商標取消審判
2022-300836
イケゼン、チゼン
- 審判番号
- 2022-300836
- 法域
- 商標
- 審判種別
- 取消審判(商標取消の審決)
- 出願番号
- 商願2020-156678
- 登録番号
- 6499385
- 請求日
- 2022年09月16日
- 審決日
- 2024年06月27日
- 公報発行日
- 2025年05月30日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】井上 千鶴
- 【請求人代理人】山田 威一郎
- 【請求人代理人】松本 響子
- 【被請求人】井上 博之
- 【被請求人代理人】西村 竜平
- 【被請求人代理人】齊藤 真大
- 【被請求人代理人】上村 喜永
- 【被請求人代理人】中村 惇志
- 【被請求人代理人】前田 治子
- 審判長/審判官
- 審判長 旦 克昌
- 審判官 馬場 秀敏
- 審判官 小林 裕子
- 分類
- T131 .3 -Y (W3536)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 商標法51条1項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 商標法第51条第1項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
上記当事者間の登録第6499385号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
審判費用は、請求人の負担とする。
理由
理 由
第1 本件商標
本件登録第6499385号商標(以下「本件商標」という。)は、「池善」の文字を標準文字で表してなり、令和2年12月18日に登録出願、第35類「化粧品の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,化粧用具(電動式歯ブラシを除く。)の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,薬剤(農薬に当たるものを除く。)の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,不動産事業の管理,賃貸事業の管理」及び第36類「建物の管理,建物の貸借の代理又は媒介,建物の貸与,建物の売買,建物の売買の代理又は媒介,建物又は土地の鑑定評価,建物又は土地の情報の提供,土地の管理,土地の貸借の代理又は媒介,土地の貸与,土地の売買,土地の売買の代理又は媒介」を指定役務として、同4年1月5日に登録査定、同月14日に設定登録されたものである。
第2 請求人の主張
請求人は、商標法第51条第1項の規定により、本件商標の登録を取り消す、審判費用は、被請求人の負担とする、との審決を求め、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第41号証を提出した。
1 本件商標は,被請求人(商標権者)が、故意に、指定商品についての本件商標に類似する商標の使用であって他人の業務に係る商品と混同を生ずるものをしたことから、その登録は取り消されるべきものである。
2 取消原因
(1)請求人の主張の概要
Xは、昭和58年8月から令和2年12月24日までの間、株式会社池善化粧品店(以下「(株)池善化粧品店」という。)の株式の4割以上(Xの妻が保有する株式と合算すると過半数になる。)を保有し、同社の代表取締役を務めていた者である(甲3、甲4)。
(株)池善化粧品店は、昭和52年11月21日に設立された(創業は昭和6年)化粧品販売等を主たる業務とする法人であり、京都市の四条河原町の交差点で、「池善化粧品店」との店名の化粧品販売店(以下「本件店舗」という。)を令和2年12月31日までの間、経営していたが、同月24日付けで解散決議を行い、現在は、Xが清算人として、在庫品の販売等の清算処理を行っている(甲3)。
一方、被請求人は、Xの甥であるが、Xに何らの断りもなく、令和3年3月に「cosmetics池善」との名称の化粧品販売店(以下「被請求人店舗」という。)を開店し(甲5の1)、現在も被請求人店舗で化粧品の小売業務を行っている。
X及び(株)池善化粧品店が、これまでに被請求人に対し、(株)池善化粧品店の事業を承継させた事実は一切存在しないが、被請求人は、被請求人店舗を本件店舗がリニューアルオープンした店舗であるかのように装っており、(株)池善化粧品店の業務に係る役務と混同を生じさせている。
したがって、本件商標は、商標法第51条第1項に基づき、登録を取消されるべきものである。
(2)指定役務についての本件商標に類似する商標の使用
ア 使用商標の構成
被請求人は、被請求人店舗及びそのウェブサイトにおいて、別掲1のとおりの使用商標1及び別掲2のとおりの使用商標2(以下、使用商標1と使用商標2を合わせて「使用商標」という場合がある。)を使用している(甲5の1、甲5の2)。
イ 使用商標が本件商標に類似すること
(ア)使用商標1
本件商標は「池善」の漢字を標準文字で書してなり、「イケゼン」の称呼が生じる。
一方、使用商標1は、「cosmetics」の欧文字と「池善」の漢字を一連一体にゴシック体調の文字で書した商標であるが、構成中の「cosmetics」の欧文字部分は、「化粧品」との意味を有する語であり、本件商標の指定役務中の第35類「化粧品の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」との関係においては識別力を有さない。そのため、使用商標1は、「池善」の文字部分が要部となり、当該文字に相応して「イケゼン」の称呼を生ずる。
したがって、両商標は「イケゼン」の称呼が共通し、「池善」との漢字も共通するから、本件商標と使用商標1は互いに類似する商標である。
(イ)使用商標2
使用商標2は、「ikezen」の欧文字を中央に大きく書し、「ike」の文字部分の上部に小さく「COSMETICS」の欧文字を書し、これらの文字の上下に金色の模様等を配する構成であるが、「ikezen」の文字は、「COSMETICS」の文字の約8倍の大きさで表されている。また、構成中の「COSMETICS」の欧文字は、「化粧品」の意味を有する語であって、本件商標の指定役務中の第35類「化粧品の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」との関係においては識別力を有さない。そのため、使用商標2は、「ikezen」の文字部分が要部となり、当該文字に相応して、「イケゼン」の称呼を生ずる。
したがって、両商標は「イケゼン」の称呼が共通するから、本件商標と使用商標2は互いに類似する商標である。
ウ 指定役務についての使用であること
被請求人は、被請求人店舗において、第35類「化粧品の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,化粧用具(電動式歯ブラシを除く。)の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」(以下「使用役務」という。)を行っており、使用商標は、これらの小売等役務に使用されている。
エ 小括
以上のとおり、被請求人は、本件商標に類似する使用商標を、本件商標の指定役務である第35類「化粧品の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,化粧用具(電動式歯ブラシを除く。)の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」に使用している。
