2)上記(1)によれば、請求人が、遅くとも2015年以降、請求人商標を、主に被服や帽子、靴等のファッション関連商品に使用していることはうかがえる。 しかしながら、請求人商標がファッション関連商品について使用されていたとしても、請求人商標が使用された商品が紹介された雑誌は2誌のみであり、かつ、それらの発行部数も明らかでない。加えて、請求人商標がサングラス又は眼鏡について使用されたことが確認できるのは、2017年の1回のみにすぎない。 また、請求人は、サングラス及び眼鏡についての売上個数表を証拠として挙げているが、請求人商標を付した商品についてのものであるかも定かでないし、作成者が不明であって、信憑性の高いものともいえない。そして、仮にこれが請求人商標を付した眼鏡及びサングラスについての売上高及び売上個数を示す証拠として認められるものであったとしても、その市場シェアは、アイウェア業界の小売市場規模(乙9)及び当該業界の大手事業者に係る売上高等(甲42~甲45)を考慮すると、到底高いものとはいい難い。 その他、請求人商標を使用した請求人の業務に係る商品についての販売実績や、広告宣伝の期間、地域及び規模等の広告実績を具体的に示す証左は見いだせない。 以上のことからすると、請求人商標が、2017年以前はもとより、現在に至るまでのいずれの時点においても、請求人の業務に係るサングラスや眼鏡を表すものとして、我が国における需要者の間に広く認識されていたものと認めることはできない。 そうすると、被請求人は本件使用商標を2015年から使用していると主張しているところ、当該時点以降においても、請求人商標が、需要者の間に広く認識されていたものとは認められない。 3 商品の出所の混同について (1)本件使用商標と請求人商標の類否について ア 本件使用商標 本件使用商標は、別掲1のとおりの構成よりなり、上記1(2)のとおり、「エイトトーキョー」又は「ハチトーキョー」の称呼を生じ、「8と東京」の観念を生じる。 イ 請求人商標 請求人商標は、前記第2のとおり、「8(eight)」の文字を横書きしてなるところ、数字の「8」に続けて、その表音を欧文字表記した「eight」を括弧内に表したものと認識され得るものである。 そうすると、請求人商標は、その構成から、「エイト」の称呼を生じ、「(数の)8」の観念を生じるものというのが相当である。 ウ 本件使用商標と請求人商標との対比 本件使用商標と請求人商標を比較するに、両者は構成態様を著しく異にするものであるから、外観において相紛れるおそれはない。 また、本件使用商標から生じる「エイトトーキョー」又は「ハチトーキョー」の称呼と、請求人商標から生じる「エイト」の称呼とは、音数及び音構成において明らかに相違するものであるから、両者は称呼においても相紛れるおそれはない。 さらに、本件使用商標は「8と東京」の観念を生じるのに対し、請求人商標は「(数の)8」の観念を生じるものであるから、両者は観念においても相違し、相紛れるおそれはない。 よって、本件使用商標と請求人商標とは、外観、称呼及び観念のいずれにおいても相紛れるおそれのない、非類似の商標である。 (2)出所の混同の有無について 本件使用商標と請求人商標とは、上記(1)のとおり、相紛れるおそれのない非類似の商標であって、かつ、上記2のとおり、請求人商標が需要者の間に広く認識されているものとは認められないものである。 したがって、本件使用商標は、被請求人がこれを本件商標の指定商品に使用しても、これに接する需要者が、請求人の業務に係る商品であるとの誤認を生じさせるおそれはなく、請求人の業務に係る商品と混同を生じるものをしたということはできない。 4 故意について 請求人は、被請求人及び請求人がいずれもサングラスや眼鏡を取り扱う同業者であり、かつ、両者ともにAmazon社のショッピングサイトに当該商品を出品していること等から、被請求人が請求人商標の情報を得ていたはずであり、本件使用商標を使用するにあたり、請求人の業務に係る商品と混同を生じさせることを認識していた旨主張している。 しかしながら、上記3のとおり、本件使用商標と請求人商標は非類似の商標というべきものであり、かつ、上記2のとおり、請求人商標の周知性も認められないものであるから、仮に被請求人が請求人商標を知悉していたとしても、直ちに、請求人の業務に係る商品と混同を生じさせる意図を有していたということはできない。 なお、請求人は、請求人の業務に係る商品の売上が、2018年頃から急激に減少したことについて、被請求人による本件商標の登録に伴う本件使用商標の使用の開始が少なくとも影響している旨主張しているが、その事実を証する証拠は提出されておらず、因果関係は明らかでないから、その主張は採用することができない。 以上のことから、被請求人による本件商標の使用について、商標法第51条第1項所定の「故意」を認めることはできない。 5 むすび 以上のとおり、被請求人である商標権者が、故意に本件商標と類似する本件使用商標をその指定商品に使用して商品の品質の誤認又は請求人の業務に係る商品と混同を生ずるものをしたということはできないから、本件商標の登録は、商標法第51条第1項の規定により、取り消すことはできない。 よって、結論のとおり審決する。

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2022-300709

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