特許異議申立
2022-701278
ブロー成形方法、複合プリフォーム、複合容器、およびプラスチック製部材
- 審判番号
- 2022-701278
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2021-041731
- 登録番号
- 7092226
- 請求日
- 2022年12月20日
- 審決日
- 2024年02月29日
- 公報発行日
- 2024年07月26日
- 結論
- 請求成立(取消)
- 当事者
- 【権利者】大日本印刷株式会社
- 【権利者代理人】宮嶋 学
- 【権利者代理人】堀田 幸裕
- 【権利者代理人】塙 和也
- 【権利者代理人】高田 泰彦
- 【権利者代理人】柏 延之
- 【異議申立人】佐藤 慎一郎
- 審判長/審判官
- 審判長 里村 利光
- 審判官 宮澤 浩
- 審判官 植前 充司
- 分類
- P1651.121-ZDA(B29C) / P1651.55 -ZDA(B29C)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法17条の2第3項特許法113条1項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第9項、特許法第17条の2第3項、特許法第120条の5第2項、特許法第131条の2第1項、特許法第126条第5項、特許法第126条第6項、特許法第29条、特許法第113条第1項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7092226号発明「ブロー成形方法、複合プリフォーム、複合容器、およびプラスチック製部材」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7092226号の特許請求の範囲を令和5年9月19日付けの手続補正書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔17-24〕について訂正することを認める。
特許第7092226号の請求項1ないし16、25に係る特許を取り消す。
同請求項17ないし24に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7092226号(以下「本件特許」という。)の請求項1~25に係る特許についての出願は、平成26年12月25日に出願された特願2014-262957号の一部を新たな特許出願とした特願2019-204078号について、その一部を令和3年3月15日にさらに新たな特許出願としたものである。令和3年4月23日に上申書の提出とともに手続補正(以下「本件補正」という。)がなされ、同年12月14日付けで拒絶理由が通知され、これに対し、令和4年1月21日に意見書の提出とともに手続補正がなされ、同年5月12日付けで特許査定がなされ、同年6月20日にその特許権の設定登録がされ、同年6月28日に特許掲載公報が発行された。
その後、本件特許について、特許掲載公報の発行から6月以内である令和4年12月20日に、特許異議申立人 佐藤慎一郎(以下「異議申立人」という。)により特許異議の申立てがされた。
その後の手続の経緯は、概略、以下のとおりである。
令和5年 4月17日付け:取消理由通知
同年 6月13日 :特許権者による訂正請求書、意見書の提出
同年 7月26日 :異議申立人による意見書の提出
同年 8月25日付け:訂正拒絶理由通知
同年 9月19日 :特許権者による手続補正書、意見書の提出
同年11月17日付け:取消理由通知<決定の予告>
なお、取消理由通知<決定の予告>において指定した期間内に、特許権者から何ら応答がなかった。
第2 訂正請求について
1 令和5年9月19日付け手続補正書による訂正請求書の補正について
令和5年9月19日提出の手続補正書は、令和5年6月13日提出の訂正請求書を補正するものであって、「訂正事項1」を削除し、補正前の「訂正事項2」を「訂正事項1」に変更するものである。
当該手続補正書による訂正請求書の補正は、訂正事項を削除するものであるから、その要旨を変更するものではない(特許法第120条の5第9項で準用する特許法第131条の2第1項)。
よって、当該手続補正書による訂正請求書の補正を認める。
そして、令和5年8月25日付けの訂正拒絶理由通知において通知した訂正拒絶理由は、訂正の対象である訂正事項1が上記のとおり削除されたため、解消した。
2 訂正の内容
令和5年6月13日提出の訂正請求書及び同年9月19日提出の手続補正書に基づけば、特許権者が請求する訂正(以下「本件訂正」という。)は次のとおりである。なお、下線は、訂正箇所を示す。
訂正事項1
特許請求の範囲の請求項17に
「前記プラスチック製部材は、前記容器本体の前記底部の前記凹部および前記接地部の形状に沿って、前記凹部の底面および前記接地部に密着して設けられていることを特徴とする、複合容器。」