(3)(株)池善化粧品店の業務に係る役務との混同
ア 被請求人が使用する商標と(株)池善化粧品店の商標の類似性
(ア)(株)池善化粧品店の商標の構成
(株)池善化粧品店は、本件店舗が閉店する令和2年12月31日までの間、本件店舗において、第35類「化粧品の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」を行っており、当該店舗及びその広告物において、別掲3のとおりの引用商標1、別掲4のとおりの引用商標2及び別掲5のとおりの引用商標3(以下、引用商標1ないし引用商標3を合わせて「引用商標」という場合がある。)を使用していた(甲6~甲9)。
(イ)引用商標1と使用商標1の類似性
引用商標1の構成中「化粧品店」の文字部分は、第35類「化粧品の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」との関係においては識別力を有さない。そのため、引用商標1は「池善」の文字部分が要部となる商標であり、当該文字に相応して「イケゼン」との称呼を生ずる。
一方、上述したとおり、使用商標1も「池善」の文字部分が要部となる商標であり、当該文字に相応して「イケゼン」の称呼を生ずる。
そうすると、引用商標1と使用商標1は「イケゼン」の称呼が共通し、「池善」の漢字も共通するから、両者は互いに類似する商標である。
なお、引用商標1の構成中の「化粧品店」の文字と使用商標1の構成中の「cosmetics」の文字は同じ意味を有するため、両商標の全体を対比した場合にも類似することは明らかである。
(ウ)引用商標2及び3と使用商標2の類似性
引用商標2は、「池善」のローマ字表記である「ikezen」を飾り文字風にデザインして中央に大きく書し、「化粧品」の文字部分に対応する英単語の「COSMETICS」の文字を左上に、「店」の文字部分に対応する英単語である「HOUSE」の文字を右上に小さく書している。また「ikezen」のうち「i」と「z」を他の文字よりも大きく書し、化粧品の代名詞である口紅をイメージして、「i」の文字の上部の丸を唇様のマークにしてなる構成であって、「ikezen」の文字のデザイン、各文字の大きさの相違、唇のマークに独創性がある商標である。
また、引用商標3は、引用商標2の「ikezen」の文字部分のみからなる商標である。
これに対し、使用商標2は、「ikezen」の欧文字を飾り文字風にデザインして中央に大きく書し、「COSMETICS」の文字を左上に小さく書し、「i」の文字の上部の丸を唇様のマークにし、上下に金色の王冠様の模様を配し、金色の線で上下を囲うような構成からなる。
引用商標2と使用商標2は、「ikezen」の欧文字を中央に大きく書し、「COSMETICS」との文字を左上に小さく書している点、「ikezen」との文字部分の飾り文字風のデザイン、「i」と「z」を他の文字よりも大きく書している点、「i」の文字の上部の丸を唇様のマークにしている点が共通し、外観が酷似している。
また、引用商標3と使用商標2の対比においても、両者の「ikezen」の欧文字部分は、飾り文字風のデザイン、「i」と「z」を他の文字よりも大きく書している点、「i」の文字の上部の丸を唇様のマークにしている点が共通し、外観が酷似している。そして、引用商標2及び3と使用商標2は、いずれも「イケゼン」と称呼され、称呼も同一である。
したがって、使用商標2は引用商標2及び3に類似する。
イ (株)池善化粧品店の商標の周知性
(ア)(株)池善化粧品店の歴史や立地状況等
(株)池善化粧品店は、本件店舗を昭和6年に開店し、化粧品販売店として令和2年12月31日まで約90年もの間、京都府民を中心とした関西圏の顧客に親しまれてきた。
本件店舗は、創業当時から令和2年12月に閉店するまでの間、京都府京都市下京区の四条町河原町南西角(四条通りと河原町通りの交差点の南西角)に店舗を構えていた(甲9)。四条河原町は同交差点を中心に広がる京都市並びに国内有数の繁華街であり、周辺は京都の中でも非常に交通量の多い場所である(甲10、甲11)。本件店舗は、同交差点からよく見える位置にあったため、往来する多くの人々が、本件店舗の看板に付されていた引用商標1及び3を目にしていたといえる。また、同交差点には、京都高島屋の他集客力が高い大型店舗が複数あるところ、近年では、本件店舗は同交差点に位置する京都高島屋に食い込むようにして存在していたことも注目を集める理由の1つとなっていた。
(イ)宣伝広告
(株)池善化粧品店は、創業当時から数多くの刊行物に広告物を掲載していた。引用商標は、かかる宣伝広告によっても、需要者に広く知られるようになっていた(甲12~甲17)。
(ウ)刊行物への掲載
(株)池善化粧品店は、その歴史や業務形態等について多々取材を受け、新聞等の刊行物に取材記事が掲載された(甲6、甲18~甲20)。
(エ)閉店時の報道等
本件店舗の閉店のニュースは、新聞やテレビ等においても報道された(甲21~甲23)。また、SNSにおいても、本件店舗が閉店することについて多数の投稿及びリアクションがあり(2022年5月13日現在、甲24の1)、2020年10月27日には「池善化粧品」が当該SNSのトレンドに入っている(甲24の2)。
(オ)(株)池善化粧品店及び本件店舗の現在の状況
(株)池善化粧品店は解散し、本件店舗は閉店したが、現在清算手続きを行っている最中であり、ヤフーショッピングに出店し、当該店舗において在庫品を販売している(甲27)。
また、現在も看板を残しており、(株)池善化粧品店及び本件店舗の存在感、影響力は今なお強く残っている(甲28)。
(カ)小括
以上の点に鑑みると、(株)池善化粧品店が使用していた引用商標は、本件商標が商標登録された時点においてもなお需要者の間に広く知られている周知商標であるといえる。
ウ 被請求人の行為態様と顧客の共通性
本件店舗の所在地(甲9)と、被請求人店舗の所在地(甲5の2)は、わずか数百メートルしか離れておらず、取り扱う商品も同じメーカーの化粧品であり、取引者、需要者は共通である。
また、(株)池善化粧品店は、本件店舗の1階に販売スペース、2階にお手入れルームを設けていたが、被請求人店舗も同様の形態を採用している。
被請求人店舗は、本件店舗が閉店してからわずか数ヶ月後に同じ区画内に開店し、店舗の規模や形態が共通していることから、取引者、需要者において被請求人店舗は本件店舗が移転した店舗であるとの誤認を強く誘発する。
さらに、被請求人店舗のウェブサイトにおいては、本件店舗が入っていた池善ビルの昭和初期の写真を掲載したり、「1931年創業の化粧品専門店です。2021年3月寺町四条に移転し、名前もcosmetics池善でオープン。」との記載がなされており(甲5の1)、被請求人は、被請求人店舗が、本件店舗が場所と店名を変更してリニューアルオープンした店舗であるかのように装っている。また、被請求人店舗の2階の窓には、遠くからでも視認できる程大きく、引用商標2及び3に酷似する使用商標2を掲示している(甲5の3)。
そして、実際に、取引者、需要者の多くが、ブログ記事やSNS等において、被請求人店舗に関し、「(株)池善化粧品店は閉店したと思っていたが、移転していた」という趣旨の投稿をしており、被請求人店舗が、本件店舗が移転した店舗であると誤認している(甲29)。
エ 小括
以上のとおり、(株)池善化粧品店が従前使用していた引用商標はいずれも需要者に広く知られた周知商標であるが、被請求人は、当該引用商標に類似する使用商標を使用している。
