特許拒絶査定不服審判
2023-022103
製造装置、システム及び方法
- 審判番号
- 2023-022103
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2019-539371外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2023年12月26日
- 審決日
- 2025年11月26日
- 公報発行日
- 2026年02月27日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 分類
- P18 .121-Z (A61K)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第17条の2第5項、特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2019-539371「製造装置、システム及び方法」拒絶査定不服審判事件〔平成31年 3月 7日国際公開、WO2019/044559〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、2018年(平成30年)8月20日(優先権主張 平成29年8月30日)を国際出願日とする出願であって、その主な手続の経緯は、次のとおりである。
令和4年 8月22日付け 拒絶理由通知書
同年12月 1日 意見書及び手続補正書の提出
令和5年 3月 7日付け 拒絶理由通知書
同年 7月 5日 意見書及び手続補正書の提出
同年 9月21日付け 拒絶査定
同年12月26日 審判請求書及び手続補正書の提出
第2 令和5年12月26日提出の手続補正書による手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和5年12月26日提出の手続補正書による手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1 補正の内容
(1)本件補正前(令和5年7月5日提出の手続補正書)の特許請求の範囲の記載は以下のとおりである。
「【請求項1】
医療用製品の原材料となる人又は動物の細胞又は組織を分析して初期分析データを生成する分析部と、
前記初期分析データを中央管理装置に送信し、且つ、前記原材料の加工条件として予め定められたデザインスペースの範囲内において、前記中央管理装置が前記初期分析データに基づいて最適化した前記原材料の加工条件を示す初期加工データを受信する通信部と、
前記初期加工データに従って前記原材料を加工する加工部とを含む、医療用製品を製造する製造装置。
【請求項2】
医療用製品の原材料となる人又は動物の細胞又は組織を分析して初期分析データ、及び、前記人又は前記動物の臨床データを生成する分析部と、
前記初期分析データ及び前記臨床データを中央管理装置に送信し、且つ、前記原材料の加工条件として予め定められたデザインスペースの範囲内において、前記初期分析データ及び前記臨床データに基づいて前記中央管理装置が最適化した前記原材料の加工条件を示す初期加工データを受信する通信部と、
前記初期加工データに従って前記原材料を加工する加工部とを含む、
医療用製品を製造する製造装置。
【請求項3】
前記製造装置は、前記細胞又は組織を採集する場所に設置された、
請求項1又は2に記載の製造装置。
【請求項4】
前記分析部は、前記原材料を加工して得られる中間生成物の中間分析データを生成し、
前記通信部は、前記中間分析データを前記中央管理装置に送信し、且つ、前記中間生成物の加工条件として予め定められたデザインスペースの範囲内において、前記中央管理装置が前記中間分析データに基づいて最適化した前記中間生成物の加工条件を示す中間加工データを受信し、
前記加工部は、前記中間加工データに従って前記中間生成物を加工する、請求項1又は請求項2に記載の製造装置。
【請求項5】
前記加工部は、前記細胞又は前記組織を培養する、請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の製造装置。
【請求項6】
少なくとも前記分析部及び前記加工部の一方から前記分析部及び前記加工部の他方へ前記原材料を輸送する移送部を含む、請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載の製造装置。
【請求項7】
前記医療用製品は、自家製品である、請求項1乃至請求項6のいずれか一項に記載の製造装置。
【請求項8】
前記分析部は、前記原材料から製造された前記医療用製品の最終分析データを生成し、
前記通信部は、前記中央管理装置において前記最終分析データを前記初期分析データ及び前記初期加工データと関連付けて記録させるために、前記中央管理装置に前記最終分析データを送信する、請求項1乃至請求項7のいずれか一項に記載の製造装置。
【請求項9】
請求項8に記載の製造装置を複数含み、
前記中央管理装置は、
複数の前記製造装置のそれぞれから送信される前記初期分析データ、前記初期加工データ及び前記最終分析データを関連付けて記録する中央記憶部と、
複数の前記製造装置のいずれか一である対象製造装置において新たに生成された最新の初期分析データを前記対象製造装置が送信した場合に、前記中央記憶部において関連付けて記録されている前記初期分析データ、前記初期加工データ及び前記最終分析データを参照して、前記最新の初期分析データに最適な最新の初期加工データを生成する中央解析部と、
前記最新の初期加工データを前記対象製造装置に送信する中央通信部とを含む、システム。
【請求項10】
中央管理装置によって制御される製造装置において医療用製品を製造するための方法であって、
前記製造装置が、医療用製品の原材料となる人又は動物の細胞又は組織を分析して初期分析データを生成するステップと、
前記製造装置が、前記初期分析データを前記中央管理装置に送信するステップと、
前記中央管理装置が、前記原材料の加工条件として予め定められたデザインスペースの範囲内において、前記初期分析データに基づいて最適化した前記原材料の加工条件を示す初期加工データを生成するステップと、
前記中央管理装置が、前記初期加工データを前記製造装置に送信するステップと、
前記製造装置が、前記初期加工データに従って前記原材料を加工するステップとを含む、方法。」
(2)本件補正後(令和5年12月26日提出の手続補正書)の特許請求の範囲の記載
上記(1)の本件補正前の特許請求の範囲の記載は、以下のとおり、本件補正後の特許請求の範囲の記載に補正された。なお、下線は補正箇所を示す。
「【請求項1】
医療用製品の原材料となる人又は動物についての細胞又は組織を分析して初期分析データを生成する分析部と、
前記初期分析データを中央管理装置に送信し、且つ、前記原材料の加工条件として予め定められたデザインスペースの範囲内において、前記中央管理装置が前記初期分析データに基づいて最適化した前記原材料の加工条件を示す初期加工データを受信する通信部と、
前記初期加工データに従って前記原材料を加工する加工部とを含む、
医療用製品を製造する製造装置。
【請求項2】
医療用製品の原材料となる人又は動物についての細胞又は組織を分析して初期分析データ、及び、前記人又は前記動物の臨床データを生成する分析部と、
前記初期分析データ及び前記臨床データを中央管理装置に送信し、且つ、前記原材料の加工条件として予め定められたデザインスペースの範囲内において、前記初期分析データ及び前記臨床データに基づいて前記中央管理装置が最適化した前記原材料の加工条件を示す初期加工データを受信する通信部と、
前記初期加工データに従って前記原材料を加工する加工部とを含む、
医療用製品を製造する製造装置。
【請求項3】
前記製造装置は、前記細胞又は組織を採集する場所に設置された、