と記載されているのを、
「前記プラスチック製部材は、前記容器本体の前記底部の前記凹部および前記接地部の形状に沿って、前記凹部の底面および前記接地部に密着して設けられており、
前記プラスチック製部材は、前記容器本体に対して溶着されておらず、前記容器本体をリサイクルする際、前記切断線に沿って前記容器本体から剥離除去可能に設けられており、
前記プラスチック製容器の厚みは、5μm以上50μm以下であることを特徴とする、複合容器。」
に訂正する(請求項17の記載を直接又は間接的に引用する請求項18~24も同様に訂正する。)。
なお、訂正前の請求項18~24は、請求項17の記載を直接又は間接的に引用する関係にある。したがって、本件訂正は、一群の請求項17~24について請求されたものである。
3 訂正の適否
(1)訂正の目的
訂正事項1による請求項17の訂正は、訂正前の請求項17において特定されていた「プラスチック製部材」の構成を特定するものである。そうすると、訂正事項1による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
(2)新規事項の追加の有無
訂正事項1による請求項17の訂正は、願書に添付した明細書の段落【0055】及び段落【0056】の記載に基づいてなされたものといえる。そうすると、訂正事項1による訂正は、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内の訂正であるから、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合する。
(3)実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更する訂正ではないこと
訂正事項1による請求項17の訂正は、訂正前の請求項17において特定されていた「プラスチック製部材」の構成を特定することで特許請求の範囲を減縮するものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことも明らかである。そうすると、訂正事項1による訂正は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合する。
4 請求項18~24について
請求項17の記載を直接または間接的に引用して特定する請求項18~24についても、上記3~5と同様に判断される。
5 小括
以上のとおり、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の適合する。
よって、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項17~24について訂正することを認める。
第3 本件特許発明
前記第2のとおり、令和5年9月19日付け手続補正書により訂正された令和5年6月13日提出の訂正請求書による訂正は認められることになったから、本件特許の請求項1~25に係る発明は、令和5年9月19日付け手続補正書に添付された、訂正特許請求の範囲に記載された、次のとおりのものである。
「【請求項1】
複合容器を成形するためのブロー成形方法において、
プラスチック材料製のプリフォームを準備する工程と、
前記プリフォームの外側に、射出成形品のプラスチック製部材を設ける工程と、
前記プリフォームおよび前記プラスチック製部材を加熱するとともにブロー成形金型内に挿入する工程と、
前記ブロー成形金型内で前記プリフォームおよび前記プラスチック製部材に対してブロー成形を施すことにより、前記プリフォームおよび前記プラスチック製部材を一体として膨張させる工程とを備え、
前記プラスチック製部材に、前記プラスチック製部材を剥離除去するための切断線が設けられていることを特徴とする、ブロー成形方法。
【請求項2】
前記プリフォームが、口部と胴部と底部とを有し、前記プラスチック製部材は、前記プリフォームの前記胴部と前記底部とを覆うように設けられることを特徴とする、請求項1に記載のブロー成形方法。
【請求項3】
前記プリフォームが、口部と胴部と底部とを有し、前記プラスチック製部材は、前記プリフォームの前記胴部および前記底部のうちその一部を覆うように設けられることを特徴とする、請求項1に記載のブロー成形方法。
【請求項4】
前記プラスチック製部材が、ガスバリア性又は光線バリア性を有することを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載のブロー成形方法。
【請求項5】
前記プラスチック製部材に、デザイン又は印字が施されていることを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載のブロー成形方法。
【請求項6】