特に、引用商標2及び3は、その外観に独創性が強い商標であるところ、これらと使用商標2は、外観が酷似しており、このような商標を使用することは、取引者、需要者において、(株)池善化粧品店による役務の提供であるとの誤認混同を強く惹起するものである。
また、被請求人は本件店舗からわずか数百メートルの場所に被請求人店舗を開設し、本件店舗を移転してリニューアルオープンした店舗であることを装っており、実際に取引者、需要者の多くが誤認をしている。
以上によれば、使用商標の使用によって、被請求人店舗が本件店舗と同一又は関連する店舗であるとの誤認、混同が生じていることは明らかである。
(4)被請求人に故意があること
被請求人は、Xの甥にあたり、(株)池善化粧品店において使用されていた商標を熟知している。
また、被請求人店舗のウェブサイトにおける記載から明らかなとおり、被請求人は意図的に、被請求人店舗と本件店舗の誤認を生じさせている。
以上の事実に鑑みれば、被請求人は、使用商標を使用した結果、(株)池善化粧品店の業務に係る役務との誤認、混同を生じさせるおそれのあることを認識し、かつこれを積極的に認容していたことは明らかであるから、被請求人に「故意」があることは明らかである。
(5)まとめ
以上のとおり、被請求人は、本件商標に類似する使用商標を故意に、その指定役務である第35類「化粧品の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,化粧用具(電動式歯ブラシを除く。)の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」に使用し、(株)池善化粧品店の業務に係る役務との混同を生じさせている。
よって、本件商標の登録は、商標法第51条第1項に基づき、取り消されるべきである。
3 答弁に対する弁駁
(1)被請求人と(株)池善化粧品店が実質的に他人ではないとの主張について
ア 被請求人が(株)池善化粧品店の事業承継者ではないこと
被請求人は、被請求人が(株)池善化粧品店の創業者であるAの実子であるBの子であり、同社の事業承継者としての地位を、Bから正当に引き継いだものであるから、同社との関係において、実質的に他人ではないとの主張をしている。
しかしながら、被請求人は、(株)池善化粧品店に勤務した実態も全くなく、何らの関係性も有さない。また、被請求人とBとの間で、事業の承継に関し、どのような合意がなされたのかも不明である。そのため、被請求人が(株)池善化粧品店と同一の主体でないことは明らかである。また、Bは、(株)池善化粧品の取締役兼従業員の1人であった者にすぎず、Bが同社の事業を承継した事実もない。かかる点から見ても、被請求人と(株)池善化粧品店が「他人」にあたることは明らかである。
なお、被請求人が主張する(株)池善化粧品店の来歴には多数の誤りがあるため、以下では、甲第30号証の陳述書の記載に基づき、旧・池善化粧品店の開店から現在までの経緯を説明した上で、Bが(株)池善化粧品店の事業承継者には当たらないことの理由を述べる。
イ (株)池善化粧品店の来歴
(ア)Xの養父であるAは、昭和7年に、現在の池善ビルの場所(本件店舗の所在地)に分家し、同所に居住した。Aは、同所にて旧・池善化粧品店を開業し、結婚した。
(イ)Xは、昭和24年に、A夫婦と養子縁組をした。
(ウ)その後、A夫婦の間にBが誕生した。
Xは、大学卒業後、旧・池善化粧品店で働くこととなった。
(エ)Xは、大学卒業後に結婚することとなったが、旧・池善化粧品店の1坪ほどの場所をAから間借りし、たばこ屋を開業し、たばこ店の売上は順調に伸びた。
(オ)旧・池善化粧品店の毎日の店番はX夫婦が行っていた。
(カ)旧・池善化粧品店の経営は、当時から実質上、X夫婦が担っていたが、高度成長時代には営業成績が飛躍的に伸びた。また、Xは店舗販売にとどまらず銀行等から大口注文を取り、販路が拡大した。
そのような中、昭和52年に店を株式会社化することになった。設立時の出資金の形式上の出資者は8名であったが、実際には、AとXが2分の1ずつを拠出した。3名分の名義の株式はXが出資していたが、設立直後にXの妻の名義に書換えられた。
(株)池善化粧品店の設立時の代表取締役にはAが就任したが、設立当初から、実態はXが社長業を代行していた。また、Aは昭和53年頃からは、完全に第一線から退いた。
(キ)Aが昭和58年に死亡したため、同年8月31日に開催の臨時株主総会及び株主総会で、Xが後任の代表取締役に決定した(甲32、甲33)。また、Aが所有していた(株)池善化粧品店の株式は、XとBが分割して相続することとなった(甲34)。
なお、被請求人は、Xが代表取締役に就任後、「(株)池善化粧品店の株主総会においては、X夫妻の議決権が大きなウェイトを占め、同社の意思決定にX夫妻の意向が色濃く反映される」との主張をしているが、Aの持ち株分の分割は、出席者の合議で実行されたものであり、代表取締役であるXが主要株主であることには何ら不思議はない。また、Xは会社設立の当初から実質的な経営を行っていたものであり、代表取締役就任の前後で(株)池善化粧品店の経営実態に変化があったとはいえない。
(ク)Xは、(株)池善化粧品店からほど近い場所に土地を保有していたが、平成元年に親族との合議でテナントビルを建設した。
Xは、このテナントビルの1階に(株)池善化粧品店の支店である「ハロックス」を開店し、Bが店長となったが、売り上げは伸びず、赤字を繰り返した(甲35)。
Xは、開店から10年経った時点で閉店しようとBに相談したが、「ハロックス」は結局17年間営業を続け、(株)池善化粧品店はその損失により、大きな赤字を抱えることになった。
(ケ)本件店舗が所在する池善ビルの所有権は何度か親類の間で移動していたが、平成12年に、Xが池善ビルを購入することになった。
(コ)平成17年に「ハロックス」が閉店し、Bはその後、本件店舗で勤務をするようになった。
(サ)Xは、(株)池善化粧品店の現預金が足りなくなると、自らの資金等で赤字を補った。一方、B及びBの妻は、会社の財務の責任を負うことを拒否した。
(シ)平成29年頃から、経営は苦しい状況は続いた。Xは、自分も高齢になり、同時に、Bの年齢と実績を踏まえると、Bには会社を守っていくことはできないと判断し、本件店舗の閉店に関する諸々の条件に関し、Bと協議をしようとしたが、Bは話し合いに応じず、やむなく令和元年にB夫婦を相手方として、簡易裁判所に会社関係紛争調整調停を申し立てた(甲37)が、調停不成立により調停手続が終了した。
かかる調停の結果を受け、Xは、Bとの合意は容易には得られないため、会社の解散を先行して進めるとの決断をし、令和2年9月24日に取締役会を開催し、(株)池善化粧品店の店舗の閉店等を決議した。そして、Xは、令和2年10月20日に本件店舗前のシャッターに閉店のお知らせを掲示し、その後、顧客へのダイレクトメールで閉店のお知らせを送付した(甲38)。この掲示がSNSで拡散され、インターネット上で全国へ広がった。また、京都新聞でも同年10月27日に報道された。また、(株)池善化粧品店は同年11月8日に店舗広告として「閉店のお知らせ」を京都新聞に掲載した(甲39)。
(ス)令和2年12月24日に開催された(株)池善化粧品店の定時株主総会において、同社の解散が決議され、Xが清算人の地位に就き、B夫婦は取締役の地位を喪失し、同月31日をもって、(株)池善化粧品店の従業員を退職した(乙2)。
(株)池善化粧品店の解散時の諸々の条件に関しては、調停の決裂後も話し合いを継続し、令和3年1月13日付けで乙第2号証の合意書が締結された。なお、かかる話し合いに際し、BはXに対し、被請求人店舗の開店の計画があることを一切伝えていなかった。
