2023-021963
原盤
- 審判番号
- 2023-021963
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2022-111792外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2023年12月25日
- 審決日
- 2024年12月23日
- 公報発行日
- 2025年03月28日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】デクセリアルズ株式会社
- 【請求人代理人】弁理士法人青海国際特許事務所
- 分類
- P18 .561-Z (B29C) / P18 .55 -Z (B29C)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法17条の2第3項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第17条の2第3項
- データ出所
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結論
理由
目次 ▾ 10項目
第1 手続の経緯
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本件出願(特願2022-111792号)は、平成29年 6月21日に出願した特願2017-121722号の一部を令和 4年 2月 8日に新たに出願した特願2022-17782号の一部を令和 4年 7月12日に新たに出願したものであって、その手続きの経緯は、概略、以下のとおりである。
第2 令和 5年12月25日提出の手続補正書による手続補正についての補正却下の決定
[結論]
令和 5年12月25日提出の手続補正書による手続補正を却下する。
[理由]
1 補正の内容
令和 5年12月25日提出の手続補正書による手続補正(以下「本件補正」という。)は、特許請求の範囲(令和 5年 2月 3日提出の手続補正書により補正されたもの)について、本件補正前の請求項1~請求項5を、それぞれ、本件補正後の請求項1~請求項5とすることを含むものであるところ、本件補正前の請求項1の記載、及び、本件補正後の請求項1の記載は、それぞれ以下の(1)及び(2)のとおりのものである(下線部は、当合議体が付したものであり、本件補正による補正箇所を示す。)。
(1) 本件補正前の請求項1
「 円柱形状または円筒形状の原盤用基材と、前記原盤用基材の外周面に螺旋状に形成された複数対の螺旋状微細凹部と、前記原盤用基材の外周面に周方向に形成された複数対の環状微細凹部と、を備え、前記螺旋状微細凹部は、前記原盤用基材の外周面において第1方向に巻かれるように形成され、前記原盤用基材の外周面に前記螺旋状微細凹部及び前記環状微細凹部を切削加工するための一対の切削工具の刃先の形状に対応する断面形状を有する1対もしくは複数対の第1螺旋状微細凹部と、前記原盤用基材の外周面において、前記第1方向とは逆の第2方向に巻かれるように形成され、前記一対の切削工具の刃先の形状に対応する断面形状を有する1対もしくは複数対の第2螺旋状微細凹部と、を含み、前記環状微細凹部は、前記一対の切削工具の刃先の形状に対応する断面形状を有し、前記原盤用基材の外周面において、前記第1螺旋状微細凹部と前記第2螺旋状微細凹部と前記環状微細凹部とが相互に交差することによって、三角格子を含む格子状の微細凹部が形成され、当該三角格子を含む格子状の微細凹部により囲まれる部分に微細凸部が形成されている、原盤。」
(2) 本件補正後の請求項1
「 円柱形状または円筒形状の原盤用基材と、前記原盤用基材の外周面に螺旋状に形成された複数対の螺旋状微細凹部と、前記原盤用基材の外周面に周方向に形成された複数対の環状微細凹部と、を備え、続きを表示(全11行)前記螺旋状微細凹部は、前記原盤用基材の外周面において第1方向に巻かれるように形成され、前記原盤用基材の外周面に前記螺旋状微細凹部及び前記環状微細凹部を切削加工するための一対の切削工具の刃先の形状に対応する断面形状を有する1対もしくは複数対の第1螺旋状微細凹部と、前記原盤用基材の外周面において、前記第1方向とは逆の第2方向に巻かれるように形成され、前記一対の切削工具の刃先の形状に対応する断面形状を有する1対もしくは複数対の第2螺旋状微細凹部と、を含み、前記環状微細凹部は、前記一対の切削工具の刃先の形状に対応する断面形状を有し、前記原盤用基材の外周面における前記環状微細凹部の長さ方向と前記原盤用基材の中心軸とのなす角度θが90°であり、前記原盤用基材の外周面において、前記第1螺旋状微細凹部と前記第2螺旋状微細凹部と前記環状微細凹部とが相互に交差することによって、格子状の微細凹部が形成され、当該格子状の微細凹部により囲まれる部分に微細凸部が形成されている、原盤。」
2 当合議体の判断(新規事項)
(1) 本件補正により、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に、
円柱形状または円筒形状の原盤用基材の外周面において、第1方向に巻かれるように形成された、一対の切削工具の刃先の形状に対応する断面形状を有する、1対もしくは複数対の第1螺旋状微細凹部と、
前記原盤用基材の外周面において、前記第1方向とは逆の第2方向に巻かれるように形成された、1対の切削工具の刃先の形状に対応する断面形状を有する、1対もしくは複数対の第2螺旋状微細凹部と、
前記原盤用基材の外周面に周方向に形成された、1対の切削工具の刃先の形状に対応する断面形状を有する、複数対の環状微細凹部であって、前記環状微細凹部の長さ方向と前記原盤用基材の中心軸とのなす角度θが90°である、複数対の環状微細凹部とが、
相互に交差することによって、格子状の微細凹部が形成され、当該格子状の微細凹部により囲まれる部分に微細凸部が形成された、原盤、
が記載されることになった(下線部は、合議体が付したものであり、以下同様である。)。
そこで、上記補正を含む本件補正が、本件出願の願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、「当初明細書等」という。)に記載した事項の範囲内においてしたものであるか、すなわち、当業者によって、当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものか否かについて、以下、検討する。
(2) 当初明細書等には、以下の記載がある。
ア 「【特許請求の範囲】
「【請求項1】円柱形状または円筒形状の原盤用基材と、前記原盤用基材の外周面に螺旋状に形成された複数対の螺旋状微細凹部と、を備え、続きを表示(全19行)前記螺旋状微細凹部は、前記原盤用基材の外周面において第1方向に巻かれるように形成され、前記原盤用基材の外周面に前記螺旋状微細凹部を切削加工するための一対の切削工具の刃先の形状に対応する断面形状を有する1対もしくは複数対の第1螺旋状微細凹部と、前記原盤用基材の外周面において、前記第1方向とは逆の第2方向に巻かれるように形成され、前記一対の切削工具の刃先の形状に対応する断面形状を有する1対もしくは複数対の第2螺旋状微細凹部と、を含み、前記原盤用基材の外周面において、前記第1螺旋状微細凹部と前記第2螺旋状微細凹部とが相互に交差することによって格子状の微細凹部が形成され、当該格子状の微細凹部により囲まれる部分に微細凸部が形成されている、原盤。【請求項2】前記原盤用基材の外周面における前記螺旋状微細凹部の長さ方向と前記原盤用基材の中心軸とのなす角度θが、所定角度に調整されており、前記所定角度は、前記一対の切削工具により前記原盤用基材の外周面に前記螺旋状微細凹部を切削加工するときの前記原盤用基材の回転速度と、前記一対の切削工具の前記中心軸方向の移動速度とを制御することにより調整された角度である、請求項1に記載の原盤。【請求項3】各対の前記螺旋状微細凹部の一方と他方との間の相対距離が、所定範囲内の値に維持されており、前記相対距離は、前記一対の切削工具により前記原盤用基材の外周面に前記螺旋状微細凹部を切削加工するときの前記一対の切削工具の作用点間の相対距離を前記所定範囲内の値に制御することにより調整された距離である、請求項1または2に記載の原盤。【請求項4】x軸方向が、前記一対の切削工具の切込み方向に対応する前記原盤用基材の径方向であり、z軸方向が、前記一対の切削工具の配列方向に対応する前記原盤用基材の中心軸の方向であるとき、各対の前記第1螺旋状微細凹部の一方と他方との間の前記z軸方向の相対距離Δzと基準距離との差分、及び、各対の前記第2螺旋状微細凹部の一方と他方との間の前記z軸方向の相対距離Δzと前記基準距離との差分は、-0.1~0.1μmであり、各対の前記第1螺旋状微細凹部の一方と他方との間の前記x軸方向の相対距離Δxと前記基準距離との差分、及び、各対の前記第2螺旋状微細凹部の一方と他方との間の前記x軸方向の相対距離Δxと前記基準距離との差分は、-0.1~0.1μmである、請求項1~3のいずれか1項に記載の原盤。」