前記プラスチック製部材が、前記プリフォームを構成する前記プラスチック材料よりも保温性又は保冷性の高い材料からなることを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載のブロー成形方法。
【請求項7】
前記プラスチック製部材が、前記プリフォームを構成する前記プラスチック材料よりも滑りにくい材料からなることを特徴とする、請求項1~6のいずれか一項に記載のブロー成形方法。
【請求項8】
前記プリフォームの外側を取り囲むように内側ラベル部材を設ける工程を更に備え、
前記プラスチック製部材は、前記内側ラベル部材の外側に設けられることを特徴とする、請求項1~7のいずれか一項に記載のブロー成形方法。
【請求項9】
複合プリフォームにおいて、
プラスチック材料製のプリフォームと、
前記プリフォームの外側を取り囲むように設けられた、射出成形品のプラスチック製部材とを備え、
前記プラスチック製部材が、前記プリフォームの外側に密着され、
前記プラスチック製部材に、前記プラスチック製部材を剥離除去するための切断線が設けられていることを特徴とする、複合プリフォーム。
【請求項10】
前記プリフォームは、口部と胴部と底部とを有し、前記プラスチック製部材は、前記プリフォームの前記胴部と前記底部とを覆うように設けられることを特徴とする、請求項9に記載の複合プリフォーム。
【請求項11】
前記プリフォームは、口部と胴部と底部とを有し、前記プラスチック製部材は、前記プリフォームの前記胴部および前記底部のうちその一部を覆うように設けられることを特徴とする、請求項9に記載の複合プリフォーム。
【請求項12】
前記プラスチック製部材が、ガスバリア性又は光線バリア性を有することを特徴とする、請求項9~11のいずれか一項に記載の複合プリフォーム。
【請求項13】
前記プラスチック製部材に、デザイン又は印字が施されていることを特徴とする、請求項9~12のいずれか一項に記載の複合プリフォーム。
【請求項14】
前記プラスチック製部材が、前記プリフォームを構成する前記プラスチック材料よりも保温性又は保冷性の高い材料からなることを特徴とする、請求項9~13のいずれか一項に記載の複合プリフォーム。
【請求項15】
前記プラスチック製部材が、前記プリフォームを構成する前記プラスチック材料よりも滑りにくい材料からなることを特徴とする、請求項9~14のいずれか一項に記載の複合プリフォーム。
【請求項16】
前記プリフォームの外側を取り囲むように密着して設けられた内側ラベル部材を更に備え、
前記プラスチック製部材は、前記内側ラベル部材の外側に密着して設けられていることを特徴とする、請求項9~15のいずれか一項に記載の複合プリフォーム。
【請求項17】
複合容器において、
プラスチック材料製の容器本体と、
前記容器本体の外側に密着して設けられた、射出成形品のプラスチック製部材とを備え、
前記容器本体は、中央に位置する凹部と、前記凹部周囲に設けられた接地部とを有する底部を含み、
前記凹部は、前記容器本体の前記底部の内方に凹み、
前記容器本体および前記プラスチック製部材は、ブロー成形により一体として膨張されており、
前記プラスチック製部材に、前記プラスチック製部材を剥離除去するための切断線が設けられており、
前記プラスチック製部材は、前記容器本体の前記底部の前記凹部および前記接地部の形状に沿って、前記凹部の底面および前記接地部に密着して設けられており、
前記プラスチック製部材は、前記容器本体に対して溶着されておらず、前記容器本体をリサイクルする際、前記切断線に沿って前記容器本体から剥離除去可能に設けられており、
前記プラスチック製部材の厚みは、5μm以上50μm以下であることを特徴とする、複合容器。
【請求項18】
前記容器本体は、口部と首部と肩部と胴部と前記底部とを有し、前記プラスチック製部材は、前記容器本体の前記首部と前記肩部と前記胴部と前記底部とを覆うように設けられることを特徴とする、請求項17に記載の複合容器。
【請求項19】
前記容器本体は、口部と首部と肩部と胴部と前記底部とを有し、前記プラスチック製部材は、前記容器本体の前記首部、前記肩部および前記胴部のうちその一部を覆うように設けられることを特徴とする、請求項17に記載の複合容器。
【請求項20】
前記プラスチック製部材が、ガスバリア性又は光線バリア性を有することを特徴とする、請求項17~19のいずれか一項に記載の複合容器。
【請求項21】
前記プラスチック製部材に、デザイン又は印字が施されていることを特徴とする、請求項17~20のいずれか一項に記載の複合容器。
【請求項22】
前記プラスチック製部材が、前記容器本体を構成する前記プラスチック材料よりも保温性又は保冷性の高い材料からなることを特徴とする、請求項17~21のいずれか一項に記載の複合容器。
【請求項23】
前記プラスチック製部材が、前記容器本体を構成する前記プラスチック材料よりも滑りにくい材料からなることを特徴とする、請求項17~22のいずれか一項に記載の複合容器。
【請求項24】