合意書の第14条には、「丁(B)及び戊・・・は、甲((株)池善化粧品店)、乙(X)、丙・・・に対し、今後、新たに事業等を行う場合、本合意書締結後10年間は、「池善化粧品店」を含む名称を社名、商号、店名等に使用しないことを約束する。ただし、甲、乙及び丙は、丁及び戊が「池善」を含む名称を社名、商号、店名等に使用することは認め、異議を述べない。」との規定が設けられている。
(セ)(株)池善化粧品店は、現在、清算手続中であるが、閉店前に保有していた在庫が多数残っている状況にある。そこで、清算人の立場にあるXは、ヤフーショッピングのサイト上で「池善化粧品店」との名称で在庫品の販売を継続している。現在販売する化粧品は、製造から最長で10年の使用期間がある商品だけであり、メーカーに確認を取って販売を行っている。
また、(株)池善化粧品店は、令和4年に、Xの長女が代表取締役を務めるa社との間で、(株)池善化粧品店の事業を承継させ、「池善化粧品店」の商標、店舗名称、店舗ロゴ、関係資料、事業ノウハウ等に関する使用権等を譲渡する旨の覚書を締結している(甲40)。当該文書において、(株)池善化粧品店は、(株)池善以外の第三者に対してはこれらの使用を認めておらず、今後も認めないと確約している。したがって、Bが仮に(株)池善化粧品店の事業継承者を自称したとしても、これら商標等が一切使用できないため、継承者たり得ないことは明白であり、無論、被請求人がBから継承者の地位を引き継ぐことなどあり得ない。
ウ 被請求人と(株)池善化粧品店との関係
上述したとおり、Xは、(株)池善化粧品店を設立当初から解散に至るまでの間、一貫して経営してきた。
これに対し、Bは、(株)池善化粧品店の取締役兼従業員の1人にすぎず、同社の経営に関する責任も何ら負っていなかった。
そして、Xは、Bに(株)池善化粧品店の事業を承継させないとの意図をもって同社の解散を決定しており、合意書締結の際にも、Bが同社の業務を承継したかのような誤認が生じないようにとの配慮のもと行っている。
このような経緯に鑑みると、Bが(株)池善化粧品店の正当な事業承継者にあたるなどといえず、被請求人がBから同社の事業承継者の地位を引き継いだともいえない。
したがって、被請求人が(株)池善化粧品店との関係において実質的に「他人」であることは明らかであり、使用商標の使用によって、同社の業務との間で混同が生じている。よって、被請求人の行為が「他人の業務にかかる役務と混同を生ずる使用をしたこと」との要件を満たすことは明らかである。
(2)「故意にした行為であること」について
被請求人店舗のウェブサイトにおける記載は現在も維持されており、被請求人は故意に、被請求人店舗と本件店舗の誤認を生じさせている。なお、同ウェブサイトには、(株)池善化粧品店の閉店案内はがきに掲載の写真と同一のものが使用されているが、当該写真は、戦前に(株)池善化粧品店を撮影したものであり、誤認、混同を招きやすい(甲5の1、甲38)。
以上の事実に鑑みれば、被請求人は、被請求人店舗、ウェブサイトあるいは同店舗運営全般にて使用商標を使用した結果、(株)池善化粧品店の業務に係る役務との誤認、混同を生じさせるおそれのあることを認識し、かつこれを積極的に認容していたことから、被請求人に「故意」があることは明白である。
(3)「登録商標の類似範囲における使用があること」について
ア 使用商標1について
被請求人は、使用商標1を被請求人店舗の屋号として使用しているところ、「cosmetics池善」の文字は同書・同大・同間隔で一連一体に書され、全体が一体の商標としての機能を果たしていることは明らかである。
なお、被請求人は、「「cosmetics」は、「化粧品」の意味の英単語のゴシック体表記であり、化粧品を取り扱う店舗であることを示す一般的な付記表示にすぎないから、商標を構成しない」との主張をしているが、当該主張は、商標の類似性の議論の中で検討すべき事項であり、被請求人が使用商標1を使用している事実を否定する根拠にはなり得ない。
イ 使用商標2について
被請求人も認めているとおり、本件商標と使用商標2は「イケゼン」の称呼が共通しており、使用商標2に接する取引者、需要者は、使用商標2の構成中の「ikezen」の文字から「池善」との漢字を直ちに想起する。
また、使用商標2は、使用商標1と共に、被請求人店舗のウェブサイトに掲載されている商標であるため、かかる現実の使用態様を併せて考えると、使用商標2に接する取引者、需要者は、これを被請求人店舗のロゴマークであると認識し、使用商標2の構成中の「ikezen」の文字を本件商標と結びつけて認識する。以上の点に鑑みると、本件商標と使用商標2は互いに類似する商標である。
第3 被請求人の答弁
被請求人は、結論同旨の審決を求めると答弁し、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として、乙第1号証及び乙第2号証を提出した。
1 「他人の業務にかかる役務と混同を生ずる使用をしたこと」について
被請求人は、(株)池善化粧品店とは実質的に他人ではなく、(株)池善化粧品店の業務にかかる役務とは混同が生じず、本取消要件を満たさない。
(1)被請求人が、(株)池善化粧品店と実質的に他人ではないこと
ア (株)池善化粧品店の来歴
(ア)(株)池善化粧品店の歴史は、昭和6年に、後に(株)池善化粧品店の設立者となるAが、四条河原町角に小さな化粧品店を開店したことに端を発する。ここから、(株)池善化粧品店の前身である化粧品店(以下「旧・池善化粧品店」という。)の経営が始まった。
(イ)旧・池善化粧品店の経営は順風満帆であった。昭和24年に、甥であるXと養子縁組を結ぶ。ところが、昭和27年に、A夫婦の間に男児が誕生する。これが被請求人の父であり、後に(株)池善化粧品店の専務取締役となるBである。
昭和30年、Aの養子となったXは旧・池善化粧品店に入店する。
一方、昭和50年、大学を卒業したBもまた旧・池善化粧品店に入店する。Xとの年齢差を考慮しても、Aの引退後はXが家業を引き継ぎ、その後はBが三代目として引き継ぐものと、旧・池善化粧品店において暗黙の了解があったためであった。
(ウ)昭和52年に、Aは、旧・池善化粧品店を法人化し、化粧品販売等を主たる業務とする(株)池善化粧品店を設立し、その代表取締役となる。法人化後もAは、四条河原町角にて、従来と同様に「池善化粧品店」との名称の店舗(本件店舗)で、化粧品販売の事業を継続する。
昭和58年にAが死去し、Xが代表取締役に就任する。以後(株)池善化粧品店は、株式の過半数をXとその妻が保有する状態となり、同社の株式総会においては、X夫妻の議決権が大きなウェイトを占め、同社の意思決定にX夫妻の意向が色濃く反映されるようになる。
(エ)令和2年12月24日、(株)池善化粧品店の解散を決議事項とする株主総会が開かれる。取締役の一人であったBは、解散を望まず、父・Aの後継ぎとして事業を継続することを主張したが、株主総会では自らの収益を優先するX夫妻の意向が反映され、解散が決議される。そして、同年12月31日に本件店舗が閉店となった。
(オ)(株)池善化粧品店の表向きの解散理由は「社長の高齢化」等とされている(甲21)。しかしながら、Xは、平成元年には京都市の四条河原町近辺にビルを建設して管理し、平成12年には池善ビルの土地と建物の全てを親族から買い取り、さらに令和2年には、Xの長女を代表取締役、Xの妻を取締役とする、不動産賃貸業を主な業務とするa社を設立させている(乙1)。