イ 「【発明の詳細な説明】【技術分野】【0001】本発明は、微細加工装置、微細加工ユニット、制御装置、原盤の製造方法、及び原盤用基材の微細加工方法に関する。続きを表示(全55行)【0002】微細加工技術の一つとして、表面に微細凹凸構造が形成された原盤を樹脂シート等に押し当てることで、原盤上の微細凹凸構造を樹脂シート等に転写するインプリント技術が知られている。・・・略・・・【0004】他の原盤の製造方法としては、例えば、特許文献1に開示されているように、切削工具を用いた切削加工により凹凸構造を原盤用基材の表面に形成する技術が知られている。この技術では、先端にチップ(切削部)が形成された切削工具を用いて原盤用基材を切削することで、原盤用基材の表面に微細凹部を格子状に形成する。・・・略・・・【0005】・・・略・・・切削工具が1つだけ(言い換えれば、チップが1つだけ)となる場合、切削工具の移動距離が極めて長くなるという問題がある。この結果、切削工具の消耗が激しくなり、作業時間が長くなるという問題が生じる。【0006】・・・略・・・特許文献3~5に開示された技術では、1つのチップが形成された切削工具を複数本用意し、これらの切削工具を取り付け構造体に固定する。そして、これらの切削工具を用いて原盤用基材を切削する。これらの技術によれば、複数のチップを用いて原盤用基材を切削するので、複数本の微細凹部を同時に形成することができる。したがって、切削工具の移動距離を短縮することができる。【先行技術文献】【特許文献】【0007】【特許文献1】特許5635403号【特許文献2】特表2005-527394号公報【特許文献3】特開2013-63508号公報【特許文献4】特許5833533号【特許文献5】特許5230896号【特許文献6】特許4947777号【発明の概要】【発明が解決しようとする課題】【0008】・・・略・・・特許文献3~5に開示された技術では、切削中に各切削工具の作用点が変位するという問題があった。・・・略・・・【0009】より具体的には、特許文献3~5に開示された技術では、切削中に作用点同士の相対距離が大きくばらつく可能性があった。・・・略・・・【発明が解決しようとする課題】【0010】作用点同士の相対距離△xがばらつく場合、原盤用基材の表面に形成される凹部の深さにばらつきが生じうる。したがって、切削の精度が低下する。さらに、作用点同士の相対距離△zがばらつく場合、微細凹部同士の間隔にばらつきが生じうる。このように、作用点同士の相対距離△x、△zがばらつく場合、切削の精度が低下するという問題が発生しうる。【0011】また、特許文献3~5に開示された技術では、切削工具を取り付け構造体に固定する際に、作用点同士の相対距離△x、△zがばらつく可能性もあった。・・・略・・・位置決めを行った後にこれらの切削工具を取り付け構造体に強固に固定する必要があり、この固定の際に作用点同士の相対距離△x、△zがばらつく可能性があった。・・・略・・・【0013】そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするところは、複数の工具を用いて原盤用基材を切削する場合に、加工(例えば切削等)の精度を高めることが可能な、新規かつ改良された微細加工装置、微細加工ユニット、制御装置、原盤の製造方法、及び原盤用基材の微細加工方法を提供することにある。【課題を解決するための手段】【0014】上記課題を解決するために、本発明のある観点によれば、工具設置部と、工具設置部に固定され、原盤用基材に微細凹部を形成可能な第1の工具と、工具設置部に設けられ、原盤用基材に微細凹部を形成可能な第2の工具と、第2の工具の設置位置を調整可能な工具調整部と、第2の工具の変位を測定する変位測定部と、工具設置部を原盤用基材に対して相対移動させる基台駆動部と、第2の工具の変位に基づいて、第1の工具の作用点から第2の工具の作用点までの相対距離を算出し、工具調整部を制御することで、相対距離を所定範囲内の値に維持する制御部と、を備えることを特徴とする、微細加工装置が提供される。・・・略・・・【0019】本発明の他の観点によれば、工具設置部と、工具設置部に固定され、原盤用基材に微細凹部を形成可能な第1の工具と、工具設置部に設けられ、原盤用基材に微細凹部を形成可能な第2の工具と、第2の工具の設置位置を調整可能な工具調整部と、第2の工具の変位を測定する変位測定部と、を備えることを特徴とする、微細加工ユニットが提供される。【0020】本発明の他の観点によれば、上記の微細加工ユニットを制御する制御装置であって、第2の工具の変位に基づいて、第1の工具の作用点から第2の工具の作用点までの相対距離を算出し、工具調整部を制御することで、相対距離を所定範囲内の値に維持する制御部を備えることを特徴とする、制御装置が提供される。【0021】本発明の他の観点によれば、上記の微細加工装置を用いた原盤の製造方法であって、第1の工具を工具設置部に固定する工程と、第2の工具を工具設置部に設ける工程と、工具設置部を原盤用基材に対向する位置に設置する工程と、変位測定部を用いて第2の工具の変位を測定する工程と、第2の工具の変位に基づいて、第1の工具の作用点から第2の工具の作用点までの相対距離を算出し、工具調整部を制御することで、相対距離を所定範囲内の値に維持する工程と、第1の工具及び第2の工具を用いて原盤用基材に微細凹部を形成する工程と、を含むことを特徴とする、原盤の製造方法が提供される。・・・略・・・【0023】本発明の他の観点によれば、上記の微細加工装置を用いた原盤用基材の微細加工方法であって、第1の工具を工具設置部に固定する工程と、第2の工具を工具設置部に設ける工程と、工具設置部を原盤用基材に対向する位置に設置する工程と、変位測定部を用いて第2の工具の変位を測定する工程と、第2の工具の変位に基づいて、第1の工具の作用点から第2の工具の作用点までの相対距離を算出し、工具調整部を制御することで、相対距離を所定範囲内の値に維持する工程と、第1の工具及び第2の工具を用いて原盤用基材に微細凹部を形成する工程と、を含むことを特徴とする、原盤用基材の微細加工方法が提供される。【発明の効果】【0024】以上説明したように本発明によれば、複数の工具、すなわち第1の工具及び第2の工具を用いて切削を行う場合に、相対距離を所定範囲内の値に維持することができる。したがって、加工の精度を高めることができる。」
ウ 「【発明を実施するための形態】【0026】・・・略・・・【0027】続きを表示(全17行)<1.微細加工装置の概要>まず、図1~図3に基づいて、本実施形態に係る微細加工装置1の概要について説明する。微細加工装置1は、微細加工ユニット10及び制御装置60を備える。微細加工ユニット10は、第1の切削工具11及び第2の切削工具12と、工具設置部40とを備える。そして、微細加工ユニット10は、第1の切削工具11及び第2の切削工具12を用いて原盤用基材(ワーク)100を切削する。具体的には、加工ステージ50(基台駆動部)(図4参照)に微細加工ユニット10を取り付ける。ついで、加工ステージ50を駆動することで、微細加工ユニット10を切込み方向(x1軸正方向)に移動させる。これにより、第1の切削工具11及び第2の切削工具12の作用点11c、12cを原盤用基材100に押し当てる。ここで、作用点11c、12cは、第1の切削工具11及び第2の切削工具12の先端であり、原盤用基材100を切削する部分である。第1の切削工具11及び第2の切削工具12は、原盤用基材100の表面を切削することで、原盤用基材100の表面に微細凹部100aを形成する。【0028】図1に示す例では、原盤用基材100が円柱形状となっている。・・・略・・・原盤用基材100は、その中心軸Aを回転軸として矢印P方向に回転する。一方、微細加工ユニット10は、原盤用基材100の長さ方向の一方の端部(図1中の右端)から他方の端部(図1中の左端)に向けて移動する。すなわち、微細加工ユニット10は、z1軸正方向に移動する。ここで、z1軸は、原盤用基材100の中心軸Aに平行になっている。図1の例では、左方向を正方向とした。第1の切削工具11及び第2の切削工具12の作用点11c、12cは、z1軸方向に配列される。これにより、原盤用基材100の表面に螺旋状の微細凹部100aが形成される。ここで、微細凹部100aの長さ方向(言い換えれば、作用点11c、12cの原盤用基材100に対する相対的な移動軌跡)と中心軸Aとのなす角度θは、原盤用基材100の回転速度と微細加工ユニット10の移動速度との比によって調整可能である。