請求項1又は2に記載の製造装置。
【請求項4】
前記分析部は、前記原材料を加工して得られる中間生成物の中間分析データを生成し、
前記通信部は、前記中間分析データを前記中央管理装置に送信し、且つ、前記中間生成物の加工条件として予め定められたデザインスペースの範囲内において、前記中央管理装置が前記中間分析データに基づいて最適化した前記中間生成物の加工条件を示す中間加工データを受信し、
前記加工部は、前記中間加工データに従って前記中間生成物を加工する、請求項1又は請求項2に記載の製造装置。
【請求項5】
前記加工部は、前記細胞又は前記組織を培養する、請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の製造装置。
【請求項6】
少なくとも前記分析部及び前記加工部の一方から前記分析部及び前記加工部の他方へ前記原材料を輸送する移送部を含む、請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載の製造装置。
【請求項7】
前記医療用製品は、自家製品である、請求項1乃至請求項6のいずれか一項に記載の製造装置。
【請求項8】
前記分析部は、前記原材料から製造された前記医療用製品の最終分析データを生成し、
前記通信部は、前記中央管理装置において前記最終分析データを前記初期分析データ及び前記初期加工データと関連付けて記録させるために、前記中央管理装置に前記最終分析データを送信する、請求項1乃至請求項7のいずれか一項に記載の製造装置。
【請求項9】
請求項8に記載の製造装置を複数含み、
前記中央管理装置は、
複数の前記製造装置のそれぞれから送信される前記初期分析データ、前記初期加工データ及び前記最終分析データを関連付けて記録する中央記憶部と、
複数の前記製造装置のいずれか一である対象製造装置において新たに生成された最新の初期分析データを前記対象製造装置が送信した場合に、前記中央記憶部において関連付けて記録されている前記初期分析データ、前記初期加工データ及び前記最終分析データを参照して、前記最新の初期分析データに最適な最新の初期加工データを生成する中央解析部と、
前記最新の初期加工データを前記対象製造装置に送信する中央通信部とを含む、システム。
【請求項10】
中央管理装置によって制御される製造装置において医療用製品を製造するための方法であって、
前記製造装置が、医療用製品の原材料となる人又は動物についての細胞又は組織を分析して初期分析データを生成するステップと、
前記製造装置が、前記初期分析データを前記中央管理装置に送信するステップと、
前記中央管理装置が、前記原材料の加工条件として予め定められたデザインスペースの範囲内において、前記初期分析データに基づいて最適化した前記原材料の加工条件を示す初期加工データを生成するステップと、
前記中央管理装置が、前記初期加工データを前記製造装置に送信するステップと、
前記製造装置が、前記初期加工データに従って前記原材料を加工するステップとを含む、方法。」
2 補正の目的の適否(特許法第17条の2第5項違反の有無)について
(1)本件補正は、以下の補正事項を含むものである。
補正前の請求項1、2、及び10に記載された「医療用製品の原材料となる人又は動物の細胞又は組織」を「医療用製品の原材料となる人又は動物についての細胞又は組織」とする補正。
(2)次に、補正の目的について検討する。
審判請求書において補正の目的について何ら説明がされていないところ、補正前の請求項1、2、及び10に記載された「医療用製品の原材料となる人又は動物の細胞又は組織」との記載は明確であって、誤記を含むとはいえず、かつ、本件補正により「医療用製品の原材料となる人又は動物についての細胞又は組織」とすることによって、特許請求の範囲が減縮されるともいえないから、本件補正は特許請求の範囲の限定的限縮、誤記の訂正又は明りょうでない記載の釈明を目的とするものではない。
(3)小括
したがって、本件補正は、特許法第17条の2第5項各号に規定するいずれの目的にも該当しない補正事項を含むものである。
よって、上記補正事項を含む本件補正は、特許法第17条の2第5項の規定に違反するものである。
3 まとめ
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第5項に違反するものであるから、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。
よって、上記補正の却下の結論のとおり決定する。
第3 本願発明について
1 本願発明
上記第2のとおり、本件補正は却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、令和5年7月5日提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された以下のとおりのものである。
「【請求項1】
医療用製品の原材料となる人又は動物の細胞又は組織を分析して初期分析データを生成する分析部と、
前記初期分析データを中央管理装置に送信し、且つ、前記原材料の加工条件として予め定められたデザインスペースの範囲内において、前記中央管理装置が前記初期分析データに基づいて最適化した前記原材料の加工条件を示す初期加工データを受信する通信部と、
前記初期加工データに従って前記原材料を加工する加工部とを含む、医療用製品を製造する製造装置。」
2 原査定の理由
原査定の拒絶の理由は、この出願の請求項1~10に係る発明は、その出願の優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記引用文献5に記載された発明及び周知技術(下記引用文献2、3及び7)に基づいて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。
<引用文献等一覧>
2.LIPSITZ YY et al., Quality cell therapy manufacturing by design, NATURE BIOTECHNOLOGY, 2016年, Vol.34, No.4, p.393-400
3.川崎ナナ他, クオリティ・バイ・デザインにより製造・管理される抗体医薬品等の医薬品各条記載に関する研究, 医薬品医療機器レギュラトリーサイエンス, 2016年, Vol.47, No.1, p.60-63
5.特表2012-515984号公報
7.ファルマシア, 2017年, Vol.53, No.5, p.415-519
3 引用文献に記載された事項及び引用発明
(1)引用文献5(特表2012-515984号公報)の記載事項及び引用発明
ア 引用文献5の記載事項
原査定の拒絶理由で引用された、本願優先日前に発行された引用文献5には、以下の事項が記載されている。なお、下線は当審により付したものであり、「・・・」は摘記の省略を示す。(以下、他の文献の摘記事項における下線及び「・・・」についても同様である。)
・記載事項5-1(請求項37)
「【請求項37】
製造工程を制御するシステムであって、該システムは、
複数の工程ツールから、一組の工程パラメータの期待値を代表している操作変数データを収集し、複数のセンサから、該複数のセンサによって観測される第2の組の工程パラメータの値を代表している従属変数データを収集するデータ収集手段と、
該製造工程の該複数の工程ツールの動作パラメータを決定する工程制御手段と、
多変量統計モデルに基づいて、該工程制御手段に提供するための該操作変数データの値を決定する多変量制御手段であって、該多変量統計モデルは、少なくとも該収集された操作変数および従属変数データを受信し、少なくとも該受信されたデータに基づいて、該工程制御手段に予測収率値および統計情報を提供する、多変量制御手段と
を備える、システム。」
