特許拒絶査定不服審判
2024-018246
射出成形装置および射出成形方法
- 審判番号
- 2024-018246
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2021-005011
- 請求日
- 2024年11月15日
- 審決日
- 2026年03月16日
- 公報発行日
- 2026年05月29日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】株式会社日本製鋼所
- 【請求人代理人】弁理士法人筒井国際特許事務所
- 審判長/審判官
- 審判長 古屋野 浩志
- 審判官 外川 敬之
- 審判官 植前 充司
- 分類
- P18 .113-Z (B29C) / P18 .121-Z (B29C) / P18 .56 -Z (B29C) / P18 .561-Z (B29C) / P18 .57 -Z (B29C) / P18 .575-Z (B29C)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第17条の2第3項、特許法第17条の2第5項、特許法第29条、特許法第17条の2第1項、特許法第159条、特許法第17条の2第5項第2号、特許法第36条、特許法第17条の2第6項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2021- 5011「射出成形装置および射出成形方法」拒絶査定不服審判事件〔令和 4年 7月28日出願公開、特開2022-109612〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、令和3年1月15日に出願したものであって、その手続の経緯は以下のとおりである。
令和 6年 5月 1日付け:拒絶理由通知書
令和 6年 6月11日提出:意見書、手続補正書
令和 6年 8月29日付け:拒絶査定
令和 6年11月15日提出:審判請求書、手続補正書
第2 令和6年11月15日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和 6年11月15日にされた手続補正を却下する。
[理由]
1.本件補正について(補正の内容)
(1)補正前の本願発明(本件補正発明の認定)
令和 6年11月15日に提出された手続補正書による補正(以下「本件補正」という。)前の特許請求の範囲の請求項1~16に係る発明は、次のとおりである。
「【請求項1】
上流に位置し樹脂材料が供給される第1孔と、前記第1孔より下流に位置しフィラーが供給される第2孔とを有するシリンダと、
切断装置と、
前記シリンダ内に配備されたスクリュと、
を有し、
前記切断装置は、単繊維の束状態からなる糸状の繊維を一定の長さに連続して切断し、切断された繊維片を前記第2孔に投入する、射出成形装置。
【請求項2】
請求項1記載の射出成形装置において、
前記繊維は、炭素繊維またはガラス繊維である、射出成形装置。
【請求項3】
請求項1記載の射出成形装置において、
前記切断装置は、前記糸状の繊維を複数並べて、または複数積層して一定の長さに切断する、射出成形装置。
【請求項4】
請求項1記載の射出成形装置において、
前記切断された繊維片の長さは、前記第2孔直下における前記スクリュの円周以下である、射出成形装置。
【請求項5】
請求項1記載の射出成形装置において、
前記切断された繊維片の幅は、2mm以上20mm以下である、射出成形装置。
【請求項6】
請求項1記載の射出成形装置において、
前記切断された繊維片を、5秒以内に、前記シリンダ内に投入する、射出成形装置。
【請求項7】
(a)シリンダと、前記シリンダ内に配備されたスクリュと、前記シリンダに設けられた切断装置とを有する射出成形装置と、前記射出成形装置の先端に接続された型と、を準備する工程、
(b)前記シリンダの上流に設けられた第1孔から、樹脂材料を前記シリンダ内に供給して溶融させ溶融樹脂を形成する工程、
(c)前記シリンダの前記第1孔より下流に設けられた第2孔にフィラーを供給し、前記溶融樹脂と前記フィラーとの混練を行うことにより前記フィラー含有の溶融樹脂を形成する工程、
(d)前記スクリュの先端が第1位置から第2位置までの第1ストロークだけ後退するように、前記スクリュを後退させることにより、前記スクリュの先端部において前記フィラー含有の溶融樹脂を計量する工程、
(e)前記スクリュを前進させることにより、前記フィラー含有の溶融樹脂を前記型に注入することにより、成形体を形成する工程、を有し、
前記(c)工程において、前記切断装置により、単繊維の束状態からなる糸状の繊維を一定の長さに連続して切断し、切断された繊維片を前記第2孔に投入する、射出成形方法。
【請求項8】
請求項7記載の射出成形方法において、
前記繊維は、炭素繊維またはガラス繊維である、射出成形方法。
【請求項9】
請求項7記載の射出成形方法において、
前記切断装置は、前記糸状の繊維を複数並べて、または複数積層して一定の長さに切断する、射出成形方法。
【請求項10】
請求項7記載の射出成形方法において、
前記切断された繊維片の長さは、前記第2孔直下における前記スクリュの円周以下である、射出成形方法。
【請求項11】
請求項7記載の射出成形方法において、
前記切断された繊維片の幅は、2mm以上20mm以下である、射出成形方法。
【請求項12】
請求項7記載の射出成形方法において、
前記切断された繊維片を、5秒以内に、前記シリンダ内に投入する、射出成形方法。
【請求項13】
請求項7記載の射出成形方法において、
前記成形体中の繊維片の長さは、0.3mm以上である、射出成形方法。
【請求項14】
請求項7記載の射出成形方法において、
前記成形体のシールド性は42dB以上である、射出成形方法。
【請求項15】
孔を有するシリンダと、
切断装置と、
前記シリンダ内に配備されたスクリュと、
を有し、
前記切断装置は、単繊維の束状態からなる糸状の繊維を一定の長さに連続して切断し、切断された繊維片を前記孔に投入する、射出成形装置。
【請求項16】
(a)シリンダと、前記シリンダ内に配備されたスクリュと、前記シリンダに設けられた切断装置とを有する射出成形装置と、前記射出成形装置の先端に接続された型と、を準備する工程、