そして前述の令和2年の株主総会において、X夫妻は、取締役であるBと、監査役であるその妻を(株)池善化粧品店から退職させる(乙2)。また、(株)池善化粧品店の解散後には、a社により池善ビルを管理運営するようにし、新しく入居させた複数のテナントから収入を得ている(甲28)。池善ビルが立地する四条河原町は、国内有数の繁華街であり土地代も非常に高く、小さな店舗で化粧品販売を細々と続けるよりも、店舗を貸し出して賃貸収入を得る方が、遥かに実入りがいいのであろう。
このように、(株)池善化粧品店の解散理由は「社長の高齢化」等ではなく、本件店舗の優れた立地を利用して、Xとその近親者のみが富を得られるようにすることと推測される。そしてこれは、Xが、化粧品販売事業に対して撤退の意思を示したことを意味する。
(カ)(株)池善化粧品店の解散にあたり、Xと、被請求人の父・Bとの間で、合意書により、新規事業を行う際における「(株)池善化粧品店」を含む名称及び「池善」を含む名称の取扱いについての合意が形成されている(乙2)。
具体的にこの合意書の第14項では、Bは、(株)池善化粧品店及びXに対して、今後新たに事業等を行う場合、本合意書締結日から10年間は、「(株)池善化粧品店」を含む名称を社名、商号、店名等に使用しないことを約束する」とする一方で、「池善化粧品店及びXは、Bが「池善」を含む名称を社名、商号、店名等に使用することは認め、異議等を述べない旨記載されている。
これは、Bが「池善」の名称による化粧品販売事業の継続を強く希望したためであり、X自らが、Bに対して、「池善」を含む名称を社名等に使用して化粧品販売事業を行うこと、つまり、事実上、Xが同社の事業をBに承継したことを示すものである。
(キ)(株)池善化粧品店の事業を実質的に承継したBは、本件店舗の後継店を開店することを考える。しかしながら、この時点においてBは高齢であり、同社の事業承継者としての地位を、実子である被請求人に譲ることとする。そして被請求人が、令和3年3月18日に、被請求人店舗を開店する。現在においてBもまた、スタッフとして被請求人店舗で勤務している。
イ 被請求人と(株)池善化粧品店との関係
このように、被請求人は、(株)池善化粧品店の創業者であるAの実子であるBの子であり、同社の事業承継者としての地位を、Bから正当に引き継いだ者である。このことから、被請求人こそが(株)池善化粧品店の事業の正当な承継者としての地位を有し、同社との関係において実質的に他人ではないことは明らかである。
(2)(株)池善化粧品店の業務に係る役務との混同が生じないこと
このように、被請求人は、(株)池善化粧品店と実質的な他人ではなくむしろ本人であり、それゆえ、Xの行為により、他人の業務にかかる役務と混同を生ずることなどそもそも起こり得ず、販売している商品も化粧品であって従来の店舗と同様のものであり、役務の質の誤認も生じさせない。したがって、商標法第51条第1項の趣旨である一般公衆の利益を害することも起こり得ない。
(3)出所の混同が起こり得る対象が存在しないこと
仮に被請求人と(株)池善化粧品店が他人であったとしても、(株)池善化粧品店の業務に係る役務と混同が生じ得ない。
本件審判請求時より約2年前に(株)池善化粧品店は解散が決議されており、既に本件店舗は閉店している。そして、本件店舗がかつて存在していた建物には、未だ看板こそ残されているものの、化粧品販売とは全く異なる業種の店舗が入居している(甲26の5)。
このように、本件審判請求時において(株)池善化粧品店は化粧品販売の業務を実質的に行っておらず、それゆえ、本件審判請求時において被請求人の行為により出所の混同が起こり得る対象がそもそも存在せず、(株)池善化粧品店の業務に係る役務との出所の混同を生じるはずもない。
なお、請求人は、本件店舗がインターネット上で在庫品の販売を継続しているとの主張をし、甲第27号証には会社名として「(株)池善化粧品店」が表記され、ストア名として「池善化粧品店」が表記されている。しかしながら、(株)池善化粧品店は約2年前に解散決議され、本件店舗も約2年前に既に閉店している。仮にXとその子が「(株)池善化粧品店」や「池善化粧品店」の名称を今でも利用しているのであれば、そのような行為こそが、実店舗を構えて約2年間化粧品を販売している被請求人店舗「池善」の業務と混同を生じさせるものであり、一般公衆の利益を害するものである。
また、本件商標「池善」の名称を利用して、閉店後2年も経過してなお売れ残りの化粧品(請求人のいう在庫商品)を販売し続けるXの行為は、被請求人店舗が販売する商品の品質を誤認させ、本件商標を利用する被請求人店舗のイメージを低下させる行為に他ならない。
(4)小括
以上のように、被請求人は(株)池善化粧品店とは実質的な他人ではなく、被請求人の行為により(株)池善化粧品店の業務に係る役務と混同を生ずることは起こり得ない。
さらに、本件審判請求時当時において、被請求人の行為により出所の混同が起こり得る対象がそもそも存在しない。
それゆえ、被請求人の行為が「他人の業務にかかる役務と混同を生ずる使用をしたこと」の取消要件を満たさないことは明らかである。
2 「故意にした行為であること」について
上述のように、被請求人は、解散した(株)池善化粧品店の事業の正当な承継者としての地位を有する者であり、(株)池善化粧品店との関係において実質的に他人ではない。そのため、被請求人の行為により“他人の業務”にかかる役務と混同を生ずることなどそもそも起こるはずもなく、被請求人は、他人の業務に係る役務と混同を生じさせることを認識すらしなかった。
これらの事実に鑑みれば、被請求人の行為に「故意」がなかったことは明らかである。
3 「登録商標の類似範囲における使用があること」について
さらに、被請求人は、本件商標に類似する商標を被請求人店舗において使用していない。
(1)使用商標1は、本件商標と同一の商標である
使用商標1の構成中「cosmetics」は、「化粧品」を意味する英単語のゴシック体表記であり、化粧品を取り扱っていう店舗であることを示す一般的な付加表記にすぎないから、商標を構成しない。それゆえ、被請求人店舗において被請求人が使用する使用商標1は、「cosmetics池善」ではなく、「池善」である。
そして本件商標と使用商標1とを対比すると、「イケゼン」の称呼及び「池善」の漢字も共通するから、本件商標と使用商標1は、互いに類似する商標ではなく、同一の商標である。
したがって、使用商標1を使用する被請求人の行為は、「登録商標を類似範囲において使用したこと」の要件を満たさない。
(2)使用商標2は、本件商標と非類似の商標である
ア 本件商標と使用商標2との対比及び検討
本件商標と使用商標2とは、外観、称呼及び観念のいずれにおいても異なるから、両者は明らかに非類似である。
(ア)外観について
本件商標「池善」は、2つの漢字を一連に並べた2文字構成である。
これに対して使用商標2は、小さく書した「COSMETICS」との欧文字の下に、文字とも記号とも判別つかない独特な5つの図形を羅列したものである。具体的には、棒の先に赤いハートマークがついたチューリップあるいはマッチ棒のような図形を最も左に記し、一筆描きにより書かれた2つの長い耳を持つ兎のような図形を左から2番目に記し、土偶の目あるいは欧文字の「e」を模した図形を左から3番目及び5番目に記し、数字の「2」あるいは欧文字の「z」を模した図形を左から4番目に記し、鉛筆キャップのような図形を最も右に記して構成したものである。したがって、本件商標と使用商標2とは外観において明らかに異なる。
(イ)称呼について
本件商標からは、「イケゼン」の称呼が生じる。
これに対して使用商標2は、文字とも記号とも判別つかない独特な5つの図形を並べて構成したものであり、その称呼が一意的に定まらない。