・記載事項5-2(【0002】、【0006】、【0007】)
「【0002】
(背景)
多くの産業において、非常に大量のデータセットが製造および研究開発の両方において収集される。製造工程は、「バッチ」製造工程または「連続」製造工程に分類されることがある。・・・バッチ製造工程の例は、半導体ウエハ加工(例えば、単一のウエハを加工することによって一組のチップをもたらす)、製剤加工(例えば、工程が化学物質または薬剤の一組の中間または最終生産物をもたらす)、または生物工学加工(例えば、工程が特定の生物発酵または細胞培養工程をもたらす)を含む。
・・・
【0006】
同様に、製剤および生物工学生産では、米国食品医薬品局(U.S.Food and Drug Administration)等の規制機関が、指定品質プロファイルに関して非常に小さい変動を伴う高品質の製品を維持するように、製造工程に関する厳格な仕様の順守を要求する。これらの仕様は、工程変数のオンライン測定と、例えば、プロセスガスクロマトグラフィ、近赤外分光法、および質量解析法等の付加的な多次元センサ技法とを必要とする。理想的には、製造工程中に測定されるデータは、工程条件が工程仕様にどれだけ近いかに関する指示または情報を提供するように、および仕様からの逸脱を補正するように、リアルタイム解析および/または補正に利用可能である。
【0007】
規制機関はしばしば、工程がある「知識空間」内で維持されていることを実証するように製造業者に要求し、その場合、知識空間は、実験および/または機構的知識を通して探索された動作領域を含む。例えば、製剤および生物工学産業では、この概念は、「クオリティバイデザイン(Quality by Design)」または「QbD」として知られている。知識空間はまた、「設計空間」とも呼ばれ得、概して、指定品質基準を満たすように検証された製品を生産してきた動作領域を含む。」
・記載事項5-3(【0010】~【0013】)
「【0010】
製造工程を解析し、制御するための1つの方法は、「統計的工程制御」(「SPC」)または「多変量統計的工程制御」(「MSPC」)として知られている。概して、統計的工程制御方法は、工程が正常に動作しているか否かを決定するために、システムが製造工程の多変量ベースの監視を提供する開ループ工程である。システムは、生産した製品が基準を満たすか否か、工程が過去の望ましい動作と一貫して動作するか否か、または他の監視基準を決定するために製造工程を監視する。統計的工程制御システムが正常な動作からの逸脱を検出すると、アラームが誘起され、操作者または工程技術者に逸脱を信号伝達する。操作者または工程技術者は、アラームを解釈し、逸脱の基礎的原因を決定する。次いで、操作者または工程技術者は、製造工程を正常な動作条件に戻すように、手動で是正措置を講じる。SPCまたはMSPC工程の1つの欠点は、操作者または工程技術者が問題を診断し、手動で是正ステップを実装するという要件である。
【0011】
また、既存の統計的工程制御方法は、バッチ工程に適用することがより困難である。バッチ製造工程に対する制御は、工程を監視すること、およびバッチに対する所望の結果に対応する経路に沿って(例えば、工程パラメータを調整することによって)工程を維持することを含む。このバッチ工程に多変量制御策を適用することへのアプローチは、バッチレベルスコア空間を最適化し、次いで、最適化されたスコア空間をもたらす工程経路を決定しようとする。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0012】
以前のアプローチの欠点は、工程技術者がアラームを受信および解釈し、次いで、是正措置を決定および実装することに関連した休止時間である。本明細書で説明される概念は、モデル(例えば、予測モデル)に基づいて製造工程を制御する閉ループ工程を含む。予測モデルは、製造工程における故障を検出および識別し、望ましい動作パラメータを維持するように製造工程を手動で操作または制御するシステムまたは方法に組み込まれる。ここで説明されるモデル予測概念を使用することは、例えば、バッチ工程の結果を制御または最適化するために、加工中にバッチ経路を調整することによって、バッチ工程に対する自動制御を可能にする。概念的に、ここで説明されるアプローチは、工程監視のほかに多変量制御(例えば、自動制御)の層を追加する。したがって、工程における潜在的問題を検出および診断することに加えて、ここで説明される方法、システム、およびコントローラは、閉ループ工程を介して、実質的にリアルタイムで(例えば、工程の動作パラメータを修正することによって)是正措置を実装することができ、より高く一貫した品質、より少ない除外または廃棄される材料あるいは最終製品、より少ない休止時間、およびより少ない人為的エラーの機会をもたらす。
【0013】
「クオリティバイデザイン」の概念は、望ましい一貫した品質を確保するように工程条件を調整する制御方法の使用を推進する。従来のモデルベースの制御方法は、バッチ製造工程に好適ではなく、設計空間内にバッチ工程を制約するように設計されておらず、したがって、これらの制御方法は、設計または知識空間外にある新しい未開の動作領域の中へ製造工程を操作する。ここで説明される概念は、閉ループシステム性能を監視し、それに応じて、許容可能な設計または知識空間に向かって製造工程を促すか、または推進する制御措置を提供することによって、例えば、許容モデル空間(例えば、DModXによって測定される)に向かう製造工程における適切に解析および加重された制約によって、この障害を克服する。ここで説明されるモデル予測概念を使用することは、例えば、バッチ工程の結果を制御または最適化するために、加工中にバッチ経路を調整することによって、バッチ工程に対する自動制御を可能にする。」
・記載事項5-4(【0016】)
「【0016】
付加的な利点は、X型変数をサブセットまたはサブタイプに区分化または分割することに起因する。X型データの1つのサブセットは、操作変数(または操作変数値)として識別され、XMVと表される。X型データの別のサブセットは、従属変数として識別され、XDと表される。操作変数は、概して、例えば、供給温度、化学的濃度、pH、ガス圧力、供給電力、電流、電圧、または加工時間等の、直接制御することができる変数または製造パラメータである。一般に、製造業者は、通常、監視および解析システムにおける工程または/およびメモリ制限により、約20未満の操作変数を計上または監視する。約20より多くの操作変数を含む工程は、計算上扱いにくくなり得る。従属変数は、概して、センサによって測定され、直接制御することができない変数である。従属変数の実施例は、例えば、チャンバ温度、ガス圧力、温度または圧力勾配、不純物レベル、スペクトルおよび/またはクロマトグラフィプロファイル、およびその他である。加えて、従属変数は、低減したデータセット(例えば、温度差、温度勾配、およびその他等の未加工データから導出された変数)を代表することができる。概して、従属変数は、製造工程中に直接調整することができる。従属変数は、例えば、実験的に決定可能および/またはモデル化されてもされなくてもよい、既知の関係または未知の関係を介して、操作変数の値に関係付ける、関連付ける、または依存することができる。」
・記載事項5-5(【0032】~【0037】)
「【0032】