(b)前記シリンダに設けられた孔から、樹脂材料およびフィラーを前記シリンダ内に供給して溶融樹脂と前記フィラーとの混練を行うことにより前記フィラー含有の溶融樹脂を形成する工程、
(c)前記スクリュの先端が第1位置から第2位置までの第1ストロークだけ後退するように、前記スクリュを後退させることにより、前記スクリュの先端部において前記フィラー含有の溶融樹脂を計量する工程、
(d)前記スクリュを前進させることにより、前記フィラー含有の溶融樹脂を前記型に注入することにより、成形体を形成する工程、を有し、
前記(b)工程において、前記切断装置により、単繊維の束状態からなる糸状の繊維を一定の長さに連続して切断し、切断された繊維片を前記孔に投入する、射出成形方法。
(2)補正後の本願発明(本件補正発明の認定)
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおり補正された(下線部は、補正箇所である。)。
「【請求項1】
上流に位置し樹脂材料が供給される第1孔と、前記第1孔より下流に位置しフィラーが供給される第2孔とを有するシリンダと、
切断装置と、
前記シリンダ内に配備されたスクリュと、
を有し、
前記切断装置は、単繊維の束状態からなる糸状の繊維を一定の長さに連続して切断し、切断された繊維片を前記第2孔に投入し、
前記切断された繊維片の長さは、前記第2孔直下における前記スクリュの円周以下である、射出成形装置。
【請求項2】
請求項1記載の射出成形装置において、
前記繊維は、炭素繊維またはガラス繊維である、射出成形装置。
【請求項3】
請求項1記載の射出成形装置において、
前記切断装置は、前記糸状の繊維を複数並べて、または複数積層して一定の長さに切断する、射出成形装置。
【請求項4】
請求項1記載の射出成形装置において、
前記切断された繊維片の幅は、2mm以上20mm以下である、射出成形装置。
【請求項5】
請求項1記載の射出成形装置において、
前記切断された繊維片を、5秒以内に、前記シリンダ内に投入する、射出成形装置。
【請求項6】
(a)シリンダと、前記シリンダ内に配備されたスクリュと、前記シリンダに設けられた切断装置とを有する射出成形装置と、前記射出成形装置の先端に接続された型と、を準備する工程、
(b)前記シリンダの上流に設けられた第1孔から、樹脂材料を前記シリンダ内に供給して溶融させ溶融樹脂を形成する工程、
(c)前記シリンダの前記第1孔より下流に設けられた第2孔にフィラーを供給し、前記溶融樹脂と前記フィラーとの混練を行うことにより前記フィラー含有の溶融樹脂を形成する工程、
(d)前記スクリュの先端が第1位置から第2位置までの第1ストロークだけ後退するように、前記スクリュを後退させることにより、前記スクリュの先端部において前記フィラー含有の溶融樹脂を計量する工程、
(e)前記スクリュを前進させることにより、前記フィラー含有の溶融樹脂を前記型に注入することにより、成形体を形成する工程、を有し、
前記(c)工程において、前記切断装置により、単繊維の束状態からなる糸状の繊維を一定の長さに連続して切断し、切断された繊維片を前記第2孔に投入し、
前記切断された繊維片の長さは、前記第2孔直下における前記スクリュの円周以下である、射出成形方法。
【請求項7】
請求項6記載の射出成形方法において、
前記繊維は、炭素繊維またはガラス繊維である、射出成形方法。
【請求項8】
請求項6記載の射出成形方法において、
前記切断装置は、前記糸状の繊維を複数並べて、または複数積層して一定の長さに切断する、射出成形方法。
【請求項9】
請求項6記載の射出成形方法において、
前記切断された繊維片の幅は、2mm以上20mm以下である、射出成形方法。
【請求項10】
請求項6記載の射出成形方法において、
前記切断された繊維片を、5秒以内に、前記シリンダ内に投入する、射出成形方法。
【請求項11】
請求項6記載の射出成形方法において、
前記成形体中の繊維片の長さは、0.3mm以上である、射出成形方法。
【請求項12】
請求項6記載の射出成形方法において、
前記成形体のシールド性は42dB以上である、射出成形方法。
【請求項13】
孔を有するシリンダと、
切断装置と、
前記シリンダ内に配備されたスクリュと、
を有し、
前記切断装置は、単繊維の束状態からなる糸状の繊維を一定の長さに連続して切断し、切断された繊維片を前記孔に投入し、
前記切断された繊維片の長さは、前記第2孔直下における前記スクリュの円周以下である、射出成形装置。
【請求項14】
(a)シリンダと、前記シリンダ内に配備されたスクリュと、前記シリンダに設けられた切断装置とを有する射出成形装置と、前記射出成形装置の先端に接続された型と、を準備する工程、
(b)前記シリンダに設けられた孔から、樹脂材料およびフィラーを前記シリンダ内に供給して溶融樹脂と前記フィラーとの混練を行うことにより前記フィラー含有の溶融樹脂を形成する工程、
(c)前記スクリュの先端が第1位置から第2位置までの第1ストロークだけ後退するように、前記スクリュを後退させることにより、前記スクリュの先端部において前記フィラー含有の溶融樹脂を計量する工程、
(d)前記スクリュを前進させることにより、前記フィラー含有の溶融樹脂を前記型に注入することにより、成形体を形成する工程、を有し、
前記(b)工程において、前記切断装置により、単繊維の束状態からなる糸状の繊維を一定の長さに連続して切断し、切断された繊維片を前記孔に投入し、
前記切断された繊維片の長さは、前記第2孔直下における前記スクリュの円周以下である、射出成形方法。
(3)補正事項
上記(1)及び(2)のとおり、本件補正は、本件補正前の請求項1、15及び16に記載された発明に、「前記切断された繊維片の長さは、前記第2孔直下における前記スクリュの円周以下である」とする限定を追加する補正事項を含むものである。
本件補正は、令和 6年11月15日付け拒絶査定不服審判請求と同時になされたものであり、特許法17条の2第1項4号に掲げる場合において特許請求の範囲についてする補正に該当し、同条3項から6項が規定する要件に適合することを要する。
以下、検討する。
2.補正の適否
(1)特許法第17条の2第3項(新規事項の追加)について
本件出願の願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「当初明細書等」という。)のうち、本件補正後の請求項14に記載される発明(以下「本件補正発明14」という。)に関連する記載は、以下のとおりである(下線は当合議体で付した。)。