5つの図形中、左から3ないし5番目のものはそれぞれ「e」「z」「e」とも見ることができ、ここからは「イーゼットイー」、「エゼ」等といった称呼が生じ得る。
しかしながら、左から1、2番目及び最も右の図形は明らかに文字ではなく、称呼を生じさせない。
具体的には、最も左の図形は、棒の先に赤いハートマークが付いたチューリップあるいはマッチ棒のようなものであり、欧文字の「i」とはかけ離れた形状である。仮に欧文字だとしても、「i」か「l」かが不明である。
左から2番目の図形は、一筆描きにより書かれた2つの長い耳を持つ兎のようなものであるが、これもまた欧文字の「k」とは到底思えない形状である。仮に欧文字だとしても、「K」か「M」か不明である。
最も右の図形は、鉛筆キャップのようなものであり、これも欧文字の「n」とはかけ離れた形状であり、欧文字と解釈することすら困難である。
したがって、本件商標と使用商標2とは称呼において明らかに異なる。
(ウ)観念について
本件商標「池善」と使用商標2はいずれも造語であり、ここから特定の観念は生じない。したがって、両商標の観念を比較することはできない。
イ 使用商標2についての小括
以上のとおり、本件商標と使用商標2とは、外観及び称呼において明らかに異なり、観念において比較することが困難であるから、両商標は明らかに非類似の商標である。
(3)小括
このように、被請求人が使用する使用商標は、いずれも本件商標に類似するものではない。したがって、使用商標を使用する被請求人の行為は、「登録商標の類似範囲における使用があること」の取消要件を満たさない。
4 請求人による周知性の主張に対する反論
以下のとおり、引用商標1ないし3は、周知とはいえない。
(1)立地状況について
確かに本件店舗は、繁華街である四条河原町の角において、京都高島屋に食い込むように店を構えていたものであるが、交差点を行き交う人々の目をまず引くのは、高い集客力を誇る京都高島屋である。これらの人々にとって、かつて存在した本件店舗は「京都高島屋に食い込んでいる小さい店舗」程度の認識にすぎず、そこにどのような名称の店舗がどのような業務を行っているかについては大して認識されていない。
(2)宣伝広告について
請求人は、宣伝広告により本件店舗が需要者に広く知られるようになったと主張する(甲7、甲12~甲17)。しかしながら、これらの証拠が示す刊行物は、いずれも京都市内において発行されているローカルなものばかりであり、その発行部数も僅かであると思われ、京都市内という限られた地域においてすら宣伝効果があったのか疑わしい。
またいずれの刊行物も、少なくとも18年以上も前に発行されたものであり、その宣伝広告の効果は現在において皆無といっても差し支えない。
(3)刊行物への掲載について
請求人は本件店舗が、刊行物に取材記事が掲載されたと主張する(甲6、甲18~甲20)が、これらの取材記事もまた京都市内において発行されている新聞や刊行紙など、ローカルなものばかりであり、さらにその発行部数も僅かなものであると思われる。このような発行部数の少ないローカル誌における4件程度の取材記事では、京都市内という限られた地域においてすら需要者に知れ渡るようになったのかどうか疑わしい。
(4)閉店時の報道について
請求人は、本件店舗が閉店時に多くのマスメディアに報道された等と主張している(甲21~甲23)が、いずれも京都市内のローカルなマスメディアばかりであり、それもわずか3回である。さらに請求人は、本件店舗の閉店時に、SNSにおいて多数の投稿がされたことを主張する(甲24)が、リアクション数が最も多いものでも高々2000ないし3000程度のいいね数であり、この程度で周知性を獲得しているとはいい難い。日本における当該SNSのユーザー数は約4500万人であり、本件店舗に関する投稿の反響がいかに小さいかがうかがえる。
(5)周知性についての小括
このように、(株)池善化粧品店が使用していた引用商標は、本件店舗を開店していた間、京都市内という限られた地域ですら認知度が高かったのか疑わしい。ましてや、解散から約2年近くたった本件審判請求時当時においては、その認知度はさらに加速的に低下しているから、周知でないことは明らかである。
5 まとめ
以上のとおり、被請求人の行為は、(1)他人の業務にかかる役務と混同を生ずる使用をしたこと、(2)故意にした行為であること、(3)登録商標の類似範囲における使用があること、のいずれの取消要件も満たしておらず、商標法第51条第1項に該当しない。
第4 当審の判断
商標法第51条第1項は、「商標権者が故意に指定商品若しくは指定役務についての登録商標に類似する商標の使用又は指定商品若しくは指定役務に類似する商品若しくは役務についての登録商標若しくはこれに類似する商標の使用であつて商品の品質若しくは役務の質の誤認又は他人の業務に係る商品若しくは役務と混同を生ずるものをしたときは、何人も、その商標登録を取り消すことについて審判を請求することができる。」と規定している。
そこで、請求人の主張に係る使用商標の使用行為が、上記規定に該当するものであるか否かについて、以下検討する。
1 引用商標の周知性について
請求人は、引用商標は、本件商標の登録時において、(株)池善化粧品店の業務に係る商標として周知となっていた旨主張するので、以下検討する。
(1)請求人の主張及び提出された甲各号証によれば、以下のとおりである。
ア (株)池善化粧品店は、昭和7年頃に京都市の四条河原町において旧・池善化粧品店として創業され、同52年に京都市に株式会社化した、化粧品等の小売業務を行う法人である(甲3)。
イ (株)池善化粧品店(前身の旧・池善化粧品店を含む。以下同じ。)が四条河原町に化粧品の小売店舗として構えた店舗(本件店舗)には、「池善化粧品店」の文字(引用商標1)及びデザイン化された「iKeZen」の文字(引用商標3)が付されていた(甲9甲26)。
ウ 京都市内で発行される情報誌や、京都市の劇場が発行する公演の冊子、化粧品会社の発行する冊子、商店街のウェブサイト等において、昭和8年頃から、(株)池善化粧品店の広告が掲載された(甲7、甲9、甲12、甲13、甲15~甲17)。それらの広告には、引用商標1(縦書きのものを含む。)ないし引用商標3が使用された。
エ (株)池善化粧品店は、令和2年12月に解散し、同時期に本件店舗も閉店したところ、本件店舗の閉店のニュースが、京都地域の地方テレビ局や地方紙、インターネットのウェブサイト、SNS等において報じられ、それらのニュースの中には、本件店舗の看板を含む外観が紹介されているものもあった(甲21~甲26)。
オ (株)池善化粧品店は、解散後もウェブサイト上で、引用商標3と同一視し得る、デザイン化された「iKeZen」の文字を表示して、化粧品の小売業務を行っていることがうかがえる(甲27)。
(2)上記(1)によれば、引用商標が、(株)池善化粧品店によって、昭和初期から化粧品や化粧用具の小売業務について使用されていたことはうかがえる。
しかし、新聞や雑誌記事ないしテレビ番組の証拠は、その多くが京都市内ないしその周辺の地域に限定されるものである。また、化粧品会社の発行する冊子は昭和初期のもの、京都市内で発行される情報誌及び劇場が発行する冊子は2000年代前半のものが大部分であり、近年のものは少ない。
そして、本件店舗の閉店の際に、閉店のニュースが各種媒体で瞬間的に報道されたとしても、それをもって、引用商標が継続的に広告宣伝されたということもできない。
さらに、引用商標を使用した役務の売上高等の実績を示す証拠の提出もない。