【0029】微細加工ユニット10が原盤用基材100の左端に到達した後、微細加工ユニット10を原盤用基材100の右端に戻す。ついで、第1の切削工具11及び第2の切削工具12の作用点11c、12cを原盤用基材100の表面に再度押し当てる。この際、作用点11c、12cは、前回作製された微細凹部100aから2ピッチ分ずれた位置に押し当てられる。その後、上記と同様の工程が繰り返し行われる。以上の工程により原盤用基材100の表面に複数の微細凹部100aが形成される。その後、微細加工ユニット10の移動方向を逆方向(z1軸負方向)として同様の工程を繰り返し行う。これにより、格子状の微細凹部100aが原盤用基材100の表面に形成される。微細凹部100aに囲まれる部分が微細凸部になる。したがって、原盤用基材100の表面に微細凹凸構造が形成される。原盤用基材100は円筒形状であってもよく、この場合にも同様の工程が行われる。・・・略・・・【0031】上記いずれの例においても、複数本の微細凹部100aを原盤用基材100の表面に同時に形成することができるので、第1の切削工具11及び第2の切削工具12の移動距離を短くすることができる。【0032】ただし、上述したように、作用点同士の相対距離△x、△zがばらつく場合、切削の精度が低下する。ここで、相対距離△xは、第1の切削工具11の作用点11cから第2の切削工具12の作用点12cまでのx1軸方向(切込み方向)の距離であり、相対距離△zは、第1の切削工具11の作用点11cから第2の切削工具12の作用点12cまでのz1軸方向(作用点11c、12cの配列方向)の距離である(図4参照)。【0033】そこで、本実施形態では、制御装置60は、切削中に第2の切削工具12をx1軸、z1軸に平行なx2軸、z2軸方向に移動させることで、相対距離△x、△zを所定範囲内の値に維持する。これにより、切削の精度を高める。以下、本実施形態について詳細に説明する。」
ここで、【図1】(本発明の実施形態に係る微細加工ユニットを用いて原盤用基材を切削する様子を示す斜視図)は、以下のものである。
[図:0001419994000001.jpg]
エ 「【0034】<2.微細加工ユニットの詳細構成>次に、図1~図9Cに基づいて、微細加工ユニット10の構成をより詳細に説明する。微細加工ユニット10は、第1の切削工具11、第2の切削工具12、工具収納ケース20、工具調整部30a、31a、変位測定器(変位測定部)30b、31b、及び工具設置部40を備える。【0035】続きを表示(全26行)第1の切削工具11は、第1の工具の一例であり、工具設置部40に固定される。・・・略・・・これにより、第1の切削工具11を工具設置部40内の所望の位置に固定することができる。【0036】第1の切削工具11は、工具本体11a及び切削部(チップ)11bを備える。・・・略・・・【0037】切削部11bは、工具本体11aの先端に取り付けられている。切削部11bの先端は尖っており、作用点11cとなっている。作用点11cは、原盤用基材100に押し当てられ、原盤用基材100を切削する。・・・略・・・【0038】第2の切削工具12は、第2の工具の一例であり、工具設置部40に移動可能に設けられる。第2の切削工具12は、工具本体12a及び切削部(チップ)12bを備える。・・・略・・・切削部12bは、工具本体12aの先端に取り付けられている。切削部12bの先端は尖っており、作用点12cとなっている。切削部12bの作用点12cは、原盤用基材100に押し当てられ、原盤用基材100を切削する。・・・・・略・・・【0040】工具収納ケース20は、第2の切削工具12を収納する。工具収納ケース20は、工具設置部40に形成されたケース収納用凹部41内に設置される。工具調整部30aは、工具本体12aの基端部(底面)と工具収納ケース20の底面とを連結する。そして、工具調整部30aは、第2の切削工具12をx2軸方向に移動させる。・・・略・・・【0041】変位測定器30bは、第2の切削工具12のx2軸方向の変位、すなわち作用点12cのx2軸方向の変位をx2座標値として測定する。・・・略・・・変位測定器30bは、測定されたx2座標値を制御装置60に出力する。【0042】工具調整部31aは、z2軸方向に伸びており、工具収納ケース20の外壁面とケース収納用凹部41の外壁面とを連結する。そして、工具調整部31aは、第2の切削工具12をz2軸方向に移動させる。・・・略・・・【0043】変位測定器31bは、第2の切削工具12のz2軸方向の変位、すなわち作用点12cのz2軸方向の変位をz2座標値として測定する。・・・略・・・変位測定器31bは、測定されたz2座標値を制御装置60に出力する。【0044】工具設置部40は、加工ステージ50に設置される。そして、工具設置部40は、加工ステージ50とともにx1軸方向及びz1軸方向に移動する。工具設置部40の位置は、x1z1平面上の座標値として測定される。当該測定は、図示しない変位測定器によって行われる。変位測定器は、測定された工具設置部40の位置を制御装置60に出力する。」
ここで、【図4】(微細加工ユニットの詳細構成を示す側断面図)は、以下のものである。(当合議体注:便宜のため、右方向に90度回転して掲記した。)
[図:0001419994000002.jpg]
オ 「【0045】ここで、微細加工ユニット10が円柱形状または円筒形状の原盤用基材100を切削する場合、作用点11c、12cは、図7A~図9Cに示すように、原盤用基材100の中心軸Aを通り、かつ切込み方向(x1軸方向)に平行な平面B上に配置されることが好ましい。第1の切削工具11及び第2の切削工具12を長寿命化し、微細凹凸構造の品質を安定化させるためである。また、微細凹部100aの長さ方向に垂直な平面への切削部11b、12bの投影面の形状(=微細凹部100aの形状)が所望の形状となるように、切削部11b、12bの向きが調整される。【0046】なお、図7A~図7Cに示す例では、微細凹部100aの長さ方向と中心軸Aとのなす角度θがゼロとなっている。なお、この例では、原盤用基材100が固定された状態で原盤用基材100が切削される。そして、微細凹部100aが原盤用基材100の長さ方向の一方の端部から他方の端部に亘って形成された後、原盤用基材100が2ピッチ分回転する。図7Bは、図7Aの正面図(図7Aに示す第1の切削工具11及び第2の切削工具の配置を右側面、つまり微細加工ユニット10の後方から見た図)である。図7Cは、図7Aの平面図である。【0047】図8A~図8Cに示す例では、微細凹部100aの長さ方向と中心軸Aとのなす角度θが30°となっている。図8Bは、図8Aの正面図(図8Aに示す第1の切削工具11及び第2の切削工具の配置を右側面、つまり微細加工ユニット10の後方から見た図)である。図8Cは、図8Aの平面図である。【0048】図9A~図9Cに示す例では、微細凹部100aの長さ方向と中心軸Aとのなす角度θが90°となっている。なお、この例では、微細加工ユニット10の位置が固定された状態で原盤用基材100が切削される。そして、原盤用基材100に1周分の微細凹部100aが形成された後、微細加工ユニット10がz1軸方向に2ピッチ分移動する。図9Bは、図9Aの正面図(図9Aに示す第1の切削工具11及び第2の切削工具の配置を右側面、つまり微細加工ユニット10の後方から見た図)である。図9Cは、図9Aの平面図である。」
ここで、【図7A】~【図7C】(作用点の好ましい配置の一例を示す左側面図)、【図8A】~【図8C】(作用点の好ましい配置の一例を示す正面図)及び【図9A】~【図9C】(作用点の好ましい配置の一例を示す平面図)は、それぞれ以下のものである。
[図:0001419994000003.jpg]