ア 明細書における記載
(ア)「【技術分野】
【0001】
本発明は、射出成形装置および射出成形方法、特に、フィラー含有樹脂成形体を形成するための射出成形装置および射出成形方法に好適に利用できるものである。
・・・略・・・
【0007】
その研究開発過程において、フィラーの投入量の制御性を向上することができる技術を見出すに至った。さらに、樹脂中に残存するフィラーの長さをより長く保持することで、樹脂成形体の特性を向上させることができる技術を見出すに至った。
・・・略・・・
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願の一実施の形態において開示される射出成形装置は、上流に位置し樹脂材料が供給される第1孔と、前記第1孔より下流に位置しフィラーが供給される第2孔とを有するシリンダと、切断装置と、前記シリンダ内に配備されたスクリュと、を有する。そして、前記切断装置は、糸状の繊維を一定の長さに連続して切断し、切断された繊維片を前記第2孔に投入する。
(イ)「【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】実施の形態のフィラー含有樹脂成形体の製造装置(製造システム)の構成を示す図である。
(ウ)「【発明を実施するための形態】
・・・略・・・
【0016】
図1は、本実施の形態のフィラー含有樹脂成形体の製造装置(製造システム)の構成を示す図である。この装置は、射出成形装置1と、プレス機5とを有する。本実施の形態においては、フィラーを含有しない樹脂ペレット(樹脂材料)と、フィラーとを直接混合し、成形体(成型体)を形成する。
【0017】
射出成形装置1は、供給される樹脂ペレットRPを溶融しつつ、フィラーFと混合・混練し、フィラー含有の溶融樹脂(MRF)を形成するための装置である。射出成形装置1は、図示しない温調手段によって温度制御されるシリンダ11と、シリンダ11の内部に配置されたスクリュSと、スクリュSに接続されたスクリュの駆動部17を有している。シリンダ11の先端には吐出ノズル19が設けられている。
【0018】
シリンダ11は、シリンダ11の上流側に配設された樹脂ペレットRPの供給口13hと、フィラーFの供給口15hとを有している。供給口13hは、樹脂ペレットRP用のホッパ(供給装置、投入装置)13と接続されている。また、供給口15hは、フィラーF用の供給口であり、その上部に配置される切断装置15から切断された繊維片がフィラーFとして供給される。
【0019】
このように、本実施の形態においては、フィラーF用の供給口15hに、切断装置(カッター装置)15が備え付けられている。切断装置15は、部材に巻き取られた糸状の繊維(ロービングR)を一定の長さに連続して切断し、随時切断された繊維片を供給口15hに投入する。このように、糸状の繊維を一定の長さに切断し、順次供給口15hに投入することで、制御性良く、繊維片(フィラーF)を供給することができる。
【0020】
切断装置としては、糸状の繊維を一定の長さに切断しつつ、投入できる装置であれば制限はないが、例えば、図2に示す切断装置を用いることができる。図2は、切断装置の構成を示す概略図である。図2の切断装置は、部材に巻き取られた糸状の繊維(ロービングR)を取り付けるセット部15aと、ロービングRから引き出された糸状の繊維16aを一定の長さだけ繰り出すローラ15bと、カッター刃15cとを有する。図2(A)に示すように糸状の繊維16aは、ロービングRから引き出され、ローラ15bの回転により、カッター刃15cの位置より所定の長さLだけ突出された後、図2(B)に示すように、カッター刃15cの下降により切断される。そして、図2(C)に示すように所定の長さ(切断長さ)Lに切断された繊維片16b(F)は、落下し、供給口15hに投入される。なお、供給口15hに漏斗状のガイドなどを設けてもよい。
【0021】
この後、再び図2(A)に戻り、所定の長さLだけ糸状の繊維16aを繰り出し、切断する(図2(B)、図2(C))。このような図2(A)~図2(C)の繰り返しにより、所定の長さLの繊維片16b(F)が随時供給口15hに投入される。
・・・略・・・
【0023】
また、部材に巻き取られた糸状の繊維(ロービング)としては、フィラメント径(単繊維径):5μm~15μm、フィラメント数:3000本~60000本の繊維を用いることができる。具体的には、三菱化成製(型番:TR30S-3L、TR50S-12L、TRH50-60M)、東レ製(T700SC-24000)などを用いることができる。図3は、ロービングから引き出された糸状の炭素繊維を示す図である。糸(紐、テープ状部材)の幅は例えば5mm程度である。この幅は、2mm~20mm程度の範囲のものを用いることができる。糸状の炭素繊維は、集束された複数の単繊維よりなる。例えば、エポキシ系樹脂を有機溶媒に溶解したものや乳化して水に分散したもの等を集束剤として用い、複数の単繊維の表面に付着させることにより単繊維同士を接着し、取り扱い性の良い糸状(紐、テープ状部材)とすることができる。このような集束剤による接着力は弱く、簡単に糸状の炭素繊維はばらける(図3の破線で囲んだ部分参照)。
【0024】
このように、炭素繊維がばらけることで、溶融樹脂(MRF)内での分散性が良くなり、さらに、スクリュによる混練が進むことで、スクリュのせん断応力により、微細化され、最終の樹脂成形体中においては、0.1mm~3.0mm程度のフィラーFとなる。
・・・略・・・
【0032】
また、本実施の形態によれば、炭素繊維片の長さの調整も容易であり、例えば、成形品の用途に応じて、長さLを適宜変更することができる。長さLは、使用するスクリュ径に合わせて調整することができる。例えば、長さLを供給口15hの直下のスクリュにおいて、その最大円周より小さくするように調整することが好ましい。例えば、スクリュ径φ46mmであれば140mm以下とすることができる。使用するスクリュ径に合わせて長さLを調整することで、スクリュへの炭素繊維の過度の巻き付きを低減することができる。これにより、スクリュへの過度の巻き付きによる炭素繊維の詰まり、フィラーの微細化不良や分散不良などを低減し、溶融樹脂への微細なフィラーFの分散性を高めることができる。
・・・略・・・
【0037】
次いで、本実施の形態の射出成形工程について説明する。図10は、本実施の形態の射出成形工程を示す模式的な断面図である。