加えて、(株)池善化粧品店が、解散後もウェブサイト上で化粧品等の小売業務を行っており、当該ウェブサイトにおいてデザイン化された「iKeZen」の文字が確認できるとしても、当該ウェブサイトの訪問者数や販売実績も明らかでないから、これによって引用商標の周知性を認めることもできない。
そうすると、引用商標が、(株)池善化粧品店によって長年使用されていたとしても、本件商標の登録時において、(株)池善化粧品店の業務に係る役務を表すものとして、我が国における需要者の間に広く認識されていると認めることはできない。
2 本件商標と使用商標について
(1)本件商標及びその指定役務について
本件商標は、前記第1のとおり、「池善」の文字を標準文字で表してなるところ、これは、辞書類に記載があるものではなく、特定の意味合いにおいて親しまれた語でもないことから、一種の造語として理解される。
そうすると、本件商標はその構成文字に相応して、「イケゼン」の称呼を生じ、特定の観念を生じない。
また、本件商標の指定役務は、前記第1のとおり、第35類「化粧品の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,化粧用具(電動式歯ブラシを除く。)の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,薬剤(農薬に当たるものを除く。)の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,不動産事業の管理,賃貸事業の管理」及び第36類「建物の管理,建物の貸借の代理又は媒介,建物の貸与,建物の売買,建物の売買の代理又は媒介,建物又は土地の鑑定評価,建物又は土地の情報の提供,土地の管理,土地の貸借の代理又は媒介,土地の貸与,土地の売買,土地の売買の代理又は媒介」である。
(2)使用商標及び使用役務について
ア 使用商標1について
使用商標1は、別掲1のとおり、「cosmetics池善」の文字を横書きしてなるところ、構成中の「cosmetics」の文字と「池善」の文字とは、文字種が異なることから視覚上分離して把握されるものである。また、「cosmetics」の文字は、「化粧品」を意味する語であり、使用役務との関係においては識別力の弱い語であるから、構成中の「池善」の文字のみが要部として認識され得る。他方、「池善」の文字部分は、上記(1)と同様に、特定の観念を生じない。
そうすると、使用商標1は、その構成文字全体から生じる「コスメティックスイケゼン」の他、構成中の要部である「池善」の文字に相応して「イケゼン」の称呼を生じ、特定の観念を生じない。
また、使用商標1の使用役務は、「化粧品の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,化粧用具(電動式歯ブラシを除く。)の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」である。
イ 使用商標2について
使用商標2は、別掲2のとおりの構成よりなるところ、中央に大きく表された部分は、デザイン化されているものの、「iKeZen」の文字(「i」の上部の点にあたる部分には赤色の図形が配されている。)を表したものと容易に認識し得る。そして、当該「iKeZen」の「Ke」の文字部分の上部には、小さく「COSMETICS」の文字を横書きし、これらの文字の上下に金色の図形を配してなるところ、当該金色の図形部分は装飾部分と認識され、自他役務の識別標識としての機能を有しない。
また、文字部分については、顕著に大きく表された「iKeZen」の文字が辞書に記載のない造語であり、十分に識別力を有するのに対し、「COSMETICS」部分は小さく書されている上、使用役務との関係において識別力の弱い語であることから、使用商標2においては、「iKeZen」の文字部分のみが要部として認識され得る。
してみれば、使用商標2は、その構成中の文字部分全体から生じる「コスメティックスイケゼン」の称呼の他、要部である「池善」の文字に相応して「イケゼン」の称呼を生じ、特定の観念を生じない。
また、使用商標2の使用役務は、前記第2のとおり、「化粧品の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,化粧用具(電動式歯ブラシを除く。)の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」である。
(3)本件商標と使用商標及び本件商標の指定役務と使用役務の類否について
ア 本件商標と使用商標1の類否
本件商標と使用商標1の外観を比較すると、両者の全体の外観は異なるが、本件商標と使用商標1の要部である「池善」は、同一の文字よりなるから、両者は外観において近似した印象を与える。
また、本件商標と使用商標1とは、「イケゼン」の称呼において共通する。
さらに、両者はともに特定の観念を生じないから、観念において比較できない。
そうすると、本件商標と使用商標1は、観念において比較できないとしても、外観において近似し、称呼を共通にするものであるから、これらを総合すると、両者は互いに類似の商標といえる。
イ 本件商標と使用商標2の類否
本件商標と使用商標2の外観を比較すると、両者の全体の外観は異なるが、本件商標と使用商標2の要部である「iKeZen」を比較すると、両者は文字種において相違するとしても、商標の構成文字を同一の称呼の生じる範囲内で文字種を相互に変換して表記することが一般的に行われていることからすると、それぞれの文字を置き換えたものとして、取引者、需要者に無理なく認識されるものであるから、かかる文字種の相違が出所識別標識としての外観上の顕著な差異として強い印象を与えるとはいえない。
そして、両者は、「イケゼン」の称呼を共通にし、ともに特定の観念を生じないから、観念において比較できない。
そうすると、本件商標と使用商標2は、観念においては比較できないものの、称呼の共通性を凌駕するほどの外観上の顕著な差異を有するとはいえないから、これらの外観、観念、称呼等によって取引者、需要者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に考察すれば、両者は類似の商標というのが相当である。
ウ 本件商標の指定役務と使用商標の使用役務の類否
本件商標の指定役務中「化粧品の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,化粧用具(電動式歯ブラシを除く。)の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」は、使用商標の使用役務と同一であるから、本件商標の指定役務は、使用商標の使用役務と同一の役務を含むものである。
エ 小括
以上のことからすれば、本件商標と使用商標は類似の商標であり、かつ、本件商標の指定役務は、使用商標の使用役務と同一の役務を含むものであるから、使用商標の使用は、指定役務についての本件商標に類似する商標の使用に該当するといえる。
3 使用商標と引用商標の類似性の程度について
(1)使用商標
ア 使用商標1
使用商標1は、上記2(2)アのとおり、その構成文字全体から生じる「コスメティックスイケゼン」の他、構成中の要部である「池善」の文字に相応して「イケゼン」の称呼を生じ、特定の観念を生じない。
イ 使用商標2
使用商標2は、上記2(2)イのとおり、その構成中の文字部分全体から生じる「コスメティックスイケゼン」の称呼の他、要部である「iKeZen」の文字に相応して「イケゼン」の称呼を生じ、特定の観念を生じない。
(2)引用商標
ア 引用商標1