前記容器本体の外側を取り囲むように密着して設けられた内側ラベル部材を更に備え、
前記プラスチック製部材は、前記内側ラベル部材の外側に密着して設けられていることを特徴とする、請求項17~23のいずれか一項に記載の複合容器。
【請求項25】
プリフォームの外側を取り囲むように装着され、前記プリフォームとともに一体として加熱されることにより、前記プリフォームと、前記プリフォームの外側に密着されたプラスチック製部材とを有する複合容器を作製するためのプラスチック製部材であって、
前記プラスチック製部材が、少なくとも前記プリフォームの胴部を覆う筒状の胴部を有し、
前記プラスチック製部材が、射出成形品であり、
前記プラスチック製部材に、前記プラスチック製部材を剥離除去するための切断線が設けられていることを特徴とする、プラスチック製部材。」
第4 当合議体が通知した取消理由の概要
本件訂正前の請求項1~25に係る特許に対して、当合議体が令和5年4月17日付けで通知した取消理由の概要は、以下の理由1及び理由2のとおりである。
また、本件訂正後の請求項1~16、25について当合議体が令和5年11月17日付けで通知した取消理由<決定の予告>の概要は、以下の理由1のとおりである。
理由1:(新規事項)本件特許の請求項1~16、25に係る発明について、令和3年4月23日提出の手続補正書でした補正(本件補正)は、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「当初明細書等」という。)に記載した事項の範囲内においてしたものでないから、特許法17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。
理由2:(進歩性)本件特許の請求項17~24に係る発明は、本件出願前に日本国内又は外国において、頒布された以下の刊行物に記載された発明に基いて、本件出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
引用文献等一覧
甲1:特表2008-532816号公報
甲2:特開2006-117269号公報
甲3:指定PETボトルの自主設計ガイドライン 付属書2:ラベル(印刷
・接着剤等を含む)評価基準、PETボトルリサイクル推進協議会、
平成23年(2011年)3月1日改訂版
なお、甲1は主引用文献であり、甲2及び甲3は周知技術を示す文献である。
第5 当合議体の判断
1 理由1(新規事項)について
(1)本件補正
本件補正は、請求項1、9及び25について、以下のとおり補正する補正事項を含んでいる。なお、下線は当審が付した。
【請求項1】
複合容器を成形するためのブロー成形方法において、
プラスチック材料製のプリフォームを準備する工程と、
前記プリフォームの外側に、射出成形品のプラスチック製部材を設ける工程と、
前記プリフォームおよび前記プラスチック製部材を加熱するとともにブロー成形金型内に挿入する工程と、
前記ブロー成形金型内で前記プリフォームおよび前記プラスチック製部材に対してブロー成形を施すことにより、前記プリフォームおよび前記プラスチック製部材を一体として膨張させる工程とを備え、
前記プラスチック製部材に、前記プラスチック製部材を剥離除去するための切断線が設けられていることを特徴とする、ブロー成形方法。
【請求項9】
複合プリフォームにおいて、
プラスチック材料製のプリフォームと、
前記プリフォームの外側を取り囲むように設けられた、射出成形品のプラスチック製部材とを備え、
前記プラスチック製部材が、前記プリフォームの外側に密着され、
前記プラスチック製部材に、前記プラスチック製部材を剥離除去するための切断線が設けられていることを特徴とする、複合プリフォーム。
【請求項25】
プリフォームの外側を取り囲むように装着され、前記プリフォームとともに一体として加熱されることにより、前記プリフォームと、前記プリフォームの外側に密着されたプラスチック製部材とを有する複合容器を作製するためのプラスチック製部材であって、
前記プラスチック製部材が、少なくとも前記プリフォームの胴部を覆う筒状の胴部を有し、
前記プラスチック製部材が、射出成形品であり、
前記プラスチック製部材に、前記プラスチック製部材を剥離除去するための切断線が設けられていることを特徴とする、プラスチック製部材。
本件補正により、請求項1~16及び25に係る発明では、ブロー成形される前の「プラスチック製部材」に、「プラスチック製部材を剥離除去するための切断線が設けられている」ことが特定された。
(2)当初明細書の記載
本件特許の当初明細書には、以下の記載がある。なお、下線は合議体が付した。
「 【0037】
図1および図2に示す複合容器10Aは、後述するように、ブロー成形金型50を用いてプリフォーム10aおよびプラスチック製部材40aを含む複合プリフォーム70(図3参照)に対して2軸延伸ブロー成形を施すことにより、複合プリフォーム70のプリフォーム10aおよびプラスチック製部材40aを一体として膨張させて得られたものである。