【0038】
まず、図10(A)に示すように、樹脂ペレットRPをシリンダ11の上流側のホッパ13に対応する供給口13hから供給する。供給量をW1とする。この際、スクリュSの先端Tは、シリンダ11の最も下流である第1位置P0に位置している。この第1位置P0において、スクリュSを回転させる。この際、シリンダ11内に供給された樹脂ペレットRPは、シリンダ11からの熱と、スクリュSの回転によるせん断力とにより、徐々に溶融して、溶融樹脂となり、下流に向けて搬送される。なお、ここでは、スクリュSの回転方向は、第1方向(溶融樹脂を下流に搬送させる方向)とする。
【0039】
次いで、図10(B)に示すように、溶融樹脂(RP)が、フィラーF用の供給口15hまで搬送された時点で、フィラーFを供給する。供給量をWF1とする。ここで、例えば、一回の吐出量分の樹脂および滞留量の樹脂(吐出後に残存している樹脂)が既に供給されている場合には、この時点で、樹脂ペレットRPの供給は停止されており、シリンダ11の供給口15hと供給口13hとの間に位置する溶融樹脂は、供給量W1に対応する量である。そして、この供給量W1は、1回の吐出量(初回の場合には、上記滞留量を含む)に対応する量である。
【0040】
ここで、本実施の形態においては、前述したように切断装置15から安定的に供給口15hに、フィラーFを供給することができる。その結果、精度よくフィラー含有の溶融樹脂(MRF)を形成することができ、また、その後の混練により溶融樹脂へのフィラーFの分散性(均一性)を向上させることができる。」
(エ)「【0052】
(応用例)
上記実施の形態(図1等)においては、熱可塑性樹脂の供給口13hより下流にフィラーFの供給口を設けているが、フィラーFを熱可塑性樹脂と同じ供給口13hから添加してもよい。
イ 図面の記載
図1「
[図:0001434844000001.jpg]
」
ウ 新規事項の追加についての検討
(ア)本件補正発明14の特定事項
本件補正発明14は
「(a)シリンダと、前記シリンダ内に配備されたスクリュと、前記シリンダに設けられた切断装置とを有する射出成形装置と、前記射出成形装置の先端に接続された型と、を準備する工程、
(b)前記シリンダに設けられた孔から、樹脂材料およびフィラーを前記シリンダ内に供給して溶融樹脂と前記フィラーとの混練を行うことにより前記フィラー含有の溶融樹脂を形成する工程、
(c)前記スクリュの先端が第1位置から第2位置までの第1ストロークだけ後退するように、前記スクリュを後退させることにより、前記スクリュの先端部において前記フィラー含有の溶融樹脂を計量する工程、
(d)前記スクリュを前進させることにより、前記フィラー含有の溶融樹脂を前記型に注入することにより、成形体を形成する工程、を有し、
前記(b)工程において、前記切断装置により、単繊維の束状態からなる糸状の繊維を一定の長さに連続して切断し、切断された繊維片を前記孔に投入し、
前記切断された繊維片の長さは、前記第2孔直下における前記スクリュの円周以下である、射出成形方法。」
であるところ、本件補正において新たに追加して特定されることとなった「前記切断された繊維片の長さは、前記第2孔直下における前記スクリュの円周以下である、」との特定事項について、以下検討する。
(イ)当初明細書等に記載されていると認められる事項
本願の当初明細書等には、上記アで挙げる記載があるところ、今回検討する特定事項に関連して、次の事項が記載されているものと認める。
フィラー含有樹脂成形体の製造装置は射出成形装置1と、プレス機5とを有する。射出成形装置1はシリンダ11と、シリンダ11の内部に配置されたスクリュSとを有する。シリンダ11は、シリンダ11の上流側に配設された樹脂ペレットRPの供給口13hと、フィラーFの供給口15hとを有している。フィラーFの供給口15hの上部には、繊維片を切断しフィラーFとして供給する切断装置15が配置されている。(【0016】~【0018】)
樹脂ペレットRPは上流側のホッパ13に対応する供給口13hから供給され、また、フィラーFを熱可塑性樹脂と同じ供給口13hから添加してもよい。(【0018】、【0052】)
供給する炭素繊維片の長さLを供給口の直下のスクリュにおいて、その最大円周より小さくするように調整することが好ましい。【0032】)
(ウ)判断
本件補正発明14には、シリンダに孔が設けられ、該孔から樹脂ペレットRP及びフィラーFから供給することが特定されているが、当該「孔」に関して、補正前の請求項16及び本件補正発明14のいずれにおいても、単に「孔」との特定があるにとどまり、設けられる孔の数は特定されていない。
また、補正前の請求項16及び本件補正発明14ともに、その(b)に「前記シリンダに設けられた孔から、樹脂材料およびフィラーを前記シリンダ内に供給して」とあり、これを受けて「(b)工程において、」当該フィラーとしての「切断された繊維片を前記孔に投入」するとあることからみて、一の上記「孔」に対して「樹脂材料およびフィラー」との、その対象とするもの「を供給」する場合を含む特定がなされていると認められる。
これに対して、本件補正発明14では、本件補正によって「前記切断された繊維片の長さは、前記第2孔直下における前記スクリュの円周以下である」との、上記「孔」に関して「第2孔」との特定を含むことになった。
すると、「孔」との用語に「第2」との番付が付された特定事項が導入されたことによって、「第2孔とは別の孔であってより若い番付の「第1孔」との事項を少なくとも含むこととなり、このことから、上記「孔」との特定事項が、少なくとも(「第1」及び「第2」の)二つの「孔」からなることを、特定することになったと認められる。
そうすると、本件補正発明14の「孔」に関して、(a)上記「第1孔」から「樹脂材料およびフィラー」が供給される場合と、(b)上記「第2孔」から「樹脂材料およびフィラー」が供給される場合との、二つの場合が含まれることになる。
上記(a)の場合について検討すると、本願の発明の詳細な説明の【0032】には、炭素繊維片の長さに関して、「長さLは、使用するスクリュ径に合わせて調整することができる。例えば、長さLを供給口15hの直下のスクリュにおいて、その最大円周より小さくするように調整する」と記載されているから、供給口とされる「第1孔」ではない「第2孔」「直下」「における前記スクリュの円周以下」との事項は、本件の出願当初明細書に記載されたものではないし、特許請求の範囲の及び図面の記載をみても同様である。