カ 「【0056】<4.制御装置の構成>次に、図3に基づいて、制御装置60の構成について説明する。・・・略・・・続きを表示(全21行)【0057】具体的には、制御装置60は、操作部61、表示部62、及び制御部63を備える。・・・略・・・【0060】制御部63は、変位測定器30b、31bから与えられたx2座標値及びz2座標値を工具調整部30a、31aにフィードバックすることで、相対距離△x、△zを所定範囲内の値に維持する。すなわち、制御部63は、変位測定器30b、31bから与えられたx2座標値及びz2座標値に基づくフィードバック制御を行う。・・・略・・・【0061】・・・略・・・具体的には、制御部63は、相対距離△xが実質的にゼロとなるように、第2の切削工具12を移動させる。そして、制御部63は、この時の第2の切削工具のx2座標値を基準位置とする。そして、制御部63は、変位測定器30bから与えられたx2座標値に基づいて、第2の切削工具の基準位置からの変位量を算出する。この変位量は、相対距離△xに相当する。そこで、制御部63は、当該相対距離△xが所定範囲内の値となるように、工具調整部30aを制御(すなわち駆動)する。これにより、制御部63は、相対距離△xを所定範囲内の値に維持する。【0062】所定範囲の具体的な範囲は特に制限されないが、-0.1~0.1μmであることが好ましく、-0.05~0.05μmであることがより好ましい。・・・略・・・【0064】・・・略・・・具体的には、制御部63は、相対距離△zが予め設定された基準距離に一致するように、第2の切削工具12を移動させる。そして、制御部63は、この時の第2の切削工具のz2座標値を基準位置とする。この基準距離は、微細凹部100aのピッチの奇数倍とされる。【0065】そして、制御部63は、変位測定器31bから与えられたz2座標値に基づいて、第2の切削工具12の基準位置からの変位量を算出する。この変位量は、基準距離からの変位量(差分)に相当する。そこで、制御部63は、当該変位量に対応する差分対応範囲を設定し、基準位置からの変位量が差分対応範囲内の値となるように、工具調整部31aを制御(すなわち駆動)する。これにより、制御部63は、相対距離△zを所定範囲(=基準距離+差分対応範囲)内の値に維持する。【0066】ここで、差分対応範囲の具体的な範囲は特に制限されないが、-0.1~0.1μmであることが好ましく、-0.05~0.05μmであることがより好ましい。作業者は、操作部61を用いて差分対応範囲を設定しても良い。」
ここで、【図3】(本実施形態に係る微細加工装置の全体構成を示す機能ブロック図)は、以下のものである。
[図:0001419994000004.jpg]
キ 「【0069】<5.微細加工装置を用いた原盤の製造方法>つぎに、微細加工装置を用いた原盤の製造方法(言い換えれば、原盤用基材の切削方法)を図10に示すフローチャートに沿って説明する。・・・略・・・続きを表示(全38行)【0070】ステップS10において、作業者は、原盤用基材100を準備する。・・・略・・・【0072】ステップS20において、作業者は、工具設置部40に工具収納ケース20、工具調整部30a、31a、変位測定器(変位測定部)30b、31bを設ける。・・・略・・・第1の切削工具11及び第2の切削工具12を工具設置部40に設置することで、微細加工ユニットを作製する。なお、第1の切削工具11は工具設置部40に強固に固定される。【0073】ついで、作業者は、作用点11c、12c間の高さHを調整する。・・・略・・・【0074】ステップS30において、作業者は、原盤用基材100及び微細加工ユニット10をそれぞれ加工ステージに取り付ける。・・・略・・・原盤用基材100の加工ステージは、原盤用基材100をその中心軸Aを回転軸として回転させることが可能である。微細加工ユニット10の加工ステージ50は、微細加工ユニット10をx1軸方向、z1軸方向に移動させることが可能である。【0075】ステップS40において、作業者は、第1の切削工具11及び第2の切削工具12の座標値の校正を行う。つまり、相対距離△xを実質的にゼロとし、相対距離△zを基準距離とする。まず、図11A~図11Cに基づいて、相対距離△xを実質的にゼロとする方法について説明する。なお、図11A~図11Cでは、微細加工ユニット10を簡略化して示す。【0076】図11Aに示すように、作業者は、加工ステージ50を駆動し、第1の切削工具11の作用点11cを原盤用基材100の表面に接触させる。・・・略・・・そして、作業者は、この時の微細加工ユニット10のx1座標値(=x1A)を測定する。なお、作業者は、制御装置30を操作することで、第2の切削工具12の作用点12cを原盤用基材100から離しておく。【0077】・・・略・・・図11Bに示すように、加工ステージ50を駆動し、第1の切削工具11の作用点11cを原盤用基材100の表面から離す。そして、この時の微細加工ユニット10のx1座標値(=x1B)を測定する。さらに、作業者は、制御装置30を操作することで、第2の切削工具12の作用点12cを原盤用基材100の表面に接触させる。制御部63は、この時の第2の切削工具12のx2座標値(=x2A)を変位測定器30bから取得する。【0078】ついで、作業者は、以下の数式(1)に基づいて、第2の切削工具12のx2座標値x2Bを算出する。x2B=x2A+(x1B-x1A) (1)【0079】・・・略・・・図11Cに示すように、加工ステージ50を駆動し、変位測定器30bから出力されるx2座標値をx2Bに一致させる。この際、作用点11c、12cの両方が原盤用基材100の表面に接触することとなる。作業者は、この状態で相対距離△xがゼロになったと認定する。そして、作業者は、x2座標値x2Bがx2軸方向の基準位置である旨を制御装置60に入力する。これにより、制御部63は、第2の切削工具12のx2座標値x2Bを基準位置と認識する。【0080】つぎに、作業者は、相対距離△zを測定し、相対距離△zが基準距離となるように、制御装置60を操作する。これに応じて、制御部63は、工具調整部30a、31aを制御し、相対距離△zを基準距離に一致させる。また、制御部63は、この時の第2の切削工具12のz2座標値を変位測定器31bから取得する。作業者は、このz2座標値が基準位置である旨を制御装置60に入力する。これにより、制御部63は、現時点での第2の切削工具12のz2座標値を基準位置と認識する。【0081】ステップS50において、制御部63は、変位測定器30b、31bから与えられたデータ(x2座標値、z2座標値)を工具調整部30a、31aにフィードバックすることで、相対距離△x、△zを所定範囲内の値に維持する。具体的には、制御部63は、変位測定器30bから与えられたx2座標値に基づいて、第2の切削工具12の基準位置からの変位量を算出する。この変位量は、相対距離△xに相当する。そして、制御部63は、当該相対距離△xが所定範囲内の値となるように、工具調整部30aを制御(すなわち駆動)する。これにより、制御部63は、相対距離△xを所定範囲内の値に維持する。【0082】さらに、制御部63は、変位測定器31bから与えられたz2座標値に基づいて、第2の切削工具12の基準位置からの変位量を算出する。この変位量は、基準距離からの変位量(差分)に相当する。そこで、制御部63は、当該変位量に対応する差分対応範囲を設定し、基準位置からの変位量が差分対応範囲内の値となるように、工具調整部31aを制御(すなわち駆動)する。これにより、制御部63は、相対距離△zを所定範囲内の値に維持する。ステップS50の処理は、ステップS60の処理が行われる間継続して行われる。・・・略・・・【0083】ステップS60において、作業者は、微細加工ユニット10を加工ステージ50とともに移動させ、かつ、原盤用基材100を回転させることで、第1の切削工具11及び第2の切削工具12を用いた切削を行う。すなわち、複数の切削を同時に行う。【0084】以上の工程により作製された原盤は、各種の用途に使用することができる。例えば、原盤は、インプリント成形用の金型や、プリンテッドエレクトロニクス用の印刷版や、露光用フォトマスク等に使用されても良い。より具体的な用途としては、ディスプレイ用プリズムシートや、建材用ウィンドウフィルム等が挙げられる。【0085】以上により、本実施形態によれば、第1の切削工具11及び第2の切削工具12を用いて切削を行う際に、相対距離△x、△zを所定範囲内の値に維持することができる。したがって、切削の精度を高めることができる。」
ここで、【図10】(微細加工装置による処理の一例を示すフローチャート)及び【図11A】~【図11C】(座標値の校正方法を説明するための模式図)は、それぞれ以下のものである。
【図10】
[図:0001419994000005.jpg]
[図:0001419994000006.jpg]