【0038】
このような複合容器10Aは、内側に位置するプラスチック材料製の容器本体10と、容器本体10の外側に密着して設けられたプラスチック製部材40とを備えている。」
「 【0055】
一方、プラスチック製部材40は、容器本体10に対して溶着ないし接着されていないため、容器本体10から剥離して除去することができる。具体的には、例えば刃物等を用いてプラスチック製部材40を切除したり、プラスチック製部材40に予め図示しない切断線を設け、この切断線に沿ってプラスチック製部材40を剥離したりすることができる。これにより、印刷が施されたプラスチック製部材40を容器本体10から分離除去することができるので、従来と同様に無色透明な容器本体10をリサイクルすることができる。」
(3)当初明細書等に記載された発明
段落【0038】及び段落【0055】の記載に基づけば、ブロー成形後に得られる「複合容器10A」が備える「プラスチック製部材40」に、予め「プラスチック製部材を剥離除去するための切断線」が設けられた発明が、当初明細書等に記載されていると理解できる。
一方、ブロー成形される前の、「複合プリフォーム70」に含まれる「プラスチック製部材40a」について、切断線を設ける旨の記載はない。そして、プラスチック製部材について、当初明細書では、ブロー成形の前後において「プラスチック製部材40a」及び「プラスチック製部材40」と、区別して記載されていることからみて、段落【0055】の「プラスチック製部材40に予め図示しない切断線を設け」の記載における.「プラスチック製部材40」が、ブロー成形される前の「プラスチック製部材40a」を含む記載であると理解することはできない。
また、段落【0055】の記載における「切断線」は、「プラスチック製部材40」を容器本体10から剥離して除去するためのものであって、いわゆるミシン目のようなもの、あるいは薄肉部であると解されるところ、仮に、ブロー成形前の「プリフォームの外側」の「プラスチック製部材」に「プラスチック製部材を剥離除去するための切断線が設けられている」とした場合、ブロー成形による熱膨張の際に切断線(ミシン目や薄肉部)に集中的に応力が働き破断又は変形することが明らかであるから、ブロー成形後の「容器本体の外側」の「プラスチック製部材40」に「切断線」を設ける旨の記載があることをもって、本件補正後の請求項1~16及び25に係る発明のように、ブロー成形される前の「プリフォームの外側」の「プラスチック製部材」に「プラスチック製部材を剥離除去するための切断線が設けられている」ことが、当初明細書等に明示的に記載された事項あるいは記載から自明な事項であると認めることはできない。
(4)特許権者の主張
特許権者は、令和5年6月13日に提出した意見書において、「『プラスチック製部材40に予め図示しない切断線を設け、この切断線に沿ってプラスチック製部材40を剥離したりすることができる。』といった記載に接した当業者であれば、出願時の技術常識に照らして、『プリフォームの外側のプラスチック製部材40aに切断線を設ける』といった事項、及び『ブロー成形後の容器本体の外側のプラスチック製部材40に切断線を設ける」といった事項が、本件特許の当初明細書等に記載されているのと同然であると理解するものと思料する。」(第8頁最終行~第9頁第6行)と主張している。
しかし、前記(3)において検討したとおり、当初明細書等において、当該「プラスチック製部材40」が、ブロー成形後に得られる「複合容器10A」が備える「プラスチック製部材」を意味することは明らかである。そうすると、切断線を予め設ける時期は、ブロー成形とリサイクルの間の範囲に限られる。そして、出願時の技術常識を加味したとしても、「プリフォームの外側のプラスチック製部材40aに切断線を設ける」といった事項が、本件特許の当初明細書等に記載されているのと同然であると理解することはできない。
また、特許権者は、上記意見書において、特許第6459326号の記載を引用し、「ブロー成形前の『プリフォームの外側』の『プラスチック製部材』に『プラスチック製部材を剥離除去するための切断線が設けられている』とした場合に、必ずしも、ブロー成形による熱膨張の際に切断線(ミシン目や薄肉部)に集中的に応力が働き破断又は変形するものではないことは明らかである。」とも主張する。しかし、特許権者が言及する特許第6459326号は、特許公報及び対応する公開公報のいずれも、本件特許の出願日の後に発行されたものであるから、上記公報の存在は上記下線部の判断を左右しない。
したがって、上記主張は採用できない。
(5)小括
上記(1)~(4)のとおりであるから、本件補正は、新たな技術的事項を導入するものであることは明らかであり、当初明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものであるということができない。