図1は、プロセッサ105と、ユーザインターフェース110とを含む、例示的なシステム100を図示する。ユーザインターフェース110は、(例えば、制約の値を指定するための)プロセッサ105からの刺激に応じて、コンピュータキーボード、マウス、他の触覚インターフェース、グラフィカルユーザインターフェース、音声入力、またはユーザがプロセッサ105と通信するための他の入出力チャネルを含むことができる。ユーザインターフェース110は、コンピュータモニタ等のディスプレイを含むことができる。プロセッサ105は、加工設備115に連結される。加工設備115は、製造または加工動作を行う。例えば、半導体産業との関連で、加工設備は、ウエハ120に加工機能を行い、加工されたウエハ120’を産出する。ウエハ120および加工されたウエハ120’は、例示にすぎず、バッチ型製造工程(例えば、製剤造粒または混合あるいは他の単位加工ステップ、または生物工学発光、細胞培養、あるいは精製工程)の任意の投入および/または産出を表すことができる。加工設備115は、例えば、清掃する、精製する、材料を堆積させる、材料または化学物質を混合する、材料または化学物質を溶解させる、材料を除去する、材料を洗浄する、および/または加工設備115内で他の機能を果たすためのツールまたは工程(図示せず)を含むことができる。
【0033】
いくつかの実施形態では、ツールまたは工程は、設備115内に複数のステーションまたはユニットを含む。これらの機能は、複数の物理的パラメータ、例えば、とりわけ、ガス圧力、ガス流速、温度、時間、および/または血漿あるいは化学物質もしくは生化学的濃度と関連付けることができる。いくつかの実施形態では、パラメータは、加工後に発生する特定のウエハ120の収率損失である。物理的パラメータは、加工設備115内の変数(例えば、物理的パラメータおよび/またはツール動作条件)に関するデータを含有する複数の出力125を生じるように、監視し、操作することができる。出力125は、データを伝送すること、またはプロセッサ105に、もしくはプロセッサ105内で伝送されることが可能である電気、光、磁気、音響、または他の信号であり得る。出力125は、従属変数データXD、操作変数データXMV、または両方を代表するデータを含むことができる。いくつかの実施形態では、出力125は、従属変数データまたは操作変数データとして使用される前に操作されることができる未加工データを提供する。
【0034】
加工設備115は、データ収集モジュール130によってプロセッサ105に連結される。データ収集モジュール130は、加工設備115から出力125を受信する。いくつかの実施形態では、データ収集モジュール130は、データに、バッファリング、多重化、信号伝達、切替、経路指定、初期化、および他の機能を行い、データをプロセッサ105の他のモジュールへの通信または再伝送のための好適な形式または状態にする。
【0035】
システム100はまた、コントローラモジュール135も含む。コントローラモジュール135は、例えば、通信リンク140を介して、データ収集モジュール130からデータを受信する。コントローラモジュールは、操作変数データXMVを指定し、複数の出力145を介して、加工設備115およびデータ収集モジュール130に指定された値を伝達する。操作変数データは、特定の加工パラメータ(例えば、温度、ガス流速、圧力、加工時間、およびその他)の設定点値または特定の工程ツールに対する命令を表すことができる。コントローラモジュール135は、多変量モデル150と、予測モデル155とを含む。多変量モデル150は、従属変数データ(例えば、特定の製造工程に対する許容知識空間内のデータ)の望ましい値を生じさせる動作パラメータまたは操作変数の値を決定するために、コントローラモジュール135の他のモジュール(例えば、ソルバモジュール(図示せず))と併せて使用される。予測モデル155は、コントローラモジュール135の他のモジュールと併せて使用するための多変量の統計量、スコア、および変数値を予測するために使用される。
【0036】
加工設備115内で発生する特定の工程は、コントローラモジュール135を介してプロセッサ105によって監視または制御されることができる。コントローラモジュール135は、操作変数データの理想値を、設備115内の加工ツールまたは設備115自体によって使用される値と比較することによって、および従属変数データの理想値を、センサによって測定される値と比較することによって、加工設備115を監視し、制御する。加工設備115内の加工パラメータの実測値は、データ収集モジュール130によって測定され、および/または複数の出力125によってデータ収集モジュール130に伝達される。
【0037】
システム100はまた、メモリ160も含む。メモリ160は、例えば、後において使用するために、以前に生成された多変量モデル150’および/または以前に生成された予測モデル155’を記憶するために使用することができる。」
・記載事項5-6(【0080】、【0081】)
「【0080】
バッチ型製造工程では、目的関数Jも使用することができる。いくつかの実施形態では、バッチ型製造工程について、使用される多変量モデルの種類、どのようにデータが編成/記憶/処理されるか、およびXDの将来の値の予測は、連続型製造に対する制御とは異なる。例えば、バッチ型製造工程を制御するために使用される多変量モデルは、製造工程の全体を通して得られる工程パラメータの測定値、ならびに初期条件(例えば、原材料)に関するデータおよび最終条件(例えば、品質および/または収率)に関するデータを含む。例えば、連続型製造工程は、工程が「常時オン」であるため、概して初期または最終条件を組み込まないため、これは連続型製造工程とは異なる。
【0081】
バッチ型工程について、制御措置(例えば、動作パラメータの実装)は、例えば、原材料(例えば、初期条件)に基づいてレシピを調整すること、動作条件の変動または変化に応じた中間工程調整、工程中の周期的間隔における設定点値の更新、またはこれらの組み合わせを含むことができる。加えて、バッチ型加工について、多変量統計量(例えば、Ypred、DModX、T2、およびスコアt)が、XMV(例えば、操作変数の将来の値)およびXD(従属変数の将来の値)に対する推定入力値に基づいて推定される一方で、XKの値(操作および従属変数の過去および現在の値s)は分かっている。バッチ型工程について、多変量モデルは、(例えば、システムまたは工程の動作パラメータを更新することによって)制御措置が実装される前および/または後のバッチ型工程の一部分を表す、複数の局部的バッチモデルを含んでもよい。」
・記載事項5-7(【0086】)
「【0086】
上記の技法は、デジタル電子回路で、またはコンピュータハードウェア、ファームウェア、ソフトウェア、あるいはそれらの組み合わせで実装することができる。実装は、コンピュータプログラム製品、例えば、データ処理装置、例えば、プログラマブルプロセッサ、コンピュータ、または複数のコンピュータによって実行するため、あるいはそれらの動作を制御するように、例えば、機械可読記憶デバイスの中の情報担体で明白に具現化される、コンピュータプログラムとしてのものであり得る。コンピュータプログラムは、コンパイラ型またはインタープリタ型言語を含む、任意の形態のプログラミング言語で書くことができ、独立型プログラムとして、またはモジュール、構成要素、サブルーチン、あるいはコンピュータ環境で使用するために好適な他のユニットとしての形態を含む、任意の形態で展開することができる。コンピュータプログラムは、1つのコンピュータ、または1つの場所にある、あるいは複数の場所にわたって分布する複数のコンピュータ上で実行されるように展開し、通信ネットワークによって相互接続することができる。」
・記載事項5-8(図1)
「
[図:0001431556000001.jpg]
」
イ 引用文献5に記載された発明