ク 「【実施例】【0086】<1.実施例1>つぎに、本実施形態の実施例を説明する。実施例1では、・・・略・・・円柱形状の原盤用基材100を準備した。続きを表示(全34行)・・・略・・・【0087】ついで、第1の切削工具11及び第2の切削工具12として、先端幅20μmの矩形形状のダイヤモンドバイトを準備した。これらの切削工具を用いて、図4に示す微細加工ユニット10を作製した。・・・略・・・【0088】ついで、図10に示すフローチャートに沿った処理を行った。ここで、微細凹部100aの長さ方向と原盤用基材100の中心軸Aとのなす角度θは30°とした。・・・略・・・作用点11c、12c間の高さHは0.1mm未満となるように調整した。第1の切削工具11及び第2の切削工具12による切削距離は5kmとした。また、第1の切削工具11の作用点11cから第2の切削工具12の作用点12cまでのz1軸方向の基準距離を30.05mmとした。切削中、第2の切削工具12の基準位置からのx2軸方向の変位量、z2軸方向の変位量を表示部62に常時表示させた。x2軸方向の変位量は相対距離△xに相当し、z2軸方向の変位量は、基準距離からの変位量に相当する。結果を表1に示す。【0089】<2.実施例2>微細凹部100aの長さ方向と原盤用基材100の中心軸Aとのなす角度θを0°とした他は実施例1と同様の工程を行った。・・・略・・・【0090】<3.実施例3>微細凹部100aの長さ方向と原盤用基材100の中心軸Aとのなす角度θを90°とした他は実施例1と同様の工程を行った。・・・略・・・【0091】<4.実施例4>微細加工ユニット10を図5に示すものに変更した他は、実施例1と同様の工程を行った。・・・略・・・【0092】<5.実施例5>作用点11c、12c間の高さHを10mmとした他は実施例1と同様の工程を行った。【0093】<6.実施例6>第1の切削工具11を移動可能とし、第2の切削工具12を工具設置部40に固定するようにした他は、実施例1と同様の工程を行った。・・・略・・・【0098】【表1】[図:0001419994000007.jpg]【0099】表1によれば、実施例では良好な結果が得られたのに対し、比較例では、x2軸方向の変位量が大きすぎて、切削加工に適さなかった。【0100】以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。例えば、上記の例では工具のx軸、z軸方向の位置を調整することとしたが、他の軸方向の位置を調整しても良い。」
(3) 当初明細書等の記載から導かれる事項
ア 技術分野及び発明が解決しようとする課題
(ア) 当初明細書等でいう「本発明」は、微細加工装置、微細加工ユニット、制御装置、原盤の製造方法及び原盤用基材の微細加工方法に関するものである(【0001】)。
(イ) 当初明細書等でいう「本発明」は、
先端にチップ(切削部)が形成された切削工具を用いて原盤用基材を切削することで、原盤用基材の表面に微細凹部を格子状に形成する原盤の製造方法(【0004】)において、1つのチップが形成された切削工具を複数本用意し、これらの切削工具を用いて原盤用基材を切削する技術では、複数本の微細凹部を同時に形成することができ、切削工具の移動距離を短縮できる(【0006】ものの、
「切削中に各切削工具の作用点が変位するという問題」(【0008】)や、「切削中に作用点同士の相対距離が大きくばらつく可能性」があり(【0009】)、
「作用点同士の相対距離△x、△zがばらつく場合、切削の精度が低下する」(【0010】)、「作用点同士の相対距離△x、△zがばらつく場合、切削の精度が低下するという問題」(【0011】)が発生することに鑑み、
「複数の工具を用いて原盤用基材を切削する場合に、加工(例えば切削等)の精度を高めることが可能な、新規かつ改良された微細加工装置、微細加工ユニット、制御装置、原盤の製造方法、及び原盤用基材の微細加工方法を提供する」ことを課題としている(【0013】。
イ 「本発明」の課題を解決するための手段
当初明細書等でいう「本発明」の課題を解決するための手段は、それぞれ
工具設置部と、工具設置部に固定され、原盤用基材に微細凹部を形成可能な第1の工具と、工具設置部に設けられ、原盤用基材に微細凹部を形成可能な第2の工具と、第2の工具の設置位置を調整可能な工具調整部と、第2の工具の変位を測定する変位測定部と、工具設置部を原盤用基材に対して相対移動させる基台駆動部と、第2の工具の変位に基づいて、第1の工具の作用点から第2の工具の作用点までの相対距離を算出し、工具調整部を制御することで、相対距離を所定範囲内の値に維持する制御部と、を備える、微細加工装置(【0014】、以下「課題解決手段1」という。)、
工具設置部と、工具設置部に固定され、原盤用基材に微細凹部を形成可能な第1の工具と、工具設置部に設けられ、原盤用基材に微細凹部を形成可能な第2の工具と、第2の工具の設置位置を調整可能な工具調整部と、第2の工具の変位を測定する変位測定部と、を備える、微細加工ユニット(【0019】、以下「課題解決手段2」という。)、
上記の微細加工ユニットを制御する制御装置であって、第2の工具の変位に基づいて、第1の工具の作用点から第2の工具の作用点までの相対距離を算出し、工具調整部を制御することで、相対距離を所定範囲内の値に維持する制御部を備える、制御装置(【0020】、以下「課題解決手段3」という。)、
上記の微細加工装置を用いた原盤の製造方法であって、第1の工具を工具設置部に固定する工程と、第2の工具を工具設置部に設ける工程と、工具設置部を原盤用基材に対向する位置に設置する工程と、変位測定部を用いて第2の工具の変位を測定する工程と、第2の工具の変位に基づいて、第1の工具の作用点から第2の工具の作用点までの相対距離を算出し、工具調整部を制御することで、相対距離を所定範囲内の値に維持する工程と、第1の工具及び第2の工具を用いて原盤用基材に微細凹部を形成する工程と、を含む、原盤の製造方法(【0021】。以下「課題解決手段4」という。)、
上記の微細加工装置を用いた原盤用基材の微細加工方法であって、第1の工具を工具設置部に固定する工程と、第2の工具を工具設置部に設ける工程と、工具設置部を原盤用基材に対向する位置に設置する工程と、変位測定部を用いて第2の工具の変位を測定する工程と、第2の工具の変位に基づいて、第1の工具の作用点から第2の工具の作用点までの相対距離を算出し、工具調整部を制御することで、相対距離を所定範囲内の値に維持する工程と、第1の工具及び第2の工具を用いて原盤用基材に微細凹部を形成する工程と、を含む、原盤用基材の微細加工方法(【0023】、以下「課題解決手段5」という。)、
である。
ウ 「本発明」の実施形態
(ア) 微細加工装置(課題解決手段1)
a 微細加工装置1は、微細加工ユニット10(課題解決手段2)及び制御装置60(課題解決手段3)を備え、微細加工ユニット10は、第1の切削工具11及び第2の切削工具12と、工具設置部40とを備え、第1の切削工具11及び第2の切削工具12を用いて原盤用基材(ワーク)100を切削する。
b 加工ステージ50(基台駆動部)に微細加工ユニット10を取り付け、加工ステージ50を駆動することで、微細加工ユニット10を切込み方向(x1軸正方向)に移動させ、第1の切削工具11及び第2の切削工具12の作用点11c、12cを原盤用基材100に押し当てる。
c 作用点11c、12cは、第1の切削工具11及び第2の切削工具12の先端であり、原盤用基材100を切削する部分であり、第1の切削工具11及び第2の切削工具12は、原盤用基材100の表面を切削することで、原盤用基材100の表面に微細凹部100aを形成する。(【0027】)
d 円柱形状の原盤用基材100は、その中心軸Aを回転軸として矢印P方向に回転し、一方、微細加工ユニット10は、原盤用基材100の長さ方向の一方の端部から他方の端部に向けて、(原盤用基材100の中心軸Aに平行な)z1軸正方向に移動する。
e 原盤用基材100が円柱形状(図1)あるいは円筒形状である例では、第1の切削工具11及び第2の切削工具12の作用点11c、12cは、z1軸方向に配列されることにより、原盤用基材100の表面に螺旋状の微細凹部100aが形成され、微細凹部100aの長さ方向と中心軸Aとのなす角度θは、原盤用基材100の回転速度と微細加工ユニット10の移動速度との比によって調整可能である。(【0028】)
f 原盤用基材100の表面に複数の微細凹部100aが形成された後、微細加工ユニット10の移動方向を逆方向(z1軸負方向)として同様の工程を繰り返し行い、これにより、格子状の微細凹部100aが原盤用基材100の表面に形成され、微細凹部100aに囲まれる部分が微細凸部になる。(【0028】~【0029】)
g 複数本の微細凹部100aを原盤用基材100の表面に同時に形成できるので、第1の切削工具11及び第2の切削工具12の移動距離を短くできる。(【0031】)
h 相対距離△xを、第1の切削工具11の作用点11cから第2の切削工具12の作用点12cまでのx1軸方向(切込み方向)の距離とし、相対距離△zを、第1の切削工具11の作用点11cから第2の切削工具12の作用点12cまでのz1軸方向(作用点11c、12cの配列方向)の距離でとするとき、作用点同士の相対距離△x、△zがばらつく場合、切削の精度が低下する。(【0032】)
i 制御装置60は、切削中に第2の切削工具12をx1軸、z1軸に平行なx2軸、z2軸方向に移動させることで、相対距離△x、△zを所定範囲内の値に維持し、切削の精度を高める。(【0033】)
(イ) 微細加工ユニット(課題解決手段2)
a 微細加工ユニット10は、第1の切削工具11、第2の切削工具12、工具収納ケース20、工具調整部30a、31a、変位測定器(変位測定部)30b、31b、及び工具設置部40を備える。