すなわち、当該特定事項は、シリンダに、樹脂ペレットRP及びフィラーFが供給される「孔」とは「別の孔」(すなわち、「第2孔」)が設けられ、該別の孔において、供給された繊維片の長さを規定することを含むようになったと解されるが、そのような事項は当初明細書等には記載されていない。
そうしてみると、本件補正発明14における「前記切断された繊維片の長さは、前記第2孔直下における前記スクリュの円周以下である」との特定事項は、本願の当初明細書等に記載されていない事項を含むものであって、新規事項を追加するものであると判断される。
以上のとおり、本件補正は、特許法17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。
したがって、本件補正は、特許法17条の2第3項の規定に違反するものであり、同法159条1項で読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下されるべきものである。
(2)補正の目的について
次に、本件補正の目的について検討する。
本件補正発明14には「前記切断された繊維片の長さは、前記第2孔直下における前記スクリュの円周以下である、」という特定事項があるが、「第2孔」にあたる記載はないから、「前記第2孔直下」とは、どの「孔」の直下を指すものであるのか不明である。
この点についてさらに検討するに、本件補正発明14において「シリンダに設けられた孔」との特定はあるものの、それ以外の「孔」の特定はない。また、そもそも本件補正発明において、シリンダに設けられる孔の数は何ら特定されていない。
以上の点を踏まえると、本件補正発明14における「前記第2孔」とは、何を特定しようとするものか明確ではないから、結果として、本件補正発明14は明確ではない。
そうしてみると、本件補正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものとはいえない。また、請求項の削除、誤記の訂正、明瞭でない記載の釈明のいずれにも当たらないことも明らかである。
したがって、当該補正事項を含む本件補正は、特許法第17条の2第5項各号のいずれを目的とするものでもないから、特許法第17条の2第5項に規定する要件に違反するものであり、同法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。
(3)独立特許要件について
上記(1)及び(2)で述べたとおり、本件補正は特許法第159条1項で読み替えて準用する同法第53条1項の規定により却下されるべきものであるが、念のため、本件補正が、新規事項の追加にあたるものではなく、特許法第17条の2第5項第2号に規定するところの特許請求の範囲の減縮(以下、「限定的減縮」という。)を目的とするものとして検討を進める。
本件補正が限定的減縮を目的とする際には、補正後の請求項に係る発明は独立して特許を受けることができるものでなければならない。
この点について、以下検討する。
ア 明確性について
上記(2)において検討したとおり、本件補正発明14において、「前記第2孔」は何を指すのか明確ではない。また、「前記第2孔」が明確ではない以上、「前記切断された繊維片の長さは、前記第2孔直下における前記スクリュの円周以下である」の技術的意味も理解できないものとなっている。
したがって、本件補正発明14は明確でなく、特許法36条6項2号の規定を満たさないから、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
イ 新規性について
(ア)引用文献3の記載事項
引用文献3(特開平8-197581公報)には、本件出願の出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物であるところ、そこには、以下の記載がある。
「【請求項1】 スクリュー(22)を収容するシリンダ(20)の端部に設けた樹脂投入口(21)から溶融樹脂と強化繊維とを投入するスクリュー装置とし、前記樹脂投入口(21)の開口の大きさを前記シリンダ(20)の内径と同等もしくはそれ以上に大きく設定して、前記樹脂投入口(21)の側壁に連続するシリンダー内壁面とスクリュー(22)の外周面との間にはこのスクリュー面の食い込み側に導入間隙部(231)を形成した射出機のスクリュー装置。
・・・略・・・
【0012】
【実施例】次に、上記した本発明の実施例を図面に従って詳述する。図1に示す本発明の実施例のスクリュー式射出機(2)は、公知の一般的なスクリュー式の射出機と基本的には同じである。また、スクリュー式射出機(2)内のスクリュー(22)としてはフルフライトスクリューが採用され、先端にはチェックリング機構を具備するミキシングヘッド(24)が取り付けられている。スクリュー(22)の上流端の上方に樹脂投入口(21)が設けられている。
・・・略・・・
【0018】この実施例では、溶融押出機(1)から押し出された溶融樹脂を、スクリュー式射出機(2)のスクリュー上流端と一致させてシリンダ(20)に形成した樹脂投入口(21)から、強化繊維と共に投入するようにしている。このため、前記溶融押出機(1)の溶融樹脂の吐出口(11)の近傍上方には長尺強化繊維(F)を一定長さの強化繊維(F1)(F1)に裁断する為のロービングカッター(3)が設けられる。そして前記強化繊維(F1)(F1)の落下経路が前記吐出口(11)から吐出され溶融樹脂が垂れ下がるように流下して投入される経路(以下、単に流下経路という)の上流端部で合流するように、前記ロービングカッター(3)の配設位置が設定されている。
【0019】以下前記装置各部について詳述する。
[溶融押出機(1)について]溶融押出機(1)は、加熱筒(10)内にスクリュー(12)を設けたもので、前記スクリュー(12)の基端部の上方に開口させた供給口(13)からペレット状又はパウダー状の熱可塑性樹脂が投入される。
【0020】前記スクリュー(12)は回転駆動装置(121)によって回転されて、供給口(13)より投入された熱可塑性樹脂を溶融押出機(1)の先端に設けた吐出口(11)に送り出す。この間に前記熱可塑性樹脂が加熱筒(10)からの加熱とスクリュー(12)の剪断作用による発熱とによって溶融される。なお、前記吐出口(11)は、図2のように、水平方向に長い扁平な矩形状に設定されており、この断面形状の吐出口(11)からの単位時間当たりの吐出量は、スクリュー(12)の回転速度によって決定される。また、総吐出量は、スクリュー(12)の総回転量によって決定される。