また、請求項1の記載を引用する請求項2~8及び請求項9の記載を引用する10~16についても同様である。
したがって、本件補正は、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。
2 理由2(進歩性)について
(1)本件特許の請求項17~24に係る発明
本件特許の請求項17~24に係る発明(以下「本件特許発明17」等という。)は、前記第3に記載したとおりのものと認められる。
(2)甲1に記載された発明
甲1には、【請求項1】に係る方法によって製造される容器の実施形態として、【0048】及び【図5】に記載された、次の「オーバーモールドされた容器」の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認められる(なお、オーバーモールド材料およびオーバーモールド工程については【0031】及び【0033】も参照。また、認定の根拠となった箇所を、参考のため括弧内に示す。)。
「熱可塑性ポリマーを含むプリフォームを容器に対して提供する工程と、
オーバーモールドされたプリフォームを形成するために、前記プリフォームの少なくとも一部上に熱可塑性エラストマーを含む組成からなる(【0033】)エラストマーのオーバーモールド材料を射出成形することで(【0031】)オーバーモールドする工程と、
前記オーバーモールドされたプリフォームをブロー成形して、オーバーモールドされた容器を形成する工程と、を含む方法によって製造されるオーバーモールドされた容器であって、
容器は、熱可塑性ポリマーの本体を含み、本体は口を定義しているネジ付きのネック仕上げと、ネジ付きのネック仕上げの下にあるキャッピングフランジと、キャッピングフランジから延びているテーパ付きの部分と、テーパ付きの部分の下に延びている本体部分と、容器の底にあるベースと、を備え、(【0048】)
ベースは、中央に位置する凹部と、凹部周囲に設けられた接地部とを有し、凹部は、本体のベースの内方に凹み、(【図5】)
容器は、テーパ付きの部分および本体部分を覆い、キャッピングフランジの下で終端しているオーバーモールド層を含む(【0048】)オーバーモールドされた容器。」
(3)本件特許発明17
ア 対比
(ア)甲1発明の「オーバーモールドされた容器」は、本件特許発明17の「複合容器」に相当する。
(イ)甲1発明の「本体」は、本件特許発明17の「容器本体」に相当する。
また、甲1発明の「本体」(「容器本体」)は、「熱可塑性ポリマー」からなるから、本件特許発明17の「プラスチック材料製の容器本体」との要件を満たす。
(ウ)甲1発明の「オーバーモールド」における「オーバーモールド材料は、熱可塑性エラストマーを含んでいる組成を指」すものであるから、本件特許発明17の「プラスチック製部材」に相当する。
また、甲1発明の「オーバーモールド」(「プラスチック製部材」)は、「オーバーモールド材料を射出成形」して得られるものであるから、本件特許発明17の「射出成形品のプラスチック製部材」との要件を満たす。
(エ)甲1発明の「オーバーモールドされたプリフォームをブロー成形して、オーバーモールドされた容器を形成する工程」からみて、甲1発明が、本件特許発明17の「容器本体およびプラスチック製部材は、ブロー成形により一体として膨張されて(いる)」との要件を満たすことが明らかである。
(オ)甲1発明の「オーバーモールド」(「プラスチック製部材」)は、その形成工程や【図5】からみて、本件特許発明17の「容器本体の外側に密着して設けられた、射出成形品のプラスチック製部材」とする要件を満たす。
(カ)甲1発明の「ベース」は、本件特許発明17の「底部」に相当する。
また、甲1発明の「ベース」(「底部」)は、「中央に位置する凹部と、凹部周囲に設けられた接地部とを有し、凹部は、本体のベースの内方に凹(む)」から、本件特許発明17の「容器本体は、中央に位置する凹部と、凹部周囲に設けられた接地部とを有する底部を含み、凹部は、容器本体の底部の内方に凹(む)
」との要件を満たす。
(キ)甲1発明の「オーバーモールド」(「プラスチック製部材」)は、その形成工程や【図5】からみて、本件特許発明17の「容器本体の底部の凹部および接地部の形状に沿って、凹部の底面および接地部に密着して設けられている」との要件を満たす。
(ク)一致点・相違点
以上より、本件特許発明17と甲1発明とは、
「複合容器において、
プラスチック材料製の容器本体と、
前記容器本体の外側に密着して設けられた、射出成形品のプラスチック製部材とを備え、
前記容器本体は、中央に位置する凹部と、前記凹部周囲に設けられた接地部とを有する底部を含み、
前記凹部は、前記容器本体の前記底部の内方に凹み、
前記容器本体および前記プラスチック製部材は、ブロー成形により一体として膨張されており、
前記プラスチック製部材は、前記容器本体の前記底部の前記凹部および前記接地部の形状に沿って、前記凹部の底面および前記接地部に密着して設けられており、