b 工具調整部30aは、第2の切削工具12をx2軸方向に移動させ、変位測定器30bは、第2の切削工具12のx2軸方向の変位、すなわち作用点12cのx2軸方向の変位をx2座標値として測定し、制御装置60に出力し、
工具調整部31aは、第2の切削工具12をz2軸方向に移動させ、変位測定器31bは、第2の切削工具12のz2軸方向の変位、すなわち作用点12cのz2軸方向の変位をz2座標値として測定し、測定されたz2座標値を制御装置60に出力する。(【0040】~【0041】、【0042】~【0043】)
c 微細加工ユニット10が円柱形状または円筒形状の原盤用基材100を切削する場合、作用点11c、12cは、原盤用基材100の中心軸Aを通り、かつ切込み方向(x1軸方向)に平行な平面B上に配置されることが好ましく、また、微細凹部100aの長さ方向に垂直な平面への切削部11b、12bの投影面の形状(=微細凹部100aの形状)が所望の形状となるように、切削部11b、12bの向きが調整される。(【0045】)
d 作用点11c、12cの好ましい配置の一例として、微細凹部100aの長さ方向と中心軸Aとのなす角度θがゼロの場合、図7A~図7Cに示されるように、原盤用基材100が固定された状態で原盤用基材100が切削され、微細凹部100aが原盤用基材100の長さ方向の一方の端部から他方の端部に亘って形成された後、原盤用基材100が回転する。(【0046】、図7A~図7C)
e 微細凹部100aの長さ方向と中心軸Aとのなす角度θが30°の場合、作用点11c、12cの配置、切削部11b、12bの向きは、図8A~図8C示されたものとなる。(【0047】、図8A~図8C)
f 微細凹部100aの長さ方向と中心軸Aとのなす角度θが90°の場合、図9A~図9Cに示されるように、微細加工ユニット10の位置が固定された状態で原盤用基材100が切削され、原盤用基材100に1周分の微細凹部100aが形成された後、微細加工ユニット10がz1軸方向に2ピッチ分移動する。(【0048】、図9A~図9C)
(ウ) 制御装置60(課題解決手段3)
制御装置60は、制御部63を備え、制御部63は、変位測定器30b、31bから与えられたx2座標値及びz2座標値を工具調整部30a、31aにフィードバックすることで、相対距離△x、△zを所定範囲内の値に維持する。(【0060】)
(エ) 微細加工装置(課題解決手段1)を用いた原盤の製造方法(課題解決手段4)、原盤用基材の切削方法(原盤用基材の微細加工方法(課題解決手段5))
a ステップS10において、原盤用基材100を準備し、ステップS20において、工具設置部40に工具収納ケース20、工具調整部30a、31a、変位測定器(変位測定部)30b、31bを設け、第1の切削工具11及び第2の切削工具12を工具設置部40に設置することで、微細加工ユニットを作製し、第1の切削工具11を工具設置部40に強固に固定する。(【0070】~【0073】、図10)
b ステップS30において、原盤用基材100及び微細加工ユニット10を加工ステージ50に取り付け、原盤用基材100の加工ステージは、原盤用基材100をその中心軸Aを回転軸として回転させることが可能であり、微細加工ユニット10の加工ステージ50は、微細加工ユニット10をx1軸方向、z1軸方向に移動させ、微細加工ユニット10の加工ステージ50は、微細加工ユニット10をx1軸方向、z1軸方向に移動させる。(【0074】、図10)。
c ステップS40において、第1の切削工具11及び第2の切削工具12の座標値の校正を行い、相対距離△xを実質的にゼロとし、相対距離△zを基準距離とする。(【0075】~【0080】、図10)
d ステップS50において、制御部63は、変位測定器30b、31bから与えられたデータ(x2座標値、z2座標値)を工具調整部30a、31aにフィードバックすることで、相対距離△x、△zを所定範囲内の値に維持し、
ステップS60において、微細加工ユニット10を加工ステージ50とともに移動させ、かつ原盤用基材100を回転させることで、第1の切削工具11及び第2の切削工具12を用いた切削を行い、複数の切削を同時に行う。(【0081】~【0083】、図10)。
e 本実施形態によれば、第1の切削工具11及び第2の切削工具12を用いて切削を行う際に、相対距離△x、△zを所定範囲内の値に維持することができ、したがって、切削の精度を高めることができる。(【0085】、図10)
(オ) 原盤の用途
原盤は、例えば、インプリント成形用の金型や、プリンテッドエレクトロニクス用の印刷版や、露光用フォトマスク等に使用されても良く、より具体的な用途には、ディスプレイ用プリズムシートや、建材用ウィンドウフィルム等が挙げられる。(【0084】)。
(カ) 「本発明」の実施例
円柱形状の原盤用基材100を準備し、(図4に示す)微細加工ユニット10を作製して、微細凹部100aの長さ方向と原盤用基材100の中心軸Aとのなす角度θを30°、微細凹部100aの長さ方向と原盤用基材100の中心軸Aとのなす角度θを0°、あるいは微細凹部100aの長さ方向と原盤用基材100の中心軸Aとのなす角度θを90°として、図10に示すフローチャート(S10~S60)に沿った処理を行った実施例では、x2軸方向の変位量(相対距離△x)、z2軸方向の変位量(基準距離(相対距離△)からの変位量)において良好な結果(<1.0μm)が得られた。(【0086】~【0099】)
エ 上記ア~ウより、当初明細書等でいう「本発明」は、
1対の切削工具(第1の切削工具及び第2の切削工具)により複数本の微細凹部を同時に形成することができ、切削工具の移動距離を短縮できる原盤の製造方法において、「複数の工具を用いて原盤用基材を切削する場合に、加工(例えば切削等)の精度を高めることが可能な、新規かつ改良された微細加工装置、微細加工ユニット、制御装置、原盤の製造方法、及び原盤用基材の微細加工方法を提供する」との課題に鑑みなされたものであって、
専ら、微細加工装置(課題解決手段1)、(微細加工装置が備える)上記微細加工ユニット(課題解決手段2)、(微細加工装置が備える)上記制御装置(課題解決手段3)、(微細加工装置を用いた)上記原盤の製造方法(課題解決手段4)及び上記原盤用基材の微細加工方法(課題解決手段5)において、第2の切削工具の変位に基づき、1対の切削工具における第1の切削工具の作用点から第2の切削工具の作用点までの相対距離を所定範囲内の値に維持、制御することにより、上記課題を解決した点にその技術的意義を有するものである、と理解できる。
(4) 当合議体の新規事項についての判断
ア 上記(3)ア~エのとおり、当初明細書等には、上記課題を解決する、微細加工装置(課題解決手段1)、(微細加工装置が備える)上記微細加工ユニット(課題解決手段2)、微細加工装置が備える上記制御装置(課題解決手段3)、(微細加工装置を用いた)上記原盤の製造方法(課題解決手段4)及び上記原盤用基材の微細加工方法(課題解決手段5)が専ら記載されているところ、
微細加工される「原盤用基材」、「原盤用基材」に形成される「微細凹部」及び「原盤」に関しては、当初明細書等には、
上記(2)アの【特許請求の範囲】の請求項1~4に記載の「原盤」の他には、
「本発明」の「微細加工装置」(課題解決手段1)による微細切削加工に関連して、図1の原盤用基材100が円柱形状である例として、円柱形状の原盤用基材100がその中心軸Aを回転軸として矢印P方向に回転し、一方、「微細加工ユニット10」は、「原盤用基材100」の長さ方向の一方の端部から他方の端部に向けて、原盤用基材100の中心軸Aに平行な(z1軸)正方向に移動することにより、「原盤用基材100」の回転速度と「微細加工ユニット10」の移動速度との比によって調整可能な「微細凹部100aの長さ方向と中心軸Aとのなす角度θ」で「原盤用基材100」の表面に複数の「螺旋状の微細凹部100a」を形成した後、微細加工ユニット10の移動方向を逆方向(z1軸負方向)として同様の工程を繰り返し行って、原盤用基材100の表面に、角度θの「螺旋状の微細凹部100a」と角度-θの「螺旋状の微細凹部100a」とを交差させた格子状の微細凹部100aを形成し、格子状の微細凹部100aに囲まれた部分が微細凸部を形成すること、
螺旋状の微細凹部100aの長さ方向と中心軸Aとのなす角度θは、原盤用基材100の回転速度と微細加工ユニット10の移動速度との比によって調整できること、
また、「微細加工ユニット」(課題解決手段2)について、「円柱形状または円筒形状の原盤用基材100」を切削する場合の作用点の好ましい配置の一例として、
角度θをゼロとして、「原盤用基材100」に、原盤用基材100の長さ方向の一方の端部から他方の端部に亘って「微細凹部100a」を形成し、その後「原盤用基材100」を回転すること、