【0021】また、前記吐出口(11)とスクリュー(12)との間には、シャットオフバルブ(16)が挿入されており、溶融樹脂の吐出時には、このシャットオフバルブ(16)は開放しており、溶融樹脂の吐出停止時に閉鎖される。さらに、前記吐出口(11)とスクリュー式射出機(2)の上記樹脂投入口(21)との間には保護筒(14)が設けられ、この保護筒(14)の上端には、ロート状の投入口部(15)が形成され、この投入口部(15)の上方にロービングカッター(3)が配置されている。なお、前記保護筒(14)の断面の大きさは、吐出口(11)から吐出される溶融樹脂の断面よりも大きく設定されており、前記溶融樹脂と保護筒(14)の内面とは接触しない。
[ロービングカッター(3)について]ロービングカッター(3)は、リールに巻き取られた多数本の長尺強化繊維(F)を扁平に広げた状態で送り出すフィードロール(31)と、これの出口側に設け且前記長尺強化繊維(F)の移送幅よりも長いカッティングロール(32)とからなり、このカッティングロール(32)は、下方のフィードロール(31)に対して回転状態で対接する複数の刃を具備し、前記刃とフィードロール(31)とによって長尺強化繊維(F)が一定長さの強化繊維(F1)(F1)に裁断されるものである。従って、前記フィードロール(31)による長尺強化繊維(F)の移送幅に応じた範囲(前記移送幅よりもよりも少し広い範囲)に、強化繊維(F1)(F1)が分散して落下する。
【0022】そして、前記強化繊維(F1)(F1)の落下方向が上記投入口部(15)に向かうように、前記カッティングロール(32)の配設位置及び回転方向が設定されている。また、強化繊維(F1)(F1)の落下範囲と上記吐出口(11)から吐出されて流下する溶融樹脂(61)の幅とは略一致させている。なお、前記カッティングロール(32)による切断長さはカッティングロール(32)に植設した刃の配列ピッチによって決定され、強化繊維(F1)の長さは3mm~20mmに設定される。
【0023】この実施例では、長尺強化繊維(F)としては、1100texのロービングガラス繊維の9本をフィードロール (31)間に送り込み、繊維長15mmに裁断する様にしている。また、カッティングロール(32)からの強化繊維(F1)(F1)の落下量は3Kg/minに設定している。
[樹脂投入口(21)について]この実施例の樹脂投入口(21)の水平方向断面の形状(平面形状)は矩形に形成されており、前記矩形の樹脂投入口(21)の一方の対向辺はシリンダ(20)の軸線に平行に設定される。他方の一対の対向辺はシリンダ(20)の軸線に対して直角方向となり、その大きさは、図3のように、シリンダ(20)の直径よりも大きく設定されている。従って、この樹脂投入口(21)におけるシリンダ(20)の断面形状は、同図のように、その円弧状底部(23)から上方に向かって広がった形状になっており、シリンダ(20)の軸線に対して平行な一対の傾斜側壁(211)は、スクリュー(22)の断面下部を囲むシリンダ断面の下半部に滑らかに連続する。
・・・略・・・
【0027】[射出動作について]上記実施例の装置による強化繊維含有熱可塑性樹脂の射出動作を以下に説明する。上記装置を始動させると、溶融押出機(1)に熱可塑性樹脂(例えばポリプロリレン樹脂)が投入されて、溶融樹脂が吐出口(11)から吐出され始めるとロービングカッター(3)が始動し、溶融樹脂の吐出口(11)からの流下域に強化繊維(F1)(F1)が混入される。
【0028】この実施例のポリプロピレン樹脂とガラス繊維の場合、既述の10Kg/minの供給速度で、ガラス繊維充填率30WT%にしている。そして、同時にスクリュー式射出機(2)の運転が開始されて、スクリュー駆動装置(25)及び往復直動装置(40)が駆動状態となる。これにより、樹脂投入口(21)に投入された溶融樹脂は上記した導入用間隙(231)の案内作用及び押込棒(4)の押込作用によって、溶融樹脂中に強化繊維が確実に侵入した状態となり、スクリュー(22)の溝とシリンダ(20)との間の混練用移送間隙内に導かれてスクリュー(22)の回転によって先端側に移送される。この移送の間に強化繊維と溶融樹脂との混練が更に促進される。
【0029】なお、この時の圧縮比は4以下に設定され、みかけの剪断速度は100sec-1以下に設定されていることから、従来のものに比べて、強化繊維の切断の度合いが少ない。そして、スクリュー(22)によって移送される溶融樹脂の量が増えると、スクリュー(22)の先端側に溶融樹脂が貯留され、この貯留量に応じてスクリュー(22)が後退する。この貯留量が繊維強化樹脂製品の樹脂量との関係で決定される設定量になると、スクリュー駆動装置(25)による回転が停止されて、その後、スクリュー駆動装置(25)によりスクリュー(22)が軸線方向に押し出されて、成型金型内に前記貯留樹脂が射出される。
・・・略・・・
【0033】因に、上記実施例のように、ポリプロピレン樹脂とガラス繊維の繊維強化樹脂製品を製造するものとし、10Kg/minの供給速度、スクリュー(22)のフィードゾーン(221)の溝深さは32.8mm、コンプレッションゾーン(222)の溝深さは32.8mmから19.3mmへのテーパー、メタリングゾーン(223)の溝深さは19.3mmに設定したフルフライトスクリューを採用し、圧縮比は1.7、みかけの剪断速度を50sec-1に設定した、条件で成型したものでは、繊維強化樹脂製品内の平均強化繊維長さは3.5mm以上で、この強化繊維の分散度合いも良好であった。この場合の平均強化繊維長さは既述従来の方法によるものよりも長く、しかも、分散性も大幅に向上している。」
(当合議体注:引用発明1における括弧内の記載は、引用発明1の認定の根拠となった箇所等を参考のために示したものである。)
図1「
[図:0001434844000002.jpg]
」
(イ)引用文献3に記載された発明