引用文献5には、「製剤および」、「例えば、工程が特定の生物発酵または細胞培養工程をもたらす」「生物工学生産」においては、「規制機関が、指定品質プロファイルに関して非常に小さい変動を伴う高品質の製品を維持するように、製造工程に関する厳格な仕様の順守を要求」し、また、「しばしば、工程がある「知識空間」内で維持されていることを実証するように製造業者に要求」するところ(上記ア記載事項5-2)、「製造工程を解析し、制御するための」「既存の統計的工程制御方法」には、「操作者または工程技術者が問題を診断し、手動で是正ステップを実装する」必要があり、「バッチ工程に適用することがより困難」であるという欠点がある(上記ア記載事項5-3)との技術的背景の下、「実質的にリアルタイムで是正措置を実装することができ、より高く一貫した品質、より少ない除外または廃棄される材料あるいは最終製品、より少ない休止時間、およびより少ない人為的エラーの機会をもたらす」システム(上記ア記載事項5-3)として、「製造工程を制御するシステムであって、該システムは、複数の工程ツールから、一組の工程パラメータの期待値を代表している操作変数データを収集し、複数のセンサから、該複数のセンサによって観測される第2の組の工程パラメータの値を代表している従属変数データを収集するデータ収集手段と、該製造工程の該複数の工程ツールの動作パラメータを決定する工程制御手段と、多変量統計モデルに基づいて、該工程制御手段に提供するための該操作変数データの値を決定する多変量制御手段であって、該多変量統計モデルは、少なくとも該収集された操作変数および従属変数データを受信し、少なくとも該受信されたデータに基づいて、該工程制御手段に予測収率値および統計情報を提供する、多変量制御手段とを備える、システム」(上記ア記載事項5-1)が記載されている。
そして、引用文献5には、例示的なシステムとして、「プロセッサ105」と「コントローラモジュール135」を含み、「製造または加工動作を行う」「加工設備115」を、「データ収集モジュール130」によって「プロセッサ105」と連結し、「データ収集モジュール130」は「加工設備内の変数(例えば、物理的パラメータおよび/またはツール動作条件)に関するデータを含有する複数の出力125」を「受信」し、「コントローラモジュール135」は、「データ収集モジュール130からデータを受信」し、「特定の加工パラメータ(例えば、温度、ガス流速、圧力、加工時間、およびその他)の設定点値または特定の工程ツールに対する命令を表すことができる」「操作変数データXMVを指定し、複数の出力145を介して、加工設備115およびデータ収集モジュール130に指定された値を伝達」することにより、「加工設備115内で発生する特定の工程」を、「コントローラモジュール135を介してプロセッサ105によって監視または制御」するシステムが記載されている(上記ア記載事項5-5、5-8)。
また、引用文献5には、上記「コントローラモジュール135」は「多変量モデル150と、予測モデル155を含」み、「多変量モデル150は、従属変数データ(例えば、特定の製造工程に対する許容知識空間内のデータ)の望ましい値を生じさせる動作パラメータまたは操作変数の値を決定するために」「使用される」ことも記載されている(上記ア記載事項5-5)。
さらに、引用文献5には、加工設備で行うバッチ型製造工程について細胞培養が例示されている(上記ア記載事項5-5)ことも踏まえると、引用文献5には、次の発明が記載されていると認められる。
「細胞培養を行う加工設備であって、該加工設備は製造工程を監視または制御するシステムに連結され、
該システムは、
加工設備から、物理的パラメータ及び/又はツール動作条件を含む加工設備内の変数に関するデータを受信するデータ収集モジュールと、
該データ収集モジュールから前記加工設備内の変数に関するデータを受信し、且つ、温度、ガス流速、圧力、加工時間を含む特定の加工パラメータの設定点値又は特定の工程ツールに対する操作変数データを指定し、前記加工設備及び前記データ収集モジュールに出力するコントローラモジュールを含み、
該コントローラモジュールは、
特定の製造工程に対する許容知識空間内のデータを含む、従属変数データの望ましい値を生じさせる操作変数データを決定するための多変量モデルを使用する、
前記加工設備。」(以下「引用発明」という。)
(2)引用文献A(特開2005-224106号公報)の記載事項
当審において本願の優先日当時の技術常識を示す参考文献として新たに引用する、本願優先日前に発行された特開2005-224106号公報(以下「引用文献A」という。)には、以下の事項が記載されている。
・記載事項A-1(【0001】)
「【0001】
本発明は、細胞培養装置に係り、特に、培養している細胞を直接または顕微鏡を介してカメラで撮影することにより培養状態の情報を得て培養を制御する細胞培養装置に関する。」
・記載事項A-2(【0004】)
「【0004】
ところで、再生医療のためなどにおける種々の細胞の生産や、細胞小器官、抗体やその他の細胞の生産物質などといった細胞から得られる生成物の生産などのために細胞の培養を行う場合、必要とする量の細胞を必要な時期に得ることが望ましい。」
・記載事項A-3(【0036】、【0037】)
「【0036】
なお、本実施形態では、培養情報設定機能により、入力部11を用いて培養を行う細胞の種類、培養を開始するときの細胞数である初期細胞数を入力し設定する構成となっている。しかし、このような構成に代えて、制御部9の制御動作が複雑にはなるが、培養情報設定機能が、画像データ作成部制御機能を用い、画像データ作成部7から得た培養を開始する前の培養容器1の画像データに基づいて細胞の種類や初期細胞数などを検出して設定する構成にすることもできる。
【0037】
また、本実施形態では、細胞の種類に対応する比増殖速度を選択する構成となっているが、細胞の種類が同じでも細胞形態の違いによって増殖の状態などが異なる場合がある。このような場合には、細胞の種類に加えて細胞形態に関連付けて比増殖速度をデータベース部13に格納し、また、培養情報設定機能で、細胞の種類に加えて細胞形態を設定したり、培養条件選択機能が、比増殖速度と、細胞の種類及び細胞形態に基づいて比増殖速度を検索して選択し、この選択した比増殖速度を得たときの培養条件のデータを取得したりする構成などにすることもできる。」
・記載事項A-4(図2)
「
[図:0001431556000002.jpg]
」
(3)引用文献B(国際公開第2004/011593号)の記載事項
当審において本願の優先日当時の技術常識を示す参考文献として新たに引用する、本願優先日前に発行された国際公開第2004/011593号(以下「引用文献B」という。)には、以下の事項が記載されている。
・記載事項B-1(1欄7~11行)
「この出願の発明は、細胞または組織の自動培養装置に関するものである。さらに詳しくは、この出願の発明は、再生医療等を目的とする細胞または組織の培養 操作および培養環境の制御が自動化された培養装置に関するものである。
またこの出願の発明は、細胞または組織に対して非侵襲性の測定装置を具備した自動培養装置に関するものである。」
・記載事項B-2(16欄5~14行)
「この出願の発明の培養装置では前記のとおり、一連の培養工程が自動化されており、そして培養環境の制御も自動化されている。ここで、「培養環境の制御」とは、培養における細胞の代謝、形態、機能等に影響する要因を操作する事である。コンタミネーション防止のための滅菌ガスの導入操作や培養中の細胞や組織の形態観察、細胞数の計測、活性測定等の分析操作も含まれる。培養中の細胞や組織に影響を及ぼす要因の操作は、具体的には培養液の温度、ガスの濃度、培養液内の静圧、培養液への栄養分供給速度、培養液中の老廃物濃度、培養液のpH等が例示できる。そして、培養工程および培養環境の制御が自動化されることにより、異なる細胞間の交叉汚染等のコンタミネーションの防止、細胞や組織の増殖挙動にも対応、作業効率の向上等の効果が得られる。」
・記載事項B-3(19欄14行~20欄22行)