θを30°として、「原盤用基材100」の表面に「螺旋状の微細凹部100a」を形成すること、
θを90°として、「原盤用基材100」に1周分(環状)の「微細凹部100a」を形成し、その後「微細加工ユニット10」を移動すること、
実施例として、「微細加工ユニット10」により、「円柱形状の原盤用基材100」に、角度θをそれぞれ30°、0°あるいは90°として「微細凹部100a」を形成すること、
さらに、「原盤」の用途として、インプリント成形用の金型、プリンテッドエレクトロニクス用の印刷版、露光用フォトマスク等、より具体的には、ディスプレイ用プリズムシートや、建材用ウィンドウフィルム等が挙げられること、
が記載される程度にとどまる。
イ そうすると、当初明細書等には、当初明細書等でいう「本発明」の微細加工装置、微細加工ユニット、制御装置、原盤の製造方法及び原盤用基材の微細加工方法(課題解決手段1~5)により、微細加工され、製造される、加工(切削)の精度が高い「原盤」として、
(A)「円柱形状または円筒形状」の「原盤用基材」の表面に、角度θ(例えば30度)の一対あるいは複数対の「螺旋状の微細凹部100a」を形成したもの、
(B)「円柱形状または円筒形状」の「原盤用基材」の表面に、角度θが90°の、複数対の環状の「微細凹部」を形成したもの、
(C)「円柱形状または円筒形状」の「原盤用基材」の表面に、角度θが0°の、複数の直線状の「微細凹部」を形成したもの、
(D)(当初明細書等の特許請求の範囲の請求項1~4に記載の)、「円柱形状または円筒形状」の「原盤用基材」の表面に、(原盤用基材100の回転速度と微細加工ユニット10の移動速度との比によって調整できる)角度θの1対あるいは複数対の「螺旋状の微細凹部100a」と、角度-θの一対あるいは複数対の「螺旋状の微細凹部100a」の、「2つ」の「螺旋状の微細凹部」を相互に交差させた格子状の微細凹部100aを形成し、格子状の微細凹部100aに囲まれる部分に微細凸部を形成したもの、
までは記載されているものと認められる。
しかしながら、当初明細書等には、円柱形状または円筒形状の原盤用基材の外周面において、第1方向に巻かれるように形成される(角度θの)第1螺旋状微細凹部と、第1方向とは逆の第2方向に巻かれるように形成される(角度-θの)第2螺旋状微細凹部とを形成した上に、さらに、環状の微細凹部を形成して、(角度±θの)第1及び第2螺旋状微細凹部と環状微細凹部の「3つ」の微細凹部を相互に交差させて格子状の微細凹部を形成し、これら「3つ」の微細凹部を相互に交差させた格子状の微細凹部により囲まれる部分に微細凸部を形成することは記載も示唆もされていないし、
ましてや、(角度±θの)第1及び第2螺旋状微細凹部と角度θが90°の環状微細凹部の「3つ」の微細凹部を相互に交差させて格子状の微細凹部を形成し、これら「3つ」の微細凹部を相互に交差させた格子状の微細凹部により囲まれる部分に微細凸部を形成することは記載も示唆もされていないし、。
また、当初明細明細書等でいう「本発明」の微細加工装置、微細加工ユニット、制御装置、原盤の製造方法及び原盤用基材の微細加工方法(課題解決手段1~5)により、微細加工され、製造される、加工(切削)精度が高い円柱形状または円筒形状の原盤であって、インプリント成形用の金型、プリンテッドエレクトロニクス用の印刷版、露光用フォトマスク、ディスプレイ用プリズムシート、建材用ウィンドウフィルムとの用途の原盤として、円柱形状または円筒形状の原盤用基材の外周面において、第1方向に巻かれるように形成される(角度θの)第1螺旋状微細凹部と、第1方向とは逆の第2方向に巻かれるように形成される(角度-θの)第2螺旋状微細凹部とを形成した上に、さらに(角度θが90°の)環状の微細凹部を形成し、(角度±θの)第1及び第2螺旋状微細凹部と(角度θが90°の)環状微細凹部の「3つ」の微細凹部を相互に交差させて格子状の微細凹部を形成し、これら「3つ」の微細凹部を相互に交差させた格子状の微細凹部により囲まれる部分に微細凸部を形成することが、技術常識であるともいえない。
ウ してみると、本件補正は、当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものとはいうことはできない。
(5) 審判請求書における請求人の主張(新規事項)について
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ア 請求人の主張の概要
(ア) 請求人は、審判請求書の「(3)新規事項の追加には該当しない理由」(5~7頁)において、
「本願発明の原盤の微細加工に関する技術分野の当業者にとっては、円柱形状または円筒形状の原盤用の外周面上に、所定方向の切削溝を形成するにあたり、螺旋状の溝(0°<θ<90°:図1、図8A~C)、環状の溝(θ=90°:図9A~C)、あるいは、軸方向の溝(θ=0°:図7A~C)などのうち、いずれの方向の切削溝を形成するかは、当該原盤の用途に応じて自由に設計変更することが可能な技術常識の範疇である。」、
「本願明細書等という1つの文献中に明示された『複数対の螺旋状の微細凹部(θ=30°:図1、図8A~C)』と、『複数対の環状の微細凹部(θ=90°:図9A~C)』という2種類の切削溝構造を組み合わせて、補正後の本願発明のような格子状の複合的な切削溝構造とすることは、本願明細書等に明示された一対の切削工具11、12を用いた高精度の切削加工方法の特徴に関する包括的な記載と、上記『複数対の螺旋状の微細凹部(θ=±30°)』と『複数対の環状の微細凹部(θ=90°)』の具体例の記載から、上記技術常識を有する当業者にとって自明な事項であるといえる。」と主張する。
(イ) また、請求人は、「(4)本願明細書等の記載の詳細説明」(7~12頁)において、
「(a)一対の切削工具により切削加工される一対の微細凹部の包括説明」について、
「段落0027、0037、0038及び0083には、一対の切削工具11、12を用いて一対の微細凹部100a、100aを同時に切削加工することが包括的に記載されており、一対の微細凹部100a、100aが延びる方向(長さ方向)や角度θ(例えば、θ=±30°、90°、0°)は、特段の具体例に限定されていない。」、
「そして、段落0045には、次の段落0046以降で説明する図7A~図9Cの切削部11b、12bの向きや切削方向が、上記包括的な切削加工の例示であることが示唆されている。」、
「また、これら段落の記載からは、特に当業者でなくとも、本願発明では、一対の切削工具11、12の切削部11b、12bを原盤用基材100に押し当てて切削し、結果として一対の微細凹部100a、100aを形成するという包括的な概念を理解できる。そして、上述した技術常識を有する当業者であれば、一対の切削工具11、12を用いて原盤用基材100の外周面上の多様な方向に一対の微細凹部100a、100aを切削加工できることを、格別な技術検討を要することなく容易に認識できる。」、
「(b)螺旋状の微細凹部の具体例」について、
「段落0028、0029及び図1と、段落0047及び図8A~Cには、一対の切削工具11、12を用いて切削加工される複数対の螺旋状の微細凹部(θ=±30°)の具体例が記載されている。」、
「(c)環状の微細凹部の具体例」について、
「段落0048及び図9A~Cには、一対の切削工具11、12を用いて切削加工される複数対の環状の微細凹部(θ=90°)の具体例が記載されている。」、
「段落0028、0090の記載からすれば、微細加工ユニット10の移動速度をゼロとして、原盤用基材100の中心軸Aとのなす角度θを90°とすることで、環状の微細凹部を形成できることを、当業者であれば容易に把握できる。」、
「段落0029の記載によれば、切削工具11、12の作用点11c、12cを2ピッチ分移動して、再度切削加工することで、複数対の環状の微細凹部100aを形成できることを、当業者であれば容易に把握できる。」、
「この段落0029に記載のように、正方向と逆方向の螺旋状の微細凹部100a、100a(例えばθ=±30°)を形成する工程を実施した後に、上記『微細加工ユニット10の移動速度をゼロとして、原盤用基材100の中心軸Aとのなす角度θを90°とすることで、環状の微細凹部(θ=90°)を形成すること』を実施すれば、上記補正後の本願請求項1に係る発明の原盤のように、『第1及び第2螺旋状微細凹部(例えばθ=±30°)』と『環状微細凹部(θ=90°)』とが交差することによって、格子状の微細凹部が形成された原盤を形成可能であることは、本願明細書の記載に接した当業者であれば、出願時の技術常識に照らして、本願明細書に記載されているのと同然であると理解する事項である。」、