引用文献3には、「スクリュー(22)を収容するシリンダ(20)の端部に設けた樹脂投入口(21)から溶融樹脂と強化繊維とを投入するスクリュー装置」(【請求項1】)、「図1に示す本発明の実施例のスクリュー式射出機(2)は、公知の一般的なスクリュー式の射出機と基本的には同じである。また、スクリュー式射出機(2)内のスクリュー(22)としてはフルフライトスクリューが採用され、先端にはチェックリング機構を具備するミキシングヘッド(24)が取り付けられている。スクリュー(22)の上流端の上方に樹脂投入口(21)が設けられている。」(【0012】)、「この実施例では、溶融押出機(1)から押し出された溶融樹脂を、スクリュー式射出機(2)のスクリュー上流端と一致させてシリンダ(20)に形成した樹脂投入口(21)から、強化繊維と共に投入するようにしている。このため、前記溶融押出機(1)の溶融樹脂の吐出口(11)の近傍上方には長尺強化繊維(F)を一定長さの強化繊維(F1)(F1)に裁断する為のロービングカッター(3)が設けられる。」(【0018】)、「ロービングカッター(3)は、リールに巻き取られた多数本の長尺強化繊維(F)(F)を扁平に広げた状態で送り出すフィードロール(31)と、これの出口側に設け且前記長尺強化繊維(F)(F)の移送幅よりも長いカッティングロール(32)とからなり、このカッティングロール(32)は、下方のフィードロール(31)に対して回転状態で対接する複数の刃を具備し、前記刃とフィードロール(31)とによって長尺強化繊維(F)が一定長さの強化繊維(F1)(F1)に裁断されるものである。」(【0021】)、「長尺強化繊維(F)としては、1100texのロービングガラス繊維の9本をフィードロール(31)(31)間に送り込み、繊維長15mmに裁断する様にしている。」(【0023】)、「スクリュー(22)によって移送される溶融樹脂の量が増えると、スクリュー(22)の先端側に溶融樹脂が貯留され、この貯留量に応じてスクリュー(22)が後退する。この貯留量が繊維強化樹脂製品の樹脂量との関係で決定される設定量になると、スクリュー駆動装置(25)による回転が停止されて、その後、スクリュー駆動装置(25)によりスクリュー(22)が軸線方向に押し出されて、成型金型内に前記貯留樹脂が射出される。」(【0029】)、「スクリュー(22)のフィードゾーン(221)の溝深さは32.8mm」(【0033】)との記載がある。
これらの記載をまとめると、引用文献3には次の発明が記載されているものと認める。
「スクリュー式射出機(2)を用いた射出成形方法であって、
スクリュー式射出機(2)は、スクリュー(22)、スクリュー(22)を収容するシリンダ(20)、スクリュー(22)の上流に設けられた樹脂投入口(21)の上方に設けられたロービングカッター(3)、スクリュー(22)により樹脂が射出される成型金型を有し、
樹脂投入口(21)に溶融樹脂及び強化繊維を投入して混練し、スクリュー(22)の先端側における溶融樹脂の貯留量に応じてスクリュー(22)が後退し、この貯留量が繊維強化樹脂製品の樹脂量との関係で決定される設定量になると、スクリュー駆動装置(25)による回転が停止されて、スクリュー(22)が押し出されて、成型金型内に前記貯留樹脂が射出され、
強化繊維は、ロービングガラス繊維であり、フィードロール(31)により送り出されたロービングガラス繊維は、ロービングカッター(3)の回転する複数の刃により該繊維9本が繊維長15mmに裁断され樹脂投入口(21)より投入され、
スクリュー(22)の溝深さは32.8mmである、
射出成形方法。」
(以下、「引用発明3」という。)
(ウ)対比
本件発明14と引用発明3とを対比する。
a 工程(a)
引用発明3は、スクリュー式射出機(2)(本件補正発明14における「射出成形装置」に相当する、以下同様)、スクリュー(22)(「スクリュ」)、スクリュー(22)を収容するシリンダ(20)(「シリンダ」)、スクリュー(22)の上流に設けられた樹脂投入口(21)の上方に設けられたロービングカッター(3)(「切断装置」)、スクリュー(22)により樹脂が射出される成型金型(「型」)を有する。
そうすると、引用発明3は、本件補正発明14における「シリンダと、前記シリンダ内に配備されたスクリュと、前記シリンダに設けられた切断装置とを有する射出成形装置と、前記射出成形装置の先端に接続された型と、を準備する工程」との特定事項を満たす。
b 工程(b)-(d)
引用発明3では、樹脂投入口(21)に溶融樹脂及び強化繊維を投入して混練し、スクリュー(22)の先端側における溶融樹脂の貯留量に応じてスクリュー(22)が後退し、この貯留量が繊維強化樹脂製品の樹脂量との関係で決定される設定量になると、スクリュー駆動装置(25)による回転が停止されて、スクリュー(22)が押し出されて、成型金型内に前記貯留樹脂が射出される。
ここで、混練開始時のスクリュー(22)の位置は、本件補正発明14における「第1位置」に、スクリュー(22)の回転が停止された位置が本件補正発明14における「第2位置」に、スクリュー(22)の先端側における溶融樹脂の貯留量が繊維強化樹脂製品の樹脂量との関係で決定される設定量になるまでスクリュー(22)を後退することは、本件補正発明14における「前記スクリュの先端が第1位置から第2位置までの第1ストロークだけ後退する」こと及び「スクリュの先端部において前記フィラー含有の溶融樹脂を計量する」ことに、それぞれ相当する。
そうすると、引用発明3は、本件補正発明14における「前記シリンダに設けられた孔から、樹脂材料およびフィラーを前記シリンダ内に供給して溶融樹脂と前記フィラーとの混練を行うことにより前記フィラー含有の溶融樹脂を形成する工程」、「前記スクリュの先端が第1位置から第2位置までの第1ストロークだけ後退するように、前記スクリュを後退させることにより、前記スクリュの先端部において前記フィラー含有の溶融樹脂を計量する工程」及び「前記スクリュを前進させることにより、前記フィラー含有の溶融樹脂を前記型に注入することにより、成形体を形成する工程、を有」するとの特定事項を満たす。
c 単繊維の束状態からなる糸状の繊維である点
引用発明3で用いられる長尺強化繊維は、ロービングガラス繊維であり、ロービングカッター(3) の回転する複数の刃により該繊維9本を繊維長15mmに裁断して樹脂投入口(21)より投入している。
そうすると、引用発明3は、本件補正発明14における「前記(b)工程において、前記切断装置により、単繊維の束状態からなる糸状の繊維を一定の長さに連続して切断し、切断された繊維片を前記孔に投入し」との特定事項を満たす。
d 繊維長とスクリュの円周との関係