「この出願の発明は、たとえば、培養容器上方にXYスキャニング装置付きの各種装置等を利用した、電気容量測定、変位計測定、もしくは、発光測定に基づいて、細胞または組織の量および/または質の分析測定を行うことを可能としている。しかも、この分析測定は、細胞や組織に対して非侵襲的に観察や分析測定を行うことを可能としている。
・・・
これらの測定方法は、コンピュータ制御によって自動化され、また非侵襲的、かつ、3次元的に細胞や組織を観察、分析の測定ができる。「非侵襲的」とは、培養物である細胞や組織に接触する必要がなく、またホモゲナイズ等のような破壊的な操作も必要のない、細胞や組織に対して極めて負荷の少ないことを意味し、「3次元的」とは、平面的な情報だけでなく、細胞や組織の形成や形状等の立体的な情報、すなわち細胞の厚みや形状等のことを意味する。そして、細胞や組織の「量および/または質」とは、培養されている細胞や組織の、増殖度や成長度、あるいは、形状や各種の分泌物等のことである。」
・記載事項B-4(21欄1~28行)
「図1は、培養工程および培養環境制御が自動化された実施形態を例示している。この図1の例では、閉鎖された空間を有する箱体である培養装置1の内部には、ガスボンベ4およびガス供給装置5により、ガス濃度を一定に保つことが可能で、培養物を有した培養容器2を静置可能とした箱体であるガスインキュベーター3があり、この中に静置された培養容器2の中で細胞または組織が培養される。また、このガスインキュベーター3には、培養容器2をガスインキュベーター3の内外を円滑に移動するための開閉自在な遮断板ドア18が具備されている。培養中の培養容器2は、培養容器移動装置6により、任意に順行または逆行に培養装置1の内部を移動する。この移動の過程で、新鮮培地貯槽7内の新鮮培地供給装置8による培養液吸引量の位置制御によって一定量吸引し、培養容器2へ培養液が注入されたり、培養容器2の培養液上清を使用済み培地移送装置10の下端を培養容器2内に入れ、貯槽内が陰圧に保たれた使用済み培地貯槽9に吸引排出されたりする事により、連続的あるいは断続的に培養液の供給および交換が可能とされている。また、図に示していないが、緩衝液等の洗浄液が入った貯槽や、薬剤の入った貯槽も培養装置1内に設置することによって、洗浄や薬剤を培養液に加えることも可能とされる。もちろん、これら各々の工程を繰り返したり、あるいはスキップしたりすることも培養容器移動装置6と制御コンピュータ16により任意に制御可能とされている。また、培養容器2は顕微鏡ステージ11へも移動可能で、たとえば顕微鏡CCDカメラ12を使用して観察され、その観察画像データは観察画像データ移送装置13を介して制御コンピュータ16に送られる。また、温度、湿度、ガス濃度等の培養環境のデータが培養装置1から計測データ移送装置14を介し、同様に制御コンピュータ16に送られ、これらのデータを元に演算を行い、培養容器2の移動や遮断板ドア18の開閉、温度制御のためのデータ、ガス濃度の制御等の制御信号が制御信号伝達装置15を通じて培養装置1に伝達される。このように、ほとんど全ての培養操作が培養装置1内で行われるため、培養中に培養装置外からの化学物質、埃や雑菌等の汚染発生の可能性は極めて低い。」
(4)引用文献C(特表2013-516999号公報)の記載事項
当審において本願の優先日当時の技術常識を示す参考文献として新たに引用する、本願優先日前に発行された特表2013-516999号公報(以下「引用文献C」という。)には、以下の事項が記載されている。
・記載事項C-1(請求項1~3、5、18)
「【請求項1】
細胞培養データおよび細胞画像の取得および遠隔モニタリングシステムであって、
a)細胞データおよび細胞画像を取得し、送信するように適合されたイメージングセンサポッドと、
b)送信された細胞データおよび細胞画像を受信するように適合された管理制御ユニットと、
c)細胞データおよび細胞画像を見るための表示制御ユニットと
を含む細胞培養データおよび細胞画像の取得および遠隔モニタリングシステム。
【請求項2】
細胞が、培養容器内部に配置される担体上または溶液内に配置される、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
ポッドおよび培養容器がインキュベーションユニット内に位置する、請求項2に記載のシステム。
・・・
【請求項5】
管理制御ユニットが、送信された細胞データおよび細胞画像を記憶し、解析するようにさらに適合された、請求項1に記載のシステム。
・・・
【請求項18】
管理制御ユニットが、細胞培養処理操作を、取得された画像からの細胞培養状態の判定に基づき行わせるように適合された、請求項3に記載のシステム。」
・記載事項C-2(【0013】)
「【0013】
一実施形態では、取得および遠隔モニタリングシステムは、インキュベータ内に配置される培養容器に結合される1つまたは複数のイメージングセンサポッドを含む。あるいは、ポッドは、インキュベータに、またはインキュベータと培養容器の両方に結合させられうる、またはドッキングされうる。細胞培養データおよび細胞画像の取得および遠隔モニタリングシステムは、(1)ポッドにアドレスして、細胞の健康状態および生存率、ならびに細胞培養の状態に関する画像、データ、および情報をアップロードおよびダウンロードする、(2)細胞の静止画および/または動画、ならびに細胞培養データを記憶および解析する、(3)測定結果および必要な詳細を提供して、意思決定を容易にする、(4)ポッド、培養容器、担体、およびインキュベータに対する動作制御を提供して、自動的にまたはユーザの介入で命令を実行する、すなわち、細胞の健康状態および生存率ならびに細胞培養を維持するために必要な、推奨される細胞培養処理操作を実行するためのコンピュータおよびソフトウェアを含むデータベース管理システムを含む。」
・記載事項C-3(【0069】)
「【0069】
好ましくは、遠隔でアクセス可能なセンサポッド20は、ユーザがポッド20をプログラムして、ネットワークアクセス可能なグラフィカルユーザインタフェースを介して異なる空間位置および時点に静止画および/または動画を得るように設計され、その結果、カメラは各空間位置に自動的に焦点を合わせ、連続した画像を自動的に24時間休みなしに得る。静止画および/または動画が収集されると、カスタムの画像処理および認識ソフトウェアが、たとえば、細胞のサイズ、細胞のサイズ対容積、細胞の平均直径、表面領域粒子、細胞の流量、細胞の流れのパターン、細胞の集団分布、細胞の生存率、集塊物またはクランピングの存在、細胞の色変化、処理液の温度および粘度などを含むさまざまな応用ベースの画像メトリックスを計算し、グラフで表す。この情報は、処理操作パラメータの変更をリアルタイムで実現するための制御ツールとして使用されうる。」
(5)引用文献D(各都道府県知事あて厚生労働省医薬局長通知:薬食発第0208003号)の記載事項
当審において本願の優先日当時の技術常識を示す参考文献として新たに引用する、本願優先日前に公開された「ヒト(自己)由来細胞や組織を加工した医薬品又は医療機器の品質及び安全性の確保について」と題する「各都道府県知事あて厚生労働省医薬局長通知:薬食発第0208003号, 平成20年2月8日」(以下「引用文献D」という。)には、以下の事項が記載されている。
・記載事項D-1(1頁1~13行)
「ヒト由来の細胞・組織を加工した医薬品又は医療機器の品質及び安全性を確保するために必要な基本的要件については、平成12年12月26日付け医薬発第1314号厚生省医薬安全局長通知「ヒト又は動物由来成分を原料として製造される医薬品等の品質及び安全性確保について」の別添2「ヒト由来細胞・組織加工医薬品等の品質及び安全性の確保に関する指針」(以下「平成12年指針」という。)を定め運用してきたが、その後の科学技術の進歩や経験の蓄積を踏まえ見直しを進めてきたところである。