「段落0029に記載の『切削工具12の作用点11c、12cを、前回作製された微細凹部100aから2ピッチ分ずれた位置に押し当てること』を、z1軸正方向またはz1軸負方向に『1回までしか行わない』ことの記載は、本願明細書にはないのであるから、所望の環状の微細凹部を形成するために、『微細加工ユニット10の移動速度をゼロにして作用点11c、12cを2ピッチ分移動』することを繰り返して、複数対の螺旋状の微細凹部(θ=90°)を形成することは、当業者の自由裁量であり、本願明細書等の記載から当業者にとって自明な事項であるといえる。」と主張する。
(ウ) さらに、請求人は、「(5)まとめ」(12~13頁)において、
「本願明細書および図面の記載からすれば、当業者であれば、一対の切削工具11、12を用いて、原盤用基材100の外周面上の多様な方向に一対の微細凹部100a、100aを切削加工できることを容易に認識できる。そして、上記本願明細書等の記載と、上述した技術常識に基づいて、螺旋状の微細凹部(θ=±30°:図1及び図7A~C)と、環状の微細凹部(θ=90°:図9A~C)とを組み合わせることは、当業者であれば、格別な技術検討を要することなく、容易に認識可能である。また、上述した技術常識を有する当業者であれば、当該組合せは「結果物」として容易に想到できる範囲内のものである。」、
「よって、本願明細書等に明示された『複数対の螺旋状の微細凹部(θ=±30°:図1、図8A~C)』と、『複数対の環状の微細凹部(θ=90°:図9A~C)』という2種類の切削溝構造を組み合わせて、補正後の本願発明のような複合的な切削溝構造とすることは、本願明細書等の記載と上述した技術常識から当業者にとって自明な事項であるといえる。」、
と主張する。
イ 請求人の主張に対する当合議体の判断
当初明細書等の記載からは、
角度θの螺旋状の微細凹部や環状の微細凹部は、同一の一対の切削工具11、12を用いて切削加工可能な多様な方向の微細凹部の例示である、
螺旋状の溝、環状の溝あるいは軸方向の溝のうち、どの方向の切削溝を形成するかは、当該原盤の用途に応じて、自由に設計変更できることは技術常識の範疇である、
一対の微細凹部が延びる方向や角度θは具体例に限定されない、
一対の切削工具11、12の切削部11b、12bを原盤用基材100に押し当てて切削し、結果として一対の微細凹部100a、100aを形成するという包括的な概念を理解できる、
一対の切削工具11、12を用いて原盤用基材100の外周面上の多様な方向(0~90°)に一対の微細凹部100a、100aを切削加工できることを認識できる、
微細加工ユニット10の移動速度をゼロとして、原盤用基材100の中心軸Aとのなす角度θを90°とすることで、環状の微細凹部を形成できる、切削工具11、12の作用点11c、12cを2ピッチ分移動して、再度切削加工することで、複数対の環状の微細凹部100aを形成できる、
とまではいえる。
しかしながら、段落【0028】~【0029】には、「本発明」の「微細加工装置」(課題解決手段2)の構成及び動作に関し、図1に例示の円柱形状の原盤用基材100に、正方向と逆方向の螺旋状の複数対の微細凹部を交差させて、格子状の微細凹部100aを形成し、微細凹部100aに囲まれる部分を微細凸部として形成して、原盤用基材100の表面に微細凹凸構造を形成することが記載されているのであって、当該段落は、原盤について、正方向と逆方向の螺旋状の微細凹部100a、100aを形成する工程を実施した後に、微細加工ユニット10の移動速度をゼロとして環状の微細凹部を形成すること、第1及び第2螺旋状微細凹部と環状微細凹部(θ=90°)の3つ微細凹部を交差させることにより、格子状の微細凹部が形成された原盤を形成することを記載、示唆するものではない。
また、段落【0046】~【0048】は、「本発明」の「微細加工ユニット」(課題解決手段2)の構成及び動作に関し、作用点11c、12cの好ましい配置の一例として、角度θがゼ0°の場合、角度θが30°の場合、角度θが90°の場合に分けて記載しているのであって、当該段落は、原盤について、角度θと角度-θの2つの螺旋状の微細凹部と、θが90°の環状の微細凹部とを組み合わせて微細凹部を形成することを記載、示唆するものではない。
そして、上記(4)で述べたとおり、当初明細書等の記載には、当初明細等でいう「本発明」を用いて微細加工され、製造された、加工(切削)精度が高い原盤として、円柱形状または円筒形状の原盤用基材の外周面に第1方向に巻かれるように形成された(角度θの)第1螺旋状微細凹部と、第1方向とは逆の第2方向に巻かれるように形成された(角度-θの)第2螺旋状微細凹部との「2つ」の螺旋状微細凹部を相互に交差することにより、格子状の微細凹部が形成され、当該格子状の微細凹部により囲まれる部分に微細凸部が形成された原盤までは記載されているといえるとしても、当初明細書等の記載からは、円柱形状または円筒形状原盤用基材の外周面に第1方向に巻かれるように形成された(角度θの)第1螺旋状微細凹部と、第1方向とは逆の第2方向に巻かれるように形成された(角度-θの)第2螺旋状微細凹部を形成することに加えて、さらに、原盤用基材の外周面に周方向に形成された(角度θが90°の)複数対の環状微細凹部を形成し、(角度±θの)第1及び第2螺旋状微細凹部と(角度θが90°の)環状微細凹部の「3つ」の微細凹部を相互に交差させた格子状の微細凹部を形成し、当該格子状の微細凹部により囲まれる部分に微細凸部を形成したものまでは導き出すことはできない。
してみると、審判請求書における請求人の主張を採用することはできない。
3 本件補正についてのむすび
前記2のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第3項の規定に違反するものであり、同法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。
第3 本件発明について
1 本件発明
本件補正は却下されたので、本件出願の請求項1~5に係る発明(以下、本件出願の請求項1に係る発明を、「本件発明1」という。)は、令和 5年 2月 3日提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1~5に記載された事項により特定される、前記第2[理由]1(1)に記載のとおりのものである。
2 原査定の理由
原査定の拒絶理由の「理由1.新規事項」は、令和 5年 2月 3日提出の手続補正書でした補正は、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものでないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない、というものである。
3 当合議体の判断
(1) 本件発明1と、本件補正後の請求項1に係る発明は、「円柱形状または円筒形状の原盤用基材」「の外周面において」、「第1方向に巻かれるように形成され」た、「一対の切削工具の刃先の形状に対応する断面形状を有する」、「1対もしくは複数対の第1螺旋状微細凹部」と、
「前記原盤用基材の外周面において、前記第1方向とは逆の第2方向に巻かれるように形成され」た、「一対の切削工具の刃先の形状に対応する断面形状を有する」、「1対もしくは複数対の第2螺旋状微細凹部」と、
「前記原盤用基材の外周面に周方向に形成された」、「前記一対の切削工具の刃先の形状に対応する断面形状を有」する、「複数対の環状微細凹部」とが、
相互に交差することによって、(三角格子を含む)格子状の微細凹部が形成され、当該(三角格子を含む)格子状の微細凹部により囲まれる部分に微細凸部が形成された、という構成を具備する点において、何ら変わるところはない。
(2) してみると、前記「第2」[理由]2で述べたのと同じ理由により、令和 5年 2月 3日に提出した手続補正書による補正も、当業者によって、当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入しないものであるということはできない。
したがって、令和 5年 2月 3日提出の手続補正書による手続補正は、願書に最初に添付した特許請求の範囲、明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものでないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。
第4 まとめ
以上のとおり、令和 5年 2月 3日提出の手続補正書でした補正は、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。
したがって、本件出願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2023-021963