(本件補正発明14における「前記第2孔」について)
本件補正発明14における「前記第2孔」との特定事項については、上記(2)のとおり明確ではないところであるが、明細書【0020】、【0032】、【0052】、【図1】の記載も踏まえ、「前記第2孔」とは「前記孔」の誤記であるものとして、以下検討を進める。
(検討)
引用発明3で用いられる長尺強化繊維は、繊維長15mmに裁断され投入されている。ここで、スクリュー(22)の溝深さは32.8mmとされている。スクリュの半径は溝深さよりも大きいことは明らかであるから、該スクリュの円周の長さは、32.8mm×2×3.14=206mmよりも大きいこととなる。そうすると、引用発明3における繊維長は、スクリュの円周の長さよりも小さい。
そうすると、引用発明3は、本件補正発明14における「前記切断された繊維片の長さは、前記孔直下における前記スクリュの円周以下である、射出成形方法」との特定事項を満たす。
e 小括
そうすると、本件補正発明14と引用発明3とは、
「(a)シリンダと、前記シリンダ内に配備されたスクリュと、前記シリンダに設けられた切断装置とを有する射出成形装置と、前記射出成形装置の先端に接続された型と、を準備する工程、
(b)前記シリンダに設けられた孔から、樹脂材料およびフィラーを前記シリンダ内に供給して溶融樹脂と前記フィラーとの混練を行うことにより前記フィラー含有の溶融樹脂を形成する工程、
(c)前記スクリュの先端が第1位置から第2位置までの第1ストロークだけ後退するように、前記スクリュを後退させることにより、前記スクリュの先端部において前記フィラー含有の溶融樹脂を計量する工程、
(d)前記スクリュを前進させることにより、前記フィラー含有の溶融樹脂を前記型に注入することにより、成形体を形成する工程、を有し、
前記(b)工程において、前記切断装置により、単繊維の束状態からなる糸状の繊維を一定の長さに連続して切断し、切断された繊維片を前記孔に投入し、
前記切断された繊維片の長さは、前記孔直下における前記スクリュの円周以下である、射出成形方法」である点で一致し、相違する点はない。
(ウ)判断
したがって、本件補正発明14は引用文献3に記載された発明であるから、特許法29条1項3号の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
3.小括(補正の却下の決定のむすび)
上記(1)及び(2)のとおり、他の請求項について検討するまでもなく、本件補正は、特許法第17条の2第3項又は特許法第17条の2第6項で準用する同法第126条7項の規定に違反するものであり、同法第159条1項で読み替えて準用する同法第53条1項の規定により却下されるべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。
第3 本願発明について
1.本願発明
本件補正は、前記第2に記載したとおり却下されたので、本願発明は、第2 1(1)において述べたとおりのものである(以下「本願発明1」ないし「本願発明16」等という。)。
2.原査定における拒絶の理由
令和 6年 9月10日付け拒絶査定における理由は、本願発明1-3、7-9は引用文献1又は2に記載された発明と、本願発明15、16は引用文献3と、それぞれ同一であり、本願発明4-6、10-13は引用文献1又は2に基づき、本願発明14は引用文献1又は2及び周知技術に基づいて容易に発明をすることができたものである、とするものである。
3.引用文献
引用文献1:特表2012-511445号公報(以下「引用発明1」)。
引用文献2:登録実用新案第3227199号公報(以下「引用発明2」)。
引用文献3は2(2)イに記載したとおりのものである。
4.対比・判断
(1) 本願発明15、16について
本願発明16は、第2 2(2)イで検討した本願補正発明14から「前記切断された繊維片の長さは、前記第2孔直下における前記スクリュの円周以下である」という限定事項を削除したものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに他の事項を付加したものに相当する本件補正発明14が、第2 2(2)イに記載したとおり、引用発明3と同一のものであるから、本願発明16も、引用発明3と同一のものである。
加えて、本願発明15も、第2 2(2)イの記載と同様の理由により、引用発明3と同一のものであるといえる。
(2) 本願発明1-14について
さらに、本願発明1-14について判断する。
引用文献1(段落【0003】、【0016】、【0019】、【0021】、【図1】-【図4】)には、材料供給領域13(本願発明1の「第1孔」に相当、以下同様。)の後方に配置された投入開口部14(「第2孔」)と、前記第1孔より下流に位置し繊維状添加剤12(「フィラー」又は「単繊維の束状態からなる糸状の繊維」)が供給される投入開口部14(「第2孔」)とを有する塑性化ユニット10(「シリンダ」)と、繊維状添加剤12を投入するための機構18の切断エッジ(「切断装置」)と、前記塑性化ユニット10内に配備された塑性化スクリュ11(「スクリュ」)と、を有する、射出成形ユニットS(「射出成形装置」)が記載されているから、本願発明1と引用発明1とは同一である。また、本願発明2-14は、引用発明1と同一であるか、引用発明1に基づき容易に想到し得たものである。
また、引用文献2(段落【0012】-【0013】、【0019】、【0022】、【0031】、【0034】、【図3】)には、樹脂ペレット供給穴11d(「第1孔」)と、フィラメントヤーン(「フィラー」又は「単繊維の束状態からなる糸状の繊維」)を供給するための補強材供給穴11b(「第2孔」)とを有する可塑化シリンダー11(「シリンダ」)内にスクリュー12(「スクリュ」)が内挿され、さらにフィラメントヤーンを適切な長さに自動切断する切断手段(「切断装置」)を備える、射出装置10(「射出成形装置」)が記載されているから、本願発明1と引用発明2とは同一である。また、本願発明2-14は、引用発明2と同一であるか、引用発明2に基づき容易に想到し得たものである。
第4 むすび(結論)
以上のとおり、本願発明は、特許法29条1項3号及び2項に規定により特許を受けることができないから、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2024-018246