今般、ヒト由来の細胞・組織のうち、自己由来の細胞・組織を加工した医薬品又は医療機器(以下「自己由来細胞・組織加工医薬品等」という。)の品質及び 安全性の確保のための基本的な技術要件について別添「ヒト(自己)由来細胞・組織加工医薬品等の品質及び安全性の確保に関する指針」のとおりとりまとめ、自己由来細胞・組織加工医薬品等については、平成12年指針に代え本指針によることとしたので、御了知の上、貴管下関係団体、関係機関等に周知願いたい。」
・記載事項D-2(別添指針8頁13行~9頁3行)
「第2 製造工程
細胞・組織加工医薬品等の製造に当たっては、製造方法を明確にし、可能な範囲でその妥当性を以下の項目で検証し、品質の一定性を保持すること。
・・・
2 製造方法
原材料となる細胞・組織の受け入れから最終製品に至る製造の方法の概要を示すとともに、具体的な処理内容及び必要な工程管理、品質管理の内容を明らかにすること。
(1) 受入検査
採取した細胞・組織について、細胞・組織の種類や使用目的に応じて実施する受入のための試験検査の項目(例えば、目視検査、顕微鏡検査、採取収率、生存率、細胞・組織の特性解析及び微生物試験等)と各項目の判定基準を設定すること。確認申請段階にあっては、それまでに得られた試験検体での実測値を提示し、これらを踏まえた暫定値を示すこと。
・・・
(4) 培養工程
製造工程中に培養工程が含まれる場合は、培地、培養条件、培養期間及び収率等を明らかにすること。」
(6)引用文献7(ファルマシア,2017年5月1日,Vol.53, No.5, p.415-419)の記載事項
原査定の拒絶理由で引用された本願の優先日当時の技術常識を示す引用文献7である、本願優先日前に発行された「ファルマシア,2017年5月1日,Vol.53, No.5, p.415-419」には、以下の事項が記載されている。
・記載事項7-1(418頁右欄16~19行)
「デザインスペース(design space:DS)とは,品質を確保することが立証されている入力変数(原料の性質など)と工程パラメータの多元的な組み合わせと相互作用(Q8 ガイドラインの定義).」
4 対比・判断
(1)対比
本願発明と引用発明を対比する。
ア 本願の特許請求の範囲の請求項5に記載されるように、本願発明は、「加工部」が細胞又は組織を「培養する」ものを包含するから、引用発明の「細胞培養を行う加工設備」は、本願発明の「原材料を加工する加工部」「を含む」「製造装置」に相当する。
イ 引用発明において、「コントローラモジュール」が「加工設備」に出力する「操作変数データ」は、特定の「加工パラメータの設定点値」又は特定の「工程ツール」に対する「命令」を表すものであって(上記3(1)ア記載事項5-5)、当該「加工設備」は当該「設定点値」又は「命令」に従って「加工する」から、引用発明における「操作変数データ」は、本願発明における「加工条件を示す」「加工データ」に相当し、本願発明と引用発明とは「加工データに従って」「加工する加工部」を含む点で共通する。
ウ 引用発明における「許容知識空間」に関し、引用文献5には、「知識空間は、「設計空間」とも呼ばれ得」、「実験および/または機構的知識を通して探索され」、「指定品質基準を満たすように検証された製品を生産してきた動作領域を含む」こと、「「クオリティバイデザイン」の概念は、望ましい一貫した品質を確保するように工程条件を調整する制御方法の使用を推進する。・・・ここで説明される概念は、閉ループシステム性能を監視し、それに応じて、許容可能な設計または知識空間に向かって製造工程を促すか、または推進する制御措置を提供する・・・」と記載されるところ(上記3(1)ア記載事項5-2、5-3)、引用文献5に記載される前記「設計空間」が「design space」の訳であること(必要であれば、引用文献5の原文である国際公開第2010/085479号の[007]を参照。)、及び、引用文献7(上記3(6)記載事項7-1)に記載されるように、「デザインスペースとは、品質を確保することが立証されている入力変数と工程パラメータの多元的な組み合わせと相互作用」として定義されるものであることから、引用発明の「許容知識空間内」は、本願発明の「加工条件として予め定められたデザインスペースの範囲内」に相当する。
エ 引用発明における「コントローラモジュール」は、「加工設備内の変数に関するデータを受信」するともに、「多変量モデルを使用」し、「特定の製造工程に対する許容知識空間内のデータを含む、従属変数データの望ましい値を生じさせる動作パラメータ又は操作変数データを決定する」ものであるところ、引用文献5には「多変量統計モデルは、少なくとも該収集された操作変数および従属変数データを受信し、少なくとも該受信されたデータに基づいて、該工程制御手段に予測収率値および統計情報を提供する」と記載されていることからみて(上記3(1)ア記載事項5-1)、当該「多変量モデル」は、受信した「加工設備内の変数に関するデータ」に基づき、従属変数データが望ましい値となるように前記「操作変数データ」を許容知識空間内において「最適化」しているといえる。
したがって、引用発明の「特定の製造工程に対する許容知識空間内のデータを含む、従属変数データの望ましい値を生じさせる操作変数データを決定する」「コントローラモジュール」を含む「製造工程を監視又は制御するシステム」は、本願発明の「加工条件として予め定められたデザインスペースの範囲内において、」「加工条件を」、加工部から送信された「データに基づいて最適化」する「中央管理装置」に相当する。
オ 引用発明において、「製造工程を監視又は制御するシステム」の「データ収集モジュール」は、「加工設備」から「加工設備内の変数に関するデータ」を「受信」し、また「製造工程を監視又は制御するシステム」の「コントローラモジュール」は、「操作変数データ」を指定して「加工設備」に「出力する」ことから、引用発明の「加工設備」が「製造工程を監視または制御するシステム」との間でデータを「送信」及び「受信」する「通信部」を含むことは自明である。
そうすると、本願発明と引用発明とは、
「データを中央管理装置に送信し、且つ、加工条件として予め定められたデザインスペースの範囲内において、前記中央管理装置が前記データに基づいて最適化した加工条件を示す加工データを受信する通信部と、
前記加工データに従って加工する加工部とを含む、
製造装置」である点で一致し、次の点で一応相違または相違する。
<一応の相違点1>
本願発明では、製造装置が「分析データを生成する分析部」を含むことが特定されているのに対し、引用発明ではその特定がない点。
<相違点2>
本願発明では、「医療用製品を製造する」製造装置であって、「医療用製品の原材料となる人又は動物の細胞又は組織を分析し」た「初期分析データ」に基づいて最適化された「初期加工データ」に従って原材料を加工することが特定されているのに対し、引用発明ではその特定がない点。
(2)判断
上記相違点について検討する。
ア 一応の相違点1について
引用文献5には「データ収集手段」は「複数の工程ツールから、一組の工程パラメータの期待値を代表している操作変数データを収集し、複数のセンサから、該複数のセンサによって観測される第2の組の工程パラメータの値を代表している従属変数データを収集する」と記載されていることからみて(上記3(1)ア記載事項5-1)、引用発明における「データ収集モジュール」が加工設備から受信する「物理的パラメータおよび/またはツール動作条件を含む加工設備内の変数に関するデータ」は「従属変数データ」を含むところ、引用文献5には、従属変数は「概して、センサによって測定され、・・・例えば、チャンバ温度、ガス圧力、温度または圧力勾配、不純物レベル、スペクトルおよび/またはクロマトグラフィプロファイル、およびその他である」こと、及び「従属変数は、低減したデータセット(例えば、温度差、温度勾配、およびその他等の未加工データから導出された変数)を代表することができる」ことが記載されているから(上記3(1)ア記載事項5-4)、従属変数データは、加工設備内の環境等の測定値から導出されたデータ、すなわち「分析データ」を含むといえる。