引用商標1は、別掲3のとおり、「池善化粧品店」の文字を横書きしてなるところ、構成中の「化粧品店」の文字は、その使用に係る役務との関係においては、役務の提供場所を表すものであって、自他役務の識別標識としての機能の弱い語であるから、構成中の「池善」の文字のみが要部として認識され得る。他方、「池善」の文字部分は、上記2と同様に、特定の観念を生じない。
そうすると、引用商標1は、その構成文字全体から生じる「イケゼンケショウヒンテン」の称呼の他、構成中の要部である「池善」の文字に相応して「イケゼン」の称呼を生じ、特定の観念を生じない。
イ 引用商標2
引用商標2は、別掲4のとおり、デザイン化された「iKeZen」の文字(「i」の上部の点にあたる部分には赤色の図形が配されている。)を表し、「Ke」及び「en」の文字部分の上部にそれぞれ小さく「COSMETICS」及び「HOUSE」の文字を横書きしてなるところ、その構成中、顕著に大きく表された「iKeZen」の文字が辞書に記載のない造語であり、十分に識別力を有するのに対し、「COSMETICS」及び「HOUSE」の文字部分は小さく書されている上、これらは一連で「化粧品会社」(英辞郎on the WEB)の意味を有する語であって、その使用に係る役務との関係において識別力の弱い語であることから、引用商標2においては、「iKeZen」の文字部分のみが要部として認識され得る。
してみれば、使用商標2は、その構成中の文字部分全体から生じる「コスメティックスイケゼン」の称呼の他、要部である「池善」の文字に相応して「イケゼン」の称呼を生じ、特定の観念を生じない。
ウ 引用商標3
引用商標3は、別掲5のとおり、薄い茶色と生成色のグラデーションをもって表された矩形の内部下方に、デザイン化された「iKeZen」の文字(「i」の上部の点にあたる部分には赤色の図形が配されている。)を表してなるところ、構成中の矩形部分は装飾部分と認識されるというべきであり、自他役務の識別標識としての機能を有しない。また、「iKeZen」の文字部分は、辞書に記載のない造語である。
そうすると、引用商標3は、構成中の「iKeZen」の文字に相応して「イケゼン」の称呼を生じ、特定の観念を生じない。
(3)使用商標と引用商標の類否について
ア 使用商標1と引用商標の類否
(ア)使用商標1と引用商標1の類否
使用商標1と引用商標1を比較すると、両者の全体の外観は異なるが、使用商標1と引用商標1の要部である「池善」は、同一の文字よりなるから、両者は外観において近似した印象を与える。また、使用商標1と引用商標1とは、「イケゼン」の称呼において共通する。さらに、両者はともに特定の観念を生じないから、観念において比較できない。
これらを総合すると、使用商標1と引用商標1は、互いに類似の商標といえる。
(イ)使用商標1と引用商標2及び3の類否
使用商標1と引用商標2及び3を比較すると、両者の全体の外観は異なるが、使用商標1の要部である「池善」と引用商標2及び3の要部である「iKeZen」を比較すると、両者は文字種において相違するとしても、商標の構成文字を同一の称呼の生じる範囲内で文字種を相互に変換して表記することが一般的に行われていることからすると、それぞれの文字を置き換えたものとして、取引者、需要者に無理なく認識されるから、かかる文字種の相違が出所識別標識としての外観上の顕著な差異として強い印象を与えるとはいえない。
そして、両者は、「イケゼン」の称呼を共通にし、ともに特定の観念を生じないから、観念において比較できない。
そうすると、使用商標1と引用商標2及び3は、観念においては比較できないものの、称呼の共通性を凌駕する程の外観上の顕著な差異を有するとはいえないから、これらの外観、観念、称呼等によって取引者、需要者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に考察すれば、両者は類似の商標というのが相当である。
イ 使用商標2と引用商標の類否
(ア)使用商標2と引用商標1の類否
使用商標2と引用商標1を比較すると、両者の全体の外観は異なるが、使用商標2の要部である「iKeZen」と引用商標1の要部である「池善」を比較すると、両者は文字種において相違するとしても、商標の構成文字を同一の称呼の生じる範囲内で文字種を相互に変換して表記することが一般的に行われていることからすると、それぞれの文字を置き換えたものとして、取引者、需要者に無理なく認識されるから、かかる文字種の相違が出所識別標識としての外観上の顕著な差異として強い印象を与えるとはいえない。
そして、両者は、「イケゼン」の称呼を共通にし、ともに特定の観念を生じないから、観念において比較できない。
そうすると、使用商標2と引用商標1は、観念においては比較できないものの、称呼の共通性を凌駕する程の外観上の顕著な差異を有するとはいえないから、これらの外観、観念、称呼等によって取引者、需要者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に考察すれば、両者は類似の商標というのが相当である。
(イ)使用商標2と引用商標2及び3の類否
使用商標2と引用商標2及び3は、全体の外観において相違する点があるとしても、両者の要部である「iKeZen」の文字部分は、その書体及び態様を共通にし、類似するものである。
また、使用商標2と引用商標2及び3とは、「イケゼン」の称呼において共通する。さらに、両者はともに特定の観念を生じないから、観念において比較できない。
これらを総合すると、使用商標2と引用商標2及び3は、互いに類似の商標といえる。
(4)小括
以上から、使用商標は引用商標と類似する商標といえるから、両者は相当程度の類似性を有するものとみるのが相当である。
4 出所の混同のおそれの有無について
使用商標と引用商標とは、上記3のとおり、相当程度の類似性を有する商標であるといえるものの、上記1のとおり、引用商標は需要者の間に広く認識されているとは認められないものである。
したがって、使用商標は、被請求人がこれを本件商標の指定役務に使用しても、これに接する需要者が、(株)池善化粧品店の業務に係る役務であるとの誤認を生じさせるおそれはなく、同社の業務に係る役務と混同を生じるものということはできない。
5 故意について
請求人は、被請求人が(株)池善化粧品店において使用されていた商標を熟知していること、被請求人店舗のウェブサイトにおける記載から、被請求人が意図的に、被請求人店舗と本件店舗の誤認を生じさせていると主張する。
しかしながら、使用商標と引用商標が類似する商標であるとしても、上記1のとおり、引用商標は、需要者の間に広く認識されているとは認められないものである。
そうすると、被請求人は、引用商標の存在を知り得ていたとはいえるとしても、被請求人に本件店舗の業務を妨害する意図があったとはいい難く、故意に、本件店舗ないし(株)池善化粧品店との関係において、出所の混同を生じさせたとまではいえない。
したがって、被請求人による本件商標の使用について、商標法第51条第1項の「故意」を認めることはできない。
6 むすび
以上のとおり、被請求人である本件商標権者による本件商標の指定役務又はこれに類似する役務について、本件商標に類似する商標(使用商標)の使用は、故意に他人である(株)池善化粧品店の業務に係る役務と混同を生じるものをしたとはいうことができないから、商標法第51条第1項の要件に該当しないものである。
したがって、本件商標の登録は、商標法第51条第1項により取り消すことができない。
よって、結論のとおり審決する。
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2022-300836