前記プラスチック製部材は、前記容器本体に対して溶着されていないことを特徴とする、
複合容器。」である点で一致し、以下の点で相違する。
[相違点1]本件特許発明17は、「前記プラスチック製部材に、前記プラスチック製部材を剥離除去するための切断線が設けられており」、「前記プラスチック製部材は、前記容器に本体に対して溶着されておらず、前記容器本体をリサイクルする際、前記切断線に沿って前記容器本体から剥離除去可能に設けられて」いるのに対して、甲1発明はそのような特定がない点。
[相違点2]本件特許発明17は、プラスチック製容器の厚みが、「5μm以上50μm以下」であるのに対し、甲1発明は厚みを特定していない点。
イ 判断
事案に鑑みて、上記[相違点2]について検討する。
甲1の段落【0037】には、「一実施形態においては、オーバーモールドされた容器の上のオーバーモールド材料の層の厚さは0.1mm~5mmであり、0.1mm~3mmが好ましい。」との記載がある。当該記載に基づけば、甲1発明は、オーバーモールド材料の層の厚さについて、5μm以上50μm以下の範囲にすることを想定していないといえる。
また、甲1の段落【0001】には、技術分野に関する記載として、「本発明は、概して、成形されたポリ容器に関し、特に、表面質感および手触り感、彩色および他の視覚的設計変数、断熱性、および他の機能などの容器のある種の機能性を高めることができるオーバーモールドされた容器を作るための方法に関する。」と記載されており、背景技術として、「容器の外側に結露が発生する状況においてしばしば使用される製品容器に対して、そのグリップ性を改善することが非常に望ましい。」(段落【0002】)、「ソフトタッチの材料は改善された芸術性、より良い触覚的性質、および改善されたグリップ性を提供する。」(段落【0004】)と記載され、発明が解決しようとする課題として、「包装業界において、簡単に着色され、グリップ機能が制御でき、断熱機能、および/または他の機能がある容器をつくること、およびPETまたは他の熱可塑性リサイクル流に負の影響を与えずに、これらの設計特性を達成することに対するニーズが存在する。」(段落【0005】)ことが挙げられている。そして、段落【0006】に、課題を解決するための手段として、「1つおよび複数のオーバーモールドされた容器を作るための方法を提供する。オーバーモールドされた容器は改善された視覚的および触覚的特性を提供し、革新的な包装設計を可能にし、改善されたグリップ性および断熱性を有利に提供することができる。」と説明されている。
これらの記載に基づけば、甲1発明のオーバーモールド材料の層は、改善された視覚的特性とともに、触覚的特性を提供するものであることを要し、改善されたグリップ性および断熱性を提供するものであるといえる。そうすると、仮に、複合容器を構成するラベルの厚さを5μm以上50μm以下とすることが、本件特許の出願前に公知であったとしても、そのような公知技術が、触覚的特性を提供し、改善されたグリップ性および断熱性を提供するものでない限り、甲1発明のオーバーモールド材料の厚みとして採用する動機付けがあるとはいえない。また、動機づけが見いだせないとの上記判断は、甲2~甲4に記載された技術事項(リサイクル適正の観点から、ラベルにミシン目を形成すること等)について検討してみても変わらない。
よって、甲1発明のオーバーモールド材料の層の厚さを、本件特許発明17の[相違点2]に係る構成とすることは、当業者であっても、容易になし得たとはいえない。
ウ 小括
以上のとおりであるから、[相違点1]について検討するまでもなく、本件特許発明17は、甲1に記載された発明及び甲2~甲4に記載された技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(2)本件特許発明18~24について
本件特許発明18~24は、本件特許発明17の発明特定事項の全てを含み、さらに限定を付した発明である。そして、本件特許発明17は、上記(1)のとおり、甲1発明に基づいて当業者が容易になし得たものではないから、本件特許発明18~24もまた、甲1発明に基づいて当業者が容易になし得たものではない。
第6 むすび
本件特許発明1~16及び25に係る特許は、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない補正をした特許出願に対してなされたものであるから、特許法第113条第1項に該当し、取り消されるべきものである。
また、本件特許発明17~24に係る特許は、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては取り消すことはできない。また、他に本件特許発明17~24に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2022-701278