そうすると、引用発明の「加工設備」は「分析部」を含むといえるから、相違点1は実質的な相違点ではない。
また、仮に引用発明の「加工設備」が「分析部」を含むといえないとしても、引用文献A~Cに記載されるように、細胞の状態を分析する分析部を有し、分析部が生成する分析データに基づいて培養条件を制御する細胞培養装置は本願優先日当時の技術常識であったことからみれば(上記3(2)記載事項A-1、A-3、A-4、(3)記載事項B-1~B-4、(4)記載事項C-1~C-3)、引用発明の細胞培養を行う加工設備に、細胞の状態を分析する分析部を設け、該分析部が生成する分析データに基づいて培養条件を制御することは当業者が適宜なし得ることである。
イ 相違点2について
上記3(1)ア記載事項5-2からみて、引用発明は、米国食品医薬品局等の規制機関の規制対象となる「医薬品製剤」の加工設備を想定した発明であるところ、引用文献A、B、Dに記載されるように、人又は動物の細胞又は組織を培養して再生医療製品、すなわち医療用製品を製造すること(上記3(2)記載事項A-2、(3)記載事項B-1、(5)記載事項D-2)及びその製造に際し、原材料となる細胞・組織の分析を含む原材料の受け入れから最終製品に至る製造工程の管理及び品質の一定性を保持することが基本的な技術要件であること(上記3(5)記載事項D-1、D-2)は、本願優先日当時の再生医療製品分野における技術常識であった。
さらに、引用文献5には「バッチ型製造工程を制御するために使用される多変量モデルは、製造工程の全体を通して得られる工程パラメータの測定値、ならびに初期条件(例えば、原材料)に関するデータおよび最終条件(例えば、品質および/または収率)に関するデータを含」み、「バッチ型工程について、制御措置(例えば、動作パラメータの実装)は、例えば、原材料(例えば、初期条件)に基づいてレシピを調整すること、を含むことができる」(上記3(1)ア記載事項5-6)と記載され、引用文献5においても、製造工程全体を監視及び制御すること、及び原材料に関するデータに基づいて初期加工条件の調整を行うことが記載されている。
そうすると、本願優先日当時の再生医療製品分野における技術常識を踏まえ、引用文献5における上記記載に接した当業者であれば、引用発明の「細胞培養を行う加工設備」を、「再生医療製品」の製造装置とすることは当業者が容易に想起し得ることであり、その際に、規制機関が定める要件を満たすために、「原材料となる細胞等を分析」した「初期分析データ」に基づいて最適化した「初期加工データ」を指定することとして、原材料の受け入れから最終製品に至る製造工程全体を管理することは、技術の具体的適用に伴って当業者が当然行うことに過ぎない。
ウ 本願発明の効果について
本願発明と引用発明との上記相違点に伴う効果について検討する。
本願明細書の発明の詳細な説明(【0013】、【0014】)には、本願発明の効果について、原材料となる細胞又は組織を採集した場所での医療用製品の製造(オンサイト製造)が可能となり、細胞又は組織の経時変化や周囲環境の変化の影響を受けずに、又は、低減して医療用製品を製造することが容易になること、及び原材料に個体差が存在する場合であっても、所望の医療用製品を製造することが容易になること等が記載されている。
しかしながら、上記(1)オで説示したように、引用発明の「細胞培養を行う加工設備」の「製造工程を監視又は制御するシステム」は、通信によって加工設備との間でデータを受送信するものであるところ、引用文献5には「コンピュータプログラムは、1つのコンピュータ、または1つの場所にある、あるいは複数の場所にわたって分布する複数のコンピュータ上で実行されるように展開し、通信ネットワークによって相互接続することができる」と記載され(上記3(1)ア記載事項5-7)、また、遠隔制御できる細胞培養装置も本願優先日当時の技術常識であったこと(上記3(4)記載事項C-1~C-3)も併せ鑑みれば、引用発明の「細胞培養を行う加工設備」をその「製造工程を監視又は制御するシステム」とは離れた任意の場所に設置できることは明らかであるから、上記効果は、引用発明の構成から当業者が当然予測し得る効果に過ぎない。
(3) 審判請求人の主張
ア 審判請求人の主張
審判請求人は、審判請求書において、次の(ア)~(ウ)の点を述べ、本願発明の進歩性を主張する。
(ア) 引用文献5には、「医療用製品」であること、「人又は動物についての細胞又は組織を分析」する処理及び「初期分析データを生成」する処理の明示がない。
(イ) 原査定における引用文献2、5及び7に基づく「クオリティバイデザインを用いた製造において、原薬および原材料特性など品質に影響を及ぼす可能性のある事項である重要性の高い項目を重要品質特性として特定し、デザインスぺースを用いて製造を行うことは従来周知」との指摘は誤りであり、引用文献5に基づいて、本願発明1に係る「前記初期加工データに従って前記原材料を加工する加工部」との構成に容易に想到し得ない。
(ウ) 引用文献5は、プロセッサ105と、ユーザインターフェース110と、加工設備115のみを開示するものであり、本願発明1に係る中央管理装置と製造装置を分離する、装置の役割分担を含む構成及び技術思想は、何ら開示も示唆もない。
イ 審判請求人の主張に対する判断
(ア) 主張(ア)について
上記(2)イで説示したとおり、引用文献5には、「医薬品製剤」及び「初期条件(例えば、原材料)に関するデータ」についての記載がある。また、「人又は動物についての細胞又は組織を分析」する「分析部」についても、上記(2)アで説示したとおりである。
(イ) 主張(イ)について
上記(1)ウ及びエで説示したように、引用発明の「特定の製造工程に対する許容知識空間内のデータを含む、従属変数データの望ましい値を生じさせる動作パラメータ又は操作変数データを決定する」「コントローラモジュール」を含む「製造工程を監視又は制御するシステム」は、本願発明の「加工条件として予め定められたデザインスペースの範囲内において、」「加工条件を」加工部から送信された「データに基づいて最適化」する「中央管理装置」に相当する。そして、上記(2)イで説示したように、引用文献5には、製造工程全体を監視及び制御すること、及び原材料に関するデータに基づいて初期加工条件の調整を行うことも記載されている。
したがって、仮に原査定において引用文献2、5及び7に基づき「従来周知」と認定した技術が、本願優先日当時における周知技術でなかったとしても、上記(2)イで説示した判断を左右するものではない。
(ウ) 主張(ウ)について
上記(1)オで説示したように、引用発明の加工設備は通信部を含むものであって、加工設備を監視又は制御するシステムとは分離されているといえるし、仮にそうではないとしても、上記(2)ウで説示したことに照らせば、引用発明において、加工設備を監視又は制御するシステムと加工設備とを異なる場所に位置させ、それぞれのコンピュータプログラムを通信ネットワークによって相互接続する程度のことは、当業者が適宜なし得ることである。
(エ) 以上のとおりであるから、審判請求書の主張はいずれも採用することはできない。
(4) 小括
以上のとおりであるから、本願発明は引用発明、引用文献5に記載された事項に基づき、当業者が容易に発明をすることができたものである。
第4 むすび
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、引用文献5に記載された発明及び引用文献5に記載された事項に基づき、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2023-022103